説明

高光沢及び低光沢をもつカバー表皮

【課題】高光沢及び低光沢をもつカバー表皮を形成すること。
【解決手段】それぞれが第1表面仕上げ光沢及び第2表面仕上げ光沢を定める第1部分及び第2部分を有する真空形成されたトリム部品のカバー表皮であり、該第1の光沢は、該第2の光沢より、4より大きい差異だけ光沢が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、トリム部品のカバー表皮に関する。より具体的には、本発明は、カバー表皮の異なる部分が著しく異なる光沢レベルを示す、詳細には、高い光沢レベルおよび低い光沢レベルを有する自動車用インテリアのトリム・パネルのカバー表皮に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車インテリアトリム部品を製造するための現行の技術及び材料は、プラスチックのカバー表皮が、その表面全体にわたり一定の光沢を有するトリム部品を生成する。この一定の光沢は、典型的には、OEM業者により指定される条件である。これらのカバー表皮には、トリム部品を覆う天然材料の効果又は概観をシミュレートするように設計されたグレイン(しぼ)パターンが付与されることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
今日、業界において、カバー表皮を形成するために、幾つかの方法が用いられている。このような方法の1つは、低粘度の2成分液体ウレタン熱硬化性樹脂を、グレイン・パターンが付与された工具上に噴霧又はコーティングすることを含む。この材料は、熱硬化性材料であり、硬化したとき、該材料にはグレインが工具から写される。この方法により形成されたカバー表皮は、一般に厚く、かつ、重いので、次に内部トリム部品を形成するためにカバー表皮に適用する場合に、作業が困難になる。
【0004】
カバー表皮を作成し、これらにグレイン効果を付与するための別の方法は、キャスティング、スラッシュ成形、又はロータリー成形により表皮を形成することである。この製造方法においては、熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、又は熱可塑性オレフィンが、粉末又は液体の形態でモールドキャビティ中に供給される。モールドキャビティの表面のうちの1つには、その表面に所望のグレイン・パターンが形成されている。型が加熱されると、工具において、粉体が溶融し、液体が固化して、キャビティを被覆する。装置は、モールドキャビティが材料によって被覆されることを確実にするように回転させることができる。材料が冷却されると、熱可塑性ウレタンは固化し、ツーリングのグレイン・パターンを帯びるようになる。上述の方法のように、この方法により形成されたカバー表皮は、厚くて重い傾向がある。
【0005】
さらに、薄くて軽いカバー表皮を製造するのに、2種類の真空形成方法が用いられる。一方はポジティブ真空形成法として知られ、他方は、対照的に、ネガティブ真空形成法として知られている。
【0006】
ポジティブ真空形成法においては、押し出し熱可塑性シートにグレイン・パターンが付与される。グレイン・パターンは、シート形成プロセスにおいて、押し出しステップの直後に、シートをカレンダリング・ロール又は他の装置に通すことにより、熱可塑性シート上に形成される。熱可塑性シートは、熱可塑性オレフィン又はPVCとすることができる。次いで、カバー表皮が加熱され、延伸され、型の上で真空形成されて、該カバー表皮に所望の形状が付与される。この真空形成プロセスにおいては、グレイン・パターンは、型表面に強制的に接触するようにはされていない(したがって「ポジティブ」という用語を用いる)。裏面(シートのグレイン付きの側ではない方)が真空形成工具表面に接触する。カバー表皮が延伸され、次いで真空形成される結果、グレイン・パターンの幾らかの効果が失われる。この喪失は、一般に、「グレイン・ウォッシュ」として知られる。この種類の製造における別の難点は、成形された物品の角が、要求される延伸の結果として、薄い断面を有する傾向になることである。
【0007】
ネガティブ真空形成においては、押し出しされた平らな材料シートは、どのようなグレイン・パターンも形成されることなく、又は、わずかなグレイン・パターンのみをもって与えられる。カバー表皮の表になる側(「A」表面)上のグレイン・パターンは、パターンが型又は工具の表面に形成される結果としてシートの表面に作成される。したがって、シート材料は軟化状態まで加熱され、延伸され、型の形状に真空形成される。型は、カバー表皮の形状全体を形成するだけでなく、さらに、グレイン構造を、該型に接触するカバー表皮の表面に付与する。この方法により製造された今日のカバー表皮は、トリム部品に、一貫した一様な光沢を与える。
【0008】
上述の製造方法の各々においては、カバー表皮をコーティングして、一様な光沢性質を高め、該カバー表皮に対して摩擦抵抗、UV保護、及び他の所望の特性を与えることができる。このコーティングは、形成前にシート材料に適用してもよいし、工具又は型の表面に適用してもよいし、又は、その製造後に、結果として得られるインテリアトリム部品に組み込む前に適用してもよい。
【0009】
上述の真空形成されたカバー表皮の例においては、結果として得られるカバー表皮及び所望の効果は、一般に一様な光沢の1つになる。結果として得られる物品の光沢の正常変動は、60度光沢計で測定したときに、光沢の目標値プラス又はマイナス0.5になる。光沢の異常変動は、一般に、光沢の目標値プラス又はマイナス1.5から2までになる。しかし、上述は、既存の技術及び材料を使用する製品において見出される光沢レベルのわずかな変動であるが、これらの変動、本開示においてさらに説明されるように、光沢の著しい差異を構成するものではない。
【0010】
すべてのカバー表皮は、部品の異なる部分における異なるグレインのために、単一の部分において測定される光沢の変動を示すことができる。強いグレイン・パターンは、より軟らかい、強さの少ないグレイン・パターンより光を散乱させる。すなわち、測定された光沢(表面から反射され、該表面に対して固定した角度でセンサにより検出される光の量)は、軟らかいグレイン・パターンにおいてより、強いグレイン・パターンにおいて少なくなり、同じパターンの区域にわたり顕著に変動することはない。一方、表面仕上げ光沢は、グレイン・パターンの関数ではない。これはむしろ、材料にコピーされる工具表面の微視的細部の関数である。グレイン自体はカバー表皮全体にわたり一様とすることができるが、微視的細部が与えられたグレインの一部は、その部分に高表面仕上げ光沢又は低表面仕上げ光沢を与える。
【0011】
光沢計により視認され、サンプル処理される区域はあまりに大きくて、微視的細部ありの又はなしの区域を含むため、パターン形成された部分の表面仕上げ光沢を直接測定することは不可能である。測定は、間接的な方法により行われなければならない。別の方法は、視覚的な鋭さの差異を用いる。1つのこのような方法は、視力差を用いる。別の方法は、装置の表面仕上げを平らなグレインなし工具により行い、その上にカバー表皮を形成し、60度光沢計などによって、その光沢を測定することを要求する。
【0012】
上述のように、既存の製造技術及び構成は、実質的に一様な光沢を示すカバー表皮をもたらす。自動車産業においては、競業者の乗り物から自分たちの乗り物を区別する特徴及び選択肢を与えるOEMの能力に対して、ますます重点が置かれてきている。このことを行うことができる1つの方法は、インテリアトリム部品に、本物の皮の外観といった、より実際的な天然材料の外観を与えることである。この見かけを達成するためには、カバー表皮において、実質的に一様な光沢レベルが望まれることはない。むしろ、材料における光沢変動は、異常変動又は一様な光沢材料に見出される差異の少なくとも2倍のオーダーであることが望ましい。異常変動のそれの3倍、4倍、又は5倍の光沢レベルの差異がより望ましい。ここで用いられる、これらの差異のオーダーに対する変動は、高/低光沢又は高/低光沢効果と呼ばれる。
【0013】
上述のことを考慮して、高/低光沢効果を与えるために、薄くて可撓性のあるカバー表皮又はこのようなカバー表皮で被覆された自動車インテリアトリム部品に対するニーズが存在することが明らかである。さらに、高/低光沢を、薄くて可撓性のあるカバー表皮又は同じもので被覆された自動車インテリアトリム部品に製造し、付与することができる方法に対するニーズが存在することが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の必要性を満たし、関連技術の問題点及び他の制限を克服するため、本発明は、真空形成された一次表面と、該真空形成された一次表面と対向する第2表面とを有する一体的なカバー表皮成形体を提供する。真空形成された一次表面は、真空形成された第1部分と第2部分とを含み、該第1部分は、第1表面仕上げ光沢を有する第1表面仕上げを有し、該第2部分は、第2表面仕上げ光沢を有する第2表面仕上げを含み、該第1表面仕上げ光沢は、該第2表面仕上げ光沢より高い。
【0015】
一実施形態においては、真空形成された第1表面の第1部分及び第2部分は、パターンを定める。このパターンは、隆起部分及び凹んだ部分を含むグレイン・パターンとすることができ、該隆起部分及び該凹んだ部分のいずれかが、第1部分又は第2部分として定められる。別の実施形態においては、このパターンは、カバー表皮に形成されたデザイン又はロゴである。
【0016】
代替的な実施形態においては、カバー表皮の第1表面仕上げは、実質的に平滑な表面であり、第2表面仕上げは粗い表面である。或いは、これらは逆にすることができる。
【0017】
第1部分及び第2部分の種々の構成を与えることができる。例えば、真空形成された第1部分は、少なくとも部分的に、真空形成された第2部分の周りを囲むことができ、又は逆もまた可能である。別の構成においては、真空形成された第1部分及び第2部分の一方がカバー表皮の上方部分に配置され、他方が下方部分に配置され、又は、両方が上方部分又は下方部分に配置される。
【0018】
第1表面仕上げ光沢及び第2表面仕上げ光沢は、少なくとも4より大きい値だけ異なることが好ましい。最も好ましい実施形態においては、差異は、15より大きい。
【0019】
別の態様においては、本発明は、可撓性フィルム・シートを所定の温度まで加熱し、該加熱されたフィルムを、パターン形成された表面を有する型の上に配置し、該型のパターン形成された表面が、一般に平滑な表面仕上げを有する第1部分と、一般に粗い表面仕上げを有する第2部分とを含んで、第1表面仕上げを、該第1部分に対応する該可撓性フィルムの部分に付与し、第2表面仕上げを、該第2部分に対応する該可撓性フィルムの部分に付与し、真空を、該型を通して適用することにより、該可撓性フィルムを、該型及び該パターン形成された表面と接触するように引き、該真空を保持し、これによって、該第1表面仕上げ及び該第2表面仕上げが付与された真空形成されたフィルムが形成され、該真空を解除し、成形されたフィルムを該型から取り出し、該成形されたフィルムを冷却し、硬化させて、第1表面仕上げ光沢を、該第1表面仕上げに対応する該成形されたフィルムの部分に形成し、第2表面仕上げ光沢を、該第2表面仕上げに対応する該成形されたフィルムの部分に形成し、該第1表面仕上げ光沢は該第2表面仕上げ光沢より大きいことを含む、カバー表皮を作成するための方法を提供する。
【0020】
本発明のさらに別の目的、特徴、及び利点は、当業者であれば、本明細書に添付され、この一部を形成する図面及び特許請求の範囲を参照して以下の説明を検討することにより、容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図面を参照すると、本発明の原理を具現する自動車インテリアトリム部品が図1において、全体が10で示されている。図1に示されているように、トリム部品10は、機器パネルとして示されている。このように示されているが、当業者であれば、本発明は、ドア・パネル、シート、中央コンソール、ヘッドライナ、ヴァイザ、ピラーなどを含む広範な自動車インテリアトリム部品に適用可能であることを理解する。したがって、本明細書に与えられる図は、例示的な目的に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0022】
図1に示されているように、トリム部品10は、所望の形状に形成されて、高光沢の区域14及び低光沢の区域16を示すことができる独特な特性を有するカバー表皮12が与えられた。図1においては、トリム部品10の上方部分18は低光沢の区域16であり、下方部分20は高光沢の区域14である。部品10の上方部分18を低光沢区域16として形成できることは、日光が明るい日には利点を有することがわかる。さらに、そこにすぐ隣接して、対照的な高光沢区域の下方部分20を形成できることは、消費者にとって美観的に好ましいものになる。本明細書の背景技術部分において上述されたように、このOEM業者は、トリム部品のカバー表皮は特定の光沢を指定し、この光沢は、該部品にわたり一様であることを指定する。OEM業者は、光沢が一様であることを指定するが、現行では、交互に高光沢の区域及び低光沢の区域を有する、軽量で高度に可撓性のあるカバー表皮を形成することができる技術はない。噴霧、液体、及び粉末技術は、低粘度の液体状態の材料を採用するため、工具の表面細部に対する良好な適合を可能にし、結果として得られるカバー表皮に誘起される応力が低い/ないために、該カバー表皮において安定した細部を生成することができる。しかし、これらのカバー表皮は、真空形成されたカバー表皮より重く、作業するのが容易ではない。一方、真空形成されたカバー表皮は、軽量で作業するのが容易であるが、前述の方法のようなツーリングからの表面細部のレベルを保持しない。このことは、材料の高い粘度(加熱された粘弾性材料)が、型及びその表面細部、すなわち、既に存在する材料の記憶に接触されるようになった場合のためであると信じられている。本発明の発明者らは、OEM業者は、市場における他の製品から彼らの製品を区別しようと努力して、高い及び低い光沢領域を有するトリム部品を実施することを望むであろうことを信じている。さらに、消費者は、そのような製品を美観的に好ましいと思うであろうことを信じている。
【0023】
上述のことを考慮して、本発明者らは、自動車のトリム部品に用いることができる高い光沢区域及び低い光沢区域をもつ軽量で可撓性のあるカバー表皮を開発した。
【0024】
ここで用いられる用語においては、所定の区域の光沢についての実際の値は、その区域が高光沢又は低光沢のうちの一方であるかどうかを決定するものではない。むしろ、高光沢区域と低光沢区域との間のデルタすなわち差異で決定される。本発明においては、顕著なコントラストをもつ区域を与えることが望ましい。したがって、本明細書において用いられるように、異なる区域は、これらの区域における光沢が、一様な光沢をもつ製品における異常な光沢変動と考えられる量の2倍である4の差異を示した場合には、高光沢及び低光沢を示すと考えられる。高光沢区域と低光沢区域との間の差異は、6、8、10、及びそれ以上であることがより好ましく、最高の差異が最も好ましい。
【0025】
図2及び図3Aに示す実施形態においては、高光沢区域14及び低光沢区域16を有するカバー表皮12を形成するためには、加熱され、軟化された材料シート22が型24の上に与えられて、その表面26に、所望のグレイン・パターン28が付与される。グレイン・パターンは、典型的には、一連の隆起部分30及び凹んだ部分32、及びその間の遷移部分34で構成される。グレイン・パターン28は、型24の表面全体26にわたり一様に与えることができ、すなわち、カバー表皮12の表面全体に与えることができることがわかる。
【0026】
高光沢区域及び低光沢区域を付与するためには、型24の表面26の特定の部分が、化学エッチング、蒸着、平滑形成、研磨、又は他の手段よる異なる表面仕上げで装飾される。図3Aに示されているように、グレイン・パターン28の隆起部分30を定める型表面26の部分、並びに、該グレイン・パターン28の遷移部分34を定める該型表面26の部分には、平滑な表面を有する微視的細部が与えられる。グレイン・パターン28の凹んだ部分32を定める型表面26の部分には、エッチング、付着、又は他の手段により粗い表面を付与する微視的細部与えられる。すなわち、軟化材料シート22が型24の表面26と接触するようになり、真空源36から該型24を通して真空引きされた場合には、材料シート22には、グレイン・パターン28及び微視的細部が付与されて、隆起部分及び遷移部分34は特定の表面仕上げ光沢を示し、凹んだ部分32は異なる表面仕上げ光沢を示す。カバー表皮の所定の区域におけるこれらの部分の組み合わせは、カバー表皮12の区域に、その区域について測定された光沢を与える。カバー表皮の他の区域には、同様に、単純にグレイン・パターンを付与することができる。しかし、グレイン・パターン28の選択的な部分は、平滑な又は粗い微視的細部の表面仕上げのいずれかを省くことができる。その結果、カバー表皮12のこれらの他の区域は、図2に示すカバー表皮のその区域とは異なる測定された光沢を示す。
【0027】
図3B、図3C、及び図3Dは、隆起部分30、凹んだ部分32、及び遷移部分34の種々の1つに平滑な又は粗い微視的細部表面仕上げが与えられたカバー表皮の代替的な変形態様を示す。
【0028】
図4及び図5は、グレイン・パターンが形成されていないカバー表皮12の一部を示す。その代わり、カバー表皮12の種々の部分には、異なる微視的詳細部の表面仕上げが付与されており、結果として、ロゴ又はデザイン35が該カバー表皮12に与えられる。デザイン35は高光沢区域で示され、周囲部分が低光沢区域で示されているが、高光沢区域及び低光沢区域は容易に逆にすることができる。
【0029】
ここで図6を参照すると、本発明の原理を組み込む自動車インテリアトリム部品200の別の実施形態が示されている。トリム部品200は、高光沢区域214及び低光沢区域216を有するカバー表皮212を含む。本実施形態においては、トリム部品200の下方部分220に低光沢区域216が与えられ、上方部分218に高光沢区域214が与えられている。カバー表皮212全体、上方部分218だけ、又は下方部分220だけに、カバー表皮212におけるグレイン・パターンを与えることができることは明らかである。
【0030】
図7に見られる実施形態においては、自動車インテリアトリム部品300は、高光沢区域314が、完全に、該部品300の上方部分318における低光沢区域316の周りを囲むカバー表皮312を有する。部品300の下方部分320は、さらに、高光沢区域314として与えられる。或いは、高光沢区域314及び低光沢区域316は、低光沢区域316が高光沢区域314を取り囲む逆の様式で与えることができる。グレイン・パターンは、カバー表皮312において全体的に又は選択的に与えることができる。
【0031】
図8を参照すると、自動車インテリアトリム部品400は、高光沢区域414が部品400の上方部分418上の低光沢区域416により囲まれた又は取り囲まれたカバー表皮412を有するように見られる。部品400の上方部分418の上には低光沢区域416が与えられる。部品400の下方部分420上には、高光沢区域が与えられる。前の実施形態におけるように、高光沢区域414及び低光沢区域416は逆にすることができ、そのように部品400上に与えられることが望ましい。前の実施形態におけるように、グレイン・パターンは、カバー表皮412において全体的に又は選択的に領域に与えることができる。
【0032】
図9の実施形態においては、自動車インテリアトリム部品500は、その上方部分518及び下方部分520の両方が、低光沢区域516で実質的に覆われたカバー表皮512を有する。しかし、シミュレートされた擦り切れた区域が部品500に与えられて、該部品全体にわたり選択的に与えられた高光沢区域514により表わされている。ここで示されているように、これらの区域514は、部品500の完全な領域を覆うのではなく、長期間にわたる使用により天然素材が経験する擦り切れをシミュレートしている。区域514を形成する際、カバー表皮512のより大きい部分には、グレイン・パターンのない区域を与えることができる。これらの区域は、より大きい隆起部分又はより大きい凹んだ部分で構成することができる。本明細書においては、「より大きい」は、そのグレイン・パターンを定めるように与えられた残りの隆起部分及び凹んだ部分に対して用いられる。より大きい区域をグレイン・パターンのないカバー表皮512に与える場合には、これらの区域は、「擦り切れていない」区域により取り囲まれた天然材料の「擦り切れた」区域をシミュレートすると考えることができる。いずれの場合においても、「擦り切れた」区域は、所望の効果に応じて、高光沢の区域であってもよいし、低光沢の区域であってもよい。
【実施例】
【0033】
上述のように、微視的細部を型に形成するための適切な表面準備を用いても、従来のカバー表皮材料は、需要のある高/低光沢効果を達成する能力を与えない。これら通常の材料について測定される光沢レベル間の差異は、高度に平滑な(ガラス)表面に対して、及び粗くされた(砂吹き)表面に対して形成される場合には、所望の高/低光沢効果を生成するのに不十分であった。種々の通常のPVC材料は、ネガティブに真空形成されたものであり、所望の高/低光沢効果を生成するものはなかった。このことを考慮して、内部自動車トリム具品のカバー表皮のための従来のカバー表皮材料ではない多数の熱可塑性オレフィン・シートが試験された。ネガティブな真空形成後(型表面温度が100°Fから160°Fの間)、結果として得られた光沢が、較正された60度光沢計(BYK Gardner製)を用いて測定された。これらの材料は、トップ・コートされたKyowa KVT−001、コーティングされていないKyowa KVT−001、Solvay Respond L10、Solvay Respond L9、Solvay Respond L8A、Solvay Respond L8、及びSolvay Respond L6を含んでいた。これらの材料は、それぞれ、日本のKyowa Leather Cloth Co.m Ltd.及びテキサス州グランド・プレーリー所在のSolvay Engineered Polymersから入手可能である。これらの材料について、最大の表面仕上げ光沢差異は1.2に過ぎないことが見出された。
【0034】
所望の高/低光沢効果を生成するように材料の能力に貢献するための幾つかの要因を発明者らは考えている。これらの要因の幾つかは、材料におけるより低い充填剤(例えば、タルク)、及び/又は、材料における添加剤としてのエラストマーの有無及び種類(例えば、ゴム)、基材混合物におけるポリウレタン又はポリプロピレンの有無を含む。上述の特性を有すると考えられている種々の熱可塑性オレフィン・シートは、同様にネガティブ真空形成され(型表面温度が100°Fから160°Fの間、材料温度が330°Fから420°Fの間)、これらの結果として得られる光沢が測定される。これらの材料は、Dupont Dow 1458−51−3、DuPont Dow 1458−51−4、DuPont Dow 1458−51−5、Sumitomo WT−318、及びDuPont Canada 9300D(それぞれ。DuPont−Dow Elastomers,Sumitomo Chemical America Inc.及びDuPont Canada Inc.から入手可能である)。これらの材料についての表面仕上げ光沢レベルの差異は、それぞれ、17.9、13.6、16.0、6.6、及び16.9になることが求められた。
【0035】
試験されたシートは、「A」表面上にはトップ・コート処理されないが、トップ・コート処理は、高/低光沢効果に影響を与えることなく使用できることが信じられている。同様に、プライマー(ウレタン・プライマーのような)をカバー表皮の「B」表面に与えて、後続のトリム部品の処理及び形成を助けることができる(カバー表皮をトリム部品の基板に対して、又は介在する材料に対して接着することを助けて、該トリム部品に所望の「軟らかい感触」を与える)。
【0036】
当業者であれば、上述の説明は、本発明の原理の実施を示すことを意味することを容易に理解する。本発明は、特許請求の範囲により定義される本発明の精神から離れることなく、修正、変形、及び変更が可能であり、本発明の範囲又は適用を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】高光沢及び低光沢を示し、本発明の原理を具現する機器パネルの斜視図である。
【図2】本発明の原理を具現するトリム・パネルのカバー表皮の一部の拡大平面図である。
【図3A】グレイン・パターンがカバー表皮に付与され、微視的細部を該パターンの表面仕上げにもつ、成形後の、型ツーリングと関連するネガティブに真空形成されたカバー表皮の線3−3に一般に沿って取った断面図である。
【図3B】グレイン・パターンが付与され、表面仕上げ光沢を示すグレイン・パターンの表面を示す、成形後のカバー表皮の断面図である。
【図3C】グレイン・パターンが付与され、表面仕上げ光沢を示すグレイン・パターンの表面を示す、成形後のカバー表皮の断面図である。
【図3D】グレイン・パターンが付与され、表面仕上げ光沢を示すグレイン・パターンの表面を示す、成形後のカバー表皮の断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態によるトリム・パネルのカバー表皮の一部の断面図である。
【図5】グレイン・パターンをカバー表皮に付与するようにされ、微視的細部を一般に平らな表面もつ、成形後の、型ツーリングと関連するネガティブに真空形成されたカバー表皮の図4における線5−5に一般に沿って取った断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態による自動車インテリアトリム部品及び機器パネルの斜視図である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態による自動車インテリアトリム部品の斜視図である。
【図8】本発明の原理を具現する自動車インテリアトリム部品のさらに別の実施形態である。
【図9】本発明の原理を具現する自動車の内部トリム部品のさらに別の実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空形成された一次表面と、二次表面とを有する一体的な表皮成形体を備え、
前記二次表面が、前記真空形成された一次表面に対しほぼ反対の側にあり、
該真空形成された一次表面が真空形成された第1部分と第2部分とを有し、
前記真空形成された第1部分が、第1光沢を定める第1表面仕上げを含み、
前記真空形成された第2部分が、第2光沢を定める第2表面を含み、
前記第1光沢が該第2光沢より高い、
ことを特徴とするトリム部品のカバー表皮。
【請求項2】
前記真空形成された第1部分及び第2部分がパターンを構成する、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項3】
前記パターンが、隆起部分と凹んだ部分とを有する、
請求項2に記載のカバー表皮。
【請求項4】
前記真空形成された第1部分が、前記パターンの前記隆起部分を含み、前記真空形成された第2部分が、前記パターンの前記凹んだ部分を含む、
請求項3に記載のカバー表皮。
【請求項5】
前記真空形成された第2部分が、前記パターンの前記隆起部分を含み、前記真空形成された第1部分が、前記パターンの前記凹んだ部分を含む、
請求項3に記載のカバー表皮。
【請求項6】
前記パターンがグレイン・パターンである、
請求項2に記載のカバー表皮。
【請求項7】
前記第1表面仕上げが、実質的に平滑な表面である、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項8】
前記第1表面仕上げが、粗い表面である、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項9】
前記真空形成された第1部分及び第2部分の両方が、隆起部分と凹んだ部分とを含む、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項10】
前記真空形成された第1部分が、前記真空形成された第2部分に隣接した、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項11】
前記真空形成された第1部分及び第2部分のうちの一方が、該真空形成された第1部分及び第2部分のうちの他方の周りを、少なくとも部分的に囲む、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項12】
前記真空形成された第1部分及び第2部分のうちの一方が、前記カバー表皮の上方部分に配置されており、該真空形成された第1部分及び第2部分のうちの他方が、下方部分に配置された、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項13】
さらに上方部分及び下方部分を備え、前記真空形成された第1部分及び第2部分が前記上方部分に配置された、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項14】
前記第1光沢及び前記第2光沢が、60度表面光沢計で測定したときに、5より大きい差異だけ異なる、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項15】
前記第1光沢及び前記第2光沢が、60度表面光沢計で測定したときに、7より大きい差異だけ異なる、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項16】
前記カバー表皮成形体が熱可塑性材料である、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項17】
前記カバー表皮の成形体が熱可塑性オレフィンである、
請求項1に記載のカバー表皮。
【請求項18】
トリム部品のカバー表皮を作成する方法であって、
可撓性フィルム・シートを所定の温度に加熱し、
加熱された前記フィルムを、パターン形成された表面を有する型の上に配置し、
前記型の前記パターン形成された表面が、一般に平滑な表面仕上げを有する第1部分と、一般に粗い表面仕上げを有する第2部分とを含み、前記第1部分に対応する前記可撓性フィルムの部分に第1表面仕上げを付与し、前記第2部分に対応する該可撓性フィルムの部分に第2表面仕上げを付与し、
該型を通して真空を適用して、前記可撓性フィルムを強制的に前記型及び前記パターン形成された表面に接触させ、
前記真空を保持し、これによって、前記第1表面仕上げ及び前記第2表面仕上げが付与された真空成形されたフィルムを形成し、
前記真空を解除し、前記成形されたフィルムを前記型から取り外し、
前記成形されたフィルムを冷却し、硬化させて、前記第1表面仕上げに対応する該成形されたフィルムの部分に第1光沢を形成し、前記第2表面仕上げに対応する該成形されたフィルムの部分に第2光沢を形成する、ことを含み、
前記第1光沢が前記第2光沢より大きいものとする、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記第1表面仕上げが、前記第2表面仕上げに隣接して形成される、
請求項18に記載のトリム部品のカバー表皮を作成する方法。
【請求項20】
前記第1表面仕上げ及び前記第2表面仕上げのうちの一方が、該第1表面仕上げ及び該第2表面仕上げのうちの他方の周りを、少なくとも部分的に囲むように形成される、
請求項19に記載のトリム部品のカバー表皮を作成する方法。
【請求項21】
前記パターン形成された型の表面が、複数の隆起部分と複数の凹んだ部分とを含む、
請求項19に記載のトリム部品のカバー表皮を作成する方法。
【請求項22】
前記第1部分及び前記第2部分のうちの一方が前記隆起部分を含み、該第1部分及び該第2部分のうちの他方が前記凹んだ部分を含む、
請求項21に記載のトリム部品のカバー表皮を作成する方法。
【請求項23】
前記第1部分及び前記第2部分のうちの一方が、前記カバー表皮の一般に上方部分と対応し、該第1部分及び該第2部分のうちの他方が、該カバー表皮の下方部分と対応する、
請求項19に記載のトリム部品のカバー表皮を作成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−175863(P2006−175863A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364840(P2005−364840)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】