説明

飽和色素を使用する核酸融解分析

標的核酸をdsDNA結合色素と混合して混合物を形成する、核酸分析法を提供する。場合により非標識化プローブをこの混合物に含める。混合物を加熱するに連れて、dsDNA結合色素からの蛍光を測定することによって、標的核酸の融解曲線が生成する。核酸分析で使用するための色素及び色素の製造法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、二重鎖核酸結合色素及び、二重鎖核酸結合色素の存在下で、核酸分析を実施する方法に関する。
【0002】
発明の背景
DNA配列変異を分析する方法は、二つの一般的なカテゴリーに分類することができる。一つは、既知の配列変異の遺伝子型を特定することであり、二つ目は未知の変異を走査する(scanning)ことである。既知の配列変異の遺伝子型を特定するための多くの方法、及び蛍光プローブを利用する一段階の、ホモジニアスの閉鎖試験管法が利用可能である(Lay MJら,Clin.. Chem 1997年;43巻:2262-7頁)。対照的に、未知の変異のための殆どの走査方法では、PCR後、ゲル電気泳動またはカラム分離が必要である。これらの例としては一本鎖配列多型性(single-strand conformation polymorphism;Orita Oら、Proc Natl Acad Sci,USA,1989年; 86巻:2766-70頁)、ヘテロ二重鎖移動(heteroduplex migration;Nataraj AJら、Electrophoresis、1999年;20巻:1177-85頁)、変性勾配ゲル電気泳動(Abrams ESら、Genomics、1990年;7巻:463-75頁)、温度勾配ゲル電気泳動(Wartell RMら、J Chromatogr A、1998年;806巻:169-85頁)、酵素または化学開裂法(Taylor GRら、Genet Anal、1999年;14巻:181-6頁)並びにDNAシークエンシングが挙げられる。シークエンシングによって新しい変異を同定するには、PCR後に複数の段階、即ちサイクルシークエンシングとゲル電気泳動が必要である。変性高速液体クロマトグラフィー(Xiao Wら、Hum Mutat、2001年;17巻:439-74頁)は、PCR産物をカラムに注入することを伴う。
【0003】
近年、変異走査に関してホモジニアス蛍光法が報告されている。SYBR(登録商標)Green I(Molecular Probes,Eugene,Oregon)は、リアルタイムPCRで産物の形成(Wittwer CTら、BioTechniques、1997年;22巻:130-8頁)と融解温度(Ririe KMら、Anal. Biochem、1997年;245巻:154-60頁)をモニターするのによく使用される二重鎖特異性DNA色素である。ヘテロ接合体の単一塩基の変化があると、SYBR(登録商標)Green Iを使用した融解曲線分析によって167 bpまでの産物で検出されてきた(Lipsky RHら、Clin Chem、2001年;47巻:635-44頁)。しかしながら、増幅の後及び融解分析の前に、このPCR産物を精製し、高濃度のSYBR(登録商標)Green Iを添加していた。この方法で検出するために使用したSYBR(登録商標)Green Iの濃度はPCRを阻害する(Wittwer CTら、BioTechniques、1997年;22巻:130-1頁、134-8頁)ので、この色素は増幅の後で添加していた。ヘテロ接合体の単一塩基変化を含む遺伝子変異の存在を検出するために使用することができ、且つPCRの前に添加することができる色素が望ましい。
【0004】
一ヌクレオチド多型性(SNP)は圧倒的にヒト及び他の種で観察される最も一般的な遺伝子変異である。これらの多型性においては、個体間ではたった一個の塩基が違っているだけである。この変異はタンパク質ではアミノ酸の変化をもたらし、転写速度を変え、mRNAスプライシングに影響を及ぼすかもしれないが、細胞の過程に対しては明確な作用はないかもしれない。この変化が無症候(silent)であるとき(たとえばそれがコードするアミノ酸が実際には変化しないとき)、もしもこの変異がもう一つの遺伝子変異によって生じた特徴的な表現型に関連している場合には、SNP遺伝子型の特定はまだ有用かもしれない。
【0005】
SNPの遺伝子型を特定するには多くの方法がある。殆どの方法はPCRか他の増幅技術を使用して、目的とするテンプレートを増幅する。同時分析法または連続的な分析技術、たとえばゲル電気泳動、マススペクトル及び蛍光などを使用することができる。ホモジニアスであり、分析のための反応の物理的サンプリングも増幅開始後に試薬を添加する必要もない蛍光技術は、魅力的である。典型的なホモジニアスな技術では、目的とする領域を位置づけるためのオリゴヌクレオチドプライマー、シグナル発生用の蛍光標識または色素を使用する。具体的なPCR-ベースの方法は、DNA変性温度に対して安定な熱安定性酵素を使用する完全閉鎖系であるので、加熱開始後、何も添加する必要はない。
【0006】
閉鎖管での、ホモジニアスの蛍光PCR法の幾つかのものは、SNPの遺伝子型を特定するのに利用可能である。これらの例としては、二つの相互作用性発色団と共にFRETオリゴヌクレオチドプローブ(隣接ハイブリダイゼーションプローブ、TaqManプローブ、Molecular Beacons、Scorpions)、たった一つの発色団を伴う単一オリゴヌクレオチドプローブ(G-クエンチングプローブ、Crockett,A.O.及びC.T.Wittwer、Anal. Biochem.、2001年;290巻:89-97頁及びSimpleProbes、Idaho Technology)を使用する系及び、共有結合した、蛍光標識化オリゴヌクレオチドプローブの代わりにdsDNA色素を使用する方法が挙げられる。この色素の方法は非常に魅力的である。というのも、標識化オリゴヌクレオチドプローブが必要ないので、設計時間が短く、アッセイコストを軽減できるからである。
【0007】
dsDNS色素を使用するSNP分類の二つの技術が発表されている。dsDNA色素の存在下で対立遺伝子特異的増幅(allele-specific amplification)を使用して、リアルタイムPCRで遺伝子型を特定することができる(Germer Sら、Genome Research、2000年;10巻:258-266頁)。Germer文献の方法では、二つの対立遺伝子特異的プライマーはその3'-塩基が異なり、共通のリバースプライマーの存在下で一方または他方の対立遺伝子を区別して(differentially)増幅する。蛍光標識オリゴヌクレオチドは必要ではないが、遺伝子型の特定には、それぞれのSNP遺伝子型に関して三つのプライマーと二つのウェルが必要である。さらに、それぞれのサイクルで蛍光をモニターするリアルタイムPCR装置が必要である。
【0008】
他の色素をベースとした方法では、リアルタイムでモニターする必要はなく、SNP遺伝子型毎に1つのウェルだけが必要であり、融解分析を使用する(Germer,Sら、Genome Research、1999年;9巻:72-79頁)。この方法でも、対立遺伝子特異的増幅を使用し、先のGermer法と同様、三つのプライマーが必要となる。さらにプライマーの一つは、一つのアンプリコンの融解温度を上げるためにGC-クランプテイルを含み、一つのウェル内で融解温度によって区別される。PCR増幅の後で蛍光をモニターするので、リアルタイムで収集する必要はない。
【0009】
発明の概要
本発明の一つの側面では、試薬、プライマーを含む標準的なPCR混合物、及び本開示に従った新規dsDNA結合色素または「飽和」二重鎖(ds)DNA結合色素をPCR前に添加することだけが必要な方法を提供する。本開示の目的に関しては、「飽和:saturating」色素とは、色素の非存在下でPCRにより通常、産生されるdsDNAの量、具体的には約10 ng/μLに関して最大蛍光シグナルを与える濃度で存在するとき、有意にPCRを阻害しないような色素である。この色素は、近飽和濃度でPCRとの適合性によって確認されるが、この色素はずっと低い濃度で使用できると考えられる。増幅の間または増幅に続いて、この色素は、標識化プライマーを使用したときと同様の方法で融解曲線分析することによって、ヘテロ二本鎖(heteroduplex)とホモ二本鎖(homoduplexe)とを識別することができる(Gundry CNら、Clin Chem,2003年、三月;49(3)巻:396-406頁)。ヘテロ二本鎖とホモ二本鎖の同定は、変異走査及び遺伝子型の特定を含む種々の分析に使用することができる。「走査:scanning」なる用語は、配列中に何らかの違いが存在することを検出するために、核酸フラグメントを参照核酸フラグメントと比較するプロセスを指す。配列の違いが存在すると示す肯定的な答えは、核酸フラグメントのその位置または配列変異の実際の性質を示すとは限らない。「遺伝子型を特定する:genotyping」なる用語としては、たとえばSNP、塩基欠失、塩基挿入、配列重複、転位、逆位、塩基メチル化、短いタンデムリピートの数を含む、既知の核酸配列の変異を検出及び決定することが含まれ、二倍体ゲノムの場合には、ゲノムが配列変異のホモ接合体であるか、ヘテロ接合体であるか、並びにDNA鎖(ハプロタイプ)上の二つ以上の配列変異のシス/トランスの位置関係が含まれるが、これらに限定されない。場合により、一つ以上の非標識化プローブを融解曲線分析前のいずれかの時間に混合物に添加することができる。
【0010】
「非標識化プローブ:unlabeled probe」なる用語は、色素に共有結合によって結合しておらず、標的配列に完全または部分的にハイブリダイズするように構成されているオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを指す。混合物中に存在する色素は、特にプローブが標的配列にハイブリダイズしこれから融解するため、非標識化プローブに自由に結合したり解離する。本明細書中で使用する「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」なる用語は、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、ペプチド核酸ヌクレオシド及び、塩基対相互作用によって標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し得るものなどを含む、天然または修飾モノマーまたは結合のオリゴマー及びポリマーが含まれる。場合により、非標識化プローブは、一つ以上の非蛍光部分、たとえば非蛍光副溝バインダー、ビオチン、スペーサ、リンカー、リン酸、塩基類似体、非天然塩基など(これらに限定されない)で修飾することができる。非標識化プローブをPCR混合物に提供する態様においては、非標識化プローブが増幅を阻害するほど標的配列に対して非常に緊密には結合しないのが望ましい。
【0011】
本発明のもう一つの側面において、種々のdsDNA結合色素を同定する。本発明のdsDNA結合色素は、PCRの阻害を最小としつつ、増幅の間またはその後で、DNAとの関係で十分に飽和の条件で存在し得る。たとえば、PCR-適合可能な最大濃度では、dsDNA結合色素は少なくとも50%の飽和%である。別の態様では、飽和%(percent saturation)は少なくとも80%であり、より具体的には少なくとも90%である。さらに別の態様では、飽和%は少なくとも99%である。飽和%は飽和濃度における同じ色素の蛍光に匹敵する%蛍光、即ち、所定量のdsDNAの存在下で可能な最大蛍光強度を提供する濃度であると考えられる。具体的には、所定量のdsDNAは100 ng/10μLであり、これは通常のPCRの終了時に産生されたプラトー状態に達したDNA量である。色素の製造には増幅を阻害する多くの不純物が含まれ得ると考えられる。そのような不純物は、飽和%を測定する前に除去しなければならない。飽和%の蛍光強度の測定は、できることならば高い色素-対-bp-比(たとえば、dsDNA-色素複合体または一本鎖核酸への色素の結合)で起きる色素結合の二次的形態または遊離色素に由来する高いバックグラウンド蛍光を検出する波長ではなく、dsDNAに結合する色素の検出に十分に合った波長で実施することも考えられる。
【0012】
本発明のもう一つの側面では、dsDNA結合色素は、最大PCR-適合濃度で50%飽和を超え、標準的なリアルタイムPCR装置との適合性を示唆しない励起/発光スペクトルを有する。リアルタイムPCR分析用の「標準的な」装置は、約450〜490 nmの励起範囲と、約510〜530 nmの発光検出範囲をもつ。特定の「青色」色素は、その励起/発光スペクトルは適合可能ではないことが示唆されたが、これらの系と適合可能であることが見いだされた。かくして、本発明のこの側面において、標準的なリアルタイムPCR装置を使用してPCRの間、またはPCRに続いて分析するための方法及び、dsDNAの存在下でPCR緩衝液中で測定した場合に、410〜465 nm、特に430〜460 nmの範囲で最大励起をもち、450〜500 nm、特に455〜485 nmの範囲で最大発光をもつdsDNA結合色素を提供する。好適な計測では上記励起/検出範囲を使用することができるか、または色素の励起/発光極大に従って変えることができる。本発明の「青色」色素の検出のため並びにフルオレセイン及びSYBR(登録商標)Green Iなどの従来の色素の検出のための好適な範囲は、励起に関しては440〜470 nmであり、検出に関しては500〜560 nmである。これらの色素の多くは、標準的なリアルタイムPCR装置及び融解計測で使用するのに好適であるが、これらの色素の励起/発光スペクトルとよりよく適合する光学機器を調節することによって、定性的または定量的な増幅分析で使用するためのその感度をさらに改善できることが知られている。
【0013】
本発明のさらにもう一つの側面では、走査または遺伝子型の特定は、一種以上の非標識化プローブと二重鎖結合色素の存在下で、融解曲線分析によって実施される。この融解曲線分析は、増幅の間または増幅に続いて、または増幅しない場合に実施することができる。色素は、本開示に従った新規色素または飽和性色素であってもよい。
【0014】
本明細書中に提示した実施例は融解曲線分析を対象としたものであるが、本発明の色素は、核酸の定量化、初期濃度の測定、核酸の存在に関する試験、標識化プローブとの多重化、及び他のPCR-ベースの方法を含む、種々のリアルタイム定量PCR分析に関して使用できるものと理解されよう。
【0015】
さらに、PCRについて参照しているが、他の増幅方法も本発明の色素に対応する。そのような好適な手順としては、鎖置換増幅法(strand displacement amplification:SDA法);核酸配列ベースの増幅法(NASBA);カスケードローリングサークル増幅法(cascade rolling circle amplification:CRCA法)、Qベータレプリカーゼ媒介増幅法(Q beta replicase mediated amplification);等温キメラプライマー核酸増幅法(isothermal and chimeric primer-initiated amplification of nucleic acids:ICAN法);転写媒介性増幅法(transcription-mediated amplification:TMA法)などが含まれる。非対称PCRも使用することができる。したがって、PCRなる用語を使用する場合、PCR及び別の増幅法における変形も含むものと理解すべきである。別の鎖よりも一つの鎖の増幅に有利な増幅法は、非標識化プローブを使用する融解曲線分析に特に適している。
【0016】
さらに、増幅について述べているが、本発明の融解曲線分析が、増幅せずに得られた核酸サンプル上で実施し得ることは理解されよう。
さらに色素が二重らせん構造及び一本鎖核酸に区別的に結合する限り、あるいは二重鎖核酸の量に基づいて区別的なシグナルを区別的に産生する限り、dsDNA結合色素はインターカレーター、並びに核酸に結合する他の色素を含むと理解される。
【0017】
かくして、本発明の一態様において新規色素を提示する。この新規色素は飽和性色素であってもそうでなくてもよく、増幅の間若しくは増幅に続いて使用することができ、または増幅の存在下若しくは非存在下で融解曲線分析の間に使用することができる。具体的には、新規色素は以下の式を有する。
【0018】
【化1】

【0019】
{式中、
【0020】
【化2】

【0021】
の部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または、場合により置換された単環式若しくは多環式窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキルである)から選択される部分である;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環式ヘテロ原子を含む部分、及び場合により置換された非環式ヘテロ原子を含む部分からなる群から選択される;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3は、水素、C1-6アルキル及びアリールカルボニルからなる群から選択されるか、R2とR3は一緒になって-(CH2w-(式中、wは1〜5である)を形成する;
R9及びR10はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル及びアリールカルボニルからなる群から選択される;
n=0、1または2であり;及び
v=0または1であり;但し、R2及びR3が一緒になって-(CH2w-を形成しないとき、v=0である;
ここで、v=0であるとき、Qは、
【0022】
【化3】

【0023】
の構造からなる群から選択される複素環であり、
ここで、v=1であるとき、Qは、
【0024】
【化4】

【0025】
の構造からなる群から選択される複素環であり、
ここで、R4、R5、R6、R7及びR8はそれぞれ独立して、以下のものからなる群から選択される:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルニトリルチオ、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分、環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは四級アンモニウム部分を場合により含む}。
【0026】
具体的には、一態様において、R4、R5、R6、R7及びR8の少なくとも一つは、以下のものからなる群から選択される:アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、アルキルニトリルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい。もう一つの態様では、色素は、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、U7、V7、W7、X7、Z7、K8、P8、T8、W8、X8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、Q9、R9、A10、V10、F11及びH11からなる群から選択される。一つの方法において、これらの色素はPCR増幅で使用される。別の方法では、これらの色素は融解曲線分析において標的核酸と非標識化プローブと共に使用することができる。これらの色素は、本明細書中に記載の他の種々の方法と一緒に使用することができる。
【0027】
本発明のさらなる態様において、核酸分析法であって、以下の段階:
標的核酸と、飽和dsDNA結合色素及び、前記標的核酸の一部にハイブリダイズするように形成した少なくとも一種の非標識化プローブとを混合して混合物を形成する段階、
前記非標識化プローブを前記標的核酸にハイブリダイズさせて、プローブ/標的二重鎖を形成する段階、
混合物を加熱するにつれてdsDNA結合色素からの蛍光を測定することによって、前記プローブ/標的二重鎖の融解曲線を生成する段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む、前記方法を提供する。具体的には、融解曲線の形状は、微分融解曲線を作成して、具体的には微分融解曲線上の一つ以上の融解ピークの位置及び形状を検討することによって、分析することができる。この分析は場合により、標的核酸の増幅の間またはその後で実施することができる。上記の飽和性色素または他の飽和性色素も本方法で使用することができる。
【0028】
本発明の別の態様では、標的核酸を分析するためのキットを提供し、前記キットは、標的核酸に少なくとも部分的にハイブリダイズするように構成された非標識化プローブと、飽和dsDNA結合色素とを含む。場合により、本キットは、他の成分、具体的には熱安定性ポリメラーゼ及び標的核酸を増幅するように構成されたオリゴヌクレオチドプライマーを含むことができる。
【0029】
本発明のさらなる態様において、c-kit遺伝子における変異を検出する方法であって、以下の段階:
核酸サンプル、c-kit遺伝子の遺伝子座を増幅するように構成された一対以上のプライマー、熱安定性ポリメラーゼ、及び飽和dsDNA結合色素を含む増幅混合物を準備する段階、
前記核酸サンプルを増幅してアンプリコンを産生する段階、
前記アンプリコンを融解して融解曲線を作る段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む前記方法を提供する。具体的には、プライマーとしては、以下の群から選択されるプライマーの任意のものまたはその全てが挙げられる:GATGCTCTGCTTCTGTACTG(SEQ ID NO.40)及びGCCTAAACATCCCCTTAAATTGG(SEQ ID NO.41);CTCTCCAGAGTGCTCTAATGAC(SEQ ID NO.42)及びAGCCCCTGTTTCATACTGACC(SEQ ID NO.43);CGGCCATGACTGTCGCTGTAA(SEQ ID NO.44)及びCTCCAATGGTGCAGGCTCCAA(SEQ ID NO.45);及びTCTCCTCCAACCTAATAGTG(SEQ ID NO.46)及びGGACTGTCAAGCAGAGAAT(SEQ ID NO.47)。
【0030】
さらに別の態様では、核酸分析方法であって、以下の段階:
標的核酸と飽和dsDNA結合色素とを混合して混合物を形成する段階、
この混合物を加熱するにつれてdsDNA結合色素からの蛍光を測定することによって、標的核酸の融解曲線を作成する段階、
標的核酸の一部とハイブリダイズするように構成した第二の核酸を前記混合物に含める段階であって、前記第二の核酸は標的核酸よりも小さく、標的核酸とは異なる融点を有する前記段階、
第二の核酸を標的核酸の一部にハイブリダイズさせる段階、
第一の核酸からの第二の核酸を融解させる段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む前記方法を提供する。一態様において、前記第二の核酸は、標的核酸に関して融解曲線を作成する前またはそれに続いて添加し得る非標識化プローブであるのに対して、別の態様では、前記第二のヌクレオチドは、具体的には標的核酸の増幅との単一混合物中で産生し得る小さなアンプリコンである。
【0031】
本発明の追加の態様は、PCR分析法であって、以下の段階:
dsDNA結合色素と、標的核酸を増幅するように構成されたプライマーと未知初期量の標的核酸を含むサンプルとを混合して混合物を形成する段階、
dsDNA結合色素の存在下で前記標的核酸を増幅する段階、
複数の増幅サイクルの間の温度範囲を通じてdsDNA結合色素の蛍光をモニターして、複数の融解曲線を作成する段階、
前記融解曲線を使用して標的核酸の初期量を定量する段階、
を含む、前記方法を提供する。非標識化プローブ及び/または飽和色素は、増幅の間に使用することができる。
【0032】
本発明の追加の特徴は、以下の具体的な態様の詳細な説明を考慮すれば当業者には明かであろう。
【0033】
発明の詳細な説明
SYBR(登録商標)Green Iは、PCRの間に蛍光が大きく変化するので、融解分析に広く使用される色素である(Wittwer CTら、BioTechniques、1997年;22巻:130-1頁、134-8頁;Wittwer CTら、Real-Time PCR. In:Persing Dら編、Diagnostic Molecular Microbiology:Principles and Applications. ASM Press,2004年:印刷中)。SYBR(登録商標)Green Iは、2℃以上Tmが異なる種々のPCR産物を識別するために融解分析で最初に用いられた(Ririe KMら、Anal Biochem、1997年;245巻:154-160頁)。続いて、SYBR(登録商標)Green Iは、欠失の同定(Aoshima Tら、Clin Chem、2000年;46巻:119-22頁)、遺伝子型ジヌクレオチドリピートの同定(Marziliano Nら、Clin Chem、2000年;46巻:423-5頁)、及び種々の配列変性の同定(Lipsky RHら、Clin Chem、2001年;47巻:635-44頁;Pirulli Dら、Clin Chem、2000年;46巻:1842-4頁;Tanriverdi Sら、J Clin Microbiol、2002年;40巻:3237-44頁;Hladnik Uら、Clin Exp Med、2002年;2巻:105-8頁)に使用された。しかしながら、遺伝子型の間のTmの差は小さいことがあり、現行装置の解像度が問題である可能性がある。実際、SYBR(登録商標)Green Iは、「日常的な遺伝子型特定の用途には使用すべきではない」と示唆されている(von Ahsen Nら、Clin Chem、2001年;47巻:1331-1332頁)。一般的に使用される二重鎖-特異的DNA色素を使用する融解曲線遺伝子特定によって、融点遷移が広い、高Tmとなること(Douthart RJら、Biochemistry、1973年;12巻:214-20頁)及び、遺伝子型の間でのTm差が圧縮されることがある(図5D)。これらの因子は遺伝子型識別能に関するSYBR(登録商標)Green Iの潜在能力を下げる。
【0034】
ヘテロ接合体DNAは、変性させ、冷却したときに、二つのホモ二重鎖と二つのヘテロ二重鎖産物を作り得る四つの異なる一本鎖から構成されている。理論的には、四種類すべての産生物はTmが異なり、その融解曲線は全四種類の二重鎖と一本鎖遷移体への合成でなければならない。しかしながら、二重鎖特異的DNA色素は融解の間に再分配して(Aktipis Sら、Biochemistry、1975年;14巻:326-31頁)、低融点ヘテロ二重鎖から色素を放出させて高融点ホモ二重鎖へ再分配させてしまう。SYBR(登録商標)Green Iは、PCRと適合性の濃度では飽和していないので(Wittwer CTら、BioTechniques、1997年;22巻:130-1頁、134-8頁;図9)、そのような再配置は説得力があり且つヘテロ二重鎖遷移が存在しないことと一致する(図5D)。
【0035】
本発明の色素は、遺伝子型特定及び走査の用途に使用することができる。たった一種のPCR産物を増幅し、その配列がホモ接合体であるとき、ホモ二重鎖だけが形成される。本発明の色素を使用すると、種々のホモ二重鎖遺伝子型の間のTm差は縮まらず(図5C)、SNPに関してさえも遺伝子型の間をはっきり区別可能である。本発明の色素は、反応中に存在する複数の産物、具体的にはホモ接合体である複数の遺伝子座または複数の標的の増幅から産生したホモ二重鎖を同定及び識別することもできる。対照的に、殆どの場合、おそらく色素の再分配により、SYBR(登録商標)Green Iではほんの少数の産物しか観察することができない(図7A参照)。
【0036】
一種以上のヘテロ接合体標的を増幅する場合、ヘテロ二重鎖産物は、本発明の色素で容易に観測可能である。ヘテロ二重鎖を検出し且つ同定する能力は、ヘテロ接合体遺伝子型の検出並びに未知変異の走査に特に有用である。これは、SYBR(登録商標)Green I、SYBR(登録商標)Gold、及び臭化エチジウムなどのリアルタイムPCRで使用される慣用のdsDNA色素では可能ではなく、ヘテロ二重鎖産物が観察できない。
【0037】
ヘテロ二重鎖は、融解の間にその完全相補体と再連結し、ホモ二重鎖を形成することができる。PCR終了時の産物濃度は高いので、この再連結は急速に起きる。特にホモ二重鎖産物のTmとホモ二重鎖産物のTmとの間のように、産物の融解温度が近い場合、時間を制限することによって、再連結をできるだけ少なくすることができる。融解の間の鎖の再連結に加えて、鎖のその完全整合(perfect match)、またはそのミスマッチ相補鎖への選択的ハイブリダイゼーションは、冷却速度の影響を受ける。本明細書に示された条件下では、ヘテロ二重鎖の形成は、急速冷却によって有利に働き、-0.1℃/秒よりも遅い速度では消失することが多い(図2参照)。これは、冷却速度がずっと遅い(-0.01〜約-0.02℃/秒)が、それでもヘテロ二重鎖が効率的に形成される変性HPLC法(Xiao Wら、Hum Mutat、2001年;17巻:439-74頁)とは対照的である。おそらく、ホモ二重鎖とヘテロ二重鎖の形成の相対速度が産物サイズに大きく依存し、小さなアンプリコンを使用して得られた結果がdHPLCで通常使用される大きな産物に対して典型的ではないのだろう。
【0038】
ホモ接合体遺伝子型の間の識別は、分析時間を長くして、ゆっくりした速度で融解させることによって改善することができる。融解曲線遺伝子型特定における潜在的なエラーの一つの原因は、Tmに対するDNA濃度の効果である。PCR条件下で50%GC含量のランダム100 bpアンプリコンを使用すると、0.05μMと0.5μMでの産物間のTmの差は約0.7℃である(von Ahsen Nら、Clin Chem、2001年;47巻:1956-61頁;Wetmur JG、Crit Rev Biochem Mol Biol、1991年;26巻:227-59頁)。異なるホモ接合体遺伝子型のTmが非常に近接している場合には、この変化は非常に重要となることがある。しかしながら異なるPCRサンプルは、同一産物濃度ではプラトーとなる傾向があるので、増幅後濃度の差は通常、最小である。また、リアルタイム蛍光法によってアンプリコン濃度を推定し、より大きな遺伝子型特定精度に関してもTmを調節することも可能である。あるいは非対称PCRを使用して、PCR産物の最終濃度を自動的に制限することができる。
【0039】
本発明の色素を使用すると、ホモ接合体から全ての一塩基ヘテロ接合体を識別することが可能である。ヘテロ二重鎖の検出において、絶対融解温度及びDNA濃度の影響は、ホモ接合体遺伝子型の間の相違に関与する方法ほど重要ではない。ヘテロ二重鎖は、特に遷移の「初期」の低温部分で融解曲線の形状に影響する。X軸を遷移の「後期」の高温部分に重ね合わせるように移動させることによって温度に整合させることができる。ヘテロ二重鎖が存在するか存在しないかは、高い精度で推測することができる。従ってPCR増幅せずに得られたサンプルにおいてさえもDNA濃度への配慮は重要でないかもしれない。
【0040】
装置の精度がどうであろうとも、遺伝子型によっては殆どTmが同一であるものもあるだろう。同一Tmをもつホモ接合体変異体を検出する一つの方法は、この変異体を一緒に混合することである。得られたヘテロ二重鎖は、ホモ二重鎖よりも低温で融解し、主な融点遷移より前に標準化融解曲線における降下として示されるだろう。
【0041】
かくして、現在利用可能なPCR増幅装置を使用すると、本発明の色素は、SYBR(登録商標)Green Iを使用して現在は同定できない融解曲線の遷移において、ヘテロ二重鎖を識別することができる。SYBR(登録商標)Green Iが低融点遷移を容易に識別できない理由を示す一つの有力な手掛かりを図7Aに示す。安定性の高くなっている幾つかのDNAフラグメントが存在する場合、低温ピークは、色素S5(実施例1に示す構造)のような色素と比較してSYBR(登録商標)Green Iでは非常に小さい。融解の間、SYBR(登録商標)Green Iは、低温二重鎖から放出されて、より高温で融解する二重鎖に結合するだけかもしれない。これによって、それぞれの連続するピークが直前のものよりも高くなって、仮にも測定可能であるならば最も低温のピークは非常に小さくなる。図7Bに示されているように、低温の融解産物は、色素S5によっては容易に検出されるが、SYBR(登録商標)Green Iでは検出されない。
【0042】
色素S5を使用する利点によって、PCRと適合可能で、且つPCR適合可能な濃度での遺伝子型特定に適した他のdsDNA色素が同定されてきた。本発明の方法で有用な色素の多くは、シアニン属である。シアニン色素は、窒素を含む二個の複素環を結合する鎖の中に配置された一つ以上の二価部分「-C(R)=」を含む色素である。基:Rは水素またはいずれかの炭素置換基であってもよく、水素または、場合により置換されていてもよいC1-6アルキルを含むアルキルが挙げられる。シアニン色素中に二個以上の「-C(R)=」が存在する場合、「R」はそれぞれ独立して選択されてもよい。そのようなシアニン色素は、本明細書中に記載する代表的な一般式より詳細に定義されるようなモノマーまたはダイマーであってもよい。多くのシアニン変異体、具体的にはこの二価部分が=N-、-C(R)=N-などのような色素もまたよく適合する。シアニン色素の他に、アクリジン-ベースの色素、フェナントリジニウムインターカレーター、及びフェナントロリン-ベースの金属インターカレーター(metallointercalator)等を含む(これらに限定されない)、dsDNA結合色素の他のファミリーも、本明細書に記載のPCR反応混合物、方法及び組成物で有用であると考えられる。
【0043】
本PCR反応及び融解曲線混合物、方法、並びに組成物で有用な代表的な色素としては、PO-PRO(商標)-1、BO-PRO(商標)-1、SYTO(登録商標)9、SYTO(登録商標)43、SYTO(登録商標)44、SYTO(登録商標)45、SYTOX(登録商標)Blue、POPO(商標)-1、POPO(商標)-3、BOBO(商標)-1、BOBO(商標)-3、LO-PRO(商標)-1、JO-PRO(商標)-1、YO-PRO(登録商標)-1、TO-PRO(登録商標)-1、SYTO(登録商標)11、SYTO(登録商標)13、SYTO(登録商標)15、SYTO(登録商標)16、SYTO(登録商標)20、SYTO(登録商標)23、TOTO(商標)-3、YOYO(登録商標)-3(Molecular Probes、Inc.、Eugene、OR)、GelStar(登録商標)(Cambrex Bio Science Rockland Inc.、Rockland、ME)、チアゾールオレンジ(Aldrich Chemical Co.、Milwaukee、WI)、EvaGreen(商標)(Biotium、Hayward、CA)、BEBO、BETO、BOXTO(TATAA Biocenter AB.、Goteborg、スウェーデン)、及び本明細書に記載の種々の新規色素が挙げられる。その大部分は飽和性色素(saturation dye)である。
【0044】
PCR反応混合物、方法及び組成物で使用する本明細書に記載の代表的なシアニン色素としては、ピリジニウム、ピリミジニウム、キノリニウム、イソキノリニウムまたはプリニウムコア構造をもつ非対称シアニン類のモノマーまたはダイマー(二量体)並びに一般的に式I:
【0045】
【化5】

【0046】
{式中、
【0047】
【化6】

【0048】
部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香族または窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキル及びC2-6アルキルを含むアルキルである)から選択される部分である;
R2は、アルキル、たとえばC1-6アルキル及びC2-6アルキル、シクロアルキル、たとえばC3-8シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、たとえばアリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキル及びアリールカルボニル、アルキル及びアリールカルボキサミド、アルキル及びアリールスルホニル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、アルキレンスルホン酸など、環式ヘテロ原子-含有部分、あるいは、非環式ヘテロ原子-含有部分、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;代表的なヘテロ原子-含有部分としては、場合により置換されたヘテロアルキル、たとえばメトキシメチル、エトキシエチルなど、複素環、たとえばピペリジニルなど、アルキル及びアリールスルホネート、たとえばメチルスルホネート、4-クロロフェニルスルホネートなど、アルコキシ、たとえばメトキシ、エトキシなど、アミノ、たとえばメチルアミノ、ジメチルアミノなど、カルボニル誘導体、たとえばアルキル及びアリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニルなど、ヘテロアルケニル、たとえばアルケニルアミノアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキルアミノアルケニル、アルキルオキシアルケニル、アルキリデンアミノアルキルなど、ヘテロアリル、エステル、アミン、アミド、リン-酸素、並びにリン-硫黄結合;並びに米国特許第5,658,751号及びPCT国際公開第WO00/66664号に記載のようなヘテロ原子-含有部分が挙げられる;この開示はその全体が本明細書中、参照として含まれる;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、及びR10はそれぞれ独立して、水素、アルキル、たとえばC1-6アルキル及びC2-6アルキル、並びにアリールカルボニルから選択され;
n=0、1または2であり;及び
Qは、複素環、たとえばピリジニウム、ピリミジニウム、キノリニウム、またはプリニウムであり、それぞれ場合により置換されていてもよい}により表されるものが挙げられる。
【0049】
本明細書中で使用する「アルキル」なる用語は、通常、1〜約12個の炭素原子を含む線状または場合による分岐炭化水素部分を指し、具体的にはメチル(Me)、エチル、プロピル、ブチル、ドデシル、4-エチルペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用する「シクロアルキル」なる用語は、通常、3〜約14個の炭素原子を含む、少なくともその一部が1または2個の環を形成する線状または場合により分岐の炭化水素部分を指し、具体的にはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロペンチル、3,5-ジメチルシクロヘキシルエチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書中で使用する「アリール」なる用語は、通常、環式芳香族部分を指し、具体的にはフェニル(Ph)、ナフチル、フリル、チエニル、ピロロ、ピラゾロ、イソキサゾロ、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、キノキサリニル、キナザリニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書中で使用する「場合により置換された」なる用語は、通常、炭素、窒素、酸素または硫黄原子などの親基に存在する一つ以上の水素原子またはローン電子対が場合により置換基、たとえばハロ;ヒドロキシ;アミノ;ニトロ;チオ;スルホネート;ニトリル、アルキルニトリル、アルキルニトリルチオ;アルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ハロシクロアルキル;アルコキシ、シクロアルコキシ、ハロアルコキシ;モノアルキル及びジアルキルアミノ;トリアルキルアンモニウム;アミノアルキル;モノアルキル及びジアルキルアミノアルキル;トリアルキルアンモニウムアルキル;トリアルキルアンモニウムアルキルチオ;アルキルチオ;シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、ヌクレオシジルチオ;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、及びアリールカルボニル;アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ;トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、及びアリールカルボニルオキシ;アルキル、ハロアルキル、シクロアルキル、及びアリールスルホニル;フタルイミド;ベンゾ-またはナフトチアゾリウム;ベンゾ-またはナフトオキサゾリウム;並びにカルボキシル誘導体、たとえばカルボン酸、エステル、チオエステル及びアミドにより置換されたことを指す。ジェミナル及び近隣の水素を含む、近接する水素原子の置換は、そのような近接する水素原子を置換する置換基が一緒になって、それぞれスピロ環または融合環を形成するようなものであると考えられる。
【0053】
上記用語はそれぞれ化学的に関連する手段で組み合わせられて他の部分を参照すると考えられる。たとえばアリールアルキルは、本明細書中に定義のアリール基が本明細書中に定義のアルキル基に結合して、ベンジル、フェネチル、ピコリニル、3,5-ジメトキシピコリン-4-イルなど(これらに限定されない)を含む構造を形成することを指す。
【0054】
本明細書中に記載のシアニン色素構造はキラル中心を含み得ると考えられる。そのような場合、全ての立体異性体は、他に記載しない限り、これらのシアニン色素構造の記載に含まれるものと考えられる。そのような立体異性体としては、純粋な光学活性異性体、ラセミ混合物、一種以上の立体異性体配置のいずれかの相対量を含むジアステレオマーの混合物が挙げられる。
【0055】
本明細書中に記載のシアニン色素構造は、幾何中心を含んでいてもよいと考えられる。そのような場合、全ての幾何異性体は、他に記載しない限り、シアニン色素構造の記載に含まれるものと考えられる。そのような幾何異性体としては、幾何配置の純粋形または種々の混合物としてのシス、トランス、E及びZ異性体が挙げられる。シアニン色素構造に含まれる二重結合の性質に依存して、そのような二重結合異性体は、溶媒組成、溶媒の極性、イオン強度などの条件に依存してシスとトランスの間、またはEとZ配置の間を相互転換し得るとも考えられる。
【0056】
さらに、電荷Zが0より大きいとき、式Iの化合物の幾つかの共鳴構造が存在すると考えられる。具体的には、電荷Zは形式的には式Iに示されたような窒素原子上に局在化し得るか、あるいは複素環Q上に局在化し得る。式Iの帯電化合物の共鳴構造は、代表的な構造:
【0057】
【化7】

【0058】
{式中、
【0059】
【化8】

【0060】
、X、R2、R3、R9、R10、及びQは、式Iに関して定義した通りであり、t=1、Z=1、及びn=1である}のような式Iの化合物の二重結合-一重結合配置を代えることによって示すことができる。本明細書中に記載のシアニン色素化合物は、幾つかの考え得る共鳴構造のいずれでも包含する。形式的な電荷の位置、かくして好ましい共鳴構造は、部分:
【0061】
【化9】

【0062】
、X、R2、R3、R9、R10、及びQの性質によって影響を受ける。
式Iの化合物が正味電荷(net charge)をもつ場合、たとえばZが1である場合、または式Iの化合物上にアンモニア基、若しくはスルホン酸基などの帯電置換基が存在する場合、式Iのこれらの化合物は、対イオンを伴う。本明細書のシアニン色素構造の記載には、全ての一価、二価または多価対イオンが含まれる。代表的な対イオンとしては、負に帯電した対イオン、たとえばヨウ化物、塩化物、臭化物、ヒドロオキシド、オキシド、アセテート、トリフルオロアセテート、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェートなどが挙げられ、正に帯電した対イオンとしては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、ポリアルキルアンモニウムなどが挙げられる。そのような対イオンは、使用する合成法、精製プロトコルまたは他のイオン交換プロセスから発生することができる。
【0063】
対イオンの性質または種類は、本明細書に記載のシアニン色素の機能性に影響しないと考えられる。本明細書に記載の色素を本明細書に記載のPCR反応混合物、方法及び組成物を実施するのに使用する溶媒または他の媒体に溶解すると、付随する対イオンは溶媒または他の媒体に存在する他の対イオンと交換すると考えられる。そのような追加の対イオンは、溶媒イオン、塩、緩衝液及び/または金属であってもよい。
【0064】
基R2は実質的に、式I:
【0065】
【化10】

【0066】
の親化合物{式中、t=Z=0である}と式R2-L{式中、Lは好適な離脱基であり、R2は上記定義の通りである}を有する化合物との間の求核反応から生じる実質的にいずれの基であってもよいと考えられる。具体的には、R2は場合により置換されたアルキル、アシル、アリール、スルホン酸またはスルホニル基であり、それぞれ場合により置換されていてもよい。具体的な離脱基Lとしては、ハロゲン化物、たとえばクロリド及びブロミド、アクリレート、たとえばアセテート、ホルメート、及びトリフルオロアセテート、スルホネート、たとえばメチルスルホネート、トリフルオメチルスルホネート、及びトリルスルホネート、サルフェート、たとえばメチルサルフェートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
具体的な一態様では、Qは複素環、例えば:
【0068】
【化11】

【0069】
{式中、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボン酸誘導体、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルニトリルチオ、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、他のチオエステル、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、ヌクレオシジルチオ(それぞれ場合により置換されていてもよい)、ピペリジノ、ピペラジノ(それぞれ場合により、アルキル、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルで置換されているか、または場合により窒素上でアルキル基で四級化されていてもよい)からなる群から選択される}であるが、これらに限定されない。
【0070】
別の具体的な態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14の一つは、米国特許第5,658,751号に記載のようにヘテロ原子含有部分である。もう一つの具体的な態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14の一つは、反応性基、たとえばハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシド、アミン、カルボン酸、ハライド、アルコール、アルデヒド、チオール、アルキル、及びアリールチオール、アルキル及びアリールスルホニル、スクシンイミジルエステル、ケトン並びに、色素コア構造に具体的には炭素-炭素結合、アミン、アミド、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、ケトン、チオウレア及びシッフ塩基(これらに限定されない)の形成を介して部分を結合するのに使用し得るチオシアネートが挙げられる。別の具体的な態様では、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14の一つは、式:
【0071】
【化12】

【0072】
{式中、
【0073】
【化13】

【0074】
、X、R2、t、Z、R3、R9、R10、Q、及びnは式Iに定義の通りである}を有する色素BRIDGE-DYEであり、BRIDGEは単一の共有結合または、結合がアルキル、エーテル、チオエーテル、アミン、エステル若しくはアミド結合;単一、二重、三重または芳香族炭素-炭素結合;リン-酸素、リン-硫黄、窒素-窒素、または窒素-酸素結合;または芳香族若しくは複素環式芳香族結合のいずれかの組み合わせを含むような、線状若しくは分岐、環式若しくは複素環式、飽和若しくは不飽和の1〜16個の非水素原子、たとえば炭素、窒素、ホスフェート、酸素及び硫黄を有する共有結合である。態様によっては、このダイマー構造はBRIDGEに関して対称であり、別の態様では、このダイマー構造はBRIDGEに対して非対称であると考えられる。ここで例えば
【0075】
【化14】

【0076】
、X、R2、t、Z、R3、R9、R10、及びnはどれもそれぞれ独立して、BRIDGEの両側でその都度選択される。
本発明で使用する具体的な色素としては、ピリジニウムまたはピリミジニウムコア構造をもつ式Iのシアニン色素が挙げられ、ここでXは酸素または硫黄であり;
【0077】
【化15】

【0078】
部分は、場合により置換された融合ベンゾ、場合により置換された融合ナフタレノ、場合により置換された融合ピリジノ、場合により置換された融合ピリミジノ、場合により置換された融合キノリノなどを表し;n=0または1であり;t=0または1であり;R2はアルキル、たとえばメチル及びエチル、場合により置換されたアリール、たとえばフェニル若しくはトリル、アルキレンスルホネート、たとえばプロピレンスルホン酸、またはアルキルスルホニル、たとえばCH3(CH2mSO2{式中、mは0、1、2または3である}であり;Qは:
【0079】
【化16】

【0080】
からなる構造群から選択される複素環である{式中、R4は、水素、アルコキシ、たとえばメトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど;アルキルチオ、たとえばメチルチオ、エチルチオなど;ヘテロサイクリルアルキル、たとえば場合により置換されたピペリジニル、ピロリジニル、ピペラジニルなど;またはヘテロサイクリルアルキル、たとえば帯電基、たとえば4,4-ジメチルピペラジニウム-1-イルなど;または反応性基、たとえばハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、アルキル及びアリールチオ、アルキル及びアリールスルホニル、アミノ、ホルミル、アルキル及びアリールカルボニル、カルボキシル誘導体などであり;
R5はC1-6アルキル、たとえばメチル、エチル、ブチル、sec-ブチル、イソブチルなど;場合により置換されたフェニル;または(CH23N+(Me)3であり;及び
R6、R7、及びR8はそれぞれ独立して水素またはメチルである}。
【0081】
本明細書で使用する具体的な色素は、ピリジニウムまたはピリミジニウムコア構造を有する式Iのシアニン色素である{式中、Xは酸素または硫黄であり;
【0082】
【化17】

【0083】
部分は場合により置換されたベンゾオキサゾリウム若しくはベンゾチアゾリウム環を形成する、場合により置換された融合ベンゾであるか、または場合により置換されたナフトオキサゾリウム若しくはナフトチアゾリウム環を形成する、場合により置換された融合ナフトを表し;n=0または1であり;t=0または1であり;R2はアルキル、たとえばメチル、アリール、たとえばフェニル若しくはトリル、アルキレンスルホネート、たとえばプロピレンスルホン酸、またはアルキルスルホニル、たとえばCH3(CH2mSO2(式中、mは0、1、2または3である)であり;Qは4-ピリジニウムまたは4-ピリミジニウム複素環である}。
【0084】
本明細書中で使用する具体的な色素としては、本明細書中で記載のPCR反応混合物、方法及び組成物で有用な、キノリンコア構造をもつシアニン色素も挙げられ、一般に、式II:
【0085】
【化18】

【0086】
{式中、
【0087】
【化19】

【0088】
部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香族または窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、またはC(CH32、及びNR1(式中、R1は水素若しくはC1-6アルキルである)から選択される基であり;
R2はアルキル、たとえばC1-6アルキル及びC2-6アルキル、シクロアルキル、たとえばC3-8シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、アルキレンスルホネート、環式ヘテロ原子含有部分、または非環式ヘテロ原子含有部分、それぞれ場合により置換されていてもよい;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、及びR10はそれぞれ独立して、水素及びアルキル、たとえばC1-6アルキルから選択され;
n=0、1または2であり;及び
R4、R5、R8、R11、R12、R13、及びR14は式Iに関して定義の通りであり、但し、R4は、約115未満の分子量を有する部分であるか、具体的には約105未満の分子量を有する部分である}により記載される。
【0089】
本発明で使用する具体的な色素としては、式IIのシアニン色素が挙げられる{式中、
【0090】
【化20】

【0091】
部分は、場合により置換された融合ベンゾを表し、それによりベンゾオキサゾリウムまたはベンゾチアゾリウム環を形成する;
Xは酸素または硫黄であり;n=0または1であり;t=0または1であり;R2はメチルであり;
R4は水素、C1-6アルキル、たとえばメチルであるか、または場合により置換されたフェニルであり;
R5はC1-6アルキル、たとえばメチル、または場合により置換されたフェニルであり;
R8は水素であり、及び
R11、R12、R13、及びR14は水素またはアルコキシ、たとえばメトキシである}。
【0092】
他の態様では、本発明で使用する色素としては、具体的には式IIのシアニン色素が挙げられ、式中、
【0093】
【化21】

【0094】
部分は、場合により置換された複素環、たとえば1-メチルピリド及び3-ブロモ-1-メチルピリドであり;Xは酸素または硫黄であり;n=0または1であり;t=z=0であり;
R4は水素またはC1-6アルキル、たとえばメチルであり;
R5はC1-6アルキル、たとえばメチル、場合により置換されたフェニルまたはヘテロアルキル、たとえば-(CH23N(Me)3などの帯電基をもつヘテロアルキルであり;
R8は水素であり;及び
R11、R12、R13、及びR14は水素、アルキル、たとえばメチル、またはアルコキシ、たとえばメトキシである。
【0095】
別の態様では、式Iの二つの化合物が一緒になってダイマーを形成する。この二つの化合物は、式Iの化合物のそれぞれの上にある上記定義の置換基:R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14の一つと単一の二価リンカーとを置き換えることによって互いに結合する。具体的には、式Iの二つの化合物を一緒にしてダイマーを形成し、ここで式Iの二つの化合物上にある二つのR5置換基は単一の二価リンカーによって置き換えられる。式Iの化合物の対称ダイマー及び非対称ダイマーのいずれも、本明細書中に含まれるものと考えられる。式Iの化合物の非対称ダイマーの場合、異なる置換パターン、または異なる複素環Qをもつ式Iの化合物からダイマーを形成することによってそのような非対称性となると考えられる。さらにそのような非対称性は、異なる置換基が二価リンカーによって置き換わっている(具体的には、式Iの第一の化合物上でR5と二価リンカーとが、式Iの第二の化合物上でR8と二価リンカーとが置き換わっている)式Iの化合物からダイマーを形成することによってできる。
【0096】
もう一つの態様では、式IIの二つの化合物は、一緒になってダイマーを形成する。この二つの化合物は、式IIの化合物のそれぞれにある上記定義の置換基:R4、R5、R8、R11、R12、R13、及びR14の一つと単一の二価リンカーとを置き換えることによって互いに結合する。具体的には、式IIの二つの化合物を一緒にしてダイマーを形成し、ここで式IIの二つの化合物上にある二つのR5置換基は単一の二価リンカーによって置き換えられる。式IIの対称ダイマー及び非対称ダイマーのいずれも本明細書中に含まれるものと考えられる。式IIの化合物の非対称ダイマーの場合、異なる置換パターン、または異なる複素環Qをもつ式IIの化合物からダイマーを形成することによってそのような非対称性となると考えられる。さらにそのような非対称性は、異なる置換基が二価リンカーによって置き換わっている(具体的には、式IIの第一の化合物上でR5と二価リンカーとが、式IIの第二の化合物上でR8と二価リンカーとが置き換わっている)式IIの化合物からダイマーを形成することによってできる。
【0097】
式Iの化合物によって形成したダイマーシアニン色素構造は、式III:
【0098】
【化22】

【0099】
{式中、
【0100】
【化23】

【0101】
及び
【0102】
【化24】

【0103】
部分は、それぞれ独立して選択された、場合により置換された融合単環式または多環式芳香族または窒素含有芳香族複素環を表し;
X及びX'はそれぞれ独立して、酸素、硫黄、セレン、テルルから、またはC(CH32、NR1、またはNR1'(式中、R1及びR1'はそれぞれ独立して水素またはC1-6アルキルである)から選択される基から選択される;
R2及びR2'はそれぞれ独立して、アルキル、たとえばC1-6アルキル、シクロアルキル、たとえばC3-8シクロアルキル、アリール、アリールアルキル、たとえばアリール(C1-2アルキル)、環式ヘテロ原子含有部分、または非環式ヘテロ原子含有部分から選択され、それぞれ場合により置換されていてもよい;
t=0または1であり;
t'=0または1であり;
Z及びZ'はそれぞれ独立して0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、R10、R3'、R9'、及びR10'はそれぞれ独立して水素及びアルキル、たとえばC1-6アルキルから選択され;
n=0、1または2であり;
n'=0、1または2であり;
BRIDGEは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アルキルアミンジイル、アルキルアルキルアンモニウムジイルなど、たとえば(CH2p、(CH2pN+Me2(CH2q、(CH2pN+Me2(CH2qN+Me2(CH2rなど(式中、p、q、及びrはそれぞれ独立して1、2及び3から選択される)から選択される2〜約30個の二価単位を含む二価リンカーであり;及び
Q及びQ'は:
【0104】
【化25】

【0105】
の構造群からそれぞれ独立して選択される複素環であり、式中、R4、R5、R6、R7、R8、R11、R12、R13、及びR14は式IIIの化合物のそれぞれの場合において、以下の群から独立して選択される:水素、ハロゲン、アミノ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボン酸誘導体、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、ヌクレオシジルチオ、これらはそれぞれ場合により置換されていてもよい、ピペリジノ、ピペラジノ、これらはそれぞれ場合によりアルキル、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルで置換されていてもよいか、または場合により窒素上でアルキル基で四級化されていてもよい}によって表すこともできる。
【0106】
さらに別の態様では、R2及びR3は一緒に融合して、以下の式の構造を形成する:
【0107】
【化26】

【0108】
{式中、wは1〜5であり;
vは0または1であり;及び
Y、X、R9、R10、n、及びQは式Iの定義の通りである。式VII{式中、w、v、Y、X、R9、R10、n、及びQは同一または異なっていてもよい}の二つの色素は、上記定義の如くBRIDGEと一緒になって式IIIと類似構造のダイマー色素を形成するとも考えられる。
【0109】
本発明のPCR反応混合物、方法及び組成物で有用な具体的なシアニン色素としては、S5、PO-PRO(商標)-1、BO-PRO(商標)-1、SYTO(登録商標)43、SYTO(登録商標)44、SYTO(登録商標)45、SYTOX(登録商標)Blue、POPO(商標)-1、POPO(商標)-3、BOBO(商標)-1、BOBO(商標)-3、BEBO、及び一般式IV:
【0110】
【化27】

【0111】
を有する他の色素、並びに実施例1に示された種々の新規色素、並びに一般式V:
【0112】
【化28】

【0113】
{式中、nは0、1または2であり;R2はアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネートなどであり;R5はアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換されたフェニルなどであり;Xは酸素または硫黄であり;A、A'、及びBはそれぞれ、一つ以上の独立して選択された任意選択の置換基を表し、たとえばアルキル、ハロ、アミノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキル及びアリールスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アルキル及びアリールチオ、ホルミル、アルキル及びアリールカルボニル、カルボキシル誘導体、モノ及びジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、アルキルニトリルチオ、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、ヌクレオシジルチオ、または複素環、たとえばピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、ベンゾチアゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、フタルイミド、ヌクレオシジルチオ、これらはそれぞれアルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルで場合により置換されていてもよく、または窒素上でアルキル基などで場合により四級化されていてもよい;及びBRIDGEは、式:(CH2pN+Me2(CH2q(式中、p及びqは独立して2または3である)を有する二価リンカーであり、二価リンカー:(CH23N+Me2(CH23を含む}を有する他の色素が挙げられる(これらに限定されない)。これらの色素が正味荷電を有する場合、これらは一つ以上の対イオン、たとえば対アニオン、たとえばハライド、アルカノエート、ホスフェートなど、及び対カチオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウムなどを伴っていると考えられる。
【0114】
本明細書中で使用する他の具体的な色素としては、YO-PRO(登録商標)-1、TO-PRO(登録商標)-1、SYTO(登録商標)9、SYTO(登録商標)11、SYTO(登録商標)13、SYTO(登録商標)15、SYTO(登録商標)16、SYTO(登録商標)20、SYTO(登録商標)23、TOTO(商標)-3、YOYO(登録商標)-3(Molecular Probes、Inc.)、GelStar(登録商標)(Cambrex Bio Science Rockland Inc.、Rockland、ME)、チアゾールオレンジ(Aldrich)、BETO、BOXTO、及び一般式VI:
【0115】
【化29】

【0116】
{式中、nは0、1または2であり;R2はアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネートなどであり;R5はアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換されたフェニルなどであり;Xは酸素または硫黄であり;A、B、及びB'はそれぞれ以下の一つ以上の独立して選択されたいずれかの置換基を表す、たとえばアルキル、ハロ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、フェニル、ヒドロキシ、アルコキシ、チオ、及びアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、ヌクレオシジルチオ、ベンゾチアゾリウム、ベンゾオキサゾリウム、これらはそれぞれ場合によりアルキル、アミノ、モノまたはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルなどで置換されていてもよい;及びBRIDGEは、式:(CH2pN+Me2(CH2qを有する二価リンカーであり、式中、p及びqは独立して2または3であり、二価リンカー:(CH23N+Me2(CH23を含む}を有する他の色素が挙げられる(これらに限定されない)。これらの色素が正味荷電を有する場合、これらは一つ以上の対イオン、たとえば対アニオン、たとえばハライド、アルカノエート、ホスフェートなど、及び対カチオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウムなどを伴っていると考えられる。
【0117】
初期の結果からは、S5、PO-PRO(商標)-1、JO-PRO(商標)-1、BO-PRO(商標)-1、G5、H5、S5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、N7、O7、P7、Q7、R7、T7、V7、Z7、G8、L8、P8、T8、V8、W8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、V10、F11、及びH11がヘテロ二重鎖検出用に大変有望な色素であるということが判明した。これらの色素には幾つかの意外な特徴がある。第一にこれらの色素は、50%飽和ではPCRを有意に阻害しない。実際、100%にかなり等しい飽和レベルは、これらの色素の殆どでPCRと適合性である。第二に、この色素のあるものは青色範囲(blue range)で発光するが、これらは現在利用可能な種々の装置の蛍光チャネルでの使用に適合している。この光学機器をこれらの色素の励起/発光スペクトルとよく合わせるように調整することによって、定量的または定性的な増幅分析で使用するための感度をさらに上げることができる。
【0118】
上記シアニン色素は具体例であって、他のシアニン色素も記載の方法で有用であると考えられる。
キノリニウムベースの非対称シアニン、たとえばSYBR(登録商標)Green I、SYTOX(登録商標)Green、SYTO(登録商標)14、SYTO(登録商標)21、SYTO(登録商標)24、SYTO(登録商標)25、TOTO(登録)-1及びYOYO(登録商標)-1(これらに限定されない)は、閉管系での複数の産物の検出またはヘテロ二重鎖検出で有用であるとは証明されていない。色素がキノリニウムベースのシアニンのモノマーである場合、キノロニウム環の窒素の隣の炭素上の嵩高い置換基(R4に等しい位置)は、本発明の方法で機能する色素の能力を妨害すると考えられる。嵩高い置換基としては、たとえば約105の分子量よりも大きい分岐脂肪族部分で置換した長鎖分岐ヘテロ原子含有脂肪族または芳香族部分が挙げられる。しかしながら、この制限は、先に記載したピリジニウムシアニンまたはピリミジニウムシアニンのいずれにも当てはまらない。キノリニウムベースのシアニンダイマーの場合には、二価フラグメント:
【0119】
【化30】

【0120】
によって定義されるように、左と右の環系との間の距離も官能基に影響するようである。官能基は、実施例1で教示されるように、ヘテロ二重鎖検出によって決定することができる。SYBR(登録商標)Gold、Pico Green及び臭化エチジウムなどのPCRのリアルタイムモニタリングで有用であると先に記載の他の色素は、閉管PCR系におけるヘテロ二重鎖検出には効果的でないことも判明した。
【0121】
本発明で使用するための色素は、SNP遺伝子型特定の色素ベースの方法で使用することができ、それぞれのSNP遺伝子型に対して二つの非標識化オリゴヌクレオチドプライマーと一つのウェルだけが必要であり、リアルタイムPCRは必要がない。dsDNA色素は、ヘテロ接合体が増幅後の融解曲線の形状を変えるヘテロ二重鎖の存在によって同定されるように使用する。異なるホモ接合体は、そのTmの違いによって、あるいは既知のホモ接合体DNAサンプルと未知サンプルとを混合し、ヘテロ二重鎖を探索することによって識別する。具体的には、PCRプライマーデザインは、非常に短いアンプリコンを使用することができ、好ましくはSNPのすぐ隣にフランクキングするので大幅に簡便化される。そのような短いアンプリコンは非常に効率的に増幅し、代替ターゲットの増幅の危険性を軽減し、サーマルサイクリングを非常に迅速化する。
【0122】
PCRプライマーのデザインは正確な技術ではなく、試行錯誤も必要なことが多い。PCRプライマーデザインのルールのいくつかは一般的には許容されているが、このルールの妥当性は試験されていない。融解曲線に対する種々の遺伝子型の効果は、短いアンプリコンを使用すると大きいので、短いアンプリコン(≦100 bp)が好ましく、できるだけ最短のアンプリコン(≦50 bp)がしばしば最も優れている。従って、dsDNA色素を使用して遺伝子型特定するためのプライマーを設計するためには、具体的にはSNP位置のすぐ右のそれぞれのフランキングプライマーで開始する。即ち、アンプリコンの長さはプライマー1の長さ+プライマー2の長さ+試験すべき領域の長さ(SNPの長さは1である)になろう。効率的な増幅に関しては、二つのプライマーの融解温度(Tm)は殆ど同じでなければならない。プライマーに関して都合の良いTmは50〜70℃かもしれない。最も高いTmをもつプライマーは、サーマルサイクリングを最も早くできるのに対し、低いTmをもつプライマーは一般に安価であり、最短のアンプリコンを産生するので、遺伝子型特定の差が大きくなる。12〜30塩基のプライマー長を通常使用する。具体的には、それぞれのプライマーは、計算したTmが所望のTmに最も近くなるまで、SNPから離して構築する。Tm計算法は、当該技術分野で公知である(たとえば、Clin.Chem.、2001年;47巻:1956-61頁)。Tmができるだけ近くぴったり合うときは、通常、プライマー長は同一ではないだろう。たとえば、第V因子SNPアッセイ(図1)で使用するプライマー長は、17塩基長と24塩基長であり、いずれも計算したTmは62℃で近接していた。
【0123】
増幅用のサーマルサイクリングパラメーターは、非常に短いかもしれない。というのも、このような短いアンプリコンには、プライマー伸長が殆ど必要とされないからである。サーマルサイクリングの前にゲノムDNAの初期変性後、変性及びアニール温度を維持する必要はなく、伸長時間は10秒以下であってもよい。プログラムした伸長時間をゼロに縮めて、実施すべきそれぞれのサイクルを20秒未満にすることさえも可能である。あるいは、1秒の伸長時間を使用することができる。アンプリコンが非常に短いので、大量のポリメラーゼは必要ない(<0.6単位/10μlを使用することができる)。
【0124】
従って、以下の具体的な段階は本発明に従ったSNP遺伝子型特定に続いてもよい:
1. 標的Tmを選択し、SNP位置の直ぐ隣りから各プライマー3'-末端が開始する。場合により一つのプライマーを、SNP位置からやや離してシフトさせて、プライマー間の3'相補性を回避してプライマー二量体が形成する危険性を軽減することができる;
2. 計算したTmが標的Tmとできるだけ近くなるまで、それぞれのプライマーを外側へ設計する;
3. PCR試薬と、ヘテロ二重鎖検出を可能にするdsDNA色素の存在下で、サンプルを迅速にサーマルサイクルにかける;
4. 変性のあと、少なくとも-0.1℃/秒、好ましくは少なくとも-2℃/秒の速度、最も好ましくは少なくとも-5℃/秒の速度で急速に冷却することによりヘテロ二重鎖を形成する;
5. 0.1〜0.5℃/秒で加熱し、融解曲線を得る;
6. 増幅が失敗したら、プライマーの一つの3'末端を1塩基移動させて、うまくいくまで全ての段階を繰り返す。
【0125】
具体的な実施例では、全てのヘテロ接合体を融解曲線に対するヘテロ二重鎖の効果によって検出することができる(図4)。さらに、6つのホモ接合体の差のうち4つ(A対C、A対G、C対T、及びG対T)はTmシフトによって非常に容易に識別できる(図4、矢印)。しかしながら、A対Tホモ接合体またはC対Gホモ接合体を識別するには、高解像度の融解が必要なことが多く、場合によってはホモ接合体は、現行の高解像度の融解をもってしても識別できないことがある。ヒトゲノムでのSNPの頻度を考慮するとき、SNP84%でホモ接合体(A対C、A対G、C対T、及びG対T)を容易に識別できるが、16%は難しい(A対T及びC対G)。実際、事例の4%(16%の4分の1)で、最も近い近隣分析を使用する安定計算(stability calculation)は、近隣塩基の対称性により全く同じ安定性を示す。正確な頻度は表1に示す。ここでSNPをどのホモ二重鎖とヘテロ二重鎖が産生するかに従って分類する。ホモ接合体の区別が困難な場合には、完全且つ頑健(robust)な遺伝子型特定のための非標識化プローブが好ましい。
【0126】
【表1】

【0127】
a:SNPヘテロ接合体は、「vs」によって隔てられた他の塩基で特定される。たとえばC vs Tは、一つの対立遺伝子がCを有し、他方が同一鎖の同一位置にTを有することを示す。一つの対立遺伝子と他方の対立遺伝子にはバイアスはない。即ちC vs TはT vs Cに等しい。塩基の対合(適合しているかミスマッチか)は、ダブルコロン(::)によって示され、方向(directional)ではない。すなわちC::Gは、どの塩基がどの鎖にあるかを特定しないでC::G塩基対を示す;
b:ヒトSNP頻度は、Venter JCら(The sequence of the human genome. Science、2001年;291巻:1304-51頁)により報告されたKwokデータセットからとった;
c:予測熱力学的二重鎖(predicted thermodynamic duplexes)の数は、塩基変化の周囲の最も近い対称性に依存する。四分の一の時間では、最も近い対称性が予測される。即ち、塩基の変化の位置は、相補塩基によって各側でフランキングされるだろう。たとえばC vs G SNPが同一鎖上でAとTによってフランキングされる場合、最近接対称性が生じ、たった一つのホモ接合体Tmが予測される。
【0128】
あるいは、ホモ接合体の差別化が困難な場合、増幅の前または後のいずれかで、既知ホモ接合体遺伝子型のサンプルを、だいたい同じ量で、未知遺伝子型と混合する。この混合物を増幅(既に増幅していない場合)、変性し、融解する。遺伝子型が同一であれば、混合物の融解曲線は、既知のホモ接合体遺伝子型の融解曲線と同一であろう。遺伝子型が異なれば、ヘテロ二重鎖が産生され、融解曲線の形状変化(altered shape)により識別されるだろう。
【0129】
具体的には、既知の配列変異を遺伝子型特定するときには小さなアンプリコンまたは非標識化プローブを使用し、未知変異をスキャンするときには、大きなアンプリコンが好ましい。アンプリコンの多重化も使用することができる。たとえば大きなアンプリコン内のより小さなセグメントが目的とする配列変異を保持することが既知である場合、より小さなセグメントと完全長アンプリコンの両方を一つの反応で増幅し融解することができる。大きなアンプリコンからの融解データから変異スキャニング情報が得られ、より小さなセグメントからの融解データからは遺伝子型特定情報を得ることができる。より大きなアンプリコンとより小さなアンプリコンの両方の増幅を同時に、または第一相でより大きなアンプリコンを増幅し、第二相で(単数または複数の)より小さなアンプリコンを増幅する二相PCRにより実施するか、またはその逆を実施することができる。この二相PCRは、二つの相のアニール温度を調節することによって、異なるアンプリコンの差別的な増幅が起きるような方法で、それぞれのプライマーのTmと量を設計することによって実施できる。より大きなアンプリコン由来のシグナルはより短いアンプリコンからのシグナルを飲み込んでしまうか覆い隠すと予測され、この二相法は、そのような問題を回避するためにそれぞれのアンプリコンの最終量を調節するのに使用することができる。
【0130】
一種以上の非標識化プローブが含まれる場合、同時スキャニング及び遺伝子型特定は単一のPCRで実施することもできる。産物の融解遷移とプローブ融点遷移の両方を分析する。具体的には、完全長PCR産物の融点遷移を最初に分析して、ヘテロ二重鎖が存在するか検出する。アンプリコン中のいずれかの配列の違いは、このスキャニング分析によって検出すべきである。配列変異をスキャニングによって検出する場合、(単数または複数の)非標識化プローブの(単数または複数の)融点遷移は、それぞれのプローブの遺伝子座に関して遺伝子型を明らかにする。プローブは全PCR産物よりも小さいので、非標識化プローブを使用する遺伝子型特定は、全アンプリコン遺伝子型特定よりもより特異的であり、プローブ遺伝子座における全てのSNP変化を遺伝子型特定することができる。
【実施例】
【0131】
実施例1
色素の合成
非対称シアニン色素は、分子のベンゾアゾリウム部分を一つ以上の「-C(R)=」基によってピリジニウム(またはキノリニウム、ピリミジニウム、プリニウム)部分へ結合する一般的な方法によって製造することができる。本明細書中に引用する米国特許第5,436,134号及び参考文献に記載のごとく、「-C(R)=」基の数は、合成で使用した具体的な合成試薬によって決定される。S5色素などのモノメチン色素(R3=H、n=0)の合成において、メチン炭素原子はメチルであるベンゾアゾリウム塩上のAまたはピリジニウム塩上のBから生じ、AまたはBの他方は、通常、メチルチオ、メチルスルホニル、またはクロロである反応性離脱基であるが、反応を完了させるのに十分な反応性を提供するいずれかの離脱基であってもよい試薬の組み合わせを使用する。色素S5及び他の同様の色素を製造する可能な一方法は、以下のとおりである。
【0132】
【化31】

【0133】
出発物質の化合物1は、4-メチル-2-ピロリジノン(Aldrich)を加熱して銅粉末、炭酸カリウム及びヨードベンゼンと一緒に48時間還流して製造する。この反応物を室温に冷却し、水と酢酸エチルとの間で分配し、濾過し、有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥する。粗生成物をシリカゲルカラム上、酢酸エチル/ヘキサン1:1で溶離精製すると、化合物1が得られる。
【0134】
もう一つの出発物質、化合物2は、2-(メチルチオ)ベンゾオキサゾールをDMF中のヨウ化メチルに添加し、封止管中、150℃で1時間加熱することによって製造し、ヨウ化物塩として化合物2を得る。
【0135】
塩化メチレン中の化合物1、オキシ塩化リンと触媒量のDMFの混合物を24時間還流して加熱する。この混合物を室温に冷却し、別容積の塩化メチレン、続いて化合物2と1当量のトリエチルアミンを添加する。この混合物を室温で6時間撹拌する。固体を濾過により分離し、酢酸エチル/クロロホルム/メタノール混合物で溶離するシリカゲルで精製する。この精製した化合物をメタノールに再び溶解し、水中の過剰量のヨウ化ナトリウムに添加する。化合物3は、ヨウ化物塩として濾過により単離し、減圧下で乾燥する。
【0136】
次いで化合物3を1,2-ジクロロエタン中、1-メチルピペラジンと混合し、55℃で2時間加熱する。得られた生成物(化合物4)を次いで過剰量のヨウ化メチルとプロトンスポンジ(Proton Sponge:Aldrich)を添加することにより四級化し、これは二ヨウ化物塩として色素S5(化合物5)を製造すると予想される。
【0137】
さらに、以下のピリミジニウムコア構造:
【0138】
【化32】

【0139】
{式中、
【0140】
【化33】

【0141】
、X、R2、R3及びR5は式Iに関して本明細書中に定義した通りであり、Bは式Vで定義した通りである}を有する色素の特定の態様を製造した。。
この式を有する色素を製造する方法は多々あるが、一つの方法としては以下のものがある:
【0142】
【化34】

【0143】
式中、化合物6は市販品が入手可能であるか、慣用法により製造することができる。化合物7aは、アルキルリチウム、芳香族及び脂肪族アミン、K2CO3などを含む中性または塩基性条件下、ハロゲン化アルキル、アルキルスルフェートなどのアルキル化剤を使用してN(3)で6のアルキル化によって製造する。同様に化合物7aは、芳香族ハライド、ボロネートなどの芳香族カップリング反応によってN(3)で6のアリール化により製造し、この反応は銅、パラジウム、プラチナなどの金属化合物によって触媒される。化合物7bは、m-CBPAなどの過酸化水素、ペルオキシ酸を使用する反応などの慣用の酸化によって化合物7aから製造する。場合により、化合物7aまたは化合物7bは、市販品が利用可能である。化合物8は、市販されているか、具体的には好適に置換された1,3-ジオンとウレアまたはチオウレアの縮合により製造される。さらに、C(2)にチオール、アルコキシ、または一級/二級アミンを有する化合物8は、具体的にはアルキルハライド、アルコキシハライド、または中性条件下で優れた離脱基をもついずれかの反応体との反応により修飾させることができる。化合物9は、化合物7と化合物8を、本明細書中に記載の塩基性条件下で反応させることによって製造することができる。
【0144】
この式を有する典型的な化合物は、本明細書中に記載の如く製造し、移動相としてトリエチルアミン-酢酸アンモニウムを使用するHPLCにより精製し、対応する酢酸塩として単離した。これらの典型的な化合物を表2に示す。
【0145】
【表2−1】

【0146】
【表2−2】

【0147】
【表2−3】

【0148】
【表2−4】

【0149】
【表2−5】

【0150】
化合物D6は、還流下、アセトニトリル中、4-メチルピリミジンと臭化(3-ブロモプロピル)トリメチルアンモニウムとを最初に反応させることにより製造した。アセトニトリル中の得られた生成物(化合物A6)を、無水ピリジン及びトリエチルアミンの存在下、またはクロロホルム:メタノール(10:1)と過剰量のトリエチルアミン中で、3-メチル-2-メチルスルホニルベンゾチアゾリウムヨーダイド(Aldrichより購入)と反応させた。この反応は、還流下または室温で実施した。
【0151】
化合物E6は、3-メチル-2-メチルスルホニルベンゾオキサゾリウムヨーダイド(2-メチルスルホニルベンゾオキサゾールとジメチルサルフェートとを反応させることにより製造)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0152】
化合物G5は、2-メチルチオ-3-フェニルベンゾチアゾリウム(Aldrich)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
化合物H5は、5-ジフルオロメチルスルホニル-3-メチル-2-メチルチオベンゾチアゾリウムメチルサルフェート(5-ジフルオロメチルスルホニル-2-メチルチオベンゾチアゾール(Aldrichより入手可能)とジメチルサルフェートとを反応させることにより製造)と化合物A6とから化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0153】
化合物P6は、5-クロロ-2-(メチルチオ)-3-(3-スルホプロピル)-ベンゾチアゾリウムヒドロキシド(Aldrich)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0154】
化合物R6は、6-アミノ-3-メチル-2-メチルチオベンゾチアゾリウムメチルサルフェート(6-アミノ-2-メチルチオベンゾチアゾール(Aldrichより入手可能)とジメチルサルフェートとを反応させることにより製造)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0155】
化合物Y6は、3-メチル-2-メチルスルホニルナフトール[1,2-d]オキサゾリウムメチルサルフェート(2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]オキサゾール(Chem Bridge Product List,サンディエゴ,CAより入手可能)とジメチルサルフェートとを反応させることにより製造)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0156】
化合物Z6は、3-メチル-2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]チアゾリウムメチルサルフェート(2-メチルスルホニルナフト[1,2-d]チアゾール(Specs,Rijswijk,オランダより入手可能)とジメチルサルフェートとを反応させることにより製造)と化合物A6から化合物D6を製造するために使用した一般的な方法に従って製造した。
【0157】
化合物G8は、還流下、HCl/EtOH中、N-フェニルチオウレアと2,4-ペンタンジオンの溶液を加熱することによって製造した。得られたピリミジンチオンを、還流下、クロロホルム/メタノール(10:1)中のトリエチルアミンの存在下、3-メチル-2-メチルスルホニルベンゾチアゾリウムヨーダイドと一晩反応させると、化合物G8が得られた。
【0158】
化合物G5、I5、K5、L5、F7、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、U7、V7、W7、X7、Z7、C8、E8、K8、L8、M8、N8、O8、P8、T8、V8、W8、X8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、Q9、R9、A10、及びV10は、上記記載のものと同様の方法により製造することができる。これらの色素は、dsDNAに結合するとその蛍光が変化するdsDNA結合色素である。これらの色素は、ヘテロ二重鎖の検出に有用であると予測される。
【0159】
R2及びR3が一緒になるピリミジニウム-ベースのシアニンの変異体を製造することも可能である。具体的な色素構造としては、以下のものがある。
【0160】
【化35】

【0161】
式中、wは1〜5である。具体的な実施例において、例示の色素の左の環系は、ClC(O)(CH2wBrと2-アミノベンゼンチオールまたは2-アミノナフタレン-1-チオールとを反応させることにより製造することができる。具体的には、左の環系:
【0162】
【化36】

【0163】
は、4-ブロモブチリルクロリドと2-アミノベンゼンチオールとを加熱することにより製造する。次いで例示の右の環系:
【0164】
【化37】

【0165】
をトリエチルアミンとエタノールの存在下、還流により左の環系と反応させる。この右の環系は、無水酢酸中、十分な時間、たとえば20分、ほぼ等モルのジフェニルホルムアミジンと4-メチルピリミジンとを還流させ、次いでアセトニトリル中、ほぼ等モルの1,3-ジヨードプロパンと形成した中間体とを3日間還流することにより製造できる。次いで得られた化合物中のヨウ素は、たとえばジメチルホルムアミドの存在下、トリメチルアミンと反応させることにより四級アンモニウムと置換することができ、構造:
【0166】
【化38】

【0167】
の代表的な色素が形成される。
さらに、以下のプリニウムコア構造をもつシアニン色素の特定の態様を製造した:
【0168】
【化39】

【0169】
式中、Y、X、R2、R3、R5、R12、R13、z、及びtは式Iに関して記載した通りであり、具体的には、R2、R5、及びR13の少なくとも一つはメチルではない。代表的な化合物F11及びH11は、色素の左の環系の前駆体として、それぞれ3-エチル-2-メチル-ベンゾチアゾリウム及び1-エチル-2-メチル-ナフトチアゾリウムを使用してLee(米国特許第4,937,198号)の変法に従って製造した。化合物F11及びH11は、それぞれ以下の構造を有する。
【0170】
【化40】

【0171】
本明細書に記載のこのピリミジニウム-ベースのシアニン色素、具体的にはG5、H5、I5、K5、L5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、F7、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、U7、V7、W7、X7、Z7、C8、E8、G8、K8、L8、M8、N8、O8、P8、T8、V8、W8、X8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、Q9、R9、A10、及びV10、並びに本明細書に記載のプリニウム-ベースのシアニン色素、具体的にはF11及びH11は新規である。ヘテロ二重鎖の検出でこれらの色素の数種を使用する結果を表3にまとめる。通常、50%飽和未満のレベルでPCRを阻害する色素は、ヘテロ接合体を十分に検出しない。PCR法及びヘテロ二重鎖の検出は、以下の実施例について述べる通りである。
【0172】
【表3】

【0173】
1. 最大励起(Ex)及び発光最大(Em)は、PCR緩衝液(3 mM MgCl2,50 mM Tris,pH8.3,200μM、各dNTP,500μg/ml BSA)中最大PCR適合性濃度で2.5μM bp(100 ng/60μl)のdsDNAと色素とを使用して、蛍光光度計で得た。色素によっては、ブロードな発光または励起ピークのため、幅がある;
2. 有意に阻害することなく増幅できるPCR混合物中に存在し得る最大量の色素は、全て、15μM bp DNA(100 ng dsDNA/10μl)とPCR緩衝液の存在下、飽和濃度、即ち最大の蛍光強度を提供する濃度における同一色素の蛍光と比較した蛍光の割合(%)として表した;
3. 0.3℃/秒の加熱傾斜で得られたdel F508ヘテロ接合体融解曲線を使用して、420〜490 nmの励起光学系及び450〜530 nmの検出光学系で測定した場合、ヘテロ二重鎖の代表的なピークのパーセントピーク面積。この一連の実験で使用したアンプリコンは、プライマー:GGCACCATTAAAGAAAATAT(SEQ ID NO.1)とTCTGTATCTATATTCATCATAGG(SEQ ID NO.24)により産生した57 bp長であった。得られた最大%を記録した;
4. スペクトルデータは入手できない。
【0174】
実施例2
PCRプロトコル
標識化及び非標識化オリゴヌクレオチドは、IT Biochem(ソルトレークシティ、UT)、Qiagen Operon(Alameda、CA)またはSynthegen(ヒューストン、TX)から得た。PCRは、他に記載しないかぎり、20℃/秒のプログラム遷移でLightCycler(登録商標)(Roche Applied Systems、インディアナポリス、IN)中、10μl容積で行った。この増幅混合物は、他に記載しない限り、テンプレートとして50 ngのゲノムDNA、200μMの各dNTP、3 mMのMgCl2、100 mMの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、pH8.8、0.04 U/μlのTaqポリメラーゼ(Roche)、500μg/mlのウシ血清アルブミン及び0.5μMの各プライマーを含んでいた。遺伝子型を特定したヒトゲノムDNAは、先の研究(Gundry CNら、Genetic Testing,1999年;3巻:365-70頁;Herrmann Mら、Clin Chem、2000年;46巻:425-8頁)から得たか、またはCoriell Cell Repositories(Camden,NJ)から入手した。色素S5は、他に記載しない限り、PCR反応物に10μMで含まれていた。SYBR(登録商標)Green Iをインジケーターとして使用する際、Molecular Probesストックからの1:10,000最終希釈物を使用した。PCRの前に色素を添加し、増幅を実施し、アンプリコンの融点遷移をLightCycler(登録商標)によりまたは、高解像度融解分析によりモニターした。アンプリコンの融解温度(Tm)から、異なるホモ接合体を識別した。全体の融点遷移を広げるヘテロ二重鎖の低温融解によって、ヘテロ接合体を同定する。融解分析には約1分かかり、PCRの後にはサンプルのプロセシングの必要がない。
【0175】
色素S5、SYBR(登録商標)Green Iと別のdsDNA結合色素の感度を研究するため、第V因子ライデンにおける多型、嚢胞性線維症遺伝子における多型(F508del、F508C、I507del、I506V)及びHTR2A遺伝子における多型(T102C)を分析した。さらに、設計したプラスミドを使用して、全ての可能性のある一塩基の変化を体系的に研究した。ヘテロ接合体DNAの増幅によって産生したヘテロ二重鎖は、変性産物を迅速に冷却(少なくとも-2℃/秒)、続いて融解分析の間に急速に加熱(0.2〜0.4℃/秒)することによって最もよく検出した。全てのヘテロ接合体は、広範囲の融点遷移によってホモ接合体と区別された。異なるホモ接合体は、そのTmによって区別できることが多かった。しかしながら予測されたように、G対C及びA対T塩基変異のあるホモ接合体は、ホモ接合体を混合することなく、高解像度分析をもってしても、再現可能には区別できなかった。アンプリコンは、44〜331 bpの長さを変動した。
【0176】
色素S5、D6、Z6及びN7を本明細書に提供した実施例で使用するが、本発明に従った他の色素も使用することができる。
【0177】
実施例3
融解曲線分析
融解分析は、サイクルにかけた直後にLightCycler(登録商標)で、またはそれに引き続き高解像度融解装置HR-1(Idaho Technology、ソルトレークシティ、UT)若しくはLightTyper(登録商標)(Roche Applied Systems、インディアナポリス、IN)のいずれかで実施した。しかしながら、増幅せずに融解曲線分析を実施できると考えられる。LightCycler(登録商標)を使用すると、サンプルを最初に94℃に加熱し、-20℃/秒のプログラム設定で60℃に冷却し、次いで0.2℃/秒で融解して、蛍光を連続的に測定する。他の装置の一つでの融解に関しては、他に記載しない限り、サンプルを最初にLightCycler(登録商標)で増幅し、次いでLightCycler(登録商標)で94℃で少しの間加熱し、急速に(-20℃/秒のプログラム設定)40℃に冷却した。次にこのLightCycler(登録商標)キャピラリーは、他に記載しない限り、高解像度装置に一つずつ移し、0.3℃/秒で加熱した。HR-1は、アルミニウムシリンダーの付いた一つのLightCycler(登録商標)キャピラリーを取り囲む単一サンプル装置である。このシステムは、シリンダー外部に巻き付けたコイルによってジュール加熱によって加熱する。サンプル温度は、シリンダー内にも設置してある熱電対によりモニターし、24ビットデジタル信号に変換する。蛍光は、シリンダー底にあるキャピラリーチップ(Wittwer CTら、BioTechniques、1997年;22巻:176-81頁)の落射照明(epi-illumination)によってモニターし、24ビット信号にも変換した(実施例の幾つかでは、初期16ビットHR-1プロトタイプを使用したことに留意されたい)。約50個のデータ点が1℃毎に得られる。他に記載しない限り、全ての装置で標準光学機器を使用した。
【0178】
PCR後、融解曲線を得る前に産物を変性しないことが都合がよいことがある。たとえば、目的がリピート配列(repeat sequences:たとえばSTR、VNTR)の数を分類することであるとき、プラトーになる前に、反応の対数期の間の伸長段階で増幅を停止することができ、次いで融解分析を実施する。このように、ホモ二重鎖伸長産物を分析することができる。リピートタイピング(repeat typing)において、特に異なるヘテロ二重鎖産物が異なるリピートアラインメントから形成することがあるので、ホモ二重鎖産物はヘテロ二重鎖産物よりも有益である。場合により、ホモ二重鎖融解曲線(前変性なし)とヘテロ二重鎖融解曲線(変性及び全ての二重鎖の組み合わせの形成あり)の両方を得ることが有用である。これらの二つの融解曲線の間の差によって、「ホモ二重鎖対照」と同一サンプルを使用して形成し得るヘテロ二重鎖の程度の測定値が得られる。
【0179】
融解データは、Lab Viewに記載のカスタムソフトウェアで分析した。蛍光対温度プロットは、各サンプルの融点遷移前後で最初に線形ベースラインを画定することによって0〜100パーセントの間で標準化した。それぞれのサンプルの中で、それぞれ得られた蛍光は、取得した温度での上部と底部のベースラインの間のパーセント蛍光として計算した。場合により、微分融解曲線プロットは、各点におけるSavitsky-Golay多項式から計算した(Press WHら編、Numerical recipes in C、第2版、New York:Cambridge University Press、1992年:650-5頁)。Savitsky-Golay分析では、1℃間隔の中に全ての点を含むデータウィンドウと二次多項式を使用した。ピーク面積と融解温度は、多重ガウス分布に合うように非線形最小二乗法回帰を使用して得た。場合により、それぞれ標準化した融解曲線のX軸は、透写図が特定の蛍光範囲内で重なるように平行移動させた。この「温度シフト」によって全ての小さな相互-実施温度偏差を全て補正し、ホモ接合体とヘテロ接合体とを識別する能力を高める。遺伝子型間の差は、それぞれの温度における遺伝子型の間の蛍光差をプロットすることによっても増幅することができる。
【0180】
実施例4
色素S5を使用する一塩基多型の遺伝子型特定:第V因子ライデン変異の遺伝子型特定
43 bpのアンプリコンは、第V因子ライデン変異の位置のすぐ隣にフランキングする、プライマー18塩基長と24塩基長から形成した。両方のプライマーは、予測Tmが62℃であった。このサンプルは、以下のプロトコルを使用して35回サイクルにかけた:94℃、保持なし、60℃、保持なし、及び72℃、10秒保持。増幅後、このサンプルをLightCycler(登録商標)中で少しの間94℃に加熱し、迅速(-20℃/秒のプログラム設定)に60℃に冷却し、PCR産物は、0.2℃/秒で融解して連続して蛍光を観測した。
【0181】
第V因子遺伝子のライデン遺伝子座で異なる遺伝子型から増幅したPCR産物の融解曲線を図1に示す。色素S5は、二重鎖産物と一本鎖産物との間の融点遷移の蛍光モニタリングに関して使用した。このライデン変異は、アンプリコンの一端から19塩基目に位置している。10個のホモ接合体野生型、二つのヘテロ接合体及び一つのホモ接合体ライデン遺伝子型からの結果が示されている。ホモ接合体変異体のアンプリコンの融解温度は、ホモ接合体野生型の融解温度よりも約1℃低い。ヘテロ接合体サンプルは、ヘテロ二重鎖形成に起因する二次的な低温の融点遷移を示す。SYBR(登録商標)Green Iを使用する同様の実験では、ヘテロ接合体でこの二次的な融点遷移を検出できなかった(データは示されていない)。
【0182】
冷却速度と加熱速度の影響は、LightCycler(登録商標)におけるヘテロ接合体第V因子ライデンDNAを使用して研究した。冷却速度の影響について研究するために、サンプルを上記の如く増幅し、85℃に加熱し、次いで、85℃から60℃に-20、-2、-1、-0.5、または-0.1℃/秒の速度で冷却し、続いて融解曲線を得るために0.2℃/秒の速度で一定加熱した。顕著なヘテロ二重鎖形成には急速冷却が必要であった(図2)。-0.1℃/秒より遅い冷却速度では、ヘテロ二重鎖は観察されなかった。キャピラリーサンプルを沸騰水から氷冷水に迅速に移したときに、最大のヘテロ二重鎖の形成が起きた(データは示されていない)。LightCycler(登録商標)上で冷却すると、ヘテロ二重鎖形成は、-5℃/秒よりも早いプログラム速度ではプラトーになるようであった(図2)。しかしながら、実際のサンプル温度での測定では、-5℃/秒より早いプログラム速度ではほんのすこしだけ冷却速度が速くなることが判明した。装置が-20℃/秒で冷却するようにプログラムされても、実際の速度は、-6℃/秒であった。
【0183】
加熱速度の影響は、-20℃/秒のプログラム速度で冷却し、続いて0.05、0.1、0.3、または0.5℃/秒で融解することによって検討した。観察されたヘテロ二重鎖の相対比%は、早い加熱速度では高かった(図3)。速度が速くなり、融解プロセスが平衡から逸脱するにつれて、みかけのTmは高温側へシフトする(Gundry CNら、Genetic Testing、1999頁;3巻:365-70頁)。
【0184】
実施例5
プラスミドを使用したSNP遺伝子型特定の体系的な研究
合成プラスミドを可能なあらゆる一塩基変化の融解曲線による遺伝子型特定の体系的な研究に使用した。プラスミド(DNA Toolbox、Cambrex Bio Science Rockland Inc.)は、中間の50%GC含有量の状況の中で画定した位置でA、C、GまたはTのいずれかを含んでいた(Highsmith WEら、Electrophoresis、1999年;20巻:1186-94頁)。この四つのプラスミドは、ホモ接合体遺伝子型を模倣するために単独で使用するか、「ヘテロ接合体」を構築するために二成分の組み合わせで使用した。プライマーは、TCTGCTCTGCGGCTTTCT(SEQ ID NO.50)とCGAAGCAGTAAAAGCTCTTGGAT(SEQ ID NO.51)であり、多型位置の周囲に50 bpのアンプリコンを産生した。このDNAテンプレートを106コピー使用して、PCRは、20μM D6の存在下で85℃で保持せず、55℃で1秒間のサイクルを35サイクル実施した。HR-1高解像度融解装置を融解分析に使用した。
【0185】
四つのホモ接合体(図4A)と六つのヘテロ接合体(図4B)に関して標準化した融解曲線を示す。ヘテロ接合体は、ヘテロ二重鎖の存在により融点遷移が幅広いため、ヘテロ接合体とホモ接合体とを区別するのは容易である。全てのホモ接合体は一つの遷移で融解し(図4A)、融解の順序は、最近傍計算によりA/A<T/T<C/C<G/Gと正確に予測される(SantaLucia J.,Jr、Biochemistry、1996年;35巻:3555-62頁)。ヘテロ接合体の場合は、二つのホモ二重鎖と二つのヘテロ二重鎖によるもっと複雑な融解曲線となる(図4B)。それぞれのヘテロ接合体は、四つの二重鎖Tmに従って特徴的な融解曲線軌道を辿る。融解の順序は、やはり、二つのホモ二重鎖Tmの平均を使用して、最近傍計算に従う(A/T<A/C<C/T<A/G<G/T<C/G)。六つのヘテロ接合体の曲線が高温で、最も高い融解ホモ二重鎖によって予測される、三つの跡に融合する(A/Tヘテロ接合体に関してはT/T、A/C及びC/Tヘテロ接合体に関してはC/C、並びにA/G、G/T及びC/Gヘテロ接合体に関してはG/G)。全ての遺伝子型は、高解像度融解曲線分析によって相互に識別することができる。
【0186】
実施例6
標識化プライマーを使用する嚢胞性線維症遺伝子の遺伝子型特定:色素S5またはSYBR(登録商標)Green I
KlenTaq1ポリメラーゼ(0.04 U/μl、AB Peptides、St.Louis、MO)、88 ngのTaqStart抗体(ClonTech、Palo Alto、CA)及び50 mM Tris、pH8.3を、Taqポリメラーゼ及び2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオールの代わりにPCRで使用した。44 bpフラグメントを、プライマーggcaccattaaagaaaatat(SEQ ID NO.1)とTCATCATAGGAAACACCA(SEQ ID NO.2)を使用して増幅した。第一のプライマーはOregon Greenで5'-標識化するか、SYBR(登録商標)Green I若しくはS5の存在下で反応を実施した。このプライマーは、F508del、I507del、及びF508C変異体を含む突然変異多発点をフランキングする。PCRは、85℃と58℃(0秒保持)で40サイクル実施した。LightCycler(登録商標)上で融解曲線を得る間に、六つのサンプルをモニターした。
【0187】
嚢胞性線維症遺伝子のI507/F508領域における種々の遺伝子型から増幅させたPCR産物の微分融解曲線を図5B〜Dに示す。このPCR産物は、41または44塩基長であった(図5A)。5'-標識化プライマー(図5B)、色素S5(図5C)、またはSYBR(登録商標)Green I(図5D)を二重鎖産物と一本鎖産物との間の融点遷移の蛍光モニタリングに使用した。二つのホモ接合体と三つのヘテロ接合体遺伝子型からの結果を示す。
【0188】
異なる遺伝子型の二重鎖安定性は理論計算に従い(von Ahsen Nら、Clin Chem、2001年;47巻:1956-61頁)、F508del〜I507del<野生型<F508Cである。F508delとI507delを除いて、遺伝子型は、その主な遷移のTmで識別される。LightCycler(登録商標)上で融解させると、10回複製野生型サンプルのTmの標準偏差は0.12℃である。高解像度装置上で融解させると、同じサンプル10個のTmの標準偏差は、0.04℃であった。
【0189】
ヘテロ接合体サンプルをPCRにより増幅すると、二つのホモ二重鎖と二つのヘテロ二重鎖産物が予想される(Nataraj AJら、Electrophoresis、1999年;20巻:1177-85頁)。しかしながら、SYBR(登録商標)Green Iを蛍光インジケーターとして使用すると、それぞれの遺伝子型について一つの融解ピークが明らかである(図5D)。対照的に、標識化プライマーまたは色素S5を同一条件下で使用すると、二つのはっきりと画定されるピークが現れる(図5B及び5C)。低温側ピークは常に高温側ピークよりも小さく、一方または両方のヘテロ二重鎖産物の融点遷移をおそらく示している。予測されるように、3 bpが欠失したヘテロ接合体(F508del及びI507del)は、一塩基変化(F508C)に由来するヘテロ二重鎖ピークよりもずっと不安定化されたヘテロ二重鎖ピークとなる。T508Cヘテロ接合体からの主なピークは、野生型よりも高温であり、T〜Gトランスバージョンの高い安定性を示している(Gundry CNら、Genetic Testing、1999年;3巻:365-70頁)。
【0190】
実施例7
飽和色素を使用する変異スキャニング
HTR2Aの一ヌクレオチド多型性について検討した。このPCRは、嚢胞性線維症遺伝子座に関して記載の如く、KlenTaq、TaqStart及びTrisを使用して実施した。ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子の331 bpフラグメントは、エクソン1内に共通する多型性(T102C)を含んでい(Lipsky RHら、Clin Chem、2001年;47巻:635-44頁)た。この反応は95℃(保持なし)、62℃(2秒保持)と74℃(20秒保持)のサイクルを40サイクル実施した。高解像度融解曲線が得られた。
【0191】
図6は、飽和色素S5は、配列変異のスキャニングに使用し得ることを示す。即ち、配列変異の位置を知る必要はない。大きなアンプリコン中で、いずれかの変異の存在を検出することができる。図6から解るように、HTR2A遺伝子の一ヌクレオチド多型性の三つすべての遺伝子型(ホモ接合体T、ホモ接合体C及びヘテロ接合体T/C)は、331 bpアンプリコン内で識別することができる。融解曲線の精度、及び異なる遺伝子型を識別する能力は、温度と装置の蛍光解像度に依存する。
【0192】
実施例8
DNAサイズラダーの融解曲線分析:SYBR(登録商標)Green Iと色素S5との比較
六つの異なるdsDNA種をもつ100 ngのDNAサイズラダー(Low Mass DNA Ladder、Gibco BRL)を、3 mMのMgCl2、100 mMの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、pH8.7緩衝液中のSYBR(登録商標)Green I(1:10,000)または色素S5(10μM)と混合した。融解曲線は、0.1℃/秒で高解像度装置で得た。
【0193】
上記の如く、SYBR(登録商標)Green Iと異なり、色素S5は、PCRと適合可能な濃度で融解曲線遷移でヘテロ二重鎖を同定することができる。SYBR(登録商標)Green Iが低い融点遷移を容易に同定できない理由を図7で説明する。安定性の高い幾つかのDNAフラグメントが存在する場合、色素S5と比較してSYBR(登録商標)Green Iの低温ピークは非常に小さい。一つの説明としては、融解の間、SYBR(登録商標)Green Iは、低温二重鎖から放出されて、より高温で融解する二重鎖にのみ結合するものと考えられる。これによって、連続する各ピークが直前のピークよりも高くなり、全てが観測可能だとしたら、最低温のピークは非常に小さくなる。非常に高い飽和レベルで存在する色素S5は、低温二重鎖に関しても視認可能なピークを有する。色素S5はこの実施例では近飽和レベルで存在するが、意外にもS5は5〜20%の飽和レベルに希釈しても低温ピークを検出し得る。たとえば、図13に示したデータは、1μMのS5濃度を使用して得たものである。従って、このメカニズムは判明していないが、色素S5及び本発明の種々の他の飽和色素は、融解時に再分配しないようである。
【0194】
図7のそれぞれのピーク面積を測定し、DNA種のそれぞれの既知量で割ると、それぞれのDNA種の相対感度を評価することができる(図8)。図8に示されているように、色素S5を使用すると、低温融解ピークが好ましいが、SYBR(登録商標)Green Iでは、高温側でシグナルが非常に強化されることが見出される。
【0195】
実施例9
一般的なdsDNA色素の滴定曲線及びPCRにおける色素S5の有用な濃度範囲の検出
100 ngの低質量DNAラダーを、終容積10μlで3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH8.3、250μg/mlのBSA及びそれぞれ200μMのdNTPの存在下で異なる濃度の一般的なdsDNA色素と混合した。このサンプルをLightCycler(登録商標)管に移し、リアルタイム蛍光光度計で蛍光を40℃で測定した。この蛍光は、特定の色素について得られた最大蛍光に対して標準化した。
【0196】
希釈研究は、10μl容積中、3 mMのMg2+、50 mMのTris-HCl、pH=8.3、500μg/mlのBSA、200μMの各dNTP、0.5μMの各プライマー、50 ngのゲノムDNA、0.4 Uの Taqポリメラーゼ及び88 ngのTaqStart抗体を使用し、S5希釈は2μM〜100μMにして152 bp HTR2Aアンプリコンを使用して実施した。95℃で10秒間、初期変性した後、95℃0秒、62℃2秒及び72℃20秒のサイクルを40サイクル実施した。LightCycler(登録商標)(95℃0秒、55℃0秒)上でさらに温度調節した後、サンプルを0.3℃/秒の傾斜で高解像度装置上で融解した。
【0197】
図9A〜Bは、PCRと適合可能なSYBR(登録商標)Green Iと色素S5の濃度を示す。PCRと適合可能な濃度では、SYBR(登録商標)Green Iは、PCRの最後に存在する典型的なDNA量を飽和させるのには到底及ばない。対照的に色素S5は、飽和を含めた広範囲の濃度において使用することができる。色素S5濃度の50倍範囲での典型的な融解曲線を図10に示す。
【0198】
実施例10
SYBR(登録商標)Green I及び色素S5の蛍光スペクトル
DNAに結合したSYBR(登録商標)Green Iと色素S5の励起及び発光スペクトルは、Photon Technology蛍光光度計(FL-1)で測定した。色素S5(10μM)またはSYBR(登録商標)Green I(1:10,000)を、終容積60μlで3 mM MgCl2、50 mM Tris、pH8.3、250μg/ml BSA及び200μMの各dNTPの存在下、100 ngのDNA(Low Mass DNA Ladder)に添加した。
【0199】
LightCycler(登録商標)光学機器は、SYBR(登録商標)Green I励起と発光に非常に適合している(図11)。色素S5がLightCycler(登録商標)光学機器にあまり適合していなくても、幾つかのPCR適合可能な濃度で色素S5を使用したLightCycler(登録商標)で観察した蛍光シグナルは、SYBR(登録商標)Green Iから通常観測されるものよりも大きい(データは示されていない)。
【0200】
本明細書中で記載する他の飽和色素の多くも「青色」色素である。そのような色素からの蛍光は標準的なLightCycler(登録商標)光学機器で観察することができるが、実施例によっては、特定の光学機器を青色色素によく適合するように変形した。そのような光学機器に対する変形は、関連する実施例で言及する。
【0201】
実施例11
X軸調整と蛍光差分析を使用するベータ-グロビン遺伝子の遺伝子型特定
110 bpフラグメントを、染色体11(アクセッション番号NG_000007)のヒトベータグロビン領域から増幅した。110 bp産物は、共通するベータグロビン変異HbSとHbCの部位を含んでいた。DNAはそれぞれの共通する遺伝子型の4つの異なる個体の乾燥血斑から抽出した。この遺伝子型は、三つのホモ接合体(AA、SS及びCC)と三つのヘテロ接合体(AS、AC及びSC)型を含んでいた。フォワードプライマーとリバースプライマーは、それぞれACACAACTGTGTTCACTAGC(SEQ ID NO.3)とCAACTTCATCCACGTTCACC(SEQ ID NO.4)であった。それぞれ10μl反応物は、50μgのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、10μM色素S5、3 mM MgCl2、50 mM Tris、pH8.3、500μg/mlウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.04 U/μlのKlentaq(商標)(AB Peptides、St.Louis、MO)、88 ngのTaqStart(商標)抗体(CloneTech、Palo Alto、CA)を含んでいた。PCR反応条件は以下の通りであった:一回のプレサイクリング変性95℃で5秒間;94℃で0秒、50℃2秒、72℃2秒のサイクルを35サイクル、2℃/秒の傾斜。2秒間伸長させた後、各サンプルについて一回蛍光を測定した。PCR増幅後、サンプルを-20℃/秒のプログラム速度で冷却した。急速冷却の直後、0.30℃/秒の速度で70℃〜93℃のカスタム24-ビット高解像度融解装置で融解を実施し、連続して蛍光を測定した。
【0202】
サンプル温度が上昇するにつれて、高解像度融解曲線が蛍光測定により得られる。ベータグロビンの六つの遺伝子型の四連サンプルから得た元のデータを図12Aに示す。サンプル容積の差及び可変キャピラリー光学装置により、異なるサンプル間の蛍光の強度は可変であることに留意されたい。
【0203】
サンプル間の大きさの差は、大きな遷移の前後で各曲線の線形ベースラインを使用することにより標準化することができる。具体的には、二つの線形領域を選択し、一つは主な遷移の前で一つは主な遷移の後とする。これらの領域は、それぞれの曲線の二つの線を画定し、最上100%蛍光線であり、最低0%蛍光線とする。外挿した最上及び最低線の間のパーセント距離として、遷移間(二つの領域の間での)のパーセント蛍光をそれぞれの温度で計算する。ベータグロビンデータについての標準化した結果を図12Bに示す。それぞれの遺伝子型の四連サンプルは明らかに一緒になって、この場合、最もはっきりと観られるのは84℃〜85℃付近である。各遺伝子型の間には、実施と実施の間の温度補正値に引き続いてばらつきがまだある(10〜20%の蛍光の周りには、遺伝子型の四連サンプルには約0.2℃の広がりがあることに留意されたい)。このサンプルの変動は、異なる二つのサンプルの間、または同一サンプルの二つの異なる実施の間でも起きることがある。異なる塩濃度での調製物などの異なる調製物は、温度補正値も提供することがある。しかしながら、少なくとも最初の近似値では、これらの差は曲線の形状に影響を与えない。
【0204】
各実施の間の温度補正値は、各曲線が、所定の蛍光区間に重ねられるように、それぞれの曲線の温度軸をシフトすることによって修正することができる。具体的には、一つのサンプルを標準として選択し、蛍光区間のポイントを二次方程式に合わせる。それぞれ残っている曲線に関しては、二次方程式上の蛍光区間内の各点の転移に必要な温度シフトを計算する。次いでそれぞれの曲線を平均シフトだけ移動させて、選択した蛍光区間内の曲線に重ね合わせる。ヘテロ接合体の増幅によって、ヘテロ二重鎖の低温遷移並びにホモ二重鎖の高温遷移が産生する。曲線をシフトさせてその高温のホモ二重鎖領域(低いパーセント蛍光)と重ね合わせると、ヘテロ二重鎖は、図12Cに観られるように低温での蛍光が初期に低下することによって同定できる。しかしながら、異なるホモ二重鎖の形状は大きくは変動しないので、温度をシフトする異なるホモ二重鎖は、これらの間の全ての変異を隠してしまう可能性がある。
【0205】
最終的に、異なる遺伝子型は、標準化(及び場合により温度シフト)融解曲線の間の蛍光をプロットすることによって最も容易に観察される。標準的な遺伝子型を最初に選択する(具体的には、ベータグロビン野生型AAを使用する)。次いでそれぞれの曲線と標準との間の差を、図12Dに示されているように温度に対してプロットする。標準(それ自体から引いた)は、全ての温度においてゼロである。他の遺伝子型は特徴的な軌道を辿り、視覚によるパターン照合により同定できる。特徴抽出の自動化法を使用して遺伝子型を割り当てることもできる。さらに、代表的な実施例では飽和色素とヘテロ二重鎖検出を使用するが、温度シフト及び温度差のプロットは、ヘテロ二重鎖が存在しない場合の遺伝子型特定でも、具体的にはゲノムが半数体であるウイルスでも使用できると考えられる。そのような高解像度遺伝子型特定の例としては、C型肝炎遺伝子型特定、ヒト乳頭腫ウイルス遺伝子型特定、HIV遺伝子型特定、及びリボソームDNA増幅によるバクテリアの同定が挙げられる。
【0206】
遺伝子型と相関する一つのパラメーターを考案することができる。たとえば、標準化された曲線を使用して、異なる遺伝子型が、およそ10%融解した(90%蛍光)温度を決定することができる。これによっていくつかの遺伝子型をはっきりと区別することができるが、他のものはできない(図12B)。あるいは、曲線の最大勾配を使用してヘテロ接合体とホモ接合体とを識別することができたが、異なるホモ接合体は最大勾配では同じようなことが多い。最終的に、曲線下面積(図12D)を使用して遺伝子型を定義することができたが、そのような曲線は似たような面積をもっていたり、異なる軌道を辿ることがある。パラメーターを組み合わせると自動化遺伝子型決定には有効であると判明するかもしれないが、この方法は、視覚によるパターン照合に合っている。
【0207】
他の標準化方法も利用可能であり、本発明の範囲内に含まれると考えられる。たとえば、HR-1(Idaho Technology、ソルトレークシティ、UT)は、所定の温度で蛍光の値を自動的に調節(具体的には40℃で蛍光の値100)する設定を有し、全てのサンプルからの融解曲線は、同じ蛍光の値で揃える。上記の標準化とこの機械で制御した標準化との間の差は、機械で制御した標準化の場合には、遷移の前後での曲線の勾配が平坦化しないということである。
【0208】
実施例12
大きなアンプリコンの分析
短いアンプリコンは遺伝子型特定の差が大きくなることが多いが、本発明の色素は、大きなアンプリコンにも使用することができる。DNA融解ドメインは、通常約50〜500 bp長さであり、より長いアンプリコン、たとえば500〜800 bpは、複数の融解ドメインを持つことが多い。一つのドメインでの配列変異は、他のドメインの融解には影響を与えることがないだろうが、ドメイン内で観察された変異はアンプリコンの長さと無関係かもしれない。従って、実施例は400〜650 bp範囲が提供されているが、配列変異の存在に関してスキャンし得るPCR産物のサイズには上限がないかもしれない。
【0209】
さらに、一つのドメインの融解は、他のドメインの融解とは独立しているようであるため、装置及び/またはサンプル実施の変動のため、不変ドメイン(invariant domain)を内部対照として使用して、X軸(温度軸)を調整することができる。ヘテロ接合体は、その融解曲線の形状が異なるため、互いに識別可能でありそしてホモ接合体から識別可能である。融解曲線の形状は、存在するヘテロ二重鎖及びホモ二重鎖の安定性及び/または動的融解速度によって限定される。より大きなアンプリコンには複数の融解ドメインが存在するので、形状の変動は、曲線のどの部分でも起こり得る。複数の曲線のX軸の位置を曲線の不変の位置に重ね合わせるように調節することによって、曲線の可変位置をずっと簡単に見分けることができる。あるいは、曲線の可変位置を重ね合わせることによって、種々の遺伝子型が存在する場合は、曲線の残りの部分が変動するだろう。代わりにX軸調整は、(1)外部対照核酸、または(2)核酸と相互作用しないが、その蛍光は温度に依存性である第二の発光波長を有する色素(Cy5などの優れた温度係数を有する色素)を、PCRの前に、または融解前に、各サンプルに添加することによって調整できた。次いで、対照核酸の融点遷移の位置または対照色素の強度プロフィールに従って、温度軸をシフトさせるべきである。
【0210】
図13A及び14は、大きなアンプリコンの二つの実施例を示す。図13Aはヒト5-ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子、エクソン2(アクセッション番号NM_000621.1)由来の544 bpフラグメントの増幅を示す。フォワードプライマーとリバースプライマーは、それぞれCCAGCTCCGGGAGA(SEQ ID NO.5)とCATACAGGATGGTTAACATGG(SEQ ID NO.6)であった。それぞれの10μl反応物は、50 ngのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、1μMの色素S5、2 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH8.3、500μg/mlのウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.4 UのKlentaq(商標)(AB Peptides、St.Louis、MO)及び88 ngのTaqStart(商標)抗体(CloneTech、Palo Alto、CA)を含んでいた。
【0211】
PCR反応条件は以下のようであった:92℃で0秒、60℃で2秒、74℃で25秒のサイクルを40サイクル。PCR増幅後、サンプルを-20℃/秒のプログラム速度で冷却した。急速冷却の直後、連続して蛍光を測定しながら、70℃〜93℃まで、0.30℃/秒の速度でカスタム24-ビット高解像度融解装置で融解曲線を測定した。
【0212】
それぞれの遺伝子型(CC、TC及びTT)の二連サンプルを、図13Aに示すように、増幅し、分析した。データを標準化し、曲線を10〜20%蛍光の間に重ね合わせた以外には、温度を実施例11に記載のようにシフトさせた。図13Bは、より低温の融解ドメインの多型性の位置とホモ二重鎖の予想融解マップを示す。実験データは、二つの明かな融解ドメインを示す。全ての遺伝子型は、より高温の融解ドメインでは同様である。遺伝子型はより低温の融解ドメインでは異なるが、ヘテロ接合体は、より低温の融解ヘテロ二重鎖の典型的な挙動を示し、ヘテロ接合体の曲線は低融解のホモ接合体曲線と公差し、温度上昇につれて高温のホモ接合体に近似する。
【0213】
図14は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子、エクソン10(アクセッション番号M55115)からの612 bpフラグメントの増幅の種々の曲線を示す。フォワードプライマーとリバースプライマーは、それぞれAGAATATACACTTCTGCTTAG(SEQ ID NO.7)とTATCACTATATGCATGC(SEQ ID NO.8)であった。それぞれ10μlの反応物は、50 ngのゲノムDNA、0.50μMの各プライマー、10μMの色素S5、3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH8.3、500μg/mlのウシ血清アルブミン、0.2 mMの各dNTP、0.4 UのKlentaq(商標)(AB Peptides、St.Louis、MO)及び88 ngのTaqStart(商標)抗体(CloneTech、Palo Alto、CA)を含んでいた。PCR反応条件は以下のようであった;89℃で0秒、58℃で8秒、74℃で35秒のサイクルを35サイクル。約35秒間伸長させる度に、各サンプルについて1回蛍光を測定した。PCR増幅後、サンプルを-20℃/秒のプログラム速度で冷却した。急速冷却の直後、0.30℃/秒の速度で60℃〜87℃までカスタム24-ビット高解像度融解装置で融解を実施し、連続して蛍光を測定した。この実施例では、曲線の中間部分(30〜40%蛍光)をX軸調整に使用すると、ヘテロ接合体の区別がもっともよくできた。最後に、それぞれのプロットの蛍光を野生型のプロットの一つから引くと、図14に示されているような差のプロットが得られた。それぞれの配列変異は、野生型とは明らかに異なり、全ての遺伝子型を識別することができる。
【0214】
実施例13
飽和色素を使用する標的検出及び多重化
本発明の色素は、オリゴヌクレオチドプローブに結合したアクセプター色素を励起させるためのドナーとして使用することができる。これらの色素は高密度でハイブリダイズしたプローブに結合するために飽和濃度または近飽和濃度で使用することができるので(三つの塩基対当たり約二種類の色素分子)、色素は、蛍光共鳴エネルギー遷移用の二重鎖DNAの長さに渡ってくまなく利用可能である。アクセプター色素(acceptor dye)をもつプローブをPCRの前に反応物に添加し、増幅し、産物にハイブリダイズしたら検出する。二重鎖に対して高密度で飽和色素が結合すると、プローブ上のアクセプター色素がうまく励起して、高度なアクセプター蛍光を生成する。従来、高いbp/色素比を有する色素を使用したが、低いアクセプター蛍光しか生成しなかった。
【0215】
複数のプローブを使用して、多色の実験を実施することができる。たとえば、全部のアンプリコンの融解を470 nmでモニターすることができ、フルオレセイン標識化プローブの発光を515 nmでモニターし、HEX-標識化プローブ(これはプライマー内部のDNAの異なるセグメントにハイブリダイズする)を第三の波長でモニターし、TET-標識化プローブ(プライマー内部の異なるセグメントにハイブリダイズする)を第四の波長でモニターすることができるだろう。当該技術分野で公知の如く、色調補正(color compensation)を使用して、重複する四つのシグナルをデコンボリュート(deconvolute)する。この結果は、最初のシグナルを使用して全アンプリコンにわたって変異のスキャニングに使用でき、同時に第二、第三、及び第四のシグナルによってアンプリコン内のより小さな領域の遺伝子型特定が可能になるということを意味する。
【0216】
実施例14
遺伝子型特定の比較のための高解像度融解曲線分析
本発明の色素は、いずれかの二人の個体が遺伝子フラグメントに同一対立遺伝子を共有するかを決定するのに使用することができる。先の実施例では、参照サンプルの遺伝子型(厳密な対立遺伝子、異型接合性及びハプロタイプ)は既知であった。用途によっては、高解像度融解曲線分析によって、もう一人の個体のサンプル(または未知由来のもの)が参照と同一であるかを決定できる限り、参照サンプルの正確な遺伝子型は既知である必要はない。具体的な例は、家族で共有するHLA対立遺伝子の同定である。
【0217】
ヒト白血球抗原(Human Leukocyte Antigens:HLA)は、白血球及び身体の他の組織の細胞表面タンパク質であり、免疫認識、従って移植寛容または拒絶で重要な役割を果たす。ドナーとレシピエントとの間のHLA対立遺伝子のマッチング(整合性)は、臓器移植で重要である。HLAタンパク質は二つの主な群を形成する:クラスIとクラスIIである。それぞれの群は、複数の遺伝子でコードされている。組織のHLA対立形質を決定するための現在認められている方法としては、特異的な抗体試薬を使用する血清型決定、核酸プローブを使用するハイブリダイゼーション、及びHLA遺伝子の直接シークエンシングが挙げられる。多くの遺伝子と遺伝子座を試験しなければならないので、HLA対立形質を決定するには、一人当たり1,000ドル以上コストがかかる。HLAの完全な遺伝子型特定は、ドナーとレシピエントとが親族ではない場合に必要である。しかしながら、兄弟姉妹の間には完全HLA整合性は約25%の確率であり、この理由から、HLAの整合性が可能であることを示しているときには、兄弟姉妹間の間での臓器移植が好ましい。この場合、ドナーとレシピエントの親族とが同一HLA対立遺伝子を共有していることを示すことだけが必要である。共有された対立遺伝子の正確な正体(identity)を決定することは必要ではない。
【0218】
CEPH/家系Utah家族1331のゲノムDNAサンプルは、Coriell Instituteより入手した。四人の内祖父母(internal grandparents)、二人の親、及び11人の子供を含むこの家族には三世代にわたって17名いる(家族1331の家系は図15に示されている)。HLA-A BM15(0101)とBM16(0202)の周知のホモ接合体遺伝子型を持つ二つの他のサンプルも、Coriellから入手した。
【0219】
HLA-A遺伝子の二つのエクソンの増幅は以下のようにして実施した:HLAクラスI遺伝子は、そのコードエクソンの長さに渡って非常に似ていたので、HLA-A遺伝子のみを増幅し、関連するクラスI遺伝子を増幅しないPCRプライマーの設計が困難である。Nested PCRストラテジー(Nested PCR strategy)を採用した。これはPCRの最初のラウンドはHLA-A遺伝子の大きな(948 bp)フラグメントを特異的に増幅し、続いて内部プライマーを使用してその産物を二次増幅する。最初のPCRで使用したプライマーは、HLA-Aイントロン1(フォワードプライマー:5'-GAAAC(C/G)GCCTCTG(C/T)GGGGAGAAGCAA(SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12))とイントロン4(リバースプライマー:5'-TGTTGGTCCCAATTGTCTCCCCTC(SEQ ID NO.13))にハイブリダイズした。二次PCRにおいて、フォワードプライマー:5'AGCCGCGCC(G/T)GGAAGAGGGTCG(SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15)とリバースプライマー:5'GGCCGGGGTCACTCACCG(SEQ ID NO.16)を使用して、HLA-Aエクソン2の335 bpを増幅した。フォワードプライマー:5'CCC(G/A)GGTTGGTCGGGGC(SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18)とリバースプライマー:5'ATCAG(G/T)GAGGCGCCCCGTG(SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20)を使用して、HLA-Aエクソン3の366 bpを増幅した。本実施例のプライマー配列では、(N/N')は、プライマーがその位置に同じ割合のNとN'をもつヌクレオチド配列の混合物であることを示す。たとえば、HLA-Aエクソン2の335 bpセグメントのフォワードプライマーは、二つのヌクレオチドの同じ割合の混合物を含み、SEQ ID NO.17及びSEQ ID NO.18によって表されるように、第四の位置にGかAをもつ。HLA-Aイントロン1のフォワードプライマーは、そのうような位置を二つもつので、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11及びSEQ ID NO.12によって表されるように、四つのヌクレオチドの同じ割合の混合物である。
【0220】
PCRは全て、LightCycler(登録商標)を使用してガラスキャピラリー中で実施した。最初のPCRは、0.5μMのフォワードプライマーとリバースプライマー、50 ngのゲノムDNAを、10μl中の3 mMのMg++、50 mMのTris-HCl、pH8.3、500μg/mlのBSA及び20μMの色素D6の緩衝液中に含んでいた。サイクル条件は、94℃で20秒、続いて94℃で1秒、62℃で0秒、72℃で1分のサイクルを40サイクルであった。二次のNested PCRは、0.25μMフォワードプライマーとリバースプライマー、2 mMのMg++を含有する同一緩衝液中1/10000の一次PCR産物を含んでいた。サイクル条件は、94℃で5秒、続いて94℃で1秒、65℃で0秒、72℃で8秒のサイクルを25サイクルであった。
【0221】
二次増幅後、ガラスキャピラリーを高解像度融解装置HR-1に移し、融解を実施した。サンプルを60℃〜95℃に、0.3℃/秒の速度で加熱し、蛍光(450励起/470発光)及び温度測定を40 m秒毎に実施した(図16A〜B)。nested増幅産物(nested amplification product)は、ABI 3700によってシークエンシングした。シーケンチャーV4.0をシークエンス分析に使用した。
【0222】
融解曲線分析及びシークエンシング結果の一致は、以下の様にして決定した:CEPH/家系Utha家族1331の17人から増幅したエクソン2とエクソン3のPCR産物の融解曲線分析は、六つの異なる群にクラスター化された(図16A〜B)。これは、この家族には六つの異なるHLA-A遺伝子型が存在することを示唆した。エクソン2とエクソン3のPCR産物をシークエンシングし、その結果は、融解曲線分析を確認し、このことは、以下の六つの遺伝子型を同定した:家族構成員の1、4、7及び12に関してHLA-A 02011/3101(以後、遺伝子型ABという);家族構成員の3、5、6、11及び17に関してHLA-A 3101/2402101(遺伝子型BC);家族構成員の2、9、10、16に関してHLA-A 02011/2402101(遺伝子型AC)、家族構成員の13と14に関してHLA-A 02011/03011(遺伝子型AD);家族構成員の8に対してHLA-A 02011/02011(遺伝子型AA)及び家族構成員の15に対してHLA-A 2402101/01011(遺伝子型CE)(エクソン2の結果は図16A〜Bに示されている)。
【0223】
場合により、兄弟姉妹からの増幅産物は、異なる遺伝子型をもつにも関わらず、同一または殆ど同一の融解曲線を示す可能性がある。そのような場合、最初のPCRの前に二名の兄弟姉妹由来のゲノムDNAを混合し、続いて2回の増幅段階及び融解曲線分析をすると、異なる遺伝子型と同一の遺伝子型とを区別することができる。特に、兄弟姉妹が同一の遺伝子型をもつ場合、混合した融解曲線は、別個に実施した融解曲線と一致するだろう。兄弟姉妹が異なる遺伝子型を持つ場合、混合した融解曲線は、個々の融解曲線とは異なるだろう。各群の中での混合実験から、各群の構成員が同一の遺伝子型を共有することが確認された。
【0224】
混合分析法のもう一つの例は、二つのホモ接合体サンプルBM15(0101)とBM16(0201)によって示された。この場合、二つの対立遺伝子は、HLA-Aエクソン2の全長にわたって全部で15ヌクレオチドが違うが、これらは似たような融解曲線を示す。混合したサンプルの融解曲線は、HA-Aエクソン2からの混合サンプルPCRにおいて産生したヘテロハイブリッド中に存在する15個のミスマッチのため、大きく左(より低温の融解温度)にシフトした(図17参照)。
【0225】
実施例15
飽和色素を使用するリアルタイムでの増幅モニタリング
HTR2A遺伝子の60 bpフラグメントをそれぞれフォワードプライマーとリバースプライマー:ACCAGGCTCTACAGTAA(SEQ ID NO.21)とGTTAAATGCATCAGAAG(SEQ ID NO.22)で増幅した。実施例12に記載の試薬を使用したが、サイクリングパラメーターを変えて、LightCycler(登録商標)を使用して95℃で0秒、62℃で2秒、74℃で20秒のサイクルで増幅を実施した。SYBR(登録商標)Green I、D6、Z6及びN7の種々の濃度を独立して反応混合物中に含めた。蛍光データは、それぞれの増幅サイクルにつき1回ずつ、36サイクルまで測定した。増幅プロットの二次微分極大として計算した蛍光交差点(fluorescence crossing point:Cp)(y軸上の蛍光強度に対してx軸上にプロットしたサイクル数)は、以下のようにして得た。
【0226】
【表4】

【0227】
バックグラウンドより上にシグナルが盛り上がるサイクル数を示すCp値は、反応物中に存在する阻害剤が増幅効率に影響を与えるときに増加すると予想される。しかしながらこれらの実験条件下では、色素の量を増加させることによる阻害は、Cpのゆるやかな増加としてではなく増幅の突然で完全な消去として生じた。対立遺伝子が小さなサイズであるため(より大きなアンプリコンと比較してより小さなシグナルになる)、SYBR(登録商標)Green I色素は、リアルタイムモニタリングでは二倍の濃度で使用することしかできなかった。対照的に、色素D6、Z6及びN7は、32〜128倍の濃度範囲でも使用することができた。多くの飽和色素は、増幅のリアルタイムモニタリングで使用できる広範囲の濃度を有すると考えられる。
【0228】
実施例16
非標識化プローブと飽和色素を使用することによるSNPタイピング
図7に示されているように、飽和色素は、低融解温度の二重鎖から高融解温度(Tm)二重鎖へ色素が再分配することによって不明瞭になる低温での融解を生じさせずに反応混合物中に存在する複数のdsDNA種の融解特性を検出する能力を有する。飽和色素のこの側面によって、遺伝子型特定用に非標識化プローブを使用することができる。非標識化プローブを飽和色素の存在下でアンプリコンと混合すると、アンプリコンとプローブ-標的二重鎖の両方の融解特性が、同時に観測することができる。融解プロフィールにおける変化を利用して、プローブの下、配列変異の存在、並びにアンプリコンの他の場所を検出することができる。場合により、アンプリコンの融点遷移の前に融解プロセスを切り捨てることによって、非標識化プローブの融解だけを研究することができる。効率的な遺伝子型特定及び変異スキャニング用に非標識化プローブを使用することは、リアルタイムPCRに関して日常的に使用される色素、たとえばSYBR(登録商標)Green Iでは可能ではなかった(図21Bと図21Cを比較されたい)。さらに、飽和色素の特徴のため、遺伝子型特定は、表面に固定すべき標的核酸または非標識化プローブを必要とすることなく、非標識化プローブの存在下で実施できる。代表的なそれぞれの態様では、色素、非標識化プローブ及び標的核酸は全て溶液中で遊離型である。
【0229】
300 bpアンプリコンは、最初のテンプレートプラスミドDNA(実施例5)1×106コピー、0.5μMの3'-末端リン酸化プローブ、3 mMのMgCl2、50 mMのTris、pH8.3、0.2 mMの各dNTP、500μg/mlのBSA、20μMのdsDNA色素D6(実施例1)及び0.4 UのTaqポリメラーゼ(Roche)を含んだ10μlの反応混合物中、プライマー:5'GATATTTGAAGTCTTTCGGG(リバースプライマー、SEQ ID NO.23)及び5'TAAGAGCAACACTATCATAA(センスプライマー、SEQ ID NO.24)を使用して、LightCycler(登録商標)(Roche Applied Systems、インディアナポリス、IN)中、PCRにより産生した。対称的増幅に関しては、それぞれプライマー0.5μMを使用した。非対称増幅に関しては、プライマー比は、10:1、20:1と50:1の間を変動した。初期変性を95℃で10秒、続いて95℃で1秒、55℃で0秒、72℃で10秒(またはプローブ無しで5秒)のサイクルを45サイクルでPCRを実施した。増幅終了時、サンプルを95℃で0秒変性させ、40℃で0秒、続いて0.2℃/秒で90℃まで(LightCycler(登録商標))、あるいは0.3℃/秒(HR-1)若しくは0.1℃/秒(450 nm励起及び470 nm発光の変形光学機器のついたLightTyper(登録商標))の速度で75℃までで、融解分析した。
【0230】
増幅産物の標的鎖は、プローブハイブリダイゼーションに十分に利用可能なはずである。多くの場合において、これは他のプライマー(リバースプライマー)と比較して過剰量のプローブ-ハイブリダイズ鎖(センスプライマー)を産生するプライマーを提供することにより実施できる。図18A及び19は、プライマーの割合を変えることによって産生したアンプリコンを調べる最適化実験の結果を示す。最適プライマー比は、それぞれのアンプリコン及び/または増幅システムで異なるが、プローブの融解は、センスプライマーとリバースプライマーとの間の比が約10対1以上であるときに観察されることが多い。LightCycler(登録商標)データにおいて、プローブとアンプリコンの両方の融解ピークは、そのようなプライマー比で観察されることに留意されたい(図18B)。本明細書に示した実施例ではこの「非対称」PCRを使用して多量の標的鎖を産生したが、他の増幅方法、特にNASBA、TMA及び一つの鎖の増幅を好むローリングサークル増幅(rolling circle amplification)などの増幅法も十分に適合している。あるいは、鎖分離をPCRに続いて、具体的には的確に設計したプライマーを使用してアンプリコンにビオチンテイルまたはポリ-Aテイル(または他の配列)を含めることによって、実施することができる。さらに別の例では、融解分析は、増幅に続いて、または増幅を実施しないで一本鎖核酸上で実施することができる。また、アンプリコンの長さが小さくなるに連れて、プローブ-標的遷移の相対強度が増加することが見出された。従って、別の実施例では、より短いアンプリコン、具体的には100 bp以下を使用することができる。
【0231】
本実施例において、非標識化プローブの3'末端をリン酸化して、増幅の間にポリメラーゼ伸長が生じないようにする。所望により、プローブのポリメラーゼ伸長は、他の手段、たとえば2',3'-ジデオキシヌクレオチド、3'-デオキシヌクレオチド、3'-3'結合、他の伸長できない末端形成、たとえば3'-スペーサーC3(Glen Research、Sterling、VA)、場合によりリンカーのついたビオチン、副溝(minor-groove)バインダーにより阻害することができる。プローブの3'末端塩基の二つ以上のミスマッチは、伸長を阻害するのにも使用することができる。あるいは、任意に閉鎖3'-末端をもつ非標識化プローブを、ポリメラーゼ活性を実質的に欠く核酸サンプル混合物に添加することができる。
【0232】
本明細書中に記載の多くの態様において、非標識化プローブを増幅混合物中に配合する場合、標的配列を使用して完全ハイブリダイゼーションを実施するときでさえも、増幅を阻害するほど非標識化プローブを標的配列にしっかりと結合しないのが望ましい。これは、非標識化プローブがペプチド核酸であるときに特に重要であり、構造に依存して、完全にハイブリダイズされるときにしっかりと結合して、増幅が阻害される(Behn Mら、Nucleic Acids Res、1998年;26巻:1356-8頁)。また多くの態様において、融解曲線分析を干渉するプライマーに十分に相補的なプローブは望ましくない。本明細書に記載の種々の新規色素、並びに他の公知の色素は、そのような非標識化プローブと共に使用するのに適している。さらに、正確なメカニズムは理解されていないが、50%未満の飽和%の数種の色素も、非標識化プローブと共に使用するのに適している。そのような色素の一例としては、チアゾールオレンジがある。
【0233】
成功する遺伝子型特定のもう一つの考察は、プローブの長さとGC含有量である。dsDNAに対する飽和色素の結合様式は未だ完全に理解されていないが、数種のプローブデザインが試験されている。表5と図20は、14〜37%のGCをもつ14〜30個の塩基の長さが異なるプローブを試験した、色素D6を使用する最適化実験を示す。プローブと標的とが完全に相補であるとき、14塩基ほどの短いプローブの融解ピークが検出された(図20)。しかしながら、プローブにミスマッチがあると(この実施例では、プローブの中間に位置する)、融解ピークは、22塩基よりも短い場合には観察されず(示されていない)、このことは、色素D6はこれらの条件下で連続した結合スペースが少なくとも10〜11 bp必要であることを示唆している。プローブの設計において、ミスマッチは、場合によりプローブの末端に近いところ、並びにプローブの中間に位置することができる。同様の実験を、合成相補鎖に対して100%ATと100%GCハイブリダイズするプローブ配列で実施した。これらのプローブの融解ピークは、プローブが100%ATプローブを有する24塩基以上の長さであり、100%GCプローブで10塩基の短い場合に、はっきりと検出された。LightCycler(登録商標)、HR-1及び改造LightTyper(登録商標)での融解分析結果は全て一致した。
【0234】
【表5】

【0235】
SNPタイピングは、別の塩基位置のA、C、G及びTに関してホモ接合体であるか、以下のA/C、A/G、A/T、C/G、C/T及びG/Tの位置に関してはヘテロ接合体であるテンプレート及び28塩基プローブで示した。図21A〜Dは、Aホモ接合体に対して完全相補であるプローブによって得た融解曲線を示す(この場合、プローブ配列はAであり、センス鎖はTである)。全てのホモ接合体が一つの遷移で融解した(図3A)。A::T適合は、66.1℃のTmで最も安定であり(予測は64.0℃)、ミスマッチA::G(63.0℃、予測は62.4℃)、A::A(61.9℃、予測は60.7℃)及びA::C(61.4℃、予測は60.8℃)で、安定性の順序が低下する。Tmの予測は、色素の存在を考慮に入れなかった。アンプリコンのTmの場合と同様に(図10)、色素の存在によって通常、プローブのTmが上昇する。全てのホモ接合体の融解曲線は、はっきりと分かれ、識別可能である(図21A)。ヘテロ接合体テンプレートを二つの群に分けた:第一の群に含まれるものは、プローブと完全相補の対立遺伝子(A/T、A/C、A/G)を有し、他の群に含まれるものは、持たない(C/T、C/G、G/T)。第一の群において、プローブ融解曲線ははっきりと二つのピークを示した。高い方のTmピークはホモ接合体Aテンプレートと適合し、低い方のTmピークは、塩基ミスマッチのタイプを特徴とする(図21B)。第二の群において、融解曲線は、単一の融解ピークを示し、そのそれぞれはホモ接合体Aテンプレートと比較して左にシフトし、そのそれぞれは容易に他のものと識別可能である(図21D)。同一試験をSYBR(登録商標)Green I色素で実施し、プローブとミスマッチを有するホモ接合体テンプレートの融解ピークは、完全適合したホモ接合体Aテンプレートと比較して左にシフトしたが、これらは互いに識別可能であった。ヘテロ接合体テンプレートC/T、C/G、G/Tも左にシフトしたが、互いに分離しなかった。ヘテロ接合体テンプレートA/C、A/G及びA/Tの融解曲線は、ホモ接合体Aテンプレートと識別できなかった(図21C)。
【0236】
実施例17
非標識化プローブと飽和色素を使用する嚢胞性線維症遺伝子型特定
CFTR遺伝子エクソン10と11のフラグメントを、Coriell Institute for Medical Researchから入手したサンプル、および以下のプライマー、すなわちエクソン10についてはプライマー:5'ACATAGTTTCTTACCTCTTC(SEQ ID NO.34、センスプライマー)、及び5'ACTTCTAATGATGATTATGGG(SEQ ID NO.35、リバースプライマー)並びに、エクソン11に関してはプライマー:5'TGTGCCTTTCAAATTCAGATTG(SEQ ID NO.36、センスプライマー)及び5'CAGCAAATGCTTGCTAGACC(SEQ ID NO.37、リバースプライマー)を使用して増幅した。F508del変異でハイブリダイズするエクソン10のプローブは、5'TAAAGAAAATATCATCTTTGGTGTTTCCTA(SEQ ID NO.38)であった。二つのプローブをエクソン11のG542X変異を検出するために使用し(5'CAATATAGTTCTTNGAGAAGGTGGAATC、SEQ ID NO.39)、ここで、NはGでもTでもない。全てのプローブはその3'末端でリン酸化した。プライマー比10:1(センス0.5μM:リバース0.05μM)を使用して、PCRを非対称的に実施した。PCRの他の試薬は、50 ngのゲノムDNAをテンプレートとして使用した以外には、実施例16に記載のものと本質的に同一であった。サイクル条件は、95℃で10秒、次いで95℃で0秒、52℃で0秒及び72℃で10秒のサイクルを45サイクルであった。LightCycler(登録商標)での融解曲線分析は、実施例16と同様に実施した。表6は、プローブにより検出した種々の欠失を列記する。
【0237】
【表6】

【0238】
F508del変異は、小さな(3 bp)欠失の一例として選択した。プローブは、28塩基の野生型配列を含んでいた。図22Aは、野生型から約10℃低温側へシフトしたホモ接合体T508delのTmを示す。ヘテロ接合体F508delの融解曲線は、二つの融解ピークを示した。一つは野生型と同じ温度であり、他方は、ホモ接合体F508delと同じであった。図22Bは、この遺伝子座で見出された三つの追加のヘテロ接合体変異、F508C、I506V及びI507delの重なりを示す。
【0239】
G542X変異は、一塩基変異であり、野生型GがTに変化している。この28塩基の野生型プローブG及び変異プローブTを使用して、G542Xホモ接合体(T/T)とヘテロ接合体(G/T)変異をシークエンシングすることなくタイピングした(図23)。
【0240】
実施例18
複数の非標識化プローブと飽和色素を使用する遺伝子型特定
飽和色素と共に非標識化プローブを使用する融解分析により、プローブのもと、一種以上の配列変異の遺伝子型特定が可能になる。複数の非標識化プローブを使用することによって、複数の配列セグメント中の配列変異を同時に遺伝子型特定することができる。プローブは、一つのDNAフラグメント上で複数の配列セグメントと、または複数のDNAフラグメント上で配列セグメントとハイブリダイズするように設計することができる。具体的には、複数のプローブを単一の標的DNAフラグメントと共に使用する場合、プローブは、配列変異についての情報を提供するように重ねる必要はない。具体的な例では、嚢胞性線維症遺伝子の210 bpフラグメントは、先に記載の二つのプライマー(センスプライマー:SEQ ID NO.34及びリバースプライマー:SEQ ID NO.35、それぞれ0.5μM及び0.05μM)を使用して、20μMの色素D6またはN7の存在下で非対称的に増幅した。この210 bpフラグメントにおいて、二種類の変異、F508delとQ493Vの存在または不在を、二つの非標識化プローブにより試験した:プローブ1:ATCTTTGGTGTTTCCTATGATG(SEQ ID NO.48;下線部は、F508del変異で欠失した三つの塩基である)及びプローブ2:CTCAGTTTTCCTGGATTATGCCTGGC(SEQ ID NO.49:下線部は、Q493VでTへ変異する塩基である)。両方のプローブの3'末端はリン酸化した。適合したプローブまたはミスマッチのプローブの融解温度を72℃未満に維持して、アンプリコンの融解特性から十分に分離させた。融解分析は、実施例16と同様に、LightCycler(登録商標)、HR-1、改造LightTyper(登録商標)装置で実施した。これら三つの装置の融解データは、四つのサンプル(野生型、F508delホモ接合体、F508delヘテロ接合体、及びF508del/Q493V化合物ヘテロ接合体)を正確に遺伝子型特定した。図24は色素N7を使用した融解プロフィールを示す。色素D6を使用すると非常に似た結果が得られた。
【0241】
実施例19
同時変異スキャニング及び遺伝子型特定
多くの遺伝病の試験は、原因となっている変異が遺伝子の全体にわたって分散していることが多いため、困難なことがある。同時変異スキャニング及び遺伝子型特定を使用してこれらの変異部分を検出することができる。具体的には、いずれかの特定の遺伝子に関しては、それぞれのエクソンを一般的なスプライス部位の外側でプライマーを使用して増幅する。高頻度で配列変化が見られる場合、非標識化プローブを配合して当該部位を遺伝子型特定するか、追加のセットのプライマーを使用して、このより小さな遺伝子座を増幅することができる。特定の部位の変異スキャニング及び遺伝子型特定は、別々の領域で実施することができるか、スキャニングが陽性の場合、続いてプローブをチューブに加えて、遺伝子型特定用に融解分析を繰り返すことができる。スキャニング及び遺伝子型特定は、同一の融解曲線分析で完全長アンプリコンとより小さな遺伝子座の二重鎖の両方を分析することによって同時に実施するのが好ましい。これらの完全長アンプリコンとより小さな遺伝子座のサイズが異なるため、完全長アンプリコンの融解ピークは、より小さな遺伝子座のものよりも高温となるだろう。
【0242】
平均の遺伝子は約27 kbを対象とするが、たった約1,300塩基がアミノ酸をコードする。平均して遺伝子当たり約150 bpの平均長を有する約9個のエクソンがある。疾病を引き起こす配列変化の中でも、約70%はSNPで、49%はミスセンスであり、11%はナンセンスであり、9%はスプライシングであり、<1%は調節変異である。小さな挿入/欠失が、疾病を引き起こす変異の23%を構成する。残りの7%は、大きな挿入若しくは欠失、リピート、再配列または化合物配列変化により生じる。幾つかの配列変化は遺伝子機能に影響を与えない。たとえば、同一アミノ酸となるサイレントSNPである。別の例としては、アミノ酸配列を変化させるが、タンパク質の機能を変化させないSNPとフレーム内挿入または欠失がある。スプライシングと調節変異以外は、イントロン内の殆どのSNPとリピートは、疾患を引き起こさない。イントロン内の大きな欠失及び配列変化を除き、疾病を引き起こす変異は、それぞれのエクソンをフランキングするイントロン内でプライマーを使用するPCRによって同定できる。プライマーは、スプライス部位変異と思われるものの外側に設置する。配列変化が増幅されない場合、シークエンシングを含むどの方法でも検出されないだろう。
【0243】
本開示の色素を使用する高解像度融解分析は、アンプリコンのサイズが大きくなるにつれてより困難となる。場合により、スキャニング感度をほぼ100%に維持するために、400〜500塩基よりも大きなエクソンを二つ以上のアンプリコンを使用してスキャニングすることができる。具体的には、一般的なサーマルサイクリングパラメーターを使用して、一度に全てのエクソンが増幅できるようにする。
【0244】
変異スキャニングと同時に、一般的な変異と多型は、一つ以上の非標識化オリゴヌクレオチドプローブを含めることにより、または一つ以上の追加のプライマーセットを使用してより小さなアンプリコンを増幅することによって、遺伝子型特定することができる。より大きなアンプリコンとより小さなアンプリコンの両方の増幅は、同時に実施することができるか、または第一のフェーズでより大きなアンプリコンを増幅し、第二のフェーズでより小さな(単数または複数の)アンプリコンを増幅する二相PCRにより実施することができる。この二相PCRは、二相のアニール温度を調節することによって、優先的に種々のアンプリコンの増幅が起きるような方法でそれぞれのプライマー量とTmとを設計することによって達成できる。より大きなアンプリコンからのシグナルがより小さなアンプリコンからのシグナルを押しつぶしたり隠したりすると考えられる場合、この二相方法を使用して、アンプリコンのそれぞれの最終量を調節してそのような問題を回避することができる。一種以上のオリゴヌクレオチドプローブを使用する場合、具体的には約10:1のプライマー比をもつ穏和な非対称PCRによるより大きなアンプリコンの増幅を使用することができる。
【0245】
プローブによって遺伝子型特定及びアンプリコン内の変異のスキャニングを同時にするための単一融解方法を使用する具体的な例は、以下のようにして実施した。嚢胞性線維症エクソン11フラグメントを、実施例17に記載の方法に従って、野生型プローブGと色素D6の存在下、10個の野生型試料と20個の未知試料から増幅した。次いで増幅したサンプルを、40℃〜90℃の間、0.1℃/秒の傾斜速度を使用して、改造LightTyper装置(実施例16)で融解した。図25Aは、融解曲線のアンプリコンの部分を示す(75〜83℃)。サンプルの内10個は、10個の野生型サンプルとははっきりと異なるやや左側にシフトした曲線となった。これらは、アンプリコンのどこかにヘテロ接合体変異をもつものと推測された。曲線の残りは、ホモ接合体のサンプルの予想された形状をたどった。しかしながら、残りの10個の未知サンプルの曲線は、野生型の曲線には重ならなかったので、これらの殆どは、同様に可能性のある配列変異としてフラッグを立てた。図25Bは、負の微分としてプロットした融解曲線のプローブ部分(58〜72℃)を示す。30個のサンプルはそれぞれ、はっきりと遺伝子型特定された。
【0246】
実施例20
非標識化プローブを使用する増幅時の蛍光モニタリング
PCRの間にdsDNA結合色素から蛍光をモニターするとき、サイクルごとに標的核酸を非標識化プローブにハイブリダイズすることによって定義されるように特異的な核酸配列の産生を観察することが可能である。各PCRサイクルにおける標的配列の量は、その元のサンプルの初期量に依存する。従って、定量化が可能である。既に例示したように、アンプリコン及び他のdsDNAからの蛍光シグナルは、プローブに特異的なシグナルとは分けられている。これは、増幅反応で少なくとも二つのサイクルの間、プローブの融点遷移の前及びその最中に複数の温度点で蛍光をモニターすることによって達成される。
【0247】
具体的な例では、DNA Toolboxプラスミド(実施例5)の300 bpフラグメントを、テンプレートDNAが105コピー/10μlであり、他に記載しない限り、MgCl2を2 mMで使用し、D6の代わりに色素N7を使用した以外には、実施例16に記載の試薬を使用して、28 bpプローブ(表5、SEQ ID NO.32)の存在下で増幅した。プライマー比10:1を使用した。プローブとプラスミドは、配列中で適合した(即ち、プローブ下ではミスマッチはない)。増幅は、以下のプログラムパラメーターを使用して、LightCycler中で45サイクル実施した:95℃で0秒、-20℃/秒で冷却、52℃で0秒、0.5℃/秒で加熱、74℃で8秒、20℃/秒で加熱。各PCRサイクルの間、図26に示されるように、52℃〜74℃の間で蛍光を連続的にモニターした。次いで、本明細書中、参照として含まれる米国特許第6,174,670号に本質的に記載の如く、データファイルをカスタムソフトウエアに取り込んで、各サイクルで得られた複数の蛍光データを分析した。増幅の質は、全てのdsDNA量が観察できる61℃(図28A、黒四角)または二本鎖アンプリコンの量だけが観測される73℃(図28A、白四角)などの、各サイクルで一つの温度で蛍光値をプロットする従来法により評価した。
【0248】
プローブの融解を観察するのに特異的な温度範囲は、各サイクル毎に選択し(この場合、62〜72℃)、得られた蛍光曲線(図27の負の微分としてプロット)は、サイクル数が多くなるに連れて、プローブの融解ピークが大きくなることを示した。サイクル数とプローブ:標的特異的シグナル量との間の相関関係を表す一つの方法は、プローブのTm(この場合、66.5℃)とプローブの融点遷移の直前(64℃)で微分値の差をプロットすることである。得られたプロットを図28B(白三角)で示す。これは、プローブ:標的シグナルとサイクル数との間の正の相関関係を示している。二つの温度点は予め決定することができるか、微分曲線から視覚的に選択することができるか、または二次微分がゼロになる二次微分曲線から得ることができる。そのようなプロットが確立すると、これらのプロットは、サンプルの初期テンプレートの定量に使用することができると考えられる。
【0249】
別法では、図27の曲線は、ピーク下面積を計算することができ、図28B(黒三角)のようにサイクル数に対してプロットできるように、ベースラインを引き、(可能な場合には)ガウス分布に当てはめた。図28Cではこれが、プローブによって画定されたように、特異的なアンプリコン産物とサイクル数との間の正の線形相関を示す直線にそれぞれ適合している、三つの異なる初期テンプレート濃度のサンプルでさらに示されている。融解ピーク面積値は、サイクル数が増加し始める前の数サイクルの間は負であった。ピーク面積値が0と交差しなかったとしても、0まで外挿法を使用することができるが、これは0のピーク面積に交差点を設定する機会を提供した。これらの交差点を初期テンプレート濃度のlogに対してプロットすると、線形関係が見出され(図28D)、これは、増幅の間に蛍光をモニターすることによって初期テンプレートの定量化に関して非標識化プローブの融解を使用できることを示している。
【0250】
この実施例及び他の実施例では飽和色素を使用しているが、本明細書に記載の特定の方法、特に、SNP及び他の小さな変化の検出が必要でない方法では、他の色素を使用できると考えられる。たとえば、上記方法では、プローブは標的配列に完全に適合したが、本方法は、遺伝的変異の検出を含んでいなかった。しかしながら、遺伝子型特定を含む他の種々の分析と組み合わせて上記方法も使用できると考えられる。
【0251】
実施例21
GISTの診断用c-kit遺伝子における変異の検出
ヒトc-kitタンパク質は、そのリガンドの結合によって活性化される、膜貫通型受容体チロシンキナーゼである。チロシンキナーゼの活性化により、チロシン残基の自己リン酸化がおき、順に細胞間シグナル伝達系カスケードが導かれ、細胞が増殖する。リガンド結合とは無関係にこのc-kitタンパク質の活性化を引き起こす変異は、生殖細胞腫瘍、肥満細胞腫及び消化管(GIST)の間質腫瘍などの種々の腫瘍で見出された。これらの変異は、新生細胞の成長の駆動力と考えられる。標的化分子治療(targeted molecular therapy)の近年の成功例の1つは、GISTにおける活性化c-kit受容体を阻害する、薬剤STI-571(イマニチブ、グリベック:gleevec)の開発である。この薬剤は、フェニルアミノピリミジン誘導体であり、STI-571で処置した多くのGIST患者が部分的応答及び疾患の安定化を示している。しかしながら、この種の新生物の改良診断法を提供する必要性がある。
【0252】
従来、消化管の間質腫瘍の診断は困難であった。現在、消化管の間質腫瘍は、日常的にCD117(c-kit)に関して免疫染色されている。陽性の免疫染色は、この腫瘍がGISTと正しく同定されることを示唆する。しかしながら、c-kitの免疫染色は病巣性及び/またははっきりせず、評価するのが困難なことがある。さらに、この免疫染色は位置情報、活性化変異の有無やタイプの情報を与えず、市販のCD-117抗体は、非c-kit分子とは交差反応可能性がある。高解像度アンプリコン融解は、c-kit遺伝子内で活性化している変異を迅速にスクリーニングするための改良法として使用することができる。高解像度融解法により検出された配列変異は、場合によりさらにDNAシークエンシングによりキャラクタリゼーションすることができる。
【0253】
c-kitスクリーニング用の具体的な例は以下のようにして実施した。原発腫瘍、転移性/再発性腫瘍、小腸及び大腸、胃、腹膜並びに膵臓軟組織からの新生物などの種々のGIST組織試料をパラフィンブロック中で得た。脱パラフィン処理を行い、キシレン、次いで95%、70%、50%及び30%のエタノールで順に洗浄することによってサンプルを脱水して、スライドガラス上のパラフィン包埋組織切片からDNAを単離した。脱イオン化H2Oで最終濯ぎをした後、スライドを赤外線ランプ下で5分間乾燥した。腫瘍組織の好適な領域を、外科用メスでスライドから顕微採取して、50 mMのTris-HCl(pH8.0)、1 mMのEDTA、1%のTween 20、1.0 mg/mlのプロテイナーゼKを含む50〜100μl中、37℃で一晩インキュベートした。次いでサンプルを沸騰H2O浴中、10分間インキュベートして、プロテイナーゼKを不活性化した。氷上で冷却した後、サンプルを10 mMのTris-HCl(pH7.5)、0.1 mMのEDTA中に希釈して、表7に示すエクソン-特異的プライマーでポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけた。
【0254】
【表7】

【0255】
PCRは、キャピラリーキュベット中、全容積20μlで実施した。反応混合物は、50 mMのTris-HCl(pH8.5)、3 mMのMgCl2、0.5 mg/mlのBSA、それぞれ200μMのdATP、dGTP及びdCTPを、600μMのdUTP、0.5μMのプライマー、1μlの希釈Klentaqポリメラーゼ(酵素希釈液10μlと一緒にインキュベートした低温感受性Klentaqポリメラーゼ1μl)、1単位のウラシルN-グリコシラーゼ(Amperase)及び20μMの色素D6を含んでいた。ポリメラーゼ連鎖反応は、LightCycler(登録商標)(Roche Applied Systems、インディアナポリス、IN)中、最初の変性を95℃で10分(ウラシルグリコシラーゼを変性させる)、続いて95℃で3秒、20℃/秒で58℃まで冷却(エクソン9及び11)、62℃(エクソン13)または55℃(エクソン17)で10秒、続いて1℃/秒で75℃で0秒加熱するサイクルを45サイクルにより実施した。アンプリコンのサイズは235 bp(エクソン9)、219 bp(エクソン11)、227 bp(エクソン13)、170 bp(エクソン17)であった。PCR後、サンプルをLightCycler(登録商標)上で、95℃に絶えず加熱し、次いで40℃に冷却した。次いでサンプルを高解像度DNA融解分析装置HR/1(Idaho Technology、ソルトレークシティ、UT)に移した。融解分析は、実施例3に記載の如く実施した。全てのサンプルを二連で実施した。
【0256】
具体的な結果を図29〜32に示す。ここで、ヘテロ接合体SNP(図29)、SNPに互いに近接して並んだ12 bpのホモ接合体欠失(図30)、36 bpのヘテロ接合体タンデム重複(図31)及び54 bpのヘテロ接合体欠失(図32)は、高解像度融解分析から検出した。表8は、高解像度アンプリコン融解分析によって同定され及び、DNAシークエンシングによって立証されたこれら及び他の変異をまとめる。
【0257】
【表8】

【0258】
実施例22
複製融解曲線の温度の精度を上げるための内部温度対照標準の使用
第V因子ライデン領域の100 bpフラグメントは、プライマー:CTGAAAGGTTACTTCAAGGAC(SEQ ID NO.52)及びGACATCGCCTCTGGG(SEQ ID NO.53)をそれぞれ0.5μM使用して増幅した。この反応は、10μMの色素N7(実施例1)、0.2 UのKlenTaq1(商標)(AB Peptides)及び70 ngのTaqStart(商標)抗体(Clontech)を使用した以外には、LightCyclerで、10μlの容積中、実施例17に記載の試薬を使用して実施した。さらに、相補オリゴヌクレオチド:ACGATGCTACGTACGTCGCGATG-P(SEQ ID NO.54)及びCATCGCGACGTACGTAGCATCGT-P(SEQ ID NO.55)それぞれ0.5μMを、内部温度対照標準として含めた(内部標準ともいう)。PCRサイクルは、94℃における最初の変性を10秒、続いて94℃で0秒、57℃で0秒及び78℃で0秒のサイクルを30サイクル含み、57〜78℃の遷移は1℃/秒であった。PCR後、サンプルを94℃で1秒加熱し、次いで40℃に冷却してから融解した。融解は、HR-1高解像度融解装置(Idaho Technology)で実施し、温度と蛍光は24-ビットで得た。PCR後、各キャピラリーをHR-1に移し、50℃〜90℃で傾斜0.3℃/秒で融解すると、65ポイント/℃となった。LabVIEW(National Instruments)製カスタムソフトウエアで融解曲線を分析した。
【0259】
第V因子ライデン変異についてのホモ接合体の五つの重複サンプルを独立して増幅し、分析した。標準化後、アンプリコンのTm(アンプリコンの融点遷移の標準化蛍光が50%である温度として)は、83.388+/-0.025℃(平均+/-標準偏差)であった。内部温度対照標準のTmは、74.446+/-0.036℃であった。しかしながら、アンプリコンと内部標準とのTm差の標準偏差(ΔTm 0.016℃)はアンプリコンのTmの標準偏差(0.025℃)より小さい。従って、融解曲線の温度精度は、各サンプル内の内部標準のTmによって決定された温度補正値によって融解曲線を調節することにより高めることができる。具体的には、それぞれの融解曲線を、各サンプルについての内部標準のTmが同じ値になるように(たとえば、元の内部標準Tmの平均)、(実施例11の記載のように)温度シフトさせる。
【0260】
内部標準を使用すると、増幅緩衝液中の小さな差(たとえば、蒸発による塩濃度の差)を補正できる。これによって、同一の遺伝子型の融解曲線の精度が高くなって、異なる遺伝子型の融解曲線プロフィールの非常に小さな差を識別できる。
【0261】
内部温度対照標準は、相補オリゴヌクレオチド対に限定される必要はない。内部標準の他の非限定的な例は、プローブ下の標的配列がサンプルセット内で変わらない非標識化プローブ-標的ハイブリッド、またはその配列が不変であることが公知の第二のアンプリコンである。具体的な内部標準は、当該アンプリコンまたは非標識化プローブ-標的ハイブリッドのTmよりもTmが高くても低くてもよい。
【0262】
上記議論は、本発明の単に例示的な態様について開示し、記載したものである。当業者は、そのような議論並びに付記図面及び請求の範囲から、請求の範囲で定義した本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、種々の変形が可能であることを容易に理解するだろう。
【0263】
本明細書中で引用した全ての参考文献は、本明細書中、その全体を参照として含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0264】
【図1】図1は、色素S5を使用する第V因子ライデンの遺伝子型タイピングを示す。融解曲線の負の一次導関数(-dF/dT)を示す。
【図2】図2は、ヘテロ二重鎖を検出する際の融解分析前の冷却速度の効果を示す図である。
【図3】図3は、ヘテロ二重鎖の検出の際の融解分析の間の加熱速度の効果を示す図である。
【図4】図4A〜Bは、操作したプラスミドを使用する一つの位置で全ての可能性のあるSNP遺伝子型の標準化した高解像度融解曲線を示す図である。それぞれの遺伝子型の三つのサンプルを分析すると、四つのホモ接合体
【0265】
【化41】

【0266】
と六つのヘテロ接合体
【0267】
【化42】

【0268】
を含んでいた。
【図5】図5A〜Dは、遺伝子型特定法の比較である。図5Aは、プライマー上の任意の標識の位置をマークした(星印)嚢胞性線維症マップを示す図であり、図5Bは、標識プライマーを使用する遺伝子型特定を示す図であり、図5Cは、色素S5を使用する遺伝子型特定を示す図であり、図5Dは、SYBR(登録商標)Green Iを使用する遺伝子型特定に対する試みを示す図である。
【0269】
【化43】

【0270】
【図6】図6は、長いアンプリコン上で色素S5を使用する遺伝子型特定を示す図である。
【0271】
【化44】

【0272】
三個体のそれぞれの融解曲線(微分ではない)を示す。
【図7】図7A〜Bは、SYBR(登録商標)Green I(図7A)及び色素S5(図7B)を使用するDNA混合物の微分融解曲線を示す図である。
【図8】図8は、複数のDNA種が存在するときの蛍光変化の非線形性を示す図である。色素S5(白丸)とSYBR(登録商標)Green I(黒四角)を示す。
【図9】図9A〜Bは、飽和%を決定するための色素滴定を示す図である。図9Aにおいて、◆=SYBR(登録商標)Green;■=SYBR(登録商標)Gold;▲=Pico Green;図9Bにおいて、○=色素S5;■=SYTOX(登録商標)Green。SYBR(登録商標)Green Iと色素S5の代表的なPCR範囲を影部分で示す。
【図10】図10は、融解温度に対する色素濃度の効果を示す図である。
【図11】図11A〜Bは、色素S5(図11A)及びSYBR(登録商標)Green I(図11B)の励起及び発光スペクトルを示す図である。
【図12A】図12A〜Dは、ベータグロビンの110 bpフラグメント内の6種類の遺伝子型の四連(quadruplicate)のサンプルの高解像度融解曲線分析を示す図である。
【0273】
【化45】

【0274】
図12Aは、それぞれの遺伝子型の四連のサンプルの高解像度融解曲線を示す図である。
【図12B】図12A〜Dは、ベータグロビンの110 bpフラグメント内の6種類の遺伝子型の四連(quadruplicate)のサンプルの高解像度融解曲線分析を示す図である。図12Bは、六つの遺伝子型の四連のサンプルの標準化高解像度融解曲線を示す図である。
【図12C】図12A〜Dは、ベータグロビンの110 bpフラグメント内の6種類の遺伝子型の四連(quadruplicate)のサンプルの高解像度融解曲線分析を示す図である。図12Cは、六つの遺伝子型の四連のサンプルの、温度シフトし、標準化した高解像度融解曲線を示す図である。サンプルは5〜10%蛍光の間の曲線に重ねるようにシフトした。
【図12D】図12A〜Dは、ベータグロビンの110 bpフラグメント内の6種類の遺伝子型の四連(quadruplicate)のサンプルの高解像度融解曲線分析を示す図である。図12Dは、図12Cのデータから得られた蛍光差曲線(fluoroscence difference curve)を示す図である。それぞれの差曲線は、差のデータを得るために正常(AA)曲線からそれぞれのサンプルを引くことにより得た。四連のサンプルで実施したが、オーバーラップのため、場合によっては四つよりも少ないサンプルに見える。
【図13A】図13Aは、ヒト5ヒドロキシトリプタミン-ヒドロキシトリプタミン受容体2A(HTR2A)遺伝子の544 bpフラグメントの三つの遺伝子型の二連サンプルの融解曲線分析を示す図である。
【0275】
【化46】

【0276】
データは標準化し、温度は10〜20%蛍光の間の位置を使用してシフトさせた。
【図13B】ホモ二重鎖の理論融解マップを図13Bに示す。一ヌクレオチド多型の位置に印(X)をつける。
【図14】図14は、嚢胞性線維症膜貫通型コンダクタンスレギュレーター(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator:CFTR)遺伝子の612 bpフラグメントの六つの遺伝子型の差曲線を示す図である。プロットは標準化し、温度は30〜40%蛍光の間で一部分を重ね合わせることによりシフトし、野生型プロットの1つから引いた。
【図15】図15は、 Utah家族1331と呼ばれるCEPHの系図を示す。Utah家族1331のHLA-A遺伝子型は以下の通りである。A:02011;B:3101;C:2402101;D:03011;E:01011。それぞれの個体には番号付けする。女性(丸)および男性(四角)。
【図16A】図16AとBは、Utah家族1331メンバーの融解曲線を示す図である。HLA-Aエクソン2の六つの遺伝子型を示す六つの融解曲線は、17人の家族構成員の中に存在する。図16Aは完全な融解曲線を示す。
【図16B】図16AとBは、Utah家族1331メンバーの融解曲線を示す図である。HLA-Aエクソン2の六つの遺伝子型を示す六つの融解曲線は、17人の家族構成員の中に存在する。図16Bは(図16Aに示されている)拡大部分であって、括弧内に遺伝子型と個体の表示を示す。
【図17】図17は、混合することによる二つのサンプルの遺伝子型の決定を示す図である。
【0277】
【化47】

【0278】
二つのホモ接合体サンプルBM15(0101)とBM16(0201)は、HLA-Aエクソン2に15-bpの違いがあった。BM15とBM16の融解曲線は、別々にとると同様であるが、混合すると、15-bpの不一致によって融解曲線がシフトした。
【図18】図18AとBは、非対称PCR後の非標識化プローブで遺伝子型を特定するための最適化実験の結果を示す図である。図18Aは、種々の比率のプライマーを使用した増幅の結果を示す。
【0279】
【化48】

【0280】
図18Bは、プローブ融解点を示す微分融解曲線を示す図である。
【0281】
【化49】

【0282】
【図19】図19は、図18Bと同様であり、非対称増幅の後の融解ピークを示す図である。
【0283】
【化50】

【0284】
【図20】図20は、14〜30ヌクレオチド長の範囲の非標識化プローブの融解ピークを示す微分融解曲線を示す図である。
【図21A】図21A〜Dは、非標識化プローブの試験系における融解ピークを示す微分融解曲線を示す図である。図21Aは、色素D6を使用する四つのホモ接合体のそれぞれの微分融解曲線を示す図である。
【図21B】図21A〜Dは、非標識化プローブの試験系における融解ピークを示す微分融解曲線を示す図である。図21Bは、色素D6を使用する、Aホモ接合体と、A/G、A/T及びA/Cヘテロ接合体の微分融解曲線を示す図である。
【図21C】図21A〜Dは、非標識化プローブの試験系における融解ピークを示す微分融解曲線を示す図である。図21Cは、SYBR(登録商標)Green Iを使用するAホモ接合体と、A/G、A/T及びA/Cヘテロ接合体の微分融解曲線を示す図である。
【図21D】図21A〜Dは、非標識化プローブの試験系における融解ピークを示す微分融解曲線を示す図である。図21Dは、色素D6を使用するAホモ接合体と、G/T、C/G及びC/Tヘテロ接合体の微分融解曲線を示す図である。
【図22】図22A〜Bは、非標識化プローブを使用する種々の嚢胞性線維症変異の融解ピークを示す微分融解曲線である。
【図23】図23は、二種類の非標識化プローブを使用する嚢胞性線維症SNP変異の融解ピークを示す微分融解曲線である。
【図24】図24は、同一反応で二種類の非標識化プローブを使用する嚢胞性線維症変異F508delとQ493Vの融解ピークを示す微分融解曲線である。
【図25】図25A〜Bは、嚢胞性線維症G542X遺伝子座を含むPCRアンプリコンの融解曲線である。ここでサンプルは、アンプリコンの融解により変異を同時的に走査し、プローブ融解により遺伝子型特定した。図25Aは、75℃と83℃の間のデータに関する蛍光対温度プロットを示す図である(アンプリコンの融解プロフィール)。挿入部分は、四角で示した曲線の一部を拡大したものである。図25Bは、58℃と72℃の間のデータの微分プロットを示す図である(プローブ融解プロフィール)。
【0285】
【化51】

【0286】
【図26】図26は、それぞれの増幅サイクルの間、非標識化プローブ/標的二重鎖融解をモニターするためにLightCycler上にプログラムしたPCRパラメーターを示す。二つのPCRサイクルを示す。それぞれのサイクルに関してアニーリングと伸長との間で蛍光を連続してモニターした(実線により示す)。
【図27】図27は、非標識化プローブと色素N7を使用する、PCRのそれぞれのサイクルの間に得られた微分融解曲線を示す図である。ピーク高さはサイクル数に伴って増加する。このサンプルのテンプレートDNAの初期濃度は105コピー/10μlであった。
【図28A】図28A〜Dは、PCRの各サイクルの間に得られた蛍光データ分析を示す図である。図28Aは、61℃(反応中の全dsDNAの量を反映する、■)と73℃(アンプリコンの量を反映する、□)で得られたデータのサイクル数対蛍光プロットを示す図である。
【図28B】図28A〜Dは、PCRの各サイクルの間に得られた蛍光データ分析を示す図である。図28Bは、融解ピーク面積(▲)と、融解ピークの上部と微分データから計算した融点遷移の直前との差(△)に対してプロットしたサイクル数を示す図である。
【図28C】図28A〜Dは、PCRの各サイクルの間に得られた蛍光データ分析を示す図である。図28Cは、三種類の初期テンプレート濃度(▲:104コピー/10μl;■:105コピー/10μl;□:106コピー/10μl)のサイクル数対融解ピーク面積プロットを示す図である。
【図28D】図28A〜Dは、PCRの各サイクルの間に得られた蛍光データ分析を示す図である。図28Dは、図28Cから導いたそれぞれのサンプルの交差点に対してプロットした初期テンプレート濃度の対数を示す図である。
【図29】図29は、種々の胃腸間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)変異を遺伝子型特定する為の融解曲線を示す図である。それぞれは正常の野生型アンプリコンと比較する。図29は、ヘテロ接合体SNP変異を示す。
【0287】
【化52】

【0288】
【図30】図30は、種々の胃腸間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)変異を遺伝子型特定する為の融解曲線を示す図である。それぞれは正常の野生型アンプリコンと比較する。図30は、ホモ接合体12 bp欠失/SNPを示す図である。
【0289】
【化53】

【0290】
【図31】図31は、種々の胃腸間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)変異を遺伝子型特定する為の融解曲線を示す図である。それぞれは正常の野生型アンプリコンと比較する。図31は、ヘテロ接合体タンデム重複(36 bp)を示す図である。
【0291】
【化54】

【0292】
【図32】図32は、種々の胃腸間質性腫瘍(gastrointestinal stromal tumor:GIST)変異を遺伝子型特定する為の融解曲線を示す図である。それぞれは正常の野生型アンプリコンを比較する。図32は、ヘテロ接合体欠失(54 bp)を示す図である。
【0293】
【化55】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

{式中、
【化2】

の部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または、場合により置換された融合単環式若しくは多環式窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキルである)から選択される部分である;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環式ヘテロ原子を含む部分、及び場合により置換された非環式ヘテロ原子を含む部分からなる群から選択される;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3は、水素、C1-6アルキル及びアリールカルボニルからなる群から選択されるか、R2とR3は一緒になって-(CH2w-(式中、wは1〜5である)を形成する;
R9及びR10はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル及びアリールカルボニルからなる群から選択される;
n=0、1または2であり;及び
v=0または1であり;但し、R2及びR3が一緒になって-(CH2w-を形成しないとき、v=0である;
ここで、v=0であるとき、Qは、
【化3】

の構造からなる群から選択される複素環であり、
ここで、v=1であるとき、Qは、
【化4】

の構造からなる群から選択される複素環であり、
ここで、R4、R5、R6、R7、R8、R12及びR13はそれぞれ独立して、以下のもの:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アルキルニトリルチオ、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、及びヌクレオシジルチオからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分、環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは四級アンモニウム部分を場合により含む}
をもつ化合物。
【請求項2】
R4、R5、R6、R7及びR8の少なくとも一つが、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、アルキルニトリルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R4は、場合により置換されたアリールカルボニルチオであり、4-(カルボニルチオ)-ピリジニル、4-(カルボニルチオ)-ニトロフェニル、4-(カルボニルチオ)-フェニル、4-(カルボニルチオ)-N,N-ジメチルアニリニル、2-(カルボニルチオ)-ピラジニル、6-(カルボニルチオ)-ベンゾピラジニル、5-(カルボニルチオ)-1-メチル-1,2,3-ベンゾトリアゾリル、及びカルボニルチオ-ペンタフルオロフェニルからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R4は、場合により置換されたシクロヘテロアルキルカルボニルチオであり、4-(カルボニルチオ)-N-メチルピペラジニル、4-(カルボニルチオ)-N,N-ジメチルピペラジニウム及び4-(カルボニルチオ)-モルホリニルからなる群から選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
R4は場合により置換されたジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ基N,N-ジメチルアミノメチルカルボニルチオである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
R4は場合により置換されたトリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ基トリメチルアンモニウムメチルカルボニルチオである、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
R4は場合により置換されたアルキルニトリルチオ基アセトニトリルチオである、請求項2に記載の化合物。
【請求項8】
R4は場合により置換されたシクロアルキルチオ基1-(チオ)-ビシクロ[2.2.1]ヘプチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
R4は場合により置換されたシクロヘテロアルキルチオ基4-(チオ)-N-メチルピペラジニルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
R4は場合により置換されたトリアルキルアンモニウムアルキルチオ基トリメチルアンモニウムプロピルチオである、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
R4は場合により置換されたヌクレオシジルチオ基5'-デオキシ-アデノシニル-チオである、請求項2に記載の化合物。
【請求項12】
式:
【化5】

を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
R4、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも一つが、4-(カルボニルチオ)-ピリジニル、4-(カルボニルチオ)-ニトロフェニル、4-(カルボニルチオ)-フェニル、4-(カルボニルチオ)-N,N-ジメチルアニリニル、2-(カルボニルチオ)-ピラジニル、6-(カルボニルチオ)-ベンゾピラジニル、5-(カルボニルチオ)-1-メチル-1,2,3-ベンゾトリアゾリル、カルボニルチオ-ペンタフルオロフェニル、4-(カルボニルチオ)-N-メチルピペラジニル、4-(カルボニルチオ)-N,N-ジメチルピペラジニウム、4-(カルボニルチオ)-モルホリニル、N,N-ジメチルアミノメチルカルボニルチオ、トリメチルアンモニウムメチルカルボニルチオ、1-(チオ)-ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、4-(チオ)-N-メチルピペラジニル、トリメチルアンモニウムプロピルチオ、5'-デオキシ-アデノシニル-チオ及びアセトニトリルチオからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
但し、R4、R5、R6、R7、及びR8の少なくとも一つは、以下のものからなる群から選択されない:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、及びジアルキルアミノ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;トリメチルアンモニウムプロピル;メチルチオ;アミノ;ヒドロキシル;N,N-ジメチルピペラジニル;ピリミジニルチオ;色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含んでいてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
但し、R4、R5、R6、及びR7は、以下のものからなる群からは選択されない:ハロゲン、シクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アルコキシ、及びジアルキルアミノ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
但し、R4は水素、N,N-ジメチルピペラジニル、ピリミジニルチオ、メチルチオ、チオール、アミノ、及びヒドロキシルからなる群からは選択されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
但し、R5は、トリメチルアンモニウムプロピル及びフェニルからなる群からは選択されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
但し、R6は、水素、メチル、及びフェニルからなる群からは選択されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
但し、R7は水素ではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項20】
但し、前記化合物は、G5、H5、I5、K5、L5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、F7、C8、E8、G8、L8、M8、N8、O8、及びV8からなる群から選択されない、請求項1に記載の化合物。
【請求項21】
前記化合物は、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、U7、V7、W7、X7、Z7、K8、P8、T8、W8、X8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、Q9、R9、A10、V10、F11、及びH11からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項22】
式中、R2及びR3は一緒になって-(CH2w-を形成し、且つ
v=1
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
式中、v=0であり、
Qは
【化6】

であり、
但し、R2、R5、及びR13の少なくとも一つはメチルではない、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
式:
【化7】

を有する色素の製造プロセスであって、
【化8】

を有する化合物と、式:
【化9】

を有する化合物とを反応させる段階{式中、部分
【化10】

は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または場合により置換された融合単環式若しくは多環式窒素含有環を表す;
Aは水素であるか、またはAはアルキル、ハロ、アミノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルキルスルホニル、ハロアルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、カルボン酸誘導体、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、ピペリジノ、ピペラジノ、フタルイミド、ベンゾチアゾリウム、ナフトチアゾリウム;ベンゾオキサゾリウム、ナフトオキサゾリウムからなる群から独立して選択される一つ以上の置換基を表し、そのそれぞれは場合によりアルキル、アミノ、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキルで置換されているか、または窒素上でアルキル基により場合により四級化されていてもよい;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
Xは酸素または硫黄であり;
Lは離脱基であり;
R2は、C1-6アルキル、C2-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノアルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、及びアルキレンスルホン酸からなる群から選択され;
R4は、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、アルキルニトリルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;
R5は、C1-6アルキル、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアンモニウム、ジアルキルアミノアルキル、及びトリアルキルアンモニウムアルキル、アリール、ヘテロアリールからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;及び
R6及びR8は独立して、以下のものからなる群から選択される:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アリールカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分または環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含む}
を含む、前記プロセス。
【請求項25】
核酸分析法であって、以下の段階:
標的核酸と、飽和dsDNA結合色素及び、前記標的核酸の一部にハイブリダイズするように形成した非標識化プローブとを混合して混合物を形成する段階、
前記非標識化プローブを前記標的核酸にハイブリダイズさせて、プローブ/標的二重鎖を形成する段階、
混合物を加熱するにつれてdsDNA結合色素からの蛍光を測定することによって、前記プローブ/標的二重鎖の融解曲線を生成する段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む、前記方法。
【請求項26】
前記融解曲線の形状を分析する段階が、微分融解曲線を生成することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記融解曲線の形状を分析する段階がさらに、前記微分融解曲線上の一つ以上の融解ピークの形状及び位置を分析することにより遺伝子型を特定することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標的核酸を増幅させる段階をさらに含み、ここで前記増幅段階を実施してから前記融解曲線を生成する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記増幅段階が、ポリメラーゼ連鎖反応による増幅を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリメラーゼ連鎖反応が非対称ポリメラーゼ連鎖反応である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記非標識化プローブを、標的核酸を増幅してから標的核酸と混合する、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記非標識化プローブとdsDNA結合色素を添加してから、前記標的核酸を増幅する、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記非標識化プローブを3'末端でブロックして、増幅の間に伸長しないようにする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記非標識化プローブが少なくとも14ヌクレオチド長である、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
前記混合物が、第二の非標識化プローブを含み、前記分析段階が標的核酸上の二つの遺伝子座で遺伝子型を特定することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項36】
前記混合物が第二の標的核酸と、前記第二の標的核酸に少なくとも部分的にハイブリダイズするように形成された第二の非標識化プローブとを含み、前記分析段階は、前記標的核酸の上の第一の遺伝子座と前記第二の標的核酸の上の第二の遺伝子座で遺伝子型を特定することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記標的核酸の部分が一ヌクレオチド多形性を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記dsDNA結合色素が、少なくとも50%の飽和率を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
前記色素は、G5、H5、I5、K5、L5、S5、D6、E6、P6、R6、Y6、Z6、F7、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、U7、V7、W7、X7、Z7、C8、E8、G8、K8、L8、M8、N8、O8、P8、T8、V8、W8、X8、Z8、A9、C9、G9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、Q9、R9、A10、V10、F11、及びH11からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記色素が、PO-PRO(商標)-1、BO-PRO(商標)-1、SYTO(登録商標)43、SYTO(登録商標)44、SYTO(登録商標)45、SYTOX(登録商標)Blue、POPO(商標)-3、BOBO(商標)-3、LO-PRO(商標)-1、JO-PRO(商標)-1、YO-PRO(登録商標)-1、TO-PRO(登録商標)-1、SYTO(登録商標)9、SYTO(登録商標)11、SYTO(登録商標)15、SYTO(登録商標)16、SYTO(登録商標)23、TOTO(商標)-3、YOYO(登録商標)-3、GelStar(登録商標)、及びEvaGreen(商標)からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記標的核酸と非標識プローブは溶液中で遊離型であり、前記標的核酸も非標識化プローブもどちらも表面に固定されていない、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
さらに内部標準を含み、前記融解曲線は、内部標準のTmに基づいてシフトする、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
標的核酸、
PCR試薬、
アンプリコンを生成するように標的核酸の一部を増幅するように形成された一対のオリゴヌクレオチドプライマー、及び
式:
【化11】

を有するdsDNA結合色素{式中、

【化12】

の部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または、場合により置換された単環式若しくは多環式窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキルである)から選択される部分である;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環式ヘテロ原子を含む部分、及び場合により置換された非環式ヘテロ原子を含む部分からなる群から選択される;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、及びR10はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、及びアリールカルボニルからなる群から選択され;
n=0、1または2であり;及び
Qは、
【化13】

からなる構造の群から選択される複素環であり、ここでR5、R6、R7、R8、R12、及びR13は独立して以下のものからなる群から選択される:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アリールカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分または環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含む、及び
R4は、アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、アルキルニトリルチオ、及びヌクレオシジルチオからなる群から選択され、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい}
を含むPCR反応混合物。
【請求項44】
前記色素が、F7、N7、O7、P7、Q7、R7、S7、T7、V7、W7、X7、T8、A9、C9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、M9、N9、O9、P9、R9、F11、及びH11からなる群から選択される、請求項43に記載のPCR反応混合物。
【請求項45】
前記dsDNA結合色素が少なくとも50%の飽和率を有する、請求項43に記載のPCR反応混合物。
【請求項46】
前記アンプリコンの少なくとも一部にハイブリダイズするように構成した非標識化プローブをさらに含む、請求項43に記載のPCR反応混合物。
【請求項47】
第二のアンプリコンを生成するように標的核酸の第二の部分を増幅するように構成された第二の対のオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項43に記載のPCR反応混合物。
【請求項48】
以下の各段階:
標的核酸を少なくとも部分的にハイブリダイズするように構成した非標識化プローブとdsDNA結合色素との存在下で標的核酸を融解して融解曲線を生成する段階、及び
前記融解曲線を使用して遺伝子型を同定する段階、
を含む遺伝子型を特定する方法であって、
前記dsDNA結合色素は、式:
【化14】

{式中、
【化15】

の部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または、場合により置換された単環式若しくは多環式窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキルである)である;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環式ヘテロ原子を含む部分、及び場合により置換された非環式ヘテロ原子を含む部分からなる群から選択される;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、及びR10はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、及びアリールカルボニルからなる群から選択され;
n=0、1または2であり;及び
Qは、
【化16】

からなる構造の群から選択される複素環であり、
式中、R5、R6、R7、R8、R12、及びR13は独立して以下のものからなる群から選択される:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アリールカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分または環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含む、そして
R4は、以下のものからなる群から選択される:アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、アルキルニトリルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい}
を有する、前記方法。
【請求項49】
標的核酸に少なくとも部分的にハイブリダイズするように構成された非標識化プローブと、
飽和dsDNA結合色素と
を含む、標的核酸を分析するためのキット。
【請求項50】
耐熱性ポリメラーゼ、及び
標的核酸を増幅するように構成されたオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記オリゴヌクレオチドプライマーは第一のプライマーと第二のプライマーを含み、前記第一のプライマーは第二のプライマーよりも多いモル量で提供される、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
前記非標識化プローブが3'末端でブロックされている、請求項49に記載のキット。
【請求項53】
前記dsDNA結合色素が少なくとも50%の飽和率を有する、請求項49に記載のキット。
【請求項54】
前記dsDNA結合色素が少なくとも90%の飽和率を有する、請求項49に記載のキット。
【請求項55】
前記色素が、N7、R7、X7、T8、O7、P8、P7、Q7、T7、V7、W8、Z8、Z7、X8、G9、C9、A9、M9、N9、I9、I9Met、J9、J9Met、K9、L9、L9Met、O9、P9、V10、F11、及びH11からなる群から選択される、請求項49に記載のキット。
【請求項56】
前記色素が、式:
【化17】

{式中、
【化18】

の部分は、場合により置換された融合単環式若しくは多環式芳香環または、場合により置換された単環式若しくは多環式窒素含有芳香族複素環を表し;
Xは酸素、硫黄、セレン、テルルまたは、C(CH32及びNR1(式中、R1は水素またはC1-6アルキルである)から選択される部分である;
R2は、C1-6アルキル、C3-8シクロアルキル、アリール、アリール(C1-3アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アミノアルキル、モノ及びジアルキルアミノアルキル、トリアルキルアンモニウムアルキル、アルキレンカルボキシレート、アルキレンカルボキサミド、アルキレンスルホネート、場合により置換された環式ヘテロ原子を含む部分、及び場合により置換された非環式ヘテロ原子を含む部分からなる群から選択される;
t=0または1であり;
Zは0または1から選択される電荷であり;
R3、R9、及びR10はそれぞれ独立して、水素、C1-6アルキル、及びアリールカルボニルからなる群から選択される;
n=0、1または2であり;及び
Qは、
【化19】

からなる構造の群から選択される複素環であり、
式中、R5、R6、R7、R8、R12、及びR13は独立して、以下のものからなる群から選択される:水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルケニル、ポリアルケニル、アルキニル、ポリアルキニル、アルケニルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アリールカルボニルチオ、ジアルキルアミノ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、アルキルニトリルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい;非環式ヘテロ原子を含有する部分または環式ヘテロ原子を含有する部分、色素BRIDGE-DYE、及び反応性基、そのそれぞれは場合により四級アンモニウム部分を含む、及び
R4は、以下のものからなる群から選択される:アリールカルボニルチオ、シクロヘテロアルキルカルボニルチオ、ジアルキルアミノアルキルカルボニルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルカルボニルチオ、アルキルニトリルチオ、シクロアルキルチオ、シクロヘテロアルキルチオ、トリアルキルアンモニウムアルキルチオ、及びヌクレオシジルチオ、そのそれぞれは場合により置換されていてもよい}
を有する、請求項49に記載のキット。
【請求項57】
c-kit遺伝子における変異を検出する方法であって、以下の段階:
核酸サンプル、
c-kit遺伝子の遺伝子座を増幅するように構成した一対のプライマー、
耐熱性ポリメラーゼ、及び
飽和dsDNA結合色素
を含む増幅混合物を提供する段階、
核酸サンプルを増幅してアンプリコンを生成する段階、
前記アンプリコンを融解して融解曲線を得る段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む、前記方法。
【請求項58】
前記分析段階が、さらに前記融解曲線の形状と類似する野生型アンプリコンから得た第二の融解曲線の形状とを比較することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記プライマー対が、GATGCTCTGCTTCTGTACTG(SEQ ID NO.40)及びGCCTAAACATCCCCTTAAATTGG(SEQ ID NO.41);CTCTCCAGAGTGCTCTAATGAC(SEQ ID NO.42)及びAGCCCCTGTTTCATACTGACC(SEQ ID NO.43);CGGCCATGACTGTCGCTGTAA(SEQ ID NO.44)及びCTCCAATGGTGCAGGCTCCAA(SEQ ID NO.45);及びTCTCCTCCAACCTAATAGTG(SEQ ID NO.46)及びGGACTGTCAAGCAGAGAAT(SEQ ID NO.47)からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。.
【請求項60】
前記一対のプライマーが以下の核酸配列:GATGCTCTGCTTCTGTACTG(SEQ ID NO.40)及びGCCTAAACATCCCCTTAAATTGG(SEQ ID NO.41)を有し、ここで前記複製混合物がさらに、以下の配列:CTCTCCAGAGTGCTCTAATGAC(SEQ ID NO.42)、AGCCCCTGTTTCATACTGACC(SEQ ID NO.43)、CGGCCATGACTGTCGCTGTAA(SEQ ID NO.44)、CTCCAATGGTGCAGGCTCCAA(SEQ ID NO.45)、TCTCCTCCAACCTAATAGTG(SEQ ID NO.46)、GGACTGTCAAGCAGAGAAT(SEQ ID NO.47)を有する追加のプライマーを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
核酸分析方法であって、以下の段階:
標的核酸と飽和dsDNA結合色素とを混合して混合物を形成する段階、
混合物を加熱するにつれてdsDNA結合色素からの蛍光を測定することによって、標的核酸の融解曲線を生成する段階、
標的核酸の一部とハイブリダイズするように構成した第二の核酸を前記混合物に含める段階であって、前記第二の核酸は標的核酸よりも小さく、標的核酸とは異なる融点を有し、そして第二の核酸を標的核酸の一部にハイブリダイズさせる、前記段階、
第一の核酸からの第二の核酸を融解させる段階、及び
前記融解曲線の形状を分析する段階、
を含む前記方法。
【請求項62】
前記第二の核酸が非標識化プローブであり、融解曲線を生成する前に混合物に加える、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
標的核酸を増幅する段階をさらに含み、ここで混合物に前記第二の核酸を加えてから前記増幅段階を実施する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
標的核酸はTmを有し、第二の核酸は第二のTmを有し、ここで前記Tmは第二のTmより高く、前記分析段階は、Tm及び第二のTmでの融解曲線の形状を分析することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記第二の核酸は、前記融解曲線を生成させてから混合物に含め、そして第一の核酸から第二の核酸を融解させる段階は、第二の融解曲線を生成させることを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記標的核酸を第一のセットのプライマーを使用してPCRにより増幅し、前記第二の核酸を第二のセットのプライマーを使用してPCRにより増幅し、そして標的核酸と第二の核酸の増幅を同一反応混合物中で実施する、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記標的核酸と第二の核酸の両方の増幅を融解曲線を生成させる前に実施する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記標的核酸を第一のPCR温度プロフィールを使用して増幅し、第二の核酸を第二の温度プロフィールを使用して増幅する、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記第一のセットのプライマーは、穏和な非対称PCRのための割合で提供する、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記核酸の一部は配列変異を含むことが公知である、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記融解曲線の形状分析が、微分曲線の生成と、微分融解曲線上の一つ以上の融解ピークの形状及び場所の分析を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項72】
PCR分析法であって、以下の段階:
dsDNA結合色素と、標的核酸を増幅するように構成されたプライマーと未知初期量の標的核酸を含むサンプルとを混合して混合物を形成する段階、
dsDNA結合色素の存在下で前記標的核酸を増幅する段階、
複数の増幅サイクルの間の温度範囲でdsDNA結合色素の蛍光をモニターして、複数の融解曲線を生成する段階、
前記融解曲線を使用して標的核酸の初期量を定量する段階、
を含む、前記方法。
【請求項73】
前記混合物が、プローブ/標的二重鎖を形成するように標的核酸に一部ハイブリダイズするように構成された非標識化プローブをさらに含み、前記温度範囲は前記プローブ/標的二重鎖のTmを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記使用段階が、プローブ/標識二重鎖のTmのすぐ下の温度で融解曲線の微分値を使用することを含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記使用段階が、
具体的なサイクル数に関して微分融解曲線を生成し、前記微分曲線は融解ピークを有し、
前記融解ピーク面積を測定し、及び
この表面積を使用して標的核酸の初期量を決定する、各段階を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記dsDNA結合色素が飽和性色素である、請求項66に記載の方法。
【請求項77】
標的核酸、
核酸の遺伝子座を増幅するように構成された一対のプライマー、
dsDNA結合色素、
標的核酸の遺伝子座にハイブリダイズするように構成され、且つ融解曲線分析の際に標的核酸の遺伝子型を示すdsDNA結合色素と併せてシグナルを生成するように構成された非標識化プローブ、及び
耐熱性ポリメラーゼ
を含む核酸増幅反応混合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図28D】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2008−510698(P2008−510698A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527236(P2007−527236)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/013388
【国際公開番号】WO2006/121423
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(504260058)ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンデイション (19)
【出願人】(502420379)アイダホ テクノロジー インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】