説明

AM放送受信機

【課題】 回路構成を複雑にすることなく強電界時の歪み発生を抑えることを目的とする。
【解決手段】 AM放送信号を増幅する前置増幅素子22と、少なくとも高周波増幅回路26b及び周波数変換回路26cを有すると共に、トランス25を介して前置増幅素子22の出力端に結合されたAMフロントエンドIC26とを備え、前置増幅素子22の入力端には、電源にプルアップされた第1の抵抗23とグランドに接続された第2の抵抗24との直列回路によって分圧されたバイアス電圧を印加し、AM放送信号が強電界の時に第2の抵抗24に第3の抵抗28を並列接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の携帯機器に内蔵するのに好適なAM放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
図2において、アンテナ入力端Pは同調コイル1と一対の可変容量ダイオード2a、2bと調整用コンデンサ3とからなるバンドパス型のアンテナ同調回路4に接続してあり、このアンテナ同調回路4に、ダンピング用コンデンサC2と一対のピンダイオード5a、5bからなる減衰回路6との直列回路が並列接続され、前記コンデンサC2と減衰回路6との接続点に結合コンデンサC3を介してMOSFETからなる高周波増幅素子7の第一ゲートg1が接続され、そのドレインdは、結合コンデンサC4を介して同調コイル8と一対の可変容量ダイオード9あ、9bからなるπ型接続の高周波同調回路10に接続されたのち、ドレインが接地されたインピーダンス変換素子11のゲートgに接続してある。また、インピーダンス変換素子11のソースsはコンデンサC5を介して周波数変換回路12、中間周波増幅回路14および利得制御回路13からなるFMフロントエンドIC15の周波数変換回路12の入力端子である第5端子に接続され、前記FMフロントエンドIC15のAGC電圧の出力端である第6端子は、前記減衰回路6に接続してある。
【0003】
入力端子Pに入力した信号はアンテナ同調回路4により同調選択される。ここで、アンテナ入力端Pに入力する信号の電界強度が弱い場合には、FMフロントエンドIC15の第6端子から出力するAGC電圧も低いので、減衰回路6のインピーダンスは高く、従ってアンテナ同調回路4により同調選択された信号は減衰されることなく、ダンピング用コンデンサC2及び結合コンデンサC3を介して高周波増幅素子7の第1ゲートg1に入力して増幅され、その信号は結合コンデンサC4を介して高周波同調回路10に入力し、該回路10で再度共振選択されたのち、インピーダンス変換素子11のゲートgに入力する。
【0004】
ここで、高周波同調回路10はインピーダンスが高く、従って該回路10の出力をインピーダンス変換素子11のゲートgにより高入力インピーダンスで入力するので、高い選択度が得られる。前記インピーダンス変換素子11に入力した信号は、低出力インピーダンスに変換されてそのソースから結合コンデンサC5を介して周波数変換回路12に第5端子から入力し、中間周波信号に変換されたのち、第8及び第9端子よりそれぞれ出力し、その出力は中間周波トランスT及び抵抗R1とセラミックフィルタFとの直列回路を介して第12端子より中間周波増幅回路14に入力して増幅され、その増幅出力は第15端子から検波段に出力される。
【0005】
また、中間周波トランスTを経た広帯域の中間周波信号の一部は、抵抗R2とコンデンサC6の直列回路を介して第10端子より利得制御回路13に入力し、該回路13からは減衰回路6のピンダイオード駆動用のAGC電圧と、高周波増幅素子7の制御用のAGC電圧とが生じ、これらのAGC電圧は、第6端子及び第13端子よりそれぞれ出力する。
【0006】
アンテナ入力信号の電界強度が強くなると、利得制御回路13より出力するピンダイオード駆動用のAGC電圧も高くなるので、減衰回路6が駆動して該回路のインピーダンスが減少し、これによってアンテナ同調回路4の選択度特性が低下すると共に、結合コンデンサC3を介して高周波増幅素子7に入力する信号も結合コンデンサC3の前段でダンピング用コンデンサC2と減衰回路6とのインピーダンス比で減圧され、高周波増幅素子7の前段で大きな減衰量が得られる。次いで、さらに電界強度が強くなると、前記減衰回路6による減衰作用に加え、FMフロントエンドIC15の第13端子から高周波増幅素子7の第2ゲートg2に制御電圧が印加して高周波増幅素子7の増幅率を制限する(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開平05−048361号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の構成では、高周波増幅素子7の前段に減衰回路6を設けて、強電界時に入力信号を減衰するようにしているが、減衰回路を設けることはそれだけ全体の回路構成を複雑にしている。また、減衰回路にはピンダイオードを使用しているので、非直線歪みを発生する。
【0009】
本発明は、回路構成を複雑にすることなく強電界時の歪み発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対して、第1の解決手段は、AM放送信号を増幅する前置増幅素子と、少なくとも高周波増幅回路及び周波数変換回路を有すると共に、同調用のトランスを介して前記前置増幅素子の出力端に結合されたAMフロントエンドICとを備え、前記前置増幅素子の入力端には、電源にプルアップされた第1の抵抗とグランドに接続された第2の抵抗との直列回路によって分圧されたバイアス電圧を印加し、前記AM放送信号が強電界の時に前記第2の抵抗に第3の抵抗を並列接続した。
【0011】
また、第2の解決手段は、前記トランスの一次側巻線の一端にQダンプ用の可変抵抗手段を介して前記電源を印加し、前記前置増幅素子の出力端には前記一次巻線の他端から前記電源を供給し、前記AM放送信号が強電界の時に前記可変抵抗手段の抵抗値を増加させた。
【0012】
また、第3の解決手段は、前記可変抵抗手段をピンダイオードで構成し、前記前置増幅素子の出力端には前記一次巻線の他端から前記電源を供給し、エミッタが接地されると共に、コレクタが第4の抵抗を介して前記電源にプルアップされたスイッチトランジスタを設け、前記第3の抵抗を前記前置増幅素子の入力端と前記スイッチトランジスタのコレクタとの間に接続し、前記AM放送信号の強電界時に前記スイッチトランジスタをオンにした。
【0013】
また、第4の解決手段は、前記スイッチトランジスタと前記第4の抵抗とを前記AMフロントエンドIC内に構成した。
【発明の効果】
【0014】
第1の解決手段によれば、AM放送信号を増幅する前置増幅素子と、少なくとも高周波増幅回路及び周波数変換回路を有すると共に、同調用のトランスを介して前置増幅素子の出力端に結合されたAMフロントエンドICとを備え、前置増幅素子の入力端には、電源にプルアップされた第1の抵抗とグランドに接続された第2の抵抗との直列回路によって分圧されたバイアス電圧を印加し、AM放送信号が強電界の時に第2の抵抗に第3の抵抗を並列接続したので、前置増幅素子のバイアス電圧が低下して利得が低下すると共に、入力される受信信号のレベルが低下して歪みが発生し難くなる。
【0015】
また、第2の解決手段によれば、トランスの一次側巻線の一端にQダンプ用の可変抵抗手段を介して電源を印加し、前置増幅素子の出力端には一次巻線の他端から電源を供給し、AM放送信号が強電界の時に可変抵抗手段の抵抗値を増加させたので、同調のQがダンピングされ、AMフロントエンドICに入力される信号レベルは一層低下するので歪みに対して更に有利となる。
【0016】
また、第3の解決手段によれば、可変抵抗手段をピンダイオードで構成し、前置増幅素子の出力端には一次巻線の他端から電源を供給し、エミッタが接地されると共に、コレクタが第4の抵抗を介して電源にプルアップされたスイッチトランジスタを設け、第3の抵抗を前置増幅素子の入力端とスイッチトランジスタのコレクタとの間に接続し、AM放送信号の強電界時にスイッチトランジスタをオンにしたので、前置増幅素子のバイアス電圧を低下させると共に、ピンダイオードの等価的な抵抗値を大きくすることができる。
【0017】
また、第4の解決手段によれば、スイッチトランジスタと第4の抵抗とをAMフロントエンドIC内に構成したので、構成を複雑にすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照して本発明のAM放送受信機を説明する。ヘッドフォン用のラインで代用されるアンテナ21に前置増幅素子22が結合される。前置増幅素子22はFETで構成され、その出力端であるドレインと入力端であるゲートとの間には第1の抵抗23が接続され、ゲートとグランドとの間には第2の抵抗24が接続される。基準端であるソースは接地される。
【0019】
前置増幅素子22にはトランス25を介してAMフロントエンドIC(集積回路)26が結合される。トランス25の一次巻線25aの一端には可変抵抗手段としての機能を有するピンダイオード27を介して電源Bが供給される。一次巻線25aの他端は前置増幅素子22のドレインに接続される。
【0020】
AMフロントエンドIC26内には、その入力段に容量ブロック26aが設けられると共に、その後段側には高周波増幅回路26b、周波数変換回路26c、及び図示しない検波手段等が設けられる。そして、トランス25の二次巻線25bが容量ブロックに26a並列接続される。容量ブロック26aは可変容量手段で構成され、二次巻き線25bと共に並列共振回路を構成し、受信すべき信号に同調するように制御される。また、AMフロントエンドIC26内には、検波回路によって制御されるスイッチトランジスタ26dと、そのコレクタを電源Bにプルアップする第4の抵抗26eとが構成される。エミッタは接地され、コレクタは第3の抵抗28を介して前置増幅素子22のゲートに接続される。このスイッチトランジスタ26eは検波手段から出力される制御電圧によってオンする。
【0021】
以上の構成において、受信されたAM放送信号の受信強度が所定レベル以下の中電界以下の場合には、AMフロントエンド26内の検波手段から制御電圧が出力されないのでスイッチトランジスタ26eはオフである。この状態では、前置増幅素子22のドレインにはピンダイオード27、一次巻線25aを介して電源が供給され、ゲートには第1の抵抗23と第2の抵抗24とによって分圧された電圧がバイアス電圧として印加される。前置増幅素子22はこのバイアス電圧によって設定される動作点で増幅作用を行う。このとき、前置増幅素子22には比較的大きなドレイン電流がながれ、ピンダイオード27にもほぼ等しい電流が流れる。増幅されたAM放送信号はトランス25を介してAMフロントエンドIC26に入力され、増幅、周波数変換等の処理がなされる。
【0022】
受信されたAM放送信号の受信強度が所定レベル以上の強電界の場合には、AMフロントエンド26内の検波手段から制御電圧が出力されてスイッチトランジスタ26eはオンとなる。すると、そのコレクタはほぼ接地電位となり、第3の抵抗28が第2の抵抗24に並列接続される。したがって、前置増幅素子22のゲートバイアス電圧が低下しドレイン電流が減少する。また、第2の抵抗24と第3の抵抗28とが並列接続されるため、ゲートにおける分圧比が大きくなることと、ゲート・接地間のインピーダンスが低下することでゲートに入力される受信信号のレベルが低下する。従って、前置増幅素子22は、強電界であるにも関わらず歪みを発生し難くなる。
【0023】
また、ドレイン電流が減少することで、前置増幅素子22自体の利得が低下し、AMフロントエンドIC26に入力される信号レベルが低下するので、AMフロントエンドICで発生する歪みが抑えられる。さらに、ピンダイオード27に流れる電流も減少してピンダイオード27の等価的な抵抗値が大きくなるのでトランス25とAMフロントエンドIC26内の容量ブロック26aとで構成される同調回路のQがダンピングされ、AMフロントエンドIC26に入力される信号レベルは一層低下するので歪みに対して更に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のAM放送受信機の構成を示す回路図である。
【図2】従来の受信機の回路図である。
【符号の説明】
【0025】
21:アンテナ
22:前置増幅素子
23:第1の抵抗
24:第2の抵抗
25:トランス
25a:一次巻線
25b:二次巻線
26:AMフロントエンドIC
26a容量ブロック
26b:高周波増幅回路
26c:周波数変換回路
26d:スイッチトランジスタ
26e:第4の抵抗
27:ピンダイオード(可変抵抗手段)
28:第3の抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AM放送信号を増幅する前置増幅素子と、少なくとも高周波増幅回路及び周波数変換回路を有すると共に、同調用のトランスを介して前記前置増幅素子の出力端に結合されたAMフロントエンドICとを備え、前記前置増幅素子の入力端には、電源にプルアップされた第1の抵抗とグランドに接続された第2の抵抗との直列回路によって分圧されたバイアス電圧を印加し、前記AM放送信号が強電界の時に前記第2の抵抗に第3の抵抗を並列接続したことを特徴とするAM放送受信機。
【請求項2】
前記トランスの一次側巻線の一端にQダンプ用の可変抵抗手段を介して前記電源を印加し、前記前置増幅素子の出力端には前記一次巻線の他端から前記電源を供給し、前記AM放送信号が強電界の時に前記可変抵抗手段の抵抗値を増加させたことを特徴とする請求項1に記載のAM放送受信機。
【請求項3】
前記可変抵抗手段をピンダイオードで構成し、前記前置増幅素子の出力端には前記一次巻線の他端から前記電源を供給し、エミッタが接地されると共に、コレクタが第4の抵抗を介して前記電源にプルアップされたスイッチトランジスタを設け、前記第3の抵抗を前記前置増幅素子の入力端と前記スイッチトランジスタのコレクタとの間に接続し、前記AM放送信号の強電界時に前記スイッチトランジスタをオンにしたことを特徴とする請求項2に記載のAM放送受信機。
【請求項4】
前記スイッチトランジスタと前記第4の抵抗とを前記AMフロントエンドIC内に構成したことを特徴とする請求項3に記載のAM放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−287880(P2006−287880A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108833(P2005−108833)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】