説明

CCR3受容体リガンドとしてのアミノ−アルキル−アミド誘導体

本発明は、一般式(I)のCCR3受容体リガンドに、それらの内好ましくは拮抗薬、及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体に、それらを含む医薬組成物に、一般式(I)の化合物及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体に、一般式(I)の化合物及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体の調製に、及び一般式(XX)及び(XXI)の新規の中間体に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)のCCR3受容体リガンド、それらの中の好ましくは拮抗薬及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体;それらを含む医薬組成物;一般式(I)の化合物及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体の使用;並びに一般式(I)の化合物及びそれらの塩、溶媒和物及び異性体の調製、に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカインは、それらの白血球誘引(化学走化性)効果により、免疫過程において重要な調整的役割を果たす低分子量(8から12kDa)の分泌型ポリぺプチドである。ケモカインは、その効果をGタンパク質共役型受容体の系統群に属するケモカイン受容体により発揮する。
【0003】
CCケモカイン受容体3(CCR3受容体)は、好塩基球、マスト細胞、Tリンパ球、上皮細胞、樹状細胞などの多数の炎症細胞により発現するが、その最大量でそれらは好酸球の表面上に見出され得る。
【0004】
CCR3受容体リガンドは、C−Cケモカインの系統群に属する。それらは、多数の選択的及び非選択的リガンドを有する。選択的リガンドは、エオタキシン、エオタキシン−2、及び遅れて発見されたエオタキシン−3である。非選択的リガンドは、RANTES、単球走化性タンパク質(MCP−2、MCP−3、MCP−4)及びマクロファージ阻害性タンパク質(MIP−1)である。昔から知られている最も特徴的なCCR3リガンドは、エオタキシンである。
【0005】
CCR3受容体の活性化によるエオタキシンは、好酸球を選択的に誘引する。アレルゲン誘発に先立ち、喘息患者の気管支肺胞洗浄液中のエオタキシン濃度を測定したところ、67パーセントより高かった。誘発の効果により、気道の上皮細胞及び内皮細胞の2.4倍の増加が見出された。
【0006】
肺においては、エオタキシンは多数の細胞中で産生される。アレルゲン応答に続き最も重要なエオタキシン源は上皮細胞であるが、多量のエオタキシンは、肺の線維芽細胞、平滑筋細胞及び気道の内皮細胞、肺胞マクロファージ及びリンパ球、及び好酸球自身により産生される。
【0007】
最初は、データは、CCR3受容体が好酸球細胞中だけに見出されるものと示していた(Bertrand CP,Ponath PD.,Expert Opin Investig Drugs.2000 Jan;9(1):43−52.)。しかしながら、発現特性に基づき、他の炎症細胞も又、(少量ではあるが)CCR3受容体を含むことが明らかとなった(Elsner J,Escher SE,Forssmann U.,Allergy.2004 Dec;59(12):1243−58.)。従って、CCR3拮抗薬ははるかに広範囲な効果を有し、それらの活性は好酸球に限られず、従ってそれらは、喘息性の、アレルギー性の及び炎症性の疾患の治療において、はるかに価値ある効果的な標的と考えられ得る。
【0008】
上記の知見に基づくと、CCR3拮抗薬は、CCR3受容体が疾患の発生に影響を及ぼす場合の症状の治療において、重要な予防的及び治療的効果を有し得る。これらの疾患は、白血球機能(活性化、化学走化性)の障害により特徴付けられ、それらの中には、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、アレルギー性結膜炎、関節炎、多発性硬化症、クローン病、HIV感染症及びエイズ関連疾患などの多数の慢性炎症性疾患がある。
【0009】
文献中の日付に公表されたCCR3拮抗薬は、カルバミド誘導体、チオカルバミド誘導体(WO01/09088、WO02/059081)及び/又は飽和環状アミノ基を含む化合物(WO00/35451、US6,605,623、WO01/98270、WO03/004487、WO03/018556、WO/2004/028530、WO00/53600、WO00/35876、WO01/64216、WO02/50064、WO02/102775、GB2373186、WO03/082291、WO/2004/004731、WO2004/058702、WO2004/085423)である。本発明は、それらの化合物の代表的なものが効果的CCR3受容体拮抗薬である、化合物の新規の構造型、鎖状アミノ−アルキル−アミド誘導体に関する。
【0010】
治療的使用の局面から、分子は、結合しないか又は非常に高濃度の場合だけCCR受容体サブタイプ以外と結合することが必須である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
我々の目的は、高い拮抗活性を有し、と同時にCCR3受容体に対して選択的である、即ち、他のCCR受容体と比べてはるかに低い濃度でCCR3受容体を阻害する化合物を調製することであった。更なる目的は、新規化合物が、安定性、生物学的利用能、治療係数及び毒性値を有し、それによりそのドラッグアビリティ(drugability)が保証されることであった。追加の目的は、化合物が、その腸管吸収が良好であることにより経口投与され得ることであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
我々は、一般式(I):
【0013】
【化10】

(式中、Bは、酸素原子又は−NR−基(式中、Rは水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基を意味する。)を表し、
Arは、1つ以上のハロゲン原子により場合により置換されているフェニル基を表し、
X及びYは独立して、1つ以上の同一の又は異なる直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基により場合により置換されている直鎖C1−4アルキレン基を意味し、
Zは、1つ以上の同一の又は異なる直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基により場合により置換されている直鎖C1−4アルキレン基を表し、
及びRは独立して、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基を意味し、
Arは、ハロゲン原子により場合により置換されているフェニル基又はベンジル基;
直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基により置換されているアミノ基、ベンジル基(この基は、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基又はハロゲン原子により場合により置換されている。)からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により置換されている、1つ、2つ、若しくは3つの窒素原子又は2つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む5員又は6員の複素環;
ベンゼン環が、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基により置換されているアミノ基、ハロゲン原子からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により更に置換され得る、上記の5員又は6員の複素環のベンゼン類似体;
直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基又はベンジル基により置換されているアミノ基、からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む6員の複素芳香族環と縮合される、1つ、2つ若しくは3つの窒素原子又は1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む5員の複素環;を表す。)
の化合物、及びそれらの塩、溶媒和物、並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物が、上記基準を満たすことを見出した。
【0014】
上記の置換基の詳細な意味は、以下のとおりである。
【0015】
1−4アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、二級ブチル、三級ブチル基などの炭素数1から4の飽和直鎖又は分岐鎖の脂肪族基を意味する。
【0016】
1−4アルキレン基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基などの、nの値が1、2、3又は4である−(CH−基を意味する。
【0017】
1−4アルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、二級ブトキシ、三級ブトキシ基などの、−O−アルキル基(式中、アルキル基の意味は上記で定義したとおりである。)を意味する。
【0018】
ハロゲン原子は、塩素、フッ素、ヨウ素又は臭素原子を意味する。
【0019】
1つ、2つ又は3つの窒素原子を含む5員又は6員の複素環は、例えばピロール、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,3−トリアジン、ピロリジン、イミダゾリジン、[1,2,4]トリアゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、2−イミダゾリン環などの、不飽和、飽和又は部分飽和の複素環を意味する。
【0020】
1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は硫黄原子を含む5員又は6員の複素環は、例えばオキサゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2−オキサジン、1,3−オキサジン、1,4−オキサジン、1,2−チアジン、1,3−チアジン、1,4−チアジン、オキサゾリジン、チアゾリジン、モルホリン、チオモルホリン、2−チアゾリン、2−オキサゾリン環などの、不飽和、飽和又は部分飽和の複素環を意味する。
【0021】
2つの窒素原子及び1つの酸素原子を含む複素環は、例えばオキサジアゾール環であり得る。
【0022】
ベンゼン類似体は、例えばインドール、ベンゾキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイミダゾール、キノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの、ベンゼン環により縮合された誘導体を意味する。
【0023】
1つ又は2つの窒素原子を含む6員の複素環により縮合される、1つ、2つ若しくは3つの窒素原子又は1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む5員の複素環の誘導体は、例えばチアゾロピリジン、トリアゾロピリジン、チアゾロピリミジン、オキサゾロピリジン、9H−プリン、3H−イミダゾピリジンであり得る。
【0024】
一般式(I)の化合物の塩は、無機及び有機の酸と無機及び有機の塩基とにより生成する塩を意味する。好ましいものは、薬学的に許容できる酸(例えば、塩酸、硫酸、エタンスルホン酸、酒石酸、フマル酸、クエン酸など)と薬学的に許容できる塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミンなど)とにより生成する塩である。好ましくは四フッ化ホウ酸及び過塩素酸を用いて精製過程及び単離過程の間に生成する塩も又、本発明の主題である。
【0025】
溶媒和物は、種々の溶媒を用いて(例えば、水又はエタノールを用いて)生成する溶媒和物を意味する。
【0026】
異性体は、構造異性体及び光学異性体を意味する。構造異性体は、平衡状態の互変異性体又は単離された互変異性体であり得、それらも又、本発明の主題である。一般式(I)の化合物は、1つ以上の不斉炭素を含み得、従ってそれらは光学異性体、鏡像異性体又はジアステレオ異性体であり得る。ラセミ体を含むこれらの鏡像異性体及びジアステレオ異性体及びこれらの混合物も又、本発明の主題である。
【0027】
特に好ましいのは以下の化合物:
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−2−(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)−アミノ]アセトアミド;
−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル−N−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−グリシンアミド;
2−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−アセトアミド;
2−(1,3−ベンズチアゾール−2−イルオキシ)−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド;
及びそれらの塩、溶媒和物、並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物である。
【0028】
本発明は更に、やはり本発明の主題を形成する、好ましくは経口用製剤であるが、吸入可能な、非経口用の、及び経皮用の製剤である、一般式(I)の化合物、又はそれらの異性体、塩、若しくは溶媒和物を含む医薬製剤に関する。上記の医薬製剤は、例えば錠剤、ペレット剤、カプセル剤、パッチ剤、溶液剤、懸濁剤、又は乳剤などの固体又は液体の剤形であり得る。固体剤形は、まず第1に錠剤及びカプセル剤が好ましい。
【0029】
上記医薬製剤は、通常の賦形剤及び技術的操作を適用して調製される。
【0030】
本発明による一般式(I)の化合物は、CCR3受容体が疾患の発症に影響を及ぼす症状の治療に用いられ得る。
【0031】
本発明による化合物は、好ましくは、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、アレルギー性結膜炎、多発性硬化症、クローン病、HIV感染症及びエイズ関連疾患などの疾患の治療に用いられ得る。
【0032】
本発明の1つの更なる主題は、一般式(I)の化合物の上記症状の治療のための使用である。指示される毎日の用量は、疾患の性質及び重症度、並びに患者の性別及び体重により、有効成分の1から100mgである。
【0033】
本発明の1つの更なる主題は、一般式(I)の化合物、及びそれらの塩、溶媒和物、及び異性体の調製である。
【0034】
方法バージョンc.)において用いられる、一般式(XX)及び(XXI)の本発明による化合物は新規であり、それらも又、本発明の主題である。一般式(XX)及び(XXI)の置換基の意味は、上記で定義したとおりである。
【0035】
図1は、一般式(I)の化合物を調製するための可能な方法の1つ(方法バージョンa.)を表す。
【0036】
【化11】

【0037】
方法バージョンa.)によれば、一般式(III):
【0038】
【化12】

(式中、Ar、X、Y、Z、R及びRは上記で定義したとおりであり、Halはハロゲン原子を表す。)のハロゲン化合物を、一般式(II):
【0039】
【化13】

(式中、B及びArの意味は上記で定義したとおりである。)の化合物と反応させ、及び望むならば得られる一般式(I)の化合物の置換基を公知の方法を用いて互いに変換する及び/又は得られる一般式(I)の化合物をその塩若しくは溶媒和物に変換する又はその塩若しくは溶媒和物から遊離させる及び/又はその光学活性異性体に変換する、又は光学活性異性体をラセミ体化合物に変換する及び望むならば構造異性体をその各々から分離する。
【0040】
本発明による反応a.)による反応は、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル又はそれらの混合物などの不活性溶媒中で、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド中で、例えばトリエチルアミン又はジエチルイソプロピルアミンなどの有機塩基、又は好ましくは炭酸カリウムなどの無機塩基の存在下、0℃から100℃の間の温度で、好ましくは室温で実施される。
【0041】
図2は、一般式(I)の化合物を調製するためのもう1つの可能な経路を表す(方法バージョンb.)。
【0042】
【化14】

【0043】
本発明による方法バージョンb.)において、一般式(V):
【0044】
【化15】

(式中、Ar、X、Y、R及びRの意味は上記で定義したとおりである。)
のジアミンを、一般式(XVI):
【0045】
【化16】

(式中、Ar、Z及びBの意味は上記で定義したとおりであり、Wはハロゲン原子、ヒドロキシル基、−OR11基(式中、R11は直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基又は−O−CO−Z−B−Ar−基(式中、Z、B及びArは上記で定義したとおりの意味を有する。)を表す。)を表す。)のカルボン酸誘導体と反応させ、及び望むならば得られる一般式(I)の置換基を公知の方法を用いて互いに変換する及び/又は得られる一般式(I)の化合物をその塩若しくは溶媒和物に変換する又はその塩若しくは溶媒和物から遊離させる及び/又はその光学活性異性体に変換する、又は光学活性異性体をラセミ体化合物に変換する及び望むならば構造異性体をその各々から分離する。
【0046】
本発明による方法バージョンb.)の1つの好ましい実施形態において、一般式(XVI)(式中、Wはヒドロキシル基を表す。)のオキシカルボン酸又はアミノカルボン酸を酸塩化物形成試薬、好ましくは塩化チオニルを用いて酸塩化物に変換し、これを次に不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム又は酢酸エチルなど)中、有機塩基(例えば、トリエチルアミンなど)又は無機塩基(例えば、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム)の存在下又はピリジン中で、室温で又は反応混合物の還流温度で一般式(V)のアミンと反応させる。
【0047】
好ましい方法は、一般式(XVI)の酸を、活性化剤の存在下、一般式(V)のアミンと反応させる方法である。カルボン酸の活性化は、不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなど)中、酸結合三級アミン(トリエチルアミン、N−メチルモルホリン)の存在下、−10℃と25℃との間の温度で、例えば塩化ピバリル(M.T.Leplawy:Tetrahedron 1960,11,39)、エチルクロロホルメート(T.Wieland:J.Liebigs Ann.Chem.1951,572,190)、イソブチルクロロホルメート(J.R.Vaughan:JACS.1951,73,3547)又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(R.Arshady:J.Chem.Soc.Perkin Trans.1,1981,529又はD.Hudson:J.Org.Chem.1988,53,617)を用いることにより混合酸無水物中間体の調製により達成され得る。
【0048】
活性化はまた、不活性溶媒中、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、又はこれらの混合物中において、カルボニルジイミダゾールを使用することにより(H.A.Staab:Lieb.Ann.Chem:1957,609,75)得られ得る。活性化はまた、不活性溶媒中で、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)を用いて実施され得る(J.Corte:Tetrahedron Lett.31,1990,205)。
【0049】
一般式(XVI)(式中、Wは、−OR11−基を表す。)が、カルボン酸エステルである場合、該反応は、文献中の公知の方法により、好ましくは100℃から150℃で、溶媒を用いずに溶融状態で実施される。
【0050】
図3は、一般式(I)(式中、Bは、−NR基を意味する。)の化合物を調製するための第3の可能な過程を表す(方法バージョンc.)。
【0051】
【化17】

【0052】
一般式(I)(式中、Bは、−NR基を意味し、Ar、X、Y、Z、R、R、R、及びArの意味は上記で定義したとおりである。)の化合物を調製するための本発明による方法バージョンc.)において、一般式(XX):
【0053】
【化18】

(式中、Ar、X、Y、Z、R、R及びRの意味は、上記で定義したとおりである。)
の化合物を、一般式(XXII):
【0054】
【化19】

(式中、Arの意味は上記で定義したとおりであり、Halはハロゲン原子を表す。)
のハロゲン化合物と反応させ、及び望むならば得られた一般式(I)の化合物の置換基を公知の方法を用いて互いに変換する及び/又は得られた一般式(I)の化合物をその塩若しくは溶媒和物に変換する又はその塩若しくは溶媒和物から遊離させる及び/又はその光学活性異性体に変換する、又は光学活性異性体をラセミ体化合物に変換する及び望むならば構造異性体をその各々から分離する。
【0055】
該反応は、塩基(例えば、トリエチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン)の存在下で、不活性溶媒中で、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル又はそれらの混合物中で、好ましくは実施される。
【0056】
一般式(I)の化合物がラセミ体化合物である場合、鏡像異性体の分離は、キラル分取カラムクロマトグラフィーにより、又は塩基性化合物の変換に適した他の公知の方法により実施され得る。
【0057】
一般式(II)(式中、Bは酸素原子を表し、Arの意味は上記で定義したとおりである。)のアルコールは部分的に文献中に公知であるか、又はそれらは文献中に公知の方法により調製され得る。一般式(II)(式中、Bは−NR−を表し、Ar及びRの意味は上記で定義したとおりである。)のアミンは部分的に文献中に公知であるか、又はそれらは文献中に公知の方法により調製され得るか、又はそれらは市販のものである。
【0058】
図4は、一般式(III)の化合物の調製を表す。
【0059】
【化20】

【0060】
一般式(III)(式中、Ar、X、R、Y、R及びZの意味は上記で定義したとおりであり、Halはハロゲン原子、好ましくは塩素原子又は臭素原子を表す。)のハロゲン化合物は文献中には記載されていないが、それらは、不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、又はアセトニトリル又はそれらの混合物)中での、好ましくはジクロロメタン中での、室温又はより低い温度における文献中に公知の方法による、一般式(V)(式中、Ar、X、R、Y及びRの意味は上記で定義したとおりである。)のジアミンから一般式(IV)(式中、Zの意味は上記で定義したとおりである。)の臭化アシル又は塩化アシルを用いる公知の方法(例えば、Chem.Pharm.Bull.2003,51,6,697から701;J.Chem.Soc.Perkin Transl.1993,2,613;JACS.1947,69,515、J.Med.Chem.1998,41,11,1943)により調製され得る。一般式(IV)の臭化アシル及び塩化アシルは、市販のものである。一般式(V)のジアミンは、置換基R、R、X及びYの性質に依存して異なる方法により調製され得る。
【0061】
一般式(V)(式中、Rは、水素原子を表し、Yは、1,3−プロピレン、1−メチル−1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン又は1,4−ブチレン基を表し、(R及びRは、水素原子又はメチル基を独立して表し、pは、0又は1であり、Ar及びXの意味は、上記で定義したとおりである。)のジアミンは、図5に示されるとおりに調製され得る。
【0062】
【化21】

【0063】
一般式(VIII)の化合物は、ナトリウムシアノボロヒドリドの存在下、メタノール中で一般式(IX)のアミンを用いる還元的アミノ化による(Holzgrabe U.:Arch.Pharm.1987,320,7,647から654)、又は触媒水素化による(Elslager E.F.:J.Med.Chem.1981,24,2,140から145)、又は水性アルコール媒体中で水素化ホウ素ナトリウムを用いる(Simig Gy.:J.Chem.Soc.Perkin Trans.l.1992,13,1613から16)一般式(X)のオキソ化合物(アルデヒド又はケトン)を出発物質とする文献に公知の方法により調製され得る。一般式(IX)の化合物は、市販のものである。一般式(X)のアルデヒドは市販のものであるか、又は文献に公知の方法により調製され得る。一般式(VI)の化合物は、文献(King M.ら:JACS.1946,68,1468、又はSurreyら:JACS.1956,78,2573)からの類推により、一般式(VIII)の化合物から一般式(VII)のシアン化アルケンを用いて調製され得る。一般式(VII)のシアン化物は、市販のものである。一般式(V)のジアミンは、文献(Shapiroら:JACS.1959,81,3083から84、及びRoufos I.:J.Med.Chem.1996,39,7,1514)からの類推によるアルコール又はヘキサン溶液中でのアンモニア及びラネーニッケル又はロジウム触媒の存在下における、文献中では加圧下における、一般式(VI)のシアン化物の触媒水素化により得られ得る。
【0064】
一般式(V)(式中、Yの意味はエチレン基であり、Rは水素原子を表し、Ar及びXの意味は上記で定義したとおりである。)のジアミンは、文献(Arz.Forsch.1975,25,1853から58)からの類推により、熱水溶液中で一般式(VIII)のアミンから2−ブロモエチルアミンを用いて図6に示すようにして調製され得る。
【0065】
【化22】

【0066】
一般式(V)(式中、Rは水素原子を表し、Yは3−メチルプロピレン基を表し、Ar及びXの意味は上記で定義したとおりである。)のジアミンは、図7に示すようにして調製され得る。
【0067】
【化23】

【0068】
一般式(XI)の化合物は、一般式(VIII)のアミンからパラホルムアルデヒド及びアセトンを用いてMannich縮合により得られる。文献(JACS.1959,81,2214から18)からの類推により、反応はi−プロパノール中、還流条件下で実施され得る。一般式(XII)のオキシムは、文献(JACS.1959,81,2214から18)からの類推により、i−プロパノール水溶液中で一般式(XI)の化合物からヒドロキシルアミンを用いて調製される。一般式(V)のアミンは、アンモニアのエタノール溶液中でのラネーニッケル触媒の存在下における触媒水素化により一般式(XII)のオキシムから、文献からの類推により調製される。
【0069】
図8は、一般式(V)(式中、R及びRはメチル基を表し、Ar、X及びYの意味は上記で定義したとおりである。)の化合物の調製を実証する。
【0070】
【化24】

【0071】
一般式(V)の化合物は、不活性溶媒中で、好ましくはアセトニトリル中で、酸結合有機アミンの存在下、一般式(XIII)の市販のアリールアルキルハロゲン化物を一般式(XIV)のN,N’−ジメチルアミノアルキル化合物と反応させることにより得られ得る。
【0072】
一般式(X)(式中、Xは1,3−プロピレン基を表し、Arの意味は上記で定義したとおりである。)の化合物は、不活性溶媒中で、好ましくはジクロロメタン中で、ピリジニウムクロロクロメートを用いる酸化により、一般式(XV)の適切なアルコールから文献(J.Org.Chem.2002,67,25,8758から8763)からの類推により、図9に示すようにして得られ得る。
【0073】
【化25】

【0074】
一般式(X)(式中、Xは、3−メチルプロピレン基を表す。)のケトンは、アルコール溶液中で還流条件下、炭酸カリウムの存在下で市販の一般式(XIII)の塩化ベンジルをペンタン−2,4−ジオンと共に加熱することにより、文献(Powelら:JACS.2004,126,25,7788から89)からの類推により、図10に示す方法により調製され得る。
【0075】
【化26】

【0076】
一般式(XVI)のオキシカルボン酸は、市販のものであるか、又は文献に既知の方法により調製され得る。(ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)酢酸及びそれらのエステルの調製は、図11に示される。
【0077】
【化27】

【0078】
式(XIX)の2−メルカプトベンゾオキサゾールは、文献において既知の方法により適切に置換されている2−ヒドロキシアニリンから調製され得る。該化合物とホスホルペンタクロライド(phosphorpentachloride)とから、式(XVIII)の2−クロロベンゾキサゾールが得られる(Haviv Fら:J.Med.Chem.31,9,1988,1719;Seidel:J.Prakt.Chem.2,1890,454;Chenら:Heteroat.Chem.12,3,2001,151)。該(ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)酢酸エステル(XVII)は、水素化ナトリウムの存在下、25℃から50℃の温度で、不活性溶媒中で(好ましくはテトラヒドロフラン中で)、クロロ化合物(XVIII)とグリコール酸エステル(ヒドロキシアセテート)とから合成される。
【0079】
一般式(XXI)及び一般式(XX)の化合物の調製を、図12において実証する。
【0080】
【化28】

【0081】
第1の段階において、グリシンメチルエステルは、文献に既知の方法により保護され、次いで、エステル基は、加水分解される。一般式(V)のジアミンとの反応は、一般式(XXI)の新規の化合物をもたらし、これは酸性の加水分解により、一般式(XX)(式中、Rは、水素原子を意味する。)の新規のアミノ誘導体をもたらし、所望であれば、既知の方法によるアルキル化により、一般式(XX)(式中、Rは、C1−4アルキル基を意味する。)の化合物が得られる。
【0082】
本発明の更なる詳細を以下の実施例によって実証するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
(実施例)
【実施例1】
【0084】
2−(1,3−ベンズチアゾール−2−イルオキシ)−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド
【0085】
一般式(I)において、Arが3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZがメチレン基を表し、Rがメチル基を表し、Yが1,3−プロピレン基を表し、Rが水素原子を表し、Bが酸素原子を表し、Arが、1,3−ベンゾチアゾール−2−イル基を表す。
【0086】
a.)2−ブロモ−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド
【0087】
a/1.)N−(3,4−ジクロロベンジル)メチルアミン塩化水素塩
(Simig Gy.:J.Chem.Soc Perkin Trans.1.1992,13,1613から16)
【0088】
17.5g(100mmol)の3,4−ジクロロベンズアルデヒドを40mlのメタノール中に溶解し、それに攪拌しながら15.6mlの、30mlメタノール中の40%メチルアミン水溶液(200mmol)を添加する。反応混合物を0℃に冷却し、温度を0℃に維持しながら、それに1.9g(50mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを少しずつ添加する。反応混合物を冷却浴から出し、放置して室温にし、攪拌を28時間継続する。メタノールを真空中で留去し、残渣に200mlのジクロロメタンを添加する。混合物を50mlの水で3回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させて真空中で蒸発させる。粗製生成物を100ml酢酸エチル中に溶解し、塩化水素エーテル(50ml)飽和溶液で酸性にする。得られた結晶をろ別し、酢酸エチル及びエーテルで連続的に洗浄して、表題化合物の20gを白色結晶として得る。Mp:225℃
【0089】
a/2.)3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピオニトリル
20g(88mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)メチルアミン塩酸塩から、12.6ml(90mmol)のトリエチルアミン−酢酸エチル(100ml)溶液の添加により塩基を遊離させる。得られた16.5gの塩基を170mlの無水メタノールに溶解し、溶液を0℃未満に冷却して、それに5.7ml(87mmol)のアクリロニトリルを添加する。反応混合物を0℃で30分間攪拌し、放置して室温にし、30時間攪拌して蒸発させ、油状形態の表題化合物の20gを得る。LC/MS[MH]=243(C1112Cl 243.14)
【0090】
a/3.)N−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミン
20g(82.3mmol)の3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピオニトリルを、室温で、アンモニア−エタノール(100ml)溶液中、ラネーニッケル触媒の存在下で水素化する。溶媒の除去後、20gの表題化合物を油状形態で得る。LC/MS[MH]=247(C1116Cl 247.17)
【0091】
a.)2−ブロモ−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド臭化水素酸塩
4.9g(20mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンを50mlジクロロメタンに溶解する。溶液を−10℃に冷却し、その温度で12mlジクロロメタン中の2ml(23mmol)臭化ブロモアセチルをそれに滴下する。反応混合物を−10℃で10分間、室温で3時間攪拌する。ジクロロメタンを捨て、残渣を15mlの無水エタノールと共に攪拌して、沈殿した結晶をろ別し、エタノール及びエーテルで洗浄して、7gの表題化合物をその臭化水素酸塩の形態で得る。Mp.:141℃。
【0092】
b.)2−(1,3−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ)−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−アセトアミド
0.0756g(0.5mmol)の1,3−ベンゾチアゾール−2−オールを、5mlのジメチルホルムアミドに溶解し、0.15g(1.1mmol)の乾燥炭酸カリウムを添加し、攪拌下室温で2mlジメチルホルムアミド中の0.18g(0.5mmol)の2−ブロモ−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミドを滴下する。攪拌を24時間継続する。反応混合物を、氷−水混合物上に注ぎ、沈殿した結晶をろ別し、水で洗浄し、0.13gの表題化合物を得る。Mp.:113から115℃。
【実施例2】
【0093】
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}2−(2,4−ジクロロフェノキシ)アセトアミド
【0094】
一般式(I)において、Arが3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZがメチレン基を表し、Rがメチル基を表し、Yが1,3−プロピレン基を表し、Rが水素原子を表し、Bが酸素原子を表し、Arが2,4−ジクロロフェニル基を表す。
【0095】
2mlのクロロホルム中の0.247g(1mmol)N−(3,4−ジクロロベンジル)]−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンの溶液に、攪拌及び氷水冷却化で、1mlの水中の0.06g(1.5mmol)の水酸化ナトリウムを添加し、次いで、1mlのクロロホルム中の0.26g(1.1mmol)(2,4−ジクロロフェノキシ)アセチルクロライドを滴下する。冷却すること無く攪拌を36時間継続する。クロロホルムを除去し、10mlの水を添加し、混合物を20mlの酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。粗製生成物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=9:1を使用する、カラムクロマトグラフィーにより精製する。0.11gの表題化合物を、油として得る。LC/MS[MH]=449(C1920Cl 450.20)
【実施例3】
【0096】
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−2−[(6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]アセトアミド
【0097】
一般式(I)において、Arが3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZがメチレン基を表し、Rがメチル基を表し、Yが1,3−プロピレン基を表し、Rが水素原子を表し、Bが酸素原子を表し、Arが6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2イル基を表す。
【0098】
a.)6−メチルベンゾキサゾール−2−チオール
(Haviv F.ら:J.Med.Chem.1988,31,9,1719から1728)
3.7g(30mmol)の2−ヒドロキシ−4−メチルアニリンを50mlのエタノール中に懸濁し、4.8g(30mmol)のO−エチル−キサントゲン酸カリウム塩をそれに添加して、混合物を還流条件下で16時間加熱する。溶媒を除去し、残渣を水に溶解して酢酸でpH5の酸性にし、沈殿した結晶をろ別し、水で洗浄する。4.3gの表題化合物を得る。Mp:209℃。
【0099】
b.)2−クロロ−6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール
(Haviv F.ら:J.Med.Chem.1988,31,9,1719から1728)
4.1g(25mmol)の6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−チオールを40mlのトルエン中に懸濁し、6.2g(30mmol)の五塩化リンをそれにゆっくり加えて、混合物を16時間還流条件下で加熱する。溶媒を除去し、残渣にエーテルを加えて沈殿した無機塩をろ別し、エーテル溶液を蒸発させる。2.8gの表題化合物を油状形態で得る。LC/MS[MH]=168(CClNO 167.59)。
【0100】
c.)エチル[(6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]アセテート
【0101】
0.73g(7mmol)のヒドロキシ酢酸エチルを20mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.36g(9mmol)の60%水素化ナトリウムを添加し、混合物を20分間攪拌した後、1.0g(6mmol)の2−クロロ−6−メチル−1,3−ベンゾキサゾールをそれに添加し、該混合物を還流下で3時間過熱する。溶媒を除去し、残渣を15mlの水に溶解し、20mlの酢酸エチルで3回抽出する。この合わせた有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて1.3gの表題化合物を油として得る。LC−MS[MH]=236(C1113NO 235.24)。
【0102】
d.)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−2−[(6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]アセトアミド
1g(4.6mmol)の[(6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]酢酸と1.13g(4.6mmol)N−(3,4−ジクロロベンジル)]−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンとの混合物を、100℃で4時間加熱する。粗製溶融物を、溶離液として酢酸エチル−ピリジン−酢酸−水960:20:6:11混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。画分の蒸発後、残渣を、ヘキサン:石油エーテル=1:1の混合物から結晶化する。75mgの表題化合物を白色結晶の形態で得る。Mp:62から66℃。
【実施例4】
【0103】
2−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド
【0104】
一般式(I)において、Arが3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZがメチレン基を表し、Rがメチル基を表し、Yが1,3−プロピレン基を表し、Rが水素原子を表し、Bが酸素原子を表し、Arが、1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0105】
a)[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]酢酸エチル
0.14g(1.3mmol)のヒドロキシ酢酸エチルを、5mlのテトラヒドロフランに溶解し、0.06g(1.6mmol)の60%水素化ナトリウムをそれに添加する。攪拌20分後、0.16g(1.1mmol)の2−クロロ−1,3−ベンゾキサゾールを該混合物に添加し、混合物を攪拌下で3時間加熱する。該溶媒を除去し、該残渣を15mlの水に溶解し、20mlの酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて0.21gの表題化合物を油として得る。LC−MS[MH]=222(C1111NO 221.21)
【0106】
b.)(1,3−ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)酢酸
0.2g(0.9mmol)の(1,3−ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)酢酸エチル及び0.4g(1mmol)の水素化ナトリウムの水(1ml)中の溶液を、室温で2時間攪拌し、次いで5mlのクロロホルムで3回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させ、54mgの表題化合物を油として得る。LC−MS[MH]=194(CNO 193.16)
【0107】
c.)2−(1,3−ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド
3mlのクロロホルム中の54mg(0.28mmol)の(1,3−ベンゾキサゾール−2−イルオキシ)酢酸の溶液に、28mg(0.28mmol)の4−メチルモルホリンを添加する。該混合物を−15℃に冷却し、30mg(0.28mmol)のエチルクロロホルメートをそれに滴下し、該混合物を冷却下で15分間攪拌する。次いで、2mlのクロロホルム中の83mg(0.34mmol)N−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロピル−1,3−ジアミンの溶液を添加し、該反応混合物を、冷却化30分間及び室温で1時間攪拌する。クロロホルム溶液を、10mlの水で2回抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させ、50mgの表題化合物を油として得る。LC/MS[MH]=422(C2021Cl 422.31)。
【実施例5】
【0108】
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−2−[1−(4−メトキシベンジル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イルオキシ]アセトアミド
【0109】
一般式(I)において、Arが3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZがメチレン基を表し、Rがメチル基を表し、Yが1,3−プロピレン基を表し、Rが水素原子を表し、Bが酸素原子を表し、Arが、[1−(4−メトキシベンジル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]基を表す。
【0110】
0.15g(0.48mmol)の{[1−(4−メトキシベンジル)−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]オキシ}酢酸、0.13g(0.52mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミン、0.048g(0.48mmol)の4−メチルモルホリン及び0.052g(0.48mmol)のエチルクロロホルメートから開始して、実施例4.c)に記載の方法に従って、表題化合物を調製する。17mgの生成物が、油として得られる。LC/MS[MH]=541(C2830Cl 541.476)。
【実施例6】
【0111】
N−{3[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−3−ベンジルアミノ]プロピオンアミド
【0112】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、Xは、メチレン基を表し、Rはメチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Zは、エチレン基を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、ベンジル基を表す。
【0113】
0.2g(1mmol)のエチル(3−ベンジルアミノ)プロピオナートと0.24g(1mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンとの混合物を、100℃で6時間加熱する。粗製溶融物を、カラムクロマトグラフィーにより精製する。60mgの表題化合物を、油の形態で得る。LC/MS[MH]=408(C2127ClO 408.37)。
【実施例7】
【0114】
−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド
【0115】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、1,3−ベンゾチアゾール−2−イル基を表す。
【0116】
a.)1,3−ベンゾチアゾール−2−イルホルムアミド
(Huffmann:J.Org.Chem.1958,23,727)
無水酢酸及び98%のギ酸の混合物を、60℃で2時間加熱する。4.4g(50mmol)の得られた無水物に、3.75g(25mmol)の2−アミノ−1,3−ベンゾチアゾールを、温度を40℃未満に保ちながら15分間室温で添加する。次いで、12mlのエーテルを添加し、該混合物を、室温で12時間攪拌する。沈殿した結晶をろ別し、エーテルで洗浄して4gの表題化合物を得る。
LC/MS[MH]=179(COS 178.214)。
【0117】
b.)エチルN−1,3−ベンゾチアゾール−2−イルグリシナート
5mlのジメチルホルムアミド中の0.2g(5mmol)の60%水素化ナトリウムの懸濁液に0.89g(5mmol)の1,3−ベンゾチアゾール−2−イルホルムアミドを少量ずつ加え、次いで30分の攪拌後、2mlのジメチルホルムアミド中の0.92g(5.5mmol)のブロモ酢酸エチルの溶液を滴下し、該混合物を、室温で4時間攪拌する。該反応混合物を、氷−水混合物上に注ぎ、沈殿した結晶をろ別する。0.85gの表題化合物を得る。LC/MS[MH]=237(C1112S 236.294)。
【0118】
−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミドの混合物
0.68g(2.88mmol)のエチルN−1,3−ベンゾチアゾール−2−イルグリシナート及び0.81g(2.88mmol)N−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンを、100℃で2時間加熱する。粗製溶融物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=19:1混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。500mgの表題化合物を結晶として得る。Mp:91から97℃。
【実施例8】
【0119】
−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド
【0120】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0121】
a.)メチルN−1,3−ベンゾキサゾール−2イルグリシナート
(エチルについては、AdvaniS.Pら:J.Pharm.Sci.1968,57,1693−96を参照)
【0122】
10mlのクロロホルム中の1.26g(10mmol)のメチルグリシナートの溶液に、1.31g(13mmol)のトリエチルアミン、次いで0.76g(5mmol)の2−クロロ−1,3−ベンゾキサゾールを添加し、混合物を40℃で4時間、室温で12時間攪拌する。クロロホルム溶液を、水、クエン酸溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させる。該残渣を、ヘキサンで処理し、結晶をろ別して洗浄する。0.55gの表題化合物を、白色結晶として得る。Mp:103から106℃。
【0123】
−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド
【0124】
0.24g(1mmol)のメチルN−1,3−ベンゾキサゾール−2−イルグリシナート及び0.2g(1mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンを、100℃で12時間加熱する。該粗製溶融物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=9:1混合物を使用するカラムクロマトグラフィーにより精製する。130mgの表題化合物を結晶として得る。Mp:97から98℃。
【実施例9】
【0125】
−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アラニンアミド
【0126】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、Xは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Zは、−CH(CH)−基を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0127】
a.)メチル−N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イルアラニナート
0.62g(6mmol)のメチルアラニナート塩化水素塩及び4mlのクロロホルムの懸濁液に、0.79g(7.8mmol)のトリエチルアミン及び0.46g(3mmol)の2−クロロ−1,3−ベンゾキサゾールを添加し、該混合物を、40℃で4時間及び室温で12時間攪拌する。クロロホルム溶液を、水、クエン酸溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させる。該残渣を、ヘキサンで処理し、該結晶を、ろ別して洗浄する。0.11gの表題化合物を、白色結晶として得る。Mp:112から113℃。
【0128】
b.)N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アラニンアミド
【0129】
0.11g(0.5mmol)のメチル−N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イルアラニナート及び0.12g(0.5mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンの混合物を、100℃で12時間加熱する。該粗製溶融物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=98:2混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。90mgの表題化合物を結晶として得る。Mp:117から118℃。
【実施例10】
【0130】
−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−β−アラニンアミド
【0131】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、Xは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Zは、エチレン基を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0132】
a.)メチル−N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−β−アラニナート
【0133】
0.55g(4mmol)メチルβ−アラニナート塩化水素塩及び4mlのクロロホルムの懸濁液に、0.52g(5.2mmol)のトリエチルアミン及び0.3g(2mmol)の2−クロロ−1,3−ベンゾキサゾールを添加し、該混合物を、40℃で4時間及び室温で12時間攪拌する。クロロホルム溶液を、水、クエン酸溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させる。該残渣を、ヘキサンで処理し、該結晶を、ろ別して洗浄する。0.11gの表題化合物を、白色結晶として得る。Mp:110から112℃。
【0134】
b.)N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−N−{3−[(ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−β−アラニンアミド
0.11g(0.5mmol)のメチル−N−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル−β−アラニナート及び0.12g(0.6mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンの混合物を、100℃で12時間加熱する。該粗製溶融物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=100:1混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。103mgの表題化合物を結晶として得る。Mp:76.5から79.5℃。
【実施例11】
【0135】
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−3−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)アミノ]−2−メチルプロピオンアミド
【0136】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、Xは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Zは、−CH(CH)−CH−基を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0137】
a.)メチル−3−アミノ−2−メチルプロピオナート塩化水素塩
(SimM.M.ら:J.Org.Chem.1997,62,26,9358)
15mlメタノール中の1g(10mmol)3−アミノ−2−メチルプロピオン酸の溶液を、−10℃に冷却し、1ml(13.7mmol)塩化チオニルをそれに滴下し、該混合物を還流下で1時間加熱する。該溶媒を真空中で取り除き、該残渣を、エーテルで結晶化する。該結晶を、ろ別する。1.23gの表題化合物を白色結晶として得る。Mp:107から110℃
【0138】
b.)メチル−3−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)アミノ]−2−メチルプロピオナート
【0139】
0.55g(4mmol)メチル−3−アミノ−2−メチルプロピオナート塩化水素塩及び4mlのクロロホルムの懸濁液に、0.52g(5.2mmol)のトリエチルアミン及び0.3g(2mmol)の2−クロロ−1,3−ベンゾキサゾールを添加し、該混合物を、40℃で4時間及び室温で12時間攪拌する。該クロロホルム溶液を、水、クエン酸溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させる。該残渣を、ヘキサンで処理し、該結晶を、ろ別して洗浄する。0.33gの表題化合物を、白色結晶として得る。Mp:89から90℃。
【0140】
c.)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−3−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)アミノ]−2−メチルプロピオンアミド
【0141】
0.11g(0.5mmol)のメチル3−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)アミノ]プロピオナート及び0.14g(0.6mmol)のN−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンの混合物を、100℃で2時間加熱する。該粗製溶融物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=100:1混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。50mgの表題化合物を結晶の形態で得る。Mp:134から135℃。
【実施例12】
【0142】
−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル−N−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)グリシンアミド
【0143】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、6−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル基を表す。
【0144】
0.48g(1mmol)の2−ブロモ−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド、10mlトルエン、5mlジメチルホルムアミド及び0.16g(1mmol)の2−アミノ−6−メチル−1,3−ベンゾチアゾールを、90℃で5時間攪拌する。該溶媒を真空中で取り除き、該残渣を酢酸エチルで処理し、該固体物質をろ別し、溶離液としてクロロホルム:メタノール=19:1の混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。91mgの表題化合物を、油の形態で得る。LC/MS[MH]=451(C2124ClOS 451.42)。
【実施例13】
【0145】
−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル−N−(6
−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)−グリシンアミド
【0146】
一般式(I)において、Arは、3,4−ジクロロフェニル基を表し、X及びZは、メチレン基を表し、Rは、メチル基を表し、Yは、1,3−プロピレン基を表し、Rは、水素原子を表し、Bは、−NH−基を意味し、Arは、6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル基を表す。
【0147】
a.)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド
【0148】
a/1.)メチルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシナート
(WilesC.ら:Tetrahedron,2003,59,51,10173−180及びMcNultyら:Synth.Comm.,1992,22,7,975から985をまた参照)
【0149】
40mlのテトラヒドロフラン中の2.26g(18mmol)グリシンメチルエステル塩化水素塩の懸濁液に、3.8g(37.4mmol)4−メチルモルホリンを加え、次いで、4.3g(20mmol)ジ−tert−ブチルカルボナートを少量ずつ加え、該混合物を室温で12時間攪拌する。沈殿したモルホリン塩をろ別し、母液を真空中で蒸発させる。該残渣を50mlの酢酸エチルに溶解し、水及びクエン酸溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。
3.7gの表題化合物を、油として得る。LC/MS[MH]=190(C15NO 189.21)。
【0150】
a/2.)N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシン
(KlengelH.ら:Z.Chem.1973,13,221から22をまた参照)
3.4g(18mmol)メチルN−(tert−ブトキシカルボニル)グリシナートを、30mlメタノールに溶解し、20mlの1N水酸化ナトリウム溶液をそれに添加し、該混合物を、室温で1時間攪拌する。メタノールを真空中で蒸留除去して、不純物を取り除き、水溶液を酢酸エチルで抽出する。水相を、次いで固体硫酸水素カリウムで酸性化し、酢酸エチルで抽出する。有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。該残渣をエーテルで結晶化し、該結晶をろ別する。2.3gの表題化合物を白色結晶として得る。Mp:89から91℃。
【0151】
a/3.)tert−ブチル−[2−({3−[(ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アミノ)−2−オキソエチル]−カルバメート
15mlクロロホルム中の1.75g(10mmol)N−(tert−ブトキシカルボニル)グリシンの溶液に、1g(10mmol)4−メチルモルホリンを添加し、該混合物を、−15℃に冷却する。1g(10mmol)エチルクロロホルメートを滴下し、次いで、15分の冷却及びその温度での攪拌後、2mlクロロホルムに溶解した2.6g(10.5mmol)N−(3,4−ジクロロベンジル)−N−(メチル)プロパン−1,3−ジアミンを添加する。攪拌を、冷却下15分間及び室温で1時間継続する。有機相を水、クエン酸溶液、及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し真空中で蒸発させる。該粗製生成物を、溶離液としてクロロホルム:メタノール=98:2の混合物を用いるカラムクロマトグラフィーにより精製する。1.3gの表題化合物を、油として得る。LC/MS[MH]=404(Cl27 404.335)。
【0152】
a.)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド塩化水素塩
1.3g(3.22mmol)tert−ブチル−[2−({3−[(ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アミノ)−2−オキソエチル]カルバメートを、5mlエタノールに溶解し、エーテル溶液中の飽和塩化水素を、それに添加する。該混合物を、室温で1時間攪拌し、次いで該エーテル相を、数回デカントする。0.6gの表題化合物を、油として得る。LC/MS[MH]=304(Cl1320ClO 340.68)。
【0153】
b.)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル−N−(6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)グリシンアミド
5mlのクロロホルム中の0.22g(0.67mmol)N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}グリシンアミド塩化水素塩に、0.88g(0.87mmol)トリエチルアミン及び0.1g(0.6mmol)2−クロロ−6−メチル−1,3−ベンゾキサゾール(実施例3.b.に従って調製され得る)を添加し、該混合物を50℃で12時間攪拌する。該溶液を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で蒸発させる。該残渣をヘキサンから結晶化する。17mgの表題化合物を得る。Mp:126から127℃。
【実施例14】
【0154】
公知の方法により、以下の組成の錠剤を調製する。
有効成分 40mg
ラクトース 35mg
Avicel 21mg
クロスポビドン 3mg
ステアリン酸マグネシウム 1mg
【実施例15】
【0155】
A.)ヒト組み換え型CCR3受容体(hr−CCR3)結合アッセイ
【0156】
一般式(I)の化合物のCCR3受容体拮抗薬効果を、エオタキシン結合試験で、hCCR3受容体発現組み換え型K562及びRBL2H3細胞について試験した。試験には、放射性ヨウ素125I(2200Ci/mmol)で標識したエオタキシンを用いた。
【0157】
アッセイにおいては、200000の細胞を0.11nM125I−エオタキシンの存在下、温置:37℃で60分、温置する。アッセイ緩衝液の組成:RPMI−l640媒体(GIBCO社製、pH7.6;80mgのCHAPS、500BSA(プロテアーゼ不含)、100mgゼラチン、3mlの25mM−HEPESのRPMI(100ml)溶液を含む)。試験化合物をDMSOに溶解し、原液をアッセイ緩衝液で希釈する。最終DMSO濃度は、1%以下である。アッセイを、深ウェルプレート中で実施する。細胞を試験化合物と共に15分間温置し、次に標識したエオタキシンを加える。非特異的結合を200nM非標識エオタキシンの存在下で測定する。1時間の温置後、0.5M−NaCl溶液を含む500μlの氷冷アッセイ緩衝液を加える。反応をプレート遠心分離機(JUAN社製)中の3600gでの6分間の遠心分離により停止する。上澄み液を、プレートを上下逆転位置に向けることにより注ぎだす。残留する小滴をティシュペーパーで拭き取った。可溶化のために、200μlの0.5M−NaOH溶液をペレットに添加する。室温での1時間の可溶化の後、150μlの可溶化液の放射能をガンマカウンター(1470Wizard、Wallac社製)で計数する。
【0158】
溶液の放射能は、細胞受容体の数との、結合125I−エオタキシンの量との、及び試験した拮抗薬の活性との直接比関係にある。
【0159】
特異的結合を、全結合数と非特異的結合数との差異として計算する。化合物の活性を、特異的結合と拮抗薬分子の存在下で測定した結合とから計算する。
【0160】
化合物の活性は、IC50値で特徴付けられる。
【0161】
B.)hCCR3−RBL細胞及びhCCR3 K562細胞中のCa2+動員の調査
【0162】
40000細胞数/ウェル密度(ミクロプレートの1つのウェル中の細胞数)のHCCR3−K562細胞及びhCCE3−RBL2H3細胞を24時間培養する。細胞を洗浄し、カルシウム指示薬染料(カルシウムプラスアッセイキット、Molecular Devices社製)を負荷する。負荷を行いながら、細胞を染料の存在下で60分間温置する。染料は蛍光カルシウム指示薬であり、細胞内カルシウム濃度を敏感に指示する。細胞内カルシウム濃度はサンプルの蛍光信号と直接比関係にある。実験を、BMG NOVOSTAR装置内で励起及び発光波長で行う。
【0163】
実験に用いる選択的作用薬は、
エオタキシン
エオタキシン−2
エオタキシン−3
RANTES
である。
【0164】
選択的作用薬を添加した後は細胞における細胞内カルシウム濃度が著しく増加し、それは蛍光信号の助けによりモニターされ得る。実験においては、最大獲得可能信号に対して75%のカルシウム信号を発する作用薬濃度を用いる。
【0165】
拮抗薬を、作用薬処理の15分前に加える。
【0166】
蛍光信号の変化を30秒間モニターし、この間に過程が生じる。
【0167】
作用薬添加後の最大信号の強度を、同じ作用薬添加後に得られるカルシウム信号と、しかしながら阻害薬の存在下で比較する。
【0168】
化合物の活性は、IC50値で特徴付けられる。
【0169】
試験A及びBに基づき、一般式(I)の化合物は生物学的活性であることが判明した。最も強力な化合物のIC50値は、15nMから500nMの範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、
Bは、酸素原子又は−NR−基(式中、Rは水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基を意味する。)を表し、
Arは、1つ以上のハロゲン原子により場合により置換されているフェニル基を表し、
X及びYは独立して、1つ以上の同一の又は異なる直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基により場合により置換されている直鎖C1−4アルキレン基を意味し、
Zは、1つ以上の同一の又は異なる直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基により場合により置換されている直鎖C1−4アルキレン基を表し、
及びRは独立して、水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基を意味し、
Arは、ハロゲン原子により場合により置換されているフェニル基又はベンジル基;
直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基により置換されているアミノ基、ベンジル基(この基は、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基又はハロゲン原子により場合により置換されている。)からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により置換されている、1つ、2つ、若しくは3つの窒素原子又は2つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む5員又は6員の複素環;
ベンゼン環が、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基により置換されているアミノ基、ハロゲン原子からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により更に置換され得る、上記の5員又は6員の複素環のベンゼン類似体;
直鎖又は分岐鎖のC1−4アルキル基、直鎖又は分岐鎖のC1−4アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、1つの若しくは2つの同一の若しくは異なる直鎖若しくは分岐鎖のC1−4アルキル基又はベンジル基により置換されているアミノ基、からなる群より選択される1つ以上の同一の又は異なる置換基により場合により置換されている、1つ又は2つの窒素原子を含む6員の複素芳香族環と縮合される、1つ、2つ若しくは3つの窒素原子又は1つの窒素原子及び1つの酸素原子又は1つの窒素原子及び1つの硫黄原子を含む5員の複素環;を表す。)
の化合物、及びそれらの塩、溶媒和物、並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物。
【請求項2】
請求項1に記載の下記化合物:
N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−2−(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)−アミノ]アセトアミド;
−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル−N−(6−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2−イル)−グリシンアミド;
2−[(1,3−ベンゾキサゾール−2−イル)オキシ]−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}−アセトアミド;
2−(1,3−ベンズチアゾール−2−イルオキシ)−N−{3−[(3,4−ジクロロベンジル)(メチル)アミノ]プロピル}アセトアミド;
及びそれらの塩、溶媒和物、並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物。
【請求項3】
a.)一般式(III):
【化2】

(式中、Ar、X、Y、Z、R及びRの意味は、請求項1で定義したとおりであり、Halはハロゲン原子を表す。)のハロゲン化合物を、一般式(II):
【化3】

(式中、B及びArの意味は、請求項1で定義したとおりである。)
の化合物と反応させること;又は
b.)一般式(V):
【化4】

(式中、Ar、X、Y、R及びRの意味は、請求項1で定義したとおりである。)
のジアミン化合物を、一般式(XVI):
【化5】

(式中、Ar、Z及びBの意味は、請求項1で定義したとおりであり、Wは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、−OR11−基(式中、R11は、直鎖若しくは分枝鎖C1−4アルキル基又は−O−CO−Z−B−Ar−基(式中、Z、B及びArの意味は、請求項1で定義したとおりである。)を表す。)を表す。)
のカルボン酸誘導体と反応させること;又は
c.)一般式(I)(式中、Bは、−NR−を意味し、Ar、X、Y、Z、R、R、R及びArの意味は請求項1で定義したとおりである。)の化合物を調製するために、一般式(XX):
【化6】

(式中、Ar、X、Y、Z、R、R及びRの意味は請求項1で定義したとおりである。)
の化合物を、一般式(XXII):
【化7】

(式中、Arの意味は請求項1で定義したとおりであり、Halはハロゲン原子を表す。)
のハロゲン化合物と反応させ、
望むならば得られた一般式(I)の化合物の置換基を公知の方法を用いて互いに変換する及び/又は得られた一般式(I)の化合物をその塩若しくは溶媒和物に変換する又はその塩若しくは溶媒和物から遊離させる及び/又はその光学活性異性体に変換する、又は光学活性異性体をラセミ体化合物に変換する及び望むならば構造異性体をその各々から分離すること;
を特徴とする、一般式(I)(式中、B、Ar、X、Y、Z、R、R及びArの意味は請求項1で定義したとおりである。)の化合物及びそれらの塩、溶媒和物、及び異性体の調製方法。
【請求項4】
反応を塩基の存在下で実施することを特徴とする、請求項3のバージョンa.)又はc.)に記載の方法。
【請求項5】
一般式(XVI)の化合物として、適切な酸塩化物を用い、反応を塩基の存在下で実施することを特徴とする、請求項3のバージョンb.)に記載の方法。
【請求項6】
一般式(XVI)の化合物として、適切な酸を一般式(V)のアミンと、活性化剤の存在下で反応させることを特徴とする、請求項3のバージョンb.)に記載の方法。
【請求項7】
活性化剤として、ジシクロヘキシルカルボジイミド、塩化ピバリル、エチルクロロホルメート、イソブチルクロロホルメート、カルボニルジイミダゾール、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェートを用いることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
一般式(I)(式中、B、Ar、X、Y、Z、R、R及びArの意味は、請求項1で定義したとおりである。)の化合物の1つ以上及び/又はそれらの塩、溶媒和物、異性体及びそれらの塩又は溶媒和物、及び医薬品工業界において通常用いられる1つ以上の賦形剤を含むことを特徴とする、医薬製剤。
【請求項9】
請求項2に記載の化合物の1つ以上を含むことを特徴とする、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
CCR3受容体が疾患の発症に影響を及ぼすような症状を治療するための医薬の調製のための、一般式(I)(式中、B、Ar、X、Y、Z、R、R及びArは、請求項1で定義したとおりの意味を有する。)の化合物、及びそれらの塩、溶媒和物並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物の使用。
【請求項11】
喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、アレルギー性結膜炎、多発性硬化症、クローン病、HIV感染症及びエイズ関連疾患などの症状を治療するための医薬を調製するための、請求項10に記載の一般式(I)(式中、B、Ar、X、Y、Z、R、R及びArの意味は、請求項1で定義したとおりである。)の化合物、及びそれらの塩、溶媒和物並びに異性体及びそれらの塩及び溶媒和物の使用。
【請求項12】
受容体CCR3が影響を及ぼすような疾患が発症している患者における治療又は予防の方法であり、前記患者に請求項1に記載の化合物の薬学的有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項13】
疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、アレルギー性結膜炎、多発性硬化症、クローン病、HIV感染症及びエイズ関連疾患である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
一般式(XX):
【化8】

(式中、Ar、X、Y、Z、R、R及びRは、請求項1で定義したとおりの意味を有する。)
の化合物。
【請求項15】
一般式(XXI):
【化9】

(式中、Ar、X、Y、Z、R、R及びRは、請求項1で定義したとおりの意味を有する。)
の化合物。

【公表番号】特表2009−509950(P2009−509950A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531799(P2008−531799)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【国際出願番号】PCT/HU2006/000079
【国際公開番号】WO2007/034253
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(504456798)サノフイ−アベンテイス (433)
【Fターム(参考)】