説明

駆動システム

【課題】廃熱回収量を向上させることができる駆動システムを提供する。
【解決手段】第1内燃機関10と、第2内燃機関20と、出力軸71と、第1燃料供給手段123と、第2燃料供給手段124と、排気ガス供給手段135と、水含有液体供給手段144と、制御手段80と、を備え、制御手段80は、第2内燃機関20を、燃料を燃焼し第2駆動軸22を回転する通常燃焼運転から、第1内燃機関10の排気ガスの熱によって水含有液体中の水を気化膨張させて第2駆動軸22を回転する水気化膨張運転に切り替える前に、水含有液体供給手段144に供給信号を送信し、水含有液体供給手段144の実供給量と供給信号との関係を補正し、水気化膨張運転に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4サイクル(吸気、圧縮、燃焼(膨張)、排気)の内燃機関において、排気行程の後に、水噴射・気化膨張行程と、水蒸気排気行程とを追加して6サイクルとし、熱効率を改善する技術が提案されている(特許文献1参照)。なお、特許文献1では、排気行程の後、燃焼室に水を噴射し、燃焼室を囲む燃焼室壁の熱や燃焼室に残留する排気ガスの熱により、水を気化し膨張させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−218557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、4サイクルと比較して、燃焼行程の頻度が少なくなるため、高出力が要求される場合には向いていない。
また、燃焼室を囲む燃焼室壁の熱や、燃焼室に残留する排気ガスの熱を利用するので、水の気化・膨張により回収される熱量が少ない。つまり、燃焼室に残留せず排気されている排気ガスの熱を利用していない。
また、通常燃焼サイクル(4サイクル)と省エネサイクル(6サイクル)とが同一の燃焼室で行われるため、燃焼によって生じたスス(カーボン)が水噴射ノズルに付着し、水の目標噴射量と実噴射量とが異なり、水の気化膨張が好適に行われなくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、廃熱回収量を向上させることができる駆動システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、第1駆動軸を有する第1内燃機関と、第2駆動軸を有する第2内燃機関と、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸からの動力により回転する出力軸と、前記第1内燃機関に燃料を供給する第1燃料供給手段と、前記第2内燃機関に燃料を供給する第2燃料供給手段と、前記第1内燃機関の排気ガスを前記第2内燃機関に供給する排気ガス供給手段と、前記第2内燃機関に水含有液体を供給する水含有液体供給手段と、前記水含有液体供給手段に水含有液体を供給させる供給信号を送信する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第2内燃機関を、燃料を燃焼し前記第2駆動軸を回転する通常燃焼運転から、前記第1内燃機関の排気ガスの熱によって水含有液体中の水を気化膨張させて前記第2駆動軸を回転する水気化膨張運転に切り替える前に、前記水含有液体供給手段に前記供給信号を送信し、前記水含有液体供給手段の実供給量と前記供給信号との関係を補正し、前記水気化膨張運転に切り替えることを特徴とする駆動システムである。
【0007】
ここで、水含有液体は、純水の他、水とその他液体との混合液体(例えば、水とオイルとの混合液体、エタノール)を含む。
このような駆動システムによれば、第2内燃機関が通常燃焼運転(通常燃焼モード)から水気化膨張運転(水気化膨張モード)に変更される前に、水含有液体供給手段の予備噴射を行い水含有液体供給手段の供給信号と実供給量との関係(Ti−Q特性)を補正することにより、第2内燃機関が水気化膨張運転に切り替わった時に直ちに水含有液体供給手段から要求される噴射量の水含有液体を第2内燃機関に供給することができる。これにより、水気化膨張運転の第2内燃機関から好適に出力を得ることができるので、排気ガスからの廃熱回収量を向上させることができる。
【0008】
また、前記駆動システムにおいて、前記補正に係る水含有液体供給手段の水含有液体の供給は、前記通常燃焼運転の排気行程で行われることが好ましい。
【0009】
このような駆動システムによれば、第2内燃機関の通常燃焼運転における排気行程で行われるため、噴射された水は第2内燃機関の高温の排気ガスにより水蒸気となり、排気ガスと共に第2内燃機関から排出される。これにより、第2内燃機関の燃焼室の室内環境の悪化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、廃熱回収量を向上させることができる駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る駆動システムの構成図である。
【図2】本実施形態に係る駆動システムの構成図である。
【図3】本実施形態に係る第1内燃機関及び第2内燃機関の側断面図である。
【図4】本実施形態に係る第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの断面図である。
【図5】本実施形態に係る第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの側 面図である。
【図6】本実施形態に係る第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、(a)は回転半径r1(偏心量)が最大、(b)は回転半径r1が中間、(c)は回転半径r1が0、の状態を示している。
【図7】(a)〜(d)は第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「最大」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図8】(a)〜(d)は第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「中間」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図9】(a)〜(d)は第1トランスミッション及び第1ワンウェイクラッチの側面図であり、回転半径r1が「0」の状態における回転運動及び揺動運動を示している。
【図10】入力軸の回転角度θ1と外リング(揺動部)の角速度ω2との関係を示すグラフである。
【図11】入力軸の回転角度θ1と外リング(揺動部)の摺動速度との関係を示すグラフである。
【図12】通常燃料モードで運転する排気ガス供給側の内燃機関の温度と、水気化膨張モードで運転する排気ガス需要側の内燃機関の温度と、水の噴射量との関係を示すグラフ(マップ)である。
【図13】本実施形態に係る駆動システムにおいて、第1内燃機関が通常燃焼モードで運転しており、第2内燃機関が水気化膨張モードで運転している状況を示す。
【図14】本実施形態に係る駆動システムにおいて、第1内燃機関が水気化膨張モードで運転しており、第2内燃機関が通常燃焼モードで運転している状況を示す。
【図15】(a)〜(d)はECUが送信する噴射指令信号と水インジェクタの噴射量との関係を説明する図である。
【図16】(a)〜(b)はTi−Q特性の補正を説明するフローチャートである。
【図17】(a)〜(d)は通常燃焼モード中に実行される予備噴射を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図17を参照して説明する。
【0013】
≪駆動システムの構成≫
図1、図2に示す本実施形態に係る駆動システム1は、図示しないハイブリッド車(車両、移動体)に搭載されており、ハイブリッド車の駆動力を発生するシステムである。
ただし、車両の種類はこれに限定されず、ガソリン車でもよい。また、四輪車に限定されず、二輪車、三輪車でもよい。
【0014】
駆動システム1は、第1内燃機関10(第1水気化膨張機関)及び第2内燃機関20(第2水気化膨張機関)と、第1内燃機関10及び/又は第2内燃機関20に燃料を供給する燃料供給手段(図2参照)と、第1内燃機関10及び第2内燃機関20の一方の排気ガスを他方に供給する排気ガス供給手段と、第1内燃機関10及び/又は第2内燃機関20に水(水含有液体)を供給する水含有液体供給手段と、第1トランスミッション30A及び第2トランスミッション30Bと、複数(ここでは6つ)の第1ワンウェイクラッチ60Aを有する第1ワンウェイクラッチ装置(図4参照)と、複数(ここでは6つ)の第2ワンウェイクラッチ60Bを有する第2ワンウェイクラッチ装置(図4参照)と、車両の前進時に一体となって正方向(一方向)で回転する第1出力軸71A及び第2出力軸71Bと、システムを電子制御するECU80(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
なお、「正方向」は車両の前進方向に対応する方向であり、「逆方向」は車両の後退方向に対応する方向である。
【0015】
<第1内燃機関、第2内燃機関>
本実施形態において、第1内燃機関10と第2内燃機関20とは、それぞれ直列2気筒型で独立に駆動可能に構成されたレシプロエンジンである。
【0016】
そして、第1内燃機関10、第2内燃機関20は、ECU80からの指令に従って、通常燃焼モード又は水気化膨張モードで運転するようになっている。
通常燃焼モードは、燃料(ガソリン)を通常に燃焼させ、4サイクル(吸気、圧縮、燃焼、排気)で運転するモードである。水気化膨張モードは、排気ガスを吸気する排気ガス吸気行程と、排気ガスを圧縮する排気ガス圧縮行程と、水を噴射し排気ガスの熱によって水を気化膨張させる水気化膨張行程と、排気ガス及び生成した水蒸気を排気する排気行程とを含む4サイクルで運転するモードである。
【0017】
第1内燃機関10の第1シリンダブロック11と第2内燃機関20の第2シリンダブロック21とは、一体成形品で構成されており(図3参照)、第1内燃機関10及び第2内燃機関20は一体で、隣り合って並んで配置されている。なお、図1では、分かりやすくするため、第1内燃機関10と第2内燃機関20とを、便宜的に別々に記載している。
【0018】
そして、本実施形態では、第1シリンダブロック11には2つの第1シリンダ13、13が形成されており、第2シリンダブロック21には2つの第2シリンダ23、23が形成されている。ただし、シリンダの数はこれに限定されず、適宜に変更自由である。
また、本実施形態では、図3において、第1内燃機関10の第1クランク軸12(第1駆動軸)は左回転し、第2内燃機関20の第2クランク軸22(第2駆動軸)は右回転するように設計されている。つまり、第1クランク軸12と第2クランク軸22との回転方向は、互いに逆であり、制振性が高められている。
さらに、第1内燃機関10及び第2内燃機関20はオフセットクランク構造を採用しており、第1内燃機関10の第1ピストン14と第2内燃機関20の第2ピストン24とに作用するサイドフォースは、それぞれ小さくなっている。
【0019】
また、図2に示すように、第1内燃機関10の吸気側には第1吸気配管15が接続されており、第1内燃機関10の排気側には第1排気配管16が接続されている。一方、第2内燃機関20の吸気側には第2吸気配管25が接続されており、第2内燃機関20の排気側には第2排気配管26が接続されている。
【0020】
このような第1内燃機関10と第2内燃機関20の排気量は、不等分化され、異なる排気量で構成されている。例えば、第1内燃機関10は600cc、第2内燃機関20は1000ccで設計される。
これにより、第1内燃機関10と第2内燃機関20とは、異なる高効率ポイントを有することになる。そして、本実施形態では、第1内燃機関10及び/又は第2内燃機関20を高効率ポイント又は高効率ポイントに近いポイントで選択的に駆動させながらも、第1トランスミッション30A、第2トランスミッション30Bが走行要求量(アクセル開度等)に対応して動力を変速し、出力軸(第1出力軸71A及び第2出力軸71B)に伝達するので、ハイブリッド車の走行性が低下することはない。
なお、高効率ポイントとは、正味燃料消費率(BSFC:Brake Specific Fuel Consumption)の値の小さい領域である。
【0021】
<燃料供給手段>
燃料供給手段は、図2に示すように、燃料が貯溜された燃料タンク121と、燃料を圧送する燃料ポンプ122と、第1燃料インジェクタ123と、第2燃料インジェクタ124と、を備えている。そして、ECU80の指令に従って燃料ポンプ122が作動すると、燃料タンク121の燃料が、配管121a、燃料ポンプ122、下流側が二股に分かれた配管122aを通って、第1燃料インジェクタ123及び第2燃料インジェクタ124に圧送されるようになっている。
【0022】
第1燃料インジェクタ123は、ECU80の指令に従って第1内燃機関10に燃料を噴射するものであり、第2燃料インジェクタ124は、ECU80の指令に従って第2内燃機関20に燃料を噴射するものである。なお、燃料の噴射位置は、第1シリンダ13、第2シリンダ23に直接噴射する直噴型や、吸気ポートに噴射するポート噴射型等、どのようでもよい。
【0023】
よって、本実施形態において、「第1内燃機関10に燃料を供給する第1燃料供給手段」は、燃料タンク121と、配管121aと、燃料ポンプ122と、配管122aの一部と、第1燃料インジェクタ123と、を備えて構成されている。そして、「第2内燃機関20に燃料を供給する第2燃料供給手段」は、燃料タンク121と、配管121aと、燃料ポンプ122と、配管122aの一部と、第2燃料インジェクタ124と、を備えて構成されている。
【0024】
<排気ガス供給手段>
排気ガス供給手段は、第1三方弁131と、第2三方弁132と、第3三方弁133と、第4三方弁134と、配管135と、配管136と、を備えている。
第1三方弁131は第1吸気配管15に、第2三方弁132は第1排気配管16に、第3三方弁133は第2吸気配管25に、第4三方弁134は第2排気配管26に、それぞれ設けられている。配管135は第2三方弁132と第3三方弁133とを接続しており、配管136は第1三方弁131と第4三方弁134とを接続している。第1三方弁131〜第4三方弁134は、ECU80の指令に従って、3つのポートの開度を0を含めて調整可能に構成されている。
【0025】
そして、第1内燃機関10を通常燃焼モードで運転させ、第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転させる場合、第1内燃機関10の排気ガスの少なくとも一部が、第1排気配管16、配管135、第2吸気配管25を通って、第2内燃機関20に供給されるように、第2三方弁132及び第3三方弁133はECU80に制御される(図13参照)。
よって、本実施形態において、「第1内燃機関10の排気ガスを第2内燃機関20に供給する第1排気ガス供給手段」は、第1排気配管16の一部と、第2三方弁132と、配管135と、第3三方弁133と、第2吸気配管25の一部と、を備えて構成されている。
【0026】
一方、第1内燃機関10を水気化膨張モードで運転させ、第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転させる場合、第2内燃機関20の排気ガスの少なくとも一部が、第2排気配管26、配管136、第1吸気配管15を通って、第1内燃機関10に供給されるように、第4三方弁134及び第1三方弁131はECU80に制御される(図14参照)。
よって、本実施形態において、「第2内燃機関20の排気ガスを第1内燃機関10に供給する第2排気ガス供給手段」は、第2排気配管26の一部と、第4三方弁134と、配管136と、第1三方弁131と、第1吸気配管15の一部と、を備えて構成されている。
【0027】
<水含有液体供給手段>
水含有液体供給手段は、図2に示すように、水(水含有液体)が貯溜された水タンク141と、水を圧送する水ポンプ142と、第1水インジェクタ143と、第2水インジェクタ144と、を備えている。そして、ECU80の指令に従って水ポンプ142が作動すると、水タンク141の水が、配管141a、水ポンプ142、下流側が二股に分かれた配管142aを通って、第1水インジェクタ143及び第2水インジェクタ144に圧送されるようになっている。
【0028】
第1水インジェクタ143は、ECU80の指令に従って第1内燃機関10に水を噴射するものであり、第2水インジェクタ144は、ECU80の指令に従って第2内燃機関20に水を噴射するものである。なお、水の噴射位置は、本実施形態では、第1シリンダ13、第2シリンダ23に直接噴射する直噴型である。ただし、吸気ポートに噴射するポート噴射型等でもよい。
【0029】
また、図2に示すように、第1水インジェクタ143に供給された水の流量を検出する流量センサ151と、第2水インジェクタ144に供給された水の流量を検出する流量センサ152と、が設けられている。
【0030】
また、水の噴射タイミングは、水気化膨張モードで運転する第1内燃機関10又は第2内燃機関20において、吸気された排気ガスの圧縮行程直後であって、第1ピストン14又は第2ピストン24(図3参照)の上死点近傍に設定されている。これにより、噴射された水は、排気ガスの熱によって気化すると共に体積膨張し、第1ピストン14又は第2ピストン24を押し下げ、第1クランク軸12又は第2クランク軸22が回転するようになっている。
なお、第1ピストン14又は第2ピストン24の位置は、第1クランク軸12、第2クランク軸22のクランク角に基づいて検出される。因みに、クランク角は、第1クランク軸12、第2クランク軸22にそれぞれ設けられたクランク角センサ(図示しない)で検出され、ECU80に出力されている。
【0031】
よって、本実施形態において、「第1内燃機関10に水含有液体を供給する第1水含有液体供給手段」は、水タンク141と、配管141aと、水ポンプ142と、配管142aの一部と、第1水インジェクタ143と、を備えて構成されている。そして、「第2内燃機関20に水含有液体を供給する第2水含有液体供給手段」は、配管141aと、水ポンプ142と、配管142aの一部と、第2水インジェクタ144と、を備えて構成されている。
【0032】
<第1トランスミッション、第2トランスミッション>
図1、図4を参照して説明を続ける。
図1、図4に示すように、第1トランスミッション30Aは、第1クランク軸12の回転運動を揺動運動に変換し、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60Aに伝達すると共に、その角速度ω2(揺動速度)・揺動角度θ2(揺動振幅)を可変し(図5参照)、変速比i(レシオ)を、無限無段階で変速する機構である。
なお、「変速比i=入力軸51の回転速度/第1出力軸71Aの回転速度」であり、この場合の「第1出力軸71Aの回転速度」は、「外リング62の正方向の揺動(動力)のみで回転する場合における第1出力軸71Aの回転速度」である。
【0033】
このような第1トランスミッション30Aは、図4、図5に示すように、第1クランク軸12の回転運動を揺動運動に変換する6本の第1揺動変換ロッド40A(第1揺動変換手段)と、第1クランク軸12の回転運動が入力されることで回転する各第1揺動変換ロッド40Aの回転リング41(第1回転部)の回転半径r1を無段階で可変することで、揺動部42(第1揺動部)の角速度ω2(揺動速度)及び揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する第1回転半径可変機構50Aと、を備えている。
【0034】
なお、回転半径r1は、入力中心軸線O1とディスク52の中心である第1支点O3との距離である。因みに、揺動部42の揺動中心は、第1出力軸71Aの出力中心軸線O2で固定であり、揺動半径r2(第2支点O4と出力中心軸線O2の距離)も固定である。
また、第1揺動変換ロッド40A、後記する第2揺動変換ロッド40B、偏心部51b、ディスク52等の数は変更自由である。
【0035】
次に、図1、図4に示すように、第2トランスミッション30Bは、第2クランク軸22の回転運動を揺動運動に変換し、その揺動運動を第2ワンウェイクラッチ60Bに伝達すると共に、その角速度ω2(揺動速度)・揺動角度θ2(揺動振幅)を可変し(図5参照)、変速比i(レシオ)を、無限無段階で変速する機構である。
【0036】
このような第2トランスミッション30Bは、図4、図5に示すように、第2クランク軸22の回転運動を揺動運動に変換する6本の第2揺動変換ロッド40B(第2揺動変換手段)と、第2クランク軸22の回転運動が入力されることで回転する第2揺動変換ロッド40Bの回転リング41(第2回転部)の回転半径r1を無段階で可変することで、揺動部42(第2揺動部)の角速度ω2(揺動速度)及び揺動角度θ2(揺動振幅)を可変する第2回転半径可変機構50Bと、を備えている。
ここで、第1トランスミッション30Aと第2トランスミッション30Bとは、同様の構成であるので、以下、第1トランスミッション30Aについて具体的に説明する。
【0037】
<第1トランスミッション−第1回転半径可変機構>
図4、図5に示すように、第1回転半径可変機構50Aは、第1クランク軸12と連結され第1クランク軸12の動力が入力される入力軸51と、6枚のディスク52と、入力軸51とディスク52とを相対回転させることで、回転半径r1(偏心半径、偏心量)を可変するピニオン53と、ピニオン53を回動させるDCモータ54と、減速機構55と、を備えている。
【0038】
入力軸51は、ミッションケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59a、軸受59bを介して、回転自在に支持されている。なお、入力軸51の入力中心軸線O1と、第1クランク軸12の回転軸線とは一致している(図4参照)。
【0039】
図4において、入力軸51の右端側(一端側)は、第1クランク軸12と連結されている。そして、入力軸51は第1クランク軸12と一体に角速度ω1(図5参照)で回転するようになっている。
【0040】
また、入力軸51は、その入力中心軸線O1上に、ピニオン53が回転自在に挿入される中空部51aを有している。なお、中空部51aは部分的に径方向外に開口しており、ピニオン53が内歯車52bと噛合するようになっている(図5参照)。
【0041】
さらに、入力軸51は、入力中心軸線O1に対して一定の偏心距離で偏倚した軸方向視で略三日月形状の偏心部51bを6つ有している(図4、図5参照)。6つの偏心部51bは、本実施形態では、入力軸51の軸方向において等間隔で配置されると共に(図4参照)、周方向において等間隔(60°間隔)で配置されている。
これにより、後記する6つの第1ワンウェイクラッチ60Aの6つの外リング62の揺動運動の位相が等間隔(60°間隔)でずれることになり(図11参照)、その結果、位相がずれて揺動運動する6つの外リング62から内リング61に、6つの外リング62の揺動運動の正方向における動力が連続的に伝達されることになる。
【0042】
6枚のディスク52は、6つの偏心部51bにそれぞれ設けられている(図4参照)。
さらに説明すると、図5に示すように、各ディスク52は円形を呈している。そして、ディスク52の中心である第1支点O3から外れた位置には、円形の偏心孔52aが形成されており、偏心孔52aには偏心部51bが回転可能に内嵌している。また、偏心孔52aの内周面には内歯車52bが形成されており、内歯車52bはピニオン53と噛合している。
【0043】
ピニオン53は、(1)偏心部51bとディスク52とをロック(相対位置を保持)し、回転半径r1を保持する機能と、(2)偏心部51bとディスク52とを相対回転させ、回転半径r1を可変する機能と、を備えている。
【0044】
ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第1クランク軸12)と同期して回転すると、つまり、ピニオン53が、偏心部51b(入力軸51、第1クランク軸12)と同一の回転速度で回転すると、偏心部51bとディスク52との相対位置が保持され、つまり、偏心部51bとディスク52とが一体化して回転し、回転半径r1が保持されるようになっている。
【0045】
一方、ピニオン53が、偏心部51bと異なる回転速度(上回る回転速度/下回る回転速度)で回転すると、ピニオン53に内歯車52bで噛合するディスク52が偏心部51bの周りに相対回転し、その結果、回転半径r1が可変するようになっている。
【0046】
DCモータ54は、ECU80の指令に従って回転し、ピニオン53を適宜な回転速度にて回動させるものである。DCモータ54の出力軸は、減速機構55(遊星歯車機構)を介して、ピニオン53に接続されており、DCモータ54の出力は、120:1程度に減速されて、ピニオン53に入力されるようになっている。
【0047】
<第1トランスミッション−第1揺動ロッド>
第1揺動変換ロッド40Aは、図5に示すように、入力軸51の回転運動が入力される回転リング41と、回転リング41と一体であり、その揺動運動を第1ワンウェイクラッチ60Aに出力する揺動部42と、軸受43と、を備えている。
【0048】
回転リング41は、軸受43を介して、ディスク52に外嵌するように設けられている。揺動部42は、ピン44を介して、第1ワンウェイクラッチ60Aの外リング62に回動自在に連結されている。
【0049】
これにより、回転リング41とディスク52とは、相対的に回動自在となっている。したがって、回転リング41は、入力中心軸線O1を中心として回転半径r1で回転するディスク52に同期して回転するものの、回転リング41はディスク52に対して相対的に回動するので、第1揺動変換ロッド40A全体は回転せず、第1揺動変換ロッド40Aはその姿勢を略維持したままとなる。
そして、回転リング41が一回転すると、回転半径r1の大小に関わらず、揺動部42が円弧状で一往復揺動運動し、外リング62も円弧状で一往復揺動運動するようになっている。
【0050】
<第1ワンウェイクラッチ装置、第2ワンウェイクラッチ装置>
第1ワンウェイクラッチ装置は、6つの第1ワンウェイクラッチ60Aを有しており、6つの第1ワンウェイクラッチ60Aは、6本の第1揺動変換ロッド40Aの揺動部42の正方向のみの動力を、右側の第1出力軸71Aに伝達させるものである。
第2ワンウェイクラッチ装置は、6つの第2ワンウェイクラッチ60Bを有しており、6つの第2ワンウェイクラッチ60Bは、6本の第2揺動変換ロッド40Bの揺動部42の正方向のみの動力を、左側の第2出力軸71Bに伝達させる装置である。
【0051】
ただし、第1ワンウェイクラッチ装置(第1ワンウェイクラッチ60A)、第2ワンウェイクラッチ装置(第2ワンウェイクラッチ60B)の配置はこれに限定されず、例えば、第1〜2ワンウェイクラッチ装置が右側の第1出力軸71Aのみに動力を伝達する配置でもよい。
第2ワンウェイクラッチ60Bは、第1ワンウェイクラッチ60Aと同様の構成であるので、以下、第1ワンウェイクラッチ60Aについて説明する。
【0052】
まず、図4に示すように、第1出力軸71A(第2出力軸71B)は、円筒状を呈しており、ミッションケース58を構成する壁部58a、壁部58bに、軸受59c、軸受59dを介して、出力中心軸線O2を中心として、回転自在に支持されている。
【0053】
そして、図4、図5に示すように、各第1ワンウェイクラッチ60Aは、第1出力軸71Aの外周面に一体に固定され第1出力軸71Aと一体で回転する内リング61(クラッチインナ)と、内リング61に外嵌するように設けられた外リング62(クラッチアウタ)と、内リング61と外リング62との間で周方向に複数設けられたローラ63と、各ローラ63を付勢するコイルばね64(付勢部材)と、を備えている。
【0054】
外リング62は、第1揺動変換ロッド40Aの揺動部42と回動自在に連結されており、外リング62は揺動部42の揺動運動に連動して、正方向(矢印A1参照)/逆方向(矢印A2参照)に揺動運動する。
【0055】
ローラ63は、内リング61と外リング62とを互いにロック状態/非ロック状態とするものであり、各コイルばね64は、ローラ63を前記ロック状態となる方向に付勢している。
【0056】
そして、図11に示すように、外リング62の正方向の揺動速度が、内リング61(第1出力軸71A)の正方向の回転速度を超えた場合、ローラ63によって外リング62と第1出力軸71Aとがロック状態(動力伝達状態)となる。これにより、第1揺動変換ロッド40Aの揺動運動する揺動部42の正方向の動力が、第1ワンウェイクラッチ60Aを介して、第1出力軸71Aに伝達し、第1出力軸71Aが回転駆動するようになっている。
【0057】
なお、図11では、外リング62から内リング61に動力が伝達する状態を太線で示している。また、図11に示すように、外リング62の正方向の揺動速度が内リング61の回転速度以下となっても、所定区間は、ローラ63の弾性力により、外リング62から内リング61に動力が伝達するようになっている。
【0058】
<回転半径r1の可変状況>
ここで、図6を参照して回転半径r1が可変する状況を説明し、次いで、図7〜図9を参照して、異なる回転半径r1におけるディスク52(回転リング41)の回転運動と、揺動部42の揺動運動を説明する。
【0059】
図6(a)に示すように、第1支点O3(ディスク52の中心)と入力中心軸線O1とが最も遠ざかると、回転半径r1が「最大」となるように構成されている。
そして、ピニオン53が偏心部51bと異なる回転速度で回転し、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図6(b)に示すように、第1支点O3と入力中心軸線O1とが近づき、回転半径r1が「中」となるように構成されている。
さらに、偏心部51bとディスク52とが相対回転すると、図6(c)に示すように、第1支点O3と入力中心軸線O1とが重なり、回転半径r1が「0」となるように構成されている。
このように、回転半径r1は、「最大」と「0」との間で、無段階で制御可能となっている。
【0060】
次に、図6(a)に示す回転半径r1が「最大」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図7に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「最大」で保持したまま回転するようになっている。
【0061】
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が「最大」となる(図10参照)。
また、「変速比i=入力軸51の回転速度/第1出力軸71Aの回転速度」であり、「外リング62の揺動速度=外リング62の半径(固定値)×角速度ω2」であるから、変速比iは「小」となる。
【0062】
次に、図6(b)に示す回転半径r1が「中」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図8に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「中」で保持したまま回転するようになっている。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が「中」となる(図10参照)。そして、変速比iは「中」となる。
【0063】
次に、図6(c)に示す回転半径r1が「0」の状態において、偏心部51bとピニオン53とを同期して回転させると、図9に示すように、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53は一体化して、回転半径r1を「0」で保持したまま回転するようになっている。つまり、偏心部51b、ディスク52及びピニオン53が、回転リング41内で空転し、第1揺動変換ロッド40Aが動作しないことになる。
この場合、揺動部42(外リング62)の角速度ω2及び揺動角度θ2が「0」となる(図10参照)。そして、変速比iは「∞(無限大)」となる。
【0064】
このようにして、回転半径r1が保持された状態(偏心部51bとピニオン53とが同期回転する状態)では、回転半径r1の大小に関わらず、入力軸51の回転周期と、揺動部42及び外リング62の揺動周期とは、同期(回転半径r1=0の場合を除く)することになる。
【0065】
すなわち、本実施形態では、第1揺動変換ロッド40A、第1回転半径可変機構50A及び第1ワンウェイクラッチ60Aによって、入力中心軸線O1、出力中心軸線O2、第1支点O3、第2支点O4の4つの節を回動点とする四節リンク機構が構成されている。
そして、入力中心軸線O1を中心とする第1支点O3の回転運動によって、第2支点O4が出力中心軸線O2を揺動中心として揺動運動するようになっている。
また、第1回転半径可変機構50Aにより、回転半径r1を可変することで、第2支点O4の角速度ω2及び揺動角度θ2が可変されるようになっている。
【0066】
<ECU>
図1に戻って、説明を続ける。
ECU80は、駆動システム1を電子制御する制御装置であり、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されており、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、各種機器を制御するようになっている。
【0067】
<ECU−運転モード選択・制御機能>
ECU80は、第1内燃機関10、第2内燃機関20を、通常燃焼モード、水気化膨張モードのいずれで運転させるか選択し制御する機能を備えている。
具体的には、ECU80は、アクセル81から入力されたアクセル開度に基づいて、目標出力(目標トルク)をマップ検索により算出するように設定されている。なお、前記マップにおいては、アクセル開度が大きくなると、目標出力が大きくなる関係となっている。
【0068】
ECU80は、目標出力が第1閾値以上である場合、第1内燃機関10、第2内燃機関20を、通常燃焼モードで運転させる。なお、第1閾値は、例えば加速時等に目標出力が非常に大きいため、第1内燃機関10、第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転させる必要があると判断される値に設定される。
【0069】
ECU80は、目標出力が第2閾値以上第1閾値未満である場合、排気量の小さい第1内燃機関10を水気化膨張モードで運転させ、排気量の大きい第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転させる。なお、第2閾値は、例えば高速走行時に目標出力がある程度大きいため、第1内燃機関10を水気化膨張モードで運転可能であるが、第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転させる必要があると判断される値に設定される。
【0070】
ECU80は、目標出力が第3閾値以上第2閾値未満である場合、排気量の小さい第1内燃機関10を通常燃焼モードで運転させ、排気量の大きい第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転させる。なお、第3閾値は、例えば低速走行時に目標出力が小〜中程度であるため、第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転可能であるが、第1内燃機関10を通常燃焼モードで運転させる必要があると判断される値に設定される。
【0071】
ECU80は、目標出力が第3閾値未満である場合、第1内燃機関10、第2内燃機関20を停止し、後記する第1モータジェネレータ101をモータとして運転させる。
【0072】
<ECU−水噴射制御機能>
ECU80は、第1内燃機関10又は第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転させる場合、第1水インジェクタ143又は第2水インジェクタ144による水噴射を制御、具体的には、水噴射量、水噴射時間(噴射開始タイミング、噴射終了タイミング)を制御する機能を備えている。
【0073】
さらに説明すると、ECU80は、通常燃焼モードで運転する内燃機関(例えば第1内燃機関10)の温度と、水気化膨張モードで運転する内燃機関(例えば第2内燃機関)の温度と、図12のマップとに基づいて、水気化膨張モードで運転する内燃機関(例えば第2内燃機関)に各サイクルで噴射する水噴射量を算出するように設定されている。
ここで、内燃機関の温度は、直接に検出する構成の他、内燃機関から排出された冷却液の温度、排気ガスの温度、排気ガスを浄化する触媒の温度等に基づいて推定する構成としてもよい。その他、目標出力(アクセル開度等)が大きくなると、内燃機関が高稼働し、内燃機関の温度が上昇し、排気ガスの流量が増加するので、目標出力や排気ガスの流量に基づいて推定する構成としてもよい。
【0074】
図12に示すように、通常燃焼モードで運転する内燃機関の温度が高くなると、その排気ガスの温度が高くなり、水が気化膨張し動力が発生し易くなるので、水噴射量が増加する関係となっている。
また、水気化膨張モードで運転する内燃機関の温度が高くなると、水が気化膨張し動力が発生し易くなるので、水噴射量が増加する関係となっている。なお、水気化膨張モードで運転する内燃機関の温度が高くなる場合は、例えば、その直前まで、その内燃機関が通常燃焼モードで運転しており、目標出力の増減により、運転モードが切り替わった場合である。逆に、水気化膨張モードで運転する内燃機関の温度が低くなる場合は、例えば、その直前まで、いずれのモードでも運転せず内燃機関が停止していた場合である。
【0075】
ここで、水噴射量は、第1水インジェクタ143又は第2水インジェクタ144の水噴射時間(開弁時間)を可変することで制御される。
この場合において、第1水インジェクタ143等の水噴射時間を可変するとき、水噴射時間の長短に関わらず、噴射終了タイミングを一定(所定クランク角)とし、噴射開始タイミングを可変することが好ましい。つまり、水噴射量が少なく、水噴射時間が短くなるにつれて、噴射開始タイミングを遅らせる構成とすることが好ましい。
【0076】
<その他構成>
次に、駆動システム1のその他の構成を説明する。
【0077】
<その他構成−第1、第2クラッチ、デフ装置>
駆動システム1は、第1クラッチ91A及び第2クラッチ91Bと、デフ装置92(ディファレンシャル装置)と、を備えている。
さらに説明すると、第1出力軸71Aは、ECU80により制御される第1クラッチ91Aを介して、デフ装置92を構成するデフケース93(被回転駆動部材)に連結されている。第2出力軸71Bは、ECU80により制御される第2クラッチ91Bを介して、デフケース93に連結されている。
第1クラッチ91Aは、第1出力軸71Aとデフケース93との間において動力を伝達/遮断するものであり、第2クラッチ91Bは、第2出力軸71Bとデフケース93との間において動力を伝達/遮断するものである。
【0078】
デフ装置92は、デフケース93内にサイドギヤやピニオンギヤを備えている。そして、右側のサイドギヤは、右側の駆動輪94Aと一体である第1駆動シャフト95Aと連結されており、左側のサイドギヤは、左側の駆動輪94Bと一体である第2駆動シャフト95Bと連結されている。これにより、第1駆動シャフト95A(駆動輪94A)と第2駆動シャフト95B(駆動輪94B)とは、デフ装置92を介して差動回転するようになっている。
【0079】
なお、車両の前進時、通常、第1クラッチ91Aは第1出力軸71Aとデフケース93とを連結し、第2クラッチ91Bは第1出力軸71Aとデフケース93とを連結するように制御される。これにより、車両の前進時、通常、第1出力軸71Aと第2出力軸71Bとは、一体となって、正方向(車両が前進する方向)で回転するようになっている。
【0080】
<その他構成−第1、第2モータジェネレータ、バッテリ>
駆動システム1は、第1モータジェネレータ101と、第2モータジェネレータ102と、バッテリ103と、を備えている。
バッテリ103は、例えば、リチウムイオン型で充放電可能に構成され、第1モータジェネレータ101と、第2モータジェネレータ102との間で、電力を授受し、前記したDCモータ54、54に電力を供給するようになっている。
【0081】
第1モータジェネレータ101の出力軸には第1ギヤ104が固定されており、第1ギヤ104はデフケース93に固定された第2ギヤ105と噛合している。これにより、第1モータジェネレータ101とデフケース93との間で動力が授受されるように構成され、第1モータジェネレータ101がモータ又はジェネレータ(発電機)として機能するようになっている。
すなわち、モータとして機能する場合、第1モータジェネレータ101はバッテリ103を電源とし、ジェネレータとして機能する場合、第1モータジェネレータ101の発電電力はバッテリ103に充電されるようになっている。
【0082】
第2モータジェネレータ102の出力軸は第1内燃機関10の第1クランク軸12と連結されている。
なお、第2モータジェネレータ102をモータとして機能させる場合、つまり、バッテリ103を電源として駆動させモータとして機能させる場合は、例えば、第1クランク軸12の回転をアシストする場合や、第1内燃機関10のスタータとして機能させる場合である。
一方、第2モータジェネレータ102をジェネレータとして機能させる場合は、第2モータジェネレータ102の発電電力をバッテリ103に充電する場合である。
【0083】
<その他構成−シンクロ機構>
駆動システム1は、ECU80からの指令に従って、第2クランク軸22とデフケース93との間において、動力を伝達/遮断するシンクロ機構110を備えている。なお、シンクロ機構110は、第2内燃機関20を始動させる場合、第2クランク軸22に動力を伝達させるので、スタータ・クラッチとも称される。
【0084】
シンクロ機構110は、デフケース93に固定された第Aギヤ111と、第Aギヤ111に常時噛合すると共に、第2クランク軸22周りに回転自在に設けられた第Bギヤ112と、第2クランク軸22の周りに一体で回転するように設けられた第Cギヤ113と、ECU80の指令によって第2クランク軸22の軸方向にスライド操作されることで、第Cギヤ113と第Bギヤ112とを結合/解除するスリーブ114と、を備えている。
【0085】
≪駆動システムの作用・効果≫
このような駆動システム1によれば、次の作用、効果を得る。
【0086】
<目標出力:小>
図13に示すように、目標出力が小さい場合(第3閾値≦目標出力<第2閾値)、ECU80は、排気量の小さい第1内燃機関10を通常燃焼モードで運転し、排気量の大きい第2内燃機関20(水気化膨張機関)を水気化膨張モードで運転する。この場合、ECU80は、第1内燃機関10をその高効率ポイント(又はその近傍)で運転させる。そうすると、第1内燃機関10は、通常の4サイクル(吸気、圧縮、燃焼、排気)で運転し、第1クランク軸12を回転させる。
そして、ECU80は、第1出力軸71Aが目標出力に対応して回転するように、ピニオン53を回転させて変速比iを可変する。このようにして、第1内燃機関10を高効率ポイント(又はその近傍)で運転させつつ、第1出力軸71Aを目標出力に対応して回転させることができる。
【0087】
これに並行して、第2三方弁132及び第3三方弁133が制御され、第1内燃機関10で生成した排気ガスの一部が、第1排気配管16の一部、配管135、第2吸気配管25を通って、第2内燃機関20に供給される。
【0088】
一方、第2内燃機関20では、排気ガスを吸気する排気ガス吸気行程と、排気ガスを圧縮する排気ガス圧縮行程と、第2水インジェクタ144から噴射された水を排気ガスの熱で気化膨張させる水気化膨張行程と、排気ガス及び生成した水蒸気を排気する排気行程と、が繰り返され、その結果、第2クランク軸22が回転する。すなわち、第2内燃機関20で排気ガスの熱が回収され、この熱が第2クランク軸22の回転力(動力)に変換される。この場合、第2クランク軸22の回転速度は、第1クランク軸12の回転速度よりも遅くなる。
【0089】
そして、ECU80は、ピニオン53を回転して回転半径r1を可変して、変速比iを可変し(図6参照)、第2クランク軸22に連動して揺動する第2揺動変換ロッド40Bの揺動部42(外リング62)の揺動速度が(図1、図5参照)、第1出力軸71Aと一体で正方向に回転する第2出力軸71Bの回転速度以上にする(図11参照)。そうすると、第2ワンウェイクラッチ60Bがロックし、揺動運動する揺動部42(外リング62)の正方向の動力が、第2出力軸71Bに伝達される。
【0090】
このようにして、第2内燃機関20で第1内燃機関10の排気ガスの熱によって、第2クランク軸22を回転させつつ、回転半径r1、変速比iを可変することにより、第2クランク軸22の動力を第2出力軸71Bに伝達できる。
【0091】
<目標出力:大>
図14に示すように、目標出力が大きい場合(第2閾値≦目標出力<第1閾値)、ECU80は、排気量の小さい第1内燃機関10(水気化膨張機関)を水気化膨張モードで運転し、排気量の大きい第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転する。この場合、ECU80は、第2内燃機関20をその高効率ポイント(又はその近傍)で運転させる。そうすると、第2内燃機関20は、通常の4サイクル(吸気、圧縮、燃焼、排気)で運転し、第2クランク軸22を回転させる。そして、ECU80は、第2出力軸71Bが目標出力に対応して回転するように、ピニオン53を回転させて変速比iを可変する。このようにして、第2内燃機関20を高効率ポイント(又はその近傍)で運転させつつ、第2出力軸71Bを目標出力に対応して回転させることができる。
【0092】
これに並行して、第1三方弁131及び第4三方弁134が制御され、第2内燃機関20で生成した排気ガスの一部が、第2排気配管26の一部、配管136、第1吸気配管15を通って、第1内燃機関10に供給される。
【0093】
一方、第1内燃機関10では、排気ガスを吸気する排気ガス吸気行程と、排気ガスを圧縮する排気ガス圧縮行程と、第1水インジェクタ143から噴射された水を排気ガスの熱で気化膨張させる水気化膨張行程と、排気ガス及び生成した水蒸気を排気する排気行程と、が繰り返され、その結果、第1クランク軸12が回転する。すなわち、第1内燃機関10で排気ガスの熱が回収され、この熱が第1クランク軸12の回転力(動力)に変換される。この場合、第1クランク軸12の回転速度は、第2クランク軸22の回転速度よりも遅くなる。
【0094】
そして、ECU80は、ピニオン53を回転して回転半径r1を可変して、変速比iを可変し(図6参照)、第1クランク軸12に連動して揺動する第1揺動変換ロッド40Aの揺動部42(外リング62)の揺動速度が(図1、図5参照)、第2出力軸71Bと一体で正方向に回転する第1出力軸71Aの回転速度以上にする(図11参照)。そうすると、第1ワンウェイクラッチ60Aがロックし、揺動運動する揺動部42(外リング62)の正方向の動力が、第1出力軸71Aに伝達される。
【0095】
このようにして、第1内燃機関10で第2内燃機関20の排気ガスの熱によって、第1クランク軸12を回転させつつ、回転半径r1、変速比iを可変することにより、第1クランク軸12の動力を第1出力軸71Aに伝達できる。
【0096】
≪水噴射量の補正≫
ここで、目標出力が第1閾値以上から第1閾値未満に下降した際、または、目標出力が第2閾値未満から第2閾値以上に上昇した際、第1内燃機関10が、通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される(図14参照)。また、目標出力が第2閾値以上から第2閾値未満に下降した際、第2内燃機関20が、通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される(図13参照)。
なお、以下の説明において、第2内燃機関20が、通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される場合を例に説明する。
【0097】
図15(a)に示すように、ECU80は、第2水インジェクタ144に時間幅Tiの噴射指令信号を送信することにより、第2水インジェクタ144から噴射量Qの水を噴射する。
ここで、Ti−Q特性とは、図15(b)に示すように、要求される水の噴射量(要求噴射量Q)に対して、どれだけの時間幅Tiで噴射指令信号を与えればよいかを決定するための関係図であり、インジェクタ(143、144)ごとにECU80に記憶されている。なお、Ti−Q特性は、図15(b)に示すように、グラフまたは関数として記憶されていてもよく、テーブル(図示せず)として記憶されていてもよい。ECU80は前述のように水噴射量(要求噴射量Q)を算出し、第2水インジェクタ144のTi−Q特性(図15(b)参照)に基づいて、噴射指令信号の時間幅Tiを決定する。
【0098】
ここで、第2内燃機関20を水気化膨張モードで好適に運転するには、第2水インジェクタ144の水噴射の位置は、第2シリンダ23に直接噴射する直噴型の構成が望ましい。
しかし、第2内燃機関20が通常燃焼モードで運転される際、第2水インジェクタ144のノズルは、燃焼によって生じたスス(カーボン)を含むガスにさらされ、第2水インジェクタ144のノズルの目詰まりが発生するおそれがある。
【0099】
図15(c)に示すように、第2水インジェクタ144のノズルがススにより目詰まりした場合、Ti−Q特性は、グラフ上において傾きが小さくなる方向に変化する。また、第2水インジェクタ144の応答性の低下、その他のハードウェアの劣化等によってもTi−Q特性が変化する。
Ti−Q特性が変化することにより、要求する水噴射量(要求噴射量Q)に対して、実際に第2シリンダ23内に噴射される水噴射量(実噴射量)は低下する。要求噴射量Qに対して実噴射量が不足すると、水気化膨張モードの水気化膨張行程おいて発生する水蒸気量が減少し、水気化膨張モードで運転する内燃機関20の出力低下を招く。
なお、要求噴射量Qに対して実噴射量が過剰となると、通常燃焼モードで運転する内燃機関10から供給される熱量(排気ガス)に対して、過剰に水を噴射することになり、水気化膨張モードの水気化膨張行程おいて発生する水蒸気量が減少し、水気化膨張モードで運転する内燃機関20の出力低下を招く。
【0100】
このため、ECU80は、第2内燃機関20が通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される前に、第2水インジェクタ144の予備噴射を行い、第2水インジェクタ144のTi−Q特性を補正する(即ち、要求噴射量Qに対する噴射指令信号の時間幅Tiを補正する)(図15(d)参照)。
【0101】
図16を用いて、Ti−Q特性の補正について説明する。
なお、図16では、第2内燃機関20の第2水インジェクタ144のTi−Q特性の補正について説明する。
【0102】
図16(a)に示すように、ステップS101において、ECU80は、第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転しているものとする(ENG2通常燃焼モード制御)。
ステップS102において、ECU80は、第2内燃機関20の運転モードを通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更する要求が有るか否かを判定する(ENG2水気化膨張モード実行?)。具体的には、目標出力が第2閾値以上から第2閾値未満に下降した際、第2内燃機関20が、通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される。水気化膨張モードに変更する要求がない場合(S102・No)、ECU80の処理はステップS102を繰り返す。水気化膨張モードに変更する要求が有る場合(S102・Yes)、ECU80の処理は、ステップS103に進む。
【0103】
ステップS103において、ECU80は、第2水インジェクタ144の予備噴射制御を実行する。ここで、図16(b)を用いて、ステップS103の予備噴射制御について更に説明する。なお、ステップS103において、第2内燃機関20は通常燃焼モード(即ち、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の4サイクル)で運転されている。
【0104】
ステップS201において、ECU80は、第2内燃機関20が排気行程か否かを判定する。排気行程でない場合(S201・No)、ECU80の処理はステップS201を繰り返す。排気行程の場合(S201・Yes)、ECU80の処理はステップS202に進む。
【0105】
ステップS202において、ECU80は、第2水インジェクタ144の予備噴射を実行する。具体的には、ECU80は、時間幅Tiの噴射指令信号を第2水インジェクタ144に送信する。
【0106】
ステップS203において、ECU80は、第2水インジェクタ144の実噴射量Qを検出する。具体的には、配管142a(図2参照)の第2水インジェクタ144の側に設けられ、第2水インジェクタ144に供給される水の流量を検出する流量センサ152(図2参照)で検出した流量を時間で積算して実噴射量Qを検出する。
そして、ECU80の処理は図16(b)に示す予備噴射制御(S103)を終了し、図16(a)のステップS104に進む。
【0107】
ステップS104において、ECU80は、ステップS202において送信した噴射指令信号の時間幅Tiと、ステップS203において検出した実噴射量Qとに基づいて、第2水インジェクタ144のTi−Q特性を補正し、要求噴射量Qに対する噴射指令信号の時間幅Tiを補正する(図15(d)参照)。
【0108】
ステップS105において、ECU80は、第2内燃機関20の運転モードを通常燃焼モードから水気化膨張モードに切り替える。以後、ECU80は、ステップS104で補正したTi−Q特性(補正した時間幅Ti)に基づいて、第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転する。
【0109】
≪水噴射量の補正による作用・効果≫
このように、第2内燃機関20が通常燃焼モードから水気化膨張モードに変更される前に、第2水インジェクタ144の予備噴射を行い第2水インジェクタ144のTi−Q特性を補正することにより、第2内燃機関20が水気化膨張モードに切り替わった時に直ちに第2水インジェクタ144から要求される噴射量の水を第2シリンダ23内に噴射することができる。これにより、水気化膨張モードで運転する内燃機関20が好適に出力され、即ち、排気ガスからの廃熱回収量を向上させることができる。
【0110】
また、第2水インジェクタ144の予備噴射は、第2内燃機関20を通常燃焼モードで運転する排気行程(図17(d)参照)で行われるため、噴射された水は第2シリンダ23内の高温の排気ガスにより水蒸気となり、排気ガスと共に第2シリンダ23から排出される。これにより、水気化膨張モードに切り替る前の通常燃焼モード中に予備噴射を実行しても、通常燃焼モードで運転している第2内燃機関20の出力の低下を防ぐことができる。また、排気工程中に第2水インジェクタ144から噴射された水は、水蒸気となり、排気ガスと共に排出されるため、第2内燃機関20の燃焼室(第2シリンダ23)の室内環境の悪化を抑えることができる。
【0111】
また、ステップS202で実行する予備噴射における噴射指令信号の時間幅Tiは、水気化膨張モードで運転する際の噴射指令信号の時間幅Tiと比較して短く設定されていることが望ましい(図15(d)参照)。これにより、予備噴射において第2内燃機関20の燃焼室(第2シリンダ23)に噴射される水の量を少なくすることができ、第2内燃機関20の燃焼室(第2シリンダ23)の室内環境の悪化を抑えることができる。
【0112】
なお、第2水インジェクタ144の予備噴射は複数回行ってもよい。予備噴射を複数回行うことにより、第2水インジェクタ144のノズルに付着したススが吹き飛ばされ好適なTi−Q特性を得ることができる。
【0113】
このように、例えば「目標出力:大」(図14参照)から「目標出力:小」(図13参照)へ変更される際、第2内燃機関20が通常燃焼モードから水気化膨張モードに切り替わるが、第2内燃機関20が通常燃焼モードで運転中に第2水インジェクタ144の予備噴射を行うことにより第2水インジェクタ144のTi−Q特性を補正し、第2内燃機関20の運転が水気化膨張モードに切り替わった際、第2水インジェクタ144から要求噴射量の水を噴射することができるので、第1内燃機関10から供給される排気ガスの廃熱回収量を向上させることができる。
【0114】
同様に、「目標出力:小」(図13参照)から「目標出力:大」(図14参照)へ変更される際、第1内燃機関10が通常燃焼モードから水気化膨張モードに切り替わるが、第1内燃機関10が通常燃焼モードで運転中に第1水インジェクタ143の予備噴射を行うことにより第1水インジェクタ143のTi−Q特性を補正し、第1内燃機関10の運転が水気化膨張モードに切り替わった際、第1水インジェクタ143から要求噴射量の水を噴射することができるので、第2内燃機関20から供給される排気ガスの廃熱回収量を向上させることができる。
【0115】
≪変形例≫
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、次のように変更できる。
【0116】
前記した実施形態では、第1揺動変換ロッド40A(第1揺動変換手段)と、第2揺動変換ロッド40B(第2揺動変換手段)と、を備える構成としたが、第1揺動変換ロッド40A・第1ワンウェイクラッチ60A及び/又は第2揺動変換ロッド40B・第2ワンウェイクラッチ60Bを備えない構成としてもよい。
例えば、第1揺動変換ロッド40A・第1ワンウェイクラッチ60Aを備えず、第2揺動変換ロッド40B・第2ワンウェイクラッチ60Bを備える構成の場合、第1クランク軸12と第1出力軸71Aとを直接連結すると共に、第1出力軸71Aが正方向で回転するように第1クランク軸12の回転方向を設定し、これに基づいて、第2揺動変換ロッド40Bの揺動部42の正方向の動力が、第2出力軸71Bに伝達するように、第2ワンウェイクラッチ60Bの向きを設定すればよい。
【0117】
前記した実施形態では、偏心部51bと、ディスク52及びピニオン53を備えて第1回転半径可変機構50Aを構成したが、具体的構成はこれに限定されない。
例えば、入力軸51と同軸で同期回転する円板を設け、この円板の径方向に延びるスライド溝等によって、第1支点O3(図5参照)を径方向にスライド可能に構成し、アクチュエータによって第1支点O3を径方向にスライドさせ、回転半径r1を可変する構成としてもよい。
【0118】
前記した実施形態では、第1支点O3の回転半径r1を可変する構成としたが(図5参照)、これに代えて又は加えて、アクチュエータによって第2支点O4を径方向にスライドすることで、揺動半径r2を可変し、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
また、第1揺動変換ロッド40Aを伸縮可能に構成し、アクチュエータによって、第1支点O3と第2支点O4との距離を可変することで、角速度ω2及び揺動角度θ2を可変する構成としてもよい。
【0119】
前記した実施形態では、図1に示すように、2つの内燃機関(第1内燃機関10、第2内燃機関20)と、2つのトランスミッション(第1トランスミッション30A、第2トランスミッション30B)を備える構成としたが、内燃機関及びトランスミッションの数は3つ以上でもよい。
【0120】
前記した実施形態では、図3に示すように、第1内燃機関10と第2内燃機関20とが一体である構成を例示したが、第1内燃機関10と第2内燃機関20とが別体である構成でもよい。このように別体で構成される場合、第1内燃機関10と第2内燃機関20と間の角度は、60°、180°等に任意に設定できる。
【0121】
前記した実施形態では、図3に示すように、第1内燃機関10及び第2内燃機関20がレシプロエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、ロータリエンジン、ガスタービンエンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【0122】
前記した実施形態では、第1内燃機関10及び第2内燃機関20がガソリンを燃焼させるガソリンエンジンである構成を例示したが、その他に例えば、軽油を燃焼させるディーゼルエンジン、水素を燃焼させる水素エンジン等でもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
【0123】
前記した実施形態では、第1内燃機関10、第2内燃機関20を水気化膨張モードで運転する場合、純水を噴射(供給)する構成を例示したが、その他に例えば、水とオイルとの混合液体や、水とアルコールとの混合液体(例えばエタノール)を噴射する構成としてもよい。
【0124】
前記した実施形態は、第1内燃機関10及び第2内燃機関20の一方が通常燃焼モードで運転する場合、他方が水気化膨張モードで運転する構成を例示したが、その他に例えば、一方の排気ガスを排気ガスタンクに一時的に貯留しておき、第1内燃機関10又は第2内燃機関20が、通常燃焼モードで運転した後、前記排気ガスタンクの排気ガスを戻して、通常燃焼モードに続いて水気化膨張モードで運転する構成としてもよい。
【0125】
前記した実施形態では、駆動システム1はハイブリッド車(四輪、移動体)に搭載された構成を例示したが、その他に例えば、二輪、三輪に搭載された構成でもよい。
また、手押し型の小型の耕うん機(汎用機器)に搭載された構成でもよいし、据え置き型の発電機の動力源を構成してもよい。
【0126】
前記した実施形態では、第2内燃機関20(第1内燃機関10)が通常燃焼モードから水気化膨張モードに切り替わる際について説明したが、第2内燃機関20(第1内燃機関10)が運転停止状態から水気化膨張モードに切り替わる際に、第2水インジェクタ144(第1水インジェクタ143)の予備噴射を行ってもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 駆動システム
10 第1内燃機関
11 第1シリンダブロック
12 第1クランク軸(第1駆動軸)
13 第1シリンダ
20 第2内燃機関
21 第2シリンダブロック
22 第2クランク軸(第2駆動軸)
23 第2シリンダ
30A 第1トランスミッション
30B 第2トランスミッション
40A 第1揺動変換ロッド
40B 第2揺動変換ロッド
41 回転リング
42 揺動部
50A 第1回転半径可変機構
50B 第2回転半径可変機構
51 入力軸
51b 偏心部
52 ディスク
53 ピニオン
54 DCモータ
60A 第1ワンウェイクラッチ
60B 第2ワンウェイクラッチ
71A 第1出力軸(出力軸)
71B 第2出力軸(出力軸)
80 ECU(制御手段)
121 燃料タンク(第1燃料供給手段、第2燃料供給手段)
122 燃料ポンプ(第1燃料供給手段、第2燃料供給手段)
123 第1燃料インジェクタ(第1燃料供給手段)
124 第2燃料インジェクタ(第2燃料供給手段)
131 第1三方弁
132 第2三方弁(排気ガス供給手段)
133 第3三方弁(排気ガス供給手段)
134 第4三方弁
135 配管(排気ガス供給手段)
136 配管
141 水タンク(水含有液体供給手段)
142 水ポンプ(水含有液体供給手段)
143 第1水インジェクタ
144 第2水インジェクタ(水含有液体供給手段)
151 流量センサ
152 流量センサ
O1 入力中心軸線
O2 出力中心軸線
O3 第1支点
O4 第2支点
r1 回転半径
r2 揺動半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1駆動軸を有する第1内燃機関と、
第2駆動軸を有する第2内燃機関と、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸からの動力により回転する出力軸と、
前記第1内燃機関に燃料を供給する第1燃料供給手段と、
前記第2内燃機関に燃料を供給する第2燃料供給手段と、
前記第1内燃機関の排気ガスを前記第2内燃機関に供給する排気ガス供給手段と、
前記第2内燃機関に水含有液体を供給する水含有液体供給手段と、
前記水含有液体供給手段に水含有液体を供給させる供給信号を送信する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第2内燃機関を、燃料を燃焼し前記第2駆動軸を回転する通常燃焼運転から、前記第1内燃機関の排気ガスの熱によって水含有液体中の水を気化膨張させて前記第2駆動軸を回転する水気化膨張運転に切り替える前に、前記水含有液体供給手段に前記供給信号を送信し、前記水含有液体供給手段の実供給量と前記供給信号との関係を補正し、前記水気化膨張運転に切り替える
ことを特徴とする駆動システム。
【請求項2】
前記補正に係る水含有液体供給手段の水含有液体の供給は、
前記通常燃焼運転の排気行程で行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−180789(P2012−180789A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44165(P2011−44165)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】