骨形成の調節
本発明は、骨形成または骨吸収に影響を与えるために、Ror活性(例えばRor2タンパク質活性)および/または14−3−3βを調節することに関する。本発明は、さらに、骨粗鬆症および骨折等の骨関連障害についてのスクリーニング、診断、および療法の開発のための組成物および方法に関する。Ror2タンパク質に対する抗体および抗体フラグメントは、特に、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こし、それによってRor2の活性化を導くことにおいて有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、米国仮特許出願第USSN60/774,534号(2006年2月17日出願)および同第USSN60/844,239号(2006年9月13日出願)(これらは、本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨関連障害および疾患の話題は、ここ数年にわたり相当の注目を得ている。骨関連障害は、骨吸収と骨形成の間の不均衡に起因する骨量減少によって特徴付けられる。一生の間、骨格の骨のリモデリングは繰り返されている。このリモデリングの過程では、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成の間に繊細な均衡が存在する。軟骨内骨化および膜性骨化の両方に関与する骨芽細胞は、新しい骨の形成をもたらすマトリックスタンパク質を作る骨組織内の特殊化した細胞である。骨形成(すなわち骨形成(osteogenesis))は、骨格の骨量を維持するために必須である。骨芽細胞とは異なり、破骨細胞は、骨吸収および除去に関連する。正常な骨では、骨芽細胞に媒介される骨形成と破骨細胞に媒介される骨吸収の間の均衡は、調節された複合相互作用を通して維持される。
【0003】
骨格系と関連する多くの欠乏症、疾患、および障害がある。数例として以下を含むがこれらに限定されない:骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損(bone segmental defect)、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、骨化過剰症、ならびに大理石骨病。骨形成分化および再生の過程に関与する機構を同定することは、骨生理学および骨粗鬆症等の骨障害を理解するために重要である。これらの障害は、推定される骨芽細胞の前駆体の不完全な成熟化に起因する欠損した骨形成に関係している可能性がある。
【0004】
骨吸収および骨形成に関連する疾患および障害を処置する方法、骨形成を促進する方法、骨形成を調節する(増加または低下させる)薬剤を同定する方法、骨吸収を調節する(増加または低下させる)薬剤を同定する方法、ならびに骨関連障害に関連する遺伝子またはそれらのタンパク質産物を同定する方法を開発する必要がある。
【0005】
骨形成および骨吸収に関与する機構を同定することは、骨生理学および骨粗鬆症等の骨障害を理解するために重要である。骨関連障害に関連する遺伝子またはそれらのタンパク質産物は、骨形成、骨吸収の分子機構の解明で、新規薬物のスクリーニングおよび開発で、骨発育障害および骨減少障害の診断、予後、予防、および処置で、ならびに骨粗鬆症等の骨関連障害の治療評価で使用され得る。同定される遺伝子およびタンパク質は、また、骨形成を調節する医薬品の探索で有用であり得る。最近、同定されたそのようなタンパク質の1つは、Ror2タンパク質である。Ror2遺伝子発現の下方制御は、ヒト間葉系幹細胞のデキサメタゾン誘発骨形成分化(図1)を抑制するのに対して、Ror2過剰発現は、これらの細胞の骨形成分化を促進する(参照として本明細書に援用される、米国特許出願第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。従って、Ror2およびRor2経路は、骨形成を調節するための適切な標的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、骨形成を調節するための系を提供する。この系は、骨芽細胞分化におけるRor2の役割の発見に基づいている。特に、Ror2タンパク質の活性化は、ミネラル化骨形成につながる。Ror2発現は、間葉系幹細胞の骨形成分化において重要であることが分った。Ror2過剰発現は、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化(adipogenic differentiation)を抑制することも分った。Ror2タンパク質の活性化が14−3−3βのリン酸化につながることも分った。14−3−3βの下方制御は、ヒト間葉系幹細胞でミネラル化マトリックス形成を増加させることが分った。Ror2タンパク質、14−3−3βタンパク質とのその相互作用、および14−3−3βの下方制御に関連するこれらの発見は、骨形成を調節する新規薬剤の探索において、Ror2、14−3−3β、および他の下流シグナル伝達生体分子を主要な標的にする。Ror2タンパク質を活性化させ、14−3−3βタンパク質を抑制し、または他の下流標的の活性を調節する薬剤は、骨関連障害、特に、骨量減少に関連する障害の処置と予防において有用である。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進する際に、およびミネラル化マトリックス形成を促進する際に有用である。あるいは、これらの薬剤は、また、幹細胞の脂肪細胞への分化の抑制に有用性を見出すことが可能であり、肥満症、代謝障害、または糖尿病の処置で有用になり得る。
【0007】
本発明は、Ror2タンパク質を活性化する薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こし、それによってRor2活性化をもたらす。Ror2タンパク質の二量体化は、キナーゼ活性の増加およびそれに続く、14−3−3βタンパク質を含むRor2の結合パートナーのリン酸化をもたらす。薬剤は、また、骨成長の促進をもたらす。
【0008】
別の態様では、本発明は、14−3−3(具体的には14−3−3βまたは14−3−3γ)の活性を抑制または下方制御する薬剤を提供する。これらの薬剤は、DNAまたはタンパク質のレベルで作用し、細胞内の14−3−3の活性を低減させ得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、骨芽細胞、間葉系幹細胞、胚幹細胞、胎生幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、成熟骨芽細胞、または骨芽細胞系列の他の任意の細胞等の骨形成に関与する細胞を標的にする。他の実施形態では、薬剤は、脂肪細胞形成に関与する細胞を標的にする。例えば、薬剤は、骨を標的にするために、ビスホスホネート部分に結合され得る。14−3−3βの下方制御は、ミネラル化マトリックス形成を増加させることが分った。14−3−3または14−3−3の特異的アイソフォームを標的にする薬剤は、Ror2タンパク質を活性化する薬剤(例えば、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす薬剤)と併用して使用され得る。そのような組み合わせは、骨形成を促進する際に相乗効果を有し得る。
【0009】
別の態様では、本発明は、骨形成を調節する際に重要であることが判明したRor2/14−3−3β経路の他の下流エレメントを調節する薬剤を提供する。これらの薬剤は、単独でまたは本明細書に記述する他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0010】
本発明の薬剤は、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子が好ましいが、いかなる種類の化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を促進する抗体またはそのフラグメントである。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、しかしヒト被験体の処置のためにヒト化モノクローナル抗体が通常好まれる。抗体またはそのフラグメントは、任意のアイソタイプであり得るが、しかしIgGアイソタイプが概して好まれる。いくつかの実施形態では、薬剤はRor2タンパク質へ向けられる二価抗体または多価抗体フラグメントである。他の実施形態では、薬剤は、14−3−3βに特異的なRNAi、siRNA、またはshRNA構築物である。
【0011】
1つの態様では、Ror2タンパク質を活性化する薬剤、または14−3−3β活性を抑制する薬剤は、骨形成を促進するために被験体に投与される。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質を活性化する薬剤と14−3−3β活性を抑制する薬剤とを組み合わせて、被験体に投与される。具体的には、薬剤の投与は、骨芽細胞分化を促進させ、および/またはミネラル化マトリックス形成を増加させる。被験体は、骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、および骨化過剰症を含むいかなる骨関連障害を患い得るまたは危険性を有し得る。薬剤は、特に、骨量減少に関連する疾患の処置に有用である。1つの態様では、薬剤はRor2タンパク質の二量体化を促進させ、それによってRor2タンパク質を活性化させる。薬剤は、いかなる種類の化合物でもよいが、しかしながら、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、およびペプチドが特に有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質へ向けられる抗体または抗体フラグメントである。例えばクローン病および多発性硬化症等のヒト疾患の処置におけるヒト化モノクローナル抗体の使用の成功を考えると、ヒト化モノクローナルが通常好まれる。いくつかの実施形態では、薬剤は、14−3−3発現、具体的には14−3−3βまたは14−3−3γの発現を下方制御する。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3βに特異的なRNAi、shRNA、またはsiRNAである。本発明の薬剤は、また、脂肪細胞分化の犠牲によって骨芽細胞分化を促進することにより肥満症、代謝障害、または糖尿病を処置するために使用され得る。
【0012】
別の態様では、骨芽細胞分化または骨形成分化を促進するために、細胞は、Ror2タンパク質を活性化する、または14−3−3β活性を抑制する薬剤と接触する。接触する細胞は、通常は、Ror2タンパク質または14−3−3βタンパク質を発現し、かつ骨芽細胞表現型への分化を起こすことが可能である。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば間葉系幹細胞等の幹細胞である。細胞は、インビボまたはインビトロで薬剤と接触し得る。細胞は、また、エキソビボで薬剤と接触し、次いでそれを必要とする被験体(例えば、骨関連障害、特に骨量減少と関連する障害を患う被験体)に導入され得る。
【0013】
Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、脂肪細胞への分化を抑制することも分った。従って、Ror2タンパク質を活性化し、または14−3−3β活性を抑制する薬剤は、また脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である。本発明の薬剤は、従って、幹細胞(例えば間葉系幹細胞)の脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である。この発見に基づいて、Ror2活性因子または14−3−3β下方制御因子は、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置または予防に有用になり得る。
【0014】
本発明は、また、Ror2活性もしくは発現を調節する、または14−3−3βタンパク質のリン酸化を調節する薬剤を同定するための系を含む。スクリーニング系は、Ror2タンパク質を薬剤と接触させること、およびRor2活性または発現に関する薬剤の効果を検出することを含む。Ror2活性または発現の増加の検出は、骨形成を促進する、骨芽細胞分化を促進する、または脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である薬剤を示す。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質の活性は、Ror2タンパク質の二量体化の程度を決定することによってアッセイされる。他の実施形態では、Ror2活性は、Ror2タンパク質それ自体のまたは14−3−3βのリン酸化状態を決定することによって評価される。他の実施形態では、Ror2キナーゼ活性は、例えば32PγATPまたは坑ホスホチロシン抗体を用いる免疫沈降法を用いて、測定される。いくつかの実施形態では、アッセイは、Ror2タンパク質を発現する細胞を用いる細胞に基づくアッセイである。他の実施形態では、アッセイは無細胞であり、精製または半精製のRor2タンパク質が使用される。本発明のスクリーニング方法を用いて同定される薬剤およびその医薬組成物は、本明細書に記述する本発明の治療法において特に有用である。
【0015】
本発明は、また、Ror2タンパク質の二量体化を促進する薬剤を同定するためのアッセイ法を提供する。このアッセイ法は、特に、見込みのある大量の化合物をスクリーニングするための高スループット技法を受け入れられる。Ror2タンパク質の細胞外ドメインから成るキメラレセプターは、TrkBの細胞内ドメインに融合する。細胞外Ror2ドメインを二量体化する薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化させ、CREプロモーター活性の増加をもたらす。CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子は、次いで、Ror2を二量体化する化合物を同定するために使用され得る。Ror2−TrkBキメラアッセイは、Ror2を二量体化することが以前に示された坑Ror2抗体を用いて検証されている。Ror2特異的抗体は、非特異的IgG(図12を参照)で処置された細胞と比較するとき、観察されたルシフェラーゼ活性において用量依存性増加を引き起こす。このアッセイ法は、Ror2を活性化させる薬剤を同定するために、迅速な高スループット、かつ高感度のアッセイを提供する。当業者によって認識されるように、TrkB以外の他の細胞内ドメインは、キメラを調製するために使用され得る。レポーター遺伝子に作動可能に結合された異なるプロモーターは、次いでアッセイで必要になることもある。Ror2の活性化因子または二量体化因子として本発明のアッセイによって同定される薬剤は、また本発明の一部として考えられる。
【0016】
本明細書は、以下の詳細な説明および本願の一部を形成する添付の図面からより十分に理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(定義)
以下の定義は、本明細書で使用される用語および略語を完全に理解するために提供される。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの」、「その」は、文脈が明確に示さない限り、複数形の参照を含む。従って、例えば「1つの細胞」の参照は、複数のそのような細胞を含み、ならびに「1つの抗体」の参照は、1つまたは複数の抗体および当業者には周知のそれに相当するもの等の参照である。
【0019】
明細書における略語は、以下のように測定、技法、特性、または化合物に関する単位に対応する:「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「℃」はセ氏温度を意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、[l]はリットルを意味し,「ml」はミリリットルを意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「pl」はピコリットルを意味し、「M」はモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「mmole」はミリモルを意味し、「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、および「RT」は室温を意味する。
【0020】
「高速液体クロマトグラフィー」はHPLCと省略される。
【0021】
「読み取り枠」はORFと省略される。
【0022】
「質量分析」はMSと省略される。
【0023】
「タンデム質量分析」はMS/MSと省略される。
【0024】
「ポリアクリルアミドゲル電気泳動」はPAGEと省略される。
【0025】
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと省略される。
【0026】
「逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応」はRT−PCRと省略される。
【0027】
「ドデシル硫酸ナトリウム」はSDSと省略される。
【0028】
「ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動」はSDS−PAGEと省略される。
【0029】
「アデニンヌクレオチドトランスロケーター2」は、ADP/ATP担体タンパク質と省略される。
【0030】
「骨塩量」はBMDと省略される。
【0031】
「リボソームRNA」はrRNAと省略される。
【0032】
「非翻訳領域」はUTRと省略される。
【0033】
本開示と関連して、多数の用語が利用される必要がある。本明細書で使用されるように、用語「Ror」は、レセプターチロシンキナーゼ様オーファンレセプターのファミリーを言う。「Ror分子」は、Rorポリペプチド、Rorタンパク質、Rorペプチド、そのフラグメント、変種、および変異体、ならびにRorポリペプチド、Rorタンパク質、Rorペプチド、そのフラグメント、変種、および変異体をコードする核酸を言う。「Ror分子」は、また、Rorポリヌクレオチド、その遺伝子、および変種と変異体を言う。「Ror分子」および「Ror」は、Ror1分子およびRor2分子の両方を言う。
【0034】
「標的Ror分子」は、その活性が本発明の薬剤によって調節されるRor分子を言う。標的Ror分子は、Rorポリペプチド、その相同体、誘導体、またはフラグメント、または変種または変異体であり得る。目的のRor分子は、また、核酸(RNAもしくはDNAのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)であり得る。例えば、Ror遺伝子のタンパク質が実験で目的である場合、標的Ror分子はタンパク質である。当然のことながら、用語「標的Ror分子」は、タンパク質のエピトープ等の全長分子ならびにそのフラグメント、変種、および変異体を言う。標的Ror分子は、Ror1分子もしくはRor2分子のいずれか、または両方であり得る。いくつかの特定の実施形態では、標的Ror分子はRor2タンパク質である。
【0035】
用語「14−3−3」は、シグナル伝達に関与するタンパク質のファミリーを言う。14−3−3タンパク質は、多数の結合パートナーを有し、数多くの多様な細胞プロセスの群に関与する。14−3−3タンパク質は、それらの標的と結合することによってそれらの効果を及ぼし、(1)立体構造変化、(2)配列特異的な特徴または構造タンパク質の特徴の物理的妨害、および/または(3)スカフォールディングを引き起こす。14−3−3タンパク質の構造および機能に関するいくつかの総説は、以下を含む:Bridges and Moorhead、「14−3−3 Proteins:A Number of Functions for a Numbered Protein」,Sci.STKE re10,2004;Mackintosh,「Dynamic interactions between 14−3−3 proteins and phosphoproteims regulate diverse cellular processes」,Biochem.J.381:329−42,2004。これらの総説の各々を参照することによって本明細書に援用する。「14−3−3」は、14−3−3ポリペプチド、14−3−3タンパク質、14−3−3ペプチド、およびその14−3−3フラグメント、14−3−3変種、または14−3−3変異、ならびに14−3−3ポリペプチド、14−3−3タンパク質、14−3−3ペプチド、およびその14−3−3フラグメント、14−3−3変種、14−3−3変異をコードする核酸を言うこともある。14−3−3のいくつかのアイソフォームは同定されており、β、ε、η、γ、τ、ζ、およびσを含む。Ror2タンパク質の活性化は、アイソフォーム14−3−3βのリン酸化を引き起こすことが分っている。14−3−3βおよび14−3−3γの両方は、Ror2と相互に作用することが分った。いくつかの例では、14−3−3βが具体的に言及される。いくつかの他の例では、14−3−3γが具体的に言及される。
【0036】
用語「核酸分子」は、一本鎖形態または二本鎖螺旋のリボヌクレオチド(RNA分子)もしくはデオキシリボヌクレオチド(DNA分子)のリン酸エステルの形態、またはいかなるリン酸ジエステル類似体を言う。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNA螺旋も可能である。用語核酸分子、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造および二次構造を言い、何か特定の三次形態に限定するものではない。従って、この用語は、発見された二本鎖DNA、とりわけ、線状DNA分子(例えば、制限フラグメント)または環状DNA分子、プラスミド、および染色体を含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を論ずる際に、配列は、DNAの非転写鎖(すなわちmRNAと相同的な配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向に与える配列だけについて通常の慣例に従って記述され得る。
【0037】
「組換え核酸分子」は、分子生物学的操作(すなわち、非自然発生的な核酸分子または遺伝子操作されている核酸分子)が行われた核酸分子である。さらに、用語「組換えDNA分子」は、自然発生的でない、または二つの別々な核酸配列のフラグメントの人為的な組み合わせ(すなわち、本来なら連続していないDNAの切片を連結することで)によって生成され得る核酸配列を言う。「組換えで生成される」とは、化学合成手段によって、または核酸の単離されたフラグメントの人為的な操作、例えば、制限酵素、連結酵素、および類似の組み合わせ技術を用いる遺伝子操作技術(例えば、各々が参照として本明細書に援用される、Sambrookら,Molecular Cloning,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,N.Y.;(1989)、またはAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols(1989)、およびDNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(ed.D.N.Glover)IREL Press,Oxford,(1985)に記述される。)によって達成されることが多い人為的な組み合わせを意味する。
【0038】
そのような操作は、通常は、配列を認識部位に導入しながら、または認識部位で取り除きながら、1つのコドンを、そのコドンまたは保存的アミノ酸をコードする重複コドンと置換するために行われ得る。あるいは、一般的な自然形態では見出せない複数の機能を所望の組み合わせで含む単一の遺伝子実体を生成するために、所望の機能の核酸フラグメントを結合することで実行され得る。制限酵素認識部位は、そのような人為的操作の標的になることが多いが、他の部位特異的標的(例えば、プロモーター、DNA複製部位、調節配列、制御配列、読み取り枠、または他の有用な特徴)は、設計によって組み入れることが可能である。組換え核酸分子の例は、5’から3’への(センス)方向または3’から5’への(アンチセンス)方向にあるRorファミリータンパク質または免疫グロブリンタンパク質をコードするDNA配列を含有するクローニングベクターまたは発現ベクター等の組換えベクターを含む。
【0039】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、および「オリゴヌクレオチド」は、DNAおよびRNA内の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を言い、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。ポリヌクレオチドは、キメラ混合物または誘導体またはその修飾されたバージョン、一本鎖または二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーションパラメータ等を向上させるため、塩基部分、糖質部分、またはリン酸塩バックボーンで修飾され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下を含む群から選択された修飾塩基部分を1つ含み得るがこれらに限定されない:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6−ジアミノプリン。ヌクレオチド配列は、一般的に、タンパク質および酵素を産生するための細胞機構によって使用される情報を含む遺伝情報を有する。これらの用語は、二本鎖または一本鎖ゲノムのcDNA、RNA、いかなる合成および遺伝子操作されたポリヌクレオチド、ならびにセンスとアンチセンスの両ポリヌクレオチドを含む。これは、一本鎖および二本鎖分子、すなわちDNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNAのハイブリッド、ならびに複数の塩基を1つのアミノ酸バックボーンに結合させることによって形成される「タンパク質核酸」(PNA)を含む。これは、また、修飾塩基(例えば、チオウラシル、チオグアニン、およびフルオロウラシル)を含有する核酸、または炭水化物もしくは脂質を含有する核酸を含む。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の標準方法、例えば、自動DNA合成装置(バイオサーチ(Biosearch)、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)等から販売されている装置等)を使用することによって合成され得る。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法(Nucl.Acids Res.,16,3209,(1988))によって合成されることが可能であり、メチルホスホン酸オリゴヌクレオチドは、制御されたポアガラスポリマー担体の使用(Sarinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:7448−7451,(1988))等によって調製されることが可能である。いくつかの方法がアンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するために開発されてきた。例えば、アンチセンス分子は組織部位に直接注入されることが可能であり、または所望の細胞を標的するように設計された修飾アンチセンス分子(標的細胞表面上に発現されるレセプターまたは抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に結合されるアンチセンス)は、全身に投与され得る。あるいは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボの転写によって生成され得る。そのようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーター等の適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む多種多様なベクターに組み込まれ得る。あるいは、使用されるプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的にまたは誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物は、細胞系に安定に導入され得る。しかしながら、内在性mRNAの翻訳を抑制するために十分なアンチセンスの細胞内濃度を達成することは困難なことが多い。従って、好ましいアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモーターの制御下に配置される組換えDNA構築物を利用することである。患者に標的細胞をトランスフェクトするためにそのような構築物を使用することは、内在性標的遺伝子転写物を用いて相補的塩基対を形成し、それによって標的遺伝子mRNAの翻訳を阻止する一本鎖RNAの十分な量の転写をもたらす。例えば、ベクターは、細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を方向付けるように、インビボで導入され得る。そのようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを生成するために転写されることが可能な限り、エピソームのまま残存し得る、または染色体に組み込まれ得る。そのようなベクターは、当技術分野で標準の組換えDNA技術方法によって構築され得る。ベクターは、哺乳類細胞で複製および発現のために使用される当技術分野で周知のプラスミド、ウイルス、または他のものであり得る。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳類細胞で、好ましくはヒト細胞で作用するよう当技術分野で周知の任意のプロモーターによってなされ得る。そのようなプロモーターは、誘導的または構成的であり得る。そのようなプロモーターは、以下を含むがこれらに限定されない:SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,Nature,290,304−310,(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら,Cell,22,787−797,(1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78,1441−1445,(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster at al.,Nature 296,39−42,(1982))等。組織部位に直接導入され得る組換えDNA構築物を調製するために、任意の種類のプラスミド、コスミド、酵母人工染色体、またはウイルスベクターが使用され得る。あるいは、所望の組織を選択的に感染させるウイルスベクターが使用され得るが、その場合投与は、別の経路(例えば全身的に)で達成され得る。
【0041】
ポリヌクレオチドは、天然に存在する制御(発現制御)配列によって隣接され得る、またはプロモーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)と他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、抑制因子、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−および3’−非コーディング領域等を含む異種配列と結合され得る。核酸は、また、当技術分野で周知の多数の手段によって修飾され得る。そのような修飾の非限定的な例は、メチル化、「キャップ」、1つまたは複数の自然発生的ヌクレオチドの類似体との置換、およびインターヌクレオチド修飾(例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバミン酸等)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等))を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、タンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシン等)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化金属等)、およびアルキル化剤等の共有結合した1つまたは複数の付加的な部分を含み得る。ポリヌクレオチドは、メチルまたはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホロアミデートの結合の形成によって誘導体化され得る。さらに、本明細書のポリヌクレオチドは、また、検出可能なシグナルを直接的または間接的に供給することが可能な標識で修飾され得る。典型的な標識は、放射性同位元素、蛍光分子、ビオチン等を含む。
【0042】
「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写の結果生じる産物を言う。RNA転写物がDNA配列の相補的コピーであるとき、一次転写物と呼ばれるか、または一次転写物の転写後過程由来のRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンがなくて、細胞によってポリペプチドに翻訳され得るRNAを言う。「cRNA」は、組換えcDNA鋳型から転写される相補的RNAを言う。「cDNA」は、相補的でありmRNA鋳型に由来するDNAを言う。cDNAは、一本鎖であり得、または例えば、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いて二本鎖形状に転換され得る。
【0043】
RNAの一部に「相補的な」配列は、RNAを用いてハイブリダイズすることが可能な十分な相補性を有し、安定な二本鎖を形成する配列を言う。二本鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの単鎖は、従って、検査されることが可能であり、または三重鎖形成がアッセイされ得る。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度と長さの両方に依存する。通常、ハイブリダイズする核酸が長いほど、RNAとの不適正塩基対をより多く含む可能性があるが、それでも安定な二本鎖(または場合によって三本鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズされた複合体の融点を決定するために、標準的な方法を用いて不適正の許容できる程度を確認することができる。
【0044】
用語「核酸」もしくは「核酸配列」、「核酸分子」、「核酸フラグメント」、または「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「遺伝子によってコードされるmRNA」、および「cDNA」と互換的に使用され得る。
【0045】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、コード配列だけを含み得るポリヌクレオチドならびに付加的なコード配列または非コード配列を含み得るポリヌクレオチドを包含する。
【0046】
核酸分子の一本鎖形態が、温度および溶液イオン強度等の適切な条件下で他の核酸分子にアニールできるとき、核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA等の別の核酸分子にハイブリダイズ可能である(Sambrook, J.et al.eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols.1−3(ISBN 0−87969−309−6))。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同核酸の予備スクリーニングのために、55℃のTmに対応する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、例えば5×SSC、0.1%SDS、0.25%乳、およびホルムアミドなし、または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS等と使用され得る。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いTm、例えば5×または6×SSCで40%ホルムアミドに対応する。高ストリンジェンシー条件は、最も高いTm、例えば5×または6×SSCで50%ホルムアミドに対応する。ハイブリダイゼーションは、そのストリンジェンシーにもよるが、不適正塩基対があり得る、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とする。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度(当技術分野では周知の可変エレメント)に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度がより大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTm値が大きくなる。核酸ハイブリダイゼ−ションの相対的安定性(より高いTmに対応する)は、以下の順で減少する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。ヌクレオチドの長さが100を超えるハイブリッドに関して、Tmを算出する式が導き出されている(Sambrookらeds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols.1−3.(ISBN 0−87969−309−6),9.50−9.51)。短い核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)を用いるハイブリダイゼーションに関して、不適正塩基対の位置はより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrookらeds.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols、1−3.(ISBN 0−87969−309−6),11.7−11.8)。
【0047】
用語「相補的」は、互いにハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンと相補的であり、シトシンはグアニンと相補的である。
【0048】
当技術分野で周知のように、「同一性」または「類似性」は、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間で、それらの配列を比較することで決定される関係である。当技術分野で、同一性は、また、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列の関連性の程度を意味し、場合によっては、そのような配列のストリング間の一致によって決定される。同一性と類似性の両方は、以下に記述されるように周知の方法で容易に算出され得る:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje, G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.eds.,Humana Press,New Jersey,1994;ならびにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991。配列間の同一性または類似性を決定するために一般に用いられる方法は、Carillo,H.,and Lipman, D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)に開示されているものを含むが、これらに限定されない。同一性と類似性を決定する方法は、公表されているコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、以下を含むがこれらに限定されない:GCGプログラムパッケージ、Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1):387(1984)、BLASTP,BLASTN、およびFASTA、Atschul,S.F.et al.,J Molec.Biol.,215,403(1990)。
【0049】
「相同性の」は、2つのポリマー(すなわちポリペプチド分子または核酸分子)間の配列類似性の程度を言う。本明細書で参照される相同性パーセンテージの数字は、2つのポリマー間の可能な最大相同性(すなわち、2つのポリマーが、一致する(相同性の)位置の最大数を有するように整列したときのパーセント相同性)を示す。
【0050】
用語「パーセント相同性」は、複数のポリペプチド間のアミノ酸配列の同一性の程度を言う。任意の2つのポリペプチド間の相同性は、どちらかの配列の所定の位置で一致するアミノ酸の総数の直接関数である。例えば、どちらかの配列のアミノ酸の総数の半分が同一の場合、その2つの配列は50%相同性を示すと言われる。
【0051】
ポリペプチドを参照するとき、用語「フラグメント」、「類似体」、および「誘導体」は、原型のポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能または活性を保持することが可能なポリペプチドを言う。従って、活性の成熟ポリペプチドを生成するために、類似体は、前駆体タンパク質の部分を切断することによって活性化され得る前駆体タンパク質を含む。ポリペプチドのフラグメント、類似体、または誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸が保存アミノ酸残基もしくは非保存アミノ酸残基(そのようなアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされるものであり得る、またはあり得ない)と置換されるもの、または1つまたは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、またはポリペプチドの半減期を増加させるためにポリペプチドが化合物(ポリエチレングリコール等)と融合されるもの、または付加的アミノ酸がポリペプチド(シグナルペプチド等)もしくは配列(ポリペプチドもしくは前駆体タンパク質の精製のために用いられるポリヒスチジン標識等)に融合されるものであり得る。そのようなフラグメント、類似体、または誘導体は、本発明の範囲内であると見なされる。
【0052】
ポリヌクレオチド配列の「保存」残基は、比較される2つ以上の関連する配列の同じ位置に変わらずに生じる残基である。相対的に保存される残基は、配列のほかの位置で現れる残基よりもより関連する配列の間に保存されるものである。
【0053】
関連するポリヌクレオチドは、同一の残基をかなりの割合で共有するポリヌクレオチドである。
【0054】
1つのポリヌクレオチドが最終的に別のものから由来する場合、異なるポリヌクレオチドは互いに「対応する」。例えば、メッセンジャーRNAは、それから転写される遺伝子に対応する、cDNAは、逆転写反応によって、またはRNA配列の知識に基づいてDNAの化学合成によって生成されたRNAに対応する。cDNAは、また、RNAをコードする遺伝子に対応する。ポリヌクレオチドが、比較される異なる種、系統、または変種で関連するポリペプチドをコードする等の類似の機能を果たす場合、ポリヌクレオチトも互いに「対応する」。
【0055】
DNA、RNA、またはポリヌクレオチドの「類似体」は、形態および/また機能において(例えば、相補的なポリヌクレオチド配列上の塩基対への配列特異的な水素結合に関与する能力において)自然発生的なポリヌクレオチドと類似するが、例えば、異常なもしくは非自然な塩基または変化したバックボーンを保有する点でDNAもしくはRNAと異なる分子を言う。例えば、Uhlmannら,Chemical Reviews 90,543−584,(1990)を参照されたい。
【0056】
RNA、ポリペプチド、またはタンパク質等の「コード配列」または発現産物を「コードする」配列は、発現すると、そのRNA、ポリペプチド、またはタンパク質(例えば酵素)の産物をもたらす(つまり、ヌクレオチド配列は、そのポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列をコードする)ヌクレオチド配列である。
【0057】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、当業者による配列の手作業での評価によって、またはBLAST(塩基局所配列検索ツール、Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.215:,403−410,(1993))(www:ncbi.nlm.nih.gov/BLASTも参照)等のアルゴリズムを用いるコンピュータ自動配列比較および同定によってのいずれかでポリペプチドもしくは遺伝子を推定的に同定するために、そのポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を十分に含んでいる部分である。
【0058】
従って、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、その配列を含む核酸フラグメントを特異的に同定するおよび/または単離するための配列を十分に含む。本明細書で報告されるように配列の利点を有する同業者は、現在、当業者にとって周知の目的で開示される配列のすべてあるいは実質的な部分を使用し得る。
【0059】
「合成遺伝子」は、当業者にとって周知の方法を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチドの構成エレメントから組み立てられことが可能である。これらの構成エレメントは、次いでその遺伝子全体を構築するために酵素的に組み立てられる遺伝子フラグメントを形成するために結合され、アニールされる。DNAの配列に関して、「化学的に合成される」とは、成分のヌクレオチドがインビトロで組み立てられたことを意味する。DNAの手動による化学合成は、周知の方法を用いて達成されることが可能であり、自動化学合成は、市販されている多数の装置の1つを用いて実行されることが可能である。従って、宿主細胞のコドンバイアスを反映させるために、遺伝子はヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適な遺伝子発現の目的に合わせて作られ得る。コドン使用が宿主細胞によって好まれるコドンに偏っている場合、当業者は成功する遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンを決定することは、配列情報が利用できる宿主細胞から得られる遺伝子の調査に基づくこともある。
【0060】
「遺伝子」は、調節配列の前のコード配列(5’非コード配列)および後のコード配列(3’非コード配列)を含む、特定のタンパク質を発現させる核酸フラグメントを言う。「天然の遺伝子」は、天然において見られ、それ自体の調節配列を有する遺伝子を言う。「キメラ遺伝子」または「キメラ構築物」は、天然の遺伝子ではなく、天然においては一緒に見られない調節配列およびコード配列を含む、いかなる遺伝子または構築物を言う。したがって、キメラ遺伝子またはキメラ構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同一の供給源に由来するが、天然において見られるものと異なる形で配置される調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性の遺伝子」は、生物のゲノム内のその自然配置の天然の遺伝子を言う。「外来」遺伝子は、通常、宿主生物では見つからないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入される遺伝子を言う。外来遺伝子は、非天然生物に挿入される天然の遺伝子、またはキメラ遺伝子を含み得る。「導入遺伝子」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0061】
「調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を言う。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を含み得る。
【0062】
「遺伝子制御配列」は、遺伝子転写を開始するために必要なDNA配列、加えて開始を起こす割合を調節するために必要なDNA配列を言う。従って、遺伝子制御配列は、一般的な転写因子およびポリメラーゼが組み立てられるプロモーター、それに加えてそのプロモーターでこれらの組み立てプロセスの割合を制御するために、遺伝子調節タンパク質が結合するすべての調節配列から構成され得る。例えば、原核生物に適する制御配列は、プロモーター、場合によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含み得る。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、および/またはポリアデニル化シグナルを利用することが可能である。
【0063】
「プロモーター」は、コード配列の発現または機能性RNAを制御することが可能なヌクレオチド配列を言う。一般的に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーター配列は、近位およびより遠位の上流エレメントから成り、後者のエレメントは、エンハンサーと呼ばれことが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することが可能であり、かつプロモーターの本質的なエレメントであり得る、またはプロモーターの発現レベルもしくは組織特異性を高めるために挿入される異種エレメントであり得るヌクレオチド配列である。プロモーターは、全体として天然の遺伝子に由来し得る、または天然において見られる様々なプロモーターに由来する様々なエレメントから構成され得る、または合成ヌクレオチドフラグメントを含むこともある。様々なプロモーターが、様々な組織もしくは細胞型で、または発生の異なる段階で、または異なる環境条件に応答して遺伝子の発現を方向付けることが可能であることは、当業者によって理解される。
【0064】
「3’非コード配列」は、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列を言い、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与えることができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の添加に影響を及ぼすことを特徴とする。
【0065】
「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列を言う。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の完全にプロセシングされたmRNA上流に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAへの第一転写産物のプロセシング、mRNA安定性、または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
【0066】
用語「作動可能に結合される」は、1つのフラグメントの機能が他によって影響されるように単一の核酸フラグメント上で2つ以上の核酸フラグメントを結合することを言う。例えば、プロモーターがコード配列の発現に影響を及ぼすことができるとき(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)、そのプロモーターは、そのコード配列と作動可能に結合される。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向で調節配列に作動可能に結合され得る。用語「骨細胞中の作動可能なプロモーター」は、骨細胞のRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーターを言う。
【0067】
「RNA転写物」は、DNA配列の転写を触媒するRNAポリメラーゼからもたらされる産物を言う。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーであるとき、それは第一転写物と呼ばれる。またはそれは、第一転写物の転写後プロセシングに由来するRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを持たず、ポリペプチドに翻訳され得るRNAを言う。「cDNA」は、mRNAに相補的であり、かつmRNAに由来する二本鎖DNAを言う。「センス」RNAは、mRNAを含んでいるために細胞によってポリペプチドに翻訳され得るRNA転写物を言う。「アンチセンスRNA」は、標的第一転写物またはmRNAのすべてもしくは一部に相補的であり、かつ標的遺伝子の発現を阻止する(参照として本明細書に援用される、米国特許第5,107,065号を参照。)RNA転写物を言う。アンチセンスRNAの相補性は、特定のヌクレオチド配列の任意の部分(すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはコード配列)を有し得る。「機能性RNA」は、翻訳されることがないが、細胞過程への影響を依然として有するセンスRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、または他のRNAを言う。
【0068】
用語「発現」は、本発明の核酸フラグメントに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を言う。発現は、また、mRNAのポリペプチドへの翻訳を言う。「アンチセンス抑制」は、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の生成を言う。
【0069】
「過剰発現」は、正常な生物または非形質転換生物内で生成のレベルが限度を超える、生物内の遺伝子産物の生成を言う。「抑制」は、外来もしくは内在性遺伝子またはRNA転写物の発現を抑制することを言う。
【0070】
「変化したレベル」は、正常な生物または非形質転換生物のそれとは異なる量もしくは割合での生物における遺伝子産物の生成を言う。本発明のポリペプチドの過剰発現は、コード領域が発生の所望の段階で所望の組織内で遺伝子または構築物の発現を方向付けることができるプロモーターに作動可能に結合されるキメラ遺伝子またはキメラ構築物を最初に構築することで達成され得る。便宜上の理由で、キメラ遺伝子またはキメラ構築物は、同一の遺伝子に由来するプロモーター配列および翻訳リーダー配列を含み得る。転写末端シグナルをコードする3’非コード配列も、提供され得る。即時型キメラ遺伝子またはキメラ構築物も、遺伝子発現を促進するために1つまたは複数のイントロンを含み得る。即時型キメラ遺伝子またはキメラ構築物を含むプラスミドベクターは、次いで構築され得る。プラスミドベクターの選択は、宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。当業者は、キメラ遺伝子またはキメラ構築物を含有する宿主細胞の形質転換、選択、および伝播をうまく行うために、プラスミドベクターの上に存在しなければならない遺伝子エレメントについて十分に理解している。当業者は、また、異なる別の形質転換現象が発現の異なるレベルおよびパターンをもたらす(Jonesら,EMBO J.,4,2411−2418,(1985);De Almeidaら,Mol.Gen.Genetics,218,78−86,(1989))ことを認識する。従って、複数の現象は、所望の発現レベルおよびパターンを示す細胞系を得るためにスクリーニングされなければならない。そのようなスクリーニングは、DNAサザン解析、mRNA発現に関するノーザン解析、タンパク質発現に関するウエスタンまたは免疫細胞化学解析、または表現型解析によって達成され得る。
【0071】
用語「単数の変種」または「複数の変種」は、Ror分子の核酸配列またはアミノ酸配列の変形を言う。用語「変種」に包含されるのは、Ror分子のヌクレオチドおよびアミノの酸置換、添加、または欠失である。また、用語「変種」に包含されるのは、化学的に修飾された天然および合成のRor分子である。例えば、変種は、基準ポリペプチドと異なるポリペプチドを言うことが可能である。通常、基準ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるポリペプチドと基準ポリペプチドとの間の相違は、基準のアミノ酸配列と変種が全般的に極めて類似し、および一部の領域で同一であるように限定される。変種および基準ポリペプチドは、保存的または非保存的であり得、かつ任意の組み合わせで存在し得る1つまたは複数の置換、欠失、添加、融合、および切り詰めだけがアミノ酸配列で異なり得る。例えば、変種は、例えばいくつか(50〜30個、30〜20個、20〜10個、10〜5個、5〜3個、3〜2個、2〜1個、または1個)のアミノ酸が任意の組み合わせで挿入、置換、または欠失されるものであり得る。さらに、変種は、末端欠失または内部欠失等によって基準配列よりも短いことで基準ポリペプチド配列と異なる本発明のポリペプチドのフラグメントであり得る。本発明のポリペプチドの変種は、また、例えばポリペプチド(例えば、活性の成熟ポリペプチドを生成するために前駆体部分の切断によって活性化され得る前駆体タンパク質)と同じ生物学的機能または活性を本質的に保持するポリペプチドを含む。これらの変種は、タンパク質をコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列の相違を特徴とする対立遺伝子変異であり得、または差動スプライシングもしくは翻訳後修飾に関与し得る。変種は、また、実質的に同じ生物活性を有するが、異なる種から得られる関連タンパク質を含む。当業者は、単一のもしくは複数のアミノ酸置換、欠失、添加、または交換を有する変種を生成し得る。これらの変種は、とりわけ以下を含み得る:(i)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存もしくは非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)と置換され、そのような置換されたアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされる可能性があるもの、またはコードされる可能性がないもの、あるいは(ii)1つまたは複数のアミノ酸が、ペプチドもしくはタンパク質から除去されるもの、あるいは(iii)1つまたは複数のアミノ酸が、ポリペプチドもしくはタンパク質に添加されるもの、あるいは(iv)1つまたは複数のアミノ酸残基が、置換基を含むもの、あるいは(v)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えばポリエチレングリコール)等の別の化合物と融合するもの、あるいは(vi)付加的なアミノ酸が、例えばリーダー配列もしくは分泌配列もしくは成熟ポリペプチドの精製のために使用される配列もしくは前駆体タンパク質配列等の成熟ポリペプチドと融合されるもの。ポリペプチドの変種は、また、自然発生的な対立遺伝子変種等の自然発生的変種であり得、または自然発生することが知られていない変種であり得る。上記に定義されるそのような変種のすべては、当技術分野の教示の範囲内であると見なされる。
【0072】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離形態で提供され、および均一に精製され得る。場合によっては、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも98%の純度、または少なくとも99%の純度である。
【0073】
用語「単離された」は、物質がその原型または生来の環境(例えば、それが自然発生的なものであれば、自然環境)から取り出されることを意味する。従って、生きている動物内に存在する自然発生的なポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されないが、自然系で共存する物質の一部またはすべてからヒトの介入によって分離される該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離される。例えば、「単離された核酸フラグメント」は、一本鎖もしくは二本鎖であり、場合により合成の、非天然の、もしくは変化したヌクレオチド塩基を含むRNAまたはDNAのポリマーである。DNAポリマーの形態で単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAの1つまたは複数のフラグメントが含まれ可能性があり、かつ炭水化物、脂質、タンパク質、または他の物質と組み合わせることも可能である。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得、および/またはポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり得、かつそのようなベクターまたは組成物は、それが天然において見られる環境の一部ではないベクターまたは組成物で依然として単離され得る。同様に、用語「実質的に精製された」は、天然において発生する直接の化学環境からヒトの介入を介して分離または除去された物質を言う。実質的に精製されたポリペプチドまたは核酸は、当技術分野で一般に周知の多くの技術および方法のいずれかによって得られるまたは生成され得る。
【0074】
用語「精製」は、試料中の特定の1つのポリペプチドまたは複数のポリペプチドの比活性もしくは濃度を上昇させることを言う。1つの実施形態では、比活性は、試料中の標的ポリペプチドの活性と全ポリペプチドの濃度との比率として表される。別の実施形態では、比活性は、標的ポリペプチドの濃度と全ポリペプチドの濃度との比率として表される。精製法は、当業者にとって周知の方法である透析、遠心分離、およびカラムクロマトグラフィー技法を含むが、これらに限定されない。例えば、Youngら,1997,「Production of biopharmaceutical proteins in the milk of transgenic dairy animals」,BioPharm 10(6):34−38を参照されたい。
【0075】
用語「実質的に純粋な」および「単離された」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、天然においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関連しない物質との混合物を排除することを目的としていない。
【0076】
用語「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養物」は、互換的に使用され得る。これらの用語のすべては、また、任意のおよびすべての次世代であるそれらの子孫を含む。意図的なまたは偶発性の変異が原因で、すべての子孫が同一でないこともあり得ると理解される。異種核酸配列を表す文脈では、インビトロで位置付けられようとインビボで位置付けらようと、「宿主細胞」は、原核細胞または真核細胞(例えば、大腸菌(E.coli)等のバクテリア細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥の細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を言う。例えば、宿主(および細胞を複製することが可能ないかなる形質転換性生物を含み得る)は、遺伝子導入動物に位置付けられことが可能である。宿主細胞は、ベクターによってコードされる異種核酸を発現する複数のベクターおよび/または単数のベクターのレシピエントとして使用され得る。
【0077】
哺乳類細胞系によって産生される外来タンパク質を発現させ、回復させる一般法は、例えば、Etcheverry,「Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture」,Protein Engineering:Principles and Practice、Clelandら,(eds.)pages 163(Wiley−Liss,Inc.1996)によって提供される。細菌系によって産生されるタンパク質を回復させる標準技法は、例えば、Grisshammerら,「Purification of over−produced proteins from E.coli cells」,in DNA Cloning 2:Expression Systems,2nd Edition,Gloverら,(eds.),pages 59−92(Oxford University Press 1995)によって提供される。昆虫細胞の形質転換およびその中の外来ポリペプチドの生成は、米国特許第5,162,222号および世界知的所有権機関公報、国際公開第94/06463号(Guarinoらら)によって開示される。バキュロウイルス系から組換えタンパク質を単離する方法は、また、Richardson(ed.),「Baculovirus Expression Protocols」(The Humana Press,Inc.1995)によって記述される。1つの実施形態では、本発明のポリペプチドは、バキュロウイルス発現系を用いて発現させることが可能である(全体を参照として本明細書に援用される、Luckowら,Bio/Technology,1988,6,47,「Baculovirus Expression Vectors:a Laboratory Manual」、O’Riellyら,(Eds.),W.H.Freeman and Company,New York,1992、米国特許第4,879,236号を参照。)。さらに、MAXBAC(登録商標)完全なバキュロウイルス発現系(Invitrogen社)は、例えば、昆虫細胞で生成するために使用され得る。
【0078】
本発明のポリペプチドは、また、特定の性質を利用することによって単離され得る。例えば、固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーは、ポリヒスチジン標識を構成するそれらを含む、ヒスチジンが豊富なタンパク質を精製するために使用され得る。手短に言うと、キレートを形成するために最初にゲルを二価金属イオンで荷電する(Sulkowski,Trends in Biochem.3:1(1985))。ヒスチジンが豊富なタンパク質は、使用される金属イオンによって、異なる親和性でこのマトリックスに吸着され、競合的溶出、pHの低下、または強力なキレート化剤の使用によって溶出される。他の精製方法は、レクチン親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化タンパク質の精製を含む(M.Deutscher(ed.),Meth.Enzymol.182:529(1990))。本発明の付加的な実施形態では、目的のポリペプチドと親和性標識の融合(例えばマルトース結合タンパク質、免疫グロブリンドメイン)は、精製を促進するために構築され得る。
【0079】
本発明の宿主細胞は、Rorポリペプチドの大規模な生成のための方法で使用され得る。その方法では、細胞が適切な培地で増殖され、所望のポリペプチド産物が細胞から単離されるか、または細胞が当技術分野で周知の精製法(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、レセプター親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、サイズ排除濾過、カチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC等を含む従来のクロマトグラフィー方法)によって細胞が増殖される培地から単離される。他の精製法は、所望のタンパク質が、特異的結合パートナーまたは薬剤によって認識される特異的な標識、ラベル、またはキレート化部分を有する融合タンパク質として発現され、精製される。精製タンパク質は、切断されて所望のタンパク質をもたらし得る、またはインタクトな融合タンパク質として残され得る。融合成分の切断は、切断プロセスの結果として付加的なアミノ酸残基を有する所望のタンパク質の形を生成し得る。
【0080】
用語「インビトロ」は、人工的な環境を言い、人工的な環境内で起こる反応またはプロセスを言う。インビトロ環境は、試験管および細胞培養物を含むがこれらに限定されない。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、動物または細胞)を言い、自然環境内で起こる反応またはプロセスを言う。
【0081】
本発明の方法は、核抽出物を含む細胞(培養細胞)および細胞可溶化物を用いてインビトロで実行され得る。骨形成を調節する薬剤を同定するために考えられる細胞の例は、頭蓋冠細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、および多能性前駆細胞(多能性骨髄間質細胞等)を含むがこれらに限定されない。骨芽細胞および骨芽細胞の前駆細胞系の具体例は、ATCCカタログ(国際公開第01/19855号)に提供されているMC3T3−E1、C2C12、MG−63細胞、U2OS細胞、UMR106細胞、ROS17/2.8細胞、SaOS−2細胞等、ならびに以下に記述されるHOB細胞系を含む(Bodine PV,Vernon SK,Komm BS.,Endocrinology,137,4592−4604,(1996),Bodine PVN,TrailSmith M,Komm BS.,J Bone Min Res,11,806−819,(1996),Bodine PV,Green J,Harris HA,Bhat RA,Stein GS,Lian JB,Komm BS.,J Cell Biochem,65,368−387,(1997),Bodine PV,Komm BS.,Bone,25,535−43(1999),Bodine PVN,Harris HA,Komm BS.,Endocrinology,140,2439−2451,(1999),Prince M,Banerjee C,Javed A,Green J,Lian JB,Stein GS,Bodine PV,Komm BS,J Cell Biochem,80,424−40,(2001))。本発明の方法は、また、無細胞系を用いて実行され得る。
【0082】
用語「発現系」は、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のために適切な条件下での宿主細胞および適合するベクターを言う。一般の発現系は、大腸菌(E.coli)宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、および哺乳類宿主細胞とベクターを含む。
【0083】
「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝的形質をもたらす、核酸フラグメントの宿主生物のゲノムへの転移を言う。形質転換した核酸フラグメントを含む宿主生物は、「遺伝子組換え」生物と呼ばれる。
【0084】
用語「分化する」は、組織または細胞の最初の型と異なる特徴または機能を有することを言う。従って、「分化」は、分化するプロセスまたは行為である。
【0085】
用語「骨芽細胞分化」は、細胞が骨芽細胞への成熟期に特殊化した機能を発達させるプロセスを言う。骨芽細胞分化は、前骨芽細胞、初期骨芽細胞と成熟骨芽細胞、前骨細胞と成熟骨細胞の各段階を含み得る(Bodine et al,Vitamins and Hormones 65,101−151(2002),SteinらEndocrine Reviews 14,424−442(1993)、およびLianらVitamins and Hormones 55,443−509(1999))。
【0086】
用語「増殖」は、類似細胞の成長および生成を言う。
【0087】
用語「表現型」は、細胞または生物の観察可能な特徴を言う。そのような観察可能な特徴は、外見ならびに細胞または生物に存在する特定の生理学的組成物のレベルを含み得る。骨芽細胞表現型は、骨に特異的な転写因子Cbfal;I型コラーゲン;アルカリホスファターゼ、オステオカルシン;および骨シアロタンパク質等のいくつかのマーカータンパク質の発現を含む。
【0088】
本明細書で使用されるように、用語「結合パートナー」または「相互作用タンパク質」は、特異性を有する別の分子を結合し得る分子(例えば抗原と抗原特異的抗体または酵素とその抑制物質として)を言う。結合パートナーは、例えば、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビシン、IgGとタンパク質A、レセプター−リガンド結合、タンパク質−タンパク質相互作用、および相補的ポリヌクレオチド鎖を含み得る。用語「結合パートナー」は、また、細胞内でキナーゼに結合するポリペプチド、脂質、小分子、または核酸を言う。キナーゼと結合パートナーとの間の相互作用の変化は、相互作用を形成する確率の増加もしくは低下として、またはキナーゼ−結合パートナー複合体の濃度の増加もしくは低下として現れる。例えば、Ror1もしくはRor2タンパク質は、別のタンパク質もしくはポリペプチドに結合し、Ror1もしくはRor2活性を調節する結果になり得る複合体を形成し得る。
【0089】
用語「シグナル伝達経路」は、細胞内シグナルになるために細胞膜を通して細胞外シグナルを伝播する分子を言う。このシグナルは、次いで細胞応答を刺激することができる。シグナル伝達プロセスに関与するポリペプチド分子は、レセプターおよび非レセプタータンパク質チロシンキナーゼであり得る。
【0090】
「レセプター」は、通常、特異的物質を選択的に結合することを特徴とする細胞内または細胞の表面上の分子構造を言う。典型的なレセプターは、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体フラグメント、および免疫グロブリンのための細胞表面レセプターならびにステロイドホルモンのための細胞質レセプターを含む。
【0091】
用語「調節する」は、機能の抑制、増強、または誘導を言う。例えば、遺伝子発現の「調節」または「制御」は、遺伝子活性の変化を言う。発現の調節は、遺伝子活性化および遺伝子抑圧を含み得るがこれらに限定されない。「調節する」または「制御する」は、また、タンパク質、酵素、抑制物質、シグナル伝達物質、レセプター、転写活性化因子、補助因子等の生物活性を増加させる、または減少させる方法、条件、または薬剤を言う。活性のこの変化は、mRNA翻訳、DNA転写、および/またはmRNA分解もしくはタンパク質分解の増加または減少になり得、次に生物活性の増加または減少に対応し得る。そのような増強または抑制は、シグナル伝達経路の活性化等の特定の現象の発生に付随する可能性があり、および/または特定の細胞型でのみ明白である可能性がある。
【0092】
「調節活性」は、タンパク質の生物学的活性型によって調節されるいかなる活性、状態、疾患、または表現型を言う。調節は、生物学的に活性のタンパク質の濃度に影響を及ぼすことによって(例えば、発現もしくは分解を調節することによって、または例えば基質の抑制、活性化、結合、もしくは放出。化学的もしくは構造的な修飾を通して直接的なアゴニスト作用もしくは拮抗作用によって、または付加的な因子を含み得る直接的もしくは間接的な相互作用によって)影響を与え得る。
【0093】
「修飾物質」は、骨形成またはRor分子発現等の比活性の発現を変化させる任意の薬剤を言う。例えば、骨形成を調節する薬剤は、骨形成を変化させる、または変える(増加させるまたは減少させる)。修飾物質は、例えば、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質等の任意の化合物を含むことを目的とする。
【0094】
「プラズマ細胞」は、抗体(免疫グロブリン)の産生のために特殊化される成熟Bリンパ球を言う。プラズマ細胞は、まれに末梢血で見られる。プラズマ細胞は、骨髄白血球数の0.2%〜2.8%を含む。成熟プラズマ細胞は、卵型または扇型であることが多く、測定される大きさは8〜15μmである。核心は、偏心型および卵型である。
【0095】
用語「小分子」は、合成化合物もしくは自然発生的化合物(例えば、場合により誘導体化され得るペプチドもしくはオリゴヌクレオチド、天然物もしくは他のいかなる低分子量(つ上、約5kダルトン未満)の有機化合物、天然由来もしくは合成由来のいずれかの生物無機化合物もしくは無機化合物)を言う。そのような小分子は、送達可能な治療物質であり得、またはさらに送達を促進するために誘導体化され得る。
【0096】
本明細書で使用されるように、用語「誘導物質」は、骨形成またはRor分子発現の比活性を誘導する、増強する、促進する、または増加させるいかなる薬剤を言う。
【0097】
本明細書で使用されるように、用語「インヒビター」もしくは「レプレッサー」は、骨形成またはRor分子発現の比活性を阻害する、抑制する、抑圧する、または減少させるいかなる薬剤を言う。
【0098】
本明細書で使用されるように、用語「薬剤」または「試験薬剤」は、検査される任意の化合物または分子を言う。本発明の薬剤の例は、ペプチド、小分子、および抗体を含むが、これらに限定されない。薬剤は無作為に選択され得る、または合理的に選択または設計され得る。明細書で使用されるように、薬剤が、その薬剤と標的化合物または部位との間の特異的相互作用を考慮せずに無作為に選択されるとき、薬剤は、「無作為に選択される」と言われる。本明細書で使用されるように、薬剤と標的化合物または部位および/または薬剤の作用に関連する立体構造との間の特異的相互作用を考慮する非無作為な基準に基づいて薬剤が選択されるとき、薬剤は「合理的に選択または設計される」と言われる。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその免疫学的に活性な部分(例えば抗原結合部分)を言う。抗体は、自然に産生される、または全体的にもしくは部分的に合成で生成される。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、抗体をペプシン等の酵素で切断することによって生成され得るF(ab)、Fv、およびF(ab’)フラグメントを含む。特異的結合能力を維持するそのすべての誘導体も、この用語に含まれる。この用語は、また、免疫グロブリン結合ドメインと相同性である、または大部分は相同性である結合ドメインを有するいかなるタンパク質を包含する。これらのタンパク質は、天然源に由来し得る、または部分的にもしくは全体的に合成的に生成され得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、ヒトクラス抗体(IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)のいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。しかしながらIgGクラスの誘導体は、通常、本発明で好まれる。
【0100】
用語「抗体フラグメント」は、全長に満たない抗体のいかなる誘導体を言う。好ましくは、抗体フラグメントは、全長抗体の特異的結合能力の少なくとも重要な部分を保持する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、およびFdフラグメントを含むが、これらに限定されない。抗体フラグメントは、任意の手段で生成され得る。例えば、抗体フラグメントは、インタクトな抗体の断片化によって酵素的にもしくは化学的に生成され得る、または抗体の部分配列をコードする遺伝子から組換えで生成され得る。あるいは、抗体フラグメントは、全体的にまたは部分的に合成で生成され得る。抗体フラグメントは、場合により単鎖抗体フラグメントであり得る。あるいは、抗体フラグメントは、例えば、ジスルフィド結合または他のより安定な結合によって結合される複数の鎖を含み得る。抗体フラグメントは、また、場合により多分子複合体であり得る。機能的抗体のフラグメントは、一般的に、少なくとも約50のアミノ酸を含み、より一般的に少なくとも約200のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、少なくとも2つの抗原結合部位を有する。いくつかの好ましい実施形態では、抗体フラグメントは、正確に、2つ、3つ、4つ、または5つの抗原結合部位を有する。2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントは、本発明で特に有用である。そのような薬剤は、多量体を形成することなくRor2を二量体化する。
【0101】
一本鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーによって互いに共有結合した可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)だけから成る組換え抗体フラグメントである。VLまたはVHのいずれかはNH2末端ドメインであり得る。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが、重大な立体的干渉なして架橋される限り、可変長および可変組成であり得る。一般的に、リンカーは、溶解性のために散在されるいくつかのグルタミン酸またはリシンの残基を有するグリシンおよびセリンの残基の伸展を主に含む。
【0102】
二重特異性抗体は、二量体scFvである。一般的に、二重特異性抗体の成分は、大部分のscFvよりも短いペプチドリンカーを有し、それらは、二量体として結合することに対する選択性を示す。
【0103】
Fvフラグメントは、非共有結合性相互作用によって結合される1つのVHドメインと1つのVLドメインから成る抗体フラグメントである。用語dsFvは、VH−VL対を安定させるために設計された分子間ジスルフィド結合を有するFvを言うために、本明細書で使用される。
【0104】
F(ab’)2フラグメントは、pH4.0〜4.5で酵素ペプシンを用いる消化によって免疫グロブリン(典型的にIgG)から得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。フラグメントは、組換えで生成され得る。
【0105】
Fabフラグメントは、ジスルフィド架橋またはF(ab’)2フラグメントの2つの重鎖をつなぐ架橋の低減によって得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。Fab’フラグメントは、組換えで生成され得る。
【0106】
Fabフラグメントは、酵素パパインを用いる消化によって免疫グロブリン(典型的にIgG)から得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。Fabフラグメントは、組換えで生成され得る。Fabフラグメントの重鎖セグメントは、Fd小片である。
【0107】
本明細書で使用されるように、用語「レポーター遺伝子」は、その表現型発現が容易にモニターできる任意の遺伝子を言う。レポーター遺伝子の使用は、どの試験薬剤がシグナル伝達経路を活性化するかを決定するスクリーニングにおいて特に有用である。レポーター遺伝子は、シグナル伝達経路によって制御されるプロモーターまたは他の調節エレメントに作動可能に結合される。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物が作られ、そこでレポーター遺伝子が特定の目的のプロモーター領域または他の調節領域に機能的に結合し、次いでその構築物は細胞もしくは生物に形質移入される。一般的に用いられるレポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(LUC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、およびクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)を含む。
【0108】
本明細書で使用されるように、用語「処置」、「処置すること」、および「療法」は、治療的処置および予防的処置、または予防的操作、または種々の処置(骨細胞分化もしくは骨形成を刺激する、骨障害症状の発症を延ばす、および/または骨障害の重症度および/もしくは骨障害から発症するもしくは発症すると予測されるそのような症状を低減する)を言う。これらの用語は、さらに、既存の骨障害症状を寛解させること、さらなる症状を予防すること、症状の根底にある代謝的原因を改善するもしくは予防すること、症状の根底にある代謝的原因を予防もしくは逆転させること、または骨成長を予防もしくは促進することを含む。従って、これらの用語は、骨障害、またはそのような障害を発症する可能性を有する被験体に有益な結果が与えられたことを意味する。さらに、用語「処置」は、疾患、疾患の症状、もしくは疾患に罹りやすい傾向を有す可能性のある被験体に、または被験体から単離した組織もしくは細胞系に、該疾患、該疾患の症状、もしくは該疾患になりやすい傾向を治す、治癒する、軽減する、和らげる、変化させる、改善する、寛解させる、向上させる、または影響を及ぼす目的で、薬剤(例えば、治療薬または治療的組成物)の適用または投与として定義される。本明細書で使用されるように、「治療薬」は、疾患の処置(例えば、骨形成活性を調節する、または新骨形成を誘導する)で役に立ついかなる物質または物質の組み合わせを言う。従って、治療薬は、小分子、ペプチド、抗体、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0109】
治療薬または治療的組成物は、また、特定の疾患の症状を予防するおよび/または低減する医薬的に許容される形状の化合物を含み得る。例えば、治療的組成物は、骨関連障害の症状を予防するおよび/または低減する医薬組成物であり得る。本発明の治療的組成物は、任意の適切な形状で提供されると考えられる。治療的組成物の形状は、投与モードを含むいくつかの要素に依存する。治療的組成物は、他の成分からの希釈剤、アジュバント、および賦形剤を含み得る。
【0110】
骨強度は、骨密度(ミネラルg/体積cm3)および骨質(ミネラル化、骨構造、骨代謝回転、微細損傷)によって決定され得る。骨強度の測定として、骨塩量(BMD)が通常使用される。例えば、骨は、そのBMDが、若い白人の成人女性の平均値以下で2.5標準偏差を超える場合、骨粗鬆症と断言され得る(世界保健機関、1994年、閉経後骨粗鬆症のスクリーニングへの骨折リスクおよびその適用の評価。テクニカルリポートシリーズ843、ジュネーブ、世界保健機関)。
【0111】
「骨組織」は、石灰化した組織(例えば頭蓋冠、脛骨、大腿骨、椎骨、歯)、骨梁、骨梁以外の空洞である骨髄腔、骨梁および骨髄腔等の外側周辺を覆う皮質骨等を言う。骨組織は、また、通常ミネラル化コラーゲンのマトリックス内に位置する骨細胞、骨細胞に栄養を供給する血管、骨髄液、滑液、骨組織に由来する骨細胞を言い、かつ脂肪骨髄も含み得る。骨組織は、全体の骨、全体の骨の部分、骨片、骨粉、骨組織バイオプシー、コラーゲン画分、またはその混合物等の骨生成物を含む。本発明の目的で、用語「骨組織」は、特に明記しない限り、ヒトまたは動物を問わず、前述の骨組織および骨生成物のすべてを包含するために使用される。
【0112】
本明細書で使用されるように、「骨関連活性」は、骨形成活性および骨再吸収活性を含む。骨形成活性は、骨芽細胞活性、骨前駆細胞からの骨芽細胞への分化、および骨芽細胞増殖を増加させることによって、骨芽細胞アポトーシスを減少させることによって、およびその任意の組み合わせによって誘導され得る。さらに、骨再吸収活性は、破骨細胞活性、破骨細胞分化と増殖を減少させることによって、破骨細胞アポトーシスを増加させることによって、およびその任意の組み合わせによって抑制され得る。骨形成活性は、種々の骨組織または細胞で誘導され得る。
【0113】
本明細書で使用されるように、語句「骨形成を調節すること」は、骨形成を増加させるまたは減少させることを言う。「骨形成の増加」は、骨芽細胞または骨芽細胞前駆体の骨部位への補充を意味し、それによって成熟してない骨芽細胞内の細胞分化および骨物質でミネラル化し、その部位で骨量を増加させるそれらのコラーゲンマトリックスの分泌をもたらす。この用語は、また、成熟骨芽細胞によるコラーゲンマトリックスの増加生成および分泌を包含する。骨形成の増加は、骨折率の減少、面骨密度の増加、ミネラル骨密度の体積増加、骨梁の結合性の増加、骨梁密度の増加、皮質密度もしくは厚さの増加、骨径の増加、および骨無機物含有量の増加から1つまたは複数によって決定され得る。骨形成の増加は、骨細胞(例えば骨芽細胞)の結合、増殖、生存、および/または分化の増加、およびそれに続く骨ミネラル化に起因し得る。
【0114】
「骨関連障害」は、骨形成および骨吸収の障害を含む。これらの疾患および状態は、以下を含むがこれらに限定されない:くる病、骨軟化症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨異栄養症、骨粗鬆症(老人性および閉経後骨粗鬆症を含む)、パジェット病、骨腫瘍転移、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、大理石骨病、歯周炎、ならびにリウマチ関節炎および骨関節炎を併発し得る骨代謝の異常変化。これらの疾患の一部は、不十分な骨形成または骨量減少を特徴とするが、その他は、骨組織の異常な肥厚または硬化に関与する。骨の異常な肥厚を抑制することから恩恵を受ける疾患の例は、大理石骨病と骨硬化症を含むが、これらに限定されない。
【0115】
「骨関連薬剤」は、骨形成または骨吸収に影響を与える薬剤を言う。「骨関連薬剤」は、同化効果または異化効果を誘導することが可能であり、骨吸収を抑制し、骨塩量の増加をもたらすことが可能であり、骨形成を増加させ、または骨形成と骨吸収の間のバランスを維持することが可能である。
【0116】
用語「化合物」または「薬剤」は、被験体(ヒトまたは動物)に投与されたとき、局所作用および/または全身作用によって所望の薬理効果および/または生理的効果を誘導する1つの化合物または複数の化合物または物質の組成物を言うために本明細書では互換的に使用される。
【0117】
用語「被験体」は、ヒトまたは非ヒト非験者を含む任意の哺乳類を言う。非ヒト被験体は、実験動物、試験動物、畜産動物、エンターテインメント動物、またはペットを含み得る。被験体は、ヒトであり得る。被験体は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等の家畜であり得る。被験体は、マウス、ラット、ウサギ、サル等の実験動物であり得る。
【0118】
用語「生体試料」は、広範に定義され、いかなる細胞、組織、生体液、器官、多細胞生物等を含む。生体試料は、例えば、インビトロの細胞培養物または組織培養物に由来し得る。あるいは、生体試料は、生物または単細胞生物の集団に由来し得る。生体試料は、生骨等の生きている組織であり得る。用語「生体試料」は、また被験体から単離した細胞、組織、または生体液等の試料、ならびに被験体内に存在する試料を含むことを目的としている。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロならびにインビボ生体試料中のRor mRNA、タンパク質、ゲノムDNA、または活性を検出するために使用され得る。例えば、Ror mRNAの検出のインビトロ技法は、TaqMan解析、ノーザンハイブリダイゼーション、およびin situハイブリダイゼーションを含む。Rorタンパク質の検出のインビトロ技法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法を含む。RorゲノムDNAの検出のインビトロ技法は、サザンハイブリダイゼーションを含む。
【0119】
(発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、骨代謝、特に骨芽細胞分化におけるRorファミリーおよびその下流シグナル伝達生体分子の役割の発見に由来する。米国特許出願連番第10/823,998号、第60/463,364号、および第60/501,340号を参照されたい。これらの各々は、参照することによって本明細書に援用される。出願者は、下方制御するRor2発現が、ヒト間葉系幹細胞のデキサメタゾン誘導骨形成分化を抑制することを発見した(図1)。対照的に、Ror2過剰発現は、ヒト間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を抑制する(図2)。出願者は、また、下方制御する14−3−3β発現が、ヒト間葉系幹細胞においてミネラル化マトリックス形成を増強することを示した(図10)。さらに、Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、いずれかの単独よりもより大きなマトリックスミネラル化を誘導する(図10)。これらの発見に基づいて、タンパク質レベルでRor2活性を調節する、または14−3−3β活性を調節する薬剤もしくはその医薬組成物は、骨疾患および/または代謝障害(肥満症もしくは糖尿病等)の処置に有用である。実際に、Ror2タンパク質の活性を増加させる薬剤は、骨芽細胞分化を促進させ、それによってミネラル化骨形成を増加させる(図8および9)。また、14−3−3β活性を抑制する薬剤は、骨芽細胞分化を促進し、それによってミネラル化骨形成を増加させる(図10)。
【0120】
1つの態様では、本発明は、Ror2タンパク質の活性を調節する(増加または減少させる)薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の活性を増加させる。他の実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の活性を減少させる。一般的に、これらの薬剤は、Ror2タンパク質の活性レベルを増加または減少させるタンパク質レベルで作用する。本明細書で述べるように、Ror2活性を増加させる薬剤は、ミネラル化骨形成および骨形成分化を促進する際に有用である。これらの薬剤は、また、脂肪細胞への分化を抑制することによって肥満症の処置に有用になり得る(図2)。特定の理論に制約されることを願わずに、Ror2活性の増加は、脂肪細胞への分化を抑制しながら、骨形成分化を促進すると思われる。
【0121】
Ror2活性を調節するこれらの薬剤は、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド等を含むいかなる種類のキメラ化合物であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤はタンパク質である。他の実施形態では、薬剤はペプチドである。さらに他の実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。さらに他の実施形態では、薬剤は、小分子(例えば、1500g/モル未満の分子量を有する)である。好ましくは、薬剤はRor2タンパク質に特異的であり、他の生体分子に結合しない。特に、いくつかの実施形態では、薬剤は、他のRorファミリーメンバーに結合しない。他の実施形態では、他の生体分子もしくはRorファミリーメンバーと交差反応性があり得るが、しかしこれらの他の分子に対する該薬剤の親和性はRor2タンパク質に対するよりも低い。
【0122】
いくつかの特定の実施形態では、薬剤は2つのRor2タンパク質の二量体化を引き起こすことで作用する。Ror2タンパク質の二量体化は、Ror2レセプターの活性化を引き起こすと考えられる。Ror2キナーゼ活性の活性化は、14−3−3βタンパク質を含むその結合パートナーのリン酸化につながる。他のRor2結合パートナーは、以下を含むがこれらに限定されない:ADP/ATP担体タンパク質、UDP−グルコースセラミドグルコシルトランスフェラーゼ様1、14−3−3タンパク質γ、リボフォリンI、アルギニンN−メチルトランスフェラーゼ1、細胞アポトーシス感受性タンパク質、NOTCH2タンパク質、およびヒト骨格筋LIMタンパク質3(参照として本明細書に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。薬剤は、一般的に、Ror2タンパク質を指向する少なくとも2つの結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質を指向する正確に2つの結合ドメインを有する(すなわち薬剤は二価である)。多価である他の薬剤も、本発明では有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を促進する小分子またはポリヌクレオチドである。他の実施形態では、薬剤はタンパク質またはペプチドである。
【0123】
いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質に対する抗体または抗体フラグメント(例えば二重特異性抗体)である。抗体または抗体フラグメントは、Ror2タンパク質の任意の領域に向けられ得るが、しかし抗原結合部位は、Ror2の生物活性に(例えばキナーゼ活性)または2つのタンパク質の二量体化に干渉し得る領域に、好ましくは向けられない。抗体または抗体フラグメントによる2つのRor2タンパク質の結合は、Ror2タンパク質の二量体化およびそれによってその活性化を促進する。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。抗体は、いかなるアイソタイプであり得るが、しかしIgGアイソタイプが、通常好まれる。抗体は、任意の種に由来し得るが、しかしヒトで用いるためには、抗体は一般的にヒト由来またはヒト化されたものである。抗体を他の種で使用する場合、抗体はその種に適合され得る。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は完全にヒト抗体である。いくつかの特定の実施形態では、抗体は完全にヒトモノクローナル抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態では、ウサギまたは他のげっ歯類等の哺乳類を、Ror2タンパク質に由来する精製されたヒトRor2タンパク質またはペプチドで免疫することによってRor2タンパク質に対する抗体が、調製される。免疫化の後、B細胞またはプラスミド細胞等の抗体を産生する細胞は、採取されて、次いでRor2タンパク質に対する抗体の生成を選別されるハイブリドーマを調製するために使用される。いくつかの実施形態では、抗体は、Ror2タンパク質を二量体化するおよび/または活性化するそれらの性能を選別される。一旦所望の抗体を産生するB細胞が同定されると、そのB細胞は不死化され得る。結果として生じるハイブリドーマは、次いで、所望のモノクローナル抗体を生成するために使用され得る。ハイブリドーマによって生成される抗体は、さらに特徴付けられ、修飾され得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト被験体への抗体の投与が有害反応(治療抗体のクリアランスの増加から致命的なアナフィラキシーまでに及び得る)を引き起こさぬようヒト化され得る。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質(すなわち相補性決定領域(CDR))を認識する抗体の領域は、異なる特異性のヒト抗体のCDRを置換するために使用される。抗体を操作し調製する技法は、当技術分野では周知であり、米国特許第4,816,567号(1989年3月28日発行)、米国特許第5,078,998号(1992年1月7日発行)、米国特許第5,091,513号(1992年2月25日発行)、米国特許第5,225,539号(1993年7月6日発行)、米国特許第5、585、089号(1996年12月17日発行)、米国特許第5,693,761号(1997年12月2日発行)、米国特許第5,693,762号(1997年12月2日発行)、米国特許第5,869,619号(1991年発行)、米国特許第6,180,370号(2001年1月30日発行)、米国特許第6,548,640号(2003年4月15日発行)、米国特許第6,881,557号(2005年4月19日発行)、米国特許第6,982,321号(2006年1月3日発行)に記述されており、これらは参照することによって本明細書に援用される。他の実施形態では、抗体は、Ror2タンパク質に対してより高い特異性および/または親和性を有する抗体を得るために、進化されおよび/または修飾される。
【0125】
他の実施形態では、薬剤はRor2タンパク質に対する抗体のフラグメントを含む。Ror2タンパク質に対する抗体の1つまたは複数のフラグメントが、使用され得る。フラグメントは、一般的に、Ror2タンパク質に対する抗体親和性に関与する相補性決定領域(CDR)を含む。Ror2タンパク質を二量体化するために、Ror2タンパク質に対して少なくとも2つの結合部位が必要である。従って薬剤は、互いに結合した2つの抗体フラグメントであり得る。フラグメントは、共有結合または非共有結合され得る。例えば、薬剤は、共有結合している2つのFabフラグメントであり得る。薬剤は、また、二重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、2つを超える抗体フラグメントを含み得る。例えば、薬剤は、Ror2タンパク質に対する3つ、4つ、5つ、または6つの抗原結合部位を含み得る。
【0126】
いくつかの他の実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質等のRorタンパク質に対する抗体の抗原結合部位を模倣するタンパク質、ペプチド、または小分子であり得る。これらの薬剤は、Ror2タンパク質に対する抗体の抗原結合部位の構造に基づいてコンピュータで設計または同定され得る。薬剤は、次いで、Ror2タンパク質を二量体化しおよび/または活性化するための薬剤の性能を評価するために種々のインビトロアッセイで検査され得る。薬剤は、また、小分子、ペプチド、またはポリヌクレオチドのライブラリーを使用する高スループットスクリーニング方法を用いて同定され得る。
【0127】
別の態様では、本発明は、Ror活性を調節する際に本発明の薬剤の使用方法を提供する。Rorタンパク質、特にRor2タンパク質の活性を調節する薬剤は、骨関連活性を調節するために有用である。これらの薬剤は、また、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置で脂肪細胞分化を調節する際に有用であり得る。骨関連活性を調節する(例えば骨形成を増強する)必要性を特徴とする多数の疾患および状態がある。最も明らかなものは骨折の症例であり、この場合、骨成長を刺激するおよび骨修復を急いで完了させることが望ましい。例えば、骨形成を増強する薬剤は、顔面再構築法または整形方法で潜在的に有用であり得る。他の骨欠損状態は、以下を含むがこれらに限定されない:骨部分欠損、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および軟骨の欠損もしくは損傷の治癒または再生等の結合組織の修復が有益である状態。また、非常に重要なものは、加齢性骨粗鬆症および閉経後のホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含む骨粗鬆症の状態である。骨成長の必要性を特徴とする他の状態は、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、糖尿病関連骨粗鬆症、廃用性骨粗鬆症、およびグルココルチコイド関連骨粗鬆症を含む。
【0128】
Ror2活性を増加させる薬剤は、ミネラル化骨形成を促進するために使用され得る。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進させるために使用され得る。骨芽細胞分化の促進は、脂肪細胞への分化の犠牲によってなされ得る。薬剤は、また、ミネラル化マトリックス形成を促進するために使用され得る。
【0129】
別の態様では、本発明は、14−3−3(例えば、14−3−3β、14−3−3γ等)の活性を調節する(増加させるまたは減少させる)薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3の活性を抑制する。他の実施形態では、薬剤は14−3−3の活性を増加させる。薬剤は、核酸またはタンパク質のレベルで作用し得る。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3βの発現を減少させる。本明細書で述べるように、14−3−3β活性を抑制する薬剤は、ミネラル化骨形成および骨形成分化を促進する際に有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3γの発現を減少させる。これらの薬剤は、また、脂肪細胞への分化を抑制することによって肥満症、糖尿病、または他の代謝障害を処置する際に有用であり得る。特定の理論に制約されることを願わずに、下方制御する14−3−3、特に14−3−3βの発現は、脂肪細胞への分化を抑制しながら、骨形成分化を促進すると思われる。
【0130】
14−3−3活性を調節するこれらの薬剤は、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド等を含む任意の種類のキメラ化合物であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤はタンパク質である。他の実施形態では、薬剤はペプチドである。さらに他の実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。さらに他の実施形態では、薬剤は小分子である。いくつかの実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、薬剤はDNAである。他の実施形態では、薬剤はRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3特異的RNAiである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的RNAiである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3特異的siRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的siRNAである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3特異的shRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的shRNAである。他の実施形態では、薬剤は14−3−3γに特異的である。特に、いくつかの実施形態では、薬剤は、具体的には間葉系幹細胞または骨芽細胞等の骨細胞に見られる14−3−3を標的にする。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤は標的部分を含む。いくつかの実施形態では、標的薬剤は、ビスホスホネートまたは他の骨組織標的薬剤である。
【0131】
別の態様では、本発明は、14−3−3活性を調節する際に本発明の薬剤を使用する方法を提供する。14−3−3の活性を調節する薬剤、特に14−3−3βは、骨関連活性を調節するために有用である。これらの薬剤は、また、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置で脂肪細胞分化を調節する際に有用であり得る。骨関連活性を調節する(例えば骨形成を補強する)必要性を特徴とする多くの疾患および状態がある。最も明らかなものは骨折の症例であり、この場合、骨成長を刺激するおよび骨修復を急いで完了させることが望ましい。例えば、骨形成を増強する薬剤は、顔面再構築法または整形方法で潜在的に有用であり得る。他の骨欠損状態は、以下を含むがこれらに限定されない:骨部分欠損、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および軟骨の欠損もしくは損傷の治癒または再生等の結合組織の修復が有益である状態。また、非常に重要なものは、加齢性骨粗鬆症および閉経後のホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含む骨粗鬆症の状態である。骨成長の必要性を特徴とする他の状態は、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、糖尿病関連骨粗鬆症、廃用性骨粗鬆症、およびグルココルチコイド関連骨粗鬆症を含む。
【0132】
14−3−3活性を減少させる薬剤は、ミネラル化骨形成を促進するために使用され得る。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進するために使用され得る。骨芽細胞分化の促進は、脂肪細胞への分化の犠牲でなされ得る。薬剤は、また、ミネラル化マトリックス形成を促進するために使用され得る。
【0133】
本発明の方法における使用のための薬剤は、被験体への投与に適する医薬組成物に組み込まれ得る。本明細書で使用されるように、薬剤は、Ror分子(例えばRor2タンパク質)活性または14−3−3活性(例えば14−3−3β、14−3−3γ)を調節することを同定された任意の化合物(例えば、小分子、経口で有効な分子、有機分子、タンパク質、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、ペプチド)であり得る。そのような組成物は、一般的に、化合物および医薬的に許容される担体を含む。本発明の組成物は、骨関連活性を調節することが知られている1つまたは複数の薬剤の組み合わせで、1つまたは複数の薬剤を含有し得る。例えば、Ror活性を促進するまたは14−3−3活性を抑制する薬剤は、エストロゲン、ビスホスホネート、または組織選択的エストロゲン(すなわち、選択的エストロゲンレセプター修飾物質(SERM))等の骨吸収を抑制する薬剤と組み合わせられ得る。本発明の薬剤は、骨形成を促進する他の薬剤と組み合わせられ得る。
【0134】
1つまたは複数の薬剤は、治療有効量で使用される。治療有効量は、改善(例えば、処置される障害、疾患、または状態に関連する徴候および/または症状の減少)を示すのに十分である薬剤のその量を言う。単独で投与される個々の成分に適用されるとき、この用語は、単独でのその成分を言う。組み合わせに適用されるとき、この用語は、連続的にまたは同時に組み合わせて投与されるか否かに関わらず、改善をもたらす複数の成分を組み合わせた量を言う。例えば、処置での使用の有効量は、骨折修復の治癒速度で臨床的に有意な上昇;骨粗鬆症被験体における骨量減少の回復および骨折の予防;軟骨欠損または障害の回復;骨粗鬆症の発症の予防または遅延;骨粗鬆症と関連するさらなる骨量減少の防止;骨折偽関節および仮骨延長における骨形成の刺激および/または抑制;人工舗装具内への骨成長の増加および/または減少;歯欠損の修復等をもたらす薬剤を含む組成物の量である。そのような有効量は、日常的な最適化技法を用いて決定され、処置される特定の状態、患者の状態、投与経路、製剤形態、医者の判断、および当業者にとって明らかな他の要因に依存する。本発明の化合物に必要とされる用量(例えば骨形成の増加が望ましい骨粗鬆症では)は、処置群と対照群の間で統計学的に有意な相違を確実にする用量である。骨量のこの相違は、例えば、処置群では骨量で5〜20%以上の増加として見なされ得る。治癒における臨床的に有意な増加の他の測定は、種々の検査、例えば破壊強度と張力、破壊強度とねじれ、4点屈曲、骨生検における結合性の増加、および当業者にとって周知の他の生体力学検査を含み得る。処置レジメンのための一般的なガイダンスは、目的の疾患の動物モデルで実行される実験から得られ得る。
【0135】
薬剤の毒性および治療効果は、例えば、LD50(母集団の50%に対する致死量)およびED50(母集団の50%に治療効果のある用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物で標準的な医薬方法によって測定され得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50とED50の比(LD50/ED50)として表すことが可能である。大きな治療指数を示す薬剤または化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトでの使用の投与量の範囲を策定する際に使用され得る。そのような薬剤または化合物の投与量は、ほとんど毒性がないED50を含む血中濃度の範囲内であり得る。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路によってこの範囲内で変わり得る。
【0136】
本発明の方法で使用される任意の薬剤に対する治療有効量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。例えば、用量は、細胞培養または動物試験で決定されるようにED50を含む循環血漿濃度(すなわち、Ror2タンパク質の最大半量の二量体化を達成する検査化合物の濃度)の範囲を達成するための動物モデルで策定され得る。そのような情報は、ヒトでの有用量をより正確に決定するため使用され得る。血漿レベルは、例えばHPLCで測定され得る。投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。担当医は、投与の終了、中断、または調整を行う方法と時期を承知しているだろう。逆に、臨床反応が十分でない(毒性を除外して)場合、担当医は、処置をより高いレベルに調節することも承知しているだろう。目的の障害の管理において投与される用量の大きさは、処置される状態の重症度によって変化する。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価法によって部分的に評価され得る。さらに、用量およびおそらく投薬回数は、また個々の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。上述したものに比較できる処置プログラムは、獣医学で使用され得る。
【0137】
特定の状況のための適切な投与量の決定は、当技術分野の範囲内である。通常、処置は、化合物の適量より少ない投与量で開始される。その後、この条件下で最適な効果に達するまで、投与量を少しずつ増やす。例えば、必要に応じて1日の総投与量は、その日の割り当てに分けられて投与され得る。1日の投与量は、2つ、3つ、または4つの部分に分けられることが可能であり、各部分は、24時間の間に投与される。
【0138】
投与される薬剤としての抗体または抗体フラグメントの場合、薬剤は、一般的に、静脈内注入で投与される。投与量は、1〜6週間ごとに1〜25mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、1〜6週間ごとに1〜10mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、1〜10mg/kgの薬剤は、3〜5週間ごとに静脈内注入によって送達される。他の実施形態では、3〜6mg/kgの薬剤は、4週間ごとに静脈内注入によって送達される。
【0139】
処置される特定の状態によって、薬剤は調剤されることが可能であり、全身的にまたは局所的に投与され得る。本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように調剤される。剤形および投与の技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)に見出し得る。適切な投与経路は、2〜3例を挙げると、経口、経直腸、経膣、経皮、経粘膜または経腸の投与;筋肉内、皮下、および髄内の注射を含む非経口送達;ならびにくも膜下腔内、脳室内に直接、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内の注射を含み得る。使用し得る一部の送達方法は、以下を含むがこれらに限定されない:リポソームのカプセル化、人工舗装具への組み込み、レトロウイルスベクターによる形質導入、およびエキソビボでの細胞のトランスフェクションとその後の再移植またはトランスフェクトした細胞の投与。
【0140】
組成物が医薬的に使用されるとき、それらの組成物は、診断および処置上の使用のために「医薬的に許容される担体」と組み合わせられる。そのような組成物の剤形は、この分野の当業者には周知である。本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の付加的な薬剤を含むことが可能であり、好ましくは、医薬的に許容される担体を含み得る。
【0141】
適切な医薬的に許容される担体および/または希釈剤は、任意のおよびすべての従来の溶媒、分散媒、賦形剤、固定担体、水溶液、コーティング剤、抗菌剤および坑真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。用語「医薬的に許容される担体」は、それが投与される患者にアレルギー反応または他の有害作用を引き起こさない担体を言う。適切な医薬的に許容される担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール等、ならびにその組み合わせから1つまたは複数を含む。医薬的に許容される担体は、さらに、組成物の1つまたは複数の薬剤の有効期間または有効性を増強する湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤もしくは緩衝剤等を少量含み得る。医薬的に許容される物質に対するそのような媒介および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。
【0142】
非経口の、皮内の、または皮下の適用で使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の坑菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の坑酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート化剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝剤および塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の浸透圧を調節する薬剤を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調節され得る。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジ、または反復投与バイアルに封入され得る。注射に適する医薬組成物は、無菌注射剤の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の)または分散および無菌粉末を含む。静脈内投与のための適切な担体は、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(登録商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)、またはリン酸緩衝食塩水を含む。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用によって、分散の場合には必要とされる粒子径の維持によって、おおび表面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および坑真菌剤,例えばパラビン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等、によって達成され得る。多くの場合、例えば糖もしくはポリアルコール(マニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム等)の等張剤を組成物に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等)を組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0143】
さらに、本発明によって同定される疾患および状態を処置するための薬剤は、また、処置される状態に対してそれらの特定の有効性のために選択される他の治療薬と同時投与され得る。例えば、薬剤は、エストロゲンもしくはエストロゲン関連化合物または他の骨吸収インヒビターと併用され得る。エストロゲン化合物は、抱合エストロゲン、エストラジオール、およびその類似体を含むが、これらに限定されない。他の骨関連治療化合物は、以下を含むがこれらに限定されない:ビスホスホネートと関連化合物(例えば米国特許第5,312,814号に記述されているもの)、カルシウム補給剤(Prince,R.L.et al.,N.Engl.J.Med.325,1189,(1991))、ビタミンD補給剤(Chapuy M.C.et al.,N.Engl.J.Med.327,1637(1992))、フッ化ナトリウム(Riggs,B.L.ら,N.Engl.J.Med.,327,620,(1992))、アンドロゲン(Nagent de Deuxchaisnes,C,in Osteoporosis,a Multi−Disciplinary Problem,Royal Society of Medicine International Congress and Symposium Series No.55,Academic Press,London,p.291,(1983))、およびカルシトニン(Christiansen,C.,Bone 13(Suppl.1):S35,(1992))。
【0144】
別の態様では、本発明は、Rorタンパク質を活性化する薬剤を同定するための系を提供する。薬剤がRor2タンパク質の活性を変化させるか否かを決定するための方法は、当業者には周知の解析およびアッセイを行うことを含む。例は、以下を含むがこれらに限定されない:組織化学解析、ウエスタンブロット解析、ELISA、酵素アッセイ(例えばキナーゼアッセイ)、および例えば、Rorもしくは14−3−3βリン酸化(より高い活性を反映するより高いリン酸化状態)の程度の測定を含む機能解析。いくつかの実施形態では、Ror(具体的にはRor2タンパク質)の活性は、Ror2タンパク質に結合し、Ror2タンパク質によってリン酸化されることが示されている14−3−3βのリン酸化状態を決定することによって評価される。14−3−3βタンパク質のリン酸化は、当技術分野で周知の任意の技法を用いてアッセイされ得る。特に、坑ホスホチロシン抗体を使用する免疫沈降は、14−3−3βタンパク質のリン酸化を追跡するために用いられ得る。あるいは、リンの放射性同位元素(例えば32P−γ−ATP)も使用可能である。
【0145】
本発明は、また、Ror分子(例えばRor2タンパク質)の活性の増加または減少は、薬剤が骨関連活性を調節することを示す、骨関連活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明は、キメラレセプター(例えばRor2/TrkB)およびRor2の二量体化によって調節されるレポーター遺伝子(例えばシフェラーゼ等)を用いるRor2の二量体化を促進する薬剤を同定するためのアッセイを提供する。いくつかの実施形態では、TrkBの細胞内ドメインに融合したRor2の細胞外ドメインを含むキメラレセプターを発現する細胞は、本発明のアッセイで用いられる。いくつかの特定の実施形態では、Ror2タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸1〜407は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合する。他の実施形態では、異なる細胞内ドメインが、キメラを構築する際に使用される。例えば、二量体化時に活性化される任意の細胞内ドメインは、TrkBドメインの代わりに使用さることが可能である。好ましくは、細胞内ドメインは、単一スパンの膜貫通レセプターからであり、シグナル伝達経路は知られている。キメラレセプターを調製する際に使用され得る他の細胞内ドメインの非限定的な例は、TrkA、TrkC、EGFR、PDGFR、およびFGFRの細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、細胞外ドメインの二量体化時に活性化され、最終的にレポート遺伝子の上方制御をもたらすシグナル伝達カスケードを活性化する。例えば、キメラレセプターの細胞外Ror2ドメインを二量体化する薬剤は、Ror2/TrkBキメラの場合、TrkBシグナル伝達経路の活性化を引き起こす。TrkBシグナル伝達経路の活性化は、cAMP応答エレメント(CRE)プロモーター−レポーター遺伝子系の使用によって評価される。例えばEGFR等の別のシグナル伝達経路の活性化は、EGFR経路によって活性化されるSTAT結合エレメントに基づくもの等の別のレポーター遺伝子系を必要とする。TrkB経路の活性化は、その制御下で任意のレポーター遺伝子の発現を次々に増加させるCREプロモーターの刺激を引き起こす。ルシフェラーゼ(LUC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)等の容易にアッセイされるレポーターは、CREプロモーターの制御下に置かれることが可能であり、本発明のアッセイで使用され得る。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、レポーター遺伝子として使用される。他の実施形態では、緑色蛍光タンパク質がレポーター遺伝子として使用される。いくつかの実施形態では、プラスミドの上のCREプロモーター−レポーター構築物は、キメラレセプターを発現する細胞にトランスフェクトされる。他の実施形態では、構築物は、細胞のゲノムの一部である。いくつかの実施形態では、構築物は、細胞に安定にトランスフェクトされる。Ror2/TrkBキメラに基づく本発明のアッセイ系は、本明細書に示されるRor2特異的抗体を用いてRor2を二量体化することが検証された。Ror2特異的抗体は、観察されるレポーター(すなわちルシフェラーゼ)活性で用量依存性増加を引き起こす。図12を参照されたい。
【0147】
本発明のキメラレセプターアッセイ系は、対応するプロモーター系と対の異なる細胞内ドメインを用いて修飾され得る。他の細胞内ドメインの例は、TrkA、TrkC、EGFR、PDGFR、およびFGFRの細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインによって調節される対応するプロモーターは、次いでレポーター系で使用される。例えば、STAT結合エレメントは、EGFR細胞内ドメインを有するキメラレセプターを使用する系で使用され得る。
【0148】
本発明は、本発明のキメラレセプターアッセイを行うための複数のキットを含む。これらのキットは、本発明のアッセイを使用する試験薬剤をスクリーニングするために必要な成分の一部またはすべてを含む。いくつかの実施形態では、キットの成分は、研究者が使用するために便利にパッケージされている。キットは、以下のいずれかまたはすべてを含み得る:DNA構築物、細胞系、緩衝剤、酵素、マルチウェルプレート、陽性および陰性の対照、培地、坑菌薬、ヌクレオチド、説明書等。いくつかの実施形態では、キットは、Ror2/TrkBキメラレセプターを発現する細胞系を含む。他の実施形態では、キットは、Ror2/TrkBキメラレセプターをコードするDNA構築物を含む。他の実施形態では、キットは、CREプロモーターに作動可能に結合されたレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、キットは、CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼ遺伝子を含む。レポーター遺伝子/CREプロモーターの構築物は、プラスミドであり得る。
【0149】
本発明は、上述の本発明のアッセイで使用される細胞外Ror2ドメインを有するキメラレセプターを含む。キメラRor2/TrkBレセプターの典型的なアミノ酸配列は、以下の通りである。Ror2タンパク質に由来するアミノ酸配列は、大文字で示され、TrkBタンパク質に由来するアミノ酸配列は、小文字で示される。
【0150】
【化4】
当業者によって認識されるように、種々の変異、欠失、置換等が、本発明から逸脱することなく本発明のキメラタンパク質になされる可能性がある。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質は、上述のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、95%、90%、80%、または70%の相同的である。いくつかの実施形態では、キメラレセプターは、該キメラレセプターの細胞外Ror2ドメインによって引き起こされる二量体化時にTrkB経路等のシグナル伝達経路を活性化する。当業者によって認識されるように、上述のタンパク質配列への種々の変化は、キメラレセプターの活性を変化させることなくなされ得る。キメラレセプターのこれらの変種は、本発明の範囲内であるとみなされる。本発明は、また、キメラレセプターまたはその変種をコードするポリヌクレオチド配列を含む。そのコード配列は、キメラタンパク質の発現および/または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサー、調節エレメント等に場合により作動可能に結合される。本発明は、また、キメラレセプターをコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含む細胞を含む。
【0151】
本発明の方法は、高スループットアッセイを含む利用可能な任意の形式で修飾または実行され得る。高スループットアッセイは、所定の期間内に数多くの試験薬剤をスクリーニングするために有用である。別の実施形態では、細胞に基づいたスクリーニングを用いるアッセイが行われる。参照することによって本明細書に援用した米国特許第6,103,479号(2000年8月15日発行)は、細胞に基づいたスクリーニング用の小規模な細胞アレイ方法および装置を開示している。方法は、均一な細胞のミクロパターンアレイの作製について、他の応用について(例えば、坑光化学フォトリソグラフィー(Mrksich and Whitesides,Ann.Rev. Biophys.Biomol.Struct.,25,55−78,(1996))記述されている。参照することによって本明細書に援用した米国特許第6,096,509号(2000年8月1日発行)は、流動する懸濁液の細胞上で試験薬剤への細胞応答の実時間測定のための装置および方法を提供する。そこでは、一連の細胞型の各メンバーの均一な懸濁液は、特定の濃度で検査化合物と組み合わせられ、検出ゾーンを通って方向づけられ、次いで検査混合物中の細胞が検出ゾーンを通って流動するにつれて、生細胞の細胞応答が実時間で測定される。この特許は、試験薬剤(例えば小分子)のライブラリーの自動スクリーニングでの装置の使用を開示している。これらの米国特許で開示される方法は、試験薬剤がRor分子の発現または活性を調節するか否かを決定するために、例えば骨芽細胞(一次骨芽細胞、ヒト骨芽細胞(例えばTE−85、U2OS、SaOS−2、もしくはHOB)、ラット骨芽細胞(例えばUMR106もしくはROS17/2.8)、マウス骨芽細胞(例えばMC3T3もしくは他)、非骨芽細胞(COS−7および他)等)、幹細胞(間葉系幹細胞、胚幹細胞)、前駆体細胞、またはRorヌクレオチド配列を含む操作された細胞等の細胞を用いて修飾され得る。さらに他の実施形態では、酵素アッセイ(例えばキナーゼアッセイ)に基づくアッセイが行われる。
【0152】
Rorタンパク質の活性を調節する際に有用であると同定された試験薬剤は、次いでさらに検査され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は他の細胞に基づくアッセイまたは非細胞に基づくアッセイで検査される。化合物は、種々の骨疾患および障害の動物モデルを含む種々の疾患の動物モデルで検査され得る。例えば、薬剤は、骨折、骨粗鬆症、骨の癌、骨量減少等の動物モデルで検査され得る。
【0153】
本発明は、分子および細胞生物学の分野で周知の方法および技法を参照することによって援用する。これらの技法は、以下の刊行物に記述される技法を含むがこれらに限定されない:Old,R.W.&S.B.Primrose,Principles of Gene Manipulation:An Introduction To Genetic Engineering(3d Ed.1985)Blackwell Scientific Publications,Boston.Studies in Microbiology;V.2:409pp.(ISBN0−632−01318−4),Sambrook,J.et al.eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,,NY,Vols.1−3(ISBN0−87969−309−6)、Miller,J.H.and M.P.Calos Eds.,Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(1987)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.169pp.(ISBN0−87969−198−0)。
【実施例】
【0154】
本発明は、さらに、特に明記しない限り、すべての部分およびパーセンテージは重量で、温度はセ氏である以下の実施例で定義される。当然のことながら、本発明の好ましい実施形態を表しながら、これらの実施例は、説明のみの目的で与えられている。上述の考察、実施形態、およびこれらの実施例から、本発明の新規の教示から実質的に逸脱することなく、ならびにその趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの修飾が典型的な実施形態で可能であることを、当業者は容易に認識する。さらに、当業者は、それを種々の用途および条件に適応させるために、本発明への種々の変更および修飾をなし得る。従って、そのようなすべの修飾は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内に含まれることを目的としている。
【0155】
本明細書で述べる特許、特許出願、検査方法、および刊行物は、それらの全体を参照することによって、本明細書で援用される。
【0156】
(一般の方法)
(物質および組織培養)
注記したところを除いて、組織細胞試薬は、Invitrogen Corporation社(カリフォルニア州カールスバッド)から購入し、他の試薬および化学薬品は、Sigma Chemkcal Co.社(ミズーリ州セントルイス)またはInvitrogen社のいずれかから購入した。組換えヒトRor2のGST標識細胞質ゾルドメインは、Invitrogen社から入手した。GST標識組換えヒト14−3−3βは、Biomol International LP社(ペンシルバニア州プリマスミーティング)製であった。坑フラッグM2マウスモノクローナル抗体、および坑フラッグ−M2親和性アガロース、および坑βアクチンマウスモノクローナル抗体は、Sigma社から入手した。坑ヒトRor2ヤギポリクローナル抗体は、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。坑14−3−3β抗体および坑ヒスウサギポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.社(カリフォルニア州サンタクルーズ)製であった。非抱合型およびアガロース結合坑ホスホチロシン抗体(4G10)は、Upstate Cell Signaling Solutions社(バージニア州シャーロッツビル)から入手した。固定化ホスホチロシン抗体P−Tyr−100は、Cell Signaling Technologies社(マサチューセッツ州ベヴァリー)製であった。たんぱく質Aセファロースおよび、グルタチオンセファロースはAmersham Biosciences社製であった。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−結合二次抗体は、サンタクルスバイオテクノジー製であった。
【0157】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Inc.社(メリーランド州バルチモア)から購入し、hMSC成長培地(MSCGM、Cambrex)を使用して、37℃で、5%CO2−95%加湿空気インキュベーターで維持した。U2OSヒト骨肉腫細胞を、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および2mMグルタマトリックス−Iを含有するマッコイ5A改変培地で、37℃で保持した。
【0158】
(プラスミドおよびアデノウイルス)
ヒトRor2フラッグ発現プラスミドの生成は、前述した(米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)。Ror2−フラッグのCOOH末端でフラッグエピトープタグを6個のヒスチジンをコードする配列と置換することによってRor2−ヒス 構築物を生成した。Ror2(GST−Ror2c)の細胞質ゾルドメインのGST融合を、GSTタグの後のフレーム内のヒトRor2(アミノ酸428〜944をコードする)の細胞内ドメインをpGEX−4T−2ベクター(Amersham社)に挿入することによって得た。
【0159】
全長ヒト14−3−3βcDNAをOpen Biosystems社(アラバマ州ハンツビル)から購入し、pET28aバクテリア発現ベクター内にサブクローニングした。
【0160】
ヒトコクサッキーアデノウイルスレセプター(hCAR)、Ror2特異的shRNA、およびEGFP特異的shRNAを含むアデノウイルスを、Galapagos Inc.社(ベルギー、メッヘレン)から入手した。Ror2、Ror2KD、およびβ−ガラクトシダーセ(β−gal)アデノウイルスの生成は記述されている(参照として本明細書に援用される,米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願))。
【0161】
(頭蓋冠の器官培養および感染)
4日齢の同腹仔のマウスから切除した頭蓋冠を矢状縫合に沿って切断し、0.1%BSAを含有する無血清BGJ培地で24時間インキュベートした。次いで、12ウェルプレートのウェル内のステンレス鋼製グリッド(Small Parts Inc.社、フロリダ州マイアミ)の上に各半頭蓋冠を、凹面を下に向けて置いた。各ウェルには、β−galもしくはRor2アデノウイルス(3.75百万ウイルス粒子/ウェル)を添加または無添加で、1%ウシ胎児血清(FBS)を補充した1mlのウシ血清アルブミン(BGJ)培地が含まれていた。5%CO2−95%加湿空気式のインキュベーターで頭蓋冠をインキュベートし、4日後に培地およびアデノウイルスを交換した。
【0162】
アデノウイルス存在下での7日間のインキュベーションの後、10%中性リン酸緩衝ホルムアルデヒド溶液中で頭蓋冠を室温で72時間固定し、次いで、PBS中の10%EDTA溶液で6時間脱灰した。各群の頭蓋冠を同じパラフィンブロックに平行に埋め込んだ。4μmの切片をヘマトキシリン−エオシンで染色した。着実な骨面積(前頭縫合から200μm離れた)を、組織形態計測解析用に選択した。手短に言うと、200μmの正方格子を各頭蓋冠の上に置き、骨芽細胞の数と全骨面積を骨測定装置(Osteometries Inc.社、ジョージア州アトランタ)で決定した。骨表面上のすべての細胞を骨芽細胞としてカウントした。カルシウム診断キット(Sigma社)を用いて、製造者のプロトコールに従って培地のカルシウムを測定した。
【0163】
(ウイルス感染)
ヒトMSCを12ウェルまたは6ウェルプレートに6,000/cm2で播種して付着させ、一晩、増殖させた。感染効率を向上させるために、hCAR(感染多重度(MOI)=750)の存在下でMOI=750でRor2、Ror2KD、またはβ−galアデノウイルスを用いて、細胞を0.4ml/cm2のMSCGM(間葉系幹細胞用培地)で24時間感染させた。24時間後、細胞をPBSおよびMSCGM中で1回洗浄し、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロリン酸を補充したMSCGM、または脂肪生成補給剤(PT−3004、ケンブレックス)を含有するMSCGMを加えた。必要とする場合、100nMデキサメタゾン(dex)および/または表示した抗体を培地に加えた。shRNA感染のため、12ウェルまたは6ウェルプレートに6,000/cm2で細胞を播種して付着させ、3日間増殖させた。hCAR(MOI=750)の存在下で、Ror2特異的shRNA、またはEGFP特異的shRNAをコードするアデノウイルスを細胞あたり(最初に播種密度に基づく)4,000ウイルス粒子を用いて0.4ml/cm2のMSCGM中で細胞を72時間感染させた。72時間後、細胞をPBSおよびMSCGM中で1回洗浄し、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロリン酸を補充したMSCGMを加えた。必要とする場合、100nMのdexおよび/または特定の抗体を培地に加えた。5日毎に、全培地またはその半分を新しい培地と交換した。
【0164】
U2OS細胞を6ウェルプレートに75,000/cm2で播種し、24時間後にRor2、Ror2KD、またはβ−galのアデノウイルスをMOI=100で感染させた。感染を24時間続行させてから、24時間後に細胞抽出物を収集した。
【0165】
(アリザリンレッドS組織化学染色法)
hMSCによるミネラル化根粒の形成を、アリザリンレッドS組織化学染色法によって12ウェルプレート上で決定した。細胞およびマトリックスを70%(容積比)エタノールを用いて室温で1時間固定し、脱イオン化水で洗浄してから、40mMのアリザリンレッドS(pH4.2)を用いて室温で1時間染色した。染色したマトリックスを脱イオン化水で洗浄して、撮影した。アリザリンレッドS染色のレベルを定量化するために、染料を1ml/ウェルの10%(重量比)塩化セチルピリジニウムを用いて溶出した。溶出試料中のアリザリンレッドSを、ミクロプレートリーダーを用いて562nmで定量化(0〜800μM染料の対標準曲線)した。
【0166】
(オイルレッドO組織化学染色法)
オイルレッドO組織化学染色法によって12ウェルプレート上のhMSC中の脂肪生成をモニターした。10%中性緩衝ホルマリンを用いて細胞を室温で2時間固定してから、PBSで洗浄し、60%イソプロパノール(pH7)液中の18mg/mlのオイルレッドOを用いて室温で10分間染色した。染色した細胞をPBSで洗浄してから撮影した。
【0167】
(RNA単離とリアルタイムPCR解析)
RNeasyキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて、製造者の説明書に従って全細胞RNAを単離し、ABI PRISM7700配列検出装置(Applied Biosystems社、カリフォルニア州フォスターシティー)を使用してリアルタイムRT−PCR解析にかけた。すべてのmRNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子(シクロフィリンB)のレベルに標準化した。ヒトC/EBPαおよびPPARγ用のプライマーおよびプローブをアプライドバイオシステムズから購入した。ヒトシクロフィリンBのプライマーおよびプローブは以下の通りである:
【0168】
【化5】
(一過性のトランスフェクション)
Ror2プラスミドトランスフェクションのために、U2OS細胞を約80%のコンフルエント密度で播種し、24時間後に11μgの全プラスミドDNA/19.6cm2を、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science社、インディアナ州インディアナポリス)を使用して、製造者の説明書に従ってトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションのため、U2OS細胞を52,000細胞/cm2で6ウェルプレート上に蒔き、24時間後に10μlのリポフェクタミン2000試薬を用いて製造者の説明書に従って、25nMのRor2 siRNAまたは非特異的siRNA(両方ともにDharmacon Inc.社製、コロラド州ラファイエット)とトランスフェクトした。
【0169】
(免疫沈降およびウエスタン免疫ブロット)
プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社)を補充した溶解緩衝液(150mMNaCl、50mMトリスHCl、1mMEDTA、pH7.5、1%トリトンX100)で細胞を可溶化し、抽出物を10,000xg、4℃で10分間、遠心分離によって明らかにした。フラッグ免疫沈降のため、1mgの全細胞可溶化液を30μlのM2フラッグ親和性アガロース(Sigma社)を用いて4℃で1時間回転させながらインキュベートした。ビーズを遠心分離によって収集し、350mMNaClを含む溶解緩衝液中で3回洗浄して、溶解緩衝液中で3回洗浄した。14−3−3β沈降のために、15μlの14−3−3β抗体を、1mlの溶解緩衝液中で30μlのタンパク質Aセファロースを用いて、4℃で一晩インキュベートした。ビーズを遠心分離によって収集し、溶解緩衝液中で洗浄してから1mgの全細胞可溶化液を加えた。4℃で2時間穏やかに回転させながら結合反応を行った。フラッグ沈降に関してビーズを収集して洗浄した。ホスホチロシン沈殿のために、1mg(過剰発現タンパク質を検出するために)または15mg(内在性タンパク質を検出するために)の細胞抽出物を100μlのG410ビーズに加え、4℃で3時間付着させた。この時点では、P−Tyr−100固定化抗体(100μl)をこの混合に加えて、さらに3時間続行した。すべてのビーズを遠心分離によって収集し、フラッグ沈降に関して洗浄した。すべての免疫沈降反応の終了後に、ビーズを30〜50μlの還元剤(Invitrogen社)を添加した2×LDS−PAGE緩衝液中で沸騰させた。可溶化タンパク質をSDS−PAGEによって分離させた。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0170】
沈降を行わない免疫ブロットのために、全細胞可溶化液の示された量を、変性および還元条件下でSDS−PAGEによって分離し、ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0171】
(GSTプールダウンおよびインビトロキナーゼアッセイ)
14−3−3βを、Expressway(登録商標)インビトロタンパク質合成装置(Invitrogen社)を用いて製造者の説明書に従って50μl反応で、14−3−3β−pET28aからインビトロ翻訳した。pGEX−4T−2またはpGEX−4T−2(GSTだけをコードする)中のGST−Ror2cを、大腸菌(Escherichia coli)のBL21(DE3)株に形質転換した。培養物を0.7のA600に増殖し、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(Sigma社;1mMの最終濃度)を加えて、4時間のインキュベーションによって組換えタンパク質を発現するよう誘導した。細菌ペレットを遠心分離によって収集し、PBSで洗浄して、プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社)を補充した30mlのPBS中で再懸濁させた。細胞を、16,000psiでフレンチプレス(French Pressure Cell Press)(Spectronic Instruments社、ニューヨーク州ロチェスター)に2回通過させて溶解させ、細菌デブリを遠心分離によって除去した。生成されたGST−Ror2cまたはGSTタンパク質を、グルタチオンセファローセを用いて4℃で4時間インキュベートした。ビーズを洗浄し、1mlPBSで再懸濁させ、14−3−3βインビトロ翻訳反応の全50μlを4℃で4時間加えた。このインキュベーションの終了後、ビーズをPBSで3回洗浄し、還元剤(Invitrogen社)を添加した2×LDS−PAGE緩衝液中で沸騰させ、可溶化タンパク質をSDS−PAGEによって分離した。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0172】
インビトロキナーゼアッセイのために、6.5μgの精製組換えヒトGST−14−3−3β(バイオモル)を、0.9μgの精製組換えヒトGST−R2c(Invitrogen社)を添加した、または添加しない25μlのキナーゼ反応緩衝液(10mM MgCl2、50mMトリスHCl(pH7.5)、1mMジチオトレイトール(DTT)、1mM ATP)中で再懸濁させた。キナーゼ反応を、37℃で30分間続行させ、還元剤(Invitrogen社)を添加した1×LDS緩衝液中で沸騰させることによって停止させた。タンパク質を、SDS−PAGEによって分離させ、0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、ホスホチロシン抗体を用いて検出した。引き続いて、その膜を取り除き、同等の添加を確認するために14−3−3β抗体で再検出した。
【0173】
(統計解析)
データを平均値±SEとして表す。統計的有意性は、一元配置ANOVAまたはスチューデントのt検定を用いて決定した。P<0.05であるとき、結果を統計的に異なると見なした。
【0174】
(実施例1)
(内在性Ror2は、hMSC分化に関与する)
出願者は、Ror2発現がhMSCの骨形成分化の間に増加することを前述した(各々が参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19:90−101,2005)。hMSC分化の間のRor2発現の増加が骨芽細胞発生のために決定的に重要であるかを評価するために、出願者は、Ror2発現が抑制されたときにdex誘導分化を実行した。この目的を達成するために、Ror2特異的shRNAを含むアデノウイルスにhMSCを感染させた。これは、EGFP特異的対照shRNAと比較すると、実際に、Ror2タンパク質発現においてdex誘導による増加を強力に抑制した(図1A)。Ror2 shRNAへの感染は、マトリックスミネラル化を誘導するdexの性能をほぼ完全に抑止し(図1Bおよび1C)、Ror2の増加が少なくとも一部hMSCのdex誘導骨芽細胞分化を媒介することを示唆する。
【0175】
(実施例2)
(Ror2過剰発現は、hMSCの脂肪細胞への分化を抑制する)
出願者は、また、Ror2過剰発現が骨芽細胞系統へのMSCの関係づけを開始し、並びに骨芽細胞発生の初期および後期の段階で分化を促進することを前述した(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。出願者は、ここで、インドメタシンおよびIBMXを含有する脂肪生成カクテルでのインキュベーションによって誘導されるhMSCの細胞運命の交代(脂肪生成)に関するRor2の効果を評価した。ヒトMSCを、野生型Ror2またはキナーゼドメイン変異体(Ror2KD)(それぞれCOOH末端にフラッグエピトープタグを含む)をコードするアデノウイルスに感染させた。Ror2KDでは、504(推定ATP結合ドメイン内)、507、および509の位置で3つのリシンをイソロイシンと置換させることで、著しく減少したチロシンキナーゼ活性をもたらせた(HikasaらDevelopment 129,5227−5239,2002;米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)。対照のために、hMSCを同じアデノウイルスのバックグラウンドでβガラクトシダーゼ(β−gal)発現カセットに感染させた。Ror2およびRor2KD変異体は、双方とも主要な脂肪生成転写因子、CCAAT/エンハンサー−結合タンパク質α(C/EBPα)、およびペルオキシソーム増加因子活性レセプターγ(PPARγ)の発現を抑制し(図2A)、オイルレッドO陽性の脂質生成脂肪細胞を形成するhMSCの性能を著しく低下させた(図2B)。出願者の以前の結果(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号、(Billiardら、2004年4月14日出願))をまとめると、3つのデータは、Ror2が骨芽細胞発生を支持する転写因子の均衡を切り替えることによってMSCの細胞運命を変化させることを示している。
【0176】
(実施例3)
(Ror2は、マウス頭蓋冠の全骨面積を増加させる)
出願者は、次に、hMSC分化に関するRor2のインビトロ効果がエキソビボ器官培養物内で骨形成の増加に転換されるかを検査した。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨を、β−galまたはRor2アデノウイルスに非感染のままにしておくかまたは感染させた。アデノウイルスの存在下での培養の7日間後、該骨をヘマトキシリン−エオシンで染色し、200μm2の着実な切片(前頭縫合から200μm離れた)を、骨測定装置を使用して組織形態計測解析にかけた。非感染の対照条件下で、頭蓋冠の200μm2の切片には、骨面積5171±235μm2の骨面積および84±6.5の骨芽細胞が含まれていた。Ror2ウイルスの感染は、骨芽細胞の数に影響を与えることなく全骨面積で50%の増加をもたらし、Ror2が骨芽細胞を活性化して骨マトリックスをより多く生成したことを示す(図3)。
【0177】
(実施例4)
(14−3−3βは、Ror2キナーゼの最初に同定された基質である)
出願者は、質量分析法によってU2OS骨肉腫細胞内の9つの潜在的なRor2結合因子の同定について以前に報告している(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。これらのうち、14−3−3タンパク質は、細胞周期の進行および分化に関与する(Mackintosh,Biochem J 381,329−342,2004)ことを示しており、出願者は、追跡調査のために14−3−3βを選択した。最初に、免疫沈降法を用いる質量分析によって観察された相互作用を確認した。
【0178】
U2OS細胞をβ−gal、Ror2、またはRor2KDアデノウイルスに感染させ、全細胞タンパク質を単離し、坑フラッグ親和性アガロースの上で免疫沈降にかけ、続いて坑14−3−3β抗体を用いる免疫ブロットを行った(図4A、上段のパネル)。極めて少量の14−3−3βを対照条件下(β−gal感染細胞)で沈降させたが、Ror2の過剰発現時に相当量を共沈降させた。Ror2KD変異体では、複合体形成がさらに強く、キナーゼ活性が複合体解離の原因となることを示した。同じレベルの沈降を、坑フラッグ抗体を用いる免疫ブロットによって検証した(図4A、下段のパネル)。14−3−3βとRor2との間の相互作用を、14−3−3βまたは14−3−3β特異的抗体を沈降させることによって、および坑フラッグ免疫ブロットによって複合体内のRor2の存在を検証することによって、さらに検証した(図4B)。
【0179】
Ror2が14−3−3βのリン酸化を引き起こすかを評価するために、坑ホスホチロシン抗体を用いて図4Aのブロットを再検出した。この抗体は、14−3−3βと同じ分子量で移動し、野性型Ror2を発現するがβ−galまたはキナーゼ不活性変異体を発現しない細胞内だけに存在するリン酸化タンパク質を同定した(図4中段のパネル)。これは、Ror2がチロシン残基上で直接的に、または間接的に14−3−3βをリン酸化することを示唆する。坑ホスホチロシン抗体上でU2OS抽出物内のすべてのチロシンリン酸化タンパク質を免疫沈降させ、Ror2の過剰発現時にホスホ−14−3−3βの量の有意な増加を観察することによって、この仮説を確認した(図4C)。
【0180】
内在性Ror2が、図4Cで観察された14−3−3βのバックグラウンドのリン酸化を媒介するかを検査するために、U2OS細胞内のRor2発現をRor2特異的siRNAによって抑制した。図5Aに示すように、スクランブル対照siRNAと比較すると、Ror2特異的siRNAによるトランスフェクションは、結果としてRor2タンパク質発現のほぼ完全な抑制となった。Ror2発現の減少は、U2SO細胞内の14−3−3βタンパク質の量に影響を及ぼさなかったが、そのチロシンリン酸化の著しい下方制御を引き起こした(図5B)。図4Cと比較すると、14−3−3βのバックグラウンドのリン酸化の程度における明らかな増加は、ここで用いられた曝露時間が長かったことに起因する。
【0181】
Ror2の14−3−3βへの結合および14−3−3βのリン酸化が直接であるかを評価するために、組換え精製タンパク質によってインビトロ実験を行った。結合の実験のために、ヒトRor2の細胞質ゾルドメインのGST融合(GST−Ror2c)を細菌細胞で発現させ、グルタチオンセファロース上で沈降させ、インビトロ翻訳した14−3−3βを用いてインキュベートした。図6Aに示すように、GST単独には結合せずに、GST−Ror2cに結合した14−3−3βは、それがRor2の細胞質ゾルドメインに直接的に結合することを示す。インビトロで翻訳された14−3−3βは、キナーゼアッセイに不適合のExpressway(登録商標)タンパク質合成緩衝液を含んでいたので、精製組換えGST標識14−3−3βを購入し、精製組換えGST−Ror2c(Invitrogen社)を用いてインビトロキナーゼアッセイを実行した。図6Bに示すように、Ror2cは、14−3−3βおよびそれ自体の両方をリン酸化し、14−3−3βがRor2チロシンキナーゼのための直接的な基質であることを確認した。
【0182】
(実施例5)
(Ror2特異的抗体は、Ror2レセプターを二量体化して活性化する)
いくつかのレセプターチロシンキナーゼは、抗体によって二量体化されて、活性化されることが示されている(参照として本明細書に援用される、SpaargarenらJ.Biol.Chem.266,1733−1739,1991;FuhらScience 256,1677−1680,1992)。従って、ヒトRor2の細胞外ドメイン全体に対して産生されるRor2特異的抗体を、Ror2レセプターチロシンキナーゼを二量体化し、活性化するするその性能について検査した。二量体化を評価するために、フラッグ標識およびヒス標識されたRor2レセプター構築物をU2OS細胞で発現させ、その細胞を、Ror2特異的ヤギポリクローナルIgG(ヒトRor2の細胞外ドメインに対して産生されたAF2064、R&D Systems社)または非特異的ヤギIgG対照(R&D Systems社)を用いて37℃で1時間、処置した。インキュベーション後、全細胞タンパク質を抽出し、坑フラッグ親和性アガロースの上で沈降させ、坑ヒス抗体による免疫ブロットにかけた。図7Aの上段のパネルに示すように、非特異的IgG処置の対照条件下で、ヒス標識Ror2レセプターとフラッグ標識Ror2レセプターとの間にある関連があり、U2OS細胞での過剰発現時にRor2がホモ二量体を形成することを示した。このホモ二量体形成は、Ror2抗体を用いる処置時に強力に増強され、抗体がRor2レセプターを二量体化できることを確認する。Ror2−フラッグの非在化では坑フラッグ抗体は、Ror2−ヒスの免疫沈降ができず、坑ヒス抗体はRor2−フラッグタンパク質を認識しなかった(図7A、上段のパネル)という事実によってこの実験計画が検証された。同じレベルのRor2−フラッグ沈降を、坑フラッグ抗体を用いる免疫ブロットによって検証した(図7A、下段のパネル)。
【0183】
抗体がRor2チロシンキナーゼを活性化したか否かに取り組むために、Ror2特異的抗体またはIgG対照を用いてU2OS細胞を37℃で1時間処置し、全細胞タンパク質抽出物を単離して、ホスホチロシン抗体上でチロシンリン酸化たんぱく質をすべて沈降させた。図7Bは、坑Ror2抗体がRor2キナーゼの著しい自己リン酸化をもたらし、ならびにそれ自体の基質(14−3−3βタンパク質)のリン酸化をもたらしたことを示す。これらのデータは、坑Ror2抗体がRor2チロシンキナーゼレセプターを二量体化し、活性化することの強力な証拠を提供する。
【0184】
(実施例6)
(Ror2特異的活性化抗体は、hMSCミネラル化を促進する)
次に、Ror2の抗体誘導二量体化および活性化が、hMSCの骨形成分化に関して機能的意義を有するか否かに取り組んだ。hMSCは、骨形成表現型に向かって分化しない限りRor2を発現しない(参照として本明細書に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)ので、Ror2発現を、骨形成カクテル(0.05mMアスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸、および100nM dexを補充したMSCGM)を用いる処置によって誘導し、Ror2特異的ヤギIgGまたは非特異的ヤギIgGを次第に加えた。9日間のインキュベーション後、ミネラル化マトリックス形成の程度をアリザリンレッドS組織化学染色によって評価した。図8に示すように、坑Ror2抗体は、hMSC内の石灰化マトリックス形成の程度を用量依存的に増加させた。非特異的ヤギIgGは、100μg/mlの最も高い用量で観察された軽微な抑制を除いて、検査したすべての濃度でマトリックスミネラル化に関して効果をおよぼさなかった。明確にするために、非特異的IgGの用量をただ1つ(50μg/ml)図8に示す。ヒトRor1の細胞外ドメイン全体に対して産生されたヤギポリクローナル抗体(R&D Systems社、AF2000)も効果がなかった(図8)。hMSC内のRor2発現は、Ror2特異的shRNAによって抑制されたとき、坑Ror2抗体の効果が消失したので、坑Ror2抗体の効果は、Ror2レセプターを介して媒介された(図9A)。さらにまた、アデノウイルス感染を介してRor2を発現するよう細胞を誘導した場合、坑Ror2抗体は、dexの非存在下でさえも石灰化マトリックス形成を誘導した(図9B)。従って、Ror2特異的抗体は、Ror2レセプターの二量体化、活性化が可能であり、間葉系幹細胞でRor2媒介による石灰化マトリックス形成を促進することが可能であり、活性化Ror2抗体が骨粗鬆症および他の骨疾患に効果的な処置を提供し得ることを示唆する。
【0185】
(実施例7)
(14−3−3βの抑制は、hMSCミネラル化を増強する)
14−3−3βが骨形成分化に関与しているかを検査するために、Ror2過剰発現の非存在下および存在下で14−3−3β発現を抑制した。この目的を達成するために、スクランブル対照shRNAと比較すると、実際に内在性タンパク質を強力に下方抑制する14−3−3β特異的shRNAにhMSCを感染させた(図10A)。hMSCを、スクランブルshRNAおよびβ−ガラクトシダーゼを含む2つの対照ウイルスに感染させたとき、低い程度のマトリックスミネラル化を観察した(図10B)。これは、それ自体による二重感染がhMSC培養物中で軽度の骨形成を媒介することを示唆する。以前に観察されたように(米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))、Ror2アデノウイルスによる感染は、ミネラル化マトリックスの形成を強力に促進する。驚いたことに、14−3−3βの下方制御も、ミネラル化の程度を大きく増加させる(図10B)。Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、どちらか単独よりも、共により強いマトリックスミネラル化を誘導する(図10B)。これは、14−3−3βスカフォールドタンパク質がhMSCの骨形成分化に対して抑制効果を与えることを示唆する第一の証拠である。
【0186】
(実施例8)
(抗体誘導Ror2活性化および14−3−3β抑制は、エキソビボ頭蓋冠培養物で新規骨形成を促進する)
次に、Ror2活性化および14−3−3β抑制のインビトロ効果がエキソビボ器官培養物での骨形成の増加に変わるかを検査した。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨をスクランブルshRNAまたは14−3−3β特異的shRNAを5×107ウイルス粒子/mlで含有するアデノウイルスに感染させ、次いで48時間後に15μg/mlのカルセインの存在下で12μg/mlの坑Ror2抗体または非特異的IgGで処置した。アデノウイルスおよび抗体を用いる培養の7日間後に、骨をヘマトキシリン−エオシンで染色し、着実な300μmの伸展(前頭縫合から450μm離れた)をBioquant−NOVA MR5.50.8(テネシー州ナッシュビル)を使用して組織形態計測解析にかけた。スクランブルshRNA感染およびIgG処置の対照条件下で、600μm長の頭蓋冠は、9394±1333μm2の骨面積および39.5±7.4の骨芽細胞を含有していた。特異的shRNAによる14−3−3βの抑制は、全骨面積で60%の増加、骨芽細胞数で50%の増加をもたらし、14−3−3βタンパク質が骨芽細胞数および/または活性を抑制することを示した(図11)。坑Ror2抗体を用いる頭蓋冠骨の処置は、骨芽細胞数で85%の増加および全骨面積で50%の増加をもたらし、ここでも活性化Ror2抗体が骨粗鬆症および他の骨疾患に有効な処置を提供し得ることを示唆した。しかしながら、14−3−3βshRNA感染をRor2抗体処置と組み合わせることは、相加効果を生成せず、いずれか単独の処置と比較して、若干反応が少ない結果とさえなった(図11)。経験上、観察された50〜80%の増加は、このアッセイ系の飽和には達していないので、Ror2および14−3−3βの双方が骨芽細胞分化および/または機能を制御する同じ経路にあると推測したくなる。
【0187】
(実施例9)
(Ror2活性のための高スループット、高感度アッセイの開発)
図12Aに示すように、このアッセイは、特徴がはっきりしたTrkBレセプターシグナル伝達経路を利用する。TrkBレセプターは、標的遺伝子のプロモーター内にErkのリン酸化およびcAMP応答エレメント(CRE)の刺激を引き起こすリガンド誘導性ホモ二量体化によって活性化される。出願者は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合したRor2(アミノ酸1〜407)の細胞外ドメインからなるキメラレセプターを生成した。このキメラを使用すると、Ror2二量体化をもたらす薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化し、CREプロモーター活性の増加をもたらすと仮定される。この仮説を検証するために、キメラレセプターを、Dr.Seongeun Cho(Wyeth Research社、ニュージャージー州プリンストン)から入手したCRE−ルシフェラーゼプラスミド(HEK−CRE)を過剰発現するHEK293A細胞に安定的にトランスフェクトした。pcDNA3.1(+)−hygro中のRor2−TrkBキメラを、ECM600電気穿孔装置(BTX社、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてHEK−CRE細胞に電気穿孔処理し、ハイグロマイシン耐性細胞の単離コロニーが形成されるまでこの細胞を350μg/mlハイグロマイシンで増殖させた。コロニーをトリプシン処理して、96ウェルプレートの1ウェルごとに1コロニーを移した。コロニーを350μg/mlのハイグロマイシンを用いて37℃で増殖させ、Ror2−TrkB発現のレベルをウエスタン免疫ブロットおよび免疫細胞化学によって評価した。Ror2−TrkBキメラを発現させたHEX−CRE細胞を、Ror2を二量体化することが以前に示された坑Ror2抗体を用いて処理した(実施例5を参照)。図12に示すように、非特異的IgGで処置した細胞と比較して、Ror2特異的抗体は、観察されたルシフェラーゼ活性において強い用量依存性増加を引き起こした。このように、出願者は、Ror2の二量体化および活性化を誘導する薬剤(小分子、ペプチド、タンパク質、または抗体を含むがこれらに限定されない)の性能を測定する迅速で高スループット、かつ高感度のアッセイを開発した。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、下方制御するRor2発現が、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のdex誘導骨形成分化を抑制することを示す。ヒトMSCを、Ror2特異的shRNAまたはEGFP特異的shRNA(対照)を含むアデノウイルス発現ベクターに感染させ、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−グリセロリン酸(β−GP)、および100nmのデキサメタゾン(dex)を補充したMSC増殖培地(MSCGM)でインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、全細胞タンパク質抽出物(50μg/レーン)を、ローディングコントロールとして内在性Ror2タンパク質またはβアクチンを調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。11日間のインキュベーションの後、ミネラル化マトリックス形成の程度を評価するために、アリザリンレッドS染色を行い(B)、定量化した(C)。Cでは、EGFPshRNAの存在下でアリザリンレッドSが取り込まれた量を100%に設定した。BおよびCの結果は、3つの独立した実験の特徴を表す(図1を実施例1で参照する)。
【図2】図2は、Ror2の過剰発現がhMSCの脂肪細胞への分化を抑制することを示す。A.ヒトMSCを、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)、Ror2、またはRor2KDに感染させ、脂肪生成カクテルを補充したMSCGMで8日間インキュベートした。細胞RNA全体を単離し、Applied Biosystems社から入手したプライマーおよびプローブを用いて、脂肪生成転写因子C/EBPαおよびPPARγを調べるためにリアルタイムRT−PCR解析を行った。mRNAのレベルを、各試料中のシクロフィリンBの発現に標準化し、β−gal感染細胞中のmRNAの相対的発現を100%に設定した。B.ヒトMSCを、β−gal、Ror2、またはRor2KDに感染させ、脂肪生成カクテルを補充したMSCGMで21日間インキュベートし、次いでオイルレッドO染色を行った(図2を実施例2で参照する)。
【図3】図3は、Ror2タンパク質の過剰発現が全骨面積を増加させるが、新生仔マウスの頭蓋冠の骨芽細胞数を増加させないことを示す。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨を、非感染で残す(対照)か、またはβ−ガラクトシダーゼ(β)またはヒトRor2(R2)をコードするアデノウイルスに感染させた。アデノウイルスの存在下での7日間のインキュベーションの後、全骨面積および骨芽細胞数を評価する前に、頭蓋冠をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。非感染培養物で得た値を100%に設定した。結果は、状態あたり4〜5頭蓋冠の平均値∀ SE(標準誤差)(β−ガラクトシダーゼ感染と比較して、*−P<0.01)である。このグラフは、3つの独立した実験を表す(図3を実施例3で参照する)。
【図4】図4は、Ror2タンパク質がチロシン上で14−3−3βに結合し、それをリン酸化することを示す。U2OS細胞をβ−gal(β)、Ror2(R2)、またはRor2KD(KD)アデノウイルスに感染させ、24〜48時間後に、全細胞可溶化液を調製し、坑フラッグ抗体(A)、坑14−3−3β抗体(B)、または坑ホスホチロシン抗体(C)で免疫沈降させた。表示した抗体を用いる免疫ブロットによって免疫沈降を解析した(図4を実施例4で参照する)。
【図5】図5は、内在性Ror2タンパク質がインビボで14−3−3βリン酸化を媒介することを示す。U2OS細胞にRor2 siRNAまたは非特異的siRNAを一過性でトランスフェクトし、48時間後に、全細胞タンパク質抽出物を、50μg抽出物/レーンを用いて内在性Ror2タンパク質またはβアクチン(ローディングコントロール)を調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。また、該可溶化液も14−3−3β抗体(20μg/レーン)で直接的に、または坑ホスホチロシン抗体を用いる免疫沈降後に解析した(B)(図5を実施例4で参照する)。
【図6】図6は、Ror2タンパク質の細胞質ゾルドメインが14−3−3βに結合して、インビトロで直接リン酸化することを示す。A.Ror2のGST標識された細胞質ゾルドメイン(GST−R2c)またはGST単独をグルタチオンセファロースビーズに付着させ、インビトロ翻訳した14−3−3βを用いて4℃で4時間インキュベートした。結合した物質を坑14−3−3β抗体で解析した。B.インビトロキナーゼアッセイを、Ror2タンパク質の精製した組換え細胞質ゾルドメイン(Invitrogen社製GST−R2c)および精製した組換えGST−14−3−3β(Biomol,Inc.社)を用いて「一般法」に記述されるように実行した(図6を実施例4で参照する)。
【図7】図7は、Ror2特異的抗体がRor2レセプターの二量体化および活性化を引き起こすことを示す。A.二量体化を示すために、COOH終端でフラッグ(R2−F)またはヒス(R2−H)のいずれかのエピトープタグを標識したRor2発現プラスミドを用いて、U2OS細胞をトランスフェクトした。24時間後、細胞をRor2特異的ヤギポリクローナルIgGまたは非特異的ヤギIgGを用いて37℃で1時間処置し、次いで全細胞タンパク質抽出物を調製し、坑フラッグ親和性アガロースの上で免疫沈降させた。沈澱物を、坑ヒス抗体(上段のパネル)を用いて免疫ブロットによって解析した。下段のパネルは、坑フラッグ抗体を用いて沈降レベルの対照を再探索した同じ膜を示す。B.活性化を示すために、非トランスフェクトU2OS細胞を、A.のようにRor2特異的抗体または対照IgGを用いて処置した。全細胞抽出物を坑ホスホチロシン抗体の上で沈降させ、Ror2または14−3−3β抗体を用いて解析した(図7を実施例5で参照する)。
【図8】図8は、Ror2抗体がhMSCでミネラル化マトリックス形成を引き起こすことを示す。ヒトMSCを、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを含有し、非特異的ヤギIgGもしくはRor1特異的ヤギIgG(各50μg/ml)のいずれかを補充した、またはRor2特異的ヤギIgGの濃度を上げたMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色でマトリックスミネラル化の程度を評価した(図8を実施例6で参照する)。
【図9】図9は、Ror2抗体によって誘導されたhMSCミネラル化がRor2によって媒介されることを示す。A.hMSCを、Ror2またはEGFP(対照)に特異的なshRNAを含有するアデノウイルス発現ベクターに感染させ、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを補充したMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色でマトリックスミネラル化の程度を評価した。B.ヒトMSCをRor2アデノウイルスに24時間感染させ、次いで0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GP、およびRor2特異的ヤギIgGまたは非特異的ヤギIgGのいずれかを含有するMSCGMで19日間インキュベートさせて、アリザリンレッドS染色を行った(図9を実施例6で参照する)。
【図10】図10は、下方制御する14−3−3βがhMSC内でミネラル化マトリックス形成を増強することを示す。ヒトMSCを、スクランブルshRNA、14−3−3β特異的shRNA、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)過剰発現カセット、またはRor2過剰発現カセットを含有するデノウイルス発現ベクターに感染させ、次いで0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを補充したMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、50μgの全細胞タンパク質抽出物を、内在性14−3−3βタンパク質を調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。12日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色を実行し(B)、ミネラル化マトリックス形成の程度を評価した(図10を実施例7で参照する)。
【図11】図11は、Ror2抗体処置および14−3−3β下方制御がエキソビボで新骨形成を促進することを示す。マウス頭蓋冠骨をスクランブルshRNA(scr)または14−3−3β特異的shRNAを含有するアデノウイルスベクターに感染させ、48時間後に、カルセインの存在下で12μg/mlの坑Ror2抗体または非特異的IgGを用いて処置した。アデノウイルスおよび抗体による7日間のインキュベーションの後、頭蓋冠をヘマトキシリン−エオシンで染色し、全骨面積(グラフ中白の棒で示す)と骨芽細胞数(グラフ中黒の棒で示す)を決定した。感染したスクランブルshRNA培養物およびIgG処置培養物で得た値を100%に設定した。結果は、状態ごとに4頭蓋冠の平均値∀ SE(*−p<0.05)である(図11を実施例8で参照する)。
【図12】図12は、Ror2活性を調べるための高スループット、高感度アッセイの生成を示す。A.TrkBレセプターのシグナル伝達経路を利用するアッセイの模式表示。TrkBレセプターを、標的遺伝子のプロモーター内でErkのリン酸化およびcAMP応答エレメント(CRE)の刺激作用を引き起こすリガンド誘導性ホモニ量体化によって活性化させる。出願者は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合したRor2(アミノ酸1〜407)の細胞外ドメインから成るキメラレセプターを生成した。このキメラを使用するとき、Ror2二量体化を引き起こす薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化させ、次いでこの活性化は、CREプロモーター−ルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価され得る。B.HEK293細胞をRor2−TrkBキメラおよびCRE−ルシフェラーゼプラスミドを用いて安定にトランスフェクトして、表示した量の坑Ror2抗体または非特異的IgGを用いて24時間処置し、ルシフェラーゼ活性を評価した。非特異的IgGを用いた処置後に観察されたルシフェラーゼ活性を1に設定した。結果は、3つの独立した実験を表す(平均値∀ SE;n=4;*−p<0.05)(図12を実施例9で参照する)。
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、米国仮特許出願第USSN60/774,534号(2006年2月17日出願)および同第USSN60/844,239号(2006年9月13日出願)(これらは、本明細書に参考として援用される)に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
骨関連障害および疾患の話題は、ここ数年にわたり相当の注目を得ている。骨関連障害は、骨吸収と骨形成の間の不均衡に起因する骨量減少によって特徴付けられる。一生の間、骨格の骨のリモデリングは繰り返されている。このリモデリングの過程では、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成の間に繊細な均衡が存在する。軟骨内骨化および膜性骨化の両方に関与する骨芽細胞は、新しい骨の形成をもたらすマトリックスタンパク質を作る骨組織内の特殊化した細胞である。骨形成(すなわち骨形成(osteogenesis))は、骨格の骨量を維持するために必須である。骨芽細胞とは異なり、破骨細胞は、骨吸収および除去に関連する。正常な骨では、骨芽細胞に媒介される骨形成と破骨細胞に媒介される骨吸収の間の均衡は、調節された複合相互作用を通して維持される。
【0003】
骨格系と関連する多くの欠乏症、疾患、および障害がある。数例として以下を含むがこれらに限定されない:骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損(bone segmental defect)、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、骨化過剰症、ならびに大理石骨病。骨形成分化および再生の過程に関与する機構を同定することは、骨生理学および骨粗鬆症等の骨障害を理解するために重要である。これらの障害は、推定される骨芽細胞の前駆体の不完全な成熟化に起因する欠損した骨形成に関係している可能性がある。
【0004】
骨吸収および骨形成に関連する疾患および障害を処置する方法、骨形成を促進する方法、骨形成を調節する(増加または低下させる)薬剤を同定する方法、骨吸収を調節する(増加または低下させる)薬剤を同定する方法、ならびに骨関連障害に関連する遺伝子またはそれらのタンパク質産物を同定する方法を開発する必要がある。
【0005】
骨形成および骨吸収に関与する機構を同定することは、骨生理学および骨粗鬆症等の骨障害を理解するために重要である。骨関連障害に関連する遺伝子またはそれらのタンパク質産物は、骨形成、骨吸収の分子機構の解明で、新規薬物のスクリーニングおよび開発で、骨発育障害および骨減少障害の診断、予後、予防、および処置で、ならびに骨粗鬆症等の骨関連障害の治療評価で使用され得る。同定される遺伝子およびタンパク質は、また、骨形成を調節する医薬品の探索で有用であり得る。最近、同定されたそのようなタンパク質の1つは、Ror2タンパク質である。Ror2遺伝子発現の下方制御は、ヒト間葉系幹細胞のデキサメタゾン誘発骨形成分化(図1)を抑制するのに対して、Ror2過剰発現は、これらの細胞の骨形成分化を促進する(参照として本明細書に援用される、米国特許出願第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。従って、Ror2およびRor2経路は、骨形成を調節するための適切な標的である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、骨形成を調節するための系を提供する。この系は、骨芽細胞分化におけるRor2の役割の発見に基づいている。特に、Ror2タンパク質の活性化は、ミネラル化骨形成につながる。Ror2発現は、間葉系幹細胞の骨形成分化において重要であることが分った。Ror2過剰発現は、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化(adipogenic differentiation)を抑制することも分った。Ror2タンパク質の活性化が14−3−3βのリン酸化につながることも分った。14−3−3βの下方制御は、ヒト間葉系幹細胞でミネラル化マトリックス形成を増加させることが分った。Ror2タンパク質、14−3−3βタンパク質とのその相互作用、および14−3−3βの下方制御に関連するこれらの発見は、骨形成を調節する新規薬剤の探索において、Ror2、14−3−3β、および他の下流シグナル伝達生体分子を主要な標的にする。Ror2タンパク質を活性化させ、14−3−3βタンパク質を抑制し、または他の下流標的の活性を調節する薬剤は、骨関連障害、特に、骨量減少に関連する障害の処置と予防において有用である。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進する際に、およびミネラル化マトリックス形成を促進する際に有用である。あるいは、これらの薬剤は、また、幹細胞の脂肪細胞への分化の抑制に有用性を見出すことが可能であり、肥満症、代謝障害、または糖尿病の処置で有用になり得る。
【0007】
本発明は、Ror2タンパク質を活性化する薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こし、それによってRor2活性化をもたらす。Ror2タンパク質の二量体化は、キナーゼ活性の増加およびそれに続く、14−3−3βタンパク質を含むRor2の結合パートナーのリン酸化をもたらす。薬剤は、また、骨成長の促進をもたらす。
【0008】
別の態様では、本発明は、14−3−3(具体的には14−3−3βまたは14−3−3γ)の活性を抑制または下方制御する薬剤を提供する。これらの薬剤は、DNAまたはタンパク質のレベルで作用し、細胞内の14−3−3の活性を低減させ得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、骨芽細胞、間葉系幹細胞、胚幹細胞、胎生幹細胞、骨前駆細胞、前骨芽細胞、成熟骨芽細胞、または骨芽細胞系列の他の任意の細胞等の骨形成に関与する細胞を標的にする。他の実施形態では、薬剤は、脂肪細胞形成に関与する細胞を標的にする。例えば、薬剤は、骨を標的にするために、ビスホスホネート部分に結合され得る。14−3−3βの下方制御は、ミネラル化マトリックス形成を増加させることが分った。14−3−3または14−3−3の特異的アイソフォームを標的にする薬剤は、Ror2タンパク質を活性化する薬剤(例えば、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす薬剤)と併用して使用され得る。そのような組み合わせは、骨形成を促進する際に相乗効果を有し得る。
【0009】
別の態様では、本発明は、骨形成を調節する際に重要であることが判明したRor2/14−3−3β経路の他の下流エレメントを調節する薬剤を提供する。これらの薬剤は、単独でまたは本明細書に記述する他の薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0010】
本発明の薬剤は、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、および小分子が好ましいが、いかなる種類の化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を促進する抗体またはそのフラグメントである。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得るが、しかしヒト被験体の処置のためにヒト化モノクローナル抗体が通常好まれる。抗体またはそのフラグメントは、任意のアイソタイプであり得るが、しかしIgGアイソタイプが概して好まれる。いくつかの実施形態では、薬剤はRor2タンパク質へ向けられる二価抗体または多価抗体フラグメントである。他の実施形態では、薬剤は、14−3−3βに特異的なRNAi、siRNA、またはshRNA構築物である。
【0011】
1つの態様では、Ror2タンパク質を活性化する薬剤、または14−3−3β活性を抑制する薬剤は、骨形成を促進するために被験体に投与される。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質を活性化する薬剤と14−3−3β活性を抑制する薬剤とを組み合わせて、被験体に投与される。具体的には、薬剤の投与は、骨芽細胞分化を促進させ、および/またはミネラル化マトリックス形成を増加させる。被験体は、骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、および骨化過剰症を含むいかなる骨関連障害を患い得るまたは危険性を有し得る。薬剤は、特に、骨量減少に関連する疾患の処置に有用である。1つの態様では、薬剤はRor2タンパク質の二量体化を促進させ、それによってRor2タンパク質を活性化させる。薬剤は、いかなる種類の化合物でもよいが、しかしながら、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、およびペプチドが特に有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質へ向けられる抗体または抗体フラグメントである。例えばクローン病および多発性硬化症等のヒト疾患の処置におけるヒト化モノクローナル抗体の使用の成功を考えると、ヒト化モノクローナルが通常好まれる。いくつかの実施形態では、薬剤は、14−3−3発現、具体的には14−3−3βまたは14−3−3γの発現を下方制御する。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3βに特異的なRNAi、shRNA、またはsiRNAである。本発明の薬剤は、また、脂肪細胞分化の犠牲によって骨芽細胞分化を促進することにより肥満症、代謝障害、または糖尿病を処置するために使用され得る。
【0012】
別の態様では、骨芽細胞分化または骨形成分化を促進するために、細胞は、Ror2タンパク質を活性化する、または14−3−3β活性を抑制する薬剤と接触する。接触する細胞は、通常は、Ror2タンパク質または14−3−3βタンパク質を発現し、かつ骨芽細胞表現型への分化を起こすことが可能である。いくつかの実施形態では、細胞は、例えば間葉系幹細胞等の幹細胞である。細胞は、インビボまたはインビトロで薬剤と接触し得る。細胞は、また、エキソビボで薬剤と接触し、次いでそれを必要とする被験体(例えば、骨関連障害、特に骨量減少と関連する障害を患う被験体)に導入され得る。
【0013】
Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、脂肪細胞への分化を抑制することも分った。従って、Ror2タンパク質を活性化し、または14−3−3β活性を抑制する薬剤は、また脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である。本発明の薬剤は、従って、幹細胞(例えば間葉系幹細胞)の脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である。この発見に基づいて、Ror2活性因子または14−3−3β下方制御因子は、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置または予防に有用になり得る。
【0014】
本発明は、また、Ror2活性もしくは発現を調節する、または14−3−3βタンパク質のリン酸化を調節する薬剤を同定するための系を含む。スクリーニング系は、Ror2タンパク質を薬剤と接触させること、およびRor2活性または発現に関する薬剤の効果を検出することを含む。Ror2活性または発現の増加の検出は、骨形成を促進する、骨芽細胞分化を促進する、または脂肪細胞への分化を抑制する際に有用である薬剤を示す。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質の活性は、Ror2タンパク質の二量体化の程度を決定することによってアッセイされる。他の実施形態では、Ror2活性は、Ror2タンパク質それ自体のまたは14−3−3βのリン酸化状態を決定することによって評価される。他の実施形態では、Ror2キナーゼ活性は、例えば32PγATPまたは坑ホスホチロシン抗体を用いる免疫沈降法を用いて、測定される。いくつかの実施形態では、アッセイは、Ror2タンパク質を発現する細胞を用いる細胞に基づくアッセイである。他の実施形態では、アッセイは無細胞であり、精製または半精製のRor2タンパク質が使用される。本発明のスクリーニング方法を用いて同定される薬剤およびその医薬組成物は、本明細書に記述する本発明の治療法において特に有用である。
【0015】
本発明は、また、Ror2タンパク質の二量体化を促進する薬剤を同定するためのアッセイ法を提供する。このアッセイ法は、特に、見込みのある大量の化合物をスクリーニングするための高スループット技法を受け入れられる。Ror2タンパク質の細胞外ドメインから成るキメラレセプターは、TrkBの細胞内ドメインに融合する。細胞外Ror2ドメインを二量体化する薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化させ、CREプロモーター活性の増加をもたらす。CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子は、次いで、Ror2を二量体化する化合物を同定するために使用され得る。Ror2−TrkBキメラアッセイは、Ror2を二量体化することが以前に示された坑Ror2抗体を用いて検証されている。Ror2特異的抗体は、非特異的IgG(図12を参照)で処置された細胞と比較するとき、観察されたルシフェラーゼ活性において用量依存性増加を引き起こす。このアッセイ法は、Ror2を活性化させる薬剤を同定するために、迅速な高スループット、かつ高感度のアッセイを提供する。当業者によって認識されるように、TrkB以外の他の細胞内ドメインは、キメラを調製するために使用され得る。レポーター遺伝子に作動可能に結合された異なるプロモーターは、次いでアッセイで必要になることもある。Ror2の活性化因子または二量体化因子として本発明のアッセイによって同定される薬剤は、また本発明の一部として考えられる。
【0016】
本明細書は、以下の詳細な説明および本願の一部を形成する添付の図面からより十分に理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(定義)
以下の定義は、本明細書で使用される用語および略語を完全に理解するために提供される。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「1つの」、「その」は、文脈が明確に示さない限り、複数形の参照を含む。従って、例えば「1つの細胞」の参照は、複数のそのような細胞を含み、ならびに「1つの抗体」の参照は、1つまたは複数の抗体および当業者には周知のそれに相当するもの等の参照である。
【0019】
明細書における略語は、以下のように測定、技法、特性、または化合物に関する単位に対応する:「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「℃」はセ氏温度を意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、[l]はリットルを意味し,「ml」はミリリットルを意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「pl」はピコリットルを意味し、「M」はモルを意味し、「mM」はミリモルを意味し、「mmole」はミリモルを意味し、「kb」はキロベースを意味し、「bp」は塩基対を意味し、および「RT」は室温を意味する。
【0020】
「高速液体クロマトグラフィー」はHPLCと省略される。
【0021】
「読み取り枠」はORFと省略される。
【0022】
「質量分析」はMSと省略される。
【0023】
「タンデム質量分析」はMS/MSと省略される。
【0024】
「ポリアクリルアミドゲル電気泳動」はPAGEと省略される。
【0025】
「ポリメラーゼ連鎖反応」はPCRと省略される。
【0026】
「逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応」はRT−PCRと省略される。
【0027】
「ドデシル硫酸ナトリウム」はSDSと省略される。
【0028】
「ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動」はSDS−PAGEと省略される。
【0029】
「アデニンヌクレオチドトランスロケーター2」は、ADP/ATP担体タンパク質と省略される。
【0030】
「骨塩量」はBMDと省略される。
【0031】
「リボソームRNA」はrRNAと省略される。
【0032】
「非翻訳領域」はUTRと省略される。
【0033】
本開示と関連して、多数の用語が利用される必要がある。本明細書で使用されるように、用語「Ror」は、レセプターチロシンキナーゼ様オーファンレセプターのファミリーを言う。「Ror分子」は、Rorポリペプチド、Rorタンパク質、Rorペプチド、そのフラグメント、変種、および変異体、ならびにRorポリペプチド、Rorタンパク質、Rorペプチド、そのフラグメント、変種、および変異体をコードする核酸を言う。「Ror分子」は、また、Rorポリヌクレオチド、その遺伝子、および変種と変異体を言う。「Ror分子」および「Ror」は、Ror1分子およびRor2分子の両方を言う。
【0034】
「標的Ror分子」は、その活性が本発明の薬剤によって調節されるRor分子を言う。標的Ror分子は、Rorポリペプチド、その相同体、誘導体、またはフラグメント、または変種または変異体であり得る。目的のRor分子は、また、核酸(RNAもしくはDNAのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)であり得る。例えば、Ror遺伝子のタンパク質が実験で目的である場合、標的Ror分子はタンパク質である。当然のことながら、用語「標的Ror分子」は、タンパク質のエピトープ等の全長分子ならびにそのフラグメント、変種、および変異体を言う。標的Ror分子は、Ror1分子もしくはRor2分子のいずれか、または両方であり得る。いくつかの特定の実施形態では、標的Ror分子はRor2タンパク質である。
【0035】
用語「14−3−3」は、シグナル伝達に関与するタンパク質のファミリーを言う。14−3−3タンパク質は、多数の結合パートナーを有し、数多くの多様な細胞プロセスの群に関与する。14−3−3タンパク質は、それらの標的と結合することによってそれらの効果を及ぼし、(1)立体構造変化、(2)配列特異的な特徴または構造タンパク質の特徴の物理的妨害、および/または(3)スカフォールディングを引き起こす。14−3−3タンパク質の構造および機能に関するいくつかの総説は、以下を含む:Bridges and Moorhead、「14−3−3 Proteins:A Number of Functions for a Numbered Protein」,Sci.STKE re10,2004;Mackintosh,「Dynamic interactions between 14−3−3 proteins and phosphoproteims regulate diverse cellular processes」,Biochem.J.381:329−42,2004。これらの総説の各々を参照することによって本明細書に援用する。「14−3−3」は、14−3−3ポリペプチド、14−3−3タンパク質、14−3−3ペプチド、およびその14−3−3フラグメント、14−3−3変種、または14−3−3変異、ならびに14−3−3ポリペプチド、14−3−3タンパク質、14−3−3ペプチド、およびその14−3−3フラグメント、14−3−3変種、14−3−3変異をコードする核酸を言うこともある。14−3−3のいくつかのアイソフォームは同定されており、β、ε、η、γ、τ、ζ、およびσを含む。Ror2タンパク質の活性化は、アイソフォーム14−3−3βのリン酸化を引き起こすことが分っている。14−3−3βおよび14−3−3γの両方は、Ror2と相互に作用することが分った。いくつかの例では、14−3−3βが具体的に言及される。いくつかの他の例では、14−3−3γが具体的に言及される。
【0036】
用語「核酸分子」は、一本鎖形態または二本鎖螺旋のリボヌクレオチド(RNA分子)もしくはデオキシリボヌクレオチド(DNA分子)のリン酸エステルの形態、またはいかなるリン酸ジエステル類似体を言う。二本鎖DNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNA螺旋も可能である。用語核酸分子、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次構造および二次構造を言い、何か特定の三次形態に限定するものではない。従って、この用語は、発見された二本鎖DNA、とりわけ、線状DNA分子(例えば、制限フラグメント)または環状DNA分子、プラスミド、および染色体を含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を論ずる際に、配列は、DNAの非転写鎖(すなわちmRNAと相同的な配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向に与える配列だけについて通常の慣例に従って記述され得る。
【0037】
「組換え核酸分子」は、分子生物学的操作(すなわち、非自然発生的な核酸分子または遺伝子操作されている核酸分子)が行われた核酸分子である。さらに、用語「組換えDNA分子」は、自然発生的でない、または二つの別々な核酸配列のフラグメントの人為的な組み合わせ(すなわち、本来なら連続していないDNAの切片を連結することで)によって生成され得る核酸配列を言う。「組換えで生成される」とは、化学合成手段によって、または核酸の単離されたフラグメントの人為的な操作、例えば、制限酵素、連結酵素、および類似の組み合わせ技術を用いる遺伝子操作技術(例えば、各々が参照として本明細書に援用される、Sambrookら,Molecular Cloning,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,N.Y.;(1989)、またはAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols(1989)、およびDNA Cloning:A Practical Approach,Volumes I and II(ed.D.N.Glover)IREL Press,Oxford,(1985)に記述される。)によって達成されることが多い人為的な組み合わせを意味する。
【0038】
そのような操作は、通常は、配列を認識部位に導入しながら、または認識部位で取り除きながら、1つのコドンを、そのコドンまたは保存的アミノ酸をコードする重複コドンと置換するために行われ得る。あるいは、一般的な自然形態では見出せない複数の機能を所望の組み合わせで含む単一の遺伝子実体を生成するために、所望の機能の核酸フラグメントを結合することで実行され得る。制限酵素認識部位は、そのような人為的操作の標的になることが多いが、他の部位特異的標的(例えば、プロモーター、DNA複製部位、調節配列、制御配列、読み取り枠、または他の有用な特徴)は、設計によって組み入れることが可能である。組換え核酸分子の例は、5’から3’への(センス)方向または3’から5’への(アンチセンス)方向にあるRorファミリータンパク質または免疫グロブリンタンパク質をコードするDNA配列を含有するクローニングベクターまたは発現ベクター等の組換えベクターを含む。
【0039】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、および「オリゴヌクレオチド」は、DNAおよびRNA内の一連のヌクレオチド塩基(「ヌクレオチド」とも呼ばれる)を言い、2つ以上のヌクレオチドの任意の鎖を意味する。ポリヌクレオチドは、キメラ混合物または誘導体またはその修飾されたバージョン、一本鎖または二本鎖であり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子の安定性、そのハイブリダイゼーションパラメータ等を向上させるため、塩基部分、糖質部分、またはリン酸塩バックボーンで修飾され得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、以下を含む群から選択された修飾塩基部分を1つ含み得るがこれらに限定されない:5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルケオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、および2,6−ジアミノプリン。ヌクレオチド配列は、一般的に、タンパク質および酵素を産生するための細胞機構によって使用される情報を含む遺伝情報を有する。これらの用語は、二本鎖または一本鎖ゲノムのcDNA、RNA、いかなる合成および遺伝子操作されたポリヌクレオチド、ならびにセンスとアンチセンスの両ポリヌクレオチドを含む。これは、一本鎖および二本鎖分子、すなわちDNA−DNA、DNA−RNA、およびRNA−RNAのハイブリッド、ならびに複数の塩基を1つのアミノ酸バックボーンに結合させることによって形成される「タンパク質核酸」(PNA)を含む。これは、また、修飾塩基(例えば、チオウラシル、チオグアニン、およびフルオロウラシル)を含有する核酸、または炭水化物もしくは脂質を含有する核酸を含む。
【0040】
本発明のポリヌクレオチドは、当技術分野で周知の標準方法、例えば、自動DNA合成装置(バイオサーチ(Biosearch)、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)等から販売されている装置等)を使用することによって合成され得る。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinらの方法(Nucl.Acids Res.,16,3209,(1988))によって合成されることが可能であり、メチルホスホン酸オリゴヌクレオチドは、制御されたポアガラスポリマー担体の使用(Sarinら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:7448−7451,(1988))等によって調製されることが可能である。いくつかの方法がアンチセンスDNAまたはRNAを細胞に送達するために開発されてきた。例えば、アンチセンス分子は組織部位に直接注入されることが可能であり、または所望の細胞を標的するように設計された修飾アンチセンス分子(標的細胞表面上に発現されるレセプターまたは抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体に結合されるアンチセンス)は、全身に投与され得る。あるいは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードするDNA配列のインビトロおよびインビボの転写によって生成され得る。そのようなDNA配列は、T7またはSP6ポリメラーゼプロモーター等の適切なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込む多種多様なベクターに組み込まれ得る。あるいは、使用されるプロモーターに応じてアンチセンスRNAを構成的にまたは誘導的に合成するアンチセンスcDNA構築物は、細胞系に安定に導入され得る。しかしながら、内在性mRNAの翻訳を抑制するために十分なアンチセンスの細胞内濃度を達成することは困難なことが多い。従って、好ましいアプローチは、アンチセンスオリゴヌクレオチドが強力なプロモーターの制御下に配置される組換えDNA構築物を利用することである。患者に標的細胞をトランスフェクトするためにそのような構築物を使用することは、内在性標的遺伝子転写物を用いて相補的塩基対を形成し、それによって標的遺伝子mRNAの翻訳を阻止する一本鎖RNAの十分な量の転写をもたらす。例えば、ベクターは、細胞によって取り込まれ、アンチセンスRNAの転写を方向付けるように、インビボで導入され得る。そのようなベクターは、所望のアンチセンスRNAを生成するために転写されることが可能な限り、エピソームのまま残存し得る、または染色体に組み込まれ得る。そのようなベクターは、当技術分野で標準の組換えDNA技術方法によって構築され得る。ベクターは、哺乳類細胞で複製および発現のために使用される当技術分野で周知のプラスミド、ウイルス、または他のものであり得る。アンチセンスRNAをコードする配列の発現は、哺乳類細胞で、好ましくはヒト細胞で作用するよう当技術分野で周知の任意のプロモーターによってなされ得る。そのようなプロモーターは、誘導的または構成的であり得る。そのようなプロモーターは、以下を含むがこれらに限定されない:SV40初期プロモーター領域(Bernoist and Chambon,Nature,290,304−310,(1981))、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら,Cell,22,787−797,(1980))、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78,1441−1445,(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster at al.,Nature 296,39−42,(1982))等。組織部位に直接導入され得る組換えDNA構築物を調製するために、任意の種類のプラスミド、コスミド、酵母人工染色体、またはウイルスベクターが使用され得る。あるいは、所望の組織を選択的に感染させるウイルスベクターが使用され得るが、その場合投与は、別の経路(例えば全身的に)で達成され得る。
【0041】
ポリヌクレオチドは、天然に存在する制御(発現制御)配列によって隣接され得る、またはプロモーター、配列内リボソーム進入部位(IRES)と他のリボソーム結合部位配列、エンハンサー、応答エレメント、抑制因子、シグナル配列、ポリアデニル化配列、イントロン、5’−および3’−非コーディング領域等を含む異種配列と結合され得る。核酸は、また、当技術分野で周知の多数の手段によって修飾され得る。そのような修飾の非限定的な例は、メチル化、「キャップ」、1つまたは複数の自然発生的ヌクレオチドの類似体との置換、およびインターヌクレオチド修飾(例えば、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバミン酸等)および荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等))を含む。ポリヌクレオチドは、例えば、タンパク質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシン等)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレン等)、キレート剤(例えば金属、放射性金属、鉄、酸化金属等)、およびアルキル化剤等の共有結合した1つまたは複数の付加的な部分を含み得る。ポリヌクレオチドは、メチルまたはエチルホスホトリエステルまたはアルキルホスホロアミデートの結合の形成によって誘導体化され得る。さらに、本明細書のポリヌクレオチドは、また、検出可能なシグナルを直接的または間接的に供給することが可能な標識で修飾され得る。典型的な標識は、放射性同位元素、蛍光分子、ビオチン等を含む。
【0042】
「RNA転写物」は、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写の結果生じる産物を言う。RNA転写物がDNA配列の相補的コピーであるとき、一次転写物と呼ばれるか、または一次転写物の転写後過程由来のRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンがなくて、細胞によってポリペプチドに翻訳され得るRNAを言う。「cRNA」は、組換えcDNA鋳型から転写される相補的RNAを言う。「cDNA」は、相補的でありmRNA鋳型に由来するDNAを言う。cDNAは、一本鎖であり得、または例えば、DNAポリメラーゼIのクレノウフラグメントを用いて二本鎖形状に転換され得る。
【0043】
RNAの一部に「相補的な」配列は、RNAを用いてハイブリダイズすることが可能な十分な相補性を有し、安定な二本鎖を形成する配列を言う。二本鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの単鎖は、従って、検査されることが可能であり、または三重鎖形成がアッセイされ得る。ハイブリダイズする能力は、アンチセンス核酸の相補性の程度と長さの両方に依存する。通常、ハイブリダイズする核酸が長いほど、RNAとの不適正塩基対をより多く含む可能性があるが、それでも安定な二本鎖(または場合によって三本鎖)を形成する。当業者は、ハイブリダイズされた複合体の融点を決定するために、標準的な方法を用いて不適正の許容できる程度を確認することができる。
【0044】
用語「核酸」もしくは「核酸配列」、「核酸分子」、「核酸フラグメント」、または「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「遺伝子によってコードされるmRNA」、および「cDNA」と互換的に使用され得る。
【0045】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、コード配列だけを含み得るポリヌクレオチドならびに付加的なコード配列または非コード配列を含み得るポリヌクレオチドを包含する。
【0046】
核酸分子の一本鎖形態が、温度および溶液イオン強度等の適切な条件下で他の核酸分子にアニールできるとき、核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA、またはRNA等の別の核酸分子にハイブリダイズ可能である(Sambrook, J.et al.eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols.1−3(ISBN 0−87969−309−6))。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。相同核酸の予備スクリーニングのために、55℃のTmに対応する低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、例えば5×SSC、0.1%SDS、0.25%乳、およびホルムアミドなし、または30%ホルムアミド、5×SSC、0.5%SDS等と使用され得る。中程度のストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、より高いTm、例えば5×または6×SSCで40%ホルムアミドに対応する。高ストリンジェンシー条件は、最も高いTm、例えば5×または6×SSCで50%ホルムアミドに対応する。ハイブリダイゼーションは、そのストリンジェンシーにもよるが、不適正塩基対があり得る、2つの核酸が相補的配列を含むことを必要とする。核酸をハイブリダイズするための適切なストリンジェンシーは、核酸の長さおよび相補性の程度(当技術分野では周知の可変エレメント)に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度がより大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのTm値が大きくなる。核酸ハイブリダイゼ−ションの相対的安定性(より高いTmに対応する)は、以下の順で減少する:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。ヌクレオチドの長さが100を超えるハイブリッドに関して、Tmを算出する式が導き出されている(Sambrookらeds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols.1−3.(ISBN 0−87969−309−6),9.50−9.51)。短い核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)を用いるハイブリダイゼーションに関して、不適正塩基対の位置はより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さは、その特異性を決定する(Sambrookらeds.,Molecular Cloning: A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.Vols、1−3.(ISBN 0−87969−309−6),11.7−11.8)。
【0047】
用語「相補的」は、互いにハイブリダイズすることが可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するために使用される。例えば、DNAに関して、アデノシンはチミンと相補的であり、シトシンはグアニンと相補的である。
【0048】
当技術分野で周知のように、「同一性」または「類似性」は、2つ以上のポリペプチド配列間または2つ以上のポリヌクレオチド配列間で、それらの配列を比較することで決定される関係である。当技術分野で、同一性は、また、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列間の配列の関連性の程度を意味し、場合によっては、そのような配列のストリング間の一致によって決定される。同一性と類似性の両方は、以下に記述されるように周知の方法で容易に算出され得る:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje, G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.eds.,Humana Press,New Jersey,1994;ならびにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991。配列間の同一性または類似性を決定するために一般に用いられる方法は、Carillo,H.,and Lipman, D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)に開示されているものを含むが、これらに限定されない。同一性と類似性を決定する方法は、公表されているコンピュータプログラムに体系化されている。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、以下を含むがこれらに限定されない:GCGプログラムパッケージ、Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research,12(1):387(1984)、BLASTP,BLASTN、およびFASTA、Atschul,S.F.et al.,J Molec.Biol.,215,403(1990)。
【0049】
「相同性の」は、2つのポリマー(すなわちポリペプチド分子または核酸分子)間の配列類似性の程度を言う。本明細書で参照される相同性パーセンテージの数字は、2つのポリマー間の可能な最大相同性(すなわち、2つのポリマーが、一致する(相同性の)位置の最大数を有するように整列したときのパーセント相同性)を示す。
【0050】
用語「パーセント相同性」は、複数のポリペプチド間のアミノ酸配列の同一性の程度を言う。任意の2つのポリペプチド間の相同性は、どちらかの配列の所定の位置で一致するアミノ酸の総数の直接関数である。例えば、どちらかの配列のアミノ酸の総数の半分が同一の場合、その2つの配列は50%相同性を示すと言われる。
【0051】
ポリペプチドを参照するとき、用語「フラグメント」、「類似体」、および「誘導体」は、原型のポリペプチドと本質的に同一の生物学的機能または活性を保持することが可能なポリペプチドを言う。従って、活性の成熟ポリペプチドを生成するために、類似体は、前駆体タンパク質の部分を切断することによって活性化され得る前駆体タンパク質を含む。ポリペプチドのフラグメント、類似体、または誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸が保存アミノ酸残基もしくは非保存アミノ酸残基(そのようなアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされるものであり得る、またはあり得ない)と置換されるもの、または1つまたは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、またはポリペプチドの半減期を増加させるためにポリペプチドが化合物(ポリエチレングリコール等)と融合されるもの、または付加的アミノ酸がポリペプチド(シグナルペプチド等)もしくは配列(ポリペプチドもしくは前駆体タンパク質の精製のために用いられるポリヒスチジン標識等)に融合されるものであり得る。そのようなフラグメント、類似体、または誘導体は、本発明の範囲内であると見なされる。
【0052】
ポリヌクレオチド配列の「保存」残基は、比較される2つ以上の関連する配列の同じ位置に変わらずに生じる残基である。相対的に保存される残基は、配列のほかの位置で現れる残基よりもより関連する配列の間に保存されるものである。
【0053】
関連するポリヌクレオチドは、同一の残基をかなりの割合で共有するポリヌクレオチドである。
【0054】
1つのポリヌクレオチドが最終的に別のものから由来する場合、異なるポリヌクレオチドは互いに「対応する」。例えば、メッセンジャーRNAは、それから転写される遺伝子に対応する、cDNAは、逆転写反応によって、またはRNA配列の知識に基づいてDNAの化学合成によって生成されたRNAに対応する。cDNAは、また、RNAをコードする遺伝子に対応する。ポリヌクレオチドが、比較される異なる種、系統、または変種で関連するポリペプチドをコードする等の類似の機能を果たす場合、ポリヌクレオチトも互いに「対応する」。
【0055】
DNA、RNA、またはポリヌクレオチドの「類似体」は、形態および/また機能において(例えば、相補的なポリヌクレオチド配列上の塩基対への配列特異的な水素結合に関与する能力において)自然発生的なポリヌクレオチドと類似するが、例えば、異常なもしくは非自然な塩基または変化したバックボーンを保有する点でDNAもしくはRNAと異なる分子を言う。例えば、Uhlmannら,Chemical Reviews 90,543−584,(1990)を参照されたい。
【0056】
RNA、ポリペプチド、またはタンパク質等の「コード配列」または発現産物を「コードする」配列は、発現すると、そのRNA、ポリペプチド、またはタンパク質(例えば酵素)の産物をもたらす(つまり、ヌクレオチド配列は、そのポリペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列をコードする)ヌクレオチド配列である。
【0057】
アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、当業者による配列の手作業での評価によって、またはBLAST(塩基局所配列検索ツール、Altschul,S.F.,et al.,J.Mol.Biol.215:,403−410,(1993))(www:ncbi.nlm.nih.gov/BLASTも参照)等のアルゴリズムを用いるコンピュータ自動配列比較および同定によってのいずれかでポリペプチドもしくは遺伝子を推定的に同定するために、そのポリペプチドのアミノ酸配列または遺伝子のヌクレオチド配列を十分に含んでいる部分である。
【0058】
従って、ヌクレオチド配列の「実質的な部分」は、その配列を含む核酸フラグメントを特異的に同定するおよび/または単離するための配列を十分に含む。本明細書で報告されるように配列の利点を有する同業者は、現在、当業者にとって周知の目的で開示される配列のすべてあるいは実質的な部分を使用し得る。
【0059】
「合成遺伝子」は、当業者にとって周知の方法を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチドの構成エレメントから組み立てられことが可能である。これらの構成エレメントは、次いでその遺伝子全体を構築するために酵素的に組み立てられる遺伝子フラグメントを形成するために結合され、アニールされる。DNAの配列に関して、「化学的に合成される」とは、成分のヌクレオチドがインビトロで組み立てられたことを意味する。DNAの手動による化学合成は、周知の方法を用いて達成されることが可能であり、自動化学合成は、市販されている多数の装置の1つを用いて実行されることが可能である。従って、宿主細胞のコドンバイアスを反映させるために、遺伝子はヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適な遺伝子発現の目的に合わせて作られ得る。コドン使用が宿主細胞によって好まれるコドンに偏っている場合、当業者は成功する遺伝子発現の可能性を認識する。好ましいコドンを決定することは、配列情報が利用できる宿主細胞から得られる遺伝子の調査に基づくこともある。
【0060】
「遺伝子」は、調節配列の前のコード配列(5’非コード配列)および後のコード配列(3’非コード配列)を含む、特定のタンパク質を発現させる核酸フラグメントを言う。「天然の遺伝子」は、天然において見られ、それ自体の調節配列を有する遺伝子を言う。「キメラ遺伝子」または「キメラ構築物」は、天然の遺伝子ではなく、天然においては一緒に見られない調節配列およびコード配列を含む、いかなる遺伝子または構築物を言う。したがって、キメラ遺伝子またはキメラ構築物は、異なる供給源に由来する調節配列およびコード配列、または同一の供給源に由来するが、天然において見られるものと異なる形で配置される調節配列およびコード配列を含み得る。「内因性の遺伝子」は、生物のゲノム内のその自然配置の天然の遺伝子を言う。「外来」遺伝子は、通常、宿主生物では見つからないが、遺伝子導入によって宿主生物に導入される遺伝子を言う。外来遺伝子は、非天然生物に挿入される天然の遺伝子、またはキメラ遺伝子を含み得る。「導入遺伝子」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0061】
「調節配列」は、コード配列の上流(5’非コード配列)、内部、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を言う。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、およびポリアデニル化認識配列を含み得る。
【0062】
「遺伝子制御配列」は、遺伝子転写を開始するために必要なDNA配列、加えて開始を起こす割合を調節するために必要なDNA配列を言う。従って、遺伝子制御配列は、一般的な転写因子およびポリメラーゼが組み立てられるプロモーター、それに加えてそのプロモーターでこれらの組み立てプロセスの割合を制御するために、遺伝子調節タンパク質が結合するすべての調節配列から構成され得る。例えば、原核生物に適する制御配列は、プロモーター、場合によりオペレーター配列、およびリボソーム結合部位を含み得る。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー、および/またはポリアデニル化シグナルを利用することが可能である。
【0063】
「プロモーター」は、コード配列の発現または機能性RNAを制御することが可能なヌクレオチド配列を言う。一般的に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーター配列は、近位およびより遠位の上流エレメントから成り、後者のエレメントは、エンハンサーと呼ばれことが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することが可能であり、かつプロモーターの本質的なエレメントであり得る、またはプロモーターの発現レベルもしくは組織特異性を高めるために挿入される異種エレメントであり得るヌクレオチド配列である。プロモーターは、全体として天然の遺伝子に由来し得る、または天然において見られる様々なプロモーターに由来する様々なエレメントから構成され得る、または合成ヌクレオチドフラグメントを含むこともある。様々なプロモーターが、様々な組織もしくは細胞型で、または発生の異なる段階で、または異なる環境条件に応答して遺伝子の発現を方向付けることが可能であることは、当業者によって理解される。
【0064】
「3’非コード配列」は、コード配列の下流に位置するヌクレオチド配列を言い、ポリアデニル化認識配列、およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与えることができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の添加に影響を及ぼすことを特徴とする。
【0065】
「翻訳リーダー配列」は、遺伝子のプロモーター配列とコード配列との間に位置するヌクレオチド配列を言う。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列の完全にプロセシングされたmRNA上流に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAへの第一転写産物のプロセシング、mRNA安定性、または翻訳効率に影響を及ぼし得る。
【0066】
用語「作動可能に結合される」は、1つのフラグメントの機能が他によって影響されるように単一の核酸フラグメント上で2つ以上の核酸フラグメントを結合することを言う。例えば、プロモーターがコード配列の発現に影響を及ぼすことができるとき(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)、そのプロモーターは、そのコード配列と作動可能に結合される。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向で調節配列に作動可能に結合され得る。用語「骨細胞中の作動可能なプロモーター」は、骨細胞のRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーターを言う。
【0067】
「RNA転写物」は、DNA配列の転写を触媒するRNAポリメラーゼからもたらされる産物を言う。RNA転写物がDNA配列の完全な相補的コピーであるとき、それは第一転写物と呼ばれる。またはそれは、第一転写物の転写後プロセシングに由来するRNA配列であり得、成熟RNAと呼ばれる。「メッセンジャーRNA(mRNA)」は、イントロンを持たず、ポリペプチドに翻訳され得るRNAを言う。「cDNA」は、mRNAに相補的であり、かつmRNAに由来する二本鎖DNAを言う。「センス」RNAは、mRNAを含んでいるために細胞によってポリペプチドに翻訳され得るRNA転写物を言う。「アンチセンスRNA」は、標的第一転写物またはmRNAのすべてもしくは一部に相補的であり、かつ標的遺伝子の発現を阻止する(参照として本明細書に援用される、米国特許第5,107,065号を参照。)RNA転写物を言う。アンチセンスRNAの相補性は、特定のヌクレオチド配列の任意の部分(すなわち、5’非コード配列、3’非コード配列、イントロン、またはコード配列)を有し得る。「機能性RNA」は、翻訳されることがないが、細胞過程への影響を依然として有するセンスRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、または他のRNAを言う。
【0068】
用語「発現」は、本発明の核酸フラグメントに由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を言う。発現は、また、mRNAのポリペプチドへの翻訳を言う。「アンチセンス抑制」は、標的タンパク質の発現を抑制することができるアンチセンスRNA転写物の生成を言う。
【0069】
「過剰発現」は、正常な生物または非形質転換生物内で生成のレベルが限度を超える、生物内の遺伝子産物の生成を言う。「抑制」は、外来もしくは内在性遺伝子またはRNA転写物の発現を抑制することを言う。
【0070】
「変化したレベル」は、正常な生物または非形質転換生物のそれとは異なる量もしくは割合での生物における遺伝子産物の生成を言う。本発明のポリペプチドの過剰発現は、コード領域が発生の所望の段階で所望の組織内で遺伝子または構築物の発現を方向付けることができるプロモーターに作動可能に結合されるキメラ遺伝子またはキメラ構築物を最初に構築することで達成され得る。便宜上の理由で、キメラ遺伝子またはキメラ構築物は、同一の遺伝子に由来するプロモーター配列および翻訳リーダー配列を含み得る。転写末端シグナルをコードする3’非コード配列も、提供され得る。即時型キメラ遺伝子またはキメラ構築物も、遺伝子発現を促進するために1つまたは複数のイントロンを含み得る。即時型キメラ遺伝子またはキメラ構築物を含むプラスミドベクターは、次いで構築され得る。プラスミドベクターの選択は、宿主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。当業者は、キメラ遺伝子またはキメラ構築物を含有する宿主細胞の形質転換、選択、および伝播をうまく行うために、プラスミドベクターの上に存在しなければならない遺伝子エレメントについて十分に理解している。当業者は、また、異なる別の形質転換現象が発現の異なるレベルおよびパターンをもたらす(Jonesら,EMBO J.,4,2411−2418,(1985);De Almeidaら,Mol.Gen.Genetics,218,78−86,(1989))ことを認識する。従って、複数の現象は、所望の発現レベルおよびパターンを示す細胞系を得るためにスクリーニングされなければならない。そのようなスクリーニングは、DNAサザン解析、mRNA発現に関するノーザン解析、タンパク質発現に関するウエスタンまたは免疫細胞化学解析、または表現型解析によって達成され得る。
【0071】
用語「単数の変種」または「複数の変種」は、Ror分子の核酸配列またはアミノ酸配列の変形を言う。用語「変種」に包含されるのは、Ror分子のヌクレオチドおよびアミノの酸置換、添加、または欠失である。また、用語「変種」に包含されるのは、化学的に修飾された天然および合成のRor分子である。例えば、変種は、基準ポリペプチドと異なるポリペプチドを言うことが可能である。通常、基準ポリペプチドとアミノ酸配列が異なるポリペプチドと基準ポリペプチドとの間の相違は、基準のアミノ酸配列と変種が全般的に極めて類似し、および一部の領域で同一であるように限定される。変種および基準ポリペプチドは、保存的または非保存的であり得、かつ任意の組み合わせで存在し得る1つまたは複数の置換、欠失、添加、融合、および切り詰めだけがアミノ酸配列で異なり得る。例えば、変種は、例えばいくつか(50〜30個、30〜20個、20〜10個、10〜5個、5〜3個、3〜2個、2〜1個、または1個)のアミノ酸が任意の組み合わせで挿入、置換、または欠失されるものであり得る。さらに、変種は、末端欠失または内部欠失等によって基準配列よりも短いことで基準ポリペプチド配列と異なる本発明のポリペプチドのフラグメントであり得る。本発明のポリペプチドの変種は、また、例えばポリペプチド(例えば、活性の成熟ポリペプチドを生成するために前駆体部分の切断によって活性化され得る前駆体タンパク質)と同じ生物学的機能または活性を本質的に保持するポリペプチドを含む。これらの変種は、タンパク質をコードする構造遺伝子のヌクレオチド配列の相違を特徴とする対立遺伝子変異であり得、または差動スプライシングもしくは翻訳後修飾に関与し得る。変種は、また、実質的に同じ生物活性を有するが、異なる種から得られる関連タンパク質を含む。当業者は、単一のもしくは複数のアミノ酸置換、欠失、添加、または交換を有する変種を生成し得る。これらの変種は、とりわけ以下を含み得る:(i)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存もしくは非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)と置換され、そのような置換されたアミノ酸残基は遺伝暗号によってコードされる可能性があるもの、またはコードされる可能性がないもの、あるいは(ii)1つまたは複数のアミノ酸が、ペプチドもしくはタンパク質から除去されるもの、あるいは(iii)1つまたは複数のアミノ酸が、ポリペプチドもしくはタンパク質に添加されるもの、あるいは(iv)1つまたは複数のアミノ酸残基が、置換基を含むもの、あるいは(v)成熟ポリペプチドが、ポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えばポリエチレングリコール)等の別の化合物と融合するもの、あるいは(vi)付加的なアミノ酸が、例えばリーダー配列もしくは分泌配列もしくは成熟ポリペプチドの精製のために使用される配列もしくは前駆体タンパク質配列等の成熟ポリペプチドと融合されるもの。ポリペプチドの変種は、また、自然発生的な対立遺伝子変種等の自然発生的変種であり得、または自然発生することが知られていない変種であり得る。上記に定義されるそのような変種のすべては、当技術分野の教示の範囲内であると見なされる。
【0072】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離形態で提供され、および均一に精製され得る。場合によっては、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、少なくとも90%の純度、少なくとも95%の純度、少なくとも98%の純度、または少なくとも99%の純度である。
【0073】
用語「単離された」は、物質がその原型または生来の環境(例えば、それが自然発生的なものであれば、自然環境)から取り出されることを意味する。従って、生きている動物内に存在する自然発生的なポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されないが、自然系で共存する物質の一部またはすべてからヒトの介入によって分離される該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離される。例えば、「単離された核酸フラグメント」は、一本鎖もしくは二本鎖であり、場合により合成の、非天然の、もしくは変化したヌクレオチド塩基を含むRNAまたはDNAのポリマーである。DNAポリマーの形態で単離された核酸フラグメントは、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAの1つまたは複数のフラグメントが含まれ可能性があり、かつ炭水化物、脂質、タンパク質、または他の物質と組み合わせることも可能である。そのようなポリヌクレオチドは、ベクターの一部であり得、および/またはポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であり得、かつそのようなベクターまたは組成物は、それが天然において見られる環境の一部ではないベクターまたは組成物で依然として単離され得る。同様に、用語「実質的に精製された」は、天然において発生する直接の化学環境からヒトの介入を介して分離または除去された物質を言う。実質的に精製されたポリペプチドまたは核酸は、当技術分野で一般に周知の多くの技術および方法のいずれかによって得られるまたは生成され得る。
【0074】
用語「精製」は、試料中の特定の1つのポリペプチドまたは複数のポリペプチドの比活性もしくは濃度を上昇させることを言う。1つの実施形態では、比活性は、試料中の標的ポリペプチドの活性と全ポリペプチドの濃度との比率として表される。別の実施形態では、比活性は、標的ポリペプチドの濃度と全ポリペプチドの濃度との比率として表される。精製法は、当業者にとって周知の方法である透析、遠心分離、およびカラムクロマトグラフィー技法を含むが、これらに限定されない。例えば、Youngら,1997,「Production of biopharmaceutical proteins in the milk of transgenic dairy animals」,BioPharm 10(6):34−38を参照されたい。
【0075】
用語「実質的に純粋な」および「単離された」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと、天然においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドに関連しない物質との混合物を排除することを目的としていない。
【0076】
用語「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養物」は、互換的に使用され得る。これらの用語のすべては、また、任意のおよびすべての次世代であるそれらの子孫を含む。意図的なまたは偶発性の変異が原因で、すべての子孫が同一でないこともあり得ると理解される。異種核酸配列を表す文脈では、インビトロで位置付けられようとインビボで位置付けらようと、「宿主細胞」は、原核細胞または真核細胞(例えば、大腸菌(E.coli)等のバクテリア細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥の細胞、両生類細胞、植物細胞、魚細胞、および昆虫細胞)を言う。例えば、宿主(および細胞を複製することが可能ないかなる形質転換性生物を含み得る)は、遺伝子導入動物に位置付けられことが可能である。宿主細胞は、ベクターによってコードされる異種核酸を発現する複数のベクターおよび/または単数のベクターのレシピエントとして使用され得る。
【0077】
哺乳類細胞系によって産生される外来タンパク質を発現させ、回復させる一般法は、例えば、Etcheverry,「Expression of Engineered Proteins in Mammalian Cell Culture」,Protein Engineering:Principles and Practice、Clelandら,(eds.)pages 163(Wiley−Liss,Inc.1996)によって提供される。細菌系によって産生されるタンパク質を回復させる標準技法は、例えば、Grisshammerら,「Purification of over−produced proteins from E.coli cells」,in DNA Cloning 2:Expression Systems,2nd Edition,Gloverら,(eds.),pages 59−92(Oxford University Press 1995)によって提供される。昆虫細胞の形質転換およびその中の外来ポリペプチドの生成は、米国特許第5,162,222号および世界知的所有権機関公報、国際公開第94/06463号(Guarinoらら)によって開示される。バキュロウイルス系から組換えタンパク質を単離する方法は、また、Richardson(ed.),「Baculovirus Expression Protocols」(The Humana Press,Inc.1995)によって記述される。1つの実施形態では、本発明のポリペプチドは、バキュロウイルス発現系を用いて発現させることが可能である(全体を参照として本明細書に援用される、Luckowら,Bio/Technology,1988,6,47,「Baculovirus Expression Vectors:a Laboratory Manual」、O’Riellyら,(Eds.),W.H.Freeman and Company,New York,1992、米国特許第4,879,236号を参照。)。さらに、MAXBAC(登録商標)完全なバキュロウイルス発現系(Invitrogen社)は、例えば、昆虫細胞で生成するために使用され得る。
【0078】
本発明のポリペプチドは、また、特定の性質を利用することによって単離され得る。例えば、固定化金属イオン吸着(IMAC)クロマトグラフィーは、ポリヒスチジン標識を構成するそれらを含む、ヒスチジンが豊富なタンパク質を精製するために使用され得る。手短に言うと、キレートを形成するために最初にゲルを二価金属イオンで荷電する(Sulkowski,Trends in Biochem.3:1(1985))。ヒスチジンが豊富なタンパク質は、使用される金属イオンによって、異なる親和性でこのマトリックスに吸着され、競合的溶出、pHの低下、または強力なキレート化剤の使用によって溶出される。他の精製方法は、レクチン親和性クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーによるグリコシル化タンパク質の精製を含む(M.Deutscher(ed.),Meth.Enzymol.182:529(1990))。本発明の付加的な実施形態では、目的のポリペプチドと親和性標識の融合(例えばマルトース結合タンパク質、免疫グロブリンドメイン)は、精製を促進するために構築され得る。
【0079】
本発明の宿主細胞は、Rorポリペプチドの大規模な生成のための方法で使用され得る。その方法では、細胞が適切な培地で増殖され、所望のポリペプチド産物が細胞から単離されるか、または細胞が当技術分野で周知の精製法(例えば、免疫親和性クロマトグラフィー、レセプター親和性クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、サイズ排除濾過、カチオンまたはアニオン交換クロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC等を含む従来のクロマトグラフィー方法)によって細胞が増殖される培地から単離される。他の精製法は、所望のタンパク質が、特異的結合パートナーまたは薬剤によって認識される特異的な標識、ラベル、またはキレート化部分を有する融合タンパク質として発現され、精製される。精製タンパク質は、切断されて所望のタンパク質をもたらし得る、またはインタクトな融合タンパク質として残され得る。融合成分の切断は、切断プロセスの結果として付加的なアミノ酸残基を有する所望のタンパク質の形を生成し得る。
【0080】
用語「インビトロ」は、人工的な環境を言い、人工的な環境内で起こる反応またはプロセスを言う。インビトロ環境は、試験管および細胞培養物を含むがこれらに限定されない。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、動物または細胞)を言い、自然環境内で起こる反応またはプロセスを言う。
【0081】
本発明の方法は、核抽出物を含む細胞(培養細胞)および細胞可溶化物を用いてインビトロで実行され得る。骨形成を調節する薬剤を同定するために考えられる細胞の例は、頭蓋冠細胞、骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞、および多能性前駆細胞(多能性骨髄間質細胞等)を含むがこれらに限定されない。骨芽細胞および骨芽細胞の前駆細胞系の具体例は、ATCCカタログ(国際公開第01/19855号)に提供されているMC3T3−E1、C2C12、MG−63細胞、U2OS細胞、UMR106細胞、ROS17/2.8細胞、SaOS−2細胞等、ならびに以下に記述されるHOB細胞系を含む(Bodine PV,Vernon SK,Komm BS.,Endocrinology,137,4592−4604,(1996),Bodine PVN,TrailSmith M,Komm BS.,J Bone Min Res,11,806−819,(1996),Bodine PV,Green J,Harris HA,Bhat RA,Stein GS,Lian JB,Komm BS.,J Cell Biochem,65,368−387,(1997),Bodine PV,Komm BS.,Bone,25,535−43(1999),Bodine PVN,Harris HA,Komm BS.,Endocrinology,140,2439−2451,(1999),Prince M,Banerjee C,Javed A,Green J,Lian JB,Stein GS,Bodine PV,Komm BS,J Cell Biochem,80,424−40,(2001))。本発明の方法は、また、無細胞系を用いて実行され得る。
【0082】
用語「発現系」は、例えば、ベクターによって運ばれ、宿主細胞に導入される外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のために適切な条件下での宿主細胞および適合するベクターを言う。一般の発現系は、大腸菌(E.coli)宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、および哺乳類宿主細胞とベクターを含む。
【0083】
「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝的形質をもたらす、核酸フラグメントの宿主生物のゲノムへの転移を言う。形質転換した核酸フラグメントを含む宿主生物は、「遺伝子組換え」生物と呼ばれる。
【0084】
用語「分化する」は、組織または細胞の最初の型と異なる特徴または機能を有することを言う。従って、「分化」は、分化するプロセスまたは行為である。
【0085】
用語「骨芽細胞分化」は、細胞が骨芽細胞への成熟期に特殊化した機能を発達させるプロセスを言う。骨芽細胞分化は、前骨芽細胞、初期骨芽細胞と成熟骨芽細胞、前骨細胞と成熟骨細胞の各段階を含み得る(Bodine et al,Vitamins and Hormones 65,101−151(2002),SteinらEndocrine Reviews 14,424−442(1993)、およびLianらVitamins and Hormones 55,443−509(1999))。
【0086】
用語「増殖」は、類似細胞の成長および生成を言う。
【0087】
用語「表現型」は、細胞または生物の観察可能な特徴を言う。そのような観察可能な特徴は、外見ならびに細胞または生物に存在する特定の生理学的組成物のレベルを含み得る。骨芽細胞表現型は、骨に特異的な転写因子Cbfal;I型コラーゲン;アルカリホスファターゼ、オステオカルシン;および骨シアロタンパク質等のいくつかのマーカータンパク質の発現を含む。
【0088】
本明細書で使用されるように、用語「結合パートナー」または「相互作用タンパク質」は、特異性を有する別の分子を結合し得る分子(例えば抗原と抗原特異的抗体または酵素とその抑制物質として)を言う。結合パートナーは、例えば、ビオチンとアビジンまたはストレプトアビシン、IgGとタンパク質A、レセプター−リガンド結合、タンパク質−タンパク質相互作用、および相補的ポリヌクレオチド鎖を含み得る。用語「結合パートナー」は、また、細胞内でキナーゼに結合するポリペプチド、脂質、小分子、または核酸を言う。キナーゼと結合パートナーとの間の相互作用の変化は、相互作用を形成する確率の増加もしくは低下として、またはキナーゼ−結合パートナー複合体の濃度の増加もしくは低下として現れる。例えば、Ror1もしくはRor2タンパク質は、別のタンパク質もしくはポリペプチドに結合し、Ror1もしくはRor2活性を調節する結果になり得る複合体を形成し得る。
【0089】
用語「シグナル伝達経路」は、細胞内シグナルになるために細胞膜を通して細胞外シグナルを伝播する分子を言う。このシグナルは、次いで細胞応答を刺激することができる。シグナル伝達プロセスに関与するポリペプチド分子は、レセプターおよび非レセプタータンパク質チロシンキナーゼであり得る。
【0090】
「レセプター」は、通常、特異的物質を選択的に結合することを特徴とする細胞内または細胞の表面上の分子構造を言う。典型的なレセプターは、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体フラグメント、および免疫グロブリンのための細胞表面レセプターならびにステロイドホルモンのための細胞質レセプターを含む。
【0091】
用語「調節する」は、機能の抑制、増強、または誘導を言う。例えば、遺伝子発現の「調節」または「制御」は、遺伝子活性の変化を言う。発現の調節は、遺伝子活性化および遺伝子抑圧を含み得るがこれらに限定されない。「調節する」または「制御する」は、また、タンパク質、酵素、抑制物質、シグナル伝達物質、レセプター、転写活性化因子、補助因子等の生物活性を増加させる、または減少させる方法、条件、または薬剤を言う。活性のこの変化は、mRNA翻訳、DNA転写、および/またはmRNA分解もしくはタンパク質分解の増加または減少になり得、次に生物活性の増加または減少に対応し得る。そのような増強または抑制は、シグナル伝達経路の活性化等の特定の現象の発生に付随する可能性があり、および/または特定の細胞型でのみ明白である可能性がある。
【0092】
「調節活性」は、タンパク質の生物学的活性型によって調節されるいかなる活性、状態、疾患、または表現型を言う。調節は、生物学的に活性のタンパク質の濃度に影響を及ぼすことによって(例えば、発現もしくは分解を調節することによって、または例えば基質の抑制、活性化、結合、もしくは放出。化学的もしくは構造的な修飾を通して直接的なアゴニスト作用もしくは拮抗作用によって、または付加的な因子を含み得る直接的もしくは間接的な相互作用によって)影響を与え得る。
【0093】
「修飾物質」は、骨形成またはRor分子発現等の比活性の発現を変化させる任意の薬剤を言う。例えば、骨形成を調節する薬剤は、骨形成を変化させる、または変える(増加させるまたは減少させる)。修飾物質は、例えば、抗体、小分子、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質等の任意の化合物を含むことを目的とする。
【0094】
「プラズマ細胞」は、抗体(免疫グロブリン)の産生のために特殊化される成熟Bリンパ球を言う。プラズマ細胞は、まれに末梢血で見られる。プラズマ細胞は、骨髄白血球数の0.2%〜2.8%を含む。成熟プラズマ細胞は、卵型または扇型であることが多く、測定される大きさは8〜15μmである。核心は、偏心型および卵型である。
【0095】
用語「小分子」は、合成化合物もしくは自然発生的化合物(例えば、場合により誘導体化され得るペプチドもしくはオリゴヌクレオチド、天然物もしくは他のいかなる低分子量(つ上、約5kダルトン未満)の有機化合物、天然由来もしくは合成由来のいずれかの生物無機化合物もしくは無機化合物)を言う。そのような小分子は、送達可能な治療物質であり得、またはさらに送達を促進するために誘導体化され得る。
【0096】
本明細書で使用されるように、用語「誘導物質」は、骨形成またはRor分子発現の比活性を誘導する、増強する、促進する、または増加させるいかなる薬剤を言う。
【0097】
本明細書で使用されるように、用語「インヒビター」もしくは「レプレッサー」は、骨形成またはRor分子発現の比活性を阻害する、抑制する、抑圧する、または減少させるいかなる薬剤を言う。
【0098】
本明細書で使用されるように、用語「薬剤」または「試験薬剤」は、検査される任意の化合物または分子を言う。本発明の薬剤の例は、ペプチド、小分子、および抗体を含むが、これらに限定されない。薬剤は無作為に選択され得る、または合理的に選択または設計され得る。明細書で使用されるように、薬剤が、その薬剤と標的化合物または部位との間の特異的相互作用を考慮せずに無作為に選択されるとき、薬剤は、「無作為に選択される」と言われる。本明細書で使用されるように、薬剤と標的化合物または部位および/または薬剤の作用に関連する立体構造との間の特異的相互作用を考慮する非無作為な基準に基づいて薬剤が選択されるとき、薬剤は「合理的に選択または設計される」と言われる。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその免疫学的に活性な部分(例えば抗原結合部分)を言う。抗体は、自然に産生される、または全体的にもしくは部分的に合成で生成される。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例は、抗体をペプシン等の酵素で切断することによって生成され得るF(ab)、Fv、およびF(ab’)フラグメントを含む。特異的結合能力を維持するそのすべての誘導体も、この用語に含まれる。この用語は、また、免疫グロブリン結合ドメインと相同性である、または大部分は相同性である結合ドメインを有するいかなるタンパク質を包含する。これらのタンパク質は、天然源に由来し得る、または部分的にもしくは全体的に合成的に生成され得る。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。抗体は、ヒトクラス抗体(IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE)のいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。しかしながらIgGクラスの誘導体は、通常、本発明で好まれる。
【0100】
用語「抗体フラグメント」は、全長に満たない抗体のいかなる誘導体を言う。好ましくは、抗体フラグメントは、全長抗体の特異的結合能力の少なくとも重要な部分を保持する。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、およびFdフラグメントを含むが、これらに限定されない。抗体フラグメントは、任意の手段で生成され得る。例えば、抗体フラグメントは、インタクトな抗体の断片化によって酵素的にもしくは化学的に生成され得る、または抗体の部分配列をコードする遺伝子から組換えで生成され得る。あるいは、抗体フラグメントは、全体的にまたは部分的に合成で生成され得る。抗体フラグメントは、場合により単鎖抗体フラグメントであり得る。あるいは、抗体フラグメントは、例えば、ジスルフィド結合または他のより安定な結合によって結合される複数の鎖を含み得る。抗体フラグメントは、また、場合により多分子複合体であり得る。機能的抗体のフラグメントは、一般的に、少なくとも約50のアミノ酸を含み、より一般的に少なくとも約200のアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、抗体フラグメントは、少なくとも2つの抗原結合部位を有する。いくつかの好ましい実施形態では、抗体フラグメントは、正確に、2つ、3つ、4つ、または5つの抗原結合部位を有する。2つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントは、本発明で特に有用である。そのような薬剤は、多量体を形成することなくRor2を二量体化する。
【0101】
一本鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーによって互いに共有結合した可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)だけから成る組換え抗体フラグメントである。VLまたはVHのいずれかはNH2末端ドメインであり得る。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが、重大な立体的干渉なして架橋される限り、可変長および可変組成であり得る。一般的に、リンカーは、溶解性のために散在されるいくつかのグルタミン酸またはリシンの残基を有するグリシンおよびセリンの残基の伸展を主に含む。
【0102】
二重特異性抗体は、二量体scFvである。一般的に、二重特異性抗体の成分は、大部分のscFvよりも短いペプチドリンカーを有し、それらは、二量体として結合することに対する選択性を示す。
【0103】
Fvフラグメントは、非共有結合性相互作用によって結合される1つのVHドメインと1つのVLドメインから成る抗体フラグメントである。用語dsFvは、VH−VL対を安定させるために設計された分子間ジスルフィド結合を有するFvを言うために、本明細書で使用される。
【0104】
F(ab’)2フラグメントは、pH4.0〜4.5で酵素ペプシンを用いる消化によって免疫グロブリン(典型的にIgG)から得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。フラグメントは、組換えで生成され得る。
【0105】
Fabフラグメントは、ジスルフィド架橋またはF(ab’)2フラグメントの2つの重鎖をつなぐ架橋の低減によって得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。Fab’フラグメントは、組換えで生成され得る。
【0106】
Fabフラグメントは、酵素パパインを用いる消化によって免疫グロブリン(典型的にIgG)から得られるフラグメントと本質的に同等の抗体フラグメントである。Fabフラグメントは、組換えで生成され得る。Fabフラグメントの重鎖セグメントは、Fd小片である。
【0107】
本明細書で使用されるように、用語「レポーター遺伝子」は、その表現型発現が容易にモニターできる任意の遺伝子を言う。レポーター遺伝子の使用は、どの試験薬剤がシグナル伝達経路を活性化するかを決定するスクリーニングにおいて特に有用である。レポーター遺伝子は、シグナル伝達経路によって制御されるプロモーターまたは他の調節エレメントに作動可能に結合される。いくつかの実施形態では、組換えDNA構築物が作られ、そこでレポーター遺伝子が特定の目的のプロモーター領域または他の調節領域に機能的に結合し、次いでその構築物は細胞もしくは生物に形質移入される。一般的に用いられるレポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(LUC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、およびクロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)を含む。
【0108】
本明細書で使用されるように、用語「処置」、「処置すること」、および「療法」は、治療的処置および予防的処置、または予防的操作、または種々の処置(骨細胞分化もしくは骨形成を刺激する、骨障害症状の発症を延ばす、および/または骨障害の重症度および/もしくは骨障害から発症するもしくは発症すると予測されるそのような症状を低減する)を言う。これらの用語は、さらに、既存の骨障害症状を寛解させること、さらなる症状を予防すること、症状の根底にある代謝的原因を改善するもしくは予防すること、症状の根底にある代謝的原因を予防もしくは逆転させること、または骨成長を予防もしくは促進することを含む。従って、これらの用語は、骨障害、またはそのような障害を発症する可能性を有する被験体に有益な結果が与えられたことを意味する。さらに、用語「処置」は、疾患、疾患の症状、もしくは疾患に罹りやすい傾向を有す可能性のある被験体に、または被験体から単離した組織もしくは細胞系に、該疾患、該疾患の症状、もしくは該疾患になりやすい傾向を治す、治癒する、軽減する、和らげる、変化させる、改善する、寛解させる、向上させる、または影響を及ぼす目的で、薬剤(例えば、治療薬または治療的組成物)の適用または投与として定義される。本明細書で使用されるように、「治療薬」は、疾患の処置(例えば、骨形成活性を調節する、または新骨形成を誘導する)で役に立ついかなる物質または物質の組み合わせを言う。従って、治療薬は、小分子、ペプチド、抗体、リボザイム、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0109】
治療薬または治療的組成物は、また、特定の疾患の症状を予防するおよび/または低減する医薬的に許容される形状の化合物を含み得る。例えば、治療的組成物は、骨関連障害の症状を予防するおよび/または低減する医薬組成物であり得る。本発明の治療的組成物は、任意の適切な形状で提供されると考えられる。治療的組成物の形状は、投与モードを含むいくつかの要素に依存する。治療的組成物は、他の成分からの希釈剤、アジュバント、および賦形剤を含み得る。
【0110】
骨強度は、骨密度(ミネラルg/体積cm3)および骨質(ミネラル化、骨構造、骨代謝回転、微細損傷)によって決定され得る。骨強度の測定として、骨塩量(BMD)が通常使用される。例えば、骨は、そのBMDが、若い白人の成人女性の平均値以下で2.5標準偏差を超える場合、骨粗鬆症と断言され得る(世界保健機関、1994年、閉経後骨粗鬆症のスクリーニングへの骨折リスクおよびその適用の評価。テクニカルリポートシリーズ843、ジュネーブ、世界保健機関)。
【0111】
「骨組織」は、石灰化した組織(例えば頭蓋冠、脛骨、大腿骨、椎骨、歯)、骨梁、骨梁以外の空洞である骨髄腔、骨梁および骨髄腔等の外側周辺を覆う皮質骨等を言う。骨組織は、また、通常ミネラル化コラーゲンのマトリックス内に位置する骨細胞、骨細胞に栄養を供給する血管、骨髄液、滑液、骨組織に由来する骨細胞を言い、かつ脂肪骨髄も含み得る。骨組織は、全体の骨、全体の骨の部分、骨片、骨粉、骨組織バイオプシー、コラーゲン画分、またはその混合物等の骨生成物を含む。本発明の目的で、用語「骨組織」は、特に明記しない限り、ヒトまたは動物を問わず、前述の骨組織および骨生成物のすべてを包含するために使用される。
【0112】
本明細書で使用されるように、「骨関連活性」は、骨形成活性および骨再吸収活性を含む。骨形成活性は、骨芽細胞活性、骨前駆細胞からの骨芽細胞への分化、および骨芽細胞増殖を増加させることによって、骨芽細胞アポトーシスを減少させることによって、およびその任意の組み合わせによって誘導され得る。さらに、骨再吸収活性は、破骨細胞活性、破骨細胞分化と増殖を減少させることによって、破骨細胞アポトーシスを増加させることによって、およびその任意の組み合わせによって抑制され得る。骨形成活性は、種々の骨組織または細胞で誘導され得る。
【0113】
本明細書で使用されるように、語句「骨形成を調節すること」は、骨形成を増加させるまたは減少させることを言う。「骨形成の増加」は、骨芽細胞または骨芽細胞前駆体の骨部位への補充を意味し、それによって成熟してない骨芽細胞内の細胞分化および骨物質でミネラル化し、その部位で骨量を増加させるそれらのコラーゲンマトリックスの分泌をもたらす。この用語は、また、成熟骨芽細胞によるコラーゲンマトリックスの増加生成および分泌を包含する。骨形成の増加は、骨折率の減少、面骨密度の増加、ミネラル骨密度の体積増加、骨梁の結合性の増加、骨梁密度の増加、皮質密度もしくは厚さの増加、骨径の増加、および骨無機物含有量の増加から1つまたは複数によって決定され得る。骨形成の増加は、骨細胞(例えば骨芽細胞)の結合、増殖、生存、および/または分化の増加、およびそれに続く骨ミネラル化に起因し得る。
【0114】
「骨関連障害」は、骨形成および骨吸収の障害を含む。これらの疾患および状態は、以下を含むがこれらに限定されない:くる病、骨軟化症、骨減少症、骨硬化症、腎性骨異栄養症、骨粗鬆症(老人性および閉経後骨粗鬆症を含む)、パジェット病、骨腫瘍転移、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、大理石骨病、歯周炎、ならびにリウマチ関節炎および骨関節炎を併発し得る骨代謝の異常変化。これらの疾患の一部は、不十分な骨形成または骨量減少を特徴とするが、その他は、骨組織の異常な肥厚または硬化に関与する。骨の異常な肥厚を抑制することから恩恵を受ける疾患の例は、大理石骨病と骨硬化症を含むが、これらに限定されない。
【0115】
「骨関連薬剤」は、骨形成または骨吸収に影響を与える薬剤を言う。「骨関連薬剤」は、同化効果または異化効果を誘導することが可能であり、骨吸収を抑制し、骨塩量の増加をもたらすことが可能であり、骨形成を増加させ、または骨形成と骨吸収の間のバランスを維持することが可能である。
【0116】
用語「化合物」または「薬剤」は、被験体(ヒトまたは動物)に投与されたとき、局所作用および/または全身作用によって所望の薬理効果および/または生理的効果を誘導する1つの化合物または複数の化合物または物質の組成物を言うために本明細書では互換的に使用される。
【0117】
用語「被験体」は、ヒトまたは非ヒト非験者を含む任意の哺乳類を言う。非ヒト被験体は、実験動物、試験動物、畜産動物、エンターテインメント動物、またはペットを含み得る。被験体は、ヒトであり得る。被験体は、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ等の家畜であり得る。被験体は、マウス、ラット、ウサギ、サル等の実験動物であり得る。
【0118】
用語「生体試料」は、広範に定義され、いかなる細胞、組織、生体液、器官、多細胞生物等を含む。生体試料は、例えば、インビトロの細胞培養物または組織培養物に由来し得る。あるいは、生体試料は、生物または単細胞生物の集団に由来し得る。生体試料は、生骨等の生きている組織であり得る。用語「生体試料」は、また被験体から単離した細胞、組織、または生体液等の試料、ならびに被験体内に存在する試料を含むことを目的としている。すなわち、本発明の検出方法は、インビトロならびにインビボ生体試料中のRor mRNA、タンパク質、ゲノムDNA、または活性を検出するために使用され得る。例えば、Ror mRNAの検出のインビトロ技法は、TaqMan解析、ノーザンハイブリダイゼーション、およびin situハイブリダイゼーションを含む。Rorタンパク質の検出のインビトロ技法は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法を含む。RorゲノムDNAの検出のインビトロ技法は、サザンハイブリダイゼーションを含む。
【0119】
(発明の特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本発明は、骨代謝、特に骨芽細胞分化におけるRorファミリーおよびその下流シグナル伝達生体分子の役割の発見に由来する。米国特許出願連番第10/823,998号、第60/463,364号、および第60/501,340号を参照されたい。これらの各々は、参照することによって本明細書に援用される。出願者は、下方制御するRor2発現が、ヒト間葉系幹細胞のデキサメタゾン誘導骨形成分化を抑制することを発見した(図1)。対照的に、Ror2過剰発現は、ヒト間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を抑制する(図2)。出願者は、また、下方制御する14−3−3β発現が、ヒト間葉系幹細胞においてミネラル化マトリックス形成を増強することを示した(図10)。さらに、Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、いずれかの単独よりもより大きなマトリックスミネラル化を誘導する(図10)。これらの発見に基づいて、タンパク質レベルでRor2活性を調節する、または14−3−3β活性を調節する薬剤もしくはその医薬組成物は、骨疾患および/または代謝障害(肥満症もしくは糖尿病等)の処置に有用である。実際に、Ror2タンパク質の活性を増加させる薬剤は、骨芽細胞分化を促進させ、それによってミネラル化骨形成を増加させる(図8および9)。また、14−3−3β活性を抑制する薬剤は、骨芽細胞分化を促進し、それによってミネラル化骨形成を増加させる(図10)。
【0120】
1つの態様では、本発明は、Ror2タンパク質の活性を調節する(増加または減少させる)薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の活性を増加させる。他の実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の活性を減少させる。一般的に、これらの薬剤は、Ror2タンパク質の活性レベルを増加または減少させるタンパク質レベルで作用する。本明細書で述べるように、Ror2活性を増加させる薬剤は、ミネラル化骨形成および骨形成分化を促進する際に有用である。これらの薬剤は、また、脂肪細胞への分化を抑制することによって肥満症の処置に有用になり得る(図2)。特定の理論に制約されることを願わずに、Ror2活性の増加は、脂肪細胞への分化を抑制しながら、骨形成分化を促進すると思われる。
【0121】
Ror2活性を調節するこれらの薬剤は、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド等を含むいかなる種類のキメラ化合物であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤はタンパク質である。他の実施形態では、薬剤はペプチドである。さらに他の実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。さらに他の実施形態では、薬剤は、小分子(例えば、1500g/モル未満の分子量を有する)である。好ましくは、薬剤はRor2タンパク質に特異的であり、他の生体分子に結合しない。特に、いくつかの実施形態では、薬剤は、他のRorファミリーメンバーに結合しない。他の実施形態では、他の生体分子もしくはRorファミリーメンバーと交差反応性があり得るが、しかしこれらの他の分子に対する該薬剤の親和性はRor2タンパク質に対するよりも低い。
【0122】
いくつかの特定の実施形態では、薬剤は2つのRor2タンパク質の二量体化を引き起こすことで作用する。Ror2タンパク質の二量体化は、Ror2レセプターの活性化を引き起こすと考えられる。Ror2キナーゼ活性の活性化は、14−3−3βタンパク質を含むその結合パートナーのリン酸化につながる。他のRor2結合パートナーは、以下を含むがこれらに限定されない:ADP/ATP担体タンパク質、UDP−グルコースセラミドグルコシルトランスフェラーゼ様1、14−3−3タンパク質γ、リボフォリンI、アルギニンN−メチルトランスフェラーゼ1、細胞アポトーシス感受性タンパク質、NOTCH2タンパク質、およびヒト骨格筋LIMタンパク質3(参照として本明細書に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。薬剤は、一般的に、Ror2タンパク質を指向する少なくとも2つの結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質を指向する正確に2つの結合ドメインを有する(すなわち薬剤は二価である)。多価である他の薬剤も、本発明では有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質の二量体化を促進する小分子またはポリヌクレオチドである。他の実施形態では、薬剤はタンパク質またはペプチドである。
【0123】
いくつかの実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質に対する抗体または抗体フラグメント(例えば二重特異性抗体)である。抗体または抗体フラグメントは、Ror2タンパク質の任意の領域に向けられ得るが、しかし抗原結合部位は、Ror2の生物活性に(例えばキナーゼ活性)または2つのタンパク質の二量体化に干渉し得る領域に、好ましくは向けられない。抗体または抗体フラグメントによる2つのRor2タンパク質の結合は、Ror2タンパク質の二量体化およびそれによってその活性化を促進する。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る。抗体は、いかなるアイソタイプであり得るが、しかしIgGアイソタイプが、通常好まれる。抗体は、任意の種に由来し得るが、しかしヒトで用いるためには、抗体は一般的にヒト由来またはヒト化されたものである。抗体を他の種で使用する場合、抗体はその種に適合され得る。いくつかの実施形態では、抗体はヒト化モノクローナル抗体である。他の実施形態では、抗体は完全にヒト抗体である。いくつかの特定の実施形態では、抗体は完全にヒトモノクローナル抗体である。
【0124】
いくつかの実施形態では、ウサギまたは他のげっ歯類等の哺乳類を、Ror2タンパク質に由来する精製されたヒトRor2タンパク質またはペプチドで免疫することによってRor2タンパク質に対する抗体が、調製される。免疫化の後、B細胞またはプラスミド細胞等の抗体を産生する細胞は、採取されて、次いでRor2タンパク質に対する抗体の生成を選別されるハイブリドーマを調製するために使用される。いくつかの実施形態では、抗体は、Ror2タンパク質を二量体化するおよび/または活性化するそれらの性能を選別される。一旦所望の抗体を産生するB細胞が同定されると、そのB細胞は不死化され得る。結果として生じるハイブリドーマは、次いで、所望のモノクローナル抗体を生成するために使用され得る。ハイブリドーマによって生成される抗体は、さらに特徴付けられ、修飾され得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト被験体への抗体の投与が有害反応(治療抗体のクリアランスの増加から致命的なアナフィラキシーまでに及び得る)を引き起こさぬようヒト化され得る。いくつかの実施形態では、Ror2タンパク質(すなわち相補性決定領域(CDR))を認識する抗体の領域は、異なる特異性のヒト抗体のCDRを置換するために使用される。抗体を操作し調製する技法は、当技術分野では周知であり、米国特許第4,816,567号(1989年3月28日発行)、米国特許第5,078,998号(1992年1月7日発行)、米国特許第5,091,513号(1992年2月25日発行)、米国特許第5,225,539号(1993年7月6日発行)、米国特許第5、585、089号(1996年12月17日発行)、米国特許第5,693,761号(1997年12月2日発行)、米国特許第5,693,762号(1997年12月2日発行)、米国特許第5,869,619号(1991年発行)、米国特許第6,180,370号(2001年1月30日発行)、米国特許第6,548,640号(2003年4月15日発行)、米国特許第6,881,557号(2005年4月19日発行)、米国特許第6,982,321号(2006年1月3日発行)に記述されており、これらは参照することによって本明細書に援用される。他の実施形態では、抗体は、Ror2タンパク質に対してより高い特異性および/または親和性を有する抗体を得るために、進化されおよび/または修飾される。
【0125】
他の実施形態では、薬剤はRor2タンパク質に対する抗体のフラグメントを含む。Ror2タンパク質に対する抗体の1つまたは複数のフラグメントが、使用され得る。フラグメントは、一般的に、Ror2タンパク質に対する抗体親和性に関与する相補性決定領域(CDR)を含む。Ror2タンパク質を二量体化するために、Ror2タンパク質に対して少なくとも2つの結合部位が必要である。従って薬剤は、互いに結合した2つの抗体フラグメントであり得る。フラグメントは、共有結合または非共有結合され得る。例えば、薬剤は、共有結合している2つのFabフラグメントであり得る。薬剤は、また、二重特異性抗体であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、2つを超える抗体フラグメントを含み得る。例えば、薬剤は、Ror2タンパク質に対する3つ、4つ、5つ、または6つの抗原結合部位を含み得る。
【0126】
いくつかの他の実施形態では、薬剤は、Ror2タンパク質等のRorタンパク質に対する抗体の抗原結合部位を模倣するタンパク質、ペプチド、または小分子であり得る。これらの薬剤は、Ror2タンパク質に対する抗体の抗原結合部位の構造に基づいてコンピュータで設計または同定され得る。薬剤は、次いで、Ror2タンパク質を二量体化しおよび/または活性化するための薬剤の性能を評価するために種々のインビトロアッセイで検査され得る。薬剤は、また、小分子、ペプチド、またはポリヌクレオチドのライブラリーを使用する高スループットスクリーニング方法を用いて同定され得る。
【0127】
別の態様では、本発明は、Ror活性を調節する際に本発明の薬剤の使用方法を提供する。Rorタンパク質、特にRor2タンパク質の活性を調節する薬剤は、骨関連活性を調節するために有用である。これらの薬剤は、また、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置で脂肪細胞分化を調節する際に有用であり得る。骨関連活性を調節する(例えば骨形成を増強する)必要性を特徴とする多数の疾患および状態がある。最も明らかなものは骨折の症例であり、この場合、骨成長を刺激するおよび骨修復を急いで完了させることが望ましい。例えば、骨形成を増強する薬剤は、顔面再構築法または整形方法で潜在的に有用であり得る。他の骨欠損状態は、以下を含むがこれらに限定されない:骨部分欠損、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および軟骨の欠損もしくは損傷の治癒または再生等の結合組織の修復が有益である状態。また、非常に重要なものは、加齢性骨粗鬆症および閉経後のホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含む骨粗鬆症の状態である。骨成長の必要性を特徴とする他の状態は、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、糖尿病関連骨粗鬆症、廃用性骨粗鬆症、およびグルココルチコイド関連骨粗鬆症を含む。
【0128】
Ror2活性を増加させる薬剤は、ミネラル化骨形成を促進するために使用され得る。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進させるために使用され得る。骨芽細胞分化の促進は、脂肪細胞への分化の犠牲によってなされ得る。薬剤は、また、ミネラル化マトリックス形成を促進するために使用され得る。
【0129】
別の態様では、本発明は、14−3−3(例えば、14−3−3β、14−3−3γ等)の活性を調節する(増加させるまたは減少させる)薬剤を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3の活性を抑制する。他の実施形態では、薬剤は14−3−3の活性を増加させる。薬剤は、核酸またはタンパク質のレベルで作用し得る。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3βの発現を減少させる。本明細書で述べるように、14−3−3β活性を抑制する薬剤は、ミネラル化骨形成および骨形成分化を促進する際に有用である。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3γの発現を減少させる。これらの薬剤は、また、脂肪細胞への分化を抑制することによって肥満症、糖尿病、または他の代謝障害を処置する際に有用であり得る。特定の理論に制約されることを願わずに、下方制御する14−3−3、特に14−3−3βの発現は、脂肪細胞への分化を抑制しながら、骨形成分化を促進すると思われる。
【0130】
14−3−3活性を調節するこれらの薬剤は、小分子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド等を含む任意の種類のキメラ化合物であり得る。いくつかの実施形態では、薬剤はタンパク質である。他の実施形態では、薬剤はペプチドである。さらに他の実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。さらに他の実施形態では、薬剤は小分子である。いくつかの実施形態では、薬剤はポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、薬剤はDNAである。他の実施形態では、薬剤はRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3特異的RNAiである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的RNAiである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3特異的siRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的siRNAである。いくつかの特定の実施形態では、薬剤は14−3−3特異的shRNAである。いくつかの実施形態では、薬剤は14−3−3β特異的shRNAである。他の実施形態では、薬剤は14−3−3γに特異的である。特に、いくつかの実施形態では、薬剤は、具体的には間葉系幹細胞または骨芽細胞等の骨細胞に見られる14−3−3を標的にする。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤は標的部分を含む。いくつかの実施形態では、標的薬剤は、ビスホスホネートまたは他の骨組織標的薬剤である。
【0131】
別の態様では、本発明は、14−3−3活性を調節する際に本発明の薬剤を使用する方法を提供する。14−3−3の活性を調節する薬剤、特に14−3−3βは、骨関連活性を調節するために有用である。これらの薬剤は、また、肥満症、糖尿病、または他の代謝障害の処置で脂肪細胞分化を調節する際に有用であり得る。骨関連活性を調節する(例えば骨形成を補強する)必要性を特徴とする多くの疾患および状態がある。最も明らかなものは骨折の症例であり、この場合、骨成長を刺激するおよび骨修復を急いで完了させることが望ましい。例えば、骨形成を増強する薬剤は、顔面再構築法または整形方法で潜在的に有用であり得る。他の骨欠損状態は、以下を含むがこれらに限定されない:骨部分欠損、歯周病、転移性骨疾患、溶骨性骨疾患、および軟骨の欠損もしくは損傷の治癒または再生等の結合組織の修復が有益である状態。また、非常に重要なものは、加齢性骨粗鬆症および閉経後のホルモン状態に関連する骨粗鬆症を含む骨粗鬆症の状態である。骨成長の必要性を特徴とする他の状態は、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、糖尿病関連骨粗鬆症、廃用性骨粗鬆症、およびグルココルチコイド関連骨粗鬆症を含む。
【0132】
14−3−3活性を減少させる薬剤は、ミネラル化骨形成を促進するために使用され得る。これらの薬剤は、また、骨芽細胞分化を促進するために使用され得る。骨芽細胞分化の促進は、脂肪細胞への分化の犠牲でなされ得る。薬剤は、また、ミネラル化マトリックス形成を促進するために使用され得る。
【0133】
本発明の方法における使用のための薬剤は、被験体への投与に適する医薬組成物に組み込まれ得る。本明細書で使用されるように、薬剤は、Ror分子(例えばRor2タンパク質)活性または14−3−3活性(例えば14−3−3β、14−3−3γ)を調節することを同定された任意の化合物(例えば、小分子、経口で有効な分子、有機分子、タンパク質、免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、ペプチド)であり得る。そのような組成物は、一般的に、化合物および医薬的に許容される担体を含む。本発明の組成物は、骨関連活性を調節することが知られている1つまたは複数の薬剤の組み合わせで、1つまたは複数の薬剤を含有し得る。例えば、Ror活性を促進するまたは14−3−3活性を抑制する薬剤は、エストロゲン、ビスホスホネート、または組織選択的エストロゲン(すなわち、選択的エストロゲンレセプター修飾物質(SERM))等の骨吸収を抑制する薬剤と組み合わせられ得る。本発明の薬剤は、骨形成を促進する他の薬剤と組み合わせられ得る。
【0134】
1つまたは複数の薬剤は、治療有効量で使用される。治療有効量は、改善(例えば、処置される障害、疾患、または状態に関連する徴候および/または症状の減少)を示すのに十分である薬剤のその量を言う。単独で投与される個々の成分に適用されるとき、この用語は、単独でのその成分を言う。組み合わせに適用されるとき、この用語は、連続的にまたは同時に組み合わせて投与されるか否かに関わらず、改善をもたらす複数の成分を組み合わせた量を言う。例えば、処置での使用の有効量は、骨折修復の治癒速度で臨床的に有意な上昇;骨粗鬆症被験体における骨量減少の回復および骨折の予防;軟骨欠損または障害の回復;骨粗鬆症の発症の予防または遅延;骨粗鬆症と関連するさらなる骨量減少の防止;骨折偽関節および仮骨延長における骨形成の刺激および/または抑制;人工舗装具内への骨成長の増加および/または減少;歯欠損の修復等をもたらす薬剤を含む組成物の量である。そのような有効量は、日常的な最適化技法を用いて決定され、処置される特定の状態、患者の状態、投与経路、製剤形態、医者の判断、および当業者にとって明らかな他の要因に依存する。本発明の化合物に必要とされる用量(例えば骨形成の増加が望ましい骨粗鬆症では)は、処置群と対照群の間で統計学的に有意な相違を確実にする用量である。骨量のこの相違は、例えば、処置群では骨量で5〜20%以上の増加として見なされ得る。治癒における臨床的に有意な増加の他の測定は、種々の検査、例えば破壊強度と張力、破壊強度とねじれ、4点屈曲、骨生検における結合性の増加、および当業者にとって周知の他の生体力学検査を含み得る。処置レジメンのための一般的なガイダンスは、目的の疾患の動物モデルで実行される実験から得られ得る。
【0135】
薬剤の毒性および治療効果は、例えば、LD50(母集団の50%に対する致死量)およびED50(母集団の50%に治療効果のある用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物で標準的な医薬方法によって測定され得る。毒性と治療効果との間の用量比は、治療指数であり、LD50とED50の比(LD50/ED50)として表すことが可能である。大きな治療指数を示す薬剤または化合物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、ヒトでの使用の投与量の範囲を策定する際に使用され得る。そのような薬剤または化合物の投与量は、ほとんど毒性がないED50を含む血中濃度の範囲内であり得る。投与量は、使用される剤形および利用される投与経路によってこの範囲内で変わり得る。
【0136】
本発明の方法で使用される任意の薬剤に対する治療有効量は、最初に細胞培養アッセイから推定され得る。例えば、用量は、細胞培養または動物試験で決定されるようにED50を含む循環血漿濃度(すなわち、Ror2タンパク質の最大半量の二量体化を達成する検査化合物の濃度)の範囲を達成するための動物モデルで策定され得る。そのような情報は、ヒトでの有用量をより正確に決定するため使用され得る。血漿レベルは、例えばHPLCで測定され得る。投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。担当医は、投与の終了、中断、または調整を行う方法と時期を承知しているだろう。逆に、臨床反応が十分でない(毒性を除外して)場合、担当医は、処置をより高いレベルに調節することも承知しているだろう。目的の障害の管理において投与される用量の大きさは、処置される状態の重症度によって変化する。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価法によって部分的に評価され得る。さらに、用量およびおそらく投薬回数は、また個々の患者の年齢、体重、および反応によって変化する。上述したものに比較できる処置プログラムは、獣医学で使用され得る。
【0137】
特定の状況のための適切な投与量の決定は、当技術分野の範囲内である。通常、処置は、化合物の適量より少ない投与量で開始される。その後、この条件下で最適な効果に達するまで、投与量を少しずつ増やす。例えば、必要に応じて1日の総投与量は、その日の割り当てに分けられて投与され得る。1日の投与量は、2つ、3つ、または4つの部分に分けられることが可能であり、各部分は、24時間の間に投与される。
【0138】
投与される薬剤としての抗体または抗体フラグメントの場合、薬剤は、一般的に、静脈内注入で投与される。投与量は、1〜6週間ごとに1〜25mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、投与量は、1〜6週間ごとに1〜10mg/kgの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、1〜10mg/kgの薬剤は、3〜5週間ごとに静脈内注入によって送達される。他の実施形態では、3〜6mg/kgの薬剤は、4週間ごとに静脈内注入によって送達される。
【0139】
処置される特定の状態によって、薬剤は調剤されることが可能であり、全身的にまたは局所的に投与され得る。本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように調剤される。剤形および投与の技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1990)に見出し得る。適切な投与経路は、2〜3例を挙げると、経口、経直腸、経膣、経皮、経粘膜または経腸の投与;筋肉内、皮下、および髄内の注射を含む非経口送達;ならびにくも膜下腔内、脳室内に直接、静脈内、腹腔内、鼻腔内、または眼球内の注射を含み得る。使用し得る一部の送達方法は、以下を含むがこれらに限定されない:リポソームのカプセル化、人工舗装具への組み込み、レトロウイルスベクターによる形質導入、およびエキソビボでの細胞のトランスフェクションとその後の再移植またはトランスフェクトした細胞の投与。
【0140】
組成物が医薬的に使用されるとき、それらの組成物は、診断および処置上の使用のために「医薬的に許容される担体」と組み合わせられる。そのような組成物の剤形は、この分野の当業者には周知である。本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の付加的な薬剤を含むことが可能であり、好ましくは、医薬的に許容される担体を含み得る。
【0141】
適切な医薬的に許容される担体および/または希釈剤は、任意のおよびすべての従来の溶媒、分散媒、賦形剤、固定担体、水溶液、コーティング剤、抗菌剤および坑真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含む。用語「医薬的に許容される担体」は、それが投与される患者にアレルギー反応または他の有害作用を引き起こさない担体を言う。適切な医薬的に許容される担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール等、ならびにその組み合わせから1つまたは複数を含む。医薬的に許容される担体は、さらに、組成物の1つまたは複数の薬剤の有効期間または有効性を増強する湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤もしくは緩衝剤等を少量含み得る。医薬的に許容される物質に対するそのような媒介および薬剤の使用は、当技術分野では周知である。
【0142】
非経口の、皮内の、または皮下の適用で使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の坑菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の坑酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート化剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸等の緩衝剤および塩化ナトリウムまたはブドウ糖等の浸透圧を調節する薬剤を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基で調節され得る。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジ、または反復投与バイアルに封入され得る。注射に適する医薬組成物は、無菌注射剤の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の)または分散および無菌粉末を含む。静脈内投与のための適切な担体は、生理食塩水、静菌性水、Cremophor EL(登録商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)、またはリン酸緩衝食塩水を含む。担体は、例えば、水、エタノール、多価アルコール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用によって、分散の場合には必要とされる粒子径の維持によって、おおび表面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および坑真菌剤,例えばパラビン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等、によって達成され得る。多くの場合、例えば糖もしくはポリアルコール(マニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム等)の等張剤を組成物に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等)を組成物中に含むことによってもたらされ得る。
【0143】
さらに、本発明によって同定される疾患および状態を処置するための薬剤は、また、処置される状態に対してそれらの特定の有効性のために選択される他の治療薬と同時投与され得る。例えば、薬剤は、エストロゲンもしくはエストロゲン関連化合物または他の骨吸収インヒビターと併用され得る。エストロゲン化合物は、抱合エストロゲン、エストラジオール、およびその類似体を含むが、これらに限定されない。他の骨関連治療化合物は、以下を含むがこれらに限定されない:ビスホスホネートと関連化合物(例えば米国特許第5,312,814号に記述されているもの)、カルシウム補給剤(Prince,R.L.et al.,N.Engl.J.Med.325,1189,(1991))、ビタミンD補給剤(Chapuy M.C.et al.,N.Engl.J.Med.327,1637(1992))、フッ化ナトリウム(Riggs,B.L.ら,N.Engl.J.Med.,327,620,(1992))、アンドロゲン(Nagent de Deuxchaisnes,C,in Osteoporosis,a Multi−Disciplinary Problem,Royal Society of Medicine International Congress and Symposium Series No.55,Academic Press,London,p.291,(1983))、およびカルシトニン(Christiansen,C.,Bone 13(Suppl.1):S35,(1992))。
【0144】
別の態様では、本発明は、Rorタンパク質を活性化する薬剤を同定するための系を提供する。薬剤がRor2タンパク質の活性を変化させるか否かを決定するための方法は、当業者には周知の解析およびアッセイを行うことを含む。例は、以下を含むがこれらに限定されない:組織化学解析、ウエスタンブロット解析、ELISA、酵素アッセイ(例えばキナーゼアッセイ)、および例えば、Rorもしくは14−3−3βリン酸化(より高い活性を反映するより高いリン酸化状態)の程度の測定を含む機能解析。いくつかの実施形態では、Ror(具体的にはRor2タンパク質)の活性は、Ror2タンパク質に結合し、Ror2タンパク質によってリン酸化されることが示されている14−3−3βのリン酸化状態を決定することによって評価される。14−3−3βタンパク質のリン酸化は、当技術分野で周知の任意の技法を用いてアッセイされ得る。特に、坑ホスホチロシン抗体を使用する免疫沈降は、14−3−3βタンパク質のリン酸化を追跡するために用いられ得る。あるいは、リンの放射性同位元素(例えば32P−γ−ATP)も使用可能である。
【0145】
本発明は、また、Ror分子(例えばRor2タンパク質)の活性の増加または減少は、薬剤が骨関連活性を調節することを示す、骨関連活性を調節する薬剤を同定する方法を提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本発明は、キメラレセプター(例えばRor2/TrkB)およびRor2の二量体化によって調節されるレポーター遺伝子(例えばシフェラーゼ等)を用いるRor2の二量体化を促進する薬剤を同定するためのアッセイを提供する。いくつかの実施形態では、TrkBの細胞内ドメインに融合したRor2の細胞外ドメインを含むキメラレセプターを発現する細胞は、本発明のアッセイで用いられる。いくつかの特定の実施形態では、Ror2タンパク質の細胞外ドメインのアミノ酸1〜407は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合する。他の実施形態では、異なる細胞内ドメインが、キメラを構築する際に使用される。例えば、二量体化時に活性化される任意の細胞内ドメインは、TrkBドメインの代わりに使用さることが可能である。好ましくは、細胞内ドメインは、単一スパンの膜貫通レセプターからであり、シグナル伝達経路は知られている。キメラレセプターを調製する際に使用され得る他の細胞内ドメインの非限定的な例は、TrkA、TrkC、EGFR、PDGFR、およびFGFRの細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、細胞外ドメインの二量体化時に活性化され、最終的にレポート遺伝子の上方制御をもたらすシグナル伝達カスケードを活性化する。例えば、キメラレセプターの細胞外Ror2ドメインを二量体化する薬剤は、Ror2/TrkBキメラの場合、TrkBシグナル伝達経路の活性化を引き起こす。TrkBシグナル伝達経路の活性化は、cAMP応答エレメント(CRE)プロモーター−レポーター遺伝子系の使用によって評価される。例えばEGFR等の別のシグナル伝達経路の活性化は、EGFR経路によって活性化されるSTAT結合エレメントに基づくもの等の別のレポーター遺伝子系を必要とする。TrkB経路の活性化は、その制御下で任意のレポーター遺伝子の発現を次々に増加させるCREプロモーターの刺激を引き起こす。ルシフェラーゼ(LUC)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−ガラクトシダーゼ(GAL)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)等の容易にアッセイされるレポーターは、CREプロモーターの制御下に置かれることが可能であり、本発明のアッセイで使用され得る。いくつかの実施形態では、ルシフェラーゼは、レポーター遺伝子として使用される。他の実施形態では、緑色蛍光タンパク質がレポーター遺伝子として使用される。いくつかの実施形態では、プラスミドの上のCREプロモーター−レポーター構築物は、キメラレセプターを発現する細胞にトランスフェクトされる。他の実施形態では、構築物は、細胞のゲノムの一部である。いくつかの実施形態では、構築物は、細胞に安定にトランスフェクトされる。Ror2/TrkBキメラに基づく本発明のアッセイ系は、本明細書に示されるRor2特異的抗体を用いてRor2を二量体化することが検証された。Ror2特異的抗体は、観察されるレポーター(すなわちルシフェラーゼ)活性で用量依存性増加を引き起こす。図12を参照されたい。
【0147】
本発明のキメラレセプターアッセイ系は、対応するプロモーター系と対の異なる細胞内ドメインを用いて修飾され得る。他の細胞内ドメインの例は、TrkA、TrkC、EGFR、PDGFR、およびFGFRの細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインによって調節される対応するプロモーターは、次いでレポーター系で使用される。例えば、STAT結合エレメントは、EGFR細胞内ドメインを有するキメラレセプターを使用する系で使用され得る。
【0148】
本発明は、本発明のキメラレセプターアッセイを行うための複数のキットを含む。これらのキットは、本発明のアッセイを使用する試験薬剤をスクリーニングするために必要な成分の一部またはすべてを含む。いくつかの実施形態では、キットの成分は、研究者が使用するために便利にパッケージされている。キットは、以下のいずれかまたはすべてを含み得る:DNA構築物、細胞系、緩衝剤、酵素、マルチウェルプレート、陽性および陰性の対照、培地、坑菌薬、ヌクレオチド、説明書等。いくつかの実施形態では、キットは、Ror2/TrkBキメラレセプターを発現する細胞系を含む。他の実施形態では、キットは、Ror2/TrkBキメラレセプターをコードするDNA構築物を含む。他の実施形態では、キットは、CREプロモーターに作動可能に結合されたレポーター遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、キットは、CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼ遺伝子を含む。レポーター遺伝子/CREプロモーターの構築物は、プラスミドであり得る。
【0149】
本発明は、上述の本発明のアッセイで使用される細胞外Ror2ドメインを有するキメラレセプターを含む。キメラRor2/TrkBレセプターの典型的なアミノ酸配列は、以下の通りである。Ror2タンパク質に由来するアミノ酸配列は、大文字で示され、TrkBタンパク質に由来するアミノ酸配列は、小文字で示される。
【0150】
【化4】
当業者によって認識されるように、種々の変異、欠失、置換等が、本発明から逸脱することなく本発明のキメラタンパク質になされる可能性がある。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質は、上述のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、95%、90%、80%、または70%の相同的である。いくつかの実施形態では、キメラレセプターは、該キメラレセプターの細胞外Ror2ドメインによって引き起こされる二量体化時にTrkB経路等のシグナル伝達経路を活性化する。当業者によって認識されるように、上述のタンパク質配列への種々の変化は、キメラレセプターの活性を変化させることなくなされ得る。キメラレセプターのこれらの変種は、本発明の範囲内であるとみなされる。本発明は、また、キメラレセプターまたはその変種をコードするポリヌクレオチド配列を含む。そのコード配列は、キメラタンパク質の発現および/または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサー、調節エレメント等に場合により作動可能に結合される。本発明は、また、キメラレセプターをコードする本発明のポリヌクレオチド配列を含む細胞を含む。
【0151】
本発明の方法は、高スループットアッセイを含む利用可能な任意の形式で修飾または実行され得る。高スループットアッセイは、所定の期間内に数多くの試験薬剤をスクリーニングするために有用である。別の実施形態では、細胞に基づいたスクリーニングを用いるアッセイが行われる。参照することによって本明細書に援用した米国特許第6,103,479号(2000年8月15日発行)は、細胞に基づいたスクリーニング用の小規模な細胞アレイ方法および装置を開示している。方法は、均一な細胞のミクロパターンアレイの作製について、他の応用について(例えば、坑光化学フォトリソグラフィー(Mrksich and Whitesides,Ann.Rev. Biophys.Biomol.Struct.,25,55−78,(1996))記述されている。参照することによって本明細書に援用した米国特許第6,096,509号(2000年8月1日発行)は、流動する懸濁液の細胞上で試験薬剤への細胞応答の実時間測定のための装置および方法を提供する。そこでは、一連の細胞型の各メンバーの均一な懸濁液は、特定の濃度で検査化合物と組み合わせられ、検出ゾーンを通って方向づけられ、次いで検査混合物中の細胞が検出ゾーンを通って流動するにつれて、生細胞の細胞応答が実時間で測定される。この特許は、試験薬剤(例えば小分子)のライブラリーの自動スクリーニングでの装置の使用を開示している。これらの米国特許で開示される方法は、試験薬剤がRor分子の発現または活性を調節するか否かを決定するために、例えば骨芽細胞(一次骨芽細胞、ヒト骨芽細胞(例えばTE−85、U2OS、SaOS−2、もしくはHOB)、ラット骨芽細胞(例えばUMR106もしくはROS17/2.8)、マウス骨芽細胞(例えばMC3T3もしくは他)、非骨芽細胞(COS−7および他)等)、幹細胞(間葉系幹細胞、胚幹細胞)、前駆体細胞、またはRorヌクレオチド配列を含む操作された細胞等の細胞を用いて修飾され得る。さらに他の実施形態では、酵素アッセイ(例えばキナーゼアッセイ)に基づくアッセイが行われる。
【0152】
Rorタンパク質の活性を調節する際に有用であると同定された試験薬剤は、次いでさらに検査され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は他の細胞に基づくアッセイまたは非細胞に基づくアッセイで検査される。化合物は、種々の骨疾患および障害の動物モデルを含む種々の疾患の動物モデルで検査され得る。例えば、薬剤は、骨折、骨粗鬆症、骨の癌、骨量減少等の動物モデルで検査され得る。
【0153】
本発明は、分子および細胞生物学の分野で周知の方法および技法を参照することによって援用する。これらの技法は、以下の刊行物に記述される技法を含むがこれらに限定されない:Old,R.W.&S.B.Primrose,Principles of Gene Manipulation:An Introduction To Genetic Engineering(3d Ed.1985)Blackwell Scientific Publications,Boston.Studies in Microbiology;V.2:409pp.(ISBN0−632−01318−4),Sambrook,J.et al.eds.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d Ed.1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,,NY,Vols.1−3(ISBN0−87969−309−6)、Miller,J.H.and M.P.Calos Eds.,Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(1987)Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY.169pp.(ISBN0−87969−198−0)。
【実施例】
【0154】
本発明は、さらに、特に明記しない限り、すべての部分およびパーセンテージは重量で、温度はセ氏である以下の実施例で定義される。当然のことながら、本発明の好ましい実施形態を表しながら、これらの実施例は、説明のみの目的で与えられている。上述の考察、実施形態、およびこれらの実施例から、本発明の新規の教示から実質的に逸脱することなく、ならびにその趣旨および範囲から逸脱することなく、数多くの修飾が典型的な実施形態で可能であることを、当業者は容易に認識する。さらに、当業者は、それを種々の用途および条件に適応させるために、本発明への種々の変更および修飾をなし得る。従って、そのようなすべの修飾は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内に含まれることを目的としている。
【0155】
本明細書で述べる特許、特許出願、検査方法、および刊行物は、それらの全体を参照することによって、本明細書で援用される。
【0156】
(一般の方法)
(物質および組織培養)
注記したところを除いて、組織細胞試薬は、Invitrogen Corporation社(カリフォルニア州カールスバッド)から購入し、他の試薬および化学薬品は、Sigma Chemkcal Co.社(ミズーリ州セントルイス)またはInvitrogen社のいずれかから購入した。組換えヒトRor2のGST標識細胞質ゾルドメインは、Invitrogen社から入手した。GST標識組換えヒト14−3−3βは、Biomol International LP社(ペンシルバニア州プリマスミーティング)製であった。坑フラッグM2マウスモノクローナル抗体、および坑フラッグ−M2親和性アガロース、および坑βアクチンマウスモノクローナル抗体は、Sigma社から入手した。坑ヒトRor2ヤギポリクローナル抗体は、R&D Systems社(ミネソタ州ミネアポリス)から購入した。坑14−3−3β抗体および坑ヒスウサギポリクローナル抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.社(カリフォルニア州サンタクルーズ)製であった。非抱合型およびアガロース結合坑ホスホチロシン抗体(4G10)は、Upstate Cell Signaling Solutions社(バージニア州シャーロッツビル)から入手した。固定化ホスホチロシン抗体P−Tyr−100は、Cell Signaling Technologies社(マサチューセッツ州ベヴァリー)製であった。たんぱく質Aセファロースおよび、グルタチオンセファロースはAmersham Biosciences社製であった。ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)−結合二次抗体は、サンタクルスバイオテクノジー製であった。
【0157】
ヒト間葉系幹細胞(hMSC)は、Cambrex Inc.社(メリーランド州バルチモア)から購入し、hMSC成長培地(MSCGM、Cambrex)を使用して、37℃で、5%CO2−95%加湿空気インキュベーターで維持した。U2OSヒト骨肉腫細胞を、10%熱失活ウシ胎仔血清(FBS)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン、および2mMグルタマトリックス−Iを含有するマッコイ5A改変培地で、37℃で保持した。
【0158】
(プラスミドおよびアデノウイルス)
ヒトRor2フラッグ発現プラスミドの生成は、前述した(米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)。Ror2−フラッグのCOOH末端でフラッグエピトープタグを6個のヒスチジンをコードする配列と置換することによってRor2−ヒス 構築物を生成した。Ror2(GST−Ror2c)の細胞質ゾルドメインのGST融合を、GSTタグの後のフレーム内のヒトRor2(アミノ酸428〜944をコードする)の細胞内ドメインをpGEX−4T−2ベクター(Amersham社)に挿入することによって得た。
【0159】
全長ヒト14−3−3βcDNAをOpen Biosystems社(アラバマ州ハンツビル)から購入し、pET28aバクテリア発現ベクター内にサブクローニングした。
【0160】
ヒトコクサッキーアデノウイルスレセプター(hCAR)、Ror2特異的shRNA、およびEGFP特異的shRNAを含むアデノウイルスを、Galapagos Inc.社(ベルギー、メッヘレン)から入手した。Ror2、Ror2KD、およびβ−ガラクトシダーセ(β−gal)アデノウイルスの生成は記述されている(参照として本明細書に援用される,米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願))。
【0161】
(頭蓋冠の器官培養および感染)
4日齢の同腹仔のマウスから切除した頭蓋冠を矢状縫合に沿って切断し、0.1%BSAを含有する無血清BGJ培地で24時間インキュベートした。次いで、12ウェルプレートのウェル内のステンレス鋼製グリッド(Small Parts Inc.社、フロリダ州マイアミ)の上に各半頭蓋冠を、凹面を下に向けて置いた。各ウェルには、β−galもしくはRor2アデノウイルス(3.75百万ウイルス粒子/ウェル)を添加または無添加で、1%ウシ胎児血清(FBS)を補充した1mlのウシ血清アルブミン(BGJ)培地が含まれていた。5%CO2−95%加湿空気式のインキュベーターで頭蓋冠をインキュベートし、4日後に培地およびアデノウイルスを交換した。
【0162】
アデノウイルス存在下での7日間のインキュベーションの後、10%中性リン酸緩衝ホルムアルデヒド溶液中で頭蓋冠を室温で72時間固定し、次いで、PBS中の10%EDTA溶液で6時間脱灰した。各群の頭蓋冠を同じパラフィンブロックに平行に埋め込んだ。4μmの切片をヘマトキシリン−エオシンで染色した。着実な骨面積(前頭縫合から200μm離れた)を、組織形態計測解析用に選択した。手短に言うと、200μmの正方格子を各頭蓋冠の上に置き、骨芽細胞の数と全骨面積を骨測定装置(Osteometries Inc.社、ジョージア州アトランタ)で決定した。骨表面上のすべての細胞を骨芽細胞としてカウントした。カルシウム診断キット(Sigma社)を用いて、製造者のプロトコールに従って培地のカルシウムを測定した。
【0163】
(ウイルス感染)
ヒトMSCを12ウェルまたは6ウェルプレートに6,000/cm2で播種して付着させ、一晩、増殖させた。感染効率を向上させるために、hCAR(感染多重度(MOI)=750)の存在下でMOI=750でRor2、Ror2KD、またはβ−galアデノウイルスを用いて、細胞を0.4ml/cm2のMSCGM(間葉系幹細胞用培地)で24時間感染させた。24時間後、細胞をPBSおよびMSCGM中で1回洗浄し、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロリン酸を補充したMSCGM、または脂肪生成補給剤(PT−3004、ケンブレックス)を含有するMSCGMを加えた。必要とする場合、100nMデキサメタゾン(dex)および/または表示した抗体を培地に加えた。shRNA感染のため、12ウェルまたは6ウェルプレートに6,000/cm2で細胞を播種して付着させ、3日間増殖させた。hCAR(MOI=750)の存在下で、Ror2特異的shRNA、またはEGFP特異的shRNAをコードするアデノウイルスを細胞あたり(最初に播種密度に基づく)4,000ウイルス粒子を用いて0.4ml/cm2のMSCGM中で細胞を72時間感染させた。72時間後、細胞をPBSおよびMSCGM中で1回洗浄し、0.05mMのアスコルビン酸および10mMのβ−グリセロリン酸を補充したMSCGMを加えた。必要とする場合、100nMのdexおよび/または特定の抗体を培地に加えた。5日毎に、全培地またはその半分を新しい培地と交換した。
【0164】
U2OS細胞を6ウェルプレートに75,000/cm2で播種し、24時間後にRor2、Ror2KD、またはβ−galのアデノウイルスをMOI=100で感染させた。感染を24時間続行させてから、24時間後に細胞抽出物を収集した。
【0165】
(アリザリンレッドS組織化学染色法)
hMSCによるミネラル化根粒の形成を、アリザリンレッドS組織化学染色法によって12ウェルプレート上で決定した。細胞およびマトリックスを70%(容積比)エタノールを用いて室温で1時間固定し、脱イオン化水で洗浄してから、40mMのアリザリンレッドS(pH4.2)を用いて室温で1時間染色した。染色したマトリックスを脱イオン化水で洗浄して、撮影した。アリザリンレッドS染色のレベルを定量化するために、染料を1ml/ウェルの10%(重量比)塩化セチルピリジニウムを用いて溶出した。溶出試料中のアリザリンレッドSを、ミクロプレートリーダーを用いて562nmで定量化(0〜800μM染料の対標準曲線)した。
【0166】
(オイルレッドO組織化学染色法)
オイルレッドO組織化学染色法によって12ウェルプレート上のhMSC中の脂肪生成をモニターした。10%中性緩衝ホルマリンを用いて細胞を室温で2時間固定してから、PBSで洗浄し、60%イソプロパノール(pH7)液中の18mg/mlのオイルレッドOを用いて室温で10分間染色した。染色した細胞をPBSで洗浄してから撮影した。
【0167】
(RNA単離とリアルタイムPCR解析)
RNeasyキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて、製造者の説明書に従って全細胞RNAを単離し、ABI PRISM7700配列検出装置(Applied Biosystems社、カリフォルニア州フォスターシティー)を使用してリアルタイムRT−PCR解析にかけた。すべてのmRNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子(シクロフィリンB)のレベルに標準化した。ヒトC/EBPαおよびPPARγ用のプライマーおよびプローブをアプライドバイオシステムズから購入した。ヒトシクロフィリンBのプライマーおよびプローブは以下の通りである:
【0168】
【化5】
(一過性のトランスフェクション)
Ror2プラスミドトランスフェクションのために、U2OS細胞を約80%のコンフルエント密度で播種し、24時間後に11μgの全プラスミドDNA/19.6cm2を、Fugene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Science社、インディアナ州インディアナポリス)を使用して、製造者の説明書に従ってトランスフェクトした。siRNAトランスフェクションのため、U2OS細胞を52,000細胞/cm2で6ウェルプレート上に蒔き、24時間後に10μlのリポフェクタミン2000試薬を用いて製造者の説明書に従って、25nMのRor2 siRNAまたは非特異的siRNA(両方ともにDharmacon Inc.社製、コロラド州ラファイエット)とトランスフェクトした。
【0169】
(免疫沈降およびウエスタン免疫ブロット)
プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社)を補充した溶解緩衝液(150mMNaCl、50mMトリスHCl、1mMEDTA、pH7.5、1%トリトンX100)で細胞を可溶化し、抽出物を10,000xg、4℃で10分間、遠心分離によって明らかにした。フラッグ免疫沈降のため、1mgの全細胞可溶化液を30μlのM2フラッグ親和性アガロース(Sigma社)を用いて4℃で1時間回転させながらインキュベートした。ビーズを遠心分離によって収集し、350mMNaClを含む溶解緩衝液中で3回洗浄して、溶解緩衝液中で3回洗浄した。14−3−3β沈降のために、15μlの14−3−3β抗体を、1mlの溶解緩衝液中で30μlのタンパク質Aセファロースを用いて、4℃で一晩インキュベートした。ビーズを遠心分離によって収集し、溶解緩衝液中で洗浄してから1mgの全細胞可溶化液を加えた。4℃で2時間穏やかに回転させながら結合反応を行った。フラッグ沈降に関してビーズを収集して洗浄した。ホスホチロシン沈殿のために、1mg(過剰発現タンパク質を検出するために)または15mg(内在性タンパク質を検出するために)の細胞抽出物を100μlのG410ビーズに加え、4℃で3時間付着させた。この時点では、P−Tyr−100固定化抗体(100μl)をこの混合に加えて、さらに3時間続行した。すべてのビーズを遠心分離によって収集し、フラッグ沈降に関して洗浄した。すべての免疫沈降反応の終了後に、ビーズを30〜50μlの還元剤(Invitrogen社)を添加した2×LDS−PAGE緩衝液中で沸騰させた。可溶化タンパク質をSDS−PAGEによって分離させた。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0170】
沈降を行わない免疫ブロットのために、全細胞可溶化液の示された量を、変性および還元条件下でSDS−PAGEによって分離し、ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0171】
(GSTプールダウンおよびインビトロキナーゼアッセイ)
14−3−3βを、Expressway(登録商標)インビトロタンパク質合成装置(Invitrogen社)を用いて製造者の説明書に従って50μl反応で、14−3−3β−pET28aからインビトロ翻訳した。pGEX−4T−2またはpGEX−4T−2(GSTだけをコードする)中のGST−Ror2cを、大腸菌(Escherichia coli)のBL21(DE3)株に形質転換した。培養物を0.7のA600に増殖し、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(Sigma社;1mMの最終濃度)を加えて、4時間のインキュベーションによって組換えタンパク質を発現するよう誘導した。細菌ペレットを遠心分離によって収集し、PBSで洗浄して、プロテアーゼおよびホスファターゼインヒビターカクテル(Sigma社)を補充した30mlのPBS中で再懸濁させた。細胞を、16,000psiでフレンチプレス(French Pressure Cell Press)(Spectronic Instruments社、ニューヨーク州ロチェスター)に2回通過させて溶解させ、細菌デブリを遠心分離によって除去した。生成されたGST−Ror2cまたはGSTタンパク質を、グルタチオンセファローセを用いて4℃で4時間インキュベートした。ビーズを洗浄し、1mlPBSで再懸濁させ、14−3−3βインビトロ翻訳反応の全50μlを4℃で4時間加えた。このインキュベーションの終了後、ビーズをPBSで3回洗浄し、還元剤(Invitrogen社)を添加した2×LDS−PAGE緩衝液中で沸騰させ、可溶化タンパク質をSDS−PAGEによって分離した。ゲルを0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、各特異的抗体を用いて検出した。
【0172】
インビトロキナーゼアッセイのために、6.5μgの精製組換えヒトGST−14−3−3β(バイオモル)を、0.9μgの精製組換えヒトGST−R2c(Invitrogen社)を添加した、または添加しない25μlのキナーゼ反応緩衝液(10mM MgCl2、50mMトリスHCl(pH7.5)、1mMジチオトレイトール(DTT)、1mM ATP)中で再懸濁させた。キナーゼ反応を、37℃で30分間続行させ、還元剤(Invitrogen社)を添加した1×LDS緩衝液中で沸騰させることによって停止させた。タンパク質を、SDS−PAGEによって分離させ、0.45μmニトロセルロース膜の上に移し、ホスホチロシン抗体を用いて検出した。引き続いて、その膜を取り除き、同等の添加を確認するために14−3−3β抗体で再検出した。
【0173】
(統計解析)
データを平均値±SEとして表す。統計的有意性は、一元配置ANOVAまたはスチューデントのt検定を用いて決定した。P<0.05であるとき、結果を統計的に異なると見なした。
【0174】
(実施例1)
(内在性Ror2は、hMSC分化に関与する)
出願者は、Ror2発現がhMSCの骨形成分化の間に増加することを前述した(各々が参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19:90−101,2005)。hMSC分化の間のRor2発現の増加が骨芽細胞発生のために決定的に重要であるかを評価するために、出願者は、Ror2発現が抑制されたときにdex誘導分化を実行した。この目的を達成するために、Ror2特異的shRNAを含むアデノウイルスにhMSCを感染させた。これは、EGFP特異的対照shRNAと比較すると、実際に、Ror2タンパク質発現においてdex誘導による増加を強力に抑制した(図1A)。Ror2 shRNAへの感染は、マトリックスミネラル化を誘導するdexの性能をほぼ完全に抑止し(図1Bおよび1C)、Ror2の増加が少なくとも一部hMSCのdex誘導骨芽細胞分化を媒介することを示唆する。
【0175】
(実施例2)
(Ror2過剰発現は、hMSCの脂肪細胞への分化を抑制する)
出願者は、また、Ror2過剰発現が骨芽細胞系統へのMSCの関係づけを開始し、並びに骨芽細胞発生の初期および後期の段階で分化を促進することを前述した(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。出願者は、ここで、インドメタシンおよびIBMXを含有する脂肪生成カクテルでのインキュベーションによって誘導されるhMSCの細胞運命の交代(脂肪生成)に関するRor2の効果を評価した。ヒトMSCを、野生型Ror2またはキナーゼドメイン変異体(Ror2KD)(それぞれCOOH末端にフラッグエピトープタグを含む)をコードするアデノウイルスに感染させた。Ror2KDでは、504(推定ATP結合ドメイン内)、507、および509の位置で3つのリシンをイソロイシンと置換させることで、著しく減少したチロシンキナーゼ活性をもたらせた(HikasaらDevelopment 129,5227−5239,2002;米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)。対照のために、hMSCを同じアデノウイルスのバックグラウンドでβガラクトシダーゼ(β−gal)発現カセットに感染させた。Ror2およびRor2KD変異体は、双方とも主要な脂肪生成転写因子、CCAAT/エンハンサー−結合タンパク質α(C/EBPα)、およびペルオキシソーム増加因子活性レセプターγ(PPARγ)の発現を抑制し(図2A)、オイルレッドO陽性の脂質生成脂肪細胞を形成するhMSCの性能を著しく低下させた(図2B)。出願者の以前の結果(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号、(Billiardら、2004年4月14日出願))をまとめると、3つのデータは、Ror2が骨芽細胞発生を支持する転写因子の均衡を切り替えることによってMSCの細胞運命を変化させることを示している。
【0176】
(実施例3)
(Ror2は、マウス頭蓋冠の全骨面積を増加させる)
出願者は、次に、hMSC分化に関するRor2のインビトロ効果がエキソビボ器官培養物内で骨形成の増加に転換されるかを検査した。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨を、β−galまたはRor2アデノウイルスに非感染のままにしておくかまたは感染させた。アデノウイルスの存在下での培養の7日間後、該骨をヘマトキシリン−エオシンで染色し、200μm2の着実な切片(前頭縫合から200μm離れた)を、骨測定装置を使用して組織形態計測解析にかけた。非感染の対照条件下で、頭蓋冠の200μm2の切片には、骨面積5171±235μm2の骨面積および84±6.5の骨芽細胞が含まれていた。Ror2ウイルスの感染は、骨芽細胞の数に影響を与えることなく全骨面積で50%の増加をもたらし、Ror2が骨芽細胞を活性化して骨マトリックスをより多く生成したことを示す(図3)。
【0177】
(実施例4)
(14−3−3βは、Ror2キナーゼの最初に同定された基質である)
出願者は、質量分析法によってU2OS骨肉腫細胞内の9つの潜在的なRor2結合因子の同定について以前に報告している(参照として本明細に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))。これらのうち、14−3−3タンパク質は、細胞周期の進行および分化に関与する(Mackintosh,Biochem J 381,329−342,2004)ことを示しており、出願者は、追跡調査のために14−3−3βを選択した。最初に、免疫沈降法を用いる質量分析によって観察された相互作用を確認した。
【0178】
U2OS細胞をβ−gal、Ror2、またはRor2KDアデノウイルスに感染させ、全細胞タンパク質を単離し、坑フラッグ親和性アガロースの上で免疫沈降にかけ、続いて坑14−3−3β抗体を用いる免疫ブロットを行った(図4A、上段のパネル)。極めて少量の14−3−3βを対照条件下(β−gal感染細胞)で沈降させたが、Ror2の過剰発現時に相当量を共沈降させた。Ror2KD変異体では、複合体形成がさらに強く、キナーゼ活性が複合体解離の原因となることを示した。同じレベルの沈降を、坑フラッグ抗体を用いる免疫ブロットによって検証した(図4A、下段のパネル)。14−3−3βとRor2との間の相互作用を、14−3−3βまたは14−3−3β特異的抗体を沈降させることによって、および坑フラッグ免疫ブロットによって複合体内のRor2の存在を検証することによって、さらに検証した(図4B)。
【0179】
Ror2が14−3−3βのリン酸化を引き起こすかを評価するために、坑ホスホチロシン抗体を用いて図4Aのブロットを再検出した。この抗体は、14−3−3βと同じ分子量で移動し、野性型Ror2を発現するがβ−galまたはキナーゼ不活性変異体を発現しない細胞内だけに存在するリン酸化タンパク質を同定した(図4中段のパネル)。これは、Ror2がチロシン残基上で直接的に、または間接的に14−3−3βをリン酸化することを示唆する。坑ホスホチロシン抗体上でU2OS抽出物内のすべてのチロシンリン酸化タンパク質を免疫沈降させ、Ror2の過剰発現時にホスホ−14−3−3βの量の有意な増加を観察することによって、この仮説を確認した(図4C)。
【0180】
内在性Ror2が、図4Cで観察された14−3−3βのバックグラウンドのリン酸化を媒介するかを検査するために、U2OS細胞内のRor2発現をRor2特異的siRNAによって抑制した。図5Aに示すように、スクランブル対照siRNAと比較すると、Ror2特異的siRNAによるトランスフェクションは、結果としてRor2タンパク質発現のほぼ完全な抑制となった。Ror2発現の減少は、U2SO細胞内の14−3−3βタンパク質の量に影響を及ぼさなかったが、そのチロシンリン酸化の著しい下方制御を引き起こした(図5B)。図4Cと比較すると、14−3−3βのバックグラウンドのリン酸化の程度における明らかな増加は、ここで用いられた曝露時間が長かったことに起因する。
【0181】
Ror2の14−3−3βへの結合および14−3−3βのリン酸化が直接であるかを評価するために、組換え精製タンパク質によってインビトロ実験を行った。結合の実験のために、ヒトRor2の細胞質ゾルドメインのGST融合(GST−Ror2c)を細菌細胞で発現させ、グルタチオンセファロース上で沈降させ、インビトロ翻訳した14−3−3βを用いてインキュベートした。図6Aに示すように、GST単独には結合せずに、GST−Ror2cに結合した14−3−3βは、それがRor2の細胞質ゾルドメインに直接的に結合することを示す。インビトロで翻訳された14−3−3βは、キナーゼアッセイに不適合のExpressway(登録商標)タンパク質合成緩衝液を含んでいたので、精製組換えGST標識14−3−3βを購入し、精製組換えGST−Ror2c(Invitrogen社)を用いてインビトロキナーゼアッセイを実行した。図6Bに示すように、Ror2cは、14−3−3βおよびそれ自体の両方をリン酸化し、14−3−3βがRor2チロシンキナーゼのための直接的な基質であることを確認した。
【0182】
(実施例5)
(Ror2特異的抗体は、Ror2レセプターを二量体化して活性化する)
いくつかのレセプターチロシンキナーゼは、抗体によって二量体化されて、活性化されることが示されている(参照として本明細書に援用される、SpaargarenらJ.Biol.Chem.266,1733−1739,1991;FuhらScience 256,1677−1680,1992)。従って、ヒトRor2の細胞外ドメイン全体に対して産生されるRor2特異的抗体を、Ror2レセプターチロシンキナーゼを二量体化し、活性化するするその性能について検査した。二量体化を評価するために、フラッグ標識およびヒス標識されたRor2レセプター構築物をU2OS細胞で発現させ、その細胞を、Ror2特異的ヤギポリクローナルIgG(ヒトRor2の細胞外ドメインに対して産生されたAF2064、R&D Systems社)または非特異的ヤギIgG対照(R&D Systems社)を用いて37℃で1時間、処置した。インキュベーション後、全細胞タンパク質を抽出し、坑フラッグ親和性アガロースの上で沈降させ、坑ヒス抗体による免疫ブロットにかけた。図7Aの上段のパネルに示すように、非特異的IgG処置の対照条件下で、ヒス標識Ror2レセプターとフラッグ標識Ror2レセプターとの間にある関連があり、U2OS細胞での過剰発現時にRor2がホモ二量体を形成することを示した。このホモ二量体形成は、Ror2抗体を用いる処置時に強力に増強され、抗体がRor2レセプターを二量体化できることを確認する。Ror2−フラッグの非在化では坑フラッグ抗体は、Ror2−ヒスの免疫沈降ができず、坑ヒス抗体はRor2−フラッグタンパク質を認識しなかった(図7A、上段のパネル)という事実によってこの実験計画が検証された。同じレベルのRor2−フラッグ沈降を、坑フラッグ抗体を用いる免疫ブロットによって検証した(図7A、下段のパネル)。
【0183】
抗体がRor2チロシンキナーゼを活性化したか否かに取り組むために、Ror2特異的抗体またはIgG対照を用いてU2OS細胞を37℃で1時間処置し、全細胞タンパク質抽出物を単離して、ホスホチロシン抗体上でチロシンリン酸化たんぱく質をすべて沈降させた。図7Bは、坑Ror2抗体がRor2キナーゼの著しい自己リン酸化をもたらし、ならびにそれ自体の基質(14−3−3βタンパク質)のリン酸化をもたらしたことを示す。これらのデータは、坑Ror2抗体がRor2チロシンキナーゼレセプターを二量体化し、活性化することの強力な証拠を提供する。
【0184】
(実施例6)
(Ror2特異的活性化抗体は、hMSCミネラル化を促進する)
次に、Ror2の抗体誘導二量体化および活性化が、hMSCの骨形成分化に関して機能的意義を有するか否かに取り組んだ。hMSCは、骨形成表現型に向かって分化しない限りRor2を発現しない(参照として本明細書に援用される、米国特許出願連番第10/823,998号(Billiard and Bodine、2004年4月14日出願);BilliardらMol Endo 19,90−101,2005)ので、Ror2発現を、骨形成カクテル(0.05mMアスコルビン酸、10mM β−グリセロリン酸、および100nM dexを補充したMSCGM)を用いる処置によって誘導し、Ror2特異的ヤギIgGまたは非特異的ヤギIgGを次第に加えた。9日間のインキュベーション後、ミネラル化マトリックス形成の程度をアリザリンレッドS組織化学染色によって評価した。図8に示すように、坑Ror2抗体は、hMSC内の石灰化マトリックス形成の程度を用量依存的に増加させた。非特異的ヤギIgGは、100μg/mlの最も高い用量で観察された軽微な抑制を除いて、検査したすべての濃度でマトリックスミネラル化に関して効果をおよぼさなかった。明確にするために、非特異的IgGの用量をただ1つ(50μg/ml)図8に示す。ヒトRor1の細胞外ドメイン全体に対して産生されたヤギポリクローナル抗体(R&D Systems社、AF2000)も効果がなかった(図8)。hMSC内のRor2発現は、Ror2特異的shRNAによって抑制されたとき、坑Ror2抗体の効果が消失したので、坑Ror2抗体の効果は、Ror2レセプターを介して媒介された(図9A)。さらにまた、アデノウイルス感染を介してRor2を発現するよう細胞を誘導した場合、坑Ror2抗体は、dexの非存在下でさえも石灰化マトリックス形成を誘導した(図9B)。従って、Ror2特異的抗体は、Ror2レセプターの二量体化、活性化が可能であり、間葉系幹細胞でRor2媒介による石灰化マトリックス形成を促進することが可能であり、活性化Ror2抗体が骨粗鬆症および他の骨疾患に効果的な処置を提供し得ることを示唆する。
【0185】
(実施例7)
(14−3−3βの抑制は、hMSCミネラル化を増強する)
14−3−3βが骨形成分化に関与しているかを検査するために、Ror2過剰発現の非存在下および存在下で14−3−3β発現を抑制した。この目的を達成するために、スクランブル対照shRNAと比較すると、実際に内在性タンパク質を強力に下方抑制する14−3−3β特異的shRNAにhMSCを感染させた(図10A)。hMSCを、スクランブルshRNAおよびβ−ガラクトシダーゼを含む2つの対照ウイルスに感染させたとき、低い程度のマトリックスミネラル化を観察した(図10B)。これは、それ自体による二重感染がhMSC培養物中で軽度の骨形成を媒介することを示唆する。以前に観察されたように(米国特許出願連番第10/823,998号(Billiardら、2004年4月14日出願))、Ror2アデノウイルスによる感染は、ミネラル化マトリックスの形成を強力に促進する。驚いたことに、14−3−3βの下方制御も、ミネラル化の程度を大きく増加させる(図10B)。Ror2過剰発現および14−3−3β抑制は、どちらか単独よりも、共により強いマトリックスミネラル化を誘導する(図10B)。これは、14−3−3βスカフォールドタンパク質がhMSCの骨形成分化に対して抑制効果を与えることを示唆する第一の証拠である。
【0186】
(実施例8)
(抗体誘導Ror2活性化および14−3−3β抑制は、エキソビボ頭蓋冠培養物で新規骨形成を促進する)
次に、Ror2活性化および14−3−3β抑制のインビトロ効果がエキソビボ器官培養物での骨形成の増加に変わるかを検査した。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨をスクランブルshRNAまたは14−3−3β特異的shRNAを5×107ウイルス粒子/mlで含有するアデノウイルスに感染させ、次いで48時間後に15μg/mlのカルセインの存在下で12μg/mlの坑Ror2抗体または非特異的IgGで処置した。アデノウイルスおよび抗体を用いる培養の7日間後に、骨をヘマトキシリン−エオシンで染色し、着実な300μmの伸展(前頭縫合から450μm離れた)をBioquant−NOVA MR5.50.8(テネシー州ナッシュビル)を使用して組織形態計測解析にかけた。スクランブルshRNA感染およびIgG処置の対照条件下で、600μm長の頭蓋冠は、9394±1333μm2の骨面積および39.5±7.4の骨芽細胞を含有していた。特異的shRNAによる14−3−3βの抑制は、全骨面積で60%の増加、骨芽細胞数で50%の増加をもたらし、14−3−3βタンパク質が骨芽細胞数および/または活性を抑制することを示した(図11)。坑Ror2抗体を用いる頭蓋冠骨の処置は、骨芽細胞数で85%の増加および全骨面積で50%の増加をもたらし、ここでも活性化Ror2抗体が骨粗鬆症および他の骨疾患に有効な処置を提供し得ることを示唆した。しかしながら、14−3−3βshRNA感染をRor2抗体処置と組み合わせることは、相加効果を生成せず、いずれか単独の処置と比較して、若干反応が少ない結果とさえなった(図11)。経験上、観察された50〜80%の増加は、このアッセイ系の飽和には達していないので、Ror2および14−3−3βの双方が骨芽細胞分化および/または機能を制御する同じ経路にあると推測したくなる。
【0187】
(実施例9)
(Ror2活性のための高スループット、高感度アッセイの開発)
図12Aに示すように、このアッセイは、特徴がはっきりしたTrkBレセプターシグナル伝達経路を利用する。TrkBレセプターは、標的遺伝子のプロモーター内にErkのリン酸化およびcAMP応答エレメント(CRE)の刺激を引き起こすリガンド誘導性ホモ二量体化によって活性化される。出願者は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合したRor2(アミノ酸1〜407)の細胞外ドメインからなるキメラレセプターを生成した。このキメラを使用すると、Ror2二量体化をもたらす薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化し、CREプロモーター活性の増加をもたらすと仮定される。この仮説を検証するために、キメラレセプターを、Dr.Seongeun Cho(Wyeth Research社、ニュージャージー州プリンストン)から入手したCRE−ルシフェラーゼプラスミド(HEK−CRE)を過剰発現するHEK293A細胞に安定的にトランスフェクトした。pcDNA3.1(+)−hygro中のRor2−TrkBキメラを、ECM600電気穿孔装置(BTX社、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてHEK−CRE細胞に電気穿孔処理し、ハイグロマイシン耐性細胞の単離コロニーが形成されるまでこの細胞を350μg/mlハイグロマイシンで増殖させた。コロニーをトリプシン処理して、96ウェルプレートの1ウェルごとに1コロニーを移した。コロニーを350μg/mlのハイグロマイシンを用いて37℃で増殖させ、Ror2−TrkB発現のレベルをウエスタン免疫ブロットおよび免疫細胞化学によって評価した。Ror2−TrkBキメラを発現させたHEX−CRE細胞を、Ror2を二量体化することが以前に示された坑Ror2抗体を用いて処理した(実施例5を参照)。図12に示すように、非特異的IgGで処置した細胞と比較して、Ror2特異的抗体は、観察されたルシフェラーゼ活性において強い用量依存性増加を引き起こした。このように、出願者は、Ror2の二量体化および活性化を誘導する薬剤(小分子、ペプチド、タンパク質、または抗体を含むがこれらに限定されない)の性能を測定する迅速で高スループット、かつ高感度のアッセイを開発した。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、下方制御するRor2発現が、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)のdex誘導骨形成分化を抑制することを示す。ヒトMSCを、Ror2特異的shRNAまたはEGFP特異的shRNA(対照)を含むアデノウイルス発現ベクターに感染させ、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−グリセロリン酸(β−GP)、および100nmのデキサメタゾン(dex)を補充したMSC増殖培地(MSCGM)でインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、全細胞タンパク質抽出物(50μg/レーン)を、ローディングコントロールとして内在性Ror2タンパク質またはβアクチンを調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。11日間のインキュベーションの後、ミネラル化マトリックス形成の程度を評価するために、アリザリンレッドS染色を行い(B)、定量化した(C)。Cでは、EGFPshRNAの存在下でアリザリンレッドSが取り込まれた量を100%に設定した。BおよびCの結果は、3つの独立した実験の特徴を表す(図1を実施例1で参照する)。
【図2】図2は、Ror2の過剰発現がhMSCの脂肪細胞への分化を抑制することを示す。A.ヒトMSCを、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)、Ror2、またはRor2KDに感染させ、脂肪生成カクテルを補充したMSCGMで8日間インキュベートした。細胞RNA全体を単離し、Applied Biosystems社から入手したプライマーおよびプローブを用いて、脂肪生成転写因子C/EBPαおよびPPARγを調べるためにリアルタイムRT−PCR解析を行った。mRNAのレベルを、各試料中のシクロフィリンBの発現に標準化し、β−gal感染細胞中のmRNAの相対的発現を100%に設定した。B.ヒトMSCを、β−gal、Ror2、またはRor2KDに感染させ、脂肪生成カクテルを補充したMSCGMで21日間インキュベートし、次いでオイルレッドO染色を行った(図2を実施例2で参照する)。
【図3】図3は、Ror2タンパク質の過剰発現が全骨面積を増加させるが、新生仔マウスの頭蓋冠の骨芽細胞数を増加させないことを示す。4日齢の同腹仔マウスの頭蓋冠骨を、非感染で残す(対照)か、またはβ−ガラクトシダーゼ(β)またはヒトRor2(R2)をコードするアデノウイルスに感染させた。アデノウイルスの存在下での7日間のインキュベーションの後、全骨面積および骨芽細胞数を評価する前に、頭蓋冠をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。非感染培養物で得た値を100%に設定した。結果は、状態あたり4〜5頭蓋冠の平均値∀ SE(標準誤差)(β−ガラクトシダーゼ感染と比較して、*−P<0.01)である。このグラフは、3つの独立した実験を表す(図3を実施例3で参照する)。
【図4】図4は、Ror2タンパク質がチロシン上で14−3−3βに結合し、それをリン酸化することを示す。U2OS細胞をβ−gal(β)、Ror2(R2)、またはRor2KD(KD)アデノウイルスに感染させ、24〜48時間後に、全細胞可溶化液を調製し、坑フラッグ抗体(A)、坑14−3−3β抗体(B)、または坑ホスホチロシン抗体(C)で免疫沈降させた。表示した抗体を用いる免疫ブロットによって免疫沈降を解析した(図4を実施例4で参照する)。
【図5】図5は、内在性Ror2タンパク質がインビボで14−3−3βリン酸化を媒介することを示す。U2OS細胞にRor2 siRNAまたは非特異的siRNAを一過性でトランスフェクトし、48時間後に、全細胞タンパク質抽出物を、50μg抽出物/レーンを用いて内在性Ror2タンパク質またはβアクチン(ローディングコントロール)を調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。また、該可溶化液も14−3−3β抗体(20μg/レーン)で直接的に、または坑ホスホチロシン抗体を用いる免疫沈降後に解析した(B)(図5を実施例4で参照する)。
【図6】図6は、Ror2タンパク質の細胞質ゾルドメインが14−3−3βに結合して、インビトロで直接リン酸化することを示す。A.Ror2のGST標識された細胞質ゾルドメイン(GST−R2c)またはGST単独をグルタチオンセファロースビーズに付着させ、インビトロ翻訳した14−3−3βを用いて4℃で4時間インキュベートした。結合した物質を坑14−3−3β抗体で解析した。B.インビトロキナーゼアッセイを、Ror2タンパク質の精製した組換え細胞質ゾルドメイン(Invitrogen社製GST−R2c)および精製した組換えGST−14−3−3β(Biomol,Inc.社)を用いて「一般法」に記述されるように実行した(図6を実施例4で参照する)。
【図7】図7は、Ror2特異的抗体がRor2レセプターの二量体化および活性化を引き起こすことを示す。A.二量体化を示すために、COOH終端でフラッグ(R2−F)またはヒス(R2−H)のいずれかのエピトープタグを標識したRor2発現プラスミドを用いて、U2OS細胞をトランスフェクトした。24時間後、細胞をRor2特異的ヤギポリクローナルIgGまたは非特異的ヤギIgGを用いて37℃で1時間処置し、次いで全細胞タンパク質抽出物を調製し、坑フラッグ親和性アガロースの上で免疫沈降させた。沈澱物を、坑ヒス抗体(上段のパネル)を用いて免疫ブロットによって解析した。下段のパネルは、坑フラッグ抗体を用いて沈降レベルの対照を再探索した同じ膜を示す。B.活性化を示すために、非トランスフェクトU2OS細胞を、A.のようにRor2特異的抗体または対照IgGを用いて処置した。全細胞抽出物を坑ホスホチロシン抗体の上で沈降させ、Ror2または14−3−3β抗体を用いて解析した(図7を実施例5で参照する)。
【図8】図8は、Ror2抗体がhMSCでミネラル化マトリックス形成を引き起こすことを示す。ヒトMSCを、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを含有し、非特異的ヤギIgGもしくはRor1特異的ヤギIgG(各50μg/ml)のいずれかを補充した、またはRor2特異的ヤギIgGの濃度を上げたMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色でマトリックスミネラル化の程度を評価した(図8を実施例6で参照する)。
【図9】図9は、Ror2抗体によって誘導されたhMSCミネラル化がRor2によって媒介されることを示す。A.hMSCを、Ror2またはEGFP(対照)に特異的なshRNAを含有するアデノウイルス発現ベクターに感染させ、0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを補充したMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色でマトリックスミネラル化の程度を評価した。B.ヒトMSCをRor2アデノウイルスに24時間感染させ、次いで0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GP、およびRor2特異的ヤギIgGまたは非特異的ヤギIgGのいずれかを含有するMSCGMで19日間インキュベートさせて、アリザリンレッドS染色を行った(図9を実施例6で参照する)。
【図10】図10は、下方制御する14−3−3βがhMSC内でミネラル化マトリックス形成を増強することを示す。ヒトMSCを、スクランブルshRNA、14−3−3β特異的shRNA、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)過剰発現カセット、またはRor2過剰発現カセットを含有するデノウイルス発現ベクターに感染させ、次いで0.05mMのアスコルビン酸、10mMのβ−GPおよび100nMのdexを補充したMSCGMでインキュベートした。9日間のインキュベーションの後、50μgの全細胞タンパク質抽出物を、内在性14−3−3βタンパク質を調べるためにウエスタン免疫ブロットにかけた(A)。12日間のインキュベーションの後、アリザリンレッドS染色を実行し(B)、ミネラル化マトリックス形成の程度を評価した(図10を実施例7で参照する)。
【図11】図11は、Ror2抗体処置および14−3−3β下方制御がエキソビボで新骨形成を促進することを示す。マウス頭蓋冠骨をスクランブルshRNA(scr)または14−3−3β特異的shRNAを含有するアデノウイルスベクターに感染させ、48時間後に、カルセインの存在下で12μg/mlの坑Ror2抗体または非特異的IgGを用いて処置した。アデノウイルスおよび抗体による7日間のインキュベーションの後、頭蓋冠をヘマトキシリン−エオシンで染色し、全骨面積(グラフ中白の棒で示す)と骨芽細胞数(グラフ中黒の棒で示す)を決定した。感染したスクランブルshRNA培養物およびIgG処置培養物で得た値を100%に設定した。結果は、状態ごとに4頭蓋冠の平均値∀ SE(*−p<0.05)である(図11を実施例8で参照する)。
【図12】図12は、Ror2活性を調べるための高スループット、高感度アッセイの生成を示す。A.TrkBレセプターのシグナル伝達経路を利用するアッセイの模式表示。TrkBレセプターを、標的遺伝子のプロモーター内でErkのリン酸化およびcAMP応答エレメント(CRE)の刺激作用を引き起こすリガンド誘導性ホモニ量体化によって活性化させる。出願者は、TrkB(アミノ酸432〜822)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合したRor2(アミノ酸1〜407)の細胞外ドメインから成るキメラレセプターを生成した。このキメラを使用するとき、Ror2二量体化を引き起こす薬剤は、TrkBシグナル伝達経路を活性化させ、次いでこの活性化は、CREプロモーター−ルシフェラーゼレポーターアッセイによって評価され得る。B.HEK293細胞をRor2−TrkBキメラおよびCRE−ルシフェラーゼプラスミドを用いて安定にトランスフェクトして、表示した量の坑Ror2抗体または非特異的IgGを用いて24時間処置し、ルシフェラーゼ活性を評価した。非特異的IgGを用いた処置後に観察されたルシフェラーゼ活性を1に設定した。結果は、3つの独立した実験を表す(平均値∀ SE;n=4;*−p<0.05)(図12を実施例9で参照する)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨関連障害を有する被験体にRor2タンパク質を活性化し得る治療有効量の薬剤を投与する工程を含む、骨関連障害を処置または予防する方法。
【請求項2】
前記骨関連障害が、骨量減少と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨関連障害が、骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、および骨化過剰症を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が、タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対するモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、Ror2に対するヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、IgGアイソタイプの抗体である、請求項8、9、または10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対するFabフラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する少なくとも2つの抗体フラグメントを含み、該抗体フラグメントが共有結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が、非経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が、経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Ror2を発現する細胞を、該Ror2を活性化し得る薬剤と接触させる工程を含む、骨芽細胞分化を増加させる方法。
【請求項19】
前記薬剤が、タンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が、小分子である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が、抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤が、Ror2タンパク質による14−3−3βのリン酸化を増加させる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、間葉系幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記接触させる工程がエキソビボで実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記接触させる工程が、インビボで実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
Ror2タンパク質の発現または活性を増加させる薬剤と細胞とを接触させる工程を含む、脂肪細胞への分化を抑制する方法。
【請求項31】
Ro2タンパク質を発現する細胞を試験薬剤と接触させる工程と、
Ror2活性が増加するか否かを決定する工程と
を含む、Ror2活性を増加させる薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項32】
Ror2が、Ror2の細胞ドメインである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
Ror2が、Ror2のキナーゼドメインである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記決定する工程が、Ror2タンパク質のキナーゼ活性を評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
Ror2タンパク質のキナーゼ活性を前記評価する工程が、Ror2タンパク質のリン酸化状態を評価する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記決定する工程が、Ror2タンパク質またはRor2ポリヌクレオチドの発現レベルを評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記決定する工程が、14−3−3βタンパク質のリン酸化状態を評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記決定する工程が、ミネラル化マトリックス形成のレベルを決定する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
請求項31に記載の前記方法によって同定される、薬剤。
【請求項40】
Ror2に対する抗体であって、それによって該抗体が、Ror2タンパク質の活性化を引き起こす、抗体。
【請求項41】
前記抗体が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項40に記載の抗体。
【請求項42】
前記抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項46】
前記抗体が、IgGアイソタイプの抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項47】
前記抗体が、抗体フラグメントを含む、請求項40に記載の抗体。
【請求項48】
前記抗体フラグメントが、Fabフラグメントである、請求項40に記載の抗体。
【請求項49】
前記抗体が、Ror2タンパク質に対する少なくとも2つの結合部位を有する、請求項40に記載の抗体。
【請求項50】
前記抗体が、Ror2タンパク質に対する正確に2つの結合部位を有する、請求項40に記載の抗体。
【請求項51】
骨関連障害を有する被験体に14−3−3β活性を抑制し得る治療有効量の薬剤を投与する工程を含む、骨関連障害を処置または予防する方法。
【請求項52】
前記薬剤が、14−3−3β発現を下方制御する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤が、14−3−3β特異的siRNAまたは14−3−3β特異的shRNAである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
Ror2タンパク質の二量体化を促進する薬剤を同定する方法であって、該方法が、
Ror2の細胞外ドメインとTrkBの細胞内ドメインとを含むキメラレセプターを発現する前記細胞を提供する工程であって、該細胞が、cAMP応答エレメント(CRE)プロモーターに作動可能に結合されたレポーター遺伝子構築物を含む、工程と、
該細胞を試験薬剤と接触させる工程と、
該細胞内の該レポーター遺伝子の発現レベルを決定する工程と
を含む、方法。
【請求項55】
前記レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞が、前記CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
アミノ酸配列:
【化1】
または配列番号4と少なくとも90%相同的なアミノ酸配列の、タンパク質。
【請求項58】
前記アミノ酸配列が、
【化2】
または配列番号4と少なくとも95%相同的なアミノ酸配列である、請求項57に記載のタンパク質。
【請求項59】
前記アミノ酸配列が、
【化3】
である、請求項57に記載のタンパク質。
【請求項1】
骨関連障害を有する被験体にRor2タンパク質を活性化し得る治療有効量の薬剤を投与する工程を含む、骨関連障害を処置または予防する方法。
【請求項2】
前記骨関連障害が、骨量減少と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨関連障害が、骨粗鬆症、骨の癌、関節炎、くる病、骨折、歯周病、骨部分欠損、溶骨性骨疾患、原発性副甲状腺機能亢進症および続発性副甲状腺機能亢進症、パジェット病、骨軟化症、および骨化過剰症を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、ヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤が、小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が、タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対するモノクローナル抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、Ror2に対するヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、IgGアイソタイプの抗体である、請求項8、9、または10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対するFabフラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する少なくとも2つの抗体フラグメントを含み、該抗体フラグメントが共有結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が、非経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、静脈内に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤が、経口的に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
Ror2を発現する細胞を、該Ror2を活性化し得る薬剤と接触させる工程を含む、骨芽細胞分化を増加させる方法。
【請求項19】
前記薬剤が、タンパク質である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が、小分子である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬剤が、抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記薬剤が、Ror2タンパク質に対する抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記薬剤が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記薬剤が、Ror2タンパク質による14−3−3βのリン酸化を増加させる、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、ヒト細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞が、幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記細胞が、間葉系幹細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記接触させる工程がエキソビボで実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項29】
前記接触させる工程が、インビボで実行される、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
Ror2タンパク質の発現または活性を増加させる薬剤と細胞とを接触させる工程を含む、脂肪細胞への分化を抑制する方法。
【請求項31】
Ro2タンパク質を発現する細胞を試験薬剤と接触させる工程と、
Ror2活性が増加するか否かを決定する工程と
を含む、Ror2活性を増加させる薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項32】
Ror2が、Ror2の細胞ドメインである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
Ror2が、Ror2のキナーゼドメインである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記決定する工程が、Ror2タンパク質のキナーゼ活性を評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
Ror2タンパク質のキナーゼ活性を前記評価する工程が、Ror2タンパク質のリン酸化状態を評価する工程を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記決定する工程が、Ror2タンパク質またはRor2ポリヌクレオチドの発現レベルを評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記決定する工程が、14−3−3βタンパク質のリン酸化状態を評価する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記決定する工程が、ミネラル化マトリックス形成のレベルを決定する工程を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
請求項31に記載の前記方法によって同定される、薬剤。
【請求項40】
Ror2に対する抗体であって、それによって該抗体が、Ror2タンパク質の活性化を引き起こす、抗体。
【請求項41】
前記抗体が、Ror2タンパク質の二量体化を引き起こす、請求項40に記載の抗体。
【請求項42】
前記抗体が、ポリクローナル抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項43】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項44】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項45】
前記抗体が、ヒト化抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項46】
前記抗体が、IgGアイソタイプの抗体である、請求項40に記載の抗体。
【請求項47】
前記抗体が、抗体フラグメントを含む、請求項40に記載の抗体。
【請求項48】
前記抗体フラグメントが、Fabフラグメントである、請求項40に記載の抗体。
【請求項49】
前記抗体が、Ror2タンパク質に対する少なくとも2つの結合部位を有する、請求項40に記載の抗体。
【請求項50】
前記抗体が、Ror2タンパク質に対する正確に2つの結合部位を有する、請求項40に記載の抗体。
【請求項51】
骨関連障害を有する被験体に14−3−3β活性を抑制し得る治療有効量の薬剤を投与する工程を含む、骨関連障害を処置または予防する方法。
【請求項52】
前記薬剤が、14−3−3β発現を下方制御する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記薬剤が、14−3−3β特異的siRNAまたは14−3−3β特異的shRNAである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
Ror2タンパク質の二量体化を促進する薬剤を同定する方法であって、該方法が、
Ror2の細胞外ドメインとTrkBの細胞内ドメインとを含むキメラレセプターを発現する前記細胞を提供する工程であって、該細胞が、cAMP応答エレメント(CRE)プロモーターに作動可能に結合されたレポーター遺伝子構築物を含む、工程と、
該細胞を試験薬剤と接触させる工程と、
該細胞内の該レポーター遺伝子の発現レベルを決定する工程と
を含む、方法。
【請求項55】
前記レポーター遺伝子が、ルシフェラーゼである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞が、前記CREプロモーターに作動可能に結合されたルシフェラーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
アミノ酸配列:
【化1】
または配列番号4と少なくとも90%相同的なアミノ酸配列の、タンパク質。
【請求項58】
前記アミノ酸配列が、
【化2】
または配列番号4と少なくとも95%相同的なアミノ酸配列である、請求項57に記載のタンパク質。
【請求項59】
前記アミノ酸配列が、
【化3】
である、請求項57に記載のタンパク質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−527485(P2009−527485A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555419(P2008−555419)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004510
【国際公開番号】WO2007/098198
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004510
【国際公開番号】WO2007/098198
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】
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