説明

3次元計測装置、および3次元計測方法

【課題】投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減する3次元計測装置、および3次元計測方法を提供することを目的としている。
【解決手段】所定の照射パターンの光を照射する投光部30と、投光部により照射された光による反射光を含む像を撮像する撮像部20とを有する3次元計測装置1であって、投光部に対して照射パターンの光の照射位置を制御する照射指示を出力し、撮像部が撮像した画像データから計測データを算出する計測部40を備え、計測部は、投光部に照射パターンの光を照射し続けさせ、撮像部により撮像される領域を含む計測領域内で走査を繰り返すように制御し、照射指示による照射位置を撮像された画像データから検出し、検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元計測装置、および3次元計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触の3次元計測方法として、光切断法がある。光切断法は、投影装置が照射した光を、被測定物に照射し、被測定物を一定速度で移動させながら、撮像装置が照射光に照らし出された被測定物の断面の輪郭を一定間隔で1フレームずつ3次元計測装置が取得する。そして、取得した照射光に照らし出された断面の輪郭の画像(以下、光切断画像)から抽出した照射光による像の座標、投影装置の取り付け位置と角度、および撮像装置の取り付け位置と角度を用いて、三角測距法により演算して、被測定物の計測を行う。
このような光切断法において、レーザー光の照射装置やプロジェクター等が投影装置として用いられている。また、光切断法による3次元計測法としては、スリット法、格子法、位相シフト法、2値化コード法等、多くの方法が提案されている。
【0003】
投影装置としてプロジェクターを用いる場合、投影装置は、内部温度変化の影響による投影するパターン変化を受け、投影する画素位置が変化する。このため、校正時の投影画素位置と計測時の投影画素位置にズレが生じてしまい、計測精度が悪化していた。この温度ドリフトと言える投影画素位置のズレの傾向は、小型・低価格な投影装置になるほど顕著であり、投影装置内部の温度管理を行う必要がある。
【0004】
このため、特許文献1に記載の発明では、投影装置が、校正用のスリットパターンを縦方向と横方向に走査させて投影装置から照射する。そして、撮像装置が、この照射された校正用のパターンを撮像し、撮像された画像を演算処理部が画像処理する。また、特許文献1に記載の発明では、投影装置を固定したまま、縦横2方向のスリットパターンを照射するため、投影装置の表示画素の基準面上での投影位置を対応付けることができる。この結果、投影装置の素子とその基準面上での投影位置を一対一に対応させることで、投影装置のレンズに収差があった場合でも、撮像装置で計測して校正データを蓄積することで、三次元計測装置の校正を行っていた。
【0005】
また、特許文献2に記載の発明では、幅が既知の基準物体の上に、幅を計測する被計測物を重ねて配置する。そして、この基準物体と被計測物に、2台の投影装置から照射し、それぞれ照射した方向から撮像装置で撮像する。そして、2台の撮像装置により撮像された画像を用いて、三角測量の原理を用いて、基準物体と被計測物の各点の位置を算出している。そして、算出された各点、各線、各面の位置どうしの減算により、基準物体と被計測物の各点、各線、各面間の距離を算出している。この減算により、回路の特性による変動の誤差や、投影装置と撮像装置による3次元センサーの誤差が相殺され、このため、校正が不要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−3410号公報
【特許文献2】特開平7−260429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、校正用のパターンを用いて自動的に校正を行うことができ、さらに投影装置のレンズの歪みの影響も校正できるが、投影装置の安定性、特に温度ドリフトの影響が校正できない。
【0008】
また、特許文献2に記載の発明では、2台の投影装置、撮像装置ごとに温度ドリフト特性や温度変化が異なる場合、温度ドリフトの影響が校正できない。また、特許文献2に記載の発明では、基準物体の上に被計測物を重ねて配置しているため、基準物体と重なる部分を計測できない。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減する3次元計測装置、および3次元計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の照射パターンの光を照射する投光部と、前記投光部により照射された光による反射光を含む像を撮像する撮像部とを有する3次元計測装置であって、前記投光部に対して照射パターンの光の照射位置を制御する照射指示を出力し、前記撮像部が撮像した画像データから計測データを算出する計測部を備え、前記計測部は、前記投光部に前記照射パターンの光を照射し続けさせ、前記撮像部により撮像される領域を含む計測領域内で走査を繰り返すように制御し、照射指示による照射位置を前記撮像された画像データから検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正することを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、投光部から連続して所定の照射パターンの光を走査しながら照射し続けているため、投光部の所定の照射パターンを被計測物の計測時のみ照射する場合に比べて照射光が安定する効果がある。また、3次元計測装置は、連続照射され続けている異なる時刻且つ同一位置への表示指示による照射位置を検出して比較することで校正データを校正することにより、投光部に特別な構成を加えずに投光部の温度ドリフト等による影響による3次元計測結果の誤差を精度良く補正することができる。この結果、投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記計測部は、前記撮像部が撮像した画像データから前記所定の照射パターンの光が照射されている照射位置を検出する照射位置検出部と、前記照射位置検出部が検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、校正データを補正する校正データ補正部と、前記校正データ補正部が補正した校正データを用いて3次元計測データを算出する3次元データ演算部と、を備えるようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記計測部は、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較した結果に基づいて、前記投光部への温度制御情報を算出して、前記算出した温度制御情報を前記投光部に出力する温度演算部を備えるようにしてもよい。
【0014】
本発明によれば、温度演算部が、検出した異なる時刻且つ同一位置への表示指示による照射位置を示す情報同士を比較した結果に基づいて、投光部への温度制御情報を算出して、算出した温度制御情報を投光部に出力するようにした。このため、投光部の温度ドリフトによる影響に基づいて、投光部の温度制御を行うことができる。そして、投光部の温度制御により投光部が有する誤差を減らせことができるので、投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減することができる。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記制御部は、前記投光部と前記撮像部及び該3次元計測装置とのキャリブレーション終了直後に検出した照射位置と、前記キャリブレーション直後以外の時刻に検出された前記キャリブレーション直後に検出した照射位置への照射指示と同一位置への照射指示による照射位置を比較して、計測値の校正のための校正データを補正するようにしてもよい。
【0016】
本発明によれば、投光部の温度ドリフトの影響がほとんどないキャリブレーション直後に比較対象の初期データを生成し、生成した初期データと、初期データ生成時とは異なる時刻の照射位置とを比較する。この結果、3次元計測値の誤差を、投光部の温度ドリフトの影響がほとんどないキャリブレーション直後と同程度に抑えることができる。
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記制御部は、前記撮像部が撮像した画像データから前記所定の照射パターンの光が照射されている照射位置の画素の座標を、照射位置を示す情報として算出するようにしてもよい。
【0018】
本発明によれば、撮像部が撮像した画像データから所定の照射パターンの光が照射されている照射位置の画素の座標を、照射位置を示す情報に用いるため、画素単位で照射位置のずれを比較して、3次元計測結果を補正することができる。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記制御部は、前記計測領域内に被計測物が置かれていない箇所の前記照射位置を検出するようにしてもよい。
【0020】
本発明によれば、計測領域内に被計測物が置かれていない状態の照射位置を検出するため、被計測物が置かれる計測領域の高さが変化しない位置で照射位置を検出できる。この結果、被計測物の影響を受けずに、投光部の温度ドリフト等による影響による3次元計測結果の誤差を精度良く補正することができる。
【0021】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記投光部から照射される前記所定の照射パターンの光は、スリット光であり、前記計測部は、異なる時刻且つ同一位置への照射指示により照射された前記スリット光の照射位置を検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示により照射された前記スリット光のライン位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正するようにしてもよい。
【0022】
本発明によれば、投光部から照射される所定の照射パターンにスリット光を用い、計測部は、照射されたスリット光のライン位置を照射位置として算出する。スリット光を用いているため、照射位置の検出を簡単に行え、さらに誤差の検出も簡単に行える。このため、3次元計測装置のコストを下げることが可能になり、演算速度も高速化できる。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の3次元計測装置において、前記制御部は、前記投光部と前記撮像部及び該3次元計測装置とのキャリブレーション直後に前記撮像部が撮像した画像データから前記スリット光が照射されている照射位置の情報を、前記検出した照射位置に含まれる2画素の座標から近似して算出するようにしてもよい。
【0024】
本発明によれば、照射パターンがスリット光の場合、キャリブレーション直後に撮像部が撮像した画像データからスリット光が照射されている照射位置の情報を、前記検出した照射位置に含まれる2画素の座標から近似して算出するため、照射位置の検出を簡単に行え、さらに誤差の検出も簡単に行える。このため、3次元計測装置のコストを下げることが可能になり、演算速度も高速化できる。
【0025】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の照射パターンの光を照射する投光部と、前記投光部により照射された光による反射光を含む像を撮像する撮像部とを有する3次元計測装置の3次元計測方法であって、計測部が、前記投光部が照射する照射パターンの光の照射位置を制御する照射指示を出力し、前記撮像部が撮像した画像データから計測データを算出する計測工程を含み、前記計測工程は、前記投光部に所定の照射パターンの光を照射し続けさせ、前記撮像部により撮像される領域を含む計測領域内で走査を繰り返すように制御し、照射指示による照射位置を前記撮像された画像データから検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正することを特徴としている。
【0026】
本発明によれば、投光部から連続して所定の照射パターンの光を走査しながら照射し続けていることにより、投光部の所定の照射パターンの光を被計測物の計測時のみ照射する場合に比べて投光部の照射光が安定する効果がある。また、本発明の3次元計測方法は、連続照射され続けている異なる時刻且つ同一位置への表示指示による照射位置を検出して比較することで校正データを校正している。このため、本発明の3次元計測方法は、投光部に特別な構成を加えずに投光部の温度ドリフト等による影響の所定の照射パターンが照射される位置の誤差を精度良く補正することができる。この結果、投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態に係る3次元計測装置のシステム全体の構成例を示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】キャリブレーション直後の計測値の一例を示すグラフである。
【図4】本実施形態の補正を行わなかった場合における、キャリブレーションしてから15分後の計測値の一例を示すグラフである。
【図5】本実施形態の補正を行わなかった場合における、キャリブレーションしてから30分後の計測値の一例を示すグラフである。
【図6】同実施形態に係る初期データ生成処理のフローチャートである。
【図7】同実施形態に係るワーク上に照射されるスリット光の一例を説明する図である。
【図8】同実施形態に係る図7のスリット光による像を撮像し画像データの一例を示す図である。
【図9】計測データ記憶部に記憶されている初期データの一例を説明する図である。
【図10】同実施形態に係る3次元計測処理のフローチャートである。
【図11】同実施形態に係る校正データの補正処理のフローチャートである。
【図12】同実施形態に係る3次元計測処理における図7の状態を撮像した画像データの一例を示す図である。
【図13】同実施形態に係る校正データ記憶部に記憶されている校正データの一例を説明する図である。
【図14】キャリブレーション直後の計測値の一例を示すグラフである。
【図15】本実施形態の補正を行った場合、キャリブレーションしてから15分後の計測値の一例を示すグラフである。
【図16】本実施形態の補正を行った場合、キャリブレーションしてから30分後の計測値の一例を示すグラフである。
【図17】第2実施形態に係る初期データ取得後にワーク上に被計測物が置かれた場合のスリット光の状態を説明する図である。
【図18】同実施形態に係る図17のスリット光による像を撮像した画像データの一例を示す図である。
【図19】同実施形態に係る3次元計測のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は係る実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係る3次元計測装置のシステム1全体の構成例を示す概略図である。図1に示すように、3次元計測装置のシステム1は、ステージ10、撮像装置20、投射型表示装置30、計測装置40、画像表示装置50から構成されている。また、ステージ10の上には、計測される被計測物5が乗せられている。
【0030】
ステージ10は、被測定物5に投射型表示装置30から照射されるパターンの光(以下、照射光という)を走査させるため、制御部40により一定速度で移動させられる。
【0031】
撮像装置20(撮像部)は、例えば受光レンズとCCDカメラ等で構成され、計測装置40からの撮影タイミング制御により、照射光の反射光による被測定物5の表面の光切断像を1フレームずつ撮影して、撮像した画像データを計測装置40にフレーム画像データとして送信する。また、撮像装置20は、計測装置40により、被測定物5との撮影角度、被測定物5に対する焦点調整、被測定物5との距離が制御される。
【0032】
投射型表示装置30(投光部)は、例えば、スリット状の照射光を発生させ、このスリット状の照射光を被測定物5の表面に照射する。投射型表示装置30は、例えば、プロジェクターである。また、投射型表示装置30は、計測装置40により照射光の照射パターンの光の照射位置が制御され、また計測装置40により投射型表示装置30内のFAN(ファン)の回転が制御される。
【0033】
光切断像34は、投射型表示装置30から被測定物5にスリット状の照射光が照射された時の、照射光により形成される光切断像である。
【0034】
計測装置40(計測部)は、投射型表示装置30に照射光としてスリット光を照射させるように制御する。計測装置40は、後述するように初期データと撮像した画像データを比較して算出した補正計数に基づき、投射型表示装置30内のFANを制御する。また、計測装置40は、キャリブレーション直後、ワーク10上に何も置かれていない状態で、撮像装置20が撮像した画像データから初期データを算出して記憶する。また、計測装置40は、随時、撮像された画像データから照射光の各画素の座標の位置データを算出し、算出した照射光の各画素の座標の位置と記憶されている初期データとを比較することで、校正データを更新する。また、計測装置40は、計測した3次元測定結果を画像表示装置50に出力する。
なお、初期データとは、後述するようにキャリブレーション直後にワーク10上に何も置かない状態で撮像された画像データに基づき算出したワーク10表面の座標値(例えば、xy平面がワーク10上の平面座標であり、z軸の値が高さを示す)である。また、校正データとは、後述するように、温度ドリフトの影響により、ワーク10上に照射された照射光の位置がずれた場合に、画像データから検出された照射光の各画素の座標の位置に対するずれ量を校正して補正するためのデータである。
【0035】
画像表示装置50は、計測装置40が出力する3次元計測結果を表示する。
【0036】
次に、計測装置40の構成の例を説明する。図2は、本実施形態における計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、計測装置40は、制御部41、画像取得部42、計測データ記憶部43、ライン位置演算部44、校正データ補正部45、校正データ記憶部46、3次元データ演算部47、温度演算部48を備えている。また、投射型表示装置30は、画像制御部31、FAN制御部32を備えている。
【0037】
計測装置40の制御部41は、計測データ記憶部43に記憶されている初期データと、校正データ記憶部46に記憶されている校正データとを初期化する。制御部41は、所定のタイミングで、制御信号を投射型表示装置30の画像制御部31とライン位置演算部44とに出力する。制御部41は、この制御信号により、投射型表示装置30に、ワーク10上へ初期データ生成用の画像または計測用の照射光を表示させる。
なお、本実施形態において、初期データ生成用の照射光または計測用の照射光は、スリット光の照射光である。
【0038】
画像取得部42は、撮像装置20が出力する画像データを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。画像取得部42は、変換した画像データを所定のしきい値で二値化し、二値化した画像データを計測データ記憶部43に記憶させる。
【0039】
計測データ記憶部43には、ライン位置演算部44により算出されたカメラ座標の画素の座標に対応して、ワーク座標の画素の座標が記憶されている。また、計測データ記憶部43には、画像取得部42により二値化された画像データが記憶されている。なお、カメラ座標とは、撮像装置20が撮像した画像データまたは撮像素子における座標である。また、ワーク座標とは、ワーク10上の任意の点、または測定を行う空間に任意の点を設定した場合の実空間における座標である。
【0040】
ライン位置演算部44は、計測データ記憶部43に記憶されている二値化された画像データを読み出し、読み出した画像データからライン位置を検出する。なお、ライン位置とは、照射光がスリット光の場合、スリット光のワーク座標およびカメラ座標におけるスリット光の像ができている位置(座標)であり、例えば、スリット光を形成する各画素の各座標の集合である。
ライン位置演算部44は、撮像された画像データからカメラ座標におけるライン位置を算出し、算出されたカメラ座標に対応するワーク座標におけるライン位置を算出する。ライン位置演算部44は、カメラ座標で検出されたラインの全ての画素と、算出したワーク座標の全ての画素の座標とを関連づけて計測データ記憶部43に記憶させる。ライン位置演算部44は、制御部41が出力する制御信号に基づき、ワーク10上の所定の範囲の走査が完了したか否かを判別し、ワーク10上の所定の範囲の走査が完了したと判別した場合、3次元データ演算部47に完了したことを示す情報を出力する。
【0041】
校正データ補正部45は、計測データ記憶部43に記憶されているワーク位置の初期データを読み出す。校正データ補正部45は、読み出したワーク位置の初期データと、ライン位置演算部44が算出したライン位置の画素の座標とを比較し、ワーク位置に対する補正係数(温度制御情報)を算出する。校正データ補正部45は、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを、後述する校正データの補正処理により補正して更新し、更新後の校正データを校正データ記憶部46に更新して記憶させる。校正データ補正部45は、算出した補正係数を温度演算部48に出力する。
【0042】
校正データ記憶部46には、ワーク位置に対応して、校正データが関連づけられて記憶されている。
【0043】
3次元データ演算部47は、ライン位置演算部44が出力する走査が完了したことを示す情報が入力された後、校正データ記憶部46に記憶されている更新された校正データを用いて、後述するように計測された全てのライン位置データを補正する。3次元データ演算部47は、補正した全てのライン位置データを計測データとして、画像表示装置50に出力する。
【0044】
温度演算部48は、校正データ補正部45が出力する補正係数に基づき、投射型表示装置30の内部温度を推定する。温度演算部48は、推定した投影装置の温度に基づき、投射型表示装置30のFANを制御する制御値を生成し、生成したFAN制御値を、投射型表示装置30のFAN制御部32に出力する。
【0045】
投射型表示装置30の画像制御部31は、初期データ生成用の照射光または計測用の照射光を、制御部41からの制御信号による指示のタイミングで、ステージ10上に順次、走査しながら照射する。
【0046】
FAN制御部32は、温度演算部48からのFAN制御値に基づき、投射型表示装置30のFANの回転数を制御する。
【0047】
次に、図3〜図5を用いて、本実施形態による補正を行わなかった場合の計測誤差の一例について説明する。図3は、キャリブレーション直後の計測値の一例を示すグラフである。図4は、本実施形態による補正を行わなかった場合における、キャリブレーションしてから15分後の計測値の一例を示すグラフである。図5は、本実施形態による補正を行わなかった場合における、キャリブレーションしてから30分後の計測値の一例を示すグラフである。図3〜図5において、横軸はカメラ座標のx軸、縦軸はカメラ座標のy軸である。また、図3〜図5において、各ハッチング201〜210は、計測したz軸方向の面の高さのばらつきを表している。ハッチング201は、−1450[μm]〜−1470[μm]、ハッチング202は、−1470[μm]〜−1490[μm]を表している。ハッチング203は、−1490[μm]〜−1510[μm]、ハッチング204は、−1510[μm]〜−1530[μm]を表している。ハッチング205は、−1530[μm]〜−1550[μm]、ハッチング206は、−1550[μm]〜−1570[μm]を表している。ハッチング207は、−1570[μm]〜−1590[μm]、ハッチング208は、−1590[μm]〜−1610[μm]を表している。ハッチング209は、−1610[μm]〜−1630[μm]、ハッチング210は、−1630[μm]〜−1650[μm]を表している。
例えば、図3において、ハッチング205(−1530[μm]〜−1550[μm])のみであれば、計測された面の高さ方向(z軸方向)の誤差は、20[μm]であることを表している。
なお、図3〜図5は、同一の平面のうち、100[mm」×70[mm]のエリアを計測している。
【0048】
図3に示すように、光切断法によるキャリブレーション直後の計測値では、面の高さが約20[μm]のばらつきを有している。そして、図4に示すように、本実施形態による補正を行わなかった場合、キャリブレーションしてから15分後に同じ平面を計測した場合、面の高さは約80[μm]のばらつきを有して計測されている。さらに、図5に示しように、本実施形態による補正を行わなかった場合、キャリブレーションしてから30分後に同じ平面を計測した場合、面の高さは約200[μm]のばらつきを有して計測されている。すなわち、本実施形態による補正を行わなかった場合、キャリブレーション後、時間が経過する毎に、同一平面を計測しても、高さに対するばらつきが増加している。図5に示すように、ばらつきは、キャリブレーションしてから30分後には、キャリブレーション直後のばらつきに対して約10倍になっている。また、図5に示すように、同一面内でも、ばらつきの発生の状態が異なっている。すなわち、x軸正方向に向かって、計測される高さが減少している。これらの要因の一つは、投射型表示装置30による温度ドリフトである。
【0049】
次に、初期データ生成処理について、図6〜図9を用いて説明する。
図6は、本実施形態に係る初期データ生成処理のフローチャートである。
図7は、本実施形態に係るワーク10上に照射されるスリット光の一例を説明する図である。図7(a)は、位置xの場合のスリット光の状態を示す図であり、図7(b)は、位置xの場合のスリット光の状態を示す図であり、図7(c)は、位置xの場合のスリット光の状態を示す図である。
図8は、本実施形態に係る図7のスリット光による像を撮像し画像データの一例を示す図である。図8(a)は、位置xのスリット光による像が撮像された画像データを示す図であり、図8(b)は、位置xのスリット光による像が撮像された画像データを示す図であり、図8(c)は、位置xのスリット光による像が撮像された画像データを示す図である。
図9は、計測データ記憶部43に記憶されている初期データの一例を説明する図である。
なお、図6のステップS1〜S5の初期データの生成処理は、3次元計測システム1のキャリブレーション後に行われる。
【0050】
(ステップS1)
まず、制御部41は、計測データ記憶部43に記憶されている初期データと、校正データ記憶部46に記憶されている校正データとを初期化する。
投射型表示装置30の画像制御部31は、初期データ生成用のスリット光を、制御部41からの制御信号による指示のタイミングで、ステージ10上のx軸の位置xに照射する。ステップS1終了後、ステップS2に進む。
【0051】
(ステップS2)
次に、画像取得部42は、制御部41から制御信号による指示のタイミングで、撮像装置20が撮像した画像データであって、スリット光が照射されているステージ10の画像データを取得する。画像取得部42は、撮像装置20が出力する画像データを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、画像取得部42は、変換した画像データを所定のしきい値で二値化し、二値化した画像データを計測データ記憶部43に記憶させる。ステップS2終了後、ステップS3に進む。
【0052】
(ステップS3)
次に、ライン位置演算部44は、計測データ記憶部43に記憶されている二値化された画像データを読み出し、読み出した画像データからライン位置を検出する。ライン位置演算部44は、撮像された画像データからカメラ座標におけるライン位置を算出し、算出されたカメラ座標に対応するワーク座標におけるライン位置を算出する。例えば、ライン位置演算部44は、カメラ座標におけるx11の位置で検出されたライン301の全ての画素((x111,y111)、(x112,y112)、・・・、(x11m,y11m))(mは1以上の自然数)に対して、ワーク座標における位置xの全ての画素の座標((x11,y11)、(x12,y12)、・・・、(x1m,y1m))を算出する。図8(a)のように検出されたライン301に対して、全ての画素の位置を線形補間し、算出されたライン位置が直線とみなせると判別される場合、ライン位置演算部44は、ライン位置の情報を線分データ(例えば、始点の座標と、終点の座標)として算出するようにしてもよい。なお、図8(b)の符号302は、カメラ座標x12で検出されたラインであり、図8(c)の符号303は、カメラ座標x13で検出されたラインである。
位置xで撮像された場合、キャリブレーション直後には温度ドリフトがほとんどない。このため、図8(a)に示すように、位置xの照射されたスリット光は、カメラ座標x軸のx11の位置に輝度の高い直線として検出される。ステップS3終了後、ステップS4に進む。
【0053】
(ステップS4)
次に、ライン位置演算部44は、カメラ座標x11の位置で検出されたライン301の全ての画素と、算出したワーク座標xの全ての画素の座標とを関連づけて計測データ記憶部43に記憶させる。図9に示すように、計測データ記憶部43には、例えば、カメラ座標x1n(nは1以上の自然数)の画素の座標((x1n1,y1n1)、(x1n2,y1n2)、・・・、(x1nm,y1nm))に対応して、ワーク座標xの画素の座標((xn1,yn1)、(xn2,yn2)、・・・、(xnm,ynm))が記憶されている。ステップS4終了後、ステップS5に進む。
【0054】
(ステップS5)
次に、ライン位置演算部44は、制御部41が出力するライン位置のワーク座標がxか否かを判別する。ライン位置のワーク座標がxの場合(ステップS5;Yes)、初期データの生成処理を終了する。ライン位置のワーク座標がxではない場合(ステップS5;No)、ステップS1〜S5を、ワーク座標がxまで繰り返す。
【0055】
次に、3次元計測処理について、図7、図10〜図12を用いて説明する。
図10は、本実施形態に係る3次元計測処理のフローチャートである。図11は、本実施形態に係る校正データの補正処理のフローチャートである。図12は、本実施形態に係る3次元計測処理における図7の状態を撮像した画像データの一例を示す図である。図12(a)は、位置xのスリット光が撮像された画像データを示す図であり、図12(b)は、位置xのスリット光が撮像された画像データを示す図であり、図12(c)は、位置xのスリット光が撮像された画像データを示す図である。
なお、本実施形態では、ワーク10上に被計測物5が乗っていない状態である。
【0056】
(ステップS101)
投射型表示装置30の画像制御部31は、計測用のスリット光を、制御部41からの制御信号による指示のタイミングで、ステージ10上のx軸の位置xにキャリブレーション後も照射し続ける。本実施形態では、ステップS101終了後、ステップS102に進む。
【0057】
(ステップS102)
次に、画像取得部42は、制御部41からの制御信号による指示のタイミングで、撮像装置20が撮像したスリット光が照射されているステージ10の画像データを取得する。画像取得部42は、撮像装置20が出力する画像データを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、画像取得部42は、変換した画像データを所定のしきい値で二値化し、二値化した画像データを計測データ記憶部43に記憶させる。ステップS102終了後、ステップS103に進む。
【0058】
(ステップS103)
次に、ライン位置演算部44は、計測データ記憶部43に記憶されている二値化された画像データを読み出し、読み出した画像データからライン位置を検出する。ライン位置検出は、ライン位置演算部44が、撮像された画像データからカメラ座標におけるライン位置を算出し、算出されたカメラ座標に対応するワーク座標におけるライン位置を算出する。
例えば、ライン位置演算部44は、カメラ座標におけるx11’の位置で検出されたライン401の全ての画素((x111’,y111’)、(x112’,y112’)、・・・、(x11m’,y11m’))(mは1以上の自然数)に対して、ワーク座標における位置x’の全ての画素の座標((x11’,y11’)、(x12’,y12’)、・・・、(x1m’,y1m’))を算出する。ライン位置演算部44は、算出したワーク座標における位置x’の全ての画素の座標((x11’,y11’)、(x12’,y12’)、・・・、(x1m’,y1m’))を校正データ補正部45に出力する。
位置xに照射されたスリット光を撮像した場合、キャリブレーション直後には温度ドリフトがほとんどないため、図8(a)に示すように、カメラ座標x軸のx11の位置に輝度の高いラインとして検出される。しかしながら、キャリブレーションしてから時間が経過するにしたがって、照射されるライン位置の座標が、図12(a)の曲線401ようにずれる。なお、このような投射型表示装置30による温度ドリフトとは、例えば、光源の明るさ設定の影響、投射型表示装置30の外気の影響、投射型表示装置30の不図示のレンズ部のガラスに対する温度の影響、投射型表示装置30の内部回路の温度の影響、さらにこれらの影響の時間変化などである。
また、図12(b)の符号402は、カメラ座標x12’で検出されたラインであり、図12(c)の符号403は、カメラ座標x13’で検出されたラインである。
ステップS103終了後、ステップS104に進む。
【0059】
(ステップS104)
次に、校正データ補正部45は、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを、後述する校正データの補正処理により補正し、補正した校正データを校正データ記憶部46に更新して記憶させる。
【0060】
(ステップS105)
次に、ライン位置演算部44は、制御部41が出力するライン位置のワーク座標がxか否かを判別する。ワーク座標がxの場合(ステップS105;Yes)、ステップS106に進む。ワーク座標がxではない場合(ステップS105;No)、ステップS101〜S105を、ワーク座標がxまで繰り返す。
ライン位置演算部44は、ワーク10上の所定の範囲の走査が完了した場合、3次元データ演算部47に走査が完了したことを示す情報を出力する。
【0061】
(ステップS106)
次に、3次元データ演算部47は、ライン位置演算部44が出力する走査が完了したことを示す情報が入力された後、校正データ記憶部46に記憶されている更新された校正データを用いて、計測された全てのライン位置データを補正する。3次元データ演算部47は、補正したデータを計測データとして、画像表示装置50に出力する。
ステップS101〜S106の処理完了後、ステップS101に戻り、ステップS101〜S106を繰り返し行う。
【0062】
次に、ステップS104の校正データの補正処理について、図11を用いて説明する。なお、校正データ記憶部46に記憶されている校正データの初期状態は、全てのワーク位置で誤差0に、予め制御部41からの初期設定により設定されている。
【0063】
(ステップS201)
校正データ補正部45は、計測データ記憶部43に記憶されているワーク位置xの初期データを読み出す。次に、校正データ補正部45は、読み出したワーク位置xの初期データ(ライン301の画素の座標)と、ライン位置演算部44が算出したライン位置x’の画素の座標とを比較し、ワーク位置xに対する補正係数を算出する。
補正係数は、例えば、次式(1)により算出する。ステップS201終了後、ステップS202に進む。
【0064】
補正係数=(ワーク位置xの各画素の座標)/(ワーク位置x’の各画素の座標) ・・・(1)
【0065】
例えば、校正データ記憶部46に記憶されているワーク位置xにおける画素の座標が(1.0、1.0)、ステップS103で算出されたワーク位置x’ における画素の座標が(1.1、1.1)の場合、校正データ補正部45は、x軸、y軸ともに補正係数=1.0/1.1=0.92を算出する。
【0066】
(ステップS202)
次に、校正データ補正部45は、算出した補正係数を用いて、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを更新する。
例えば、補正係数が0.9と算出された場合、予め校正データ記憶部46に記憶されている補正係数と誤差との対応関係に基づき、校正データ補正部45は、ライン位置xの校正データを0から0.1に補正して更新する。
図13は、校正データ記憶部46に記憶されている校正データの一例を説明する図である。図13に示すように、例えば、ワーク位置xに対応して、校正データhが関連づけられて記憶されている。
【0067】
(ステップS203)
次に、校正データ補正部45は、算出した補正係数を温度演算部48に出力する。温度演算部48は、校正データ補正部45が出力する補正係数に基づき、投射型表示装置30の内部温度を推定する。温度演算部48は、推定した投影装置の温度に基づき、投射型表示装置30のFANを制御する制御値を生成し、生成したFAN制御値を、投射型表示装置30のFAN制御部32に出力する。
【0068】
なお、初期データを生成するために照射するスリット光の間隔と、計測時のスリット光の間隔は同一でなくてもよい。例えば、計測時のスリット間隔が、xからxまでn回の場合、初期データを生成するために照射するスリット光の間隔をnの半分にしてもよい。この場合、校正データ補正部45は、計測時にx軸x’、x’、・・・の位置、すなわち、照射2回に対して校正を1回行うようにしてもよい。あるいは、x’の位置においては、その前の位置xの位置情報と比較するようにしてもよく、または、前後の位置情報xとxとの平均値を用いて比較するようにしてもよい。
【0069】
次に、図14〜図16を用いて、本実施形態による補正を行った場合の計測誤差の一例について説明する。図14は、キャリブレーション直後の計測値の一例を示すグラフである。図15は、本実施形態による補正を行った場合、キャリブレーションしてから15分後の計測値の一例を示すグラフである。図16は、本実施形態による補正を行った場合、キャリブレーションしてから30分後の計測値の一例を示すグラフである。図14〜図16において、横軸はカメラ座標のx軸、縦軸はカメラ座標のy軸である。また、図14〜図16において、各ハッチング201〜210は、図3〜図5と同様に、計測したz軸方向の面の高さのばらつきを表している。
なお、図14〜図16は、図3〜図5と同様に、同一の平面のうち、100[mm」×70[mm]のエリアを計測している。
【0070】
図14に示すように、本実施形態によるキャリブレーション直後の計測値は、面の高さは約20[μm]のばらつきである。そして、図15に示しように、実施形態による補正を行った場合、キャリブレーション後、15分後に同じ平面を計測した面の高さは約20[μm]程度のばらつきを有して計測されている。さらに、図16に示しように、実施形態による補正を行った場合、キャリブレーション後、30分後に同じ平面を計測した面の高さは約20[μm]のばらつきを有して計測されている。すなわち、実施形態による補正を行った場合、キャリブレーション後、時間が経過する毎に、同一平面を計測しても、高さに対するばらつきが増加せず、ほぼキャリブレーション直後のままである。
本実施形態によれば、キャリブレーションした後、15分後、本実施形態による校正を行わない場合、上述したように面の高さのばらつきは約80[μm](図4)であるので、ばらつきは四分の一に改善されている。さらに、キャリブレーションした後、30分後、本実施形態による校正を行わない場合、上述したように面の高さのばらつきは約200[μm](図5)であるので、ばらつきは十分の一に改善されている。
【0071】
以上のように、制御部40は、キャリブレーション直後に、ワーク10の上に何も置かない状態の撮像された画像データから各ライン位置を算出し、算出したライン位置の各画素の座標を計測データ記憶部43に初期データとして記憶させる。
次に、制御部40は、ワーク10の上に何も置かない状態のワーク10に、スリット光を照射かつ走査し続けるように投射型表示装置30を制御する。そして、制御部40は、スリット光が照射された画像データからラインのデータを検出し、検出したラインのデータに対応する各ライン位置の各画素の座標を算出する。そして、制御部40は、算出したライン位置の各画素の座標と、計測データ記憶部43に記憶されている初期データ(各画素の座標)とを比較して校正用の補正値を算出して、算出した補正値に基づき校正データ記憶部46に記憶されている校正データを補正して更新する。そして、制御部40は、この校正データを用いて、3次元測定データを算出する。
この結果、投射型表示装置30による温度ドリフトの影響で、照射光の位置に誤差が生じても、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを用いて、3次元測定データを算出しているので、温度ドリフトの影響を防ぐことができる。
また、計測部40が投射型表示装置30のFANを制御するため、投光部の温度ドリフトによる影響に基づいて、投光部の温度制御を行う。この結果、投光部の温度制御により投光部が有する誤差を減らせことができるので、投影装置の温度ドリフトによる影響を軽減することができる。
【0072】
[第2実施形態]
第1実施形態では、ワーク10上に何も置かない状態でスリット光を照射し、温度ドリフトが生じていない状態の初期状態のデータと比較する例を説明した。第2実施形態では、ワーク10上に被計測物5が置かれた場合について説明する。
計測装置40の構成は、図2と同様である。また、投射型表示装置30のキャリブレーション後に行う初期データの生成処理は、第1実施形態の図6の手順と同様である。
【0073】
図17は、本実施形態に係る初期データ取得後にワーク10上に被計測物5が置かれた場合のスリット光の状態を説明する図である。図17に示すように、投射型表示装置30は、第1実施形態と同様に、x軸に対してxからxまで、スリット光の照射を繰り返す。図17(a)は、位置xのスリット光の状態を示す図であり、図17(b)は、位置xのスリット光の状態を示す図であり、図17(c)は、位置xのスリット光の状態を示す図である。
図18は、本実施形態に係る図17のスリット光による像を撮像し画像データの一例を示す図である。図18(a)は、位置xの場合の撮像された画像データを示す図であり、図18(b)は、位置xの場合の撮像された画像データを示す図であり、図18(c)は、位置xの場合の撮像された画像データを示す図である。
【0074】
図17(a)と図18(a)、及び図17(c)と図18(c)に示すように、ワーク10上に被計測物5が無い場合、カメラ座標x11及びx13のライン601及び603は、第1実施形態の図8(a)及び図8(c)と同様の画像データが得られる。
一方、図17(b)と図18(b)に示すように、ワーク10上に被計測物5がある場合、カメラ座標x12のライン602は、被計測物5が無い領域のライン602−1及び602−3と、被計測物5がある領域のライン602−2である。そして、ライン602−2の輝度は、ライン602−1及び602−3の輝度より高い。なお、図18(b)では、便宜的に輝度の高いライン602−2を、輝度の低いライン602−1より太い線分で表している。
すなわち、撮像装置20で撮像された画像を画像データでは、被計測物5がある領域と無い領域とで、検出される輝度が異なる。このため、予め輝度に対するしきい値を実験により設定しておくことで、被計測物5による反射か、ワーク10による反射のラインかを識別することができる。なお、本実施形態では、ワーク10による反射光の輝度より、被計測物5による反射光の輝度が高い場合を説明するが、被計測物5による反射光の輝度の方が低くても、同様に処理することができる。
【0075】
次に、本実施形態の3次元計測処理について説明する。
図19は、本実施形態に係る3次元計測のフローチャートである。
【0076】
(ステップS301)
投射型表示装置30の画像制御部31は、キャリブレーション用のスリット光を、制御部41からの制御信号による指示のタイミングで、ステージ10上のx軸の位置xに照射する。ステップS301終了後、ステップS302に進む。
【0077】
(ステップS302)
次に、画像取得部42は、制御部41から制御信号による指示のタイミングで、撮像装置20が撮像したスリット光が照射されているステージ10の画像データを取得する。画像取得部42は、撮像装置20が出力する画像データを、アナログ信号からデジタル信号に変換する。そして、画像取得部42は、変換した画像データを所定のしきい値で階調化し、階調化した画像データを計測データ記憶部43に記憶させる。ステップS302終了後、ステップS303に進む。
【0078】
(ステップS303)
次に、ライン位置演算部44は、計測データ記憶部43に記憶されている階調化された画像データを読み出し、読み出した画像データに対して所定のしきい値より低い輝度のラインを、ワーク10上のラインとして検出する。
ステップS303終了後、ステップS304に進む。
【0079】
(ステップS304)
次に、ライン位置演算部44は、検出したラインに対応するカメラ座標における各画素の座標を算出し、算出されたカメラ座標に対応するワーク座標におけるライン位置の各画素の座標を算出する。例えば、ライン位置演算部44は、カメラ座標におけるx11’の位置で検出されたライン401の全ての画素((x111’,y111’)、(x112’,y112’)、・・・、(x11m’,y11m’))(mは1以上の自然数)に対して、ワーク座標における位置x’の全ての画素の座標((x11’,y11’)、(x12’,y12’)、・・・、(x1m’,y1m’))を算出する。ライン位置演算部44は、算出したワーク座標における位置x1’の全ての画素の座標((x11’,y11’)、(x12’,y12’)、・・・、(x1m’,y1m’))を校正データ補正部45に出力する。
ステップS304終了後、ステップS305に進む。
【0080】
(ステップS305)
次に、校正データ補正部45は、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを、上述した校正データの補正処理により補正し、補正した校正データを校正データ記憶部46に更新して記憶させる。ステップS305終了後、ステップS306に進む。
【0081】
(ステップS306)
次に、ライン位置演算部44は、制御部41が出力するワーク座標がxか否かを判別する。ワーク座標がxの場合(ステップS306;Yes)、ステップS307に進む。ワーク座標がxではない場合(ステップS306;No)、ステップS301〜S306を、ワーク座標がxまで繰り返す。
ライン位置演算部44は、ワーク10上の所定の範囲の走査が完了した場合、3次元データ演算部47に完了したことを示す情報を出力する。
【0082】
(ステップS307)
次に、3次元データ演算部47は、ライン位置演算部44が出力する走査が完了したことを示す情報が入力された後、校正データ記憶部46に記憶されている更新された校正データを用いて、計測された全てのライン位置データを補正する。3次元データ演算部47は、補正したデータを計測データとして、画像表示装置50に出力する。
ステップS301〜S307の処理完了後、ステップS301に戻り、ステップS301〜S307を繰り返し行う。
【0083】
以上のように、制御部40は、キャリブレーション直後に、ワーク10の上に何も置かない状態の撮像された画像データから各ライン位置を算出し、算出したライン位置の各画素の座標を計測データ記憶部43に初期データとして記憶させる。
次に、制御部40は、キャリブレーション後も、ワーク10上に照射光を照射し続けるように投射型表示装置30を制御する。
次に、制御部40は、スリット光が照射された画像データから、被計測物5以外の反射光であるワーク10上のラインのデータを検出し、検出したラインのデータに対応する各ライン位置の各画素の座標を算出する。そして、制御部40は、算出したライン位置の各画素の座標と、計測データ記憶部43に記憶されている初期データとを比較して校正用の補正値を算出して、算出した補正値に基づき校正データ記憶部46に記憶されている校正データを補正して更新する。そして、制御部40は、この校正データを用いて、3次元測定データを算出する。
この結果、ワーク10上に被計測物5が置かれた場合でも、投射型表示装置30による温度ドリフトの影響で、照射光の位置に誤差が生じても、校正データ記憶部46に記憶されている校正データを用いて、3次元測定データを算出しているので、温度ドリフトの影響を防ぐことができる。
【0084】
また、本実施形態では、投射型表示装置30が照射する照射光として、スリット光を用いる例を説明したが、スポット光、格子パターン、および2値コードなどでもよい。この場合においても、キャリブレーション直後に照射した照射パターンによる像の各画素位置を検出し、検出した画素位置の座標から初期データを生成する。そして、初期データ生成後に初期データ生成の場合と同じ照射パターンを照射し続けて、検出した位置データを初期データと比較した結果に基づき、校正データを補正するようにしてもよい。なお、照射パターンの照射位置の検出は、パターンマッチングや特徴量の検出など公知の検出法を用いて行う。
【0085】
なお、本実施形態では、温度演算部48が校正データ補正部45により算出された補正係数を用いて、投射型表示装置30のFANを制御する例を説明したが、FANに限らず、他の冷却装置により投射型表示装置30内の温度を制御するようにしてもよい。また、温度演算部48が校正データ補正部45により算出された補正係数を用いて、校正データを更新して3次元計測データを補正するのみで、投射型表示装置30のFANを制御しなくてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、校正データ補正部45が、キャリブレーション直後に計測したライン位置と、その後に計測されたライン位置とを比較して補正係数を算出する例を説明したが、異なる時刻のライン位置同士を比較して補正係数を算出するようにしてもよい。この場合、異なる時刻に撮像された画像データから算出されたライン位置を比較し、誤差の傾きに応じて校正データを、予め設定してあるテーブルに基づき更新するようにしても良い。この予め設定してあるテーブルは、実験やシミュレーション等により算出して校正データ記憶部46に記憶しておくようにしてもよい。
【0087】
また、本実施形態では、ライン位置の検出を、ラインが照射された後、1ラインごとに行う例を説明したが、計測データ記憶部43にx軸xからxまでの全ての画像データを記憶させた後、まとめて行ってもよい。あるいは、所定のライン分、まとめてライン位置を検出するようにしてもよい。
【0088】
なお、実施形態の図2の制御部40の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピューター読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピューターシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピューターシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD−ROM等の可搬媒体、USB(Universal Serial Bus) I/F(インタフェース)を介して接続されるUSBメモリー、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、サーバーやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリーのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0089】
10・・・ステージ
20・・・撮像装置(撮像部)
30・・・投射型表示装置(投光部)
40・・・計測装置(計測部)
50・・・画像表示装置
41・・・制御部
42・・・画像取得部
43・・・計測データ記憶部
44・・・ライン位置演算部
45・・・校正データ補正部
46・・・校正データ記憶部
47・・・3次元データ演算部
48・・・温度演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の照射パターンの光を照射する投光部と、前記投光部により照射された光による反射光を含む像を撮像する撮像部とを有する3次元計測装置であって、
前記投光部に対して照射パターンの光の照射位置を制御する照射指示を出力し、前記撮像部が撮像した画像データから計測データを算出する計測部
を備え、
前記計測部は、
前記投光部に前記照射パターンの光を照射し続けさせ、前記撮像部により撮像される領域を含む計測領域内で走査を繰り返すように制御し、
照射指示による照射位置を前記撮像された画像データから検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正する
ことを特徴とする3次元計測装置。
【請求項2】
前記計測部は、
前記撮像部が撮像した画像データから前記所定の照射パターンの光が照射されている照射位置を検出する照射位置検出部と、
前記照射位置検出部が検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、校正データを補正する校正データ補正部と、
前記校正データ補正部が補正した校正データを用いて3次元計測データを算出する3次元データ演算部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の3次元計測装置。
【請求項3】
前記計測部は、
前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較した結果に基づいて、前記投光部への温度制御情報を算出して、前記算出した温度制御情報を前記投光部に出力する温度演算部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記投光部と前記撮像部及び該3次元計測装置とのキャリブレーション終了直後に検出した照射位置と、前記キャリブレーション直後以外の時刻に検出された前記キャリブレーション直後に検出した照射位置への照射指示と同一位置への照射指示による照射位置を比較して、計測値の校正のための校正データを補正する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の3次元計測装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記撮像部が撮像した画像データから前記所定の照射パターンの光が照射されている照射位置の画素の座標を、照射位置を示す情報として算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の3次元計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記計測領域内に被計測物が置かれていない箇所の前記照射位置を検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の3次元計測装置。
【請求項7】
前記投光部から照射される前記所定の照射パターンの光は、スリット光であり、
前記計測部は、
異なる時刻且つ同一位置への照射指示により照射された前記スリット光の照射位置を検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示により照射された前記スリット光のライン位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の3次元計測装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記投光部と前記撮像部及び該3次元計測装置とのキャリブレーション直後に前記撮像部が撮像した画像データから前記スリット光が照射されている照射位置の情報を、前記検出した照射位置に含まれる2画素の座標から近似して算出する
ことを特徴とする請求項7に記載の3次元計測装置。
【請求項9】
所定の照射パターンの光を照射する投光部と、前記投光部により照射された光による反射光を含む像を撮像する撮像部とを有する3次元計測装置の3次元計測方法であって、
計測部が、前記投光部が照射する照射パターンの光の照射位置を制御する照射指示を出力し、前記撮像部が撮像した画像データから計測データを算出する計測工程
を含み、
前記計測工程は、
前記投光部に所定の照射パターンの光を照射し続けさせ、前記撮像部により撮像される領域を含む計測領域内で走査を繰り返すように制御し、
照射指示による照射位置を前記撮像された画像データから検出し、前記検出した異なる時刻且つ同一位置への照射指示による照射位置を示す情報同士を比較して、計測値の校正のための校正データを補正する
ことを特徴とする3次元計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図17】
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【図19】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−173243(P2012−173243A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38211(P2011−38211)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】