説明

ACF貼着装置及びディスプレイパネル

【課題】単にACFの貼着状態の検出を行うのではなく、IC回路素子の接続に支障を来すような貼着不良であるか否かの判定を行い、しかも貼着不良となる頻度を抑制する。
【解決手段】液晶パネル1には、その下基板2に複数の電極群5が設けられており、これらの各電極群5にはドライバ回路4を搭載するために、圧着ヘッド50によりACF8を貼着するが、ACF8はドライバ回路4と同じ長さか、それより多少長いものとなし、圧着ヘッド50を装着したACF貼着ユニット10のベースプレート10aに発光素子61と受光素子62とからなるACF検出手段60を前後一対設けて、電極群5の端部とアラインメントマーク6aを設けた部位との間の位置に発光素子61からの光を入射して、その反射光を受光素子62で受光することによって、電極群5の配設位置の前後の部位にACF8が貼着されているか否かを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイ,有機ELディスプレイ等のフラットディスプレイ装置を構成するディスプレイパネル等からなる基板にIC回路素子を搭載するために、この基板にACF(Anisotropic Conductive Film)を貼着するACF貼着装置及びこのACF貼着装置により貼着されたACFを介してIC回路素子を搭載することにより形成されるフラットディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイは、液晶封入空間を形成した上下2枚の透明基板からなる液晶パネルにドライバ回路としてのIC回路素子を介して印刷回路基板を接続する構成としている。ここで、IC回路素子はインナ側及びアウタ側の電極を備えており、インナ側の電極は液晶パネルを構成する一方の基板に、またアウタ側の電極は印刷回路基板に、それぞれ電気的に接続される。IC回路素子の搭載方式の代表的なものとしては、チップ状のICパッケージを液晶パネルの基板に直接搭載するCOG(Chip On Glass)方式、フィルム状の基板にIC回路素子を搭載したTCP(Tape Carrier Package)なり、COF(Chip on Film)なりを液晶パネルと印刷回路基板との間に接続するTAB(Tape Automated Bonding)方式がある。
【0003】
液晶パネルを構成する一方の基板の表面には、少なくとも1辺、最大で4辺に配線パターンが形成されており、この配線パターンにおける電極とIC回路素子のインナ電極とが電気的に接続される。従って、液晶パネルに微小ピッチ間隔で形成した電極は、それに搭載されるIC回路素子毎に所定数纏められた電極群として形成され、液晶パネルには複数の電極群が形成されており、相隣接する電極群間との間は空白領域となっている。なお、ドライバ回路を構成するIC回路素子は印刷回路基板とも接続され、このために印刷回路基板側にも、液晶パネル側と同様、所定数の電極群が複数群形成されている。ここで、印刷回路基板側の電極群を構成する配線の数は、通常、液晶パネル側の電極群の配線数より少ない。
【0004】
IC回路素子と、液晶パネルなり印刷回路基板なりとを接続するに当っては、微小間隔に配列されている多数の電極間を確実に電気的に接続し、かつIC回路素子を固定しなければならない。このためにACFが用いられる。ACFは粘着性のあるバインダ樹脂に微小な導電粒子を均一に分散させたものであり、このACFを介してIC回路素子を基板に熱圧着することによって、ACFの導電粒子を介して電極間が電気的に接続され、かつ加熱によりバインダ樹脂を硬化させて、ドライバ回路を液晶パネルや印刷回路基板に固定させる。
【0005】
例えば、液晶パネルの一方の基板における配線パターンが設けられている部位にACFを貼着した上でCOFからなるIC回路素子をこの基板にTAB搭載する。粘着物質であるACFは、セパレータに剥離層を介して積層されており、これによりACFテープを構成している。このACFテープを供給リールに巻回させておき、この供給リールから送り出されて、貼着ユニットにより基板表面に貼着される。このために、貼着ユニットには、供給リールを装架する部材が設けられ、また供給リールから供給されるACFテープを所定の経路に沿って引き回すために、適宜の箇所にガイドローラ等からなるガイド部材が配置される。
【0006】
基板へのACFの貼着方式としては、基板の1辺における全長にわたって連続的に貼着する一括貼りと、各々の電極群毎に分割して、電極群間の空白領域にはACFが付着しないようにして貼着する分割貼りとが一般に用いられる。一括貼りは、不必要な空白領域にもACFが貼着される関係から、材料に無駄が生じることになり、また空白領域ではACFを構成する粘着性のある樹脂と導電粒子とが露出したままになるので、IC回路素子の搭載後の処理や加工にとって不都合が生じることもある。従って、分割貼りの方が望ましい。
【0007】
分割貼りを行う場合には、ACFテープ若しくはセパレータを剥離したACFを基板の電極群毎に切断して貼り付けるようにする。いずれにしろ、ACFは基板に貼り付けた後に、または貼り付け前の段階で、ACFをセパレータから剥離しなければならない。このセパレータを剥離させる際には、ACFを確実に基板側に付着させて、セパレータのみを剥離させなければならない。このためには、ACFの粘着力は基板側の方が強く、セパレータ側は固着力を弱くする。このために、ACFの貼着時には、圧着、好ましくは加熱下で基板に圧着させるようにするのが一般的である。
【0008】
しかしながら、ACFは基板側だけでなく、セパレータ側に対しても粘着力を有しているために、セパレータを剥離したときに、状態によってはACFが全面にわたって基板に固着せず、その全体若しくは部分的にセパレータと共に引き上げられることがある。従って、ACF貼着不良の状態が発生したときには、直ちにそれを検出して、ACFの貼り直しを行う必要がある。このために、ACFの貼着が正確に行われているか否かの検出を行う必要がある。
【0009】
特許文献1には、ACF貼着状態の検出方式がされている。この特許文献1では、表示パネルに所定間隔毎にACFテープを貼着し、次いでセパレータをACFから剥離するようになし、このセパレータが完全に剥離されているか否か、ACFが表示パネルの所定位置に貼着されているか否かを光学手段により検出するようにしている。このACF検出用の光学手段は少なくともACFにおけるセパレータの剥離開始位置を含む位置を観察するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−83904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した特許文献1では、セパレータの剥離端位置、つまりACFの貼着開始位置を検出するものであり、この位置にACFが存在していないと、貼着不良または剥離不良として判定されることになる。そして、貼着不良があれば、パネルそのものを廃棄するのではなく、ACFを剥離して再度ACFを貼着することにより貼着リペアを行うことになる。また、剥離不良の場合には、セパレータの剥離作業を再試行することになる。従って、この間は装置の稼働を一端停止させることになる。
【0012】
ところで、ACFの貼着開始端位置に基づいて貼着状態の検出することは、必ずしも適正なものとは言えない。即ち、特許文献1の方式のように、ACFテープの状態でパネルに貼着した後、セパレータを剥離する際に、ACFの端部がセパレータにより持ち上げられる可能性がある。しかしながら、ACFの端部がセパレータにより持ち上げられて、多少の捲れや浮き上がりが発生しても、格別問題とならない場合がある。例えば、ACFの捲れにより折れ曲がっていたとしても、電極群の部位が適正に貼着されておれば、IC回路素子の搭載に支障を来すわけではない。従って、前述した検出結果を、ACFの貼着リペアのために用いる場合には、ACFの貼着状態がIC回路素子の接続に支障を来さないものでも、装置の停止を行わせてしまうことになる。このために、ACFの貼着端位置を検出するのは必要ではないだけでなく、貼着リペア手順を勘案すると、むしろこのACF貼着端位置を検出しない方が望ましい。
【0013】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、単にACFの貼着状態の検出を行うのではなく、IC回路素子の接続に支障を来すような貼着不良であるか否かの判定を行い、しかも貼着不良となる頻度を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達成するために、本発明は、IC回路素子を搭載するために、複数の電極が複数群形成された基板に対し、電極群毎に個別的にACFを貼着するACF貼着装置であって、前記基板を支持する基板支持台と、ACFをセパレータに積層したACFテープを供給リールから送り出し、圧着ヘッドによりこのACFテープを前記基板の前記電極群毎に個別的に貼り付けて、ACFを圧着させるACF貼着ユニットと、前記基板への各ACFの貼着の有無を検出するACF検出手段とから構成され、ACFの前記基板への貼着長さは前記IC回路素子が接続される部位の全長乃至それ以上とし、前記ACF検出手段は前記ACF貼着端位置と前記電極群の形成端位置との間の位置にACFが貼着されているか否かを検出する構成としたことを特徴としている。
【0015】
ACFが正規の状態に貼着されていないという場合、ACFが基板に貼着する際に折れ曲がることがあり、またセパレータを剥離したときに捲れたり、浮き上がったりすることがある。さらに、ACFの貼着位置が前後にずれることもある。ただし、このような事態が生じるのは、ACFの端部における比較的短い部分であることが多い。たとえ、ACFの端部が正規の状態でなくても、基板に形成した電極群の位置にACFが適正に貼着されておれば、貼着不良と判定する必要はなく、IC回路素子の搭載という観点からは、むしろ貼着が正常であると判定すべきである。従って、ACFが本来貼着されるべき端部を検出するのは必要ではない。
【0016】
検出が必要なのは、基板のうちの電極群が形成されている部位である。そして、ACFの端部に前述した折れ曲がりや捲れ等があったときに、それが電極群を形成した位置までできるだけ及ばないようにするために、ACFの両端をある程度長くすることが望ましい。基板に貼着されるACFの長さはIC回路素子の全長とほぼ同じ寸法とするか、またはそれより長くする。ただし、ACFがIC回路素子よりあまり大きくはみ出すようにすると、ACFの無駄がその分だけ増える等から望ましいものではない。そして、ACF検出手段によるACFの検出位置は基板における電極群を設けた部位の外側であって、この電極群に近い位置とする。
【0017】
ここで、IC回路素子を基板に接続するに当っては、厳格な相対位置合わせを行うことになる。このために、IC回路素子及び基板には、それぞれ所定の位置にアラインメントマークが設けられる。基板側のアラインメントマークは電極群が形成されている部位の両側に形成されており、IC回路素子は、それに設けたアラインメントマークを基板側のアラインメントマークと一致するようにして接続されることから、基板におけるアラインメントマークの形成位置には必ずIC回路素子がオーバーラップするように配置される。従って、ACFの貼着を検出するACF検出位置はアラインメントマークが形成されている部位乃至その近傍の領域とするのが望ましい。
【0018】
ACF検出位置にACFが存在していなければ、全くACFが存在しない場合であったとしても、またそれ以外の部位ではACFが存在する場合であったとしても、IC回路素子を搭載したときには、少なくとも一部の電極が導通しない状態となるので、ACFの貼着不良と判定する。そして、装置を停止させれば、貼着リペアを行うことができる。基板における電極群が設けられている部位において、ACFが2重になっている場合も、このACFを介してIC回路素子を搭載したときには、電極の導通不能という事態が発生するおそれがある。そこで、ACFが2重になっている状態も検出するのが望ましい。
【0019】
ACF貼着ユニットは、特許文献1のように、ACFテープを切断して基板に貼り付けるようになし、その後にセパレータを剥離するようにしても良いが、ハーフカットの手法を用いると、セパレータの剥離工程が不要になる。即ち、ACF貼着ユニットには、供給リールから送り出されるACFテープを、そのセパレータには連続性を持たせ、かつACFを基板の各々の電極群への貼り付け長さ分毎に切断するハーフカット手段を設け、圧着ヘッドはこのハーフカット手段によるACFの切断位置より前方側部位のセパレータを前記基板の表面に圧着させるようにする。
【0020】
基板に貼着したACFを検出するACF検出手段は、基板のアラインメントマークの位置乃至その近傍位置を検出位置とするが、ACFの前端及び後端の2箇所を検出するために、一対設けるのが望ましい。ACF検出手段としては、画像認識装置のカメラや、反射型若しくは透過型の光センサから構成することができる。そして、これらACF検出手段はACF貼着ユニットに装着することができる。特に、ACF貼着ユニットを基板の電極群の配列方向にピッチ送りする駆動手段に装着する構成とした場合には、電極群毎にACFを貼着するACF貼着ユニットと、このACFの状態を検出するACF検出手段との位置関係を常に一定に保持することができる。
【発明の効果】
【0021】
ACFの貼着が正規の状態となっていなくても、IC回路素子の接続に支障を来さない程度のものである場合には、それをACF貼着不良としないことによって、ACFの貼着リペアの頻度を少なくして、ACF貼着工程の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ACFが貼着られる基板としての液晶セルと、この基板に搭載されるドライバ回路とを示す要部平面図である。
【図2】ACF貼着機の概略構成を示す正面図である。
【図3】図2の左側面図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】水平送りローラの構成説明図である。
【図6】水平送りローラの構成を示す側面図である。
【図7】カッタユニットの構成説明図である。
【図8】ACFテープのハーフカット状態を示すACF貼着機の要部拡大正面図である。
【図9】図8の左側面図である。
【図10】ACF貼着ユニットとACF検出手段の構成を示す説明図である。
【図11】ACFの正規の貼着状態を示す平面図である。
【図12】ACFの外折れ貼着状態を示す平面図である。
【図13】ACFの内折れ貼着状態を示す平面図である。
【図14】ACFの貼着不良状態の一例を示す平面図である。
【図15】ACF検出手段の他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。まず、図1にACFが貼着られる基板の一例として液晶パネルを示し、またACFを介して搭載されるIC回路素子の一例として、基板にTAB搭載されるCOFからなるドライバ回路を示す。なお、基板は液晶パネルを構成するものだけでなく、他のディスプレイ用の基板や、その他各種の印刷回路基板とすることができ、また基板に搭載されるのはドライバ回路に限らず、ACFを介して電気的に接続されるものであれば良い。
【0024】
図1において、1は液晶パネルであって、この液晶パネル1は、共にガラス薄板からなる下基板2と上基板3とで構成され、両基板2,3間には液晶が封入されている。下基板2は、その少なくとも1辺において、上基板3から所定幅分だけ張り出しており、この張り出し部2aにはIC回路素子、即ちフィルム基板4aに集積回路素子4bを実装したドライバ回路4が複数枚搭載される。なお、図1では一例として、下基板2が2辺において上基板3から所定幅分だけ張り出した場合を示す。
【0025】
下基板2の張り出し部2aには、両基板2,3が重ね合わせられた部位に形成されているTFT(Thin Film Transistor)にそれぞれ接続した配線に接続した所定数の電極が設けられており、これらの電極は、図中に符号5で示したように、ドライバ回路4の搭載部毎に所定数の電極が群として形成されている。そして、各電極群5の左右両側にはアラインメントマーク6a,6aが形成されている。従って、相隣接する電極群5,5間には所定幅を有する空白領域が形成されている。一方、ドライバ回路4には、これら電極群5を構成する各電極と電気的に接続される複数の電極が設けられており、電極群5と接続される電極群は符号7で示されている。また、ドライバ回路4にも電極群7の左右両側にアラインメントマーク6b,6bが形成されており、ドライバ回路4が液晶パネル1に搭載される際には、これらアラインメントマークを基準として電極群7を構成する各電極と電極群5を構成する各電極とが一致するように位置調整がなされる。
【0026】
ドライバ回路4はACF8を介して液晶パネル1に搭載される。ACF8は、周知のように、接着機能を有するバインダ樹脂に微小な導電粒子を多数分散させたものであり、ドライバ回路4と液晶パネル1との間でACF8を加熱及び加圧することによって、導電粒子を介して電極群5を構成する各電極と電極群7を構成する各電極とが電気的に導通状態となり、かつバインダ樹脂が熱硬化することによって、ドライバ回路4を液晶パネル1に固着させることになる。ここで、ACF8は下基板2の張り出し部2aに設けた電極群5の位置毎に分割され、長さL分毎に貼着られる。これによって、ACF8を無駄なく使用することができ、しかも貼着られたACF8はほぼ完全にドライバ回路4により覆われることになる。
【0027】
図2乃至図4に下基板2の張り出し部2aにACF8を貼着するための貼着機構の概略構成を示す。これらの図において、9は液晶パネル1を水平状態に保持する支持基台である。液晶パネル1は、例えば真空吸着手段によって、この支持基台9上で安定的に保持されるようにしている。ここで、支持基台9には液晶パネル1が広い面積で当接しているが、ACF8が貼着られる下基板2の張り出し部2aの下部位置は開放されている。ここで、支持基台9には、ドライバ回路4とのアラインメント等のために、X,Y,θ方向への位置調整手段を設けることができる。
【0028】
また、10はACF8の液晶パネル1へのACF貼着ユニットであり、このACF貼着ユニット10は鉛直方向に設けた板体からなるベースプレート10aを有するものであって、このベースプレート10aには供給リール11が着脱可能に装着されている。ACF8はセパレータ12の剥離層上に積層されてACFテープ13を構成し、このACFテープ13が供給リール11に巻回されている。ACFテープ13は、ACF貼着ユニット10に装着したローラ14〜17からなる走行経路に沿って走行ガイドされる。さらに、18は駆動用ローラであり、ACF8を液晶パネル1に貼着た後のセパレータ12を挟持して、排出部19に送り込むように駆動される。
【0029】
ローラ14,15は、ACFテープ13のフィーダ用のガイドローラであり、ガイドローラ15はスイングアーム20に装着されており、このスイングアーム20は回動軸21を中心として揺動するものである。回動軸21にはモータ等の駆動手段(図示せず)が接続されており、スイングアーム20を矢印F方向に揺動させると、供給リール11から少なくとも1回の貼着分、つまり図1に示した長さL分のACFテープ13が送り出されて、ローラ14,15間に供給される。その結果、ACFテープ13を送る際に作用する反力が常に一定となり、供給リール11の巻回量の差により送り力に対する抵抗が変動することはない。
【0030】
ローラ16,17は、図5及び図6にも示したように、ACFテープ13を、その走行経路において、水平方向にガイドし、ACF8の液晶パネル1への1回分の貼着長さを規定する水平ガイドローラである。水平ガイドローラ17はACF8の貼着始端位置を、水平ガイドローラ16はACF8の貼着終端位置を規定するものであって、これらによってACF8の貼着領域が設定される。これら水平ガイドローラ16,17は、図6から明らかなように、円筒部16a,17aの両側部に鍔部16b,17bを形成したものであり、この鍔部16b,17bの円筒部16a,17aから突出する部位の高さはACFテープ13におけるセパレータ12の厚み分とほぼ同じか、それより僅かに大きい寸法となっている。
【0031】
従って、水平ガイドローラ16,17間でACF8が液晶パネル1に貼着され、その後にセパレータ12から分離される。そして、水平ガイドローラ17より下流側の位置で、ACF8が剥離された後のセパレータ12が回収される。水平ガイドローラ16,17により区画されているACF8の貼着領域より下流側の位置に駆動用ローラ18が設けられている。駆動用ローラ18は駆動ローラ18aとピンチローラ18bとから構成され、セパレータ12はこれら駆動ローラ18aとピンチローラ18bとの間に挟持される。駆動ローラ18aを回転駆動することによって、ACFテープ12を長さL分毎にピッチ送りされる。
【0032】
図3から明らかなように、ACF貼着ユニット10は昇降駆動部22に装着され、この昇降駆動部22は前後動駆動部23に装着され、さらに前後動駆動部23は搬送手段を構成する平行動駆動部24に装着されている。これらの機構により、ACFテープ13の引き回し経路における水平ガイドローラ16−17間(図2参照)により規定されるACF8の貼着領域を上下方向、つまりZ軸方向と、水平面でX軸方向(電極群5の並びと直交する方向)とY軸方向(電極群5の並び方向)とに移動可能となっている。一方、液晶パネル1は支持基台9上に真空吸着により固定的に保持されている。
【0033】
ここで、水平ガイドローラ16−17間のACFテープ13と下基板2における電極群5との相対位置を調整する必要があるが、前後動駆動部23は、貼着領域を液晶パネル1に対して近接・離間する方向に移動させるものであり、平行動駆動部24は液晶パネル1における電極群5の並び方向と平行な方向、つまりY軸方向に貼着領域を移動させるものであるから、ACF貼着ユニット10側で位置調整できるが、前述したように、支持基台9にX,Y,θ方向への位置調整手段を設けている場合には、この支持基台9側でACFテープ13に対してアラインメントすることもできる。
【0034】
昇降駆動部22は、傾斜ブロック30と、この傾斜ブロック30を前後方向に移動させるためのシリンダ31とを有するものである。また、ACF貼着ユニット10には傾斜ブロック30の傾斜面に係合するスライド部材32が連結されており、このスライド部材32は傾斜ブロック30と一致する傾斜面を有するものであり、規制杆33により上下方向以外には変位できない構成となっている。従って、シリンダ31を駆動することによって、ACF貼着ユニット10が上下方向に変位することになる。
【0035】
次に、前後動駆動部23は、傾斜ブロック30を装着した台座34を前後動させるためのものであって、この台座34の往復動はシリンダ等からなる駆動手段35により行われる。そして、平行動駆動部24は、台座34及びその駆動手段35を装着した搬送台36を有するものであり、搬送台36はボールねじ送り手段を構成するボールねじ37をモータ38で回転駆動することによって、ACF貼着ユニット10を液晶パネル1における電極群5の配列方向と平行に移動可能となっている。
【0036】
ACF貼着ユニット10に装着したACFテープ12の走行経路において、図2に示したように、水平ガイドローラ16の位置より僅かに下流側の位置にハーフカット手段40が設けられており、このハーフカット手段40は、図7に示したように、ACF貼着ユニット10の表面に対して前後方向に往復移動可能に装着されている。このハーフカット手段40はカッタ41とカッタ受け42とを備え、カッタ41は軸43を中心としてカッタ受け42に近接・離間する方向に回動可能となっている。そして、常時にはカッタ41に作用するばね44の付勢力によりカッタ受け42から離間した状態に保持されており、シリンダ45に設けた押動ローラ46によって、ばね44に抗する方向にカッタ41を押動して、カッタ受け42に近接する方向に揺動変位させるようになっている。そして、カッタ41がカッタ受け42に最も近接した位置では、その間にACFテープ13のセパレータ12の厚みと同じか、それより僅かに短い間隔が形成されることになる。これによって、ACF8のみがハーフカットされる。
【0037】
さらに、ACF8を下基板2における張り出し部2aに貼着するために、ACFテープ13は、水平ガイドローラ16,17間の位置で、下基板2の表面に所定の加圧力により圧着される。このために、ACF貼着ユニット10には、図8及び図9に示したように、圧着ヘッド50が設けられている。ここで、液晶パネル1は支持基台9上に載置されているが、その下基板2の張り出し部2aは支持基台9からはみ出しており、圧着ヘッド50は、このはみ出した部位を上下から挟持する構成となっている。
【0038】
圧着ヘッド50は加圧刃51と受け刃52とから構成されるものであり、これら加圧刃51及び受け刃52は、それぞれ昇降ブロック53,54に取り付けられており、これら昇降ブロック53,54は、ACF貼着ユニット10に設けた一対のガイドレール55に沿って上下方向に変位可能に装着されている。これら加圧刃51と受け刃52とは液晶パネル1を挟んで上下に配置されており、同じ長さに形成されている。加圧刃51は、さらに水平ガイドローラ16,17間にガイドされて水平方向に走行するACFテープ13より上方位置に配置されている。
【0039】
受け刃52を装着した昇降ブロック54は、シリンダ56により所定ストローク昇降動作がなされる。即ち、シリンダ56を縮小状態にすると、受け刃52が下降して、液晶パネル1から離間した下方の位置に配置されることになり、シリンダ56を伸長させると、受け刃52は液晶パネル1の下面に当接する。一方、加圧刃51を装着した昇降ブロック53には、加圧手段57が連結して設けられている。図示した加圧手段57は、モータで駆動される送りねじ57aを有するもので、所謂ジャッキを構成している。この加圧手段57は、加圧刃51に連結して設けた昇降ブロック53をガイドレール55に沿って上下動させて、受け刃52上に受承させている液晶パネル1を上方から所定の加圧力を作用させるものである。そして、加圧刃51と受け刃52とは正確に平行度を保つように構成している。また、受け刃52を支承するシリンダ56は、少なくとも上昇ストローク端位置では、加圧手段57により作用する加圧力でみだりに動くことがなく、伸長状態に保持できる圧力が導入される。
【0040】
圧着ヘッド50を構成する加圧刃51に、または加圧刃51及び受け刃52の双方にヒータ51H,52Hが内蔵されており、これにより圧着ヘッド50はACFテープ13を液晶パネル1に熱圧着させることになる。加熱の度合いはACF8のバインダ樹脂が多少軟化する程度の比較的低いものとし、その粘着力が失われないようにする。そして、圧着ヘッド50を構成する加圧刃51及び受け刃52は、ACFテープ13の幅を十分カバーできる幅寸法を有し、かつ長さ方向の寸法はACF8の貼着長さLと同じか、それより長尺のものとなっている。
【0041】
さらに、図10において、60はACF検出手段を示すものであって、このACF検出手段60は、発光素子61と受光素子62とからなる反射型光学センサから構成されている。このACF検出手段60は圧着ヘッド50により貼着されたACF8の状態を検出するものであり、圧着ヘッド50によりACF8を貼着して、この圧着ヘッド50が1ピッチ分進行した後に、電極群5の前後の部位に実際にACF8が貼着されているか否かが検出される。ACF検出手段60は前後に一対設けられており、ACF貼着ユニット10のベースプレート10aに装着されている。
【0042】
ここで、ACF8は液晶パネル1の下基板2より透明度の低い部材である。従って、ACF8が貼着されている位置に発光素子61からの光が入射されると、ACF8が貼着されていないときより受光素子62の受光量が多くなるので、ACF8の有無を検出することができる。さらに、ACF8が2重になっていると、単層の場合より反射光量が大きくなる。これによって、受光素子62における受光量を検出することによって、検出位置でのACF8の状態を検出することができる。
【0043】
発光素子61からの入射光は、液晶パネル1の下基板2において、貼着されるACF8の幅方向の中央部分であって、長さ方向においては電極群5の端部より外側で、電極群5に近接した位置とする。例えば、電極群5の端部とアラインメントマーク6aを設けた部位との間の位置若しくはアラインメントマーク6aの僅かに外側の位置までとする。従って、ACF8が貼り付けられるべき本来の位置の端部を含まない。
【0044】
即ち、図11に示したように、液晶パネル1の下基板2における張り出し部2aにおいて、電極群5が設けられており、この電極群5の両側の位置にはアラインメントマーク6a,6aが設けられているが、この電極群5とアラインメントマーク6aとの間の位置を発光素子61からの光の入射位置Pとする。この入射位置Pからの反射光を受光素子62により受光させて、受光量を検出するように設定する。この入射位置PにはACF8が貼着されているので、受光素子62は所定の受光量が得られる。なお、入射位置Pは図示した位置だけでなく、その近傍位置、つまりACF8の端部と電極群5との間で、電極群5に近い位置であって、幅方向においては、中央部に近い位置であれば良い。
【0045】
ここで、前回のACF8の貼着が行われて、圧着ヘッド50が引き上げたときに、ハーフカット手段40によるハーフカットが完全に行われていないと、次回行われる貼着時のACF8がセパレータ12から一部分剥離してしまうという事態が生じることがある。この状態から、ACF貼着ユニット10を1ピッチ分移動させると共に、ACFテープ13を1回の貼着長さ分繰り出して、圧着ヘッド50を下降させることによって、ACF8の貼着が継続される。
【0046】
このときに、一部分がセパレータ12から剥離しているACF8が折り曲げられて2重になった状態で貼着されることになる。その結果、図12に示した外折れ貼着状態となる。その結果、本来ACF8が貼着されていなければならないが、ACF8は貼着されていない領域が存在することになる。また、一部にはACF8が2重になっている領域もある。しかしながら、電極群5が設けられている部位は正規の状態でACF8が貼着されている。発光素子61の入射位置Pはこの正規の状態のACF8が位置している部位であるから、受光素子62ではACF8が適正に貼着されているものと判定することになる。
【0047】
圧着ヘッド50によるACF8の貼着が終了し、この圧着ヘッド50を引き上げたときに、ACF8の一部がセパレータ12から円滑に剥離せず、下基板2から浮き上がるようにして捲れることがある。この場合、圧着ヘッド50がさらに引き上げられると、ACF8がセパレータ12から離間して、本来貼着されるべき部位に固着されることもあるが、図13に示したように、ACF8の捲れにより既に貼着された部位の上に重なり合うことがあり、内折れ貼着状態となってしまう。この場合も、やはりACF8の貼着が不完全ではあるが、発光素子61の入射位置Pにおいては正規の状態に貼着されている場合には、格別問題とはならないので、受光素子62側ではACF8が適正に貼着されているものと判定する。
【0048】
ここで、図11に示した適正な貼着状態だけでなく、図12のACF8の外折れ貼着状態及び図13の内折れ貼着状態となっていても、ACF検出手段60,60ではACF8が適正に貼着されている限り、貼着不良とは判断しない。また、ACF8が前後方向に位置ずれしていても、両側のACF検出手段60,60でACF8の貼着が検出される限り、同様、貼着不良とは判断しない。
【0049】
しかしながら、図14に示したように、ACF8の折れ曲がりが外折れであっても、内折れであっても、電極群5の部位まで及んでいると、その上にドライバ回路4を搭載したときに、一部の電極が導通不能な状態となることがある。この場合には、発光素子61の入射位置Pでの反射光の光量は、ACF8が1層の場合と比較して、受光素子62側の受光量が増大する。また、この折れ曲がりの開始位置が電極群5の形成領域に及んでいる場合には、入射位置PではACF8が配置されておらず、下基板2からの反射光が受光素子62により受光されることになる。さらに、前後いずれかのACF検出手段60によるACF8の検出が行われない程度までACF8の貼着位置が前後にずれることもある。これらはいずれもACF8の貼着不良であり、ACF8が正規の状態に貼着されている場合と比較して、受光素子62での受光量が過多となるか、不足となる。従って、この受光素子62からの信号に基づいて、装置の稼働を停止させ、ACF貼着不良となっている液晶パネル1を取り出して、貼着リペアを行う。
【0050】
以上のように、ドライバ回路4を搭載したときに、このドライバ回路4の電極と下基板2側の電極とが電気的に導通できない状態となっているか否かを基準として、ACF検出を行うことによって、ドライバ回路4を接続したときに、前述した電極間の導通が可能な状態であるにも拘わらず、ACF貼着不良と判断することがなくなる。しかも、電極間の導通不能な状態となっていると、それを確実に検出することができる。
【0051】
ここで、ACF検出手段の構成としては、前述した発光素子61と受光素子62から構成したACF検出手段60に代えて、図15に示したように、カメラ63を用いて、液晶パネル1における電極群7の端部とアライメントマーク6aとの間の位置の画像を取得して、この画像に基づいて、前述したように、貼着リペアが必要なACF貼着不良を検出することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 液晶パネル 2 下基板
2a 張り出し部 3 上基板
4 ドライバ回路 5 電極群
8 ACF 9 支持基台
11 供給リール 12 セパレータ
13 ACFテープ 16,17 水平ガイドローラ
22 昇降駆動部 23 前後動駆動部
24 平行動駆動部 36 搬送台
40 ハーフカット手段 41 カッタ
50 圧着ヘッド 51 加圧刃
52 受け刃 53,54 昇降ブロック
55 ガイドレール 56 シリンダ
57 加圧手段 60 ACF検出手段
61 発光素子 62 受光素子
63 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IC回路素子を搭載するために、複数の電極が複数群形成された基板に対し、電極群毎に個別的にACFを貼着するACF貼着装置であって、
前記基板を支持する基板支持台と、
ACFをセパレータに積層したACFテープを供給リールから送り出し、圧着ヘッドによりこのACFテープを前記基板の前記電極群毎に個別的に貼り付けて、ACFを圧着させるACF貼着ユニットと、
前記基板への各ACFの貼着の有無を検出するACF検出手段とから構成され、
ACFの前記基板への貼着長さは前記IC回路素子が接続される部位の全長乃至それ以上とし、前記ACF検出手段は前記ACF貼着端位置と前記電極群の形成端位置との間の位置にACFが貼着されているか否かを検出する
構成としたことを特徴とするACF貼着装置。
【請求項2】
ACFの貼着の有無を検出する位置は、前記基板における前記IC回路素子を接続する際に位置合わせするためのアラインメントマークの形成位置を含む領域であることを特徴とする請求項1記載のACF貼着装置。
【請求項3】
前記ACF貼着ユニットは、前記供給リールから送り出されるACFテープを、そのセパレータには連続性を持たせ、ACFを前記基板の各々の電極群への貼り付け長さ分毎に切断するハーフカット手段を備え、また前記圧着ヘッドはこのハーフカット手段によるACFの切断位置より前方側部位のセパレータを前記基板の表面に圧着させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載のACF貼着装置。
【請求項4】
前記ACF検出手段は画像認識装置のカメラまたは反射型若しくは透過型の光センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のACF貼着装置。
【請求項5】
前記ACF検出手段は前記ACF貼着ユニットに装着する構成としたことを特徴とする請求項4記載のACF貼着装置。
【請求項6】
前記ACF貼着ユニットは前記基板の前記電極群が配列されている方向にピッチ送りするユニット駆動手段に装着する構成としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のACF貼着装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のACF貼着装置を用いてACFが貼着される基板はディスプレイ用のパネル基板であり、このパネル基板のACF貼着領域にIC回路素子を搭載し、かつIC回路素子に印刷回路基板を接続することにより製造されるディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−3821(P2011−3821A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147380(P2009−147380)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】