説明

CCR5アンタゴニストとして有用なピペリジン誘導体

本発明は、式(I)の化合物もしくはそれらの薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物を提供し、ここで、種々の部分は、明細書において定義されるとおりである。本発明はまた、本発明の化合物を含有する薬学的組成物、および本発明の化合物を用いた処置の方法も提供する。本発明はまた、本発明の化合物およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置において有用な一つ以上の抗ウイルス薬もしくは他の薬剤の組み合わせの使用にも関する。本発明はさらに、単独でもしくは他の薬剤と組み合わせでの、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、アレルギーもしくは多発性硬化症の処置における本発明の化合物の使用にも関する。
【化20】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先出願)
本出願は、2002年12月18日に出願された米国仮特許出願第60/434,306号からの優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、選択的CCR5アンタゴニストとして有用なピペリジン誘導体、本発明の化合物を含有する薬学的組成物、および本発明の化合物を使用する処置方法に関する。本発明はまた、本発明の化合物とヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置で有用な一つ以上の抗ウイルス薬または他の薬剤との組み合わせの使用に関する。本発明は、さらに、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、アレルギーまたは多発性硬化症の処置における、単独で、または他の薬剤と組み合わせての、本発明の化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
HIV(これは、後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因物質である)により引き起こされた全世界的な健康危機は、疑問の余地がない。薬剤療法の最近の進歩は、AIDSの進行を遅くすることに成功しているものの、依然として、このウイルスを制御する安全でより効率的で安価な方法を発見する必要がある。
【0004】
CCR5遺伝子は、HIV感染に抵抗する役割を果たすことが報告されている。HIV感染は、細胞レセプターCD4および二次ケモカインコレセプター分子との相互作用によって、このウイルスが標的細胞膜に付着することにより開始し、血液および他の組織を介した感染細胞の複製および蔓延により、進行する。種々のケモカインレセプターがあるが、マクロファージ向性HIVについては、感染の初期段階においてインビボで複製する重要な病原体株であると考えられ、その細胞にHIVが入るのに必要な主なケモカインレセプターは、CCR5である。従って、ウイルスレセプターCCR5とHIVとの間の相互作用を妨害すると、HIVが細胞に入るのを阻止できる。本発明は、CCR5アンタゴニストである低分子に関する。
【0005】
CCR5レセプターは、炎症性疾患(例えば、関節炎、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息およびアレルギー)での細胞移動を媒介することが報告されている。このようなレセプターの阻害剤は、このような疾患の処置に有効であるとともに、他の炎症性疾患または状態(例えば、炎症性腸疾患、多発性硬化症、固形臓器移植拒絶および移植片対宿主病)の処置にも有効であると期待されている。WO 02/791194は、CCR5アンタゴニストとして有用な他のピペリジン誘導体を開示している。
【0006】
認知障害(例えば、アルツハイマー病)の処置で有用なムスカリン性アンタゴニストである他のピペリジン誘導体は、米国特許第5,883,096号;同第6,037,352号;同第5,889,006号;同第5,952,349号;および同第5,977,138号で開示されている。
【0007】
A−M.VandammeらのAntiviral Chemistry & Chemotherapy,9:187〜203(1998)は、ヒトにおけるHIV−1感染の現在の臨床的な処置を開示しており、これは、少なくとも3つの薬剤の組み合わせ、すなわち、いわゆるHighly Active Antiretroviral Therapy(「HAART」)を含む。HAARTは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(「NRTI」)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(「NNRTI」)およびHIVプロテアーゼ阻害剤(「PI」)の種々の組み合わせを含む。協力的で薬物の経験が少ない患者では、HAARTは、死亡率およびHIV−1のAIDSへの進行を減らすのに有効である。しかしながら、これらの多剤療法は、HIV−1を排除せず、通常、長期的な処置の結果、多剤耐性が生じる。HIV−1の良好な処置を提供するために、新たな薬剤療法を開発することが優先される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、CCR5レセプターのアンタゴニストとしての新規種類の化合物、このような化合物を調製する方法、一つ以上のこのような化合物を含有する薬学的組成物、およびCCR5レセプターに関連した一つ以上の疾患を処置、予防または軽減する方法を提供する。
【0009】
本発明の一つの局面は、式Iに示される一般構造を有する化合物:
【0010】
【化7】

またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物に関し;ここで:
nは、0、1、2、3もしくは4であり;
sは、0、1、2、3もしくは4であり;
tは、1、2、3もしくは4であり、ただし、
i)nが0であり、かつsが2である場合、tは1、3もしくは4である;そして
ii)nが0であり、かつtが2である場合、sは0、1、3もしくは4である;
XおよびZは、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してNもしくはCHであり;
はH,アルキル、アラルキル、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−C(O)アルキル、−C(O)アリール、−アルキル−アリール−R、−アルキル−ヘテロアリール−R、−S(O)シクロアルキル、−S(O)−アリール−R、−C(O)シクロアルキル、−C(O)−アリール−R、−C(O)NR2021もしくは−S(O)NR2021であり;
、R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してHもしくはアルキルであり得;
はH、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり;
またはRおよびRは、一緒になって=N(O−アルキル)、=N(OH)、=N−N(R2021)もしくは=CH(アルキル)であって、ただし、XおよびZの一方もしくは両方がNである場合、RおよびRは、一緒になって=CH(アルキル)ではなく;
はアリール、ヘテロアリール、フルオレニル;およびジフェニルメチル、ヘテロアリール−N−酸化物、
【0011】
【化8】

であり、ここで、各R10は、同じであるか、または異なり、独立して−CHもしくはハロゲンから選択され、Yは、NもしくはN(→O)であって、該アリール、フルオレニル、ジフェニルおよびヘテロアリールの各々は、1〜4個の置換基で置換されるか、もしくは必要に応じて独立して置換され、これらの置換基は、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してR11、R12、R13、R14およびR15からなる群から選択され;
は、H,アルキル、−CF、シクロアルキル、−OH、−OCH、−NH、−N(H)C(O)N(H)アルキル、−NHS(O)R20もしくは−N(H)C(O)アルキルであり;
11およびR12は、同じであっても異なっていてもよく、そして各々が独立してアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、−NR1819、−OH、−CF、−OCH、−O−アシルおよび−OCFからなる群から選択され;
13は、H、R11、アリール、−NO、−CN、−CHF、−CHF、−C(O)H、−CH=NOR18、ピリジル−N−酸化物、ピリミジニル、ピラジニル、−N(R19)CONR1920、−N(H)C(O)N(H)(ハロアルキル)、−N(H)C(O)N(H)(シクロアルキルアルキル)、−N(H)C(O)アルキル、−N(H)C(O)CF、−N(H)S(O)N(アルキル)、−N(H)S(O)アルキル、−N(S(O)CF、−N(H)C(O)Oアルキル、シクロアルキル、−SR21、−S(O)R21、−S(O)R21、−S(O)N(H)(アルキル)、−OS(O)アルキル、−OS(O)CF、ヒドロキシアルキル、−C(O)NR1819、−C(O)N(CHCH−O−CH、−OC(O)N(H)アルキル、−CO18、−Si(CHおよび−B(OC(CHからなる群から選択され;
14は、アルキル、ハロアルキル、NHおよびR15−フェニルからなる群から選択され;
15は、H、アルキル、ハロアルキル、−CF、−CO19、−CN、アルコキシおよびハロゲンからなる群から選択される1〜3個の置換基であり;ここで、該R15部分は、同じであっても異なっていてもよく、一つより多いR15が存在する場合には各々が独立して選択され;
16およびR17は、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立して、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択され得るか、またはR16およびR17は、一緒になってアルキレン基であり、そして連結されて3〜6個の炭素原子のスピロ環を形成する炭素原子を有し;
18、R19およびR20は、同じであっても異なっていてもよく、そして各々が独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され;
そして
21は、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から選択され;
ここで、上記の定義における、該アルキル、アルキレン、アリール、アリールアルキル、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキルおよびシクロアルキルの各々は、非置換であり得るか、または独立して、同じであり得るか、もしくは異なり得る一つ以上の部分により置換され得、該部分は、独立して−OH、アルコキシ、−CN、ハロゲン、−NR1819、−C(O)NR1819、−N(R18)C(O)R19、−N(R18)S(O)R19、−S(O)NR1819、−C(O)OR18,−OCF、−CF、−S(O)R18および−C(O)R18からなる群から選択される。
【0012】
本発明の別の局面は、式Iの一つ以上の化合物を含有するHIV処置用薬学的組成物に関する。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)を処置する方法に関し、この方法は、そのような処置が必要な患者に、治療有効量の一つ以上の式Iの化合物を投与する工程を包含する。本発明のさらなる局面は、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、アレルギーまたは多発性硬化症を処置する方法に関し、この方法は、このような処置が必要な患者に、治療有効量の一つ以上の式Iの化合物を投与する工程を包含する。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、ヒト免疫不全ウイルスを処置する方法に関し、この方法は、そのような処置が必要な患者に、この処置において有用な一つ以上の抗ウイルス薬または他の薬剤と組み合わせて、式Iの一つ以上の化合物を投与する工程を包含する。
【0015】
本発明のさらなる局面は、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、またはアレルギーを処置する方法に関し、この方法は、このような処置が必要な患者に、この処置において有用な一つ以上の抗ウイルス薬または他の薬剤と組み合わせて、式Iの一つ以上の化合物を投与する工程を包含する。
【0016】
この配合の成分であるCCR5アンタゴニストおよび抗ウイルス薬または他の薬剤は、単一の投薬形態で投与され得るか、もしくは別々に投与され得る。分離投薬形態の活性物質を含有するキットもまた、企図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
一つの実施形態において、本発明は、構造式Iにより示される化合物
【0018】
【化9】

またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物を開示し;ここで、種々の部分は上記のように定義される。
【0019】
式Iの化合物は、ラセミ混合物もしくは鏡像的に純粋な化合物として投与され得る。
【0020】
式Iの化合物の一つの実施形態において、XはCHである。
【0021】
別の実施形態において、ZはNである。
【0022】
別の実施形態において、tは2であり、かつsは1である。
【0023】
別の実施形態において、R、RおよびRは、水素である。
【0024】
別の実施形態において、RおよびRは、アルキルであり、
さらなる実施形態において、RおよびRは、メチルである。
【0025】
さらなる実施形態において、RはH、−S(O)アルキル、−S(O)アリールもしくは−S(O)シクロアルキルである。
【0026】
なおさらなる実施形態において、RはH、
【0027】
【化10】

である。
【0028】
なおさらなる実施形態において、Rは、アリールまたはアラルキルである。
【0029】
なお別のさらなる実施形態において、Rは、ベンジルもしくはフェニルであり、そしてRはヘテロアリールである。
【0030】
なおさらなる好ましい実施形態において、Rは、
【0031】
【化11】

であり、ここで、各R10およびYは定義のとおりである。
【0032】
上記に使用される場合、および本開示を通して、以下の用語は、そうでないことが示されない限り、以下の意味を有するものと理解される:
「患者」は、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0033】
「哺乳動物」は、ヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0034】
「アルキル」とは、脂肪族炭化水素基を意味し、これは、直鎖または分枝であり得、その鎖の中に、約1個〜約20個の炭素原子を含有する。好ましいアルキル基は、その鎖の中に、約1個〜約12個の炭素原子を含有する。さらに好ましいアルキル基は、その鎖の中に、約1個〜約6個の炭素原子を含有する。分枝状とは、直鎖状のアルキル鎖に、1個またはそれ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルまたはプロピル)が結合されることを意味する。「低級アルキル」とは、その鎖内に、約1個〜約6個の炭素原子を有する基を意味し、直鎖または分枝であり得る。用語「置換アルキル」は、そのアルキル基が、一つ以上の置換基で置換され得ることを意味し、置換基は同じであっても異なってもよく、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、N(アルキル)、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルからなる群より独立して選択される。適切なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびt−ブチルが挙げられる。
【0035】
「アルキニル」は、少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を含み、そして直鎖状であっても分枝状であってもよく、そしてその鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含む、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、その鎖中に約2〜約12個の炭素原子を有し;そしてより好ましくは、その鎖中に約2〜約4個の炭素原子を有する。分枝状とは、一つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチル、またはプロピル)が、直鎖アルキニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキニル」は、直鎖状であっても分枝状であってもよい鎖中の約2〜約6個の炭素原子を意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、および3−メチルブチニルが挙げられる。用語「置換アルキニル」は、そのアルキニル基が一つ以上の置換基によって置換され得ることを意味し、この置換基は、同じであっても異なっていてもよく、各置換基は、アルキル、アリール、およびシクロアルキルからなる群より独立して選択される。
【0036】
「アリール」とは、約6個〜約14個の炭素原子、好ましくは、約6個〜約10個の炭素原子を含む、芳香族の単環式または多環式の環系を意味する。アリール基は、一つ以上の「環系置換基」で必要に応じて置換され得、この置換基は、同じであっても異なっていてもよく、本明細書中で定義されるとおりである。適切なアリール基の非限定的な例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0037】
「ヘテロアリール」は、約5個〜約14個の環原子、好ましくは約5個〜約10個の環原子を含む、芳香族の単環式または多環式の環系を意味し、ここで、これらの環原子のうちの一つ以上は、単独でかまたは組み合わせて、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素または硫黄)である。好ましいヘテロアリールは、約5個〜約6個の環原子を含む。「ヘテロアリール」は、一つ以上の「環系置換基」で必要に応じて置換され得、この置換基は、同じであっても異なっていてもよく、本明細書中で定義されるとおりである。ヘテロアリールの語根の前に付く接頭辞アザ、オキサまたはチアは、それぞれ、少なくとも一つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子が、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、必要に応じて、対応するN−酸化物に酸化され得る。適切なヘテロアリールの非限定的な例としては、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、(N置換ピリドンを含む)ピリドン、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、オキシインドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられる。用語「ヘテロアリール」はまた、例えば、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリルなどのような、部分的に飽和したヘテロアリール部分をも言う。
【0038】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アリール−アルキル基を意味し、この中で、アリールおよびアルキルは先に定義された通りである。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2−フェネチル、およびナフタレニルメチルが挙げられる。親部分への結合は、アルキルを介する。
【0039】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリール基を意味し、この中でアルキルおよびアリールは、先に定義された通りである。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例は、トリルである。親部分への結合は、アリールを介する。
【0040】
「シクロアルキル」は、約3個〜約10個の炭素原子、好ましくは約5個〜約10個の炭素原子を含む、非芳香族の、単環式または多環式の環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5個〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、必要に応じて、一つ以上の「環系置換基」で置換され得、この置換基は、同じであっても異なっていてもよく、上記で定義されるとおりである。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例としては、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチルなど、および例えば、インダニル、テトラヒドロナフチニルなどのような部分的に飽和した種類が挙げられる。
【0041】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましいのは、フッ素、塩素または臭素である。
【0042】
「環系置換基」とは、芳香族または非芳香族環系に結合した置換基を意味し、例えば、その環系上の利用可能な水素と置き換わる。環系置換基は、同じであっても異なってもよく、各々は、別個に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NH、−C(=NH)、−NH(アルキル)、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−、YNSO−および−SONYからなる群から選択され、ここで、YおよびYは、同じであっても異なってもよく、各々は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、およびアラルキルからなる群より独立して選択される。「環系置換基」はまた、環系の二つの隣接する炭素原子の二つの利用可能な水素(各炭素上の一つのH)を同時に置き換える、単一の部分も意味する。このような部分の例としては、例えば、このような部分:
【0043】
【化12】

を形成する、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、−C(CH−などが挙げられる。
【0044】
「ヘテロシクリル」は、約3個〜約10個の環原子、好ましくは約5個〜約10個の環原子を含む、非芳香族の飽和単環式環系または飽和多環式環系を意味し、ここで、この環系中の1つ以上の原子が、単独でかまたは組み合わせて、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素または硫黄)である。この環系中には、隣接する酸素原子および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5個〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリルの語根の前に付く接頭辞アザ、オキサまたはチアは、それぞれ、少なくとも一つの窒素原子、酸素原子または硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリル環の任意の−NHは、例えば、−N(Boc)基、−N(CBz)基、−N(Tos)基などのように保護されて存在し得る;このような保護はまた、本発明の一部と考えられる。ヘテロシクリルは、必要に応じて、一以上の「環系置換基」により置換され得、この置換基は、同一であっても異なってもよく、そして本明細書中に定義されるとおりである。ヘテロシクリルの窒素原子または硫黄原子は、必要に応じて、対応するN−酸化物、S−酸化物、もしくはS,S−二酸化物まで酸化され得る。適切な単環式のヘテロシクリル環の非限定的な例示としては、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクタム、ラクトンなどが挙げられる。
【0045】
本発明のヘテロ原子含有環系において、N、O、またはSに隣接する炭素原子上にヒドロキシル基はなく、そして別のヘテロ原子に隣接する炭素上にもN基、またはS基はないことが、注意されるべきである。このため、例えば、以下の環:
【0046】
【化13】

において、2および5と印を付けた炭素に対して直接結合した−OHは存在しない。
【0047】
互変異性形態(例えば、以下の部分:
【0048】
【化14】

など)は、本発明の特定の実施形態において、等価であるとみなされることもまた注意されるべきである。
【0049】
「アルキニルアルキル」とは、アルキニル−アルキル−基を意味し、ここで、アルキニルおよびアルキルは、先に記載したとおりである。好ましいアルキニルアルキルは、低級アルキニル基および低級アルキル基を含む。親部分への結合は、アルキルを介してである。適切なアルキニルアルキル基の非限定的な例としては、プロパルギルメチルが挙げられる。
【0050】
「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリール−アルキル−基を意味し、ここで、ヘテロアリールおよびアルキルは、先に記載したとおりである。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ピリジルメチルおよびキノリン−3−イルメチルが挙げられる。親部分への結合は、アルキルを介してである。
【0051】
「ヒドロキシアルキル」とは、HO−アルキル−基を意味し、ここで、アルキルは、先に記載したとおりである。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例としては、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0052】
「アシル」とは、H−C(O)−基、アルキル−C(O)−基、もしくはシクロアルキル−C(O)−基を意味し、ここで、種々の基は、先に記載したとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、およびプロパノイルが挙げられる。
【0053】
「アロイル」とは、アリール−C(O)−基を意味し、ここで、アリール基は、先に記載したとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。適切な基の非限定的な例としては、ベンゾイルおよび1−ナフトイルが挙げられる。
【0054】
「アルコキシ」とは、アルキル−O−基を意味し、ここで、アルキル基は、先に記載したとおりである。適切なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシおよびn−ブトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0055】
「アリールオキシ」とは、アリール−O−基を意味し、ここで、アリール基は、先に記載したとおりである。適切なアリールオキシ基の非限定的な例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0056】
「アラルキルオキシ」とは、アラルキル−O−基を意味し、ここで、アラルキル基は、先に記載したとおりである。適切なアラルキルオキシ基の非限定的な例としては、ベンジルオキシおよび1−ナフタレンメトキシもしくは2−ナフタレンメトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0057】
「アルキルチオ」とは、アルキル−S−基を意味し、ここで、アルキル基は、先に記載したとおりである。適切なアルキルチオ基の非限定的な例としては、メチルチオおよびエチルチオが挙げられる。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0058】
「アリールチオ」とは、アリール−S−基を意味し、ここで、アリール基は、先に記載したとおりである。適切なアリールチオ基の非限定的な例としては、フェニルチオおよびナフチルチオが挙げられる。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0059】
「アラルキルチオ」とは、アラルキル−S−基を意味し、ここで、アラルキル基は、先に記載したとおりである。適切なアラルキルチオ基の非限定的な例は、ベンジルチオである。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0060】
「アルコキシカルボニル」とは、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例としては、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられる。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0061】
「アリールオキシカルボニル」とは、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙げられる。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0062】
「アラルコキシカルボニル」とは、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0063】
「アルキルスルホニル」とは、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、そのアルキル基が低級アルキルである基である。親部分への結合は、スルホニルを介してである。
【0064】
「アリールスルホニル」とは、アリール−S(O)−基を意味する。親部分への結合は、スルホニルを介してである。
【0065】
用語「置換(置換された)」とは、存在する状況下で指定された原子の標準の原子価が限度を超えないように、そしてその置換が安定な化合物を生じるように、指定された原子上の1個以上の水素が、示された基から選択されたもので置換されていることを意味する。置換基および/もしくは可変部の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。「安定な化合物」もしくは「安定な構造」とは、反応混合物から有用な程度の純度への単離および有効な治療剤への処方に耐える十分に強い化合物を意味する。
【0066】
用語「必要に応じて置換された」とは、特定の基、ラジカル、もしくは部分による任意の置換を意味する。
【0067】
化合物に関する用語「単離された」または「単離された形態で」とは、合成プロセスもしくは天然供給源、またはそれらの組み合わせから単離された後の、その化合物の物理的状態を指す。化合物に関する用語「精製された」または「精製された形態の」とは、本明細書中で記載されるかもしくは当業者に周知である標準的な分析技術によって特徴付け可能な十分な純度で、本明細書中で記載されるかもしくは当業者に周知である精製プロセスから得られた後の、その化合物の物理的状態を指す。
【0068】
本明細書中の本文、スキーム、実施例および表における満たされていない原子価を有する任意のヘテロ原子が、水素原子を有してその原子価を満たすと仮定されることは、また注意されるべきである。
【0069】
化合物の官能基が、「保護された」と呼ばれる場合、これは、この基が改変形態であって、この化合物が反応に供される場合、保護された部位での所望されない副反応を排除することを意味する。適切な保護基は、当業者によって、かつ標準的な教科書(例えば、T.W.Greeneら、Protective Groups in organic Synthesis(1991),Wiley,New Yorkなど)を参照することによって、認識される。
【0070】
任意の構造体または式Iにおいて、任意の可変部(例えば、アリール、複素環、Rなど)が一回以上生じる場合、各出現におけるその定義は、他の全ての出現におけるその定義から独立している。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含有する生成物、および特定の成分の特定の量での組み合わせから直接的もしくは間接的に生じる任意の生成物を含むことを意図される。
【0072】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた、本明細書中で検討される。本明細書中で使用される場合、用語「プロドラッグ」とは、薬物前駆体である化合物を意味し、この化合物は、被験体への投与の際に、代謝プロセスもしくは化学的プロセスによって化学的変換を受け、式Iの化合物もしくはそれらの塩および/または溶媒和物をもたらす。プロドラッグについての議論は、T.HiguchiおよびV.Stella,Pro−drugs as Novel Delivery Systems(1987)14 of the A.C.S.Symposium Series、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design(1987)Edward B.Roche(編)American Pharmaceutical Association and Pergamon Press(この両方は、本明細書中で参考として援用される)によって提供される。
【0073】
「溶媒和物」とは、本発明の化合物と1つ以上の溶媒分子との物理的会合を意味する。この物理的会合は、イオン結合および共有結合(水素結合を含む)の変動の程度に関与する。特定の例において、溶媒和物は、例えば、一つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、単離し得る。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を含む。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート、メタノレートなどが挙げられる。「水和物」とは、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0074】
「有効量」もしくは「治療的有効量」とは、CDKを阻害するのに有効な、したがって、所望の治療効果、回復効果、阻害効果、および予防効果をもたらすのに有効な、本発明の化合物もしくは組成物の量を記載することを意味する。
【0075】
式Iの化合物は、塩を形成し得、これらの塩もまた本発明の範囲内である。本明細書中における式Iの化合物への参照が、他に指示されない限り、それらの塩への参照を含むことが理解される。本明細書中で使用される場合、用語「塩」とは、無機酸および/または有機酸とともに形成された酸性塩、ならびに無機塩基および/または有機塩基とともに形成された塩基性塩を意味する。さらに、式Iの化合物が塩基性部分(例えば、限定ではないが、ピリジンもしくはイミダゾール)および酸性部分(例えば、限定ではないが、カルボン酸)の両方を含む場合、両性イオン(「内部塩」)が形成され得、本明細書で使用される用語「塩」に含まれる。他の塩もまた有用であるが、薬学的に受容可能な(すなわち、無毒性の、生理学的に受容可能な)塩が好ましい。式Iの化合物の塩は、例えば、塩が沈殿するような媒体中での式Iの化合物と所定量(例えば、当量)の酸もしくは塩基との反応によって、または水性媒体中での式Iの化合物と所定量(例えば、当量)の酸もしくは塩基との反応およびその後の凍結乾燥によって、形成され得る。
【0076】
例示的な酸付加塩としては、アセテート、アスコルベート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ボレート、ブチレート、シトレート、カンフォレート、カンフォルスルホネート(camphorsulfonates)、フマレート、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ラクテート、マレエート、メタンスルホネート、ナフタレンスルホネート、ニトレート、オキサレート、ホスフェート、プロピオネート、サリチレート、スクシネート、サルフェート、タータレート、チオシアネート、トルエンスルホネート(トシレートとしても公知)などが挙げられる。さらに、塩基性薬学的化合物からの薬学的に有用な塩の形成のために適切であると一般に考えられる酸が、例えば、P.Stahlら、Camille G.(編)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties、Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley−VCH;S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1−19;P.Gould、International J.of Pharmaceutics(1986)33 201−217;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996)、Academic Press、New Yorkによって;およびThe Orange Book(Food&Drug Administration、Washington、D.C.、ウェブサイト上)において議論される。以上の開示は、本明細書中で参考として援用される。
【0077】
例示的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、リチウム塩、およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、有機アミン)(例えば、ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミン)を有する塩、およびアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)を有する塩などが挙げられる。塩基性窒素含有群は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、およびブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、ジアルキルスルフェート(例えば、ジメチル、ジエチル、およびジブチルスルフェート)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリル、およびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物)、アラルキルハライド(例えば、ベンジルブロミドおよびフェネチルブロミド)、などのような薬剤によって、四級化され得る。
【0078】
全てのこのような酸性塩および塩基性塩は、本発明の範囲内の薬学的に受容可能な塩であることを意図され、そして全ての酸性塩および塩基性塩は、本発明の目的のための対応する化合物の遊離形態と等価であると考えられる。
【0079】
式Iの化合物ならびにその塩、溶媒和物およびプロドラッグは、その互変異性体形態で(例えば、アミドまたはイミノエーテルとして)存在し得る。全てのこのような互変異性体形態は、本発明の一部として本明細書中で企図される。
【0080】
本発明の化合物(この化合物の塩、溶媒和物およびプロドラッグ、ならびにこのプロドラッグの塩および溶媒和物を含む)の全ての立体異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(例えば、種々の置換基上の不斉炭素に起因して存在し得るもの(エナンチオマー形態(これは、不斉炭素の非存在下でさえ存在し得る)、回転異性体形態、アトロプ異性体およびジアステレオマー形態を含む))は、本発明の範囲内であると企図され、位置異性体(例えば、4−ピリジルおよび3−ピリジル)である。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を実質的に含まないかもしれないか、または例えば、ラセミ化合物として混合され得るか、あるいは他の全ての立体異性体または他の選択された立体異性体と、混合され得る。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって規定されるような、S配置またはR配置を有し得る。用語「塩」、「溶媒和物」、「プロドラッグ」などの使用は、本発明の化合物のエナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、ラセミ化合物またはプロドラッグの塩、溶媒和物およびプロドラッグに対して等しく適用されることが意図される。
【0081】
本明細書中で使用する「ヌクレオシドおよびヌクレオチド逆転写酵素阻害剤」(「NRTI」)との用語は、ヌクレオシドおよびヌクレオチドおよびそれらのアナログであって、HIV−1逆転写酵素(ウイルス性ゲノムHIV−1 RNAのプロウイルス性HIV−1 DNAへの転化を触媒する酵素)の活性を阻害するものを意味する。
【0082】
代表的で適切なNRTI類には、ジドブジン(AZT)(これは、Glaxo−Wellcome Inc.,Research Triangle,NC 27709から、RETROVIRの商品名で入手できる);ジダノシン(ddl)(これは、Bristol−Myers Squibb Co.,Princeton,NJ 08543から、VIDEXの商品名で入手できる);ザルシタビン(zalcitabine(ddC))(これは、Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ 07110から、HIVIDの商品名で入手できる);スタブジン(stavudine(d4T))(これは、Bristol−Myers Squibb Co.,Princeton,NJ 08543から、ZERITの商品名で入手できる);ラミブジン(lamivudine(3TC))(これは、Glaxo−Wellcome Research Triangle,NC 27709から、EPIVIRの商品名で入手できる);アバカビル(abacavir(1592U89))(これは、WO96/30025で開示されており、そしてGlaxo−Wellcome Research Triangle,NC 27709から、ZIAGENの商品名で入手できる);アデホビルジピポキシル(adefovir dipivoxil)[ビス(POM)−PMEA](これは、Gilead Sciences,Foster City,CA 94404から、PREVONの商品名で入手できる);ロブカビル(lobucavir)(BMS−180194)(これは、Bristol−Myers Squibb,Princeton,NJ 08543が開発中でありEP−0358154およびEP−0736533で開示されたヌクレオシド逆転写酵素阻害剤である);BCH−10652(これは、Biochem Pharma,Laval,Quebec H7V,4A7,Canadaが開発中の逆転写酵素阻害剤であり、BCH−10618およびBCH−10619のラセミ混合物の形状である);エミトリシタビン(emitricitabine)[(−)−FTC](これは、Emory Univ.の米国特許第5,814,639号に基づいて、Emory Universityからライセンス提供され、そしてTriangle Pharmaceuticals,Durham,NC 27707が開発中である);β−L−FD4(これはまた、β−L−D4Cと呼ばれ、そしてβ−L−2’,3’−ジデオキシ−5−フルオロシチジンと命名されており、Yale UniversityからVion Pharmaceuticals,New Haven CT 06511にライセンス提供された);DAPD(これは、プリンヌクレオシドである(−)−β−D−2,6−ジアミノプリンジオキソランであり、EP 0656778で開示されており、そしてEmory Universityおよびthe University of GeorgiaからTriangle Pharmaceuticals,Durham,NC 27707にライセンス提供された);およびロデノシン(lodenosine)(FddA)、(これは、酸安定性プリンベース逆転写酵素阻害剤である9−(2,3−ジデオキシ−2−フルオロ−b−D−スレオペントフラノシル)アデニンであり、NIHにより発見され、そしてU.S.Bioscience Inc.,West Conshohoken,PA.19428が開発した)が挙げられる。
【0083】
本明細書中で使用する「非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤」(「NNRTI」類)との用語は、HIV−1逆転写酵素の活性を阻害する非ヌクレオシドを意味する。
【0084】
代表的で適切なNNRTIには、ネビラピン(nevirapine)(BI−RG−587)(これは、Boehringer Ingelheim(Roxane Laboratories,Columbus,OH 43216の業者)から、VIRAMUNEの商品名で入手できる);デラビラジン(BHAP、U−90152)(これは、Pharmacia & Upjohn Co.,Bridgewater NJ08807からRESCRIPTORの商品名で入手できる);エファビレンツ(efavirenz)(DMP−266)(これは、WO94/03440で開示されたベンゾキサジン−2−オンであり、そしてDupont Pharmaceutical Co.,Wilmington,DE 19880−0723から、SUSTIVAの商品名で入手できる);PNU−142721、フロピリジンチオピリミド(これは、Pharmacia and Upjohn,Bridgewater NJ 08807が開発中である);AG−1549(以前は、Shionogi#S−1153である);5−(3,5−ジクロロフェニル)−チオ−4−イソプロピル−1−(4−ピリジル)メチル−1H−イミダゾール−2−イルメチルカーボネート(これは、WO96/10019で開示されており、そしてAgouron Pharmaceuticals,Inc.,LaJolla CA 92037−1020が臨床開発中である);MKC−442 1−(エトキシメチル)−5−(1−メチルエチル)−6−(フェニルメチル)−(2,4−(1H,3H)−ピリミジンジオン)(これは、三菱化学社が発見し、そしてTriangle Pharmaceuticals,Durham,NC 27707が開発中である);および(+)−カラノリド(calanolide)A(NSC−675451)およびBクマリン誘導体(これは、NIHの米国特許第5,489,697号で開示されており、そしてMed Chem Researchにライセンス提供されたが、この会社は、経口投与製品として、Vita−Investと共に、(+)カラノリドAを共同開発している)が挙げられる。
【0085】
本明細書中で使用する「プロテアーゼ阻害剤(「PI」)」とは、HIV−1プロテアーゼ(すなわち、ウイルス性ポリタンパク質前駆体(例えば、ウイルス性GAGおよびGAG Polポリタンパク質)をタンパク質分解性開裂して感染性HIV−1で見られる個々の機能性タンパク質にするために必要とされる酵素)の阻害剤を意味する。HIVプロテアーゼ阻害剤としては、ペプチド模倣(peptidomimetic)構造、高分子量(7600ダルトン)および実質的なペプチド特性を有する化合物(例えば、CRIXIVAN(これは、Merckから入手できる))ならびに非ペプチド性プロテアーゼ阻害剤(例えば、VIRACEPT(これは、Agouronから入手できる))が挙げられる。
【0086】
代表的で適切なPIには、サキナビル(Ro31−8959)(これは、Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ 07110−1199から、INVIRASEの商品名で硬質ゲルカプセルとして入手でき、また、FORTOVASEの商品名で軟質ゲルカプセルとして入手できる);リトナビル(ritonavir)(ABT−538)(これは、Abbott Laboratories,Abbott Park,IL 60064から、NORVIRの商品名で入手できる);インジナビル(indinavir)(MK−639)(これは、Merck & Co.,Inc.,West Point,PA 19486−0004から、CRIXIVANの商品名で入手できる);ネルフナビル(nelfnavir)(AG−1343)(これは、Agouron Pharmaceuticals,Inc.,LaJolla,CA 92037−1020から、VIRACEPTの商品名で入手できる);アンプレナビル(amprenavir)(141W94)(これは、非ペプチドプロテアーゼ阻害剤であり、AGENERASEの商品名で、Vertex Pharmaceuticals,Inc.,Cambridge,MA 02139−4211が開発中であり、そして拡張アクセスプログラムの下で、Glaxo−Wellcome,Research Triangle,NCから入手できる);ラジナビル(lasinavir)(BMS−234475)(これは、Bristol−Myers Squibb,Princeton,NJ 08543から入手できる(最初は、Novartis,Basel,Switzerland(CGP−61755)が発見した));DMP−450(Dupontが発見した環状尿素であり、これは、Triangle Pharmaceuticalsが開発中である);BMS−2322623,(これは、Bristol−Myers Squibb,Princeton,NJ 08543が第二世代HIV−1 PIとして開発中であるアザペプチド(azapeptide)である);ABT−378(これは、Abbott,Abbott Park,IL 60064が開発中である);およびAG−1549(これは、塩野義が発見し(Shionogi#S−1153)、そしてAgouron Pharmaceuticals,Inc.,LaJolla CA 92037−1020が開発中である経口活性イミダゾールカーバメートである)が挙げられる。
【0087】
他の抗ウイルス薬としては、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド(pentafuside)およびYissum Project No.11607が挙げられる。ヒドロキシ尿素(Droxia)は、リボヌクレオチド三リン酸還元酵素阻害剤であり、その酵素は、T細胞の活性化に関与しており、NCIで発見され、Bristol−Myers Squibbが開発中である;前臨床研究では、それは、ジダノシンの活性に対する相乗効果を有することが明らかとなり、また、スタブジンと共に研究されている。IL−2は、AjinomotoのEP−0142268,TakedaのEP−0176299およびChironの米国特許第RE第33653号、同第4530787号、同第4569790号、同第4604377号、同第4748234号、同第4752585号および同第4949314号で開示されており、水で再構成し希釈してIV注入またはsc投与するための凍結乾燥粉末として、Chiron Corp.,Emeryville,CA 94608−2997から、PROLEUKIN(アルデスロイキン(aldesleukin))の商品名で入手できる;約百万〜約2千万IU/日の用量でのscが好ましい;約1千5百万IU/日の用量でのscは、さらに好ましい。IL−12は、WO96/25171で開示されており、Roche Pharmaceuticals,Nutley,NJ 07110−1199およびAmerican Home Products,Madison,NJ 07940から入手できる;scで、約0.5μg/kg/日〜約10μg/kg/日の用量が好ましい。ペンタフシド(DP−178、T−20)は、36アミノ酸の合成ペプチドであり、米国特許第5,464,933号で開示されており、Duke UniversityからTrimeris(Duke Universityと協力してペンタフルシドを開発中である)にライセンス提供された;ペンタフシドは、標的膜へのHIV−1の融合を阻害することにより、作用する。ペンタフシド(3〜100mg/日)は、3剤併用療法に不応性のHIV−1陽性患者に対して、連続sc注入として、またはエファビレンツおよび2PIと一緒の注射として、与えられる;100mg/日で使用するのが好ましい。Yissum Project No.11607は、Yissum Research Development Co.,Jerusalem 91042,Israelが前臨床開発中のHIV−1 Vifタンパク質に基づいた合成タンパク質である。リバビリン、1−β−D−リボフラノシル−1H−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキサミド(これは、ICN Pharmaceuticals,Inc.,Costa Mesa,CAから入手できる);その製造および処方は、米国特許第4,211,771号で記載されている。
【0088】
本明細書中で使用する「抗HIV−1療法」との用語は、ヒトにおいて、単独で、または多剤併用療法(特に、HAARTと呼ばれる3剤および4剤併用療法)の一部として、HIV−1感染を処置するのに有用であることが分かっている任意の抗HIV−1薬剤を意味する。代表的で適切な公知の抗HIV−1療法には、多剤併用療法(例えば、(i)2剤のNRTI、1剤のPI、第2PIおよび1剤のNNRTIから選択された少なくとも3剤の抗HIV−1薬剤;ならびに(ii)NNRTIおよびPIから選択された少なくとも2剤の抗HIV−1薬剤)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的で適切なHAART−多剤併用療法としては、以下が挙げられる:
(a)3剤併用療法(例えば、2剤のNRTIおよび1剤のPI);または(b)2剤のNRTIおよび1剤のNNRTI;および(c)4剤併用療法(例えば、2剤のNRTI、1剤のPIおよび第2PIまたは1剤のNNRTI)が挙げられる。処置未経験患者では、3剤併用療法で抗HIV−1治療を開始するのが好ましい;2剤のNRTIおよび1剤のPIの使用は、PIに対する耐性がないなら、好ましい。薬物のコンプライアンスが必須である。そのCD4およびHIV−1−RNA血漿レベルは、3〜6ヶ月ごとにモニターすべきである。ウイルスの負荷がプラトーになるなら、第四の薬剤(例えば、1剤のPIまたは1剤のNNRTI)を添加できる。以下の表(ここでは、代表的な療法がさらに記載されている)を参照:
(抗HIV−1多剤併用療法)
(A.3剤併用療法)
1.2剤のNRTI+1剤のPI
2.2剤のNRTI+1剤のNNRTI
(B.4剤併用療法
2剤のNRTI+1剤のPI+第2PIまたは1剤のNNRTI
(C.代替療法
2剤のNTRI
1剤のNTRI+1剤のPI
2剤のPI±1剤のNRTIまたはNNRTI
1剤のPI+1剤のNRTI+1剤のNNRTI
(表の脚注)
1.以下の1剤:ジドブジン+ラミブジン;ジドブジン+ジダノシン;スタブジン+ラミブジン;スタブジン+ジダノシン;ジドブジン+ザルシタビン。
2.インジナビル、ネルフィナビル(nelfinavir)、リトナビルまたはサキナビルの軟質ゲルカプセル。
3.ネビラピンまたはデラビルジン(delavirdine)。
4.A−M.VandamneらのAntiviral Chemistry&Chemotherapy 9:187、193〜197ページおよび図1+2を参照。
5.代替レジメンは、従順性に問題があったり毒性のために推奨レジメンを服用できない患者、および推奨レジメンが失敗したり再発する患者のためにある。2つのヌクレオシド組み合わせにすると、多数の患者において、HIV耐性が生じたり、臨床的に失敗したりすることがある。
6.サキナビルおよびリトナビル(各400mg片)を使って、殆どのデータが得られた。
7.ジドブジン、スタブジンまたはジダノシン。
【0089】
本発明の化合物の特定の例としては、式Iの化合物であって、nが0であり、tが2であり、sが1であり、R、RおよびRが水素であり、RおよびRがメチルであり、R
【0090】
【化15】

であり、XがCHであり、ZがNであり、ならびにRおよびRが表1に記載されるとおりである化合物が挙げられる:
【0091】
【化16−1】

【0092】
【化16−2】

上記表1からの例示の化合物を以下の表1Aに示す:
【0093】
【化17−1】

【0094】
【化17−2】

本発明で記載した化合物から薬学的組成物を調製するためには、不活性で薬学的に受容可能なキャリアは、固体または液体のいずれかであり得る。固体形状の調製物としては、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシュ剤および座剤が挙げられる。これらの散剤および錠剤は、約5%〜約95%の活性成分から構成され得る。適切な固体キャリアは、当該技術分野で公知であり、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ショ糖またはラクトースがある。錠剤、散剤、カシュ剤およびカプセルは、経口投与に適当な固形投薬形態として、使用できる。薬学的に受容可能なキャリアおよび種々の組成物の製造方法の例は、A.Gennaro(編),Remington’s Pharmaceutical Sciences,18版、(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvaniaで見られ得る。
【0095】
液体形状調製物には、溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。一例として、非経口注射用の水もしくは水−プロピレングリコール溶液または経口溶液、経口懸濁液および経口乳濁液用の甘味料および乳白剤の添加が挙げられるが、これらに限定されない。液体形状調製物はまた、経鼻投与用の溶液も含み得る。
【0096】
吸入に適切なエアロゾル調製物には、溶液および粉末形状固形物が挙げられ得、これらは、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、不活性圧縮気体(例えば、窒素))と組合せ得る。
【0097】
また、固体形状調製物も含まれ、これらは、使用直前に、経口投与または非経口投与のいずれかのための液体形状調製物に転化することが意図されている。このような液体形状としては、溶液、懸濁液および乳濁液が挙げられる。
【0098】
本発明の化合物はまた、経皮的に送達可能でもあり得る。これらの経皮組成物は、クリーム、ローション、エアロゾルおよび/または乳濁液の形態をとることができ、また、この目的で当該分野で通例のマトリックス型またはレザバ型の経皮パッチに含有できる。
【0099】
本発明の化合物はまた、皮下送達可能であり得る。
【0100】
好ましくは、本発明の化合物は、経口投与される。
【0101】
好ましくは、この製薬調製物は、単位投薬形態である。このような形状では、この調製物は、適当な大きさの単位用量(これは、治療有効量の式Iの化合物を含有する)に細分される。
【0102】
単位用量の調製物中での活性化合物の量は、特定の用途に従って、約10mg〜約500mg、好ましくは、約25mg〜約300mg、さらに好ましくは、約50mg〜約250mg、最も好ましくは、約55mg〜約200mgで、変えられ得るかまたは調節され得る。
【0103】
使用する本発明の化合物の実際の投薬量は、患者の要件および処置する状態の重症度に依存して、変えられ得る。特定の状況に適切な投薬レジメンの決定は、当該技術の範囲内である。便宜上、1日の投薬量全体は、必要な日にわたって、分割して少しずつ投与され得る。
【0104】
本発明の化合物および/またはそれらの薬学的に受容可能な塩を投与する量および頻度は、患者の年齢、状態および体格ならびに処置する症状の重症度のような因子を考慮して、担当医の判断に従って、調節される。経口投与に代表的な推奨1日投薬レジメンは、2回〜4回に分割した用量で、約100mg/日〜約300mg/日の範囲、好ましくは、約150mg/日〜約250mg/日の範囲、さらに好ましくは、約200mg/日であり得る。
【0105】
本発明の化合物と併用されるNRTI、NNRTI、PIおよび他の薬剤の用量および投薬レジメンは、患者の年齢、性別および状態ならびに治療する状態の重症度を考慮して、添付文書にある認可用量および投薬レジメンの観点から、またはそのプロトコルで述べられているように、担当医により決定される。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、そのような処置が必要な患者に、好ましくは、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、式Iを有する一つ以上の化合物の治療有効量を投与することにより、ヒト免疫不全ウイルスを処置するために使用できる。本発明の化合物と組み合わせて、抗HIV−1療法で有用な一つ以上(好ましくは、1〜4剤)の抗ウイルス薬が使用できる。この抗ウイルス薬は、単一の投薬形態で、一つ以上の本発明の化合物と配合し得るか、または本発明の一つ以上の化合物および抗ウイルス薬は、分離投薬形態として、同時もしくは順次に投与され得る。
【0107】
本発明の化合物と併用することが考慮される抗ウイルス薬としては、ヌクレオシドおよびヌクレオチド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアアーゼ阻害剤およびこれらの分類に入らない以下で挙げる他の抗ウイルス薬が挙げられる。抗ウイルス薬の具体的な例としては、ジドブジン、ラミブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、アバカビル、アデフォビル、ジピボキシル、ロブカビル、BCH−10652、エミトリシタビン、β−L−FD4、DAPD、ロデノシン、ネビラピン、デラビリジン、エファビレンツ、PNU−142721、AG−1549、MKC−442、(+)−カラノリドAおよびB、サキナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、ラシナビル、DMP−450、BMS−2322623、ABT−378、アンプレナビル、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド、Yissum No.11607およびAG−1549が挙げられるが、これらに限定されない。特に、HAARTとして公知の配合は、本発明の化合物と併用することが考慮される。
【0108】
1剤より多い活性剤との併用療法(この場合、これらの活性剤は、別々の投薬処方物中にある)について、これらの活性剤は、別々にまたは組み合わせて投与され得る。さらに、1要素の投与は、他の薬剤の投与の前、同時または後になされ得る。
【0109】
本発明の他の局面は、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、アレルギーまたは多発性硬化症を処置する方法を提供し、該方法は、このような治療が必要な患者に、好ましくは、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、治療有効量の式Iの一つ以上の化合物を投与する工程を包含する。別の実施形態では、固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または多発性硬化症を処置するための方法は、式Iの一つ以上の化合物と組み合わせて、該疾患の処置に有用な一つ以上の他の薬剤を投与する工程を、さらに包含する。
【0110】
関節リウマチ、移植および移植片対宿主病、炎症性腸疾患および多発性硬化症の処置において公知の薬剤であって本発明の化合物と組合せて投与し得る薬剤としては、以下が挙げられる:
固形臓器移植拒絶および移植片対宿主病:免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンおよびインターロイキン−10(IL−10)、タクロリムス、抗リンパ球グロブリン、OKT−3抗体およびステロイド);
炎症性腸疾患:IL−10(米国特許第5,368,854号を参照)、ステロイドおよびアズルフィジン;
関節リウマチ:メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、ステロイドおよびミコフェノール酸モフェチル;
多発性硬化症:インターフェロンβ、インターフェロンαおよびステロイド。
【0111】
本発明の別の局面は、別個の容器にヒト免疫不全ウイルスを処置するために併用するための単一パッケージ薬学的組成物を含むキットに関する。一方の容器では、薬学的組成物は、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に一つ以上の式Iの化合物を含有し、そして別の容器では、一つ以上の薬学的組成物は、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中に、ヒト免疫不全ウイルスの処置において有用な一つ以上の抗ウイルス薬もしくは他の薬剤の有効量を含有する。
【0112】
本発明のHIV−1療法の目標は、HIV−1−RNAウイルスの負荷を検出可能限界未満に低減することにある。本発明の文脈における「HIV−1−RNAの検出可能限界」とは、定量的な多サイクル逆転写酵素PCR手順で測定したとき、患者の血漿1mlあたり、約200未満から約50未満のコピー数のHIV−1−RNAが存在することを意味する。HIV−1−RNAは、好ましくは、本発明では、Amplicor−1 Monitor 1.5(これは、Roche Diagnsoticsから入手できる)またはNuclisens HIV−1 QT−1の手順により、測定される。
【0113】
本発明において有用な化合物の合成は、以下の調製実施例により例示されるが、これらの実施例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の範囲内の代替的な機構経路および類似の構造は、当業者に明らかであり得る。
【実施例】
【0114】
以下の用語は、括弧内のそれらの省略によって称され得る。
パラメトキシベンジル(PMB);
ジクロロエタン(EDCL);
p−トルエンスルホン酸(PTSA);
薄層クロマトグラフィー(TLC);
酢酸エチル(AcOEtもしくはEtOAc);
三酢酸ホウ水素化ナトリウム(NaBH(OAc));
ジ−t−ブチルカルボネート(BOCO);
N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(iPrNEt);
トリエチルアミン(EtNもしくはTEA);
ブトキシカルボニル(n−BocもしくはBoc);
テトラヒドロフラン(THF);
核磁気共鳴分光器(H NMR);
液体クロマトグラフィー−質量分析(LCMS);
高分解能質量分析(HRMS);
ヘキサン(hex);
ミリリットル(mL);
ミリモル(mmol);
マイクロリットル(μl);
グラム(g);
ミリグラム(mg);
約25℃の室温(周辺温度)(rt)。
【0115】
【化18】

(工程1)
CHCl(150mL)中のアミン1(9.50g、47.4mmol)の溶液に、ベンズアルデヒド(6.04g、56.9mmol)および三酢酸ホウ水素化ナトリウム(12.1g、56.9mmol)を添加した。次にこの混合物を室温で16時間攪拌した。この混合物を、CHClで希釈し、1N NaOH水溶液を添加し、そして結果として生じた混合物を、室温で30分間攪拌した。次にこの水層を(3×)CHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮して黄色油状物質として13.8gの2を得た。
【0116】
(工程2)
MeOH(120ml)中の2(13.8g)の溶液に、4N HCl(ジオキサン中)(40mL)を添加した。この溶液を室温で4時間攪拌した。この溶液を濃縮し、そして粗生成物を1N HClとEtOとの間で分配した。この水層を(2×)EtOで抽出し、そして有機層を除去した。この水層を3N NaOHでpH10に調整した。次にこの水層を(4×)CHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮して透明な液体として8.75gの3を得た(収率96%)。
【0117】
(工程3)
トルエン(100mL)中のアミン3(8.75g、46mmol)の溶液に、Boc−ピペリドン4(9.2g、46mmol)およびp−トルエンスルホン酸(44mg、0.23mmol)を添加した。この溶液を連結されたDean−Starkトラップを用いて還流するために加熱した。この溶液を6時間還流しながら攪拌した。この溶液を濃縮し元の体積の約1/2にした。アセトンシアノヒドリン(4.5g、52.9mmol)を添加し、そしてこの溶液を加熱して1時間還流した。次にこの溶液を冷却して0℃にした。この溶液に、THF(125mL)を添加し、続いてメチルマグネシウムブロミド(EtO中の3M溶液)(77mL、230mmol)をゆっくり添加した。結果として生じた溶液を0℃で1時間攪拌し、室温でさらに16時間攪拌を続けた。この混合物を氷および25%クエン酸ナトリウム溶液の混合物中に注ぎ、そして室温で30分間攪拌した。この水層を(3×)EtOAcで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(2:1 ヘキサン:EtOAc)により精製して透明の油状物質として6(15.1g)を得た(収率85%)。
【0118】
(工程4)
圧力容器中のMeOH(100mL)中のアミン6(6.8g、17.5mmol)の窒素脱気された溶液に、水酸化パラジウム炭素(20重量%Pd)(1.22g、0.90mmol)を添加した。この容器を密封し、窒素でパージし、そして水素で60psiに加圧して3.5日間、室温で攪拌した。この溶液を、窒素でパージし、Celiteを通して濾過し、そして濃縮してオフホワイトの固体として7(5.2g)を得た(収率100%)。
【0119】
(工程5)
CHCl(300mL)中のアミノアルコール8(10g、87mmol)の溶液に、p−アニスアルデヒド(14.2g、104mmol)および三酢酸ホウ水素化ナトリウム(22g、104mmol)を添加し、そして室温で16時間攪拌した。この混合物をCHClで希釈した。有機層を(2×)1N NaOHで洗浄した。次にこの有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。この粗生成物を3N HClとEtOとの間で分配した。この水層を(2×)EtOにより抽出し、そして有機層を除去した。この水層を、3N NaOHを用いてpH10に調整した。次にこの水層を(4×)EtOAcにより抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮して9(18.5g)を得た。
【0120】
(工程6)
−78℃のCHCl(200mL)中のDMSO(7.98g、102mmol)の溶液に、オキサリルクロリド(13.0g、102mmol)を添加した。結果として生じた溶液を、−78℃で30分間攪拌した。次にCHCl(50mL)中のアルコール9(18.5g、78.7mmol)を酸化剤溶液に添加した。結果として生じた溶液を−78℃で1時間攪拌した。トリエチルアミン(23.8g、236mmol)を溶液に添加し、そして結果として生じた溶液を−78℃で30分間攪拌し、続いて室温でさらに1時間攪拌した。この溶液を1N NaOH中に注ぎ、そして(3×)CHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮して黄色油状物質として10(18g)を得た。
【0121】
(工程7)
ベンゼン(100mL)中のアルデヒド9(3.07g、13.2mmol)の溶液に、アミン7(3.91g、13.2mmol)を添加し、続いてベンゾトリアゾール11(1.57g、13.2mmol)を添加した。この溶液を加熱して連結されたDean−Starkトラップを用いて7時間還流した。この溶液を濃縮して褐色泡状物質として12(8.3g)を得た。
【0122】
(工程8)
THF(100mL)中の12(3.93g、6.2mmol)の溶液に、フェニルマグネシウムクロライド(25mmol)を添加した。この溶液を室温で6時間攪拌した。この溶液を25%クエン酸ナトリウム溶液中に注ぎ、そして(3×)EtOAcにより抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。この粗生成物を分取TLCにより精製して700mgの構造異性体♯1(TLCで、より高いRf値)および800mgの構造異性体♯2(TLCで、より低いRf値)を得た。
【0123】
(工程9)
MeOH(10mL)中の13の構造異性体♯1(175mg、0.03mmol)の溶液に、4M HCl(ジオキサン中)を添加した。室温で3時間攪拌した。この溶液を濃縮し、そしてこの粗生成物をCHClとNaHCOとの間で分配した。水層を(3×)CHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。このアミンをMeCN(2mL)中に溶解した。ピリミジン酸(69mg、0.45mmol)、EDCl(87mg、0.45mmol)、HOBt(61mg、0.045mmol)、およびiPrNEt(194mg、1.50mmol)を添加した。この溶液を室温で2日間攪拌した。次にこの溶液を濃縮した。この粗生成物をEtOAcと1M NaOHとの間で分配した。水層を(3×)EtOAcにより抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。この粗生成物を分取TLC(97:3 EtOAc:EtN)により精製し、黄色油状物質として50mg(収率27%)を得た。
【0124】
(工程10)
0℃のCHCl(20mL)中のPMBアミン14(50mg、0.08mmol)の溶液に、1−クロロエチルクロロホルメート(15mg、0.10mmol)を添加した。この溶液を0℃で1時間攪拌した。この溶液を濃縮し、そして生成物をMeOH(10mL)中に再び溶解した。この溶液を加熱して45分間還流した。次にこの溶液を濃縮した。この粗生成物をCHClとNaHCOとの間で分配した。水層を(3×)CHClで抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮して黄色油状物質としてアミン15(41mg)を得た。
【0125】
(工程11)
CHCl(1mL)中のアミン15(40mg)の溶液に、EtN(12mg、0.12mmol)およびシクロプロピルスルホニルクロリド(13mg、0.10mmol)を添加した。この溶液を室温で16時間攪拌した。CHClにより希釈した。NaHCO水溶液を添加した。水層を(3×)CHClにより抽出した。合わせた有機層をNaSOにより乾燥させ、濾過し、そして濃縮した。この粗生成物を分取TLC(5%MeOH/CHCl)により精製し、黄色油状物質としてスルホンアミド16(15mg、収率31%)を得た。
【0126】
本発明の他の化合物(例えば、表1および表1Aに列挙される化合物)もまた、種々の適切な出発物質から、同様の方法により調製される。
【0127】
以下のアッセイは、本発明の化合物のCCR5阻害活性およびアンタゴニスト活性を決定するために使用され得る。
【0128】
(CCR5膜結合アッセイ)
CCR5膜結合アッセイを利用するハイスループットスクリーンは、RANTES結合の阻害剤を同定する。このアッセイは、ヒトCCR5ケモカインレセプターを発現するNIH 3T3細胞(これは、このレセプター用の天然リガンドであるRANTESに結合する能力がある)から調製した膜を利用する。96ウェルのプレートフォーマットを使用して、1時間にわたって、化合物の存在下または非存在下で、膜調製物を125I−RANTESと共にインキュベートする。0.001μg/ml〜1μg/mlの広範囲にわたって、化合物を連続希釈し、そして3回試験する。ガラス繊維フィルターによって、反応混液を収集し、そして十分に洗浄する。複製物の総数を平均し、全125I−RANTES結合の50%を阻害するのに必要な濃度としてデータ報告する。この膜結合アッセイにおいて強力な活性を備えた化合物を、第二の細胞ベースのHIV−1エントリーアッセイおよびHIV−1複製アッセイでさらに特徴付ける。
【0129】
(HIV−1エントリーアッセイ)
Connorら、Virology,206(1995),p.935〜944で記載されているように、数個のHIV−1エンベロープ遺伝子のうちの1個をコードするプラスミドと共に、HIV−1のNL4−3株をコードするプラスミド(これは、そのエンベロープ遺伝子の突然変異およびルシフェラーゼレポータープラスミドの導入により、改変されている)の同時トランスフェクションにより、複製欠陥HIV−1レポータービリオンを発生させる。リン酸カルシウム沈殿により2個のプラスミドをトランスフェクトすることに続いて、これらのウイルス上澄み液を3日目に収集し、機能的なウイルス力価を決定する。これらのストックを用いて、次いで、CD4およびケモカインレセプターCCR5を安定に発現するU87細胞(これらは、試験化合物と共にまたは試験化合物なしで、予めインキュベートされている)を感染させる。感染は、37℃で、2時間実行し、それらの細胞を洗浄し、化合物を含有する新しい培地と培地交換する。これらの細胞を3日間インキュベートし、溶解し、そしてルシフェラーゼ活性を決定する。結果は、コントロール培養物中のルシフェラーゼ活性の50%を阻害するのに必要な化合物の濃度として、報告する。
【0130】
(HIV−1複製アッセイ)
このアッセイは、抗CCR5化合物の初代HIV−1株の感染を阻止する効果を決定するために、初代末梢血液単核細胞もしくは安定なU87−CCR5細胞株を使用する。これらの初代リンパ球を正常で健康なドナーから精製し、そして感染の3日前に、インビトロで、PHAおよびIL−2で刺激する。96ウェルプレートフォーマットを使用して、37℃で1時間、細胞を薬物で前処理し、引き続いて、MトロピックHIV−1単離体に感染させる。感染に続いて、これらの細胞を洗浄して、残った接種材料を除去し、そして化合物の存在下にて、4日間培養する。培養物の上澄み液を収集し、そしてウイルスp24抗原濃度の決定により、ウイルス複製を測定する。
【0131】
(カルシウム流出アッセイ)
HIVコレセプターCCR5を発現する細胞に、化合物または天然CCR5リガンドの添加前に、カルシウム感受性染料を負荷する。アゴニスト特性を備えた化合物は、細胞中にて、カルシウム流出信号を誘発するのに対して、本発明の化合物は、それ自体では情報伝達を誘発しないが天然リガンドRANTESによる情報伝達を阻止できる化合物として、同定されている。
【0132】
(GTPγS結合アッセイ(二次膜結合アッセイ))
GTPγS結合アッセイは、CCR5リガンドによるレセプター活性化を測定する。このアッセイは、35S標識GTPのレセプター共役Gタンパク質への結合(これは、適当なリガンドによるレセプター活性化の結果として起こる)を測定する。このアッセイでは、CCR5リガンドであるRANTESは、CCR5発現細胞由来の膜と共にインキュベートされ、そしてレセプターへの結合活性化(もしくは結合)は、結合35S標識に対するアッセイにより決定する。このアッセイは、化合物がレセプターの活性化を誘発することによりアゴニスト特性を示すかどうか、あるいは、代替的に、競合または非競合様式のRANTES結合の阻害を測定することによりアンタゴニスト特性を示すかどうかを定量的に決定する。
【0133】
(走化性アッセイ)
この走化性アッセイは、試験化合物のアゴニスト特性対アンタゴニスト特性を特徴付ける機能アッセイである。このアッセイは、ヒトCCR5(BaF−550)を発現する非接着性マウス細胞株の、試験化合物または天然リガンド(すなわち、RANTES、MIP−1β)のいずれかに応答して膜を横切って移動する能力を測定する。細胞は、浸透性膜を横切って、アゴニスト活性を備えた化合物に向かう。アンタゴニストである化合物は、走化性を誘発できないうえに、公知のCCR5リガンドに応答した細胞移動を阻害できる。
【0134】
(ルシフェラーゼ複製アッセイ)
gp 120 V−3ループがHIV−1 ADA、YU−2またはHxBのBgl II断片(ADA−Luc−FL、YU−2−Luc−FLおよびHxB−Luc−FL)で置き換えられたHIV−1 pNL−4−Lucの全長ゲノムをコードするプラスミドは、Dr.Susan Pontow(Washington University,St.Louis MO)から得られる。Superfect(Qiagen)またはMirusトランスフェクション試薬を使用して、プラスミドを293T細胞にトランスフェクションすることにより、複製能力があるルシフェラーゼレポータウイルスストックを作成する。トランスフェクションの48時間後、ウイルスストックを集め、そしてU−87−CCR5またはCXCR4細胞におけるルシフェラーゼ産生について、滴定する。U87−CD4−CCR5細胞(10/ウェル)を96ウェル細胞培養プレートにプレートし、そして一晩インキュベートする。培地を除去し、そして50μlの新しい培養培地(DMEM、10%FCS)および培養培地で希釈した50μlの化合物で置き換える。細胞を、化合物と共に、37℃で、1時間インキュベートする。得られた上澄み液を除去し、そして20μlの培地(これは、化合物を含有する)で置き換え、そして37℃で、3〜4時間にわたって、等量の希釈または非希釈ウイルスストックに感染させる。これらの細胞をDMEMで1回洗浄し、そして化合物を含有する培地200μlを加える。これらの培養物を3日間インキュベートし、それらの細胞をルシフェラーゼ溶解緩衝液(Promega,Madison,WI)で溶解し、そしてImmulonプレート(Dynex Technologies,Chantilly VA)に移す。溶解物に、等量のルシフェラーゼ基質(Promega,Madison WI)を加え、それらのプレートを、直ちに、Wallac Luminometerで読む。GraphPad PRISMソフトウェアを使用して、50%および90%の阻害濃度を決定する。
【0135】
【化19−1】

【0136】
【化19−2】

【0137】
【化19−3】

【0138】
【化19−4】

本発明は上記に記載の特定の実施形態と組み合わせて記載されているが、その多くの代替、改変および変更が当業者に明らかである。このような代替、改変および変更の全ては、本発明の意図および範囲内であると解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式Iにより示される化合物:
【化1】

またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物であって;ここで:
nは、0、1、2、3もしくは4であり;
sは、0、1、2、3もしくは4であり;
tは、1、2、3もしくは4であり、ただし、
i)nが0であり、かつsが2である場合、tは1、3もしくは4である;そして
ii)nが0であり、かつtが2である場合、sは0、1、3もしくは4である;
XおよびZは、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してNもしくはCHであり;
はH,アルキル、アラルキル、−S(O)アルキル、−S(O)アリール、−C(O)アルキル、−C(O)アリール、−アルキル−アリール−R、−アルキル−ヘテロアリール−R、−S(O)シクロアルキル、−S(O)−アリール−R、−C(O)シクロアルキル、−C(O)−アリール−R、−C(O)NR2021もしくは−S(O)NR2021であり;
、R、R、RおよびRは同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してHもしくはアルキルであり;
はH、シクロアルキル、アラルキル、ヘテロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであり;
またはRおよびRは、一緒になって=N(O−アルキル)、=N(OH)、=N−N(R2021)もしくは=CH(アルキル)であって、ただし、XおよびZの一方もしくは両方がNである場合、RおよびRは、一緒になって=CH(アルキル)ではなく;
はアリール、ヘテロアリール、フルオレニル;およびジフェニルメチル、ヘテロアリール−N−酸化物、
【化2】

であり、ここで、各R10は、同じであっても異なっていてもよく、独立して−CHもしくはハロゲンから選択され、Yは、NもしくはN(→O)であって、該アリール、フルオレニル、ジフェニルおよびヘテロアリールの各々は、1〜4個の置換基で置換されるか、もしくは必要に応じて独立して置換され、これらの置換基は、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立してR11、R12、R13、R14およびR15からなる群から選択され;
は、H、アルキル、−CF、シクロアルキル、−OH、−OCH、−NH、−N(H)C(O)N(H)アルキル、−NHS(O)R20もしくは−N(H)C(O)アルキルであり;
11およびR12は、同じであっても異なっていてもよく、そして各々が独立してアルキル、ハロアルキル、ハロゲン、−NR1819、−OH、−CF、−OCH、−O−アシルおよび−OCFからなる群から選択され;
13は、H、R11、アリール、−NO、−CN、−CHF、−CHF、−C(O)H、−CH=NOR18、ピリジル−N−酸化物、ピリミジニル、ピラジニル、−N(R19)CONR1920、−N(H)C(O)N(H)(ハロアルキル)、−N(H)C(O)N(H)(シクロアルキルアルキル)、−N(H)C(O)アルキル、−N(H)C(O)CF、−N(H)S(O)N(アルキル)、−N(H)S(O)アルキル、−N(S(O)CF、−N(H)C(O)Oアルキル、シクロアルキル、−SR21、−S(O)R21、−S(O)R21、−S(O)N(H)(アルキル)、−OS(O)アルキル、−OS(O)CF、ヒドロキシアルキル、−C(O)NR1819、−C(O)N(CHCH−O−CH、−OC(O)N(H)アルキル、−CO18、−Si(CHおよび−B(OC(CHからなる群から選択され;
14は、アルキル、ハロアルキル、NHおよびR15−フェニルからなる群から選択され;
15は、H、アルキル、ハロアルキル、−CF、−CO19、−CN、アルコキシおよびハロゲンからなる群から選択される1〜3個の置換基であり;ここで、該R15部分は、同じであっても異なっていてもよく、一つより多いR15が存在する場合には各々が独立して選択され;
16およびR17は、同じであっても異なっていてもよく、各々が独立して、ハロゲンおよびアルキルからなる群から選択され得るか、またはR16およびR17は、一緒になってアルキレン基であり、そして連結されて3〜6個の炭素原子のスピロ環を形成する炭素原子を有し;
18、R19およびR20は、同じであっても異なっていてもよく、そして各々が独立して、H、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され得;
そして
21は、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルキレン、シクロアルキル、アリールおよびアラルキルからなる群から選択され;
ここで、上記の定義における、該アルキル、アルキレン、アリール、アリールアルキル、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキルアルキルおよびシクロアルキルの各々は、非置換であり得るか、または独立して、同じであっても異なっていてもよい一つ以上の部分により置換され得、該部分は、独立して−OH、アルコキシ、−CN、ハロゲン、−NR1819、−C(O)NR1819、−N(R18)C(O)R19、−N(R18)S(O)R19、−S(O)NR1819、−C(O)OR18,−OCF、−CF、−S(O)R18および−C(O)R18からなる群から選択される、
化合物。
【請求項2】
XがCHであり、ZがNであり、tが2でありそしてsが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
、RおよびRが水素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
およびRがアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
およびRがメチルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
がH、−S(O)アルキル、−S(O)アリールもしくは−S(O)シクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がH、
【化3】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
がアリールもしくはアラルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
がベンジルもしくはフェニルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
がヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物であって、該化合物において、R
【化4】

であって、ここで、各R10は、同じであっても異なっていてもよく、独立して−CHもしくはハロゲンから選択され、Yは、NもしくはN(→O)であり、そして該アリール、フルオレニル、ジフェニルもしくはヘテロアリールの各々は非置換であるか、または必要に応じて独立して、1〜4個の置換基で置換され、各置換基は、同じであっても異なっていてもよく、独立してR11、R12、R13、R14およびR15からなる群から選択される、化合物。
【請求項12】
およびRが、以下の表において定義される:
【化5−1】

【化5−2】

請求項1に記載の構造式Iを有する化合物。
【請求項13】
構造式:
【化6−1】

【化6−2】

により表わされる、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
治療有効量の一つ以上の請求項1に記載の化合物を含有する、薬学的組成物。
【請求項15】
治療有効量の一つ以上の請求項13に記載の化合物を含有する、薬学的組成物。
【請求項16】
一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアをさらに含有する、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
ヒト免疫不全ウイルスの処置において有用な、一つ以上の抗ウイルス薬もしくは他の薬剤をさらに含有する、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
ヒト免疫不全ウイルスの処置において有用な、一つ以上の抗ウイルス薬もしくは他の薬剤をさらに含有する、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記抗ウイルス薬が、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項18に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記抗ウイルス薬が、ジドブジン、ラミブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、アバカビル、アデフォビルジピボキシル、ロブカビル、BCH−10652、エミトリシタビン、β−L−FD4、DAPD、ロデノシン、ネビラピン、デラビリジン、エファビレンツ、PNU−142721、AG−1549、MKC−442、(+)−カラノリドAおよび(+)−カラノリドB、サキナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、ラシナビル、DMP−450、BMS−2322623、ABT−378、アンプレナビル、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド、Yissum No.11607およびAG−1549からなる群から選択される、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
ヒト免疫不全ウイルスを処置する方法であって、そのような処置が必要な患者に、治療有効量の一つ以上の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項23】
ヒト免疫不全ウイルスを処置する方法であって、そのような治療が必要な患者に、治療有効量の一つ以上の請求項13に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項24】
ヒト免疫不全ウイルスの処置において有用な、一つ以上の抗ウイルス薬もしくは他の薬剤を投与する工程をさらに包含する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記抗ウイルス薬が、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤およびプロテアーゼ阻害剤からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗ウイルス薬が、ジドブジン、ラミブジン、ザルシタビン、ジダノシン、スタブジン、アバカビル、アデフォビルジピボキシル、ロブカビル、BCH−10652、エミトリシタビン、β−L−FD4、DAPD、ロデノシン、ネビラピン、デラビリジン、エファビレンツ、PNU−142721、AG−1549、MKC−442、(+)−カラノリドAおよび(+)−カラノリドB、サキナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、ラシナビル、DMP−450、BMS−2322623、ABT−378、アンプレナビル、ヒドロキシ尿素、リバビリン、IL−2、IL−12、ペンタフシド、Yissum No.11607およびAG−1549からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、アトピー性皮膚炎、乾癬、喘息、アレルギーまたは多発性硬化症を処置する方法であって、このような処置が必要な患者に、治療有効量の一つ以上の請求項1に記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または多発性硬化症を処置するための請求項27に記載の方法であって、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて、前記一つ以上の化合物を投与する工程をさらに包含する、方法。
【請求項29】
固形臓器移植拒絶、移植片対宿主病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、または多発性硬化症を処置するための請求項28に記載の方法であって、該疾患の処置において有用な一つ以上の追加の薬剤を投与する工程をさらに包含する、方法。
【請求項30】
別個の容器にヒト免疫不全ウイルスを処置するために併用される単一パッケージの薬学的組成物を含むキットであって、該キットは、一方の容器に、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリアに一つ以上の請求項1に記載の化合物を含有する薬学的組成物を含み、そして別の容器に、一つ以上の薬学的に受容可能なキャリア中にヒト免疫不全ウイルスの処置に有用な一つ以上の抗ウイルス薬または他の薬剤を含有する一つ以上の薬学的組成物を含む、
キット。
【請求項31】
請求項16に記載の薬学的組成物を作製するためのプロセスであって、該プロセスが、少なくとも一つ以上の請求項1に記載の化合物、および少なくとも一つの薬学的に受容可能なキャリアを混合する工程を包含する、プロセス。

【公表番号】特表2006−515851(P2006−515851A)
【公表日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562317(P2004−562317)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040619
【国際公開番号】WO2004/056770
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】