説明

2端子可変静電容量MEMSデバイス

異なる作動電圧または「プルイン」電圧を有する複数のMEMSデバイスを並列に接続することによって形成された2端子可変静電容量デバイスが、説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変静電容量デバイスであり、特に、微小電気機械システム(microelectromechanical systems,MEMS)デバイスに基づく可変静電容量デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本願は2009年12月18日出願の米国特許出願公開第12/642421号明細書「2端子可変静電容量MEMSデバイス」(代理人番号No.QUALP017/082609)に対して、全ての目的について参照することにより本明細書に含まれるすべての開示について優先権を主張する。
【0003】
従来のMEMSバラクタ(静電容量スイッチまたはスイッチキャパシタとしても知られる)は、典型的には非常に小さな調整電圧範囲、つまり、デバイスの静電容量がアナログな方法で静電容量の最小値と最大値の間を信頼性良く制御されうる範囲にわたる電圧範囲を有する。
【0004】
例えば干渉変調器(interferometric modulator, IMOD)のような2状態安定MEMSデバイスは、二つの異なる静電容量を有する二つの安定な状態によって特徴づけられる。そのため、そのようなデバイスは可変静電容量デバイスとして用いることができるが、典型的には単に2つの安定な静電容量値のみ、つまり、デバイスの緩和状態(すなわち「アップ状態」静電容量)に対応する値、及びデバイスの作動状態(すなわち「ダウン状態」静電容量)に対応する値のみが表されるような利用に限られていた。
【0005】
さまざまな成功度で、より広い静電容量値の範囲を有するデバイスを実現するための種々の試みがなされている。しかしながら、そのようなデバイスのほとんどは、例えば、独立したデバイス制御信号及び電子回路、付加的なスイッチング回路、2つより多い端子、など望ましくない余計な要素を必要とする。そのようなデバイスの調整領域を拡張及び/または安定させることにより、それらのデバイスの応用領域を非常に広げるのに適したものにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によれば、可変静電容量デバイスが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的な実施形態に従えば、可変静電容量デバイスは、並列接続された複数のMEMSデバイスを含む。MEMSデバイスは緩和状態と作動状態の間のMEMSデバイスの遷移のそれぞれに対応する電圧における、複数の異なる作動電圧によって特徴づけられる。複数のMEMSデバイスは、特定のデバイスの変更を用いるように構成され、前記変更は、前記可変静電容量デバイスが静電容量対電圧特性によって特徴づけられ、前記静電容量対電圧特性は、複数の印加電圧範囲を含み、前記印加電圧範囲に対応する前記可変静電容量デバイスの静電容量の変化率は、実質的に前記可変静電容量デバイスに対する静電容量の最小値と最大値との間の静電容量対電圧特性によって表される静電容量の平均変化率よりも小さい。
【0008】
具体的な実施形態に従えば、可変静電容量デバイスは、並列接続された複数のMEMSデバイスを含む。それぞれのMEMSデバイスは、第一および第二の電極を含む。可変静電容量デバイスの第一の端子は、MEMSデバイスの第一の電極間の第一の電気的接続によって形成される。可変静電容量デバイスの第二の端子は、MEMSデバイスの第二の電極間の第二の電気的接続によって形成される。複数のMEMSデバイスは、前記MEMSデバイス間の特定のデバイスの変更を用いるように構成され、前記MEMSデバイスは、複数の異なる調整電圧範囲によって特徴づけられ、前記調整電圧範囲は、静電容量の最小値と最大値の間の前記MEMSデバイスの遷移のそれぞれに対応する。
【0009】
明細書の残りの部分及び図面を参照することにより、本発明の本質及び利点がさらに理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第一の干渉変調器の可動反射層が緩和位置にあり、第二の干渉変調器の可動反射層が作動位置にある、2つの干渉変調器の例を示す等角図である。
【図2】干渉変調器の例示的な一実施例に関する可動層の位置と印加電圧の関係を示す図である。
【図3A】干渉変調器の様々な代替的な実施例の断面図である。
【図3B】干渉変調器の様々な代替的な実施例の断面図である。
【図3C】干渉変調器の様々な代替的な実施例の断面図である。
【図3D】干渉変調器の様々な代替的な実施例の断面図である。
【図3E】干渉変調器の様々な代替的な実施例の断面図である。
【図4】本発明の具体的な一実施形態に従って実施されたMEMSデバイスの一例の簡略図である。
【図5】干渉変調器の代替的な一実施例の他の断面図である。
【図6】特定の干渉変調器の実施例について、柱状アンカーの重なりに対するプルイン電圧の変化を示すグラフである。
【図7A】本発明の具体的な実施形態に従って実施された可変静電容量MEMSデバイスと比較した従来のMEMSバラクタに関する、静電容量対電圧特性の関係を示すグラフである。
【図7B】本発明の具体的な実施形態に従って実施された可変静電容量MEMSデバイスと比較した従来のMEMSバラクタに関する、静電容量対電圧特性の関係を示すグラフである。
【図7C】本発明の具体的な実施形態に従って実施された可変静電容量MEMSデバイスと比較した従来のMEMSバラクタに関する、静電容量対電圧特性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明を実施するうえで発明者が意図する最良の形態を含む本発明の具体的な実施形態を詳細に参照する。これらの具体的な実施形態の例は、添付した図に示される。本発明はこれらの具体的な実施形態とともに説明されるが、本発明を説明された実施形態に限定する意図はないことは理解されるであろう。反対に、特許請求の範囲によって定義された本発明の思想及び範囲に含まれうるように、代替、改良及び等価物を包含するように意図される。以下の説明において、本発明の徹底的な理解を提供できるように、具体的な詳細が記載される。本発明は、これらの具体的な詳細のいくつかまたはすべてを含まないで実施されうる。加えて、本発明を不要に不明瞭にすることを避けるために、公知の特徴は、詳細に説明されないこともある。
【0012】
微小電気機械システム(MEMS)は、微小機械素子、アクチュエータ及び電子部品を含む。微小機械素子は、電気及び電気機械デバイスを形成するために、成膜、エッチング及び/または、基板及び/または成膜された材料層から部品を除去しまたは層を付加するその他のマイクロマシニングプロセスを用いて形成されうる。あるタイプのMEMS装置は、干渉変調器(IMOD)と呼ばれる。本明細書で用いられるように、干渉変調器または干渉光変調器という語句は、光学的な干渉の原理を用いて光を選択的に吸収及び/または反射するデバイスを指し示す。特定の実施形態において、干渉変調器は一対の導電性平板または層を備えてもよく、そのうち一方または両方は全体または一部が透明及び/または反射性であり適切な電気信号の印加によって相対的に動作することができるものでありうる。ある特定の実施形態において、一つの平板は基板上に成膜された固定された層からなってもよく、他方の平板は、空隙によって固定された層から離隔された、金属からなるメンブレンを備えうる。一方の平板のもう一方に対する位置関係は、干渉変調器に入射する光の光学的な干渉を変化させることができる。加えて、そのようなデバイスの静電容量は、これらの平板の間の関係に依存する。そのようなデバイスは幅広い領域で応用することができ、既存の製品を改良し、これまで開発されていない新しい製品の創出にその特徴が利用できるように、これらのタイプのデバイスの特性を利用可能とし及び/または改良することは、当技術分野にとって有益であろう。
【0013】
本発明の様々な実施形態に従えば、2端子可変静電容量デバイスは、異なる作動電圧または「プルイン」電圧を有する複数のMEMSデバイスを並列接続することにより可能となる。実施形態の特定の種類に従えば、MEMSデバイスは干渉変調器(IMOD)である。本発明のそのような実施形態に採用されうるIMODの背景について説明する。しかしながら、本発明によって可能となる可変静電容量デバイスは、例えば、幅広い様々なMEMSバラクタを含むMEMSデバイスのより広い領域から構成されうるということを、当業者であれば理解できることに注意すべきである。
【0014】
図1には一対の干渉変調器が示されている。これらのデバイスは、反射性又は非反射性のいずれかの状態にある。反射(「緩和」または「開」)状態においては、デバイスは入射可視光の大部分を反射する。非反射(「作動」または「閉」)状態にあるときは、デバイスは入射可視光をほとんど反射しない。実施例に依存して、「オン」及び「オフ」状態の光の反射特性は反対でありうる。そのようなMEMSデバイスはまた黒及び白に加えて選択された色を主に反射するようにも構成されうる。本発明の実施形態が基づくIMODまたはその他のMEMSデバイスの光学特性の少なくともいくつかはこのような実施形態の機能に関係がないものでありうることに注意すべきである。
【0015】
図1は二つの隣接したMEMS干渉変調器12a、12bを示す等角図である。それぞれの干渉変調器は、少なくとも一つの可変な大きさを有する光学共振ギャップを形成するようにたがいに対して可変かつ制御可能な距離に位置させられる一対の反射層を含む。反射層のうち一つは二つの位置の間を動くものでありうる。本明細書では緩和位置として称される第一の位置において、可動反射層は固定された部分的に反射性の層から相対的に大きな距離を取って位置させられる。本明細書では作動位置として称される第二の位置において、可動反射層は部分的に反射性の層とより近接して位置される。二つの層から反射された入射光は可動反射層の位置によって強めあいまたは弱めあって干渉し、それぞれのデバイスに対して全反射または非反射のいずれかの状態となる。
【0016】
左側に位置する干渉変調器12aでは、可動反射層14aが部分的に反射性の層を含む光学積層体16aから所定の距離で緩和位置にある状態が示されている。右側に位置する干渉変調器12bでは、可動反射層14bが光学積層体16bに対して近接した作動位置にある状態が示されている。光学積層体16a、16b(まとめて光学積層体16と称する)は、本明細書に示すように、典型的にはいくつかの融合した層を備え、融合した層はインジウムスズ酸化物(ITO)のような電極層と、クロムのような部分的に反射性の層と、透明の誘電体と、を含んでもよい。従って光学積層体16は導電性であり、部分的に透明かつ部分的に反射性である。また光学積層体16は例えば、透明な基板20上に上述の層の一つまたは複数を成膜することにより形成されうる。部分的に反射性の層は、様々な金属や半導体や誘電体のような部分的に反射性である様々な材料から形成することができる。部分的に反射性の層は、一つまたは複数の材料の層から形成することができ、層のそれぞれは単一の材料または複数の材料の組み合わせで形成されてもよい。
【0017】
ある実施例において、光学積層体16の層は、そのようなデバイスのアレイに対して接続電極を形成するようにパターニングされうる。可動反射層14a、14bは成膜された金属の単一または複数の層として形成され、ポスト18の頂部及びポスト18の間に成膜された中間犠牲材料の上に成膜されて形成されうる。犠牲材料が除去されると、可動反射層14a、14bは光学積層体16a、16bから所定の空隙19だけ離隔される。アルミニウムのような導電性及び反射性の高い材料が反射層14として用いられてもよく、そのようなデバイスのアレイの接続電極も形成しうる。図1は必ずしも正しいスケールではなくてもよいことに注意しなければならない。ある実施例において、ポスト18の間の間隔は約0.5〜1.0μmのオーダーであってよく、一方空隙19は約0.2〜0.4μmのオーダーでありうる。
【0018】
電圧が印加されていない状態では、図1の干渉変調器12aに示されるように、空隙19は可動反射層14a及び光学積層体16aの間に存在し、可動反射層14aは機械的に緩和状態にある。しかしながら、電位差(電圧)が干渉変調器の電極に印加されると、干渉変調器によって形成されるキャパシタは充電され、静電引力が電極を互いに引き付ける。電圧が十分高いと、可動反射層14は変形し、光学積層体16に押し付けられる。図1の右側に位置する作動した干渉変調器12bによって示されるように、光学積層体16に含まれる誘電体層(この図には図示されない)は、層14と16の間のショートを防ぎ、層の間の距離を制御しうる。印加された電位差の極性に係わらず、動作は同一である。
【0019】
図2は、干渉変調器の例示的な一実施例において、印加される電圧に対する可動層の位置の図である。MEMS干渉変調器において、作動プロトコルは、図2に示すようなデバイスのヒステリシス特性を利用しうる。干渉変調器は例えば、可動層を緩和状態から作動状態に変形させるために10ボルトの電位差を必要としうる。しかしながら、その値から電圧を下げると、電圧が10ボルト以下に落ちても可動層はその状態を保つ。図2の例示的な実施例においては、可動層は電圧が2ボルト以下に下がるまで完全には緩和しない。従って図2に示された例においては約3Vから7Vの電圧範囲があり、そこではデバイスが緩和状態または作動状態のいずれかで安定であるような印加電圧のウィンドウが存在する。これを本明細書では、「ヒステリシスウィンドウ」または「安定ウィンドウ」と呼ぶ。この特徴により、図1に示す干渉変調器の設計を、作動または緩和の既存状態のいずれかの状態で、同一の印加電圧状態で安定であるようにすることができる。干渉変調器のそれぞれは、作動状態であれ緩和状態であれ、本質的には固定反射層及び可動反射層によって形成されるキャパシタなので、この安定な状態はほとんど電力を散逸することなく、ヒステリシスウィンドウの範囲内の電圧において保持することができる。印加された電位が固定されていれば、本質的に干渉変調器へ電流が流入することはない。
【0020】
上述した原理に従って動作する干渉変調器の構造の詳細は、幅広く変形しうる。例えば、図3Aから図3Eは、可動反射層14及びその支持構造の5つの異なる実施例を示す。図3Aは図1のIMODの断面図であり、帯状の金属材料14は支持部18の延長線と直交して成膜される。図3Bにおいて、干渉変調器それぞれの可動反射層14は正方形または長方形であり、頂点の部分のみで、テザー32で支持されて取り付けられる。図3Cにおいて、可動反射層14は正方形または長方形であり、柔軟な金属からなりうるような変形層34から吊り下げられる。変形層34はその辺縁部において基板20と直接または間接に接続する。これらの接続は本明細書では支持ポストとして参照される。図3Dに示されたデバイスは、支持ポストプラグ42を有し、その上に変形層34が載せられる。可動反射層14は図3Aから図3Cに示すようにギャップ上に吊り下げられて保持されるが、変形層34は、変形層34と光学積層体16の間の穴を埋めることによって支持ポストを形成することはない。むしろ、支持ポストは支持ポストプラグ42を形成するのに用いられる平面状の材料から形成される。図3Eに示されるデバイスは、図3Dに示される実施例に基づいているが、図示されない追加的な実施例と同様に図3Aから図3Cに示されたデバイスのどれとも協働するように適用しうる。図3Eに示されたデバイスにおいて、金属またはその他の導電性材料からなる追加的な層が、バス構造44を形成するのに用いられている。これにより、信号は干渉変調器の背後に沿って引き回され、そうでなければ基板20上に形成されなければならなかったような電極の数を低減することができる。
【0021】
図3Aから3Eに示されるような実施例において、反射層14は、変形層34を含む基板20と反対の反射層の側において干渉変調器の一部を光学的に遮蔽する。例えば、このような遮蔽により図3Eに示すようなバス構造44が可能となり、変調器の電気機械的な特性から変調器の光学特性を分離することができるようになる。この変調器の構成の分離により、変調器の電気機械的側面と光学側面のために用いられる構造設計及び材料を互いに独立して選択し、機能させることができるようになる。さらには、図3Cから図3Eに示される実施例は、変形層34によってもたらされる機械的な特性から反射層14の光学的な特性を切り離すことにより引き出すことのできる追加的な利点を有しうる。このことにより、反射層14に用いられる構造設計及び材料を光学的な特性に関して最適化し、変形層34に用いられる構造設計及び材料を所望の機械的な特性に関して最適化することができるようになる。
【0022】
上述のように、そしてIMODの前述の説明に関わらず、幅広い様々なMEMSデバイスに基づいた本発明の実施形態が企図される。つまり、本発明は、制御電圧の印加とともに最小値と最大値の間で変化しうる静電容量によって特徴づけられるどのような型のMEMSデバイスに基づく実施形態も含む。図4は、本発明の実施形態の一つの種類を示す。この例に示されるように、4つのMEMSデバイス1から4が並列に接続されて、本発明の具体的な実施形態に従う可変静電容量MEMSデバイス400を形成する。MEMSデバイス1から4は、デバイス400の第1の端子に対応する共通の底部電極406を共有する。デバイス400の第二の端子は、デバイス1から4の上部電極(401から404)の電気的な接続によって形成される。この電気的な接続は、当技術分野における幅広い様々などのような方法によっても形成されることができ、用いられるMEMSデバイスの種類に依存しうる。さらに、示されたデバイスの数は単に例示的なものであることは理解されるであろう。
【0023】
図4は、4つのMEMSデバイス1から4に関連する異なるプルイン電圧(Va1、Va2、Va3及びVa4)を示すプロットと、印加されるDC電圧の関数としてのデバイス400の静電容量(C1はMEMSデバイス1の「ダウン状態」の静電容量に対応するなど)を示すプロットとを含む。
【0024】
図に示されるように、MEMSデバイス400は高周波(RF)MEMSデバイスである。RF信号の入力とデバイスDC制御電圧は、共にデバイス400の第二の端子に印加される。図において外見上分離された信号線は、単に分離されたRF信号とDC信号の経路を伝えることを意図している。両信号が同じ端子に印加される場合、RF領域とDC領域の間の分離は、例えば、MEMSデバイスの端子とRF信号源(図示されない)の間のDCブロッキングキャパシタ408及び/または端子とDC信号源(図示されない)の間のRFチョーク回路410(例えば、RFコイル)のような従来からある部品を用いて提供されうる。当業者が理解するように、このようなシステムにおいて分離を提供するための様々なほかの適しているあらゆるメカニズムや部品と同様に、これらの部品のどちらかまたは両方が用いられうる。
【0025】
図4の例は、例えば各デバイスの電極間の異なる空隙間隔のような、様々なデバイスに対して異なるプルイン電圧を得るように操作されうるMEMSデバイスの特定の物理的な特徴の一例を視覚的に示すものである。しかしながら、これは、本発明の具体的な実施形態に従って変化してもよく、その結果並列のデバイスに対してプルインまたは作動電圧が異なりうるデバイス特性の単に一例に過ぎないことは理解すべきである。操作されうる他のデバイス特性は、例えば、アンカーの間隔、それぞれ独立したキャパシタの部品の剛性などを含む。このような特性は、同一の型の並列なMEMSデバイス、例えばIMODや様々な種類のMEMSバラクタにおいて変化しうる。しかしながら、実施形態は、様々なタイプの並列MEMSデバイスでありうることを意図している。
【0026】
図5は、本発明の具体的な実施形態とともに用いられうるデバイス500の他の断面図を示す。様々なプルイン電圧を得るための特定の物理的なデバイス特性の変化は、この図を参照して理解されうる。いくつかの実施形態によれば、デバイスアンカー、つまり、柱状酸化物502は、この効果を得るために様々に操作されうる。例えば、これらのアンカーが底部電極(金属1、M1 504)と重なる大きさは、(デバイスの中心に対して相対的に)増大または減少されてもよく、図から理解できるように、このことは上部電極(機械的な層TM 508)と底部電極504の間の空隙506を増加させまたは減少させる効果を有する。当業者に理解されるように、空隙が大きくなると、プルイン電圧はより高くなる。図6のグラフは、特定の実施例に関して、アンカーの重なりに対するプルインまたは作動電圧の効果を示している。
【0027】
この重なりを増大または減少させることはまた、柱状酸化物アンカー間の上部電極の幅を狭めまたは広げ、そのため上部電極の機械的な剛性が減少または増大し、それゆえデバイスのプルイン電圧に影響を与えるという効果も有しうる。同様に、アンカーの間隔を変更することや上部電極について異なる材料及び/または厚さを用いることで、所望の効果を得ることができる。空隙の大きさを制御する他の一メカニズムは、犠牲層の変更を介するものでありうる。理解されるように、これらは単に、本発明の実施形態に従う可変静電容量デバイスの形成に関して、MEMSデバイスについて様々なプルイン電圧を得るために導入することができる多数の様々なデバイスの変形のいくつかの例に過ぎない。
【0028】
本発明の具体的な実施形態に従えば、図5のデバイスに関するプロセスの構成は、IMODディスプレイパネルのプロセス構成に類似している。上述のように、金属1(M1)はキャパシタの底部電極として用いられ、機械的な層TMはキャパシタの上部電極として用いられる。MEMSキャパシタの抵抗損失を減少させるために、厚く低抵抗な金属が用いられうる。具体的な実施例に従えば、底部電極(M1)は、初めに、基板(例えば、ガラス、シリコン、GaAsなど)上にスパッタリングによって成膜され、次いで、フォトリソグラフィ及びエッチングプロセス(例えばドライエッチまたはウェットエッチ)を用いてパターニングされる。次いで、薄い誘電体薄膜が絶縁体として底部電極上に(例えば、CVD、ALDまたはPVDを用いて)成膜される。この誘電体層は、ダウン状態の静電容量を規定する。薄い誘電体層の成膜に続けて、犠牲層(図示されない)が(リリースプロセス後に)空隙を形成するために成膜される。犠牲層の厚さは、空隙の高さを決定し、アップ状態の静電容量を規定する。犠牲層が(例えばSAを用いて)パターニングされた後、厚い誘電体層(つまり、柱状酸化物)が機械的な構造層(例えば、機械的な梁またはメンブレン)として、犠牲層上に成膜される。機械層のパターニングに続けて、犠牲層が、適切なガスや化学的な溶液によってリリースされて、図示されるような空隙またはキャビティ構造を有するMEMSデバイス構造が形成される。
【0029】
MEMSデバイスの種類または様々なプルイン電圧を得るために操作されるデバイス特性に関わらず、この方法の結果は、従来のMEMSデバイスの静電容量対電圧特性と、本発明の具体的な実施形態に従って形成された二つのMEMSデバイスの静電容量対電圧特性との比較を示す図7Aから図7Cを参照して理解されうる。図7Aの従来の特性は、静電容量の最小値と最大値の間の急峻で連続的な遷移を示す。対照的に、本発明の実施形態に従って形成されたMEMSデバイスの特性(図7B及び図7C)は、複数の階段状の遷移を含み、それぞれの段階のより水平な部分は相対的に安定な静電容量値を示し、それぞれの段階の垂直な部分は次の相対的に安定な静電容量値への一つまたは複数のデバイスの作動または緩和を示す。2つの特性から理解されるように、これらの階段状の遷移の数および間隔は、並列接続されたMEMSデバイスの数及び/またはそれぞれに対応した作動電圧を共に変更することによって制御されうる。つまり、図7Cの特性は、図7Bの特性よりも多い並列接続のMEMSデバイスを有するデバイスの特性である。
【0030】
本発明の様々な実施形態に従って実施された可変静電容量MEMSデバイスは、チューナブルデバイスが適しているような幅広い応用領域に適合しうる。そのような応用は、例えば、RFチューナブルフィルタ、チューナブル共振器、チューナブルアンテナなどを含む。
【0031】
本発明が、それらの特定の実施形態を参照して具体的に示され、説明されたが、当業者であれば、開示された実施形態の形態及び詳細の変更が、本発明の技術的思想または本発明の範囲から逸脱しない範囲でなされうることが理解されるであろう。加えて、本発明の様々な利点、側面及び目的が本明細書において様々な実施形態を参照して説明されたが、発明の範囲はそのような利点、側面および目的の参照によって限定されるべきではないことは理解されるであろう。むしろ、発明の範囲は、特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【符号の説明】
【0032】
1,2,3,4 MEMSデバイス
12a,12b MEMS干渉変調器
14a,14b 可動反射層
16a,16b 光学積層体
18 ポスト
19 空隙
20 基板
32 テザー
34 変形層
42 支持ポストプラグ
44 バス構造
400 MEMSデバイス
401,402,403,404 可変静電容量MEMSデバイス
406 底部電極
408 DCブロッキングキャパシタ
410 RFチョーク回路
500 MEMSデバイス
502 柱状酸化物
504 底部電極
506 空隙
508 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変静電容量デバイスであって、
並列接続された複数のMEMSデバイスを備え、
前記MEMSデバイスが、緩和状態と作動状態との間の前記MEMSデバイスの遷移のそれぞれに対応する複数の異なる動作電圧によって特徴づけられ、
複数の前記MEMSデバイスが、特定のデバイスの変更を用いるように構成され、
前記変更が、前記可変静電容量デバイスが静電容量対電圧特性によって特徴づけられ、
前記静電容量対電圧特性が、複数の印加電圧範囲を含み、
前記印加電圧範囲に対応する前記可変静電容量デバイスの静電容量の変化率が、実質的に前記可変静電容量デバイスに対する静電容量の最小値と最大値との間の静電容量対電圧特性によって表される静電容量の平均変化率よりも小さい、可変静電容量デバイス。
【請求項2】
前記MEMSデバイスが、一つまたは複数の干渉変調器またはMEMSバラクタを備える、請求項1に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項3】
前記MEMSデバイスが、干渉変調器(IMOD)を備え、前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカーの間隔、柱状アンカーの重なり、柱状アンカーの高さ、空隙の間隔、可動電極の厚さ、または可動電極の材料の一つまたは複数を備える、請求項1に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項4】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMOD間の前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカーの間隔を備える、請求項1に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項5】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMOD間の前記特定のデバイスの変更が、それぞれの前記IMODに対応する電極に対する柱状アンカーの重なりを備える、請求項1に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項6】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMODの前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカー間の間隔と、それぞれの前記IMODに対応する電極に対する柱状アンカーの重なりと、を共に備える、請求項1に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項7】
前記可変静電容量デバイスが、チューナブルフィルタ、チューナブル共振器、またはチューナブルアンテナのうちの一つとして構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項8】
前記MEMSデバイスが、高周波(RF)で動作するように構成され、前記可変静電容量デバイスの第一の端子が、RF信号源からのRF信号及びDC信号源からのDC信号を共に受信するように構成され、前記可変静電容量デバイスが、さらにRF信号源またはDC信号源の一方または両方に対して分離を提供するための一つまたは複数の分離部品を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項9】
可変静電容量デバイスであって、
並列接続された複数のMEMSデバイスを備え、
それぞれの前記MEMSデバイスが、第一および第二の電極を備え、
前記可変静電容量デバイスの第一の端子が、前記MEMSデバイスの前記第一の電極間の第一の電気的接続によって形成され、
前記可変静電容量デバイスの第二の端子が、前記MEMSデバイスの前記第二の電極間の第二の電気的接続によって形成され、
複数の前記MEMSデバイスが、前記MEMSデバイス間の特定のデバイスの変更を用いるように構成され、
前記MEMSデバイスが、複数の異なる調整電圧範囲によって特徴づけられ、
前記調整電圧範囲が、静電容量の最小値と最大値の間の前記MEMSデバイスの遷移のそれぞれに対応する、可変静電容量デバイス。
【請求項10】
前記MEMSデバイスが、一つまたは複数の干渉変調器またはMEMSバラクタを備える、請求項9に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項11】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカーの間隔、柱状アンカーの重なり、柱状アンカーの高さ、空隙の間隔、可動電極の厚さ、または可動電極の材料の一つまたは複数を含む、請求項9に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項12】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMOD間の前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカーの間隔を備える、請求項9に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項13】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMOD間の前記特定のデバイスの変更が、それぞれの前記IMODの電極の一つに対する柱状アンカーの重なりを備える、請求項9に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項14】
前記MEMSデバイスが干渉変調器(IMOD)を備え、それぞれの前記IMODが、互いに可変の距離に配置され複数の柱状アンカーを用いて所定の位置に固定された第一および第二の層を備え、前記IMOD間の前記特定のデバイスの変更が、柱状アンカー間の間隔と、それぞれの前記干渉変調器の電極の一つに対する柱状アンカーの重なりと、を共に備える、請求項9に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項15】
前記可変静電容量デバイスが、チューナブルフィルタ、チューナブル共振器、またはチューナブルアンテナのうちの一つとして構成される、請求項9から14のいずれか一項に記載の可変静電容量デバイス。
【請求項16】
前記MEMSデバイスが、高周波(RF)で動作するように構成され、前記可変静電容量デバイスの第一の端子が、RF信号源からのRF信号及びDC信号源からのDC信号を共に受信するように構成され、前記可変静電容量デバイスが、さらにRF信号源またはDC信号源の一方または両方に対して分離を提供するための一つまたは複数の分離部品を備える、請求項9から15のいずれか一項に記載の可変静電容量デバイス。

【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2013−519104(P2013−519104A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544627(P2012−544627)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/059512
【国際公開番号】WO2011/075366
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(508095337)クォルコム・メムズ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (133)
【Fターム(参考)】