説明

駅ホーム監視システム

【課題】人と人の重なりなどホーム上における事情を考慮せずに高精度の監視を行う。
【解決手段】撮像を行って画像情報を得る複数の赤外画像式撮像装置である撮像装置1−1〜1−nと、前記撮像装置1−1〜1−nを駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させるカメラ移動装置3−1〜3−nと、前記撮像装置1−1〜1−nから得られる画像情報を処理して列車の軌道に人の有無を検出する画像処理装置2とを具備する。カメラ移動装置3−1〜3−nは、列車が通過する軌道上の位置から、列車の通過を妨げない位置までの間において移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅のホームから列車の軌道へ人が落下したような場合や軌道内へ侵入があった場合に、適切な検出を可能とする駅ホーム監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駅のホームからの落下者を検出する場合には、近くの駅員や乗客による目視が主であり、落下者の通報から列車の停止ボタンの操作までが必ずしもスムーズに行われなかった。
【0003】
上記に対し、監視カメラを用いた監視システムとしては特許文献1に記載されたものがあり、監視カメラと画像処理によって人の行動監視を行うものであった。このシステムでは、行動監視を行うためにホームの天井などに固定されたカメラによって映像を取得するものであり、死角ができないような位置にカメラを設置するものの、人と人の重なりによる死角については避けようがなく、十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2004−58737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、軌道内へ人が落下或いは侵入した場合に適切なる検出を可能とすることであり、人と人の重なりなどホーム上における出来事に拘わりなく精度の高い監視を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る駅ホーム監視システムは、画像情報を得る撮像装置と、前記撮像装置を駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させるカメラ移動装置と、前記撮像装置から得られる画像情報を処理して列車の軌道に人の有無を検出する画像処理手段とを具備することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る駅ホーム監視システムでは、撮像装置が、赤外画像式撮像装置であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る駅ホーム監視システムは、軌道上において列車の到来を検出するシステムから得られる列車到来情報に基づいて、撮像装置を撮像位置と退避位置との間において移動させることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る駅ホーム監視システムでは、カメラ移動装置は、列車が通過する軌道上の位置から、列車の通過を妨げない位置までの間において移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る駅ホーム監視システムは、カメラ移動装置により撮像装置を駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させることにより、軌道部分などを撮像位置とすることができ、ホームにおける人や障害物の影響を受けずに少ない台数の撮像装置により適切な監視が可能となる効果を奏する。また、撮像装置が、赤外画像式撮像装置であることにより、昼間であるか夕方であるかなどの時刻、日陰であるか日向であるかなどの日射環境に左右されにくく、適切な監視が可能となる効果を奏する。更に、軌道上において列車の到来を検出するシステムから得られる列車到来情報に基づいて、撮像装置を移動させるので、列車が撮像装置の撮像位置へ到る寸前まで撮像を行って監視することができ、監視体制の強化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る駅ホーム監視システムは、撮像を行って画像情報を得る複数の撮像装置を備え、撮像装置を駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させるようにすることにより、人と人の重なりなどホーム上における事情を考慮せずに精度の高い監視を行うという目的を達成したものである。
【実施例1】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明に係る駅ホーム監視システムの実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1には、駅ホーム監視システムの実施例ブロック図が示されている。このシステムにおいては、撮像装置1−1〜1−nが備えられ、撮像装置1−1〜1−nの出力は画像処理装置2へ送られている。
【0012】
撮像装置1−1〜1−nは、赤外画像式撮像装置であり、近赤外線画像信号を取得するものである。撮像装置1−1〜1−nは、カメラ移動装置3−1〜3−nに設置されており、カメラ移動装置3−1〜3−nは、撮像装置1−1〜1−nを駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させるものである。
【0013】
カメラ移動装置3−1〜3−nの構成について図2を用いて説明する。例えば、アーム31に撮像装置1(1−1〜1−n)が載置されており、アーム31は図2の矢印Xに示されるように摺動筒32内を摺動し、軌道33内(撮像位置)と駅ホーム34の端部から軌道33へ到る側壁37の直下部分(退避位置)の間で駆動部35により移動させられる。
【0014】
カメラ移動装置3−1〜3−nの各駆動部35は、1つの制御部36により駆動制御され、アーム31の摺動により撮像装置1(1−1〜1−n)が撮像位置と退避位置の間で移動させられるものである。制御部36は、軌道33上において列車の到来を検出するシステムである列車識別システム4(図1)から得られる列車到来情報に基づいて、撮像装置1(1−1〜1−n)について撮像位置と退避位置との間において移動させる制御信号を各駆動部35へ与えるものである。
【0015】
列車識別システム4について説明する。例えば列車の先頭車両における下面部に当該列車に固有の識別情報等を記憶したICタグを設け、図3に示すように軌道33上の所要位置にアンテナを含む情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・を配置して、到来する列車に設けられたICタグの情報を情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・により読み出し、この情報を情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・から列車識別システム4(図1)へ当該情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・の識別情報と共に送信するように構成されている。列車識別システム4では、当該情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・から送られた情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・の識別情報と列車の識別情報とから、どの列車がどの位置(情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・の位置)を走行しているかを監視し、前後する列車間の距離が近付き過ぎとなったや同一線路内へ対向する列車が侵入する事故を防止するなどの制御を行う。本実施例では、情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・による情報の送信があった場合に、例えばその位置情報を列車到来情報として制御部36へ与えて上記カメラ移動装置3−1〜3−nに対する制御を行う。
【0016】
図1に示した画像処理装置2は、撮像装置1−1〜1−nにそれぞれ対応して検出処理部21−1〜21−nが設けられると共に、検出処理部21−1〜21−nによる処理結果を受けて追跡処理を行う追跡処理部22を備えている。検出処理部21−1〜21−nは、撮像装置1−1〜1−nから得られる近赤外線画像信号による画像情報について画像処理を行って軌道33内へ落下或いは侵入した人の領域検出を行うものであり、検出した領域候補情報は追跡処理部22へ送られる。
【0017】
追跡処理部22は、検出処理部21−1〜21−nから送られてくる領域候補情報について、例えば、それぞれの検出処理部21−1〜21−n毎に予め記憶してある、領域候補の大きさや形状から大人から子供までの人間に対応するものであるかなどの判定を行い、また、1フレーム毎などの時系列に領域候補の大きさや形状から大人から子供までの人間に対応するものであるかなどの判定を行うことなどによる追跡処理により、最終的に落下或いは侵入した人の有無を検出して、人有りの場合に結果を総合指令所などの上位システム10へ送る。
【0018】
上位システム10には、例えば、列車制御装置20と駅緊急警報システム30が接続されており、追跡処理部22から上位システム10へ「落下或いは侵入者が有」という情報が与えられると、列車制御装置20へ緊急停止の指示が送られて列車を緊急停止させ、また、駅緊急警報システム30へ警報の発報指示が与えられて警報音や警報放送が駅構内に流されるように構成される。
【0019】
以上の通りに構成された駅ホーム監視システムでは、撮像装置1−1〜1−nが駅ホーム34において、図3に示されるように、例えば70m(〜50m)おきに配置されており、この実施例では列車が到来する方向を背にして撮像を行う。上記駅ホーム34の長さが例えば200mである場合に、3台の撮像装置が配置される。そして、カメラ移動装置3−1〜3−n(n=3)の制御部36は、図4に示すフローチャートに従って駆動部35を制御するので、その動作を説明する。
【0020】
列車識別システム4(図1)から列車到来情報を受け取り(S1)、情報読取装置5−1、5−2、5−3、・・・の位置に列車が到来していないことを確認し(S2)、YESとなると、カメラ移動装置3−1〜3−3に対応するそれぞれの駆動部35へ制御信号を送って全ての撮像装置1−1〜1−3を撮像位置へ送り出す(S3)。なお、当初は撮像装置1−1〜1−3は、退避位置にあるものとする。この状態が図2(a)に示す状態である。斯して、駅ホーム34上の人の重なりなどにより監視ができ難い状態が生じることなく、適切な監視を行い得ると共に、駅の柱等の構造物による死角を考慮することもなく撮像装置1−1〜1−3を配置する位置を決定できるので、撮像装置の数を削減することができる。
【0021】
上記ステップS3に続いて、先頭の情報読取装置5−1の位置に列車が到来したかを監視し続けて(S4)、到来を検出すると、カメラ移動装置3−1の駆動部35を制御して撮像装置1−1を退避位置へ退避させる(S5)。この状態が図2(b)に示す状態である。そこで、更に次の情報読取装置5−2の位置に列車が到来したかを監視し続けて(S6)、到来を検出すると、カメラ移動装置3−2の駆動部35を制御して撮像装置1−2を退避位置へ退避させる(S7)。この状態が図2(c)に示す状態である。このとき近付いてくる列車Tに対し、撮像装置1−3は図2に示すような位置関係であり、列車が進入する直前までの監視を可能としている。
【0022】
以下、順次に列車が通過する位置の撮像装置を退避位置へ退避させ、最後の情報読取装置5−3(この例では、3台の情報読取装置を例とする)の位置に列車が到来したかを監視し続けて(S8)、到来を検出すると、カメラ移動装置3−3の駆動部35を制御して撮像装置1−3を退避位置へ退避させる(S9)。この状態が図2(d)に示す状態であり、全ての撮像装置1−1〜1−n(=3)が退避させられる。なお、ステップS9の次にステップS1の判定を行うが、これは例えば、最後尾の車両にICタグを設けておき、図示せぬ情報読取装置5−4を駅ホーム34における撮像装置1−1が設けられている側と反対の端部付近に設け、この情報読取装置5−4による検出が行われた後に列車が駅ホーム34から去ったものと判定し、ステップS1においてYESへ分岐する手法を採用することができる。
【0023】
上記の処理により撮像を行っている撮像装置からは検出処理部に対し赤外線画像情報が送られてくるので、当該検出部では、図5に示されるフローチャートに対応する動作を行う。まず、1フレーム分の赤外線画像情報を所定の閾値により2値化し(S11)、2値化画像についてフレーム間差分或いは背景差分の少なくとも一方を行う(S12)。差分画像についての領域候補検出を行ってラベリングを行い、これらの領域候補情報とラベリング情報とを追跡処理部22へ送り(S13)、1フレーム分の赤外線画像情報に対する処理を終了し、以下近赤外線画像信号対応の画像情報が得られる限りにおいてステップS11からステップS13の処理を繰り返す。
【0024】
追跡処理部22では、上記検出部から送られてくる結果に対して、一例として図6に示されるフローチャートに対応する動作を行う。即ち、幾つかの検出処理部により送られてくる領域候補情報について、例えば、それぞれの検出処理部毎に予め記憶してある、領域候補の大きさや形状から大人から子供までの人間に対応するものであるかなどの判定(空間的な解析)を行い(S21)、また、幾つかのフレームについて1フレーム毎などの時系列に領域候補の大きさや形状から大人から子供までの人間に対応するものであるかなどの判定(時系列的解析)を行う(S22)。空間的解析結果と時系列的判定結果を用いて、所定以上の結果が落下或いは侵入した人が存在することになったかなどを判定し、最終的に落下或いは侵入した人の有無を検出し(S23)、人有りの場合に結果を総合指令所などの上位システム10へ送る(S24)。以下、これを繰り返す。このようにして、追跡処理を行うことにより、監視の精度を向上させている。
【0025】
また、撮像装置1−1〜1−nが、赤外画像式撮像装置であることにより、昼間であるか夕方であるかなどの時刻、日陰か日向かなどの日射環境に左右されにくく、適切な監視が可能となるようにしてある。更に、撮像装置1−1〜1−nを移動させて軌道33側から撮像を行うので、駅ホーム34側へ撮像装置を設置した場合に撮像を行い難い駅ホーム34の端部における軌道33内に落下或いは侵入した人を適切に撮像できるものである。尚、上記の構成にあっては、全ての撮像装置1−1〜1−nについて移動させるようにしたが、全ての撮像装置1−1〜1−nについて移動させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る駅ホーム監視システムの実施例を示すブロック図。
【図2】本発明に係る駅ホーム監視システムに用いられるカメラ移動装置の実施例における構成を示す図。
【図3】本発明に係る駅ホーム監視システムにより撮像装置が移動される経過を示す図。
【図4】本発明に係る駅ホーム監視システムにより撮像装置を移動する制御を示すフローチャート。
【図5】本発明に係る駅ホーム監視システムにおける画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【図6】本発明に係る駅ホーム監視システムにおける画像処理装置の動作を説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0027】
1−1〜1−n 撮像装置
2 画像処理装置
3−1〜1−n カメラ移動装置
4 列車識別システム
20 列車制御装置
21−121−n 検出処理部
22 追跡処理部
30 駅緊急警報システム
31 アーム
32 摺動筒
33 軌道
34 駅ホーム
35 駆動部
36 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を得る撮像装置と、
前記撮像装置を駅ホーム監視を行う撮像位置と監視を行わない退避位置との間において移動させるカメラ移動装置と、
前記撮像装置から得られる画像情報を処理して列車の軌道に人の有無を検出する画像処理手段と
を具備することを特徴とする駅ホーム監視システム。
【請求項2】
撮像装置は、赤外画像式撮像装置であることを特徴とする請求項1に記載の駅ホーム監視システム。
【請求項3】
軌道上において列車の到来を検出するシステムから得られる列車到来情報に基づいて、撮像装置を撮像位置と退避位置との間において移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の駅ホーム監視システム。
【請求項4】
カメラ移動装置は、列車が通過する軌道上の位置から、列車の通過を妨げない位置までの間において移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の駅ホーム監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186136(P2007−186136A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6770(P2006−6770)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】