説明

高周波電子回路モジュールおよびモジュール用多層基板

【課題】 モジュールの特性の劣化を防ぎながらモジュールの小型化を可能にする。
【解決手段】 高周波電子回路モジュールは、セラミック多層基板1と、セラミック多層基板1の表面にフリップチップボンディングによって搭載された2つのベアチップの弾性表面波素子20と、セラミック多層基板1の表面に搭載された他の素子11,12,13を備えている。セラミック多層基板1の表面には、この表面に搭載される各素子に接続される導体層2,2Gが形成されている。導体層2Gは、弾性表面波素子20の接地用端子に接続される接地導体層であり、導体層2はその他の導体層である。接地導体層2Gは、弾性表面波素子20に対向する領域を含む範囲に配置されている。セラミック多層基板1の内部において、弾性表面波素子20に対向する領域には他の素子が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層基板とこの多層基板に搭載された弾性表面波素子とを備えた高周波電子回路モジュール、および弾性表面波素子が搭載されて高周波電子回路モジュールを構成するモジュール用多層基板に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器においては、市場の要求の一つとして、常に、小型化、軽量化が要求される。そのため、電子機器に使用される部品についても小型化、軽量化が要求される。携帯電話に代表される高周波機器においてはこの傾向が著しく、それに使用される部品においても、特にこの傾向が顕著に見られる。高周波機器においては、部品の小型化のみならず、部品の搭載方法に関しても高密度化が進み、これらにより、機器の小型化、軽量化の要求に対応してきている。高周波機器においては、このような小型化、軽量化の要求に対応するために、部品を搭載する基板として、導体層が単層の基板に代わって、多層基板が主に用いられている。
【0003】多層基板としては、例えばセラミック多層基板が用いられる。セラミック多層基板は、複数の絶縁層を電気的に絶縁体となるセラミックで形成し、導体層を銀等で形成したものである。このセラミック多層基板は、一般的な樹脂多層基板に比べて、高周波での損失が少なく、熱伝導がよく、寸法精度がよく、信頼性に優れる等の特徴を併せ持つ。
【0004】また、セラミック多層基板においては、内導体をコイル形状にすることによって内部にインダクタを形成したり、2つの内導体を平行に対向させることによって内部にキャパシタを形成することが可能である。更に、セラミック多層基板においては、低損失の素子を寸法精度よく形成することができる。従って、セラミック多層基板を用いることにより、Qが大きく、公差の小さい素子を内部に形成することが可能になる。
【0005】こうしたセラミック多層基板の特徴は、特に携帯電話等の高周波機器において、一定の機能を有するように複数の素子や部品を組み合わせて構成されたモジュールに活かされている。すなわち、セラミック多層基板の表面に様々な部品を搭載することによって、上記高周波機器に適した、高特性且つ小型のモジュールを実現することができる。
【0006】高周波機器においては、機能毎に回路の一部がまとめられたモジュールを組み合わせて機器の回路を構成することにより、従来のディスクリート部品を一つ一つ基板に搭載して回路を構成していく場合に比べて、機器の構造が簡単になり、且つ信頼性および特性に優れた機器を提供できるようになる。
【0007】また、従来のディスクリート部品を用いて機器の回路を構成する場合には、各部品毎の特性を組み合わせて所定の機能を果たすように回路を構成していくため、回路の設計が複雑になる。これに対し、モジュールを組み合わせて機器の回路を構成する場合には、モジュール毎に特性の仕様が決まっているため、モジュール単位での特性を組み合わせて回路を構築することが可能になり、回路設計の短期間化および省力化が可能になる。
【0008】携帯電話の高周波回路では、いくつかの機能について回路のモジュール化が行われている。ここで、全世界で最も端末数の多いGSM(Global System for Mobile Communications)方式のデュアルバンド型携帯電話におけるアンテナスイッチ部のモジュールの一例を図10に示す。
【0009】図10に示したモジュールは、セラミック多層基板101と、このセラミック多層基板101の表面に搭載された複数のチップ102と、これらのチップ102を覆うシールドケース103とを備えている。チップ102はダイオードや抵抗等である。セラミック多層基板101は、セラミックで形成された複数の絶縁層111と、隣接する絶縁層111の間および表層の絶縁層111の表面に形成された導体層112と、複数の絶縁層を貫通して、複数の導体層112間を接続するビアホール113と、側面に形成された端子電極114とを含んでいる。また、セラミック多層基板101内には、導体層112によってインダクタ115やキャパシタ116が形成されている。
【0010】現在、携帯電話の高周波回路では、パワーアンプ、アンテナスイッチ部等の単機能でモジュール化が実現されているが、より広範の機能がモジュール化されれば、更にモジュール化の利点が引き出されることになる。
【0011】ところで、携帯電話の高周波回路にはバンドパスフィルタが含まれている。このバンドパスフィルタとしては弾性表面波素子がよく用いられている。そのため、弾性表面波素子を含むモジュール化も重要となる。
【0012】従来、弾性表面波素子としては、いわゆるパッケージ品が用いられていた。ここで、図11を参照して、弾性表面波素子のパッケージ品の構造の一例について説明する。図11に示したパッケージ品では、基台121に対して弾性表面波素子のチップ122がフリップチップボンディングによって搭載されている。この例では、チップ122に設けられた金等からなる接続電極(バンプ)123が、基台121に形成された金等からなる導体パターン124に対して溶着されている。図示しないが、チップ122は樹脂等によって封止されて、パッケージが形成される。なお、基台に対して弾性表面波素子のチップをフリップチップボンディングによって搭載する技術は、例えば特開平10−79638号公報に示されている。
【0013】もちろん、多層基板上に弾性表面波素子のパッケージ品を搭載してモジュール化を行うことも可能であるが、弾性表面波素子のチップを多層基板に直接搭載すれば、より小型化、低背化、低コスト化が可能となる。
【0014】セラミック多層基板は、インダクタやキャパシタを内蔵できるため、モジュールの小型化ができることが特徴になるが、反面、多層基板ゆえに低背化が困難になるという不具合がある。そのため、多層基板に更にパッケージ品を搭載する一般的なモジュールでは、今後更に進む低背化の要求に十分に応えることができない。
【0015】また、パッケージ品は、元々のチップに比べて大きな占有面積を必要とする。携帯電話に使用される部品の中で、弾性表面波素子は最も高背のものの一つで、また、占有面積も大きい。こうした状況では、弾性表面波素子のチップを、パッケージを用いずに、何らかの形で直接、セラミック多層基板に搭載することが望まれている。
【0016】一方、弾性表面波素子のパッケージ品の製造においては、チップを作成する工程と、チップをパッケージに搭載し、密閉する工程とがあり、各々のコストが同程度かかっている。仮に、弾性表面波素子のチップをセラミック多層基板に直接搭載することが可能ならば、チップをパッケージに搭載し、密閉する工程が不要になるため、安価なモジュールを作成することもできる。
【0017】以上説明したように、弾性表面波素子を含む高周波電子回路モジュールにおいては、他の部品をはんだ付け等で搭載するセラミック多層基板に対して、弾性表面波素子をチップのまま直接搭載することが望ましい。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、弾性表面波素子のチップを、セラミック多層基板等の多層基板に搭載する場合には、パッケージ品を多層基板に搭載する場合とは異なり、次のような2つの問題点がある。
【0019】第1の問題点は、弾性表面波素子と、多層基板に内蔵された素子との間で相互干渉が起こることである。第2の問題点は、弾性表面波素子において、所望の帯域外での減衰が十分に取れなくなることである。
【0020】ここで、第1の問題点の原因について説明する。弾性表面波素子のチップを、例えばフリップチップボンディングによって多層基板に搭載する場合を考えると、フリップチップボンディング用のチップの構造から必然的に、チップと多層基板の表面との間の距離は約10〜50μmになる。弾性表面波素子のチップの場合には、チップの表面に形成された櫛形電極が、多層基板の表面に対向するように配置されることになる。そのため、チップと多層基板の表面との間の距離が上述のように短いと、多層基板の表面に信号線がある場合には弾性表面波素子と信号線との間で容易に相互干渉が生じ、また、多層基板内部において弾性表面波素子の直下に他の素子が存在する場合には弾性表面波素子と他の素子との間で容易に相互干渉が生じる。そのため、従来は、弾性表面波素子のチップを、例えばフリップチップボンディングによって多層基板に搭載する場合には、多層基板内部において弾性表面波素子の直下に他の素子を配置することができず、結局、モジュールの小型化が困難になっていた。
【0021】なお、図11に示したような弾性表面波素子のパッケージ品を多層基板に搭載する場合には、パッケージ品の基台121が0.3mm程度の厚みを有するため、弾性表面波素子と多層基板に内蔵された素子との間で干渉は生じない。
【0022】次に、第2の問題点の原因について説明する。弾性表面波素子には、複数の接地用端子があり、全ての接地用端子を確実に接地する必要がある。しかしながら、多層基板では、小型化を追及する観点から、十分に均一で安定な接地導体層を任意の場所に設けることが難しい。そのため、各接地用端子と接地導体層との接続関係が均一ではなくなり、回路図上では接地されている複数の部分が、実際には等電位とは言い難い場合もよくある。このように、弾性表面波素子のチップを多層基板に搭載する場合には、全ての接地端子を等電位に保つことができず、その結果、所望の帯域外での減衰が十分に取れなくなる場合がある。
【0023】なお、パッケージ品においては、パッケージ内部でチップの全ての接地用端子をとりまとめて一つの端子に接続し、この端子をマザーボード上の安定した接地導体層につなぐことは比較的容易に行うことができる。
【0024】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、多層基板とこの多層基板に搭載された弾性表面波素子とを備えた高周波電子回路モジュールであって、特性の劣化を防ぎながら小型化を可能にした高周波電子回路モジュールを提供することにある。
【0025】本発明の第2の目的は、弾性表面波素子が搭載されて高周波電子回路モジュールを構成するモジュール用多層基板であって、モジュールの特性の劣化を防ぎながらモジュールの小型化を可能にするモジュール用多層基板を提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明の高周波電子回路モジュールは、多層基板と、この多層基板の表面にフリップチップボンディングによって搭載された弾性表面波素子とを備え、弾性表面波素子は、多層基板の表面に対向する面に形成された接地用端子を有し、多層基板は、その表面において弾性表面波素子に対向する領域に配置され、弾性表面波素子の接地用端子に接続された接地導体層を有し、多層基板は、更に、その内部において弾性表面波素子に対向する領域に配置された他の素子を有するものである。
【0027】本発明の高周波電子回路モジュールでは、弾性表面波素子と多層基板内の素子との間に配置された接地導体層によって、弾性表面波素子と多層基板内の素子とが電磁気的に分離される。また、弾性表面波素子の接地用端子は、多層基板の表面において弾性表面波素子に対向する領域に配置された接地導体層に対してほぼ最短の距離で接続され、接地用端子と接地導体層との接続関係が均一化される。
【0028】本発明の高周波電子回路モジュールにおいて、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率は、50%以上80%以下であってもよい。
【0029】また、本発明の高周波電子回路モジュールにおいて、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率は、70%以上80%以下であってもよい。
【0030】また、本発明の高周波電子回路モジュールにおいて、多層基板は、セラミックで形成された複数の絶縁層を有するセラミック多層基板であってもよい。
【0031】本発明のモジュール用多層基板は、弾性表面波素子が搭載されて高周波電子回路モジュールを構成するものであって、弾性表面波素子がフリップチップボンディングによって搭載される表面において弾性表面波素子に対向する領域に配置され、弾性表面波素子の接地用端子に接続される接地導体層と、内部において弾性表面波素子に対向する領域に配置された他の素子とを有するものである。
【0032】本発明のモジュール用多層基板では、弾性表面波素子と多層基板内の素子との間に配置された接地導体層によって、弾性表面波素子と多層基板内の素子とが電磁気的に分離される。また、弾性表面波素子の接地用端子は、多層基板の表面において弾性表面波素子に対向する領域に配置された接地導体層に対してほぼ最短の距離で接続され、接地用端子と接地導体層との接続関係が均一化される。
【0033】本発明のモジュール用多層基板において、表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率は、50%以上80%以下であってもよい。
【0034】また、本発明のモジュール用多層基板において、表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率は、70%以上80%以下であってもよい。
【0035】また、本発明のモジュール用多層基板は、セラミックで形成された複数の絶縁層を有していてもよい。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図3を参照して、本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールおよびモジュール用多層基板が適用される高周波電子回路の一例として、デュアルバンド型携帯電話における高周波回路の構成の一例について説明する。図3に示した高周波回路は、第1ないし第3のポートを有し、第1のポートがアンテナ30に接続されたダイプレクサ31を備えている。このダイプレクサ31は、第2のポートと第3のポートに入力される送信信号を第1のポートより出力すると共に、第1のポートに入力される受信信号をその周波数に応じて第2のポートまたは第3のポートより出力するようになっている。第2のポートは欧州における携帯電話方式であるGSM方式の信号を入出力するようになっている。第3のポートは欧州における携帯電話方式であるDCS(Digital Cellular System)方式の信号を入出力するようになっている。
【0037】図3に示した高周波回路は、更に、GSM方式の送信と受信を切り換えるためのアンテナスイッチ32と、DCS方式の送信と受信を切り換えるためのアンテナスイッチ33とを備えている。アンテナスイッチ32の可動接点はダイプレクサ31の第2のポートに接続され、一方の固定接点はローパスフィルタ(図ではLPFと記す。)34の出力端に接続され、他方の固定接点はバンドパスフィルタ(図ではBPFと記す。)35の入力端に接続されている。アンテナスイッチ33の可動接点はダイプレクサ31の第3のポートに接続され、一方の固定接点はローパスフィルタ36の出力端に接続され、他方の固定接点はバンドパスフィルタ37の入力端に接続されている。
【0038】図3に示した高周波回路は、更に、同相成分信号(以下、I信号と記す。)と直交成分信号(以下、Q信号と記す。)からなる入力信号の入力端より順に設けられた直交変調器41、位相検出器42、ミキサ43およびバラン44を備えている。バラン44の出力端には、GSM方式の送信信号用のパワーアンプ(図ではPAと記す。)45の入力端と、DCS方式用の送信信号用のパワーアンプ48の入力端とが接続されている。パワーアンプ45の出力端はカプラ46を介してローパスフィルタ34の入力端に接続されている。カプラ46は出力の一部を抽出して自動出力制御回路(図ではAPCと記す。)47に送るようになっている。パワーアンプ45は、自動出力制御回路47の出力に基づいて、出力利得が一定になるように制御されるようになっている。同様に、パワーアンプ48の出力端はカプラ49を介してローパスフィルタ36の入力端に接続されている。カプラ49は出力の一部を抽出して自動出力制御回路50に送るようになっている。パワーアンプ48は、自動出力制御回路50の出力に基づいて、出力利得が一定になるように制御されるようになっている。
【0039】図3に示した高周波回路は、更に、バンドパスフィルタ35の後段に順に設けられたローノイズアンプ(図ではLNAと記す。)51およびバラン52と、バンドパスフィルタ37の後段に順に設けられたローノイズアンプ53およびバラン54を備えている。バラン52,54の出力端はミキサ55の入力端に接続されている。高周波回路は、更に、ミキサ55の後段に順に設けられた中間周波バンドパスフィルタ(図ではIFBPFと記す。)56、アンプ57、ミキサ58、自動利得制御アンプ59および直交復調器60を備えている。直交復調器60は、復調されたI信号とQ信号を出力するようになっている。
【0040】図3に示した高周波回路は、更に、以下のようなシンセサイザ構成の高周波発振器を備えている。すなわち、この発振器は、GSM方式用の電圧制御発振器(図ではGSMVCOと記す。)61と、DCS方式用の電圧制御発振器(図ではDCSVCOと記す。)62と、これらの電圧制御発振器61,62に接続された位相同期化ループ回路(図ではRFPLLと記す。)63とを有している。なお、位相検出器42によって得られる位相検出信号は、ローパスフィルタ64を介して電圧制御発振器61に与えられると共に、ローパスフィルタ65を介して電圧制御発振器62に与えられるようになっている。電圧制御発振器61,62の出力は、ミキサ43とミキサ55に与えられるようになっている。
【0041】図3に示した高周波回路は、更に、以下のようなシンセサイザ構成の中間周波発振器を備えている。すなわち、この発振器は、電圧制御発振器(図ではIFVCOと記す。)71と、この電圧制御発振器71に接続された位相同期化ループ回路(図ではIFPLLと記す。)72とを有している。電圧制御発振器71の出力はミキサ58に与えられるようになっている。
【0042】図3に示した高周波回路は、更に、電圧制御発振器71の出力を分周する分周器73,75と、分周器73の出力を90°移相して、位相が90°異なる2つの信号を生成し、直交変調器41に与える90°移相器74と、分周器75の出力を90°移相して、位相が90°異なる2つの信号を生成し、直交復調器60に与える90°移相器76とを備えている。
【0043】本実施の形態では、図3に示した高周波回路において、ダイプレクサ31、アンテナスイッチ32,33、ローパスフィルタ34,36およびバンドパスフィルタ35,37からなるアンテナスイッチモジュール40を構成する。
【0044】本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールは、例えば、図3におけるアンテナスイッチモジュール40に適用される。
【0045】図4は、図3におけるアンテナスイッチモジュール40の回路構成の一例を示す回路図である。図4R>4に示したアンテナスイッチモジュール40では、ダイプレクサ31は次のように構成されている。すなわち、ダイプレクサ31は、各一端がアンテナ30に接続されたヘリカルインダクタ131、キャパシタ132およびキャパシタ133と、各一端がキャパシタ133の他端に接続されたキャパシタ134およびヘリカルインダクタ135と、一端がヘリカルインダクタ135の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ136とを有している。ヘリカルインダクタ131とキャパシタ132の各他端は、互いに接続されアンテナスイッチ32に接続されている。キャパシタ134の他端はアンテナスイッチ33に接続されている。
【0046】図4に示したアンテナスイッチモジュール40では、アンテナスイッチ32は次のように構成されている。すなわち、アンテナスイッチ32は、カソードがヘリカルインダクタ131とキャパシタ132の接続点に接続されたPINダイオード141と、一端がダイオード141のアノードに接続されたヘリカルインダクタ142と、一端がヘリカルインダクタ142の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ143と、ヘリカルインダクタ142とキャパシタ143の接続点に設けられ、送信と受信とを切り換える制御信号が印加される制御端144と、一端がダイオード141のカソードに接続され、他端が接地されたキャパシタ145とを有している。
【0047】アンテナスイッチ32は、更に、一端がダイオード141のカソードに接続されたヘリカルインダクタ146と、一端がヘリカルインダクタ146の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ147と、アノードがヘリカルインダクタ146の他端に接続されたPINダイオード148と、一端がダイオード148のカソードに接続され、他端が接地されたキャパシタ149と、一端がダイオード148のカソードに接続され、他端が接地された抵抗150と、一端がヘリカルインダクタ146の他端に接続され、他端がバンドパスフィルタ35の入力端に接続されたキャパシタ151とを有している。
【0048】図4に示したアンテナスイッチモジュール40では、ローパスフィルタ34は次のように構成されている。すなわち、ローパスフィルタ34は、一端がダイオード141のアノードに接続され、他端がGSM方式の送信信号の入力端158に接続されたヘリカルインダクタ154と、一端がダイオード141のアノードに接続され、他端が入力端158に接続されたキャパシタ155と、一端がキャパシタ155の一端に接続され、他端が接地されたキャパシタ156と、一端がキャパシタ155の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ157とを有している。
【0049】図4に示したアンテナスイッチモジュール40では、アンテナスイッチ33は次のように構成されている。すなわち、アンテナスイッチ33は、カソードがキャパシタ134の他端に接続されたPINダイオード161と、一端がダイオード161のアノードに接続されたヘリカルインダクタ162と、一端がヘリカルインダクタ162の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ163と、ヘリカルインダクタ162とキャパシタ163の接続点に設けられ、送信と受信とを切り換える制御信号が印加される制御端164と、一端がダイオード161のカソードに接続され、他端が接地されたキャパシタ165とを有している。
【0050】アンテナスイッチ33は、更に、一端がダイオード161のカソードに接続されたヘリカルインダクタ166と、一端がヘリカルインダクタ166の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ167と、アノードがヘリカルインダクタ166の他端に接続されたPINダイオード168と、一端がダイオード168のカソードに接続され、他端が接地されたキャパシタ169と、一端がダイオード168のカソードに接続され、他端が接地された抵抗170と、一端がヘリカルインダクタ166の他端に接続され、他端がバンドパスフィルタ37の入力端に接続されたキャパシタ171とを有している。アンテナスイッチ33は、更に、一端がダイオード161のカソードに接続されたヘリカルインダクタ172と、一端がヘリカルインダクタ172の他端に接続され、他端がダイオード161のアノードに接続されたキャパシタ173とを有している。
【0051】図4に示したアンテナスイッチモジュール40では、ローパスフィルタ36は次のように構成されている。すなわち、ローパスフィルタ36は、一端がダイオード161のアノードに接続され、他端がDCSM方式の送信信号の入力端178に接続されたヘリカルインダクタ174と、一端がダイオード161のアノードに接続され、他端が入力端178に接続されたキャパシタ175と、一端がキャパシタ175の一端に接続され、他端が接地されたキャパシタ176と、一端がキャパシタ175の他端に接続され、他端が接地されたキャパシタ177とを有している。
【0052】図4におけるアンテナスイッチ32では、制御端144に印加される制御信号がハイレベルのときには、2つのPINダイオード141,148が共にオン状態となり、ダイプレクサ31に送信側のローパスフィルタ34が接続される。一方、制御端144に印加される制御信号がローレベルのときには、2つのPINダイオード141,148が共にオフ状態となり、ダイプレクサ31に受信側のバンドパスフィルタ35が接続される。アンテナスイッチ33の動作も、アンテナスイッチ32と同様である。
【0053】図4に示したアンテナスイッチモジュール40において、バンドパスフィルタ35,37は、弾性表面波素子によって構成されている。
【0054】次に、図1を参照して、本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールについて説明する。図1は、本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンとこの表面に搭載される素子の配置とを示している。図1において、ハッチングを施した部分が導体層を表している。本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールは、図1に示したように、本実施の形態に係るモジュール用多層基板としてのセラミック多層基板1と、このセラミック多層基板1の表面にフリップチップボンディングによって搭載された2つのベアチップの弾性表面波素子20とを備えている。2つの弾性表面波素子20は、図3および図4におけるバンドパスフィルタ35,37を構成する。セラミック多層基板1の表面には、更に、4つのダイオード11と、2つの抵抗12と、1つのインダクタ13が搭載されている。
【0055】セラミック多層基板1の構成は、図10に示したセラミック多層基板101と同様である。すなわち、セラミック多層基板1は、セラミックで形成された複数の絶縁層111と、隣接する絶縁層111の間および表層の絶縁層111の表面に形成された導体層112と、複数の絶縁層を貫通して、複数の導体層112間を接続するビアホール113と、側面に形成された端子電極114とを含んでいる。また、セラミック多層基板101内には、導体層112によってインダクタ115やキャパシタ116が形成されている。
【0056】図2は、セラミック多層基板1の表面に対向する弾性表面波素子20の面の構造の一例を示している。図2に示したように、弾性表面波素子20は、圧電基板21と、この圧電基板21の一方の面に形成された櫛形電極22および導体パターン23と、導体パターン23の端部に形成された端子24A,24B,24Gとを有している。端子24A,24B,24Gは、金等よりなる突起状の接続電極(バンプ)で構成されている。端子24Aは入力端子であり、端子24Bは出力端子であり、4つの端子24Gは接地用端子である。導体パターン23は櫛形電極22に接続されている。弾性表面波素子20は、櫛形電極22によって発生される弾性表面波を基本動作に使用する素子であり、本実施の形態ではバンドパスフィルタとしての機能を有する。
【0057】図1に示したように、セラミック多層基板1の表面には、この表面に搭載される各素子に接続される導体層2,2Gが形成されている。導体層2Gは、弾性表面波素子20の接地用端子24Gに接続される接地導体層であり、導体層2はその他の導体層である。接地導体層2Gは、セラミック多層基板1のビアホール113あるいは側面の端子電極114を経由して、マーザーボード上の接地導体層に接続されるようになっている。
【0058】本実施の形態では、接地導体層2Gは、弾性表面波素子20の直下の領域すなわち弾性表面波素子20に対向する領域を含む範囲に配置されている。1つの接地導体層2Gは、1つの弾性表面波素子20における4つの接地用端子24Gに接続されている。また、セラミック多層基板1の内部において、弾性表面波素子20の直下の領域すなわち弾性表面波素子20に対向する領域には、インダクタ115やキャパシタ116等の他の素子が設けられている。
【0059】セラミック多層基板1の表面の弾性表面波素子20に対向する領域における接地導体層2Gの占有率は、50%以上80%以下であることが好ましく、70%以上80%以下であることが更に好ましい。その理由については、後で詳しく説明する。図1には、上記占有率を80%とした例を示している。
【0060】次に、本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールおよびモジュール用多層基板の作用および効果について説明する。
【0061】始めに、2つの比較例の高周波電子回路モジュールを作製してその特性を測定した実験結果について説明する。第1の比較例のモジュールは、セラミック多層基板の表面に弾性表面波素子のパッケージ品を搭載したものである。第2の比較例のモジュールは、セラミック多層基板の表面に、フリップチップボンディングによってベアチップの弾性表面波素子を搭載したものである。いずれの比較例のモジュールとも、回路構成は本実施の形態に係るモジュールと同様である。
【0062】図5は、第1の比較例の高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンとこの表面に搭載される素子の配置とを示している。図5において、ハッチングを施した部分が導体層を表している。第1の比較例の高周波電子回路モジュールは、セラミック多層基板201と、このセラミック多層基板201の表面に搭載された2つの弾性表面波素子のパッケージ品220とを備えている。セラミック多層基板201の表面には、この表面に搭載される各素子に接続される導体層202,202Gが形成されている。導体層202Gは、パッケージ品220の接地用端子に接続される接地導体層であり、導体層202はその他の導体層である。導体層202Gは、パッケージ品220の接地用端子毎に設けられている。図5に示したモジュールのその他の構成は、図1に示したモジュールと同様である。
【0063】図6は、第2の比較例の高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンとこの表面に搭載される素子の配置とを示している。図6において、ハッチングを施した部分が導体層を表している。第2の比較例の高周波電子回路モジュールは、セラミック多層基板301と、このセラミック多層基板301の表面に搭載された2つのベアチップの弾性表面波素子20とを備えている。セラミック多層基板301の表面には、この表面に搭載される各素子に接続される導体層302,302Gが形成されている。導体層302Gは、弾性表面波素子20の接地用端子に接続される接地導体層であり、導体層302はその他の導体層である。導体層302Gは、弾性表面波素子20の接地用端子毎に設けられている。また、導体層302Gは、弾性表面波素子20に対向する領域内では、弾性表面波素子20の接地用端子に接続するための最低限の部分にのみ配置され、大部分は弾性表面波素子20に対向する領域外に配置されている。図6に示したモジュールのその他の構成は、図1に示したモジュールと同様である。
【0064】各比較例において、セラミック多層基板201,301には、アルミナガラス複合セラミックを絶縁層とし、内導体層を15層有するものを用いた。また、セラミック多層基板201,301の外形は、図5および図6における左右方向の長さが約8mm、図5および図6における上下方向の長さが約5mm、厚みが0.8mmである。パッケージ品220の外形は、図5における左右方向の長さが2.5mm、図5における上下方向の長さが2.0mm、厚みが1mmである。ベアチップの弾性表面波素子20の外形は、図6における左右方向の長さが1.3mm、図6における上下方向の長さが0.8mm、厚みが0.35mmである。また、セラミック多層基板201の内部には、各パッケージ品220に対向する領域に、それぞれインダクタとキャパシタを配置した。同様に、セラミック多層基板301の内部には、各弾性表面波素子20に対向する領域に、それぞれインダクタとキャパシタを配置した。第1の比較例と第2の比較例とでは、弾性表面波素子の形態と、セラミック多層基板201,301の表面における導体層のパターンが異なる他は、極力同じになるようにした。
【0065】セラミック多層基板201,301の表面における導体層は、以下のようにして形成した。すなわち、絶縁層上に銀をスクリーン印刷し、その表面をプレスして平坦化した後、焼結処理して、銀の焼結導体よりなる最下層を形成した。次に、この最下層の上に、ニッケルめっきと、金めっきを順に施して、3層構造の導体層を形成した。
【0066】セラミック多層基板201,301の表面における導体層と、ベアチップの弾性表面波素子20以外の素子との接合は、以下のようにして行った。すなわち、導体層における素子との接合部に、はんだペーストを塗布し、その上に各素子を搭載した。次に、素子が搭載されたセラミック多層基板201,301をリフロー炉に通して、はんだの固着を行った。次に、セラミック多層基板201,301および素子に対してプラズマ洗浄を行った。
【0067】一方、セラミック多層基板301の表面における導体層とベアチップの弾性表面波素子20との接合は、以下のようにして行った。すなわち、弾性表面波素子20には、予め、図2に示したように、金スタッドバンプによって端子24A,24B,24Gを形成した。この弾性表面波素子20を、端子24A,24B,24Gが導体層における接合部に接触するように、基板301の表面上に配置し、弾性表面波素子20側から適当な荷重を掛けながら超音波を印加して、弾性表面波素子20の金バンプと基板301の導体層の表面の金との接合を行った。
【0068】次に、図7を参照して、第1の比較例と第2の比較例について、弾性表面波素子を用いたバンドパスフィルタの通過帯域特性を測定した結果について説明する。図7には、最も相互干渉の影響の出やすいDCS方式の信号受信側のバンドパスフィルタ37の周波数と挿入損失との関係を示している。図7において、点線は弾性表面波素子のパッケージ品220を用いた第1の比較例の場合の特性を示し、実線はベアチップの弾性表面波素子20を用いた第2の比較例の場合の特性を示している。図7から分かるように、第2の比較例の場合には通過帯域付近にスプリアスが認められる。このスプリアスは、パッケージ品220を用いた場合や、弾性表面波素子の直下に素子を内蔵しない場合には認められない。従って、このスプリアスは、ベアチップの弾性表面波素子20とその直下に内蔵された素子との間で、相互干渉が生じた結果現れたものと考えられる。
【0069】また、図7から、第2の比較例の場合には、帯域外における減衰が小さいことが分かる。これは、多層基板301の内部で電位が複雑に分布して、弾性表面波素子20の接地が完全に行われていないことを示す。
【0070】次に、本実施の形態に係る高周波電子回路モジュールおよびモジュール用多層基板において、セラミック多層基板1の表面の弾性表面波素子20に対向する領域における接地導体層2Gの占有率の好ましい範囲を求めるために行った実験の結果について説明する。図8R>8は、この実験で用いた高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンとこの表面に搭載される素子の配置とを示している。図8において、ハッチングを施した部分が導体層を表している。この実験では、図8に示したように、セラミック多層基板1の表面の弾性表面波素子20に対向する領域に配置された接地導体層2Gのうち、弾性表面波素子20の端子との接続部を除いた部分の幅Wを変えることによって、上記占有率が40%、50%、60%、70%、80%の5種類となるモジュールを作製して、それらの特性を比較した。なお、この実験で用いたモジュールの作製方法は、第2の比較例と同様である。
【0071】図9は、上記の5種類のモジュールについて、DCS方式の信号受信側のバンドパスフィルタ37の通過帯域特性、すなわち周波数と挿入損失との関係を求めた結果を示している。図9には、これらとの比較のために、符号PKGで示した線によって、第1の比較例の特性も示している。
【0072】図9から、占有率が50%に満たないと、スプリアスが著しく増大し、また、帯域外の減衰が著しく阻害されることが分かる。また、占有率が70%以上になると、第1の比較例に比べて帯域外の減衰が大きくなることが分かる。一方、占有率を80%よりも大きく取ろうとすると、多層基板1の表面の導電層と弾性表面波素子20の端子との接続部を著しく小さくすることになり、金−金の接合部が不安定になる。従って、占有率の上限は80%となった。これらのことから、占有率は、50%以上80%以下であることが好ましく、70%以上80%以下であることが更に好ましい。
【0073】以上説明したように、本実施の形態では、セラミック多層基板1は、その表面において弾性表面波素子20に対向する領域に配置され、弾性表面波素子20の接地用端子24Gに接続された接地導体層2Gを有している。セラミック多層基板1は、更に、その内部において弾性表面波素子20に対向する領域に配置された他の素子を有している。従って、本実施の形態によれば、弾性表面波素子20とセラミック多層基板1内の素子との間に配置された接地導体層2Gによって、弾性表面波素子20とセラミック多層基板1内の素子とを電磁気的に分離でき、これにより弾性表面波素子20とセラミック多層基板1内の素子との間における相互干渉を抑制することができる。従って、本実施の形態によれば、ベアチップの弾性表面波素子20をセラミック多層基板1に対してフリップチップボンディングによって搭載することによりモジュールの低背化および小型化が可能になると共に、セラミック多層基板1の内部において弾性表面波素子20に対向する領域にも他の素子を配置することができることからセラミック多層基板1の小型化が可能になる。その結果、本実施の形態によれば、モジュールの低背化および小型化が可能になる。
【0074】また、本実施の形態によれば、弾性表面波素子20の4つの接地用端子24Gは、セラミック多層基板1の表面において弾性表面波素子20に対向する領域内に配置された接地導体層2Gに対してほぼ最短の距離で接続されるので、接地用端子24Gと接地導体層2Gとの接続関係が均一化され、これにより弾性表面波素子20において所望の帯域外の減衰を大きくすることができる。
【0075】これらのことから、本実施の形態によれば、モジュールの特性の劣化を防ぎながらモジュールの小型化が可能になる。
【0076】また、本実施の形態において、セラミック多層基板1の表面の弾性表面波素子20に対向する領域における接地導体層2Gの占有率を、50%以上80%以下、好ましくは70%以上80%以下とした場合には、モジュールの特性の劣化をより確実に防止することができる。
【0077】また、本実施の形態では、多層基板としてセラミック多層基板1を用いたので、多層基板内に、低損失の素子を寸法精度よく形成することができる。
【0078】なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施の形態では、本発明を携帯電話のアンテナスイッチモジュールに適用した例を示したが、本発明は、多層基板と弾性表面波素子を含むものであれば、他のモジュールにも適用することができる。また、多層基板はセラミック多層基板に限らず、絶縁層に他の材料を用いた多層基板でもよい。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように請求項1ないし4のいずれかに記載の高周波電子回路モジュールによれば、弾性表面波素子と多層基板内の素子との間に配置された接地導体層によって、弾性表面波素子と多層基板内の素子とを電磁気的に分離でき、これにより弾性表面波素子と多層基板内の素子との間における相互干渉を抑制することができる。また、本発明によれば、弾性表面波素子の接地用端子は、多層基板の表面において弾性表面波素子に対向する領域内に配置された接地導体層に対してほぼ最短の距離で接続されるので、接地用端子と接地導体層との接続関係が均一化され、これにより弾性表面波素子において所望の帯域外の減衰を大きくすることができる。これらのことから、本発明によれば、モジュールの特性の劣化を防ぎながらモジュールの小型化が可能になるという効果を奏する。
【0080】また、請求項2記載の高周波電子回路モジュールによれば、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率を、50%以上80%以下としたので、モジュールの特性の劣化をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0081】また、請求項3記載の高周波電子回路モジュールによれば、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率を、70%以上80%以下としたので、モジュールの特性の劣化をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0082】また、請求項4記載の高周波電子回路モジュールによれば、多層基板を、セラミックで形成された複数の絶縁層を有するセラミック多層基板としたので、多層基板内に、低損失の素子を寸法精度よく形成することができるという効果を奏する。
【0083】また、請求項5ないし8のいずれかに記載のモジュール用多層基板によれば、弾性表面波素子と多層基板内の素子との間に配置された接地導体層によって、弾性表面波素子と多層基板内の素子とを電磁気的に分離でき、これにより弾性表面波素子と多層基板内の素子との間における相互干渉を抑制することができる。また、本発明によれば、弾性表面波素子の接地用端子は、多層基板の表面において弾性表面波素子に対向する領域内に配置された接地導体層に対してほぼ最短の距離で接続されるので、接地用端子と接地導体層との接続関係が均一化され、これにより弾性表面波素子において所望の帯域外の減衰を大きくすることができる。これらのことから、本発明によれば、モジュールの特性の劣化を防ぎながらモジュールの小型化が可能になるという効果を奏する。
【0084】また、請求項6記載のモジュール用多層基板によれば、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率を、50%以上80%以下としたので、モジュールの特性の劣化をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0085】また、請求項7記載のモジュール用多層基板によれば、多層基板の表面の弾性表面波素子に対向する領域における接地導体層の占有率を、70%以上80%以下としたので、モジュールの特性の劣化をより確実に防止することができるという効果を奏する。
【0086】また、請求項8記載のモジュール用多層基板によれば、セラミックで形成された複数の絶縁層を有するので、多層基板内に、低損失の素子を寸法精度よく形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンと素子の配置とを示す説明図である。
【図2】図1に示したセラミック多層基板の表面に対向する弾性表面波素子の面の構造の一例を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態が適用されるデュアルバンド型携帯電話における高周波回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図3におけるアンテナスイッチモジュールの回路構成の一例を示す回路図である。
【図5】第1の比較例の高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンと素子の配置とを示す説明図である。
【図6】第2の比較例の高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンと素子の配置とを示す説明図である。
【図7】第1の比較例と第2の比較例におけるバンドパスフィルタの通過帯域特性を示す特性図である。
【図8】本実施の形態における接地導体層の占有率の好ましい範囲を求めるための実験で用いた高周波電子回路モジュールのセラミック多層基板の表面における導体層のパターンと素子の配置とを示す説明図である。
【図9】図8に示した高周波電子回路モジュールにおけるバンドパスフィルタの通過帯域特性を示す特性図である。
【図10】携帯電話におけるアンテナスイッチ部のモジュールの一例を示す断面図である。
【図11】弾性表面波素子のパッケージ品の構造の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…セラミック多層基板、2…導体層、2G…接地導体層、20…弾性表面波素子、21…圧電基板、22…櫛形電極、23…導体パターン、24A…入力端子、24B…出力端子、24G…接地用端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多層基板と、前記多層基板の表面にフリップチップボンディングによって搭載された弾性表面波素子とを備えた高周波電子回路モジュールであって、前記弾性表面波素子は、前記多層基板の表面に対向する面に形成された接地用端子を有し、前記多層基板は、その表面において前記弾性表面波素子に対向する領域に配置され、前記弾性表面波素子の接地用端子に接続された接地導体層を有し、前記多層基板は、更に、その内部において前記弾性表面波素子に対向する領域に配置された他の素子を有することを特徴とする高周波電子回路モジュール。
【請求項2】 前記多層基板の表面の前記弾性表面波素子に対向する領域における前記接地導体層の占有率は、50%以上80%以下であることを特徴とする請求項1記載の高周波電子回路モジュール。
【請求項3】 前記多層基板の表面の前記弾性表面波素子に対向する領域における前記接地導体層の占有率は、70%以上80%以下であることを特徴とする請求項1記載の高周波電子回路モジュール。
【請求項4】 前記多層基板は、セラミックで形成された複数の絶縁層を有するセラミック多層基板であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の高周波電子回路モジュール。
【請求項5】 弾性表面波素子が搭載されて高周波電子回路モジュールを構成するモジュール用多層基板であって、前記弾性表面波素子がフリップチップボンディングによって搭載される表面において前記弾性表面波素子に対向する領域に配置され、前記弾性表面波素子の接地用端子に接続される接地導体層と、内部において前記弾性表面波素子に対向する領域に配置された他の素子とを有することを特徴とするモジュール用多層基板。
【請求項6】 前記表面の前記弾性表面波素子に対向する領域における前記接地導体層の占有率は、50%以上80%以下であることを特徴とする請求項5記載のモジュール用多層基板。
【請求項7】 前記表面の前記弾性表面波素子に対向する領域における前記接地導体層の占有率は、70%以上80%以下であることを特徴とする請求項5記載のモジュール用多層基板。
【請求項8】 セラミックで形成された複数の絶縁層を有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のモジュール用多層基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2002−158449(P2002−158449A)
【公開日】平成14年5月31日(2002.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−355671(P2000−355671)
【出願日】平成12年11月22日(2000.11.22)
【出願人】(000003067)ティーディーケイ株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】