説明

高効率放熱電子機器基板およびそれを含んだ電子制御機器、コンピュータシステム、家庭電化製品および産業機器製品

【課題】 熱源の熱エネルギーを遠赤外線に変換して放射・放熱する機能を備えた熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成し、かつ、耐熱性、付着性、靭性および熱伝導に優れた熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を提供する。
【解決手段】 アルコキシド化合物からなるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた熱伝導・放熱・絶縁性塗料において、前記アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の脱水縮合により生じるSi−Oネットワークの形成進行を制御しつつSi−OH基を残存させて塗布する基材との付着力を向上せしめたことを特徴とする。顔料は例えばシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路基板中で集中的に発生する電子素子部品の熱エネルギーを高効率に放熱する機能を備えた高効率放熱電子機器基板の技術分野に関する。従来の放熱板などの機械的構造物とは異なり、塗料を塗布し乾燥させて成膜せしめて形成する機能性膜を利用して放熱する技術に関する。搭載する電子素子は特に限定されず、多様な電子素子部品を搭載した電子機器基板に適用できる技術に関する。また、本発明は高効率放熱電子機器基板を含んだ電子制御機器、コンピュータシステム、家庭電化製品および産業機器製品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の電子機器における大きな課題は放熱対策である。電子素子部品は高温となると誤動作したり破壊したりすることがあるため、放熱対策は重要な課題となっている。
放熱対策とは、突き詰めれば、電子素子部品から集中的に発生する熱を如何に素早く拡散させた上で系外に放出できるかということにある。
【0003】
従来技術において、熱拡散性を重視すれば、電子機器基板として金属基板を用いるものが想定される。金属基板は熱伝導性が高く、電子素子部品から発生する熱を素早く拡散させることが可能と考えられる。
【0004】
しかし、金属は良導体であるためそのままでは基板に取り付けた電子素子同士がショートしてしまうため電子機器基板として用いることはできない。
例えば、特開2007−214249号公報に記載された技術は、電子機器基板を従来のセラミック基板の代わりに金属板を用いたものである。同公報に開示された技術では、電子素子同士のショートを防ぐために、電子素子部品間に絶縁体を設けることが必須であるとされている。ここで、絶縁体は、無機フィラーと熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物とを含んだ絶縁体であると開示されている。無機フィラーは、Al2O3、MgO、BN、SiC、Si3N4、及びAlNからなる群から選択される少なくとも一種を含むものであり、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びイソシアネート樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むものであると開示されている。
【0005】
また、例えば、特開2006−186197号公報に記載された技術は、発光素子と、複数の発光素子を一方の表面側に搭載すると共に前記発光素子に電力を供給するリードフレームと、前記リードフレームの他方の表面側に隣接するヒートシンクと、前記リードフレームおよび前記ヒートシンクを一体化するとともに前記発光素子を露出する開口を備えた樹脂部とを有する発光装置において、前記ヒートシンクと前記リードフレームとの間には熱伝導性絶縁シートが挟持されている。
同公報に開示された技術では、同公報の図9に示したように電気絶縁性であって熱伝導性の良好な絶縁フィルム90を挟む構造が開示されている。絶縁フィルム90としては、ポリイミド等の樹脂フィルムや、セラミックス製のフィラーを分散させたシリコーンフィルム等を用いると開示されている。
【0006】
また、例えば、特開2002−176203号公報に記載された技術は、発光素子と、光反射部材と、該光反射部材と発光素子を覆って発光素子を封止した樹脂とからなり、前記発光素子から出射した光のうち前方の所定領域を外れる光を樹脂界面でほぼ全反射させた後に前記光反射部材で前方に出射させるよう構成した発光デバイスにおいて、前記発光素子と光反射部材とが熱的接触して発光素子の熱を放熱するものが開示されている。放熱部材としてモールド樹脂が開示されている。モールド樹脂6は熱伝導性が良く、リードフレーム2を光反射部材5に近接して封止することで、熱的接触は保たれて放熱効果があるとされている。
【0007】
【特許文献1】特開2007−214249号公報
【特許文献2】特開2006−186197号公報
【特許文献3】特開2002−176203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来技術では、皮膜である樹脂自体の熱抵抗がやはり高く、下地の金属材料の熱伝導率を生かしていない状況にある。つまり、金属基板自体の熱伝導能力は優れているが、絶縁の要請から金属基板の上に熱抵抗の大きい有機樹脂被膜などを設けざるを得ず、電子機器基板全体としては熱伝導性が存分には発揮できない構造となっていた。
【0009】
上記の特開2007−214249号公報の技術によれば、高放熱性の絶縁体として無機フィラーと熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物とを含んだ絶縁体が用いられている。無機フィラーが包含されていることで放熱性が向上されているが、全体としては有機樹脂素材で形成されており、やはり、放熱性は十分とはいえず、電子素子部品が集中的に発生する熱を素早く周囲に熱伝導して放熱するための性能を十分に満足するものではない。
【0010】
次に、特開2006−186197号公報の技術によれば、ヒートシンクとリードフレームとの間にポリイミド等の樹脂フィルムやセラミックス製のフィラーを分散させたシリコーンフィルム等の熱伝導性絶縁シートを用いている。高効率放熱部品であるヒートシンクに対して効率的に熱を伝導させることがポイントであるが、その絶縁シートがポリイミド等の樹脂フィルムやセラミックス製のフィラーであり、当該部分は全体としては有機樹脂素材で形成されており、やはり、放熱性は十分とはいえず、電子素子部品が集中的に発生する熱を素早く周囲に熱伝導して放熱するための性能を十分に満足するものではない。また、ヒートシンクを組み合わせることにより電子機器基板の体積が大きくなり装置全体の筐体が大きくなってしまうという問題が発生してしまう。
【0011】
次に、特開2002−176203号公報によれば、発光素子と光反射部材とが熱的接触して発光素子の熱を放熱する構造であり放熱部材としてモールド樹脂が用いられている。モールド樹脂も有機樹脂素材としてやはり放熱性は十分とはいえず、電子素子部品が集中的に発生する熱を素早く周囲に熱伝導して放熱するための性能を十分に満足するものではない。
【0012】
上記問題点に鑑み、本発明は、電子機器基板の表面などに優れた熱伝導性と放熱性と絶縁性を兼ね備えた塗料膜を形成せしめ、電子素子から発生する熱を素早く熱伝導するとともに放熱し、電子素子部品等の温度上昇を抑えることができる電子機器基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の高効率放熱電子機器基板は、
熱伝導率の高い金属材料からなる金属箔と、
前記金属箔の表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性と高い絶縁性とを兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜と、
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の上に設けられた、所望の電子回路を良導体素材パターンにより印刷した電子回路パターンと、
前記電子回路パターン上の所定位置にそれぞれ配された電子回路要素である電子素子部品とを備えたものである。
【0014】
ここで、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性と前記絶縁性とを発揮せしめたものであることが好ましい。
また、電子回路を構成する良導体素材パターンは例えば銅ペーストやアルミニウムペーストなど電気を通しやすく印刷に適した金属ペーストなどで製作することができる。
【0015】
上記構成により、高効率放熱電子機器基板の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜自体にはSi−Oネットワークが全体を全通しているのでSi−Oネットワークを伝わることにより熱が効率よく運搬され、高い熱伝導率が得られる。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。基板が熱伝導率の良い素材であれば、熱が素早く基板全体に拡散し、高効率放熱電子機器基板全体から熱を系外に放出することができる。また、上記高効率熱放射材料をベースとする熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料は良好な絶縁性を持っているので絶縁性と熱伝導性と放熱性とを兼ね備えたものとなる。
【0016】
なお、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の成分は以下のものとすることができる。
まず、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜におけるアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第1の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0017】
次に、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜におけるアルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーの第2の構成として、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものが好ましい。
【0018】
上記の高効率放熱電子機器基板を形成する熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料において、塗料中に存在する強靭なSi−Oネットワーク素材の形成とシラノール基の残存量を制御することができ、高効率放熱電子機器基板に対して絶縁性、放熱性、耐熱性、基材への強い付着性、靭性を同時に与えることができる。また、Si−Oネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより膜が形成される過程における収縮率が小さくなり残留応力が小さくなり基材への付着力が向上する。
【0019】
ここで、高効率放熱電子機器基板の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダーにおいて塗布前に液中で十分に分子成長を熟成せしめたものを用いることが好ましい。
上記構成により、塗布環境に対して安定でかつ作業性の高いものとすることができ、高効率放熱電子機器基板において安定した熱伝導・放熱・絶縁性放熱膜を得ることができる。
【0020】
さらに、高効率放熱電子機器基板の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることが好ましい。
上記構成により、高効率放熱電子機器基板を常温乾燥にて得ることができ、製作の作業性が向上する。
【0021】
ここで、反応性変性オルガノシロキサンの例として、アミノ基(アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシ基(グリドキシプロピルトリメトキシシラン、グリドキシプロピルトリエトキシシラン、グリドキシプロピルメチルメトキシシラン、グリドキシプロピルメチルエトキシシラン)、アクリル基(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルエトキシシラン)などがある。
【0022】
次に、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における顔料の第1の構成として、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
【0023】
また、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における顔料の第2の構成として、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものとすることが好ましい。
上記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料により、これら顔料により遠赤外線放射波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得ることができる。
【0024】
また、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における顔料の構成として、着色顔料となる酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させるとともに、前記酸化チタン粒子または前記酸化亜鉛粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたものとすることが好ましい。
【0025】
酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させれば白色に発色するが、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の表面積に酸化チタンが表出するので表面積に占める遠赤外線放射顔料が表出する割合が減少することとなり、放射率が低下する。しかし、上記構成により酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射顔料の化合物によりコーティングしておくことにより白色の着色を確保するとともに放射率を低下させることがなくなる。
【0026】
次に、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における溶媒は、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜形成の際に前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめるものとすることが好ましい。
【0027】
上記のように膜中にポーラス構造を作り込むことにより膜全体としてさらに優れた靭性を得ることができる。
【0028】
次に、高効率放熱電子機器基板のベースとなる基板が、アルミ箔であるものとすることが好ましい。
上記構成により、基板自体の熱伝導率は極めて高いものとなり、全体として効率の良い放熱性を備えた高効率放熱電子機器基板を得ることができる。また、基板がフレキシブルで薄く軽いものとなるので、用途が広がる。
【0029】
本発明の高効率放熱電子機器基板は、電子回路および電子素子部品が基板の片面にのみ設けられたいわゆる片面基板とすることができるが、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が前記電子回路および前記電子素子部品が設けられた電子回路形成面のみならず前記電子回路および前記電子素子部品が設けられていない電子回路非形成面にも形成することが好ましい。
【0030】
上記構成により、電子回路および電子素子部品が設けられていない裏面からも放熱することができ、放熱効率が高くなる。
【0031】
本発明の高効率放熱電子機器基板は、電子回路および電子素子部品が基板の両面に設けられたいわゆる両面基板とすることができ、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が、前記基板の両面に形成することが好ましい。
【0032】
次に、本発明の高効率放熱電子機器基板は多様なものに適用できる。
例えば、前記電子素子部品として、LEDを含むものであるものとすることができる。
また、例えば、前記電子素子部品として、コンピュータマイクロプロセッサを含むものとすることができる。
また、例えば、前記電子素子部品として、液晶表示素子を含むものとすることができる。
例えば、記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ電子制御機器を提供することができる。
例えば、記載の高効率放熱電子機器基板を含んだコンピュータシステムを提供することができる。
また、例えば、記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ家庭電化製品を提供することができる。
また、例えば、記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ産業機器製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の高効率放熱電子機器基板によれば、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜にはSi−Oネットワークが全体を全通しているのでSi−Oネットワークを伝わることにより熱が効率よく運搬され、高い熱伝導率が得られる。さらに、無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が落ちることはない。
【0034】
基板が熱伝導率の良い素材、たとえば、アルミ箔であれば、熱が素早く基板全体に拡散し、高効率放熱電子機器基板全体から熱を系外に放出することができる。また、上記高効率熱放射材料をベースとする熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料は良好な絶縁性を持っているので絶縁性と熱伝導性と放熱性とを兼ね備えたものとなる。また、極めて薄く軽くフレキシブルな基板となる。
【0035】
また、アルコシキシドバインダーの組成を工夫することにより、塗料中に存在する強靭なSi−Oネットワーク素材の形成とシラノール基の残存量を制御することができ、絶縁性、放熱性、耐熱性、基材への強い付着性、靭性を同時に得ることができる。また、Si−Oネットワーク素材をある程度まで形成しておくことにより膜が形成される過程における収縮率が小さくなり残留応力が小さくなり基材への付着力が向上する。
【0036】
いわゆる片面基板の電子機器基板に本発明を適用する際、電子回路および電子素子部品が設けられていない裏面にも熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を設けておくことにより基板を介して裏面の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜に伝達された熱を裏面からも放熱することができ、放熱効率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本発明の高効率放熱電子機器基板およびその形成方法の実施例を説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施例に示した具体的な用途、形状、個数などには限定されないことは言うまでもない。
【実施例1】
【0038】
実施例1にかかる本発明の第1の高効率放熱電子機器基板の例を示す。一例として片面基板においてLEDを搭載した電子機器基板に適用した例を示す。
【0039】
図1は、本発明の第1の高効率放熱電子機器基板の構成例を示す図である。
図1の構成例では、高効率放熱電子機器基板100は、基板10、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20、電子回路パターン30、電子素子部品40を備えている。
本実施例1の構成例では、電子回路30および電子素子部品40が基板10の片面にのみ設けられた片面基板の例である。熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が、電子回路30および電子素子部品40が設けられた電子回路形成面のみならず電子回路30および電子素子部品40が設けられていない電子回路非形成面にも形成された例となっている。
【0040】
基板10は、熱伝導率の高い材料からなる基板であり、例えば、アルミ箔である。つまり、基板10はフレキシブル性に富み、薄く軽いものとすることができる。
【0041】
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は、基板10の表面に塗布され、熱伝導性、放熱性、絶縁性とを兼ね備えた性質を持つ高効率熱放射材料をベースとした熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜である。この構成例では、LEDを搭載した片面基板の表面側のみならず、裏面側にも熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が形成されている。
この熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20については詳しく後述する。
【0042】
電子回路パターン30は、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の上に設けられた所望の電子回路を良導体素材パターンにより描いたものである。この例ではLED駆動用の電子回路パターンを銅ペーストで印刷したものとなっている。熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は高い絶縁性を備えているので電子回路パターン30と基板10が電気的に短絡されることはない。つまり、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が高い絶縁性を持っていることが重要である。
【0043】
電子素子部品40は、電子回路パターン30上の所定位置にそれぞれ配された電子回路要素である電子素子部品であり、この例ではLEDであり、駆動により発熱する熱源となりうるものである。なお、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は高い絶縁性を備えているので電子素子部品40が基板10を介して短絡されることはない。
【0044】
上記構成の高効率放熱電子機器基板100では、電子素子部品40の駆動により発生した熱は以下のように放熱される。
電子素子部品40であるLEDから電子回路パターン30を介して熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20に伝導される。熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の熱は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が持つ熱伝導性により面的に拡がってゆくが、基板10であるアルミ箔にも受け渡される。基板10であるアルミ箔は極めて高い熱伝導性を備えているので、素早く基板10であるアルミ箔全体に熱が拡散してゆく。一部の熱は片面基板の裏面側(電子素子部品が搭載されていない側)にも伝導される。
【0045】
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は後述するように高い放熱性を備えているので、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の表面全体から系外に放出される。片面基板の裏面側においても裏面側に伝導された熱が裏面に設けられた熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の表面全体から系外に放出される。
この熱伝導および放熱の様子は図1(b)に示している。
このように、本発明の高効率放熱電子機器基板100は電子素子部品の熱が効率よく系外に放出される仕組みとなっている。
【0046】
次に、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を詳しく説明する。
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は、下記の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜塗料を基板10上に塗布・乾燥して形成した被膜である。
【0047】
本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜塗料は、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーを用いる。バインダーはまずアルコキシド化合物の加水分解によりシラノール基が生成され、その後シラノール脱水縮合反応が進んでSi−Oネットワークが形成されて行く。このシラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により熱伝導性と放熱性と絶縁性とが発揮される。また、顔料が高効率熱放射性物質を含んでおり顔料による放熱性も発揮される。
【0048】
なお、塗布前の塗料状態において、アルコキシドの加水分解は速やかに促進された方が良いが、その後にシラノールの脱水縮合が進みすぎるおそれに注意する必要がある。塗料の状態でシラノールの脱水縮合が進みすぎると塗布前にSi−Oネットワークが多数形成され、塗布後に乾燥して形成された塗布膜が脆くなったりクラックが入りやすくなったりして基材への付着力が小さくなってしまうという問題が発生するからである。
【0049】
一方、シラノールの脱水縮合反応が十分ではない場合、つまり、塗料状態においてシラノールリッチの状態では、塗布後に膜が形成されてゆく過程で多くの脱水縮合が進んで行くこととなり、脱水縮合が進むと膜が収縮して行くこととなり収縮率が大きくなってしまい、塗布した膜が剥がれ落ちるという不具合が起こる。
【0050】
以上から、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を形成する熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜塗料は、アルコキシドの加水分解は完全に終了せしめ、シラノール脱水縮合反応は適切量進めた後に脱水縮合反応を抑止することにより、脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行ったものとすることが好ましい。これにより塗布前に適切量のSi−Oネットワーク素材を形成しておき、塗布後に新たに脱水縮合により形成されるSi−Oネットワーク量を少なくして収縮率が大きくなることを抑えつつ、残存するSi−OH基により基材との付着力を確保せしめる。
【0051】
バインダーの組成の例について述べる。
第1の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
第2の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダー組成は、アルコキシド化合物からなるバインダーとして、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを所定割合で混合したものとなっている。
その混合割合は、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0052】
Si−OH官能基を4つ備えたテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
Si−OH官能基を3つ備えたトリアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
Si−OH官能基を2つ備えたジアルコキシシランとしては、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0053】
アルコキシド化合物としてこれらを組み合わせて用いる。組み合わせで好ましいのはジメチルメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン及びテトラメトキシシランの組合せ、またはジメチルエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン及びテトラエトキシシランの組合せである。
【0054】
本発明では、アルコキシド化合物の加水分解後の脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行い、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の絶縁性と熱伝導性と放熱性を確保する。
【0055】
Si−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御の原理は以下の通りである。
アルコキシド化合物同士は加水分解によりシラノール基(Si−OH官能基)が生成され、Si−OH官能基の脱水縮合によりSi−Oネットワークの形成が進行してゆく。Si−OH官能基を4つ持つテトラアルコキシシランはSi−OH官能基を多く持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成進行が速く、早期にゲル化する。テトラアルコキシシランのみでバインダーを形成するとほぼ完全にSi−OH官能基が消費され、Si−Oネットワークが形成される。Si−OH官能基を3つ持つトリアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。トリアルコキシシランのみでバインダーを形成すると粒子間のSi−OH官能基の存在が均等になるので、ほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークが形成される。
【0056】
Si−OH官能基を2つ持つジアルコキシシランもSi−OH官能基を持つので、脱水縮合を促進させればSi−Oネットワークの形成が進行し、ゲル化する。ジアルコキシシランのみでバインダーを形成すると同様にほぼ完全にSi−OH官能基が消費された状態でSi−Oネットワークの形成が形成される。しかし、ジアルコキシシランはSi−OH官能基が2つしかなく、脱水縮合によって直鎖状にSi−Oネットワークが形成されてしまい、堅牢性が小さくなる。
【0057】
本発明では、Si−Oネットワークによる堅牢な膜形成を目指すだけではなく、Si−Oネットワークの形成を進行させつつもSi−OH官能基をすべては消費させずに残存させるように制御する。残存したSi−OH官能基により金属プレートなどの基材のOH基との間の結合エネルギーにより基材と強力な付着力をもたらす。
つまり、Si−OH官能基を2つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を3つ持つアルコキシド化合物、Si−OH官能基を4つ持つアルコキシド化合物を、所定割合で混ぜ合わせると、アルコキシド分子間でSi−OH官能基の数に不均衡があるため、反応する相手となるSi−OH官能基がなく、いわば浮いてしまうSi−OH官能基が多数出てくるので脱水縮合が一気には進まなくなる。
【0058】
ただし、長期間放置していると、浮いているSi−OH同士の脱水縮合反応が進んでくるので残存するSi−OH官能基の量は漸減して行くが、上記のように2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の割合を調整すれば、当初、脱水縮合は早期に進むもののSi−OH官能基の数が不均衡状態に陥ってからは脱水縮合に急速にブレーキがかかることとなる。
【0059】
後述するように、良好な熱伝導性、放熱性、絶縁性、付着性を備えた膜が形成される配合について実験を重ねて2官能のアルコキシド化合物、3官能のアルコキシド化合物、4官能のアルコキシド化合物の配合割合を見出した。
【0060】
ここで、バインダーにおいて塗布前に液中でアルコキシドバインダーの加水分解後のシラノール反応による十分な分子成長を熟成せしめることが好ましい。十分に熟成させて適切量のSi−Oネットワークを得ておくことで塗布環境に対して安定でかつ作業性の高いものとなり、一液性としてより安定した塗料となるからである。
【0061】
次に、バインダーに対する他の工夫として、また、バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えておくことにより常温乾燥に適したものとする工夫がある。
たとえば、反応性変性オルガノシロキサンの例として、アミノ基(アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルメトキシシラン、アミノエチル-アミノプロピルメチルエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン)、エポキシ基(グリドキシプロピルトリメトキシシラン、グリドキシプロピルトリエトキシシラン、グリドキシプロピルメチルメトキシシラン、グリドキシプロピルメチルエトキシシラン)、アクリル基(メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルエトキシシラン)などがある。
【0062】
以上の成分に調整した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用の塗料を用いて形成した、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20について、実際に塗料を形成し、種々の性能実験を行った。
まず、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20について、付着性試験を行い、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が安定して基板上に付着している条件について実験し、次に、熱伝導性試験、放熱性試験、絶縁性試験を行い、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が良好な熱伝導性、放熱性、絶縁性を備えていることを検証する。
【0063】
[付着性実験]
付着性実験に用いた熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダー組成
実験に用いた熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料のバインダー組成は、4官能基を備えたテトラアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のテトラメトキシシランを用いた。また、3官能基を備えたバインダーのトリアルコキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のトリメチルメトキシシランを用いた。また、2官能基を備えたジメトキシシランとしてモメンティブマテリアル社製のジメチルメトキシシランを用いた。テトラメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルメトキシシランの配合を変えてそれぞれ製作した。
【0064】
加水分解に用いた水の量は、アルコキシド化合物1モルに対して水0.8〜1.4モルとした。水が0.8モル以下ではSi−OH基の発生が十分でなく膜の硬度が上がらず、1.4モル以上ではSi−OH基が多くなり、シラノールの分子結合が大きくなり、ゲル化が進展し、クラックが生じやすくなるからである。触媒としての酸の量は有機酸、無機酸何れの場合も、加水分解を起こすのに十分な量を用いた。
【0065】
サンプルのそれぞれに含まれるジメチルメトキシシラン(2官能)、トリメチルメトキシシラン(3官能)、テトラメトキシシラン(4官能)の配合を[表1]に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
−熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する基材
アルミブラスト処理を行ったアルミプレートと、ステンレスブラスト処理を行ったステンレスプレートを用いた。
【0068】
−付着性実験の手法
付着性実験は、JIS−K5600−5−6の手法により碁盤目テストを行った。実験は3回行った。アルミブラスト処理を行ったアルミプレートに対する付着実験結果を[表2]に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
注1:その他のアルコキシドとしてエトキシ基、フェニル基もあるが、エトキシ基はメトキシ基と反応スピードの違いなので省略し、フェニルは硬度が劣るので省略し、メチル基のみでテストを実施した。
注2:反応はアルコキシド1モルに対して水2.5〜4.5モル、望ましくは3.3モル、酸の量を十分入れ、顔料比率70%とし、膜厚を25μ±3μにして実施。
注3:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注4:分散は0.7mmのガラスビーズを使用した。分散後粒度はD50で0.35ミクロン。
注5:焼成条件は180℃で20分。基板はアルコール脱脂のみのアルミ板を使用した。試験片は7.5mmw×15.0mml×1.0mmtを各3枚。(評価は全数クリアー)
注6:塗布方法はスプレーコート。
注7:膜厚は15μ〜20μ、測定方法はマイクロメーター。
【0071】
上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランを混合したバインダーである配合1から配合3の実験結果より、混合割合は配合1から配合2の混合割合が良いことが実証できた。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合が好ましい。
【0072】
また、上記付着性実験から、テトラアルコキシシランとトリアルコキシシランとジアルコキシシランを混合したバインダーである配合4から配合9の実験結果より、混合割合は配合4から配合5の混合割合が良いことが実証できた。つまり配合6のように3官能基の割合が減ると付着性が劣り、また、配合7から配合9のように2官能基の割合が増えても付着性が劣る。つまり、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合が好ましい。
【0073】
以上、本発明の絶縁放熱塗料のバインダーの組成を上記の割合となるように工夫すれば、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20の付着性が大きくなるように、Si−Oネットワークと残存するSi−OH基の量を制御できる。
【0074】
[熱伝導試験]
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20において、高い熱伝導率が得られていることを確認した。
−熱伝導試験に用いた高効率熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜のバインダー組成
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜のバインダー組成は、付着性実験に用いたバインダー組成と同じものとした。
【0075】
−熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を形成する基板
アルミブラスト処理を行ったアルミプレート(150mm×75mm×1.0mm)を用いた。
−熱伝導性試験の手法
アルミプレートの半分に熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を形成し、残り半分は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20は形成せずアルミプレートが剥き出しのままとする。アルミプレートの裏面から加熱し、アルミプレートの表面の温度分布を測定した。
【0076】
本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜では、Si−Oネットワークが膜全体を全通しているので熱伝導率が高く、ポーラス構造にかかわらずコージライト、アルミナ、シリカ、ジルコニアという無機鉱物である無機顔料が含まれて固化されているので熱伝導率が高い。実際に熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜2の試料片を用いて熱伝導率を計測したところ、2W/mK以上の熱伝導率が得られていた。
【0077】
[放熱性試験]
次に、放熱膜としての機能、つまり、発熱体から受けた熱エネルギーの遠赤外線エネルギーへの変換効率について検証する。本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料において、含有されている顔料は形成した膜において遠赤外線放射機能を与えるものである。それゆえに顔料の配合が重要である。
高い熱放射率を実現するためには、熱線波長領域の全範囲にわたって、放射率が100%に近く、さらに放射輝度が当該温度における黒体輻射に近い放射スペクトルを持つこと必要がある。
【0078】
第1の顔料として、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含むものとする。これらは、熱拡散性が高く放熱性を有する上、熱膨張率が5×10−6〜10.5×10−6であり、比較的大きいので、顔料として含有させてシート状に成形しても、膜も金属の挙動と同様な挙動をする。それゆえ、膜中に引っ張り応力が発生せず、高温域でも安定した放熱性が得られる。しかも、絶縁性も得られる。なお、カーボンを一定量以上入れることにより容易に導電性が得られる。特に450℃までの大気中、または高温真空炉、或いは不活性ガス等の雰囲気炉中で従来不可能とされていたカーボンの面状発熱体が使用可能となる。
【0079】
上記の第1の顔料に対して、以下の第2の顔料を加える工夫も好ましい。第2の顔料は、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含むものである。
【0080】
なお、顔料の粒度は、膜の平滑性や綴密性、強度を考慮して、顔料の粒度は溶媒分散後で平均粒度で0.5μ以下が望ましい。
【0081】
アルコキシドと顔料の割合は、15〜45体積%が妥当である。15%以下では膜の靭性が低下し堅牢さが失われる。45%を超えると、脱水縮合による乾燥収縮量が多く、高温下でクラックが発生しやすく、所望の放熱性が得がたい。
【0082】
膜の厚みは、基材や発熱体と膜が強固に付着し、且つ、両者の熱膨張差が非常に近い場合でも、膜が厚くなりすぎると、クラックが発生する。それは、Si−OHが脱水縮合するときに起こる収縮現象が原因である。膜厚は、バインダーの含有量にもよるが、30μ以下が望ましい。特にアルコキシド化合物の脱水縮合物の全固形物(即ちSi−OHから生じるSiO2と混合したときの無機顔料成分の合計)にしめる割合が45体積%の場合、800℃でクラックの発生を防ぐ為には10μ前後が好ましい。膜厚が30μを超えると、膜が脆くなり、長時間の使用に耐えられなくなる。そのため、アルコキシド化合物の脱水縮合物の割合は30体積%以下が望ましい。
【0083】
サンプルとして顔料を[表3]のように配合した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料2を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
焼成条件は180℃で20分間焼き付けた。
膜厚はマイクロメーターの測定により20μ〜26μのものが焼成できた。
測定は遠赤外線応用研究会によった。
測定温度は60℃とした。
測定機種はJIR−E500を用いた。
測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回
検知器はMCTである。
【0084】
【表3】

【0085】
本発明の第1の顔料である、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)のうち、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜2ではシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)とした。酸化チタンは着色顔料として配合し、塗料全体の色を白色に着色した。バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
【0086】
上記構成の組成を持つ熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2を用いて放射率と放射輝度測定を行った。
図2は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2の放射率である。
図3は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2の放射輝度スペクトルである。
放射輝度は、540.06kcal/m2・hrであった。
図3に見るように、低温の波長領域から高温の波長領域まで良好な放射輝度スペクトルが得られており、放熱性は、4μ〜24μの波長域での放射率は85%以上の放射率を有することが分かった。高い遠赤外線変換効率が得られていることが実証できた。
【0087】
[絶縁性試験]
次に、絶縁膜としての機能、つまり、基板10と電子回路パターン30および電子素子部品40との絶縁性について検証する。
実験は、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20に対して電圧を印加してゆき、その絶縁性を確認することにより行ったところ、電子回路基板として要求される程度の絶縁性は得られていることが確認できた。実際に高効率放熱電子機器基板として熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20上に電子回路を形成しても十分に絶縁が保たれていることが確認できた。
【0088】
[耐熱性試験]
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2を800℃に熱し、水で急冷却するという処理を繰り返して、クラックが入るか否かを試験した。
加熱はバーナーで800℃まで加熱した。冷却は冷水にて急速に冷却した。この加熱・冷却を5回繰り返した。
結果を[表4]に示す。
【0089】
【表4】

【0090】
[表面硬度試験]
本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の耐摩耗性を調べるために熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2を用いて表面硬度テストも行った。
硬度テストの方法は、JIS−K−5−4に準じた。
実験にはアルミプレートに焼成したものを用いた。
表面硬度テストの結果を[表5]に示す。
【0091】
【表5】

【0092】
なお、上記において、アルコキシド化合物と顔料の割合は、15〜45体積%が妥当であると指摘したが、実験にて実証した。バインダーであるアルコキシド化合物は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料2と同様、トリメチルメトキシシランとテトラメトキシシランの混合とし、顔料の体積%を変えたサンプルを製作し、表面硬度テストを行うことにより妥当な割合を検証した。
【0093】
【表6】

【0094】
注1:アルコキシド化合物は代表例としてトリメチルメトキシシラン66.7重量%、テトラメトキシシラン33.5重量%、ジメチルメトキシシラン4,8重量%でテスト。
注2:各反応条件、分散条件、縮合脱水条件、膜厚、基材は前記テストに準じる。
注3:使用顔料は平均1次粒子径0.15μのアルミナ(Al2O3)、平均1次粒子径0.5μのカオリン、10〜20nのシリカ(SiO2)をそれぞれ30体積%、65体積%、5体積%配合したものを使用した。
注4:分散溶媒はエタノール、イソプロピルアルコールを配合した物を使用した。
注5:分散は0.7ミリ径のガラスビーズを用いたビーズミルで1時間実施した。その時の平均粒皮は0.35μであった。
注6:○は硬度7H以上、曲げ20R可、碁盤目テスト問題なし、△は硬度7Hまで、碁盤目テスト間題なし、Xは、膜が脆くクラック発生。
以上、アルコキシド化合物と顔料の割合は15〜45体積%が妥当であると実証できた。
【0095】
[耐腐食性試験]
本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の耐腐食性も調べるために熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜試料2を用いて塩水噴霧試験と水浸試験も行った。
塩水噴霧試験の方法は、JIS−K5600−7−1に準じた。
測定はステンレスプレートのものを用いた。
塩水噴霧の放置時間は500時間とした。
塩水噴霧試験の結果を[表7]に示す。
【0096】
【表7】

【0097】
水浸試験の方法は、JIS−K5600−6−2に準じた。
測定はアルミプレートのものを用いた。
水浸の放置時間は500時間とした。
水浸試験の結果を[表8]に示す。
【0098】
【表8】

【0099】
以上、塩水噴霧試験と水浸試験の結果から、本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の耐腐食性が大きいことが実証できた。
【0100】
以上、実施例1にかかる本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜および熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜により塗布・形成した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜は、バインダーの付着力が大きく、顔料も遠赤外線放射効率が高く、表面硬度が大きく、耐腐食性、耐熱性に優れたものである。また、本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料は1液性でありながらアルコキシド系バインダーの脱水縮合反応を制御することがき、ポットライフが長くかつ取り扱いが容易な1液性塗料として提供できる。
【実施例2】
【0101】
実施例2は、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料の顔料において、着色顔料として酸化チタンを含有させるとともに、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とするものである。
【0102】
熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料の顔料粒子は塗布膜の形成段階において、一部が表面上に表出する。遠赤外線放射性物質である顔料は熱源から受けた熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに変換して放射する。
【0103】
ここで、形成される熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が製品の筐体など目に触れる箇所である場合などにおいては、塗料の色が見た目にきれいな色となるよう要求がある。そこで、塗料を綺麗に発色させるため着色用の顔料を混合させるニーズがある。この場合、着色用に配合された酸化チタンや酸化亜鉛などの顔料粒子が、遠赤外線への変換効率に寄与するものでなければ熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の放熱機能を低下させる要因となりうる。
【0104】
実施例1の遠赤外線放射実験で製作した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料2に用いられている酸化チタン(石原産業製 A−100)は、特に表面に何もコーティングが施されていないものであった。図4は、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料2を用いて形成した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図である。顔料粒子を模式的に大きく示している。図4に見るように、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の表面には遠赤外線放射性物質である顔料とともに酸化チタン粒子が表出している。この酸化チタン粒子が表出している部分は遠赤外線放射機能を発揮しないので遠赤外線放射効率が低下することとなる。実際、図2、図3に見るように、高温領域(5〜8μm)においてスペクトルが低下している部分が見られる。
【0105】
実施例2にかかる本発明の熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用塗料は、着色顔料として酸化チタンを含有させるとともに、酸化チタン粒子の周囲に遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめている。後述する熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20に用いられている酸化チタン(石原産業製 R−95)は、表面に粒度の細かいシリカがコーティングされているものである。
【0106】
図5は、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いて形成した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図である。熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20においてその表面に酸化チタン粒子が表出している部分からもその酸化チタン粒子の表面にコーティングされた遠赤外線放射性顔料の働きにより遠赤外線放射機能が発揮されることとなる。なお、酸化チタン粒子の表面にコーティングするためにコーティングする遠赤外線放射性顔料は酸化チタンの粒度よりも十分に細かい粒度とする必要がある。つまり、着色用の顔料が酸化チタンのコーティング処理をしているか否か以外の諸条件は実施例1とまったく同じ条件にて実験した。
【0107】
つまり、焼成条件は180℃で20分間の焼き付け、膜厚は20μ〜26μ、測定温度は60℃、測定機種はJIR−E500、測定条件は、分解能16cm−1、積算回数200回、検知器はMCTである。
サンプルとして顔料を[表9]のように配合した熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を作製し、遠赤外線放射実験を行った。
【0108】
【表9】

【0109】
遠赤外線放射顔料としては、本発明の第1の顔料である、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料のうち、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO2)を顔料とした。
着色用顔料としては、表面に粒度の細かいシリカがコーティングされている酸化チタン(石原産業製 R−95)を用いている。
バインダーは3官能基を備えたトリメチルメトキシシランと4官能基を備えたテトラメトキシシランを配合した。
【0110】
上記構成の組成を持つ熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いて放射線測定を行った。
図6は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いた放射線測定結果である。
図7は熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が発する放射スペクトルである。
図2、図3と、図6、図7を比べるとあきらかに、高温領域(5〜8μm)においてスペクトルが改善されている部分が見られる。
【0111】
このスペクトル改善は、酸化チタンの表面のシリカのコーティングの有無によりもたらされているので、着色用の顔料を配合する場合、当該着色用の顔料の表面に遠赤外線放射顔料をコーティングせしめることにより、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜において遠赤外線放射機能が改善されることが実証できた。
【実施例3】
【0112】
実施例3にかかる熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜用の塗料は、遠赤外線放射顔料として、スペクトル波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換を得るため、低温領域にて放射能率が高い第1の遠赤外線顔料に加え、特に高温領域にて放射能率が高い第2の遠赤外線顔料を添加したものである。
【0113】
第1の顔料が、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む顔料である。
第2の顔料が、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)の少なくとも一つの単体またはそれらの化合物を含む顔料である。
【0114】
このように、低温領域にて放射能率が高い第1の遠赤外線顔料に加え、特に高温領域にて放射能率が高い第2の遠赤外線顔料を添加することにより、スペクトル波長領域において高温領域から低温領域まで効率良い変換効率を達成することができる。
【実施例4】
【0115】
実施例4はいわゆる両面基板に関する実施例である。
電子回路30および電子素子部品40が基板10の両面に設けられた両面基板においても実施例1の片面基板の場合と同様、熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が基板10の両面に形成された例であっても同じように適用することができる。
【実施例5】
【0116】
本発明の高効率放熱電子機器基板は多様なものに適用できる。
例えば、電子素子部品として、LEDを含むものであるものとすることができる。
また、例えば、電子素子部品として、コンピュータマイクロプロセッサを含むものとすることができる。
また、例えば、電子素子部品として、液晶表示素子を含むものとすることができる。
例えば、高効率放熱電子機器基板を含んだ電子制御機器を提供することができる。
例えば、高効率放熱電子機器基板を含んだコンピュータシステムを提供することができる。
また、例えば、高効率放熱電子機器基板を含んだ家庭電化製品を提供することができる。
また、例えば、高効率放熱電子機器基板を含んだ産業機器製品を提供することができる。
【0117】
以上、本発明の好ましい実施形態を図示して説明してきたが、本発明は、熱エネルギーを遠赤外線エネルギーに変換する放熱膜に広く適用することができる。
本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の高効率放熱電子機器基板の構成例を示す図
【図2】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20に関する放射線測定結果を示す図
【図3】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が発する放射スペクトルを示す図
【図4】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いて形成した膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図
【図5】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いて形成した膜の表面の様子を模式的に拡大して示した図
【図6】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20を用いた放射線測定結果を示す図
【図7】熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜20が発する放射スペクトルを示す図
【符号の説明】
【0119】
10 基板
20 熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜
30 電子回路パターン
40 電子素子部品
100 高効率放熱電子機器基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率の高い金属材料からなる金属箔と、
前記金属箔の表面に塗布された、高い熱伝導性と高い放熱性と高い絶縁性とを兼ね備えた性質を持つ熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜と、
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜の上に設けられた、所望の電子回路を良導体素材パターンにより印刷した電子回路パターンと、
前記電子回路パターン上の所定位置にそれぞれ配された電子回路要素である電子素子部品とを備えた高効率放熱電子機器基板。
【請求項2】
前記電子回路および電子素子部品が前記基板の片面にのみ設けられた片面基板であって、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が、前記電子回路および前記電子素子部品が設けられた電子回路形成面のみならず前記電子回路および前記電子素子部品が設けられていない電子回路非形成面にも形成したことを特徴とする、請求項1に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項3】
前記電子回路および電子素子部品が前記基板の両面に設けられた両面基板であり、前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が、前記基板の両面に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項4】
前記基板が、アルミ箔である請求項1から3のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項5】
前記電子素子部品として、LEDを含むものである請求項1から4のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項6】
前記電子素子部品として、コンピュータマイクロプロセッサを含むものである請求項1から5のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項7】
前記電子素子部品として、液晶表示素子を含むものである請求項1から6のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項8】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜が、アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーと、遠赤外線放射性物質の顔料と、溶媒を備えた塗料を塗布・乾燥することにより形成された塗布膜であって、前記アルコキシド化合物の加水分解後、シラノール脱水縮合の進展により形成されるSi−Oネットワークおよび残存するシラノール基により構成される被膜により前記熱伝導性と前記放熱性と前記絶縁性とを発揮せしめたものであることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項9】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシランが5対5から0対10の割合で配合することにより、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項10】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における前記アルコキシド化合物の加水分解反応とシラノール脱水縮合反応により生成されるバインダーバインダーとして、テトラアルコキシシランに対してトリアルコキシシランとジアルコキシシランを、テトラアルコキシシラン:トリアルコキシシラン:ジアルコキシシランが4.5対4.5対1から7.2対1.8対1の割合で配合し、前記アルコキシド化合物の加水分解後のシラノール脱水縮合により生じる塗料中に存在するSi−Oネットワーク素材の形成進行の制御とシラノール基の残存量の制御を行うことを特徴とする請求項8に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項11】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料として、前記バインダーにおいて塗布前に液中で十分に分子成長を熟成せしめることにより、塗布環境に対して安定でかつ作業性の高い塗料を用いたものとした請求項8から10のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項12】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料として、前記バインダーにアミノ基、エポキシ基、アクリル基などを備えた反応性変性オルガノシロキサンを加えることにより常温乾燥を可能とせしめた塗料を用いたものとした請求項8の10のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項13】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における顔料が、シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO2)、コージライトとシリカ(SiO2)、コージライトとアルミナ(Al2O3)、コージライトとシリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の化合物のいずれかを含む第1の顔料を備えたものである請求項1から12のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項14】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における前記顔料が、前記第1の顔料に加え、酸化鉄(FeO、Fe2O3、Fe3O4)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化コバルト(CoO)、三酸化コバルト(Co2O3)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)またはそれらの化合物のいずれかを含む第2の顔料を備えたものである請求項13に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項15】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における顔料として、着色顔料となる酸化チタンまたは酸化亜鉛を含有させるとともに、前記酸化チタン粒子または前記酸化亜鉛粒子の周囲に前記遠赤外線放射性物質の顔料をコーティングせしめたことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項16】
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜を形成する塗料における溶媒が、沸点が常温より高い温度のアルコール類であり、
前記熱伝導・放熱・絶縁性塗布膜において前記溶媒を揮発させることによりポーラス構造を形成せしめたことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ電子制御機器。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板を含んだコンピュータシステム。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ家庭電化製品。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載の高効率放熱電子機器基板を含んだ産業機器製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−152536(P2009−152536A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209400(P2008−209400)
【出願日】平成20年8月17日(2008.8.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(506160215)マイクロコーテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】