高利得ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ及び関連する製造方法
パッケージ化電力電子デバイスが、ベース、コレクタ、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタ(112)と、ベース、コレクタ、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタ(116)とを含む。出力トランジスタのコレクタ端子は、ドライバ・トランジスタのコレクタ端子に結合され、出力トランジスタのベース端子は、ドライバ・トランジスタのエミッタ端子に結合され、ダーリントン対をもたらす。平面図における出力トランジスタの面積は、ドライバ・トランジスタの面積より少なくとも3倍大きい。例えば、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間とすることができる。関連するデバイス及び製造方法についても説明される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子デバイスに関し、より具体的には、電力トランジスタ及び関連する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力デバイスは、大電流を伝え、高電圧を維持するのに広く使用される。例えば、モータ駆動装置、電化製品制御、ロボット工学、照明設備安定器、及び他の用途における回路は、大電流を伝え、高い阻止電圧を維持することができる半導体スイッチング装置を必要とすることが多い。電力デバイスの1つの型としてバイポーラ接合トランジスタ(BJT)がある。バイポーラ接合トランジスタは、比較的大きな電流密度を扱い且つ比較的高い阻止電圧を維持する機能のために、多くの大電力用途のための最適なスイッチング装置である。
【0003】
BJTは、典型的には、互いに近接した2つの逆向きのp−n接合を有する半導体材料を含む。従って、BJTは、「n−p−n」又は「p−n−p」トランジスタと呼ぶことができる。動作中、電荷キャリアが一方のp−n接合に隣接した、エミッタと呼ばれる第1の導電型の半導体材料の領域に入る。大部分の電荷キャリアは、他方のp−n接合に隣接した、コレクタと呼ばれる第1の導電型の半導体領域からデバイスを出る。ベースと呼ばれる半導体材料の第3の領域がコレクタとエミッタの間に配置され、コレクタ及びエミッタの導電型とは逆の導電型を有する。BJTの2つのp−n接合は、コレクタがベースと接触する場所及びエミッタがベースと接触する場所に形成される。
【0004】
BJTは、トランジスタのベースに電流を流すことにより「オン」にされる(即ち、電流がエミッタからコレクタに流れるようにバイアスをかけられる)点で電流制御デバイスである。電流がベースに注入される又はそこから取り出されるとき、BJTがn−p−nであるか又はp−n−pであるかに応じて、エミッタからコレクタに移動することができる電荷キャリア、即ち電子又は正孔の流れに影響を及ぼし得る。BJTのベースに小電流を流すことによって、それに比例して大電流がエミッタからコレクタに流れる。典型的には、BJTは、デバイスをオン状態に維持するのに比較的大きなベース電流(例えば、コレクタ電流の5分の1から10分の1)を必要とし得る。高電力BJTは大きなコレクタ電流を有するので、それらはまた相当なベース電流を必要とする。高電力BJTが必要とし得る比較的大きなベース電流を供給するのに、比較的複雑な外部駆動回路が必要になり得る。これらの駆動回路は、トランジスタをその「オン」及び「オフ」状態の間で切替えるBJTのベースに選択的に電流を供給するのに用いられる。BJTの構造及び動作の詳細は、非特許文献1に述べられる。
【0005】
デバイスを構成する材料が、デバイスの操作性及び有用性の一助となり得る。例えば、従来のBJTは、一般的にはシリコン(Si)で形成されるが、ガリウムヒ素(GaAs)及びインジウムリン(InP)を含むこともできる。炭化シリコン(SiC)もまたBJTの材料として用いられる。SiCは、潜在的に有利な半導体特性、例えば、広いバンドギャップ、高い電界破壊強度、高い熱伝導性、高い融点及び高い飽和電子ドリフト速度を有する。従って、例えばSiなどの他の半導体材料内に形成されたデバイスと比べて、SiC内に形成された電子デバイスは、より高温、高い電力密度、より高速、より高い電力レベル及び/又は高い放射密度の下で動作する能力を有することができる。SiC BJTは、例えば、Palmour他に付与された特許文献1及びSingh他に付与された特許文献2に述べられる。
【0006】
比較的高い電流密度における比較的低いオン抵抗、オン抵抗の正温度係数(PTC)、及び/又は比較的速いスイッチング速度のようなデバイス特性のために、SiC電力バイポーラ接合トランジスタを高電力システム内で用いることが望ましいことがある。例えばゲート酸化物の不存在のために、SiC BJTは、高温及び/又は比較的過酷な環境で動作する可能性を有し得る。しかしながら、SiC BJTは、一般的に連続的なベース電流を必要とする。また、SiC BJTは比較的高い電流利得をもたらすことができるが、オープンベースの降伏電圧が著しく低下することがある。SiC BJTの電流利得はまた、ベース内、ベース・エミッタ空隙電荷領域内の再結合及び/又は表面再結合によって制限されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,945,394号
【特許文献2】米国特許第6,218,254号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B. Streetman著、"Solid State Electronic Devices"、第2版、7章、1980年
【発明の概要】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によると、パッケージ化電子デバイスが、ベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、ベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタとを含む。出力トランジスタのコレクタ端子がドライバ・トランジスタのコレクタ端子に結合され、出力トランジスタのベース端子がドライバ・トランジスタのエミッタ端子に結合されてダーリントン対をもたらす。平面図において、出力トランジスタの面積はドライバ・トランジスタの面積よりも少なくとも3倍大きい。
【0010】
幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間とすることができる。例えば、幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は、約5:1とすることができる。デバイスの阻止電圧は、約5キロボルト(kV)より高くすることができる。
【0011】
幾つかの実施形態において、本デバイスは、出力トランジスタのベース端子に結合されたベース端子と、出力トランジスタのコレクタ端子に結合されたコレクタ端子と、出力トランジスタのエミッタ端子に接続されたエミッタ端子とを有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタをさらに含むことができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、パッケージ化電力電子デバイスは、第1の導電型の基板を含むことができる。この基板は、ドライバ及び出力トランジスタのコレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含むことができる。第1の導電型のドリフト層が、共通コレクタ端子とは反対の側の基板上に設けられる。このドリフト層は、基板よりも低いキャリア濃度を有することができる。第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層が、基板とは反対の側のドリフト層上に設けられる。このベース層は、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含むことができる。第1のメサは、その上にドライバ・トランジスタのベース端子を含むことができ、第2のメサは、その上に出力トランジスタのベース端子を含むことができる。第1の導電型のエミッタ層が、ドリフト層とは反対の側のベース層上に設けられる。このエミッタ層は第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含むことができる。第1の部分は、その上にドライバ・トランジスタのエミッタ端子を含むことができ、第2の部分は、その上に出力トランジスタのエミッタ端子を含むことができる。
【0013】
幾つかの実施形態において、トレンチはベース層の第1のメサと第2のメサとを約4μm又はそれより少ない距離だけ分離して、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを約10kV又はそれより小さい電圧において電気的に絶縁することができる。
【0014】
幾つかの実施形態において、トレンチはドライバ・トランジスタの周囲を囲むことができる。第2の導電型の接合終端延長領域が出力トランジスタの周囲を囲むことができる。
【0015】
幾つかの実施形態において、ドリフト層は、ベース層の第1のメサに隣接するトレンチの底部における第2の導電型の第1の領域と、ベース層の第2のメサに隣接するトレンチの底部における第2の導電型の第2の領域とを含むことができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、トレンチはベース層を完全に貫通するように延びないことがある。第1の導電型の領域を、第1のメサと第2のメサとの間のトレンチの底部におけるベース層内に設けることができる。この領域は、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を有することができる。
【0017】
幾つかの実施形態において、第1の導電型の領域を、出力トランジスタのベース端子に隣接するベース層の第2のメサの内部に設けることができる。この第1の導電型の領域は、エミッタ層の第2の部分の上の出力トランジスタのエミッタ端子に電気的に接続することができる。ベース層内部の第1の導電型の領域とドリフト層の間のベース層の部分は、エミッタ層の第2の部分とドリフト層の間のベース層の部分よりも薄くして、デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路を設けることができる。
【0018】
幾つかの実施形態において、ドライバ及び出力トランジスタは炭化シリコン(SiC)デバイスとすることができ、パッケージ化電力電子デバイスは、室温において約300を上回る電流利得を有することができる。パッケージ化電力電子デバイスの電流利得は、出力トランジスタのコレクタ電流密度が増加するに連れて増加することができ、パッケージ化電力電子デバイスの電流利得は、デバイスの動作温度が上昇するに連れて減少し得る。
【0019】
幾つかの実施形態において、ドライバ・トランジスタは第2のドライバ・トランジスタとすることができ、デバイスは、ベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有する第1のドライバ・トランジスタをさらに含むことができる。第1のドライバ・トランジスタのエミッタ端子は、第2のドライバ・トランジスタのベース端子に結合することができ、第1のドライバ・トランジスタのコレクタ端子は、第2のドライバ・トランジスタ及び出力トランジスタのコレクタ端子に結合することができる。第1のドライバ・トランジスタ、第2のドライバ・トランジスタ、及び出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタとすることができ、デバイスは、約10,000を上回る電流利得を有することができる。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態により、パッケージ化電力電子デバイスの製造方法は、基板上のベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタを準備することと、基板上のベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタを準備することとを含む。出力トランジスタのコレクタ端子は、ドライバ・トランジスタのコレクタ端子に結合され、出力トランジスタのベース端子は、ドライバ・トランジスタのエミッタ端子に結合されてダーリントン対がもたらされる。平面図において、出力トランジスタの面積はドライバ・トランジスタの面積よりも少なくとも3倍大きい。
【0021】
幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は約3:1から約5:1までの間にすることができる。例えば、幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は約5:1とすることができる。デバイスの阻止電圧は約5キロボルト(kV)よりも高くすることができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、基板は第1の導電型とすることができ、その上に、ドライバ及び出力トランジスタのコレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を含むことができる。第1の導電型のドリフト層を共通コレクタ端子とは反対の側の基板上に設けることができる。このドリフト層は、基板よりも低いキャリア濃度を有することができる。第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層を、基板とは反対の側のドリフト層上に設けることができる。このベース層は、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に有することができる。第1のメサは、その上にドライバ・トランジスタのベース端子を含むことができ、第2のメサは、その上に出力トランジスタのベース端子を含むことができる。第1の導電型のエミッタ層を、ドリフト層とは反対の側のベース層上に設けることができる。このエミッタ層は、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含むことができる。第1の部分は、その上にドライバ・トランジスタのエミッタ端子を含むことができ、第2の部分は、その上に出力トランジスタのエミッタ端子を含むことができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、基板は、約8度軸外しでカットされた4H−SiC基板とすることができる。ドリフト層、ベース層、及びエミッタ層は基板上にエピタキシャルに成長させることができる。第1の導電型のドリフト層を基板上に成長させることができ、このドリフト層は、約5×1014cm-3のドーパント濃度を有することができる。第2の導電型のベース層をドリフト層上に成長させることができ、このベース層は、約6×1017cm-3のドーパント濃度を有することができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、エミッタ端子はオーミック・ニッケル・コンタクトとすることができ、ベース端子はオーミック・アルミニウム/チタン・コンタクトとすることができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、ベース層は、ドリフト層上に形成することができ、エミッタ層は、ドリフト層とは反対の側のベース層上に形成することができ、エミッタ層をエッチングして、第1及び第2の電気的に絶縁されたそれの部分を定め、ベース層の部分を露出させることができる。ベース層の露出部分をエッチングして、第1及び第2の電気的に絶縁されたそれのメサを定めるトレンチを内部に設けることができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、トレンチは、ドライバ・トランジスタの周囲を囲むことができる。第2の導電型の接合終端延長領域を出力トランジスタの周囲を囲むように設けることができる。
【0027】
幾つかの実施形態において、第2の導電型の第1の領域を、ベース層の第1のメサに隣接するトレンチの底部におけるドリフト層内に形成することができ、第2の導電型の第2の領域を、ベース層の第2のメサに隣接するトレンチの底部におけるドリフト層内に形成することができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、トレンチは、ベース層を完全に貫通するように延びないことがある。第1の導電型の領域を、第1のメサと第2のメサとの間のトレンチの底部におけるベース層内に設けることができる。この領域は、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を有することができる。
【0029】
幾つかの実施形態において、第2の導電型の領域を、ベース層の第1及び第2のメサ内の端部に注入形成することができる。注入領域は、ベース層の他の領域よりも高いドーパント濃度を有することができる。ドライバ・トランジスタのベース端子は、第1のメサの注入領域上に設けることができ、出力トランジスタのベース端子は、第2のメサの注入領域上に設けることができる。ベース層内の第2の導電型の注入領域の幅は、エミッタ層の第1又は第2の部分の幅の約半分より小さくすることができる。
【0030】
幾つかの実施形態において、第1の導電型の領域を、出力トランジスタのベース端子に隣接するベース層の第2のメサ内に形成することができる。この第1の導電型の領域は、エミッタ層の第2の部分の上の出力トランジスタのエミッタ端子に電気的に接続することができる。第1の導電型の領域とドリフト層の間の距離は、エミッタ層の第2の部分とドリフト層の間の距離よりも小さくして、デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路を設けることができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、ドライバ・トランジスタは、第2のドライバ・トランジスタとすることができ、それに隣接して基板上に、ベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有する第1のドライバ・トランジスタを設けることができる。第1のドライバ・トランジスタのエミッタ端子は、第2のドライバ・トランジスタのベース端子に結合することができ、第1のドライバ・トランジスタのコレクタ端子は、第2のドライバ・トランジスタ及び出力トランジスタのコレクタ端子に結合することができる。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によると、ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタは、コレクタ、エミッタ及びベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、第1のSiC BJTのコレクタに結合されたコレクタ及び第1のSiC BJTのベースに結合されたエミッタを有し、それに電流を供給するように構成された第2のSiC BJTとを含む。第1のSiC BJTの第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1と約5:1の間である。
【0033】
幾つかの実施形態において、ダーリントン・トランジスタは、第1のSiC BJTのコレクタ、エミッタ、及びベースに、それぞれ接続された、コレクタ、エミッタ、及びベースを有する第3のSiC BJTをさらに含むことができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、ダーリントン・トランジスタは、第1のSiC BJTのコレクタに結合されたコレクタと、第2のSiC BJTのベースに結合され、それに電流を供給するように構成されたエミッタと、外部駆動回路に結合されるように構成されたベースとを有する第3のSiC BJTをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを示す概略的な回路図である。
【図1B】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを示す断面図である。
【図1C】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを平面図で示す画像である。
【図2】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの出力特性を単一BJTと比較して示すグラフである。
【図3】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの電流利得対コレクタ電流密度を単一のBJTと比較して示すグラフである。
【図4】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの電流利得及びオン抵抗の温度依存性を示すグラフである。
【図5】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図7A】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す概略的な回路図である。
【図7B】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図8A】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタを示す回路図である。
【図8B】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタ・ユニットを示す断面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタの出力特性を、本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明が、本発明の実施形態を示す添付図面を参照しながら、以下に詳述される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。寧ろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ徹底的になるように、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面において、層及び領域のサイズ及び相対的サイズは、明確にするために誇張されていることがある。
【0037】
要素又は層が別の要素又は層の「上に(on)」ある、これに「接続される(connected to)」又は「結合される(coupled to)」と言われるとき、その要素又は層が、直接他の要素又は層の上にあり、接続され、又は結合されてもよく、或いは、介在する要素又は層が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素又は層が、別の要素又は層の「直接上に(directly on)」ある、これに「直接接続される(directory connected to)」又は「直接結合される(directoly coupled to)」と言われるとき、介在する要素又は層は存在しない。本明細書で用いられる「及び/又は(and/or)」という用語は、列挙された関連項目の1つ又はそれ以上のいずれかの及び全ての組み合わせを含む。全体を通して、同様の番号は同様の要素を意味する。
【0038】
本明細書において、用語「第1の(first)」及び「第2の(second)」という用語が、種々の領域、層及び/又は区域を記述するのに用いられているが、これらの領域、層及び/又は区域は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの領域、層又は区域を別の領域、層又は区域から区別するためだけに用いられる。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、下記に述べられる第1の領域、層又は区域を、第2の領域、層又は区域と呼ぶことができ、同様に第2の領域、層又は区域を第1の領域、層又は区域と呼ぶことができる。
【0039】
さらに、例えば、「下方(lower)」又は「底部(bottom)」及び「上方(upper)」又は「上部(top)」という相対的な用語は、本明細書においては、図に示されるような1つの要素の別の要素に対する関係を説明するのに用いることができる。相対的な用語は、図に示される配向に加えて、デバイスの異なる配向を含むように意図されることが理解されるであろう。例えば、図のデバイスがひっくり返された場合、他の要素の「下方」側にあるものとして説明された要素は、他の要素の「上方」側に配向されることになる。従って、「下方」という例示的な用語は、図の特定の配向に応じて、「下方」及び「上方」の両方の配向を含み得る。同様に、1つの図の中のデバイスがひっくり返された場合、他の要素の「下方」又は「下」にあるものとして説明された要素は、他の要素の「上方」に配向されることになる。従って、「下方」又は「下」という例示的な用語は、上方及び下方の両方の配向を含むことができる。
【0040】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態だけを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる単数形「a」、「an」及び「the)は、文脈により明らかに特段の定めがない限り、複数形も同様に含むことを意図したものである。さらに、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含む(include)」、及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、は本明細書で用いられるとき、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0041】
本発明の実施形態が、本発明の理想的な実施形態の概略図である断面図を参照しながら本明細書に説明される。そのため、例えば、製造技術及び/又は公差の結果として、図の形態からの変形物も予想される。従って、本発明の実施形態は、本明細書で示される特定の領域の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造の結果生じる形状のずれを含む。例えば、矩形として示され又は説明される領域は、通常の製造の公差に起因する丸い又は湾曲した構造部を有し得る。従って、図に示される領域は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、デバイスの領域の正確な形状を示すことを意図したものではなく、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0042】
特に別段の定めがない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に用いられる辞書において定義されるもののような用語は、本開示及び関連技術分野の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。
【0043】
本明細書でダーリントン・トランジスタとも呼ぶダーリントン対を設けるように接続された2つ又はそれ以上のSiC BJTを用いることによって、SiC BJTの電流利得のさらなる向上を達成することができる。SiCダーリントン・トランジスタは、より大きな電流利得をもたらすことができるが、SiC BJTと比較すると、増大した順電圧降下(例えば、約2.7Vよりも大きい)を有し、これによりSiCダーリントン・トランジスタが、低電圧用途(例えば、約5kV未満)には魅力的でなくなることがある。しかしながら、トランジスタが通常高い順電圧で動作することがある高電圧用途(例えば、例えば、約5−10kVより高い)においては、SiCダーリントン・トランジスタのオフセット又は増大した順電圧降下は、一般に許容可能である。
【0044】
従って、本発明の幾つかの実施形態は、10kV型SiC BJTのものと類似した順電圧降下を有するが、室温でより高い電流利得(例えば、幾つかの実施形態においては、約336の電流利得)を有する10kV型4H−SiCバイポーラ・ダーリントン・トランジスタを提供する。従って、本発明の幾つかの実施形態によるSiCバイポーラ・ダーリントン・トランジスタの電流利得は、10kV型SiC BJTのものよりも10倍より多く高くなり得る。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオン抵抗及び電流利得の温度依存性もまた、以下により詳細に説明される。
【0045】
図1Aは、本発明の幾つかの実施形態によるワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ10を示す回路図である。このようなワイドバンドギャップ・デバイスは、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及び/又は他のIII族窒化物材料などのワイドバンドギャップ材料の活性半導体層を含む。図1Aに示すように、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1 12は、ドライバ・トランジスタとして機能し、一方、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2 16は、ドライバ・トランジスタQ1 12に結合されて、ベース端子10b、コレクタ端子10c、及びエミッタ端子10eを有するダーリントン・トランジスタ10を形成する。具体的には、出力トランジスタQ2 16のコレクタ端子16cが、ドライバ・トランジスタQ1 12のコレクタ端子12cに結合され、出力トランジスタQ2 16のベース端子16bが、ドライバ・トランジスタQ1 12のエミッタ端子12cに結合され、ダーリントン対がもたらされる。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ10にはカスケード構成が用いられ、この場合ドライバ・トランジスタQ1 12が比較的小さいフットプリントを有し、出力トランジスタQ2 16が比較的大きいフットプリントを有する。本明細書で用いられるデバイスの「フットプリント」は、平面図におけるデバイスの面積、例えば、半導体基板に垂直な角度で上からデバイスを見たときの面積を指す。そのような構成は、トランジスタ12及び16のモノリシック統合又はハイブリッド結合によって達成することができる。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ10は、単一のバイポーラ接合トランジスタ(BJT)と比較して、小さいベース電流で作動させることができ、これにより外部駆動回路30のエネルギー消費を減らすことができる。
【0046】
図1Bは、本発明の幾つかの実施形態による10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル100の断面図を示す。図1Cは、図1Bの10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100を含むパッケージを、平面図で示す画像である。図1B及び図1Cに示すように、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル100は、比較的小さなSiCドライバBJT112によって駆動される比較的大きなSiC出力BJT116を含む。出力BJT116は、デバイスの面積の大部分を占める。以下で詳しく述べられるように、出力BJT116の平面図の面積、即ちフットプリントは、ドライバBJT112のそれよりも約3倍から5倍まで大きくすることができる。幾つかの実施形態において、出力BJT116の平面図の面積は、ドライバBJT112のものよりも少なくとも3倍、4倍、又は5倍大きくすることができる。
【0047】
図1Bに示すように、本発明の幾つかの実施形態によると、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100は、バルク単結晶n型4H−SiC基板52の上に形成されたモノリシック構造体として実装することができる。図1Bの右側は出力BJT116の断面を示し、図1Bの左側はドライバBJT112の断面を示す。BJT112及び116の両方が25μmのセルピッチを有することができる。BJT112及び116の層54、56、及び58は、n型4H−SiC基板52の上に成長させることができ、全ての層は1回のエピタキシャルの実行で成長させることができる。幾つかの実施形態において、基板52は、その上に層54、56、及び/又は58を成長させる前に、約8度の軸外しでカットすることができる。本明細書で用いられる「軸外し(off−axis)」という用語は、他の表面又は平面に対する基板表面の傾きを指す。
【0048】
具体的には、n型導電性SiCの層を基板52の上面に設けてn-ドリフト層54を形成することができる。基板52のキャリア濃度は、n-ドリフト層54のキャリア濃度よりも高い。従って、SiC基板52は、n+基板と呼ぶことができる。nドリフト層54は約128μmの厚さにすることができ、例えば、約5.3×1014cm-3のドーパント濃度を有することができる。これと対照的に、従来の10kVデバイス内のドリフト層のドーパント濃度は、約5.3×1015cm-3又はそれより大きいオーダーのものとすることができる。p型ベース層56が、n-ドリフト層54の上に設けられる。p型ベース層56は、例えば、n-ドリフト層54の成長に続いてエピタキシャル成長させることができ、約0.5μmの厚さを有するp型導電性SiC層を含むことができる。p型ベース層56は、例えば、約6×1017cm-3の濃度にドープすることができ、ベース・コンタクト用の高いドーパント濃度を有するp+領域56’を内部に含むことができる。n+SiCエミッタ層58が、p型ベース層56上に設けられる。n+エミッタ層58は約2μmの厚さにすることができ、例えば窒素で高濃度にドープすることができる。キャリア濃度に関して、上記のp+及びn+導電型領域並びにエピタキシャル層は、余分な製造欠陥をもたらすことなく、可能な限り高濃度にドープすることができる。p型領域を生成するのに適したドーパントには、アルミニウム、ホウ素又はガリウムが含まれる。n型領域を生成するのに適したドーパントには、窒素及びリンが含まれる。
【0049】
さらに図1Bを参照すると、n+エミッタ層58は、例えば、反応性イオン・エッチング(RIE)を用いてパターン化し、それぞれドライバBJT112及び出力BJT116のエミッタ「フィンガ」58d及び58oを形成することができる。エミッタ・フィンガ58d/58o及びp+領域56’の幅は、それぞれ、約10マイクロメートル(μm)及び約5μmとすることができる。ベース層56もまたパターン化して、ドライバBJT112と出力BJT116を電気的に絶縁するトレンチ60を設けることができる。具体的には、ベース層56をエッチングして、約4μm又はそれより小さい間隔又はギャップ60を有する電気的に絶縁されたメサ56d及び56oを形成し、BJT112及び116の両方がオフ状態で互いに遮蔽されるようにすることができる。幾つかの実施形態において、付加的なp+領域54’を、図5に示すようにメサ56d及び56oの各々に隣接するトレンチ60のベース又は底部におけるn型ドリフト層内に、注入形成するか又は他の方法で設けて、ドライバBJT112’と出力BJT116’との間の絶縁性を高め、それによってダーリントン・トランジスタ100’の阻止電圧を高くすることができる。p+領域54’は、約2−3μm又はそれより小さい距離だけ離すことができる。他の実施形態においては、図6に示すように、ベース層56をエッチングにより完全に貫通せずに、内部にトレンチ60を定めることができ、低濃度にドープしたn型領域56”を、メサ56dとメサ56oの間のトレンチ60の底部においてベース層56内に注入形成するか又は他の方法で設けて、ダーリントン・トランジスタ100”のドライバBJT112”と出力BJT116”との間の絶縁性をもたらすことができる。
【0050】
図1Cに示すように、900μmの幅のp型接合終端延長(JTE)190が、出力BJT116の活性領域の外周の回りに実装されて、逆バイアス下において密集する電界が減少する。表面不動態化は、約1000℃を上回る温度で約2時間湿式熱酸化を行い、続いて1時間のアルゴン・アニーリング、次に約3時間の約1175℃における酸化窒素(NO)再アニーリングを行うことによって行うことができる。熱酸化の後、1μmの二酸化シリコン及び500nmの窒化シリコンをプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)によって堆積させて熱不動態化層を保護することができる。
【0051】
再び図1Bを参照すると、オーミック・コンタクトが、n+炭化シリコン・エミッタ・フィンガ58d及び58o上に形成され、それぞれドライバ及び出力BTJ112及び116のエミッタ端子112e及び116eを定める。オーミック・コンタクトはまたベース層56のp+領域56’上に形成され、それぞれドライバ及び出力BTJ112及び116のベース端子112b及び116bを画定する。例えば、電界酸化物層をPECVDプロセスによってパターン化した後、オーミック・コンタクトをエミッタ層58及びベース層56上に、それぞれニッケル(Ni)膜及びアルミニウム/チタン(Al/Ti)膜を焼結することによって形成することができる。比較的厚いチタン/金層による2つの金属系を用いることができる。例えば、第1のメタライゼーションは、バスを通してベース領域56’を接続することができ、第2のメタライゼーションは、インターディジタル型エミッタ・フィンガ58d/58oを接続することができる。さらに、オーミック・コンタクトを基板52の下面上に形成して、ドライバBTJ112及び出力BJT116の両方のコレクタ端子112c/116cを設ける。
【0052】
従って、図1Bの左側に示すように、n型基板52、n型ドリフト層54、p型メサ56d、及びn型エミッタ・フィンガ58dが、ドライバBJT112を定める。同様に、図1Bの右側に示すように、n型基板52、n型ドリフト層54、p型メサ56o、及びn型エミッタ・フィンガ58oが、出力BJT116を定める。n+基板52上の、ドリフト層54とは反対側のオーミック・コンタクト112c/116cは、ドライバBTJ112及び出力BJT116の両方のコレクタ端子、並びに10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のコレクタ端子100cをもたらす。導電配線115は、出力BJT116のベース端子116bをドライバBTJ112のエミッタ端子112eに接続する。ベース層56のp+領域56’の上のコンタクト112bは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のベース端子100bをもたらし、エミッタ・フィンガ58o上のコンタクト116eは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のエミッタ端子100eをもたらす。
【0053】
ドライバBTJ112と比べての出力BJT116の面積比は、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの電流利得に影響を及ぼし得る。本明細書で用いられる「面積比」という用語は、平面図内でウェハ又は基板上の出力トランジスタのドライバ・トランジスタのものと比べた相対的なフットプリントを指す。例えば、比較的大きなドライバBJTは、低電流密度において高い電流利得をもたらすが、利得は高電流密度において急激に減少することがある。本発明の幾つかの実施形態は、出力BJT116の面積又はフットプリントがドライバBJT112のものより何倍も大きいSiCダーリントン・トランジスタを提供する。例えば、幾つかの実施形態において出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約5:1とすることができ、他の形態においては、出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約4:1とすることができ、さらに他の実施形態においては、出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約3:1とすることができる。しかしながら、本発明の実施形態は、約3:1から約5:1までの出力−ドライバ・トランジスタ面積比を含むことができ、これは本明細書で説明する高い電流利得を提供するのに重要である。具体的には、構成する出力及びドライブトランジスタが約3:1から約5:1までの出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン・トランジスタの電流利得は、約5:1より大きい出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン対よりも大きい電流利得をもたらすことができ、かつ、約3:1より小さい出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン対よりも大きい電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態によると、高い電流利得をもたらし、必要なベース電流を減らすためには、出力−ドライバ・トランジスタ面積比を本明細書で説明する臨界範囲内にする必要がある。
【0054】
再び図1Cを参照すると、ダーリントンダイ195は約4.2nm×約4.2nmのチップサイズを有し、約3.7mm2の活性領域(ダイ195上の出力BJT116及びダイ195上のドライバBJT112の両方が占める面積を含む)を有することができる。以下で図2及び図3に示す実験結果に関連して説明するように、SiCダーリントン・トランジスタ100とともに、同じウェハ上に比較のための類似のチップサイズのSiC BJTをまた作成した。
【0055】
図2は、本発明の幾つかの実施形態による4H−SiCモノリシックダーリントン・トランジスタ(図1A−図1Cのダーリントン・トランジスタのような)の室温(例えば、約25℃)における順電流密度(J)−電圧(V)特性を、類似の面積のSiC BJTのJ−T曲線と比較して示す。図2において、SiC BJTは、IB,BJTの図示値の間を10mA間隔として、約60mAの最大ベース電流IB,BJTを有し、一方、SiCダーリントン・トランジスタは、IB,Darlingtonの図示値の間を1mA間隔として、約5mAの最大ベース電流IB,Darlingを有する。約3.5Vにおける40mΩ・cm2の低い微分オン抵抗は、コレクタ−エミッタ電圧VCEが約2.7Vを上回るときに、SiCダーリントン対のドライバ及び出力BJTの両方が電圧飽和領域で動作することを示す。約30A/cm2より大きいコレクタ電流密度において、SiCダーリントン・トランジスタはSiC BJTと同様の順電圧降下(即ち、VCE)を示すが、その理由は、それら高電圧デバイスに対しては、ドリフト層抵抗が全体のオン抵抗を支配し得るからである。図2はまた「200W/cm2」及び「300W/cm2」とラベル付けされた線を含み、これらは、コレクタ電流密度及び順電圧降下の関数として平方センチメートル当たりに消散される電力を示す。約200W/cm2のパッケージ電力消散限界において、SiCダーリントン・トランジスタは、約37A/cm2の電流密度で約5.2Vの順電圧を有し、これは約140mΩ・cm2の比オン抵抗を与える。動作電流密度は、約300W/cm2のパッケージ電力消散限界においては約50A/cm2まで増加する。
【0056】
さらに図2を参照すると、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTよりも高い電流利得を与える。具体的には、本発明の幾つかの実施形態による電力SiCダーリントン・トランジスタは、飽和又は準飽和領域で動作することができ、この場合、順降下及びそれゆえに導電損失は低くなり得る。これらの動作条件下での電流利得は、通常は強制電流利得(βforced)と呼ばれる。強制電流利得βforcedは、近似的にドライバ・トランジスタ電流利得βdriverと出力トランジスタ電流利得βouputの積に等しいものとすることができ(例えば、βforced≒βdriver×βouput)、この場合ドライバ・トランジスタその活性領域において動作し、この場合出力トランジスタはその飽和又は準飽和領域で動作する。本明細書で用いられる、ドライバ及び出力トランジスタの「電流利得」という用語は、それらそれぞれのコレクタ電流(IC)のそれらそれぞれのベース電流(IB)に対する比を指す。換言すれば、βdriver=ICdriver/IBdriver、及びβoutput=ICoutput/IBoutputである。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの強制電流利得βforced,Darlingtonは、近似的にICoutput/IBdriverに等しいものとすることができる。
【0057】
図2に示すように、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、約336の強制電流利得βforced,Darlington、及び約200W/cm2の電力消散密度において約4mAのベース電流IBdriverを有し、これに比べて同じ条件下のSiC BJTの強制電流利得βforced,BJTは、約30である。この利得は、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのドライバ及び出力BJTの両方が活性領域で動作するとき、コレクタ電流レベルが高いほど高くなる可能性がある。例えば、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタについて、約120A/cm2のコレクタ電流密度において、約1100の強制電流利得が計測され、これに比べて同じ条件下のSiC BJTの強制電流利得は、約43であった。従って、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、従来のSiC BJTの何倍もの強制電流利得を与える。それゆえに、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、高電圧用途において単一のSiC BJTと比べて低いベース電流で動作することができ、ドライバ回路の電力消費を減らすことができる。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの阻止特性もまた図2に示す。本明細書で用いる場合、「阻止電圧」は、トランジスタがオフ状態にあるときに、トランジスタのコレクタとエミッタの間に、コレクタからエミッタに有意な漏れ電流が流れることなく印加することができる電圧を意味する。トランジスタの「降伏電圧」はオフ状態にあるトランジスタのコレクタとエミッタの間に印加されて、有意な漏れ電流が流れ始める電圧を意味する。具体的には、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオープンエミッタ阻止電圧(BVCBO)は、約1mA/cm2未満の漏れ電流において約10kVと計測された。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオープンベース阻止電圧(BVCEO)は、同じ漏れ電流において約9.5kVより低かった。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、類似のダイサイズ有する同じ又は類似のウェハ上に作成された同程度のBJTよりも約2kV低い逆阻止電圧を有し得ることが分かった。しかし、図5及び図6の構造体は、内部に埋め込まれたp型領域54’及びn型領域56”のためにドライバBJTと出力BJTとの間の改善された絶縁をもたらし、これにより幾つかの実施形態において阻止電圧を上昇させることができる。
【0059】
図3は、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの、室温(例えば約25℃)におけるコレクタ電流密度に対する活性領域内の電流利得の依存性をSiC BJTと比較して示すグラフである。図3に示すように、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの電流利得(線300で示され、説明書きは図3の左側)、及び、単一のSiC BJTの電流利得(線310で示され、説明書きは図3の右側)は、計測した電流密度範囲にわたってコレクタ電流密度と共に増加し続け、そのような高電圧デバイスに対しては空間電荷再結合が支配的であることを示す。しかしながら、図3は、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの電流利得が、単一のSiC BJTの電流利得より10倍を超えて大きいことを示す。従って、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTと比べて小さいベース電流で動作し、同じ又は類似のコレクタ電流をもたらすことができ、これによりドライバ回路の電力消費を著しく減らすことができる。このことは、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタを、高電力高温用途に対してさらに魅力的なものにする。
【0060】
図4は、本発明の幾つかの実施形態による10kV型SiCダーリントン・トランジスタの強制電流利得βforced及び比オン抵抗Rsp,onの温度依存性を示すグラフである。図4に示すように、ダーリントン・トランジスタはオン抵抗Rsp,onに関して正の温度係数、及び電流利得βforcedに関して負の温度係数を有する。換言すれば、ダーリントン・トランジスタのオン抵抗Rsp,onは、ダーリントン・トランジスタの動作温度が上昇するに連れて増加し(線405で示され、説明書きは図4の左側)、一方、電流利得βforcedはダーリントン・トランジスタの動作温度が上昇するに連れて減少する(線415で示され、説明書きは図4の右側)。例えば、約200℃において、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの比オン抵抗Rsp,onは約550mΩ・cm2まで増加し、強制電流利得βforcedは約135まで減少する。オン抵抗Rsp,onの増加は、高温におけるドリフト層内の移動度の減少に起因すると考えることができる。電流利得βforcedの減少は、高温におけるベース内の深い準位のアクセプタのイオン化の増加に関連させることができ、これがエミッタ注入効率を減らし得る。
【0061】
図5及び図6は、本発明の幾つかの実施形態による、上記と類似の電流利得及び改善されたデバイス絶縁性、並びにそれ故に増加した阻止電圧を有する、SiCダーリントン・トランジスタの構成を示す。図5のSiCダーリントン・トランジスタ100’及び図6のSiCダーリントン・トランジスタ100”の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関して前述したのと類似のものとすることができる。前述のように、図5のSiCダーリントン・トランジスタ100’は、メサ56d及び56oの各々に隣接するトレンチ60の底部におけるn型ドリフト層54の内部のp+領域54’をさらに含み、SiCダーリントン・トランジスタ100’のドライバBJT112’と出力BJT116’との間の絶縁性を向上させる。同様に、図6のSiCダーリントン・トランジスタ100”は、ベース層56内のトレンチ60と、メサ56dと56oの間とのトレンチ60の底部におけるベース層56内にあって、ベース層56の残り部分を貫通して延びる低濃度ドープn型領域56”とをさらに含み、ダーリントン・トランジスタ100”のドライバBJT112”と出力BJT116”との間の絶縁性を向上させる。
【0062】
図7Aは、本発明のさらに別の実施形態による、デバイスの活性領域内にアバランシェ電流路を含む、10kV型ワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ10”’の回路図である。当業者には周知であるように、BJT内の「アバランシェ降伏」(単に「アバランシェ」と呼ばれることもある)は、強い電界がデバイスに印加されたときに起こり得る急激な電流増加を指す。電力SiC BJTにおいて、このアバランシェ電流の多くは、典型的にはデバイスの活性領域を囲むデバイスの接合終端領域を通して流れる。残念ながら、これが起るとアバランシェ電流が、デバイスを永久に破壊することがある。下記に述べるように、本発明の実施形態による高電力ダーリントン・トランジスタは、デバイスの活性領域内に、デバイスが故障したときにアバランシェ電流を流す漏れ電流路を含むことができる。アバランシェ電流がこれら漏れ電流路を通して流れるときは、デバイスを破壊せず、それゆえに本発明の特定の実施形態によるダーリントン・トランジスタはアバランシェ事象に耐えることができる。
【0063】
図7Aに示すように、SiCダーリントン・トランジスタ10’’’は、図1Aに関連して上述したのと類似の方法でSiCNPN出力BJT Q2 16に接続されたSiCNPNドライバBJTQ1 12を含む。ベース18b、エミッタ18e及びコレクタ18cを有する第3の「アバランシェ」SiC BJT Q3 18が、出力SiC BJT Q2 16に対して並列に接続される。このアバランシェBJT Q3 18は、デバイス降伏の事象においてアバランシェ電流のための電流路を与える。
【0064】
図7Bは、出力SiC BJT Q2 116’’’と並列のアバランシェBJT Q3 118(図7Bの右側に示す)を含んだダーリントン・トランジスタ100’’’の断面図を示す。図7BのSiCダーリントン・トランジスタ100’’’の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関連して前述したのと類似のものとすることができる。図7Bに示すように、n+エミッタ領域58aがp型ベース層56内に設けられ、出力BJT Q2 116’’’のエミッタ端子116eに、導電配線120によって電気的に接続される。アバランシェBJT Q3 118のエミッタ領域58aは、出力BJT Q2 116’’’のエミッタ・フィンガ58oよりもデバイス内に深く形成される。その結果、アバランシェBJT Q3 118のベース層56oの、エミッタ領域58aとドリフト層54の間の部分は、出力BJT Q2 116’’’のベース層56oの、エミッタ・フィンガ58oとドリフト層54との間の部分よりも薄くなる。従って、アバランシェBJT Q3 118において、エミッタベースpn接合は、コレクタ−ベースpn接合に、出力BJT Q2 116’’’における対応するpn接合においてよりも近くなる。従って、アバランシェ条件が生じるとき、アバランシェBJT Q3 118を通る漏れ電流路が用意される。これは非破壊的漏れ電流路であり、ダーリントン・トランジスタ100’’’が破壊されずにアバランシェ事象を処理することを可能にする。
【0065】
上で詳しく説明したように、本発明の幾つかの実施形態は、室温(即ち、約25℃)の強制電流利得が約336で、約200℃の温度で約135まで減少し得る電流利得を有する10kV型2段4H−SiCダーリントン・トランジスタを提供することができる。比較のために、単一のSiC BJTは、類似の順電圧降下により、室温で約30の強制電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTと比べて、順電圧降下の不利益なしに著しく高い電流利得(336対30)を有することができ、このことは類似の条件下で電力消費を減らすことができる。本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタの比オン抵抗は、室温において約140mΩ・cm2とすることができ、高温で増加し得る。本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタはまた、約1mA/cm2未満の漏れ電流密度において、約9.5kVのオープンエミッタ阻止電圧(BVCBO)及び約10kVのオープンベース阻止電圧(BVCEO)を示すことができる。
【0066】
図8Aは、本発明の幾つかの実施形態によるワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80を示す回路である。このようなワイドバンドギャップ・デバイスは、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及び/又は他のIII族窒化物材料などのワイドバンドギャップ材料の活性半導体層を含む。図8Aに示すように、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1A 12Aは、第1のドライバ・トランジスタとして機能し、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1B 12Bは、第2のドライバ・トランジスタとして機能し、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2 16は、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bに結合されて、ベース端子80b、コレクタ端子80c、及びエミッタ端子80eを有するダーリントン・トランジスタ80を形成する。具体的には、出力トランジスタQ2 16のコレクタ端子16cがドライバ・トランジスタQ1B 12Bのコレクタ端子12Bcに結合され、出力トランジスタQ2 16のベース端子16bがドライバ・トランジスタQ1B 12Bのエミッタ端子12Beに結合される。同様に、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bのコレクタ端子12Bcがドライバ・トランジスタQ1A 12Aのコレクタ端子12Acに結合され、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bのベース端子12Bbがドライバ・トランジスタQ1A 12Aのエミッタ端子12Aeに結合される。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ80には、ドライバ・トランジスタQ1A 12A及びQ1B 12Bが比較的小さなフットプリントを有し、出力トランジスタQ2 16が比較的大きなフットプリントを有するカスケード構成が用いられる。そのような構成は、トランジスタ12A、12B、及び16のモノリシック統合又はハイブリッド結合によって実現することができる。ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80は、2段のワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタと比べて小さいベース電流IBでオンにすることができ、これにより外部駆動回路38の電力消費をさらに減らすことができる。また、図示しないが、ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80は、図7Aに示したのと類似の方法で、出力BJT16と並列に結合されたアバランシェBJTをさらに含むことができる。
【0067】
図8Bは、本発明の幾つかの実施形態による10kV型3段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセル800の断面図を示す。SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル800は、比較的小さい第1及び第2のSiCドライバBJT 112A及び112Bによって駆動される比較的大きいSiC出力BJT 116を含む。出力BJT 116は、デバイスの面積の大部分を占有する。出力BJT 116のフットプリントは、ドライバBJT 112A及び/又は112Bのフットプリントより約3倍乃至5倍大きくすることができる。図1Bに示すように、本発明の幾つかの実施形態によると、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800は、バルク単結晶n型4H−SiC基板52の上に形成されたモノリシック構造体として実装することができる。図8Bの右側は出力BJT116の断面を示し、図8Bの左側は第1のドライバBJT112Aの断面を示し、図8Bの中央部分は第2のドライバBJT112Bの断面を示す。3つのBJT112A、112B、及び116の全ては、25μmのセルピッチを有することができる。
【0068】
3段SiCダーリントン・トランジスタ800の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関連して前述したのと類似のものとすることができる。それゆえに、n+エミッタ層58を、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いてパターン化し、それぞれBJT112A、112B、及び116のエミッタ・フィンガ58d1、58d2、及び58oを形成することができる。エミッタ・フィンガ及びp+領域56’の幅は、それぞれ約10マイクロメートル(μm)及び約5μmとすることができる。またベース層56をパターン化してトレンチ60A及び60Bを設けることができる。トレンチ60Aは、第1のドライバBJT112Aを第2のドライバBJT112Bから電気的に絶縁し、一方トレンチ60Bは、第2のドライバBJT112Bを出力BJT116から電気的に絶縁する。具体的には、ベース層56をエッチングして、約4μm又はそれより小さい間隔若しくは隙間で電気的に絶縁されたメサ56d1、56d2、及び56oを形成して、3つのBJT112A、112B、及び116の全てがオフ状態で互いに遮蔽されるようにすることができる。図示しないが、幾つかの実施形態において、付加的なp+領域を、トレンチ60A及び60Bの底面又は底部におけるn型ドリフト層54の内部に注入形成するか又は他の方法で設けて、図5に示したのと同様に向上したデバイス絶縁をもたらすことができる。他の実施形態において、図6に示したのと同様に、ベース層56をエッチングにより完全に貫通せずに、内部にトレンチ60A及び60Bを定め、低濃度ドープn型領域をメサ56d1、56d2、及び56oとの間のトレンチ60A及び60Bの底部におけるベース層56内に設けて、向上したデバイス絶縁をもたらすことができる。
【0069】
また、オーミック・コンタクトをエミッタ・フィンガ58d1、58d2、及び58oの上に形成してデバイスのエミッタ端子112Ae、112Be、及び116eを定め、同様にオーミック・コンタクトをベース層56のp+領域56’の上に形成して、デバイスのベース端子112Ab、112Bb、及び116bを定めることができる。オーミック・コンタクトをさらに基板52の下面上に形成して、3つのBJT112A、112B、及び116全てのコレクタ端子112Ac/112Bc/116c、並びに10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のコレクタ端子100cをもたらす。第1の導電配線115Aがエミッタ端子112Aeを第2のドライバ・トランジスタ112Bのベース端子112Bbに電気的に接続し、第2の導電配線115Bが第2のドライバ・トランジスタ112Bのエミッタ端子112Beを出力BJT116のベース端子116bに電気的に接続する。ベース層56のp+領域56’上のコンタクト112Abは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800のベース端子800bを与え、エミッタ・フィンガ58oの上のコンタクト116eは10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800のエミッタ端子800eを与える。
【0070】
図9は、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタ(例えば、図8A−8Bのダーリントン・トランジスタのような)の室温(例えば、約25℃)におけるコレクタ電流(I)−電圧(V)特性を、2段SiCダーリントン・トランジスタ(例えば、図1A−1Cのダーリントン・トランジスタのような)の特性と比較して示す実験結果のグラフである。図9に示すデータは、本明細書で述べられるデバイスよりも約10倍大きい活性領域を有することができる比較的大きな面積のデバイスについて計測したものであり、従って、図9に示した電流値は、本発明の幾つかの実施形態による2段及び3段SiCダーリントン・トランジスタによって与えられる電流値よりも約10倍大きくなり得るが、データは、本発明の幾つかの実施形態によるデバイスの電流利得を正確に表すことができる。具体的には、図9に示すように、2段SiCダーリントン・トランジスタは、IB,2段の図示値の間を5mA間隔として、約40mAの最大ベース電流IB,2段を有し、一方3段SiCダーリントン・トランジスタは、IB,3段の図示値の間を0.2mA間隔として、約1.4mAの最大ベース電流IB,3段を有する。本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタの電流利得は、第1のドライバ・トランジスタの電流利得βdriver1と、第2のドライバ・トランジスタの電流利得βdriver2と、出力トランジスタの電流利得βoutoutとの積で近似的することができ(例えば、β3段≒βdriver1×βdriver2×βoutout)、ICoutput/βBdriver1と近似することができる。ベース電流値IB,3段は比較的小さいので、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、本明細書で説明した2段SiCダーリントン・トランジスタよりもさらに高い電流利得をもたらす。具体的には、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、約10,000又はそれより大きい電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、2段SiCダーリントン・トランジスタの何倍もの強制電流利得をもたらし、従って、さらに小さいベース電流で動作することができる。
【0071】
従って、本発明の幾つかの実施形態による比較的高い電圧(例えば、約10kVを上回る)のSiCダーリントン・トランジスタは、SiC BJTに類似の順電圧降下をもたらし得るが、SiC BJTよりも遥かに高い電流利得を示すことができ、小さいベース電流を可能にし、ドライバ回路の電力消費を減らすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、電力スイッチング装置及び/又はセンサのような高電力、高温の用途に対して魅力的なものとなり得る。
【0072】
図1−図9を参照しながら前述した本発明の実施形態は、本明細書で説明したダーリントン対をもたらすワイドバンドギャップ・バイポーラ・トランジスタのモノリシック統合又はハイブリッド結合によって実現することができる。本明細書で用いられる「ハイブリッド」デバイスは、2つの別個のバイポーラ・トランジスタの、例えばカスケード構成における結合を指すことができる。「モノリシック」デバイスは、両方のバイポーラ・トランジスタが同じ半導体チップ及び/又は基板内に作成されたデバイスを指すことができる。本発明の幾つかの実施形態によるパッケージ化電力デバイスは、本明細書で説明されたバイポーラ・トランジスタのモノリシック及びハイブリッド結合の両方を含むことができる。
【0073】
上記の実施形態は、特定の図面を参照しながら説明したが、本発明の幾つかの実施形態は付加的な及び/又は介在する層、構造体、又は要素を含むことができ、及び/又は、特定の層、構造体、又は要素を削除することができることを理解すべきである。より一般的には、前記は本発明の例証であり、本発明を限定するものと解釈すべきではならない。本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱せずに、例示的な実施形態において、多くの修正が可能であることを容易に認識するであろう。従って、そのような修正の全てが、特許請求の範囲において定められる本発明の範囲に含まれることが意図されている。従って、前記は、本発明の例証であり、本発明を開示された特定の実施形態に限定するものと解釈すべきではないこと、並びに、開示された実施形態への修正及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解すべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲、及びその中に含まれる特許請求の範囲の等価物によって定められる。
【符号の説明】
【0074】
10、10’’’:ワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ
10b、12Ab、12Bb、16b、18b、80b、100b、112b、116b、112Ab、112Bb、800b:ベース端子
10c、12c、12Ac、12Bc、16c、18c、80c、100c、112c、116c、112Ac、112Bc、800c:コレクタ端子
10e、12e、12Ae、12Be、18e、80e、100w、112e、116e、112Ae、112Be、800e:エミッタ端子
12:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1
12A:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1A
12B:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1B
16:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2
18、118:アバランシェBJTQ3
30:外部駆動回路
52:n型4H−SiC基板
54:n-ドリフト層
54’、 56’:p+領域
56:p型ベース層
56’:p+領域
56”:n型領域
56d、56d1、56d2、56o:メサ
58:n+エミッタ層
58a:エミッタ領域
58d、58d1、58d2、58o:エミッタ・フィンガ
60、60A、60B:トレンチ
80:ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ
100:10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル
100’、100”、100’’’:ダーリントン・トランジスタ
112、112’、112”、112A、112B:ドライバBJT
116、116’、116”、116’’’:出力BJT
115A、115B:導電配線
190:接合終端延長
195:ダーリントンダイ
300、310、405、415:線
800:10kV型3段SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ電子デバイスに関し、より具体的には、電力トランジスタ及び関連する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力デバイスは、大電流を伝え、高電圧を維持するのに広く使用される。例えば、モータ駆動装置、電化製品制御、ロボット工学、照明設備安定器、及び他の用途における回路は、大電流を伝え、高い阻止電圧を維持することができる半導体スイッチング装置を必要とすることが多い。電力デバイスの1つの型としてバイポーラ接合トランジスタ(BJT)がある。バイポーラ接合トランジスタは、比較的大きな電流密度を扱い且つ比較的高い阻止電圧を維持する機能のために、多くの大電力用途のための最適なスイッチング装置である。
【0003】
BJTは、典型的には、互いに近接した2つの逆向きのp−n接合を有する半導体材料を含む。従って、BJTは、「n−p−n」又は「p−n−p」トランジスタと呼ぶことができる。動作中、電荷キャリアが一方のp−n接合に隣接した、エミッタと呼ばれる第1の導電型の半導体材料の領域に入る。大部分の電荷キャリアは、他方のp−n接合に隣接した、コレクタと呼ばれる第1の導電型の半導体領域からデバイスを出る。ベースと呼ばれる半導体材料の第3の領域がコレクタとエミッタの間に配置され、コレクタ及びエミッタの導電型とは逆の導電型を有する。BJTの2つのp−n接合は、コレクタがベースと接触する場所及びエミッタがベースと接触する場所に形成される。
【0004】
BJTは、トランジスタのベースに電流を流すことにより「オン」にされる(即ち、電流がエミッタからコレクタに流れるようにバイアスをかけられる)点で電流制御デバイスである。電流がベースに注入される又はそこから取り出されるとき、BJTがn−p−nであるか又はp−n−pであるかに応じて、エミッタからコレクタに移動することができる電荷キャリア、即ち電子又は正孔の流れに影響を及ぼし得る。BJTのベースに小電流を流すことによって、それに比例して大電流がエミッタからコレクタに流れる。典型的には、BJTは、デバイスをオン状態に維持するのに比較的大きなベース電流(例えば、コレクタ電流の5分の1から10分の1)を必要とし得る。高電力BJTは大きなコレクタ電流を有するので、それらはまた相当なベース電流を必要とする。高電力BJTが必要とし得る比較的大きなベース電流を供給するのに、比較的複雑な外部駆動回路が必要になり得る。これらの駆動回路は、トランジスタをその「オン」及び「オフ」状態の間で切替えるBJTのベースに選択的に電流を供給するのに用いられる。BJTの構造及び動作の詳細は、非特許文献1に述べられる。
【0005】
デバイスを構成する材料が、デバイスの操作性及び有用性の一助となり得る。例えば、従来のBJTは、一般的にはシリコン(Si)で形成されるが、ガリウムヒ素(GaAs)及びインジウムリン(InP)を含むこともできる。炭化シリコン(SiC)もまたBJTの材料として用いられる。SiCは、潜在的に有利な半導体特性、例えば、広いバンドギャップ、高い電界破壊強度、高い熱伝導性、高い融点及び高い飽和電子ドリフト速度を有する。従って、例えばSiなどの他の半導体材料内に形成されたデバイスと比べて、SiC内に形成された電子デバイスは、より高温、高い電力密度、より高速、より高い電力レベル及び/又は高い放射密度の下で動作する能力を有することができる。SiC BJTは、例えば、Palmour他に付与された特許文献1及びSingh他に付与された特許文献2に述べられる。
【0006】
比較的高い電流密度における比較的低いオン抵抗、オン抵抗の正温度係数(PTC)、及び/又は比較的速いスイッチング速度のようなデバイス特性のために、SiC電力バイポーラ接合トランジスタを高電力システム内で用いることが望ましいことがある。例えばゲート酸化物の不存在のために、SiC BJTは、高温及び/又は比較的過酷な環境で動作する可能性を有し得る。しかしながら、SiC BJTは、一般的に連続的なベース電流を必要とする。また、SiC BJTは比較的高い電流利得をもたらすことができるが、オープンベースの降伏電圧が著しく低下することがある。SiC BJTの電流利得はまた、ベース内、ベース・エミッタ空隙電荷領域内の再結合及び/又は表面再結合によって制限されることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,945,394号
【特許文献2】米国特許第6,218,254号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】B. Streetman著、"Solid State Electronic Devices"、第2版、7章、1980年
【発明の概要】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によると、パッケージ化電子デバイスが、ベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、ベース端子、コレクタ端子及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタとを含む。出力トランジスタのコレクタ端子がドライバ・トランジスタのコレクタ端子に結合され、出力トランジスタのベース端子がドライバ・トランジスタのエミッタ端子に結合されてダーリントン対をもたらす。平面図において、出力トランジスタの面積はドライバ・トランジスタの面積よりも少なくとも3倍大きい。
【0010】
幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間とすることができる。例えば、幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は、約5:1とすることができる。デバイスの阻止電圧は、約5キロボルト(kV)より高くすることができる。
【0011】
幾つかの実施形態において、本デバイスは、出力トランジスタのベース端子に結合されたベース端子と、出力トランジスタのコレクタ端子に結合されたコレクタ端子と、出力トランジスタのエミッタ端子に接続されたエミッタ端子とを有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタをさらに含むことができる。
【0012】
幾つかの実施形態において、パッケージ化電力電子デバイスは、第1の導電型の基板を含むことができる。この基板は、ドライバ及び出力トランジスタのコレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含むことができる。第1の導電型のドリフト層が、共通コレクタ端子とは反対の側の基板上に設けられる。このドリフト層は、基板よりも低いキャリア濃度を有することができる。第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層が、基板とは反対の側のドリフト層上に設けられる。このベース層は、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含むことができる。第1のメサは、その上にドライバ・トランジスタのベース端子を含むことができ、第2のメサは、その上に出力トランジスタのベース端子を含むことができる。第1の導電型のエミッタ層が、ドリフト層とは反対の側のベース層上に設けられる。このエミッタ層は第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含むことができる。第1の部分は、その上にドライバ・トランジスタのエミッタ端子を含むことができ、第2の部分は、その上に出力トランジスタのエミッタ端子を含むことができる。
【0013】
幾つかの実施形態において、トレンチはベース層の第1のメサと第2のメサとを約4μm又はそれより少ない距離だけ分離して、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを約10kV又はそれより小さい電圧において電気的に絶縁することができる。
【0014】
幾つかの実施形態において、トレンチはドライバ・トランジスタの周囲を囲むことができる。第2の導電型の接合終端延長領域が出力トランジスタの周囲を囲むことができる。
【0015】
幾つかの実施形態において、ドリフト層は、ベース層の第1のメサに隣接するトレンチの底部における第2の導電型の第1の領域と、ベース層の第2のメサに隣接するトレンチの底部における第2の導電型の第2の領域とを含むことができる。
【0016】
幾つかの実施形態において、トレンチはベース層を完全に貫通するように延びないことがある。第1の導電型の領域を、第1のメサと第2のメサとの間のトレンチの底部におけるベース層内に設けることができる。この領域は、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を有することができる。
【0017】
幾つかの実施形態において、第1の導電型の領域を、出力トランジスタのベース端子に隣接するベース層の第2のメサの内部に設けることができる。この第1の導電型の領域は、エミッタ層の第2の部分の上の出力トランジスタのエミッタ端子に電気的に接続することができる。ベース層内部の第1の導電型の領域とドリフト層の間のベース層の部分は、エミッタ層の第2の部分とドリフト層の間のベース層の部分よりも薄くして、デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路を設けることができる。
【0018】
幾つかの実施形態において、ドライバ及び出力トランジスタは炭化シリコン(SiC)デバイスとすることができ、パッケージ化電力電子デバイスは、室温において約300を上回る電流利得を有することができる。パッケージ化電力電子デバイスの電流利得は、出力トランジスタのコレクタ電流密度が増加するに連れて増加することができ、パッケージ化電力電子デバイスの電流利得は、デバイスの動作温度が上昇するに連れて減少し得る。
【0019】
幾つかの実施形態において、ドライバ・トランジスタは第2のドライバ・トランジスタとすることができ、デバイスは、ベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有する第1のドライバ・トランジスタをさらに含むことができる。第1のドライバ・トランジスタのエミッタ端子は、第2のドライバ・トランジスタのベース端子に結合することができ、第1のドライバ・トランジスタのコレクタ端子は、第2のドライバ・トランジスタ及び出力トランジスタのコレクタ端子に結合することができる。第1のドライバ・トランジスタ、第2のドライバ・トランジスタ、及び出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタとすることができ、デバイスは、約10,000を上回る電流利得を有することができる。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態により、パッケージ化電力電子デバイスの製造方法は、基板上のベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタを準備することと、基板上のベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタを準備することとを含む。出力トランジスタのコレクタ端子は、ドライバ・トランジスタのコレクタ端子に結合され、出力トランジスタのベース端子は、ドライバ・トランジスタのエミッタ端子に結合されてダーリントン対がもたらされる。平面図において、出力トランジスタの面積はドライバ・トランジスタの面積よりも少なくとも3倍大きい。
【0021】
幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は約3:1から約5:1までの間にすることができる。例えば、幾つかの実施形態において、出力トランジスタのドライバ・トランジスタに対する面積比は約5:1とすることができる。デバイスの阻止電圧は約5キロボルト(kV)よりも高くすることができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、基板は第1の導電型とすることができ、その上に、ドライバ及び出力トランジスタのコレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を含むことができる。第1の導電型のドリフト層を共通コレクタ端子とは反対の側の基板上に設けることができる。このドリフト層は、基板よりも低いキャリア濃度を有することができる。第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層を、基板とは反対の側のドリフト層上に設けることができる。このベース層は、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に有することができる。第1のメサは、その上にドライバ・トランジスタのベース端子を含むことができ、第2のメサは、その上に出力トランジスタのベース端子を含むことができる。第1の導電型のエミッタ層を、ドリフト層とは反対の側のベース層上に設けることができる。このエミッタ層は、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含むことができる。第1の部分は、その上にドライバ・トランジスタのエミッタ端子を含むことができ、第2の部分は、その上に出力トランジスタのエミッタ端子を含むことができる。
【0023】
幾つかの実施形態において、基板は、約8度軸外しでカットされた4H−SiC基板とすることができる。ドリフト層、ベース層、及びエミッタ層は基板上にエピタキシャルに成長させることができる。第1の導電型のドリフト層を基板上に成長させることができ、このドリフト層は、約5×1014cm-3のドーパント濃度を有することができる。第2の導電型のベース層をドリフト層上に成長させることができ、このベース層は、約6×1017cm-3のドーパント濃度を有することができる。
【0024】
幾つかの実施形態において、エミッタ端子はオーミック・ニッケル・コンタクトとすることができ、ベース端子はオーミック・アルミニウム/チタン・コンタクトとすることができる。
【0025】
幾つかの実施形態において、ベース層は、ドリフト層上に形成することができ、エミッタ層は、ドリフト層とは反対の側のベース層上に形成することができ、エミッタ層をエッチングして、第1及び第2の電気的に絶縁されたそれの部分を定め、ベース層の部分を露出させることができる。ベース層の露出部分をエッチングして、第1及び第2の電気的に絶縁されたそれのメサを定めるトレンチを内部に設けることができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、トレンチは、ドライバ・トランジスタの周囲を囲むことができる。第2の導電型の接合終端延長領域を出力トランジスタの周囲を囲むように設けることができる。
【0027】
幾つかの実施形態において、第2の導電型の第1の領域を、ベース層の第1のメサに隣接するトレンチの底部におけるドリフト層内に形成することができ、第2の導電型の第2の領域を、ベース層の第2のメサに隣接するトレンチの底部におけるドリフト層内に形成することができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、トレンチは、ベース層を完全に貫通するように延びないことがある。第1の導電型の領域を、第1のメサと第2のメサとの間のトレンチの底部におけるベース層内に設けることができる。この領域は、ドライバ・トランジスタと出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を有することができる。
【0029】
幾つかの実施形態において、第2の導電型の領域を、ベース層の第1及び第2のメサ内の端部に注入形成することができる。注入領域は、ベース層の他の領域よりも高いドーパント濃度を有することができる。ドライバ・トランジスタのベース端子は、第1のメサの注入領域上に設けることができ、出力トランジスタのベース端子は、第2のメサの注入領域上に設けることができる。ベース層内の第2の導電型の注入領域の幅は、エミッタ層の第1又は第2の部分の幅の約半分より小さくすることができる。
【0030】
幾つかの実施形態において、第1の導電型の領域を、出力トランジスタのベース端子に隣接するベース層の第2のメサ内に形成することができる。この第1の導電型の領域は、エミッタ層の第2の部分の上の出力トランジスタのエミッタ端子に電気的に接続することができる。第1の導電型の領域とドリフト層の間の距離は、エミッタ層の第2の部分とドリフト層の間の距離よりも小さくして、デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路を設けることができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、ドライバ・トランジスタは、第2のドライバ・トランジスタとすることができ、それに隣接して基板上に、ベース端子、コレクタ端子、及びエミッタ端子を有する第1のドライバ・トランジスタを設けることができる。第1のドライバ・トランジスタのエミッタ端子は、第2のドライバ・トランジスタのベース端子に結合することができ、第1のドライバ・トランジスタのコレクタ端子は、第2のドライバ・トランジスタ及び出力トランジスタのコレクタ端子に結合することができる。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態によると、ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタは、コレクタ、エミッタ及びベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、第1のSiC BJTのコレクタに結合されたコレクタ及び第1のSiC BJTのベースに結合されたエミッタを有し、それに電流を供給するように構成された第2のSiC BJTとを含む。第1のSiC BJTの第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1と約5:1の間である。
【0033】
幾つかの実施形態において、ダーリントン・トランジスタは、第1のSiC BJTのコレクタ、エミッタ、及びベースに、それぞれ接続された、コレクタ、エミッタ、及びベースを有する第3のSiC BJTをさらに含むことができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、ダーリントン・トランジスタは、第1のSiC BJTのコレクタに結合されたコレクタと、第2のSiC BJTのベースに結合され、それに電流を供給するように構成されたエミッタと、外部駆動回路に結合されるように構成されたベースとを有する第3のSiC BJTをさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1A】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを示す概略的な回路図である。
【図1B】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを示す断面図である。
【図1C】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタを平面図で示す画像である。
【図2】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの出力特性を単一BJTと比較して示すグラフである。
【図3】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの電流利得対コレクタ電流密度を単一のBJTと比較して示すグラフである。
【図4】本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタの電流利得及びオン抵抗の温度依存性を示すグラフである。
【図5】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図6】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図7A】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す概略的な回路図である。
【図7B】本発明のさらに別の実施形態による2段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセルを示す断面図である。
【図8A】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタを示す回路図である。
【図8B】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタ・ユニットを示す断面図である。
【図9】本発明のさらに別の実施形態による3段ダーリントン・トランジスタの出力特性を、本発明の幾つかの実施形態による2段ダーリントン・トランジスタと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明が、本発明の実施形態を示す添付図面を参照しながら、以下に詳述される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で説明される実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。寧ろ、これらの実施形態は、本開示が完全かつ徹底的になるように、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面において、層及び領域のサイズ及び相対的サイズは、明確にするために誇張されていることがある。
【0037】
要素又は層が別の要素又は層の「上に(on)」ある、これに「接続される(connected to)」又は「結合される(coupled to)」と言われるとき、その要素又は層が、直接他の要素又は層の上にあり、接続され、又は結合されてもよく、或いは、介在する要素又は層が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、要素又は層が、別の要素又は層の「直接上に(directly on)」ある、これに「直接接続される(directory connected to)」又は「直接結合される(directoly coupled to)」と言われるとき、介在する要素又は層は存在しない。本明細書で用いられる「及び/又は(and/or)」という用語は、列挙された関連項目の1つ又はそれ以上のいずれかの及び全ての組み合わせを含む。全体を通して、同様の番号は同様の要素を意味する。
【0038】
本明細書において、用語「第1の(first)」及び「第2の(second)」という用語が、種々の領域、層及び/又は区域を記述するのに用いられているが、これらの領域、層及び/又は区域は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、1つの領域、層又は区域を別の領域、層又は区域から区別するためだけに用いられる。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、下記に述べられる第1の領域、層又は区域を、第2の領域、層又は区域と呼ぶことができ、同様に第2の領域、層又は区域を第1の領域、層又は区域と呼ぶことができる。
【0039】
さらに、例えば、「下方(lower)」又は「底部(bottom)」及び「上方(upper)」又は「上部(top)」という相対的な用語は、本明細書においては、図に示されるような1つの要素の別の要素に対する関係を説明するのに用いることができる。相対的な用語は、図に示される配向に加えて、デバイスの異なる配向を含むように意図されることが理解されるであろう。例えば、図のデバイスがひっくり返された場合、他の要素の「下方」側にあるものとして説明された要素は、他の要素の「上方」側に配向されることになる。従って、「下方」という例示的な用語は、図の特定の配向に応じて、「下方」及び「上方」の両方の配向を含み得る。同様に、1つの図の中のデバイスがひっくり返された場合、他の要素の「下方」又は「下」にあるものとして説明された要素は、他の要素の「上方」に配向されることになる。従って、「下方」又は「下」という例示的な用語は、上方及び下方の両方の配向を含むことができる。
【0040】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態だけを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本明細書で用いられる単数形「a」、「an」及び「the)は、文脈により明らかに特段の定めがない限り、複数形も同様に含むことを意図したものである。さらに、「備える(comprise)」、「備えている(comprising)」、「含む(include)」、及び/又は「含んでいる(including)」という用語は、は本明細書で用いられるとき、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されるであろう。
【0041】
本発明の実施形態が、本発明の理想的な実施形態の概略図である断面図を参照しながら本明細書に説明される。そのため、例えば、製造技術及び/又は公差の結果として、図の形態からの変形物も予想される。従って、本発明の実施形態は、本明細書で示される特定の領域の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造の結果生じる形状のずれを含む。例えば、矩形として示され又は説明される領域は、通常の製造の公差に起因する丸い又は湾曲した構造部を有し得る。従って、図に示される領域は、本質的に概略的なものであり、それらの形状は、デバイスの領域の正確な形状を示すことを意図したものではなく、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0042】
特に別段の定めがない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般的に用いられる辞書において定義されるもののような用語は、本開示及び関連技術分野の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。
【0043】
本明細書でダーリントン・トランジスタとも呼ぶダーリントン対を設けるように接続された2つ又はそれ以上のSiC BJTを用いることによって、SiC BJTの電流利得のさらなる向上を達成することができる。SiCダーリントン・トランジスタは、より大きな電流利得をもたらすことができるが、SiC BJTと比較すると、増大した順電圧降下(例えば、約2.7Vよりも大きい)を有し、これによりSiCダーリントン・トランジスタが、低電圧用途(例えば、約5kV未満)には魅力的でなくなることがある。しかしながら、トランジスタが通常高い順電圧で動作することがある高電圧用途(例えば、例えば、約5−10kVより高い)においては、SiCダーリントン・トランジスタのオフセット又は増大した順電圧降下は、一般に許容可能である。
【0044】
従って、本発明の幾つかの実施形態は、10kV型SiC BJTのものと類似した順電圧降下を有するが、室温でより高い電流利得(例えば、幾つかの実施形態においては、約336の電流利得)を有する10kV型4H−SiCバイポーラ・ダーリントン・トランジスタを提供する。従って、本発明の幾つかの実施形態によるSiCバイポーラ・ダーリントン・トランジスタの電流利得は、10kV型SiC BJTのものよりも10倍より多く高くなり得る。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオン抵抗及び電流利得の温度依存性もまた、以下により詳細に説明される。
【0045】
図1Aは、本発明の幾つかの実施形態によるワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ10を示す回路図である。このようなワイドバンドギャップ・デバイスは、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及び/又は他のIII族窒化物材料などのワイドバンドギャップ材料の活性半導体層を含む。図1Aに示すように、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1 12は、ドライバ・トランジスタとして機能し、一方、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2 16は、ドライバ・トランジスタQ1 12に結合されて、ベース端子10b、コレクタ端子10c、及びエミッタ端子10eを有するダーリントン・トランジスタ10を形成する。具体的には、出力トランジスタQ2 16のコレクタ端子16cが、ドライバ・トランジスタQ1 12のコレクタ端子12cに結合され、出力トランジスタQ2 16のベース端子16bが、ドライバ・トランジスタQ1 12のエミッタ端子12cに結合され、ダーリントン対がもたらされる。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ10にはカスケード構成が用いられ、この場合ドライバ・トランジスタQ1 12が比較的小さいフットプリントを有し、出力トランジスタQ2 16が比較的大きいフットプリントを有する。本明細書で用いられるデバイスの「フットプリント」は、平面図におけるデバイスの面積、例えば、半導体基板に垂直な角度で上からデバイスを見たときの面積を指す。そのような構成は、トランジスタ12及び16のモノリシック統合又はハイブリッド結合によって達成することができる。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ10は、単一のバイポーラ接合トランジスタ(BJT)と比較して、小さいベース電流で作動させることができ、これにより外部駆動回路30のエネルギー消費を減らすことができる。
【0046】
図1Bは、本発明の幾つかの実施形態による10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル100の断面図を示す。図1Cは、図1Bの10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100を含むパッケージを、平面図で示す画像である。図1B及び図1Cに示すように、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル100は、比較的小さなSiCドライバBJT112によって駆動される比較的大きなSiC出力BJT116を含む。出力BJT116は、デバイスの面積の大部分を占める。以下で詳しく述べられるように、出力BJT116の平面図の面積、即ちフットプリントは、ドライバBJT112のそれよりも約3倍から5倍まで大きくすることができる。幾つかの実施形態において、出力BJT116の平面図の面積は、ドライバBJT112のものよりも少なくとも3倍、4倍、又は5倍大きくすることができる。
【0047】
図1Bに示すように、本発明の幾つかの実施形態によると、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100は、バルク単結晶n型4H−SiC基板52の上に形成されたモノリシック構造体として実装することができる。図1Bの右側は出力BJT116の断面を示し、図1Bの左側はドライバBJT112の断面を示す。BJT112及び116の両方が25μmのセルピッチを有することができる。BJT112及び116の層54、56、及び58は、n型4H−SiC基板52の上に成長させることができ、全ての層は1回のエピタキシャルの実行で成長させることができる。幾つかの実施形態において、基板52は、その上に層54、56、及び/又は58を成長させる前に、約8度の軸外しでカットすることができる。本明細書で用いられる「軸外し(off−axis)」という用語は、他の表面又は平面に対する基板表面の傾きを指す。
【0048】
具体的には、n型導電性SiCの層を基板52の上面に設けてn-ドリフト層54を形成することができる。基板52のキャリア濃度は、n-ドリフト層54のキャリア濃度よりも高い。従って、SiC基板52は、n+基板と呼ぶことができる。nドリフト層54は約128μmの厚さにすることができ、例えば、約5.3×1014cm-3のドーパント濃度を有することができる。これと対照的に、従来の10kVデバイス内のドリフト層のドーパント濃度は、約5.3×1015cm-3又はそれより大きいオーダーのものとすることができる。p型ベース層56が、n-ドリフト層54の上に設けられる。p型ベース層56は、例えば、n-ドリフト層54の成長に続いてエピタキシャル成長させることができ、約0.5μmの厚さを有するp型導電性SiC層を含むことができる。p型ベース層56は、例えば、約6×1017cm-3の濃度にドープすることができ、ベース・コンタクト用の高いドーパント濃度を有するp+領域56’を内部に含むことができる。n+SiCエミッタ層58が、p型ベース層56上に設けられる。n+エミッタ層58は約2μmの厚さにすることができ、例えば窒素で高濃度にドープすることができる。キャリア濃度に関して、上記のp+及びn+導電型領域並びにエピタキシャル層は、余分な製造欠陥をもたらすことなく、可能な限り高濃度にドープすることができる。p型領域を生成するのに適したドーパントには、アルミニウム、ホウ素又はガリウムが含まれる。n型領域を生成するのに適したドーパントには、窒素及びリンが含まれる。
【0049】
さらに図1Bを参照すると、n+エミッタ層58は、例えば、反応性イオン・エッチング(RIE)を用いてパターン化し、それぞれドライバBJT112及び出力BJT116のエミッタ「フィンガ」58d及び58oを形成することができる。エミッタ・フィンガ58d/58o及びp+領域56’の幅は、それぞれ、約10マイクロメートル(μm)及び約5μmとすることができる。ベース層56もまたパターン化して、ドライバBJT112と出力BJT116を電気的に絶縁するトレンチ60を設けることができる。具体的には、ベース層56をエッチングして、約4μm又はそれより小さい間隔又はギャップ60を有する電気的に絶縁されたメサ56d及び56oを形成し、BJT112及び116の両方がオフ状態で互いに遮蔽されるようにすることができる。幾つかの実施形態において、付加的なp+領域54’を、図5に示すようにメサ56d及び56oの各々に隣接するトレンチ60のベース又は底部におけるn型ドリフト層内に、注入形成するか又は他の方法で設けて、ドライバBJT112’と出力BJT116’との間の絶縁性を高め、それによってダーリントン・トランジスタ100’の阻止電圧を高くすることができる。p+領域54’は、約2−3μm又はそれより小さい距離だけ離すことができる。他の実施形態においては、図6に示すように、ベース層56をエッチングにより完全に貫通せずに、内部にトレンチ60を定めることができ、低濃度にドープしたn型領域56”を、メサ56dとメサ56oの間のトレンチ60の底部においてベース層56内に注入形成するか又は他の方法で設けて、ダーリントン・トランジスタ100”のドライバBJT112”と出力BJT116”との間の絶縁性をもたらすことができる。
【0050】
図1Cに示すように、900μmの幅のp型接合終端延長(JTE)190が、出力BJT116の活性領域の外周の回りに実装されて、逆バイアス下において密集する電界が減少する。表面不動態化は、約1000℃を上回る温度で約2時間湿式熱酸化を行い、続いて1時間のアルゴン・アニーリング、次に約3時間の約1175℃における酸化窒素(NO)再アニーリングを行うことによって行うことができる。熱酸化の後、1μmの二酸化シリコン及び500nmの窒化シリコンをプラズマ強化化学気相堆積(PECVD)によって堆積させて熱不動態化層を保護することができる。
【0051】
再び図1Bを参照すると、オーミック・コンタクトが、n+炭化シリコン・エミッタ・フィンガ58d及び58o上に形成され、それぞれドライバ及び出力BTJ112及び116のエミッタ端子112e及び116eを定める。オーミック・コンタクトはまたベース層56のp+領域56’上に形成され、それぞれドライバ及び出力BTJ112及び116のベース端子112b及び116bを画定する。例えば、電界酸化物層をPECVDプロセスによってパターン化した後、オーミック・コンタクトをエミッタ層58及びベース層56上に、それぞれニッケル(Ni)膜及びアルミニウム/チタン(Al/Ti)膜を焼結することによって形成することができる。比較的厚いチタン/金層による2つの金属系を用いることができる。例えば、第1のメタライゼーションは、バスを通してベース領域56’を接続することができ、第2のメタライゼーションは、インターディジタル型エミッタ・フィンガ58d/58oを接続することができる。さらに、オーミック・コンタクトを基板52の下面上に形成して、ドライバBTJ112及び出力BJT116の両方のコレクタ端子112c/116cを設ける。
【0052】
従って、図1Bの左側に示すように、n型基板52、n型ドリフト層54、p型メサ56d、及びn型エミッタ・フィンガ58dが、ドライバBJT112を定める。同様に、図1Bの右側に示すように、n型基板52、n型ドリフト層54、p型メサ56o、及びn型エミッタ・フィンガ58oが、出力BJT116を定める。n+基板52上の、ドリフト層54とは反対側のオーミック・コンタクト112c/116cは、ドライバBTJ112及び出力BJT116の両方のコレクタ端子、並びに10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のコレクタ端子100cをもたらす。導電配線115は、出力BJT116のベース端子116bをドライバBTJ112のエミッタ端子112eに接続する。ベース層56のp+領域56’の上のコンタクト112bは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のベース端子100bをもたらし、エミッタ・フィンガ58o上のコンタクト116eは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のエミッタ端子100eをもたらす。
【0053】
ドライバBTJ112と比べての出力BJT116の面積比は、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの電流利得に影響を及ぼし得る。本明細書で用いられる「面積比」という用語は、平面図内でウェハ又は基板上の出力トランジスタのドライバ・トランジスタのものと比べた相対的なフットプリントを指す。例えば、比較的大きなドライバBJTは、低電流密度において高い電流利得をもたらすが、利得は高電流密度において急激に減少することがある。本発明の幾つかの実施形態は、出力BJT116の面積又はフットプリントがドライバBJT112のものより何倍も大きいSiCダーリントン・トランジスタを提供する。例えば、幾つかの実施形態において出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約5:1とすることができ、他の形態においては、出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約4:1とすることができ、さらに他の実施形態においては、出力BJT116のドライバBJT112に対する面積比は約3:1とすることができる。しかしながら、本発明の実施形態は、約3:1から約5:1までの出力−ドライバ・トランジスタ面積比を含むことができ、これは本明細書で説明する高い電流利得を提供するのに重要である。具体的には、構成する出力及びドライブトランジスタが約3:1から約5:1までの出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン・トランジスタの電流利得は、約5:1より大きい出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン対よりも大きい電流利得をもたらすことができ、かつ、約3:1より小さい出力−ドライバ・トランジスタ面積比を有するダーリントン対よりも大きい電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態によると、高い電流利得をもたらし、必要なベース電流を減らすためには、出力−ドライバ・トランジスタ面積比を本明細書で説明する臨界範囲内にする必要がある。
【0054】
再び図1Cを参照すると、ダーリントンダイ195は約4.2nm×約4.2nmのチップサイズを有し、約3.7mm2の活性領域(ダイ195上の出力BJT116及びダイ195上のドライバBJT112の両方が占める面積を含む)を有することができる。以下で図2及び図3に示す実験結果に関連して説明するように、SiCダーリントン・トランジスタ100とともに、同じウェハ上に比較のための類似のチップサイズのSiC BJTをまた作成した。
【0055】
図2は、本発明の幾つかの実施形態による4H−SiCモノリシックダーリントン・トランジスタ(図1A−図1Cのダーリントン・トランジスタのような)の室温(例えば、約25℃)における順電流密度(J)−電圧(V)特性を、類似の面積のSiC BJTのJ−T曲線と比較して示す。図2において、SiC BJTは、IB,BJTの図示値の間を10mA間隔として、約60mAの最大ベース電流IB,BJTを有し、一方、SiCダーリントン・トランジスタは、IB,Darlingtonの図示値の間を1mA間隔として、約5mAの最大ベース電流IB,Darlingを有する。約3.5Vにおける40mΩ・cm2の低い微分オン抵抗は、コレクタ−エミッタ電圧VCEが約2.7Vを上回るときに、SiCダーリントン対のドライバ及び出力BJTの両方が電圧飽和領域で動作することを示す。約30A/cm2より大きいコレクタ電流密度において、SiCダーリントン・トランジスタはSiC BJTと同様の順電圧降下(即ち、VCE)を示すが、その理由は、それら高電圧デバイスに対しては、ドリフト層抵抗が全体のオン抵抗を支配し得るからである。図2はまた「200W/cm2」及び「300W/cm2」とラベル付けされた線を含み、これらは、コレクタ電流密度及び順電圧降下の関数として平方センチメートル当たりに消散される電力を示す。約200W/cm2のパッケージ電力消散限界において、SiCダーリントン・トランジスタは、約37A/cm2の電流密度で約5.2Vの順電圧を有し、これは約140mΩ・cm2の比オン抵抗を与える。動作電流密度は、約300W/cm2のパッケージ電力消散限界においては約50A/cm2まで増加する。
【0056】
さらに図2を参照すると、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTよりも高い電流利得を与える。具体的には、本発明の幾つかの実施形態による電力SiCダーリントン・トランジスタは、飽和又は準飽和領域で動作することができ、この場合、順降下及びそれゆえに導電損失は低くなり得る。これらの動作条件下での電流利得は、通常は強制電流利得(βforced)と呼ばれる。強制電流利得βforcedは、近似的にドライバ・トランジスタ電流利得βdriverと出力トランジスタ電流利得βouputの積に等しいものとすることができ(例えば、βforced≒βdriver×βouput)、この場合ドライバ・トランジスタその活性領域において動作し、この場合出力トランジスタはその飽和又は準飽和領域で動作する。本明細書で用いられる、ドライバ及び出力トランジスタの「電流利得」という用語は、それらそれぞれのコレクタ電流(IC)のそれらそれぞれのベース電流(IB)に対する比を指す。換言すれば、βdriver=ICdriver/IBdriver、及びβoutput=ICoutput/IBoutputである。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの強制電流利得βforced,Darlingtonは、近似的にICoutput/IBdriverに等しいものとすることができる。
【0057】
図2に示すように、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、約336の強制電流利得βforced,Darlington、及び約200W/cm2の電力消散密度において約4mAのベース電流IBdriverを有し、これに比べて同じ条件下のSiC BJTの強制電流利得βforced,BJTは、約30である。この利得は、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのドライバ及び出力BJTの両方が活性領域で動作するとき、コレクタ電流レベルが高いほど高くなる可能性がある。例えば、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタについて、約120A/cm2のコレクタ電流密度において、約1100の強制電流利得が計測され、これに比べて同じ条件下のSiC BJTの強制電流利得は、約43であった。従って、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、従来のSiC BJTの何倍もの強制電流利得を与える。それゆえに、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、高電圧用途において単一のSiC BJTと比べて低いベース電流で動作することができ、ドライバ回路の電力消費を減らすことができる。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの阻止特性もまた図2に示す。本明細書で用いる場合、「阻止電圧」は、トランジスタがオフ状態にあるときに、トランジスタのコレクタとエミッタの間に、コレクタからエミッタに有意な漏れ電流が流れることなく印加することができる電圧を意味する。トランジスタの「降伏電圧」はオフ状態にあるトランジスタのコレクタとエミッタの間に印加されて、有意な漏れ電流が流れ始める電圧を意味する。具体的には、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオープンエミッタ阻止電圧(BVCBO)は、約1mA/cm2未満の漏れ電流において約10kVと計測された。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタのオープンベース阻止電圧(BVCEO)は、同じ漏れ電流において約9.5kVより低かった。本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、類似のダイサイズ有する同じ又は類似のウェハ上に作成された同程度のBJTよりも約2kV低い逆阻止電圧を有し得ることが分かった。しかし、図5及び図6の構造体は、内部に埋め込まれたp型領域54’及びn型領域56”のためにドライバBJTと出力BJTとの間の改善された絶縁をもたらし、これにより幾つかの実施形態において阻止電圧を上昇させることができる。
【0059】
図3は、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの、室温(例えば約25℃)におけるコレクタ電流密度に対する活性領域内の電流利得の依存性をSiC BJTと比較して示すグラフである。図3に示すように、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの電流利得(線300で示され、説明書きは図3の左側)、及び、単一のSiC BJTの電流利得(線310で示され、説明書きは図3の右側)は、計測した電流密度範囲にわたってコレクタ電流密度と共に増加し続け、そのような高電圧デバイスに対しては空間電荷再結合が支配的であることを示す。しかしながら、図3は、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタの電流利得が、単一のSiC BJTの電流利得より10倍を超えて大きいことを示す。従って、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTと比べて小さいベース電流で動作し、同じ又は類似のコレクタ電流をもたらすことができ、これによりドライバ回路の電力消費を著しく減らすことができる。このことは、本発明の幾つかの実施形態によるSiCダーリントン・トランジスタを、高電力高温用途に対してさらに魅力的なものにする。
【0060】
図4は、本発明の幾つかの実施形態による10kV型SiCダーリントン・トランジスタの強制電流利得βforced及び比オン抵抗Rsp,onの温度依存性を示すグラフである。図4に示すように、ダーリントン・トランジスタはオン抵抗Rsp,onに関して正の温度係数、及び電流利得βforcedに関して負の温度係数を有する。換言すれば、ダーリントン・トランジスタのオン抵抗Rsp,onは、ダーリントン・トランジスタの動作温度が上昇するに連れて増加し(線405で示され、説明書きは図4の左側)、一方、電流利得βforcedはダーリントン・トランジスタの動作温度が上昇するに連れて減少する(線415で示され、説明書きは図4の右側)。例えば、約200℃において、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタの比オン抵抗Rsp,onは約550mΩ・cm2まで増加し、強制電流利得βforcedは約135まで減少する。オン抵抗Rsp,onの増加は、高温におけるドリフト層内の移動度の減少に起因すると考えることができる。電流利得βforcedの減少は、高温におけるベース内の深い準位のアクセプタのイオン化の増加に関連させることができ、これがエミッタ注入効率を減らし得る。
【0061】
図5及び図6は、本発明の幾つかの実施形態による、上記と類似の電流利得及び改善されたデバイス絶縁性、並びにそれ故に増加した阻止電圧を有する、SiCダーリントン・トランジスタの構成を示す。図5のSiCダーリントン・トランジスタ100’及び図6のSiCダーリントン・トランジスタ100”の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関して前述したのと類似のものとすることができる。前述のように、図5のSiCダーリントン・トランジスタ100’は、メサ56d及び56oの各々に隣接するトレンチ60の底部におけるn型ドリフト層54の内部のp+領域54’をさらに含み、SiCダーリントン・トランジスタ100’のドライバBJT112’と出力BJT116’との間の絶縁性を向上させる。同様に、図6のSiCダーリントン・トランジスタ100”は、ベース層56内のトレンチ60と、メサ56dと56oの間とのトレンチ60の底部におけるベース層56内にあって、ベース層56の残り部分を貫通して延びる低濃度ドープn型領域56”とをさらに含み、ダーリントン・トランジスタ100”のドライバBJT112”と出力BJT116”との間の絶縁性を向上させる。
【0062】
図7Aは、本発明のさらに別の実施形態による、デバイスの活性領域内にアバランシェ電流路を含む、10kV型ワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ10”’の回路図である。当業者には周知であるように、BJT内の「アバランシェ降伏」(単に「アバランシェ」と呼ばれることもある)は、強い電界がデバイスに印加されたときに起こり得る急激な電流増加を指す。電力SiC BJTにおいて、このアバランシェ電流の多くは、典型的にはデバイスの活性領域を囲むデバイスの接合終端領域を通して流れる。残念ながら、これが起るとアバランシェ電流が、デバイスを永久に破壊することがある。下記に述べるように、本発明の実施形態による高電力ダーリントン・トランジスタは、デバイスの活性領域内に、デバイスが故障したときにアバランシェ電流を流す漏れ電流路を含むことができる。アバランシェ電流がこれら漏れ電流路を通して流れるときは、デバイスを破壊せず、それゆえに本発明の特定の実施形態によるダーリントン・トランジスタはアバランシェ事象に耐えることができる。
【0063】
図7Aに示すように、SiCダーリントン・トランジスタ10’’’は、図1Aに関連して上述したのと類似の方法でSiCNPN出力BJT Q2 16に接続されたSiCNPNドライバBJTQ1 12を含む。ベース18b、エミッタ18e及びコレクタ18cを有する第3の「アバランシェ」SiC BJT Q3 18が、出力SiC BJT Q2 16に対して並列に接続される。このアバランシェBJT Q3 18は、デバイス降伏の事象においてアバランシェ電流のための電流路を与える。
【0064】
図7Bは、出力SiC BJT Q2 116’’’と並列のアバランシェBJT Q3 118(図7Bの右側に示す)を含んだダーリントン・トランジスタ100’’’の断面図を示す。図7BのSiCダーリントン・トランジスタ100’’’の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関連して前述したのと類似のものとすることができる。図7Bに示すように、n+エミッタ領域58aがp型ベース層56内に設けられ、出力BJT Q2 116’’’のエミッタ端子116eに、導電配線120によって電気的に接続される。アバランシェBJT Q3 118のエミッタ領域58aは、出力BJT Q2 116’’’のエミッタ・フィンガ58oよりもデバイス内に深く形成される。その結果、アバランシェBJT Q3 118のベース層56oの、エミッタ領域58aとドリフト層54の間の部分は、出力BJT Q2 116’’’のベース層56oの、エミッタ・フィンガ58oとドリフト層54との間の部分よりも薄くなる。従って、アバランシェBJT Q3 118において、エミッタベースpn接合は、コレクタ−ベースpn接合に、出力BJT Q2 116’’’における対応するpn接合においてよりも近くなる。従って、アバランシェ条件が生じるとき、アバランシェBJT Q3 118を通る漏れ電流路が用意される。これは非破壊的漏れ電流路であり、ダーリントン・トランジスタ100’’’が破壊されずにアバランシェ事象を処理することを可能にする。
【0065】
上で詳しく説明したように、本発明の幾つかの実施形態は、室温(即ち、約25℃)の強制電流利得が約336で、約200℃の温度で約135まで減少し得る電流利得を有する10kV型2段4H−SiCダーリントン・トランジスタを提供することができる。比較のために、単一のSiC BJTは、類似の順電圧降下により、室温で約30の強制電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタは、単一のSiC BJTと比べて、順電圧降下の不利益なしに著しく高い電流利得(336対30)を有することができ、このことは類似の条件下で電力消費を減らすことができる。本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタの比オン抵抗は、室温において約140mΩ・cm2とすることができ、高温で増加し得る。本発明の幾つかの実施形態による2段SiCダーリントン・トランジスタはまた、約1mA/cm2未満の漏れ電流密度において、約9.5kVのオープンエミッタ阻止電圧(BVCBO)及び約10kVのオープンベース阻止電圧(BVCEO)を示すことができる。
【0066】
図8Aは、本発明の幾つかの実施形態によるワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80を示す回路である。このようなワイドバンドギャップ・デバイスは、炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、及び/又は他のIII族窒化物材料などのワイドバンドギャップ材料の活性半導体層を含む。図8Aに示すように、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1A 12Aは、第1のドライバ・トランジスタとして機能し、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNトランジスタQ1B 12Bは、第2のドライバ・トランジスタとして機能し、ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2 16は、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bに結合されて、ベース端子80b、コレクタ端子80c、及びエミッタ端子80eを有するダーリントン・トランジスタ80を形成する。具体的には、出力トランジスタQ2 16のコレクタ端子16cがドライバ・トランジスタQ1B 12Bのコレクタ端子12Bcに結合され、出力トランジスタQ2 16のベース端子16bがドライバ・トランジスタQ1B 12Bのエミッタ端子12Beに結合される。同様に、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bのコレクタ端子12Bcがドライバ・トランジスタQ1A 12Aのコレクタ端子12Acに結合され、ドライバ・トランジスタQ1B 12Bのベース端子12Bbがドライバ・トランジスタQ1A 12Aのエミッタ端子12Aeに結合される。ワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ80には、ドライバ・トランジスタQ1A 12A及びQ1B 12Bが比較的小さなフットプリントを有し、出力トランジスタQ2 16が比較的大きなフットプリントを有するカスケード構成が用いられる。そのような構成は、トランジスタ12A、12B、及び16のモノリシック統合又はハイブリッド結合によって実現することができる。ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80は、2段のワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタと比べて小さいベース電流IBでオンにすることができ、これにより外部駆動回路38の電力消費をさらに減らすことができる。また、図示しないが、ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ80は、図7Aに示したのと類似の方法で、出力BJT16と並列に結合されたアバランシェBJTをさらに含むことができる。
【0067】
図8Bは、本発明の幾つかの実施形態による10kV型3段ダーリントン・トランジスタ・ユニットセル800の断面図を示す。SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル800は、比較的小さい第1及び第2のSiCドライバBJT 112A及び112Bによって駆動される比較的大きいSiC出力BJT 116を含む。出力BJT 116は、デバイスの面積の大部分を占有する。出力BJT 116のフットプリントは、ドライバBJT 112A及び/又は112Bのフットプリントより約3倍乃至5倍大きくすることができる。図1Bに示すように、本発明の幾つかの実施形態によると、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800は、バルク単結晶n型4H−SiC基板52の上に形成されたモノリシック構造体として実装することができる。図8Bの右側は出力BJT116の断面を示し、図8Bの左側は第1のドライバBJT112Aの断面を示し、図8Bの中央部分は第2のドライバBJT112Bの断面を示す。3つのBJT112A、112B、及び116の全ては、25μmのセルピッチを有することができる。
【0068】
3段SiCダーリントン・トランジスタ800の層52、54、56、及び58、及び/又は製造は、図1Bに関連して前述したのと類似のものとすることができる。それゆえに、n+エミッタ層58を、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)を用いてパターン化し、それぞれBJT112A、112B、及び116のエミッタ・フィンガ58d1、58d2、及び58oを形成することができる。エミッタ・フィンガ及びp+領域56’の幅は、それぞれ約10マイクロメートル(μm)及び約5μmとすることができる。またベース層56をパターン化してトレンチ60A及び60Bを設けることができる。トレンチ60Aは、第1のドライバBJT112Aを第2のドライバBJT112Bから電気的に絶縁し、一方トレンチ60Bは、第2のドライバBJT112Bを出力BJT116から電気的に絶縁する。具体的には、ベース層56をエッチングして、約4μm又はそれより小さい間隔若しくは隙間で電気的に絶縁されたメサ56d1、56d2、及び56oを形成して、3つのBJT112A、112B、及び116の全てがオフ状態で互いに遮蔽されるようにすることができる。図示しないが、幾つかの実施形態において、付加的なp+領域を、トレンチ60A及び60Bの底面又は底部におけるn型ドリフト層54の内部に注入形成するか又は他の方法で設けて、図5に示したのと同様に向上したデバイス絶縁をもたらすことができる。他の実施形態において、図6に示したのと同様に、ベース層56をエッチングにより完全に貫通せずに、内部にトレンチ60A及び60Bを定め、低濃度ドープn型領域をメサ56d1、56d2、及び56oとの間のトレンチ60A及び60Bの底部におけるベース層56内に設けて、向上したデバイス絶縁をもたらすことができる。
【0069】
また、オーミック・コンタクトをエミッタ・フィンガ58d1、58d2、及び58oの上に形成してデバイスのエミッタ端子112Ae、112Be、及び116eを定め、同様にオーミック・コンタクトをベース層56のp+領域56’の上に形成して、デバイスのベース端子112Ab、112Bb、及び116bを定めることができる。オーミック・コンタクトをさらに基板52の下面上に形成して、3つのBJT112A、112B、及び116全てのコレクタ端子112Ac/112Bc/116c、並びに10kV型SiCダーリントン・トランジスタ100のコレクタ端子100cをもたらす。第1の導電配線115Aがエミッタ端子112Aeを第2のドライバ・トランジスタ112Bのベース端子112Bbに電気的に接続し、第2の導電配線115Bが第2のドライバ・トランジスタ112Bのエミッタ端子112Beを出力BJT116のベース端子116bに電気的に接続する。ベース層56のp+領域56’上のコンタクト112Abは、10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800のベース端子800bを与え、エミッタ・フィンガ58oの上のコンタクト116eは10kV型SiCダーリントン・トランジスタ800のエミッタ端子800eを与える。
【0070】
図9は、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタ(例えば、図8A−8Bのダーリントン・トランジスタのような)の室温(例えば、約25℃)におけるコレクタ電流(I)−電圧(V)特性を、2段SiCダーリントン・トランジスタ(例えば、図1A−1Cのダーリントン・トランジスタのような)の特性と比較して示す実験結果のグラフである。図9に示すデータは、本明細書で述べられるデバイスよりも約10倍大きい活性領域を有することができる比較的大きな面積のデバイスについて計測したものであり、従って、図9に示した電流値は、本発明の幾つかの実施形態による2段及び3段SiCダーリントン・トランジスタによって与えられる電流値よりも約10倍大きくなり得るが、データは、本発明の幾つかの実施形態によるデバイスの電流利得を正確に表すことができる。具体的には、図9に示すように、2段SiCダーリントン・トランジスタは、IB,2段の図示値の間を5mA間隔として、約40mAの最大ベース電流IB,2段を有し、一方3段SiCダーリントン・トランジスタは、IB,3段の図示値の間を0.2mA間隔として、約1.4mAの最大ベース電流IB,3段を有する。本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタの電流利得は、第1のドライバ・トランジスタの電流利得βdriver1と、第2のドライバ・トランジスタの電流利得βdriver2と、出力トランジスタの電流利得βoutoutとの積で近似的することができ(例えば、β3段≒βdriver1×βdriver2×βoutout)、ICoutput/βBdriver1と近似することができる。ベース電流値IB,3段は比較的小さいので、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、本明細書で説明した2段SiCダーリントン・トランジスタよりもさらに高い電流利得をもたらす。具体的には、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、約10,000又はそれより大きい電流利得をもたらすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態による3段SiCダーリントン・トランジスタは、2段SiCダーリントン・トランジスタの何倍もの強制電流利得をもたらし、従って、さらに小さいベース電流で動作することができる。
【0071】
従って、本発明の幾つかの実施形態による比較的高い電圧(例えば、約10kVを上回る)のSiCダーリントン・トランジスタは、SiC BJTに類似の順電圧降下をもたらし得るが、SiC BJTよりも遥かに高い電流利得を示すことができ、小さいベース電流を可能にし、ドライバ回路の電力消費を減らすことができる。従って、本発明の幾つかの実施形態によるダーリントン・トランジスタは、電力スイッチング装置及び/又はセンサのような高電力、高温の用途に対して魅力的なものとなり得る。
【0072】
図1−図9を参照しながら前述した本発明の実施形態は、本明細書で説明したダーリントン対をもたらすワイドバンドギャップ・バイポーラ・トランジスタのモノリシック統合又はハイブリッド結合によって実現することができる。本明細書で用いられる「ハイブリッド」デバイスは、2つの別個のバイポーラ・トランジスタの、例えばカスケード構成における結合を指すことができる。「モノリシック」デバイスは、両方のバイポーラ・トランジスタが同じ半導体チップ及び/又は基板内に作成されたデバイスを指すことができる。本発明の幾つかの実施形態によるパッケージ化電力デバイスは、本明細書で説明されたバイポーラ・トランジスタのモノリシック及びハイブリッド結合の両方を含むことができる。
【0073】
上記の実施形態は、特定の図面を参照しながら説明したが、本発明の幾つかの実施形態は付加的な及び/又は介在する層、構造体、又は要素を含むことができ、及び/又は、特定の層、構造体、又は要素を削除することができることを理解すべきである。より一般的には、前記は本発明の例証であり、本発明を限定するものと解釈すべきではならない。本発明の幾つかの例示的な実施形態を説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱せずに、例示的な実施形態において、多くの修正が可能であることを容易に認識するであろう。従って、そのような修正の全てが、特許請求の範囲において定められる本発明の範囲に含まれることが意図されている。従って、前記は、本発明の例証であり、本発明を開示された特定の実施形態に限定するものと解釈すべきではないこと、並びに、開示された実施形態への修正及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解すべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲、及びその中に含まれる特許請求の範囲の等価物によって定められる。
【符号の説明】
【0074】
10、10’’’:ワイドバンドギャップ2段ダーリントン・トランジスタ
10b、12Ab、12Bb、16b、18b、80b、100b、112b、116b、112Ab、112Bb、800b:ベース端子
10c、12c、12Ac、12Bc、16c、18c、80c、100c、112c、116c、112Ac、112Bc、800c:コレクタ端子
10e、12e、12Ae、12Be、18e、80e、100w、112e、116e、112Ae、112Be、800e:エミッタ端子
12:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1
12A:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1A
12B:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPNドライバ・トランジスタQ1B
16:ワイドバンドギャップ・バイポーラNPN出力トランジスタQ2
18、118:アバランシェBJTQ3
30:外部駆動回路
52:n型4H−SiC基板
54:n-ドリフト層
54’、 56’:p+領域
56:p型ベース層
56’:p+領域
56”:n型領域
56d、56d1、56d2、56o:メサ
58:n+エミッタ層
58a:エミッタ領域
58d、58d1、58d2、58o:エミッタ・フィンガ
60、60A、60B:トレンチ
80:ワイドバンドギャップ3段ダーリントン・トランジスタ
100:10kV型SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル
100’、100”、100’’’:ダーリントン・トランジスタ
112、112’、112”、112A、112B:ドライバBJT
116、116’、116”、116’’’:出力BJT
115A、115B:導電配線
190:接合終端延長
195:ダーリントンダイ
300、310、405、415:線
800:10kV型3段SiCダーリントン・トランジスタ・ユニットセル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバ・ベース端子、ドライバ・コレクタ端子、及びドライバ・エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタと、
を含み、前記出力コレクタ端子は前記ドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記ドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記ドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらし、
前記出力ベース端子に結合されたベース端子、前記出力コレクタ端子に結合されたコレクタ端子、及び前記出力エミッタ端子に結合されたエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタをさらに含む、
ことを特徴とするパッケージ化電力電子デバイス。
【請求項2】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する前記面積比は、約5:1であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ドライバ及び出力コレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含む、第1の導電型の基板と、
前記共通コレクタ端子とは反対の側の前記基板上にあり、前記基板のものより低いキャリア濃度を有する、前記第1の導電型のドリフト層と、
前記基板とは反対の側の前記ドリフト層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含み、前記第1のメサはその上に前記ドライバ・ベース端子を含み、前記第2のメサはその上に前記出力ベース端子を含む、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層と、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含み、前記第1の部分はその上に前記ドライバ・エミッタ端子を含み、前記第2の部分はその上に前記出力エミッタ端子を含む、前記第1の導電型のエミッタ層と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記トレンチは、前記第1のメサの周囲を囲み、前記ベース層の前記第1及び第2のメサを約4μm又はそれより小さい距離だけ分離して、約10kV又はそれより小さい電圧において、前記ドライバ・トランジスタと前記出力トランジスタを電気的に絶縁することを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ドリフト層は、
前記ベース層の前記第1のメサに隣接する前記トレンチの底部における前記ドリフト層内の、前記第2の導電型の第1の領域と、
前記ベース層の前記第2のメサに隣接する前記トレンチの底部における前記ドリフト層内の、前記第2の導電型の第2の領域と、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トレンチは、前記ベース層を完全に貫通するようには延びず、
前記第1のメサと前記第2のメサとの間の前記トレンチの底部における前記ベース層内の、前記ドライバ・トランジスタと前記出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を含む、前記第1の導電型の領域をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記出力トランジスタの前記ベース端子に隣接する前記ベース層の前記第2のメサ内の、前記エミッタ層の前記第2の部分上の前記出力エミッタ端子に電気的に接続された、前記第1の導電型の領域をさらに含み、
内部の前記第1の導電型の前記領域と前記ドリフト層との間の前記ベース層の部分は、前記エミッタ層の第2の部分と前記ドリフト層との間の前記ベース層の部分よりも薄く、前記デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路をもたらす、
ことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ドライバ及び出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタを含み、前記デバイスは、室温において約300を上回る電流利得を有することを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスの前記電流利得は、前記出力トランジスタのコレクタ電流密度が増加するにつれて増加し、前記デバイスの前記電流利得は、前記デバイスの動作温度が上昇するにつれて減少することを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
第1のドライバ・ベース端子、第1のドライバ・コレクタ端子、及び第1のドライバ・エミッタ端子を有する第1のワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
第2のドライバ・ベース端子、第2のドライバ・コレクタ端子、及び第2のドライバ・エミッタ端子を有する第2のワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
を含み、前記第1のドライバ・エミッタ端子は前記第2のドライバ・ベース端子に結合され、前記第1のドライバ・コレクタ端子は前記第2のドライバ・コレクタ端子及び出力コレクタ端子に結合され、
出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタをさらに含み、
前記出力コレクタ端子は前記第2のドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記第2のドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記第2のドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらすことを特徴とするパッケージ化電力電子デバイス。
【請求項12】
前記第1のドライバ・トランジスタ、前記第2のドライバ・トランジスタ、及び前記出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタを含み、前記デバイスは、約10,000を上回る電流利得を有することを特徴とする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
パッケージ化電力電子デバイスを製造する方法であって、
基板上に、ドライバ・ベース端子、ドライバ・コレクタ端子、及びドライバ・エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタを準備するステップと、
基板上に、出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタを準備するステップと、
を含み、前記出力コレクタ端子は前記ドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記ドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記ドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらし、
前記出力ベース端子に結合されたベース端子、前記出力コレクタ端子に結合されたコレクタ端子、及び前記エミッタ端子に結合されたエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタを準備するステップをさらに含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ドライバ及び出力トランジスタを準備するステップは、
前記ドライバ及び出力コレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含む、第1の導電型の基板を準備するステップと、
前記共通コレクタ端子とは反対の側の前記基板上にあり、前記基板よりも低いキャリア濃度を有する、前記第1の導電型のドリフト層を準備するステップと、
前記基板とは反対の側の前記ドリフト層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含み、前記第1のメサはその上に前記ドライバ・ベース端子を含み、前記第2のメサはその上に前記出力ベース端子を含む、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層を準備するステップと、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含む、前記第1の部分はその上に前記ドライバ・エミッタ端子を含み、前記第2の部分はその上に前記出力エミッタ端子を含む、前記第1の導電型のエミッタ層を準備するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基板は、約8度軸外しでカットされた4H−SiC基板を含み、
前記ドリフト層及び前記ベース層を準備するステップは、
前記基板上に、約5×1014cm-3のドーパント濃度を有する、前記第1の導電型の前記ドリフト層をエピタキシャル成長させるステップと、
前記ドリフト層上に、約6×1017cm-3のドーパント濃度を有する、前記第2の導電型の前記ベース層をエピタキシャル成長させるステップと、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ドライバ及び出力エミッタ端子はオーミック・ニッケル・コンタクトを含み、前記ドライバ及び出力ベース端子はオーミック・アルミニウム/チタン・コンタクトを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ベース層を準備し、前記エミッタ層を準備するステップは、
前記ベース層を前記ドリフト層上に形成するステップと、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上に、前記エミッタ層を形成するステップと、
前記エミッタ層を通ってエッチングし、前記第1及び第2の電気的に絶縁された部分を定め、前記ベース層の部分を露出させるステップと、
前記ベース層の前記露出部分を通ってエッチングし、前記第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部にもたらすステップと、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記出力ベース端子に隣接する前記ベース層の前記第2のメサの内に、前記エミッタ層の前記第2の部分上の前記出力エミッタ端子に電気的に接続された前記第1の導電型の領域を形成するステップをさらに含み、
前記第1の導電型の前記領域と前記ドリフト層との間の距離は、前記エミッタ層の前記第2の部分と前記ドリフト層との間の距離よりも小さく、前記デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路をもたらす、
ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1のコレクタ、第1のエミッタ及び第1のベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、
前記第1のコレクタに結合された第2のコレクタと、前記第1のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第2のエミッタとを有する第2のSiC BJTと、
を含み、前記第1のSiC BJTの前記第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間にあり、
それぞれ、前記第1のコレクタ、前記第1のエミッタ、及び前記第1のベースに接続された第3のコレクタ、第3のエミッタ、及び第3のベースを有する第3のSiC BJTをさらに含む、
ことを特徴とするワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ。
【請求項21】
第1のコレクタ、第1のエミッタ及び第1のベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、
前記第1のコレクタに結合された第2のコレクタと、前記第1のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第2のエミッタとを有する第2のSiC BJTと、
を含み、前記第1のSiC BJTの前記第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であり、
前記第1のコレクタに結合された第3のコレクタと、前記第2のSiC BJTの第2のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第3のエミッタと、外部駆動回路に結合されるように構成された第3のベースとを有する第3のSiC BJTをさらに含む、
ことを特徴とするワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ。
【請求項1】
ドライバ・ベース端子、ドライバ・コレクタ端子、及びドライバ・エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタと、
を含み、前記出力コレクタ端子は前記ドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記ドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記ドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらし、
前記出力ベース端子に結合されたベース端子、前記出力コレクタ端子に結合されたコレクタ端子、及び前記出力エミッタ端子に結合されたエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタをさらに含む、
ことを特徴とするパッケージ化電力電子デバイス。
【請求項2】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する前記面積比は、約5:1であることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ドライバ及び出力コレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含む、第1の導電型の基板と、
前記共通コレクタ端子とは反対の側の前記基板上にあり、前記基板のものより低いキャリア濃度を有する、前記第1の導電型のドリフト層と、
前記基板とは反対の側の前記ドリフト層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含み、前記第1のメサはその上に前記ドライバ・ベース端子を含み、前記第2のメサはその上に前記出力ベース端子を含む、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層と、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含み、前記第1の部分はその上に前記ドライバ・エミッタ端子を含み、前記第2の部分はその上に前記出力エミッタ端子を含む、前記第1の導電型のエミッタ層と、
をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記トレンチは、前記第1のメサの周囲を囲み、前記ベース層の前記第1及び第2のメサを約4μm又はそれより小さい距離だけ分離して、約10kV又はそれより小さい電圧において、前記ドライバ・トランジスタと前記出力トランジスタを電気的に絶縁することを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ドリフト層は、
前記ベース層の前記第1のメサに隣接する前記トレンチの底部における前記ドリフト層内の、前記第2の導電型の第1の領域と、
前記ベース層の前記第2のメサに隣接する前記トレンチの底部における前記ドリフト層内の、前記第2の導電型の第2の領域と、
を含むことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トレンチは、前記ベース層を完全に貫通するようには延びず、
前記第1のメサと前記第2のメサとの間の前記トレンチの底部における前記ベース層内の、前記ドライバ・トランジスタと前記出力トランジスタを互いに電気的に絶縁するのに十分なドーパント濃度を含む、前記第1の導電型の領域をさらに含む、
ことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項8】
前記出力トランジスタの前記ベース端子に隣接する前記ベース層の前記第2のメサ内の、前記エミッタ層の前記第2の部分上の前記出力エミッタ端子に電気的に接続された、前記第1の導電型の領域をさらに含み、
内部の前記第1の導電型の前記領域と前記ドリフト層との間の前記ベース層の部分は、前記エミッタ層の第2の部分と前記ドリフト層との間の前記ベース層の部分よりも薄く、前記デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路をもたらす、
ことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項9】
前記ドライバ及び出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタを含み、前記デバイスは、室温において約300を上回る電流利得を有することを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項10】
前記デバイスの前記電流利得は、前記出力トランジスタのコレクタ電流密度が増加するにつれて増加し、前記デバイスの前記電流利得は、前記デバイスの動作温度が上昇するにつれて減少することを特徴とする、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
第1のドライバ・ベース端子、第1のドライバ・コレクタ端子、及び第1のドライバ・エミッタ端子を有する第1のワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
第2のドライバ・ベース端子、第2のドライバ・コレクタ端子、及び第2のドライバ・エミッタ端子を有する第2のワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタと、
を含み、前記第1のドライバ・エミッタ端子は前記第2のドライバ・ベース端子に結合され、前記第1のドライバ・コレクタ端子は前記第2のドライバ・コレクタ端子及び出力コレクタ端子に結合され、
出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタをさらに含み、
前記出力コレクタ端子は前記第2のドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記第2のドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記第2のドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらすことを特徴とするパッケージ化電力電子デバイス。
【請求項12】
前記第1のドライバ・トランジスタ、前記第2のドライバ・トランジスタ、及び前記出力トランジスタは、炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタを含み、前記デバイスは、約10,000を上回る電流利得を有することを特徴とする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
パッケージ化電力電子デバイスを製造する方法であって、
基板上に、ドライバ・ベース端子、ドライバ・コレクタ端子、及びドライバ・エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・ドライバ・トランジスタを準備するステップと、
基板上に、出力ベース端子、出力コレクタ端子、及び出力エミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ出力トランジスタを準備するステップと、
を含み、前記出力コレクタ端子は前記ドライバ・コレクタ端子に結合され、前記出力ベース端子は前記ドライバ・エミッタ端子に結合されて、平面図において前記出力トランジスタの面積が前記ドライバ・トランジスタの面積より少なくとも約3倍大きいダーリントン対をもたらし、
前記出力ベース端子に結合されたベース端子、前記出力コレクタ端子に結合されたコレクタ端子、及び前記エミッタ端子に結合されたエミッタ端子を有するワイドバンドギャップ・バイポーラ・アバランシェ・トランジスタを準備するステップをさらに含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記出力トランジスタの前記ドライバ・トランジスタに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ドライバ及び出力トランジスタを準備するステップは、
前記ドライバ及び出力コレクタ端子をもたらす共通コレクタ端子を上に含む、第1の導電型の基板を準備するステップと、
前記共通コレクタ端子とは反対の側の前記基板上にあり、前記基板よりも低いキャリア濃度を有する、前記第1の導電型のドリフト層を準備するステップと、
前記基板とは反対の側の前記ドリフト層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部に含み、前記第1のメサはその上に前記ドライバ・ベース端子を含み、前記第2のメサはその上に前記出力ベース端子を含む、前記第1の導電型とは逆の第2の導電型のベース層を準備するステップと、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上にあり、第1及び第2の電気的に絶縁された部分を含む、前記第1の部分はその上に前記ドライバ・エミッタ端子を含み、前記第2の部分はその上に前記出力エミッタ端子を含む、前記第1の導電型のエミッタ層を準備するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基板は、約8度軸外しでカットされた4H−SiC基板を含み、
前記ドリフト層及び前記ベース層を準備するステップは、
前記基板上に、約5×1014cm-3のドーパント濃度を有する、前記第1の導電型の前記ドリフト層をエピタキシャル成長させるステップと、
前記ドリフト層上に、約6×1017cm-3のドーパント濃度を有する、前記第2の導電型の前記ベース層をエピタキシャル成長させるステップと、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ドライバ及び出力エミッタ端子はオーミック・ニッケル・コンタクトを含み、前記ドライバ及び出力ベース端子はオーミック・アルミニウム/チタン・コンタクトを含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ベース層を準備し、前記エミッタ層を準備するステップは、
前記ベース層を前記ドリフト層上に形成するステップと、
前記ドリフト層とは反対の側の前記ベース層上に、前記エミッタ層を形成するステップと、
前記エミッタ層を通ってエッチングし、前記第1及び第2の電気的に絶縁された部分を定め、前記ベース層の部分を露出させるステップと、
前記ベース層の前記露出部分を通ってエッチングし、前記第1及び第2の電気的に絶縁されたメサを定めるトレンチを内部にもたらすステップと、
を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記出力ベース端子に隣接する前記ベース層の前記第2のメサの内に、前記エミッタ層の前記第2の部分上の前記出力エミッタ端子に電気的に接続された前記第1の導電型の領域を形成するステップをさらに含み、
前記第1の導電型の前記領域と前記ドリフト層との間の距離は、前記エミッタ層の前記第2の部分と前記ドリフト層との間の距離よりも小さく、前記デバイスの活性領域内に非破壊的アバランシェ電流路をもたらす、
ことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1のコレクタ、第1のエミッタ及び第1のベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、
前記第1のコレクタに結合された第2のコレクタと、前記第1のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第2のエミッタとを有する第2のSiC BJTと、
を含み、前記第1のSiC BJTの前記第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間にあり、
それぞれ、前記第1のコレクタ、前記第1のエミッタ、及び前記第1のベースに接続された第3のコレクタ、第3のエミッタ、及び第3のベースを有する第3のSiC BJTをさらに含む、
ことを特徴とするワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ。
【請求項21】
第1のコレクタ、第1のエミッタ及び第1のベースを有する第1の炭化シリコン(SiC)バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、
前記第1のコレクタに結合された第2のコレクタと、前記第1のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第2のエミッタとを有する第2のSiC BJTと、
を含み、前記第1のSiC BJTの前記第2のSiC BJTに対する面積比は、約3:1から約5:1までの間であり、
前記第1のコレクタに結合された第3のコレクタと、前記第2のSiC BJTの第2のベースに結合され、これに電流を供給するように構成された第3のエミッタと、外部駆動回路に結合されるように構成された第3のベースとを有する第3のSiC BJTをさらに含む、
ことを特徴とするワイドバンドギャップ・ダーリントン・トランジスタ。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【公表番号】特表2012−533889(P2012−533889A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520767(P2012−520767)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042075
【国際公開番号】WO2011/008919
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/042075
【国際公開番号】WO2011/008919
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]