説明

高圧燃料供給ポンプおよびその製造方法

【課題】
本発明の目的は、高圧燃料供給ポンプにおける筒状部で嵌合される2つの金属部品の接合構造として、カシメ(圧入も含む),ネジ締め,レーザ溶接より接合作業が短時間で、接合強度,流体シール性が十分得られ、熱による金属材料の組成変化がない接合構造及び方法を提供することにある。
【解決手段】
高圧燃料供給ポンプの「ポンプハウジングとシリンダ」,「ポンプハウジングと取付けフランジ」,「ポンプハウジングと吸入あるいは吐出ジョイント」,「ポンプハウジングと脈動吸収ダンパ機構のダンパカバー」,「ポンプハウジングとリリーフ弁機構」さらには、「ポンプハウジングと電磁駆動型吸入弁機構」との間に電流を流しながら、両者を相対的に加圧することで接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と相対的加圧によって接合面部に拡散接合領域を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料ポンプおよびその製造方法に関し、特に環状あるいは筒状部で2つの金属部材を嵌合し、嵌合部で溶接接合する接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
筒状部の孔に筒状の部材を嵌合して2つの金属部材を溶接接合する技術としては特開2005−342782号公報,特開2004−17048号公報が知られている。
【0003】
これらによれば2つの金属を嵌合部において加圧しながら電流を流して接合することが記載されている。
【0004】
一方、高圧燃料ポンプのシリンダとポンプハウジングの接合構造は、両者のメタル接触によるシールを形成するための締め付け用具による固定(WO2002/055881国際公開パンフレット)や、圧入でシリンダ外周においてシールした後、シリンダ端部をポンプハウジングにカシメて固定する構造(WO2006/069819国際公開パンフレット)、さらには、環状あるいは筒状の2つの金属部材を、嵌合部において全周をレーザ溶接によって接合する技術(特開2005−279778号公報)が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−342782号公報
【特許文献2】特開2004−17048号公報
【特許文献3】WO2002/055881国際公開パンフレット
【特許文献4】WO2006/069819国際公開パンフレット
【特許文献5】特開2005−279778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧燃料供給ポンプにおいては、例えばシリンダとポンプハウジングのように、2つの筒状部材を嵌め合わせて、両者を接合する箇所がいくつも存在する。従来これら接合箇所には、カシメ,ネジ締めあるいはレーザ溶接などの接合構造が採用されていた。しかし、これらの接合構造では流体シール性が不十分であるとか、接合強度が不十分でああるとか、特にレーザの場合は熱によって材料自体の組成が変化し、接合前後で磁気特性が不作為に変化するので磁気回路の部分には不向きであるとか、また接合前後で熱変形による部材の寸法変化が起こり、初期の設計寸法が維持できないといった問題がある。
【0007】
本発明の目的は、高圧燃料供給ポンプにおける筒状部で嵌合される2つの金属部品の接合構造として、カシメ(圧入も含む),ネジ締め,レーザ溶接より接合作業が短時間で、接合強度,流体シール性が十分得られ、熱による金属材料の組成変化がない接合構造及び方法を提供することにある。
【0008】
具体的には、高圧燃料供給ポンプの「ポンプハウジングとシリンダ」,「ポンプハウジングと取付けフランジ」,「ポンプハウジングと吸入あるいは吐出ジョイント」,「ポンプハウジングと脈動吸収ダンパ機構のダンパカバー」,「ポンプハウジングとリリーフ弁機構」さらには、「ポンプハウジングと電磁駆動型吸入弁機構」との接合部に用いて好適な接合構造及び方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため日本発明は、
1.ポンプハウジングとポンプハウジングに形成した孔に嵌合されるシリンダとの接合部にシリンダの中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。ポンプハウジングの孔に嵌合される固定リングによって間接的にシリンダをポンプハウジングに固定する場合は、上記接合面はポンプハウジングと固定リングとの間に形成される。
【0010】
この接合部はポンプハウジングとシリンダ、ポンプハウジングと固定リングに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【0011】
2.取付けフランジとの取付けフランジに形成した孔に嵌合されるポンプハウジングの円筒部との接合部に円筒部の中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。
【0012】
この接合部は取付けフランジとポンプハウジングに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【0013】
3.ポンプハウジングと吸入あるいは吐出ジョイントとの接合部に吸入あるいは吐出ジョイントの中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。
【0014】
この接合部はポンプハウジングと吸入あるいは吐出ジョイントに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【0015】
4.ポンプハウジングの円筒外壁部と脈動吸収ダンパ機構のダンパカバーとの接合部に円筒外壁部の中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。
【0016】
この接合部はポンプハウジングと吸入あるいは吐出ジョイントに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【0017】
5.ポンプハウジングとリリーフ弁機構のハウジングとの接合部にリリーフ弁機構のハウジングの中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。
【0018】
この接合部はポンプハウジングとリリーフ弁機構のハウジングに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【0019】
6.ポンプハウジングと電磁駆動型吸入弁機構のハウジングとの接合部に電磁駆動型吸入弁機構のハウジングの中心軸線に対して傾斜を有する両金属の拡散接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されるように構成した。
【0020】
この接合部はポンプハウジングと電磁駆動型吸入弁機構のハウジングに電圧を印加して接合面に電流を流し、この電流で接合面周囲を加熱した状態で、軸方向に両部材を相対的に加圧することで形成される。
【発明の効果】
【0021】
上記のように構成した本発明によれば、
1.ポンプハウジングとシリンダ、ポンプハウジングと固定リングの傾斜した両金属の拡散接合面は加圧室と大気との間の燃料漏洩通路を遮断するので、ポンプハウジングとシリンダ、ポンプハウジングと固定リングの接合機能だけでなくシール機能を同時に達成できるという効果がある。
【0022】
高圧燃料供給ポンプの製造方法としては傾斜接合面に向かって相対的に2つの部材を加圧しながら両部材間に流れる電流によって両部材を加圧(溶融しない程度に)して塑性流動を促進するので軸ポンプハウジングとシリンダの軸方向への相対的押込み量を大きくでき、冷却後に塑性流動領域に蓄えられた半径方向の反発力を高めることができるので接合面に大きな接合力を得ることができる。また、接合面の境界においては、両金属が互いに拡散して食い込み合っているので、接合面での摩擦抵抗が十分に高く、接合面がすべることがない。そして、両金属の拡散による食い込みは接合面が傾斜していること共同して加圧燃料と大気との間をシールするのに十分なシール距離を確保するのに役立っている。
【0023】
2.ポンプハウジングを設置部材に取付けるための取付けフランジとの傾斜溶接接合部に形成された両金属の拡散接合面とその両側を挟む塑性流動層がレーザ溶接よりはるかに広い溶接接合面積が得られ、振動に対して強固な接合力が得られる。熱による溶融を伴わない拡散接合領域は金属材料を熱劣化させることがない。
【0024】
高圧燃料供給ポンプの製造方法としては、レーザ溶接では熱変形によってポンプの中心位置とエンジンボディへの取付け用の孔の中心とが溶接後に不作為に変化する問題があるが、本発明の方法では接合面は金属の溶融温度のような高温状態にはならないし、接合時に相対的に加圧する際に自動調芯効果が得られるので、溶接後のポンプの中心位置と取付け用の孔の中心位置までの寸法が設計時のままの寸法にできる利点がある。
【0025】
なお、押し込み両規制面を設けるとこの当接面で、ポンプの首振り振動を支えることができ、さらに振動に強くなる。
【0026】
3.ポンプハウジングに流体を導入する吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとの傾斜した拡散接合による溶接接合部が内部流体と大気との間のシール部を形成するので、特別なシール機構を必要せず、そのシール面積もレーザ溶接より大きいので、シールの信頼性が高いという利点がある。
【0027】
高圧燃料供給ポンプの製造方法としては、溶接治具にセットした後、接合完了までの時間がレーザ溶接より短く、生産性が良い。
【0028】
4.ダンパカバーとポンプハウジングとの溶接接合部がポンプハウジングの円筒外壁部の中心軸線に対して傾斜する両金属の拡散接合面が内部流体と大気との間のシール部を形成することができる。
【0029】
溶接接合時の加圧力がダンパ室内部に配置されたダンパに保持部材を介して伝わり、この加圧力によってダンパがポンプハウジングに押し付けられて保持される。
【0030】
レーザ溶接のように溶接部が高温にならないので、熱ひずみによって溶接前と溶接後とで、軸方向あるいは径方向の寸法が変化することがなく、両者の軸方向の寸法は、溶接時の加圧による押し込み量を管理することで、正確に出すことができる。また刑法この寸法は加圧時に両者の中心軸を一致させるようにして押し込むことによって自動的に求心作用が働き両者の中心軸は一致する。
【0031】
また、熱ひずみがないので、ダンパを抑える力が溶接前と溶接後で変化しないという利点もある。
【0032】
5.ポンプハウジングとリリーフ弁機構のハウジングとの接合部に形成された傾斜を有する両金属の拡散接合面は燃料の降雨圧部と低圧部とをシールするシール機構として機能するので、他にシール機構を設ける必要がないという利点がある。圧入によるシールとは異なり、シール形成時(接合時)の加圧力は小さくてすむのでシール形成時に内部通路が変形するような2次的な問題が発生することがなく歩留まりが良い。
【0033】
また、その接合時に、自動的にポンプハウジングの孔の中心に対して求心作用が働くので、接合後に、流体の流れが当初の設計値からずれることがないという利点もある。
【0034】
6.ポンプハウジングと電磁駆動型吸入弁機構のハウジングとの接合部に形成される傾斜を有する両金属の拡散接合面は内部の燃料と大気との間のシール機構としても機能するという利点を有する。
【0035】
また、その接合時に、自動的にポンプハウジングの孔の中心に対して電磁駆動型吸入弁機構の中心軸が自動的に求心されるので、接合後に吸入弁と弁座との位置ずれがないという利点もある。
【0036】
さらに、溶接接合時の加圧力によって電磁駆動型吸入弁機構のハウジングの先端を、加圧室の入口の周囲に押し付けることで、加圧室と低圧燃料室との間のシールを達成できるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【0038】
図1は本発明が実施される高圧燃料供給ポンプの全体を示す縦断面図である。
【0039】
図2は本発明が実施される高圧燃料供給ポンプを用いた燃料供給システムの一実施例を示すシステム図である。
【0040】
ポンプハウジング1には、燃料を吸入通路(低圧通路)に導入する吸入ジョイント10,燃料を高圧通路に送り出す吐出ジョイント11が接合されている。
【0041】
吸入ジョイント10から吐出ジョイント11に至る燃料通路の途中に燃料を加圧する加圧室12が形成されている。
【0042】
加圧室12はポンプハウジング1に形成された窪み部によって形成される。加圧室12を形成する窪み部は筒状面1Sを有する。この筒状面1Sは直径の異なる複数の筒状部を備えることが許される。
【0043】
吐出ジョイント11には吐出弁6が設けられている。吐出弁6はばね6aにて加圧室12の吐出口を閉じる方向に付勢され、いわゆる燃料の流通方向を制限する逆止弁を構成している。
【0044】
ポンプハウジング1の周壁の一部に形成された筒状の孔200Hには電磁駆動型吸入弁機構200の一部が挿入され、電磁駆動型吸入弁機構200の外周面と筒状の孔200Hとの間に接合面が形成されている。この接合面については図13,図14に基づき後で詳細に説明する。
【0045】
電磁駆動型吸入弁機構200が取付けられることによって密封された筒状の孔200Hは吸入室10aとして構成されている。
【0046】
電磁駆動型吸入弁機構200には先端に吸入弁203が一体化された,プランジャロッド201を備える。プランジャロッド201はランジャロッド201が挿通するようにして、プランジャロッドの周りに配置されたばね202によって常に、吸入弁203が電磁駆動型吸入弁機構200の先端に形成された弁シート203Sに接触する方向に付勢されている(詳細構成は後述する)。
【0047】
このため、プランジャロッド201は、電磁駆動型吸入弁機構200がOFF時(電磁コイル204に通電されていないとき)には、ばね202によって、吸入弁203を閉弁する方向に付勢力がかけられている。従って電磁駆動型吸入弁機構200がOFF時には、吸入弁203に他の力が作用しなければ図1のように、プランジャロッド201、吸入弁203は閉弁位置に維持される。
【0048】
燃料は、燃料タンク50から低圧ポンプ51によってポンプハウジング1の燃料導入口としての吸入ジョイント10へ導かれている。
【0049】
この燃料の圧力はプレッシャレギュレータ52によって一定の圧力に調圧される。
【0050】
コモンレール53には、インジェクタ54,圧力センサ56が装着されている。インジェクタ54は、エンジンの気筒数にあわせて装着されており、エンジンコントロールユニット(ECU)60の信号に応じてコモンレール53に送られてきた高圧燃料を各気筒に噴射する。
【0051】
また、ポンプハウジング1に内蔵されたリリーフ弁機構のリリーフ弁15は、コモンレール53内の圧力が所定値を超えたとき開弁して余剰高圧燃料を吐出弁6の上流側に戻す。実施例では低圧通路に設けられた後述するダンパ室DSに戻すものを開示したが、吐出弁6の上流であれば加圧室12でも吸入ジョイント10から吸入弁203までの低圧通路のどこに戻しても良い。このリリーフ弁15が作動することで高圧通路配管系の破損を防止することができる。
【0052】
ピストンプランジャ2の下端に設けられたリフタ3は、ばね4にてカム7に圧接されている。ピストンプランジャ2は、シリンダ20に摺動可能に保持されており、エンジンカムシャフト等により回転されるカム7により、往復運動して加圧室12内の容積変化させる。
【0053】
シリンダ20はその外周がシリンダホルダ21で保持され、シリンダホルダ21をポンプハウジング1に接合することによってポンプハウジング1に固定される(この接合構造については後で詳しく説明する。)。
【0054】
シリンダホルダ21にはピストンプランジャ2の外周をシールするプランジャシール5が装着されている。
【0055】
ピストンプランジャ2の圧縮工程中に吸入弁203が閉弁すると、加圧室12内圧力が上昇し、これにより吐出弁6が自動的に開弁し、加圧室内の出加圧した燃料をコモンレール53に放出する。
【0056】
吸入弁203はピストンプランジャ2が上死点位置から下死点位置に向かうとき加圧室12の圧力が吸入弁203の上流側に位置する低圧通路の圧力より低くなって、その差圧がばね202の力より大きくなったときに開弁する。
【0057】
通常の動作においては、加圧室12の圧力が吸入弁203の上流側に位置する低圧通路の圧力より低くなって、その差圧がばね202の力より大きくなったときにこの差圧によってプランジャロッド201は図面右側に押し出され、吸入弁203と弁シート203Sが分離され開弁する。この状態において電磁コイル204に通電すれば、弱い電流でプランジャロッド201の図面右側方向への移動を維持あるいは助成できる。
【0058】
しかし、電磁駆動型吸入弁機構200が通電されれば、ばね202の付勢力以上の電磁力が発生するよう構成されているので、吸入弁203の前後の差圧がばね202の力より大きくならなくとも電磁駆動型吸入弁機構200が通電されれば、プランジャロッド201は図面右側に押し出され、吸入弁203と弁シート203Sが分離され、開弁状態にすることができる。
【0059】
電磁駆動型吸入弁機構200が無通電状態(非通電状態と呼ぶこともある)のときは、ばね202の付勢力により、プランジャロッド201は弁シート203Sに押し付けられ、閉弁状態にある。
【0060】
電磁駆動型吸入弁機構200はピストンプランジャ2の吸入工程で通電され加圧室12に燃料を送り込み、圧縮工程で無通電とされ、加圧室12の容積減少分の燃料をコモンレール53へ圧送させる。
【0061】
このとき、圧縮工程で電磁駆動型吸入弁機構200通電状態を維持すると吸入弁203は開いたままとなり、加圧室12の圧力は吸入弁203の上流の低圧通路の圧力とほぼ同等の低圧状態を保つため、加圧室12の容積減少分の燃料は吸入弁の上流側へ戻される。これを溢流工程と呼ぶこともある。
【0062】
従って、圧縮工程の途中で電磁コイル204を通電状態から非通電状態に切替えれば、このときから、コモンレール53へ燃料が圧送され始めるのでコモンレールへの吐出量を制御することができる。
【0063】
かくして、ピストンプランジャ2の往復運動に伴い、燃料は吸入ジョイント10から加圧室12へ吸入され、加圧室12からコモンレール53への吐出あるいは、加圧室12から吸入通路へ戻される3つの工程を繰り返す。
【0064】
ここで、加圧室12から吸入通路へ燃料が戻されると、吸入通路の燃料圧力に脈動が発生する。この低圧通路の脈動を吸収するために、吸入ジョイント10から吸入室10aまでの通路の途中にはダンパ室10bが形成されており、この中に二枚式金属ダイヤフラムダンパ80がダンパカバー40とダンパホルダ30に挟持されて収納されている。
【0065】
ダンパカバー40の外周は筒状に構成され、ポンプハウジング1の筒状部に嵌合され溶接接合により固定されている。
【0066】
二枚式金属ダイヤフラムダンパ80は、上下一対の金属ダイアフラム80Aと80Bとを突合せその際外周部を全周に亘って溶接して内部をシールしている。この溶接接合構造については後で詳細に説明する。
【0067】
二枚の金属ダイアフラム80Aと80Bによって形成された中空部にはアルゴンのような不活性ガスが封入されており、外部の圧力変化に応じてこの中空部が体積変化をすることによって、脈動減衰機能を発揮するものである。
【0068】
当該高圧燃料供給ポンプはポンプハウジング1に接合された取付けフランジ8をエンジンの所定の位置にネジ9によりねじ止めすることで固定されている。
【0069】
取付けフランジ8には、ピストンプランジャ2の圧縮工程で発生する筒内圧力の反力と、スプリング4の圧縮反力と、充填された燃料の重量を含むポンプ総重量(エンジン振動による振動加速度分も含む)による外力が作用するため、これらに対し充分な強度が必要とされる。取付けフランジ8とポンプハウジングとの接合構造については後で、詳細に説明する。
【0070】
次に図3により本発明になる接合構造及び接合方法について説明する。
【0071】
接合される二つの金属部材W1及びW2は上側溶接電極D1,下側溶接電極D2の間に挟まれている。
【0072】
溶接電極D1,D2はプレス機に取付けられ、電気的に溶接トランスに接続される。
【0073】
コンデンサに蓄えられたエネルギーは溶接トランスに放電され、増幅された電流が接合部材W1,W2の接触部に瞬間的に通電される。この通電によって両接合部材W1,W2は発熱し、さらに加圧による摩擦熱により接触界面全面に合金層(拡散層)が形成されて二つの部材W1及びW2が接合される。通電の時間,回数,タイミングは制御装置により制御される。1回の通電時間は1秒以下であり接合部材への入熱を抑えることができ、熱による変形はレーザ溶接に対し大幅に小さくできる。また、拡散接合であるため、たとえば鉄系金属とアルミニウム系金属のような異種金属の接合も可能である。
【0074】
図4は接合される部材の接合前の形状を示す。
【0075】
接合される二つの部材には環状の傾斜面S1及びS2即ち、接合部材W1には凸状の円錐外周面S1が、非接合部材としての接合部材W2の内周には円錐状の凹面S2が形成されている。
【0076】
接合部材W1の外径φDは接合部材W2の内径φdより少し大きくラップ代Lが設けられ、接合時に両者の円錐面(傾斜面)S1及びS2が付合わされる、言い換えれば相対的に押し付けられ、凸状の被接合部材W1が凹状の接合部材W2に押し込まれる。押し込みの初期状態では接合面の傾きはSoで示すように緩やかであるが、押し込まれた後の接合状態では、接合面の傾きは図にSxで示すように急峻になる。これは接合境界面近傍で双方の金属が電流による加熱で軟化して塑性流動を生じた結果である。
【0077】
このとき径方向には周囲の金属が変形を阻止するので、両金属の変形は結果的に押し込み方向にのみ変化し、接合面が押し込み方向にDsで示しように広がり、接合面の傾斜が急峻になり、その面積Dsが大きくなったものである。
【0078】
二つの金属接合部材を加圧して円錐状の接合面で互いを押し付ける際に、加圧力の中心が両接合部材の接合後の中心軸に一致するように調整される。これにより、接合前に両者の中心軸が多少ずれていても両者の円錐傾斜面の中心軸C1及びC2が円錐面の傾斜形状による求心作用で自動的に一致する。
【0079】
接合後の接合部の断面を分析した結果を図15の上部の図面および下図に示す断面拡大顕微鏡写真により説明する。
【0080】
写真に示された接合部材は後述するポプンプハウジング1と取付けフランジ8のテストピースの接合断面観察結果を示す。その材料は図面上下方向に延びる接合部材はポンプハウジング1に用いるJIS規格によるSUS430の丸棒材切削品,図面右方向に延びる接合部材は取付けフランジ8に使用するJIS規格のSUS304板材(模様が異なるのは組成の違いによるものである)である。
【0081】
フェライト系ステンレス(SUS430)はオーステナイト系(SUS304)より粒子が粗いのが特徴である。
【0082】
硬度の違いはJIS規格にある通り、SUS430がHBW183以下、SUS304はHBW187以下である。
【0083】
塑性流動はSUS430だけでなく、SUS304にもはっきりと確認された。
【0084】
しかしSUS304に加工した下端部側の面取りが大きかったこともあって、SUS304の図面下側端部の材料のはみ出し(組成流動によって接合面から押し出された材料)が少ないことが強調されているが、基本的にこの2つの材料においては材料の違い(硬度差,組織の方向性)による流動性の違いがあると思われる。そして、円錐状接合面の径の大きい方に発生した、組成流動によって接合面から押し出された材料を捕獲する溝の形状や押し出し方向を工夫することによって、結果的に両部材の抜け方向に対する抜け止めとなる。
【0085】
このテストピースでは、アプセット量(圧入部の押込み深さ)が1.5mm以上あれば、高圧燃料供給ポンプの取付けフランジ部に要求される疲労強度を満足することが確認できた。
【0086】
また、ラップ代L(圧入締め代)は0.3mmを超えると変形が大きすぎることが確認された。
【0087】
通電電圧は負荷(ラップ代,アプセット量,材料)によって変わるが本テストピースでは160V〜300V程度の範囲の電圧を印加した。
【0088】
図15(a),(b)に示すように接合面Wは接合前の円錐面が基本的に維持され、接合面Wを挟んで両側に各接合部材W1,W2の塑性流動層が確認された。この塑性流動層は各接合部材W1,W2の組織の整列方向とは異なり、接合面Wに沿って塑性の流動が起こっている。
【0089】
この塑性流動によってラップ代Lの範囲で接合部材W1が非接合部材W2の内側に喰い込み、その食い込み分だけ軸方向に変位する。具体的には、軸方向に押し付けられることで、両者が接合面で摩擦を伴って滑り込むと同時に各部材の表面が押しつぶされて接合面に沿って塑性流動している。
【0090】
この結果、軸方向に接合面が摩擦を伴って滑りこんだ分だけ、半径方向に圧縮力が蓄えられ、この圧縮力が円錐状の広い接合面に作用することで、接合面に大きな摩擦力を発生し軸方向の抜け止め力として作用していることが確認できた。
【0091】
さらに、両塑性流動層の間に溶融した両金属の混合層が形成されていることが確認できた。この溶融金属混合層は実質的に接合前の両金属の表面に形成されていた接触界面を越えて両金属が互いに拡散接合して複雑に入り組んだ接合面を形成しており、これによってさらに接合面における抜け方向(軸方向)のすべりが生じ難い接合面、つまり大きな摩擦抵抗面を構成している。
【0092】
本発明の接合構造が堅牢であることは以上の2つの理由によるものである。
【0093】
ここで、さらに優れているのは、接合部の金属組成が熱的に破壊されていないことである。つまり、高熱によって接合部が別の金属合金に変化したり、柔らかかった部材が局部的に硬くなったりする傾向が見られないことである。
【0094】
このことは、接合面部において両接合部材の金属的特性、特に電磁気的特性が、接合前後で変化しないことを物語っており、結果的に磁気通路部分の接合構造として、この接合構造が使用できることを示している。
【0095】
さらに、また当該接合部は接合前後の熱による変形がレーザ溶接と比べて少ないことが確認された。
【0096】
これは本接合構造における接合前後の寸法変化(押し込み量や直径)が実質的に両接合部材の加圧のために加えた力の大きさにだけ依存するという効果によるものである。この効果よって熱が引いた後に起こる変形によって接合前後の寸法が予測できなくなるという従来のレーザ溶接に見られた問題を解消できる。
【0097】
また、円錐接合面は小径内側から大径外側にあるいは大径外側から小径内側に至るまで、従来のレーザ溶接より広い接合面が得られるので、流体のシールに対して信頼性が高い。特に溶融金属混合層によって形成される複雑に入り組んだ接合面は流体の漏洩通路をより形成し難くしており、シール性が高い。
【0098】
以上の利点は、以下に説明する高圧燃料供給ポンプのように環状の金属部材同士の多くの接合部を有する装置には有用である。なぜなら、高圧燃料供給ポンプは接合箇所によって流体のシールが必要な接合部、あるいは異なる金属同士の接合部、あるいはまた異なる物理的特性が期待される接合部、さらには環状の大きな溶接面積を有する接合部を有しており、これらのいずれの接合部にも本発明の接合構造が適用できるからである。
【0099】
本発明の実施に供する拡散接合は、接合する金属材料同士を密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、加圧・加熱する溶接の一種である。
【0100】
本法は、接合面に生じる含有金属元素の原子の拡散を利用して接合する方法と定義することができる。
【0101】
JIS(日本工業規格)では、「母材を密着させ、母材の融点以下の温度条件で、塑性変形をできるだけ生じない程度に加圧して、接合面間に生じる原子の拡散を利用して接合する方法」と定義されている。
【0102】
また、拡散接合では、接合の促進の目的で接合界面に、被溶接材(母材)よりも低融点の金属を挟んで接合することも可能である。この挟まれた金属はインサート金属と称し、インサート金属が固相状態で接合する場合と、溶融して接合する場合がある。前者を「固相拡散接合」、後者を「液相拡散接合」あるいはTLP接合(Transient Liquid Phase Diffusion Bonding)と呼ぶ。
【0103】
本明細書における拡散接合は以上のすべての接合方法をさす。
【0104】
実施例の説明では、拡散接合部では、接合界面周囲において、被溶接材のそれぞれが、アプセット方向(押込み方向)に対応して、塑性流動を起こしており、その流動方向も一定に決まっている(接合面に沿った方向)。
【0105】
しかし、接合界面そのものにおいては、被溶接材それぞれが混在したような組織(溶融した金属の混合層)では無く、光学顕微鏡による観察倍率レベルでは被溶接材の境界線がはっきりとしており、接合界面そのものにおいては、被溶接材それぞれに含有されている元素の原子が、お互いに拡散し、結果としてインサート金属を使用しない拡散接合が起こっているものと想定される。
【0106】
インサート金属は接合の促進のために使用されるが、本命最初の実施例では、接合促進のためにインサート金属を使用せず、接合界面での被溶接材の接合界面で、被接合材の含有元素(原子)の拡散による、局所的な押込みによる機械的な変形と、同様に局所的な発熱による金属の軟化によって接合促進するものを特に記載した。
【0107】
本発明の実施に当たってはインサート金属を用いる方法を除外するものではない。
【0108】
以上の実施例の基本的技術の態様を整理すると以下の通りである。
【0109】
実施の態様1
接合部材と非接合部材とが溶接によって接合されるものにおいて、前記両部材の接合面が円錐状の接合面を有し、当該接合面を挟んで、当該接合面に沿う前記両部材の塑性流動領域が形成されている2部材の接合構造。
【0110】
実施の態様2
実施の態様1に記載のものにおいて、前記両部材の塑性流動領域に挟まれた前記接合面を含む領域に前記両部材の拡散接合領域が形成されている2部材の接合構造。
【0111】
実施の態様3
実施の態様1に記載したものにおいて、前記円錐状の接合面の大径側端部もしくは小径側端部の少なくとも一方に当該大径側端部もしくは小径側端部のいずれかが臨む環状空所、環状溝もしくは環状窪みのいずれかを設けた2部材の接合構造。
【0112】
実施の態様4
実施の態様2に記載のものにおいて、前記円錐状の接合面の大径側もしくは小径側端部の少なくとも一方に空所、溝もしくは窪みのいずれかが設けられており、当該空所、溝もしくは窪みには前記拡散接合領域を形成する溶融物の一部が収容されている2部材の接合構造。
【0113】
実施の態様5
実施の態様1に記載したものにおいて、前記接合部材と非接合部材とが、少なくとも前記円錐状の接合面の大径側端部から小径側端部までの区間において、前記円錐状の接合面の中心軸に一致する中心軸を有する2部材の接合構造。
【0114】
実施の態様6
実施の態様1に記載のものにおいて、前記両部材が硬さの異なる部材で形成されており、硬い部材の接合面が凸形状に形成され、柔らかい部材の接合面が凹形状に形成されている2部材の接合構造。
【0115】
次に、図1に示された高圧燃料供給ポンプのそれぞれの接合部における接合構造が具体的にどのように構成されているかを各々説明する。
【0116】
(1)図1に示されるところに従って吸入ジョイント10とポンプハウジング1の接合部10wについて以下説明する。
【0117】
吸入ジョイント10は先端部に円錐面の一部からなる先細の接合面10Mを有する。
【0118】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0119】
具体的には、両者に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面で圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0120】
吸入ジョイント10はポンプハウジング1の挿入穴10Hの底面にその先端が達するまで押し込まれ、これによって押し込み量つまり接合長が決まるよう構成されている。
【0121】
挿入穴10Hの底面が押し込み方向への規制部材として機能するので、接合長は挿入穴10Hの底面までの深さを調整することで調整される。また接合長が長くなればそれだけ接合強度が高くなるので、必要強度に応じて接合長は決定される。
【0122】
この接合構造によれば、接触面全面が拡散接合されているので円錐接合面全面でガソリンをシールすることができ、Oリングやガスケットなしでも十分気密性が確保される。
【0123】
このように、接合強度が部品寸法で管理できるので、管理し易くばらつきが少ないという利点がある。
【0124】
また、上記したように気密性に優れ、しかも生産性に富み、信頼性の高い高圧燃料供給ポンプの吸入ジョイント接合構造が得られる。
【0125】
なお、接合方法は、図3によって説明した方法に従い、吸入ジョイント10とポンプハウジング1とを相互に加圧して押し付けながら電圧を印加することによって行われる。
【0126】
(2)図1に示されるところに従って吐出ジョイント11とポンプハウジング1の接合部11wについて以下説明する。
【0127】
吐出ジョイント11は先端部に円錐面の一部からなる先細の接合面11Mを有する。吐出ジョイント11には吐出弁6、吐出弁6を弁シート6bに押し付けるばね6aなどの逆止弁としての吐出弁機構がアッセンブリされていてポンプハウジング1の挿入穴11Hの円錐状内周面に押し込まれる。
【0128】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0129】
具体的には、両者に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面で圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0130】
吐出ジョイント11の軸方向の位置決めは弁シート6bを有する部材の加圧室側先端が加圧室の吐出開口12Dの周りに押し付けられることで達成される。
【0131】
接合長は吸入ジョイントの場合と同様に挿入穴11Hの深さで管理可能であるが、弁シート6bを有する部材の先端と吐出開口12Dの周りの壁とが当接した状態で挿入穴11Hの底面と接合面11Mの先端との間にわずかな隙間が残るか、もしくはちょうどこの隙間がなくなるように設計される点が吸入ジョイント10とは異なる。しかし、吸入ジョイント10と同様にOリングやガスケットなしに気密性が確保されるので、吐出ジョイントだけでなく吐出弁機構の構造も簡単になる。
【0132】
ここで、ポンプハウジング1には同軸上に吐出ジョイント11の挿入穴11Hと電磁駆動型吸入弁機構200の挿入穴200Hが対向し設けられている。これまでの例に習えば、電磁駆動型吸入弁機構200のボディ外周は全周レーザ溶接でポンプハウジング1に固定されている。
【0133】
レーザ溶接は全周を溶接するためワークを回転する際の回転基準が必要となる。もし吐出ジョイント11が従来のようにレーザ溶接で固定されている場合は、溶接熱による変形で吐出ジョイント11の中心軸は電磁駆動型吸入弁機構200の溶接の回転基準には使用できない。従って、電磁駆動型吸入弁機構200の溶接のための基準加工を別途施す必要がある。
【0134】
本実施例の吐出ジョイント11の接合構造によれば、熱変形が少ないため吐出ジョイント11の中心軸を電磁駆動型吸入弁機構200の溶接基準として使用可能となる。
【0135】
このように、加工箇所を低減することができるため安価な高圧燃料ポンプを提供することができる。
【0136】
(3)次に図1に示されたポンプハウジング1とシリンダ20との接合構造について以下説明する。
【0137】
ポンプハウジング1には加圧室12を形成するための窪み部(凹所)が形成されており、この窪み部(凹所)にはシリンダ20の嵌合穴として機能する円筒壁面部1Sが設けられている。
【0138】
シリンダ20は内部にピストンプランジャ2が摺動する摺動孔を備える筒状体で構成されている。
【0139】
円筒壁面部1Sは加圧室側に直径の小さい円筒壁面部1Sを備え、シリンダ20の直径の小さい筒状部20Aがこの直径の小さい円筒壁面部1Sに挿通されている。シリンダ20には直径の小さい筒状部20Aに引き続いて直径の大きい筒状部20Bが形成されており、直径の小さい筒状部20Aと直径の大きい筒状部20Bの間に環状面が形成されている。
【0140】
一方、ポンプハウジング1の直径の小さい円筒壁面部1Sと直径の大きい円筒壁面部1SRとの間にも環状面が形成されており、ポンプハウジング1のこの環状面とシリンダ20の環状面とは互いに圧接して環状のシール面20Cを形成している。
【0141】
この実施例では、ポンプハウジング1とシリンダ20の接合にはシリンダホルダ21が必要である。
【0142】
シリンダホルダ21は全体的に筒状に形成されており、中心にプランジャ2が貫通する中空円筒を有する。シリンダ20側端部にはこの中空円筒の直径より大径の環状凹所が形成されており、この環状凹所にシリンダ20の加圧室12とは反対側に位置する筒状部20Bの端部外周が圧入されており、シール面20Cよりは低圧の燃料シール部としてシール面21Cを構成している。
【0143】
シリンダホルダ21の加圧室12側先端部は凸状の円錐面に加工されており、ポンプハウジング1の筒状部20Bの図中下端内周部に形成された凹状の円錐面に合致して両者で、円錐状の接合面21Wを形成している。
【0144】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0145】
具体的には、両者に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面で圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0146】
このとき両者を押し付ける力は、接合面21W部において塑性流動領域を生じるだけでなく、両金属の塑性流動によって両者の軸方向の寸法が縮んだ際に、シート面20C、およびシート面21Cに必要な圧接力を発生するように設計されている。
【0147】
そして、シート面20Cは結果として、両接合部材(ポンプハウジング1とシリンダ20)の押し込み量、つまり接合距離を規制する規制部として機能する。
【0148】
ピストンプランジャ2はシリンダ20から突出してシリンダホルダ21の中に挿通されている部分において、シリンダ20に滑合する領域の直径より小さい直径を有する。
【0149】
ピストンプランジャ2の直径の小さい部分の外周にはピストンプランジャ2とシリンダおよび、シール面21Cから漏れてきたガソリンとエンジンルーム側からの潤滑オイルとをシールするプランジャシール5が設けられている。
【0150】
ピストンプランジャ2の加圧室12とは反対側の端部にはリフタ3が固定されており、このリフタ3とシリンダホルダ21との間にはピストンプランジャ2,プランジャシール5およびシリンダホルダ21の径の小さい筒状部の周りを取り巻くばね4が装着されている。このばね5の力はピストンプランジャ2に対してピストンプランジャ2を加圧室12から引き出す方向に常時作用している。ばね4の外側に形成されたシリンダホルダ21の径の大きい筒状部の周りにはOリング21Dが装着されている。
【0151】
エンジンブロックにはエンジンの回転に同期して回転するカム7の位置に対応して、高圧燃料ポンプの取付け孔が設けられており、高圧燃料ポンプのシリンダホルダ21の部分がこの取付け孔に挿通されたとき、リフタ3がカム7に当接すこのときエンジンブロックの取付け孔とシリンダホルダ21との間はOリング21Dでシールされる。
【0152】
高圧燃料供給ポンプは取付けフランジ8に固定されており、この取付けフランジ8がねじ9によってエンジンブロックに締結されることで高圧燃料供給ポンプはエンジンブロックに固定される。
【0153】
ここで、ピストンプランジャ2の外径とシリンダ20内径とのクリアランスは部品交差のばらつきがあるため、組合わせをいくつか変えることで最適なクリアランスになるピストンプランジャ2とシリンダ20の組合せを選択している。
【0154】
本実施例では、シリンダ20をシリンダホルダ21に圧入して両者を仮止めできるので、ピストンプランジャ2とシリンダ20をはじめプランジャシール5,リフタ3,ばね4をあらかじめ部組み(アッセンブリ化)することができる。これによりクリアランスの調整のためにピストンプランジャ2とシリンダ20の組合せを選択するに当たり、ピストンプランジャ2とシリンダ20だけの状態で作業ができるので、ピストンプランジャ2とシリンダ20の組合せを選択する作業がし易くなり組立て工程上の管理もし易くなる。
【0155】
ポンプハウジング1にシリンダホルダ自体をねじ止めすることによってシリンダをポンプハウジング1に固定した従来の技術では、シリンダとシリンダホルダとをあらかじめ固定しておくことができなかった。このため、シリンダをシリンダホルダによってポンプハウジング1に固定した後プランジャシール側からピストンプランジャをシリンダのピストンプランジャ摺動孔に挿通して組合せを選択していたので、ピストンプランジャ2とシリンダ20の組合せを選択する作業がやりにくかった。
【0156】
また、組合せを選択する作業があるため、プランジャシールをシリンダホルダにあらかじめアッセンブリしておこうとすると、プランジャシールの直径はピストンプランジャ2の最も大きい直径部分より小さくできなかった。
【0157】
あるいは、ピストンプランジャ2にシリンダとの摺動部の直径より小さい部分を設ける場合にはシリンダ20の組合せを選択が終わった後プランジャシールを両者間に固定する構成とすることが必要であった。このためピストンプランジャとプランジャシールとシリンダホルダの3者の同軸度を正確に設定することが難しかった。
【0158】
本実施例では上記のような問題が一掃された。
【0159】
さらに、本実施例の接合構造によれば、シリンダホルダ21をポンプハウジング1のシリンダ挿入穴1SRに接合する時にポンプハウジング1とシリンダ挿入穴1SRとの軸心は自動的に一致するので、シリンダ20とシリンダホルダ21の軸心が一致しておれば、シリンダ20の中心軸とポンプハウジング1とシリンダ挿入穴1SRの中心軸も、自動的に一致する。
【0160】
さらに、外部との気密性は接合部21wだけでなく、上記したようにシール面20Cによって2重に確保される。シール面21C側からの漏れはさらにプランジャシール5によってシールされ、この燃料漏れルートは3重シールになっている。
【0161】
このように本実施例によれば、組立て上の管理がし易く、気密性に優れ、生産性及び信頼性の高い高圧燃料供給ポンプを提供できる。
【0162】
図10(a),(b),(c)はポンプハウジング1とシリンダ20との接合部の別の実施例を示す詳細断面図である。
【0163】
シリンダ20はポンプハウジング1と固定リング70の間に挟持されている。固定リング70は外周がポンプハウジングに接合されている。接合部70wは本発明の接合構造となる。ポンプハウジング1には溝104と段差102が設けられ、溢流片90の収納部を形成している。図7と異なる点はシリンダ20を固定リング70で挟持している点である。図7のように直接ポンプハウジング1にシリンダ20を接合する場合、二つの部材に各々設けられた傾斜面同士が加圧されるため、加圧方向とは垂直な方向のベクトル成分が発生し、シリンダ20の外周が圧縮されピストンプランジャ2の摺動面となる内面が小さくなる方向に力を受ける。ピストンプランジャ2とシリンダ20との間には所定のクリアランスを保っているため、シリンダ20の強度によってはクリアランスを確保することが困難な場合も想定される。そこでシリンダ20を直接接合するのではなく、図10(a),(b),(c)のようにシリンダ20を固定リング70で挟持し固定リング70をポンプハウジング1に接合している。これにより、シリンダ20には加圧方向の力だけが作用し、クリアランスが発生する心配がない。
【0164】
以下さらに詳細に説明する。
【0165】
図10(a)に示すように、ポンプハウジング1に設けた孔1Sにシリンダ20の径の細い部分を挿通し、シリンダ20の径の太い部分の外周面をポンプハウジング1の径の大きい孔1SAに圧入嵌合され、両者は仮止めされる。このとき、シリンダ20の径の大きい部分の軸方向段付き端面はポンプハウジング1の段付き面と当接し突き合わせ面1SCを形成する。
【0166】
シリンダ20の径の大きい部分の軸方向段付き端面の突き合わせ面1SBとは反対側の面には固定リング70が当接している。固定リング70は、ポンプハウジング1の内周筒状面において図3、4によって説明した接合構造で接合されている。
【0167】
溶接接合時の押し込み量を調節することで、突き合わせ面1SB,1SCにおける圧接力が調整される。この圧接力は、加圧室と大気との間のシールを形成する際の必要な加圧力に調整される。
【0168】
固定リング70とポンプハウジング1の傾斜した接合面70Wに形成された拡散接合面部においても加圧室と大気との間のシールを構成している。接合面70Wの径の小さい側の端部にはポンプハウジング1に設けた溝によって空所104が形成されており、接合時の塑性流動物としての溢流片が捕獲されている。また、この空所104は突き合わせ面1SCから燃料が万が一漏れてきた場合、その燃料をこの空所104に捕獲して外部に排出しないように機能する。
【0169】
この実施例では、図6,図11に示す実施例と同様プランジャシールはプランジャシールホルダに収納され、ポンプハウジング1のしりんだ嵌合孔に引き続く大径孔部の内周部に図3,図4によって説明した接合構造で、設どうされ、接合部で内部と大気との間をシールしている。このプランジャシールホルダはリフタに設けられたばねの保持にも利用される。
【0170】
(4)次にダンパカバー40とポンプハウジング1との間の接合構造について図1および図2に示すところにより説明する。
【0171】
ダンパ室DSはポンプハウジング1の上面外壁部に形成された環状の窪みの外周部にダンパカバー40の筒状側壁の下端部を溶接接合することで形成される。
【0172】
ダンパ室DS内には弾性を有する皿状のダンパホルダ30がポンプハウジング1の上壁面に載置されており、ダンパホルダ30の上ふちに二枚式金属ダイヤフラムダンパ80が載置されている。
【0173】
二枚式金属ダイヤフラムダンパ80は上下一対の金属ダイアフラム80Aと80Bとから構成されている。二枚の金属ダイアフラム80Aと80Bの外周は全周で溶接80Cされており、両者の間に形成された空間80Sにはアルゴンのような不活性ガスが封入されており、周囲の圧力変化によって伸縮可能に構成されている。
【0174】
金属ダイアフラム80Aとダンパカバー40との間の燃料通路80Uは二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の外周縁とダンパカバー40との間に形成された通路80Pで燃料通路としてのダンパ室10bとつながっており、さらに、金属ダイアフラム80Aとダンパホルダ30との間の燃料通路80Dとダンパ室10bとはダンパホルダ30に設けられた孔30Hでつながっている。
【0175】
ダンパカバー40の上面には同一円周状に複数の内側突出部40Aが設けられており、この内側突出部40Aが二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の溶接部80Cより内側で二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の上側の環状縁部に当接している。
【0176】
一方ダンパホルダ30の上端縁部が二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の溶接部80Cより内側で二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の下側の環状縁部に当接している。
【0177】
かくして二枚式金属ダイヤフラムダンパ80は環状縁部の上下面で挟み付けられている。接合部40wはポンプハウジング1の外周端部に凸状の円錐状接合面が形成されており、ダンパカバー40の下端内周面にはこの凸状の円錐状接合面に合致する凹状の円錐状接合面が形成されている。
【0178】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0179】
具体的には、ポンプハウジング1とダンパカバー40とに異なる極性の電極を接続し、ポンプハウジング1をダンパカバー40に押し付けながら電圧を印加することで接合される。
【0180】
ポンプハウジング1をダンパカバー40に押し付ける力は内側突出部40Aの部分で二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の上側の環状縁部を押し付ける力になる。この力強さはポンプハウジング1にダンパカバー40が接合された後も、内側突出部40Aとダンパホルダ30の上端縁部との間に二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の環状縁部を上下から挟み付けて保持できる強さになるように考慮されている。
【0181】
本実施例によれば、ダンパカバー40を加圧している途中で通電し拡散接合しているため二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の挟持力を十分に維持することが可能で、気密性も確保できる。
【0182】
従来のレーザ溶接の場合は溶接後の熱変形の方向により歪が開放されて二枚式金属ダイヤフラムダンパ80の環状縁部を上下から挟み付ける力が弱くなる可能性があるため、溶接後に継ぎ手形状による変形モード解析が必要あったが、本実施例になる接合構造によれこのような問題が一掃される。
【0183】
このように、ダンパ機構の設計工数低減と安定したダンパ挟持力が確保でき、気密性に優れ、生産性及び信頼性の高い高圧燃料供給ポンプを提供することができる。
【0184】
(5)次に図11(a)および図11(a)のR枠部拡大断面図(b)に示すところにより、ポンプハウジング1と取付けフランジ8との接合部8Wの接合構造について説明する。なお、図12には同じ接合部の別の実施例が示されている。
【0185】
図11はフランジ接合部の詳細断面図を示す。
【0186】
取付けフランジ8はポンプハウジング1に接合されている。接合部8wは本発明の接合構造となる。取付けフランジ8にはエンジンの取付け面に対し、ポンプハウジング1に取付けられる吸入、吐出ジョイントの高さHとネジ穴ピッチL1,L2の寸法精度が要求される。ポンプハウジング1の各ジョイント取付け穴はA面を基準に寸法が管理されている。一方フランジは単体でh寸法が管理されており、接合時にA面を取付けフランジ8のストッパとすることにより高さH寸法の管理が容易にできる。ネジ穴はフランジ単体でポンプハウジング1に対する取付けピッチL1,L2が管理されている。本発明によれば、接合部は突合せが傾斜面になっているため、加圧することにより求心作用で自動的にポンプハウジング1と取付けフランジ8の中心軸を一致させることができ、ポンプハウジング1に対するネジ穴ピッチL1,L2が容易に管理できる。
【0187】
ポンプハウジング1には溝105が設けられている。取付けフランジ8の接合時に接合面からはみ出した溢流片90は溝105に収納され、ストッパ面(A面)上で噛み込むことはないので高さ寸法Hはばらつくことなく安定させることができる。
【0188】
図12はフランジ接合部の拡大断面図を示す。
【0189】
図11(a),(b)の拡大図と異なる点は接合面からはみ出した材料90の収納部がフランジ側に設けられた段差106で形成されている点である。取付けフランジ8はプレス成形で低コスト化を図っている。接合強度に余裕がある場合には接合部8wの面積、つまり押し込み量(板厚保方向の接合長さ)を減らし、フランジ側に段差106をプレス成形することにより、ポンプハウジング側の溝加工が不要になり廃止できる。これによりポンプハウジング1の加工費を低減することができる。また、前述同様に接合面からはみ出した溢流片90は段差106に収納され、ストッパ面(A面)上で噛み込むことはないので高さ寸法Hはばらつくことなく安定させることができる。
【0190】
さらに詳細に以下説明する。
【0191】
図11の実施例は、ピストンプランジャ2が直径の太い部分と細い部分で別々に加工され、接合によって一体化されている点、シリンダ20が(後で詳しく説明するように)直接ポンプハウジング1に接合されている点、および電磁駆動型の吸入弁機構200が(後で詳しく説明するように)本発明になる接合構造でポンプハウジング1に固定されている点、さらにはプランジャシールホルダ22が(後で詳しく説明するように)本発明になる接合構造でポンプハウジング1に固定されている点で図1の実施例とは構成が相違するが、他の部分は基本的に同じ構成である。
【0192】
ポンプハウジング1の外周には円錐状の外周壁面W18が形成されており、取付けフランジ8の中央部にはポンプハウジング1を挿通するための環状の孔が設けられている。取付けフランジ8の環状孔の内周面にはポンプハウジング1の円錐状の外周壁面W18に合致する逆円錐面W81が形成されている。
【0193】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0194】
具体的には、ポンプハウジング1と取付けフランジ8に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面で圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0195】
取付けフランジ8はポンプハウジング1に形成された規制面R18に当接するまで押し込まれ、この押し込み量が接合強度を決定する接合寸法になる。
【0196】
この実施例では、円錐状の外周壁面W18の大径側端部に外側に幅を有する環状の空所105が設けられている。この環状の空所105は円錐状接合面8Wの端部から塑性流動によって押し出された両接合部材の溢流片90を捕獲する。環状の空所105はポンプハウジング1の規制面R18の内周側に切削加工で形成された環状の溝、あるいはプレス加工で形成された環状の窪みで形成することができる。規制面R18の位置からどのくらいの深さにするか、あるいはどのくらいの幅にするかは接合距離や材料の組成によって決定する。
【0197】
接合面8Wの小径側端は大気側に開放されているのでこちら側から塑性流動によって押し出された両接合部材の溢流片90については溝や窪みで捕獲する必要はない。ポンプをエンジンブロックに組付ける時に邪魔になるようであれば切削で削り落とすことも可能である。
【0198】
図11の(b),(c)に示すように、取付けフランジ8の内周面W81とポンプハウジング1の外周面W18との間の接合面8Wは接合前の傾きより、接合後の傾きの方が大きい。
【0199】
これは、接合時に加熱しながら加圧することによって接合面周辺が軟化し、接合面に沿って塑性流動しながら押し込まれることにより生じるものである。径方向には接合面を取り巻く被接合金属が障壁となって広がることができないので、塑性流動は径が小さくなる方向で、軸方向に(押し込み方向に)発生する。その結果傾斜面は傾きが急峻になり、その分接合面積が大きくなり、また径方向外向きの緊迫力あるいは内向きの締め付け力を生じ、強固な接合領域が形成される。
【0200】
図12に示すのは、取付けフランジ8の円錐状接合面W18の大径側端部に外側に幅を有する環状の空所106が設けられている。この環状空所106の深さは接合面8Wの大径側端部と規制面R18によって決まる深さとなる。
【0201】
この接合部については、図15(a),(b)に示すテストピースでの解析結果が参照される。
【0202】
高圧燃料ポンプはポンプハウジング1に接合された取付けフランジ8を介しエンジンにネジ止め固定される。取付けフランジ8にはピストンプランジャ2の圧縮工程で発生する筒内圧力の反力と、スプリング4の圧縮反力と、充填された燃料の重量を含むポンプ総重量による外力が作用する。
【0203】
このため、取付けフランジ8はフランジそのものの強度確保はもちろん、ポンプハウジング1との接合部の強度確保が重要である。
【0204】
従来のレーザ溶接の場合は強度確保のためフランジを厚くしても接合部の溶け込み深さに限界があり、高圧燃料ポンプの容量,負荷,使用環境によっては強度確保が難しく使用できない場合もある。
【0205】
本実施例によれば、フランジの厚さが厚くなればそれだけ押し込み量を増やすことができる(接合長を長くできる)ので、フランジの厚さに応じた接合部の強度確保が可能であるという利点がある。
【0206】
取付けフランジ8はコスト低減を目的に板材をプレス成形している。エンジンへの取付けに関しては取付け面の平面度はある所定の変形量以下にしなければならない。しかし、一般的なすみ肉溶接やレーザ溶接では入熱が大きく溶接の熱変形で平面度が損なわれる可能性がある。プレス品のような薄板材においてはその影響度はかなり高い。本実施例によれば、接合部への入熱が小さいため平面の変形量を小さくすることができるため取付けフランジ8の平面度を確保し易い。
【0207】
平面度同様、ネジ取付け穴の位置精度においても厳しい精度が要求される。本実施例によれば、フランジ単体でポンプハウジング1への取付け穴の中心軸を基準にネジ穴の位置精度を確保すれば、接合時に自動的にポンプハウジング1の中心軸がフランジの基準に一致するため、ポンプハウジング1に対する取付け穴の位置精度の確保が容易である。
【0208】
このように、押し込み量により接合部の強度確保が容易にでき、また、取付け寸法精度が高く高品質,高信頼性な高圧燃料ポンプを提供することができる。
【0209】
(6)図5に示すところに基づきポンプハウジング1とリリーフバルブ機構15のハウジングとの接合構造について説明する。
【0210】
リリーフバルブ機構15は筒状ハウジング15Aを有し、筒状ハウジング15Aの内部にはボールバルブ15Bが収容されている。筒状ハウジング15Aの内部の一端にはテーパー状のバルブシート15Cが形成された燃料通路15Pが設けられている。ボールバルブ15Bはバルブシート15Cとボールホルダ15Hとの間に保持されている。ボールホルダ15Hのボールバルブ15Bとは反対側の面にはスプリング15Dの一端が当接している。スプリング15Dの他端は止め金具15Fに当接しており、止め金具15Fは筒状ハウジング15Aのバルブシート15Cとは反対側の端部内周に圧入によって固定されている。このように構成されたリリーフバルブ機構15においては、通常はスプリング15Dによってボールバルブ15Bがバルブシート15Cに押し付けられていて、燃料通路15Pが塞がれている。
【0211】
吐出弁の下流側、つまりリリーフバルブ機構15の燃料通路15P側の燃料圧力(高圧側燃料圧力)が所定圧力以上になった時に、ボールバルブ15Bが燃料の圧力を受けてスプリング15Dを圧縮し、バルブシート15Cから離れて燃料通路15Pを開放する。止め金具15Fの中央には連通孔15Sが設けられていて、この連通孔15Sは吐出弁6の上流の低圧側(加圧室,吸入通路が形成する低圧通路、あるいはダンパ室)に圧力を逃がしてポンプあるいは高圧配管の破損を防止する。
【0212】
リリーフバルブ機構15は図5に示すようにサブアッセンブリー状態でスプリング15Dのセット長を調整し、開弁圧力が設定された後、リリーフバルブハウジング15Aをポンプハウジング1の取付け穴に挿入して接合されている。
【0213】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0214】
具体的には、リリーフバルブハウジング15Aとポンプハウジング1に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面15Wで圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0215】
リリーフバルブ15には数十MPaの差圧が加わり低圧側に押し出される力を受けるため、圧入のみでは耐えられず抜け防止機構が必要となる。
【0216】
本実施例の接合構造によれば、接合面15Wに拡散接合が形成されることと、同じ軸方向寸法内において、円錐面で形成される広い接合面積が得られるので、充分な接合強度を確保することができ、抜け止め防止機構が廃止できる。
【0217】
また、接合面15Wはシール効果が十分得られるので、Oリングやガスケットのようなシール機構も不要である。
【0218】
このように、構造が簡略化でき設計自由度が高く、安価な高圧燃料ポンプを提供することができる。
【0219】
(7)次に図6乃至9に示すところにより、シリンダ20を直接ポンプハウジング1に接合する実施例について3つの態様を説明する。
【0220】
シールホルダ22にはピストンプランジャ2の外周をシールするプランジャシール5が装着されていて、外周がポンプハウジングに圧入,溶接され気密性が保たれている。シリンダ20の接合部20wは図3,図4に示す接合構造によって接合されている。
【0221】
シリンダ20は加圧室12で発生する筒内圧を受けるため、これに対向する力でポンプハウジング1のシート面に押し付けなければならない。本発明の接合構造によれば、シリンダ20を直接ポンプハウジング1に接合でき、筒内圧に対向する接合強度が充分確保できるとともに、加圧室との気密性も確保できる。このため、ポンプハウジング1とシリンダ20との境界面から燃料が漏れることがなく、キャビテーションが防止でき接合部(シール部)が浸食されることがない。
【0222】
また、シリンダ20の中心軸は求心作用によりポンプハウジング1のシリンダ挿入穴中心軸に自動的に一致させることができる。
【0223】
このように、接合部の強度確保が容易にでき、寸法精度が高く高品質,高信頼性な高圧燃料ポンプを供給することができる。
【0224】
図7はシリンダ接合部の詳細断面図を示す。
シリンダ20はポンプハウジング1に直接接合されている。接合部20wは図3,図4に示す接合構造によって接合されている。本実施例の接合構造によれば、接合部はシリンダ20の外径がポンプハウジング1のシリンダ挿入案穴内径に対し大きくラップ代が設けられているため、接合後余った材料が塑性流動によって接合面の端部から押しだされ溢流片90となり接合面の両側に環状に形成される。ポンプハウジング1には溝101と段差102あるいは環状窪みによって環状の空所が形成され、溢流片90の収納部を形成している。
【0225】
この収納部はシリンダの接合部を例にしているが、他の接合部位にも適用可能である。
【0226】
図8はシリンダ接合部の詳細断面図を示す。
【0227】
シリンダ20はポンプハウジング1に直接接合されている。接合部20wは図3,図4に示す接合構造によって接合されている。図7と異なる点は溢流片90の収納部がシリンダ20に設けられた段差103で形成されていることである。このように、接合される二部材のどちらかに溝や段差によって空所を設けることにより、溢流片90の収納部を形成することができる。
【0228】
図9はシリンダ接合部の詳細断面図を示す。
【0229】
シリンダ20はポンプハウジング1に直接接合されている。接合部20wは図3,図4に示す接合構造によって接合されている。図7と異なる点は接合される二つの部材に硬度差を付けた点である。例えば、シリンダ20がポンプハウジング1に対し硬度が高い場合、接合面の形状は図9のようにシリンダ側が湾曲した凸面となる。この時、接合面からはみ出した溢流片90は片側に集中するため、片方の収納部(溝,段差などの空所)を廃止できる。
【0230】
以下により詳細に説明する。
【0231】
図1に示す実施例で説明したシリンダ20とポンプハウジング1の接合構造では、ポンプハウジング1に接合されるシリンダホルダ21によってシリンダ20をポンプハウジング1に圧接して固定した。本実施例に示し接合構造ではシリンダホルダを用いることなくシリンダ20が直接ポンプハウジング1に接合される。
【0232】
図1と同様ポンプハウジング1には加圧室12を形成するための窪み部(凹所)が形成されており、この窪み部(凹所)にはシリンダ20が嵌合する円筒壁面部1Sが設けられている。
【0233】
円筒壁面部1Sは加圧室側に直径の小さい円筒壁面部1Sを備え、シリンダ20の直径の小さい筒状部20Aがこの直径の小さい円筒壁面部1Sに挿通されている。シリンダ20には直径の小さい筒状部20Aに引き続いて直径の大きい筒状部20Bが形成されており、直径の小さい筒状部20Aと直径の大きい筒状部20Bの間に環状面R12が形成されている。
【0234】
一方、ポンプハウジング1の直径の小さい円筒壁面部1Sと直径の大きい円筒壁面部1SRとの間にも環状面R12が形成されている。
【0235】
シリンダ20の直径の大きい筒状部20Bの加圧室12側先端部は凸状の円錐面W21に加工されており、ポンプハウジング1の筒状部1SRの図中下端内周部に形成された凹状の円錐面に合致して両者で、円錐状の接合面21Wを形成している。
【0236】
両者の接合は、図3および図4に示すところに基づいて先に説明した接合方法に従って達成される。
【0237】
具体的には、両者に極性の異なる電極を接続し、両者を押し付けた状態、つまり両者を接合面で圧接した状態で高電圧を印加して接合する。
【0238】
このとき両者を押し付ける力は、接合面21W部において塑性流動領域を生じるだけでなく、両金属の塑性流動によって両者の軸方向の寸法が縮んだ際に、シート面20C、およびシート面21Cに必要な圧接力を発生するように設計されている。
【0239】
ポンプハウジング1のこの環状面R12とシリンダ20の環状面R21とは互いに圧接して、後述するように第1のシール面としての環状のシール面R20を形成している。
【0240】
そして、シート面20Cは結果として、両接合部材(ポンプハウジングとシリンダ20)の押し込み量、つまり接合距離を規制する規制部として機能する。
【0241】
ピストンプランジャ2はシリンダ20から突出してシリンダホルダ21の中に挿通されている部分において、シリンダ20に滑合する領域の直径より小さい直径を有する。
【0242】
ピストンプランジャ2の直径の小さい部分の外周にはピストンプランジャ2とシリンダおよび、シール面21Cから漏れてきたガソリンとエンジンルーム側からの潤滑オイルとをシールするプランジャシール5が設けられている。
【0243】
ピストンプランジャ2の加圧室12とは反対側の端部にはリフタ3が固定されており、このリフタ3とシリンダホルダ21との間にはピストンプランジャ2、プランジャシール5およびシリンダホルダ21の径の小さい筒状部の周りを取り巻くばね4が装着されている。このばね5の力はピストンプランジャ2に対してピストンプランジャ2を加圧室12から引き出す方向に常時作用している。ばね4の外側に形成されたシリンダホルダ21の径の大きい筒状部の周りにはOリング21Dが装着されている。
【0244】
エンジンブロックにはエンジンの回転に同期して回転するカム7の位置に対応して、高圧燃料ポンプの取付け孔が設けられており、高圧燃料ポンプのシリンダホルダ21の部分がこの取付け孔に挿通されたとき、リフタ3がカム7に当接すこのときエンジンブロックの取付け孔とシリンダホルダ21との間はOリング21Dでシールされる。
【0245】
高圧燃料供給ポンプは取付けフランジ8に固定されており、この取付けフランジ8がねじ9によってエンジンブロックに締結されることで高圧燃料供給ポンプはエンジンブロックに固定される。
【0246】
(8)図13,図14および16に示すところにより、電磁駆動型吸入弁機構200とポンプハウジング1との接合部200wについて詳細に説明する。
【0247】
ポンプハウジング1の加圧室の入口に設けられた電磁駆動型吸入弁機構200の外殻の一部を形成するハウジング205は電磁駆動型吸入弁機構200の磁気通路の一部を構成している。
【0248】
ハウジング205の外周筒状部206がポンプハウジング1の孔200Hに嵌合固定される。
【0249】
電磁駆動型吸入弁機構200のハウジング205の外周筒状部206と前記ポンプハウジング1との嵌合部にハウジング205の中心軸線に対して傾斜した接合面200Wが形成されている。
【0250】
傾斜した接合面200Wには、熱による溶融を伴わないハウジング205とポンプハウジング1の金属同士の拡散接合領域によって、電磁駆動型吸入弁機構200が設置された燃料通路10aと大気との間のシール部が形成されている。
【0251】
ハウジング205とポンプハウジング1の接合時に塑性流動によって発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、ポンプハウジング1に形成された加圧室の吸入口の周囲に電磁駆動型吸入弁機構200の先端部が当接する当接部Mが設けられている。この当接部Mが加圧室12と吸入弁203の上流の燃料通路10aとをシールするシール面として機能する。
【0252】
ポンプハウジング1の外側からポンプハウジング1に設けた孔200Hに電磁駆動型吸入弁機構200を差し込んで、当該吸入弁機構200のハウジング205の外周筒状部206を孔200Hの入口内周に当接し、ポンプハウジング1と吸入弁機構200のハウジング205に電圧を印加して両者の当接部200Wに電流を流し、この電流によって当接部200Wを加熱しながらポンプハウジング1と吸入弁機構200のハウジング205とを相対的に加圧する。
【0253】
その結果、当接部200Wに沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生し、当該塑性流動と相対的加圧とによって当接部200Wに、ポンプハウジング1に設けた孔200Hの軸線に対して傾斜したポンプハウジング1と吸入弁機構のハウジング205との両金属同士の拡散接合領域が形成される。当該拡散接合領域を挟んで拡散接合領域に沿って、ポンプハウジング1と吸入弁機構200のハウジング205との両金属の塑性流動領域を形成する。
【0254】
加圧室12の吸入口12Aの周囲に電磁駆動型吸入弁機構200の先端部が当接する当接部Mを設け、ポンプハウジング1の外側からポンプハウジング1に設けた孔200Hに吸入弁機構200を差し込んで、当入弁機構のハウジング205の外周を孔200Hの入口内周に当接し、ポンプハウジング1と吸入弁機構200のハウジング205に電圧を印加して両者の当接部Mに電流を流し、この電流によって当接部200wを加熱しながらポンプハウジング1と吸入弁機構200のハウジング205とを相対的に加圧する。
【0255】
これによって、当接部200Wに沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、塑性流動と相対的加圧によって当接部200Wに、ポンプハウジング1に設けた孔200Hの軸線に対して傾斜したポンプハウジング1と吸入弁機構のハウジング205との両金属同士の拡散接合領域を形成する。かくして、拡散接合領域を挟んで拡散接合領域に沿って、ポンプハウジング1と吸入弁機構のハウジング205との両金属の塑性流動領域を形成する。
【0256】
さらに、加圧室12の吸入口12Aの周囲に電磁駆動型吸入弁機構200の先端部が当接する当接部Mが吸入弁機構のハウジング205とポンプハウジング1の塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制すると共に、当該当接部Mにおいて加圧室12と低圧燃料通路10aとのシール部を形成する。
【0257】
溶接時の加圧は、コイル204が巻装されたソレノイド208を組み込む前に行われる。図16に示すソレノイド収納ケース205Aの端面PAを加圧することで、電磁駆動型吸入弁機構200のハウジング205をポンプハウジング1に押し込む。
【0258】
また、図13に示すようにソレノイド208を装着された状態でウジング206の環状端面206Pを加圧することもできる。
【0259】
いずれにしても、プランジャロッド201,吸入弁203、さらに、弁シート203Sと複数の孔が設けられた先端ユニットがハウジング205の先端内周部に組み付けられた状態で、溶接される。溶接時に温度がそれほど高くならないので、磁気通路を形成するハウジング205の磁気特性が変化することがない。
【0260】
また、先端ユニットとハウジング205との間の圧入状態が熱で変化することもない。
【0261】
ハウジング205の押し込み量は、孔200Hの開口部周辺に設けた環状段付き面で管理するが、通常はここにギャップG1ができるよう調整されている。
【0262】
なお、燃料は低圧燃料通路10aから先端ユニットに設けた複数の孔203Hを通って弁シート203Sへと至る。
【0263】
吸入弁体203は自身の上下流の流体差圧でばね202の力に抗して弁シート203Sから離れる。その状態でソレノイド208に通電され、吸入弁体203の開弁状態が維持される。吐出タイミングで、ソレノイドの通電が断たれると、吸入弁体203自身の上下流の流体差圧とばね202の力によって吸入弁体203は閉弁する。
【0264】
以上の実施例の態様をまとめると以下の通りである。
【0265】
〔実施の態様1〕
抵抗溶接で接合される二つの部材に突合せ傾斜面を設け、両者に電極を接続し、通電と加圧による摩擦で発熱させて接合部の接触界面に合金層(拡散層)を作り固層接合されていることを特徴とする接合構造。
【0266】
〔実施の態様2〕
実施の態様1に記載したものにおいて、突合せ面が環状の傾斜面で形成され、加圧、接合時に傾斜面にならって互いの中心軸が一致するように接合されていることを特徴とする接合構造。
【0267】
〔実施の態様3〕
実施の態様1及び2に記載したものにおいて、接合される二つの部材に硬度差を設けることにより、高硬度側の突合せ面が凸形状となるようにし、接合面からはみ出す材料がほぼ片側に集中して押し出されていることを特徴とする接合構造。
【0268】
〔実施の態様4〕
実施の態様1から3に記載したものにおいて、接合面の端部に突合せ面からはみ出した材料を収容する収納部が設けられていることを特徴とする接合構造。
【0269】
〔実施の態様5〕
実施の態様4に記載したものにおいて、収納部が少なくともどちらかの部材に設けられた溝または段差によって形成された空間であることを特徴とする接合構造。
【0270】
〔実施の態様6〕
実施の態様1から5に記載したものにおいて、接合される二つの部材が異種金属であることを特徴とする接合構造。
【0271】
〔実施の態様7〕
実施の態様1から6に記載したものにおいて、接合される二つの部材の間に第三の部材が挟まれて固定されていることを特徴とする接合構造。
【0272】
〔実施の態様8〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、ポンプハウジングには筒内圧上昇のため往復運動させるプランジャと該プランジャを摺動可能に保持する別体のシリンダを有し、該シリンダがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該シリンダと該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0273】
〔実施の態様9〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、ポンプハウジングと、筒内圧上昇のため往復運動させるプランジャと該プランジャを摺動可能に保持する別体のシリンダと、該シリンダをポンプハウジングに固定するシリンダホルダを有し、該シリンダが該シリンダホルダを介してポンプハウジングに固定されているものにおいて、該シリンダホルダと該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0274】
〔実施の態様10〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、エンジンに取付けるための別体のフランジがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該フランジと該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0275】
〔実施の態様11〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、加圧室に燃料を供給するための別体の吸入ジョイントがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該吸入ジョイントと該ポンプハウジングとの接合構造には請求項1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0276】
〔実施の態様12〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、圧縮された燃料を吐出するための別体の吐出ジョイントがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該吐出ジョイントが該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0277】
〔実施の態様13〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、燃料の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有し、該ダンパ室がポンプハウジング端部に該ポンプハウジングと、別部材のダンパカバーとで形成され、該ダンパカバーがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該ダンパカバーと該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0278】
〔実施の態様14〕
内燃機関に用いられる高圧燃料ポンプで、燃料の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有し、該ダンパ室と吐出通路とを繋ぐ連通路が設けられ、該連通路には燃料の吐出圧力が所定の圧力を超えると開弁する別体の圧力調整弁機構(リリーフバルブとも言う)を備え、該圧力調整弁機構のハウジングがポンプハウジングに接合されているものにおいて、該圧力調整弁機構と該ポンプハウジングとの接合構造には実施の態様1から7までのいずれか一つの構造が形成されていることを特徴とする高圧燃料ポンプ。
【0279】
〔実施の態様15〕
ポンプの接合構造において、接合する二つの部材に環状の突合せ傾斜面を設け、加圧中に瞬間的に接合部に通電することにより接触界面に合金層(拡散層)を作り固層接合した2部材の接合方法。
【0280】
以上の実施例の効果をまとめると以下の通りである。
【0281】
以上説明した実施例によれば、高圧燃料ポンプを構成する部品の接合部において接合強度,気密性,寸法精度が確保でき、高品質で生産性及び信頼性が高い高圧燃料供給ポンプを提供することができる。
【0282】
具体的には、二つの部材に突合せ傾斜面を設け、通電による発熱と加圧による摩擦熱を瞬時に与えて、接合部の接触界面に拡散層を作り固層接合することで、熱変形が少なく強度,気密性,寸法精度を高次元で成立させることができた。
【0283】
また、熱歪が少なく高精度で気密性に優れた構造ができるため信頼性が高い高圧燃料供給ポンプを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0284】
本発明は金属の2部材を環状部において、溶接接合するのに広く利用できる。接合部は流体に対して十分なシール状態を維持できるので、一般的な圧力の液体や気体から高圧のガソリンや薬品を取り扱う機器に用いることができる。本明細書では、特にガソリンを直接燃焼室に噴射するいわゆる筒内噴射型の内燃機関の高圧燃料供給ポンプに応用した事例を記載した。
【図面の簡単な説明】
【0285】
【図1】本発明が実施された第1実施例になる高圧燃料供給ポンプの全体縦断面図である。
【図2】本発明が実施された高圧燃料供給ポンプを用いた燃料供給システムの一例を示すシステム構成図である。
【図3】本発明の接合方法を示す工程図である。
【図4】本発明の接合構造を示す断面図である。
【図5】本発明が実施されたリリーフバルブの接合構造示す縦断面図である。
【図6】本発明が実施された別の高圧燃料供給ポンプの全体縦断面図である。
【図7】図6に示された高圧燃料供給ポンプのP部分拡大縦断面図である。
【図8】図6に示された高圧燃料供給ポンプのP部分拡大縦断面図で図7とは別の実施例である。
【図9】図6に示された高圧燃料供給ポンプのP部分拡大縦断面図で、図6,図7とは別の実施例である。
【図10】(a)は本発明が実施された別の高圧燃料供給ポンプの部分縦断面図で(b)はそのQ部分拡大縦断面図ある。
【図11】(a)は本発明が実施された別の高圧燃料供給ポンプの縦断面図で、(b)は、そのR部拡大縦断面図ある。
【図12】図11の高圧燃料供給ポンプのR部分の実施例を示す拡大縦断面図である。
【図13】図11の高圧燃料供給ポンプの電磁駆動型吸入弁機構部の拡大断面図である。
【図14】図13のX部拡大図である。
【図15】テストピースの接合状態を示す拡大断面図で、(b)はその顕微鏡写真である。
【図16】図13の電磁駆動型吸入弁機構の組立前後の拡大図である。
【符号の説明】
【0286】
1 ポンプハウジング
2 プランジャ
3 リフタ
4 バネ
5 プランジャシール
6 吐出弁
7 カム
10 吸入ジョイント
10a 吸入室
10b ダンパ室
11 吐出ジョイント
12 加圧室
15 リリーフバルブ
20 シリンダ
21 シリンダホルダ
22 シールホルダ
30 ダンパホルダ
40 ダンパカバー
40a 内面突起部
50 燃料タンク
51 低圧ポンプ
52 プレッシャレギュレータ
53 コモンレール
54 インジェクタ
56 圧力センサ
60 エンジンコントロールユニット(ECU)
70 リング
80 金属ダイヤフラムダンパ(組体)
200 電磁駆動型吸入弁機構
201 プランジャロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧室を形成するための窪み部が形成されたポンプハウジング、
前記窪み部の内壁に形成された第一円筒面部、
前記第一円筒面部に嵌合される第二円筒面部をその外周に備え、中心部にはその一端が前記加圧室に開口する貫通孔を備えたシリンダ、
前記貫通孔に滑合して往復動作を繰り返すことで前記加圧室内に流体を吸入し、加圧して前記加圧室から前記流体を吐出するピストンプランジャ、
前記ポンプハウジングと前記シリンダの嵌合状態を維持し、相互の抜け止め機能を奏する溶接接合部を備え、
前記溶接接合部が前記シリンダの中心軸線に対して傾斜する接合面を形成しており、当該傾斜した接合面において、熱による溶融を伴わない接合金属同士の拡散接合領域が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載したものにおいて、
前記溶接接合部が前記ポンプハウジングの第一円筒面部と前記シリンダの第二円筒面部との間に形成されており、
前記溶接接合部が前記シリンダの中心軸線に対して傾斜する接合面を形成しており、当該傾斜した接合面において、熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記シリンダの金属同士の拡散接合領域が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載のものにおいて、
前記接合面を挟んで、当該接合面に沿った前記ポンプハウジングと前記シリンダの金属の塑性流動層が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記シリンダの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、前記ポンプハウジングと前記シリンダの前記嵌合部に軸方向の当接面を設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項5】
請求項2に記載のものにおいて、
前記熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記シリンダの金属同士の拡散接合領域が前記加圧室と大気との間のシールを形成している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載のものにおいて、
前記抜け止め機能を奏する溶接接合部は、
前記シリンダの前記加圧室とは反対側の端部において、前記ポンプハウジングの第一円筒面に引き続く円筒面部に溶接接合される固定リングを備え、
前記シリンダの前記加圧室とは反対側の端部に前記固定リングの片側端面が当接し、前記ポンプハウジングの第一円筒面部に引き続く円筒面部に前記固定リングの外周に形成された第三の円筒面部が溶接接合されており、
当該溶接接合面部が前記シリンダの中心軸線に対して傾斜する接合面を形成しており、当該傾斜した接合面において、熱による溶融を伴わない前記固定リングと前記ポンプハウジングの金属同士の拡散接合領域が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載のものにおいて、
前記接合面を挟んで、当該接合面に沿った前記ポンプハウジングと前記固定リングの金属の塑性流動層が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項8】
請求項6に記載のものにおいて、
前記熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記固定リングの金属同士の拡散接合領域が前記加圧室と大気との間の第一のシールを形成し、
前記固定リングと前記シリンダの当接面がメタルコンタクトシール部を形成し、前記加圧室と大気との間の第二のシールを形成している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項9】
請求項6に記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングの前記第一円筒面部と前記シリンダの第二円筒面部との嵌合面間にメタルコンタクトシール部が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項10】
請求項6に記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記固定リングの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、前記ポンプハウジングと前記シリンダの前記嵌合部に軸方向の圧接面を設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項11】
請求項10に記載のものにおいて、
前記圧接面が前記加圧室と前記第一,第二シール部との間に設けられた第三のシール部として機能している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項12】
請求項2に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法であって、
前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記シリンダとを相対的に加圧し、もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記シリンダの両金属同士の拡散接合領域を形成する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項13】
請求項6に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法であって、
前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記固定リングとを相対的に加圧し、もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記固定リングの両金属同士の拡散接合領域を形成する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項14】
請求項12もしくは13のいずれかに記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記シリンダもしくは前記ポンプハウジングと前記固定リングとを相対的に加圧する加圧力の一部もしくは全部を、前記前記ポンプハウジングと前記シリンダもしくは前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間に形成されるメタルコンタクトによるシール部を形成する加圧力として用いている高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項15】
請求項2に記載のものにおいて、
前記溶接接合面の小径側端部に、前記溶接接合面の小径側端部が望む環状の空間を前記ポンプハウジングもしくは前記シリンダの少なくともいずれか一方に設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項16】
請求項15に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記シリンダとを相対的に加圧し、
もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記シリンダの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記接合面部の端部から流出する前記塑性流動物を前記空間に捕獲する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項17】
請求項6に記載のものにおいて、
前記溶接接合面の小径側端部に前記溶接接合面の小径側端部が臨む環状の空間を前記ポンプハウジングもしくは前記固定リングの少なくともいずれか一方に設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項18】
請求項17に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記固定リングとを相対的に加圧し、
もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記固定リングの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記接合面部の端部から流出する前記塑性流動物を前記空間に捕獲する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項19】
請求項2もしくは請求項6に記載したものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記シリンダあるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングの中心軸が、少なくとも前記溶接接合部が形成されている軸方向領域内で同一軸線上に形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項20】
請求項19に記載された高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間あるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記シリンダとの間の接合面あるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記シリンダあるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングとを相対的に加圧し、
もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記シリンダあるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記接合面部の塑性流動によって前記ポンプハウジングと前記シリンダあるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングが前記軸方向および径方向に相対的に変位して前記ポンプハウジングと前記シリンダあるいは前記ポンプハウジングと前記固定リングが自動調芯される高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項21】
請求項2もしくは請求項6に記載したものにおいて、
前記ポンプハウジングの接合面が凹形状で前記シリンダの接合面が凸形状あるいは前記ポンプハウジングの接合面が凹形状で前記固定リングの接合面が凸形状に形成され、凸形状に形成された部材が、凹形状に形成された部材よりも硬度が硬い高圧燃料供給ポンプ。
【請求項22】
ポンプハウジングを設置部材に取付けるための取付けフランジを有し、
前記ポンプハウジングの外周に形成した円筒部を前記取付けフランジに設けた孔の内壁に嵌合し、嵌合部において両者を溶接により接合される高圧燃料供給ポンプにおいて、
前記溶接接合部が前記円筒部の中心軸線に対して傾斜する接合面を備え、当該傾斜した接合面において、熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記取付けフランジの金属同士の拡散接合領域が形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項23】
請求項22に記載のものにおいて、
前記接合拡散領域を挟んで、前記ポンプハウジングの金属の塑性流動領域と前記取付けフランジの金属の塑性流動領域とが、前記溶接接合面に沿って形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項24】
請求項23に記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記取付けフランジの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、前記ポンプハウジングと前記取付けフランジの前記嵌合部に軸方向の当接面を設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項25】
請求項22に記載されたものにおいて、
前記溶接接合面の小径側端部に、当該小径側端部が臨む環状空間を前記ポンプハウジングと前記取付けフランジの少なくともいずれか一方に設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項26】
請求項22に記載したものにおいて、
前記ポンプハウジングの外周に形成した円筒部の中心軸と前記取付けフランジに設けた孔の中心軸が、少なくとも前記溶接接合部が形成されている軸方向領域内で同一軸線上に形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項27】
請求項26に記載された高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングと前記取付けフランジとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記取付けフランジとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記取付けフランジとを相対的に加圧し、
もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記取付けフランジの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記接合面部の塑性流動によって前記ポンプハウジングと前記取付けフランジとが前記軸方向および径方向に相対的に変位して前記ポンプハウジングと前記取付けフランジとが自動調芯される高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項28】
ポンプハウジングに流体を導入する吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントを有し、
前記ポンプハウジングに形成した孔に前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの外周円筒部を嵌合して前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントを前記ポンプハウジングに溶接接合するものにおいて、
前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとの前記溶接接合部が前記円筒部の中心軸線に対して傾斜する接合面を備え、当該傾斜した接合面に形成される、熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの金属同士の拡散接合領域が内部流体と大気との間のシール部を形成している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項29】
請求項28に記載のものにおいて、
前記接合拡散領域を挟んで、前記ポンプハウジングの金属の塑性流動領域と前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの金属の塑性流動領域とが、前記溶接接合面に沿って形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項30】
請求項28に記載のものにおいて、
前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの前記嵌合部に軸方向の当接面を設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項31】
請求項28に記載されたものにおいて、
前記溶接接合面の小径側端部に、当該小径側端部が臨む環状空間を、前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントの少なくともいずれか一方、前記ポンプハウジングもしくは前記吐出ジョイントの少なくともいずれか一方に設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項32】
請求項28に記載したものにおいて、
前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントの外周に形成した円筒部の中心軸と前記ポンプハウジングに形成した孔の中心軸が、少なくとも前記溶接接合部が形成されている軸方向領域内で同一軸線上に形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項33】
請求項32に記載された高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとを相対的に加圧し、
もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントの両金属同士の拡散接合領域、前記ポンプハウジングと前記吐出ジョイントの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記接合面部の塑性流動によって前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとが前記軸方向および径方向に相対的に変位して前記ポンプハウジングと前記吸入ジョイントもしくは吐出ジョイントとが自動調芯される高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項34】
流体の吸入通路から加圧室へ繋がる通路の途中に脈動吸収ダンパを収めたダンパ室を有するポンプハウジング、
当該ポンプハウジングに固定され、前記ダンパ室を画成するダンパカバーとを備え、
前記ポンプハウジングの円筒外壁部に前記ダンパカバーが溶接接合されているものにおいて、
前記ダンパカバーと前記ポンプハウジングとの前記溶接接合部が前記円筒外壁部の中心軸線に対して傾斜する接合面を備え、
当該傾斜した接合面に形成される、熱による溶融を伴わない前記ポンプハウジングと前記ダンパカバーの金属同士の拡散接合領域が内部流体と大気との間のシール部を形成している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項35】
請求項34に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ダンパは2枚の金属ダイアフラムの外周を溶接して形成された金属ダイアフラムダンパとして構成されており、
前記金属ダイアフラムダンパの前記外周溶接部の内径部側で当該金属ダイアフラムダンパの両側面を挟持する保持部材を備え、
前記ダンパカバーで前記保持部材を押し付けて前記ダンパ室内に前記金属ダイアフラムダンパを固定するよう構成されており、
前記ポンプハウジングと前記ダンパカバーとの間に高電圧を印加して、前記ポンプハウジングと前記ダンパカバーとの間の接合面に流れる電流によって当該接合面周辺を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記ダンパカバーとを相対的に加圧し、もって前記接合面に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記接合面部に前記ポンプハウジングと前記ダンパカバーの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
前記ダンパカバーを前記ポンプハウジングに相対的に加圧する前記加圧力が前記保持部材を押し付ける押し付け力として作用し、
当該押し付け力の反力を受け止められるよう前記拡散接合領域の接合力が設定されている高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項36】
内燃機関に用いられる高圧燃料供給ポンプで、
加圧室を有するポンプハウジング、
前記加圧室の出口に設けられた吐出弁、
当該吐出弁の下流と前記吐出弁の上流側とを繋ぐリリーフ通路、
当該リリーフ通路に設けられ、燃料の吐出圧力が所定の圧力を超えると開弁するリリーフ弁機構を備え、
当該リリーフ弁機構を構成する筒状ハウジングが前記ポンプハウジングに設けた孔に嵌合され、前記リリーフ弁機構が前記ポンプハウジングに組みつけられているものにおいて、
前記リリーフ弁機構の筒状ハウジングと前記ポンプハウジングの嵌合部に前記筒状ハウジングの中心軸線に対して傾斜した接合面を備えた溶接接合部を有し、
前記傾斜した接合面に形成される、熱による溶融を伴わない前記リリーフ弁機構の筒状ハウジングと前記ポンプハウジングの金属同士の拡散接合領域が、前記リリーフ弁の下流側の高圧燃料部と前記リリーフ弁の上流側の低圧燃料部との間のシール部を形成している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項37】
請求項36に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングの外側から当該ポンプハウジングに設けた前記孔に前記リリーフ弁機構を差し込んで、当該リリーフ弁機構のハウジングの外周を前記孔の入口内周に当接し、
前記ポンプハウジングと前記リリーフ弁機構のハウジングに電圧を印加して前記両者の当接部に電流を流し、この電流によって当該当接部を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記リリーフ弁機構のハウジングとを相対的に加圧し、もって前記当接部に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記当接部に、前記ポンプハウジングに設けた孔の軸線に対して傾斜した前記ポンプハウジングと前記リリーフ弁機構のハウジングとの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
当該拡散接合領域を挟んで当該拡散接合領域に沿って、前記ポンプハウジングと前記リリーフ弁機構のハウジングとの両金属の塑性流動領域を形成する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項38】
内燃機関に用いられる高圧燃料供給ポンプで、
加圧室を有するポンプハウジング、
前記加圧室の入口に設けられた吸入弁と当該吸入弁の開閉時期を制御する電磁駆動機構とが一体に構成された吸入弁機構を備え、
前記吸入弁機構の外殻の一部を形成するハウジングは前記電磁駆動機構の磁気通路の一部を構成しており、
前記吸入弁機構の前記ハウジングの外周筒状部が前記ポンプハウジングの孔に嵌合固定されたものにおいて、
前記吸入弁機構の前記ハウジングの外周筒状部と前記ポンプハウジングとの嵌合部に前記ハウジングの中心軸線に対して傾斜した接合面を備えた溶接接合部を有し、
前記傾斜した接合面に形成される、熱による溶融を伴わない前記吸入弁機構の筒状ハウジングと前記ポンプハウジングの金属同士の拡散接合領域によって、前記吸入弁機構が設置された燃料通路と大気との間のシール部を形成した高圧燃料供給ポンプ。
【請求項39】
請求項38に記載のものにおいて、
前記吸入弁機構の筒状ハウジングと前記ポンプハウジングの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制するための規制部として、前記ポンプハウジングに形成された前記加圧室の吸入口の周囲に前記吸入弁機構の先端部が当接する当接部を設けた高圧燃料供給ポンプ。
【請求項40】
請求項39に記載のものにおいて、
前記当接部が前記加圧室と前記吸入弁の上流の燃料通路とをシールするシール面として機能している高圧燃料供給ポンプ。
【請求項41】
請求項38に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記ポンプハウジングの外側から当該ポンプハウジングに設けた前記孔に前記吸入弁機構を差し込んで、当該吸入弁機構のハウジングの外周を前記孔の入口内周に当接し、
前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングに電圧を印加して前記両者の当接部に電流を流し、この電流によって当該当接部を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとを相対的に加圧し、もって前記当接部に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記当接部に、前記ポンプハウジングに設けた孔の軸線に対して傾斜した前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
当該拡散接合領域を挟んで当該拡散接合領域に沿って、前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとの両金属の塑性流動領域を形成する高圧燃料供給ポンプの製造方法。
【請求項42】
請求項39に記載の高圧燃料供給ポンプの製造方法において、
前記加圧室の吸入口の周囲に前記吸入弁機構の先端部が当接する当接部を設け、
前記ポンプハウジングの外側から当該ポンプハウジングに設けた前記孔に前記吸入弁機構を差し込んで、当該吸入弁機構のハウジングの外周を前記孔の入口内周に当接し、
前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングに電圧を印加して前記両者の当接部に電流を流し、この電流によって当該当接部を加熱しながら前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとを相対的に加圧し、もって前記当接部に沿って、熱による溶融を伴わない塑性流動を発生させ、当該塑性流動と前記相対的加圧によって前記当接部に、前記ポンプハウジングに設けた孔の軸線に対して傾斜した前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとの両金属同士の拡散接合領域を形成すると共に、
当該拡散接合領域を挟んで当該拡散接合領域に沿って、前記ポンプハウジングと前記吸入弁機構のハウジングとの両金属の塑性流動領域を形成し、
さらに、前記加圧室の吸入口の周囲に前記吸入弁機構の先端部が当接する前記当接部が前記吸入弁機構のハウジングと前記ポンプハウジングの前記塑性流動領域の成形時に発生する軸方向の相対変位を規制すると共に、当該当接部において前記加圧室と低圧燃料通路とのシール部を形成する高圧燃料供給ポンプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−108784(P2009−108784A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282607(P2007−282607)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】