説明

高抵抗ヒータ膜を有するマイクロ流体噴出装置

マイクロ流体噴出ヘッド用半導体基板。この基板は、該基板上に配置された複数の流体噴出アクチュエータを含む。それら流体噴出アクチュエータの各々は、薄膜ヒータと該ヒータと隣接する1つ或はそれ以上の保護層とを含む薄いヒータ・スタックを含む。前記薄膜ヒータが、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から本質的に成るナノ-結晶世構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料から構成され、その薄膜材料が約30から約100オーム/スクエアまでの範囲のシート抵抗を有する。薄膜材料は、約30から約70原子%までのタンタル、約10から約40原子%までのアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有することから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロ流体噴出装置に関し、特に高抵抗ヒータ膜を含む噴出装置に対する噴出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット・プリンタ等のマイクロ流体噴出装置は、レーザプリンタの代わりの経済的な代替として広範な受け入れを経験し続けている。マイクロ流体噴出装置は、医療、化学、並びに、機械の分野等の他の分野でも広範な適用を見出している。マイクロ流体噴出装置の能力はより高い噴出速度を提供すべく増大されているので、マイクロ流体装置の主要構成要素である噴出ヘッドは進化し且つより複雑となってきている。噴出ヘッドの複雑性が増大すればするほど、噴出ヘッドを製造するコストが増大する。それにもかかわらず、増大された品質及びより高いスループット率を含む向上された能力を有するマイクロ流体噴出装置が引き続き必要とされている。印刷品質及び価格に対する競合圧力は、より経済的な方式で向上された能力を伴う噴出ヘッドを作り出す引き続く必要性を促進している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先行する目的及び長所やその他の目的及び長所等に対して、マイクロ流体噴出ヘッドに対する半導体基板が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この基板は、当該基板上に配置された複数の流体噴出アクチュエータを含む。それら流体噴出アクチュエータの各々は、薄膜ヒータと該ヒータに隣接した1つ或はそれ以上の保護層を有する薄層ヒータ・スタックを含む。その薄膜ヒータは、本質的には、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から成るナノ結晶構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料から構成され、約30から約100オーム/スクエアまでの範囲のシート抵抗を有する。この薄膜材料は、約30から約70原子%のタンタル、約10から約40原子%のアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有する。
別の実施例において、マイクロ流体噴出装置に対する流体噴出器ヘッドを作製するプロセス(方法)が提供されている。このプロセスは、半導体基板を提供する段階と、該基板上に薄膜抵抗層を配置して複数の薄膜ヒータを提供する段階とを含む。この薄膜抵抗層は、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から成るナノ結晶構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料であり、約30から約100オーム/スクエアの範囲のシート抵抗を有する。この抵抗層は、約30から約70原子%のタンタル、約10から約40原子%のアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有する。導電体層がその薄膜ヒータ上に配置され、その薄膜ヒータとのアノード連結部及びカソード連結部を画成すべくエッチングされる。不動態層、誘電体、接着層、並びに、キャビテーション層から選択された1つ或はそれ以上の層が薄膜ヒータ及び導電体層の上に配置される。ノズル・プレートが半導体基板に結着されて流体噴出器ヘッドを提供する。
【0005】
更に別の実施例において、薄膜抵抗体を作製する方法が提供される。この方法は、半導体基板を提供することと、該基板を略室温以上から約350℃までの範囲の温度まで加熱することとを含む。約50から約60原子%タンタルと、約40から約50原子%のアルミニウムを含有するタンタル・アルミニウム合金ターゲットは、基板に上に反応性スパッタリングされる。このスパッタリング段階中、窒素ガスの流量とアルゴン・ガスの流量とは、窒素対アルゴンの流量比約0.1:1から約0.4:1までの範囲となるように提供される。このスパッタリング段階は、薄膜抵抗体が約300から約3000Å(オングストローム)の範囲の厚みを伴って基板上に配置されると終了される。薄膜抵抗体は、約30から約70原子%タンタル、約10から約40原子%アルミニウム、並びに、約5から約30原子%窒素を含有するTaAlN合金であり、基板に対して略均一なシート抵抗を有する。
【0006】
本発明の特定の実施例の長所等は、より低い動作電流を必要とする共に、ヒータ寿命にわたって相対的に一定の抵抗を維持しながら、実質的により高い周波数で動作され得るサーマル噴射ヒータを有する改善されたマイクロ流体噴射ヘッドを提供することを含み得る。またこの噴射ヒータは、より小さな駆動トランジスタで抵抗体を駆動させることができる増大された抵抗をも有し、それによって、ヒータを駆動すべくアクティブな装置に必要とされる基板領域を潜在的に低減する。ヒータを駆動すべくアクティブな装置に必要とされる領域における低減はより小さな基板の使用を可能とでき、それによって装置のコストを潜在的に低減する。ここに記載された薄膜抵抗体を作製する製造方法の長所は、薄膜ヒータが堆積される基板の表面にわたって略均一なシート抵抗を有することを含み得ることである。
【0007】
本発明の更なる長所等は、同様参照符号が幾つかの図面を通じて類似或は同様な要素を指示している本発明の1つ或はそれ以上の非限定的局面を図示している以下の図面と連携して考慮し、例示的実施例の詳細な記載を参照して明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照すると、マイクロ流体噴出装置に対する流体カートリッジ10が図示されている。このカートリッジ10は、流体を流体噴出ヘッド14に供給するカートリッジ・ボディ12を含む。流体は、カートリッジ・ボディ12内の貯蔵領域に含有され得るか、或は、遠隔ソースからカートリッジ・ボディまで供給され得る。
【0009】
流体噴出ヘッド14は、半導体基板16と、ノズル穴20を含むノズル・プレート18とを含む。本発明の一実施例において、カートリッジがインクジェット・プリンタ22(図2)等のマイクロ流体噴出装置に着脱自在に結着されることが好ましい。従って、電気的な接点24は、マイクロ流体噴出装置への電気的接続部のためにフレキブル回路26上に設けられる。フレキシブル回路26は、流体噴出ヘッド14の基板16と接続されている電気的トレース28を含む。
【0010】
流体噴出ヘッド14の一部の、実物大ではない、拡大断面図が図3に図示されている。一実施例において、流体噴出ヘッド14は、基板16とノズル穴20との間のノズル・プレート18に形成された流体チャンバー32における流体を加熱するための流体噴出アクチュエータとして、サーマル加熱要素30を好ましくは含有する。サーマル加熱要素30は薄膜ヒータ抵抗体であり、例示的実施例において、以下により詳細に記載されるように、タンタル、アルミニウム、窒素の合金を構成されている。
【0011】
流体は基板16内の開口或はスロット34を通じて、そして、該スロット34を流体チャンバー32と接続する流体チャネル36を通じて流体チャンバー32に提供される。ノズル・プレート18は、接着層38等によって、基板16に接着性的に結着され得る。図3に描写されているように、流体チャンバー32及び流体チャネル36を含むフロー構成はノズル・プレート18内に形成され得る。しかしながらこのフロー構成は別体の厚膜層内に設けられ得て、ノズル穴だけを含有するノズル・プレートはその厚膜層に結着され得る。例示的実施例において、流体噴出ヘッド14はサーマル或は圧電性インクジェット印刷ヘッドである。しかしながら本発明は、インク以外の他の流体が本発明に従ったマイクロ流体噴出装置で噴出され得るように、インクジェット印刷ヘッドに限定させる意図はない。
【0012】
再び図2を参照すれば、流体噴出装置はインクジェット・プリンタ22であり得る。このプリンタ22は、1つ或はそれ以上のカートリッジ10を保持すると共に、ペーパ42等の媒体42にわたってカートリッジ10を移動させてカートリッジ10から流体をその媒体上に堆積するキャリッジ40を含む。先に詳述したように、カートリッジ上の接点24はキャリッジ40上の接点と合致して、プリンタ22及びカートリッジ10の間に電気的な接続部を提供している。プリンタ22内のマイクロ・コントローラは、媒体42を横切るキャリッジ40の移動を制御して、プリンタ22の動作を制御するためのコンピュータ等の外部装置からのアナログ及び/或はディジタル入力を変換する。流体噴出ヘッド14からの流体の噴出は、プリンタ22内のコントローラと連携して流体噴出ヘッド14上の論理回路によって制御される。
【0013】
流体噴出ヘッド14の実物大ではない平面図が図4に示されている。流体噴出ヘッド14は、半導体基板16と該基板と結着されたノズル・プレート18とを含む。この半導体基板16の各種装置領域のレイアウトが示され、論理回路44、ドライバ・トランジスタ46、並びに、ヒータ抵抗体30に対する例示的な箇所を提供している。図4に示されるように、基板16は単一スロット34を含み、該スロット34は当該スロット34の両側に配置されているヒータ抵抗体30にインク等の流体を提供する。しかしながら本発明は、単一スロット34を有する基板16、或は、スロット34の両側に配置されたヒータ抵抗体30等の流体噴出アクチュエータに限定されない。例えば、本発明に従った他の基板は多数のスロットを含み得て、それらスロットの一方側或は両側に配置された流体噴出アクチュエータを具備する。基板はスロット34を含まなくともよく、それによって流体は基板16の縁を巡ってアクチュエータに向かって流れる。単一スロット34よりもむしろ、基板16は、1つ或はそれ以上のアクチュエータ装置に対して1つずつと云うように、多数のスロット或は多数の開口を含み得る。ポリイミド等のインク抵抗性材料から形成されるノズル・プレート18は、基板16と結着される。
【0014】
ドライバ・トランジスタ46に対して必要とされる基板16のアクティブ領域48は、図5におけるアクティブ領域48の平面図で詳細に図示されている。この図は典型的なヒータ・アレイとアクティブ領域48の一部を表している。接地バス50及び電力バス52はアクティブ領域46における装置やヒータ抵抗体30に電力を供給すべく設けられている。
【0015】
マイクロ流体噴出ヘッド14に必要とされる基板16のサイズを低減するために、(W)によって示されるドライバ・トランジスタ46のアクティブ領域幅が低減される。例示的な実施例において、基板16のアクティブ領域48は、約100から約400ミクロンまでの範囲の幅寸法Wと、約6,300ミクロンから約26,000ミクロンまでの範囲の全長寸法Dとを有する。ドライバ・トランジスタ46は約10ミクロンから約84ミクロンまでの範囲のピッチで設けられている。
【0016】
1つの例示的実施例において、半導体基板16内における単一ドライバ・トランジスタ46の領域は、約100ミクロンから約400ミクロン未満までの範囲のアクティブ領域幅(W)と、例えば約15,000μm未満のアクティブ領域とを有する。より小さなアクティブ領域46は約0.8ミクロンから約3ミクロン未満までの範囲のゲート長及びチャネル長を有するドライバ・トランジスタ46の使用によって達成され得る。
【0017】
しかしながらドライバ・トランジスタ46の抵抗は、その幅Wと比例する。より小さなドライバ・トランジスタ46の使用は、該ドライバ・トランジスタ46の抵抗を増大する。よって、ヒータ抵抗とドライバ・トランジスタ抵抗との間の一定比を維持するために、ヒータ30は比例的に増大され得る。より高い抵抗ヒータ30の利益は、該ヒータがより少ない駆動電流を必要とすることを含むことができる。ヒータ30の他の特徴との組み合わせで、本発明の一実施例はより高い効率と、より高い周波数動作のヘッド能力とを有する噴出ヘッド14を提供することである。
【0018】
より高い抵抗ヒータ30を提供すべく幾つかの方法が存在する。1つのアプローチはより高い縦横比ヒータを用いことであり、即ち、その幅よりも充分に大きな長さを有するヒータを用いることである。しかしながらそうした高い縦横比設計は、流体チャンバー32内に空気を捕獲させる傾向がある。高い抵抗ヒータ30を提供する別のアプローチは、より高いシート抵抗を有する薄膜から形成されるヒータを提供することである。1つのそうした材料としてはTaNである。しかしながら比較的薄いTaNは、不充分なアルミニウム障害特性を有し、それによってマイクロ流体噴出装置に用いる他の材料よりも適合性がより低いものとしている。アルミニウム障害特性は、抵抗層が隣接トランジスタ装置に対する接触領域にわたって且つ該接触領域内に堆積させられる際、特に重要であり得る。保護装置無しで、接触領域内の例えばTiW無しで、薄膜TaNは、接触金属として堆積されたアルミニウムと下側に横たわるシリコン基板との間の拡散を防止するには不充分である。
【0019】
本発明の一実施例に従えば、例示的なヒータは、タンタル・アルミニウム、並びに、窒素から成る合金から形成された薄膜ヒータ30である。先に記載された薄膜TaNヒータとは対照的に、本発明のそうした実施例に従って形成された薄膜ヒータ30も、より高い抵抗ヒータ30を提供できる共に、アルミニウム接点及びシリコン基板の間の中間障害層の使用無しに隣接トランジスタ接触領域内に適切な障害層を提供できる。
【0020】
薄膜ヒータ30は、タンタル・アルミニウム合金ターゲットを窒素及びアルゴンのガスの存在下における基板16上にスパッタリングすることによって提供され得る。一実施例において、タンタル・アルミニウム合金ターゲットは、好ましくは、約50から約60の原子%タンタルと、約40から約50の原子%アルミニウムとの範囲にある組成を有する。例示的実施例において、好ましくは、結果としての薄膜ヒータ30は約30から約70の原子%タンタルの範囲の組成、より好ましくは、約50から約60の原子%タンタルと、約10から約40の原子%アルミニウム、更により好ましくは、約20から約30の原子%アルミニウムと、約5から約30の原子%窒素との範囲の組成、より好ましくは、約10から約20の原子%窒素との範囲の組成を有する。例示的実施例に従った薄膜ヒータ30のバルク抵抗性は、好ましくは、約300から約1000マイクロ・オーム・cmまでの範囲である。
【0021】
先に記載された特性を有するTaAlNヒータ30を製造するために適切なスパッタリング条件が望まれる。例えば、一実施例において、基板16は、スパッタリング段階中、室温以上まで、より好ましくは約100℃から約350℃まで加熱され得る。また、窒素ガス対アルゴン・ガスの流量比、スパッタリング電力、並びに、ガス圧力は、好ましくは、比較的狭い範囲内である。一例示的プロセス(方法)において、窒素ガス対アルゴン・ガス流量比は、約0.1:1から約0.4:1までの範囲であり、スパッタリング電力は約40から約200キロワット/mであり、そして、圧力は約1から約25ミリリットルまでの範囲である。本発明の一実施例に従ったTaAlNヒータ30を提供する適切なスパッタリング条件は以下の表1に付与されている。
【0022】
【表1】

【0023】
先行するプロセスに従って形成されたヒータ30は、約10から約100オーム/スクエアまでの範囲の基板16の表面領域にわたる比較的均一なシート抵抗を示す。この薄膜ヒータ30のシート抵抗は約2パーセント未満、より好ましくは約1.5パーセント未満の全基板表面にわたる標準偏差を有する。そうした均一抵抗率はヒータ30を含む噴射ヘッド14の品質を著しく改善する。先行するプロセスに従って形成されたヒータ30は、約5パーセント未満の抵抗変化を伴って約800℃までの高温ストレスを許容できる。本発明のそうした実施例に従って形成されたヒータ30は、高電流ストレスをも許容できる。また、特許文献1に記載された常温基板上にバルク・タンタル及びアルミニウムのターゲットをスパッタリングすることによって形成されたTaAlN抵抗体と異なり、本発明のそうした実施例に従って形成された薄膜ヒータ30は、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から本質的には成る実質的なモノ-結晶構造を有することを特徴とし得る。ヒータ抵抗体30に対する材料としてTaAlNを用いることによって、ヒータ抵抗体30を提供する層は隣接トランジスタ装置への接点に対する金属障害を提供すべく拡張され得て、メモリ装置及び他の用途に対する基板16上のヒューズ材料として使用され得る。
【特許文献1】米国特許第4,042,479号、Yamaguchi等
【0024】
先に記載されたプロセスに従って形成されたヒータ30を含む例示的なヒータ・スタック54を示す噴出ヘッド14の一部のより詳細な図示は、図6に図示されている。ヒータ・スタック54は、絶縁基板16上に設けられる。第1層56は、先に記載されたプロセスに従って基板16上に堆積されるTaAlNから形成された薄膜抵抗体層である。
【0025】
薄膜抵抗層56の堆積後、金、アルミニウム、銅、並びに、その類等の導電性金属から形成された導電性層58は、薄膜抵抗層56上に堆積される。導電性層58は当業者に既知である任意の適切厚みを有し得るが、例示的実施例においては、好ましくは約0.4から約0.6ミクロンまでの範囲の厚みを有する。導電性層58の堆積後、この導電性層は抵抗層56までのアノード58A及びカソード58Bの接点を提供すべく、そして、アノード及びカソード58A,58Bの間にヒータ抵抗体30を画成すべくエッチングされる。
【0026】
次いで不動態体層或は誘電体層60は、ヒータ抵抗体30、アノード及びカソード58A及び58B上に堆積され得る。層60は、炭素等のダイヤモンド、炭素等のドープされたダイヤモンド、酸化シリコン、酸窒化シリコン、窒化シリコン、シリコン・カーバイド、並びに、窒化シリコン及びシリコン・カーバイトの組み合わせから選択され得る。例示的実施例において、特に好適な層60は約1000から約8000Åまでの範囲の厚みを有する炭素等のダイヤモンドである。
【0027】
炭素材料等のダイヤモンドが層60として使用されると、接着層62がその層60上に堆積され得る。この接着層62は、窒化シリコン、窒化タンタル、窒化チタン、酸化タンタル、並びに、その類から選択され得る。例示的実施例において、その接着層の厚みは、好ましくは、約300から約600Åの範囲である。
【0028】
層60として炭素等のダイヤモンドが使用された場合、接着層62の堆積後、キャビティーション層64が堆積され得て、ヒータ抵抗体30を覆うべくエッチングされ得る。例示的なキャビティーション層64は、約1000から約6000Åまでの範囲の厚みを有するタンタルである。
【0029】
不動態或は誘電体層60を保持することは望ましく、任意選択の接着層62や出来る限り薄いキャビティーション層64は、ヒータ抵抗体30を噴出される流体の腐食性或は機械的損害効果からの適切な保護を提供しもする。薄膜層60,62,64はヒータ・スタック54の全厚み寸法を低減できると共に、ヒータ抵抗体30に対する低減された電力要件や増大された効率を提供できる。
【0030】
ひとたびキャビティーション層64が堆積されたならば、この層64や下側に横たわる層若しくは複数層60及び62はパターニングされ得て、ヒータ抵抗体30の保護を提供すべくエッチングされ得る。二酸化シリコンから形成された第2の誘電体層は、次いで、ヒータ・スタック54上や基板の他の表面上に堆積され得て、ヒータ・ドライバや他の装置への接点用に基板上に堆積される引き続く金属層の間の絶縁を提供する。
【0031】
先行する記載や添付図面から当業者には明らかなように、種々の変更や変形は本発明の実施例内で為され得ることが意図されている。従って、先の記載や添付図面が例示的実施例だけの図示であり、それに限定されないこと、そして、本発明の真の精神及び範囲が添付の特許請求項の範囲を参照して決定されることが明確に意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドを含む、実物大ではない、マイクロ流体噴出装置カートリッジである。
【図2】図2は、インクジェット・プリンタと、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドを含むインクカートリッジとの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドの位置の、実物大ではない、断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドに対する基板上の典型的なレイアウトの、実物大ではない、平面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドのヒータ・スタック領域の断面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施例に従ったマイクロ流体噴出ヘッドのアクティブ領域の一部の実物大ではない平面図である。
【符号の説明】
【0033】
10 流体カートリッジ
12 カートリッジ・ボディ
14 流体噴出ヘッド
16 半導体基板
18 ノズル・プレート
20 ノズル穴
22 インクジェット・プリンタ
24 接点
26 フレキシブル回路
28 電気的トレース
32 流体チャンバー
30 サーマル加熱要素
34 スロット
36 流体チャネル
38 接着層
40 キャリッジ
42 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体ヘッド用の半導体基板であって、該基板が該基板上に配置された複数の流体噴出アクチュエータであり、それら流体噴出アクチュエータの各々が、薄膜ヒータと該ヒータと隣接する1つ或はそれ以上の保護層とを含む薄いヒータ・スタックを含み、前記薄膜ヒータが、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から本質的に成るナノ-結晶構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料から構成され、その薄膜材料が約30から約100オーム/スクエアまでの範囲のシート抵抗を有すると共に、約30から約70原子%までのタンタル、約10から約40原子%までのアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有することから成る半導体基板。
【請求項2】
前記薄膜ヒータが、約100℃から約350℃までの範囲の温度まで加熱された基板上に、窒素含有雰囲気中で、タンタル・アルミニウム合金ターゲットを反応性スパッタリングするプロセスによって形成された薄膜層を含む、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記保護層の内の少なくとも1つが、炭素材料等のダイヤモンドを含む、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項4】
炭素層等のダイヤモンドが、約1000から約8000Åまでの範囲の厚みを有する、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記薄膜ヒータが、約300から約3000Åまでの範囲の厚みを有する、請求項2に記載の半導体基板。
【請求項6】
インク接触面としてキャビティーション層を更に含み、該キャビティーション層が約1000から約6000Åまでの範囲の厚みを有する、請求項3に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記キャビティーション層と前記炭素層等のダイヤモンドとの間に配置された接着層を更に含み、該接着層が約400から約600Åまでの範囲の厚みを有する、請求項6に記載の半導体基板。
【請求項8】
前記接着層が、窒化シリコン及び窒化タンタルから選択された材料で構成されている、請求項7に記載の半導体基板。
【請求項9】
前記複数の流体噴出アクチュエータを駆動する複数のドライブ・トランジスタを更に備え、該ドライブ・トランジスタが、約100から約400ミクロン未満のまでの範囲のアクティブ領域幅を有する、請求項1に記載の半導体基板。
【請求項10】
請求項1に記載の前記半導体基板を含むインクジェット・プリンタ。
【請求項11】
前記マイクロ流体噴出ヘッドが、約6から約20までの薄膜ヒータ/スクエア・ミリメートルの範囲の薄膜ヒータから成る高密度を含む、請求項10に記載の半導体基板。
【請求項12】
マイクロ流体噴出装置に対する流体噴出器ヘッドを作製する方法であって、
半導体基板を提供する段階と、
前記基板上に薄膜抵抗層を堆積する段階であり、複数の薄膜ヒータを提供し、その薄膜抵抗層が、本質的には、AlN、TaN、並びに、TaAl合金から成り、約30オーム/スクエアから約100オーム/スクエアまでの範囲のシート抵抗を有し、そして、約30から約70原子%のタンタル、約10から約40原子%のアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有するナノ結晶構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料を有するナノ結晶構造を有するタンタル・アルミニウム窒素薄膜材料から構成されることから成る段階と、
前記薄膜ヒータ上に導電性層を堆積する段階と、
前記導電性層をエッチングする段階であり、アノード及びカソードの前記薄膜ヒータへの接続部を画成することから成る段階と、
不動態層、誘電体、接着層、キャビティーション層から選択される1つ或はそれ以上の層を前記薄膜ヒータ及び前記導電性層の上に堆積する段階と、
ノズル・プレートを前記半導体基板に結着する段階と、
の諸段階を含む方法。
【請求項13】
前記半導体基板上に前記薄膜抵抗層を堆積しながら、該半導体基板を約100℃から約350℃までの範囲の温度まで加熱することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記薄膜抵抗層が、窒素含有雰囲気中で、前記基板上にタンタル・アルミニウム合金ターゲットをスパッタリングすることによって堆積させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薄膜抵抗層が、窒素含有雰囲気中で、前記基板上にタンタル・アルミニウム合金ターゲットをスパッタリングすることによって堆積させる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記薄膜ヒータ及び導電性層の上に堆積された前記保護層の内の少なくとも1つが、炭素材料等のダイヤモンドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記炭層等のダイヤモンドが、約1000Åから約8000Åまでの範囲の厚みを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記薄膜抵抗層が、約300Åから約3000Åまでの範囲の厚みを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記保護装置の内の少なくとも1つが、約1000Åから約6000Åまでの範囲の厚みを有するキャビティーション層を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
薄膜抵抗体を作製する方法であって、
半導体基板を提供する段階と、
前記基板を約室温以上から約350℃までの範囲の温度まで加熱する段階と、
約50から約60原子%のタンタル、約40から約50原子%のアルミニウムを含有するタンタル・アルミニウム合金ターゲットを前記基板上に反応性スパッタリングする段階と、
前記スパッタリング段階中、窒素ガスの流量とアルゴン・ガスの流量とを提供する段階であり、窒素対アルゴンの流量比が約0.1:1から約0.4:1までの範囲であることから成る段階と、
前記薄膜抵抗体が約300から約3000Åまでの範囲の厚みを伴って前記基板上に堆積されると、前記スパッタリング段階を終了する段階と、
の諸段階を含み、
前記薄膜抵抗体が、約30から約70原子%までのタンタル、約10から約40原子%までのアルミニウム、並びに、約5から約30原子%の窒素を含有するTaAlN合金を含み、そして前記薄膜抵抗体が前記基板に対して実質的に均一なシート抵抗を有することから成る方法。
【請求項21】
前記スパッタリング段階が、約40から約200キロワット/平方メートルまでの範囲の電力で実行される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記スパッタリング段階が、約1から約25ミリリットルまでの範囲の圧力で実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記基板の温度が、約100から約300℃までの範囲である、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−526143(P2007−526143A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551264(P2006−551264)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/001809
【国際公開番号】WO2005/069947
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(591194034)レックスマーク・インターナショナル・インコーポレーテツド (142)
【氏名又は名称原語表記】LEXMARK INTERNATIONAL,INC
【Fターム(参考)】