説明

高さデータ推定方法、高さデータ推定用プログラム及び3次元形状測定装置

【課題】 被測定物の測定面の任意の位置における高さデータを高精度にて推定する高さデータ推定方法、高さデータ推定用プログラム、及び3次元形状測定装置を提供する。
【解決手段】 複数のサンプリング位置における高さデータに関して、設計データと測定データとの誤差値を求め(S6)、求まった誤差値にて形成される形状の関数を求める(S6)。そして、該関数に基づいて、被測定物の測定面の任意点における推定誤差値を求めるようにしている(S7)。したがって、上記推定誤差値の精度は、測定データの高さデータに基づき作成される面の曲率半径及び傾斜面角度とは無関係となり、一定となる。よって、従来に比べて、高い精度にてなる推定誤差値を得ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばレンズのような連続的に表面形状が変化する被測定物の測定面に対する高精度な形状評価を行うに当たり、被測定物測定面の2次元又は3次元測定データを用いて、上記測定面の任意の位置における形状を表す高さデータを高精度にて推定する高さデータ推定方法、該高さデータ推定方法を実行するための高さデータ推定用プログラム、及び上記高さデータ推定方法を実行する3次元形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品や金型などの非球面の表面形状を高精度に測定する方法として、3次元形状測定機の利用が広く知られている。一般に3次元形状測定機は、接触型又は非接触型のプローブを被測定物に近づけ、両者がほぼ一定の距離又はほぼ一定の力になるようプローブ位置を制御しながら上記被測定物の測定面に沿って上記プローブを移動させ上記被測定物の測定面形状を測定するものである。
【0003】
このような測定機の一つとして、レーザ測長器と基準平面ミラーを利用した形状測定装置について、図7を用いて説明する(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
形状測定装置20は、石定盤1上に設置されたレンズ等の被測定物2の測定面2aに、移動体3に取り付けられたプローブ5の先端を追従させて、被測定物2の測定面形状を測定するように構成されている。被測定物2を搭載する石定盤1には、支持部を介してX参照ミラー6、Y参照ミラー7、Z参照ミラー8が配置されている。
原子間力プローブ5が設けられた移動体3は、一体的に構成されているXステージ9及びYステージ10に取り付けられており、被測定物2の測定面2aの形状に追従してX軸方向、Y軸方向に移動体3及び原子間力プローブ5を走査できる構成となっている。
【0005】
移動体3にはレーザ測長光学系4が設けられており、既知の光干渉法により、X参照ミラー6を基準とした原子間力プローブ5のX座標、Y参照ミラー7を基準とした原子間力プローブ5のY座標、Z参照ミラー8を基準とした原子間力プローブ5のZ座標がそれぞれ測長される。
【0006】
次に、このような形状測定装置20における測定手順について説明する。最初に、被測定物2の測定面2aの設計式などの設計情報を形状測定装置20に付属する演算処理装置に入力する。次に、プローブ5を被測定物2の測定面2aに一定の測定圧で追従させ、特開平2−254307号公報(特許文献3)に記載されている方法で、測定面2aの中心出しを行う。次に測定面2a上において、プローブ5を2次元方向(X、Y方向)又は1次元方向(X方向又はY方向)に面走査又は線走査して、高さ方向データ(Z)を求め、形状を測定する。
【0007】
図8は、形状測定装置20において、プローブ5の先端スタイラス31が被測定物2の測定面2aに追従している様子を、Z−X座標について拡大して示したものである。このスタイラス31により検出された3次元座標は、図8において、スタイラス31の頂点Tの座標(x0_i、y0_j、z0_ij)に相当する。しかしながら、図8に示すように、スタイラス31の先端部32が曲率半径Rを有する円形であって被測定物2の測定面2aを追従している場合には、スタイラス31の頂点Tは、測定面2aに接触しておらず、スタイラス31はP点にて測定面2aに接触している。よって、実際の測定点Pの3次元座標(X_i、Y_j、Z_ij)と、測定面2aに沿ってプローブ5を走査することにより得られたスタイラス31の頂点Tの座標(x0_i、y0_j、z0_ij)との間には、測定誤差が生じることになる。
【0008】
スタイラス31の先端部32が曲率半径Rを有していることで生じる上記測定誤差は、実際の測定点Pの位置において測定面2aの傾斜角θが分かればスタイラス31の頂点Tの座標(x0_i、y0_j、z0_ij)から算出できる。今、測定点Pにおける測定面2aのX−Z平面方向の傾斜角をθxとすると、
(X_i、Y_j、Z_ij)=(x0_i−R・sinθx、y0_j、z0_ij+R・(1-cosθx))であり、同様に傾斜角θyが分かれば、Z−Y座標においても同様に補正が可能である。このようなプローブ先端に付属するスタイラス先端部における曲率半径Rによる測定誤差の補正をプローブ半径補正と呼ぶ。
【0009】
又、スタイラス31で検出した測定面2aの形状測定データには、被測定物2の設置時における設置誤差、いわゆるアライメント誤差が存在し、入力した設計式との誤差を求める場合には、上記プローブ半径補正を行った後のデータを3次元的に回転、平行移動する座標変換によって、上記設計式との最適な重ね合わせを行う。この最適な重ね合わせの手法として、2次元座標(x_i、y_i)における高さデータ(z_ij)と、上記2次元座標における設計データ(z_ij')との差zd_ij(= z_ij−z_ij')を下記の自乗平均(RMS)式にて算出する。
【0010】
【数1】

N:データ総数
【0011】
上記RMS値が最小となるように被測定物2の測定面2aの設計データの座標系と、測定データの座標系とを重ね合わせる。これにより上記アライメント誤差が補正される。以後、上記プローブ半径誤差と、この座標変換とを合わせて、アライメント処理と呼ぶ。
【0012】
球を測定したときの、上記アライメント処理後に入力した設計データと、被測定物2の測定面2aの測定データとのZ方向の形状偏差を求めた結果例を図9に示す。図9のように、測定データは、プローブ5の先端スタイラス31が被測定面2a上を通過した軌跡上を測定する。
【0013】
一方、自由曲面を有する金型等の加工対象を加工機械により切削、研削する場合、以下のように行われる。即ち、一定の間隔のデータ間ピッチにおける有限個の2次元座標データ(x'_m,y'_n)に対して、上記データ間ピッチ毎の2次元座標データに高さデータ(z'_mn)を与え、これらのデータについて、スプライン関数等を用いて関数化を行う。この関数を加工軌跡とし、上記加工対象又はバイトや砥石を上記加工軌跡上に動作させることで、上記加工対象に対して自由曲面を形成する。
【0014】
又、特許文献5に記載されているようなレンズの設計式は、一定の間隔、つまり上記データ間ピッチにおける有限個の2次元座標データ(x'_m,y'_n)に対して、該データ間ピッチ毎の2次元座標データに高さデータ(z'_mn)を与え、多項式やスプライン関数により関数化したものである。レンズや金型等における自由曲面に対して、上記関数化した設計式に従い加工等を行い、所望の曲面を形成し、上記レンズや金型を測定評価する方法がある。以後、上記データ間ピッチにおける有限個の2次元座標データ(x'_m,y'_n)に対し、高さデータ(z'_mn)を有する有限個のデータからなる設計用データを設計点群データ、あるいは設計データと呼ぶ。
【0015】
以上のように設計し加工形成された対象物について、2次元又は3次元測定機により測定評価を行い、上記設計や加工にフィードバックするのが好ましい。即ち、上記設計点群データと同じ2次元座標を有する一定間隔のデータ(x'_m,y'_n)に対する、高さ方向の測定データ(Z_mn)が求まれば、該高さ方向の測定データ(Z_mn)と、高さ方向の設計データ(z'_mn)との誤差Zd_mn(=Z_mn−z'_mn)を求めることができる。よって、求めた誤差Zd_mnを、設計や加工にフィードバックでき、設計や加工の変更等が容易になる。(例えば特許文献4参照。)
又、一方で、測定評価後の測定データをもとに、3次元グラフィック処理を行い、被測定面の形状を視覚的に見易くする表示手法が採られる。被測定面の高精度なグラフィック画像を得るためには、非常に密な測定データが必要である。
【特許文献1】特開平4−299206号公報
【特許文献2】特開平10−170243号公報
【特許文献3】特開平2−254307号公報
【特許文献4】特開2002−48524号公報
【特許文献5】特開2002−40373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、3次元測定機による測定データの2次元座標データにおいて、X−Y座標系のデータ間のピッチが一定の間隔にならない。その原因として、プローブ5を被測定物2の測定面2aに追従させ測定する際、X−Y軸ステージ9,10の真直度誤差や、うねり誤差等により、移動体3の位置決めに誤差が発生するからである。その結果、得られる測定データにおける2次元座標データ(x_i,y_j)は、上記位置決め誤差に起因する誤差を含んだ値となる。
さらに又、上記アライメント処理による上記プローブ半径補正及び上記座標変換等に起因しても、アライメント処理後の測定データにおける2次元座標データにも誤差が含まれる。よって、測定データにおける2次元座標データにおいて、データ間ピッチは、一定にならない。
又、従来の3次元測定機の測定データのピッチは、プローブ5の先端スタイラス31が被測定面2a上を通過した軌跡上の粗い測定データのみの取得であり、高精度な密な測定データを取得することが困難である。
【0017】
そこで、以下に説明するように、上記データ間ピッチのバラツキの解消と、粗い測定データより密で高精度な測定データを取得するために、任意点における高さ方向の値を求めることができるようにする。即ち、アライメント処理後に得られた測定データ(X_i,Y_j,Z_ij)における2次元座標データ内の必要な位置での高さ方向の値を得るため、例えば上記設計点群データの2次元座標データ(x'_m,y'_n)における一定間隔の位置を利用し、該一定間隔の位置における高さ方向の測定データを得る。該高さ方向の測定データについて、上記測定データ(X_i,Y_j,Z_ij)に対して、多項式又はスプライン関数等で面を形成し、該面を関数化する。そして、該関数に基づいて、一定間隔を有する上記2次元座標データ(x'_m,y'_n)における、任意点での高さ方向の値(Zh_mn)を推定する。そして、該推定値(Zh_mn)と、上記2次元座標データ(x'_m,y'_n)における上記高さデータの設計値(z'_mn)との差 dh_mn(=Zh_mn-z'_mn)を求めて、比較評価する。
【0018】
以上のように、従来の補間方法は、得られた測定データ、又はアライメント後の測定データ(X_i,Y_j,Z_ij)に対して、高さ方向のデータについて、多項式やスプライン関数により面を作成し、該面を関数化し、該関数を用いることで、任意位置における推定値及び補間値を求める方法である。この場合、推定及び補間される高さ方向の値の精度は、上記推定及び補間される位置の周辺位置における上記測定データにおける高さデータよって作られる面の曲率半径、傾斜面角度、測定ピッチ等に影響し、一般的にそれらの値が大きくなると推定値及び補間値の精度は悪くなる。
【0019】
その一例を、球面に対して行った一次関数による補間を図10〜図13を用いて説明する。図10は、理想的な球を2次元で測定し、測定データ(X_i,Z_i)と測定データ(X_i+1,Z_i+1)との間の任意位置における高さ方向の一次関数による補間について、概略的に示した図である。理想的な球の上記2次元測定データによる一次関数補間では、上記測定データ(X_i,Z_i)と上記測定データ(X_i+1,Z_i+1)との間の中央位置で、補間誤差が最大となる。
【0020】
図11は、理想的な球を3次元で測定し、測定データ(X_i,Y_j,Z_ij)、(X_i+1,Y_j,Z_i+1j)、(X_i,Y_j+1,Z_ij+1)、(X_i+1,Y_j+1,Z_i+1j+1)間の任意位置における、高さ方向の値を、一次関数により補間することを概略的に表している。理想的な球の上記3次元測定データによる一次関数による補間では、上記4点の測定データの重心位置で、補間誤差が最大となる。
【0021】
図12及び図Gは、測定ピッチ、曲率半径、及び測定面の傾斜角度をパラメータとして、図11における上記最大補間誤差を算出した結果を示している。この中で上記最大補間誤差に最も大きく影響を与えているのは、測定ピッチである。即ち、測定ピッチを小さくすることで、補間精度が良くなることが、図12及び図13の比較より分かる。
しかし、2次元測定の場合には、測定ピッチを細かくしても測定時間は変わらないが、3次元測定の場合、測定ピッチを細かくすることにより、測定時間が長くなる。例えば測定ピッチを半分にすると、測定時間は倍になる。測定時間が長くなると、振動や、空気の乱れ等の外乱の影響により、測定精度が悪くなる。又、3次元測定では、測定ピッチを小さくすることにより、測定データ量が多くなり、計算処理等に負荷がかかる。よって3次元測定では、測定ピッチを小さくし、推定及び補間値の精度を向上させることは現実的ではない。
【0022】
上述では、球面を例に採り推定及び補間について説明したが、測定対象としているのは球面に限定されず一般的な3次元の自由曲面である。よって球面よりも補間による任意点の推定は、より困難となる。又、上述の例では、一次関数による補間を用いたが、より高次の関数や多項式による補間の場合、図14に示すようにデータ間に振動が発生し、精度の高い推定及び補間ができない。スプライン関数を用いて振動を小さくしても、測定データ間において測定面の形状変化が大きい被測定物などに対しては、特に測定ピッチが大きい測定データによる、推定及び補間の精度は悪くなる。
【0023】
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたもので、被測定物の測定面の任意の位置における高さデータを高精度にて推定する高さデータ推定方法、該高さデータ推定方法を実行するための高さデータ推定用プログラム、及び上記高さデータ推定方法を実行する3次元形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様の高さデータ推定方法は、被測定物の測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための高さデータ推定方法であって、
上記測定面の形状を表した設計データ、及び上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求め、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求め、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める、
ことを特徴とする。
【0025】
又、本発明の第2態様の高さデータ推定用プログラムは、被測定物の測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための高さデータ推定用プログラムであって、
コンピュータを、
上記測定面の形状を表した設計データ、及び上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求める誤差値取得手段、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求める関数取得手段、及び、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める推定誤差値取得手段、
として機能させることを特徴とする。
【0026】
又、本発明の第3態様の3次元形状測定装置は、被測定物の3次元形状にてなる測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための3次元形状測定装置であって、
上記測定面の形状を測定する表面形状測定部と、
上記測定面形状を表した設計データ、及び上記表面形状測定部による上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求める誤差値取得部と、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求める関数取得部と、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める推定誤差値取得部と、
を備えたことを特徴とする。
【0027】
上述したように、従来にあっては、被測定物の測定面形状を測定した測定データの高さ方向のデータについて関数化し、該関数を用いて、被測定物の測定面の任意位置における形状データつまり高さデータを推定していた。尚、上記任意位置とは、高さデータを求めたい位置に対応する。よって、該推定値は、上記任意位置の周辺における測定データにおける高さデータに基づき作成される面の曲率半径及び傾斜面角度、又は測定ピッチ等に影響され、上記曲率半径等の値が大きくなると推定値及び補間値の精度は悪くなってしまう。
一方、上記第1態様の高さデータ推定方法、上記第2態様の高さデータ推定用プログラム、及び上記第3態様の3次元形状測定装置では、複数のサンプリング位置における高さデータに関して、設計データと測定データとの誤差値を求め、求まった誤差値にて形成される形状について関数を求める。そして、該関数に基づいて、被測定物の測定面の任意点における推定誤差値を求めるようにしている。したがって、上記「誤差値にて形成される形状」についての関数は、測定データの高さデータに基づき作成される面の曲率半径及び傾斜面角度とは無関係な関数となる。よって、該関数により求める上記推定誤差値の精度が上記曲率半径及び傾斜面角度の変化に応じて変動することもない。このように、上記第1〜3態様によれば、一定の精度にて推定誤差値を得ることができることから、従来に比べて、高い精度にて推定誤差値を得ることが可能となる。尚、上記「誤差値にて形成される形状」についての関数の具体的な一例としては、一次関数や3次のスプライン関数等が挙げられる。
【0028】
上述したように、3次元測定機による被測定物の測定では、プローブを移動させる移動体における位置決め誤差に起因して、X−Y座標系でのデータ間ピッチが一定にならない。又、プローブ5の先端スタイラス31が被測定面2a上を通過した軌跡上の粗い測定データのみの取得であり、高精度な密な測定データを取得することが困難である。一方、上記第1〜3態様によれば、上述のように、被測定物の測定面上の任意位置において上記推定誤差値を求めることができる。よって、上記任意位置における、設計データの設計高さデータに、上記推定誤差値を加えることで、上記任意位置における高さデータを補間することができる。したがって、上記移動体に起因する上記位置決め誤差を含んでいる、3次元測定機による被測定物の測定データを使用しても、例えば上記第1態様の高さデータ推定方法等を用いることで、上記データ間ピッチを一定とすることができ、該一定ピッチにおける高さデータを得ることができる。又、プローブ5の先端スタイラス31が被測定面2a上を通過した軌跡上の粗い測定データ以外の任意位置における、高精度な密な測定データを取得することができる。
よって、測定データにおけるデータ間ピッチを、設計データにおけるデータ間ピッチに一致させることができることから、設計データに基づき加工形成された対象物について、2次元又は3次元測定機により測定評価を行った場合であっても、上記対象物の設計や加工へのフィードバックを効率良く実行することが可能となる。又、被測定物の高精度な3次元グラフィック表示が可能となる。
【0029】
尚、上記第1態様及び上記第2態様において、被測定物の測定面は、3次元形状に限らず、2次元形状であってもよい。
又、上記第1態様から上記第3態様において、上記測定データとは、被測定物の測定面形状の測定により得られた、いわゆる生データであっても良いし、さらには、以下に記載するように、上記生データに対して上述のアライメント処理を施した後の補正済測定データであってもよい。
【0030】
又、上記第1態様において、上記測定面は3次元形状にてなり、
上記誤差値を求める前に、上記設計データの入力、及び上記測定データの取得が行われ、ここで、上記設計データは、2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記設計高さデータ(z0 ij')から構成され、取得した測定データは、上記2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記測定高さデータ(z0 ij)から構成され、
上記測定データの取得後、該測定データに対して、上記測定面形状を測定する3次元測定機に起因する測定誤差の補正、及び上記設計データの座標系と上記3次元測定機の座標系とのズレに相当するアライメント誤差の補正が行われ、補正後の補正済測定データを用いて上記誤差値が求められるようにしてもよい。
【0031】
さらに、上記第1態様において、上記3次元測定機における上記測定誤差の補正は、上記3次元測定機に備わるプローブの先端部の曲率半径に起因する測定誤差を補正するプローブ半径補正であり、
上記アライメント誤差の補正は、上記プローブ半径補正後における測定高さデータと、上記設計高さデータとの差を用いて求まる自乗平均値を最小とする補正であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0032】
上述の、本発明の第1態様の高さデータ推定方法、第2態様の高さデータ推定用プログラム、及び第3態様の3次元形状測定装置によれば、複数のサンプリング位置における高さデータに関して、設計データと測定データとの誤差値を求め、求まった誤差値にて形成される形状について関数を求める。そして、該関数に基づいて、被測定物の測定面の任意点における推定誤差値を求めるようにしている。したがって、上記推定誤差値の精度は、測定データの高さデータに基づき作成される面の曲率半径及び傾斜面角度とは無関係となり、一定となる。よって、従来に比べて、高い精度にてなる推定誤差値を得ることが可能となる。
【0033】
上記誤差値を求める前に、上記測定データに対して、3次元測定機における測定誤差の補正、及びアライメント誤差の補正を行い、補正済測定データにて上記誤差値を求めることで、より高精度にて上記推定誤差値を求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の実施形態である、高さデータ推定方法、該高さデータ推定方法を実行するための高さデータ推定用プログラム、及び上記高さデータ推定方法を実行する3次元形状測定装置について、図を参照して以下に説明する。尚、各図において、同じ構成部分には同じ符号を付している。
【0035】
まず、図2を参照して、本実施形態の3次元形状測定装置101について説明する。
3次元形状測定装置101は、基本的構成部分として、表面形状測定部110と、第2演算部130とを備える。
表面形状測定部110は、被測定物2の測定面2aの形状を測定する装置であり、図7に示す従来の形状測定装置20と同じ構成を有する。即ち、石定盤1101上には、被測定物2を載置する保持台1102が固定されるとともに、保持台1102に保持された被測定物2に対してX、Y、Z軸方向に原子間力プローブ5を駆動しかつ被測定物2の測定面2aの測定を行うレーザ測長光学系1104を備えた駆動測定部が設けられている。具体的には、石定盤1101上には、Y軸方向に可動なY−ステージ1110が設置され、Y−ステージ1110上には、該Y−ステージ1110に対してX軸方向に可動なX−ステージ1109が設置され、該X−ステージ1109上には、石定盤1122が設置されている。石定盤1122には、被測定物2の測定面2aの形状を測定するように構成されたプローブ5をZ軸方向に駆動するZ軸駆動部1111が取り付けられるとともに、上記測長光学系1104が設置されている。又、石定盤1101には、支持部を介してX参照ミラー1106、Y参照ミラー1107、及びZ参照ミラー1108が配置されている。
上記レーザ測長光学系1104は、レーザ光を利用し、既知の光干渉法により、X参照ミラー1106を基準とした原子間力プローブ5のX座標、Y参照ミラー1107を基準とした原子間力プローブ5のY座標、Z参照ミラー1108を基準とした原子間力プローブ5のZ座標をそれぞれ測長する。
【0036】
以上のような構成を有する表面形状測定部110には、該表面形状測定部110の動作制御及び測定物2の測定面2aの形状測定を行う、上記第2演算部130を含む制御装置180が電気的に接続されるとともに、本実施形態ではディスプレイ装置190及びプリンタ195が接続されている。
【0037】
制御装置180は、第1演算部120、第2演算部130、入力装置140、XYステージ制御部150、Z軸駆動部制御部160、及びパルスカウンタ170を有する。尚、上記第1演算部120は、補正部の機能を果たす一例に相当する。又、制御装置180は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構成することができる。
【0038】
第1演算部120には、第2演算部130、入力装置140、XYステージ制御部150、Z軸駆動部制御部160、及びパルスカウンタ170が電気的に接続される。第1演算部120は、機能的に区分して図3に示すように、制御部123、測定誤差補正部121、アライメント誤差補正部122、及び座標値算出部124を有する。
制御部123は、XYステージ制御部150及びZ軸駆動部制御部160に対して制御信号を送出するとともに、当該3次元形状測定装置101における動作制御を行う。又、制御部123には、記憶部125を有し、該記憶部125には、詳細後述する高さデータ推定方法を実行するための高さデータ推定用プログラムを格納することができ、制御部123は、上記高さデータ推定用プログラムを読み出して上記高さデータ推定方法を実行する。尚、上記高さデータ推定用プログラムは、予め記憶部125に格納しておいても良いが、入力装置140を介して入力することもできる。
XYステージ制御部150は、X−ステージ1109及びY−ステージ1110に備わる各駆動モータ1112、1113の動作制御を行うことで、X、Y軸方向におけるプローブ5の位置制御を行い、Z軸駆動部制御部160は、Z軸駆動部1111に備わる駆動モータの動作制御を行うことで、Z軸方向におけるプローブ5の位置制御を行う。
【0039】
パルスカウンタ170は、レーザ測長光学系1104から供給されるZ軸方向の測長信号を数値に変換し、第1演算部120へ送出する。第1演算部120の座標値算出部124は、上記数値から、測定面2aのZ座標値を算出する。同様に、測長光学系1104から供給されるX,Y軸方向における各測長数値が第1演算部120にて、測定面2aのX座標値及びY座標値として算出される。又、本実施形態では、算出されたZ座標値、X座標値、及びY座標値は、ディスプレイ190にリアルタイムに出力され、又、プリンタ195に出力される。
【0040】
さらに第1演算部120の測定誤差補正部121は、測定面2aの、算出されたZ座標値、X座標値、及びY座標値の測定データに対して、表面形状測定部110による測定誤差の補正を行う。該測定誤差の補正とは、図8を参照して上述したように、プローブ5のスタイラス31の先端部32の曲率半径Rに起因する測定誤差を補正するプローブ半径補正に相当する。又、第1演算部120のアライメント誤差補正部122は、上記算出されたZ座標値、X座標値、及びY座標値の測定データに対して、設計点群データの座標系と表面形状測定部110の座標系とのズレに相当するアライメント誤差の補正を行う。ここで、上記設計点群データとは、上述したように、被測定物2の測定面2aを作製するための設計情報であり、測定面2aの形状を表す座標データの集まりである。又、上記アライメント誤差の補正とは、上述したように、上記プローブ半径補正後における測定高さデータ、つまり測定面2aのZ座標値と、設計高さデータとの差を用いて求まる自乗平均値(RMS)を最小とする補正である。
入力装置140は、上記設計点群データや、測定データ等を入力するための装置である。
【0041】
第2演算部130は、本実施形態の3次元形状測定装置101における特徴の一つに相当する構成部分であり、機能的に区分して図4に示すように、誤差値取得部131、関数取得部132、推定誤差値取得部133、及び補間高さ取得部134を有する。該第2演算部130には、第1演算部120から、上記測定誤差補正及び上記アライメント誤差補正がなされた、つまりアライメント処理後の測定面2aのZ座標値、X座標値、及びY座標値の測定データが供給される。
上記誤差値取得部131は、上記設計点群データ、及び表面形状測定部110による測定面2aの測定データに基づいて、測定面2a上の複数のサンプリング位置において上記設計点群データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求める。
上記関数取得部132は、それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求める。
上記推定誤差値取得部133は、測定面2a上の任意位置における推定誤差値を上記関数から求める。
上記補間高さ取得部134は、上記任意位置における上記設計高さデータに上記推定誤差値を加えて上記任意位置における補間高さデータを求める。尚、上記任意位置とは、求めたい推定誤差値、補間高さデータを得るための位置、つまりデータ取得用位置に対応する。
尚、このような第2演算部130の詳しい動作説明については以下の高さデータ推定動作の説明にて行う。
又、本実施形態では、第1演算部120及び第2演算部130を別個の装置にて構成しているが、同じ装置に含めることもできる。
【0042】
以上のように構成される本実施形態の3次元形状測定装置101における動作、つまり被測定物2の測定面2aの形状測定動作について、図1を参照しながら以下に説明する。尚、プローブ5を測定面2aに追従させることによる上記測定面2aの形状測定データの取得動作については、従来動作と変わるところはない。よって、以下の説明では、主に、本実施形態において特徴的な動作の一つに相当する、上記形状測定データを利用した高さデータ推定方法について詳しく説明する。
【0043】
まず、ステップS1では、測定を行う被測定物2の測定面2aの設計情報である上記設計データを、入力装置140を用いて入力する。ここで上記設計情報として、2次元座標(x,y)が与えられれば高さ方向の値が求まる、z=f(x,y)という形の関数であっても良いし、又、2次元座標データ(x'_m,y'_n)に対して高さデータ(z'_mn)を有する有限個のデータに対して、3次スプラインやB−スプライン等のスプライン関数により関数化された式を与えても良い。
【0044】
次に、石定盤1101上の保持台1102に、被測定物2を保持させる。そして、表面形状測定部110の制御装置180におけるXYステージ制御部150及びZ軸駆動部制御部160の動作制御により、被測定物2の測定面2aに沿ってプローブ5の先端部のスタイラス31を追従させる。該追従動作によってレーザ測長光学系1104から送出される測長信号をもとに、制御装置180におけるパルスカウンタ170及び第1演算部120は、測定面2aの形状の3次元測定データを、2次元座標(x0_i,y0_j)データ、及び各座標位置における高さデータ(z0_ij)にて取得する。(ステップS2)
【0045】
次のステップS3では、上記ステップS2で得られた上記3次元測定データに基づいて、制御装置180における第1演算部120の測定誤差補正部121にて、プローブ5のスタイラス31の先端部32の曲率半径Rに起因する上記測定誤差を求め、測定データの補正を行う。即ち、測定面2aの設計式、又は取得した、サンプリング位置の前後の測定データより測定面2aの傾斜角度を求め、該傾斜角度とスタイラス31の先端部32の曲率半径Rを用いて上記測定誤差を求め、測定データの位置補正を行い、測定面2a上の補正後測定データ(x_i,y_j,z_ij)を算出する。
【0046】
次のステップS4では、ステップS3で得られた上記補正後3次元測定データに基づいて、第1演算部120のアライメント誤差補正部122にて以下の処理を行う。まず、上記補正後3次元測定データにおける補正済2次元座標(x_i,y_j)データ内のサンプリング位置での測定高さデータ(z_ij)と、上記設計データによる上記サンプリング位置での設計高さデータ(z_ij')との誤差(zd_ij=z_ij−z_ij')を算出する。そして、該誤差(zd_ij)データを用いて、下記数2の式にて求まる自乗平均値(RMS)が最小となるようにすることで、測定面2aの設計データにおける座標系と、当該表面形状測定部110における座標系とズレに相当するアライメント誤差の補正を行う。尚、上記RMSが最小になるとは、本実施形態では、RMSが予め決めた一定値A以下になるまで、繰り返し座標系をアライメントすることである。
(数2)
RMS=√{Σ(zd_ij)/N−(Σzd_ij/N)
尚、上述のステップS1〜S4までは、従来でも行われていた動作である。
【0047】
次のステップS5では、上記ステップS4にて得られた3次元測定データ、つまり上記測定誤差の補正及び上記アライメント誤差の補正、即ちアライメント処理を行ったアライメント処理済3次元測定データを用いて処理を行う。即ち、ステップS4にて説明した場合と同様に、アライメント処理済3次元測定データを構成する2次元座標(X_i,Y_j)データにおける各サンプリング位置での測定高さデータ(z_ij)と、上記設計データにおける上記サンプリング位置での設計高さデータ(z_ij')との誤差(zd_ij=z_ij−z_ij')の点群データについて、多項式又はスプライン関数を用いて面を形成し関数化する。従来は、被測定物2の測定面2aの値(x_i,y_j,z_ij)又は、そのアライメント後のデータ(X_i,Y_j,Z_ij)に対して、面を形成していた。これに対し本実施形態では、上記アライメント処理を行ったアライメント処理済3次元測定データ、つまり測定面2aを表す高さ方向について上記誤差(zd_ij)データを含むデータ(X_i,Y_j,Zd_ij)に対して、多項式又はスプライン関数を用いて面を形成し関数化する。
【0048】
図5及び図6を参照して、より具体的に説明する。図5において、曲線210は、被測定物2の測定面2aを表す設計データにより描かれた曲線であり、曲線220は、上記測定面2aを当該表面形状測定部110のプローブ5にて測定して得られたデータに対して上記アライメント処理を施した後のアライメント処理済測定データにより描かれた曲線である。尚、点線で示す曲線290は、上記測定面2aを当該表面形状測定部110のプローブ5にて測定したままのデータ、つまり上記アライメント処理をしていないデータ、により描かれた曲線である。
【0049】
従来、補正していない曲線290、及びアライメント処理後のアライメント処理済測定データ曲線220について関数化を行っていた。本実施形態では、アライメント処理後のアライメント処理済測定データ曲線220と、設計データ曲線210とに着目する。そして、複数のサンプリング位置230における、設計データ曲線210から得られる設計高さデータ(z_ij')211−1、211−2、…と、アライメント処理済測定データ曲線220から得られる測定高さデータ(z_ij)221−1、221−2、…との誤差(zd_ij)235−1、235−2、…をそれぞれ求める。該誤差値は、設計高さデータに対する相対値にて表している。求めたこれらの誤差群データ(zd_ij)235−1、235−2、…に基づいて、図6に示すように、サンプリング位置230と誤差Zdとの関係について関数化する。つまり図6に示す誤差データ曲線240を求める。
尚、当然のことながら、アライメント処理後の測定データ曲線220と、設計データ曲線210との誤差が小さいほど、誤差データ曲線240と設計データ曲線210との偏差は小さくなる。よって、下記の、高さデータの推定値を高精度に求めることができる。
【0050】
従来であれば、図10及び図11を参照して説明したように、被測定物2の測定面2aを測定して得られた測定データから求めた曲線に基づいて任意点における形状データつまり高さデータを補間して求めるとき、上記任意点の周辺における、上記測定データから求めた曲線の曲率半径や傾斜面角度が補間値に影響し補間誤差が大きくなるという問題があった。一方、本実施形態によれば、上述のように上記誤差値を関数化することから、上記曲率半径や傾斜面角度が補間値に影響することはなくなる。よって、上記誤差値に基づいた関数にて求まる推定誤差値の精度は、上記曲率半径及び傾斜面角度の変化に応じて変動することもない。従って、一定の精度にて上記推定誤差値を得ることができることから、従来に比べて、高い精度にて上記推定誤差値を得ることができる。
【0051】
さらに又、上述のように求めた誤差データ曲線240に基づいて、ステップS6では、被測定物2の測定面2aの測定範囲内における任意位置(X,Y)、例えば図6に示す任意位置231における推定誤差値(Zd)236を求めることができる。
次のステップS7では、上記設計データ曲線210を利用して上記任意位置における設計高さデータ(Z')を求め、該設計高さデータ(Z')と上記推定誤差値とを加えることで、測定面2aの上記任意位置における高さデータの推定値(Z)を算出することもできる。
【0052】
従来、上述したように、3次元形状測定機のプローブ移動機構に起因する位置決め誤差により、設計データと測定データとのデータ間ピッチが一致せず、設計データに基づき加工形成された対象物について3次元測定機にて測定評価を行っても上記対象物の設計や加工へのフィードバックが容易に行えないという問題があった。しかしながら、本実施形態では、上述のように任意位置における測定面2aの高さデータの推定値を従来に比べて高精度にて求めることができることから、上記データ間ピッチを一致させることができる。従って、3次元測定機による測定評価後、上記対象物の設計や加工へのフィードバックが容易に行うことが可能となる。
又、データ間ピッチを比較的広い3次元測定データからでも、上述の高さデータ推定方法にて上記高さデータ推定値を得ることができることから、データ間ピッチを細かくした高精度な3次元グラフィックを形成することもできる。
【0053】
上述の実施形態では、3次元形状の測定を例に採り説明したが、上述の高さデータ推定方法は、2次元形状の測定においても適用可能である。
又、上述の実施形態では、被測定物2の測定面2aをプローブ5にて測定する動作を含めて説明したが、必ずしも上記測定動作は必要としない。即ち、測定面2aを測定したデータであって、さらに上述のアライメント処理を施した測定データが存在するときには、上記測定動作は必要なく、上記アライメント処理済測定データを、入力装置140を介して当該3次元形状測定装置101へ入力すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えばレンズのような連続的に形状が変化する被測定物の測定面に対する高精度な形状評価を行うに当たり、被測定物測定面の2次元又は3次元測定データを用いて、上記測定面の任意の位置における高さデータを高精度にて推定する方法、装置、及びプログラムに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態である高さデータ推定方法における動作手順を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す高さデータ推定方法を実行する、本発明の実施形態における3次元形状測定装置の構成を示す図である。
【図3】図2に示す第1演算部の構成を説明するための図である。
【図4】図2に示す第2演算部の構成を説明するための図である。
【図5】図1に示すステップS5の動作を説明するためのグラフである。
【図6】図1に示すステップS5、S6の動作を説明するためのグラフである。
【図7】従来の形状測定装置の構成例を示す斜視図である。
【図8】図7に示す形状測定装置に備わるプローブ先端のスタイラスが被測定物の測定面に追従している様子を説明するための図である。
【図9】図7に示す形状測定装置にて球を測定したときの測定例の図である。
【図10】理想的な球を2次元で測定し、一次関数により任意位置における高さ方向の補間値を求める方法を概略的に表した図である。
【図11】理想的な球を3次元で測定し、一次関数により任意位置における高さ方向の補間値を求める方法を概略的に表した図である。
【図12】図10における最大補間誤差を、測定ピッチ、曲率半径、測定面の傾斜角度をパラメータとして算出した結果を表したグラフである。
【図13】図10における最大補間誤差を、測定ピッチ、曲率半径、測定面の傾斜角度をパラメータとして算出した結果を表したグラフである。
【図14】測定データを高次の関数や多項式により補間した場合の様子を表した図である。
【符号の説明】
【0056】
2…被測定物、2a…測定面、32…先端部、
110…表面形状測定部、120…第1演算部、131…誤差値取得部、
132…関数取得部、133…推定誤差値取得部、134…補間高さ取得部、
140…入力装置、
210…設計データ曲線、220…測定データ曲線、230…サンプリング位置、
235…誤差、236…推定誤差値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための高さデータ推定方法であって、
上記測定面の形状を表した設計データ、及び上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求め、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求め、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める、
ことを特徴とする高さデータ推定方法。
【請求項2】
上記測定面は3次元形状にてなり、
上記誤差値を求める前に、上記設計データの入力、及び上記測定データの取得が行われ、ここで、上記設計データは、2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記設計高さデータ(z0 ij')から構成され、取得した測定データは、上記2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記測定高さデータ(z0 ij)から構成され、
上記測定データの取得後、該測定データに対して、上記測定面形状を測定する3次元測定機に起因する測定誤差の補正、及び上記設計データの座標系と上記3次元測定機の座標系とのズレに相当するアライメント誤差の補正が行われ、補正後の補正済測定データを用いて上記誤差値が求められる、請求項1記載の高さデータ推定方法。
【請求項3】
上記3次元測定機における上記測定誤差の補正は、上記3次元測定機に備わるプローブの先端部の曲率半径に起因する測定誤差を補正するプローブ半径補正であり、
上記アライメント誤差の補正は、上記プローブ半径補正後における測定高さデータと、上記設計高さデータとの差を用いて求まる自乗平均値を最小とする補正である、請求項2記載の高さデータ推定方法。
【請求項4】
上記推定誤差値を求めた後、上記任意位置における設計高さデータに上記推定誤差値を加えることで、上記任意位置における上記高さデータに相当する補間高さデータをさらに求める、請求項1から3のいずれかに記載の高さデータ推定方法。
【請求項5】
被測定物の測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための高さデータ推定用プログラムであって、
コンピュータを、
上記測定面の形状を表した設計データ、及び上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求める誤差値取得手段、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求める関数取得手段、及び、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める推定誤差値取得手段、
として機能させるための高さデータ推定用プログラム。
【請求項6】
上記測定面は3次元形状にてなり、
上記誤差値取得手段として機能させる前に、コンピュータを、上記設計データの入力を行うデータ取得手段、並びに、取得した測定データに対して、上記測定面形状を測定する3次元測定機に起因する測定誤差の補正、及び上記設計データの座標系と上記3次元測定機の座標系とのズレに相当するアライメント誤差の補正を行う補正手段、として機能させる、請求項5記載の高さデータ推定用プログラム。
【請求項7】
上記3次元測定機における上記測定誤差の補正は、上記3次元測定機に備わるプローブの先端部の曲率半径に起因する測定誤差を補正するプローブ半径補正であり、
上記アライメント誤差の補正は、上記プローブ半径補正後における測定高さデータと、上記設計高さデータとの差を用いて求まる自乗平均値を最小とする補正である、請求項6記載の高さデータ推定用プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、上記任意位置における上記設計高さデータに上記推定誤差値を加えることで、上記任意位置における上記高さデータに相当する補間高さデータを求める補間高さ取得手段としてさらに機能させる、請求項5から7のいずれかに記載の高さデータ推定用プログラム。
【請求項9】
被測定物の3次元形状にてなる測定面の任意位置における形状を表す高さデータを得るための3次元形状測定装置であって、
上記測定面の形状を測定する表面形状測定部と、
上記測定面形状を表した設計データ、及び上記表面形状測定部による上記測定面形状の測定により得られた測定データに基づいて、上記測定面上の複数のサンプリング位置において上記設計データから得られる設計高さデータと、上記サンプリング位置において上記測定データから得られる測定高さデータとの誤差値をそれぞれ求める誤差値取得部と、
それぞれの上記サンプリング位置及び上記誤差値から上記誤差値を表す関数を求める関数取得部と、
上記測定面上の任意位置における上記高さデータを得るための推定誤差値を上記関数から求める推定誤差値取得部と、
を備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。
【請求項10】
上記設計データは、2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記設計高さデータ(z0 ij')から構成され、取得した測定データは、上記2次元座標(x0 i, y0 j)データ、及び該2次元座標データにおける上記サンプリング位置での上記測定高さデータ(z0 ij)から構成され、
上記設計データの入力装置と、
取得した測定データに対して、上記設計データの座標系と上記表面形状測定部の座標系とのズレに相当するアライメント誤差の補正、及び上記表面形状測定部に起因する測定誤差の補正を行う補正部と、をさらに備えた、請求項9記載の3次元形状測定装置。
【請求項11】
上記表面形状測定部は、球状の先端部にて上記測定面を追従して上記測定面形状を測定するプローブを有し、
上記補正部は、上記測定誤差の補正に相当する、上記プローブの上記先端部の曲率半径に起因する測定誤差の補正であるプローブ半径補正を行う測定誤差補正部と、上記アライメント誤差の補正を行うアライメント誤差補正部とを有し、該アライメント誤差補正部は、上記プローブ半径補正後における測定高さデータと、上記設計高さデータとの差を用いて求まる自乗平均値を最小とする演算を行う、請求項10記載の3次元形状測定装置。
【請求項12】
上記任意位置における上記設計高さデータに上記推定誤差値を加えることで、上記任意位置における上記高さデータに相当する補間高さデータを求める補間高さ取得部をさらに備えた、請求項9から11のいずれかに記載の3次元形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−105717(P2006−105717A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−291178(P2004−291178)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】