説明

高さ方向移動検出装置、高さ検出装置、ナビゲーション装置、プログラム、および携帯無線電話端末装置

【課題】個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに、歩行物体の高さ方向の移動を検出すること。
【解決手段】高さ方向移動検出装置100は、人、物、および動物等を含む歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出手段101と、検出された加速度と関連付けるための時刻を計測する時刻計測手段102と、検出された加速度のピークを検出する第1のピーク検出手段104と、検出されたピークに基づく所定期間を歩行の周期として、当該歩行の周期における加速度の時間平均を計算する時間平均手段106と、計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出手段108と、そのピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻、およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出する高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の移動を検出する技術に関し、より詳細には、歩行動作を行なう人、物、および動物等を含む歩行物体の高さ方向即ち鉛直方向の移動を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に属する従来の技術として、水平面に概ね平行な進行方向加速度の強度(XACT)と重力方向に概ね平行な加速度の強度(ZACT)との比率(ZACT/XACT)を用いて、平地走行、平地歩行、階段上昇、階段下降、等の運動形態を判別する技術(体動検出装置)が知られている。図16はその原理説明図である(例えば、特許文献1参照)。運動形態の判別では、ZACT(単位:8.5×10−4)/XACT(単位:1.07×10−4)が算出される。最初に、XACTが100以下かどうかが判断され、もし真なら、次にZACT/XACTが5以下かどうかが判断され、真なら運動形態が平地歩行とされる。一方、偽なら運動形態は平地歩行以外であり、更にZACT/XACTが20以上かどうかが判断され、真なら運動形態が階段下降とされ、偽なら階段上昇とされる。XACTが100以下かどうか判断した結果が偽なら、ZACTが200以下かどうかが判断され、真なら運動形態が平地歩行とされ、偽なら平地歩行外の平地走行とされる。
【0003】
また、被験者の歩行に伴う前進方向および上方向の加速度を検出し、それらの検出結果から交差相関関数を計算し、その計算結果とメモリに記憶してある水平歩行、上昇歩行および下降歩行の交差相関関数とを比較することにより、いずれの歩行行動であるかを判別する技術(歩行航行装置)も知られている。図17はその歩行行動判別処理の内容を示すフロー図である(例えば、特許文献2参照)。CPUは、図17の歩行行動判別処理の前に、初期化を実行した後、複数の加速度センサー等からのデータの読み込みを行ない、加速度の交流成分を計算し、スライドウィンドウによって正のピーク値および負のピーク値を検出(サーチ)し、ピーク値を検出しなければ被験者が歩行を開始していないと判断して再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行ない、一方ピーク値を検出しても4つのピーク値を検出しなければ誤検出であると判断して再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行ない、他方4つのピーク値を検出すれば一歩を検出したと判断して歩行かどうかを判断し、歩行でないと判断した場合は再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行ない、そして他方、歩行であると判断した場合、歩行行動判別処理を実行する。CPUは、図17の歩行行動判別処理において、前進方向の加速度および上方向の加速度の交差相関関数を計算し、得られた結果から負のピーク値(最小ピーク値)および正のピーク値(最大ピーク値)を検出(取得)し、そして下降歩行かどうかを判断し、下降歩行でないと判断した場合、予め記憶しておいた特徴値と比較し、その結果、特徴値が一致または近似する歩行行動(水平歩行あるいは上昇歩行)を検出し、続いて水平歩行かどうかを判断し、水平歩行であればカウンタC1をインクリメントし、そして現在位置を更新してから再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行なう。一方、CPUは、水平歩行かどうかを判断した結果、上昇歩行であればカウンタC2をインクリメントしてから再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行なう。また、CPUは、下降歩行かどうか判断した結果、下降歩行であればカウンタC3をインクリメントしてから再び複数のセンサーからのデータの読み込みを行なう。
【0004】
特許文献1に記載された従来の体動検出装置の構成では、水平面に概ね平行な進行方向加速度の強度(XACT)と重力方向に概ね平行な加速度の強度(ZACT)との比率が個人差、体調、床の状態、等によって大きく変わるので、多くの人が広い範囲で使用しようとすると誤検出が多くなる。
【0005】
特許文献2に記載された従来の歩行航行装置の構成では、交差相関関数を計算するために端末装置の計算負荷が大きくなり、また比較用の加速度波形データも含めて加速度データの記憶のためにメモリ容量が大きくなるので、サイズや処理能力に制約がある携帯無線電話端末装置としては実現しやすい構成ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平11−42220号公報(図3)
【特許文献2】特開2002−139340号公報(図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、個人差、体調、床の状態、等による影響を受けず、しかも端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を増大させることなく、歩行者等の歩行物体の高さ方向の移動を検出することができる高さ方向移動検出装置、高さ検出装置、ナビゲーション装置、プログラム、および携帯無線電話端末装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高さ方向移動検出装置は、
歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出手段と、
前記高さ方向加速度検出手段により検出された加速度と関連付けるための時刻を計測する時刻計測手段と、
前記加速度のピークを検出する第1のピーク検出手段と、
前記第1のピーク検出手段により検出された複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として、当該歩行の周期における前記加速度の時間平均を計算する時間平均手段と、
前記時間平均手段により計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出手段と、
前記第2のピーク検出手段により検出したピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻、およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出する移動時刻判定手段と、
を備える。
このように、歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度の複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として当該歩行の周期における加速度の時間平均を計算し、それにより算出された加速度の時間平均のピークを検出し、そして当該検出されたピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出することにより、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また本発明の高さ方向移動検出装置を端末装置に設ければ、当該端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに歩行物体の高さ方向の移動を検出することができる。
【0009】
本発明の高さ方向移動検出装置において、前記時間平均を計算するための前記歩行の周期を、前記第1のピーク検出手段により検出された第1のピークとその次のピークである第2のピークとの中間時点から当該第2のピークとその次のピークである第3のピークとの中間時点までの期間とすることが望ましい。
このように、時刻がわずかにずれると加速度の時間平均が大きく変化してしまう加速度のピークの時点あるいはピーク付近の時点を避けて、時間平均を計算するための歩行の周期が設定されるので、歩行物体の高さ方向の移動の検出における誤差の増大を防止できる。
【0010】
また、本発明の高さ検出装置は、
本発明の高さ方向移動検出装置と、
当該高さ方向移動検出装置によって検出された高さ方向の移動開始時刻から移動終了時刻まで高さ方向の加速度を2回積分する積分手段と、
を備える。
この構成によって高さをも検出することができる。
【0011】
また、本発明の別の高さ検出装置は、
本発明の高さ方向移動検出装置と、
当該高さ方向移動検出装置によって検出された移動開始時刻、移動終了時刻およびその移動の向きに基づいて、通行路の3次元的な座標情報を表すノードデータと当該ノードデータの接続状況、種別および属性を表すリンクデータとを含む地図データを参照して、マップマッチングを行なって高さを検出するマップマッチング手段と、
を備える。
この構成によっても高さを検出することができる。
【0012】
また、本発明のナビゲーション装置は、
本発明の高さ検出装置と、
方位検出手段と、
を備える。
この構成によってナビゲーションをも実現することができる。
【0013】
また、本発明の別のナビゲーション装置は、
本発明の高さ検出装置と、
GPS信号受信手段(換言すれば、全地球測位システム信号受信手段)と、
方位検出手段と、
を備える。
この構成によってもナビゲーションを実現することができる。
【0014】
また、本発明の高さ方向移動検出プログラムは、
歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出ステップと、
前記高さ方向加速度検出ステップにより検出された加速度と関連付けるための時刻計測ステップと、
前記加速度のピークを検出する第1のピーク検出ステップと、
前記第1のピーク検出ステップにより検出された複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として、当該歩行の周期における前記加速度の時間平均を計算する時間平均ステップと、
前記時間平均ステップにより計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出ステップと、
前記第2のピーク検出ステップにより検出したピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻、およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出する移動時刻判定ステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ方向移動検出プログラムである。
このように、歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度の複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として当該歩行の周期における加速度の時間平均を計算し、それにより算出された加速度の時間平均のピークを検出し、そして当該検出されたピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出することにより、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また本発明の高さ方向移動検出プログラムに従って上記ステップを実行するコンピュータを端末装置に設ければ、端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに歩行物体の高さ方向の移動を検出することができる。
【0015】
本発明の高さ方向移動検出プログラムにおいて、前記時間平均を計算するための前記歩行の周期を、前記第1のピーク検出ステップにより検出された第1のピークとその次のピークである第2のピークとの中間時点から当該第2のピークとその次のピークである第3のピークとの中間時点までの期間とすることが望ましい。
このような高さ方向移動検出プログラムによって、時刻がわずかにずれると加速度の時間平均が大きく変化してしまう加速度のピークの時点あるいはピーク付近の時点を避けて、時間平均を計算するための歩行の周期が設定されるので、歩行物体の高さ方向の移動の検出における誤差の増大を防止できる。
【0016】
また、本発明の高さ検出プログラムは、
本発明の高さ方向移動検出プログラムの全ステップと、
当該高さ方向移動検出プログラムの移動時刻判定ステップにより検出された高さ方向の移動開始時刻から移動終了時刻まで高さ方向の加速度を2回積分する積分ステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ検出プログラムである。
このような高さ検出プログラムによって高さをも検出することができる。
【0017】
また、本発明の別の高さ検出プログラムは、
本発明の高さ方向移動検出プログラムの全ステップと、
当該高さ方向移動検出プログラムの移動時刻判定ステップにより検出された移動開始時刻、移動終了時刻およびその移動の向きに基づいて、通行路の3次元的な座標情報を表すノードデータと当該ノードデータの接続状況、種別および属性を表すリンクデータとを含む地図データを参照して、マップマッチングを行なって高さを検出するマップマッチングステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ検出プログラムである。
このような高さ検出プログラムによっても高さを検出することができる。
【0018】
また、本発明のナビゲーションプログラムは、
本発明の高さ検出プログラムの全ステップと、
方位検出ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
このようなナビゲーションプログラムによってナビゲーションをも実現することができる。
【0019】
また、本発明の別のナビゲーションプログラムは、
本発明の高さ検出プログラムの全ステップと、
GPS信号受信ステップと、
方位検出ステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
このようなナビゲーションプログラムによってもナビゲーションを実現することができる。
【0020】
尚、歩行物体は、歩行動作を行なう人(即ち、歩行者)に限らず、例えば、歩行ロボット等といった物、ペット、家畜、等といった動物、等、歩行動作を行なう物体であれば何でもよい。また、歩行には、歩行のほか、走行、階段の昇り、階段の降り、エレベータおよびエスカレータの乗車、静止、等も含まれるものとする。また、端末装置の例としては、携帯無線電話端末装置(即ち、いわゆる携帯電話)、携帯無線情報端末装置、等といった携帯端末装置が挙げられる。
【0021】
また、本発明の携帯無線電話端末装置は、本発明の高さ方向移動検出装置、本発明の高さ検出装置、本発明のナビゲーション装置、本発明の高さ方向移動検出プログラムおよび当該高さ方向移動検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、本発明の高さ検出プログラムおよび当該高さ検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、または、本発明のナビゲーションプログラムおよび当該ナビゲーションプログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、を備える。
このように、近年世の中に非常に普及している携帯無線電話端末装置に、本発明の高さ方向移動検出装置、本発明の高さ検出装置、本発明のナビゲーション装置、本発明の高さ方向移動検出プログラムおよび当該高さ方向移動検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、本発明の高さ検出プログラムおよび当該高さ検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、または、本発明のナビゲーションプログラムおよび当該ナビゲーションプログラムに従って各ステップを実行するコンピュータが具備されれば、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに、歩行物体の高さ方向の移動を検出すること、歩行物体の高さ方向の位置を検出すること、あるいはナビゲーションを実現することができ、このように非常に便利な機能を携帯無線電話端末装置が備えることとなり、好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに歩行物体の高さ方向の移動を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は本発明に係る高さ方向移動検出装置の実施形態例を示す構成図である。図1において、高さ方向移動検出装置100は、高さ方向加速度検出手段101、時刻計測手段102、高さ方向加速度記憶手段103、第1のピーク検出手段104、平均計算開始・終了決定手段105、高さ方向加速度の時間平均手段106、第2のピーク検出手段108、および移動時間判定手段として働く高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109を備える。
【0025】
時刻計測手段102は、高さ方向加速度検出手段101で検出した加速度データを時刻と関連づけるために用いるもので、例えばロジック回路におけるクロック信号を時刻の基準として利用してクロック信号と同期をとった加速度データを取得するようにする。従って以下で高さ方向加速度はすべて時刻と関連づけられたものとする。
【0026】
高さ方向加速度検出手段101は、歩行物体の歩行に伴う高さ方向の振動による加速度を電気信号として検出する手段であり、例えば少なくとも1軸の加速度センサーを用いて実現される。2軸以上の加速度センサーを利用する場合には複数ある軸のうちどれか一つの軸の加速度成分を高さ方向加速度として利用してもよいし、複数ある軸の各成分から計算によって高さ方向加速度を求めて利用してもよい。
【0027】
図2(a)は歩行物体の運動が平地歩行から階段降りの状態に変化するときの重力加速度を含む高さ方向加速度の検出波形図、図2(b)は歩行物体の運動が平地歩行から階段降りの状態に変化するときの重力加速度を含まない高さ方向加速度の検出波形図、そして図2(c)はこのときの高さ方向加速度の時間平均をプロットした図である。図3(a)は歩行物体の運動が階段降りから再び平地歩行の状態に変化するときの重力加速度を含む高さ方向加速度の検出波形図、図3(b)は歩行物体の運動が階段降りから再び平地歩行の状態に変化するときの重力加速度を含まない高さ方向加速度の検出波形図、そして図3(c)はこのときの高さ方向加速度の時間平均をプロットした図である。
【0028】
高さ方向加速度検出手段101で検出される高さ方向加速度は例えば、平地歩行から階段降りの状態に変化するときは図2(a)または図2(b)、階段降りから再び平地歩行の状態に変化するときは図3(a)または図3(b)のようなものになる(下向きの動加速度を正とする。)。加速度センサーの種類によって振動による動加速度だけ検出するもの(図2(b)および図3(b)参照)と、振動による動加速度と地球の引力による重力加速度の両方を検出するもの(図2(a)および図3(a)参照)がある。図2(a)と図2(b)の違いおよび図3(a)と図3(b)の違いは重力加速度の分だけオフセットがかかっている点で、波形の形は同じである。図2(a)ならびに図3(a)の場合には予め重力加速度のオフセットを測定しておいて、これを差し引くことで図2(b)ならびに図3(b)のような波形にすることができる。以下では図2(b)および図3(b)の波形を使って説明を続ける。
平地歩行から階段降りの状態に変化するときの高さ方向の加速度の波形を図2(b)を参照して説明する。図2(b)において、t=0.5,1.0,1.5,2.0等のピークは歩行動作において脚が地面を蹴ることに対応している。また、t=1.0までのピークの大きさと、それ以後のピークの大きさが変化しているのは、平地歩行から階段降りへと歩行状態が変化したためである。このような加速度波形の変化から歩行状態の変化を検出することができる。しかし、この波形は、平地と階段の昇り降りの違いだけでなく、個人差、体調、床の状態等によって影響を受ける。そのため、単純にピークの大きさだけからこの波形から平地と階段の昇り降りの違いを区別すると、検出を誤る確率が高くなる。そこで、本発明においては、高さ方向加速度の時間平均を行なうことで、平地歩行から階段降りの状態への変化等の誤検出の確率を低くすることとした。
【0029】
高さ方向加速度記憶手段103は、高さ方向加速度検出手段101で検出された高さ方向加速度を時刻と関連付けて記憶する。高さ方向加速度記憶手段103に記憶される高さ方向加速度は、高さ方向加速度検出手段101で検出された高さ方向加速度なので、例えば、図2(a)もしくは図2(b)または図3(a)もしくは図3(b)に示すような波形としてグラフに表すことができるものである。
【0030】
第1のピーク検出手段104は、高さ方向加速度検出手段101で検出された高さ方向加速度から、高さ方向加速度のピークを検出する。
【0031】
高さ方向加速度の時間平均手段106は、高さ方向加速度記憶手段103に記憶しておいた高さ方向加速度を期間毎に区切って、それぞれの期間毎に高さ方向加速度の時間平均を計算する。この時間平均を計算する期間の開始時刻と終了時刻は、それぞれ計算開始時刻および計算終了時刻として時間平均手段106に入力される。この計算開始時刻および計算終了時刻は、平均計算開始・終了決定手段105で決定する。平均計算開始時刻は、例えば、ピークの時刻(“t”とする。)とその次のピークの時刻(“t”とする。)との中間の時刻(即ち、(t+t)/2)とする。平均計算終了時刻は、例えば、その次のピークの時刻(t)とさらにその次のピークの時刻(“t”とする。)との中間の時刻(即ち、(t+t)/2)とする。図2(a)または図2(b)の場合には、ピークの時刻は、t=0.5、t=1.0、t=1.5等であるので、平均計算開始時刻は(t+t)/2=0.75、平均計算終了時刻は(t+t)/2=1.25と決定される。高さ方向加速度の時間平均手段106は、この期間の高さ方向加速度の時間平均を計算する。この期間の高さ方向加速度の時間平均の計算結果は平均計算開始時刻と平均計算終了時刻の中間の時刻と関連づけて扱う(t=0.5、t=1.0、t=1.5の例は、図2(c)のt=1.0における点に対応する)。図2(c)のt=0.5,1.5,2.0,2.5等の他の点も同様に計算される。なお、より一般的には、計算開始時刻および計算終了時刻は、その時間差が歩行の周期に一致していればよい。ただし、ピーク付近を計算開始時刻および計算終了時刻とすることは、時刻がわずかにずれると加算される加速度が大きく変化するために誤差が大きくなりやすいので、好ましくない。
【0032】
図2(c)および図3(c)に示すように、以上の手順で計算された高さ方向加速度の時間平均は、平地歩行を続けている場合(t=0.5,t=4.5,t=5.0の点)、階段降りを続けている場合(t=1.0,t=1.5,t=3.0,t=3.5の点)、および階段昇りを続けている場合(図示せず)には、ほぼ零になる。その理由は、もしそうでなければ、高さ方向に加速してしまうはずで、そうすると、平地歩行を続けている、階段降りを続けている等の状態に反してしまうからである。それに対して、平地歩行から階段降りの状態に変化する場合(t=1.0)、階段降りから再び平地歩行の状態に変化する場合(t=4.0)等には、零にならない。本発明は、この現象を利用して、歩行状態の変化を検出する。この現象は、個人差、体調、床の状態等によって影響を受けにくいため、平地から階段の昇り降り等への状態の変化を良好に検出することができる。以下では、この現象を利用した歩行状態の変化の検出と、高さ方向移動検出について説明する。
【0033】
第2のピーク検出手段108は、高さ方向加速度の時間平均手段106で計算された高さ方向加速度の時間平均から、高さ方向加速度の時間平均のピークを検出する。具体的には、例えば、高さ方向加速度の時間平均の絶対値が、予め決めておいた閾値以上のときにピークと判定する。例えば図2(c)や図3(c)のような波形ではそれぞれt=1.0に正のピークとt=4.0に負のピークが検出される。第2のピーク検出手段108でピークを検出した時刻は、平地から階段の昇り降り等への状態の変化の時刻と考える。また、ピークの正負の符号から高さ方向移動の向きを判定する。この実施形態の例では下向きを正としているので、正のピークの場合は下向き、負のピークの場合は上向きである。
【0034】
高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109は、第2のピーク検出手段108で検出されたピークの時刻から高さ方向移動開始時刻および終了時刻の判定をする。まず予め平地歩行または静止の状態で高さ方向移動開始時刻および終了時刻を初期値(即ち、零)にリセットしておく。このリセットされた状態の後最初に検出されたピーク時を高さ方向移動開始の時刻と判定し、その次に検出されたピーク時を高さ方向移動終了の時刻と判定して再び初期値(即ち、零)にリセットをする。例えば図2(c)や図3(c)のような波形ではそれぞれt=1.0で下向き移動開始とt=4.0で下向き移動終了と判定される。また第2のピーク検出手段108で判定された高さ方向移動の向きを高さ方向移動開始時刻および・終了時刻の判定と関連付けて判定する。
【0035】
以上では階段降りの場合、即ち平地歩行から階段降りの状態に変化するとき(図2(a)〜図2(c)参照)と階段降りから再び平地歩行の状態に変化するとき(図3(a)〜図3(c)参照)を例に挙げて説明したが、以上で説明した高さ方向移動検出装置1を用いれば階段昇り、エレベータ昇り、エレベータ降り、エスカレータ昇り、エスカレータ降り、等の場合にも同様に高さ方向移動の開始と終了の判定をすることができる。また、昇りまたは降りの向きの判定をすることができる。即ち以上で説明した高さ方向移動検出装置1は図4に示した各状態の開始と終了という状態変化に伴う高さ方向移動の開始と終了の検出とその向きの検出をすることができる。
【0036】
次に、上記のように構成された第1実施形態の高さ方向移動検出装置1の動作をフローチャートを用いて簡単に説明する。図5、図6および図7は第1実施形態の高さ方向移動検出装置1における高さ方向移動検出の手順を示すフローチャートである。まず初期設定(即ち、ステップS101)を行なった後、高さ方向加速度検出手段101から高さ方向加速度データを取得する(即ち、ステップS102)。次に高さ方向加速度データを高さ方向加速度記憶手段103に時刻と関連づけて記憶する(即ち、ステップS103)。次に高さ方向加速度のピークを検出していればステップS111に進む。高さ方向加速度のピークを検出していなければステップS105に進み、更に平均計算終了時から一定時間以上経過していなければステップS102に戻り、一定時間以上経過していればステップS131に進む(即ち、ステップS104、S105)。
【0037】
高さ方向加速度のピークが検出されるときにはステップS111からS120の手順が実行される。ステップS111では高さ方向加速度の第1のピークが決定済みであればステップS113に進み、高さ方向加速度の第1のピークが決定済みでなければ、検出したピークを第1のピークとし(即ち、ステップS112)、再度ステップS102に戻る。次に高さ方向加速度の第2のピークが決定済みであればステップS115に進み、高さ方向加速度の第2のピークが決定済みでなければ、検出したピークを第2のピークとし(即ち、ステップS114)、再度ステップS102に戻る。次に検出したピークを第3のピークとする(即ち、ステップS115)。以上のステップで、高さ方向加速度の第1のピークと第2のピークと第3のピークを決定できる。次にこれら3つの高さ方向加速度のピーク時刻から平均計算開始時刻と平均計算終了時刻を決定する。具体的には、平均計算開始時刻は第1のピークと次の第2のピークの中間の時点とし、平均計算終了時刻は第2のピークと次の第3のピークの中間の時点とする(即ち、ステップS116)。次に高さ方向加速度の時間平均を計算する。具体的には、高さ方向加速度記憶手段103の高さ方向加速度の平均計算開始時刻から平均計算終了時刻の間の時間平均を計算する(即ち、ステップS117)。次に平均計算開始時刻と平均計算終了時刻から周期を計算する。具体的には平均計算開始時刻と平均計算終了時刻の時間差を周期とする(即ち、ステップS118)。周期を計算する理由は、高さ方向加速度のピークが検出されずに平均計算終了時から一定時間以上経過しているときの平均計算開始時刻と平均計算終了時刻を決定するためである。これについてはステップS131からS134で説明する。尚、高さ方向加速度のピークが検出されずに平均計算終了時から一定時間以上経過するときとしてはエレベータやエスカレータに乗車している状態または静止状態のとき等が考えられる。次に第1のピークを第2のピークで置き換え(即ち、ステップS119)、第2のピークを第3のピークで置き換える(即ち、ステップS120)。このように置き換える理由は、次に続けて高さ方向加速度のピークが検出されたときにまた新たな平均計算開始時と平均計算終了時を決定するためである。
【0038】
高さ方向加速度のピークが検出されずに平均計算終了時から一定時間以上経過しているときにはステップS131からS134の手順が実行される。ステップS131では最後の平均計算終了時を平均計算開始時とする(即ち、ステップS131)。次に平均計算開始時から過去の周期の時間後の時刻を平均計算終了時刻とする(即ち、ステップS132)。次に高さ方向加速度の時間平均を計算する(即ち、ステップS133)。次に第1のピーク、第2のピーク、第3のピークのデータを初期値(即ち、零を示すデータ)にリセットする(即ち、ステップS134)。以上で、いずれの状態のときにも高さ方向加速度時間平均を計算できる。
【0039】
次に計算した高さ方向加速度時間平均のピークが検出できなければステップS102に戻り、検出できればステップS142に進む(即ち、ステップS141)。次に高さ方向移動を開始している状態であればステップS143に進み、開始している状態でなければステップS145に進む(即ち、ステップS142)。ステップS143では、高さ方向加速度時間平均のピーク時を高さ方向移動終了時とする(即ち、ステップS143)。次に高さ方向移動開始・終了時と向きを出力し(即ち、ステップS144)、終了する。ステップS145からは、高さ方向加速度時間平均のピークの向きから高さ方向移動の向き判定し(即ち、ステップS145)、高さ方向加速度時間平均のピーク時を高さ方向移動開始時とし(即ち、ステップS146)、高さ方向移動開始している状態となってステップS102に戻る。
【0040】
以上のように本発明の第1実施形態の高さ方向移動検出装置100は、歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出手段101と、高さ方向加速度検出手段101により検出された加速度と時刻とを関連付けるための時刻計測手段102と、高さ方向加速度検出手段101により検出した加速度のピークを検出する第1のピーク検出手段104と、第1のピーク検出手段104により検出されたピーク間の時間を歩行の周期として、高さ方向加速度検出手段101により検出した加速度の歩行の周期にわたっての時間平均を計算する時間平均手段106と、時間平均手段106により計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出手段108と、第2のピーク検出手段108により検出したピークに基づいて、高さ方向の移動開始時、移動終了時、およびその移動の向きが上下どちらであるかを検出する高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109とを備えたことにより、歩行物体の高さ方向の移動を検出することができる。またこのような構成によって、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また比較用の加速度波形データが不要なため、端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに歩行の高さ方向の移動を検出することができる。尚、ここでいう歩行には、歩行のほか、走行、階段の昇り、階段の降り、エレベータおよびエスカレータの乗車、静止、等も含まれるものとする。また、端末装置の例としては、近年世の中に非常に普及している携帯無線電話端末装置(即ち、いわゆる携帯電話)、携帯無線情報端末装置、等といった携帯端末装置が挙げられる。
【0041】
また、時間平均を計算する期間は、検出した高さ方向の加速度の第1のピークと次の第2のピークとの中間時点から第2のピークとその次の第3のピークとの中間時点までとすることで誤差が大きくなることを防止している。
【0042】
尚、本発明の第1実施形態の高さ方向移動検出装置100は、歩行動作を行なう物体であれば、歩行者に限らず、物(歩行ロボット等を含む。)や動物(ペットおよび家畜等を含む。)に対しても使用することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図8は本発明に係る高さ検出装置の実施形態例を示す構成図である。図8に示すように、この実施形態の高さ検出装置210aは、上述した高さ方向移動検出装置100に加え、第1の積分手段211と第2の積分手段212とを備えて構成されている。高さ方向移動検出装置100の構成については、図1と同様であるのでここでは説明を省略する。
【0044】
第1の積分手段211は、まず予め平地歩行または静止の状態で高さ方向の速度の値を初期値(即ち、零)にリセットしておく。次に高さ方向加速度記憶手段103に記憶されている高さ方向加速度を高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109で判定された開始・終了時刻の間積分することでこの間の高さ方向の速度を求める。
【0045】
第2の積分手段212は、まず予め平地歩行または静止の状態で高さの初期値を零にリセットまたはその状態のときの高さの値にセットしておく。次に第1の積分手段211で求めた高さ方向の速度を高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109で判定された開始・終了時刻の間積分することでこの間の高さの差または高さを求めることができる。また高さから建物の階を求めることもできるので以後は高さに階も含めることにする。
【0046】
上記のように構成された第2実施形態の高さ検出装置210aの動作をフローチャートを用いて簡単に説明する。図9は第1実施形態の高さ検出装置210aにおける高さ検出の手順を示すフローチャートである。まず高さ方向移動開始・終了時刻と向きを検出する(即ち、ステップS201)。この手順は図5、図6および図7の手順と同様であるので説明を省略する。次に高さ方向加速度を高さ方向移動開始時から終了時まで積分して高さ方向の速度を求める(即ち、ステップS202)。次に高さ方向の速度を高さ方向移動開始時から終了時まで積分して高さを求める(即ち、ステップS203)。次に高さを出力し(即ち、ステップS204)、終了する。
【0047】
以上のように、この実施形態例の高さ検出手段210aは、高さ方向移動検出装置100によって検出された高さ方向の移動開始から高さ方向の移動終了までの時間にわたって高さ方向の加速度を2回積分する手段を有する構成を用いて高さ方向の移動量(即ち、現在位置の高さ、換言すれば、移動前位置に対する相対高さ)を検出することができる。
【0048】
以上の説明では、第1の積分手段211は高さ方向加速度記憶手段103に記憶されている高さ方向加速度を用いて計算を行なったが、高さ方向加速度の時間平均手段106の平均の加速度を記憶しておいてそれを用いても同様のことができる。
【0049】
[第3実施形態]
図10は本発明に係る高さ検出手段の別の実施形態例を示す構成図である。図10に示すように、この実施形態の高さ検出装置210bは、図1の高さ方向移動検出装置100に加え、マップマッチング手段313を備えて構成されている。また、この高さ検出装置210bは地図データ314を利用する。図10では地図データ314が高さ検出装置210bの外部に存在しているが、高さ検出装置210bの内部に存在する構成としてもよい。高さ方向移動検出装置100の構成については、図1のものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
地図データ314には少なくとも通行路のネットワークデータが含まれる。このほかにユーザーに対して表示するための図形データや文字データを含んでいてもよい。このネットワークデータはノードデータとリンクデータから構成される。このノードデータは通行路の3次元的な座標情報を表し(表1参照)、リンクデータはノードデータの接続状況と種別と属性を表す(表2参照)。
【0051】
ノードデータは平面座標と高さで構成することによって3次元的な座標情報を表すことができる。平面座標は緯度・経度を表すものでもよいし、ある基準点からの座標でもよい。高さは建物の階で表してもよいし、ある基準点からの高さを長さの単位で与えてもよい。例えば図11(a)〜図11(d)に示すような地図の場合には表1に示すようなノードデータで構成することができる。
【0052】
リンクデータは始点と終点のノード番号で接続状況を表す。エレベータの場合には連続する階の間のリンクデータだけでなく、図11(d)に示すように全ての階と階の組み合わせについてのリンクデータで構成する。種別にはエレベータ、エスカレータ、階段、等を含む。属性は種別に応じて付与する。エレベータの場合にはエレベータがある階で高さ方向の移動開始を検出してからある階で移動終了を検出するまでの時間即ち旅行時間の属性を付与する。エスカレータの場合には旅行時間の属性に加えてエスカレータの段数の属性とエスカレータの昇り降りの属性を付与する。階段の場合には階段の段数の属性を付与する。
【0053】
マップマッチング手段313は、高さ方向移動開始・終了時刻判定手段109で判定された開始時刻と終了時刻とその向きおよび地図データ314のリンク属性を利用して高さを検出することができる。このことを図11(a)〜図11(d)に示すような地図で表される場所の場合を例にとり説明する。2階のノードN201からエレベータに乗った場合に、向きが上向きでかつもしも開始時刻と終了時刻の差がt11秒であれば3階のノードN301まで移動したことが検出でき、もしも開始時刻と終了時刻の差がt12秒であれば4階のノードN401まで移動したことが検出できる。開始時刻と終了時刻の差が正確に上記の値でない場合でもデータの範囲で最も近いものを選択することで誤差を吸収して高さを検出することができる。このようにエレベータの場合には、開始時刻と終了時刻の差とリンク属性の旅行時間の比較と移動の向きから高さを検出することができる。階段とエスカレータの場合には始点のノード番号と高さ方向移動の向きから移動先のノード番号と階を検出することができる。また階段の場合には第1のピーク検出手段104で検出されるピークの数とリンク属性の段数を比較することで移動経路のノードを更に確認できる。更にエスカレータを歩かないで利用した場合にはエレベータと同様に旅行時間のリンク属性を利用して移動経路のノードを確認でき、エスカレータを歩いて利用した場合にはエスカレータの段数と歩いた段数と歩いた時間から歩かなかった旅行時間を計算して確認することができる。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
以上で説明した動作を次にフローチャートを用いて簡単に説明する。図12は第3実施形態の高さ検出装置210bにおける高さ検出の手順を示すフローチャートである。まず高さ方向移動開始・終了時刻と向きを検出する(即ち、ステップS301)。この手順は図5、図6および図7の手順と同様であるので説明を省略する。ステップS301以下の手順(即ち、ステップS302〜ステップS314)は、マップマッチング手段313により実行される。マップマッチング手段313は、地図データのリンク種別を参照し(即ち、ステップS302)、リンク種別が、エレベータか(即ち、ステップS303)、階段か(即ち、ステップS306)、エスカレータか(即ち、ステップS310)、によってそれぞれステップS304、S307またはS311に進む。エレベータの場合、マップマッチング手段313は、地図データのリンク属性を参照し(即ち、ステップS304)、高さ方向移動開始・終了時刻の間の時間と旅行時間の比較と向きから高さを検出する(即ち、ステップS305)。階段の場合、マップマッチング手段313は、高さ方向移動の向きから次のノードを判定してそのノードの高さを高さとする(即ち、ステップS307)。更にマップマッチング手段313は、地図データのリンク属性を参照し(即ち、ステップS308)、高さ方向移動開始・終了時刻の間の高さ方向加速度のピークの数と段数の比較から高さを確認する(即ち、ステップS309)。エスカレータの場合、マップマッチング手段313は、高さ方向移動の向きから次のノードを判定してそのノードの高さを高さとする(即ち、ステップS311)。更にマップマッチング手段313は、地図データのリンク属性を参照し(即ち、ステップS312)、高さ方向移動開始・終了時刻の間の時間と旅行時間、およびその間の高さ方向加速度のピークの数と段数の比較から高さを確認する(即ち、ステップS313)。そしてマップマッチング手段313は、高さを出力して(即ち、ステップS314)、一連の処理を終了する。
【0057】
以上のように、この実施形態例の高さ検出手段210bは、高さ方向移動検出装置100によって検出された移動開始時刻と移動終了時刻およびその移動の向きと、段数と旅行時間と昇り降り等の地図データ314のリンク属性を利用し、マップマッチングを行なって高さを検出することができる。
【0058】
[第4実施形態]
図13は本発明に係るナビゲーション装置の構成要素となる位置検出手段の実施形態例を示す構成図である。図13に示すように、この実施形態の位置検出装置210bは、図10の高さ検出装置210bに加え、方位検出手段415と水平面内位置検出手段416とを備えて構成されている。高さ検出装置210bの構成については、図10のものと同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0059】
方位検出手段415は、例えば地磁気を検出することによって方位を検出する少なくとも2軸以上の磁気方位センサーを用いる。
【0060】
水平面内位置検出手段416は、第1のピーク検出手段104で検出されるピークの数を歩数とみなし、歩数と歩幅の積から変位の大きさを検出し、方位検出手段415で検出される方位から変位の向きを検出する、即ち水平面内の変位を検出する。また、予め決めておいた起点からの変位を加算または積分していけば水平面内の位置を検出することができる。
【0061】
このように水平面内位置検出手段416で水平面内の位置を検出し、それに加えて高さ検出装置210bで高さを検出することで、3次元的な位置を検出することができる。
【0062】
以上で説明した動作を次にフローチャートを用いて簡単に説明する。図14は位置検出装置210bにおける位置検出の手順を示すフローチャートである。まず高さデータを取得する(即ち、ステップS401)。この手順は図9または図12の手順と同様または両者を併せたものと同様であるので説明を省略する。次に高さ方向加速度のピークをカウントし、歩数とする(即ち、ステップS402)。次に歩数と歩幅の積を計算し、水平面内の変位とする(即ち、ステップS403)。次に方位データを取得する(即ち、ステップS404)。次に水平面内の変位と方位データから水平面内位置を計算する(即ち、ステップS405)。そして水平面内位置と高さを出力して(即ち、ステップS406)、終了する。
【0063】
このように位置検出装置417は高さ検出装置210bと、方位検出手段415と水平面変位検出手段416とを有することによって3次元的な位置を検出する。
【0064】
本発明に係るナビゲーション装置は、図15に示すように、この位置検出装置417に加えて、CPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、記憶装置504、入力装置505、出力装置506、およびGPS(Global Positioning System)信号受信機507、等を備えることにより実現される。
【0065】
即ち、本発明に係るナビゲーション装置は、高さ検出装置210bに加えて、GPS信号受信機507、方位検出手段415、および水平面内位置検出手段416、等を備えることによって建物内等における、例えば、地図上での現在位置表示、ルート検索、或いはルート案内、等といったナビゲーションを実現することができる。
【0066】
尚、図10の検出装置210bのようにマップマッチング手段を利用する構成に代えて、図8の高さ検出装置210aのように加速度を2回積分する構成を用いたものを利用してもよい。更に両構成を同時に備えつつ高さ方向の移動量等に応じて最適な方を選ぶような構成にしてもよい。
【0067】
また、GPS信号受信機507はナビゲーションの起点を決めるために用いられるが、起点を他の手段で決める場合やユーザーが決める場合には無くてもよい。
【0068】
また、位置検出装置417の内部の各構成要素は、CPU501、ROM502、RAM503、および記憶装置504、等を兼用してソフトウエアを利用して実現することも可能であるし、全て別のハードウエアとして実現することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る高さ方向移動検出装置、高さ検出装置、ナビゲーション装置、プログラム、および携帯無線電話端末装置は、歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度のピークに基づく所定期間を歩行の周期として当該歩行の周期における加速度の時間平均を計算し、それにより算出された加速度の時間平均のピークを検出し、そして当該検出されたピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出することにより、個人差、体調、床の状態、等によって影響を受けずに、また端末装置の計算負荷や必要な記憶容量を大きくせずに歩行物体の高さ方向の移動を検出することができるので、歩行動作を行なう人(即ち、歩行者)、物(歩行ロボット等を含む。)、動物(ペットおよび家畜等を含む。)、等、種々の歩行物体用の高さ検出およびナビゲーションの用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明に係る高さ方向移動検出装置の実施形態例を示す構成図
【図2】(a)歩行物体の運動が平地歩行から階段降りの状態に変化するときの重力加速度を含む高さ方向加速度の検出波形図、(b)歩行物体の運動が平地歩行から階段降りの状態に変化するときの重力加速度を含まない高さ方向加速度の検出波形図、(c)高さ方向加速度の時間平均のピークをプロットした図
【図3】(a)歩行物体の運動が階段降りから再び平地歩行の状態に変化するときの重力加速度を含む高さ方向加速度の検出波形図、(b)歩行物体の運動が階段降りから再び平地歩行の状態に変化するときの重力加速度を含まない高さ方向加速度の検出波形図、(c)高さ方向加速度の時間平均のピークをプロットした図
【図4】図1の高さ方向移動検出装置で検出される状態変化を表す図
【図5】図1の高さ方向移動検出装置における高さ方向移動検出の手順の一部を示し、図6のVIへ続き且つ図7のVIIへ続くフローチャート
【図6】図1の高さ方向移動検出装置における高さ方向移動検出の手順の一部を示し、図7のVIIへ続くフローチャート
【図7】図1の高さ方向移動検出装置における高さ方向移動検出の手順の一部を示し、図5のVへ続くフローチャート
【図8】本発明に係る高さ検出装置の実施形態例を示す構成図
【図9】図8の高さ検出装置における高さ検出の手順を示すフローチャート
【図10】本発明に係る高さ検出装置の別の実施形態例を示す構成図
【図11】(a)〜(d)図10の高さ検出装置で使用される地図とリンクデータを例示した図
【図12】図10の高さ検出装置における高さ検出の手順を示すフローチャート
【図13】本発明に係るナビゲーション装置の構成要素である位置検出装置の実施形態例を示す構成図
【図14】図13の位置検出装置における位置検出の手順を示すフローチャート
【図15】本発明に係るナビゲーション装置の実施形態例を示す構成図
【図16】従来の体動検出装置における体動検出の原理説明図
【図17】従来の歩行航行装置における歩行航行測定処理の一部を示すフローチャート
【符号の説明】
【0071】
100 高さ方向移動検出装置
101 高さ方向加速度検出手段
102 時刻計測手段
103 高さ方向加速度記憶手段
104 第1のピーク検出手段
105 平均計算開始・終了時刻決定手段
106 高さ方向加速度の時間平均手段
108 第2のピーク検出手段
109 高さ方向移動開始・終了時刻判定手段(移動時間判定手段)
210a、210b 高さ検出装置
211 第1の積分手段
212 第2の積分手段
313 マップマッチング手段
314 地図データ
415 方位検出手段
416 水平面内位置検出手段
417 位置検出装置
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 記憶装置
505 入力装置
506 出力装置
507 GPS信号受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出手段と、
前記高さ方向加速度検出手段により検出された加速度と関連付けるための時刻を計測する時刻計測手段と、
前記加速度のピークを検出する第1のピーク検出手段と、
前記第1のピーク検出手段により検出された複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として、当該歩行の周期における前記加速度の時間平均を計算する時間平均手段と、
前記時間平均手段により計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出手段と、
前記第2のピーク検出手段により検出したピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻、およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出する移動時刻判定手段と、
を備えた高さ方向移動検出装置。
【請求項2】
前記時間平均を計算するための前記歩行の周期を、前記第1のピーク検出手段により検出された第1のピークとその次のピークである第2のピークとの中間時点から当該第2のピークとその次のピークである第3のピークとの中間時点までの期間とする請求項1記載の高さ方向移動検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の高さ方向移動検出装置と、
当該高さ方向移動検出装置によって検出された高さ方向の移動開始時刻から移動終了時刻まで高さ方向の加速度を2回積分する積分手段と、
を備えた高さ検出装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の高さ方向移動検出装置と、
当該高さ方向移動検出装置によって検出された移動開始時刻、移動終了時刻およびその移動の向きに基づいて、通行路の3次元的な座標情報を表すノードデータと当該ノードデータの接続状況、種別および属性を表すリンクデータとを含む地図データを参照して、マップマッチングを行なって高さを検出するマップマッチング手段と、
を備えた高さ検出装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の高さ検出装置と、
方位検出手段と、
を備えたナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4記載の高さ検出装置と、
GPS信号受信手段と、
方位検出手段と、
を備えたナビゲーション装置。
【請求項7】
歩行物体の歩行に伴う高さ方向の加速度を検出する高さ方向加速度検出ステップと、
前記高さ方向加速度検出ステップにより検出された加速度と関連付けるための時刻計測ステップと、
前記加速度のピークを検出する第1のピーク検出ステップと、
前記第1のピーク検出ステップにより検出された複数のピークに基づく所定期間を歩行の周期として、当該歩行の周期における前記加速度の時間平均を計算する時間平均ステップと、
前記時間平均ステップにより計算した加速度の時間平均のピークを検出する第2のピーク検出ステップと、
前記第2のピーク検出ステップにより検出したピークに基づいて、高さ方向の移動開始時刻と移動終了時刻、およびその高さ方向の移動の向きが上下どちらであるかを検出する移動時刻判定ステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ方向移動検出プログラム。
【請求項8】
前記時間平均を計算するための前記歩行の周期を、前記第1のピーク検出ステップにより検出された第1のピークとその次のピークである第2のピークとの中間時点から当該第2のピークとその次のピークである第3のピークとの中間時点までの期間とする請求項7記載の高さ方向移動検出プログラム。
【請求項9】
請求項7または請求項8記載の高さ方向移動検出プログラムの全ステップと、
当該高さ方向移動検出プログラムの移動時刻判定ステップにより検出された高さ方向の移動開始時刻から移動終了時刻まで高さ方向の加速度を2回積分する積分ステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ検出プログラム。
【請求項10】
請求項7または請求項8記載の高さ方向移動検出プログラムの全ステップと、
当該高さ方向移動検出プログラムの移動時刻判定ステップにより検出された移動開始時刻、移動終了時刻およびその移動の向きに基づいて、通行路の3次元的な座標情報を表すノードデータと当該ノードデータの接続状況、種別および属性を表すリンクデータとを含む地図データを参照して、マップマッチングを行なって高さを検出するマップマッチングステップと、
をコンピュータに実行させるための高さ検出プログラム。
【請求項11】
請求項9または請求項10記載の高さ検出プログラムの全ステップと、
方位検出ステップと、
をコンピュータに実行させるためのナビゲーションプログラム。
【請求項12】
請求項9または請求項10記載の高さ検出プログラムの全ステップと、
GPS信号受信ステップと、
方位検出ステップと、
をコンピュータに実行させるためのナビゲーションプログラム。
【請求項13】
請求項1または請求項2記載の高さ方向移動検出装置、請求項3または請求項4記載の高さ検出装置、請求項5または請求項6記載のナビゲーション装置、請求項7または請求項8記載の高さ方向移動検出プログラムおよび当該高さ方向移動検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、請求項9または請求項10記載の高さ検出プログラムおよび当該高さ検出プログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、または、請求項11または請求項12記載のナビゲーションプログラムおよび当該ナビゲーションプログラムに従って各ステップを実行するコンピュータ、を備えた携帯無線電話端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−170879(P2006−170879A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365625(P2004−365625)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】