説明

高温ガラスソルダー及びその使用

【課題】約1100℃以下のろう付け温度で加工でき、かつろう付け工程の終了後に約900℃までの作動温度で使用できる高温度用ガラスソルダーを提供する。
【解決手段】20℃〜300℃の温度範囲での線熱膨張α(20-300)を8×10-6-1〜11×10-6-1の範囲で有し、質量%で10〜45%未満のBaO、0〜25%のSrO(20〜65%のBaO+SrO)、10〜31%のSiO、2%未満のAl、0〜10%のCsO、0〜30%のRO、0〜30%のR、0〜20%のROからなるガラスソルダー。(ROはアルカリ土類金属酸化物、RはB等からなる酸化物、ROはTiO等の酸化物からなる。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温用途に特に適した、ガラスソルダー、特に非晶質の及び部分結晶化のガラスソルダー並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスソルダーは、通常は、特にガラス及び/又はセラミックの部品を互いに接合するか、もしくは該部品を金属製の部品と電気絶縁的に接合するための接合部を作成するために使用される。ガラスソルダーの開発において、その組成は、しばしば、長期安定な接合部を得るために、ガラスソルダーの熱膨張係数が互いに接合される部品の熱膨張係数にほぼ相当するように選択される。他の接合部、例えばプラスチック製の接合部と比較して、ガラスソルダーを基礎とする接合部は、それらがハーメチックシールを生成でき、かつ比較的高温に耐えうるという利点を有する。
【0003】
ガラスソルダーは、一般にしばしば、ろう付け作業の間に溶解され、接合される部品と一緒に熱の作用下に接合部を形成するガラス粉末から製造される。ろう付け温度は、一般に、ガラスの半球温度(hemisphere temperature)にほぼ相当するように選択されるか、又は前記温度から通常は±20Kだけずれてよい。半球温度は、高温顕微鏡を用いた顕微鏡法において測定できる。それは、当初は円柱状であった試験体が一緒に溶融して半球形の塊を形成する温度を特徴付けるものである。半球温度は、関連技術文献から理解できるように、ほぼlog η=4.6の粘度を割り当てることができる。結晶フリーのガラスがガラス粉末の形で溶融され、再び冷却されて、固化する場合に、通常は、同じ融点で再溶融できる。結晶フリーのガラスソルダーを含む接合部の場合に、これは、該接合部が長期にわたり供されうる作動温度が、ろう付け温度以下でなければならないことを意味する。事実として、多くの用途における作動温度は、ろう付け温度を大きく下回る必要がある。それというのも、ガラスソルダーの粘度は、温度の上昇とともに低下し、かつ一定の流動性を有するガラスは、高温及び/又は高圧で接合部から絞り出されて、接合が衰えることがあるからである。この理由のため、高温用途のためのガラスソルダーは、通常は、後の作動温度を大きく上回るろう付け温度もしくは半球温度を有する必要がある。
【0004】
かかるガラスソルダーの一つの利用分野は、例えば自動車のエネルギー源としてもしくは分散化エネルギー供給のために使用できる高温燃料電池における接合部である。燃料電池の一つの重要な種類は、例えば約1100℃までの非常に高い作動温度を有しうるSOFC(固体酸化物形燃料電池)である。ガラスソルダーを含む接合部は、通常は、燃料電池スタックの製造のために、すなわち複数の個々の燃料電池を1つのスタックが形成されるように接合するために使用される。かかる燃料電池は、既に知られており、絶え間なく改良されている。特に、今日の燃料電池開発のトレンドは、一般に、より低い作動温度の方向に向かっている。幾つかの燃料電池は、目下、800℃未満の作動温度に到達しうるので、ろう付け温度の低下は可能であり、また、ろう付け工程の間のSOFC部品へと低い熱応力が生じるため望ましい。
【0005】
燃料電池開発における重要な役割は、以下の開示の対象であるガラスソルダーによって担われている。
【0006】
DE19857057号C1は、10.0×10-6-1〜12.4×10-6-1の熱膨張係数α(20-950)を有するアルカリフリーなガラスセラミックソルダーを記載している。そこに記載されるソルダーは、20〜50モル%のMgOを含有する。高い含量のMgOを有するガラスは、実際に、迅速にかつ高い程度に結晶化する化合物をもたらす結晶化を大いに受けやすい。かかる迅速かつ充実の結晶化の場合に、ガラスソルダーによって接合される材料の良好な濡れを保証することは困難である。しかしながら、これは、各々の必要条件を最適に満たす接合部を提供しうるためには必要である。更に、この文献に記載されるガラスソルダーは、40〜50モル%のSiO2を含有する。しかしながら、SiO2の含量が高まると、融点の上昇が、そしてまたろう付け温度の上昇が引き起こされる。
【0007】
同様に、ガラスセラミックソルダーは、US6,532,769号B1及びUS6,430,966号B1に記載されている。これらは、約1150℃のろう付け温度のためにデザインされており、5〜15モル%のAl23を含有する。かかる高いろう付け温度は、現代の燃料電池のためには望ましくない。それというのも、それは、金属製の基板材料及び他の熱感受性材料を過剰な程度でさらすからである。
【0008】
DE102005002435号A1は、非晶質のガラスマトリクスと結晶相から成る複合ソルダー(composite solder)を記載している。そのガラスマトリクスは、20質量%を上回る高い含有率のCaO及びMgOを有するが、これは、比較的高い粘度及び高い誘電損失をもたらす。更に、Al23の含有率は、少なくとも10質量%である。Al23は、通常は、ガラスソルダー中で結晶化の制御のために使用されるが、またソルダーの熱膨張を減らすためにも使用され、従ってしばしば、該ガラスソルダーが高い熱膨張を有する材料の接合に使用される場合には逆効果である。
【0009】
DE10122327号A1は、11×10-6-1を上回る熱膨張係数α(20-300)を有するBaO−CaO−SiO2系から構成されるガラスソルダーであって、高温範囲でセラミックと金属も接合させるためのものを記載している。特に、12×10-6-1未満の膨張係数αを有する材料、例えば10×10-6-1の熱膨張を有するZrO2セラミックを接合させる場合に、適合の悪さの結果として熱応力が生じ、そしてこられは強度を下げるか、又は接合部の完全な破壊をもたらすことさえもある。それらのガラスは、45〜55質量%までのBaO含有率を有する。高いBaO含有率は、高められた結晶化を引き起こすことがある。更に、SiO2の割合は、35〜45質量%の範囲にある。SiO2の含有率が高まると、熱膨張の低下がもたらされ、そして必要とされる接合温度の上昇がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE19857057号C1
【特許文献2】US6,532,769号B1
【特許文献3】US6,430,966号B1
【特許文献4】DE102005002435号A1
【特許文献5】DE10122327号A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の課題は、約1100℃以下のろう付け温度で加工でき、かつろう付け工程の終了後に約900℃までの作動温度で、接合部から絞り出されず及び/又は接合部から流出しないほど十分に高い粘度を有し、かつ20℃〜300℃の温度範囲での線熱膨張α(20-300)を8×10-6-1〜11×10-6-1の範囲で有し、従って燃料電池で使用される鋼にも、酸化物セラミック、特にZrO2及び/又はAl23セラミックにも適合されるろう付けガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、8×10-6-1〜11×10-6-1の熱膨張係数α(20-300)を有する高温用途のためのガラスソルダーであって、酸化物を基礎とする質量%で、
【表1】

[ROは、MgO、CaO、ZnO及びBeOからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物であり、R23は、B23、Ga23、In23、Y23、La23及びDy23からなる群から選択される酸化物であり、かつRO2は、TiO2、ZrO2及びHfO2からなる群から選択される酸化物である]を含有するガラスソルダーによって解決される。
【0013】
好ましい態様は、以下の通りである:
前記ガラスソルダーにおいて、酸化物を基礎とする質量%で、
【表2】

を含有する。
【0014】
前記ガラスソルダーにおいて、更に、それぞれの場合に、酸化物を基礎とする質量%で、2%までの、CrO及び/又はPbO及び/又はV25及び/又はWO及び/又はSnO及び/又はCuO及び/又はMnO及び/又はCoO及び/又はSb23を含有する。
【0015】
前記ガラスソルダーにおいて、ろう付け作業の後に、非晶質のガラスとして存在する。
【0016】
前記ガラスソルダーにおいて、ろう付け作業後に、結晶質の材料の割合が、酸化物を基礎として質量%で、50%以下である、部分結晶化ガラスセラミックとして存在する。
【0017】
前記ガラスソルダーにおいて、結晶相が、SrBa2Si39及び/又はBa0.8Sr3.2SiO3及び/又はBa0.8Sr0.2SiO3及び/又はBaSi25及び/又はBaSiO3、Ba2SiO4及び/又はBa4Si616及び/又はBa2Si38及び/又はSr2MgSi27を含有し、好ましくはトリディマイトを含有しない。
【0018】
前記ガラスソルダーにおいて、820℃〜1100℃の半球温度を有する。
【0019】
前記ガラスソルダーを、高温接合部、特に燃料電池、排ガスセンサ及び/又はスパークプラグのための高温接合部の製造のために用いる。
【0020】
前記ガラスソルダーを、高い耐熱性を有する焼結体及び/又はシートを製造するために用いる。
【0021】
前記ガラスソルダーを、高膨張鋼及び/又は高クロム合金及び/又はAl23及び/又はZrO2セラミックを接合するために用いる。
【0022】
特に記載がない限り、以下に示される全てのパーセンテージは、酸化物を基礎とする質量に対するものである。
【0023】
本発明によれば、ガラスソルダーは、8×10-6-1〜11×10-6-1の線熱膨張係数α(20-300)を有する。本発明のガラスソルダーは、10%から45%未満のBaOと、10%から31%までのSiO2と、場合により25%までのSrOと、2%未満のAl23を含有する。しかしながら、BaO及びSrOの割合は、BaO及びSrOの合計が20%から65%までであるように選択される。これらの2種の成分の含有率がより高いと、ろう付け作業の間のガラスソルダーの結晶化傾向が、不所望に高まりうることが判明した。他方で、BaO及びSrOの含有率の合計が20%未満であると、熱膨張は8×10-6-1未満にまで低下し、必要な範囲の範囲外となる。更に、本発明者は、ガラスソルダーの高いAl23含有率が特にその特性に悪影響を及ぼしうること、特に比較的高い含有率が、溶融温度及び/又はろう付け温度の増加をもたらし、かつ熱膨張の低下をもたらすことを確認した。従って、Al23含有率は、本発明によれば、2%未満のAl23に制限される。
【0024】
更に、本発明によるガラスソルダーは、場合により、MgO、CaO、ZnO及びBeOからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物ROを30%までの量で含有する。アルカリ土類金属酸化物ROの含有率は、また、ガラスソルダーの結晶化特性を制御しうる。更なる好ましい効果は、誘電損失をRO含有ガラスによって低減できることである。更に、融点及びガラス転移温度は、ネットワークを変形させる(network−transforming)アルカリ土類金属酸化物によって低減されうる。ROの含有率は、また、熱膨張係数の増加をもたらすので、それは融合される部品にガラスソルダーを適合させる簡単な方法である。
【0025】
更に、B23、Ga23、In23、Y23、La23及びDy23からなる群から選択される酸化物R23は、場合により、本発明のガラスソルダー中に30%までの量で存在する。これらの成分R23もまた、ろう付け作業の間のガラスソルダーの結晶化挙動を制御できる。同時に、それらは、ガラス形成温度を高めうる。ガラス形成温度Tgが高まると、ガラスソルダーの使用温度は高まる。
【0026】
更なる任意の成分は、20%までの量の、TiO2、ZrO2及びHfO2からなる群から選択される酸化物RO2である。これらの酸化物は、特に、特定の実施態様で所望される部分結晶化のための核としてはたらきうる。
【0027】
本発明のガラスソルダーは、(不純物を除き)好ましくはTeO2を含まない。それというのも、とりわけその原材料は人の健康を害するものだからである。これは、本発明のガラスソルダーのTeO2含有率が、好ましくは0.3質量%未満、特に好ましくは0.2質量%未満であることを意味する。
【0028】
しかしながら、酸化物RO、R23及びRO2は、本発明のガラスソルダー中に、全体で2%を上回り35%までの範囲の量で存在せねばならない。
【0029】
本発明によれば、ガラスソルダーは、アルカリ金属もしくはアルカリ金属酸化物Li2O、Na2O、K2Oが少ない。本発明によれば、全体で1質量%未満のこれらの示したアルカリ金属酸化物がガラスソルダー中に存在する。本発明のガラスソルダーは、特に好ましくは(不純物を除き)、これらの示したアルカリ金属酸化物もRb2O及びFr2Oも含まない。アルカリ金属は、一般に、電気絶縁特性に悪影響を及ぼすと言われている。耐化学薬品性もアルカリ金属の含有率の増加とともに低下する。しかしながら、本発明者は、比較的高い含有率のCs2Oであっても、本発明のガラスソルダーの絶縁特性に悪影響を及ぼさないことを見出した。この理由のため、10質量%までのCs2Oは、本発明のガラスソルダー中に存在してよい。本発明のガラスソルダーにおいて、Cs2Oは、好ましくは更に、ガラスソルダーの耐化学薬品性を受け入れられないほど悪化することなく、少なくとも一定割合のB23に置き換わる。これは、好ましい一実施態様において、Cs2O及びB23の含有率の合計が30質量%以下であることを意味する。しかしながら、当然のようにまた、ガラスソルダーは、不純物を除き、Cs2Oを含まなくてもよい。
【0030】
更なる添加剤も当然のように可能であり、同様に本発明によって包含される。本発明の目的のために、ガラスソルダーという用語は、ろう付け作業の前にろう付けガラスとして使用される非晶質の粉砕ガラス(ground glass)と、ろう付け作業の間に該粉砕ガラスから形成される材料であって、とりわけガラス質の、部分結晶化された、ガラスセラミックもしくは他の形態で存在しうる材料の両方を含む。
【0031】
好ましい一実施態様においては、本発明によるガラスソルダーは、15%までのB23を含有する。B23含有率は、結晶化挙動に好ましい影響を有するだけでなく、溶融挙動にも、ひいてはガラス溶融にも好ましい影響を及ぼす。極めて高いB23含有率は、他方では、耐化学薬品性に悪影響を及ぼしうる。更に、15%を上回るB23含有率は、ガラスソルダーからの酸化ホウ素の蒸発をもたらすことがあり、それは同様に望ましくない。SiO2の含有率と共に、B23の含有率も、安定なガラスの形成を大きな程度で促しうる。
【0032】
本発明によるガラスソルダーは、好ましくは5%までのCaOを含有する。CaO含有率は、同様に、ろう付け作業の間にガラスソルダーの結晶化に影響を及ぼすことがあるが、同様に、CaOの添加による不所望な結晶相トリディマイトの形成を抑えることも可能である。
【0033】
6%までの含有率のMgOは同様に好ましい。より高い含有率のMgOは、ろう付け作業の間に高められた結晶化をもたらすことがあり、それは、溶融温度の上昇をもたらすことがある。このMgOの含有率は、焼結と流動との間の間隔を>300℃の値まで高める。
【0034】
10%未満までの含有率のTiO2は同様に好ましい。より高い含有率のTiO2は、高められた結晶化をもたらすことができ、こうして流動をより高い温度にずらすことができる。
【0035】
更なる好ましい一実施態様において、本発明のガラスソルダーは、それぞれの場合に、2%までのCrO及び/又はPbO及び/又はV25及び/又はWO及び/又はSnO及び/又はCuO及び/又はMnO及び/又はCoO及び/又はSb23を含有する。これらの成分は、例えば、様々な基体に対する濡れ特性の改善に寄与しうる。しかしながら、本発明のガラスソルダーは、特に好ましくは、少なくとも大部分はPbOを含まない。すなわちPbOは、1質量%以下の量で存在し、本発明のガラスソルダーは、(不純物を除き)、非常に特に好ましくはPbOを含まない。
【0036】
更に、原材料もしくは純化剤(refining agent)、例えばAs23及び/又はBaClによる不純物は、本発明のガラスソルダー中に、それぞれの場合に0.2%までの量で存在してよい。
【0037】
ろう付け作業の後に、本発明のガラスソルダーは、好ましくは非晶質のガラスとして存在する。これは、前記ガラスソルダーが実質的に結晶質領域を有さないことを意味する。
【0038】
しかしながら、代替的な好ましい一実施態様においては、本発明のガラスソルダーは、部分結晶化されたガラスセラミックであって、結晶性材料の割合が全質量に対して50%以下であるガラスセラミックとして存在する。
【0039】
これらの部分結晶性ガラスにおいては、不所望な結晶相の過剰な結晶化もしくは析出は、R23及びROの添加によって回避することができる。接合作業の間の過剰な結晶化は、粘度上昇をもたらし、そしてろう付け温度を約1100℃より高い値にシフトさせる。
【0040】
SrBa2Si39及び/又はBa0.8Sr3.2SiO3及び/又はBa0.8Sr0.2SiO3及び/又はBaSi25及び/又はBaSiO3及び/又はBa2SiO4及び/又はBa4Si616及び/又はBa2Si38及び/又はSr2MgSi27は、好ましくは結晶相として形成される。トリディマイトの形成は、CaOの添加によって回避できる。
【0041】
部分結晶質の実施態様においては、本発明のガラスソルダーの組成は、好ましくは、該ガラスソルダーがゆっくりと結晶化するように設定される。それが非常に強力に結晶化した場合には、しばしば、十分な濡れは得られないこととなる。特に、ろう付けガラスは、接合部を生成させる場合には、一般に、非結晶化形もしくは部分結晶化形でろう付けすべき位置に導入すべきである。それというのも、融合すべき部品の濡れに必要な温度がその際にはより低いからである。
【0042】
本発明者は、特にこの実施態様においては、結晶相SrBa2Si39が析出する三元系BaO−SrO−SiO2において共晶となることを見出した。酸化物のBaO、SrO及びSiO2の質量比は、これらの3種の酸化物の点での組成が、記載した共晶の範囲であるように選択される。こうして、焼結と流動との間に、300℃未満の狭い温度間隔を有するガラスを得ることが可能である。
【0043】
本発明によるガラスソルダーは、好ましくは、820℃〜1100℃の半球温度を有し、従ってほぼこの温度で接合のために使用できる。この可能な温度範囲により、該ガラスソルダーは、またレーザボンディング法での加工のためにも適している。
【0044】
本発明のガラスソルダーは、一般に、その構成成分を慣用のガラス溶融装置中で溶融してガラスを形成させ、引き続きこれをミル粉砕(milling)してガラス粉末を形成させることによって製造される。該ガラス粉末は、例えば接合部中に、分配可能なペーストの形でもしくは予備焼結された成形体の形で導入することができる。
【0045】
接合部の最適な強度は、ソルダーの熱膨張が融合すべき材料と最適に適合されている場合に達成される。更に、結晶化プロセスによる熱膨張係数の変化の結果としてソルダー中に過剰な応力は生じない。本発明によるガラスソルダーは、とりわけ不所望な結晶相の回避によってこれを保証する。
【0046】
本発明のガラスソルダーは、その物理特性のため、高温耐久性接合部に特に適している。本発明の目的のために、高温耐久性とは、約650℃より高い温度範囲を意味する。かかる接合部は、特に好ましくは、燃料電池、特にSOFC(固体酸化物形燃料電池)で使用できる。燃料電池での使用の一例は、個々の複数のSOFCを接合して、1つのSOFCスタックを形成することである。更なる利用分野は、燃焼装置、例えば自動車用途、船舶のエンジン、発電所、航空機もしくは宇宙航行におけるセンサである。好ましい一用途は、本発明のガラスソルダーを、内燃機関を有する自動車の排気系統におけるセンサのために用いる使用である。
【0047】
しかしながら、本発明のガラスソルダーは、高い耐熱性を有する焼結体を製造するためにも使用できる。
【0048】
焼結体の製造方法は、十分に知られている。一般に、本発明のガラスソルダーの出発材料は、互いに粉末形で混合され、一般に有機バインダーと混合され、そして所望の形状に圧縮される。出発材料の粉末の代わりに、事前に溶融された本発明によるガラスをミル粉砕し、それとバインダーとを混合することも可能である。次いで、圧縮されたガラス・バインダー体を、焼結温度にもたらす。その際に、バインダーは焼失し、ガラス成分は焼結温度で一緒に焼結されうる。次いで、得られた焼結体を、接合される部品と接触させ、ろう付け作業によってこれらを接合させる及び/又はこれらに接合させることができる。
【0049】
ろう付けにおける焼結体の使用は、焼結体が成形部材であり、事実上任意の形状で製造できるという利点を有している。例えばしばしば使用される形状は、中空の円柱形であり、それは、電気接続ピンと一緒に金属部品の貫通開口部中に導入して、ろう付け後に電気絶縁された接続ピンを有する好ましくはハーメチックシールされたガラス・金属リードスルー(lead−through)を得ることができる。かかるガラス・金属リードスルーは、多くの電機部品で使用され、当業者に公知である。
【0050】
本発明の結晶化ガラスソルダー及び/又は複合材料の更なる好ましい一用途は、該ガラスソルダー及び/又は該複合材料を含むシートの製造である。かかるシートは、前記の焼結体に類似しているが、十分にフレキシブルに製造することもできる。形状物は、これらから抜き出すことができ、かつ好ましくは平坦な部品を互いに接合させるために使用できる。
【0051】
本発明を、以下に、本発明によるガラスソルダーの特性により、また比較例を補助的に用いて説明する。
【実施例】
【0052】
まず、ろう付けガラスは、ガラス溶融装置中で溶融させた。以下の特性は、1つのブロック、少なくとも1つの大型の破片で一般に存在するろう付けガラスについて測定したものである。
【0053】
定義:
α(20-300) 20℃〜300℃の範囲の線熱膨張係数
g ガラス転移温度、又は略して転移温度
ST 軟化温度;この温度で、粘度の対数は、7.6である。
【0054】
ろう付けガラスの組成及びそれらの物理特性を、第1表にまとめる。
【0055】
【表3】

【0056】
ろう付けガラスの特性決定の後に、一般に粉末状のガラスソルダーは、該ろう付けガラスからミル粉砕法によって製造される。本実施例において、約10μmのD(50)及び63μm未満のD(99)を有する粒度分布を有する粉末が、融合されたろう付けガラスから提供され、バインダーと一緒に加工することで、配量可能なペーストが得られた。粉末とバインダーは、三本ロールミルによって均質化した。該バインダーは、一般にニトロセルロース、エチルセルロースもしくはアクリレート系バインダーなどの有機物質である。一般に、結晶化ガラスソルダーの特性には更なる影響はないが、それが加熱の間に完全に焼失できるように選択すべきである。
【0057】
ガラスソルダーの熱的特性決定は、引き続き高温顕微鏡によって実施される。この目的のために、円柱形の試験体を、ろう付けガラスもしくは複合材料から、特性決定されるべき粉末形に圧縮し、そしてこの試験体をセラミック台上で10K/分で加熱する。試験体の形状の変化が観察され、その際、特定の粘度を割り当てることができる以下の特徴点は、一般に非結晶化サンプルの場合に温度上昇とともに生ずる:
焼結の開始:この温度で、粉末粒は融合を始める。試験体の高さは結果的に低下する。粘度の対数は、約10±0.3である。
【0058】
軟化温度:この温度STKは、試験円柱の縁部丸まりの開始によって特徴付けられる。粘度の対数は、約8.2である。
【0059】
球形温度(Spherical temperature):粘度の対数は、約6.1である。
【0060】
半球温度:試験体は、この温度でほぼ半球の形状を有する。粘度の対数は、約4.6±0.1である。
【0061】
流動温度:この温度で、試験体の高さは、初期高さの約1/3である。粘度の対数は、約4.1±0.1である。
【0062】
結晶化温度Tc:示差熱分析(DTA)によって測定されたピーク結晶化温度、発熱反応。
【0063】
高温顕微鏡を用いて測定されたガラスソルダーの熱的特性も、結晶化後のそれらの特性も、同様に第1表にまとめている。
【0064】
他方で、全ての実施例E1〜E6は、本発明により望ましい挙動を有する。これらは、1100℃を大きく下回る半球温度を達成する。半球温度は、しばしばまた、封止温度(sealing temperature)とも呼ばれる。これにより、本発明のガラスソルダーは、レーザボンディング法に特に適したものとなる。それというのも、比較的高いプロセス温度において、ガラスソルダーによって接合されるべき及び/又は封止されるべきセラミックは、光学特性の変化(吸収係数の増加)のためレーザによって励起されることとなり、こうして温度の不所望な突然の上昇が生じうるからである。
【0065】
接合のためにレーザ照射が使用される場合に、接合されるべき領域は、一般に非常に迅速に加熱され、その際、結晶化は十分に抑制される。安定的な結合は、数秒ないし数分の範囲の期間内に得ることができる。ポジティブな接合実験は、ダイオードレーザ(出力:3kW)を用いて808nmと940nmの発光波長を用いて実施した。出発ガラスを、粉末として液体と一緒に撹拌して、懸濁液を形成し、接合されるべき部分に塗布し、引き続きレーザを照射した。
【0066】
本発明のガラスソルダーは、本発明の課題に応じた全ての好ましい特性を互いに兼ね備える。中間物質としてのろう付けガラスは、慣用の溶融方法によって、良好な溶融特性と高すぎない溶融温度で製造することができる。それは、所望の範囲で熱膨張を有し、また特に必要に応じて制御可能な結晶化傾向をも有する。その組成は、不所望な結晶相の形成を効果的に抑制し、それにより長期間安定な低応力接合部を可能にする。それらがアルカリ金属を含まないため、本発明のガラスソルダーは、高い温度でさえも優れた電気絶縁特性を有する。
【0067】
本発明のガラスソルダーは、900℃を上回る高い作動温度を可能にする接合部を、約820℃から最大で1100℃の低い加工温度で得ることを可能にする。更に、インターコネクタ材料の良好な濡れは、部分結晶化が存在しない又はゆっくりであるため、ソルダーの導入後にのみ、長期安定な接合部を可能にする。本発明によるガラスソルダーは、8×10-6-1〜11×10-6-1の熱膨張を有する材料間での気密の高温安定な電気絶縁的な接合部を製造するために使用できる。かかる材料は、例えば高膨張鋼、高クロム合金、また酸化物セラミック、特にZrO2である。
【0068】
特に、ZrO2とZrO2との間の接合、またZrO2と高い熱膨張を有する他の材料、つまりCFY、デュルコロイ(Durcolloy)、インコネル(Inconel)もしくはCrofer22APUなどの高膨張合金との間の接合を、達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
8×10-6-1〜11×10-6-1の熱膨張係数α(20-300)を有する高温用途のためのガラスソルダーであって、酸化物を基礎とする質量%で、
【表1】

[ROは、MgO、CaO、ZnO及びBeOからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物であり、R23は、B23、Ga23、In23、Y23、La23及びDy23からなる群から選択される酸化物であり、かつRO2は、TiO2、ZrO2及びHfO2からなる群から選択される酸化物である]を含有するガラスソルダー。
【請求項2】
酸化物を基礎とする質量%で、
【表2】

を含有する、請求項1に記載のガラスソルダー。
【請求項3】
更に、それぞれの場合に、酸化物を基礎とする質量%で、2%までの、CrO及び/又はPbO及び/又はV25及び/又はWO及び/又はSnO及び/又はCuO及び/又はMnO及び/又はCoO及び/又はSb23を含有する、請求項1又は2に記載のガラスソルダー。
【請求項4】
ろう付け作業の後に、非晶質のガラスとして存在する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラスソルダー。
【請求項5】
ろう付け作業後に、結晶質の材料の割合が、酸化物を基礎として質量%で、50%以下である、部分結晶化ガラスセラミックとして存在する、請求項1から3までのいずれか1項に記載のガラスソルダー。
【請求項6】
結晶相が、SrBa2Si39及び/又はBa0.8Sr3.2SiO3及び/又はBa0.8Sr0.2SiO3及び/又はBaSi25及び/又はBaSiO3、Ba2SiO4及び/又はBa4Si616及び/又はBa2Si38及び/又はSr2MgSi27を含有し、好ましくはトリディマイトを含有しない、請求項5に記載のガラスソルダー。
【請求項7】
820℃〜1100℃の半球温度を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のガラスソルダー。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラスソルダーを、高温接合部、特に燃料電池、排ガスセンサ及び/又はスパークプラグのための高温接合部の製造のために用いる使用。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラスソルダーを、高い耐熱性を有する焼結体及び/又はシートを製造するために用いる使用。
【請求項10】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のガラスソルダーを、高膨張鋼及び/又は高クロム合金及び/又はAl23及び/又はZrO2セラミックを接合するために用いる使用。

【公開番号】特開2011−168480(P2011−168480A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30172(P2011−30172)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】