説明

黒鉛粒子成形体及びその製造方法

【課題】 導電性に優れ、かつ、生産性に優れた黒鉛粒子成形体を提供すること。
【解決手段】
導電性を有するメッシュを、黒鉛含有率60〜90質量%の熱硬化性樹脂組成物中に埋没するようにプレス成形し、硬化させて得られた成形体であり、導電性を有するメッシュとしては、厚さが前記成形体の厚さの5〜30%であることが好ましく、また、熱硬化性樹脂組成物を構成する黒鉛粒子の平均粒径よりも大きい目開き寸法を有するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性の極めて良好な黒鉛粒子成形体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、燃料電池用のセパレータなどに好適に用いることのできる黒鉛粒子成形体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒鉛は、材質劣化が生じにくく、耐食性に優れた材料であり、また、電気抵抗が低く、良好な導電性を有する材料であることから、黒鉛粒子を熱硬化性樹脂等のバインダーで硬化成形した黒鉛粒子成形体は、例えば、燃料電池のセパレータなど、耐食性と導電性の要求される部位に利用されている。
【0003】
一方、銅、金、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料は黒鉛に比べて導電性に優れた材料ではあるが、還元雰囲気化や酸化雰囲気化に曝されることで材質劣化が生じやすく、耐食性の劣る材料である。
【0004】
そこで、黒鉛粒子成形体に、これら金属材料を埋設させて導電性を向上させるような試みがなされており、例えば、下記特許文献1には、複数の貫通穴を有した金属板を黒鉛粒子成形体に埋設させた燃料電池用セパレータについて開示されている。
【特許文献1】特開2002−198064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
黒鉛粒子成形体の導電性は、黒鉛粒子の密度が、緻密かつ均一であるほどより良好であるが、上記特許文献1の黒鉛粒子成形体では、金属板の表面はプレスされるが、金属板の貫通穴の内部はほとんどプレスされず、均一な密度にならないという問題点があった。そのため、成形材料を一旦バインダー(樹脂)の融点以上まで加熱し、成形材料に流動性を持たせてプレス成形をしていた。
【0006】
しかしながら、流動性を有する成形材料をプレス成形する際、加圧力を大きくすると、樹脂が浮き上がってしまい表層に樹脂層が形成され、導電性が損なわれやすいという問題点があることから、プレス成形時の加圧力は低く抑える必要があった。そのため、上記特許文献1では、成形材料を充分圧粉させることができず、得られる未硬化処理のプレス成形体は、強度、保形性共に劣るものとなりがちであったので、プレス成形体の硬化処理は、金型内で、プレスしながら行う必要があり、生産性が悪く、また、導電性の高い黒鉛粒子成形体が得られにくかった。
【0007】
したがって本発明の目的は、導電性に優れ、かつ、生産性の高い黒鉛粒子成形体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、導電性を有するメッシュを、黒鉛含有率60〜90質量%の熱硬化性樹脂組成物中に埋没するようにプレス成形し、硬化させて得られた成形体であることを特徴とする黒鉛粒子成形体を提供するものである。
【0009】
上記第1の発明によれば、黒鉛粒子成形体に導電性を有するメッシュが埋設されているので、成形体の電気抵抗が低く、導電性が良好である。
【0010】
また、黒鉛含有率の下限を60質量%としたことで、導電性を良好に保ち、また上限を90質量%としたことで、強度を確保することができる。
【0011】
また、この黒鉛粒子成形体は、成形材料をプレス成形し、このプレス成形体を硬化処理することで得られるが、プレス成形の際、特に上記熱硬化性樹脂組成物を融点以上まで加熱して流動性を持たせなくとも、比較的低温度であっても、プレスするだけで、メッシュの網目に黒鉛粒子がスムーズに充填され、緻密かつ均一な粒子密度を有するプレス成形体を得ることができる。
【0012】
更に、プレス成形時の加圧力を増加させても、メッシュの網目に樹脂が回り込んで流動するため、樹脂が表面に浮き上がりにくくなり、導電性を損なうことなく、黒鉛粒子を充填して保形性の高いプレス成形体を得ることができる。このため、プレス成形体を金型から取り出してから硬化処理を行うこともでき、生産性に優れている。
【0013】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記導電性を有するメッシュの厚さが、前記黒鉛粒子成形体の厚さの5〜30%であることを特徴とする。
【0014】
上記第2の発明によれば、導電性を有するメッシュが露出するのを防止して黒鉛粒子成形体の耐食性を損なうことなく導電性を向上させることができ、また、該メッシュと該熱硬化性樹脂組成物とを強固に密着させることができるので、導電性が極めて高い。
【0015】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明において、前記導電性を有するメッシュが、前記熱硬化性樹脂組成物を構成する黒鉛粒子の平均粒径よりも大きい目開き寸法を有することを特徴とする。
【0016】
上記第3の発明によれば、成形材料をプレスした時、メッシュの網目に黒鉛粒子がスムーズに流動して充填されるので、メッシュと黒鉛粒子とが良好に接触し、両者の境界面に生じる接触抵抗が少ないので、導電性を向上させることができる。
【0017】
本発明の第4は、前記第1〜3のいずれか一つの発明において、前記導電性を有するメッシュが、銅で構成されていることを特徴とする。
【0018】
上記第4の発明によれば、銅はコスト、導電性の観点から、極めて良好な材料であることから、コストパフォーマンスに優れている。
【0019】
本発明の第5は、前記第1〜4のいずれか一つの発明において、燃料電池用セパレータ、電極端子、電池電極材から選ばれた一種として用いることを特徴とする。
【0020】
上記第5の発明によれば、上記1〜4の発明の黒鉛粒子成形体は、従来の黒鉛粒子成形体よりも導電性に優れた黒鉛粒子成形体であることから、導電性と耐食性の要求される部材である燃料電池用セパレータ、電極端子、電池電極材として特に好適に用いることができる。
【0021】
本発明の第6は、導電性を有するメッシュを、熱硬化性樹脂と黒鉛粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物中に埋没させ、60〜100℃、500〜2000kgf/cmの条件でプレス成形し、その後、該プレス成形体を熱硬化処理することを特徴とする黒鉛粒子成形体の製造方法を提供するものである。
【0022】
上記第6の発明によれば、プレス成形時において、導電性を有するメッシュと、熱硬化性樹脂と黒鉛粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物とを、例えば、熱硬化性樹脂の融点以上まで加熱して流動性を持たせなくとも、プレスによりメッシュの線材の間隙に黒鉛粒子がスムーズに入り込み、均一で緻密な粒子密度を有する黒鉛粒子成形体を得ることができ、成形を熱硬化性樹脂の融点以下の60〜100℃で行うことができる。また、熱硬化性樹脂の粘度が高い状態でプレス成形できるので、成形圧力を500〜2000kgf/cmとしても、プレス成形体の表面に樹脂が浮き上がるといった虞れがなく、得られる黒鉛粒子成形体は、極めて高い導電性を有する。
【0023】
そして、導電性を有するメッシュと、熱硬化性樹脂と黒鉛粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物とを、60〜100℃、500〜2000kgf/cmの成形条件でプレス成形して得られるプレス成形体は、緻密でかつ均一な粒子密度を有し、また、未硬化の状態であっても保形性の高いものであるため、プレス成形体の硬化処理を金型から取り出して行うことができ、生産性も優れている。
【0024】
本発明の第7は、前記第6の発明において、前記熱硬化性樹脂組成物をシート状成形体とし、該シート状成形体で、前記導電性を有するメッシュを挟み込んでプレス成形することを特徴とする。
【0025】
上記第7の発明によれば、得られる黒鉛粒子成形体における導電性を有するメッシュを埋設させる位置を特定でき、例えば、黒鉛成形体を所望の形状に加工したり、貫通穴などを設ける場合において、導電性を有するメッシュが露出するといったことを防止できる。
【0026】
本発明の第8は、前記第6又は7の発明において、前記導電性を有するメッシュとして、前記黒鉛粒子成形体の厚さの5〜30%となるものを用いることを特徴とする。
【0027】
上記第8の発明によれば、導電性を有するメッシュが露出するのを防止して黒鉛粒子成形体の耐食性を損なうことなく導電性を向上でき、また、該メッシュと該熱硬化性樹脂組成物とを強固に接着させることができるので導電性の高い黒鉛粒子成形体を製造することができる。
【0028】
本発明の第9は、前記第6〜8のいずれか一つの発明において、前記導電性を有するメッシュとして、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる黒鉛粒子の粒径よりも大きい目開き寸法を有するものを用いることを特徴とする。
【0029】
上記第9の発明によれば、メッシュの網目を介して黒鉛粒子粉を接触させることができるので、異質な材料が接触する境界面に生じる接触抵抗を低減でき、より導電性の高い黒鉛粒子成形体を製造することができる。
【0030】
本発明の第10は、前記第6〜9のいずれか一つの発明において、前記導電性を有するメッシュとして、銅で構成されたものを用いることを特徴とする。
【0031】
上記第10の発明によれば、コスト、導電性の観点から銅は優れた材料であり、また、熱硬化性樹脂組成物との接着性が良好であることから、導電性の高い黒鉛粒子成形体を低コストで製造することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の黒鉛粒子成形体は、導電性が極めて良好であり、また、強度も高く、耐食性・導電性を要求する部材に特に好適に利用できる。
【0033】
また、この黒鉛粒子成形体を製造するにあたって、成形材料をプレスして黒鉛粒子の圧粉されたプレス成形体とするが、その際、成形材料に均一に圧力がかかりやすく、メッシュの線材の外周に沿って黒鉛粒子が入り込むので、特に成形材料を樹脂の融点以上まで加熱して流動性を持たせなくとも、均一かつ緻密な粒子密度を有するプレス成形体を得ることができる。そのため、プレス成形時の加圧力を大きくすることができ、また、これにより、黒鉛粒子が充分圧粉され、保形性の高いプレス成形体を得ることができるので、硬化処理をプレス成形した金型などから取り出して行うことができ、生産性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の黒鉛粉成形体は、導電性を有するメッシュと、それを包含する黒鉛含有率60〜90質量%の熱硬化性樹脂組成物とで構成されている。
【0035】
導電性を有するメッシュとしては、固有抵抗率が黒鉛よりも低く、5mΩ・cm以下である材料で構成されているものであれば特に限定はなく、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケル又はそれらの合金などが挙げられ、なかでも、コストと導電性のバランスの観点から銅であることが好ましい。
【0036】
メッシュの構造としては、平織り状、綾織り、平畳織り、綾畳織りなどが挙げられる。
【0037】
また、メッシュを構成する線材の平均線径(直径)としては、0.025〜2.0mmであるものが好ましく、より好ましくは0.1〜0.2mmである。線径が0.025mm未満であると、単位面積当りの質量を同じにしようとすると、目開きが小さくなり、プレス時にメッシュの網目に黒鉛粒子がスムーズに充填されず、メッシュと黒鉛粒子とが良好に接触できないことがあり、それにより両者の境界面に生じる接触抵抗が大きくなり、導電性が損なわれる虞れがある。また、2.0mmより大きいと、単位面積当りの質量を同じにしようとすると、目開きが大きくなりすぎて、黒鉛粒子同士の接触が多くなり、導電性の著しい向上が認められないことがある。
【0038】
また、メッシュを構成する線材の断面形状としては、特に限定しないが、熱硬化性樹脂組成物が回り込みやすくするため丸線が好ましい。
【0039】
メッシュの厚さとしては、得られる黒鉛粉成形体の厚さの5〜30%であることが好ましく、より好ましくは10〜20%である。メッシュの厚さが、得られる黒鉛成形体の厚さの5%未満であると、導電性の上昇効果がほとんど得られず、また、メッシュによる補強強化もほとんど得られず、更にはメッシュと熱硬化性樹脂組成物との界面で剥離してしまう虞れがあり、一方、30%より厚いと、メッシュが露出して、得られる黒鉛粒子成形体の耐食性が劣ったり、また、メッシュと熱硬化性樹脂組成物との界面で剥離してしまう虞れがある。
【0040】
メッシュの目開き寸法としては、使用する黒鉛粒子の粒径よりも大きいことが好ましく、より好ましくは150〜250μmである。メッシュの目開き寸法が使用する黒鉛粒子の粒径よりも大きいものであれば、成形材料をプレスした時、メッシュの網目に黒鉛粒子がスムーズに流動して充填されるので、メッシュと黒鉛粒子とが良好に接触し、両者の境界面に生じる接触抵抗が少なくなるので、導電性を向上させることができる。
【0041】
熱硬化性樹脂組成物としては、黒鉛粒子の含有量が60〜90質量%で、熱硬化性樹脂の含有量が10〜40質量%である組成物を用いる。黒鉛粒子の含有量は、80〜90質量%であることが好ましい。また、熱硬化性樹脂の含有量は、10〜20質量%であることが好ましい。黒鉛粒子の含有量が60質量%未満であると、導電性の不充分な黒鉛粒子成形体となりがちであり、一方、90質量%を越えると、強度的に脆くなりやすく、耐久性や保形性に劣る黒鉛粒子成形体となりがちである。
【0042】
黒鉛粒子としては、平均粒径5〜100μmであるものが好ましく、より好ましくは10〜60μmである。平均粒子径が5μm未満であると、黒鉛粒子成形体の導電性が劣りがちであり、100μmよりも大きいと、黒鉛粒子成形体の強度が劣りがちであり、また、黒鉛粒子成形体の厚みを薄くすることが困難である。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、アクリル樹脂、あるいはこれらの混合系などのものが挙げられ、なかでも黒鉛粒子との濡れ性に優れているという理由からフェノール樹脂が好ましい。
【0044】
また、熱硬化性樹脂組成物には、黒鉛粒子と熱硬化性樹脂のほかに、更に必要に応じてカーボンナノチューブやカーボン繊維などを含有させてもよい。これらの含有量は合計して5質量%以下とすることが好ましい。
【0045】
次に、本発明の黒鉛粒子成形体の製造方法について説明する。
図1(a)、(b)に示すように、まず、所望の形状を有するプレス金型1の下金型1aに、熱硬化性樹脂と黒鉛粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物2を充填し、導電性を有するメッシュ3を、該熱硬化性樹脂組成物2中に埋没させて、上金型1bによりプレス成形(以下「本プレス」と記す)する。
【0046】
本発明では、熱硬化性樹脂組成物2として、あらかじめ仮プレスしてシート状成形体としたものを用い、シート状成形体で導電性を有するメッシュを挟み込むようにして本プレスすることが好ましい。また、シート状成形体としては、熱硬化性樹脂組成物を、60〜100℃で、200〜2000kgf/cmで仮プレスしたものを用いることが好ましい。
【0047】
熱硬化性樹脂組成物2として仮プレスされたシート状成形体を用いることで、導電性を有するメッシュが所望の位置に配置された黒鉛粒子成形体を得ることができるので、例えば、黒鉛粒子成形体に穴などを設ける必要がある場合などにおいて、該メッシュが露出するといった問題を回避できる。
【0048】
本プレスは、成形温度60〜100℃、成形圧力500〜2000kgf/cmの条件で行う。成形温度としては60〜80℃であることが好ましい。また、成形圧力としては1000〜2000kgf/cmであることが好ましい。
【0049】
成形温度が60℃未満であると、粒子密度を緻密化させることができず、導電性の高い黒鉛粒子成形体が得られない虞れがあり、100℃よりも高いと、熱硬化性樹脂が流動性を持ち始めてしまうので、プレス成形により樹脂が表面に浮き上がりやすくなってしまい、黒鉛粒子成形体の導電性を損ないやすい。また、成形圧力が500kgf/cm未満であると、粒子密度を緻密化させることができず、導電性の高い黒鉛粒子成形体が得られない虞れがあり、また、2000kgf/cmよりも大きくしても、さほど黒鉛粒子成形体の粒子密度は向上せず、そればかりか、表面に樹脂層を形成してしまう虞れがあるので導電性が損なわれやすい。
【0050】
次いで、この所望の形状にプレス成形されたプレス成形体4を、図1(c)に示すように硬化処理して黒鉛粒子成形体とする。
【0051】
このプレス成形体4は、黒鉛粒子がしっかりと圧粉されているので、未硬化状態であっても保形性に優れたものである。そのため、硬化処理を金型内でプレスしながら行わなくとも、緻密で均一な粒子密度を有し、所望の形状を有した黒鉛粒子成形体を得ることができるので、例えば、未硬化処理のプレス成形体4を金型1から取り出し、加熱炉などに投入して硬化処理してもよい。
【0052】
硬化処理条件としては、使用する熱硬化性樹脂の種類により異なり、特に限定はしないが、例えば、フェノール樹脂を用いた場合は、150〜170℃で、0.5〜1時間とすることが好ましい。
【0053】
こうして得られた黒鉛粒子形体は、JIS−K−7194の導電性プラスチックの4探針法による抵抗試験方法に準拠した黒鉛粒子成形体の固有抵抗率が5mΩ・cm以下で、従来の黒鉛粒子成形体よりも導電性に優れ、更には、メッシュによる補強効果により、機械強度も優れたものであり、例えば、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータ、電極端子、電池電極材などのような特に耐食性と導電性の要求される部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下実施例を用いて本発明の効果を説明する。
【0055】
(実施例1)
平均粒子径17μmの黒鉛86質量%、フェノール樹脂14質量%からなる熱硬化性樹脂組成物を、1000kgf/cm、60℃の成形条件で仮プレスしてシート状成形体とした。次いで、このシート状成形体上に、銅メッシュ(目開き0.280mm、厚さ0.28mm)を設置し、更に同様のシート状成形体を銅メッシュ上に配置した。次いで、この積層体を1000kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ1.18mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して実施例1の黒鉛粒子成形体を得た。
【0056】
(実施例2)
実施例1のシート状成形体を用いた。次いで、シート状成形体上に、銅メッシュ(目開き0.280、厚さ0.28mm)を設置し、同様のシート状成形体を銅メッシュ上に配置して、1000kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ2.30mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して実施例2の黒鉛粒子成形体を得た。
【0057】
(実施例3)
実施例1のシート状成形体を用いた。次いで、シート状成形体上に、銅メッシュ(目開き0.154、厚さ0.20mm)を設置し、同様のシート状成形体を銅メッシュ上に配置して、1000kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ2.09mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して実施例3の黒鉛粒子成形体を得た。
【0058】
(実施例4)
実施例1のシート状成形体を用いた。次いで、シート状成形体上に、銅メッシュ(目開き0.154、厚さ0.20mm)を設置し、同様のシート状成形体を銅メッシュ上に配置して、500kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ2.44mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して実施例4の黒鉛粒子成形体を得た。
【0059】
(実施例5)
実施例1のシート状成形体を用いた。次いで、シート状成形体上に、銅メッシュ(目開き0.280、厚さ0.28mm)を設置し、同様のシート状成形体を銅メッシュ上に配置して、1000kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ5.61mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して実施例5の黒鉛粒子成形体を得た。
【0060】
(比較例1)
平均粒子径17μmの黒鉛86質量%、フェノール樹脂14質量%からなる熱硬化性樹脂組成物を、1000kgf/cm、60℃の成形条件でプレス成形(本プレス)して、厚さ1.90mmのプレス成形体を得た。そして、このプレス成形体を160℃で60分間硬化処理して比較例1の黒鉛粒子成形体を得た。
【0061】
〔物性試験〕
上記実施例1〜5及び比較例1の黒鉛粒子成形体について、JIS−K−7194の導電性プラスチックの4探針法による抵抗試験方法に準拠して、それぞれの黒鉛粒子成形体の固有抵抗率(mΩ・cm)を測定した。結果を表1に記す。
【0062】
【表1】

【0063】
上記結果より、導電性を有するメッシュを埋設した実施例1〜5の黒鉛粒子成形体は、導電性を有するメッシュを埋設していない比較例1の黒鉛粒子成形体よりも固有抵抗率が低く、導電性の極めて良好なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の黒鉛粒子成形体は、例えば燃料電池のセパレータや電極材料として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の黒鉛粒子成形体の製造方法の概略である。
【符号の説明】
【0066】
1:プレス金型
2:熱硬化性樹脂組成物
3:メッシュ
4:プレス成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有するメッシュを、黒鉛含有率60〜90質量%の熱硬化性樹脂組成物中に埋没するようにプレス成形し、硬化させて得られた成形体であることを特徴とする黒鉛粒子成形体。
【請求項2】
前記導電性を有するメッシュの厚さは、前記黒鉛粒子成形体の厚さの5〜30%である請求項1に記載の黒鉛粒子成形体。
【請求項3】
前記導電性を有するメッシュは、前記熱硬化性樹脂組成物を構成する黒鉛粒子の平均粒径よりも大きい目開き寸法を有する請求項1又は2に記載の黒鉛粒子成形体。
【請求項4】
前記導電性を有するメッシュは、銅で構成されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の黒鉛粒子成形体。
【請求項5】
燃料電池用セパレータ、電極端子、電池電極材から選ばれた一種として用いられる請求項1〜4のいずれか一つに記載の黒鉛粒子成形体。
【請求項6】
導電性を有するメッシュを、熱硬化性樹脂と黒鉛粒子とを含有する熱硬化性樹脂組成物中に埋没させ、60〜100℃、500〜2000kgf/cmの成形条件でプレス成形し、その後、該プレス成形体を熱硬化処理することを特徴とする黒鉛粒子成形体の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂組成物をシート状成形体とし、該シート状成形体で、前記導電性を有するメッシュを挟み込んでプレス成形する請求項6に記載の黒鉛粒子成形体の製造方法。
【請求項8】
前記導電性を有するメッシュとして、前記黒鉛粒子成形体の厚さの5〜30%のものを用いる請求項6又は7に記載の黒鉛粒子成形体の製造方法。
【請求項9】
前記導電性を有するメッシュとして、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる黒鉛粒子の粒径よりも大きい目開き寸法を有するものを用いる請求項6〜8のいずれか一つに記載の黒鉛粒子成形体の製造方法。
【請求項10】
前記導電性を有するメッシュとして、銅で構成されたものを用いる請求項6〜9のいずれか一つに記載の黒鉛粒子成形体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−12292(P2007−12292A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187840(P2005−187840)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】