説明

高次シラン化合物及び薄膜形成方法

【課題】常圧下で、塗布法により、基体上に、均一なゲルマニウムドープシリコン導電膜を形成する方法およびそのためのリン原子含有高次シラン化合物の製造法の提供。
【解決手段】光重合性シラン化合物およびゲルマニウム化合物を含有する溶液に、400nmより長い波長の光線を照射せしめてゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を生成せしめるゲルマニウム原子含有高次シラン化合物の製造法。上記方法で得られたゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を含む溶液を基板に塗布し、さらにその塗布基板を熱処理することからなるゲルマニウム含有シリコン膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布法で成膜可能なゲルマニウムシリコン原子含有高次シリコン化合物の製造法並びにゲルマニウムドープシリコン膜を形成する方法に関する。さらに詳しくは、集積回路、薄膜トランジスタ、光電変換装置、および感光体等の用途に応用される、良質なシリコン膜を容易に形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路や薄膜トランジスタ等に応用される半導体用シリコンの製造法としては、CZ法あるいはFZ法等の引き上げ法あるいは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等の真空プロセス等が挙げられる。このような手法では、全面にシリコン膜を形成した後、フォトリソグラフィーにより不要部分を除去するといったプロセスでシリコン膜の作成を行なうのが一般的である。しかし、これらの方法では、大掛かりな装置が必要であること、原料の使用効率が悪いこと、原料が気体であるため扱いにくいこと、大量の廃棄物が発生すること等といった問題がある。
【0003】
半導体の薄層は種々の電子デバイスで使用されている。例えば、種々の量子井戸および超格子構造は、光電子移動トランジスタ(HEMT)、レーザーダイオード、発光ダイオード、及び光検出器で使用されてきた。このような構造は周知の格子整合及びエピタキシャル技術により製造されてきた。
アモルファス及び多結晶半導体は、薄膜トランジスタ(TFT)で使用されるが、常圧下で、塗布法により、基体上に、均一なゲルマニウムドープシリコン膜の均一な薄膜を形成するプロセスは未だ完成されていない。
一方、近年、情報機器の高速大容量化、モバイル化が進んでおり、MOSトランジスタの高速・低消費電力化が望まれている。これまで素子の微細化により特性改善が図られてきたが、近い将来、素子微細化は限界にくると予想される。そこでチャネル領域にひずみを持たせたシリコンやシリコンゲルマニウム等を用いて電子や正孔を高移動度化し、高速・低消費電力化をねらう技術が注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光重合性シラン化合物とゲルマニウム化合物から光照射によりゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を製造する方法を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、大型専用装置を必要とする気相からの堆積法を用いず、簡便な方法である常圧下での、塗布法により、基体上に、均一なゲルマニウム燐ドープシリコン導電膜を形成する方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、この方法によって得られる、ゲルマニウムドープシリコン膜を電子デバイス用途のシリコン膜として使用することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、本発明の上記方法に好適に用いられるゲルマニウム含有シラン化合物を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
下記式(1)
Si2i+2・・・・・・・・・・(1)
(ここで、iは2〜10の整数である)で表される鎖状シラン化合物、下記式(2)または(2’)
Si2j・・・・・・・・・・・(2)
Si2j−2・・・・・・・・・・(2’)
(ここで、jは3〜10の整数である)のそれぞれで表される環状シラン化合物及び下記式(3)
Si・・・・・・・・・・・・(3)
(ここで、kは6、8または10である)で表されるかご状シラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の液体状の光重合性シラン化合物並びに
ゲルマニウム化合物を含有する溶液に、300nmより長い波長の光線を照射せしめてゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を生成せしめることを特徴とするゲルマニウム原子含有高次シラン化合物の製造方法によって達成される。
【0010】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
本発明の方法で得られたゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を含む溶液を基板に塗布する工程と、該塗布基板を熱処理する工程からなることを特徴とするゲルマニウム含有シリコン膜の形成方法によって達成される。
【0011】
本発明によれば、本発明の上記目的及び利点は、第3に、
上記式(1)、(2)、(2’)および(3)のそれぞれで表わされるシラン化合物に400nmよりも長い波長の光線を照射せしめて生成した高次シラン化合物および前記式(4)または(5)で表わされるゲルマニウム化合物を含む溶液を準備する工程、この溶液を基板に塗布する工程および該塗布基板を熱処理する工程からなることを特徴とするゲルマニウム含有シリコン膜の形成方法によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、常圧下で、塗布法により、基体上に、均一なゲルマニウムドープシリコン導電膜を形成する方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のゲルマニウム原子含有高次シラン化合物の製造法で用いられる光重合性シラン化合物は、上記式(1)で表わされる鎖状シラン化合物、上記式(2)で表わされる環状シラン化合物および上記式(3)で表わされるかご状シラン化合物である。これらの光重合性シラン化合物は単独あるいは2種以上一緒に用いることができる。
このような光重合性シラン化合物の具体例としては、式(1)で表わされる鎖状シラン化合物として、ジシラン、トリシラン、ペンタシラン、ヘキサシラン、ヘプタシラン、オクタシラン、ノナシランおよびデカシランを挙げることができる。
【0014】
式(2)で表わされる1個の環状構造を有するものとして、例えばシクロトリシラン、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシラン等が挙げられる。式(2’)で表わされる2個の環状構造を有するものとして、例えば、ビシクロ[1.1.0]ブタシラン、ビシクロ[2.1.0]ペンタシラン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサシラン、ビシクロヘ[3.2.0]プタシラン、ビシクロ[3.3.0]オクタシラン、ビシクロ[4.3.0]ノナシラン、ビシクロ[4.4.0]デカシラン、スピロ[2.2]ペンタシラン、スピロ[4.5]デカシラン、スピロ[4.6]ウンデカシラン、スピロ[5.6]ドデカシラン等が挙げられる。
【0015】
さらに、式(3)で表わされるかご状シラン化合物としては、例えば下記の化合物を挙げることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
またこれらの骨格の水素原子を部分的にSiH基やハロゲン原子例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等に置換したシラン化合物を挙げることができる。これらは2種以上を混合して使用することもできる。
これらの中、分子内に少なくとも1つの環状構造を有するシラン化合物は光に対する反応性が極度に高く、光重合が効率よく行えるので、好ましく用いられる。その中でも、シクロテトラシラン、シクロペンタシラン、シクロヘキサシラン、シクロヘプタシランは、以上の理由に加えて合成、精製が容易であるので特に好ましい。
【0018】
また、本発明で用いられるゲルマニウム化合物は、上記式(4)または(5)で表わされる。式(4)および(5)中、Rの炭化素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基等が好ましい。Rとしては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、フェニル、シクロペンタジエニル、フルオレニルを挙げることができる。
また、式(5)または(6)で表わされるゲルマニウム化合物としては、例えば、tert−ブチルゲルマニウム、ジエチルゲルマン、ジ−n−ブチルゲルマン、ジフェニルゲルマン、トリメチルゲルマン、トリエチルゲルマン、トリ−n−ブチルゲルマン、トリフェニルゲルマン、シクロペンタジエニルトリメチルゲルマン、フェニルトリメチルゲルマン、フルオレニルトリメチルゲルマン、ジフェニルジメチルゲルマン、ヘキサメチルジゲルマン、ヘキサフェニルジゲルマン、テトラメチルゲルマン、テトラエチルゲルマン、テトラ−n−プロピルゲルマン、テトラ−n−ブチルゲルマン、テトラペンチルゲルマン、テトラフェニルゲルマン、テトラ−p−トリルゲルマン、トリス(トリメチルシリル)ゲルマン、ゲルマニウム(粉末)を挙げることができる。
本発明方法は、上記の如き、光重合性シラン化合物とゲルマニウム化合物とを無溶媒あるいは有機溶媒に溶解し、300nmよりも長い波長の光線を照射することにより実施され、好ましくは350nm以上、特に好ましくは400nm以上の光線を照射する事により達成される。
【0019】
シラン化合物の溶液に使用する有機溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、ジシクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デュレン、インデン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、スクワラン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、テトラヒドロジシクロペンタジエン、パーハイドロフルオレン、テトラデカヒドロアントラセンの如き炭化水素溶媒;ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンの如きエーテル溶媒;さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドの如き極性溶媒を挙げることができる。これらの内、シラン化合物の溶解性と該溶液の安定性の点で炭化水素溶媒、エーテル溶媒が好ましく、とりわけ炭化水素溶媒が特に好ましい。これらの溶媒は、単独でも、あるいは2種以上の混合物としても使用できる。
【0020】
光照射のための上記溶液は、光重合性シラン化合物100重量部当り、ゲルマニウム化合物を、好ましくは0.01〜1000重量部、より好ましくは0.1〜100重量部で含有する。
また、有機溶媒は、光重合性シラン化合物とゲルマニウム化合物の合計100重量部当り、好ましくは10,000重量部以下、より好ましくは1,000重量部以下で用いられる。
光照射は非酸化性雰囲気中で、例えば窒素、アルゴン等の雰囲気中で行うのが好ましい。
光照射中の溶液の温度は、好ましくは0〜100℃であり、照射時間は例えば1分〜3時間、好ましくは5分〜1時間とすることができる。
光照射は、波長が300nmより長い光で行われる。
光照射には、例えば200〜750Wの超高圧水銀ランプが好ましく用いられる。照射エネルギーは例えば10〜10,000mW/cmとすることができ、好ましくは500〜6,000mW/cmとすることができる。
光照射により生成されたゲルマニウム原子含有高次シラン化合物は、これを有機溶媒に溶解して基板に塗布し、得られた塗布基板を熱処理する方法により、ゲルマニウム含有シリコン膜に変換することができる。
【0021】
このように、シリコン膜を形成する場合において、前記シラン化合物にドーパント源のゲルマニウム化合物を混入した後に光を照射するというプロセスは、従来の方法では見られない新規なプロセスである。かかるプロセスによれば、光の照射によって、分子レベルでドーパントとシラン重合体の結合を引き起こすことができる。その溶液を基板に塗布、熱処理することにより、性能のよいn型にドープされたシリコン膜を形成することができる。
上記塗布液はリン含有シラン化合物を0.001〜10重量%の濃度で含有するのが好ましい。また、塗布厚は、得られるゲルマニウム含有シリコン膜が、好ましくは1〜5,000nm、より好ましくは5〜500nmとなる量である。
塗膜の熱処理は20〜600℃で行うのが好ましく、100〜500℃で行うのがさらに好ましい。熱処理の雰囲気は、好ましくは酸素濃度:10ppm以下、水分濃度:10ppm以下であり、更に好ましくは酸素濃度:1ppm以下、水分濃度:1ppm以下であり、熱処理時間は例えば1分〜12時間、好ましくは5分〜2時間であるが、熱処理時間は加熱温度に応じて設定するのが望ましい。
【0022】
別法として、本発明によれば、シリコン膜の形成方法として、前記式(1)、(2)、(2’)および(3)のそれぞれで表わされるシラン化合物の少なくとも1種に300nmよりも長い波長の光線を照射せしめて生成した高次シラン化合物および前記式(4)または(5)で表わされるゲルマニウム化合物を含む溶液を準備する工程、この溶液を基板に塗布する工程および該塗布基板を熱処理する工程からなる方法が提供される。
上記高次シラン化合物の製造法はゲルマニウム化合物を使用しない他は、前記ゲルマニウム原子含有高次シラン化合物の製造法と同様に行うことができる。
この高次シラン化合物と前記式(4)または(5)で表わされるゲルマニウム化合物の使用割合は、高次シラン化合物100重量部当り、ゲルマニウム化合物が、好ましくは0.01〜1000重量部、より好ましくは0.1〜100重量部である。
これらの化合物を含む溶液を準備する工程で用いられる溶媒としては、前記有機溶媒と同じものを使用することができる。この溶液を塗布する工程および塗布基板を熱処理する工程はいずれも前記本発明の形成方法と同様にして行うことができる。
【0023】
前記2つの方法で形成されたドープシリコン膜は、加熱等のステップにより、更なる特性向上を図ることができる。
また、添加するドーパント源の濃度は、最終的に必要なシリコン膜中のドーパント濃度に応じて決めればよく、光を照射した後に溶剤で希釈して濃度を調節してもよい。
本発明のゲルマニウム原子含有高次シラン化合物(重合体)によれば、以上の効果により、従来の方法に比して容易に良質なシリコン膜を形成することができる。このようにして形成されるアモルファスシリコン膜は、更なる熱処理やエキシマレーザーアニール等の方法によって結晶化させ、更なる性能の向上を図ることもできる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明をさらに詳述する.本発明は実施例によりいかなる限定も受けるものではない。
【0025】
合成例1
温度計、冷却コンデンサー、滴下ロートおよび撹拌装置を取付けた内容量が3Lの4つ口フラスコ内をアルゴンガスで置換した後、乾燥したテトラヒドロフラン1Lとリチウム金属18.3gを仕込み、アルゴンガスでバブリングした。この懸濁液を0℃で撹拌しながらジフェニルジクロロシラン333gを滴下ロートより添加し、滴下終了後、室温下でリチウム金属が完全に消失するまでさらに12時間撹拌を続けた。反応混合物を5Lの氷水に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物を濾別し、水でよく洗滌した後シクロヘキサンで洗滌し、真空乾燥を行い、さらに酢酸エチルにて再結晶化を行い、白色固体150gを得た。
【0026】
得られた白色個体150gと乾燥したシクロヘキサン500mlを1Lのフラスコに仕込み、塩化アルミニウム20gを加え、反応温度を30℃に保ちつつ撹拌しながら、乾燥した塩化水素ガスを10時間バブリングした。ここで別途に、水素化リチウムアルミニウム50gとジエチルエーテル150mlを1Lのフラスコに仕込み、窒素雰囲気下、0℃で撹拌しながら上記反応混合物を加え、同温にて1時間撹拌、さらに室温で12時間撹拌を続けた。反応溶液を吸引濾過し、さらに濾液より副生物を除去した後、70℃、10mmHgで減圧蒸留を行ったところ、無色の液体が10g得られた。このものはIR、H−NMR、29Si−NMR、GC−MSの各スペクトルより、シクロペンタシランであることが判った。
【0027】
実施例1
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、シクロペンタシラン0.9ml及びtert−ブチルゲルマニウム0.1mlをホウケイ酸ガラス製サンプル管に入れ、撹拌し、750W超高圧水銀ランプ(HOYA Candeo Optronics社製 UL750)から発せられる405nm光(1,500mW/cm)を50分間照射し、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)を得た。
一方、窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、シクロペンタシラン1.0mlをホウケイ酸ガラス製サンプル管に入れ、撹拌し、200W超高圧水銀ランプ(HOYA Candeo Optronics社製 Execure3000)から発せられる405nm光(100mW/cm)を10分間照射し、シクロペンタシラン光重合体(II)を得た。
【0028】
ここで得られた、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)及びシクロペンタシラン光重合体(II)についてd−トルエンに溶解し、H−NMR及び29Si−NMRを測定した。
シクロペンタシラン光重合体(II)のH−NMRスペクトルには、2.8〜3.8ppmの領域にSiHあるいはSiH由来と思われるブロードなピークが観察された。一方、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)のH−NMRスペクトルには、2.8〜3.8ppmの領域にSiHあるいはSiH及びGeH,GeH,GeH由来と思われるブロードなピークと、0.7ppmにtert−Bu由来と思われるピークが観察された。
【0029】
また、シクロペンタシラン光重合体(II)の29Si−NMRスペクトルには、−98ppmにSiH由来と思われるトリプレットのピークと、−93ppmにSiH由来と思われるカルテットのピークが観察された。一方、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)の29Si−NMRスペクトルには、−98ppm付近にSiH由来と思われるマルチプレットのピークと、−93ppmにSiH由来と思われるマルチプレットのピークが観察された。
以上の測定結果より、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)は、シクロペンタシランを単独で重合したシクロペンタシラン光重合体(II)とは違う構造を持ち、つまりは、シクロペンタシラン−ゲルマニウム化合物であると推定される。
【0030】
実施例2
次いで、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)をt−デカリンに溶解し、20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(1)を調製した。
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、ホウケイ酸ガラス基板に対して20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(1)を回転数2,000rpmでスピンコート、次いで540℃で1時間加熱し、サンプル基板(A)、(シリコン膜厚60nm)を得た。
サンプル基板(A)についてESCAから元素組成比を求めたところ、SiとGeの組成比は、膜表面で93:7、約25nmエッチングしたところで94:6、約50nmエッチングしたところで94:6を示し、得られた膜が、シリコンとゲルマニウムを含有するシリコン−ゲルマニウム混合膜であることを示した。
【0031】
実施例3
シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I)0.1mlとシクロペンタシラン光重合体(II)0.9mlとを、混合して、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(I):シクロペンタシラン光重合体(II)=1:9の混合物を調製した後、t−デカリンに溶解し、20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(2)を調製した。
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、ホウケイ酸ガラス基板に対して20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(2)を回転数2,000rpmでスピンコート、次いで540℃で1時間加熱し、サンプル基板(B)、(シリコン膜厚65nm)を得た。
サンプル基板(B)についてESCAから元素組成比を求めたところ、SiとGeの組成比は、膜表面で99.2:0.8、約25nmエッチングしたところで99.3:0.7、約50nmエッチングしたところで99.3:0.7を示し、得られた膜が、シリコンとゲルマニウムを含有するシリコン−ゲルマニウム混合膜であることを示した。
【0032】
実施例4
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、シクロペンタシラン0.5ml及びtert−ブチルゲルマニウム0.5mlをホウケイ酸ガラス製サンプル管に入れ、撹拌し、750W超高圧水銀ランプ(HOYA Candeo Optronics(株)製 UL750)から発せられる405nm光(6,000mW/cm)を50分間照射し、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(III)を得た。
次いで、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(III)をt−デカリンに溶解し、20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(3)を調製した。
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、ホウケイ酸ガラス基板に対して20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(3)を回転数2,000rpmでスピンコート、次いで540℃で1時間加熱し、サンプル基板(C)(膜厚50nm)を得た。
サンプル基板(C)についてESCAから元素組成比を求めたところ、SiとGeの組成比は、膜表面で57:43、約25nmエッチングしたところで55:45を示し、得られた膜が、シリコンとゲルマニウムを含有するシリコン−ゲルマニウム混合膜であることを示した。
【0033】
実施例5
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、シクロペンタシラン0.2ml及びtert−ブチルゲルマニウム0.8mlをホウケイ酸ガラス製サンプル管に入れ撹拌、750W超高圧水銀ランプ(HOYA Candeo Optronics(株)製 UL750)から発せられる405nm光(7,500mW/cm)を50分間照射し、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(IV)を得た。
次いで、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(IV)をt−デカリンに溶解し、20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(4)を調製した。
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、ホウケイ酸ガラス基板に対して20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(4)を回転数2,000rpmでスピンコート、次いで540℃で1時間加熱し、サンプル基板(D)、(膜厚45nm)を得た。
サンプル基板(D)についてESCAから元素組成比を求めたところ、SiとGeの組成比は、膜表面で22:78、約20nmエッチングしたところで20:80を示し、得られた膜が、シリコンとゲルマニウムを含有するシリコン−ゲルマニウム混合膜であることを示した。
【0034】
実施例6
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、シクロペンタシラン0.1ml及びtert−ブチルゲルマニウム0.9mlをホウケイ酸ガラス製サンプル管に入れ撹拌、750W超高圧水銀ランプ(HOYA Candeo Optronics(株)製 UL750)から発せられる405nm光(7,500mW/cm)を60分間照射し、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(V)を得た。
次いで、シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体(V)をt−デカリンに溶解し、20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(5)を調製した。
窒素気流中(酸素濃度0.1ppm)、ホウケイ酸ガラス基板に対して20%−シクロペンタシラン−ゲルマニウム光重合体t−デカリン溶液(5)を回転数2,000rpmでスピンコート、次いで540℃で1時間加熱し、サンプル基板(E)(膜厚40nm)を得た。
サンプル基板(E)についてESCAから元素組成比を求めたところ、SiとGeの組成比は、膜表面で11:89、約20nmエッチングしたところで9:91を示し、得られた膜が、シリコンとゲルマニウムを含有するシリコン−ゲルマニウム混合膜であることを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
Si2i+2・・・・・・・・・・(1)
(ここで、iは2〜10の整数である)で表される鎖状シラン化合物、下記式(2)または(2’)
Si2j・・・・・・・・・・・(2)
Si2j−2・・・・・・・・・・(2’)
(ここで、jは3〜10の整数である)のそれぞれで表される環状シラン化合物及び下記式(3)
Si・・・・・・・・・・・・(3)
(ここで、kは6、8または10である)で表されるかご状シラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の液体状の光重合性シラン化合物並びに
ゲルマニウム化合物を含有する溶液に、300nmより長い波長の光線を照射せしめてゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を生成せしめることを特徴とするゲルマニウム原子含有高次シラン化合物の製造方法。
【請求項2】
上記ゲルマニウム化合物が下記式(4)
GeH4−x・・・・・・・・・・・(4)
ここで
Rは一価の炭化水素基でありそしてxは0〜4の整数である、
または下記式(5)
(RGeH3−y・・・・・・・・・(5)
ここで、Rの定義は式(4)に同じでありそしてyは0〜3の整数である、
で表わされる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法で得られたゲルマニウム原子含有高次シラン化合物を含む溶液を基板に塗布する工程と、該塗布基板を熱処理する工程からなることを特徴とするゲルマニウム含有シリコン膜の形成方法。
【請求項4】
下記式(1)
Si2i+2・・・・・・・・・・(1)
(ここで、iは2〜10の整数である)で表される鎖状シラン化合物、下記式(2)または(2’)
Si2j・・・・・・・・・・・(2)
Si2j−2・・・・・・・・・・(2’)
(ここで、jは3〜10の整数である)のそれぞれで表される環状シラン化合物及び下記式(3)
Si・・・・・・・・・・・・(3)
(ここで、kは6、8または10である)で表されるかご状シラン化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の液体状の光重合性シラン化合物に300nmよりも長い波長の光線を照射せしめて生成した高次シラン化合物および前記式(4)または(5)で表わされるゲルマニウム化合物を含む溶液を準備する工程、この溶液を基板に塗布する工程および該塗布基板を熱処理する工程からなることを特徴とするゲルマニウム含有シリコン膜の形成方法。

【公開番号】特開2008−31202(P2008−31202A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203109(P2006−203109)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】