説明

高光取り出し効率固体光源

【課題】上面と底面を有する基板と,基板の上面上に少なくとも1つの光活性層を備えた固体光源を提供する。
【解決手段】上面,底面,光活性層及び光活性層上の放出面のうちの少なくとも1つは,高さ(h)を規定する高隆起部及び低隆起部を有する複数の傾斜した表面外観形状を有するパターン面からなり,複数の傾斜した表面外観形状は,最小横寸法を(r)を規定する。複数の傾斜した表面外観形状は,3〜85度の表面傾斜角を有する少なくとも1つの表面部を備える。パターン面の表面粗さは,10nm rms未満であり,h/rは,0.05より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
傾斜した外観形状(features)を有するパターン面を形成するための化学機械研磨(CMP)/機械研磨プロセスの改良及び上記プロセスによる固体(solid state)発光素子に関する実施の形態を開示す。
【背景技術】
【0002】
当分野において既知のように,発光ダイオード(LED),有機LED(OLED),固体レーザ及びその他の固体発光素子等の発光素子の光取り出し効率は,外部結合効率又は取り出し効率により大幅に制限される。基板と発光活性層の(空気に対する)屈折率が高い場合には,(発光よりはむしろ)全内部反射が起こり,その結果,活性層で生じた光のかなりの部分の導波が起こる。当分野において既知のように,素子から取り出される光について,光は,界面(例えば,基板と空気との界面)における全内部反射の臨界角で規定される逃散円錐(escape cone)内でなければならない。逃散円錐外のフォトンは内部反射を繰り返し,最終的には吸収により失われる。界面での屈折率の不一致が大きいほど,逃散円錐は小さくなる。これは,実用的な固体発光素子の実現における大きな課題として知られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
異なる層によるフォトンの閉じ込めによって,発光素子には異なるモードが生じる。積層した活性層に捕捉されたフォトンは,(複数の)活性層モードを生じさせ,基板により閉じ込められたフォトンは基板モードを生じさせ,及び素子外に取り出しされたフォトンは外部結合モードを生じさせる。
【0004】
外部結合効率は,厚い透明基板を使用して各方向(横方向及び縦方向)に逃散円錐を開口し,チップ(例えば,LEDチップ)を成形し,又は素子の種々の界面を改質することで導波を低減することにより改善される。界面改質は,各入射の入射角を変化させるフォトンランダム化を誘起し,これによりフォトンに多くの逃散の機会を与えている。フォトンランダム化は,化学エッチング,光化学エッチング,電気化学エッチング等の単純な界面粗化により,又は,種々の界面にブラッグ格子,マイクロリング及びフォトニック結晶,マイクロレンズ,マイクロピラミッド等の規則的なパターン構造を設けることにより実現されている。これらの技術は,表面粗さを増大し,準表層の損傷を引き起こし,又は,近表面層に異物を混入させる可能性がある。更に,かかるアプローチは複雑で,特定の(即ち,個別の)波長に対してしか適用できず,及び/又は,製造プロセスに容易に組み込めない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する実施の形態は,上面と底面を有する基板と,前記基板の上面の上に少なくとも1つの光活性層を備えた光取り出し効率の高い固体光源を含む。前記上面,前記底面,前記光活性層又は前記光活性層上の放出面のうちの少なくとも1つは,高さ(h)を規定する高隆起部及び低隆起部を有する複数の傾斜した表面外観形状を含むパターン面を含み,前記複数の傾斜した表面外観形状は最小横寸法(r)を規定する。前記複数の傾斜した表面外観形状は,3〜85度の表面傾斜角を有する少なくとも1つの表面部を備える。前記パターン面の表面粗さは,10nm rms未満であり,h/rは,0.05以上である。光源には,前記基板内を伝搬する基板モードの光強度を低減する前記基板と周囲との間の第1の界面,及び前記光活性層内を伝搬する活性層モードの光強度を低減する前記基板と前記光活性層との間の第2の界面等の少なくとも1つの界面にパターン面が設けられる。
【0006】
本明細書で開示する実施の形態は,化学機械製造(CMF)プロセスを用いてパターン面を形成する固体光源の製造方法も含む。CMFは,表面平坦化やCMPによる本質的に特徴が無い表面の代わりに傾斜した表面外観形状を形成する,化学機械研磨(CMP)の改良である。固体光源は,発光ダイオード(LED),有機LED,垂直共振器表面発光レーザ(VCSEL),量子ドット素子,蛍光,又は電界発光素子を含む光源からなるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1A】図1Aは,本発明の実施の形態による,研磨時間の経過により得られた構造の断面に沿って,従来の化学機械研磨(CMP)に対する化学機械形成(CMF)の研磨時間ゾーンを規定する研磨時間の関数として形成される外観形状の高さ(Rpv)の高低(又は山から谷へ)のプロット図を示す。
【図1B】図1Bは,Rpvの最小値が10nm以上の実施の形態における,CMPに対するCMFの研磨時間ゾーンを規定する研磨時間の関数としてのRpvのプロット図を示す。
【図2A−M】図2A〜Mは,本発明の実施の形態によるCMF法で製造可能な傾斜した表面外観形状の例を示し,左右対称な表面(A〜E),非対称な表面(F〜J),負曲率曲面(K),図2Kは複数の凹状かつ傾斜した表面外観形状からなるものとして確認され,正曲率曲面(L),図2Lは複数の凸状かつ傾斜した表面外観形状からなるものとして確認され,混合曲面(M),及び混合構造(N〜P)をそれぞれ示す。
【図2N−P】図2N〜Pは,本発明の実施の形態によるCMF法で製造可能な傾斜した表面外観形状の例を示し,左右対称な表面(A〜E),非対称な表面(F〜J),負曲率曲面(K),図2Kは複数の凹状かつ傾斜した表面外観形状からなるものとして確認され,正曲率曲面(L),図2Lは複数の凸状かつ傾斜した表面外観形状からなるものとして確認され,混合曲面(M),及び混合構造(N〜P)をそれぞれ示す。
【図3A−C】図3A〜Cは,本発明の実施の形態によるCMFの研磨不足の状態を利用して得られる外観形状の例のいくつかを示す。実線は当初の構造を示し,また破線はCMFの時間経過により得られた構造を示す。
【図4】図4は,本発明の実施の形態による,研磨停止層が外観形状の高隆起部の中央部近くに位置する実施例における,初期の外観形状断面とCMF後の外観形状断面(破線)を示す。
【図5】図5は,本発明の実施の形態による,研磨停止層の実施例のCMPに対するCMFの時間ゾーンを規定する,処理時間の関数としてのRpvのプロット図を示す。
【図6A−B】図6A及びBは,本発明の実施の形態による,研磨停止層が外観形状の上部の端部近くに位置する実施例における,初期の外観形状断面(実線)と種々の処理時間のCMF後の外観形状断面(破線)を示す。図示するように,この実施の形態では非対称な外観形状を生成する。
【図7A−F】図7A〜Eは,開示の実施の形態による,CMFにより形成された例示的構造の長周期準周期的形態パラメータ(LRQP)のために規定された構成要素を有する特徴的形状の例を示し,図7Fは,CMFにより形成された例示的構造の短周期形態(SRM)のための構成要素を示す。
【図8A−C】図8A〜Cは,開示の実施の形態による,準周期的特性の関数としてプロットされた傾斜した表面外観形状の分布頻度(回数)の例を示す(例えば,hの値,λの値又はh/λの値)。
【図9A−D】図9A〜Dは,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図9E−F】図9E〜Fは,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図10A−B】図10A及びBは,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図11】図11は,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図12A−B】図12A及びBは,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図13】図13は,開示の実施の形態による,固体光源に適した傾斜した表面外観形状を備えた加工界面を含む構造の断面図を示す。
【図14】図14は,開示の実施の形態による,加工基板上にLEDを製造する際のプロセスのいくつかの選択肢を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示の実施の形態を,添付の図面を参照して説明する。類似の又は同等の要素を示すために,全図を通して同様の符号が用いられる。図面は,正しい縮尺で描かれているのではなく,単に開示の実施の形態を説明するためのものである。図示した適用例を参照して,以下に幾つかの態様を説明する。開示の実施の形態を十分に理解できるよう,多数の具体的詳細,関連性及び方法が記載されているものと理解されたい。しかし,当業者は,開示の実施の形態が1つ以上の具体的詳細がなくとも又はその他の方法でも実施できることは容易に認識するであろう。他の例では,開示の実施の形態が不明瞭とならないように,周知の構造又は動作を詳細に示していない。開示の実施の形態は,図示された順序の作用又は事象によって制限はされることはなく,ある作用が他の作用又は事象と異なる順序及び/又は同時に起こる場合がある。更に,開示の実施の形態に係る方法を実施するために図示された全ての作用又は事象が必要なわけではない。
【0009】
本開示に広範囲に記載される数値範囲及びパラメータは近似値だが,具体的実施例に記載される数値は可能な限り正確に記載される。しかし,いずれの数値も,それぞれの試験測定において見られる標準偏差に必然的に由来する一定の誤差を本質的に含む。更に,本明細書で開示される全ての範囲が,本明細書に組み込まれるいずれか及び全ての準範囲を含むものと理解される。例えば,「10未満」という範囲は,最小値0と最大値10の間(及びそれを含む)のいずれか及び全ての準範囲,つまり,0以上の最小値と10以下の最大値,例えば,1〜5のいずれか及び全ての準範囲を含むことができる。
【0010】
開示の実施の形態では,少なくとも1つ,概しては複数の傾斜した表面外観形状からなるパターン面を有する固体光源を形成するためのCMF法を記載する。CMFによる固体光源もまた開示す。
【0011】
上述のように,CMFは,CMPの変形である化学研磨プロセスである。このように,CMFは,CMPの変形である。従来のCMPにおいては,形成される表面は概して全体にわたって略平坦であり,本質的に外観形状の無い表面である。本明細書で定義されるように,(従来のCMPプロセスで得られるような)略平坦な表面は,表面外観形状がなく,又は最大傾斜角が2度であり,かつ外観形状の高さ/垂直距離が「h」で,hが変化する(即ち,平坦でない)配置の外観形状の最小横方向距離が「r」である場合に,外観形状のh/r比が0.005未満の表面外観形状であるという特徴を有する。一方,本発明の実施の形態に係るCMF法によるパターン面は,通常の範囲である10〜80度に対し3〜85度の傾斜角の範囲を有する少なくとも1つの表面部を有し,外観形状のh/rが0.05よりも大きい,少なくとも1つの傾斜した表面外観形状からなる。
【0012】
パターン面に作用するCMFによって得られる外観形状は,対称形状であっても非−対称(非対称/複合)形状でもよい。開示の外観形状が対称である場合,形状は,単一の最小横寸法を「r」を有する。開示の外観形状が非対称である場合は複数の寸法「r」を有し,本明細書では最小横寸法「r」の値を小さい方からr,r,…とする。
【0013】
2次元の三角形のピラミッド型のように外観形状が対称である場合,hは,横方向総距離「2r」を超えて変化する。対称な外観形状が平坦な上部を含む場合,形状の上部ではhが一定であることから,平坦な上部の横方向距離は,rの値に含まれない。外観形状が非対称/複合形状である場合,外観形状の全寸法は,r+r,r+r+rのように,2つ以上の異なるr値の合計である。なお,「h」もまた異なる値とすることができる(1つの値hのみが示されているが)。構造において「h」の値が異なる場合,最大値を「h」と見なす。
【0014】
上述のように,開示の実施の形態における外観形状のh/r比は,一般に0.05以上である。本発明の実施の形態に係るCMFプロセスによる傾斜した表面外観形状は,表面成形プロセス,素子及びそれによる製品を含む新たな応用をもたらす。
【0015】
パターン基板とパターン面は,広範囲の材料で形成することができる。パターン面の材料の例として,ガラス,SiC,GaN,炭化物,窒化物,サファイア,酸化物,光透過性導電性酸化物及び蛍光体で形成することができる。本明細書に記載するようにCMFにより形成された外観形状は,CMPにより形成された場合のように,形成された外観形状の外面上の表面組成を変えることがない。よって,外面の組成と,本明細書では外観形状の外面の下1nmから始まると定義される準表層の組成は,いずれも同じ組成である。一方,反応性イオン・エッチング(RIE)で形成された外観形状は,RIEプロセス中の化学反応により,準表層の組成とは異なる外面組成を有する外面を備えることで知られている。
【0016】
また,CMFにより形成された外観形状には,スクラッチ,転位,表面の非晶質化,表面ピット,化学エッチング欠陥輪郭等の微細構造損傷が起こらない。よって,表面の微細構造品質は,準表層領域と同等又はそれ以上である。RIE等の技術は,ピットや,例えば表面の非晶質化といった欠陥を引き起こし,全体のうち表面及び準表層の微細構造を変える。CMFで形成された表面では,GaN,サファイア,AlN等のこれらに限定されない単結晶材料中に原子的テラス面が現れる場合がある。かかる外観形状は,RIE法によるものには見られない。
【0017】
形成された傾斜表面部は,傾斜を有する平坦面,又は非平坦(湾曲)面とすることができる。平坦面では基板表面に対する傾斜角が一定であり(例えば,図2C参照),一方,湾曲面では(例えば,図2E参照)傾斜角は可変であり,半球の場合は平坦な表面である基板に対する突出角度によって規定される0度から90度まで変化する。湾曲面の場合,湾曲面形状の曲率半径は,一般に10nm〜5,000ミクロンである。他の実施の形態においては,形成された表面は,3度〜85度の固定傾斜角部と0〜90度の可変傾斜角部の組み合わせとすることができる。
【0018】
従来のCMPにおける材料除去率は,加圧,直線速度,研磨媒体(パッド及びスラリー)の特性及びウェハ材料を含むプロセスパラメータによって決まる。これらのうち,加圧及びパッドの性質のみが,概してCMPの接触圧に大きな影響を及ぼすパラメータである。ウェハ上のいかなる位置の材料除去も,概して接触圧と直接比例する。
【0019】
発明者らは,外観形状の無い平坦なウェハでは接触圧が均一なのに対し,高低の隆起特徴があるウェハでは,ウェハの領域に沿って接触圧が大きく変化することを発見した。発明者らは,適切な剛性を備えた研磨パッドを適切な接触時間で加圧下のウェハに用いると,ウェハ上の外観形状に沿ってパッドが変形することに気付いた。この接触圧の変化とそれに伴う除去率は,本発明の第1の実施の形態で用いられ,CMFで種々の外観形状を持つ物体を形成することを可能とする。以下に述べるように,研磨接触時間は,研磨面が平坦面であると見なすことができる加工時間の境界より外側である。
【0020】
傾斜した表面外観形状を有する物体を形成するCMF法は,少なくとも1つの凸状又は凹状の外観形状からなるパターン面を有する基板の準備を含む。凸状又は凹状の外観形状は,CMF前の高い部分とCMF前の低い部分を有する第1の構造を有し,CMF前の高い部分とCMF前の低い部分の間の垂直距離(高さ)が10nm以上あり,CMF前の高い部分(例えば,外観形状形状の頂部)は,中央部と端部を含む。
【0021】
凸状/凹状の外観形状のCMF前の高い部分の中央部と端部は,スラリー組成物をその間に挟んで研磨パッドと接触する。中央部の接触圧は端部よりも低い。スラリー組成物は,凸状/凹状の外観形状に対して移動し,端部は中央部の研磨速度と比べて早い研磨速度で研磨し,少なくとも1つの傾斜した表面外観形状を形成する。傾斜した表面外観形状は,3〜85度の表面傾斜角を有し,表面粗さが5nm rms未満の表面部を少なくとも1つ含む。表面粗さは2nm rms未満であり,1nm rms未満等とできる。傾斜した表面外観形状の一例はマイクロレンズである(図2L参照)。
【0022】
本発明の実施の形態に係る傾斜した表面外観形状を形成する時間は,平坦化達成までの時間から推定できる。図1Aは,本発明の実施の形態による,得られた構造の時間経過に伴った断面を示す(破線),CMPに対する2つのCMF時間ゾーンにより定められる加工時間の関数とした外観形状の高さ(Rpv)の高低(又はピークから谷)のプロット図を示す。CMFを用いて研磨した外観形状は,単層構造であっても多層構造であってもよい(例えば,ダマシン誘電層上の銅)。
【0023】
図1Aは,CMFの研磨時間(t)が,t<t又はt>tとできることを実証する。t<tは平坦化の前であり,CMPプロセスでは「研磨不足」とされ,t>tは平坦化の後であり,CMPプロセスにおける「過剰研磨」を表わする。上述のように,平坦化された表面は,h/rが0.01未満として定められる。いずれのCMF時間ゾーンでも10nmを超えるRpvが見られるが,従来のCMPプロセスでは10nm未満である。研磨不足の場合,RpvはCMFプロセスの経過に従って形成された外観形状の高さに基づいて初期値から低下する。過剰研磨状態では,わん状変形が起こりCMF時間ゾーンで得られる略平坦構造となり,2つ以上の表面組成物(基板材料と異なる外観形状部分の材料)が同時に研磨される場合に起こるわん状変形の増大により研磨時間が経つにつれRmaxが増加する。しかし,表面が単一の表面組成物(基板材料と同じ外観形状部分の材料)からなる場合,表面は過剰研磨の間は概して平坦であり,よって,傾斜した表面外観形状の形成には概して有効ではない。
【0024】
この実施の形態の別の変形例では,研磨後の外観形状の高低部分の高さの差が,(外観形状の高低部分の高低差が10nm未満として)平坦化時間ゾーンの値に達していない。図1Bは,Rpvの最小値が10nm以上の実施の形態における,CMPに対するCMF時間ゾーンを規定する研磨時間の関数としての外観形状の高低部分のプロット図を示す。かかる場合,CMPゾーンは,表面の高さがRmin+2nmの場合の研磨時間により定められ,本明細書ではRminは研磨プロセス中に達する高低部分の最小高低差として定義されている。平坦化時間ゾーン(CMPと示す)に入る時間は,ここでもtoと規定する。表面に2つの異なる研磨面組成物が含まれない場合,(基板及び外観形状における単一組成の表面),物体が研磨プロセスの間はCMPゾーン内に残ることが予想される。研磨面が異なる研磨率の2つ以上の異なる組成の異種材料からなる場合,その効果により新たな形状が作られることが予想される。この場合,外観形状の高低部分の高低差は,ここでも概して10nmを超え,材料が非平坦化することが予想される。
【0025】
材料がCMPゾーンを出る時間を,図1Bにtとして示す。この状態で本実施の形態による物体の製造は,t>tで行われる。通常,物体の製造において用いられる研磨時間は,t−1秒未満又はt+1よりも長い。研磨時間はt−3秒未満又はt+3秒より長くすることができる。他の実施の形態においては,研磨時間はt−6秒未満又はt+6秒より長い。更に他の実施の形態においては,研磨時間は0〜t−1.5秒の間又はt+6秒〜t+250分の間である。用途によっては,表面粗さを低く、準表層の損傷を少なくすることが望ましい。湾曲又は傾斜した表面を作る既知の方法としては,エッチングマスクを介した反応性イオン・エッチング(RIE),エッチングマスクを介し,適切な化学薬品を使った化学エッチング,又はレーザエッチング,若しくはワイヤソー等の機械鋸を使った部分的切削が挙げられる。別の既知の方法としては,マスクを介したイオン・ビーム・エッチング,集束イオンビームパターン形成が挙げられる。これらの技術は,傾斜面を発達させる能力に限りがある垂直状の表面外観形状の形成に適する。これらの技術はいずれも,単結晶,多結晶及び非結晶質の材料では,概して3nmを超える高い表面粗さを生じさせる。RIE,機械鋸又はレーザ切削でも,表面下に少なくとも10nm以上延伸する顕著な準表層の損傷が起こる。準表層の損傷は,基板のパターン形成を外部プロセスで行った結果として起こる原子の元位置からの変位として定義される。表面損傷と表面粗さの量は,通常,加工時間が長くなるにつれて増加する。一方,本実施の形態の実施例では,測定可能な準表層の損傷(最大5nm以内)は全く起こらず,他のプロセスで生じた損傷は通常取り除かれる。準表層の損傷は,微小角X線回折及びカソードルミネッセンス(CL)法等の技術で測定できる。
【0026】
一実施の形態においては,リソグラフィプリントしたパターンにRIEを用いることで,CMF前のパターン面を形成する。数ミクロンより深くほぼ垂直な壁の溝をエッチングすることで,非エッチング領域に相当する高い部分及びエッチングした溝又は領域を介した低い部分を有する垂直壁(基板表面に対してほぼ90度)の突状の外観形状を形成できることでRIEは知られている。かかる垂直又はほぼ垂直な壁は,上述のようなRIEの他に,幾つかの技術で形成することができる。外観形状の高さは,一般に50nm〜1,000ミクロンであり,一方外観形状の横寸法は,一般に50nm〜2,000ミクロンである。
【0027】
パターン面は,金属,セラミック,絶縁体,固体,ポリマから構成することができ,生物材料で構成してもよい。具体的な例としては,金属材料(例えば,Mo)及びスチール等の金属合金,インジウムスズ酸化物(ITO)等の透明導電性酸化物,その他の酸化物,硫化物,テルル化物,III−V材料(GaAs,GaN,AlN等),IV族固体(Si,SiC,Ge,SiGe等),II−VI材料(ZnS,ZnSe,ZnTe等),Ta,GaN,SiN,SiO,SiO,サファイア,アルミナ,TiO,ZnS,Ta,ガラス,スチール,Mo,ZnO,酸化スズ,CdTe,CdS,シリコン,セレン化インジウムガリウム銅(CIGS)等のその他の絶縁体又は固体,酸化物,スピネル,没食子酸塩及び硫化物からなる蛍光体,PMMA,ポリスチレン,ポリカプロラクトン,ポリ乳酸/ポリガラクト酸等のポリマが挙げられる。材料系は,合成物であっても混合物であってもよく,シリコン系素子における銅相互接続の形成と同様の凹状又はダマシン構造であってもよい。材料系は,表面層の下に異なる組成の層を有することができる。上述の材料は,ごく少数の固体を示すのみであり,本発明の実施の形態の範囲は,上述の材料に限定されない。
【0028】
CMFプロセスで使用する圧力は,一般に0.1psi〜50psiで可変である。さらに通常は,CMF中の圧力は,1psi〜20psiで可変であり,例えば2psi〜15psiとすることができる。CMF中の直線速度は,一般に0.001m/秒〜50m/秒で可変であり,例えば0.01m/秒〜5m/秒とすることができる。使用するパッドは,柔らかいパッドから固いパッドまで変えることができる。パッドの例としては,デラウエア州のRohm and Haas社製ポリテックス及びスバIV,IC1000研磨パッド,イリノイ州のCabot Microelectronics社製D100研磨パッドが挙げられる。その他の例として,ウール,布等の自然及び人工材料が挙げられる。通常,硬いパッドでは小さい曲率が得られるのに対し,柔らかいパッドでは高い曲率が実現できる。CMFの温度は,一般に0℃〜150℃で可変であり,例えば室温前後(25℃)とすることができる。室温よりも高い温度では,研磨率が高くなり,製造プロセスにおいて望ましい。また,高温では,機械研磨パッドが柔らかくなり,高曲率構造となる。
【0029】
本発明の実施の形態に係るCMFで用いられる研磨率は,毎分0.1nm〜20ミクロン/分で可変であり,例えば1nm/分〜1ミクロン/分とすることができる。研磨率は,スラリーの化学的特性と研磨具の研磨パラメータ(速度,パッド,圧力)によって調整することができる。CMFプロセスのスラリーの化学的特性には,いくつかの化学薬品及び/又は研磨剤を含まれてもよい。化学薬品としては,酸化剤,界面活性剤,塩類,殺生物剤,pH緩衝剤及びキレート剤を挙げることができる。粒子には,シリカ,セリア,チタニア,ダイアモンド,アルミナ,窒化ケイ素,ダイアモンド,ジルコニア,イットリア等の研磨剤,非水溶性酸化物及び遷移金属の化合物が含まれる。一般に,被覆又は非被覆粒子を使用することができる。粒子の濃度は,一般に0.001〜50重量パーセントで可変である。粒子サイズは,一般に0.6nm〜1mmで可変である。
【0030】
上述の粒子は例としての粒子を示すのみであり,本発明の実施の形態の範囲は,本明細書に開示する粒子に限定されない。使用する界面活性剤は,一般に陽イオン性,陰イオン性又は非イオン性である。スラリー内に分散される粒子と化学薬品は,有機又は水性液体,又はその混合物とすることができる。
【0031】
概して,研磨組成物は,研磨する基板の1つ以上の材料に適した酸化剤を含む。酸化剤は,硝酸セリウムアンモニウム,過硫酸カリウム,ペルオキシ一硫酸カリウム,ハロゲン,H,酸化物,ヨード酸塩,塩素酸塩,臭素酸塩,過ヨード酸塩,過塩素酸塩,過硫酸塩,リン酸塩及びその混合物である硫酸塩,リン酸塩,過硫酸塩,過ヨード酸塩,過硫酸塩,過ヨード酸塩,過塩素酸塩,クロム酸塩,マンガン酸塩,シアン化物,炭酸塩,酢酸塩,硝酸塩,亜硝酸化合物,クエン酸塩ナトリウム,カリウム,カルシウム,マグネシウム等から選択することができる。研磨組成物中の酸化剤は,一般に0.001wt%以上である。
【0032】
研磨組成物のpHは,一般に0.5〜13.5で可変である。研磨組成物の実際のpHは,一般に混合物の種類や研磨される形質材料の種類によって部分的に決まる。組成物のpHは,pH調整剤,緩衝剤又はその組み合わせにより得られる。pHは,一般に有機又は無機酸及び有機又は無機塩基を用いて調整することができる。
【0033】
研磨組成物は,アルデヒド,ケトン,カルボン酸,エステル,アミド,エノン,ハロゲン化アシル,酸無水物,尿素及びカルバミン酸塩,また,塩化アシル,クロロギ酸エステル,ホスゲン,炭酸エステル,チオエステル,ラクトン,ラクタム,ヒドロキサム酸,イソシアネート,アルコール,グリコール酸塩及び乳酸塩の誘導体等のキレート剤又は錯化剤から構成することができる。錯化剤は,金属汚染物を除去し,研磨率を高めることができるいずれかの適切な化学添加物である。キレート剤は,アクリルポリマー類アスコルビン酸,バイピュア(BAYPURE:登録商標),CX100(イミノジコハク酸4ナトリウム),クエン酸,ジカルボキシメチルグルタミン酸,エチレンジアミンジコハク酸(EDDS),エチレンジアミン四酢酸(EDTA),ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)のヘプタナトリウム塩(DTPMP・Na),リンゴ酸,ニトリロ三酢酸(NTA),メチオニン,シュウ酸,リン酸等の非極性アミノ酸類,アルギニン,アスパラギン,アスパラギン酸,グルタミン酸,グルタミン,リジン及びオルニチンを含む極性アミノ酸類,デスフェリオキサミンB,コハク酸,ベンゾトリアゾール(BTA)等の親鉄剤類,酒石酸塩類,コハク酸エステル類,クエン酸塩類,フタル酸エステル類,カルボン酸塩類,アミン類,アルコール類,リンゴ酸塩類,エデト酸塩類とすることができる。
【0034】
スラリー組成物は,有機又は無機酸及び塩基からなる塩類から構成することができる。塩類は,アンモニアNH,カルシウムCa2+,鉄Fe2+及びFe3+,マグネシウムMg2+,カリウムK,ピリジニウムCNH,第4級アンモニウムNR,ナトリウムNa,銅等の陽イオン,及び,酢酸塩CHCOO,炭酸塩CO2−,塩化物CL,塩素酸塩,過塩素酸塩,臭化物,ヨウ化物,フッ化物,過ヨード酸塩類,クエン酸塩HOC(COO)(CHCOO),シアン化物C≡N,水酸化物OH,硝酸塩NO,亜硝酸塩NO2−,酸化物O2−(水),リン酸塩PO3−,硫酸塩SO2−及びフタル酸塩類等の陰イオンを含む。
【0035】
他の実施の形態では,スラリー組成物の粒子又は不溶性物質の含有量は,0.01重量%未満である。上述の酸化剤類,界面活性剤類,塩類,殺生物剤類,pH緩衝剤類,キレート剤類の他に,スラリー組成物は,当分野で知られる研磨剤ベースのスラリーに使用されるその他の化学薬品を含んでもよい。CMFによる表面は,粒子や化学薬品等を表面から除去するために更に処理することができる。化学薬品は,表面を化学的に更にエッチングするためにも使用することができる。
【0036】
非平坦又は傾斜した表面外観形状のh/rは,一般に0.05より大きく,例えば,0.1より大きい,又は0.20より大きい。非平坦又は傾斜した表面外観形状の最小横寸法rは,50nmよりも大きく,又は500nmよりも大きく,例えば5ミクロンより大きい。正・負両曲面及び混合曲面の表面もまた製造することができる。本発明の実施の形態に係るプロセスで形成された構造の形状は,マイクロレンズ,半球,角錐台又は四角錐及び円錐台形を含む種々の一般的形状とすることができる。非平坦又は傾斜した表面外観形状の形状間距離は,一般に100nm〜1500ミクロン(1.5mm)である。
【0037】
形成された非平坦又は傾斜した表面外観形状は,図2A〜Pに示すようなそのh/r比で規定できる。図2A〜Pは,左右対称な表面(A〜E),非対称な表面(F〜J),正曲率曲面(K),負曲率曲面(L),混合曲面の(M)及び混合構造(N〜P)をそれぞれ含む,本発明の実施の形態に係るCMF法で製造できる傾斜した表面外観形状の例を示す。いずれの場合においても,h/r比のrが0.05〜1.0の横寸法であり,曲面の傾斜角が3〜85度の場合,表面のうち少なくとも1つの高さ(h)は10nmより大きい。図2A〜Pに示す形状は実行できる形状のうちいくつかを示すが,本発明の実施の形態の範囲は示された形状に限定されない。
【0038】
図2Kは,複数の凹面外観形状215として示される傾斜した表面外観形状を有する物体210として扱われている。物体は,hとして示される垂直距離を定め,(rとして示される)横寸法を有する高隆起部217及び低隆起部218を有する複数の凹面外観形状215からなり,h/r比が0.01以上であり,(i)100nm以上のh(ii)3〜85度の間の曲面の傾斜角の少なくともいずれかとなっているパターン面からなる。凹面外観形状215は,表面粗さが10nm rms未満であり,3nm rms未満等となっている。
【0039】
図2Lは,マイクロレンズ235からなる凸面外観形状として示される傾斜した表面外観形状を有する物体230として扱われている。物体230は,基板205と,垂直距離(h)を定め,(rとして示される)横寸法を有する高隆起部238及び低隆起部237を有する複数のマイクロレンズ235からなり,h/r比が0.01以上であり,(i)100nm以上のh(ii)3〜85度の間の曲面の傾斜角の少なくともいずれかとなっているパターン面からなる。マイクロレンズ235は,表面粗さが10nm rms未満であり,3nm rms未満等となっている。
【0040】
図3A〜Cは,本発明の実施の形態によるCMFの研磨不足状態を利用して得られる特徴的形状のいくつかの例を示す。研磨不足は,図1A及び1Bに示すt<tに相当する。実線は当初の構造を示し,破線はCMFの時間経過に伴い得られる構造(破線)を示す。
【0041】
本発明の他の実施の形態においては,異なる傾斜角の多数の表面は,パターン面間の距離を変化させることで形成することができる。例えば,外観形状間の距離が,1つの方向において10ミクロンで別の方向において20ミクロンである場合,異なるh/r比の外観形状が形成される。本明細書においては,かかる方法で得られる外観形状を,h/r比及びRpvが表面上の異なる方向に対して変化する非対称構造と称する。上述のように,非対称外観形状の例を図2F〜Jに示す。
【0042】
本発明の一実施の形態において,研磨中の圧力変動は,研磨前の凸状外観形状の高隆起部の一部の上の第2の組成物からなる研磨停止層の形成によるものであり,第2の組成物のCMFにおける除去率は,第1の組成物のCMF除去率の0.8以下である。第1の組成物と第2の組成物(停止層)の除去(研磨)率の割合は,研磨プロセスの選択性として定義される。選択性は,1.25〜3,000超で可変であり,例えば2〜1,000,又は10〜500である。停止層の研磨率は,一般に0.001nm/分〜1,000nm/分で可変である。基板組成の研磨率は,通常,0.001nm〜20ミクロン/分で可変である。研磨プロセスの選択性は,化学薬品と研磨スラリーの粒度組成を調整することで得られる。停止層の除去率が基板層より大幅に低くなるよう化学組成と粒子組成を調整し,高選択性を得られる。
【0043】
図4は,発明の実施の形態による,研磨停止層410が外観形状405の高隆起部の中央部近くに位置する実施例における初期の外観形状断面(実線)とCMF後の外観形状断面(破線)を示す。かかる研磨停止層410は,従来のIC製造に用いられる周知の析出及びリソグラフィ技術を用いて外観形状上に形成することができる。研磨停止層410の除去率は,通常,外観形状405の材料の除去率未満である。通常,停止層410の研磨除去率は,外観形状405の材料の研磨除去率である0.5以下である。この場合,研磨停止層410を用いることで,マイクロレンズの形状ではない傾斜面が作られる。研磨停止層410の使用で得られる外観形状として,例えば,截頭状のマイクロレンズ,円錐構造及び円錐台形が挙げられる。
【0044】
研磨選択性が1.0より高い値(例えば,2〜5,000の範囲)まで増加し,停止層410が凸状外観形状405より小さい寸法となるようにパターン形成されるので,CMF法を使用し,得られた構造のh/r比を増大させることができる。構造のh/r比は,停止層410の寸法,停止層の厚さ及び外観形状405の材料に対する停止層の選択性を変化させ調整することで,0.01から1.0まで増大させることができる。この実施の形態は,構造の傾斜角を増加させるために使用することもできる。傾斜角は,寸法,厚さ及び外観形状405の材料に対する停止層の研磨選択性に応じ,3度〜85度まで増加させることができる。
【0045】
更に,本実施の形態では,マイクロレンズの形状から円錐台状の構造に外観形状を変えることができる。これは,通常,停止層の寸法が凸状外観形状405の上部面積の95%〜0.001%である場合に起こる。傾斜角の増大及び高h/r比を実現するためには,選択比を増加することが概して望ましい。CMFプロセス中に研磨停止層410の端が研磨された場合,正・負両曲面構造を形成することができる。
【0046】
本発明の実施の形態に係る選択的研磨を実現する別の関連アプローチでは,基板の表面に粒子ベースの不連続コーティングを実施する。粒子は,CMFプロセスにおいて選択的マスク層として作用する。かかる場合,リソグラフィ・パターンは概して必要ない。粒子のサイズは,一般に1nm〜100ミクロンで可変であり,一方,粒子の表面被覆率は0.01%〜60%で可変である。粒子は,反応結合が起こるよう加熱することにより表面に付着させることができる。粒子は,金属,セラミック,ポリマ又は複合材料及びその合金又はその混合物で構成することができる。
【0047】
図5は,本発明の実施の形態による,研磨停止層の実施例のCMPに対するCMFゾーンを規定する研磨時間の関数としての谷の高さ(Rpv)のピークのプロット図を示す。CMP中のRpvの急激な減少は,研磨停止層が徐々に研磨除去されて外観形状全体が研磨される場合に得られ,その結果Rmax値が激減する。
【0048】
本発明の別実施の形態においては,研磨停止層は,外観形状上部の端部近くに位置する。図6A及びBは,本発明の実施の形態による,研磨停止層が外観形状の上部の端部近くに位置する実施例における初期の外観形状断面(実線)と種々の処理時間のCMF後の外観形状断面(破線)を示す。図示するように,この実施の形態では,非対称の外観形状が作られる。
【0049】
本発明の他の実施の形態は,研磨選択性に基づいて湾曲及び傾斜した外観形状を有する物体を形成するCMF法を含む。表面が,表面の一部分上の第1の材料と表面の別の部分の上の第2の材料のように,その表面上の研磨率が異なる2つ(以上)の異なる材料が表面に含まれる場合,材料の1つ(例えば,第1の材料)に別の材料(例えば,第2の材料)に対して(例えば,適切な化学的性質を利用して)高い相対的研磨選択性を持たせて研磨スラリーを形成することができる。このように,第1の材料は,第2の材料より早く研磨することができる。一実施の形態においては,エッチングマスクを形成することで,非平面研磨のために低研磨率とすることができる。
【0050】
最初に開示した固体光源の実施の形態は,複数のCMF前の凸状又は凹状の外観形状からなるパターン面を有する基板の作製を含む固体光源の製造方法を含む。CMF前の凸状又は凹状外観形状は,CMF前の高い部分とCMF前の低い部分を有する第1の構成からなる。CMF前の高い部分とCMF前の低い部分の間の垂直距離(高さ)は10nm以上である。CMF前の高い部分は,中央部と端部を含む。
【0051】
CMF前の高い部分は,スラリー組成物をその間に挟んで研磨パッドと接触する。スラリー組成物は,凸状又は凹状の外観形状に対して移動して中央部と端部と研磨し,端部が,中央部の研磨速度と比べ早い研磨速度で研磨して複数の傾斜した表面外観形状を形成する。形成された傾斜した表面外観形状は,3〜85度の表面傾斜角を有し,表面粗さが10nm rms未満,例えば3nm rms未満の少なくとも1つの表面部を含む。また,傾斜した表面外観形状は,高さ(h)を規定するCMF後の高隆起部及びCMF後の低隆起部を有しており,傾斜した表面外観形状が最小横寸法(r)を規定し,外観形状のh/r比は0.05以上である。
【0052】
次に開示した固体光源の実施の形態は,平坦又は少なくとも略平坦な表面にCMFプロセスを用いた固体光源の製造方法を含む。10nm rms未満のCMF前の高い部分からCMF前の低い部分までが略平坦面である。表面は,第1の組成からなる第1の領域と,第1の組成とは異なる第2の組成からなる第2の領域からなり,第2の組成の研磨除去率は,第1の組成の研磨除去率である0.5以下となっている。基板上にパターン形成した研磨停止層は,異なる研磨率とするために使うことができる。上述の固体光源の第1の製造方法の実施の形態のように,CMFの後,形成された傾斜した表面外観形状は,3〜85度の表面傾斜角を有し,表面粗さが10nm rms未満,例えば3nm rms未満であり,外観形状のh/rを0.05以上とするCMF後の高隆起部及びCMF後の低隆起部を有する表面部を少なくとも1つを含む。
【0053】
CMFで得られた外観形状は,一般に10nm〜1mmで可変である寸法hと,10nm〜1mmで可変である寸法rとを有し,h/r比が0.05〜1.0で可変である。本発明の実施の形態に係るCMFプロセスで得られる傾斜した表面外観形状は,傾斜した表面外観形状を有する界面を形成する表面成形プロセス,固体発光素子及びそれによる製品を含む新たな応用をもたらす。
【0054】
CMFで製造した開示の実施の形態に係る固体発光素子は,上述のように1つ以上の界面にパターン構造を有する従来の固体発光素子と比べ,構造的に区別される。当分野で既知のように,表面粗さと形態は,化学エッチング,光化学エッチング及び電気化学エッチングを含む種々の異なる方法で作成できる。選択的レーザアブレーション,RIE及びその他の気相技術等のその他の技術で,表面粗さの随伴的増加を伴う表面形態,例えば孔を作ることができる。
【0055】
開示の実施の形態で製造される構造は,本明細書に示す2つの異なる表面形態の定量的測度,一方は短周期の粗さの定量化,他方は長周期オーダーの定量化により特徴付けられ,従来の構造と区別される。既知のエッチング法では,方法を適用することで短周期の粗さを増加させるのに対し,開示の実施の形態に係るCMFは,CMF法を適用して短周期の粗さを低減する。CMF法は長周期オーダーも付与する。
【0056】
本明細書で開示する第1の方法の実施例では,例えばリソグラフィ法で作製し,パターン化凸状又は凹状の外観形状で開始することにより長周期オーダーを提供することができる。選択的研磨を含む本明細書で開示する第2の方法の実施例では,例えば停止層が基板の除去率に対して異なる除去率となるようにパターン形成された(例えば,周期的)研磨停止層パターンのように,CMFプロセスでパターン構造とすることによって周期構造が作られる。本発明の実施の形態に係る周期的表面を得るための別の方法としては,レーザドリル,スクリーン印刷,マイクロ及びナノインプリンティング法が挙げられるが,これに限定しない。一方,既知の外観形状形成方法は,外観形状に長周期オーダーを与えない。例えば,化学エッチングや電気化学エッチング等通常の粗化方法では,概して,形成された外観形状に長周期オーダーも短周期オーダーも与えられない。
【0057】
本明細書に記載する長周期オーダーは,200nm以上の長波長λで特徴付けられるLRQPパラメータにより,短周期の粗さは,200nm以上の波長λSRを有するSRM形態パラメータによる短時間粗さにより本明細書では定量化される。SRM形態は,一般に,外観形状の表面に沿った表面の従来の定義による表面粗さに相当する。
【0058】
LRQPは,h,(rから求められる)λ又は外観形状アスペクト比(h/r)を含む上述のパラメータに基づいた本明細書で準周期特性と称する通常周期的な複数の外観形状の特徴パラメータの分布により定量化できる。以下に述べるように,外観形状の頻度分布(回数)は,準周期特性の関数としてプロットすることができる(例えば,hの値,λの値又はh/λの値)。これらの構造のその特性平均値に対する分散は,σを標準誤差とした,それぞれ特定の準周期特性の平均(m)値(h1m,2m,h3m,λ1m,λ2m,λ3m,h1m/λ1m)の標準誤差(σ)により特徴付けることができる。特徴パラメータ平均(例えば,h1m,2m,h3m,λ1m,λ2m,λ3m,h1m/λ1m)に対する標準誤差の割合は,本明細書で開示する複数の傾斜した表面外観形状からなる構造の長周期オーダー(周期性)を特徴付けるために用いられるLRQP分布率として定義される。
【0059】
少なくとも1つのLRQP分布率が0.5未満(特性値の平均(m)に対するσの比率)である外観形状分布を有するパターン面を含む構造は,開示の実施の形態に係る固体発光製品のLRQPとして特徴付けることができる。比率が0.25未満の場合,高LRQPと分類され,比率が0.1未満の場合,超高LRQPと分類される。これらの大きさは,概して,外観形状/構造の面積の10倍の面積に有効である。これより小さい面積では,周期構造の総合的頻度は統計的に有意ないずれの結論に至るにも不十分である可能性がある。
【0060】
短周期においては,SRMパラメータは,大きな波長の分布(σが0.5より大きい)及び大きなR/λ比の分布のランダムなピークの山から谷の波長分布により特徴付けられる。更に,表面粗さは,rms値により特徴付けることができる。SRMrms粗さの二乗平均平方根(rms)粗さは,概して10nm未満であり,例えば5nm未満,2nm未満又は1nm未満であり,時には5A未満である。
【0061】
図7A〜Eは,開示の実施の形態に係るCMFにより形成されるいくつかの例示的構造のLRQPパラメータを規定する構成要素を有する傾斜した表面外観形状の特徴的形状の例を示し,一方,図7Fは,λSRを示すCMFにより形成される例示的構造のSRM構成要素を示す。複数のかかる外観形状は,種々の固体光源の基板及び/又は活性層モードの光強度を低減する等のため,本明細書に記載する工学的界面に使用することができるパターン面の形成に使われる。
【0062】
図8A〜Cは,準周期特性の関数としてプロットされた傾斜した表面外観形状の分布頻度(回数)の例を示す(例えば,hの値,λの値又はh/λの値)。上述のように,これらの構造のその特性平均値に対する分散は,σを標準誤差とした,図8Aのh1m,2m,h3m,図8Bのλ1m,λ2m,λ3m,及び図8Cのh1m/λ1m,h2m/λ2m,h3m/λ3mの平均(m)値の標準誤差(σ)により特徴付けることができる。LRQP分布率により定義される特徴パラメータ平均(m)に対する標準誤差σの割合は,開示の実施の形態に係る複数の傾斜した表面外観形状からなる構造の長周期オーダー(周期性)を特徴付けるために用いることができる。
【0063】
開示の実施の形態は,基板及び活性層モードのいずれか又は両方で外部結合する固体素子において傾斜した表面外観形状を有する異なる界面とするCMFの適用とその他のプロセスを含む。インターフェース工学のCMFに基づくアプローチは,異なるモードでのフォトンの取り出しと概して基板上にエピタキシャル成長させる活性層の結晶品質の向上に役立つ。以下に説明する図9A〜Fは,開示の実施の形態に係る固体光源に適した複数の傾斜した表面外観形状を備えた工学的界面を含む構造の断面図を示す。固体光源は,例えば,発光ダイオード(LED),有機LED,垂直共振器表面発光レーザ(VCSEL),量子ドット素子,蛍光又は電界発光(EL)素子からなる。
【0064】
基板と活性層との界面は,本明細書において界面2と称し,一方,基板と周囲(例えば,空気)との界面は,本明細書において界面1と称する。基板の表面が概して活性層のエピタキシャル成長に用いられるため,界面2の工学技術においては特別な課題がある。粗面処理とパターン形成を含む固体素子からの光取り出しを高めるために用いられる従来の方法では,活性層の成長が難しい。一方,本明細書に記載のインターフェース工学のCMFに基づくアプローチは,活性層モードでのフォトンの取り出しと活性層の品質の向上のいずれにも役立つ。以下に説明するように,基板表面上の複数の逆さマイクロレンズ,マイクロピラミッド及びその他の傾斜した表面外観形状からなるパターン面を,活性層の成長前に作ることで界面2を向上することができる。
【0065】
例えば,図9Aは,開示の実施の形態に係る固体光源に適した複数の傾斜した表面外観形状からなるパターン面902による工学的界面を含む構造900の断面図を示す。構造900は,上記にCMFプロセスで作ることができると説明した複数の逆マイクロレンズ状の外観形状をなすパターン基板表面902を有する基板901を備えている。逆マイクロレンズのような外観形状は,エッチング液又は選択的欠陥エッチングを含むプロセスを用いて形成してもよいが,これらは,表面粗さ,汚れ又は準表層損傷を発生させないCMFプロセスのようにはいかない。
【0066】
図9Bは,開示の実施の形態に係る図9Aに示すパターン面902上に緩衝層又は活性層905を備える構造910の断面図を示す。緩衝層又は活性層905は,パターン面902上に直接形成される(即ち,中間層なし)ものとして示されている。図9Cは,活性レーザを含む固体素子の形成に使用できる複数のマイクロレンズからなるパターン基板表面922上に活性層905を備える構造920の断面図を示し,一方,図9Dは,開示の実施の形態に係る固体素子の形成に使用できるマイクロピラミッド状の外観形状からなるパターン基板表面932上に活性層905を備える構造930の断面図を示す。
【0067】
図9Eは,パターン基板表面943上に緩衝層又は活性層905を備えた構造940の断面図を示す。緩衝層/活性層905の厚さは,緩衝層/活性層905が非平坦となる図9Eに示す表面形状の高さ未満である。緩衝層/活性層905が活性層905として実施される場合,活性層は,量子井戸,量子ドット,pn接合,レーザ媒質,蛍光体,電界発光又は陰極線発光材料から構成できる。
【0068】
図9Fは,パターン基板表面945上に導電層909(例えば,光学的に透明な導電性酸化物)と,その導電層909上に活性層905を備えた構造950の断面図を示す。導電層909の厚さは,活性層905が非平坦となる表面外観形状の高さ「h」未満である。導電層の25℃バルク抵抗率は1Ω/cm未満とすることができる。上述のように,傾斜した表面外観形状は,活性層905と基板901の屈折率に近い屈折率を有する種々の屈折率整合層で覆うことができる。屈折率整合層の材料の選択は,概して,基板901及び/又は活性層905の屈折率(nfs),その光吸収係数,活性層成長への影響及び屈折率整合材料の結晶/非晶構造に基づいている。本明細書において屈折率整合材料は,±0.7に屈折率整合される層のnf以内の屈折率を有する材料として定義される。一実施の形態においては,屈折率整合材料は,±0.1に屈折率整合される層のnf以内の屈折率を有する。CMFを使用して,屈折率整合層材料の過剰部分を研磨除去し,基板901の一部をその上部側に露出して活性層905をエピタキシャル成長させる。
【0069】
図10Aは,凹状のマイクロレンズ形状部分を満たす(例えば,基板901のnfと整合するため)比較的nが高い材料の整合層906と,その比較的nが高い屈折率整合層906上に形成された核形成停止層907からなる複数の逆さマイクロレンズ状の外観形状を含むパターン面1002からなる工学的界面を含む構造1000の断面図を示す。図示される活性層905は,外観形状間の領域で基板901の上面902を十分に露出するため核形成停止層907の一部を研磨除去した後に形成されるエピタキシャル層とすることができる。図10Bは,凹状の外観形状部分を満たす(例えば,基板901のnfと整合するため)比較的nが高い材料906と,その比較的nが高い材料906上に形成された核形成停止層907を有する複数の逆さピラミッド状の外観形状を含むパターン面1022からなる工学的界面を含む構造1020の断面図を示す。
【0070】
基板901と周囲(例えば,空気)との界面は,本明細書において界面1と称する。界面1は,基板モードのフォトンの外部結合において重要である。周知の粗面化方法では,粗面処理を用いるか,種々の界面に規則的なパターン面を持たせている(例えば,ブラッグ格子,マイクロリング,フォトニック結晶,マイクロレンズ,マイクロピラミッド)。これらのケースの多くは,パターン面が基板901のnfより低いnfの高分子材料又は無機材料上に形成されている。開示の実施の形態では,概して基板901自体を使ってパターン面を形成しており,よって,nf不整合となることが無く,基板901からさらに光を取り出すことができる。
【0071】
図11は,その空気界面(界面1)に複数のマイクロレンズからなるパターン面1102からなる工学的界面を含む構造1100の断面図を示す。開示する他の実施の形態においては,2つ以上の界面がパターン形成される。例えば,界面1及び2(基板901と活性層又は緩衝層905の間)の双方をパターン形成してもよい。両界面1及び2を工学的に作ることで,固体素子の活性層モードと基板モードをそれぞれ低減し,その結果,光取り出しを向上させることができる。
【0072】
図12A及びBは,界面1及び2に工学的界面を含む構造の断面図を示す。図12Aは,界面2に第1のパターン面1202と界面1に第2のパターン面1212を有する基板901を備えた構造1200の断面図を示す。図12Bは,界面2に第1のパターン面1222と界面1に第2のパターン面1232を有する基板901を備えた構造1220の断面図を示す。また,図12Bは,凹状外観形状部を満たす屈折率整合層906と,その上の核形成停止層907も示す。
【0073】
図13は,パターン化した上面を備えた本発明に開示する実施の形態に係る上面発光LED1300の断面図を示す。LEDは,p又はnドープ領域1304及び活性接合領域1311を形成する反対極性にドープされた領域1306を備えている。領域1304と周囲(例えば,空気)との界面は,本明細書において界面3と称する。領域1304及び1306のいずれにも接点1310が設けられる。ドープ領域1304及び1306との接触層(図示せず)は,概して,駆動LED1300に対するレーザドライバモジュール(図示せず)の抵抗接触を低くする。
【0074】
当分野で既知のように,LED1300が順方向にバイアスされている(スイッチが入っている)場合,電子は素子の活性接合領域1311内の正孔と再結合することができ,フォトンの形態のエネルギーを放出し,電界発光と呼ばれる効果と固体(例えば,AlGaN又はGaN)のエネルギーギャップによって決まる光の色(フォトンのエネルギーに対応する)が得られる。
【0075】
LED1300の発光層材料が有機化合物の場合,有機発光ダイオード(OLED)と呼ばれる。固体として機能させるためには,概して有機発光材料は,共役pi(π)結合していなければならない。発光材料は,結晶相内の小さい有機分子又はポリマとすることができる。ポリマ材料は柔軟であってもよく,そのようなLEDはPLED又はFLEDとして知られる。
【0076】
図14は,開示の実施の形態に係る工学基板上のLED製作におけるいくつかのプロセスのオプションを示すフローチャート図である。工程1401では,基板を製作する。一実施の形態において,基板は,続いて蒸着される活性層よりも低い屈折率を有する(例えば,サファイア基板上のGaN系LED)。工程1402では,複数の傾斜した外観形状からなるパターン基板表面を形成する。工程1403では,パターン基板表面上に活性層膜を成長する(例えば,エピタキシャル成長)。また,図10A及び10Bに関する上述のプロセスに類似するが,工程1402に続き,工程1404(a)において高屈折率整合層を蒸着し(例えば,凹状マイクロレンズ形状部を満たす),その後工程1404(b)で比較的nが高い屈折率整合材料の上に核形成停止層を蒸着することができる。工程1404(c)では,外観形状間の領域で基板の上面を十分に露出するため核形成停止層の一部を研磨除去する。工程1405では,エピタキシャル活性層の薄膜を成長させる。基板材料を除去するレーザリフトオフプロセスを含む任意の工程1406と,上面発光素子の活性層の上面上又は底面発光素子の基板底面上のパターン化層の形成を含む工程1407を含むこともできる。
【0077】
本明細書に開示する固体光源の発明的特徴1つは,その容積と比較してパターン面の化学組成が表面と同じ(上部10nm)か,本質的に同じ組成とでき,よって,外来原子の濃度を最小とできることにある。例えば,異分子の濃度は,通常,表面の上部10nmにおいて1重量%未満,0.5未満,0.2重量%未満である。
【0078】
本明細書において外来原子は,エッチング又は研磨プロセス前の基板の一部ではなく,構造形成の際に導入される原子として定義される。通常,RIE等の従来のプロセスの際に表面近くの領域に導入される外来原子は,窒素,アルゴン,キセノン及びクリプトン等の非酸化ガス又は活性ガスである。RIEの際に導入できる腐食性異物には,気体ハロゲン類及びその化合物が含まれる。
【0079】
例えば,一実施の形態においては,上部10nmにおけるGaN,SiC,サファイア,ガラスの組成比(例えば,SiCのSi対C,GaNのGa対N)は,層全体の組成に対し20%未満の差,10%未満の差,5%未満の差又は2%未満の差がある。典型的な実施の形態においては,CMFプロセスで形成された表面では,組成物の変動は起こらない。
【0080】
外来原子の導入の他に,従来のプロセスにおいては,特定の構造の形成に際して結合が変化する。これは,通常,レーザ照射又はRIEで起こる。これらの構造を形成するCMF法では,一般に素材の構造的性質にかかる変化は起こらない。特に,準表層領域(10nm)における結合の変化は,通常材料全体の結合に対し1%未満である。
【0081】
組成の変化,外来原子の導入及び結合における変化は全て,光伝搬の観点から問題である。これらの変化は,放出される放射線を吸収する傾向のある欠陥であり,プロセスにとって望ましくない。概して,RIE,レーザ切削,光化学エッチング及び化学エッチング等の技術では全てそのような欠陥が発生するため,望ましくない。一方,本明細書に記載のCMFプロセスで形成された固体光素子は,組成の変化を最小とし,外来原子の導入を最小とし,結合における変化を最小とすることから,光伝搬を向上させ,その結果,光取り出し効率を向上させる。
【0082】
固体光源は,様々は手段で光を発生させることができる。例えば,光源は,固体電界発光薄膜(例えば,硫化亜鉛系薄膜),赤色,緑色又は青色光,赤外線又は紫外線LED,OLED,レーザ又は蛍光体層とすることができる。これらの場合,固体材料は,電気刺激により励起される。概してこの実施の形態では,nが1.2より大きい基板を用いることができる。この実施の形態は,2つの基板の屈折率の差が0.2よりも大きい場合に,また他の実施の形態では0.5より大きい場合に特に有用である。材料は,バルク基板の形でも薄膜でもよい。
【0083】
本実施の形態が適用できる別の固体光源材料には,可視光及び紫外線又は電子ビームで励起される蛍光体材料が含まれる。当分野で知られるように,蛍光体は,リン光現象(電子や紫外フォトン等エネルギーが付与された粒子に晒した後も持続する成長)を示す物質である。通常,蛍光体は,種々の種類の遷移金属化合物又は希土類化合物である。通常,蛍光体は,活性剤が添加された適切な母材からなる。最も知られている種類は,銅付活硫化亜鉛及び銀付活硫化亜鉛(zinc sulfide silver)である。そのような材料の屈折率は,通常1.4より大きい。材料は,バルク基板の形でも薄膜でもよい。この実施の形態は,2つの基板の屈折率の差が0.2以上の場合に,また他の実施の形態では0.5より大きい場合に特に有用である。
【0084】
固体光源に適用できる関連材料は,開示される他の実施の形態に適用してもよい。かかる材料の例として,光学的透明導電性酸化物,誘電体及び絶縁体が挙げられる。これらの材料は,活性層で生じた光を透過させ,また電気接点の形成を補助することもできる。かかる材料の屈折率は,一般に1.3より高い。この実施の形態は,2つの基板の屈折率の差が,0.2よりも大きい場合,例えば0.5より大きい場合に特に有用である。固体光源に適用できる別の関連材料は,光の反射に使用できるとともに電気接点を提供することができる金属を含むことができる。本明細書において使用される「金属」とは,25℃電気抵抗率が1Ω/cm未満の金属元素,合金,混合物及び金属間化合物のことを言う。
【0085】
本発明の種々の実施の形態を上記に説明してきたが,これらは制限のためではなく,例示のためにのみ提示されていることを理解されたい。開示の実施の形態の精神と範囲を逸脱することなく,本明細書の開示に従って開示の実施の形態に対する多様な変更が可能である。よって,本発明の実施の形態の幅及び範囲はいかなる上記の実施の形態によっても限定されるべきではない。むしろ,本発明の実施の形態の範囲は,以下の特許請求の範囲及びそれらに相当するものに従って定義されるべきである。
【0086】
本発明の実施の形態を,1つ以上の実施例について図示し,説明したが,当業者であれば,本明細書及び添付の図面の解釈と理解において,同等の変更及び修正を思いつくであろう。また,本明細書で開示する特定の特徴を,幾つかの実施例のうち1つについてのみ開示したが,かかる特徴は,それが望ましく,特定又は具体的用途に有利であることから,他の実施例の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。
【0087】
本明細書における用語は,特定の実施の形態を説明する目的のみで使用しており,限定を意図してはいない。本明細書で使用される単数形の「a(1つの)」,「an(1つの)」及び「the(その)」は,文脈上別途明記しない限り,複数形も含むものである。更に,「including(〜を含む)」,「include(〜を含む)」,「having(〜を有する)」,「has(〜を有する)」,「with(〜と共に)」という用語又はその変形が詳細な説明及び/又は請求の範囲において使用される範囲は,そのような用語は,「comprising(〜からなる)」という用語と同様に包括的なものである。
【0088】
別途定義しない限り,本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は,本発明が属する分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味である。通常使用される辞書に定義されるような用語は,関連技術の文脈における意味と一致する意味を持つものとして解釈されるべきであり,本明細書ではっきりと定義しない限り,理想的又は過度に正式な意味で理解されるものではないことを更に理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と底面を有する基板を設け,
前記基板の前記上面の上に少なくとも1つの光活性層を形成し,
前記光活性層を形成する前の前記上面,前記底面,前記光活性層又は前記光活性層上の放出面のうちの少なくとも1つに化学機械製造(CMF)加工を施してパターン面を形成し,
前記パターン面は高さ(h)を規定するCMF後の高隆起部及びCMF後の低隆起部を有する複数の傾斜した表面外観形状を備え,前記複数の傾斜した表面外観形状は最小横寸法を(r)を規定し,
前記複数の傾斜した表面外観形状は3〜85度の表面傾斜角を有する少なくとも1つの表面部を備え,
前記パターン面の表面粗さは10nm rms未満であり,
前記h対前記rは0.05以上であることを特徴とする固体光源の製造方法。
【請求項2】
前記CMF加工は,前記光活性層の前記形成前に前記パターン面を形成するために前記基板の前記上面に施され,前記光活性層は前記パターン面上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光活性層は,前記パターン面上に又は25℃バルク抵抗率が1Ω/cm未満の導電層上に形成されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光活性層を形成する前の前記パターン面上に屈折率整合層を形成することを更に含み,前記屈折率整合層は,光活性層の屈折率の±0.7の屈折率を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記屈折率整合層上に導電層を更に含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板の前記複数の外観形状の間の部分を露出させるための前記屈折率整合層の平坦化を更に含み,前記パターン面上への前記光活性層の前記形成は,前記基板の前記露出部に前記光活性層のエピタキシャル成長することを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記平坦化は,化学機械研磨(CMP)であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記CMF加工は,前記パターン面を形成するために前記基板の前記底面に施され,前記固体光源は底面発光することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記CMF加工は,前記パターン面を形成するために前記光活性層又は前記光活性層上の前記放出面に施され,前記固体光源は上面発光することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CMF加工は,前記基板の前記上面上に第1のパターン面を,前記基板の前記底面上に第2のパターン面を形成するため前記基板の前記上面及び前記底面のいずれにも施され,前記第1のパターン面は,前記光活性層との界面を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記表面粗さは,3nm rms未満であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記パターン面を形成するため前記CMFにより加工された表面の初期表面粗さは,前記初期表面粗さが10Å以下の場合は3Å未満であり,前記表面粗さは,前記初期表面粗さが10Åを超える場合には,前記パターン面を形成するため前記CMFにより加工された前記表面の初期表面粗さ以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記パターン面によりLRQP分布率が0.5未満となることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つの光活性層は,少なくとも1つの量子井戸,量子ドット,pn接合,レーザ媒質,蛍光体,電界発光又は陰極線発光材料からなることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
上面と底面を有する基板と,
前記基板の前記上面の上に少なくとも1つの光活性層を備え,
前記上面,前記底面,前記光活性層及び前記光活性層上の放出面のうちの少なくとも1つは,高さ(h)を規定する高隆起部及び低隆起部を有する複数の傾斜した表面外観形状からなるパターン面を含み,前記複数の傾斜した表面外観形状は最小横寸法を(r)を規定し,
前記複数の傾斜した表面外観形状は3〜85度の表面傾斜角を有する少なくとも1つの表面を備え,
前記パターン面の表面粗さは10nm rms未満であり,
前記h対前記rは0.05以上であることを特徴とする固体光源。
【請求項16】
前記基板の前記上面が前記パターン面を備え,前記光活性層が前記パターン面上に形成されることを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項17】
前記光活性層は前記パターン面上に直接蒸着されることを特徴とする請求項16に記載の固体光源。
【請求項18】
前記パターン面と前記光活性層との間に屈折率整合層を形成することを更に含み,前記屈折率整合層は光活性層の屈折率の±0.7の屈折率を有することを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項19】
前記屈折率整合層は,前記複数の形状の間に前記基板の露出部を備えるパターン面であり,前記光活性層は,前記基板の前記露出部に前記光活性層をエピタキシャル成長させたエピタキシャル層であることを特徴とする請求項18に記載の固体光源。
【請求項20】
前記基板の前記底面が前記パターン面を備え,前記固体光源は底面発光することを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項21】
前記光活性層又は前記光活性層上の前記放出面が前記パターン面を備え,前記固体光源は上面発光すること特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項22】
前記上面は第1のパターン面を,前記底面は第2のパターン面をそれぞれ備え,前記第1のパターン面は前記光活性層との界面を形成すること特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項23】
前記表面粗さは3nm rms未満であることを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項24】
前記パターン面によりLRQP分布率が0.5未満となることを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項25】
前記基板の前記底面又は前記基板の前記上面が前記パターン面を備え,前記複数のパターン面の上部10nmにおける組成は,前記基板全体の組成と一致することを特徴とする請求項15に記載の固体光源。
【請求項26】
前記固体光源は,発光ダイオード(LED),有機LED,垂直共振器表面発光レーザ(VCSEL),量子ドット素子,蛍光又は電界発光素子からなることを特徴とする請求項15に記載の固体光源。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A−M】
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【図2N−P】
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【図3A−C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−B】
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【図7A−F】
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【図8A−C】
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【図9A−D】
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【図9E−F】
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【図10A−B】
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【図11】
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【図12A−B】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−529775(P2012−529775A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515107(P2012−515107)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/037991
【国際公開番号】WO2010/144591
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300710)シンマット,インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SINMAT,INC.
【出願人】(511300927)ユニヴァーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF FLORIDA RESEARCH FOUNDATION, INC.
【Fターム(参考)】