説明

顕微鏡装置

【課題】 走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を有するコンパクト化された顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】 顕微鏡装置1は、原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20を備える。光学顕微鏡20の電動ズーム鏡筒23は、試料載置台30の側方においてZ軸方向に延びるように配置され、光軸変換ミラーは電動ズーム鏡筒23の上端部に配置されている。光学顕微鏡20のレンズ格納部21は、光軸変換部22に取り付けられ、光軸変換部22は、電動ズーム鏡筒23の上端部に取り付けられている。電動ズーム鏡筒23の下端部にCCDカメラ24が設けられている。試料Mからの反射光はミラーにより反射され、レンズ格納部21のレンズを通して光軸変換部22の光軸変換ミラーにより反射される。光軸変換ミラーによる反射光は、電動ズーム鏡筒23を通してCCDカメラ24に取り込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学顕微鏡および走査型プローブ顕微鏡を一体的に備えた顕微鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の光学顕微鏡または電子顕微鏡等とは全く異なる原理を利用した走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope:SPM)が開発され、注目を浴びている。
【0003】
走査型プローブ顕微鏡は、プローブと呼ばれる鋭く尖った探針を自由端に有するカンチレバーを備えている。上記の走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)においては、探針を試料に近づけると、探針の先端を構成している原子と試料を構成している原子との間に原子間力が生じる。この原子間力によりカンチレバーの自由端が変位する。
【0004】
このカンチレバーの自由端の変位量を電気的に測定しながら、探針を試料に沿って走査させることにより、試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。例えば、カンチレバーの自由端の変位を一定に保つように探針と試料との距離を制御しながら探針を走査させると、探針の先端は試料表面の凹凸に沿って移動するので、探針の先端の位置情報から試料の表面形状を示す三次元的な情報を得ることができる。なお、走査型プローブ顕微鏡のその他の例としては、探針の原子と試料表面の原子との間に生じる原子間力を用いる代わりに、探針と試料との間に流れるトンネル電流を利用することにより試料表面の三次元的な情報を得ることも可能な走査型トンネル顕微鏡もある。
【0005】
また、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡とが一体化された顕微鏡装置が開発されている。
【0006】
ここで、従来の顕微鏡装置の概略を図面を参照しながら説明する。なお、下記に示す顕微鏡装置は、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡の一例である原子間力顕微鏡とが一体的に構成されたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図4は、従来の顕微鏡装置を示す模式図である。
【0008】
図4に示すように、支持台201には、図示しないリニアガイドを介して光学系支持台202が上下方向に移動可能に設けられている。
【0009】
光学系支持台202には、対物レンズ207、変位計測光学系206および観察光学系204が取り付けられている。
【0010】
光学系支持台202上に設けられた光学系支持台粗動マイクロメーター203を調整することにより、対物レンズ207、変位計測光学系206および観察光学系204を一体的に上下に移動させることができる。
【0011】
また、光学系支持台202には、図示しないリニアガイドを介してスキャナ支持台215が上下方向に移動可能に設けられている。
【0012】
スキャナ支持台215には、探針微動用円筒型圧電素子208が固定されている。探針微動用円筒型圧電素子208の下端に探針支持リング209が設けられている。
【0013】
この探針支持リング209にカンチレバー218が取り付けられており、カンチレバー218の自由端に探針210が設けられている。なお、探針210は、探針支持リング209の中央の開口部分から突出するように設けられている。
【0014】
スキャナ支持台215上に設けられたスキャナ支持台粗動マイクロメーター214を調整することにより、スキャナ支持台215を光学系支持台202に対して上下方向に移動させることができる。
【0015】
一方、支持台201上には、試料走査用円筒型圧電素子213が固定されている。試料走査用円筒型圧電素子213上には試料台212が設けられており、試料台212上に試料211が載置される。
【0016】
上記のような構成により、光学顕微鏡による試料の観察と走査型プローブ顕微鏡による試料の観察とを一台の顕微鏡装置により行うことができる。
【特許文献1】特開平5−157554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上記従来の顕微鏡装置では、光学顕微鏡と走査型プローブ顕微鏡とを一体的に構成すると、顕微鏡装置の高さが非常に高くなる。そのため、顕微鏡装置が大型化するとともに除振性に乏しい。その結果、試料の測定および評価の信頼性が損なわれる。
【0018】
また、例えば、光学顕微鏡の鏡筒を傾斜させて設けるとしても、顕微鏡装置の高さを低くすることは可能であるが、顕微鏡装置が横方向に大型化する。
【0019】
本発明の目的は、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を有するコンパクト化された顕微鏡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明に係る顕微鏡装置は、試料が載置される試料載置台と、探針を有し、試料載置台と探針とを相対的に移動させることにより探針を試料の表面に沿って走査させる走査型プローブ顕微鏡と、撮像部、鏡筒、第1の反射部材および第2の反射部材を有する光学顕微鏡と、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を保持する保持部とを備え、光学顕微鏡の鏡筒は試料載置台の側方において上下方向に延びるように配置され、第2の反射部材は鏡筒の上端部に設けられ、撮像部は鏡筒の下端部に設けられ、試料載置台上に載置された試料からの光が第1の反射部材により第2の反射部材に導かれ、第2の反射部材により鏡筒を通して撮像部に導かれるものである。
【0021】
本発明に係る顕微鏡装置においては、走査型プローブ顕微鏡の探針と試料載置台とが相対的に移動することにより、探針が試料の表面に沿って走査される。それにより、試料の表面形状を高倍率でミクロ的に観察することができる。
【0022】
また、試料載置台上に載置された試料からの光が第1の反射部材により第2の反射部材に導かれ、第2の反射部材により鏡筒を通して撮像部に導かれる。それにより、試料の表面形状を低倍率でマクロ的に観察することができる。
【0023】
保持部により走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡が保持される。光学顕微鏡の鏡筒は試料載置台の側方において上下方向に延びるように配置され、第2の反射部材は鏡筒の上端部に設けられ、撮像部は鏡筒の下端部に設けられている。この構成により、顕微鏡装置をコンパクト化することができる。
【0024】
保持部を設置面上に支持する支持部と、支持部に設けられ、設置面から保持部に伝わる振動を緩和する除振機構とをさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、支持部により保持部が設置面上に支持される。また、支持部には設置面から保持部に伝わる振動を緩和する除振機構が設けられている。これにより、設置面からの振動が除振機構により吸収され、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を保持する保持部の除振性が向上する。
【0026】
支持部は、少なくとも3つの脚部を含み、除振機構は、保持部と少なくとも3つの脚部との間にそれぞれ設けられた弾性部材を含んでもよい。
【0027】
この場合、少なくとも3つの脚部を含む支持部により保持部が設置面上に支持される。それにより、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を安定して保持することができる。
【0028】
また、保持部と少なくとも3つの脚部との間にそれぞれ設けられた弾性部材により、設置面からの振動が弾性部材により吸収され、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を保持する保持部の除振性がより向上する。
【0029】
試料載置台は、少なくとも3つの脚部により形成される領域の略中心に設けられてもよい。それにより、脚部からの振動の影響を最小限にすることができる。その結果、試料載置台上に載置された試料の測定の精度および測定の信頼性が向上する。
【0030】
走査型プローブ顕微鏡は、探針を保持する走査部を含み、走査部は、保持部上に設けられてもよい。この場合、十分な除振性を有する保持部上に走査部が設けられていることにより、脚部からの振動の影響を受けずに探針が試料の表面に沿って走査される。その結果、試料載置台上に載置された試料の測定の精度および測定の信頼性がより向上する。
【0031】
少なくとも3つの弾性部材と保持部との接合箇所の高さ、保持部による光学顕微鏡の保持位置の高さ、保持部上の走査部の保持位置の高さおよび試料載置台上の試料の高さがほぼ等しく設定されてもよい。それにより、顕微鏡装置の除振性がさらに向上する。その結果、試料載置台上に載置された試料の測定の精度および測定の信頼性がさらに向上する。
【0032】
走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡であってもよい。この場合、試料と探針との間に生じる原子間力を利用した試料の測定が行われる。それにより、試料の表面形状を原子レベルで観察することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、走査型プローブ顕微鏡および光学顕微鏡を備えた顕微鏡装置をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本実施の形態に係る顕微鏡装置について図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1は、本実施の形態に係る顕微鏡装置を示す斜視図である。ここで、水平面内で直交する2方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。
【0036】
図1に示すように、本実施の形態に係る顕微鏡装置1は、原子間力顕微鏡(AFM)10および光学顕微鏡20を一体的に備える。原子間力顕微鏡10および光学顕微鏡20はベース筐体部50により保持されている。
【0037】
ベース筐体部50は、X軸およびY軸からなる平面上に位置する底部54を有する。
【0038】
底部54の四隅からZ軸方向に支持脚52a,52b,52c,52d(52cは図示せず)が延びている。支持脚52a,52dの上端には、被支持部53a,53dがそれぞれ設けられている。
【0039】
支持脚52b,52c上には平面視でL字状に形成された被支持部53が設けられている。
【0040】
ベース筐体部50の被支持部53a,53dは、それぞれZ軸方向に延びる円筒状の脚部S1,S4(S4は図示せず)により支持されている。また、ベース筐体部50の被支持部53は、Z軸方向に延びる円筒状の脚部S2および脚部S3により支持されている。
【0041】
原子間力顕微鏡10は、AFMスキャナ11、試料載置台30および昇降軸30aを備える。
【0042】
被支持部53は、水平な上面を有する。この上面上にAFMスキャナ11が支持されている。なお、AFMスキャナ11の後述するカンチレバーに設けられている探針を試料表面上に沿って走査させる構成については後述する。
【0043】
ベース筐体部50内部の中央に試料載置台30が設けられている。試料載置台30上に試料Mが載置される。試料載置台30は、昇降軸30aによりZ軸方向に上下動する。なお、昇降軸30aは、図示しない駆動機構に接続されている。また、試料載置台30は、X軸およびY軸方向に移動可能であるとともに、AFMスキャナ11の後述する探針を中心としてZ軸の周りで回転可能である。
【0044】
AFMスキャナ11の下部には、試料Mの上方に位置するようにミラーホルダ26が設けられている。ミラーホルダ26はミラー25を保持する。この場合、図示しない照明源から発せられる照明光が試料Mに照射され、その試料Mからの反射光がミラー25に照射される。
【0045】
また、ベース筐体部50には、光学顕微鏡20が取り付けられている。光学顕微鏡20は、レンズ格納部21、光軸変換部22、電動ズーム鏡筒23、CCD(Charge Coupled Device)カメラ24、ミラー25およびミラーホルダ26を備える。光軸変換部22内には、光軸変換ミラー22a(図2参照)が設けられている。
【0046】
光学顕微鏡20のレンズ格納部21は、光軸変換部22に取り付けられ、光軸変換部22は、電動ズーム鏡筒23の上端部に取り付けられている。電動ズーム鏡筒23の下端部にCCDカメラ24が設けられている。
【0047】
ここで、光学顕微鏡20の電動ズーム鏡筒23は、試料載置台30の側方においてZ軸方向に延びるように配置され、光軸変換ミラー22aは電動ズーム鏡筒23の上端部に配置されている。
【0048】
図2は、図1の顕微鏡装置1の概略側面図である。
【0049】
図2に示すように、顕微鏡装置1においては、試料Mからの反射光は、ミラー25により反射され、レンズ格納部21のレンズを通して光軸変換部22の光軸変換ミラー22aにより反射される。光軸変換ミラー22aによる反射光は、電動ズーム鏡筒23を通してCCDカメラ24に取り込まれ、CCDカメラ24に試料Mの観察像が形成される。試料Mからの反射光がミラー25および光軸変換ミラー22aを通してCCDカメラ24に取り込まれるまでの経路は、点線LIで示されるように略逆L字形に形成されている。
【0050】
顕微鏡装置1のベース筐体部50を支持する脚部S1〜S4内にはそれぞれ弾性部材51が設けられている。この弾性部材51により振動が吸収され、顕微鏡装置1の除振性が向上される。なお、弾性部材51は、例えばバネ部材からなる。
【0051】
また、顕微鏡装置1の4本の脚部S1〜S4により形成される領域の中心に試料Mを載置する試料載置台30が設けられていることにより、顕微鏡装置1の除振性がさらに向上される。
【0052】
なお、本実施の形態に係る顕微鏡装置1においては、4本の脚部S1〜S4によりベース筐体部50が支持されているが、これに限定されるものではなく、少なくとも3本の脚部によりベース筐体部50が支持されてもよい。この場合、少なくとも3本の脚部により形成される領域の中心に試料載置台30が設けられる。
【0053】
また、ベース筐体部50による光学顕微鏡20の保持位置L2の高さ、ベース筐体部50上のAFMスキャナ11の載置位置L3の高さ、試料載置台30上の試料Mの観察位置L4の高さおよび脚部S1〜S4内に設けられた各弾性部材51とベース筐体部50との接合箇所L5の高さがほぼ同じ(図2の一点鎖線L1により示される高さ)に設定される。これにより、顕微鏡装置1の除振性がさらに向上される。
【0054】
次に、本実施の形態に係る顕微鏡装置1の制御系について説明する。なお、後述の図3に示す原子間力顕微鏡10の制御系はコンタクトモードを用いる場合の制御系を示している。
【0055】
ここで、コンタクトモードとは、原子間力顕微鏡10において、探針を試料に接触する位置まで近付けて試料表面に沿って走査させる測定モードである。
【0056】
図3は、本実施の形態に係る顕微鏡装置1のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【0057】
原子間力顕微鏡10は、板バネ状のカンチレバー100、探針101、圧電素子110、光源121、反射鏡122,123、光検出器124および制御部130を含む。
【0058】
原子間力顕微鏡1においては、探針101と試料Mとの間に生じる原子間力、すなわちカンチレバー100の変位量を検出する。
【0059】
カンチレバー100の先端には探針101が設けられている。この探針101を試料Mに近付けると、探針101と試料Mとの間に原子間力が生じ、カンチレバー100が上下方向にたわむ。
【0060】
AFMスキャナ11内に設けられた圧電素子110により試料M表面に沿った探針101の走査が行われる。圧電素子110は、試料M表面に沿って探針101を走査させるために、カンチレバー100をX軸およびY軸方向に移動させる。
【0061】
なお、探針101を固定した状態で試料載置台30をX軸およびY軸方向に移動させることにより、試料M表面に沿った探針101の走査を行ってもよい。また、圧電素子110の代わりにボイスコイルモータを用いてもよい。
【0062】
圧電素子110は、カンチレバー100の変位を一定に保つように、すなわち、探針101と試料Mとの間に生じる原子間力を一定に保つようにカンチレバー100をZ軸方向に動作させる。探針101と試料Mとの間の原子間力を一定に保つために圧電素子110に印加した電圧値の変化に基づいて、試料Mの3次元的な形状情報を画像化することが可能となる。
【0063】
なお、圧電素子110は、制御部130により制御される。制御部130は、中央演算処理装置(CPU)131、変位量検出部132、Z方向サーボ回路133およびX−Y方向サーボ回路134を含む。
【0064】
Z方向サーボ回路133は、カンチレバー100の探針101がZ軸方向に動作するように圧電素子110を制御する。また、X−Y方向サーボ回路134は、カンチレバー100の探針101がX軸方向およびY軸方向に移動するように圧電素子110を制御する。変位量検出部132については後述する。
【0065】
ここで、試料M表面の凹凸により生じるカンチレバー100の変位量を一定に保つための原子間力顕微鏡10における動作について説明する。
【0066】
カンチレバー100の微小なたわみ量(変位)を検出するために、光源121によりレーザ光がカンチレバー100の先端に照射される。なお、カンチレバー100の変位を検出するために、一般的に下記の光てこ方式が用いられる。
【0067】
光てこ方式とは、カンチレバー100の変位を測定する方法の一例であり、レーザ光をカンチレバー100に照射し、カンチレバー100からの反射光を光検出器124により検出するものである。
【0068】
カンチレバー100の微小な変位が、カンチレバー100からの反射光のわずかな角度変化に反映され、この角度変化が光検出器124により検出される。なお、光検出器124としては、2分割フォトセル、4分割フォトセルまたはフォトセルアレイ等が用いられる。また、カンチレバー100としては、半導体微細加工技術によりウエハ単位で生産されたカンチレバーの他、カンチレバーの一部に微小な反射用ガラス(反射鏡)を設けたものまたは光ファイバプローブ型カンチレバーの背面をフラットにして反射面を設けたもの等が用いられる。
【0069】
なお、本実施の形態では、光源121から出射されたレーザ光は、反射鏡122を介してカンチレバー100に照射され、カンチレバー100に照射されたレーザ光は反射光として反射鏡123を介して光検出器124により検出されるが、これに限定されるものではなく、反射鏡122および反射鏡123を設けずに、光源121から出射されたレーザ光を直接カンチレバー100に照射し、カンチレバー100に照射されたレーザ光を反射光として直接光検出器124により検出してもよい。
【0070】
光検出器124の出力信号は、制御部130の変位量検出部132に与えられる。変位量検出部132は、光検出器124の出力信号に基づいてカンチレバー100の変位量を検出する。
【0071】
制御部130のCPU131は、変位量検出部132により検出されたカンチレバー100の変位量に基づいて、この変位量を一定に保つように圧電素子110を制御する。
【0072】
制御部130にはCRT(陰極線管)等のディスプレイ40が接続されている。ディスプレイ40は、試料Mの3次元形状の画像を映し出す。
【0073】
なお、本実施の形態においては、原子間力顕微鏡10,10aの測定モードとして、コンタクトモードを用いているが、これに限定されるものではなく、探針101を試料Mに接触させることなく探針101を共振させ、試料M表面の近傍を走査させるノンコンタクトモードを用いてもよい。
【0074】
本実施の形態においては、光学顕微鏡20の電動ズーム鏡筒23が、試料載置台30の側方においてZ軸方向に延びるように配置され、光軸変換ミラー22aが電動ズーム鏡筒23の上端部に設けられ、CCDカメラ24が電動ズーム鏡筒23の下端部に設けられている。この場合、試料載置台30上に載置された試料Mからの反射光がミラー25により光軸変換ミラー22aに導かれ、光軸変換ミラー22aにより電動ズーム鏡筒23を通してCCDカメラ24に取り込まれる。このような構成により、顕微鏡装置1を高さ方向および横方向にコンパクト化することが可能となる。
【0075】
また、光学顕微鏡20が略逆L字状に構成されることにより光学顕微鏡20自体もコンパクト化されている。それにより、光学顕微鏡20と原子間力顕微鏡10,10aとを一体的に組み合わせた顕微鏡装置1をさらにコンパクト化することが可能となる。
【0076】
さらに、4本の脚部S1〜S4により安定に支持されベース筐体部50上にAFMスキャナ11が保持されているので、試料M表面に沿った探針101の走査を安定して行うことが可能となる。
【0077】
なお、本実施の形態においては、原子間力顕微鏡10,10aおよび光学顕微鏡20を一体的に構成しているが、例えば、顕微鏡装置1として磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope:MFM)または電気力顕微鏡(Electric Force Microscope:EFM)を用い、光学顕微鏡20および磁気力顕微鏡または光学顕微鏡20および電気力顕微鏡を一体的に構成することも可能である。
【0078】
磁気力顕微鏡では、強磁性体からなる探針101を用い、探針101を試料M表面から磁力のみが働く領域まで離す。そして、探針101と試料Mとの間に生じる磁力を測定し、探針101を試料M表面に沿って走査させることにより試料Mの3次元的な情報を得ることができる。
【0079】
電気力顕微鏡では、探針101に直流電流を流し、探針101を試料M表面から電気力のみが働く領域まで離す。そして、探針101と試料Mとの間に生じる電気力を測定し、探針101を試料M表面に沿って走査させることにより試料Mの3次元的な形状情報を得ることができる。
【0080】
本実施の形態においては、CCDカメラ24が撮像部に相当し、電動ズーム鏡筒23が鏡筒に相当し、ミラー25が第1の反射部材に相当し、光軸変換ミラー22aが第2の反射部材に相当し、ベース筐体部50が保持部に相当し、脚部S1〜S4が支持部および脚部に相当し、弾性部材51が除振機構および弾性部材に相当し、AFMスキャナ11が走査部に相当する。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、各種試料の表面形状の観察等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本実施の形態に係る顕微鏡装置を示す斜視図である。
【図2】図1の顕微鏡装置の概略側面図である。
【図3】本実施の形態に係る顕微鏡装置のコンタクトモードを用いる場合の制御系を示すブロック図である。
【図4】従来の顕微鏡装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
1 顕微鏡装置
10,10a 原子間力顕微鏡
11 AFMスキャナ
20 光学顕微鏡
22a 光軸変換ミラー
23 電動ズーム鏡筒
24 CCDカメラ
25 ミラー
26 ミラーホルダ
30,31 試料載置台
50 ベース筐体部
51 弾性部材
52a,52b,52c,52d 支持脚
53,53a,53d 被支持部
54 底部
100 カンチレバー
101 探針
110 圧電素子
130 制御部
131 CPU
132 変位量検出部
132a 振幅量検出部
LI 観察光軸
M 試料
S1,S2,S3,S4 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料が載置される試料載置台と、
探針を有し、前記試料載置台と前記探針とを相対的に移動させることにより前記探針を前記試料の表面に沿って走査させる走査型プローブ顕微鏡と、
撮像部、鏡筒、第1の反射部材および第2の反射部材を有する光学顕微鏡と、
前記走査型プローブ顕微鏡および前記光学顕微鏡を保持する保持部とを備え、
前記光学顕微鏡の前記鏡筒は前記試料載置台の側方において上下方向に延びるように配置され、前記第2の反射部材は前記鏡筒の上端部に設けられ、前記撮像部は前記鏡筒の下端部に設けられ、
前記試料載置台上に載置された前記試料からの光が前記第1の反射部材により前記第2の反射部材に導かれ、前記第2の反射部材により前記鏡筒を通して前記撮像部に導かれることを特徴とする顕微鏡装置。
【請求項2】
前記保持部を設置面上に支持する支持部と、
前記支持部に設けられ、前記設置面から前記保持部に伝わる振動を緩和する除振機構とをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の顕微鏡装置。
【請求項3】
前記支持部は、少なくとも3つの脚部を含み、
前記除振機構は、前記保持部と前記少なくとも3つの脚部との間にそれぞれ設けられた弾性部材を含むことを特徴とする請求項2記載の顕微鏡装置。
【請求項4】
前記試料載置台は、前記少なくとも3つの脚部により形成される領域の略中心に設けられたことを特徴とする請求項3記載の顕微鏡装置。
【請求項5】
前記走査型プローブ顕微鏡は、探針を保持する走査部を含み、
前記走査部は、前記保持部上に設けられたことを特徴とする請求項3または4記載の顕微鏡装置。
【請求項6】
前記少なくとも3つの弾性部材と前記保持部との接合箇所の高さ、前記保持部による前記光学顕微鏡の保持位置の高さ、前記保持部上の前記走査部の保持位置の高さおよび前記試料載置台上の前記試料の高さがほぼ等しく設定されたことを特徴とする請求項5記載の顕微鏡装置。
【請求項7】
前記走査型プローブ顕微鏡は、原子間力顕微鏡であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の顕微鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−23443(P2006−23443A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200353(P2004−200353)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】