説明

3方切替弁およびそれを用いた燃料噴射装置

【課題】弁体を付勢する流体が流入する背圧室の流体が低圧通路に流出することによるエネルギー損失の発生を抑制できる3方切替弁およびそれを用いた燃料噴射装置を提供する。
【解決手段】3方切替弁51は弁室61を有し第1、第2弁体7、8を収容する。第1、第2弁体7、8は摺動自在に支持され、各弁体の他端部側には第1、第2背圧室62、63が形成される。第1弁体7は第1背圧室62と弁室61との圧力差にて動作し制御燃料供給通路96を開閉する。第2弁体8は弁室61と第2背圧室63の圧力差にて動作し第2リターン通路99を開閉する。第2弁体8は第2弁体8が第2リターン通路99を閉塞しているとき、第2弁体8の第2摺動部83と第2リターン通路99との間に、弁室61の下端面617に当接する内周側当接部821を有する。これにより、第2背圧室63の高圧燃料が第2摺動部83を介して第2リターン通路99に流出するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3方切替弁およびそれを用いた燃料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コモンレール等の燃料供給源から高圧の燃料を受け入れ、受け入れた高圧の燃料をさらに増圧して気筒内に噴射する増圧型燃料噴射装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この増圧型燃料噴射装置は、燃料を噴射するノズルと、ノズルに燃料を増圧して供給する増圧装置と、所定の電子制御装置(ECU)からの指令に応じて開閉する電磁弁と、電磁弁の開閉に応じて、増圧装置を作動するための流路と増圧装置の作動を停止するための流路とを切り替える3方切替弁と、を備える。
【0004】
3方切替弁は、コモンレールの高圧の燃料を増圧制御室に流入する状態と、増圧制御室の高圧の燃料を流出する状態とを切り替え、増圧装置を作動させて燃料を増圧したり、増圧装置の作動を停止させて燃料の増圧を停止したりする。
【0005】
この3方切替弁は、独立して移動する2つの弁体と、2つの弁体の弁体部を収容する弁室が形成されるボデーとを備える。ボデーには、弁室に通じる3つの燃料通路が形成されている。一つ目の燃料通路は、コモンレールの高圧燃料が流通する高圧通路であり、二つ目の燃料通路は、低圧源(例えば、燃料タンク)に弁室の燃料を排出する低圧通路であり、三つ目の燃料通路は、弁室と増圧装置の増圧制御室とを連通する制御通路である。なお、増圧制御室は、燃料の流出入を通じて、燃料の増圧および増圧停止を行う。
【0006】
2つの弁体は、ボデーにそれぞれ軸方向に摺動自在に支持されている。一方の弁体は、高圧通路を開閉し、他方の弁体は、低圧通路を開閉する。一方の弁体が高圧通路を開放し、他方の弁体が低圧通路を閉塞することで、コモンレールの高圧燃料を増圧制御室に供給する第1の状態とする。一方の弁体が高圧通路を閉塞し、他方の弁体が低圧通路を開放することで、増圧制御室の高圧燃料を低圧源に排出する第2の状態とする。
【0007】
上記ボデーには、それぞれ弁体の弁室とは反対側の端部に、それぞれの弁体を弁室側に付勢する高圧燃料が流入する背圧室が形成されている。背圧室の圧力を調整することにより、それぞれの弁体に作用する圧力差を制御し、それぞれの弁体を独立して移動させる。この従来技術では、上記第1の状態から上記第2の状態に切り替える際に、一方の弁体が高圧通路を閉塞した後、他方の弁体が低圧通路を開放するように、それぞれの弁体に作用する圧力差を制御する。これにより、第1の状態から第2の状態に切り替える際、高圧通路と低圧通路とが連通する状態を経由することによる高圧源のエネルギー損失(例えば、燃料を高圧化するのに費やしたエネルギーの損失:以下、単にエネルギー損失という)の発生を抑制することができる。
【特許文献1】特開2006−104971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記従来技術の3方切替弁の他方の弁体は、弁室の内壁面に当接する当接部を有し、その内壁面に当接することで弁室に開口する低圧通路の開口部を閉塞する。これにより、弁室内の燃料が低圧通路に流出するのを防いでいる。他方の弁体は、他方の弁体の弁室とは反対側の端部側に形成された当該弁体の背圧室と低圧通路とを区画する壁に形成された貫通孔に摺動自在に支持されている。貫通孔は、弁室よりも外側に形成されているため、常に、貫通孔と弁体の側壁との摺動隙間を介して背圧室の高圧燃料が低圧通路に流出することとなり、エネルギー損失が発生するという問題がある。この燃料の流出は、第1の状態、第2の状態のとき常に発生している。
【0009】
本発明は、弁体を付勢するための高圧流体が流入する背圧室の高圧流体が低圧通路に流出することによるエネルギーの損失の発生を抑制できる3方切替弁およびそれを用いた燃料噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、高圧源の高圧流体を流体装置の制御室へ供給する第1の状態と、制御室の高圧流体を低圧源に排出する第2の状態を切り替える3方切替弁において、
高圧源と連通する高圧通路、制御室と連通する制御通路、および低圧源と連通する低圧通路が開口する弁室を有するボデーと、高圧通路の開口部を開閉する第1弁体であって、一端部が弁室に収容され、他端部が、一端部側に付勢する高圧源の高圧流体が流入するボデーに形成された第1背圧室に収容され、一端部と他端部との間の側壁がボデーに摺動自在に支持され、第1背圧室の流体の圧力が所定値から低下すると、第1背圧室側に移動し、高圧通路の開口部を閉塞する第1弁体と、低圧通路の開口部を開閉する第2弁体であって、一端部が弁室に収容され、他端部が一端部側に付勢する高圧源の高圧流体が流入するボデーに形成された第2背圧室に収容され、一端部と他端部との間の側壁がボデーに摺動自在に支持され、弁室の流体の圧力が所定値から低下すると、弁室側に移動し、低圧通路の開口部を開放する第2弁体と、を備え、
第1の状態から第2の状態に切り替わる過渡期において、第1背圧室および弁室の流体の圧力を調整させることにより、第2弁体は、第1弁体が高圧通路の開口部を閉塞した後、低圧通路の開口部を開放する3方切替弁であって、
第2弁体は、第2弁体が低圧通路の開口部を閉塞するとき、第2弁体とボデーとの摺動部と、低圧通路の開口部との間に、第2弁体の軸方向移動に伴って弁室の内壁に当接し、摺動部から低圧通路の開口部への流体の流れを阻止する第1当接部を有することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、高圧通路を開閉する第1弁体、および低圧通路を開閉する第2弁体のそれぞれの一端部を弁室に収容させ、それぞれの弁体の他端部を、高圧源の高圧流体が流入する第1、第2背圧室に収容させている。これにより、第1弁体は、第1背圧室と弁室との圧力差によって移動し、第2弁体は、第2背圧室と弁室との圧力差によって移動する。
【0012】
さらに、第1弁体は、第1背圧室の流体圧力が所定値から低下すると高圧通路の開口部を閉塞する。第2弁体は、弁室の流体圧力が所定値から低下すると低圧通路の開口部を開放する。第1の状態から第2の状態に切り替わる過渡期において、第1背圧室および弁室の流体圧力を調整することにより、第2弁体は、第1弁体が高圧通路の開口部を閉塞した後、低圧通路の開口部を開放する。その結果、当該過渡期において、高圧通路の開口部と低圧通路の開口部が弁室を介して連通する状態を回避することができる。
【0013】
さらに、第2弁体は、第2弁体が低圧通路の開口部を閉塞するとき、第2弁体とボデーとの摺動部と、低圧通路の開口部との間に弁室の内壁に当接し、摺動部から低圧通路の開口部への流体の流れを阻止する第1当接部を有しているので、第2背圧室の高圧流体が当該摺動部を介して低圧通路に流出することによるエネルギー損失の発生を抑制できる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、第1弁体および第2弁体は、第1弁体および第2弁体のそれぞれの中心軸線がほぼ一致するようにボデーに配置されており、第2の状態にあるとき、第1弁体が、第2弁体を、第1当接部が弁室の内壁に押し付けられる方向に押し付けることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、第2弁体には、弁室の流体圧力による付勢力だけでなく、第1弁体からの付勢力も加勢されるため、第1当接部が弁室の内壁に当接する際の密着度をさらに強くさせることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、第2弁体は、弁室に収容される弁体部と、弁体部よりも径が小さく、ボデーに摺動自在に支持される摺動部を有し、第1当接部は、弁体部の摺動部側の端面に低圧通路の開口部が形成される弁室の内壁に向かって突出するように、かつ、当該端面を第2弁体の軸方向から見たとき、摺動部を囲むように形成され、さらに、弁体部の端面には、第1当接部よりも外周側であって、低圧通路の開口部と制御通路の開口部との間の弁室の内壁に当接する第2当接部が、弁室の内壁に向かって突出するように形成されていることを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、弁室および第2背圧室の流体圧力がほぼ同じであれば、第2当接部が弁室の内壁に当接しているとき、第2当接部よりも内周側には弁室の流体圧力が作用しない。その結果、第2弁体に働く付勢力は、第2弁体を第2背圧室側に移動させる付勢力の方が強くなる。このため、第2弁体によって低圧通路の開口部の閉塞を維持させることができる。
【0018】
そして、第1当接部および第2当接部は、第2弁体の弁体部の端面から弁室の内壁に向かって突出するように形成されているので、第2弁体が第2背圧室側へ移動するだけで、第2背圧室の高圧流体が摺動部を介して低圧通路へ流出するのを抑制すると同時に、弁室の流体が低圧通路に流出するのも抑制できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第1弁体には、第1背圧室と弁室とを連通する連通路が形成されることを特徴としている。この構成によれば、第1背圧室の流体を排出させるだけで、弁室の流体も同時に排出させることができる。つまり、1箇所の空間の圧力を調整するだけで、他の空間の圧力も調整することができ、圧力を制御する装置を個別に設ける必要がなくなる。
【0020】
請求項4に記載の構成によれば、第1弁体には上記連通路が形成されているので、第1背圧室の流体を排出されるとともに弁室の流体も第1背圧室を経由して排出される。さらに、第2弁体が低圧通路の開口部を開放すると、弁室の流体は低圧通路からも排出される。したがって、弁室の流体は、2箇所の通路から排出されることとなり、弁室の流体圧力の低下スピードは、1箇所の通路(低圧通路のみ)から排出される場合に比べ速くなる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、連通路は、第1の状態から第2の状態に切り替わる過渡期において、弁室の流体の圧力が所定値から低下して、第2弁体が低圧通路の開口部を開放した後、第2弁体によって閉塞されることを特徴としており、制御室の流体圧力の低下スピードの上昇を抑制できる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の3方切替弁を備える燃料噴射装置であって、先端に噴孔を有し、当該噴孔から燃料を噴射するノズルと、ノズルに供給する燃料が流入する増圧室、増圧室の燃料の圧力を増圧させ、ノズルに供給する増圧ピストン、増圧ピストンの動作を制御する流体が流出入する制御室を有する増圧装置と、を備え、
3方切替弁の制御通路は、増圧装置の制御室に連通しており、3方切替弁が、第1の状態および第2の状態を切り替えることにより、高圧源の高圧流体としての高圧燃料を制御室に供給したり、制御室の高圧燃料を低圧源に排出したりし、増圧装置を駆動したり、停止させたりすることを特徴としている。
【0023】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の3方切替弁によれば、第1の状態から第2の状態に切り替える際、および第1の状態にあるときのエネルギー損失の発生を抑制することができるので、それを燃料噴射装置の増圧装置を駆動する弁として利用することにより、燃料噴射装置のエネルギー損失の発生を抑制できる。その結果、その燃料噴射装置が搭載される内燃機関の燃料消費量の増大を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の3方切替弁を用いた燃料噴射装置の構成図である。燃料噴射装置1は、例えばディーゼルエンジン(図示せず:以下、エンジンという)の各気筒の燃焼室内に燃料を供給する。燃料噴射装置1は、高圧燃料供給通路9を介して、高圧燃料を蓄圧するコモンレール2に接続される。コモンレール2には、吐出量の可変機構を備え、低圧源としての燃料タンク22の燃料を加圧し、コモンレール2に圧送するサプライポンプ21が接続されている。
【0025】
燃料噴射装置1は、コモンレール2の燃料を増圧する増圧装置4、および増圧装置4にて増圧された燃料を燃焼室内に噴射するノズル3、および、増圧装置4とノズル3を制御する制御部5を有する。増圧装置4およびノズル3は、コモンレール2から供給される高圧燃料の圧力を利用して作動する。制御部5は、増圧装置4およびノズル3に供給される高圧燃料の流れを制御することにより、増圧装置4およびノズル3の動作を制御する。制御部5は、高圧燃料の圧力で作動する3方切替弁51、および、3方切替弁51の切替動作を制御する電磁弁52を有する。3方切替弁51の詳細については後述する。なお、請求項に記載の流体装置は、増圧装置4に相当する。
【0026】
ノズル3は、噴孔31を開閉するニードル32を有し、ニードル32に対し噴孔31を閉塞する方向(閉弁方向)に圧力を及ぼす燃料が流出入する噴射制御室33、噴孔31を開放する方向(開弁方向)に圧力を及ぼす燃料が流出入する燃料溜り室34を形成する。また、ノズル3は、ニードル32を閉弁方向に付勢するスプリング35を、噴射制御室33に収容する。つまり、ニードル32は、噴射制御室33の燃料圧力およびスプリング35により閉弁方向に付勢されるとともに、燃料溜り室34の燃料の圧力により開弁方向に付勢されている。
【0027】
燃料溜り室34は、燃料供給通路93により増圧装置4の増圧室44と連通する。増圧室44は、増圧装置4において燃料が増圧される空間であり、増圧装置4は、燃料の噴射制御室33の燃料圧力よりも高圧に増圧して燃料溜り室34に供給する。
【0028】
噴射制御室33には、コモンレール2と高圧室43とを連通する高圧燃料供給通路9から分岐する噴射制御通路91が接続し、さらに噴射制御通路91から分岐する燃料通路92が噴射制御通路91とは別に接続する。
【0029】
噴射制御通路91には、噴射制御室33への燃料の流出入流量を規制するオリフィス911が設けられ、燃料通路92には、噴射制御室33への燃料の流入のみを許容する逆止弁921がオリフィス911と並列に設けられている。高圧燃料供給通路9、噴射制御通路91、燃料通路92およびオリフィス911を介してコモンレール2から噴射制御室33に燃料が流入するとともに、噴射制御通路91およびオリフィス911を通じて噴射制御室33から燃料が流出する。
【0030】
以上の構成により、ノズル3は、増圧装置4の作動に応じて、気筒の燃焼室内に燃料を噴射する。すなわち、増圧装置4により燃料が増圧されると、増圧された燃料が燃料供給通路93を通じて燃料溜り室34に流入する。これにより、燃料溜り室34の圧力による付勢力が、噴射制御室33の圧力による付勢力とスプリング35による付勢力との合力よりも強くなるので、ニードル32が開弁方向に変位し噴孔31が開放される。このため、燃料が噴孔31から噴射され、同時に、噴射制御通路91およびオリフィス911を通じて噴射制御室33から燃料が流出する。
【0031】
また、増圧装置4による燃料の増圧が停止されると、増圧された燃料が燃料溜り室34に流入しなくなる。これにより、燃料溜り室34の圧力による付勢力が、噴射制御室33の圧力による付勢力とスプリング35による付勢力との合力よりも弱くなるので、ニードル32が閉弁方向に変位し、同時に、逆止弁921が開弁して高圧燃料供給通路9、噴射制御通路91および燃料通路92を通じて噴射制御室33に燃料が流入する。このため、噴孔31が閉塞され燃料の噴射が停止する。
【0032】
増圧装置4は、パスカルの原理に基づき燃料を増圧するものであり、軸方向一端側に向かい大小2段に径が変化する増圧ピストン41を有する。増圧装置4は、大径の高圧面412で燃料の圧力を受けるとともに、この圧力に基づく付勢力を、小径の増圧面414を介して燃料に加えることで燃料を増圧する。
【0033】
増圧ピストン41は、一端側の小径ピストン部413と、他端側の大径ピストン部411とからなり、小径ピストン部413の一端面が増圧面414をなすとともに大径ピストン部411の他端面が高圧面412をなす。そして、増圧ピストン41は、軸方向一端側に向かい大小2段に径が変化するシリンダ42に収容され、シリンダ42内を軸方向に往復移動する。シリンダ42は、小径ピストン部413の側壁が摺動する小径シリンダ部422と、大径ピストン部411の側壁が摺動する大径シリンダ部421を有する。
【0034】
また、小径ピストン部413が小径シリンダ部422に摺動し、大径ピストン部411が大径シリンダ部421に摺動するように、増圧ピストン41をシリンダ42に収容させると、大径ピストン部411の高圧面412側には、高圧室43が形成され、小径ピストン部413の増圧面414側には増圧室44が形成される。増圧ピストン41には、一方が高圧面412に開口し、他方が増圧面414に開口する連通路415が形成されている。連通路415の途中には、高圧面412から増圧面414に向かう流れのみを許容する逆止弁416が設けられている。
【0035】
高圧室43は、高圧燃料供給通路9によりコモンレール2と連通し、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料が流入する。さらに、高圧室43は、第2制御圧供給通路97により3方切替弁51と連通している。
【0036】
増圧室44は、連通路415により高圧室43と連通し、高圧室43の高圧燃料が流入する。さらに、増圧室44は、燃料供給通路93によりノズル3と連通し、増圧室44にて増圧された燃料がノズル3に供給される。
【0037】
高圧室43と増圧室44との間には、大径ピストン部411の一端側端面、大径シリンダ部421の一端側端面、大径シリンダ部421の側壁面、および小径ピストン部413の側壁面にて区画される請求項に記載の制御室としての増圧制御室45が形成される。増圧制御室45には、大径ピストン部411を他端側に付勢するスプリング451が収容されている。増圧制御室45は、請求項に記載の制御通路としての増圧制御通路94により3方切替弁51と連通している。
【0038】
以上の構成により、増圧装置4は、増圧制御室45への燃料の流出入を通じて、燃料の増圧および増圧停止を行う。すなわち、増圧制御室45から燃料が流出すると、高圧室43に燃料が流入して増圧ピストン41が一方に変位し、増圧室44の燃料が増圧されて燃料溜り室34に供給される。増圧制御室45に燃料が流入すると、増圧ピストン41が他方に変位して逆止弁416が開弁し、高圧室43の燃料が増圧室44に流入するとともに増圧室44の燃料の増圧が停止され、燃料が燃料溜り室34に供給されなくなる。
【0039】
電磁弁52は、低圧源である燃料タンク22と3方切替弁51の第1背圧室62とを連通する第1リターン通路98に設けられ、第1背圧室62からの燃料の流出入を操作するものである。電磁弁52は、ECU(図示せず)からの指令に応じて開閉する2方弁である。
【0040】
3方切替弁51は、コモンレール2に蓄圧された高圧燃料を増圧装置4の増圧制御室45に供給する第1の状態と、増圧制御室45に供給された高圧燃料を燃料タンク22に排出する第2の状態とを切り替える弁である。図2に図示する状態は、第1の状態を示している。
【0041】
図2は、3方切替弁51の断面図である。図2に示すように、3方切替弁51は、ボデー6に形成された弁室61に第1弁体7および第2弁体8の一部を収容して構成される。第1弁体7および第2弁体8は、それぞれの中心軸線がほぼ一致するように並んで配置されている。弁室61は、図2中の下方に向かうほど内径が大きくなっている。
【0042】
弁室61の小径部側の側面には、請求項に記載の高圧通路の開口部としての高圧ポート611が開口しており、この高圧ポート611には、高圧燃料供給通路9から分岐する制御燃料供給通路96が接続されている。弁室61の下端面617(大径部側)には、請求項に記載の低圧通路の開口部としての低圧ポート612が開口しており、この低圧ポート612には、燃料タンク22に通じる請求項に記載の低圧通路としての第2リターン通路99が接続されている。さらに、弁室61の大径部側の側面には、制御ポート613が開口しており、増圧制御室45に通じる増圧制御通路94が接続されている。
【0043】
弁室61の小径部側の上端面には、図2中上方に延びる第1シリンダ部614が形成されている。第1シリンダ部614の上端面には、オリフィス621が形成されている。そのオリフィス621は、電磁弁52によって開閉される。
【0044】
弁室61の下端面617には、図2中下方に延びる第2シリンダ部615が形成されている。第2シリンダ部615の下端面には、高圧室43に通じる第2制御圧供給通路97が接続されている。なお、低圧ポート612は、図4に示すように、第2シリンダ部615の周囲に複数個、環状に配置されている。
【0045】
第1弁体7は、弁室61に収容される第1弁体部71と、第1弁体部71よりも外径が小さく、第1シリンダ部614に軸方向に摺動自在な第1摺動部72を有する。第1弁体部71の外径は弁室61の小径部側の内径よりも大きいため、第1弁体7が上方に移動すると、第1弁体部71の上端面が弁室61の小径部と大径部との間に形成される第1弁座部616に当接する。
【0046】
高圧ポート611は、この第1弁座部616よりも上方に開口しているため、第1弁体部71が第1弁座部616に当接すると、高圧ポート611が閉鎖され、コモンレール2の高圧燃料の弁室61への流入が阻止される。第1弁体7が下方に移動すると、第1弁体部71が第1弁座部616から離れるため、高圧ポート611から弁室61に高圧燃料が流入する。
【0047】
第1摺動部72が第1シリンダ部614に摺動自在に収容されると、第1摺動部72の上端面と第1シリンダ部614の内壁にて形成される第1背圧室62が形成される。第1背圧室62の側面には、高圧燃料供給通路9から分岐される第1制御圧供給通路95が接続されている。第1制御圧供給通路95には、オリフィス951が形成され、第1背圧室62に流入するコモンレール2の高圧燃料の量を制限している。
【0048】
上述したようにオリフィス621は電磁弁52にて開閉制御されている。電磁弁52がオリフィス621を開放することにより、第1背圧室62の高圧燃料は、オリフィス621を介して第1リターン通路98に排出され、第1背圧室62の圧力は低下する(図1参照)。なお、オリフィス621の径は、電磁弁52がオリフィス621を開放したとき、第1背圧室62の圧力が低下するような径に設定されている。また、第1背圧室62には、第1弁体7を下方に付勢するスプリング623が収容されている。
【0049】
また、第1弁体7には、第1弁体7の中心軸にそって連通路73が形成されている。連通路73は、弁室61と第1背圧室62とを連通する通路であり、途中にオリフィス74を有する。
【0050】
第1弁体7は、第1背圧室62の燃料圧力およびスプリング623により、高圧ポート611を開放する方向に付勢されるとともに、弁室61の燃料圧力により、高圧ポート611を閉塞する方向に付勢されている。
【0051】
図2に示すように、電磁弁52がオリフィス621を閉塞している状態では、第1背圧室62の燃料圧力による付勢力とスプリング623による付勢力との合力は、弁室61の燃料圧力による付勢力よりも強くなるので、第1弁体7は、高圧ポート611を開放する方向に移動し、高圧ポート611から弁室61に高圧燃料が供給される。
【0052】
電磁弁52がオリフィス621を開放すると、第1背圧室62の燃料圧力は低下する。その燃料圧力が所定値から低下すると、第1背圧室62の燃料圧力による付勢力とスプリング623による付勢力との合力は、弁室61の燃料圧力による付勢力よりも相対的に弱くなるので、第1弁体7は、高圧ポート611を閉塞する方向に移動し、高圧ポート611を閉塞し、弁室61への高圧燃料の供給が停止する。
【0053】
電磁弁52がオリフィス621を開放した後、第一弁体7が第一背圧室62側に移動すると同時に、弁室61の燃料は連通路73を介して、第1背圧室62に流入する。さらに、その燃料は、オリフィス621を介して第1リターン通路98に排出される。つまり、電磁弁52がオリフィス621を開放すると、第1背圧室62のみならず、弁室61の燃料圧力も低下する。1つの電磁弁52にてオリフィス621の開閉を制御するだけで、第1背圧室62の燃料圧力だけでなく、弁室61の燃料圧力も制御することができる。弁室61の燃料圧力を制御する装置を別に用意する必要がなくなり、燃料噴射装置1を簡素化させることができる。
【0054】
連通路73には、オリフィス74が設けられているため、第1背圧室62と弁室61の燃料圧力の低下スピードは異なる。具体的には、弁室61の燃料圧力の低下スピードは、第1背圧室62の燃料圧力の低下スピードよりも遅い。
【0055】
第2弁体8は、弁室61に収容される第2弁体部81と、第2弁体部81よりも外径が小さく、第2シリンダ部615に軸方向に摺動自在な第2摺動部83を有する。第2弁体部81の外径は、弁室61の大径部側の内径よりも小さい。また、第2弁体部81の外径は、第2弁体8が下方に移動し、弁室61の下端面617に当接したとき、当該下端面617に形成された低圧ポート612が覆われる程度の大きさとなっている。
【0056】
第2弁体部81の下端面82には、弁室61の下端面617に向かって突出する内周側当接部821と、外周側当接部822が形成されている。内周側当接部821が請求項に記載の第1当接部に相当し、外周側当接部822が請求項に記載の第2当接部に相当する。これらの当接部821、822は、第2弁体部81の下端面82を軸方向から見たとき、環状に形成されている(図3参照)。弁室61の下端面617が第2弁体部81の弁座部として機能する。
【0057】
内周側当接部821は、第2弁体部81が下端面617に当接するとき、第2摺動部83よりも外周側で、かつ低圧ポート612よりも内周側の下端面617に当接するような位置に形成される。外周側当接部822は、低圧ポート612よりも外周側で、かつ、制御ポート613よりも内周側の下端面617に当接するような位置に形成される。
【0058】
図4は、弁室61の下端面617を示している。図4に図示する2つの破線の内、内周側の破線は、内周側当接部821が当接する位置を示し、外周側の破線は、外周側当接部822が当接する位置を示す。
【0059】
第2摺動部83が第2シリンダ部615に摺動自在に収容されると、第2摺動部83の下端面と第2シリンダ部615の内壁にて形成される第2背圧室63が形成される。第2背圧室63は、高圧室43に通じる第2制御圧供給通路97が接続されているため、コモンレール2の高圧燃料が供給される。
【0060】
第2弁体8は、第2背圧室63の燃料圧力により、低圧ポート612を開放する方向に付勢されるとともに、弁室61の燃料圧力および第1弁体7に発生する高圧ポート611を開放する方向の付勢力により、低圧ポート612を閉塞する方向に付勢されている。
【0061】
図2に示すように、電磁弁52がオリフィス621を閉塞している状態では、上述したように高圧ポート611が開放されているので、弁室61の燃料圧力は、ほぼコモンレール2の高圧燃料と同じ圧力である。したがって、弁室61の燃料圧力は、第2背圧室63の燃料圧力とほぼ同じ圧力となる。
【0062】
第2弁体8は、この圧力状態において、低圧ポート612を閉塞する方向の付勢力が開放する方向の付勢力よりも強くなるように大きさが設定されている。つまり、外周側当接部822の径を第2摺動部83の径よりも大きくしている。その結果、弁室61の燃料圧力が第2背圧室63の燃料圧力とほぼ同じ圧力である状態のとき、第2弁体8は、低圧ポート612の閉塞を維持することができる。
【0063】
図2に示す状態では、第1弁体7が第2弁体8を低圧ポート612を閉塞する方向に押し付けているので、第2弁体8の内周側、外周側当接部821、822は、強く下端面617に密着する。
【0064】
上述したように、電磁弁52がオリフィス621を開放し、第1弁体7が高圧ポート611を閉塞する方向(上方)に移動すると、弁室61の燃料は、連通路73を通じて第1リターン通路98へ排出され、弁室61の燃料圧力が徐々に低下し始める。この燃料圧力が所定値から低下すると、弁室61の燃料圧力による付勢力は、第2背圧室63の燃料圧力による付勢力よりも相対的に弱くなるので、第2弁体8は、低圧ポート612を開放する方向に移動し、低圧ポート612を開放し、弁室61の燃料が第2リターン通路99に排出される。
【0065】
本実施形態の燃料噴射装置1の作動を、3方切替弁51の作動を中心に図5に基づき説明する。
【0066】
3方切替弁51の第1の状態、すなわち高圧ポート611が開放され、低圧ポート612が閉塞されている状態を図5(a)に示す。この状態では、コモンレール2と増圧制御室45とが連通し、増圧装置4は作動しておらず燃料の増圧は行われていない(図1参照)。
【0067】
図5(b)に示すように、電磁弁52が作動してオリフィス621を開放すると、第1背圧室62の燃料が第1リターン通路98に流出し、第1背圧室62の燃料圧力が低下する。この燃料圧力が所定値から低下すると、第1弁体7は上方に移動し、高圧ポート611を閉塞する。第1弁体7が上方に移動を開始すると同時に、弁室61の燃料が連通路73を介して第1リターン通路98に排出され、弁室61の燃料圧力が遅れて低下する。
【0068】
図5(c)に示すように、弁室61の燃料圧力が所定値から低下すると、第2弁体8は、上方に移動し、低圧ポート612を開放する。その結果、増圧制御室45の燃料が弁室61を介して第2リターン通路99に排出され、増圧装置4が増圧室44の燃料の増圧を開始する。増圧された燃料はノズル3に供給され、噴孔31から燃料が噴射される。
【0069】
本実施形態では、上述したように電磁弁52にてオリフィス621を開放したとき、弁室61の燃料圧力の低下スピードを、第1背圧室62の燃料圧力の低下スピードよりも遅らせることができる。これにより、第1弁体7が高圧ポート611を閉塞する時期と、第2弁体8が低圧ポート612を開放する時期をずらすことができる。具体的には、3方切替弁51が第1の状態から第2の状態に切り替わる過渡期において、最初に第1弁体7が高圧ポート611を閉塞し、その後、第2弁体8が低圧ポート612を開放する。
【0070】
これにより、上記過渡期において、高圧ポート611と低圧ポート612との両方のポートが開放されている期間を廃止することができ、コモンレール2の高圧燃料が燃料タンク22に排出されることによるエネルギー損失の発生を抑制できる。
【0071】
第2弁体8がさらに上方に移動すると、第1弁体7の連通路73を閉塞し、これ以上、弁室61の燃料を連通路73を介して第1リターン通路98に排出することを抑制できる。このことにより、弁室61の燃料は、第2リターン通路99のみから排出されることとなり、増圧制御室45の燃料の燃料タンク22への排出量を制限することができる。その結果、増圧装置4が増圧する燃料圧力の勾配が大きくなりすぎ、噴射初期の燃料噴射率が増大することによる、排ガス性能の悪化を抑制できる。
【0072】
図5(d)に示すように、ノズル3からの燃料噴射を停止すべく、電磁弁52にてオリフィス621を閉塞すると、コモンレール2から第1背圧室62に高圧燃料が流入し、第1背圧室62の燃料圧力が再び上昇する。第1弁体7は、下方に移動し始め、高圧ポート611を再び開放する。それと同時に、第2弁体8も第1弁体7に押され、下方に移動し始める。そして、第2弁体8が低圧ポート612を閉塞する。その結果、コモンレール2から増圧制御室45に燃料が再び流入し、増圧装置4による燃料の増圧が停止するとともに燃料の噴射が停止する。
【0073】
本実施形態では、第2弁体8の第2弁体部81に、弁室61の下端面617のうち、第2シリンダ部615よりも外周側、かつ低圧ポート612よりも内周側に当接する内周側当接部821が形成されている。これにより、図5(a)、図5(b)、および図5(d)の状態のときに、第2摺動部83と第2シリンダ部615との摺動隙間を介して第2背圧室63の高圧燃料が第2リターン通路99に流出することを抑制でき、第2弁体8が第2リターン通路99を閉塞しているときのエネルギー損失の発生を抑制できる。
【0074】
また、内周側、外周側当接部821、822は、ともに第2弁体部81の下端面617から同一方向に向かって突出するように形成しているので、第2弁体8が下方に移動するだけで、第2背圧室63の高圧燃料が上記摺動隙間を介して第2リターン通路99に流出することを抑制できると同時に、弁室61の燃料が第2リターン通路99に流出することも抑制できる。
【0075】
本実施形態では、第2弁体8が第2リターン通路99を閉塞しているときのエネルギー損失の発生を抑制できる3方切替弁51を燃料噴射装置1の増圧装置4を駆動させる弁として利用した。これにより、燃料噴射装置1のエネルギー損失の発生を抑制することができた。その結果、この燃料噴射装置1を搭載されるエンジンの燃料消費量の増大を抑制できる。
【0076】
一般的に、増圧装置4が作動していない状態の時間は、増圧装置4が作動している時間に比べ非常に長い。本実施形態では、3方切替弁51が第1の状態となっているときに、増圧装置4が燃料の増圧を停止するようになっている。このため、3方切替弁51のエネルギー損失の発生の抑制効果を長い時間に亘って発揮させることができる。
【0077】
(他の実施形態)
図6は、本実施形態による3方切替弁51の他の実施形態を示している。なお、上記施形態と実質的に同一の構成部分には同一符号を付す。
【0078】
この他の実施形態では、第2弁体8に形成された内周側、外周側当接部821a、822aが当接する面である弁室61の下端面617aが、第2シリンダ部615の中心に向かって傾斜する面となっている。それに伴い、第2弁体部81aの下端面82aも上記傾斜面に倣って傾斜している。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態による3方切替弁を用いた燃料噴射装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による3方切替弁の断面図である。
【図3】図2中のIII‐III線の断面図である。
【図4】図2中のIV‐IV線の断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の一実施形態による3方切替弁の動作を説明する図である。
【図6】一実施形態の他の実施形態による3方切替弁の断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 燃料噴射装置、2 コモンレール(高圧源)、22 燃料タンク(低圧源)、3 ノズル、31 噴孔、32 ニードル、4 増圧装置(流体装置)、41 増圧ピストン、42 シリンダ、43 高圧室、44 増圧室、45 増圧制御室(制御室)、5 制御部、51 3方切替弁、52 電磁弁、6 ボデー、61 弁室、611 高圧ポート(高圧通路の開口部)、612 低圧ポート(低圧通路の開口部)、613 制御ポート、616 第1弁座部、617 下端面、62 第1背圧室、63 第2背圧室、7 第1弁体、71 第1弁体部、72 第1摺動部、73 連通路、74 オリフィス、8 第2弁体、81 第2弁体部、82 下端面、821 内周側当接部(第1当接部)、822 外周側当接部(第2当接部)、83 第2摺動部、9 高圧燃料供給通路、91 噴射制御通路、93 燃料供給通路、94 増圧制御通路(制御通路)、95 第1制御圧供給通路、96 制御燃料供給通路、97 第2制御圧供給通路、98 第1リターン通路、99 第2リターン通路(低圧通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧源の高圧流体を流体装置の制御室へ供給する第1の状態と、前記制御室の高圧流体を低圧源に排出する第2の状態を切り替える3方切替弁において、
前記高圧源と連通する高圧通路、前記制御室と連通する制御通路、および前記低圧源と連通する低圧通路が開口する弁室を有するボデーと、
前記高圧通路の開口部を開閉する第1弁体であって、一端部が前記弁室に収容され、他端部が、前記一端部側に付勢する前記高圧源の前記高圧流体が流入する前記ボデーに形成された第1背圧室に収容され、前記一端部と前記他端部との間の側壁が前記ボデーに摺動自在に支持され、前記第1背圧室の流体の圧力が所定値から低下すると、前記第1背圧室側に移動し、前記高圧通路の開口部を閉塞する第1弁体と、
前記低圧通路の開口部を開閉する第2弁体であって、一端部が前記弁室に収容され、他端部が前記一端部側に付勢する前記高圧源の前記高圧流体が流入する前記ボデーに形成された第2背圧室に収容され、前記一端部と前記他端部との間の側壁が前記ボデーに摺動自在に支持され、前記弁室の流体の圧力が所定値から低下すると、前記弁室側に移動し、前記低圧通路の開口部を開放する第2弁体と、を備え、
前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わる過渡期において、前記第1背圧室および前記弁室の流体の圧力を調整させることにより、前記第2弁体は、前記第1弁体が前記高圧通路の開口部を閉塞した後、前記低圧通路の開口部を開放する3方切替弁であって、
前記第2弁体は、前記第2弁体が前記低圧通路の開口部を閉塞するとき、前記第2弁体と前記ボデーとの摺動部と、前記低圧通路の開口部との間に、前記第2弁体の軸方向移動に伴って前記弁室の内壁に当接し、前記摺動部から前記低圧通路の開口部への流体の流れを阻止する第1当接部を有することを特徴とする3方切替弁。
【請求項2】
前記第1弁体および前記第2弁体は、前記第1弁体および前記第2弁体のそれぞれの中心軸線がほぼ一致するように前記ボデーに配置されており、
前記第2の状態にあるとき、前記第1弁体が、前記第2弁体を、前記第1当接部が前記弁室の内壁に押し付けられる方向に押し付けることを特徴とする請求項1に記載の3方切替弁。
【請求項3】
前記第2弁体は、前記弁室に収容される弁体部と、前記弁体部よりも径が小さく、前記ボデーに摺動自在に支持される摺動部を有し、
前記第1当接部は、前記弁体部の前記摺動部側の端面に前記低圧通路の開口部が形成される前記弁室の前記内壁に向かって突出するように、かつ、当該端面を前記第2弁体の軸方向から見たとき、前記摺動部を囲むように形成され、
さらに、前記弁体部の前記端面には、前記第1当接部よりも外周側であって、前記低圧通路の開口部と前記制御通路の開口部との間の前記弁室の前記内壁に当接する第2当接部が、前記弁室の前記内壁に向かって突出するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の3方切替弁。
【請求項4】
前記第1弁体には、前記第1背圧室と前記弁室とを連通する連通路が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の3方切替弁。
【請求項5】
前記連通路は、前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わる過渡期において、前記弁室の流体の圧力が所定値から低下して、前記第2弁体が前記低圧通路の開口部を開放した後、前記第2弁体によって閉塞されることを特徴とする請求項4に記載の3方切替弁。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の3方切替弁を備える燃料噴射装置であって、
先端に噴孔を有し、当該噴孔から燃料を噴射するノズルと、
前記ノズルに供給する燃料が流入する増圧室、前記増圧室の燃料の圧力を増圧させ、前記ノズルに供給する増圧ピストン、前記増圧ピストンの動作を制御する流体が流出入する制御室を有する増圧装置と、を備え、
前記3方切替弁の前記制御通路は、前記増圧装置の前記制御室に連通しており、前記3方切替弁が、前記第1の状態および前記第2の状態を切り替えることにより、前記高圧源の前記高圧流体としての高圧燃料を前記制御室に供給したり、前記制御室の前記高圧燃料を前記低圧源に排出したりし、前記増圧装置を駆動したり、停止させたりすることを特徴とする燃料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−304017(P2008−304017A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153283(P2007−153283)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】