風力発電システムおよびその制御方法
【課題】翼面上の流れを最適化および発電出力を向上させることができる風力発電システムおよびその制御方法を提供する。
【解決手段】実施形態の風力発電システム10は、ハブ41および翼42を備えるロータ40と、ロータ40を軸支するナセル31と、ナセル31を支持するタワー30と、翼42の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備えた気流発生装置60と、気流発生装置60の電極間に電圧を印加可能な放電用電源とを備える。さらに、風力発電システム10における出力、ロータ40におけるトルクおよび翼42の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、計測装置からの出力に基づいて放電用電源を制御する制御部を備える。
【解決手段】実施形態の風力発電システム10は、ハブ41および翼42を備えるロータ40と、ロータ40を軸支するナセル31と、ナセル31を支持するタワー30と、翼42の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備えた気流発生装置60と、気流発生装置60の電極間に電圧を印加可能な放電用電源とを備える。さらに、風力発電システム10における出力、ロータ40におけるトルクおよび翼42の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、計測装置からの出力に基づいて放電用電源を制御する制御部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力発電システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化防止の観点から、全地球規模で再生エネルギ発電システムの導入が進められており、そのような状況中、風力発電は普及が進められている発電方式の一つである。しかしながら、日本においては、風力発電の普及率は、欧州などに比べて低い。
【0003】
日本において風力発電が普及し難いのは、その地理的制約によるところが大きい。特に、日本においては山岳性気象であるため、風力および風向がめまぐるしく変化し、風力発電において安定した出力を維持することが困難となる。このようなことが原因となり、風車1台あたりの発電効率を低下させ、結果的に風力発電システムの導入コストを押し上げている。
【0004】
日本のような風速風向変動の激しい地域で大規模な風力発電を導入するためには、これらの問題を克服した耐変動型の風車開発が必須となる。そこで、誘電体を介して対向配置された電極間に電圧を印加して発生したプラズマによってプラズマ誘起流を発生させる気流発生装置を、風車の翼面に配設することで、風の変動に対応した制御が可能な風力発電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで、実際の回転場で気流発生装置を作動させ、風車効率に対する効果を確認した事例は示されていない。そのため、実際の風車において、最適な気流発生装置における電圧印加方法や、翼における失速状態を制御して効率の向上を図る運用方法などが確立が必要となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、翼面上の流れを最適化することができるとともに、発電出力を向上させることができる風力発電システムおよびその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の風力発電システムは、ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、前記ナセルを支持するタワーとを備える。
【0009】
さらに、風力発電システムは、前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、プラズマ誘起流を発生可能な気流発生装置と、前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、前記計測装置からの出力に基づいて、前記電圧印加機構を制御する制御手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一般的なの風車における軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図である。
【図2】一般的な風車における軸方向風速の変化を示した図である。
【図3】実施の形態の風力発電システムを示す斜視図である。
【図4】実施の形態の風力発電システムに設けられた気流発生装置を説明するための、翼の前縁部の断面を示した図である。
【図5】実施の形態の風力発電システムにおけるパルス変調制御の概要を説明するための図である。
【図6】実施の形態の風力発電システムの制御構成を模式的に示した図である。
【図7】実施の形態の風力発電システムの動作(制御例1)を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態の風力発電システムの動作(制御例2)を説明するためのフローチャートである。
【図9】前縁剥離型の単独翼の揚力係数Cと迎角αの関係を示す図である。
【図10】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置を作動させない場合(OFF)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図11】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図12】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図13】気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と時間との関係を示す図である。
【図14】気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【図15】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と時間との関係を示す図である。
【図16】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【図17】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)におけるfC/Uと出力との関係を示す図である。
【図18】実施の形態の風力発電システムにおける他の制御構成を模式的に示した図である。
【図19】発電機トルク目標値と、目標回転数と現状回転数の差との関係を示す図である。
【図20】流れの剥離状態の検出用動作時のロータトルクの時間変化を示す図である。
【図21】検出用動作および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【図22】検出用動作時およびその後のロータトルクの時間変化を示す図である。
【図23】検出用動作時および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
まず、一般的な風車における風速と風車の出力(発電量)との関係について説明する。図1は、一般的なの風車における軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図である。
【0013】
軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図をパワーカーブと呼ぶ。図1の横軸に示された、Viはカットイン軸方向風速、Vrは定格軸方向風速、Voはカットアウト軸方向風速である。カットイン軸方向風速Viは、風車が利用可能な動力を発生させる最小の軸方向風速であり、カットアウト軸方向風速Voは、風車が利用可能な動力を発生させる最大の軸方向風速である。なお、軸方向風速とは、風車の回転軸方向の風の速度成分である。
【0014】
風車は、軸方向風速がカットイン軸方向風速Vi以上で発電機の起動トルクに打ち勝って、回転を始め、図1に示すように、軸方向風速の増加とともに出力が増大する。出力が発電機の定格に達すると、それ以上の軸方向風速を受けても出力が増大しないように、翼のピッチを制御して出力を一定に抑えている。カットアウト軸方向風速Voを超え、翼やタワーを損傷するリスクが懸念される軸方向風速に達すると、翼が風から力を受けないようにピッチやヨーを制御して回転を止める。
【0015】
カットイン軸方向風速Viから定格軸方向風速Vrまでの領域を部分負荷領域、定格軸方向風速Vrを超え、カットアウト軸方向風速Voまでの領域を定格領域と呼ぶ。実際の風況では、部分負荷領域となる軸方向風速の出現確率が高いことや、部分負荷領域では、風のエネルギがそのまま出力に反映されることなどから、この部分負荷領域での翼の受風効率を向上させることが求められている。
【0016】
なお、パワーカーブには種々の定義があるが、以下の説明で用いるパワーカーブとは、定常風において設計周速比で運転した場合の出力を、各風速で理論的に求めた曲線のことをいい、設計上の理論最大出力を示すものである。また、風車の部分負荷領域においては、ある設計周速比を定め、その周速比において、各翼素が最大の揚抗比をもって運転されるように、翼のひねり、および翼のハブへの取付角が設計される。そして、常に設計周速度比で回転するように、発電機トルクが制御される。
【0017】
ここで、発明者らは、軸方向風速の変動がある場合に、図1に示されたパワーカーブによっては示せない事象が存在することを見出した。すなわち、図1における点Aで運転している状態において軸方向風速が増大したとき、パワーカーブ上の点Cではなく、それより出力の小さい点Bに移行することを見出した。そして、その後、同じ軸方向風速に長時間維持しても、点Bで安定することを見出した。
【0018】
また、軸方向風速の増大率を変えて試験を繰り返した。図2は、一般的な風車における軸方向風速の変化を示した図である。図2に示したV1のように軸方向風速が緩やかに増加する場合には、出力は、図1に示した点Cに移行するときのように、パワーカーブに沿って増加した。一方、図2に示したV2のように軸方向風速が急激に増加する場合には、出力は、図1に示した点Bに移行するときのように、パワーカーブから外れ、出力が増加しない状態となった。以下この状態を完全失速状態という。風速風向変動の激しい自然風下では、常にこのような様々な時定数の風速増大が起こっている。
【0019】
また、地面からの高さ方向に速度分布がある場合や、風向に対して風車回転面が正対していない場合においても、同様の現象が起こることを見出した。
【0020】
発明者らは、上記したような完全失速状態となるような現象を捉え、この完全失速状態となった場合においても、早急にその状態を解消して、パワーカーブに沿った出力が得られる制御が可能となる新しい知見を見出した。
【0021】
以下に、実施の形態の風力発電システム10について説明する。
【0022】
図3は、実施の形態の風力発電システム10を示す斜視図である。図4は、実施の形態の風力発電システム10に設けられた気流発生装置60を説明するための、翼42の前縁部の断面を示した図である。なお、以下において、同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0023】
図3に示すように、風力発電システム10において、地面20に設置されたタワー30の頂部には、発電機(図示しない)などを収容したナセル31が取付けられている。また、ナセル31から突出した発電機の回転軸にロータ40が軸支されている。
【0024】
ロータ40は、ハブ41、およびこのハブ41に取り付けられた翼42を備えている。また、翼42は、ピッチ角が変更可能に備えられている。なお、ここでは、3枚の翼42を備える一例を示しているが、翼42は、少なくとも2枚以上備えられていればよい。ナセル31の上面には、図3に示すように、風の風向や速度を計測する風向風速計50が設けられている。また、ここでは、翼42がピッチ角を変更可能に備えられた一例を示したが、ピッチ角を制御できない翼であってもよい。
【0025】
翼42の前縁部には、図4に示すように、気流発生装置60が設けられている。気流発生装置60は、第1の電極61と、この第1の電極61と誘電体63を介して離間して配設された第2の電極62とを備える。ここでは、第1の電極61を誘電体63の表面に設け、第2の電極62を誘電体63内に埋設した構成を有する気流発生装置60を示している。なお、誘電体63を構成する誘電材料については、特に限定されず、使用される用途や環境に応じて、公知な固体からなる誘電材料から適宜選択することができる。
【0026】
なお、気流発生装置60の構成は、これに限られるものではない。例えば、翼42に溝部を構成し、この溝部に、第1の電極61、第2の電極62および誘電体63からなる構成を嵌め込むように設置し、気流発生装置60が翼42の表面から突出しないように構成してもよい。この場合、翼42が、例えば、グラスファイバを合成樹脂により固形化したGFRP(グラスファイバ強化樹脂)などの誘電材料で構成されているときには、誘電体63として翼42自体を機能させることができる。すなわち、翼42の表面に直接第1の電極61を配設し、この第1の電極61と離間して翼42に第2の電極62を直接埋設することができる。
【0027】
ここで、例えば、第1の電極61の第2の電極62側の端縁が、翼42の前縁上となるように第1の電極61を配置し、第1の電極61よりも翼42の背側42aとなる位置に第2の電極62を配置することができる。なお、気流発生装置60の配置位置は、翼面に発生する剥離などを制御できる位置であればよく、特に限定されるものではないが、的確に流れを制御するためには、翼42の前縁部とすることが好ましい。
【0028】
このように気流発生装置60では、発生するプラズマ誘起流が第1の電極61側から第2の電極62側に向かって流れるように、第1の電極61および第2の電極62が配置されている。例えば、図4に示した気流発生装置60においては、プラズマ誘起流は、翼42の前縁から翼面の背側42aに向かって流れる。
【0029】
気流発生装置60は、例えば、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、複数個独立して配置される。この場合、各気流発生装置60は、それぞれ単独で制御され、例えば、第1の電極61と第2の電極62との間に印加される電圧を、各気流発生装置60ごとに制御することができる。なお、翼幅が小さい場合には、例えば、1つの気流発生装置60を、翼42の前縁部に翼幅方向に配置することもできる。
【0030】
第1の電極61および第2の電極62は、図4に示すように、それぞれケーブル配線64を介して、電圧印加機構として機能する放電用電源65に電気的に接続されている。この放電用電源65を起動することで、第1の電極61と第2の電極62との間に電圧が印加される。
【0031】
放電用電源65は、第1の電極61と第2の電極62との間に、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))のパルス変調制御された電圧や、交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧などを印加することができる。このように、放電用電源65は、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを変化させて、第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加することができる。
【0032】
例えば、複数の気流発生装置60を備える場合、放電用電源65は、各気流発生装置60ごとに備えられてもよいし、各気流発生装置60を独立して電圧制御できる機能を備える1つの電源で構成されてもよい。
【0033】
ここで、図5は、実施の形態の風力発電システム10におけるパルス変調制御の概要を説明するための図である。図5に示すように、放電用電源65からの印加電圧を所定時間オン(ON)、所定時間オフ(OFF)とする制御方法をパルス変調制御といい、その周波数をパルス変調周波数fという。また、図5に示された基本周波数とは、印加電圧の周波数である。
【0034】
例えば、電圧をパルス変調制御した際、次の式(1)の関係式を満たすように、パルス変調周波数fを設定することが好ましい。
【0035】
0.1≦fC/U≦9 …式(1)
【0036】
ここで、Cは、気流発生装置60が備えられた翼部における翼42の翼弦長である。Uは、気流発生装置60が備えられた翼部における、翼の周速度と風速とを合成した相対速度である。なお、図3に示すように、気流発生装置60を翼幅方向に複数備えた場合においても、1つの気流発生装置60は、翼幅方向に所定の幅を有している。そのため、1つの気流発生装置60においても、翼弦長Cや相対速度Uは、この気流発生装置60の幅方向に変化する。そこで、翼弦長Cや相対速度Uとして、各気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の平均値を使用することが好ましい。
【0037】
ここで、上記関係式を満たすようにパルス変調周波数fを設定することで、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0038】
次に、風力発電システム10の制御方法について説明する。
【0039】
(制御例1)
図6は、実施の形態の風力発電システム10の制御構成を模式的に示した図である。
【0040】
図6に示すように、風力発電システム10は、風速センサ100と、風向センサ101と、回転数センサ102と、制御部110と、制御データベース120と、放電用電源65と、ピッチ角度駆動機構130とを備えている。
【0041】
風速センサ100は、翼42に流入する風の速度を計測するセンサである。風向センサ101は、翼42に流入する風の風向を計測するセンサである。これらの風速センサ100や風向センサ101は、例えば、図3に示すように、ナセル31の上側面に設けられた風向風速計50などで構成される。
【0042】
回転数センサ102は、翼42(ロータ40)の回転数を計測するセンサであり、例えばナセル31内に設けられる。
【0043】
制御データベース120は、風速、風向、回転数などの計測値に基づいて特定するための、実出力(測定データに基づいて算出された出力または発電機における出力の計測値)、設定出力、設定迎角、ピッチ角度などのデータを記憶している。例えば、設定出力は、風車における出力と軸方向風速の関係を示すパワーカーブに係る情報として記憶させることができる。
【0044】
また、制御データベース120は、各気流発生装置60が備えられた翼部における、翼42の翼弦長(例えば、上記したように平均的な翼弦長)や翼42の翼根部から翼幅方向の距離(例えば、気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の平均値)などのデータを記憶している。また、制御データベース120には、前述した式(1)の関係式およびこの関係式が満たす範囲が記憶され、パルス変調周波数fを算出する際に利用される。
【0045】
この制御データベース120は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。また、制御データベース120には、図示しない、キーボード、マウス、外部入力インターフェースなどを介して、データの入力などが可能である。
【0046】
制御部110は、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102などの各センサから出力された情報および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、回転速度、相対速度、迎角、ピッチ角度、風力発電システム10における出力などを算出する。なお、風力発電システム10における出力は、発電機の出力の計測値を使用してもよい。また、風速センサ100から出力された情報、および制御データベース120に記憶されたパワーカーブに係る情報などに基づいて、予め設定された、風力発電システム10における設定出力などを特定する。
【0047】
また、制御部110は、上記算出結果に基づいて、放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130などを制御する。この制御部110は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などから主に構成され、CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。この制御部110が実行する処理は、例えばコンピュータ装置などで実現される。また、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102、制御データベース120、放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130、発電機などの各機器と電気信号の出入力が可能に接続されている。
【0048】
放電用電源65は、制御部110からの情報に基づいて、前述したように、第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧などを印加する。
【0049】
ピッチ角度駆動機構130は、制御部110からの情報に基づいて、翼42の回転数に応じて、翼42の角度を駆動制御する。なお、ピッチ角を制御できない翼を使用する場合には、ピッチ角度駆動機構130は不要となる。
【0050】
次に、風力発電システム10の動作(制御例1)について説明する。
【0051】
図7は、実施の形態の風力発電システム10の動作(制御例1)を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、気流発生装置60を複数個独立して配置した場合を例示して説明する。
【0052】
まず、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、風力発電システム10の実出力および軸方向風速を算出する(ステップS150)。
【0053】
なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。軸方向風速は、風速、風向などの計測情報に基づいて算出される。
【0054】
続いて、制御部110は、この実出力が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力と比較し、実出力が設定出力よりも低いか否かを判定する(ステップS151)。
【0055】
ここで、実出力が設定出力よりも低いとは、実出力が設定出力の、例えば80%を下回った場合をいう。
【0056】
ステップS151において、実出力が設定出力よりも低くないと判定した場合(ステップS151のNo)には、ステップS150の処理を再度実行する。
【0057】
一方、ステップS151において、実出力が設定出力よりも低いと判定した場合(ステップS151のYes)には、制御部110は、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えているか否かを判定する(ステップS152)。
【0058】
ここで、所定時間は、5〜10秒程度に設定される。この所定時間を設定することで、ロータの慣性による出力応答遅延と、剥離失速による出力低下を見分けることができる。また、持続的ではなく、瞬間的に実出力が設定出力よりも低い状態となる場合を除外することができる。
【0059】
ステップS152において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていないと判定した場合(ステップS152のNo)には、ステップS150の処理を再度実行する。
【0060】
一方、ステップS152において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていると判定した場合(ステップS152のYes)には、制御部110は、放電用電源65を作動させ、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させる(ステップS153)。
【0061】
なお、この際、前述した式(1)の関係式を満たすように、制御部110は、パルス変調周波数fを設定する。第1の電極61と第2の電極62との間が一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極61の近傍に放電が誘起される。このとき生成した電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。これによって、第1の電極61付近にプラズマ誘起流が発生する。
【0062】
続いて、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、気流発生装置60を作動した状態における風力発電システム10の、第2の実出力として機能する実出力および軸方向風速を算出する(ステップS154)。なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。
【0063】
続いて、制御部110は、この実出力(第2の実出力)が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における、第2の設定出力として機能する設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力(第2の実出力)と比較し、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する(ステップS155)。
【0064】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いとは、前述した場合と同様に、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%を下回った場合をいう。なお、制御部110は、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する代わりに、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%以上に達したか否かを判定してもよい。
【0065】
ステップS155において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いと判定した場合(ステップS155のYes)には、ステップS153からの処理を再度実行する。すなわち、気流発生装置60が作動されている状態が維持される。
【0066】
一方、ステップS155において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くないと判定した場合(ステップS155のNo)には、制御部110は、放電用電源65の作動を停止し、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間への電圧の印加を停止する(ステップS156)。
【0067】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くない状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、その状態を維持することができ、再度、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低い状態に移行することはない。そのため、気流発生装置60において消費されるエネルギを最小限に抑えることができる。
【0068】
なお、上記した風力発電システム10の動作(制御例1)では、複数備えられた気流発生装置60のいずれに対しても同じ制御がなされる一例を示している。
【0069】
このように、風力発電システム10を動作させることで、翼42の前縁の下流において流れが剥離して、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0070】
なお、ここでは、実出力と、理論パワーカーブ上の設定出力を比較して制御する例を示したが、これに限られるもではない。上記した制御は、例えば、実トルクと理論設定トルクとの比較、あるいは実回転数と理論設定回転数との比較することによっても実現できる。気流発生装置60が作動しているときの、実トルクは第2の実トルクとして、実回転数は第2の実回転数としてそれぞれ機能する。また、気流発生装置60が作動しているときの、設定トルクは第2の設定トルクとして、設定回転数は第2の設定回転数としてそれぞれ機能する。
【0071】
ここで、実トルクとは、ロータトルクを意味している。ロータトルクは、トルク計によって計測されてもよいし、下に示す関係式(2)、(3)を用いて実出力から算出されてもよい。
【0072】
Trot=I×dω/dt+Tgen …式(2)
Tgen=P/(2πω/60) …式(3)
【0073】
ここで、Trotはロータトルク、Tgenは発電機トルク、Iは慣性モーメント、ωは翼42(ロータ40)の回転数(rpm)、Pは実出力を示す。
【0074】
(制御例2)
ここでは、前述した制御例1の制御に加えて、翼42の前縁における迎角に基づく制御を加え、気流発生装置60を個々に制御する構成としている。なお、風力発電システム10の制御構成は、図6に示した構成と同じである。
【0075】
風力発電システム10の動作(制御例2)について説明する。
【0076】
図8は、実施の形態の風力発電システム10の動作(制御例2)を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、気流発生装置60を複数個独立して配置した場合を例示して説明する。
【0077】
まず、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、風力発電システム10の実出力および軸方向風速を算出する(ステップS160)。
【0078】
なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。軸方向風速は、風速、風向などの計測情報に基づいて算出される。
【0079】
続いて、制御部110は、この実出力が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力と比較し、実出力が設定出力よりも低いか否かを判定する(ステップS161)。
【0080】
ここで、実出力が設定出力よりも低いとは、実出力が設定出力の、例えば80%を下回った場合をいう。
【0081】
ステップS161において、実出力が設定出力よりも低くないと判定した場合(ステップS161のNo)には、ステップS160の処理を再度実行する。
【0082】
一方、ステップS161において、実出力が設定出力よりも低いと判定した場合(ステップS161のYes)には、制御部110は、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えているか否かを判定する(ステップS162)。
【0083】
ここで、所定時間は、5〜10秒程度に設定される。この所定時間を設定することで、ロータの慣性による出力応答遅延と、剥離失速による出力低下を見分けることができる。また、持続的ではなく、瞬間的に実出力が設定出力よりも低い状態となる場合を除外することができる。
【0084】
ステップS162において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていないと判定した場合(ステップS162のNo)には、ステップS160の処理を再度実行する。
【0085】
一方、ステップS162において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていると判定した場合(ステップS162のYes)には、制御部110は、入力された計測情報および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、迎角を算出する(ステップS163)。
【0086】
ここで、迎角は、各気流発生装置60が設けられた翼幅方向の各位置における翼素に対して算出される。例えば、翼42の前縁の翼幅方向に5個の気流発生装置60が独立して設けられている場合には、各気流発生装置60が設けられた翼幅方向の5箇所における翼素に対して迎角が算出される。なお、1つの気流発生装置60は、翼幅方向に所定の幅を有しているため、迎角として、例えば、1つの気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の迎角の平均値を、その1つの気流発生装置60が設けられた部分の迎角として使用することが好ましい。なお、翼素とは、翼42の翼幅方向に対して垂直な翼42の断面を意味する。
【0087】
続いて、制御部110は、この迎角が算出されたときの風速および翼42の回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して算出された迎角と比較する。予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角として、例えば、前縁形状、翼型、翼弦長、レイノルズ数などに基づいて決まる、失速が生じる角度(失速迎角)を使用する。そして、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいか否かを判定する(ステップS164)。
【0088】
ここで、前述したように、迎角は、各気流発生装置60が設けられた部分のそれぞれの翼素に対して算出されるため、設定された迎角も、その各翼素に対応する迎角を使用する。すなわち、ステップS164の判定は、各翼素ごとに行われる。そのため、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定される翼素や、算出された迎角が設定された迎角以下であると判定される翼素が存在する。
【0089】
ステップS164において、算出された迎角が設定された迎角以下であると判定された場合(ステップS164のNo)には、その翼素に対しては、ステップS160からの処理を再度実行する。
【0090】
一方、ステップS164において、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された場合(ステップS164のYes)には、制御部110は、その翼素に対する放電用電源65を作動させ、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させる(ステップS165)。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60のみが選択的に作動される。
【0091】
なお、この際、前述した式(1)の関係式を満たすように、制御部110は、各気流発生装置のパルス変調周波数fを設定する。
【0092】
続いて、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、気流発生装置60を作動した状態における風力発電システム10の、第2の実出力として機能する実出力および軸方向風速を算出する(ステップS166)。なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。
【0093】
なお、迎角は、各気流発生装置60が設けられた部分のそれぞれの翼素に対して算出されるが、風力発電システム10の出力は、風力発電システム10全体として得られる1つの値である。
【0094】
続いて、制御部110は、この実出力(第2の実出力)が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における、第2の設定出力として機能する設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力(第2の実出力)と比較し、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する(ステップS167)。
【0095】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いとは、前述した場合と同様に、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%を下回った場合をいう。なお、制御部110は、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する代わりに、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%以上に達したか否かを判定してもよい。
【0096】
ステップS167において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いと判定した場合(ステップS167のYes)には、ステップS165からの処理を再度実行する。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60のみが選択的に作動されている状態が維持される。
【0097】
一方、ステップS167において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くないと判定した場合(ステップS167のNo)には、制御部110は、放電用電源65の作動を停止し、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間への電圧の印加を停止する(ステップS168)。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60の作動が停止される。
【0098】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くない状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、その状態を維持することができ、再度、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低い状態に移行することはない。そのため、気流発生装置60において消費されるエネルギを最小限に抑えることができる。
【0099】
上記した風力発電システム10の動作(制御例2)では、条件に応じて、複数備えられた気流発生装置60を個々に独立して選択的に制御することができる。このように、風力発電システム10を動作させることで、翼42の前縁の下流において流れが剥離して、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0100】
(その他の制御例)
図18は、実施の形態の風力発電システム10における他の制御構成を模式的に示した図である。図18に示すように、制御構成は、計測部180、制御部181、制御データベース182から構成される。
【0101】
計測部180には、翼素状態計測部、環境情報計測部、風車状態計測部、発電機状態計測部が含まれる。翼素状態計測部では、対称とする翼素のアジマス角が計測される。環境情報計測部では、気圧、気温、風速、風向、乱流強度が計測される。風車状態計測部では、ロータトルク、回転数、ヨー角が計測される。発電機状態計測部では、電圧、電流、出力、発電機トルクが計測される。
【0102】
制御データベース182には、対象翼素ごとの半径位置、翼型、翼弦長、ひねり、翼の設定角、ハブ高さ、各翼型の失速角(失速迎角を含む)などの風車形状のパラメータが格納されている。
【0103】
制御部181は、上記した計測情報およびパラメータを用いて、動粘度、流入速度、レイノルズ数、マッハ数、迎角などの各種物理量を演算する。そして、制御部181は、演算した結果に基づいて、放電用電源、ピッチ角度駆動機構、ヨー角度駆動機構、発電機制御機構、系統連携制御機構を制御する制御信号を出力する。
【0104】
ここで、放電用電源、ピッチ角度駆動機構は、前述した放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130と同様の機能を有する。また、制御部181は、前述した制御部110と同様の構成を備える。ヨー角度駆動機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、ヨオー駆動モータを制御して、タワー30に対するナセル31の水平方向の首ふり角度を設定する。発電機制御機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、発電機の巻き線電流を、それに接続されたインバータ、コンバータの設定値を調整することなどで調整し、発電機のトルクを制御する。系統連携制御機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、所外の系統へ接続されている端子の電圧を制御することにより、系統への通電量を制御する。
【0105】
この制御構成を用いた制御例として、所定の翼素の、現状の迎角と、失速が生じる迎角(失速迎角)が決定され、それらの比較結果に基づいて、放電用電源が制御される手順を次に示す。
【0106】
まず、制御部181は、翼素の半径位置とアジマス角の計測値、ハブ高さの情報に基づいて、翼素の高度を算出し、風速および風向の計測値とヨー角の計測値を合わせて、翼素位置における自然風の風速および風向を算出する。
【0107】
制御部181は、翼素の半径位置と回転数から回転による相対風の風速および風向を算出する。制御部181は、これらと、翼の取付角、ひねりの情報を合わせて、翼素に対する相対風の、その瞬間における流入速度と迎角を算出する。
【0108】
また、制御部181は、気温と気圧の計測情報から動粘度を算出し、翼素の翼弦長と、上記算出された翼素に対する相対風の流入速度から、レイノルズ数とマッハ数を算出する。制御部181は、これらと、乱流強度の計測値、翼素の翼型の情報をもとに、この翼素における失速を生じる迎角を参照し、設定された迎角として採用する。
【0109】
制御部181は、算出された迎え角と設定された迎角とを比較し、算出した迎え角が、設定された迎角より大きいと判定された場合、翼面での剥離が生じていると判定し、この翼素に放電を生じるように、放電用電源を動作させる。このとき、放電用電源のパルス変調周波数fは、後述するように、前述した流入速度をU、翼弦長をCとして、fC/Uが所定の範囲になるように設定される。
【0110】
このように、この制御構成を用いることにより、翼面に剥離を検出するセンサを備えることなく、各翼素における剥離の有無を判定し、それによって放電用電源の駆動を制御することが可能となり、システムの信頼性の向上やシステムの低コスト化を図ることができる。
【0111】
(回転数に基づく制御)
上記した制御構成を用いた別の制御例として、回転数の計測値を用いた気流発生装置の制御方法の例を示す。図19は、発電機トルク目標値と、目標回転数と現状回転数の差との関係を示す図である。
【0112】
まず、周速比一定制御での発電機の制御の例を示す。周速比一定制御とは、前述したように、部分負荷領域において、風速風向の変動があっても、常に設計周速比で運転されるように、発電機トルクを制御することをいう。
【0113】
制御部181は、所定の時間間隔の間の風速の平均値から、目標周速比を達成するための回転数を算出し、算出された回転数を目標回転数とする。
【0114】
続いて、制御部181は、図19に示すように、発電機トルク目標値を縦軸、現状回転数から目標回転数を引いた回転数差(Δω)を横軸とする、制御曲線を設定する。ここで、回転数差(Δω)に応じて、縦軸の発電機トルク目標値に設定される。
【0115】
図19に示された制御曲線は、例えば、シグモイド関数に基づいて設定することができる。このシグモイド関数に基づく制御曲線の一方は、発電機トルク目標値の上限値に漸近し、制御曲線の他方は、発電機トルク目標値の下限値に漸近している。
【0116】
現状回転数が目標回転数よりも大きいとき(回転数差(Δω)が0より大きいとき)には、制御部181は、制御曲線に基づいて発電機トルク目標値を増加させ、現状回転数を減少させ、目標回転数に近づけるための制御を行う。
【0117】
一方、現状回転数が目標回転数よりも小さいとき(回転数差(Δω)が0より小さいとき)には、制御部181は、制御曲線に基づいて発電機トルク目標値を減少させ、現状回転数を増加させ、目標回転数に近づけるための制御を行う。
【0118】
ここで、現状回転数が目標回転数と等しいとき(回転数差(Δω)が0のとき)には、発電機トルク目標値が、目標回転数でのロータトルクの理論値と一致する。
【0119】
上記したように、制御部181は、風速と現状回転数の計測値から、発電機トルク目標値を算出し、この発電機トルク目標値を発生させるように、発電機または負荷を制御する。
【0120】
このような発電機の制御をする際、制御部181は、現状回転数が目標回転数よりも小さい領域にあるときに、放電用電源を作動(ON)させる。翼面で剥離が生じている場合は、剥離が抑制され、翼素の揚力が増加し、ロータトルクが増加し、より早く目標回転数に到達することが可能になる。また、制御部181は、現状回転数が目標回転数よりも大きい場合は、放電用電源は作動されない(OFF)。これによって、ロータトルクが減少し、より早く目標回転数に到達することが可能になる。
【0121】
ここで、放電用電源を作動させるとは、気流発生装置60において、連続またはパルス変調制御でプラズマ誘起流を発生させることを意味し、放電用電源を作動させないとは、気流発生装置60において、連続またはパルス変調制御においてもプラズマ誘起流を発生させないことを意味する。
【0122】
(ロータトルクに基づく制御)
次に、前述した制御構成を用いた別の制御例として、ロータトルクの計測値を用いた気流発生装置の制御の例を示す。ここでは、ロータトルクは、トルク計を用いて計測されてもよいし、前述した式(2)から算出された値を用いてもよい。
【0123】
制御部181は、回転数、発電機トルクの計測値を用いて、ロータトルクを算出する。ここで、発電機トルクは、トルク計を用いて計測されてもよいし、前述した式(3)から算出された値を用いてもよい。なお、出力Pは、電力計を用いて計測されたものでもよいし、電圧、電流の計測値の積を用いてもよい。
【0124】
ここでは、後に説明するが、放電用電源の動作は、剥離状態の検出用動作および流れ制御用動作の双方の機能を備えている。
【0125】
図20は、本制御例における、流れの剥離状態の検出用動作時のロータトルクの時間変化を示す図である。図21は、検出用動作および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【0126】
まず、自然風の変動により、ロータトルクが変動しながら推移している状態での検出用動作を説明する。図20に示すように、制御部181は、時刻t0において、放電用電源を時間Texamの間作動(ON)する。この際、翼面で流れの剥離が発生している場合には、放電用電源が作動することで翼の揚力が向上するため、ロータトルクが増大する。なお、ロータトルクが増大しない場合には、翼面での流れの剥離は発生していないこととなる。
【0127】
そこで、制御部181は、図20の(a)、(b)に示すように、放電用電源を作動するタイミング(時刻t0)の前の時間Δt1間、および放電用電源を作動するタイミングの後の時間Δt2間のそれぞれにおけるロータトルクの平均値を算出する。そして、制御部181は、時間Δt1間と時間Δt2間におけるロータトルクの平均値を比較する。
【0128】
ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値以上となる場合(図20の(a))、放電用電源を作動させることによる効果が得られていることとなる。すなわち、図20の(a)に示すように、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値以上となる場合、放電用電源を作動させる前において、流れの剥離が発生していたと判定する。
【0129】
一方、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値を超えない場合(図20の(b))、放電用電源を作動させることによる効果が得られない状態、すなわち放電用電源を作動させる前において、流れの剥離が発生してない状態であると判定する。
なお、放電用電源を時間Texamの間作動する状態が、図21では、検出用動作がONの状態である。
【0130】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図21の制御用動作Bに示すように、検出用動作後においても所定時間連続して、放電用電源を作動させる。そして、制御部181は、所定時間経過後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0131】
一方、制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していないと判定した場合、図21の制御用動作Aに示すように、所定時間、放電用電源を作動させない。そして、制御部181は、所定時間経過後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0132】
このように、検出用動作時のロータトルクの時間変化を検知することで、流れの剥離の有無を検知することができる。さらに、この検知結果に基づき、気流発生装置60を動作させることで、流れを制御して流れの剥離を消滅させることができる。
【0133】
次に、検出用動作によって流れの剥離状態を検知した後、流れが剥離したままの状態であるのか、付着した状態となっているのかを判定する動作を備えた制御例について説明する。図22は、本制御例における、検出用動作時およびその後のロータトルクの時間変化を示す図である。図23は、検出用動作時および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【0134】
ここでは、検出用動作において、流れの剥離が発生していると判定された場合の動作について説明するが、図23には、検出用動作において、流れの剥離が発生していないと判定した場合における制御用動作Aも示している。
【0135】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図23の制御用動作Cに示すように、放電用電源を時間Texamの間作動後、一旦、放電用電源の作動を停止する。
【0136】
ここで、翼面で流れの剥離が発生している場合には、放電用電源を停止することで翼の揚力が低下し、ロータトルクが減少する。なお、ロータトルクが減少しない場合には、翼面での流れの剥離は消滅していることとなる。
【0137】
そこで、制御部181は、図22の(a)、(b)に示すように、放電用電源を停止する(時刻t0からTexam後)の前の時間Δt3間、および放電用電源を停止した後の時間Δt4間のそれぞれにおけるロータトルクの平均値を算出する。そして、制御部181は、時間Δt3間と時間Δt4間におけるロータトルクの平均値を比較する。
【0138】
ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値以上となる場合(図22の(a))、流れの剥離が発生していると判定する。
【0139】
一方、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値を超えない場合(図22の(b))、流れは翼面に付着した流れとなり、流れの剥離は消滅したと判定する。
【0140】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図23の制御用動作Cに示すように、所定時間、放電用電源を作動させる。そして、所定時間経過後に放電用電源を停止し、その後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0141】
なお、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値以上となる場合、制御部181は、図23の制御用動作Dに示すように、検出用動作を繰り返し行うように、放電用電源を作動させてもよい。この場合には、例えば、毎回の検出用動作に対して、上記したロータトルクの平均値の差(ΔTr2)を検出して、流れの剥離の有無を検知してもよい。また、検出用動作を所定の回数行った後に、上記したロータトルクの平均値の差(ΔTr2)を検出して、流れの剥離の有無を検知してもよい。
【0142】
このように、検出用動作時のロータトルクの時間変化を検知することで、検出用動作の前後における流れの剥離の有無を検知することができる。さらに、検出用動作後における流れの剥離の有無を検知することができるので、検出用動作後においても流れの剥離が生じているときに限って、放電用電源、すなわち気流発生装置60を効果的に作動させることができる。そして、気流発生装置60を動作させることで、流れを制御して流れの剥離を消滅させることができる。
【0143】
ここで、翼上に気流発生装置60が複数設置されている場合、所定の気流発生装置60において、検出用動作と制御用動作の双方を行ってもよい。また、検出用動作を行う気流発生装置60と、制御用動作を行う気流発生装置60とを異なるものとしてもよい。検出用動作を行う気流発生装置60の個数を削減することで、消費電力の低減を図ることができる。
【0144】
なお、上記した、制御例では、検出用動作によって剥離状態を検出する場合の計測値としてロータトルクを用いているが、出力や回転数を計測値として用いても、同様の制御が可能である。
【0145】
(気流発生装置60に印加する電圧の影響)
(1)揚力係数Cと迎角αの関係
図9は、前縁剥離型の単独翼の揚力係数Cと迎角αの関係を示す図である。図9に示した結果は、2次元翼の風洞試験により得られた結果である。
【0146】
ここで、単独翼の前縁には、図4に示した構成と同様に、気流発生装置60が備えられている。図9には、失速した際に、気流発生装置60を作動させない場合(OFF)、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御を行わずに、連続的に電圧を印加した場合(連続)が示されている。
【0147】
前縁剥離型の翼における揚力特性では、迎角αが閾値を越えると揚力係数Cが大幅に低下する失速現象が生じる。失速現象が生じた、翼の背側(負圧側)の翼面では、後述するが大規模な剥離が生じている。
【0148】
気流発生装置60を作動させると、連続およびパルスのいずれも場合おいても、失速が生じる迎角αが大きくなる。しかしながら、連続の場合とパルスの場合とで、揚力係数Cに対する迎角αが異なっている。連続の場合、失速が生じる迎角αが大きくなり、最大の揚力係数Cが増加するが、さらに迎角αを増加させるといずれ失速を生じ、揚力係数Cが急激に低下している。
【0149】
一方、パルスの場合は、OFFの場合において失速する迎角αよりも大きい側の領域において、迎角αの増加に伴う揚力係数Cの減少率が、OFFの場合における迎角αの増加に伴う揚力係数Cの減少率よりも小さくなっている。すなわち、揚力係数Cの減少率が小さいことがわかる。
【0150】
図10は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60を作動させない場合(OFF)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。図11は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。図12は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【0151】
図10〜図12に示された流れは、PIV(Particle Image Velocimetry)を使用して計測した結果である。
【0152】
OFFの場合には、翼の前縁下流の背側(負圧側)で、大規模な剥離が生じていることがわかる。連続の場合、図11に示すように、完全に流れが付着していることがわかる。パルスの場合には、図12に示すように、完全な付着ではないが、流れを引き寄せる効果があることがわかる。このように、連続の場合とパルスの場合とでは、気流制御効果として大きく異なる現象が生じているがわかる。
【0153】
(2)実機による検証
ここでは、実機である小型風車の翼に気流発生装置60を配置して風洞試験を行い、気流発生装置60に印加する電圧の影響を調べた。
【0154】
風洞として、定格風量が1200m3/min、定格圧力が11.8kPaの吹き出し型風洞を使用した。風洞の出口に縮流部を設け、速度が10m/sのまでの通風を可能とした。
【0155】
小型風車として、市販の小型風車を改造した小型風車モデルを使用した。小型風車として、風洞の出口のサイズに対応させて、木製の3枚の翼を有し、風車直径が1.6m、出力が300W用の風車を採用した。小型風車を、ヨー角が0度で、風洞の出口から770mmの位置に配置した。この小型風車の定格は、風速が12.5m/sにおいて発電量が300Wである。なお、主流速度は、ピトー管および熱電対を用いて計測した。
【0156】
各翼の前縁部に、それぞれ1つの気流発生装置60を翼幅方向に配置した。この際、図4に示すように、第1の電極61の第2の電極62側の端縁が、翼の前縁上となるように第1の電極61を配置し、第1の電極61よりも翼の背側42aとなる位置に第2の電極62を配置した。誘電体である、厚さが250μmのポリイミド樹脂上に、長さが610mmの第1の電極61を配置した。プラズマ誘起流が翼の背面側に向けて生じるように、第2の電極62をポリイミド樹脂内に配置した。
【0157】
ハブと発電機との間の回転軸上に、放電用電源65、スリップリングを配置した。回転数を計測するためのエンコーダを配置した。外部から、入力が0〜100VAC、変調信号が5VDCをスリップリングを介して放電用電源65に入力した。電源トランスからの高電圧出力は、20kV耐圧の高電圧用のケーブル配線64を用い、ノーズコーン内に配線した。放電用電源65における高電圧振幅は、入力電圧をスライダックで変化させることによって調整した。
【0158】
パルス変調制御を行う場合、パルス変調時のデューティ比を10%に固定し、パルス変調周波数fを1〜900Hzの範囲で変化させた。
【0159】
発電機の発電電圧は、風車のタワー軸内を通して外部に導出されている配線の両端に負荷としてエレマ抵抗Rを接続し、この抵抗の両端電圧で発電機出力を評価した。
【0160】
試験では、まず、風車が低速で回転している状態から風速を増加させ、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となるように、軸方向風速の増加率を調整した。この完全失速状態において、気流発生装置60を作動させた。試験結果を図13〜図16に示す。
【0161】
図13は、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と時間との関係を示す図である。図14は、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。図15は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と時間との関係を示す図である。図16は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【0162】
なお、図13および図15の横軸のt0は、気流発生装置60を作動させたときを示している。また、図15および図16では、前述した式(1)で示されるfC/Uが1となるように、パルス変調周波数fを調整したときの結果を示している。
【0163】
図13に示すように、連続の場合、t0において出力が10%程度増加した。この効果をパワーカーブ上にプロットすると、図14に示すようになり、完全失速状態の点Bから点B1に移行したが、出力の向上はわずかであることがわかった。
【0164】
図15に示すように、パルスの場合、t0において出力がわずかに増加した後、数分間の間に出力が徐々に増加し、もとの出力の8倍程度まで増加し、その後飽和した。このときの効果をパワーカーブ上にプロットすると、図16に示すようになり、完全失速状態の点Bからパワーカーブ上の点Cに移行することがわかった。また、点Cの状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、状態は点Cにとどまり、再度点Bに移行することはなかった。
【0165】
次に、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)において、パルス変調周波数fを変化させて、前述した式(1)のfC/Uと出力との関係を調べた。
【0166】
この試験においても、まず、風車が低速で回転している状態から風速を増加させ、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となるように、軸方向風速の増加率を調整した。この完全失速状態において、気流発生装置60を作動させた。図17は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)におけるfC/Uと出力との関係を示す図である。
【0167】
図17に示すように、fC/Uの値が0.1〜9の範囲では、完全失速状態の点Bからパワーカーブ上の点Cに移行する現象が生じ、高い出力が得られることがわかった。また、点Cの状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、状態は点Cにとどまり、再度点Bに移行することはなかった。
【0168】
以上説明した実施形態によれば、翼面上の流れを最適化することができるとともに、発電出力を向上させることが可能となる。本実施の形態では、翼のピッチ角を制御可能な風力発電システムに一例を示したが、式(1)のfC/Uの関係は、ピッチ角を制御の有無に関係なく成立する。そのため、式(1)のfC/Uの関係は、翼のピッチ角の制御機構を有さない風力発電システムにおいても適用することができる。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
10…風力発電システム、20…地面、30…タワー、31…ナセル、40…ロータ、41…ハブ、42…翼、42a…背側、50…風向風速計、60…気流発生装置、61…第1の電極、62…第2の電極、63…誘電体、64…ケーブル配線、65…放電用電源、100…風速センサ、101…風向センサ、102…回転数センサ、110,181…制御部、120…制御データベース、130…ピッチ角度駆動機構、180…計測部、182…制御データベース。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力発電システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化防止の観点から、全地球規模で再生エネルギ発電システムの導入が進められており、そのような状況中、風力発電は普及が進められている発電方式の一つである。しかしながら、日本においては、風力発電の普及率は、欧州などに比べて低い。
【0003】
日本において風力発電が普及し難いのは、その地理的制約によるところが大きい。特に、日本においては山岳性気象であるため、風力および風向がめまぐるしく変化し、風力発電において安定した出力を維持することが困難となる。このようなことが原因となり、風車1台あたりの発電効率を低下させ、結果的に風力発電システムの導入コストを押し上げている。
【0004】
日本のような風速風向変動の激しい地域で大規模な風力発電を導入するためには、これらの問題を克服した耐変動型の風車開発が必須となる。そこで、誘電体を介して対向配置された電極間に電圧を印加して発生したプラズマによってプラズマ誘起流を発生させる気流発生装置を、風車の翼面に配設することで、風の変動に対応した制御が可能な風力発電システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−25434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これまで、実際の回転場で気流発生装置を作動させ、風車効率に対する効果を確認した事例は示されていない。そのため、実際の風車において、最適な気流発生装置における電圧印加方法や、翼における失速状態を制御して効率の向上を図る運用方法などが確立が必要となる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、翼面上の流れを最適化することができるとともに、発電出力を向上させることができる風力発電システムおよびその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の風力発電システムは、ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、前記ナセルを支持するタワーとを備える。
【0009】
さらに、風力発電システムは、前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、プラズマ誘起流を発生可能な気流発生装置と、前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、前記計測装置からの出力に基づいて、前記電圧印加機構を制御する制御手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一般的なの風車における軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図である。
【図2】一般的な風車における軸方向風速の変化を示した図である。
【図3】実施の形態の風力発電システムを示す斜視図である。
【図4】実施の形態の風力発電システムに設けられた気流発生装置を説明するための、翼の前縁部の断面を示した図である。
【図5】実施の形態の風力発電システムにおけるパルス変調制御の概要を説明するための図である。
【図6】実施の形態の風力発電システムの制御構成を模式的に示した図である。
【図7】実施の形態の風力発電システムの動作(制御例1)を説明するためのフローチャートである。
【図8】実施の形態の風力発電システムの動作(制御例2)を説明するためのフローチャートである。
【図9】前縁剥離型の単独翼の揚力係数Cと迎角αの関係を示す図である。
【図10】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置を作動させない場合(OFF)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図11】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図12】翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【図13】気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と時間との関係を示す図である。
【図14】気流発生装置に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【図15】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と時間との関係を示す図である。
【図16】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【図17】気流発生装置にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)におけるfC/Uと出力との関係を示す図である。
【図18】実施の形態の風力発電システムにおける他の制御構成を模式的に示した図である。
【図19】発電機トルク目標値と、目標回転数と現状回転数の差との関係を示す図である。
【図20】流れの剥離状態の検出用動作時のロータトルクの時間変化を示す図である。
【図21】検出用動作および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【図22】検出用動作時およびその後のロータトルクの時間変化を示す図である。
【図23】検出用動作時および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
まず、一般的な風車における風速と風車の出力(発電量)との関係について説明する。図1は、一般的なの風車における軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図である。
【0013】
軸方向風速と風車の出力(発電量)との関係を示す図をパワーカーブと呼ぶ。図1の横軸に示された、Viはカットイン軸方向風速、Vrは定格軸方向風速、Voはカットアウト軸方向風速である。カットイン軸方向風速Viは、風車が利用可能な動力を発生させる最小の軸方向風速であり、カットアウト軸方向風速Voは、風車が利用可能な動力を発生させる最大の軸方向風速である。なお、軸方向風速とは、風車の回転軸方向の風の速度成分である。
【0014】
風車は、軸方向風速がカットイン軸方向風速Vi以上で発電機の起動トルクに打ち勝って、回転を始め、図1に示すように、軸方向風速の増加とともに出力が増大する。出力が発電機の定格に達すると、それ以上の軸方向風速を受けても出力が増大しないように、翼のピッチを制御して出力を一定に抑えている。カットアウト軸方向風速Voを超え、翼やタワーを損傷するリスクが懸念される軸方向風速に達すると、翼が風から力を受けないようにピッチやヨーを制御して回転を止める。
【0015】
カットイン軸方向風速Viから定格軸方向風速Vrまでの領域を部分負荷領域、定格軸方向風速Vrを超え、カットアウト軸方向風速Voまでの領域を定格領域と呼ぶ。実際の風況では、部分負荷領域となる軸方向風速の出現確率が高いことや、部分負荷領域では、風のエネルギがそのまま出力に反映されることなどから、この部分負荷領域での翼の受風効率を向上させることが求められている。
【0016】
なお、パワーカーブには種々の定義があるが、以下の説明で用いるパワーカーブとは、定常風において設計周速比で運転した場合の出力を、各風速で理論的に求めた曲線のことをいい、設計上の理論最大出力を示すものである。また、風車の部分負荷領域においては、ある設計周速比を定め、その周速比において、各翼素が最大の揚抗比をもって運転されるように、翼のひねり、および翼のハブへの取付角が設計される。そして、常に設計周速度比で回転するように、発電機トルクが制御される。
【0017】
ここで、発明者らは、軸方向風速の変動がある場合に、図1に示されたパワーカーブによっては示せない事象が存在することを見出した。すなわち、図1における点Aで運転している状態において軸方向風速が増大したとき、パワーカーブ上の点Cではなく、それより出力の小さい点Bに移行することを見出した。そして、その後、同じ軸方向風速に長時間維持しても、点Bで安定することを見出した。
【0018】
また、軸方向風速の増大率を変えて試験を繰り返した。図2は、一般的な風車における軸方向風速の変化を示した図である。図2に示したV1のように軸方向風速が緩やかに増加する場合には、出力は、図1に示した点Cに移行するときのように、パワーカーブに沿って増加した。一方、図2に示したV2のように軸方向風速が急激に増加する場合には、出力は、図1に示した点Bに移行するときのように、パワーカーブから外れ、出力が増加しない状態となった。以下この状態を完全失速状態という。風速風向変動の激しい自然風下では、常にこのような様々な時定数の風速増大が起こっている。
【0019】
また、地面からの高さ方向に速度分布がある場合や、風向に対して風車回転面が正対していない場合においても、同様の現象が起こることを見出した。
【0020】
発明者らは、上記したような完全失速状態となるような現象を捉え、この完全失速状態となった場合においても、早急にその状態を解消して、パワーカーブに沿った出力が得られる制御が可能となる新しい知見を見出した。
【0021】
以下に、実施の形態の風力発電システム10について説明する。
【0022】
図3は、実施の形態の風力発電システム10を示す斜視図である。図4は、実施の形態の風力発電システム10に設けられた気流発生装置60を説明するための、翼42の前縁部の断面を示した図である。なお、以下において、同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0023】
図3に示すように、風力発電システム10において、地面20に設置されたタワー30の頂部には、発電機(図示しない)などを収容したナセル31が取付けられている。また、ナセル31から突出した発電機の回転軸にロータ40が軸支されている。
【0024】
ロータ40は、ハブ41、およびこのハブ41に取り付けられた翼42を備えている。また、翼42は、ピッチ角が変更可能に備えられている。なお、ここでは、3枚の翼42を備える一例を示しているが、翼42は、少なくとも2枚以上備えられていればよい。ナセル31の上面には、図3に示すように、風の風向や速度を計測する風向風速計50が設けられている。また、ここでは、翼42がピッチ角を変更可能に備えられた一例を示したが、ピッチ角を制御できない翼であってもよい。
【0025】
翼42の前縁部には、図4に示すように、気流発生装置60が設けられている。気流発生装置60は、第1の電極61と、この第1の電極61と誘電体63を介して離間して配設された第2の電極62とを備える。ここでは、第1の電極61を誘電体63の表面に設け、第2の電極62を誘電体63内に埋設した構成を有する気流発生装置60を示している。なお、誘電体63を構成する誘電材料については、特に限定されず、使用される用途や環境に応じて、公知な固体からなる誘電材料から適宜選択することができる。
【0026】
なお、気流発生装置60の構成は、これに限られるものではない。例えば、翼42に溝部を構成し、この溝部に、第1の電極61、第2の電極62および誘電体63からなる構成を嵌め込むように設置し、気流発生装置60が翼42の表面から突出しないように構成してもよい。この場合、翼42が、例えば、グラスファイバを合成樹脂により固形化したGFRP(グラスファイバ強化樹脂)などの誘電材料で構成されているときには、誘電体63として翼42自体を機能させることができる。すなわち、翼42の表面に直接第1の電極61を配設し、この第1の電極61と離間して翼42に第2の電極62を直接埋設することができる。
【0027】
ここで、例えば、第1の電極61の第2の電極62側の端縁が、翼42の前縁上となるように第1の電極61を配置し、第1の電極61よりも翼42の背側42aとなる位置に第2の電極62を配置することができる。なお、気流発生装置60の配置位置は、翼面に発生する剥離などを制御できる位置であればよく、特に限定されるものではないが、的確に流れを制御するためには、翼42の前縁部とすることが好ましい。
【0028】
このように気流発生装置60では、発生するプラズマ誘起流が第1の電極61側から第2の電極62側に向かって流れるように、第1の電極61および第2の電極62が配置されている。例えば、図4に示した気流発生装置60においては、プラズマ誘起流は、翼42の前縁から翼面の背側42aに向かって流れる。
【0029】
気流発生装置60は、例えば、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、複数個独立して配置される。この場合、各気流発生装置60は、それぞれ単独で制御され、例えば、第1の電極61と第2の電極62との間に印加される電圧を、各気流発生装置60ごとに制御することができる。なお、翼幅が小さい場合には、例えば、1つの気流発生装置60を、翼42の前縁部に翼幅方向に配置することもできる。
【0030】
第1の電極61および第2の電極62は、図4に示すように、それぞれケーブル配線64を介して、電圧印加機構として機能する放電用電源65に電気的に接続されている。この放電用電源65を起動することで、第1の電極61と第2の電極62との間に電圧が印加される。
【0031】
放電用電源65は、第1の電極61と第2の電極62との間に、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))のパルス変調制御された電圧や、交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する電圧などを印加することができる。このように、放電用電源65は、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性などを変化させて、第1の電極61と第2の電極62との間に電圧を印加することができる。
【0032】
例えば、複数の気流発生装置60を備える場合、放電用電源65は、各気流発生装置60ごとに備えられてもよいし、各気流発生装置60を独立して電圧制御できる機能を備える1つの電源で構成されてもよい。
【0033】
ここで、図5は、実施の形態の風力発電システム10におけるパルス変調制御の概要を説明するための図である。図5に示すように、放電用電源65からの印加電圧を所定時間オン(ON)、所定時間オフ(OFF)とする制御方法をパルス変調制御といい、その周波数をパルス変調周波数fという。また、図5に示された基本周波数とは、印加電圧の周波数である。
【0034】
例えば、電圧をパルス変調制御した際、次の式(1)の関係式を満たすように、パルス変調周波数fを設定することが好ましい。
【0035】
0.1≦fC/U≦9 …式(1)
【0036】
ここで、Cは、気流発生装置60が備えられた翼部における翼42の翼弦長である。Uは、気流発生装置60が備えられた翼部における、翼の周速度と風速とを合成した相対速度である。なお、図3に示すように、気流発生装置60を翼幅方向に複数備えた場合においても、1つの気流発生装置60は、翼幅方向に所定の幅を有している。そのため、1つの気流発生装置60においても、翼弦長Cや相対速度Uは、この気流発生装置60の幅方向に変化する。そこで、翼弦長Cや相対速度Uとして、各気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の平均値を使用することが好ましい。
【0037】
ここで、上記関係式を満たすようにパルス変調周波数fを設定することで、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0038】
次に、風力発電システム10の制御方法について説明する。
【0039】
(制御例1)
図6は、実施の形態の風力発電システム10の制御構成を模式的に示した図である。
【0040】
図6に示すように、風力発電システム10は、風速センサ100と、風向センサ101と、回転数センサ102と、制御部110と、制御データベース120と、放電用電源65と、ピッチ角度駆動機構130とを備えている。
【0041】
風速センサ100は、翼42に流入する風の速度を計測するセンサである。風向センサ101は、翼42に流入する風の風向を計測するセンサである。これらの風速センサ100や風向センサ101は、例えば、図3に示すように、ナセル31の上側面に設けられた風向風速計50などで構成される。
【0042】
回転数センサ102は、翼42(ロータ40)の回転数を計測するセンサであり、例えばナセル31内に設けられる。
【0043】
制御データベース120は、風速、風向、回転数などの計測値に基づいて特定するための、実出力(測定データに基づいて算出された出力または発電機における出力の計測値)、設定出力、設定迎角、ピッチ角度などのデータを記憶している。例えば、設定出力は、風車における出力と軸方向風速の関係を示すパワーカーブに係る情報として記憶させることができる。
【0044】
また、制御データベース120は、各気流発生装置60が備えられた翼部における、翼42の翼弦長(例えば、上記したように平均的な翼弦長)や翼42の翼根部から翼幅方向の距離(例えば、気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の平均値)などのデータを記憶している。また、制御データベース120には、前述した式(1)の関係式およびこの関係式が満たす範囲が記憶され、パルス変調周波数fを算出する際に利用される。
【0045】
この制御データベース120は、メモリ、ハードディスク装置などで構成される。また、制御データベース120には、図示しない、キーボード、マウス、外部入力インターフェースなどを介して、データの入力などが可能である。
【0046】
制御部110は、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102などの各センサから出力された情報および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、回転速度、相対速度、迎角、ピッチ角度、風力発電システム10における出力などを算出する。なお、風力発電システム10における出力は、発電機の出力の計測値を使用してもよい。また、風速センサ100から出力された情報、および制御データベース120に記憶されたパワーカーブに係る情報などに基づいて、予め設定された、風力発電システム10における設定出力などを特定する。
【0047】
また、制御部110は、上記算出結果に基づいて、放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130などを制御する。この制御部110は、例えば、演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)などから主に構成され、CPUでは、ROMやRAMに格納されたプログラムやデータなどを用いて各種の演算処理を実行する。この制御部110が実行する処理は、例えばコンピュータ装置などで実現される。また、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101、回転数センサ102、制御データベース120、放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130、発電機などの各機器と電気信号の出入力が可能に接続されている。
【0048】
放電用電源65は、制御部110からの情報に基づいて、前述したように、第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧などを印加する。
【0049】
ピッチ角度駆動機構130は、制御部110からの情報に基づいて、翼42の回転数に応じて、翼42の角度を駆動制御する。なお、ピッチ角を制御できない翼を使用する場合には、ピッチ角度駆動機構130は不要となる。
【0050】
次に、風力発電システム10の動作(制御例1)について説明する。
【0051】
図7は、実施の形態の風力発電システム10の動作(制御例1)を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、気流発生装置60を複数個独立して配置した場合を例示して説明する。
【0052】
まず、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、風力発電システム10の実出力および軸方向風速を算出する(ステップS150)。
【0053】
なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。軸方向風速は、風速、風向などの計測情報に基づいて算出される。
【0054】
続いて、制御部110は、この実出力が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力と比較し、実出力が設定出力よりも低いか否かを判定する(ステップS151)。
【0055】
ここで、実出力が設定出力よりも低いとは、実出力が設定出力の、例えば80%を下回った場合をいう。
【0056】
ステップS151において、実出力が設定出力よりも低くないと判定した場合(ステップS151のNo)には、ステップS150の処理を再度実行する。
【0057】
一方、ステップS151において、実出力が設定出力よりも低いと判定した場合(ステップS151のYes)には、制御部110は、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えているか否かを判定する(ステップS152)。
【0058】
ここで、所定時間は、5〜10秒程度に設定される。この所定時間を設定することで、ロータの慣性による出力応答遅延と、剥離失速による出力低下を見分けることができる。また、持続的ではなく、瞬間的に実出力が設定出力よりも低い状態となる場合を除外することができる。
【0059】
ステップS152において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていないと判定した場合(ステップS152のNo)には、ステップS150の処理を再度実行する。
【0060】
一方、ステップS152において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていると判定した場合(ステップS152のYes)には、制御部110は、放電用電源65を作動させ、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させる(ステップS153)。
【0061】
なお、この際、前述した式(1)の関係式を満たすように、制御部110は、パルス変調周波数fを設定する。第1の電極61と第2の電極62との間が一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極61の近傍に放電が誘起される。このとき生成した電子やイオンは、電界によって駆動され、それらが気体分子と衝突することで運動量が気体分子に移行する。これによって、第1の電極61付近にプラズマ誘起流が発生する。
【0062】
続いて、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、気流発生装置60を作動した状態における風力発電システム10の、第2の実出力として機能する実出力および軸方向風速を算出する(ステップS154)。なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。
【0063】
続いて、制御部110は、この実出力(第2の実出力)が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における、第2の設定出力として機能する設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力(第2の実出力)と比較し、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する(ステップS155)。
【0064】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いとは、前述した場合と同様に、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%を下回った場合をいう。なお、制御部110は、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する代わりに、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%以上に達したか否かを判定してもよい。
【0065】
ステップS155において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いと判定した場合(ステップS155のYes)には、ステップS153からの処理を再度実行する。すなわち、気流発生装置60が作動されている状態が維持される。
【0066】
一方、ステップS155において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くないと判定した場合(ステップS155のNo)には、制御部110は、放電用電源65の作動を停止し、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間への電圧の印加を停止する(ステップS156)。
【0067】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くない状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、その状態を維持することができ、再度、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低い状態に移行することはない。そのため、気流発生装置60において消費されるエネルギを最小限に抑えることができる。
【0068】
なお、上記した風力発電システム10の動作(制御例1)では、複数備えられた気流発生装置60のいずれに対しても同じ制御がなされる一例を示している。
【0069】
このように、風力発電システム10を動作させることで、翼42の前縁の下流において流れが剥離して、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0070】
なお、ここでは、実出力と、理論パワーカーブ上の設定出力を比較して制御する例を示したが、これに限られるもではない。上記した制御は、例えば、実トルクと理論設定トルクとの比較、あるいは実回転数と理論設定回転数との比較することによっても実現できる。気流発生装置60が作動しているときの、実トルクは第2の実トルクとして、実回転数は第2の実回転数としてそれぞれ機能する。また、気流発生装置60が作動しているときの、設定トルクは第2の設定トルクとして、設定回転数は第2の設定回転数としてそれぞれ機能する。
【0071】
ここで、実トルクとは、ロータトルクを意味している。ロータトルクは、トルク計によって計測されてもよいし、下に示す関係式(2)、(3)を用いて実出力から算出されてもよい。
【0072】
Trot=I×dω/dt+Tgen …式(2)
Tgen=P/(2πω/60) …式(3)
【0073】
ここで、Trotはロータトルク、Tgenは発電機トルク、Iは慣性モーメント、ωは翼42(ロータ40)の回転数(rpm)、Pは実出力を示す。
【0074】
(制御例2)
ここでは、前述した制御例1の制御に加えて、翼42の前縁における迎角に基づく制御を加え、気流発生装置60を個々に制御する構成としている。なお、風力発電システム10の制御構成は、図6に示した構成と同じである。
【0075】
風力発電システム10の動作(制御例2)について説明する。
【0076】
図8は、実施の形態の風力発電システム10の動作(制御例2)を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、図3に示すように、翼42の翼根部から翼端部に向かう翼幅方向に、気流発生装置60を複数個独立して配置した場合を例示して説明する。
【0077】
まず、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数、制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、風力発電システム10の実出力および軸方向風速を算出する(ステップS160)。
【0078】
なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。軸方向風速は、風速、風向などの計測情報に基づいて算出される。
【0079】
続いて、制御部110は、この実出力が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力と比較し、実出力が設定出力よりも低いか否かを判定する(ステップS161)。
【0080】
ここで、実出力が設定出力よりも低いとは、実出力が設定出力の、例えば80%を下回った場合をいう。
【0081】
ステップS161において、実出力が設定出力よりも低くないと判定した場合(ステップS161のNo)には、ステップS160の処理を再度実行する。
【0082】
一方、ステップS161において、実出力が設定出力よりも低いと判定した場合(ステップS161のYes)には、制御部110は、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えているか否かを判定する(ステップS162)。
【0083】
ここで、所定時間は、5〜10秒程度に設定される。この所定時間を設定することで、ロータの慣性による出力応答遅延と、剥離失速による出力低下を見分けることができる。また、持続的ではなく、瞬間的に実出力が設定出力よりも低い状態となる場合を除外することができる。
【0084】
ステップS162において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていないと判定した場合(ステップS162のNo)には、ステップS160の処理を再度実行する。
【0085】
一方、ステップS162において、実出力が設定出力よりも低い状態となってから所定時間を超えていると判定した場合(ステップS162のYes)には、制御部110は、入力された計測情報および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、迎角を算出する(ステップS163)。
【0086】
ここで、迎角は、各気流発生装置60が設けられた翼幅方向の各位置における翼素に対して算出される。例えば、翼42の前縁の翼幅方向に5個の気流発生装置60が独立して設けられている場合には、各気流発生装置60が設けられた翼幅方向の5箇所における翼素に対して迎角が算出される。なお、1つの気流発生装置60は、翼幅方向に所定の幅を有しているため、迎角として、例えば、1つの気流発生装置60が備えられた翼部における翼幅方向の迎角の平均値を、その1つの気流発生装置60が設けられた部分の迎角として使用することが好ましい。なお、翼素とは、翼42の翼幅方向に対して垂直な翼42の断面を意味する。
【0087】
続いて、制御部110は、この迎角が算出されたときの風速および翼42の回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して算出された迎角と比較する。予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角として、例えば、前縁形状、翼型、翼弦長、レイノルズ数などに基づいて決まる、失速が生じる角度(失速迎角)を使用する。そして、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいか否かを判定する(ステップS164)。
【0088】
ここで、前述したように、迎角は、各気流発生装置60が設けられた部分のそれぞれの翼素に対して算出されるため、設定された迎角も、その各翼素に対応する迎角を使用する。すなわち、ステップS164の判定は、各翼素ごとに行われる。そのため、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定される翼素や、算出された迎角が設定された迎角以下であると判定される翼素が存在する。
【0089】
ステップS164において、算出された迎角が設定された迎角以下であると判定された場合(ステップS164のNo)には、その翼素に対しては、ステップS160からの処理を再度実行する。
【0090】
一方、ステップS164において、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された場合(ステップS164のYes)には、制御部110は、その翼素に対する放電用電源65を作動させ、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御された電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させる(ステップS165)。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60のみが選択的に作動される。
【0091】
なお、この際、前述した式(1)の関係式を満たすように、制御部110は、各気流発生装置のパルス変調周波数fを設定する。
【0092】
続いて、制御部110は、風速センサ100、風向センサ101によって計測された、風速、風向などの計測情報、回転数センサ102から入力した回転数および制御データベース120に記憶されたデータに基づいて、気流発生装置60を作動した状態における風力発電システム10の、第2の実出力として機能する実出力および軸方向風速を算出する(ステップS166)。なお、実出力として、発電機の出力の計測値を使用してもよい。
【0093】
なお、迎角は、各気流発生装置60が設けられた部分のそれぞれの翼素に対して算出されるが、風力発電システム10の出力は、風力発電システム10全体として得られる1つの値である。
【0094】
続いて、制御部110は、この実出力(第2の実出力)が得られたときの軸方向風速における、予め設定された風力発電システム10における、第2の設定出力として機能する設定出力を制御データベース120に記憶されたデータから読み出して実出力(第2の実出力)と比較し、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する(ステップS167)。
【0095】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いとは、前述した場合と同様に、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%を下回った場合をいう。なお、制御部110は、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いか否かを判定する代わりに、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)の、例えば80%以上に達したか否かを判定してもよい。
【0096】
ステップS167において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低いと判定した場合(ステップS167のYes)には、ステップS165からの処理を再度実行する。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60のみが選択的に作動されている状態が維持される。
【0097】
一方、ステップS167において、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くないと判定した場合(ステップS167のNo)には、制御部110は、放電用電源65の作動を停止し、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間への電圧の印加を停止する(ステップS168)。すなわち、算出された迎角が設定された迎角よりも大きいと判定された翼素の部分に設置されている気流発生装置60の作動が停止される。
【0098】
ここで、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低くない状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、その状態を維持することができ、再度、実出力(第2の実出力)が設定出力(第2の設定出力)よりも低い状態に移行することはない。そのため、気流発生装置60において消費されるエネルギを最小限に抑えることができる。
【0099】
上記した風力発電システム10の動作(制御例2)では、条件に応じて、複数備えられた気流発生装置60を個々に独立して選択的に制御することができる。このように、風力発電システム10を動作させることで、翼42の前縁の下流において流れが剥離して、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となったときでも、パワーカーブに沿った定常の状態(例えば、図1の点C)に確実に移行することができる。
【0100】
(その他の制御例)
図18は、実施の形態の風力発電システム10における他の制御構成を模式的に示した図である。図18に示すように、制御構成は、計測部180、制御部181、制御データベース182から構成される。
【0101】
計測部180には、翼素状態計測部、環境情報計測部、風車状態計測部、発電機状態計測部が含まれる。翼素状態計測部では、対称とする翼素のアジマス角が計測される。環境情報計測部では、気圧、気温、風速、風向、乱流強度が計測される。風車状態計測部では、ロータトルク、回転数、ヨー角が計測される。発電機状態計測部では、電圧、電流、出力、発電機トルクが計測される。
【0102】
制御データベース182には、対象翼素ごとの半径位置、翼型、翼弦長、ひねり、翼の設定角、ハブ高さ、各翼型の失速角(失速迎角を含む)などの風車形状のパラメータが格納されている。
【0103】
制御部181は、上記した計測情報およびパラメータを用いて、動粘度、流入速度、レイノルズ数、マッハ数、迎角などの各種物理量を演算する。そして、制御部181は、演算した結果に基づいて、放電用電源、ピッチ角度駆動機構、ヨー角度駆動機構、発電機制御機構、系統連携制御機構を制御する制御信号を出力する。
【0104】
ここで、放電用電源、ピッチ角度駆動機構は、前述した放電用電源65、ピッチ角度駆動機構130と同様の機能を有する。また、制御部181は、前述した制御部110と同様の構成を備える。ヨー角度駆動機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、ヨオー駆動モータを制御して、タワー30に対するナセル31の水平方向の首ふり角度を設定する。発電機制御機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、発電機の巻き線電流を、それに接続されたインバータ、コンバータの設定値を調整することなどで調整し、発電機のトルクを制御する。系統連携制御機構は、計測部180からの制御信号に基づいて、所外の系統へ接続されている端子の電圧を制御することにより、系統への通電量を制御する。
【0105】
この制御構成を用いた制御例として、所定の翼素の、現状の迎角と、失速が生じる迎角(失速迎角)が決定され、それらの比較結果に基づいて、放電用電源が制御される手順を次に示す。
【0106】
まず、制御部181は、翼素の半径位置とアジマス角の計測値、ハブ高さの情報に基づいて、翼素の高度を算出し、風速および風向の計測値とヨー角の計測値を合わせて、翼素位置における自然風の風速および風向を算出する。
【0107】
制御部181は、翼素の半径位置と回転数から回転による相対風の風速および風向を算出する。制御部181は、これらと、翼の取付角、ひねりの情報を合わせて、翼素に対する相対風の、その瞬間における流入速度と迎角を算出する。
【0108】
また、制御部181は、気温と気圧の計測情報から動粘度を算出し、翼素の翼弦長と、上記算出された翼素に対する相対風の流入速度から、レイノルズ数とマッハ数を算出する。制御部181は、これらと、乱流強度の計測値、翼素の翼型の情報をもとに、この翼素における失速を生じる迎角を参照し、設定された迎角として採用する。
【0109】
制御部181は、算出された迎え角と設定された迎角とを比較し、算出した迎え角が、設定された迎角より大きいと判定された場合、翼面での剥離が生じていると判定し、この翼素に放電を生じるように、放電用電源を動作させる。このとき、放電用電源のパルス変調周波数fは、後述するように、前述した流入速度をU、翼弦長をCとして、fC/Uが所定の範囲になるように設定される。
【0110】
このように、この制御構成を用いることにより、翼面に剥離を検出するセンサを備えることなく、各翼素における剥離の有無を判定し、それによって放電用電源の駆動を制御することが可能となり、システムの信頼性の向上やシステムの低コスト化を図ることができる。
【0111】
(回転数に基づく制御)
上記した制御構成を用いた別の制御例として、回転数の計測値を用いた気流発生装置の制御方法の例を示す。図19は、発電機トルク目標値と、目標回転数と現状回転数の差との関係を示す図である。
【0112】
まず、周速比一定制御での発電機の制御の例を示す。周速比一定制御とは、前述したように、部分負荷領域において、風速風向の変動があっても、常に設計周速比で運転されるように、発電機トルクを制御することをいう。
【0113】
制御部181は、所定の時間間隔の間の風速の平均値から、目標周速比を達成するための回転数を算出し、算出された回転数を目標回転数とする。
【0114】
続いて、制御部181は、図19に示すように、発電機トルク目標値を縦軸、現状回転数から目標回転数を引いた回転数差(Δω)を横軸とする、制御曲線を設定する。ここで、回転数差(Δω)に応じて、縦軸の発電機トルク目標値に設定される。
【0115】
図19に示された制御曲線は、例えば、シグモイド関数に基づいて設定することができる。このシグモイド関数に基づく制御曲線の一方は、発電機トルク目標値の上限値に漸近し、制御曲線の他方は、発電機トルク目標値の下限値に漸近している。
【0116】
現状回転数が目標回転数よりも大きいとき(回転数差(Δω)が0より大きいとき)には、制御部181は、制御曲線に基づいて発電機トルク目標値を増加させ、現状回転数を減少させ、目標回転数に近づけるための制御を行う。
【0117】
一方、現状回転数が目標回転数よりも小さいとき(回転数差(Δω)が0より小さいとき)には、制御部181は、制御曲線に基づいて発電機トルク目標値を減少させ、現状回転数を増加させ、目標回転数に近づけるための制御を行う。
【0118】
ここで、現状回転数が目標回転数と等しいとき(回転数差(Δω)が0のとき)には、発電機トルク目標値が、目標回転数でのロータトルクの理論値と一致する。
【0119】
上記したように、制御部181は、風速と現状回転数の計測値から、発電機トルク目標値を算出し、この発電機トルク目標値を発生させるように、発電機または負荷を制御する。
【0120】
このような発電機の制御をする際、制御部181は、現状回転数が目標回転数よりも小さい領域にあるときに、放電用電源を作動(ON)させる。翼面で剥離が生じている場合は、剥離が抑制され、翼素の揚力が増加し、ロータトルクが増加し、より早く目標回転数に到達することが可能になる。また、制御部181は、現状回転数が目標回転数よりも大きい場合は、放電用電源は作動されない(OFF)。これによって、ロータトルクが減少し、より早く目標回転数に到達することが可能になる。
【0121】
ここで、放電用電源を作動させるとは、気流発生装置60において、連続またはパルス変調制御でプラズマ誘起流を発生させることを意味し、放電用電源を作動させないとは、気流発生装置60において、連続またはパルス変調制御においてもプラズマ誘起流を発生させないことを意味する。
【0122】
(ロータトルクに基づく制御)
次に、前述した制御構成を用いた別の制御例として、ロータトルクの計測値を用いた気流発生装置の制御の例を示す。ここでは、ロータトルクは、トルク計を用いて計測されてもよいし、前述した式(2)から算出された値を用いてもよい。
【0123】
制御部181は、回転数、発電機トルクの計測値を用いて、ロータトルクを算出する。ここで、発電機トルクは、トルク計を用いて計測されてもよいし、前述した式(3)から算出された値を用いてもよい。なお、出力Pは、電力計を用いて計測されたものでもよいし、電圧、電流の計測値の積を用いてもよい。
【0124】
ここでは、後に説明するが、放電用電源の動作は、剥離状態の検出用動作および流れ制御用動作の双方の機能を備えている。
【0125】
図20は、本制御例における、流れの剥離状態の検出用動作時のロータトルクの時間変化を示す図である。図21は、検出用動作および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【0126】
まず、自然風の変動により、ロータトルクが変動しながら推移している状態での検出用動作を説明する。図20に示すように、制御部181は、時刻t0において、放電用電源を時間Texamの間作動(ON)する。この際、翼面で流れの剥離が発生している場合には、放電用電源が作動することで翼の揚力が向上するため、ロータトルクが増大する。なお、ロータトルクが増大しない場合には、翼面での流れの剥離は発生していないこととなる。
【0127】
そこで、制御部181は、図20の(a)、(b)に示すように、放電用電源を作動するタイミング(時刻t0)の前の時間Δt1間、および放電用電源を作動するタイミングの後の時間Δt2間のそれぞれにおけるロータトルクの平均値を算出する。そして、制御部181は、時間Δt1間と時間Δt2間におけるロータトルクの平均値を比較する。
【0128】
ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値以上となる場合(図20の(a))、放電用電源を作動させることによる効果が得られていることとなる。すなわち、図20の(a)に示すように、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値以上となる場合、放電用電源を作動させる前において、流れの剥離が発生していたと判定する。
【0129】
一方、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)が所定の閾値を超えない場合(図20の(b))、放電用電源を作動させることによる効果が得られない状態、すなわち放電用電源を作動させる前において、流れの剥離が発生してない状態であると判定する。
なお、放電用電源を時間Texamの間作動する状態が、図21では、検出用動作がONの状態である。
【0130】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図21の制御用動作Bに示すように、検出用動作後においても所定時間連続して、放電用電源を作動させる。そして、制御部181は、所定時間経過後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0131】
一方、制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していないと判定した場合、図21の制御用動作Aに示すように、所定時間、放電用電源を作動させない。そして、制御部181は、所定時間経過後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0132】
このように、検出用動作時のロータトルクの時間変化を検知することで、流れの剥離の有無を検知することができる。さらに、この検知結果に基づき、気流発生装置60を動作させることで、流れを制御して流れの剥離を消滅させることができる。
【0133】
次に、検出用動作によって流れの剥離状態を検知した後、流れが剥離したままの状態であるのか、付着した状態となっているのかを判定する動作を備えた制御例について説明する。図22は、本制御例における、検出用動作時およびその後のロータトルクの時間変化を示す図である。図23は、検出用動作時および制御動作時における放電用電源の動作を説明するための図である。
【0134】
ここでは、検出用動作において、流れの剥離が発生していると判定された場合の動作について説明するが、図23には、検出用動作において、流れの剥離が発生していないと判定した場合における制御用動作Aも示している。
【0135】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr1)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図23の制御用動作Cに示すように、放電用電源を時間Texamの間作動後、一旦、放電用電源の作動を停止する。
【0136】
ここで、翼面で流れの剥離が発生している場合には、放電用電源を停止することで翼の揚力が低下し、ロータトルクが減少する。なお、ロータトルクが減少しない場合には、翼面での流れの剥離は消滅していることとなる。
【0137】
そこで、制御部181は、図22の(a)、(b)に示すように、放電用電源を停止する(時刻t0からTexam後)の前の時間Δt3間、および放電用電源を停止した後の時間Δt4間のそれぞれにおけるロータトルクの平均値を算出する。そして、制御部181は、時間Δt3間と時間Δt4間におけるロータトルクの平均値を比較する。
【0138】
ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値以上となる場合(図22の(a))、流れの剥離が発生していると判定する。
【0139】
一方、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値を超えない場合(図22の(b))、流れは翼面に付着した流れとなり、流れの剥離は消滅したと判定する。
【0140】
制御部181は、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)に基づいて、流れの剥離が発生していると判定した場合、図23の制御用動作Cに示すように、所定時間、放電用電源を作動させる。そして、所定時間経過後に放電用電源を停止し、その後、放電用電源を時間Texamの間作動させ、再び検出用動作を行う。
【0141】
なお、ロータトルクの平均値の差(ΔTr2)が所定の閾値以上となる場合、制御部181は、図23の制御用動作Dに示すように、検出用動作を繰り返し行うように、放電用電源を作動させてもよい。この場合には、例えば、毎回の検出用動作に対して、上記したロータトルクの平均値の差(ΔTr2)を検出して、流れの剥離の有無を検知してもよい。また、検出用動作を所定の回数行った後に、上記したロータトルクの平均値の差(ΔTr2)を検出して、流れの剥離の有無を検知してもよい。
【0142】
このように、検出用動作時のロータトルクの時間変化を検知することで、検出用動作の前後における流れの剥離の有無を検知することができる。さらに、検出用動作後における流れの剥離の有無を検知することができるので、検出用動作後においても流れの剥離が生じているときに限って、放電用電源、すなわち気流発生装置60を効果的に作動させることができる。そして、気流発生装置60を動作させることで、流れを制御して流れの剥離を消滅させることができる。
【0143】
ここで、翼上に気流発生装置60が複数設置されている場合、所定の気流発生装置60において、検出用動作と制御用動作の双方を行ってもよい。また、検出用動作を行う気流発生装置60と、制御用動作を行う気流発生装置60とを異なるものとしてもよい。検出用動作を行う気流発生装置60の個数を削減することで、消費電力の低減を図ることができる。
【0144】
なお、上記した、制御例では、検出用動作によって剥離状態を検出する場合の計測値としてロータトルクを用いているが、出力や回転数を計測値として用いても、同様の制御が可能である。
【0145】
(気流発生装置60に印加する電圧の影響)
(1)揚力係数Cと迎角αの関係
図9は、前縁剥離型の単独翼の揚力係数Cと迎角αの関係を示す図である。図9に示した結果は、2次元翼の風洞試験により得られた結果である。
【0146】
ここで、単独翼の前縁には、図4に示した構成と同様に、気流発生装置60が備えられている。図9には、失速した際に、気流発生装置60を作動させない場合(OFF)、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)、気流発生装置60の第1の電極61と第2の電極62との間に、パルス変調制御を行わずに、連続的に電圧を印加した場合(連続)が示されている。
【0147】
前縁剥離型の翼における揚力特性では、迎角αが閾値を越えると揚力係数Cが大幅に低下する失速現象が生じる。失速現象が生じた、翼の背側(負圧側)の翼面では、後述するが大規模な剥離が生じている。
【0148】
気流発生装置60を作動させると、連続およびパルスのいずれも場合おいても、失速が生じる迎角αが大きくなる。しかしながら、連続の場合とパルスの場合とで、揚力係数Cに対する迎角αが異なっている。連続の場合、失速が生じる迎角αが大きくなり、最大の揚力係数Cが増加するが、さらに迎角αを増加させるといずれ失速を生じ、揚力係数Cが急激に低下している。
【0149】
一方、パルスの場合は、OFFの場合において失速する迎角αよりも大きい側の領域において、迎角αの増加に伴う揚力係数Cの減少率が、OFFの場合における迎角αの増加に伴う揚力係数Cの減少率よりも小さくなっている。すなわち、揚力係数Cの減少率が小さいことがわかる。
【0150】
図10は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60を作動させない場合(OFF)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。図11は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。図12は、翼の前縁において流れが失速した際、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)の翼に沿う流れを模式的に示す図である。
【0151】
図10〜図12に示された流れは、PIV(Particle Image Velocimetry)を使用して計測した結果である。
【0152】
OFFの場合には、翼の前縁下流の背側(負圧側)で、大規模な剥離が生じていることがわかる。連続の場合、図11に示すように、完全に流れが付着していることがわかる。パルスの場合には、図12に示すように、完全な付着ではないが、流れを引き寄せる効果があることがわかる。このように、連続の場合とパルスの場合とでは、気流制御効果として大きく異なる現象が生じているがわかる。
【0153】
(2)実機による検証
ここでは、実機である小型風車の翼に気流発生装置60を配置して風洞試験を行い、気流発生装置60に印加する電圧の影響を調べた。
【0154】
風洞として、定格風量が1200m3/min、定格圧力が11.8kPaの吹き出し型風洞を使用した。風洞の出口に縮流部を設け、速度が10m/sのまでの通風を可能とした。
【0155】
小型風車として、市販の小型風車を改造した小型風車モデルを使用した。小型風車として、風洞の出口のサイズに対応させて、木製の3枚の翼を有し、風車直径が1.6m、出力が300W用の風車を採用した。小型風車を、ヨー角が0度で、風洞の出口から770mmの位置に配置した。この小型風車の定格は、風速が12.5m/sにおいて発電量が300Wである。なお、主流速度は、ピトー管および熱電対を用いて計測した。
【0156】
各翼の前縁部に、それぞれ1つの気流発生装置60を翼幅方向に配置した。この際、図4に示すように、第1の電極61の第2の電極62側の端縁が、翼の前縁上となるように第1の電極61を配置し、第1の電極61よりも翼の背側42aとなる位置に第2の電極62を配置した。誘電体である、厚さが250μmのポリイミド樹脂上に、長さが610mmの第1の電極61を配置した。プラズマ誘起流が翼の背面側に向けて生じるように、第2の電極62をポリイミド樹脂内に配置した。
【0157】
ハブと発電機との間の回転軸上に、放電用電源65、スリップリングを配置した。回転数を計測するためのエンコーダを配置した。外部から、入力が0〜100VAC、変調信号が5VDCをスリップリングを介して放電用電源65に入力した。電源トランスからの高電圧出力は、20kV耐圧の高電圧用のケーブル配線64を用い、ノーズコーン内に配線した。放電用電源65における高電圧振幅は、入力電圧をスライダックで変化させることによって調整した。
【0158】
パルス変調制御を行う場合、パルス変調時のデューティ比を10%に固定し、パルス変調周波数fを1〜900Hzの範囲で変化させた。
【0159】
発電機の発電電圧は、風車のタワー軸内を通して外部に導出されている配線の両端に負荷としてエレマ抵抗Rを接続し、この抵抗の両端電圧で発電機出力を評価した。
【0160】
試験では、まず、風車が低速で回転している状態から風速を増加させ、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となるように、軸方向風速の増加率を調整した。この完全失速状態において、気流発生装置60を作動させた。試験結果を図13〜図16に示す。
【0161】
図13は、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と時間との関係を示す図である。図14は、気流発生装置60に連続的に電圧を印加した場合(連続)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。図15は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と時間との関係を示す図である。図16は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)における出力と軸方向風速との関係を示す図である。
【0162】
なお、図13および図15の横軸のt0は、気流発生装置60を作動させたときを示している。また、図15および図16では、前述した式(1)で示されるfC/Uが1となるように、パルス変調周波数fを調整したときの結果を示している。
【0163】
図13に示すように、連続の場合、t0において出力が10%程度増加した。この効果をパワーカーブ上にプロットすると、図14に示すようになり、完全失速状態の点Bから点B1に移行したが、出力の向上はわずかであることがわかった。
【0164】
図15に示すように、パルスの場合、t0において出力がわずかに増加した後、数分間の間に出力が徐々に増加し、もとの出力の8倍程度まで増加し、その後飽和した。このときの効果をパワーカーブ上にプロットすると、図16に示すようになり、完全失速状態の点Bからパワーカーブ上の点Cに移行することがわかった。また、点Cの状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、状態は点Cにとどまり、再度点Bに移行することはなかった。
【0165】
次に、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)において、パルス変調周波数fを変化させて、前述した式(1)のfC/Uと出力との関係を調べた。
【0166】
この試験においても、まず、風車が低速で回転している状態から風速を増加させ、前述した図1に示した点Bの完全失速状態となるように、軸方向風速の増加率を調整した。この完全失速状態において、気流発生装置60を作動させた。図17は、気流発生装置60にパルス変調制御された電圧を印加した場合(パルス)におけるfC/Uと出力との関係を示す図である。
【0167】
図17に示すように、fC/Uの値が0.1〜9の範囲では、完全失速状態の点Bからパワーカーブ上の点Cに移行する現象が生じ、高い出力が得られることがわかった。また、点Cの状態に移行した後に、気流発生装置60を停止させても、状態は点Cにとどまり、再度点Bに移行することはなかった。
【0168】
以上説明した実施形態によれば、翼面上の流れを最適化することができるとともに、発電出力を向上させることが可能となる。本実施の形態では、翼のピッチ角を制御可能な風力発電システムに一例を示したが、式(1)のfC/Uの関係は、ピッチ角を制御の有無に関係なく成立する。そのため、式(1)のfC/Uの関係は、翼のピッチ角の制御機構を有さない風力発電システムにおいても適用することができる。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
10…風力発電システム、20…地面、30…タワー、31…ナセル、40…ロータ、41…ハブ、42…翼、42a…背側、50…風向風速計、60…気流発生装置、61…第1の電極、62…第2の電極、63…誘電体、64…ケーブル配線、65…放電用電源、100…風速センサ、101…風向センサ、102…回転数センサ、110,181…制御部、120…制御データベース、130…ピッチ角度駆動機構、180…計測部、182…制御データベース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、
前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルを支持するタワーと、
前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、プラズマ誘起流を発生可能な気流発生装置と、
前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、
風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、
前記計測装置からの出力に基づいて、前記電圧印加機構を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数よりも、所定時間に亘って低いと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記制御手段が、
プラズマ誘起流が発生している際に得られた、前記風力発電システムにおける第2の実出力、前記ロータにおける第2の実トルクまたは前記翼の第2の実回転数が、前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける第2の設定出力、前記ロータにおける第2の設定トルクまたは前記翼の第2の設定回転数に所定時間に亘って達していると判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置への電圧の印加を停止することを特徴とする請求項2記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記制御手段が、
所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較し、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合には、さらに所定の時間、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の風力発電システム。
【請求項6】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、
前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数よりも、所定時間に亘って低いと判定した際に、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出し、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項7】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、
所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較し、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合には、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出し、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項8】
前記電圧印加機構によって印加される電圧が、パルス変調制御されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の風力発電システム。
【請求項9】
電圧の前記パルス変調制御におけるパルス変調周波数をfと、前記翼の翼弦長をCと、前記翼の周速度と風速とを合成した相対速度をUとしたときに、関係式fC/Uの値が0.1以上9以下となることを特徴とする請求項8記載の風力発電システム。
【請求項10】
ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、
前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルを支持するタワーと、
前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備えた気流発生装置と、
前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、
風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、
前記電圧印加機構を制御する制御手段と
を備える風力発電システムの制御方法であって、
前記制御手段が、前記計測装置からの出力に基づいて前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする風力発電システムの制御方法。
【請求項11】
前記制御手段が、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数と、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数とを比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、所定時間に亘って、前記設定出力、前記設定トルクまたは前記実回転数よりも低いと判定した場合、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項12】
前記制御手段が、プラズマ誘起流を発生させた後に得られた、前記風力発電システムにおける第2の実出力、前記ロータにおける第2の実トルクまたは前記翼の第2の実回転数と、前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける第2の設定出力、前記ロータにおける第2の設定トルクまたは前記翼の第2の設定回転数とを比較するステップと、
前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が、第2の設定出力、前記第2の設定トルクまたは前記第2の設定回転数に所定時間に亘って達していると判定した場合、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置への電圧の印加を停止するステップと
をさらに具備することを特徴とする請求項11記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項13】
前記制御手段が、所定の時間に亘って電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合、前記制御手段が、さらに所定の時間、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項14】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、前記風力発電システムにおける実出力と、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数とを比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、所定時間に亘って、前記設定出力、前記設定トルクまたは前記設定回転数よりも低いと判定した場合、前記制御手段が、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出するステップと、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項15】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合、前記制御手段が、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出するステップと、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項16】
前記電圧印加機構によって印加される電圧が、パルス変調制御されていることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項17】
電圧の前記パルス変調制御におけるパルス変調周波数をfと、前記翼の翼弦長をCと、前記翼の周速度と風速とを合成した相対速度をUとしたときに、関係式fC/Uの値が0.1以上9以下となることを特徴とする請求項16記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項1】
ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、
前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルを支持するタワーと、
前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備え、プラズマ誘起流を発生可能な気流発生装置と、
前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、
風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、
前記計測装置からの出力に基づいて、前記電圧印加機構を制御する制御手段と
を具備することを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
前記制御手段が、
前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数よりも、所定時間に亘って低いと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項3】
前記制御手段が、
プラズマ誘起流が発生している際に得られた、前記風力発電システムにおける第2の実出力、前記ロータにおける第2の実トルクまたは前記翼の第2の実回転数が、前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける第2の設定出力、前記ロータにおける第2の設定トルクまたは前記翼の第2の設定回転数に所定時間に亘って達していると判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置への電圧の印加を停止することを特徴とする請求項2記載の風力発電システム。
【請求項4】
前記制御手段が、
所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較し、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合には、さらに所定の時間、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項5】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の風力発電システム。
【請求項6】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、
前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数よりも、所定時間に亘って低いと判定した際に、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出し、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項7】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、
所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較し、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合には、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出し、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加することを特徴とする請求項1記載の風力発電システム。
【請求項8】
前記電圧印加機構によって印加される電圧が、パルス変調制御されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の風力発電システム。
【請求項9】
電圧の前記パルス変調制御におけるパルス変調周波数をfと、前記翼の翼弦長をCと、前記翼の周速度と風速とを合成した相対速度をUとしたときに、関係式fC/Uの値が0.1以上9以下となることを特徴とする請求項8記載の風力発電システム。
【請求項10】
ハブおよび前記ハブに取り付けられた少なくとも2枚以上の翼を備えるロータと、
前記ハブに接続された回転軸を介して前記ロータを軸支するナセルと、
前記ナセルを支持するタワーと、
前記翼の前縁部に設けられ、第1の電極と第2の電極とを誘電体を介して離間して備えた気流発生装置と、
前記気流発生装置の前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と、
風力発電システムにおける出力、前記ロータにおけるトルクおよび前記翼の回転数のうち少なくとも1つに係る情報を検知する計測装置と、
前記電圧印加機構を制御する制御手段と
を備える風力発電システムの制御方法であって、
前記制御手段が、前記計測装置からの出力に基づいて前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させることを特徴とする風力発電システムの制御方法。
【請求項11】
前記制御手段が、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数と、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数とを比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、所定時間に亘って、前記設定出力、前記設定トルクまたは前記実回転数よりも低いと判定した場合、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項12】
前記制御手段が、プラズマ誘起流を発生させた後に得られた、前記風力発電システムにおける第2の実出力、前記ロータにおける第2の実トルクまたは前記翼の第2の実回転数と、前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける第2の設定出力、前記ロータにおける第2の設定トルクまたは前記翼の第2の設定回転数とを比較するステップと、
前記第2の実出力、前記第2の実トルクまたは前記第2の実回転数が、第2の設定出力、前記第2の設定トルクまたは前記第2の設定回転数に所定時間に亘って達していると判定した場合、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置への電圧の印加を停止するステップと
をさらに具備することを特徴とする請求項11記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項13】
前記制御手段が、所定の時間に亘って電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合、前記制御手段が、さらに所定の時間、前記電圧印加機構を制御して、前記気流発生装置に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項14】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、前記風力発電システムにおける実出力と、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数が、前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が得られたときの軸方向風速における、予め設定された、前記風力発電システムにおける設定出力、前記ロータにおける設定トルクまたは前記翼の設定回転数とを比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、所定時間に亘って、前記設定出力、前記設定トルクまたは前記設定回転数よりも低いと判定した場合、前記制御手段が、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出するステップと、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項15】
前記翼の前縁部に翼幅方向に、複数の前記気流発生装置が設けられ、複数の前記気流発生装置を独立して制御する場合において、
前記制御手段が、所定の時間に亘って前記電圧印加機構から前記気流発生装置に電圧を印加し、電圧を印加する前後の、前記風力発電システムにおける実出力、前記ロータにおける実トルクまたは前記翼の実回転数を比較するステップと、
前記実出力、前記実トルクまたは前記実回転数が、電圧を印加したことによって増加したと判定した場合、前記制御手段が、風速および前記翼の実回転数に基づいて、各前記気流発生装置が備えられたそれぞれの翼前縁における迎角を算出するステップと、
算出された迎角が、この迎角が算出されたときの風速および前記翼の実回転数における、予め設定されたそれぞれの翼前縁における迎角よりも大きいと判定したときに、前記制御手段が、前記電圧印加機構を制御して、予め設定された迎角よりも大きいと判定された翼前縁に備えられた前記気流発生装置に選択的に電圧を印加し、プラズマ誘起流を発生させるステップと
を具備することを特徴とする請求項10記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項16】
前記電圧印加機構によって印加される電圧が、パルス変調制御されていることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の風力発電システムの制御方法。
【請求項17】
電圧の前記パルス変調制御におけるパルス変調周波数をfと、前記翼の翼弦長をCと、前記翼の周速度と風速とを合成した相対速度をUとしたときに、関係式fC/Uの値が0.1以上9以下となることを特徴とする請求項16記載の風力発電システムの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−249510(P2012−249510A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66706(P2012−66706)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「省エネルギー革新技術開発事業/先導研究/動的流れ場に対するプラズマ気流制御最適化の研究開発」業務委託、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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