説明

CD25に対するヒトモノクローナル抗体

ヒトCD25に結合し、ヒトCD25を阻害する単離されたヒトモノクローナル抗体、及び、関連する抗体ベースの組成物及び分子を開示する。本ヒト抗体は、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体を産生することのできる、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、又はトランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物に産生させることができる。さらに、本ヒト抗体を含む医薬組成物、本ヒト抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物、ハイブリドーマ及びトランスフェクトーマや、本ヒト抗体を用いる治療法及び診断法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、その開示全体を引用をもってここに援用することとする2002年11月15日出願の米国仮特許出願第60/426,690号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
発明の背景
高親和インターロイキン2受容体 (IL-2R) は、α、β及びγc-ポリペプチド鎖 (KD 10-11 M)から成るヘテロ三量体の細胞表面受容体である。IL-2α、CD25、p55、及び Tac(T細胞活性化)抗原としても知られる55 kDa のそのα鎖は、IL-2Rに固有である。β(CD122;P75)及びγc(CD132)鎖は、サイトカイン受容体スーパーファミリ(ヘマトポエチン受容体)の一部であり、IL-15Rなどの他のサイトカイン受容体の機能的成分である。
この中間の親和性の受容体は、β-及びγc-鎖 (KD
10-9 M) から成る二量体であるが、その低親和性の受容体は、シグナル伝達能を有さない単量体のαサブユニットから成る (KD 10-8 M) (Waldmann (1993) Immunol. Today
14(6):264-70)。
【0003】
休止T細胞、B細胞及び単球は少量のCD25しか発現しない。しかしながら、この受容体は活性化すると急速に転写及び発現する(Ellery et al. (2002) Cytokine Growth Factor Rev. 13(1): 27-40;
Morris et al. (2000) Ann. Rheum. Dis. 59 (Suppl. 1):i109-14)。高親和IL-2Rを発現する細胞はCD25(CD25サブユニット)を過剰に発現し、このことが、高親和及び低親和の両方のIL-2 結合プロファイルにつながる (Waldmann et al. (1993) Blood 82(6):1701-12; de Jong et al. (1996)
J. Immunol.156(4):1339-48)。CD25は、例えばリウマチ性関節炎、強皮症、及びブドウ膜炎などのいくつかの自己免疫疾患や、乾癬及びアトピー性皮膚炎などの皮膚以上、及びT細胞白血病及びホジキン病などの多種のリンパ系新生物において、T細胞で高度に発現している (Waldmann (1993) Immunol. Today 14(6):264-70; Kuttler et al. (1999)
J. Mol. Med. 77(1):226-9)。加えて、CD25の発現は、同種移植片拒絶及び移植片対宿主応答に関連している (Jones et al. (2002) J. Immunol.168(3):1123-1130; Anasetti et al.
(1994) Blood 84(4):1320-7)。
【0004】
従って、CD25は、例えば自己免疫疾患における炎症を減らしたり、腫瘍を治療したり、そして移植片拒絶を防ぐなど、抗体媒介性治療法にとって重要なターゲットである。しかしながら、今日までに得られた結果や臨床上の経験で、CD25が免疫治療法の有用なターゲットであることが明白に確証が得られながらも、これらはまた、現在利用できるマウス及びキメラ抗体が理想的な治療薬とはならないことも示している。従って、CD25発現細胞が関与する範囲の疾患を予防及び/又は治療する上で有用な、CD25に対する更なる治療用抗体が求められている。
【0005】
発明の概要
本発明は、とりわけ、同種移植片及び異種移植片拒絶を含む臓器、組織及び細胞移植片拒絶、移植片対宿主疾患、自己免疫疾患、炎症性及び過増殖性皮膚異常、及びリンパ系新生物を含め、CD25発現細胞が関連する疾患を治療及び/又は予防するための新規な抗体治療薬を提供するものである。本発明に包含される抗体は、それが完全にヒトであり、従って患者における潜在的免疫原性が低い点で優れている。本抗体はまた、それらの優れた機能的(例えば治療的)特性に基づいても有利である。
【0006】
ここで示すように、本発明のヒト抗体は、ELISA又はフローサイトメトリで検査した場合、CD25に結合する。
【0007】
本発明のヒト抗体は、典型的には、組換えヒトIL-2Rαをリガンドとし、本抗体を分析物として用いたBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴法(SPR)で判定したときに、ほぼ10-8 M以下、例えば10-9 M 以下、10-10 M以下、又は10-11 以下又はそれより低い解離平衡定数(KD)でCD25に結合する。このような抗体は、典型的には、関連する細胞表面抗原と交差反応せず、従ってそれらの機能を阻害しない。
【0008】
更に、本発明のヒト抗体は、CD25のそのリガンドであるIL-2との相互作用を阻害(例えば遮断)する。 例えば、結合を、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、or 100%、阻害することができる。CD25を発現し、従ってその細胞機能を、本発明のヒト抗体により阻害することのできる細胞の例には、とりわけ、T細胞、T細胞及び単球がある。例えば、ここで示すように、本発明のヒト抗体は、IL-2のCD25への結合を阻害することができる。このようなIL-2 のCD25への結合の阻害は、同時に、IL-2の結合により誘導される多種の細胞機序を阻害することになる。やはりここで示すように、本発明のヒト抗体は、抗CD3抗体誘導性T細胞増殖を用量依存的態様で阻害することができる。やはりここで示すように、本発明のヒト抗体は、混合リンパ球反応(MLR)を用量依存的な態様で阻害することができる。このような実験における増殖の阻害は、ELISAで測定される細胞量の蓄積の減少や、又は、細胞のDNAへのBrdUの取り込みの減少により、観察されよう。
【0009】
本発明のヒト抗体は、
IgG1 (例えば、IgG1,κ及びIgG1,λ)、及びIgG4 (例えばIgG4,κ及びIgG4,λ)抗体を包含するものである。しかしながら、IgG2、IgG3、IgM、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgD、及びIgEを含む他の抗体アイソタイプも、本発明の包含するところである。該抗体は全抗体でも、又は、例えばFab、Fab'、F(ab)2、F(ab')2、Fv、一本鎖Fv (scFv)フラグメントを含むその抗原結合フラグメントでも、あるいは二重特異的抗体でもよい。更に、抗原結合フラグメントには、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合させた結合ドメインポリペプチド(例えば重鎖可変領域又は軽鎖可変領域)、(ii)ヒンジ領域に融合させた免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域に融合させた免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質が含まれる。このような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は米国2003/0118592及び米国2003/0133939に開示されている。本発明の具体的なヒト抗体には、それぞれ
配列番号:1、5、9、又は 13 及び 配列番号:3、7、11、又は 15又はそれらの保存的配列改変に記載された通りのヌクレオチド配列をそれらの可変領域に含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされた、AB1、AB7、AB11、及びAB12と言及されるものが含まれる。
別の実施態様では、本ヒト抗体は、それぞれ、配列番号:2、6、10、又は14 及び配列番号:4、8、12、又は16に記載された通りのアミノ酸配列及びその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の具体的なヒト抗体には、ヒト重鎖及び軽鎖CDR1、ヒト重鎖及び軽鎖CDR2、及びヒト重鎖及び軽鎖CDR3を有するCDR(相補性決定領域)を含むものが含まれ、但しこの場合、
(a) 前記ヒト重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3は、図1−10 (配列番号:17-19、23-25、29-31、又は35-37)に示された CDR1、CDR2、及びCDR3アミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列及びその保存的配列改変
を含み、そして
(b) 前記ヒト軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3 は、図1−10 (配列番号:20-22、26-28、32-34、又は38-40)に示されたCDR1、CDR2、及びCDR3 アミノ酸配列 から成る群より選択されるアミノ酸配列及びその配列改変を含む。
【0011】
別の実施態様では、本発明のヒト抗CD25抗体を、以下の特性のうちの一つ以上により特徴付けることができる:
a) ヒト CD25に対する特異性;
b) 組換えIL-2Rαをリガンドとし、本抗体を分析物として用いたBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴(SPR)技術で判定したときに、ほぼ10-8 M以下、例えば10-9 M 以下、10-10 M以下、又は10-11 以下のKDに相当する、CD25に対する結合親和性;
c) T細胞の寛容化能;
d) CD25のそのリガンドであるIL-2との相互作用の遮断能;
e) CD25発現T細胞を消失させる能力;
f)CD25発現T細胞の増殖の阻害能;
g)末梢血単核細胞(PBMC)の抗CD3抗体誘導性T細胞増殖の阻害能;
h) 混合リンパ球反応(MLR)の遮断能;及び/又は
i) T細胞上に発現したCD25の内部移行。
【0012】
用語「寛容化」は、ここで用いられる場合、当該T細胞が、抗原の再刺激を受けた後にこの抗原に反応できないことを意味する。
【0013】
本発明のヒト抗体を、他の結合特異性部分に誘導体化、連結、又は、同時に発現させることができる。ある具体的な実施態様では、本抗体を、例えばエフェクタ細胞上の抗原など、様々な標的抗原に対する一種以上の結合特性部分に連結する。
【0014】
従って、さらに本発明は、ヒトCD25と、例えばCD3、CD4、IL-15Rなどの一種以上の異なる標的抗原、膜結合型もしくは受容体結合型TNF-α、又は膜結合型もしくは受容体結合型IL-15などの一種以上の異なる標的抗原との両方に結合する二重特異的及び多重特異的分子も包含する。
【0015】
別の実施態様では、本発明のヒト抗CD25抗体を、別のペプチド又はタンパク質(例えばFabフラグメント)など、別の機能的分子に誘導体化、連結、又は同時に発現させる。例えば、本抗体を、例えば別の抗体(例えば二重特異的もしくは多重特異的分子を作製するためなど)、細胞毒、細胞リガンド又は抗原(例えばイムノトキシンなどの免疫複合体を作製するためなど)など、一種以上の他の分子部分に機能的に(例えば化学的結合、遺伝子融合、非共有結合又は他の方法で)連結することができる。さらに本抗体を、例えば放射性同位体、低分子抗癌剤、抗炎症剤、又は免疫抑制剤など、他の治療的部分に連結することもできる。従って、本発明は、すべてCD25発現細胞に結合し、またこのような細胞を他の分子に狙わせるために用いることができる、多種の抗体複合体、二重特異的及び多重特異的分子、並びに融合タンパク質を包含するものである。
【0016】
本発明のヒト抗体、免疫複合体、二重特異的及び多重特異的分子並びに組成物は、CD25発現細胞の活性及び/成長(例えば増殖)を阻害する、致死させる及び/又は調節する多種の方法で用いることができる。ある実施態様では、本方法は、CD25発現T細胞の増殖を阻害することを含む。別の実施態様では、本発明は、MLRなどの移植片対宿主応答を阻害することを含む。更に別の実施態様では、本方法は、(例えば補体媒介性溶解により、又は、抗体を細胞毒に連結することにより)CD25発現細胞を致死させることを含む。当該の細胞は、好ましくは、CD25を発現しないが、例えば構造上関連する細胞表面抗原を発現しているであろう細胞を致死させたり、又はその活性を阻害することなく(即ち、関連はしているが機能上は異なる細胞表面抗原に対する交差反応性なく)、致死又は阻害されるとよい。本発明のヒト抗体を用いて阻害又は致死させることのできるCD25発現細胞には、例えば、活性化Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、肝臓のクッパー細胞、CD25を発現している皮膚のランゲルハンス細胞、がある。
【0017】
従って、本発明のヒト抗体を用いて、CD25を発現している活性化した細胞が病因に能動的に関与しているような多種の疾患及び状態に罹患した患者に本抗体を投与することにより、このような疾患を治療及び/又は予防することができる。治療(例えば改善)又は予防することのできる疾患の例には、限定はしないが、例えば心臓、肺、同時心臓−肺、気管、腎臓、肝臓、膵臓、食道、腸、皮膚、四肢、臍帯、幹細胞、島細胞移植等の臓器又は組織移植を受ける予定の又は受けた患者において、同種移植片及び異種移植片拒絶を含む移植片拒絶がある。このように、本発明の抗体を、同種移植及び異種移植片拒絶の予防薬として用いてもよく、あるいは、急性同種移植又は異種移植拒絶エピソードを逆行、治療、又は改善するために用いてもよい。
【0018】
治療の可能な更なる疾患には、移植片対宿主疾患、例えば輸血移植片対宿主疾患及び骨髄移植対宿主疾患;炎症性、免疫性又は自己免疫性疾患、例えばリウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、1型糖尿病、インシュリン要求性2型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚−多発性筋炎、シェーグレン症候群、大細胞動脈炎を含む動脈炎、再生不良性貧血、喘息、強皮症、及びブドウ膜炎;炎症性又は過増殖性皮膚異常、例えばプラーク乾癬を含む乾癬、掌蹠膿疱症
(PPP)、びらん性扁平苔癬、水疱性天疱瘡、水疱性表皮剥離、接触性皮膚炎及びアトピー性皮膚炎;及び多種のリンパ系新生物、例えばT細胞白血病、ホジキン病、ヘアリーセル白血病、又は、菌状息肉腫を含む皮膚T細胞リンパ腫、及びセザリー症候群、がある。
【0019】
治療の可能な更なる疾患は、浸潤性CD25+調節性T細胞の阻害が有益であるような悪性腫瘍であり、例えば胃癌、食道癌、悪性黒色種、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌、及び腎細胞カルシノーマ;
造血系の異常、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病
(CLL)/小リンパ球性リンパ腫
(SLL)、末梢T細胞リンパ腫、及び二次性アミロイドーシス;
皮膚異常、例えば壊疽性膿皮症、環状肉芽腫、アレルギー性接触性皮膚炎、良性粘膜類天疱瘡、及び妊娠性疱疹;
肝−胃腸管異常、例えばコラーゲン性大腸炎、硬化性胆管炎、慢性急性肝炎、ルポイド肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、慢性膵炎、及び急性膵臓炎;
心臓の異常、例えば心筋炎、及び心膜炎;
血管の異常、例えば動脈硬化、大細胞動脈炎/リウマチ性多発性筋痛、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎、川崎症候群、ウェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−ストラウス症候群、白血球破壊性血管炎、及び二次性白血球破壊性血管炎;
腎臓の異常、例えば急性腎炎、慢性腎炎、最小変化腎炎、及びグッドパスチャー症候群;
肺の異常、例えば肺胞炎、閉塞性細気管支炎、珪肺症、及びベリリウム症;
神経の異常、例えば多発性硬化症、アルツハイマー病、重症筋無力症、慢性脱随性ポリニューロパチー、及びギラン−バレー症候群を含む多発性神経根炎;
結合組織の異常、例えば再発性多発性軟骨炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、CNSルーパス、デスコイド・ルーパス、ループス腎炎、慢性疲労症候群、及び結合組織炎;
内分泌異常、例えばグレーブズ病、橋本甲状腺炎、及び亜急性甲状腺炎;並びに
ウィルス感染、例えば熱帯性痙性不全対麻痺。
【0020】
本発明のある具体的な実施態様では、本抗体を投与される対象を、付加的に、例えば免疫抑制剤、抗炎症剤、化学療法薬、細胞毒性作用薬、又は、本抗体の治療効果を高める働きをする他の薬剤など、一種以上の更なる治療用作用薬で治療してもよい。
【0021】
更に別の局面では、本発明は、例えばCD25関連疾患を好ましくは初期の段階で診断するためなど、試料中又は個体中におけるCD25の存在をin vitro 又は in vivo で検出する方法を提供するものである。これは、疾患や、抗CD25抗体による治療効果を観察したり、また、投与しようとする本抗体の用量を決定及び調節するためにも、有用であろう。ある実施態様では、試料中のCD25の存在の検出を、本抗体とCD25との間の複合体形成が可能な条件下で、検査しようとする試料を、選択的にはコントロール試料と並行して、本発明のヒトモノクローナル抗体に接触させることにより、行う。次に複合体検出を(例えばELISA、フローサイトメトリ 又はウェスタン・ブロット法などを用いて)行う。コントロール試料を検査試料と並行して用いる場合、複合体を両試料中で検出し、試料間に複合体形成の上で何らかの統計上有意な差があれば、検査試料中のCD25の存在の指標である。本in vivo 法は、PET (ポジトロンエミッショントモグラフィ) 又はSPECT (単一光子放射形コンピュータ断層撮影法)などの撮像技術を用いて行うことができる。
【0022】
更なる局面では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。これらの抗イディオタイプ抗体は、研究室又は患者試料中で、CD25に対するヒトモノクローナル抗体を検出したり、レベルを定量するための免疫診断ツールとして用いることができる。これは、抗CD25抗体の薬物動態を調べたり、又は、抗CD25抗体の投薬量を判定及び調節したり、そして、患者における疾患及び治療効果を観察するために、有用であろう。
【0023】
マウス抗イディオタイプ抗体は、例えば本発明のヒトモノクローナル抗体でBalb/Cマウスを免疫し、標準的な技術を用いてNS1などの骨髄腫細胞を融合することで、これらのマウス由来の脾細胞からハイブリドーマを生じさせるなどにより、作製することができる。
【0024】
更に別の局面では、本発明は、CD25に結合するヒトモノクローナル抗体を発現する、トランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物を提供する。ある具体的な実施態様では、該非ヒトトランスジェニック動物は、本発明の抗体の全部又は一部をコードする、ヒト重鎖導入遺伝子又はトランスクロモソームと、ヒト軽鎖導入遺伝子又はトランスクロモソームとを含むゲノムを有するトランスジェニック・マウスである。該非ヒトトランスジェニック動物は、CD25抗原の精製済みもしくは濃縮製剤、及び/又は、CD25発現細胞で免疫することができる。好ましくは、該非ヒトトランスジェニック動物、例えばトランスジェニック・マウスが、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、CD25に対して複数のアイソタイプ
(例えば IgG、IgA 及び/又はIgM)のヒトモノクローナル抗体を産生できるとよい。アイソタイプ・スイッチングは、例えば古典的又は非古典的アイソタイプ・スイッチングで起き得る。
【0025】
従って、更に別の局面では、本発明は、例えばトランスジェニック・マウスなど、ヒト
抗CD25抗体を発現する上述した通りの非ヒトトランスジェニック動物由来の単離されたB細胞を提供するものである。その後、この単離されたB細胞を不死化細胞への融合により不死化させて、ヒト
抗CD25抗体の供給源(例えばハイブリドーマ)とする。このようなハイブリドーマ(即ち、ヒト抗CD25抗体を産生するもの)も、本発明の範囲の包含するところである。
【0026】
ここで例示するように、本発明のヒト抗体は、本抗体を発現するハイブリドーマから直接得ることも、あるいは、ホスト細胞(例えば CHO (チャイニーズ・ハムスター卵巣)細胞、又はNS/0細胞)中でクローニング(例えば本抗体の抗原結合部分を提示するハイブリドーマ又はファージから)し、組換え発現させることもできる。ホスト細胞の更なる例は E. coliなどの微生物及び酵母などの真菌である。代替的には、これらを非ヒトトランスジェニック動物又は植物で組換えにより産生させることもできる。
従って、別の局面では、本発明は、ヒト CD25に結合するヒトモノクローナル抗体を作製する方法を提供する。ある実施態様では、本方法は、(例えば抗CD25抗体の全部又は一部をコードする、ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子とを含むゲノムを有する)、例えばトランスジェニック・マウスなどの上述した通りの非ヒトトランスジェニック動物を、ヒトCD25抗原の精製済みもしくは濃縮製剤、及び/又は、ヒトCD25発現細胞で免疫することを含む。次に、該動物のB細胞(例えば脾B細胞)を得、骨髄腫細胞と融合させて、CD25に対するヒトモノクローナル抗体を分泌する不死のハイブリドーマ細胞を形成させる。
【0027】
更に別の局面では、本発明は、ヒト 抗CD25抗体
(例えばその可変領域)をコードする核酸分子や、本発明の核酸を含む組換え発現ベクタ、及びこのようなベクタをトランスフェクトしたホスト細胞、を提供するものである。これらのホスト細胞を培養することにより、本抗体を作製する方法も、本発明の包含するところである。本発明により提供される具体的な核酸は、
ヒト 抗CD25抗体 AB1、AB7、AB11、及びAB12のそれぞれ重鎖及び軽鎖をコードする、配列番号:1、5、9、又は13 及び配列番号:3、7、11、又は15に示されたヌクレオチドを含むものである。
【0028】
本発明の他の特徴及び長所は、以下の詳細な説明及び請求の範囲から明白であろう。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、CD25発現細胞が関与する多種の異常を治療及び診断するための抗体ベースの治療法を提供するものである。本発明の治療法では、 CD25上に存在するエピトープに特異的に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体を利用する。このような抗体には、例えばIgA、IgG1-4、IgE、IgM、及びIgD抗体など、全ての公知のアイソタイプが含まれる。
【0030】
ある実施態様では、本抗体はIgG1抗体、より具体的にはIgG1,κ、又はIgG1,λアイソタイプである。別の実施態様では、本抗体はIgG3抗体、より具体的には IgG3,κ、又はIgG3,λアイソタイプである。更に別の実施態様では、本抗体はIgG4抗体、より具体的にはIgG4,κ又はIgG4,λアイソタイプである。また更に別の実施態様では、本抗体はIgA1又はIgA2抗体である。更に別の実施態様では、本抗体はIgM抗体である。
【0031】
ある実施態様では、本ヒト抗体を、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、CD25に対して複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体を産生することのできる、例えばトランスジェニック・マウスなどの非ヒトトランスジェニック動物で産生させる。このようなトランスジェニック動物はまた、米国2003/0017534で開示されたなどのポリクローナル抗体を産生するトランスジェニック・ウサギであってもよい。従って、本発明は、CD25に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体も包含する。従って、本発明の局面は、抗体、抗体フラグメント、及びその医薬組成物だけでなく、モノクローナル抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物、B細胞、ホスト細胞トランスフェクトーマ及びハイブリドーマも包含する。本発明の抗体を用いて、CD25を発現する細胞を遮断又は阻害する方法も提供され、また、CD25に関連する異常の治療において有用である。本発明の抗体を用いて、CD25発現細胞を検出する方法は、本発明の包含するところである。
【0032】
本発明がより容易に理解されるように、いくつかの用語をまず、ここに定義しておく。更なる定義は、詳細な説明全般に記載されている。
【0033】
用語「CD25」及び「CD25抗原」はここでは交換可能に用いられており、細胞が天然で発現する、又は、CD25遺伝子をトランスフェクトされた細胞上で発現される、ヒトCD25のあらゆるバリアント、アイソフォーム及び種相同体を包含する。当業で認識されているように、CD25の同義語には、 CD25、p55、及びTac (T 細胞活性化)抗原がある。本発明の抗体がCD25抗原に結合すると、CD25の、そのリガンドであるIL-2との結合が阻害及び/又は遮断され、と同時に、その細胞機能も阻害及び/又は遮断される。例えば、ある実施態様では、本発明のヒト抗体は、抗CD3抗体誘導性T細胞増殖を阻害するものである。別の実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体はMLRを阻害する。
【0034】
ここで用いる場合の用語「(例えば細胞に言及して)成長を阻害する」には、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、or 100%の細胞培養の成長の阻害など、抗CD25抗体に接触していない同じ細胞の成長に比較したときの、抗CD25抗体に接触させたときの細胞成長の測定可能な減少が包含されるものと、意図されている。
【0035】
ここで(例えばIL-2のCD25に対する結合を阻害/遮断することに言及して)用いる用語「結合を阻害する」及び「結合を遮断する」は
交換可能に用いられており、部分的及び完全の両方の阻害/遮断を包含するものである。IL-2のCD25への結合の阻害/遮断は、好ましくは、阻害又は遮断が起きることなくIL-2がCD25に結合するときに生じる清浄なレベル又は種類の細胞シグナリングを減少させる又は変化させるものであるとよい。阻害及び遮断にはまた、例えば少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、又は100%の、IL-2のCD25への結合の遮断など、抗CD25抗体に接触していないときのリガンドに比較したときの、抗CD25抗体に接触しているときのIL-2のCD25に対する結合親和性の測定可能な減少も包含されるものと、意図されている。
【0036】
用語「抗体」には、ここで言及する場合、インタクト全体や、そのあらゆる抗原結合フラグメント(即ち「抗原結合部分」)又は一本鎖が含まれる。「抗体」とは、少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖をジスルフィド結合で相互に接続して含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分、を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(ここではVHと省略される)と重鎖定常領域とから成る。各軽鎖は軽鎖可変領域(ここではVLと省略される)及び軽鎖定常領域から成る。VH及びVL領域はさらに、より保存されたフレームワーク領域(FR)と呼ばれる領域間に介在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に小さく分割することができる。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで並んだ3つのCDR及び4つのFRから成る。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の多種の細胞(例えばエフェクタ細胞)を含めホスト組織又は因子や、古典的な補体系の第一コンポーネント(C1q)に対する免疫グロブリンの結合を媒介していると考えられる。
【0037】
抗体の「抗原結合部分」(又は簡単に「抗体部分」)という用語は、ここで用いる場合、抗原(例えばCD25)への特異的結合能を維持した、抗体のうちの一つ以上のフラグメントを言う。抗体の抗原結合機能は、インタクトもしくは完全長抗体のうちの数フラグメントに行わせることができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価のフラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFabフラグメントから成る二価のフラグメントであるF(ab')2フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインから成るFdフラグメント;(iv)VL及びVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成るdAbフラグメント(Ward et
al., (1989) Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、及び(vii)Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子にコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対を成して一価の分子を形成するような一個のタンパク質鎖に作製できるようにする選択的に合成リンカーにより接合してもよい2つ以上の単離されたCDRの組合せ、がある。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子にコードされているが、これらは、VL及びVH領域が対を成して一価の分子を形成するような一個のタンパク質鎖に作製できるようにする合成リンカーにより、組換え法を用いて接合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば Bird et al. (1988) Science 242:423-426; and Huston
et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものと、意図されている。更なる一例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)前記ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。前記結合ドメインポリペプチドは重鎖可変領域であっても、又は軽鎖可変領域であってもよい。該結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、更に、米国2003/0118592及び米国2003/0133939に開示されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、それらのフラグメントは、インタクト抗体と同じ態様で実用性についてスクリーニングされている。
【0038】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合できるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的に活性な表面分子群から成り、通常は特異的な三次元構造上の特徴や、特異的な電荷上の特徴を有する。コンホメーション的及び非コンホメーション的エピトープは、変性溶媒による処理で、前者への結合は失われるが、後者への結合は失われないことで区別される。
【0039】
用語「二重特異的分子」は、2つの異なる結合特異性部分を有する、例えばタンパク質、ペプチド、又はタンパク質もしくはペプチド複合体など、あらゆる作用物質を包含することを意図している。例えば前記分子は、(a)細胞表面抗原及び(b)エフェクタ細胞の表面上のFc受容体、に結合又は相互作用してもよい。
【0040】
用語「多重特異的分子」又は「ヘテロ特異的分子」は、3つ以上の異なる結合特異性部分を有する、例えばタンパク質、ペプチド、又はタンパク質もしくはペプチド複合体など、あらゆる作用物質を包含することを意図している。例えば前記分子は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクタ細胞の表面上のFc受容体、及び(c)少なくとも一つの他の成分、に結合又は相互作用してもよい。従って本発明は、限定はしないが、CD25や、エフェクタ細胞上のFc受容体などの他の標的を狙った、二重特異的、三重特異的、四重特異的、及び他の多重特異的分子を包含する。
【0041】
用語「二重特異抗体」はジアボディも含む。ジアボディはVH及びVLドメインが一個のポリペプチド鎖上に発現しているが、この同じ鎖上の2つのドメインの間で対を成すには短すぎるリンカを用いることで、これらドメインを別の鎖の相補ドメインと対を成させるようにして、2つの抗原結合部位を生じるようにした二価の二重特異的な抗体である
(例えばHolliger, P., et al. (1993) Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak,
R.J., et al. (1994) Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0042】
用語「ヒト抗体誘導体」とは、例えば本抗体及び別の作用物質又は抗体との複合体など、いずれかの修飾された形の本抗体を言う。
【0043】
用語「ヒト抗体」とは、ここで用いる場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する抗体を包含するものと、意図されている。本発明のヒト抗体には、さらに、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基も含まれていてよい
(例えばin vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発や、あるいは、in vivoでの体細胞変異など)。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、ここで用いる場合、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系を由来とするCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されているような抗体を含むとは、意図されていない。
【0044】
ここで用いる用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一の分子組成から成る抗体分子の製剤を言う。モノクローナル抗体組成物は単一の結合特異性及び親和性を特定のエピトープに対して示す。従って、用語「ヒトモノクローナル抗体」とは、単一の結合特異性を示すと共に、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変領域及定常領域を有するような抗体を言う。ある実施態様では、本ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモゾマル動物から得たB細胞を、不死化細胞に融合させて含むハイブリドーマにより産生される。
【0045】
用語「組換えヒト抗体」は、ここで用いる場合、組換え手段により調製された、発現させた、作製された又は単離されたあらゆるヒト抗体を包含するものであり、例えば(a) ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニック又はトランスクロモゾマルな動物(例えばマウス)から、あるいは、そこから調製されたハイブリドーマ(以下のI項に詳述する)から、単離された抗体、(b) 本抗体を発現するように形質転換させたホスト細胞から、例えばトランスフェクトーマから、単離された抗体、(c) 組換えの、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングに関与するいずれかの他の手段により調製された、発現させた、作製された又は単離された抗体、である。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列を由来とする可変及び定常領域を有する。しかしながら、いくつかの実施態様では、このような組換えヒト抗体に in vitro 変異誘発(又はヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を用いる場合はin vivo 体細胞変異誘発)を行うことができ、こうして当該組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系VH 及び VL配列を由来とし、関連しながらも、in vivoのヒト抗体 生殖細胞系レパートリには天然で存在しないかも知れない配列である。
【0046】
用語「トランスフェクトーマ」は、ここで用いる場合、例えばCHO細胞、NS/0 細胞、HEK293細胞、植物細胞、又は酵母細胞を含む真菌など、本抗体を発現する組換え真核ホスト細胞を包含する。
【0047】
ここで用いる場合「異種抗体」は、このような抗体を産生する非ヒトトランスジェニック生物との関係から定義される。この用語は、当該の非ヒトトランスジェニック動物を構成しない生物に見られるものに相当するアミノ酸配列又はコードする核酸配列を有し、一般的には当該の非ヒトトランスジェニック動物の種以外の種を由来とする抗体を言う。
【0048】
ここで用いる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を言うものと、意図されている(例えばCD25に特異的に結合する単離された抗体は、CD25以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトCD25のエピトープ、アイソフォーム又はバリアントに特異的に結合する単離された抗体であれば、例えば他の種由来など(例えばCD25の種相同体)、他の関連する抗原に対して交差反応性を有していてもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まないであろう。本発明のある実施態様では、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組合せを、良く定義された組成で組み合わせる。
【0049】
ここで用いる「特異的結合」とは、所定の抗原への抗体の結合を言う。典型的には、組換えIL-2αをリガンドとし、本抗体を分析物として用いたBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴法(SPR)技術により判定したときに、本抗体は少なくとも約10-8 M以下、例えば約10-9 M 以下、約10-10 M 以下、又は約10-11 M 以下、あるいはそれより小さいKDに相当する親和性で結合し、所定の抗原に対しては、前記所定の抗原又は関係の近い抗原以外の非特異的な抗原(例えばBSA、カゼイン)に対するその結合親和性よりも少なくとも10分の1、好ましくは少なくとも100分の1、低いKDに相当する親和性で結合する。文言「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」はここでは用語「抗原に特異的に結合する抗体」と交換可能に用いられている。
【0050】
用語「kd」(sec-1)は、ここで用いる場合、特定の抗体−抗原間相互作用の解離平衡速度定数を言うものと、意図されている。前記数値はまた、koff値とも呼ばれる。
【0051】
用語「ka」(M-1 x sec-1)は、ここで用いる場合、特定の抗体−抗原間相互作用の結合平衡速度定数を言うものと、意図されている。
【0052】
用語「KD」(M)は、ここで用いる場合、特定の抗体−抗原相互作用の解離平衡定数を言うものと、意図されている。
【0053】
用語「KA」(M-1)は、ここで用いる場合、特定の抗体−抗原相互作用の結合平衡定数を言うものと意図されており、kaをkdで除算することにより得られる。
【0054】
ここで用いる「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子にコードされた抗体クラス(例えばIgM又はIgG1)を言う。
【0055】
ここで用いる「アイソタイプ・スイッチング」とは、抗体のクラス、即ちアイソタイプ、が、あるIgクラスから他のIgクラスのうちの一つに変化する現象を言う。
【0056】
ここで用いる「スイッチングのないアイソタイプ」とは、アイソタイプ・スイッチングが起きないときに産生される重鎖のアイソタイプ・クラスを言い、スイッチングのないアイソタイプをコードするCH遺伝子は、典型的には、機能上の再編成の起きるVDJ遺伝子のすぐ下流の一番目にあるCH遺伝子である。アイソタイプ・スイッチングは、古典的もしくは非古典的なアイソタイプ・スイッチングに分類されてきた。古典的なアイソタイプ・スイッチングは、導入遺伝子中の少なくとも一つのスイッチ配列が関与する組換え事象により起きるものである。非古典的アイソタイプ・スイッチングは、例えばヒトσμとヒトΣμとの間の相同組換え(δ関連欠失)などで起きることがある。その他の非古典的スイッチング機序、なかでも例えば導入遺伝子間及び/又は染色体間の組換えなどがあると、アイソタイプ・スイッチングが起きることがある。
【0057】
ここで用いる用語「スイッチ配列」とは、スイッチ組換えを担うDNA配列を言う。「スイッチ・ドナー」配列は典型的にμスイッチ領域であり、スイッチ組換えの際に欠失するコンストラクト領域の5'側(即ち上流)にある。「スイッチ・アクセプター」領域は、欠失するコンストラクト領域と、置換定常領域(例えばγ、ε、等)との間にあるであろう。
【0058】
ここで用いる「糖付加パターン」は、タンパク質、より具体的には免疫グロブリンタンパク質、に共有結合する糖単位のパターンであると定義しておく。ある異種抗体の糖付加パターンが、導入遺伝子のCH遺伝子の由来となった種よりも当該の非ヒトトランスジェニック動物の種の糖付加パターンの方により似ていると当業者が認識するのであれば、この異種抗体の糖付加パターンを、前記非ヒトトランスジェニック動物の種の産生する抗体に天然で起きる糖付加パターンに実質的に似ていると特徴付けることができる。
【0059】
ある物質に対してここで用いられる用語「天然で発生する」とは、物質が自然界に見られる事実を言う。例えば、(ウィルスを含む)生物中に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列であって、天然にある源から単離でき、実験室で人間により意図的な改変を加えられていないポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は天然で発生したものである。
【0060】
ここで用いる用語「再編成される」とは、Vセグメントが、D-J又はJセグメントのすぐ隣に位置することで、それぞれ完全VH又はVLドメインを実質的にコードするコンホメーションとなるような重鎖又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を言う。再編成の起きた免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系DNAに比較することで特定でき、再編成の起きた遺伝子座は少なくとも一つの組換えられた7量体/9量体相同配列を有するであろう。
【0061】
Vセグメントに関してここで用いる用語「再編成のない」又は「生殖細胞系の立体配置」とは、Vセグメントが、D又はJセグメントのすぐ隣に来るように組換えられてはいない立体配置を言う。
【0062】
ここで用いる用語「核酸分子」には、DNA分子及びRNA分子が包含されるものと、意図されている。核酸分子は一本鎖でも、又は二本鎖でもよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0063】
CD25に結合する全抗体又は抗体部分(例えばVH、VL、CDR3など)をコードする核酸に関してここで用いる用語「単離された核酸分子」とは、当該インタクト抗体又は抗体部分をコードするヌクレオチド配列が、CD25以外の抗原に結合する全抗体又は抗体部分をコードする、天然ではヒトゲノムDNA中で当該核酸をフランクしているであろう他のヌクレオチド配列を含まないことを言うものと、意図されている。ある実施態様では、本ヒト抗CD25抗体は、それぞれ配列番号: 1、5、9、又は13 及び配列番号:3、7、11、又は15に示されたヌクレオチド配列にコードされたAB1、AB7、AB11、又はAB12 の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)可変アミノ酸領域を含む。
【0064】
ここに開示及び請求するように、配列番号:1-4に示す配列は、「保存的配列改変」、即ち、当該ヌクレオチド配列にコードされた、又は、当該アミノ酸配列を含有する、本抗体の結合特性に有意に影響しない又は変化させないようなヌクレオチド及びアミノ酸配列改変を包含する。このような保存的配列改変には、ヌクレオチド及びアミノ酸の置換、付加及び欠失、がある。また、例えば部位指定変異誘発法及びPCR媒介変異誘発法など、当業で公知の標準的な技術によっても、配列番号:1-4に改変を導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されるものが含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当業で定義されている。これらのファミリーには、塩基性の側鎖を持つアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を持つアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性の側鎖を持つアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖を持つアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を持つアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、がある。このように、ヒト抗CD25抗体の中で予測される重要でないアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基に置換することが好ましい。
【0065】
更に本発明は、本抗体のCD25への結合特性に大きく影響する又は変えることなく、アミノ酸残基のうちの一つ以上が、例えばアシル化又は糖付加などにより誘導体化させてあるような配列番号: 2、4、6、8、10、12、14、16、及び17-40 に記載された通りのアミノ酸配列及びその保存的配列改変の「誘導体」も包含する。
【0066】
更に、本発明は、本抗体の機能的又は薬物動態上の特徴を変えるために、一つ以上の変更をFc領域にしてあるような抗体も包含する。このような変更の結果、 in a decrease or increase of C1q 及びCDC結合が減少又は増加したり、あるいは FcγRの結合及び抗体依存的細胞傷害性 (ADCC)が減少又は増加したりするかも知れない。置換を、例えば重鎖定常領域のアミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320、及び322のうちの一つ以上で行うと、抗原への結合を保持しながらも未改変の抗体に比較してエフェクタ機能を変えることができる。米国第5,624,821号及び米国第5,648,260号を参照されたい。更なる参考を、 ADCCを増加させる変更されたFc領域を持つ抗体を開示する WO 00/42072や、抗体のFcRIへの結合能を変えることで、この抗体のC1qへの結合能を減少させ、ひいてはこの抗体の補体固定能を減少させるようなCH2ドメインのN末端領域の変異を有する抗体を開示したWO 94/29351 を参照されたい。更に、Shields et al., J. Biol. Chem. (2001) 276:6591-6604は、FcγRIII結合を高める組合せバリアント、例えばT256A/S298A、S298A/E333A、及びS298A/E333A/K334Aを教示している。
【0067】
本抗体のin vivo 半減期はまた、当該分子がインタクトCH2ドメイン又はインタクトIgFc領域を含まないように、Ig定常ドメイン又はIg様定常ドメインの再利用受容体エピトープを改変することによっても、向上させることができる。米国第6,121,022号及び米国第6,194,551号を参照されたい。さらにin vivo 半減期は、例えば位置252のスレオニンをロイシンに置換したり、位置254のスレオニンをセリンに置換したり、あるいは位置256のスレオニンをフェニルアラニンに置換するなど、Fc領域で変異を作ることでも増加させることができる。米国第6,277,375号を参照されたい。
【0068】
更に、本抗体のエフェクタ機能を変えるために本抗体の糖付加パターンを変更することもできる。例えば、FcのFcγRIIIへの親和性を高め、ひいてはNK細胞の存在下での本抗体のADCCを増加させるために、Fcの位置297のAsnに付着した糖に通常付着させられるフコース単位を加えないトランスフェクトーマで、本抗体を発現させることができる。Shield et al. (2002) J. Biol. Chem., 277:26733を参照されたい。更に、CDCを改変するために、ガラクトシル化の改変を行うことができる。更なる参照を、GntIIIを発現するように操作して、糖の形が変えられ、ADCC活性が向上したモノクローナル抗体を発現させるようにしたCHO細胞株を開示したWO 99/54342 及びUmana et al., Nat. Biotechnol. (1999) 17:176 にされたい。
【0069】
更に、本発明のFabフラグメントなどの抗体フラグメントをPEG化して半減期を増すことができる。これは、例えばFocus on
Growth Factors (1992) 3:4-10; EP 154 316 及びEP 401 384で解説されているように、当業で公知のPEG化反応により、行うことができる。
【0070】
代替的には、別の実施態様では、例えば飽和変異誘発法などにより、変異を抗CD25抗体コーディング配列の全部又は一部にわたってランダムに導入することができ、その結果改変された抗CD25抗体を、結合活性についてスクリーニングすることができる。
【0071】
従って、ここに開示されたヌクレオチド配列(重鎖及び軽鎖可変領域)にコードされた
、及び/又は、ここに開示された(重鎖及び軽鎖可変領域)アミノ酸配列
(即ち、配列番号:2、4、6、8、10、12、14、16、及び17-40)を含有する抗体には、保存的に改変された同様の配列にコードされた、又は、保存的に改変された同様の配列を含有する、実質的に同様の抗体が含まれる。このような実質的に同様の抗体を、ここに配列番号: 2、4、6、8、10、12、14、16、及び17-40として開示された部分的(即ち重鎖及び軽鎖可変領域)配列に基づいて作製できるかについての更なる議論を、下に提供する。
【0072】
ヌクレオチド及びアミノ酸配列に関し、用語「相同性」は、適当なヌクレオチド挿入又は欠失がありながらも、最適にアライメントして比較した場合の2つの核酸又はアミノ酸配列間の同一性の程度を指す。代替的には、DNAの数セグメントが選択的ハイブリダイゼーション条件下で当該鎖の相補配列にハイブリダイズするときに、実質的な相同性が存在することとする。二つの配列間のパーセント同一性は、これら二つの配列を最適にアライメントするのに導入せねばならないギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮に入れたときの、これら配列に共通の同一位置の数の関数である(即ち、%相同性=同一位置の数/位置の総数×100)。二つの配列間の配列の比較及びパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に解説するように、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0073】
二つのヌクレオチド間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手できる)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMP マトリックスを用いて、ギャップ・ウェイトを40、50、60、70、又は80 にし、そしてレングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして決定することができる。二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた E. マイヤース及びW. ミラーのアルゴリズム(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988)) を用い、PAM120 ウェイト残基表を用いて、ギャップ・レングス・ペナルティを12、そしてギャップ・ペナルティを4にして、決定することもできる。さらに、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comで入手できる)のGAPプログラムに組み込まれたニードルマン及びワンシュ
(J.
Mol. Biol. (48):444-453 (1970))のアルゴリズムを用い、Blossum 62 行列又はPAM250行列のいずれかを用いて、ギャップ・ウェイトを16、14、12、10、8、6、又は4にし、レングス・ウェイトを1、2、3、4、5、又は6にして、決定することができる。
【0074】
さらに本発明の核酸及びタンパク質の配列を「クエリー配列」として利用して、公開データベースの検索を行って、例えば関連する配列を同定することなどができる。このような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のNBLAST 及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)を利用すれば行える。BLASTヌクレオチド検索を、NBLASTプログラムを用い、スコア= 100、ワード長= 12 にして行うと、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索を、 XBLASTプログラムを用い、スコア= 50、ワード長= 3にして行うと、本発明のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としてギャップのあるアライメントを行うには、Gapped BLAST をAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402が解説するとおりに利用できる。BLAST及びギャップドBLASTプログラムを利用する場合、各プログラムの(例えばXBLAST 及びNBLAST)のデフォルト・パラメータを利用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov. を参照されたい。
【0075】
当該核酸は全細胞中にあっても、細胞ライセート中にあっても、又は部分的に精製されたもしくは実質的に純粋な形で存在してもよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラム・クロマトグラフィ、アガロースゲル電気泳動法、及び当業で公知の他の技術を含む標準的な技術により、例えば他の細胞内核酸又はタンパク質など、他の細胞成分又は他の混入物質を取り除いて精製されている場合に、「単離されている」又は「実質的に純粋である」ことになる。
F. Ausubel, et al., ed. Current Protocols in Molecular
Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York (1987)を参照されたい。
【0076】
cDNA、ゲノム又は混合物由来である本発明の核酸組成物は、しばしば天然配列(改変された制限部位等を除き)のままであるが、遺伝子配列を提供する標準的技術に従って変異させてもよい。コーディング配列の場合、これらの変異は、必要に応じアミノ酸配列を左右するものでもよい。具体的には、ここで解説した天然V、D、J、定常、スイッチ及び他のこのような配列に実質的に相同又は由来とするDNA配列が考えられる(「由来する」が、ある配列が別の配列と同一か、もしくは別の配列から改変されていることを指す場合)。
【0077】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれたときに「作動的に連結された」ことになる。例えば、あるプロモータ又はエンハンサが、あるコーディング配列の転写を左右するのであれば、その配列に作動的に連結されていることになる。調節配列の転写に関する場合、作動的に連結されたとは、連結しようとするDNA配列が連続していることを意味し、また2つのタンパク質コーディング領域を接合するために必要な場合には、連続し、かつ読み取り枠内にあることを意味する。スイッチ配列の場合には、作動的に連結された、とは、当該配列がスイッチ組換えを起こし得ることを指す。
【0078】
ここで用いる用語「ベクタ」とは、連結された先の別の核酸を輸送できる核酸分子を言うものと、意図されている。ベクタの一種が、付加的なDNAセグメントを連結できる環状の二本鎖DNAループを言う「プラスミド」である。ベクタのもう一つの種類がウィルスベクタであり、この場合、付加的なDNAセグメントは、ウィルスゲノム内に連結させることができる。いくつかのベクタは、導入された先のホスト細胞内で自律的複製が可能である(例えば細菌由来の複製開始点を有する細菌ベクタや、エピソームほ乳類ベクタなど)。他のベクタ(例えば非エピソームほ乳類ベクタなど)は、ホスト細胞に導入されるや、ホスト細胞のゲノムに組み込まれるため、ホストゲノムと一緒に複製される。さらに、いくつかのベクタは、作動的に連結された先の遺伝子の発現を命令することができる。このようなベクタをここでは「組換え発現ベクタ」(又は単に「発現ベクタ」)と呼ぶ。一般的に、組換えDNA技術で実用性のある発現ベクタは、しばしばプラスミドの形である。本明細書では、プラスミドが最も普通に用いられている形のベクタであるため、「プラスミド」及び「ベクタ」を交換可能に用いている場合がある。しかしながら、本発明には、例えばウィルスベクタ(例えば複製欠陥レトロウィルス、アデノウィルス及びアデノ随伴ウィルス)など、同等の機能を果たす他の形のこのような発現ベクタも包含されることが、意図されている。
【0079】
ここで用いる用語「組換えホスト細胞(又は単に「ホスト細胞」)とは、組換え発現ベクタが導入された細胞を言うものと、意図されている。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の後代も言うものと意図されていることは、理解されねばならない。突然変異又は環境による影響が原因で、特定の改変が継代に起きる場合があるため、このような後代は実際には親細胞と同一でないかも知れないが、それでも尚、ここで用いる用語「ホスト細胞」の範囲内に含まれる。組換えホスト細胞には、例えば、CHO細胞及びNS/0細胞など、トランスフェクトーマも含まれる。
【0080】
ここで用いる用語「対象」には、ヒト又は非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、例えばほ乳動物及び非哺乳動物、例えばヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類等、あらゆる脊椎動物が含まれる。
【0081】
用語「非ヒトトランスジェニック動物」とは、1つ以上のヒト重鎖及び/又は軽鎖導入遺伝子又はトランスクロモゾーム(当該動物の天然のゲノムDNAに組み込ませて、又は組み込ませずに)を含み、完全ヒト抗体を発現することができるゲノムを有する非ヒト動物を言う。
例えば、トランスジェニック・マウスは、このマウスをCD25抗原及び/又はCD25発現細胞で免疫したときにヒト抗CD25抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子又はヒト重鎖トランスクロモゾームとを有することができる。本ヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子及び/又はトランスクロモゾームは、マウスの染色体DNAに組み込ませることも、又は、染色体外に維持することもできる。このようなトランスジェニック及びトランスクロモゾーマル・マウス(まとめて、「ここでは「トランスジェニック・マウス」と呼ぶ)は、V-D-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、CD25に対して複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体
(例えば IgG、IgA、IgM、IgD及び/又はIgE) を産生することができる。非ヒトトランスジェニック動物は、さらに、当該遺伝子を、動物の乳内に発現される遺伝子に作動的に連結させるなどにより、このような特異的抗CD25抗体をコードする遺伝子を導入することにより、特異的抗CD25抗体の作製にも用いることができる。本発明の多様な局面を、以下の小項で更に詳述する。
【0082】
I. CD25に対するヒト抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein (1975) Nature 256: 495の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術など、を含む多様な技術により作製できる。体細胞ハイブリダイゼーション法が基本的には好適であるが、モノクローナル抗体を作製する他の技術、例えばBリンパ球のウィルス又は腫瘍形成性形質転換や、又は、ヒト抗体遺伝子のライブラリを用いたファージ・ディスプレイ技術など、も利用できる。
【0083】
ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを調製するための好適な動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ作製は大変よく確立された手法である。融合用の免疫化脾細胞の免疫プロトコル及び単離のための技術は当業で公知である。融合相手(例えばマウス骨髄腫細胞)及び融合法も公知である。
【0084】
ある好適な実施態様では、CD25を狙ったヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を持つトランスジェニック又はトランスクロモゾーマル・マウスを用いて作製できる。これらのトランスジェニック及びトランスクロモゾーム・マウスには、それぞれ
例えばHCo7及びHCo12マウスなど、ここでHuMAbマウスと呼ばれるマウスが含まれ、まとめてここでは「トランスジェニック・マウス」と呼ばれる。
【0085】
HuMAbマウスは、再編成のないヒト重鎖(μ及びγ)及びκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子最小遺伝子座を、内因性μ及びκ鎖遺伝子座を不活性化させる標的化された変異と一緒に含有する
(Lonberg,
N. et al. (1994) Nature 368 (6474):856-859)。従って、このマウスは、マウスIgM及又はκ軽鎖の低い発現を示し、そして免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子がクラス・スイッチング及び体細胞変異を起こして、高親和ヒト IgG,κモノクローナル抗体を産生する
(Lonberg,
N. et al. (1994), supra; reviewed in Lonberg, N. (1994) Handbook of
Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev.
Immunol. Vol. 13:65-93, and Harding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y.
Acad. Sci 764:536-546)。HuMAbマウスの調製はTaylor, L. et al. (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al (1993) International
Immunology 5:647-656; Tuaillon et al. (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Lonberg N. et
al., (1994) Nature 368(6474):856-859; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology
113:49-101; Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6:579-591; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev.
Immunol. Vol. 13:65-93; Harding, F. and Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y.
Acad. Sci 764:536-546; Fishwild, D. et al. (1996) Nature
Biotechnology 14:845-851に詳述されている。更に、すべてLonberg 及びKayの米国第5,545,806号;米国第5,569,825号;米国第5,625,126号;米国第5,633,425号;米国第5,789,650号;米国第5,877,397号;米国第5,661,016号;米国第5,814,318号;米国第5,874,299号;及び米国第5,770,429号や、Surani et al の米国第5,545,807号;WO 98/24884, WO 94/25585、WO 93/1227、WO 92/22645、WO 92/03918 及びWO 01/09187も参照されたい。
【0086】
HCo7マウスはJKD 破壊をそれらの内因性軽鎖(カッパ)遺伝子に(Chen et al. (1993) EMBO J. 12:
821-830に解説されたとおり)、CMD
破壊をそれらの内因性重鎖遺伝子(WO 01/14424の実施例1に解説されたとおり)、KCo5ヒト カッパ軽鎖導入遺伝子 (Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に解説されたとおり)、及びHCo7ヒト重鎖導入遺伝子 (米国第5,770,429号に解説された通り)に持つ。
【0087】
HCo12マウスはJKD 破壊をそれらの内因性軽鎖(カッパ)遺伝子に(Chen et al. (1993) EMBO J. 12:
821-830に解説されたとおり)、CMD
破壊をそれらの内因性重鎖遺伝子(Korman et al.によるWO 01/14424の実施例1に解説されたとおり)、KCo5ヒト カッパ軽鎖導入遺伝子 (Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に解説されたとおり)、及びHCo12ヒト重鎖導入遺伝子 (Korman et al.によるWO 01/14424 の実施例2に解説された通り)に持つ。KMマウス株においては、内因性のマウスカッパ軽鎖遺伝子は、Chen et
al. (1993) EMBO J. 12:811-820に解説された通りにホモ接合型に破壊されており、またその内因性マウス重鎖遺伝子は、WO 01/09187の実施例1に解説された通りにホモ接合型に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnology 14:845-851に解説された通りのヒトカッパ軽鎖導入遺伝子 KCo5を持つ。更にこのマウス株は、WO 02/43478に解説されているように、染色体14断片hCF (SC20) から成るヒト重鎖トランスクロモゾームも持つ。
【0088】
免疫処理
CD25に対する完全ヒトモノクローナル抗体を作製するためには、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有するトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル・マウス(例えばHCo12、HCo7又はKMマウス)を、上記のLonberg, N. et al. (1994) 上記のFishwild, D. et al. (1996) 及び WO 98/24884に解説されたようにCD25抗原の濃縮製剤、組換えCD25、及び/又はCD25発現細胞で免疫することができる。代替的には、マウスを、ヒトCD25をコードするDNAで免疫することができる。好ましくは、当該マウスは1回目の輸注時に6乃至16週齢であるとよい。例えば、CD25抗原の濃縮製剤又は組換えCD25抗原を用いて、HuMAbマウスを腹腔内により免疫することができる。CD25抗原の精製もしくは濃縮製剤を用いた免疫処置でも抗体が生じない場合、細胞株など、CD25発現細胞でマウスを免疫して、免疫応答を促進することもできる。
【0089】
多様な抗原を用いて蓄積した経験では、HuMAbトランスジェニックマウスは、まずCD25発現細胞を完全又は不完全フロイント・アジュバントに入れて腹腔内(IP)又は皮下(SC)免疫し、その後リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などにCD25発現細胞を入れて(最高で合計10回)IP免疫処置したときに最も良く応答することが示された。免疫応答は、眼窩後方の採血で得た血清試料で、免疫プロトコルの経過にわたって観察することができる。この血清はFACS分析(以下に解説するように)でスクリーニングすることができ、充分な抗体価の抗CD25ヒト免疫グロブリンを持つマウスを融合に用いることができる。マウスは、と殺並びに脾臓及びリンパ節の摘出から例えば3日及び2日前などにCD25発現細胞を静注して追加免疫することができる。
【0090】
CD25に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの作製
CD25に対するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するには、免疫後のマウスから脾細胞及びリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適した不死化細胞株に融合させることができる。こうして出来たハイブリドーマを次に、抗原特異的抗体の産生についてスクリーニングすることができる。例えば免疫されたマウス由来の脾臓リンパ球の単個細胞懸濁液を、50% PEG(w/v)で、SP2/0-Ag14 骨髄腫細胞 (ATCC, CRL 1581) に融合させることができる。細胞を平らな平底微量定量プレートに1ウェル当たりほぼ1×105個になるようにプレートした後、通常の試薬の他に10% 胎児クローン血清、5 Origen ハイブリドーマ・クローニング・ファクター (IGEN)及び1X HAT (シグマ社)を含有する選択培地で2週間、インキュベートすることができる。ほぼ2週間後、HATをHT(シグマ社)に取り替えた培地で細胞を培養することができる。次に個々のウェルをELISAによりヒトカッパ軽鎖含有抗体について、そしてFACS分析によりCD25発現細胞を用いてCD25特異性についてスクリーニングすることができる。広汎なハイブリドーマ成長が起きたら、通常は7乃至10日後に、クローンをIgG産生についてスクリーニングすることができる。抗体を分泌しているハイブリドーマを再度プレートし、再度スクリーニングし、ヒトIgGについてまだ尚陽性であれば、抗CD25モノクローナル抗体を限界希釈により少なくとも2回、サブクローニングすることができる。次に安定なサブクローンをin vitroで培養して、抗体を組織培養培地中に生じさせ、特徴付けに向けることができる。
【0091】
CD25に対するヒトモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの作製
本発明のヒト抗体は、当業で公知のように、組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション法の組合せなどを用いて、ホスト細胞トランスフェクトーマで作製することもできる
(Morrison,
S. (1985) Science 229:1202)。
【0092】
例えば、本抗体又はその抗体フラグメントを発現させるために、部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAを、標準的な分子生物学技術
(例えば PCR増幅法、部位指定変異誘発法)により得ることができ、当該遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動的に連結されているように、発現ベクタ内に挿入することができる。この文脈において、用語「作動的に連結されている」は、当該ベクタ内の転写及び翻訳調節配列が当該抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節するという、それらに意図された機能を果たすように、抗体遺伝子がベクタにライゲートされていることを意味するものと、意図されている。該発現ベクタ及び発現調節配列は、用いられる発現ホスト細胞に適合性があるように、選択される。該抗体軽鎖遺伝子及び該抗体重鎖遺伝子を別々のベクタに挿入することも、あるいはより典型的には、両方の遺伝子を同じ発現ベクタに挿入する。本抗体遺伝子は、標準的な方法により発現ベクタ内に挿入される(例えば抗体遺伝子フラグメント及びベクタ上の相補的な制限部位のライゲーション、又は、制限部位が存在しない場合には平滑末端のライゲーション)。ここで解説された抗体の軽鎖及び重鎖可変領域を用いると、VHセグメントがベクタ内のCHセグメントに作動的に連結され、そしてVLセグメントがベクタ内のCLセグメントに作動的に連結されているように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクタ内にそれらを挿入することにより、あらゆる抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作製することができる。加えて、又は代替的に、該組換え発現ベクタは、ホスト細胞からの本抗体鎖の分泌を促すシグナル・ペプチドをコードしていてもよい。本抗体鎖遺伝子を、当該のシグナル・ペプチドが本抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結しているように、該ベクタ内にクローニングすることができる。このシグナル・ペプチドは、免疫グロブリン・シグナル・ペプチドであっても、又は、異種のシグナル・ペプチド(即ち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナル・ペプチド)であってもよい

【0093】
本抗体鎖遺伝子に加え、本発明の組換え発現ベクタは、ホスト細胞内で本抗体鎖遺伝子の発現を調節する調節配列を持つ。用語「調節配列」には、本抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を調節するプロモータ、エンハンサ及び他の発現調節因子(例えばポリアデニレーション・シグナル)が含まれるものと、意図されている。このような調節配列は、例えばGoeddel; Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185,
Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に解説されている。当業者であれば、調節配列の選択を含め、発現ベクタのデザインは、形質転換させようとするホスト細胞の選択、所望のタンパク質発現レベル等の因子に応じるであろうことは理解されよう。哺乳動物ホスト細胞発現にとって好適な調節配列には、例えばサイトメガロウィルス(CMV)、シミアン・ウィルス40(SV40)、アデノウィルス、(例えばアデノウィルスの主要後期プロモータ(AdMLP))及びポリオーマを由来とするプロモータ及び/又はエンハンサなど、哺乳動物細胞で高レベルのタンパク質発現を命令するウィルス配列が含まれる。代替的には、ユビキチン・プロモータ又はβ-グロビン・プロモータなど、非ウィルス性の調節配列を用いてもよい。
【0094】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加え、本発明の組換え発現ベクタには、ホスト細胞内でのベクタの複製を調節する配列(例えば複製開始点)や、選択マーカ遺伝子など、付加的な配列を持たせてもよい。選択マーカ遺伝子は、ベクタが導入されたホスト細胞の選抜を容易にするものである(例えばすべてAxel et al.の米国特許第4,399,216号、第4,634,665号及び第5,179,017号を参照されたい)。例えば、典型的には、選択マーカ遺伝子は、例えばG418、ヒグロマイシン又はメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を、ベクタが導入されたホスト細胞にもたらす。好適な選択マーカ遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR) 遺伝子( メトトレキセート選抜/増幅でdhfr-ホスト細胞を用いるため)及びneo 遺伝子 (G418選抜のため)、がある。
【0095】
軽鎖及び重鎖の発現のためには、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクタをホスト細胞に標準的技術によりトランスフェクトする。多様な形の用語「トランスフェクション」は、原核もしくは真核ホスト細胞内に外因性DNAを導入するために通常用いられている多種の技術を包含するものと、意図されており、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAE-デキストラン・トランスフェクション等がある。理論上は本発明の抗体を原核ホスト細胞又は真核ホスト細胞のいずれでも発現させることが可能であるが、抗体の真核細胞、そして最も好ましくは哺乳動物ホスト細胞での発現が、最も好適である。なぜならこのような真核細胞、そして特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、正しく折り畳まれ、免疫学的に活性な抗体を集合させ、分泌する可能性が高いからである。
【0096】
本発明の組換え抗体を発現させるために好適な哺乳動物ホスト細胞には、CHO細胞 (Urlaub and
Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に解説された、DHFR選択マーカと一緒に、R. J. Kaufman and P. A.
Sharp (1982) Mol. Biol. 159:601-621で解説されたように用いられたdhfr-CHO 細胞を含む)、NS/0骨髄腫細胞、COS 細胞、HEK293 細胞 及びSP2 細胞、がある。特にNS/0骨髄腫細胞と一緒に用いるには、別の好適な発現系は、WO 87/04462、WO 89/01036 及びEP 338 841 に解説されたGS(グルタミン・シンターゼ)遺伝子発現系である。 抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクタを哺乳動物ホスト細胞に導入する場合、このホスト細胞を、このホスト細胞内の抗体発現に充分な時間、培養したり、あるいはより好適には、このホスト細胞を成長させている培養基に抗体が分泌されるのに充分な時間、培養することにより、本抗体を産生させる。抗体は、標準的なタンパク質精製法を用いて、培養基から回収することができる。
【0097】
CD25に対するヒトモノクローナル抗体を作製するための更なる組換え手段
代替的には、クローニングされた抗体遺伝子を、例えばscFv抗体を産生させるためのE. coliなどの微生物などの原核細胞、藻類や、昆虫細胞を含む他の発現系で発現させることができる。更に、本抗体を、ヒツジ及びウサギの乳、又は、鶏卵などの非ヒトトランスジェニック動物や、又はトランスジェニック植物に産生させることができる。例えば Verma, R., et al. (1998). Antibody engineering: Comparison of bacterial, yeast, insect and
mammalian expression systems. J.Immunol.Meth. 216:165-181; Pollock, et al. (1999). Transgenic
milk as a method for the production of recombinant antibodies. J.Immunol.Meth.
231:147-157; and Fischer, R., et al. (1999). Molecular farming of recombinant antibodies
in plants. Biol.Chem. 380:825-839を参照されたい。
【0098】
インタクト抗体を発現させるために部分的抗体配列の使用
抗体は標的抗原と、主に6番目の重鎖及び軽鎖CDRに位置するアミノ酸残基を介して相互作用する。これが理由で、CDR内のアミノ酸配列は、CDR以外の配列でよりも、個体間でより多様である。CDR配列は、大半の抗体−抗原相互作用を担っているため、特定の天然型抗体由来のCDR配列を、異なる特性を持つ異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植された形で含有する発現ベクタを構築することにより、この特定の天然型抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al. (1986) Nature
321:522-525; and Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci.. U.S.A.
86:10029-10033を参照されたい)。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公共のDNAデータベースから得ることができる。これらの生殖細胞系配列は、成熟抗体遺伝子配列とは異なるであろう。なぜなら、これらは、B細胞成熟中にV(D)Jジョイニングにより形成される完全に集合した可変遺伝子を含有しないことになるからである。生殖細胞系遺伝子配列はまた、可変遺伝子全体にではあるが典型的にはCDRに集まっている変異を含有する高親和二次レパートリー抗体の配列とも異なるであろう。例えば、体細胞変異は、フレームワーク領域1のアミノ末端部分や、フレームワーク領域4のカルボキシ末端部分では、比較的に頻度が少ない。さらに、多くの体細胞変異は、本抗体の結合特性を大きく変えない。そのため、元の抗体のものと同様な結合特性を有するインタクト組換え抗体を作り直すためにも、この特定の抗体のDNA配列全体を得る必要はない(WO 99/45962を参照されたい)。CDR領域にわたる部分的重鎖及び軽鎖配列があれば、典型的にはこの目的のために充分である。この部分的配列を用いて、どの生殖細胞系可変及びジョイニング遺伝子セグメントが、組換え後の抗体可変遺伝子に寄与したか決定する。次に、この生殖細胞系配列を用いて、可変領域の消失部分を充填する。重鎖及び軽鎖リーダ配列はタンパク質成熟中に切断され、最後の抗体の特性には寄与しない。消失配列を加えるために、クローニングされたcDNA 配列を、ライゲーション又はPCR増幅法により、合成オリゴヌクレオチドと組み合わせることができる。代替的には、可変領域全体を一組の短い、重複のあるオリゴヌクレオチドとして合成し、PCR増幅法により組み合わせて、完全に合成の可変領域クローンを作製することもできる。このプロセスは、例えば特定の制限部位の消去又は含有や、又は、特定のコドンの最適化など、いくつかの利点を有する。
【0099】
ハイブリドーマ由来の重鎖及び軽鎖転写産物のヌクレオチド配列を用いて、重複のある組の合成オリゴヌクレオチドをデザインして、天然配列と同一のアミノ酸コーディング能を持つ合成V配列を作製することができる。合成重鎖及びカッパ鎖配列は、天然配列から3つの点で異なる:反復したヌクレオチド塩基の部分に中断があるため、オリゴヌクレオチドの合成及びPCR増幅が容易である;最適な翻訳開始部位がコザックの規則に基づいて取り入れられている
(Kozak (1991) J. Biol. Chem.
266:19867-19870); そしてHindIII 部位がこの翻訳開始部位の上流に操作されている。
【0100】
重鎖及び軽鎖可変領域の両方について、最適化されたコーディング鎖、及び対応する非コーディング鎖の配列は、この対応する非コーディングオリゴヌクレオチドのほぼ中間点で30乃至50ヌクレオチドに分割されている。従って、各鎖について、これらのオリゴヌクレオチドを、150乃至400個のヌクレオチドのセグメントにわたる重複した二本鎖の組に集合させることができる。次に、このプールをテンプレートとして用いて、150乃至400個のヌクレオチドのPCR増幅産物を作製する。典型的には、一個の可変領域オリゴヌクレオチドの組が、2つのプールに分割されることになり、これら2つのプールを別々に増幅して、重複のある2つのPCR産物を生じさせる。次に、これらの重複のある産物をPCR増幅により組み合わせて、完全な可変領域を形成する。さらに、このPCR増幅で、(カッパ軽鎖のBbsI 部位、又は、ガンマ重鎖の AgeI部位を含む)重鎖又は軽鎖定常領域の重複のあるフラグメントを含有させて、発現ベクタ・コンストラクトに容易にクローニングすることのできるフラグメントを作製することも、好ましいであろう。
【0101】
次に、再構築された重鎖及び軽鎖可変領域を、クローニングされたプロモータ、リーダ配列、翻訳開始、定常領域、3'側非翻訳、ポリアデニレーション、及び転写終了配列と組み合わせて、発現ベクタ・コンストラクトを形成する。この重鎖及び軽鎖発現コンストラクトを組み合わせて単一のベクタにしてホスト細胞に同時トランスフェクトしたり、順にトランスフェクトしたり、別々にトランスフェクトした後、このホスト細胞を融合させて、両方の鎖を発現するホスト細胞を形成することができる。
【0102】
同様な手法は、既存の成熟抗体に新規な抗原特性を移植するためにも従うことができる。好ましくは、CDR-ドナー抗体と同じ可変生殖細胞系遺伝子から生じたアクセプタ抗体を選ぶとよい。次に、このドナー抗体由来の一つ以上のCDRを上に解説した技術を用いて移動させる。
【0103】
ヒトIgGκのための発現ベクタの構築に用いるプラスミドの例を以下に解説する。このプラスミドは、PCR増幅されたV 重鎖及びVカッパ軽鎖cDNA 配列を用いて完全重鎖及び軽鎖最小遺伝子を再構築できるように、構築された。これらのプラスミドを用いると、完全にヒトの IgG1,κ又はIgG4,κ抗体を発現させることができる。同様なプラスミドは、他の重鎖アイソタイプを発現させたり、又は、ラムダ軽鎖を含む抗体を発現させるためにも、構築することができる。
【0104】
従って、別の実施態様では、本発明は、ヒト抗CD25抗体を調製するための多様な方法を提供するものである。ある実施態様では、本方法は:
(1)ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDRであって、但し前記ヒト重鎖CDRの少なくとも1つが、図1−10に示されたCDRのアミノ酸配列 から選択されるアミノ酸配列(又は、配列番号:17-19、23-25、29-31、又は35-37の対応するアミノ酸残基)を含む、ヒト重鎖フレームワーク領域及びヒト重鎖CDR;並びに (2)ヒト軽鎖フレームワーク領域
及びヒト軽鎖CDRであって、但し前記ヒト軽鎖CDRの少なくとも1つが、図1−10に示されたCDRのアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列(又は、配列番号:20-22、26-28、32-34、又は38-40の対応するアミノ酸残基)を含む、ヒト軽鎖フレームワーク領域
及びヒト軽鎖CDR;を含む抗体を調製するステップを含み、但し前記抗体はCD25への結合能を維持している。
【0105】
こうして、本抗体のCD25への結合能は、実施例で解説するものなど、標準的な結合検定法(例えばFACS分析)を用いて、判定することができる。
【0106】
当業においては、抗体 重鎖及び軽鎖CDR3ドメインは、特に重要な役割を、 ある抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において果たすことが良く知られているため、上に記載された通りに調製された本発明の組換え抗体は、好ましくは、AB1、AB7、AB11、又はAB12の重鎖及び軽鎖CDR3を含むとよい。更に本抗体には、 AB1、AB7、AB11、又はAB12のCDR2を含めることができる。 更に本抗体には、AB1、AB7、AB11、又は AB12のCDR1を含めることができる。従って、本発明は、更に、
(1)ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1 領域、ヒト重鎖CDR2 領域、及びヒト重鎖CDR3 領域であって、但し前記ヒト重鎖CDR3領域が、 図1−10 (又は配列番号: 19、25、31、又は37に示された対応するアミノ酸残基)に示されたAB1、AB7、AB11、又は AB12のCDR3である、ヒト重鎖フレームワーク領域、ヒト重鎖CDR1 領域、ヒト重鎖CDR2 領域、及びヒト重鎖CDR3 領域;並びに (2)ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1 領域、ヒト軽鎖CDR2 領域、及びヒト軽鎖CDR3 領域であって、但し前記ヒト軽鎖CDR3 領域が、図1−10 (又は配列番号:22、28、34、又は40の対応するアミノ酸残基)に示された AB1、AB7、AB11、又は AB12のCDR3である、ヒト軽鎖フレームワーク領域、ヒト軽鎖CDR1 領域、ヒト軽鎖CDR2 領域、及びヒト軽鎖CDR3 領域、を含む抗CD25抗体を提供するものであり、但し前記抗体はCD25に結合する。本抗体は、更に、AB1、AB7、AB11、又はAB12の重鎖CDR2及び/又は軽鎖CDR2を含んでいてもよい。本抗体は、更に、AB1、AB7、AB11、又は AB12の重鎖CDR1及び/又は軽鎖CDR1を含んでいてもよい。
【0107】
好ましくは、上述の操作された抗体の CDR1、2及び/又は3が、ここに開示された AB1、AB7、AB11、又はAB12 のそれと全く同じアミノ酸配列を含むとよい。しかしながら、当業者であれば、 AB1、AB7、AB11、又はAB12通りのCDR配列からの何らかの逸脱があっても、 CD25への結合能が事実上保持される場合があることを理解されよう(例えば保存的置換)。従って、別の実施態様では、操作された抗体は、 AB1、AB7、AB11、又はAB12の一つ以上のCDRに対して例えば90%、95%、98% 又は99.5% 相同であるような一つ以上のCDRから成っていてもよい。
【0108】
CD25への単なる結合に加えて、又はその代わりに、上に記載したものなどの操作された抗体は、本発明の抗体の他の機能上の特性の保持、例えば:
(1)ヒト CD25への高親和結合;
(2)CD25のIL-2への結合の阻害又は遮断;
(3)C25発現T細胞の消失;
(4)T細胞の寛容化;
(5)CD25発現T細胞の増殖の阻害;
(6)PBMCの抗CD3抗体誘導性T細胞増殖の阻害;
(7)MLRの阻害;
(8)T細胞上に発現したCD25の内部移行
について、選択してよい
【0109】
CD25に対するヒトモノクローナル抗体の結合の特徴付け
本発明のヒト抗CD25抗体は、数多くの様々な方法で単離及び特徴付けすることができる。例えば、選択されたハイブリドーマを、モノクローナル抗体精製用の適したフラスコ内で成長させることができる。次に上清を濾過し、濃縮してから、プロテインA−セファロース(IgG1アイソタイプ抗体の場合)(ニュージャージー州ピスカタウェイ、ファルマシア社)、あるいは、IgG3アイソタイプ抗体の場合は抗ヒトIgG被覆セファロース又はプロテインG−セファロースで、アフィニティ・クロマトグラフィすることができる。溶出したIgGをゲル電気泳動法及び高速液体クロマトグラフィでチェックして、純度を確認することができる。緩衝溶液をPBSに交換し、濃度は、OD280により、1.43吸光係数を用いて判定することができる。本モノクローナル抗体をアリクォートし、−80℃で保存することができる。
【0110】
選択されたヒト抗CD25モノクローナル抗体が固有のエピトープに結合するかどうかを判定するには、部位指定もしくは多部位指定変異誘発法を用いることができる。
【0111】
精製された抗体のアイソタイプを判定するには、アイソタイプELISAを行うことができる。微量定量プレートのウェルを10μg/mlの抗ヒトIgで、一晩、4℃で被覆することができる。5% BSA(ウシ血清アルブミン)で遮断後、このプレートを10μg/mlのモノクローナル抗体 又は精製済みアイソタイプ・コントロールと、周囲温度で2時間、反応させる。次にこのウェルをヒトIgGl、IgG2、IgG3又はIgG4、IgE、IgA1、IgA2、又はヒトIgM特異的アルカリホスファターゼ結合プローブのいずれかと反応させることができる。洗浄後、このプレートをpNPP 基質 (1 mg/ml) で展開させ、405のODで分析する。
【0112】
免疫済みマウスの血清中で抗CD25抗体の存在を実証したり、あるいは、CD25を発現する生存細胞へのモノクローナル抗体の結合を実証するには、フローサイトメトリを用いることができる。簡単に説明すると、CD25を発現している細胞株(標準的な成長条件下で成長させたもの)を、0.1% BSA 及び0.02% アジ化ナトリウムを含有するPBSに入れた多様な濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間、インキュベートする。洗浄後、細胞を、フルオレセイン標識抗ヒトIgG抗体に、一次抗体染色と同じ条件下で反応させる。試料は、単個生存細胞に当たる光及び側光散乱特性を用いて、フローサイトメータ(例えばベクトン・ディッキンソン社のFACS装置)を用いたフローサイトメトリにより分析することができる。フローサイトメトリ検定法に(加えて、又は代わりに)、蛍光顕微鏡法を用いた代替的検定法を用いてもよい。細胞は、上述したのと全く同じ通りに染色することができ、蛍光顕微鏡法で調べることができる。この方法により、個々の細胞の観察が可能となるが、抗原濃度によっては、感度が劣るであろう。
【0113】
抗CD25ヒトIgGは、さらに、ウェスタン・ブロット法でも、CD25抗原との反応性について、検査することができる。簡単に説明すると、CD25発現細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動法を行うことができる。電気泳動後、分離した抗原をニトロセルロース・メンブレンに移し、20%脱脂乳で遮断し、検査対象のモノクローナル抗体でプローブすることとなる。ヒトIgG の結合は、抗ヒトIgGアルカリホスファターゼを用いて検出することができ、BCIP/NBT 基質錠剤(ミズーリ州セントルイス、シグマ・ケミカルズ社)で展開させることができる。
【0114】
CD25発現細胞の活性の阻害
CD25への特異的結合に加え、ヒトモノクローナル抗CD25抗体を、例えばT細胞及び他のリンパ球など、CD25を発現する細胞の様々な活性の阻害能についても、検査することができる。例えば、T細胞増殖検定法は、公知の技術を用いて行うことができる。ある技術においては、ヒトPBMCを適した媒質に希釈した後、例えば抗CD3抗体などで刺激してから、多様な濃度の実験抗体を加えて、これらがT細胞増殖に及ぼす効果を判定する。精製済みT細胞のT細胞増殖は、抗CD3及び抗CD28モノクローナル抗体の存在下でも評価することができる。
【0115】
MLRに関する検定も公知の技術を用いて行うことができる。例えば、第一のドナーからのPBMCを放射線照射し、第二のドナーからのPBMCと混合することができる。次に、多様な濃度の抗体をこの細胞に加えた後、MLR応答を測定することができる。
【0116】
II. ヒトモノクローナル抗CD25抗体を産生する非ヒトトランスジェニック動物の作製
さらに別の局面では、本発明は、CD25に特異的に結合するヒト抗体を発現することのできる、トランスジェニック又はトランスクロモソーマル・マウスなどの非ヒトトランスジェニック及びトランスクロモソーマル動物を提供するものである。ある具体的な実施態様では、本発明は、CD25発現細胞で免疫されたときに、当該のマウスがヒト抗CD25抗体を産生するようにヒト重鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック又はトランスクロモソーマル・マウスを提供する。該ヒト重鎖導入遺伝子は、ここで詳述し、例示するように、HuMAbマウスなど、トランスジェニックと同様に、マウスの染色体DNAに組み込ませることができる。代替的には、該ヒト重鎖導入遺伝子を、WO 02/43478に解説された通りのトランスクロモソーマル(例えばKM)・マウスの場合のように、染色体外に維持することもできる。このようなトランスジェニック及びトランスクロモソーマル動物は、V-D-J/V-J組換え及びアイソタイプ・スイッチングを起こすことにより、CD25に対して複数のアイソタイプ(例えばIgG、IgA 及び/又は IgE)のヒトモノクローナル抗体を産生することができる。外来の抗原刺激に対し、異種の抗体レパートリーで応答する非ヒトトランスジェニック及びトランスクロモソーマル動物のデザインには、当該のトランスジェニック動物に含まれた異種の免疫グロブリン導入遺伝子が、B細胞発生の経路全般にわたって正確に機能する必要がある。これには、例えば、異種重鎖導入遺伝子のアイソタイプ・スイッチングが含まれる。従って、導入遺伝子は、アイソタイプ・スイッチングが誘導されるように構築され、抗体遺伝子の以下の特徴のうちの1つ以上:(1)高レベル及び細胞種特異的な発現、(2)機能的な遺伝子再編成、(3)対立遺伝子排除の活性化及び対立遺伝子排除に対する応答、(4)充分な一次レパートリの発現、(5)シグナル伝達、(6)体細胞超変異、及び(7)免疫応答中の導入遺伝子抗体遺伝子座の優性。
【0117】
前述の基準の全てを満たす必要はない。例えば、トランスジェニック動物の内因性免疫グロブリン遺伝子座を機能的に破壊した実施態様では、この導入遺伝子は対立遺伝子排除を活性化する必要はない。さらに、導入遺伝子が機能的に再編成された重鎖及び/又は軽鎖免疫グロブリン遺伝子を含む実施態様では、機能的な遺伝子再編成という二番目の基準は、少なくとも導入遺伝子が既に再編成されている限りにおいて、不要である。分子免疫学の背景については、Fundamental Immunology, 2nd edition (1989), Paul William E., ed. Raven Press, N.Y.を参照されたい。
【0118】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を作製するために用いる非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル動物は、再編成された、再編成のない、又は再編成された及び再編成のないものの組合せの異種免疫グロブリン重鎖及び軽鎖導入遺伝子を、このトランスジェニック動物の生殖細胞系に含有する。重鎖導入遺伝子のそれぞれは少なくとも一つのCH遺伝子を含む。加えて、この重鎖導入遺伝子が、このトランスジェニック動物のB細胞中で、複数のCH遺伝子をコードする異種導入遺伝子のアイソタイプ・スイッチングを支援できる機能的アイソタイプ・スイッチ配列を含有してもよい。このようなスイッチ配列は、導入遺伝子CH遺伝子の源として働く種由来の生殖細胞免疫グロブリン遺伝子座に天然で存在するものであってもよく、あるいはこのようなスイッチ配列は、導入遺伝子コンストラクトを受け取る側の種(トランスジェニック動物)にあるものを由来としてもよい。例えば、トランスジェニックマウスを作製するために用いるヒト導入遺伝子コンストラクトは、マウス重鎖遺伝子座に天然で存在するものと類似のスイッチ配列が導入されている場合には、より高頻度でアイソタイプ・スイッチング事象を起こすと思われる。これはおそらく、マウススイッチ・リコンビナーゼ酵素系で機能するにはこのようなマウススイッチ配列は最適であるが、ヒトスイッチ配列はそうでないからであろう。スイッチ配列は従来のクローニング法で単離及びクローニングしてもよく、又は、免疫グロブリンスイッチ領域配列に関して公開された配列情報に基づいてデザインされた重複合成オリゴヌクレオチドからde novo合成してもよい(Mills et al.,
Nucl. Acids Res. 15:7305-7316 (1991); Sideras et al., Intl. Immunol. 1:631-642 (1989))。前述のトランスジェニック動物のそれぞれの場合、機能的に再編成された異種重鎖及び軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子が、このトランスジェニック動物のB細胞の大部分で見られる(少なくとも10パーセント)。
【0119】
本発明の非ヒトトランスジェニック動物を作製するために用いる導入遺伝子は、少なくとも一つの可変遺伝子セグメント、一つの多様性遺伝子セグメント、一つのジョイニング遺伝子セグメント、及び少なくとも一つの定常領域遺伝子セグメント、をコードするDNAを含む重鎖導入遺伝子を含む。免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子は、少なくとも一つの可変遺伝子セグメント、一つのジョイニング遺伝子セグメント、及び少なくとも一つの定常領域遺伝子セグメント、をコードするDNAを含む重鎖導入遺伝子を含む。免疫グロブリン軽鎖導入遺伝子は、少なくとも一つの可変遺伝子セグメント、一つのジョイニング遺伝子セグメント、及び少なくとも一つの定常領域遺伝子セグメント、をコードするDNAを含む。前記軽鎖及び重鎖遺伝子セグメントをコードする遺伝子セグメントは、当該の非ヒトトランスジェニック動物を構成しない種を由来とする免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子セグメントをコードするDNAを由来とするか、又は、このようなDNAに相当するため、このトランスジェニック動物にとって異種である。本発明の一局面では、これら個々の遺伝子セグメントが再編成されないように、即ち、機能的免疫グロブリン軽鎖又は重鎖をコードするよう、再編成されないように、導入遺伝子を構築する。このような再編成のない導入遺伝子は、V、D、及びJ遺伝子セグメントの組換え(機能的再編成)を支援し、好ましくは、CD25抗原に暴露したときに、当該トランスジェニック動物内でD領域遺伝子セグメントの全部又は一部が再編成後の免疫グロブリン重鎖へ取り込まれることを支援するとよい。
【0120】
代替的な実施態様では、当該導入遺伝子は再編成のない「最小遺伝子座」を含むものである。このような導入遺伝子は典型的に、C、D、及びJセグメントの大部分や、V遺伝子セグメントのサブセットを含む。このような導入遺伝子コンストラクトにおいては、多様な調節配列、例えばプロモータ、エンハンサ、クラス・スイッチ領域、RNAプロセッシングの際のスプライス−ドナー及びスプライス−アクセプタ配列、組換えシグナル等、は、当該の異種DNA由来の対応する配列を含む。このような調節配列は、この導入遺伝子に、本発明で用いられる非ヒト動物と同じ種から、又は、関連する種から、導入してよい。例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントを導入遺伝子内でげっ歯類免疫グロブリンエンハンサ配列に組み合わせて、トランスジェニックマウスでの利用に向けてもよい。代替的には、哺乳動物のゲノムに天然で存在することが公知の機能的DNA配列にとって同種でないような合成調節配列を、導入遺伝子に組み込んでもよい。合成調節配列は、例えばスプライス−アクセプタ部位又はプロモータ/エンハンサ・モチーフの許容可能な配列を明示したものなど、コンセンサスの規則に従ってデザインされる。例えば、最小遺伝子座は、天然で発生する生殖細胞系Ig遺伝子座に比較して、必須でないDNA部分(例えば介在配列;イントロン又はその一部分)に、少なくとも一つの中間(即ち当該部分の末端ではない)の欠失を有するゲノム免疫グロブリン遺伝子座の一部分を含む。
【0121】
好適な非ヒトトランスジェニック及びトランスクロモソーマル動物、例えばマウス、は、大きなレパートリー、理想的には容量を調節後のヒトのそれと実質的に同様なレパートリーで、免疫グロブリン産生を示すことになるものである。
【0122】
前記レパートリーは、理想的には、容量を調節後のヒトが示すものに、通常は少なくとも約10%、好ましくは25乃至50%又はそれ以上の多様性がありながらも、近いとよいであろう。概して、少なくとも約1000種の異なる免疫グロブリン(理想的にはIgG)、好ましくは104乃至106又はそれ以上の種類が、主にマウスゲノムに導入された様々なV、J及びD領域の数に応じて、そしてジョイニング領域でのV(-D-)J遺伝子セグメント再編成及びランダムなヌクレオチド追加で生じる付加的な多様性に応じて、産生されるとよいであろう。典型的には、当該の免疫グロブリンは、所定の抗原に対し、例えば10-9 M 又は10-10 M又は10-11M以下又はそれ未満である、など、10-8M未満の親和性(KD)を示すであろう。
【0123】
マウスなど、上述したようなトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル動物は、CD25発現細胞などで免疫することができる。代替的には、当該のトランスジェニック動物を、ヒトCD25をコードするDNAで免疫することができる。この動物が産生するB細胞は、スイッチ組換え(cisスイッチング)を通じてクラス・スイッチングを起こして、CD25と反応性の免疫グロブリンを発現するであろう。この免疫グロブリンはヒト抗体(ここでは「ヒト配列抗体」とも言及される)でもよく、その重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、ヒト導入遺伝子配列にコードされていてもよいが、前記ヒト導入遺伝子配列は、体細胞変異及びV領域組換えジョイント由来の配列や、生殖細胞系にコードされた配列を含んでもよい。これらのヒト抗体は、ヒトVL及びJL又はVH、DH及びJH遺伝子セグメントにコードされたポリペプチド配列と実質的に同等であると言うことができ、ただし他の非生殖細胞系配列も、体細胞変異及び示差的なV-J 及びV-D-J組換えジョイントの結果として存在してもよい。各抗体鎖の可変領域は、典型的に、ヒト生殖細胞系V、及びJ遺伝子セグメントに、そして重鎖の場合、ヒト生殖細胞系、V、D、及びJ遺伝子セグメントに、少なくとも80パーセント、同様である。しばしば該可変領域の少なくとも85パーセントが、導入遺伝子上に存在するヒト生殖細胞配列に同様である。しばしば90又は95パーセント又はそれ以上が、導入遺伝子上に存在するヒト生殖細胞系配列に同様である。しかしながら、非生殖細胞系配列が体細胞変異並びにVJ及びVDJジョイニングで導入されるため、当該ヒト配列抗体はしばしば、ヒト導入遺伝子に見られるようなヒトV、D又はJ遺伝子セグメントにはコードされていない何らかの可変領域配列を、このマウスの生殖細胞系に有するであろう。典型的には、このような非生殖細胞系配列(又は個々のヌクレオチド位置)は、CDR中か、又はCDR近傍、あるいは体細胞変異が集中して起きることが知られている領域に集まるであろう。
【0124】

本発明の別の局面は、ここで解説した通りの非ヒトトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマル動物を由来とするB細胞を包含する。このB細胞は、ヒトCD25に対し、高親和(例えば10-8M未満の解離平衡定数(KD))結合するヒトモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマを作製するために用いることができる。このように、別の実施態様では、本発明は、放射活性標識モノクローナル抗体を用いたCD25発現細胞のスキャッチャード分析や、又は、FACS分析を用いた半分−最大結合濃度の決定や、あるいは、BIAcore装置で測定された表面プラズモン共鳴を用いた分析により、決定したときに、10-9M、10-10M又は10-11M又はそれ未満など、10-8M未満の親和性(KD)を有するヒト抗体を産生するハイブリドーマを提供するものである。
【0125】
ここで、本モノクローナル抗体は、
(1)ヒトVL遺伝子セグメント及びヒトJLセグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する軽鎖可変領域、及び(2)ヒトCL遺伝子セグメントにコードされた軽鎖定常領域、から成るヒト配列軽鎖と;
(1)ヒトVH遺伝子セグメント、D領域、及びヒトJHセグメントにコードされたポリペプチド配列に実質的に同一なポリペプチド配列を有する重鎖可変領域、及び(2)ヒトCH遺伝子セグメントにコードされた定常領域、から成るヒト配列重鎖と
を含む。ヒトD遺伝子が組換え及び体細胞変異事象によって大きく変化することがあり、その結果、元のヒト生殖細胞系配列が容易には認識されない場合があることに留意されねばならない。
【0126】
CD25に対する高親和ヒトモノクローナル抗体の開発は、組み込まれたヒト免疫グロブリン導入遺伝子を含むゲノムを有する非ヒトトランスジェニック動物で、ヒト可変領域遺伝子セグメントのレパートリーを拡大する方法により容易になるが、当該方法は、前記組み込まれたヒト免疫グロブリン導入遺伝子には存在しないV領域遺伝子セグメントを含むV遺伝子導入遺伝子を前記ゲノムに導入するステップを含む。しばしば前記V領域導入遺伝子は、ヒトゲノムに天然で存在するような、又は、組換え法で一緒に別にスプライスされるような、ヒトVH又はVL(VK)遺伝子セグメント・アレイの一部分を含む酵母人工染色体(YAC)であり、この酵母人工染色体の含有するV遺伝子セグメントは順序が狂っていても、又は省略されていてもよい。しばしば少なくとも5つ以上の機能的V遺伝子セグメントがこのYAC上に含有されている。このバリエーションでは、前記Vレパートリー拡大法で生じるトランスジェニックマウスを作製することが可能であり、このとき当該動物は、V領域導入遺伝子上に存在するV領域遺伝子セグメントにコードされた可変領域配列と、ヒトIg導入遺伝子にコードされたC領域とを含む免疫グロブリン鎖を発現する。Vレパートリー拡大法により、少なくとも5個の異なるV遺伝子を有するトランスジェニック動物を作製でき、また少なくとも約24個又はそれ以上のV遺伝子を含有する動物も作製することができる。いくつかのV遺伝子セグメントは非機能的であってもよい(例えば偽遺伝子等)。これらのセグメントを維持してもよいが、あるいは、必要に応じて当業者に可能な組換え法により選択的に欠失させてもよい。
【0127】
マウス生殖細胞を操作して、J及びC遺伝子セグメントを含有するヒトIg導入遺伝子には実質的に存在しない拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACを含有させたら、拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACを、異なるヒトIg導入遺伝子を有する非ヒト動物生殖細胞に交雑するバックグラウンドを含め、他の遺伝的バックグラウンドに、この形質を伝播及び交雑することができる。拡大されたVセグメント・レパートリーを有する複数の機能的YACを、1つのヒトIg導入遺伝子(又は複数のヒトIg導入遺伝子)と一緒に働かせるために、生殖細胞に交雑してよい。ここではYAC導入遺伝子と言及するが、ゲノムに組み込んだときのこのような導入遺伝子は、酵母で自律的複製を行うのに必要な配列など、酵母配列を実質的に欠いていてもよい。このような配列は、選択的に、酵母での複製がもはや必要でなくなってから(即ちマウスES細胞又はマウス前接合子への導入前に)遺伝子操作(例えば制限消化及びパルス界ゲル電気泳動法又は他の適した方法など)により取り除いてもよい。ヒト配列免疫グロブリン発現の形質を伝播させる方法には、ヒトIg導入遺伝子を有し、そして選択的には、拡大されたVセグメント・レパートリーを有する機能的YACもさらに有するようなトランスジェニック動物を育種する方法がある。VH及びVL遺伝子セグメントの両方がYAC上に存在してもよい。当該トランスジェニック動物は、ヒトIg導入遺伝子、及び/又は、他のヒトリンパ球タンパク質をコードする導入遺伝子を含め、他のヒト導入遺伝子を持つバックグラウンドを含め、開業医が希望するいかなるバックグラウンドに交雑してもよい。さらに本発明は、拡大されたV領域レパートリーYAC導入遺伝子を有するトランスジェニックマウスが産生する高親和ヒト配列免疫グロブリンも提供する。前の記載では本発明のトランスジェニック動物の好適な実施態様を解説したが、以下、3つのカテゴリーに分類された他の実施態様も考察されている:
I.再編成のない重鎖及び再編成される軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物;
II.再編成のない重鎖及び再編成のない軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物;及び
III.再編成される重鎖及び再編成のない軽鎖免疫グロブリン導入遺伝子を含有するトランスジェニック動物。
【0128】
これらのカテゴリーのトランスジェニック動物のうち、好適な優先度は以下、II>I>III(この場合の内因性の軽鎖遺伝子(又は少なくともκ遺伝子)は、相同組換え(又は他の方法)によりノックアウトされている)、及びI>II>III
(この場合の内因性軽鎖遺伝子はノックアウトされておらず、対立遺伝子排除により劣性とならなければならない)の通りである。
【0129】
III. CD25に結合する二重特異的/多重特異的分子
本発明のさらに別の実施態様では、CD25に対するヒトモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を誘導体化するか、又は、例えば別のペプチド又はタンパク質(例えばFab'フラグメント)などの別の機能分子に連結して、複数の結合部位又は標的エピトープに結合する二重特異的又は多重特異的分子を作製することができる。例えば、本発明の抗体を、例えば別の抗体、抗体フラグメント、ペプチド又は結合ミメティックなど、1つ以上の他の結合分子に(例えば化学結合、遺伝子融合、非共有結合的結合又は他の方法により)機能的に連結することができる。
【0130】
従って、本発明は、CD25に対する少なくとも1つの第一結合特異性部分と、第二標的エピトープに対する第二結合特異性部分とを含む二重特異的及び多重特異的分子を包含するものである。本発明のある具体的な実施態様では、前記第二標的エピトープは、CD3、CD4、IL-15R、膜結合型もしくは受容体結合型TNF-α、又は膜結合型もしくは受容体結合型である。別の実施態様では、前記第二標的エピトープは、例えばヒトFcγRI(CD64)又はヒトFcα受容体(CD89)などのFc受容体、あるいはT細胞受容体である。従って、本発明は、FcγR、FcαR又はFcεRを発現するエフェクタ細胞(例えば単球、マクロファージ又は多核白血球(PMN)など)と、CD25を発現する標的細胞の両方に結合することのできる二重特異的及び多重特異的分子を包含する。これらの二重特異的及び多重特異的分子はCD25発現細胞をエフェクタ細胞に狙わせて、本発明のヒトモノクローナル抗体と同様、Fc受容体が媒介するエフェクタ細胞の活性、例えばCD25発現細胞のファゴサイトーシス、ADCC、サイトカイン放出、又はスーパーオキシド・アニオンの産生など、を惹起する。
【0131】
さらに本発明の二重特異的及び多重特異的分子には、抗Fc結合特異性部分及び抗CD25結合特異性部分に加え、第三結合特異性部分を含めることができる。ある実施態様では、前記第三結合特異性部分は、細胞傷害活性に関与する表面タンパク質に結合して標的細胞への免疫応答を増す分子など、抗エンハンスメント因子(EF)部分である。前記の「抗エンハンスメント因子部分」は、抗体であっても、機能的抗体フラグメントであっても、又は、抗原又は受容体などの特定の分子に結合して、Fc受容体又は標的細胞抗原の結合決定基の作用を高めるようなリガンドであってもよい。前記「抗エンハンスメント因子部分」は、Fc受容体又は標的細胞抗原に結合することができる。代替的には、前記抗エンハンスメント因子部分は、第一及び第二結合特異性部分が結合する実体とは異なる実体に結合することができる。例えば、前記抗エンハンスメント因子部分は、細胞傷害性T細胞に(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40、ICAM-1を介して、又は、標的細胞への免疫応答が高まる結果となる他の免疫細胞を介して)結合することができる。
【0132】
ある実施態様では、本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、例えばFab、Fab'、F(ab')2、Fv、又はscFvなどを含め、少なくとも一種の抗体を、結合特異性部分として含む。この抗体はまた、軽鎖もしくは重鎖二量体であっても、あるいは、 Ladner et al. の米国特許第4,946,778号に解説されているように、Fv又は一本鎖コンストラクトなど、その何らかの最小フラグメントであってもよい。さらに本抗体は、US 2003/0118592 及びUS 2003/0133939に開示されているような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質であってもよい。
【0133】
ある実施態様では、Fc受容体に対する結合特異性を、その結合がヒト免疫グロブリンG(IgG)の遮断を受けないヒトモノクローナル抗体によって提供する。ここで用いる用語「IgG受容体」とは、1番染色体上にある8つのγ鎖遺伝子のいずれをも言う。これらの遺伝子は 、3つのFcγ受容体クラス:FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)に分類される合計12種の膜貫通又は可溶性の受容体アイソフォームをコードしている。ある好適な実施態様では、前記Fcγ受容体はヒト高親和FcγRIである。
【0134】
これらの好適なモノクローナル抗体の作製及び特徴付けは、Fanger et al. のPCT 出願WO 88/00052 及び米国特許第4,954,617号に解説されている。これらの抗体は FcγRI、FcγRII 又はFcγRIII のエピトープに、当該受容体のFcγ結合部位とは異なる部位で結合するため、これらの結合は、生理的レベルのIgGでは実質的に遮断を受けない。本発明で有用な特異的抗FcγRI 抗体はMAb 22、MAb 32、MAb 44、MAb 62 及びMAb 197である。他の実施態様では、抗FcγRI受容体抗体は、ヒト化型のモノクローナル抗体22(H22)である。H22抗体の作製及び特徴付けはGraziano, R.F. et al. (1995) J. Immunol 155
(10): 4996-5002 及び PCT/US93/10384に解説されている。H22抗体産生細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションに1992年11月4日に指定番号HA022CL1で寄託され、受託番号CRL 11177を受けている。
【0135】
さらに他の好適な実施態様では、Fc受容体に対する結合特異性部分を、その結合が好ましくはヒト免疫グロブリンA(IgA)の遮断を受けない、FcαRI(CD89)などのヒトIgA受容体に結合する抗体に提供させる。用語「IgA受容体」には、19番染色体上にある一個のα遺伝子(FcαRI)の遺伝子産物が包含されるものと、意図されている。この遺伝子は、55乃至110kDaの選択的にスプライシングされる膜貫通型アイソフォームをいくつかコードしていることが知られている。FcαRI(CD89)は、単球/マクロファージ、好酸性及び好中性顆粒球上で構成的に発現するが、非エフェクタ細胞集団上では発現しない。FcαRIはIgA1及びIgA2の両方に対して中間の親和性を有するが、この親和性は、G-CSF 又はGM-CSFなどのサイトカインに暴露すると上昇する
(Morton,
H.C. et al. (1996) Critical Reviews in Immunology 16:423-440)。FcαRIに、IgAリガンド結合ドメイン以外で結合する、A3、A59、A62及びA77と同定された4種類のFcαRI特異的モノクローナル抗体が解説されている(Monteiro, R.C. et
al., 1992, J. Immunol. 148:1764)。
【0136】
FcαRI及びFcγRIは、(1)単球、PMN、マクロファージ及び樹状細胞などの免疫エフェクタ細胞上に主に発現する;(2)高レベル(例えば1個の細胞当たり5,000乃至100,000)で発現する;(3)細胞傷害活性(ADCC、ファゴサイトーシス)の媒介物質である;(4)自己抗原を含め、それらが狙う抗原の抗原提示促進を媒介する、点で、本発明での使用に好適なトリガー受容体である。
【0137】
ここで用いる「エフェクタ細胞特異抗体」とは、エフェクタ細胞のFc受容体に結合する抗体又は機能的抗体フラグメントを言う。本発明で用いるのに好適な抗体は、エフェクタ細胞のFc受容体に、内因性免疫グロブリンが結合しない部位で結合するものである。
【0138】
ここで用いる用語「エフェクタ細胞」とは、免疫応答の認識及び活性化段階でなく、免疫応答のエフェクタ段階に関与する免疫細胞を言う。免疫細胞の例には、骨髄又はリンパ系由来の細胞、例えばリンパ球(例えば、細胞溶解性T細胞(CTL)を含むB細胞及びT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多核白血球、顆粒球、マスト細胞、及び好塩基球、がある。いくつかのエフェクタ細胞は特異的Fc受容体を発現し、特異的免疫機能を果たす。好適な実施態様では、エフェクタ細胞は、ADCCを誘導できる好中球など、ADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的致死や、他の免疫系構成成分への抗原提示か、又は、抗原提示細胞への結合に関与している。他の実施態様では、エフェクタ細胞は、標的抗原、標的細胞、又は微生物を貪食することができる。エフェクタ細胞上の特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子により調節することができる。例えば、FcγRIの発現がインターフェロンガンマ(IFN-γ)により上方調節されることが判明している。この発現亢進により、FcγRI担持細胞の標的に対する細胞傷害活性が増す。エフェクタ細胞は、標的抗原又は標的細胞を貪食又は溶解することができる。
【0139】
「標的細胞」は、本発明の組成物(例えばヒトモノクローナル抗体、二重特異的もしくは多重特異的分子)の標的とすることができる、対象(例えばヒト又は動物)内のいずれかの細胞を意味することとする。好適な実施態様では、本標的細胞は、CD25を発現又は過剰発現している細胞である。CD25を発現する細胞には、典型的に、活性化T細胞、単球及びB細胞、がある。
【0140】
本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、化学的技術(例えばD. M. Kranz et al. (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA
78:5807を参照されたい)、ポリオーマ」技術(ReadingのUS 4,474,893を参照されたい)又は組換えDNA技術を用いて作製することができる。
【0141】
具体的には、本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、当業で公知であり、ここに紹介された実施例で解説する方法を用いて、例えば抗FcR及び抗CD25結合特異性部分など、構成部分の結合特異性部分を結合させることにより、調製できる。例えば本二重特異的及び多重特異的分子の各結合特異性部分を別々に作製しておき、後で相互に結合することができる。これら結合特異性部分がタンパク質又はペプチドである場合、多種の結合又は架橋剤を共有結合に用いることができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル) シクロヘキサン-1-カルボキシレート (スルホ-SMCC) (例えばKarpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, MA et al. (1985) Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 82:8648を参照されたい)がある。他の方法にはPaulus Behring Ins. Mitt. (1985) No. 78, 118-132); Brennan et al. (Science (1985) 229:81-83)、及びGlennie et al. (J. Immunol. (1987) 139: 2367-2375)が解説したものがある。好適な結合剤は 両者ともピアース・ケミカル社(イリノイ州ロックフォード)から入手できるSATA 及びスルホ-SMCCである。
【0142】
結合特異性部分が抗体である場合、これらは2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して結合させることができる。ある特に好適な実施態様では、前記ヒンジ領域を修飾して、奇数のスルフヒドリル残基、好ましくは1つ、を結合前に含有させる。
【0143】
代替的には、両方の結合特異性部分を同じベクタにコードさせ、同じホスト細胞内で発現及び集合させることができる。この方法は、当該二重特異的及び多重特異的分子がMAb×MAb、MAb×Fab、Fab×F(ab')2又はリガンド×Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。例えば二重特異的分子など、本発明の二重特異的及び多重特異的分子は、例えば一本鎖二重特異抗体、1つの一本鎖抗体及び結合決定基を含む一本鎖二重特異的分子、又は、2つの結合決定基を含む一本鎖二重特異的分子など、一本鎖分子であってもよい。さらに二重特異的及び多重特異的分子は一本鎖分子であってもよく、あるいは少なくとも2つの一本鎖分子を含んで成るものでもよい。このような二重及び多重特異的分子を調製する方法は、例えば米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;及び米国特許第5,482,858号に解説されている。
【0144】
二重特異的及び多重特異的分子の、それらの特異的標的への結合は、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ
(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば成長阻害)、BIAcore分析、又はウェスタン・ブロット検定法などにより、確認することができる。これらの検定法はそれぞれ、大まかに言って、目的のタンパク質−抗体複合体の存在を、この複合体に特異的な標識済みの試薬(例えば抗体)を用いて検出するものである。例えばFcR-抗体複合体は、この抗体-FcR複合体を認識して特異的に結合する、例えば酵素に結合させた抗体又は抗体フラグメントなどを用いて、検出することができる。代替的には、当該の複合体を、多種の他の免疫検定法のいずれかを用いて検出することもできる。例えば抗体を放射性標識し、ラジオイムノアッセイ
(RIA)で用いることができる
(例えばWeintraub, B., Principles of Radioimmunoassays, Seventh Training
Course on Radioligand Assay Techniques, The Endocrine Society, March, 1986を参照されたい)。放射性同位元素は、γカウンター又はシンチレーション・カウンター、あるいはオートラジオグラフィの使用などの手段により、検出することができる。
【0145】
IV. 免疫複合体
本発明の別の局面では、本発明は、ヒト抗CD25抗体を、細胞毒、薬物(例えば免疫抑制剤)又は放射性同位元素などの治療部分に結合させる。このような結合体をここでは「免疫複合体」と呼ぶ。1つ以上の細胞毒を含有する免疫複合体は「イムノトキシン」と呼ばれる。細胞毒又は細胞毒性作用物質には、細胞にとって有害な(例えば致死させる)あらゆる物質が含まれる。例には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、ミトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにこれらの類似体又は相同体がある。
【0146】
本発明の免疫複合体を形成するために適した治療薬には、限定はしないが、抗代謝産物(例えばメトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU) 及びロムスチン (CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、及びシスプラチン(cis-ジクロロジアミンプラチナム(II) (DDP) )、アントラサイクリン
(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)、及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)、がある。本発明の抗体に結合させることのできる治療的細胞毒の他の例には、カリケアミシン(原語:calicheamicin)及びデュオカルミシン(原語:duocarmycin)、がある。
【0147】
さらに本発明の抗体を、例えばヨウ素-131、イットリウム-90又はインジウム-111などの放射性同位体に結合させて、癌などのCD25関連異常を治療するための細胞傷害性放射性医薬を作製することができる。本発明の抗体複合体を用いて所定の生物学的応答を修飾することができるが、当該の薬物成分を、古典的な化学療法薬に限定されるものと、捉えられてはならない。例えば当該の薬物成分は、所望の生物活性を有するタンパク質又はポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質には、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス・エキソトキシンA、又はジフテリア毒素などの酵素活性のある毒素又はその活性フラグメント、あるいは、例えばホスホリパーゼCなどのホスホリパーゼ酵素など、細胞表面上で活性な作用薬が含まれよう。
【0148】
このような治療的部分を抗体に結合させる技術は公知であり、例えば Arnon et al., "Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of
Drugs In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,
Reisfeld et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., "Antibodies For Drug
Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et
al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of
Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies
'84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985);
"Analysis, Results, And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of
Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy", in Monoclonal Antibodies For
Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press
1985); 及び Thorpe et al., "The Preparation And Cytotoxic Properties Of
Antibody-Toxin Conjugates", Immunol. Rev., 62:119-58 (1982)を参照されたい。
【0149】
更なる実施態様では、本発明に基づくヒトモノクローナル抗体を、などのリンカ−キレート剤(例えばチウケセタン(原語:tiuxetan))に付着させると、本抗体を放射性同位体に結合することができる。
【0150】
V. 医薬組成物
別の局面では、本発明は、本発明のヒトモノクローナル抗体を1つ又は組合せで含有する、医薬組成物を含む組成物を提供するものである。前記の組成物は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤や、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th
Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されたものなど、従来技術に従ったいずれか他の公知のアジュバント及び医薬品添加物と一緒に調合してもよい。
【0151】
さらに本発明の組成物を、併用療法で、即ち、治療使用とする疾患又は状態に関連する他の薬剤と組み合わせて、投与することができる。例えば、前記の併用療法には、本発明の組成物を、少なくとも1つの免疫抑制剤、少なくとも1つの抗炎症剤、少なくとも1つの乾癬用薬剤、又は少なくとも1つの化学療法薬と一緒に含めることができる。
【0152】
ある実施態様では、このような治療薬に、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノレート・モフェチル、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、メトトレキセート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナー、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリンなどの免疫抑制剤が含まれる。
【0153】
更なる実施態様では、本発明の組成物を、プレドニゾン及びシクロスポリン;プレドニゾン、シクロスポリン及びアザチオプリン;又はプレドニゾン、シクロスポリン及びミコフェノレート・モフェチルなど、二種以上の免疫抑制剤と組み合わせて投与する。
【0154】
更なる実施態様では、このような治療薬は、例えばステロイド系薬物又はNSAID(非ステロイド系抗炎症剤)など、一つ以上の抗炎症剤を含む。好適な薬剤には、例えば、アスピリン及び他のサリチル酸、Cox-2阻害剤、例えばロフェコキシブ及びセレコキシブや、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダック、ジクロフェナック、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサール、ナブメトン、エトドラック、オキサプロジン、及びインドメタシンなどのNSAID、がある。
【0155】
別の実施態様では、このような治療薬は、1つ以上のDMARD、例えばメトトレキセート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ピリミジン合成阻害剤、例えばレフルノミド、IL-1 受容体遮断剤、例えばアナキンラ、及びTNF-α遮断剤、例えばエタネルセプト、インフリキシマブ
及びアダリムマブなど、を含む。更なる適したDMARDは抗IL-6R抗体、CTLA4Ig、及び抗IL-15抗体である。
【0156】
別の実施態様では、このような治療薬は、炎症性又は過増殖性皮膚以上を治療するための一種以上の薬剤、例えばコールタール、ビタミンA、アントラリン、カルシポトリエン、タラゾテン、及びコルチコステロイドを含む局所用医薬、コルチコステロイド、メトトレキセート、アシクレチンなどのレチノイド、シクロスポリン、エタネルセプト、アレファセプト、エファルジマブ、6-チオグアニン、ミコフェノレート・モフェチル、タクロリムス(FK-506)、及びヒドロキシウレアなどの経口用又は注射用医薬など、を含む。他の例はCTLA4Ig 及びインフリキシマブである。他の治療法には、UVB (広帯域及び狭帯域紫外線B)、UVA (紫外線A) 及びPUVA (プソラーレンメトキサレン、プラス、紫外線A)を含む、日光への曝露及び光線療法が含まれよう。
【0157】
更なる実施態様では、本発明の組成物を、例えばメトトレキセート+光線療法
(PUVA 又はUVA);メトトレキセート+アシトレチン;アシトレチン+光線療法
(PUVA 又はUVA);メトトレキセート+アシトレチン+光線療法
(PUVA 又は UVB);ヒドロキシウレア+光線療法
(PUVA 又は UVB);ヒドロキシウレア+アシトレチン;シクロスポリン+メトトレキセート;又はカルシポトリエン+光線療法
(UVB)など、上述の治療法の二種以上と組み合わせて投与する。
【0158】
さらに別の実施態様では、このような治療薬は、一つ以上の化学療法薬、例えばドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、シクロホスファミド、ビンデシン、ビンクリスチン及びクロラムブシル、を含む。
【0159】
さらに別の実施態様では、本抗体を、放射線治療及び/又は骨髄移植と併用投与してもよい。
【0160】
更に別の実施態様では、本抗体を、例えばIL-2受容体のp75に結合する抗体や、又は、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFN-γ、TNF-α 、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、CD20 又はCD58などに結合する抗体、あるいは、それらのリガンドに結合する抗体など、他の免疫抑制性ヒトモノクローナル抗体などの他の抗体と組み合わせて投与してもよく、あるいは、例えば可溶性IL-15R 又はIL-10など、他の免疫調節性化合物と組み合わせて投与してもよい。
【0161】
ここで用いる場合の「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性あるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗カビ剤、等張剤及び吸収遅延剤等が含まれる。好ましくは、当該の担体が静脈内、筋肉内、皮下、腸管外、脊髄もしくは表皮投与(例えば注射又は輸注により)に適しているとよい。
【0162】
「薬学的に許容可能な塩」とは、親化合物の所望の生物活性を保持しつつも、望ましくない毒性作用を与えないような塩を言う(例えばBerge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照されたい)。このような塩の例には、酸添加塩及び塩基添加塩がある。酸添加塩には、非毒性の無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リンの酸等から誘導されたものや、非毒性の有機酸、例えば脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族の酸、脂肪族及び芳香族のスルホン酸等から誘導されたものがある。塩基添加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属から誘導されたものや、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の非毒性の有機アミンから誘導されたものがある。
【0163】
医薬(治療用)組成物を含め、本発明の組成物は、当業で公知の多種の方法により投与することができる。当業者であれば理解されるように、投与の経路及び/又は形態は、所望の結果に応じて様々であろう。当該活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロ封入送達系を含む制御放出調合物など、急速な放出から当該化合物を保護する担体と一緒に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸など、生分解性で生体適合性あるポリマを用いることができる。このような調合物の調製法が、当業者に広く公知である。
例えばSustained
and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R.
Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0164】
特定の投与経路で本発明の化合物を投与するには、当該化合物の失活を防ぐ物質でそれを被覆するか、又は当該化合物と同時投与することが必要な場合がある。例えば本化合物を、適したリポソームなどの担体又は希釈剤に入れて対象に投与してもよい。薬学的に許容可能な希釈剤には生理食塩水及び水性の緩衝液がある。リポソームには水中油中水CGFエマルジョンや、従来のリポソームがある(Strejan et
al. (1984) J. Neuroimmunol. 7:27)。
【0165】
薬学的に許容可能な担体には無菌の水溶液又は分散液並びに、無菌の注射液又は分散液の即時調製用の無菌粉末がある。このような媒質及び薬剤の、薬学的に活性な物質のための使用は当業で公知である。従来の媒質又は薬剤が当該活性化合物にとって不適合でない限り、本発明の医薬組成物中へのその使用は考察されたところである。補助的な活性化合物も、本組成物中に取り入れることができる。
【0166】
治療用の組成物は典型的に無菌でなければならず、また製造及び保管条件下で安定でなければならない。本組成物は、高い薬物濃度に適した溶液、マイクロ乳液、リポソーム、又は他の秩序ある構造として調合することができる。当該の担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物などを含有する溶媒又は分散媒であってよい。
適した流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持できる。多くの場合、例えば糖類、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、又は塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸塩及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を組成物中に含めることにより、可能である。
【0167】
ある実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体 を、皮下注射により結晶形で投与する。Yang et al. (2003) PNAS, 100(12):6934-6939を参照されたい。
【0168】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を適した溶媒に、必要に応じて上に列挙した成分の1つ又は組み合わせと一緒に 加えた後、滅菌マイクロ濾過を行うことにより、調製することができる。分散液は一般的には、塩基性の分散媒と、上に列挙したものの中で必要な他の成分とを含有する無菌の賦形剤に当該活性化合物を加えることで、調製されている。無菌の注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合、好適な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)であり、その結果、活性成分及び付加的な所望の成分の粉末が、予め殺菌濾過されたその溶液から生じる。
【0169】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば治療的応答)が得られるように調節される。例えば単一の巨丸剤を投与してもよく、複数に分割された用量を一定期間にわたって投与しても、又は、治療状況の緊急度を指標として、用量を比例的に増減させてもよい。投与の容易さ及び投薬量の均一性のためには、非経口用組成物を単位剤形で調合することが特に有利である。ここで用いる単位剤形とは、治療しようとする対象にとって単位型の投薬量として調整された物理的に別個の単位を言う。各単位は、必要な薬品用担体との関連から所望の治療効果を生ずるよう計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の詳細は、(a)活性化合物の固有の特徴、及び、達成しようとする特定の治療効果、及び(b)このような活性化合物を、個体の感受性の治療に向けて配合する技術に内在する限界、によって決定され、またこれらに直接依存する。
【0170】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には:(1)水溶性の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等;及び(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等がある。
【0171】
本発明の治療用組成物を、例えば経口、鼻孔、局所(バッカル及び舌下を含む)、直腸、膣及び/又は非経口投与など、特定の投与経路のために調合することができる。当該調合物を適宜、単位剤形で提供してもよく、製薬業で公知のいずれの方法で調製してもよい。一個分の剤形を作製するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、治療しようとする対象、及び特定の投与形態に応じて様々であろう。一個分の剤形を作製するために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、一般に、治療効果を生む組成物量となるであろう。概して、100パーセントのうちで、この量は約0.01パーセント乃至約99パーセントの活性成分、好ましくは約0.1パーセント乃至約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント乃至約30パーセントの範囲であろう。
【0172】
経膣投与に適した本発明の調合物には、さらに、当業で適していることが公知の担体を含有するペッサリ、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー調合物がある。本発明の組成物の局所もしくは経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤、がある。当該の活性化合物を、薬学的に許容可能な担体や、必要に応じて何らかの保存剤、緩衝剤、又は推進剤と無菌条件下で混合してよい。
【0173】
ここで用いる文言「非経口投与」及び「非経口的に投与する」とは、通常は注射による、腸管内及び局所投与以外の投与形態を意味し、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び輸注、がある。
【0174】
本発明の医薬組成物中に用いてもよい適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの適した混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、がある。適正な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持することができる。
【0175】
これらの組成物には、更に、保存剤、湿潤剤、乳濁剤及び分散剤などのアジュバントを含有させてもよい。微生物の存在を防ぐには、上述の滅菌法と、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の多種の抗菌剤及び抗カビ剤の含有の両方を行うと、確実になろう。例えば糖類、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物に含めることも好ましい場合がある。加えて、注射用の薬形の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を含めることにより、可能であろう。
【0176】
本発明の化合物を製薬としてヒト及び動物に投与する場合、これらを単独で与えることもできるが、又は、例えば0.01%乃至99.5%(より好ましくは0.1%乃至90%)の活性化合物を薬学的に許容可能な担体と組み合わせて含有する医薬組成物としても、与えることができる。
【0177】
選択された投与経路に関係なく、適した水和化型で用いてもよい本発明の化合物、及び/又は、本発明の医薬組成物、は、当業者に公知の従来の方法により、薬学的に許容可能な剤形になるように調合される。
【0178】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与形態にとって、患者に毒性となることなく所望の治療応答を得るために有効量の活性成分が得られるよう、変更してもよい。選択される投薬量レベルは、用いる本発明の特定の組成物又は、そのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与期間、用いる特定の化合物の排出速度、治療期間、用いる特定の組成物と併用する他の薬物、化合物及び/又は物質、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の医療歴等、医業で公知の因子を含め、多種の薬物動態学的因子に依拠することとなろう。
【0179】
当業において通常の技術を有する医師又は獣医であれば、本医薬組成物の必要な有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、この医師又は獣医は、当該医薬組成物中に用いる本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を得るのに必要なそれより少ないレベルで開始し、この投薬量を所望の効果が得られるまで次第に増加させていってもよいであろう。一般的には、本発明の組成物の適した一日当たりの用量は、治療効果を生むために有効な最も少ない用量である化合物量であろう。このような有効量は一般に、上で解説した因子に依拠するであろう。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下によることが好ましく、好ましくは標的部位の近位に投与するとよい。本発明の化合物を単独で投与することも可能であるが、本化合物を医薬調合物(組成物)として投与することが好ましい。投薬量は、本抗CD25抗体を狙う抗イディオタイプ抗体を利用して、投与後様々な時点での生物学的試料中のモノクローナル抗CD25抗体の血中量を測定することにより、判定又は調節することができる。
【0180】
本発明のヒトモノクローナル抗体を、誘導治療による移植片拒絶の予防のためにも用いてよく、即ち、例えば移植直前から移植後最高3ヶ月までなど、移植前及び移植後の大変早い段階で単回又は複数回投与用の予防的短期治療法として、用いてよい。
【0181】
ある実施態様では、本発明のモノクローナル抗体を、例えば移植片拒絶の予防のために総投薬量20乃至100mgなど、例えば15又は20mgの静脈内輸注を、初回の用量を術前に与え、次の用量を、術後最初の10日間以内に与えるなどとして、投与してもよい。代替的には、該投薬量を大量注射により投与してもよい。別の実施態様では、本モノクローナル抗体を、移植片拒絶の予防のために0.5乃至1.5mg/kgの投薬量を静脈内により、初回を術前に与えて一週おきに最高5回の用量、投与してもよい。このような投与を、例えばプレドニゾン又はメチルプレドニゾロンなどのステロイドとシクロスポリン;プレドニゾン又はメチルプレドニゾロンなどのステロイドとアザチオプリン;あるいはプレドニゾン又はメチルプレドニゾロンなどのステロイドと、シクロスポリン及びミコフェノレート・モフェチルなど、免疫抑制治療法と組み合わせてもよい。本ヒト抗体の投与は、有利なように、ステロイド節約型であってもよく、あるいはステロイド投薬を素早く停止するものでもよい。
【0182】
別の実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、二回分の用量の養生法(移植日に一日当たりの用量薬20mg、そして移植後4日目に約20mg)の静脈内輸注により移植片拒絶を治療又は予防するために投与してもよい。このような投与を、例えば上に開示したなどの免疫抑制治療法と組み合わせてもよい。例えば、1 g のミコフェノレート・モフェチルを手術前に経口投与し、500 mgのメチルプレドニゾロンを麻酔導入時に投与してもよい。シクロスポリンを移植後2日目に導入してもよく、ミコフェノレート・モフェチルを移植後は1gで継続してもよい。ステロイドを徐々に減らし、術後4日目にはプレドニゾンを経口により20mgとしてもよい。
【0183】
更に別の実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、手術1時間前に初回の1mg/kgを与え、移植後4日目に二回目の用量を与える二回用量の導入治療法により、移植片拒絶を治療又は予防するために投与してもよい。このような投与を、例えば上に開示したものなど、免疫抑制治療法と組み合わせてもよい。
【0184】
本発明のヒトモノクローナル抗体を、例えば20乃至4mgなど、10乃至150mgの範囲の用量を、毎週又は毎月を基本に例えば3乃至8週の毎週の投与を行った後、選択的には一回以上の毎月の投与を行うなど、長期治療法により移植片拒絶を予防するために投与してもよい。長期治療法により、シクロスポリン維持治療法を減らす又は避けてもよい。
【0185】
治療用抗体組成物は、当業で公知の医療用器具を用いて投与することができる。例えば、ある好適な実施態様では、本発明の治療用組成物を、例えば米国第5,399,163号、米国第5,383,851号;米国第5,312,335号;米国第5,064,413号;米国第4,941,880号;米国第4,790,824号;又は米国第4,596,556号に開示された器具などの針無し皮下注射用器具で投与することができる。本発明において有用な公知のインプラント及びモジュールの例には、医薬を制御された速度で施与する移植可能なマイクロ輸注ポンプを開示する米国第4,487,603号;皮膚を透過して医薬を投与する治療器具を開示する米国第 4,486,194号;医薬を精確な輸注速度で送達する医薬輸注ポンプを開示する米国第 4,447,233号;継続的な薬物送達のための可変流量式移植可能な輸注装置を開示する米国第4,447,224号;多チャンバ区画を有する浸透圧薬物送達系を開示する米国第 4,439,196号;及び浸透圧薬物送達系を開示する米国第4,475,196号、がある。他にも数多くのこのようなインプラント、送達系、及びモジュールが当業者に公知である。
【0186】
いくつかの実施態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体を、in vivoで確実に正しく分布するように調合することができる。例えば、血液脳関門
(BBB)は多くの親水性の高い化合物を排除する。本発明の治療用化合物が(必要に応じて)BBBを確実に透過できるように、これらを例えばリポソーム中に調合することができる。リポソームの製造法については、例えば
米国第4,522,811号;米国第5,374,548号;及び米国第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器へ選択的に輸送され、従って標的決定された薬物送達を高めるような1つ以上の部分を含んでいてもよい(例えば V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照されたい)。標的決定部分の例には、葉酸又はビオチン(Low et al.の米国第 5,416,016号を参照されたい);マンノシド
(Umezawa
et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038); 抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob.
Agents Chemother. 39:180);サーファクタント・プロテインA受容体 (Briscoe et al. (1995) Am. J.
Physiol. 1233:134)、本発明の調合物を含むことのできる様々な種や、本発明の分子の成分;p120
(Schreier
et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090);があるが、さらに K.
Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J. Fidler (1994) Immunomethods
4:273の参照されたい。本発明のある実施態様では、本発明の治療用化合物をリポソーム中に調合する。より好適な実施態様では、該リポソームは標的決定部分を含む。最も好適な実施態様では、リポソーム中の該治療用化合物は、所望の区域に近位な部位、例えば炎症又は感染の部位や、又は、腫瘍の部位など、に大量注射される。当該の組成物は、注射筒による注入が容易な程度に流動性でなくてはならない。それは製造及び保管条件下で安定でなくてはならず、また細菌及びカビなどの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。
【0187】
本発明のヒトモノクローナル抗体の効率的な投薬量及び投薬計画は、治療しようとする疾患又は状態に依拠し、当業者が判断できるものである。
【0188】
移植片拒絶を予防するための「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、初期の移植片拒絶エピソードの数及び重篤度を軽減するものである。
【0189】
リウマチ性関節炎のための「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、患者において ACR20の 改善の予備的定義(Preliminary Definition of
Improvement)、より好ましくはACR50の改善の予備的定義(Preliminary Definition of
Improvement)、そしてさらにより好ましくは、 ARC70の改善の予備的定義(Preliminary Definition of Improvementをもたらすものであろう。
【0190】
ACR20の改善の予備的定義(Preliminary Definition of
Improvement)は:
= 圧痛関節計数(TJC)及び腫脹関節計数(SJC)における≧20% の改善、及び、以下の五つの評価点のうち3つにおける
20%の改善:患者疼痛評価 (VAS)、患者包括的評価 (VAS)、担当医包括的評価 (VAS)、患者自己評価による能力障害 (HAQ)、急性相反応物 (CRP 又は ESR)、と定義されている。
【0191】
ACR50及びACR70は、同じ方法でそれぞれ≧ 50% 及び≧70%の改善と定義されている。更なる詳細については、Felson et al. in American College of Rheumatology Preliminary
Definition of Improvement in Rheumatoid Arthritis; Arthritis Rheumatism (1995)
38: 727-735を参照されたい。
【0192】
代替的には、リウマチ性関節炎のための治療上有効な投薬量は、EULARにより定義されたDAS28、より好ましくはDAS56を含むDAS(疾患進行性スコア)により、測定することができる。
【0193】
乾癬のための「治療上有効な投薬量」は、好ましくは、患者においてPASI50、より好ましくはPASI75、そしてさらにより好ましくはPASI90に至るか、あるいは、治療前の状態に比較して、薬物治療後の改善の印象を比較した全体的乾癬評価の低下に至るようなものである。PASI (乾癬面積及び重篤度指数)は、この疾患の面積及び重篤度の評価に用いられる採点システムである。PASI50は、この採点の≧50%の改善であると定義されている。同じ方法で、PASI75及びPASI90は、それぞれこの採点の≧75%及び90%≧の改善であると定義されている。
【0194】
腫瘍の治療のための「治療上有効な投薬量」は、完全でも、又は部分的でもいい他覚的腫瘍応答により測定することができる。完全応答(CR)は、疾患の非臨床的、放射線学的又は他の証拠であると定義されている。部分的応答(PR)は、腫瘍の凝集物の大きさの50%を越える減少が原因で起きる。悪化までの中央値時間は、他覚的腫瘍応答の時間的長さを特徴付ける測定値である。
【0195】
また、腫瘍治療にとっての「治療上有効な投薬量」は、疾患の進行を安定化させるその力によっても、測定することができる。ある化合物の癌阻害能は、ヒト腫瘍での効験を予測する動物モデル系で評価することができる。代替的には、ある組成物のこのような特性を、当業者に公知のin vitro検定法により、当該化合物の細胞成長阻害能もしくはアポトーシス誘導能を調べることで、評価することができる。治療用化合物の治療上有効量は、対象において腫瘍の大きさを減らすか、又は、症状を改善することができるものである。当業者であれば、対象の体格、対象の症状の重篤度、及び選択された特定の組成物又は投与経路といった因子に基づいて、このような量を決定できよう。
【0196】
VI.発明の用途及び方法
本発明のヒト抗体や、その誘導体/複合体及び組成物は、CD25媒介性の異常、又は、CD25発現細胞が関与する異常、の治療に関係する数多くの実用性を有する。
【0197】
ある実施態様では、本発明のヒト抗体を、CD25のそのリガンド(IL-2)への結合を遮断又は阻害するために対象に in vivo で投与することができる。これは、ひいては、CD25担持細胞に関連する多種の疾患を予防又は阻害するために用いることができる。
【0198】
治療(例えば改善)又は予防することのできる疾患の例には、限定はしないが、例えば心臓、肺、同時心臓−肺、気管、腎臓、肝臓、膵臓、食道、腸、皮膚、四肢移植、臍帯移植、幹細胞移植、島細胞移植等の臓器又は組織移植を受ける予定の又は受けた患者において、同種移植片及び異種移植片拒絶を含む移植片拒絶がある。このような患者には成人が含まれるが、さらに小児の患者であってもよい。
【0199】
従って本発明の抗体を、同種移植片及び異種移植片拒絶の予防に用いてもよいが、あるいは、急性の同種移植片又は異種移植片の拒絶エピソードを逆行、治療又は改善するために用いてもよい。
【0200】
治療することのできる更なる疾患には、移植片対宿主疾患、例えば輸血移植片対宿主疾患及び骨髄移植片対宿主疾患;炎症性、免疫性又は自己免疫性疾患、例えばリウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、1型糖尿病、インシュリン要求性2型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚−多発性筋炎、シェーグレン症候群、大細胞動脈炎を含む動脈炎、再生不良性貧血、喘息、強皮症、及びブドウ膜炎;炎症性又は過増殖性皮膚異常、例えばプラーク乾癬を含む乾癬、掌蹠膿疱症
(PPP)、びらん性扁平苔癬、水疱性天疱瘡、水疱性表皮剥離、接触性皮膚炎及びアトピー性皮膚炎;及び多種のリンパ系新生物、例えばT細胞白血病、ホジキン病、ヘアリーセル白血病、又は、菌状息肉腫を含む皮膚T細胞リンパ腫、及びセザリー症候群、がある。
【0201】
治療の可能な更なる疾患は、浸潤性CD25+調節性T細胞の阻害が有益であるような悪性腫瘍であり、例えば胃癌、食道癌、悪性黒色種、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌、及び腎細胞カルシノーマ;
造血系の異常、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病
(CLL)/小リンパ球性リンパ腫
(SLL)、末梢T細胞リンパ腫、及び二次性アミロイドーシス;
皮膚異常、例えば壊疽性膿皮症、環状肉芽腫、アレルギー性接触性皮膚炎、良性粘膜類天疱瘡、及び妊娠性疱疹;
肝−胃腸管異常、例えばコラーゲン性大腸炎、硬化性胆管炎、慢性急性肝炎、ルポイド肝炎、自己免疫性肝炎、アルコール性肝炎、慢性膵炎、及び急性膵臓炎;
心臓の異常、例えば心筋炎、及び心膜炎;
血管の異常、例えば動脈硬化、大細胞動脈炎/リウマチ性多発性筋痛、高安動脈炎、結節性多発性動脈炎、川崎症候群、ウェグナー肉芽腫症、顕微鏡的多発性血管炎、チャーグ−ストラウス症候群、白血球破壊性血管炎、及び二次性白血球破壊性血管炎;
腎臓の異常、例えば急性腎炎、慢性腎炎、最小変化腎炎、及びグッドパスチャー症候群;
肺の異常、例えば肺胞炎、閉塞性細気管支炎、珪肺症、及びベリリウム症;
神経の異常、例えば多発性硬化症、アルツハイマー病、重症筋無力症、慢性脱随性ポリニューロパチー、及びギラン−バレー症候群を含む多発性神経根炎;
結合組織の異常、例えば再発性多発性軟骨炎、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、CNSルーパス、デスコイド・ルーパス、ループス腎炎、慢性疲労症候群、及び結合組織炎;
内分泌異常、例えばグレーブズ病、橋本甲状腺炎、及び亜急性甲状腺炎;並びに
ウィルス感染、例えば熱帯性痙性不全対麻痺。
【0202】
本発明の抗体組成物(例えばヒト抗体及び免疫複合体)を in vivo 及び in vitro投与する好適な経路は当業者に公知であり、当業者が選択することができる。例えば、本抗体組成物を注射(例えば静脈内又は皮下)により投与することができる。用いる分子の適した投薬量は、対象の年齢及び体重、並びに本抗体組成物の濃度及び/又は処方に応じるであろう。
【0203】
本抗体を単独で投与することも、あるいは、例えば免疫抑制剤、抗炎症剤や、炎症性もしくは過増殖性皮膚異常を治療するための薬剤、化学療法薬、又は、本抗体組成物と結合的又は相乗的に作用して、CD25発現細胞、特に活性化T細胞、に関連する疾患を治療又は予防するような細胞毒など、別の治療的作用薬と一緒に投与することもできる。
【0204】
前述したように、本発明のヒト抗CD25抗体は、例えば免疫抑制剤又は、全体的な抗炎症効果を増す抗炎症剤など、一種以上の他の治療的作用薬と一緒に同時投与することができる。本抗体を該作用薬に(免疫複合体として)連結することも、あるいは、該作用薬とは別に投与することもできる。後者の場合(別の投与)、本抗体を、該作用薬の前、後、又は同時に投与することができる。
【0205】
さらに本発明の範囲には、本発明の抗体組成物(例えばヒト抗体及び免疫複合体)及び使用に関する指示を含むキットも含まれる。該キットには、更に、例えば免疫抑制剤や、又は、一種以上の付加的な本発明のヒト抗体など、一つ以上の付加的な作用薬を含めることができる。
【0206】
従って、本発明の抗体組成物で治療される患者に、更に、例えば免疫抑制剤、抗炎症剤、炎症性もしくは過増殖性皮膚異常を治療する作用薬、又は、本抗体の治療効果を促進又は増強する化学療法薬など、別の治療薬を(本発明のヒト抗体の投与前、投与と同時、又は投与後に)付加的に投与することができる。
【0207】
更に別の実施態様では、本発明の免疫複合体を用いて、標的化合物(例えば治療薬、標識、細胞毒、免疫抑制剤等)を本抗体に連結させることにより、CD25をそれらの表面上に結合させて有する細胞にこのような化合物を標的決定することができる。このように、本発明は、CD25発現細胞を(例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、又は酵素コファクタなどの検出可能な標識を用いて)ex vivo 又は in vitro で位置特定する方法も提供するものである。別の実施態様では、本発明は、本発明のイムノトキシンを投与することにより、CD25をそれらの表面に結合させて有する細胞を致死させる方法を提供する。
【0208】
更なる実施態様では、本発明の抗体は、CD25のレベル、又は、CD25をそれらの膜表面上に含有する細胞のレベルを検出することにより、CD25発現活性化細胞が病因に能動的な役割を果たしている疾患を診断するためにin vivo 又は in vitroで用いることができる。これは、例えば、検査しようとする試料を、選択的にはコントロール試料と並行して、本ヒト抗体に、本抗体とCD25との間の複合体形成が可能な条件下で接触させることで達成することができる。次に複合体形成を(例えばELISAを用いて)検出する。コントロール試料を検査試料と並行して用いる場合、複合体が両方の試料中で検出され、これら試料間で複合体形成に何らかの統計上有意な差があれば、検査試料中のCD25の存在の指標である。
【0209】
本発明を以下の実施例でさらに解説することとするが、以下の実施例を更に限定的なものと捉えられてはならない。
【実施例】
【0210】
実施例1 CD25に対するヒト抗体の作製
抗原: 細胞表面CD25を発現しているトランスフェクタント細胞株を、HuMAbマウスを免疫し、抗CD25抗体を特徴付けるための試薬として用いるために開発した。この細胞株は、CD25の細胞外ドメインを、血小板由来成長因子受容体の膜貫通ドメインに結合させた状態で発現するように操作されたCHO 細胞株だった。このCD25配列は、HUT102細胞から調製されたcDNAから増幅され、該血小板由来成長因子受容体配列は、pDISPLAY ベクタ(インビトロジェン・コーポレーション社)から得られた。該融合タンパク質をコードする発現コンストラクトを発現ベクタ内で操作した。このCHOトランスフェクタント細胞株には、2回のメトトレキセート増幅を5 nM 及び50 nMのメトトレキセート中で行わせて、CD25の発現レベルを増加させた。
【0211】
CHO-CD25トランスフェクトーマ培養物: CHO-CD25トランスフェクトーマ細胞(米国ニュージャージー州、メダレックス社)を、ヒポキサンチン無し、チミジン無し、ペニシリン(5000 U/ml)、ストレプトマイシン
(5000
mg/ml;ベルギー、バイオホイッテカー社)、及びメトトレキセート(最終濃度 50 nM、シグマ社)有りの CHO-S-SFM II 培地(ギブコ BRL社)中で、培養した。細胞は2日又は3日ごとに新しくした。
【0212】
トランスジェニック・マウス:HCo7 及びHCo12 マウスをフィルタ・ケージ内に収容し、免疫処理の日、採血の日、及び融合の日に、良好な身体状態にあることを評価した。選択されたハイブリドーマを生じたマウスは全て、オスだった。マウスID23185、23196、23197、及び23198 は (CMD)++; (HCo7) 11952+; (JKD) ++; (KCo5) 9272+ 遺伝子型を有する。マウスID 23175 は(CMD)++; (HCo12) 15087+; (JKD) ++; (KCo5) 9272+ 遺伝子型のものだった。個々の導入遺伝子の指定を括弧内に示し、その後に、ランダムに組み込まれた導入遺伝子の株番号を記載してある。記号 ++ 及び + は、ホモ接合型又はヘミ接合型を示すが、マウスはPCRベースの検定を用いて慣例通りにスクリーニングされているため、ランダムに組み込まれたヒトIg導入遺伝子についてヘテロ接合型か、又はホモ接合型かを区別することはできなかった。
一個の+の指定は、これらの因子について実際にホモ接合型であるマウスに与えられている場合がある。
【0213】
免疫の手法及びスケジュール: マウスを2つの形の抗原で免疫した:肝細胞
(上記のCD25トランスフェクトCHO 細胞) 及び精製済みタンパク質 (組換えヒト CD25 (rhCD25)、R&Dシステムズ社のNS/0-発現組換えタンパク質、(カタログ番号 223-2A/CF)、ミネソタ州ミネアポリス)。可溶性rhCD25を完全フロイント・アジュバント (CFA) 又は不完全フロイント・アジュバント
(IFA)と混合した。フロイント・アジュバントはメリーランド州ロックヴィルのギブコ-BRL社から得られた。マウスに、0.2mlの調製された抗原を腹腔に注射した。最後の尾の静脈による免疫処理は、可溶性CD25の無菌PBS又は生理食塩水(0.9% NaCl)溶液で行われた。トランスフェクト細胞による免疫処理を腹腔内(i.p.)に、0.2mlの生理食塩水溶液で、マウス1匹当たり1.0-2.0 × 107個の細胞にして施与した。免疫処理はすべて、腹腔内への注射だった。融合から3日前及び2日前に、静脈内
(i.v.)追加刺激を行った。この免疫スケジュールを、表1で解説する。マウスはすべて、HCo7及びHCo12 遺伝子型の12(12)匹のマウスのコホートの中に含められた。
【0214】
【表1】

【0215】
*抗体価については、表2を参照されたい。
【0216】
マウス抗体価: マウス番号23175、23185、23196、23197、及び23198 の抗体価を下の表2に示す。表2に示す抗体価は、CD25特異検査で陽性を示した血清希釈液を示す。反復免疫処理後の抗原に対する応答は強固な応答レベルを示し、このマウスを融合に向けて準備した。
【0217】
【表2】

【0218】
融合法: SP2/0-ag14骨髄腫細胞株 (ATCC CRL 1581、ロットF-15087)を当該融合に用いた。元のATCC バイアルを解凍し、培養で増殖させた。凍結バイアルの種ストックをこの増殖から調製した。細胞を6乃至8週間、培養に維持し、1週間に2回、継代させた。
【0219】
10% FBS (ハイクローン社、カタログ番号SH30071)、抗生物質−抗真菌剤 (100x) (ギブコ社、#15240062)、及び0.1% L-グルタミンを含有する高グルコースDMEM(メディアテック、セルグロー、
# 1001233)を用いて骨髄腫細胞を培養した。5% Origen -ハイブリドーマ・クローニング因子 (アイジェン社)、4.5 x 10-4 M ピルビン酸ナトリウム、HAT (1.0 x 10-4 M ヒポキサンチン、4.0 x 10-4 M アミノプテリン、1.6 x 10-5 M チミジン;シグマ社)、及びウシ胎児血清(ユタ州ローガン、ハイクローン社)を含め、付加的な媒質補助剤をハイブリドーマ成長培地に加えた。
【0220】
マウス番号23197由来の脾臓は大きさは正常であり、4.0 x 108
個の生細胞が得られた。マウス番号#23175由来の脾臓は大きさは正常であり、2.6 x 108 個の生細胞が得られた。マウス番号 #23196 及び#23198 由来の脾臓は大きさは正常であり、それぞれ2.4 x 108 個及び2.0 x 108 個の生細胞が得られた。マウス番号#23185由来の最後の脾臓は大きさは正常であり、1.9 x 108 個の生細胞が得られた。脾細胞は標準的な手法に従って融合された。
【0221】
ハイブリドーマ作製(融合)に用いた媒質: 10% ウシ胎児血清(FBS); (ユタ州ローガン、ハイクローン社、SH30071 ロット番号AJE10321) 抗生物質−抗真菌剤 (ギブコBRL社、ロット番号15240062)、及び0.1% L-グルタミン(ギブコ社、ロット番号1013845)を含有する高グルコースDMEM (メディアテック社、ロット番号10013264) を用いて、骨髄腫細胞を培養した。5% Origen-ハイブリドーマ・クローニング因子 (アイジェン社、ロット番号36600
及び36782 及び36684)、4.5 x 10-4 M ピルビン酸ナトリウム、HAT (シグマ社、 H 0262): 1.0 x 10-4 M ヒポキサンチン、4.0 x 10-7 M アミノプテリン、1.6 x 10-5 M チミジン、又はHT (シグマ社、H0137): 1.0 x 10-4 M ヒポキサンチン、1.6 x 10-5 M チミジンを含め、付加的な媒質補助剤をハイブリドーマ成長培地に加えた。
【0222】
脾臓及びリンパ節を免疫後のマウスから摘出し、これらの臓器をDMEM + 10% FBSを容れた試験管内に配置した。このマウスを組織培養室に移し、単個細胞懸濁液を、この脾臓及びリンパ節から作製し、当該細胞を計数した。適した体積のSP2/0 細胞 (ATCC CRL 1581、ロットF-15087; SP2/0細胞一個当たり6個の脾細胞又はリンパ節細胞) を移し、この細胞を混合し、再懸濁させた。ほぼ1.2mlのPEGを加えた(37℃の水を入れたビーカ内で試験管を優しく回旋しながら1分間)。この試験管を90秒間、放置し、15mlのDMEMを加え、媒質での洗浄を行った。この細胞を遠心して沈降させた後、上清を取り除き、細胞を再懸濁させた。10
(10) ml のHAT含有媒質をこの試験管に加えた。30乃至60分間、CO2インキュベータ内でインキュベートした後、細胞を96ウェル培養プレートにプレートし、200μl/ウェル(96ウェル・プレート1枚当たり約1x107 細胞 )にした。7日目に細胞にHT含有媒質を250μl/ウェル (HT媒質はアミノプテリンを除いたHAT媒質である)与えた。
【0223】
ヒト IgG,κ抗体に関する最初のELISAスクリーニングを融合から7乃至10日目に行った。次に、ヒトIgG,κ陽性のウェルを、可溶性CD25で被覆したELISAプレート上でスクリーニングした。次に、抗原陽性ハイブリドーマを24ウェル・プレートに移し、最後に組織培養フラスコに移した。抗原陽性ハイブリドーマを、細胞をOrigen DMSO凍結媒質(フィッシャー社、カタログ番号IG-50-0715)中に凍結させることにより、発生プロセスのいくつかの段階で保存した。
【0224】
IgG/κ検出のためのELISAプロトコル(融合をスクリーニングするために用いる): ELISAプレートを一晩、抗ヒト-κ、1μg/ml (イムノテック社、ロット番号0173)又は抗ヒト-γ、1μg/ml(ジャクソン社、ロット番号109-006-098)で、50μg/ウェルに被覆した。プレートを空にし、残った結合部位を、tween-20 (0.05%) 及び 5% ニワトリ血清 (PBSTC)を添加したPBSで1時間、室温(RT)で遮断した。プレートを、0.05% tween-20 (PBST)を添加したPBSで3回、洗浄した。融合から得られた上清及びサブクローンは概ね、1:2にPBSTC中に希釈して検査された。陽性コントロールとして、ヒト IgG (カルバイオケム社)を用いた。この試料を約2時間、インキュベートした後、プレートをPBST及び二次抗体で洗浄し、抗ヒトIgG-Fc-HRP結合(ジャクソン社、ロット番号109-036-098)を 1:5000 にPBSTに希釈した溶液をウェルに加えた(100μl)。1時間、RTでインキュベートした後、該ELISAをABTS (Sigma)を用いてメーカの推奨通りに展開させた。
【0225】
ELISAによるアイソタイプ決定: 96ウェルELISAプレート(ドイツ、グライナー社)を一晩、(100μl/ウェル、室温)マウス抗ヒト IgG1 (オランダ、CLB社、ストックから1:5,000に希釈したもの)又はマウス抗ヒトIgG3 (CLB社、ストックから1:10,000 に希釈したもの)で被覆した。このプレートをPBST(150μl/ウェル)で3回、洗浄した後、プレートをPBSTCと一緒に1時間、室温でインキュベートした。次に、ヒト CD25 モノクローナル抗体クローンの上清を加えた
(100μl/ウェル;室温で2時間)。抗KLH IgG1 (1μg/ml) 及び抗KLH IgG3(1μg/ml) 上清を陽性コントロールとして役立てた。培養基及びPBSTCを陰性コントロールとして役立てた。PBST (3x)中で洗浄した後、ヤギ抗hIgG-HRP (Fc特異的;米国メーン州、ジャクソン・ラブズ社)を加えた(室温で1時間)。IgG1の検出のために、該複合体を1:500に希釈したが、他方、IgG3の検出のためには、該複合体を1:2000に希釈した。PBST (3x)での洗浄後、10mlのABTS緩衝液(ロシュ社)当たり10 mg ABTS (ロシュ社) を作製し、100μlを各ウェルに加えた。20分後、405nmでの吸光をELISAリーダ (EL 808、米国ヴァーモント州、バイオ-テック・インスツルメンツ社)で読み取った。
【0226】
免疫法に基づき、 HCoマウス:すべてAB1、AB7、AB11及びAB12を由来とする4種の抗原特異的ハイブリドーマを選抜した。これら4種のクローンのアイソタイプがIgG1,κであることを見出した。
【0227】
本発明の抗体を、 例えばIgG2、IgG3、IgG4、IgM、及びIgAなど、他のアイソタイプとして組換え発現させることもできる。
【0228】
選抜後のハイブリドーマを維持するために用いた媒質: 全てのヒト CD25モノクローナル抗体ハイブリドーマ細胞株を、FCS (Wisent Multicell optimum C241)、2 mM L-グルタミン (Glutamax-II)、50 IU/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン (pen/strep)、2μM β-ME (すべて、ギブコ BRL社、スコットランド、ライフ・テクノロジーズ社から)、24% HCF (米国ガイザーズバーグ、アイジェン・インターナショナル社、Origen)を添加したダルベッコの改良イーグル培地(バイオホイッテカー、ロット番号BE12-709F)で培養した。
【0229】
抗体の精製: 培養上清からヒトCD25特異抗体を精製又は濃縮する前に、この培養上清を、真空駆動式使い捨て可能なボトル・トップ・フィルタで濾過して、細胞残余物又は他の不純物などの粗物質を取り除かなくてはならない。試料の体積が500mlを越えていれば、500mlの体積になるまで、 Prep/ scaleTM TFF、1ft2 カートリッジ (米国、ミリポア社)で試料を濃縮することができる。
【0230】
CD25特異抗体のプロテインA精製をアフィニティ・クロマトグラフィを用いて行った。
【0231】
5 ml のプロテインAカラム (ProtA 5 ml SP、バージョン 041201、スウェーデン、アマーシャム・ファルマシア・バイオテックAB社) をPBS、pH 7.4、で平衡させ、試料ポンプAをPBS、pH7.4で準備し激した後、CD25特異抗体を含有する上清をカラムに充填し、未結合の試料を洗い落とし、システム-ポンプBを、0.1 M クエン酸、pH 5、(溶出緩衝液1)ですすいだ。その後、ウシIgG (培養上清中に存在する)を溶離緩衝液1でシステム・ポンプBを通して溶離させた。システム・ポンプAを0.1 M クエン酸、pH 3、(溶離緩衝液 2)ですすいだ後、ヒト CD25特異抗体をシステム・ポンプAを通して溶離緩衝液2で溶離させた。次にシステム・ポンプBを0.1 M クエン酸、pH 2、(溶離緩衝液 3)ですすいだ後、カラムに結合したままの全ての残余IgG をシステム・ポンプBを通して溶離緩衝液3で溶離させた。溶離したCD25特異抗体を10% (v/v) 2 M Tris-HCl (シグマ社)、pH 9、で中和させた後、ピーク画分をプールした。
【0232】
溶離ステップ2からプールしたピーク画分をPBS (5lのPBSに対し30 mlの精製済み物質)に対し、18時間、4℃で透析した。精製済み物質を保存及び保管するために、試料を濃縮した。ヒト IgGの濃度を比濁分析検定法(Dade-Behring、BNII)を用い、ポリクローナル抗IgG 抗体(オランダ、アムステルダム、CLB社、ロット番号M1090)を用いて判定した。当該の抗体をアリクォートし、スナップ(原語:snap)凍結させ、-80℃で保存した。
【0233】
実施例2 CD25に対するヒト抗体の抗体配列決定
抗体のVL 及びVH領域の配列決定
配列決定: VDJ領域を、pGEMT-ベクタ系IIでのクローニング後に配列決定した。配列決定は Baseclear (オランダ、ライデン)で行われた。この配列を生殖細胞V遺伝子配列にVbase (www.mrc-cpe.cam.ac.uk/imt-doc/public/intro.htm)でアライメントした。
【0234】
RNA調製: 全RNAを、4(4)種の異なるヒトCD25ハイブリドーマ細胞株5 x 106個の細胞(AB1, AB7, AB11, AB12) からRneasy キット (オランダ、ライスデン、ウェストバーグ、キアジェン社) キットをこのメーカの指示通りに用いて調製した。
【0235】
cDNA 調製: ヒトCD25ハイブリドーマ細胞由来のRNAの相補(cDNA)を、3μgの全RNAから、緩衝液(ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティクスGmbH社)、oligo d(T)15 (米国ウィスコンシン州マジソン、プロメガ社)dNTP (ドイツ、マンハイム、ロシュ・ダイアグノスティクス社)及びRNAsin(プロメガ社)を加えたAMVリバース・トランスクリプターゼでメーカのプロトコル(2000年、バージョン3)に従って調製した。
【0236】
VH
及び VL領域は以下のPCRプライマを用いて増幅された:
VH: FR1 5'側プライマ

AB62 CAg gTK CAg CTg gTg CAg TC (配列番号:41)
AB63 SAg gTg CAg CTg KTg gAg TC (配列番号:42)
AB65 gAg gTg CAg CTg gTg CAg TC (配列番号:43)

VH リーダ 5'側プライマ

AB85 ATg gAC Tgg ACC Tgg AgC ATC (配列番号:44)
AB86 ATg gAA TTg ggg CTg AgC Tg (配列番号:45)
AB87 ATg gAg TTT ggR CTg AgC Tg (配列番号:46)
AB88 ATg AAA CAC CTg Tgg TTC TTC (配列番号:47)
AB89 ATg ggg TCA ACC gCC ATC CT (配列番号:48)

VH 3'側プライマ

AB90 TgC CAg ggg gAA gAC CgA Tgg (配列番号:49)

VK: FR1 5'側プライマ

AB8 RAC ATC CAg ATg AYC CAg TC (配列番号:50)
AB9 gYC ATC YRg ATg ACC CAg TC (配列番号:51)
AB10 gAT ATT gTg ATg ACC CAg AC (配列番号:52)
AB11 gAA ATT gTg TTg ACR CAg TC (配列番号:53)
AB12 gAA ATW gTR ATg ACA CAg TC (配列番号:54)
AB13 gAT gTT gTg ATg ACA CAG TC (配列番号:55)
AB14 gAA ATT gTg CTg ACT CAg TC (配列番号:56)

VK リーダ 5'側プライマ:

AB123 CCC gCT Cag CTC CTg ggg CTC CTg (配列番号:57)
AB124 CCC TgC TCA gCT CCT ggg gCT gC (配列番号:58)
AB125 CCC AgC gCA gCT TCT CTT CCT CCT gC (配列番号:59)
AB126 ATg gAA CCA Tgg AAg CCC CAg CAC AgC (配列番号:60)

VK 3'側プライマ

AB16 Cgg gAA gAT gAA gAC AgA Tg (配列番号:61)
【0237】
上記のプライマ配列において、K、S、R、Y 及びW は以下の意味を有する:

K = G又はT
S = C又はG
R = A又はG
Y = C又はT
W = A又はT
【0238】
クローニング用のVH及びVL領域 を増幅するために用いたPCR条件:
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR) を AmpliTaq ポリメラーゼ(パーキン・エルマー社)をT1 サーモサイクラ 96 (オランダ、ライスデン、ウェストバーグ、バイオメトラ社)で用いて行った。
【0239】
PCR サイクリング・プロトコル:
94℃ 2 分
11サイクル94℃30秒
65℃30秒、1サイクル毎にマイナス1°
65℃30秒、1サイクル毎にマイナス1°
72℃30秒
30サイクル94℃30秒
55℃30秒
72℃30秒
72℃10分
4℃まで冷却
【0240】
VH及びVLのpGEMT-ベクタ系IIでのクローニング: 該PCR産物をアガロース・ゲル上で分析した後、この産物をQIAEX II ゲル抽出キット (オランダ、ライスデン、ウェストバーグ、キアジェン社)で精製した。各VH及びVL領域の、FR1又はリーダ・プライマを用いた、常に2つの個々に増幅されたPCR産物をpGEMT-ベクタ系 II (プロメガ社)でメーカのプロトコル(1999年、バージョン6)に従ってクローニングした。
【0241】
E. coli JM109への形質転換後、個々のコロニを、T7 及びSP6プライマを用いたコロニPCR法により、55℃での30回のアニーリング・サイクルによりスクリーニングした。コロニからのプラスミドDNAを、Qiaprep Spin miniprep キット(キアジェン社)を用いて精製した。VH 及びVL領域を更に分析するために、Nco1/Not1 (オランダ、ライスデン、ウェストバーグ、NEバイオラブズ社)消化を行い、アガロース・ゲルで分析した。
【0242】
4つの選択されたハイブリドーマ細胞株は以下の抗体配列を発現した:
アミノ酸配列: 配列番号:2及び4を持つAB1: ヒトモノクローナル IgG1,κ抗体
アミノ酸配列: 配列番号:6及び8を持つ AB7:ヒトモノクローナル IgG1,κ抗体
アミノ酸配列: 配列番号:10及び12を持つAB11: ヒトモノクローナル IgG1,κ抗体及び
アミノ酸配列: 配列番号: 14及び16を持つAB12: ヒトモノクローナル IgG1,κ抗体。
【0243】
得られた配列を図1−10に示す。
【0244】
実施例3 CD25へのヒト抗体の結合上の特徴
CHO細胞上で構成的に発現させたCD25へのヒトCD25モノクローナル抗体の上清の結合: AB1、AB7、AB11及びAB12はすべて、フローサイトメトリで判定したときに、トランスフェクトCHO細胞上に発現したCD25に結合した(表3を参照されたい)。
【0245】
ELISA検定における、hrCD25に対するヒトCD25モノクローナル抗体の上清の結合: AB1、AB7、AB11、及び AB12はすべて、hrCD25を被膜抗原として用いたELISAで検査したときに、CD25に結合した。96ウェル・プレート(グライナ社)を一晩、室温でrhCD25 (100 ng/ml; R&D)で被覆し、その非特異的結合は、このプレートをPBSTCで1時間、室温で被覆することにより、遮断した。このプレートをPBSTで3回、洗浄後、100μlの試料抗体を加えた。このプレートを3回(PBST)で洗浄後、プレートをストレプトアビジン-ポリ-HRP (1:10,000)のPBS溶液と一緒にインキュベートし、100μlを各ウェルに加えた(1時間、室温)。このプレートを(3回、PBSTで)洗浄後、 10 mg ABTS (ロシュ社) を10 ml ABTS 緩衝液 (ロシュ社)当たり作製し、100μlを各ウェルに加えた。20分後、405nmでの吸光をELISA リーダ (EL 808、バイオ-テック・インスツルメンツ社)で読み取った。
【0246】
【表3】

【0247】
rhCD25 ELISAで判定したときのクローン培養上清の結合
トランスフェクトCHO細胞上で発現したCD25への、フローサイトメトリで判定したときの結合
【0248】
ビオチン化IL-2のその受容体への結合のヒト CD25モノクローナル抗体の上清による阻害: ヒトモノクローナル抗体がIL-2のCD25への結合を遮断又は阻害する程度を調べるために、96ウェル-プレート(グライナ社)を一晩、室温でrhCD25 (100 ng/ml; 米国ミネソタ州、R&Dシステムズ社)で被覆し、該プレートをPBSTCで1時間、室温で被覆することにより、非特異的結合を遮断した。プレートをPBSTで(3回)洗浄後、100μlの試料抗体(濃度範囲:10、33、及び100 ng/ml) を加えた。比較のために
Zenapax(R)も加えた。10分後、rIL-2-ビオチン (50 ng/ml)を加えた(1.5時間、室温)。プレートを3回(PBSTで)洗浄後、 プレートをストレプトアビジン-ポリ-HRP (ストックから1:10,000 になるように希釈)のPBS溶液と一緒にインキュベートし、100μlを各ウェルに加えた(1時間、室温)。プレートを(PBSTで3回)洗浄後、10mlのABTS緩衝液(ロシュ社)当たり10 mg ABTS (ロシュ社) の 10 ml ABTS 緩衝液(ロシュ社)を作製し、100μlを各ウェルに加えた。20分後、405nmでの吸光をELISAリーダ (EL 808、バイオ-テック。インスツルメンツ社)で読み取った。データは、2つの代表的実験のうちの一方を示す。図11に示すように、ヒト CD25モノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11 及びAB12 の上清は、Zenapax(r)よりも効率的に、ビオチン化IL-2のCD25への結合を阻害することができた。
【0249】
ヒトCD25モノクローナル抗体の上清によるZenapax(r)のCD25への結合阻害: ヒトモノクローナル抗体がZenapax(r)のCD25への結合を遮断又は阻害する程度を調べるために、96ウェル-プレート(グライナ社)を一晩、室温でrhCD25 (100 ng/ml; 米国ミネソタ州、R&Dシステムズ社)で被覆し、該プレートをPBSTCで1時間、室温で被覆することにより、非特異的結合を遮断した。プレートをPBSTで(3回)洗浄後、100μlの試料(濃度範囲:10、33、及び100 ng/ml) を加えた。10分後、ビオチン化 Zenapax(R)(5 ng/ml)を加えた(1.5時間、室温)。プレートを3回(PBSTで)洗浄後、 プレートをストレプトアビジン-ポリ-HRP (ストックから1:10,000 になるように希釈)のPBS溶液と一緒にインキュベートし、100μlを各ウェルに加えた(1時間、室温)。プレートを(PBSTで3回)洗浄後、10mlのABTS緩衝液(ロシュ社)当たり10 mg ABTS (ロシュ社) の 10 ml ABTS 緩衝液(ロシュ社)を作製し、100μlを各ウェルに加えた。20分後、405nmでの吸光をELISAリーダ (EL 808、バイオ-テック。インスツルメンツ社)で読み取った。データは、2つの代表的実験のうちの一方を示す。図12に示すように、ヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11 及びAB12 の上清は、Zenapax(r)のCD25への結合を遮断する。
【0250】
実施例4 CD25に対するヒトモノクローナル抗体は、抗CD3抗体誘導性T細胞増殖を阻害する
ヒト抗体を、それらのT細胞増殖阻害能について、T細胞増殖検定法を用いて検査した。比較のために、Zenapax(r)やアイソタイプ・コントロール抗体 (hIgG1/κ)も検査した。
PBMC 単離: ヒト血液細胞 (オランダ、ユトレヒト、オランダ赤十字血液銀行の軟膜で入手)をフィッコール勾配 (ファルマシア社、2500 rpm、5分間)に載せた。ピペットでPBMCをRPMI 1640 (10% FCS (Wisent
Multicell optimum C241)、2 mM L-グルタミン、50 IU/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン、25 mM HEPES (全て、ヨーロッパ、バイオ・ホイッテカー社から入手)を添加したもの)中に採集した。
【0251】
T細胞増殖検定法: ヒトPBMCをRPMI 1640 (10% FCS (Wisent
Multicell optimum C241)、2 mM L-グルタミン、50 IU/ml ペニシリン、50μg/ml ストレプトマイシン、25 mM HEPES を添加したもの(全て、ヨーロッパ、バイオ・ホイッテカー社から入手))に希釈して、96ウェル平底プレート(グライナ社)中に1.5 x 105 細胞/ウェル(三重にして)にした。これら細胞を抗CD3抗体 (CLB-T3/4.E、カタログ番号M1654、10 ng/ml)で刺激した。次に、50μlの次第に希釈した実験的抗体を細胞に加えた(二段階の希釈で範囲は500 ng/ml から7.8 ng/mlまで)。5日後(37℃、 5% CO2)、増殖を BrdU (最終濃度:10μM、ロシュ社)を上述の方法に従って用いて定量した。
【0252】
BrdU 標識付け検定法(ロシュ社 BrdU染色キット、カタログ番号1 647 229): BrdU 標識付け溶液(100μM)をウェルに加え、細胞を一晩、
(37℃、5% CO2)インキュベートした。細胞をウェル内に再懸濁させ、遠心分離(10分間、300 g)した。上清を廃棄し、細胞ペレットを乾燥させた(1時間、60℃)。次に、このペレットをFixDenat (200μl/ウェル;30分間、室温)と一緒にインキュベートした。インキュベート後、FixDenatを廃棄し、100μl/ウェル抗BrdU-POD (100μlの抗BrdUストック溶液を10 ml Ab-希釈溶液に加えたもの)をこのペレットに加えた(1時間、室温)。この上清を廃棄後、プレートを洗浄溶液(200μl/ウェル)で洗浄(3回)した。最後に、100 ml/ウェルの基質溶液をペレットに加えた(5分間、室温)。着色反応をH2SO4 (25μl/ウェル、1M)で停止させ、光学密度を450nmでELISAリーダ(バイオ-テック・インスツルメンツ社)で読み取った。
【0253】
図13に示すように、ヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、及びAB12は抗CD3抗体誘導性T細胞増殖を用量依存的に阻害した。本ヒト抗体による阻害は、Zenapax(r)よりも効率的だった。データは、3つの代表的実験のうちの1つを示す。
【0254】
実施例5 CD25に対するヒトモノクローナル抗体はMLRを阻害する
ヒト抗体を、それらのMLR阻害能について、MLR検定法を用いて検査した。比較のために、Zenapax(r)やアイソタイプ・コントロール抗体
(hIgG1/κ)も検査した。2人のMH不適合ドナーから得たヒトPBMC(オランダ、ユトレヒト、赤十字血液銀行からの軟膜で得た)を、(10% FCS (Wisent
Multicell optimum C241)、2 mM L-グルタミン、50 IU/ml ペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン(全て、スコットランド、ペーズリー、ライフテクノロジーズ、ギブコ BRL社から入手した)を添加した)RPMI 1640に2.0 x 106 個の細胞/mlになるように希釈した。一番目のドナーからのPBMCを放射線照射(2000 ラド)し、二番目のドナーからのPBMC(1.0 x 105個の細胞/ウェル)と、三重にして96ウェル平底プレート(グライナ社)中で混合 (1.0 x 105
個の細胞/ウェル)した。その後、50μlの次第に希釈した実験的抗体を該細胞(二段階の希釈で範囲50 ng/ml から0.8 ng/mlに)加えた。6日間の培養(37℃、5% CO2)後、増殖を BrdU (最終濃度10μM、ロシュ社)を上述した方法に従って用いて定量した。
【0255】
図14に示すように、ヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、及び AB12はMLRを用量依存的に阻害した。(約1乃至3ng/mlの用量での) AB1、AB7、及び AB12 によるMLRの阻害は、Zenapax(r)による阻害よりも効率的だった。データは、3つの代表的実験のうちの1つを示す。
【0256】
実施例6 Biacore3000装置上でのAB12の動態解析
表面プラズモン共鳴の変化をBIAcore3000装置を用いて観察することにより、親和性の分析を評価した。BIAcore
3000 及び BIAcore
3000 ソフトウェア・コントロール (スウェーデン、ウプサラ、BIAcore社、ロット番号BR-1100-43)を用いた。ヒトCD25 (R&Dシステムズ社、ロット番号223-2A/CFO)を、低密度
(BIAcore社、ロット番号BR-1000-14)のCM-5センサ・チップに、メーカの推奨に従って
アミン結合化学法を用いて固定した。活性化したセンサ・チップの残った結合部位をエタノール-アミンHClで遮断した後、動態解析を(メーカの推奨に従って)25℃で、ヒトモノクローナル抗体 AB12及び比較用のZenapax(r)を用いて行った。それぞれAB12及びZenapax(r)を含有する試料を、被膜後のセンサ・チップの表面上に流して、AB12 及びZenapax(r)をrhCD25と結合させた。それぞれAB12 及び Zenapax(r)の結合及び解離を、センサ・チップ上の表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて観察した。その結果を、BIAcore 3000 (バイオ-テック・インスツルメンツ社)を用いて観察し、BIAevaluation ソフトウェア 3.1 (スウェーデン、ウプサラ、BIAcore)を用いて解析し、ランギュイア(原語:Languir)結合 1:1 を予め固定したモデルとして用いた。
【0257】
BIAcore解析で判定されたAB12のrhCD25への結合のKD
4.74 x 10-11±0.43 x 10-11
【0258】
BIAcore解析で判定されたZenapax(r)のrhCD25への結合のKD
1.52 x 10-10±0.27 x 10-10。
【0259】
実施例7 T細胞芽をAB12処理すると、CD25が内部移行する
AB12を、そのCD25内部移行誘導能について検査した。抗KLH (ヒトIgG1/κアイソタイプ抗体、キーホール・リンペット・ヘモシアニンに特異的)をアイソタイプ・コントロール抗体として含めた。
【0260】
T細胞芽の誘導: ヘパリン-血液試料から、リンパ球分離媒質勾配を用いて末梢血単核細胞 (PBMC)を単離した後、PBMCを3乃至4日間、培養基(37℃、5% CO2)に入れた5 μg/ml フィトヘマグルチニン (PHA; ディフコ社、カタログ番号211796)で刺激した。
【0261】
内部移行を調べるためのT細胞芽の刺激: 細胞を採集し、PBSで洗浄後、細胞をトリパン・ブルーで計数した。T細胞芽
(1 x 106
個の細胞/ml) の一部を、アイソタイプ・コントロールとしてのFITC標識AB12 (2 μg/ml AB12-FITC)もしくはFITC標識抗KLH (2 μg/ml) と一緒に、又は、抗体を加えずに、プレインキュベート(4℃、15分間)した。プレインキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、1 x 106個の細胞
(1 ml の培養基に入れて)を24ウェル・プレートに加え、18時間、インキュベートした(37℃、5% CO2)。T細胞芽の残りを、FITC標識AB12 (2 μg/ml)、又はFITC標識抗KLH (2 μg/ml) の非存在下又は存在下で、18時間、インキュベートした(37℃、5% CO2)。
【0262】
インキュベート後、細胞を採集し、ローダミン標識されたコムギ胚芽凝集素(1 μg/ml、膜の標識付け;モラキュラー・プローブズ社、カタログ番号W-849)で4℃で15分間、標識した。その後、細胞をPBSで洗浄し、25 μl Vectashield DAPI (米国カリフォルニア州、バーリンガム、ベクタ・ラボラトリーズ社)中に再懸濁させた。次に、10 μl のこの細胞懸濁液を組織スライド上にピペットし、カバーし、蛍光顕微鏡(カール・ツァイス社)で分析し、写真をローダミン染色用TRITCフィルタ(フィルタ・セット15、ツァイス社)、又はFITC染色用のFITCフィルタ(フィルタ・セット09、ツァイス社)で撮影した。ローダミンで標識されたコムギ胚芽凝集素で得られた膜染色は図示されていない。
【0263】
図15A及び15Bに示すように、18時間の培養後に、AB12-FITCシグナルを細胞内部に見ることができる。図15Aは、AB12-FITCとのプレインキュベーション(15分間)及び洗浄後に18時間、細胞を培養した後の結果を示し、そして図15Bは、AB12-FITCの存在下で18時間、細胞を培養した後の結果を示す。無関係のFITC結合抗KLH抗体(図15C)を用いたコントロール実験は、FITC-標識抗体の内部移行がないことを示す。
【0264】
実施例8 フローサイトメトリで測定したところ、T細胞芽をAB12処理すると、CD25が内部移行する
別の実験では、フローサイトメトリを用いて、様々な時点におけるFITC標識AB12のT細胞芽への内部移行を判定した。
【0265】
ヘパリン-血液試料から、リンパ球分離媒質勾配(フィッコール)を用いて末梢血単核細胞 (PBMC)を単離した後、PBMCを3乃至4日間、培養基(37℃、5% CO2)に入れた5 μg/ml フィトヘマグルチニン (PHA;ディフコ社、カタログ番号211796)で刺激した。
【0266】
3日間の培養後、T細胞芽を採集し、PBSで洗浄し、トリパン・ブルーで計数した。このT細胞芽
(2mlの培養基に入れた2.5 x 106 個の細胞)に、2 μg/ml FITC標識AB12又はFITC標識抗KLH (アイソタイプ・コントロール抗体)を加えた。細胞をプレインキュベート(4℃、1時間)した後、細胞を2つの部分に分割した。一部分を培養基で洗浄し、他方の部分を洗浄しなかった。洗浄後、プレインキュベート試料を培養基中に再懸濁させた。両方の部分を4℃又は37℃でインキュベートした。
【0267】
0、0.5、1、又は4.5時間のインキュベート(4℃又は37℃での)後、3 ml のFACS 緩衝液(0.05% BSA 及び0.01 μg/ml アジ化ナトリウムを添加したPBS)を該細胞に加え、この細胞を300 g (4℃)で遠心して沈降させた。一方の部分では、細胞を200μl FACS 緩衝液に再懸濁させ、他方の部分では、細胞を200 μl FACS 緩衝液及び1 mg/ml 臭化エチジウム(シグマ社、カタログ番号E8751)に再懸濁させた。この臭化エチジウムは、フローサイトメトリによる細胞獲得の直前に加えられた。
【0268】
臭化エチジウムを用いて細胞表面上の蛍光シグナルを停止させた。図16に示すように、臭化エチジウムを加えて、又は加えずに測定された、4℃でインキュベートされた試料の蛍光比はほぼ1だった。このことは、内部移行が起きていないことを示す。37℃で培養された細胞は、時間と共にこの蛍光比の増加を示した。このことは、AB12-FITCの内部移行が起きたことを示す。予想通り、細胞をFITC標識AB12 の継続的な存在下でインキュベートすると、FITC標識AB12と一緒にプレインキュベートしたのみの細胞(図16A)に比べて、内部移行のレベルが高くなった(図16B)。図16Aは、1時間、プレインキュベートされた細胞の平均蛍光強度(MFI)の比を示し、過剰なFITC標識AB12は洗い落とされた。図16Bは、FITC標識AB12の存在下で当該細胞を培養後の結果を示す。MFIの比は、検査試料のMFIを0時間目のMFIで除算することで判定される。アイソタイプ・コントロール抗体(抗KLH-FITC、データは図示せず)では染色は観察されなかった。
【0269】
本発明の抗体のこのような内部移行上の特徴があるため、これらは、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉腫及びセザリー症候群を含む)、末梢T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリーセル白血病、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫
(SLL)の治療のための毒素を結合させるために、適しているであろう。
【0270】
別の状況では、本発明の抗体に、例えば成人T細胞白血病/リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(菌状息肉腫及びセザリー症候群を含む)、末梢T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ヘアリーセル白血病、及び慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫
(SLL)の治療のために適した放射性同位体で放射性標識付けを行う。
【0271】
更に、腫瘍負荷を判定し、それにより、投与すべき放射標識された抗体の投薬量を調節するために、本抗体を111Inで標識してもよい。
【0272】
均等物
当業者であれば、日常的な実験によって、ここに解説した本発明の具体的な実施態様の均等物を数多く、認識し、又は確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。従属請求項に開示された実施態様のいずれの組合せも、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0273】
ここに引用した全特許、係属中特許出願及び他の公開文献の全文を、引用をもってここに援用することとする。
【図面の簡単な説明】
【0274】
【図1】図1は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11、及びAB12 (それぞれ配列番号: 4、8、12、及び16)の軽(カッパ)鎖VJ 領域のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11、及びAB12 (それぞれ配列番号: 2、6、10、及び 14)の重鎖VDJ領域のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB1の重鎖VDJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 2) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 1)を示す。
【図4】図4は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB1の軽(カッパ)鎖VJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 4) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 3)を示す。
【図5】図5は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB7の重鎖VDJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 6) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 5)を示す。
【図6】図6は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB7の軽(カッパ)鎖VJ領域のアミノ酸配列(配列番号:8) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 7)を示す。
【図7】図7は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB11の重鎖VDJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 10) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 9)を示す。
【図8】図8は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB11の軽(カッパ)鎖VJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 12) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 11)を示す。
【図9】図9は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB12の重鎖VDJ領域のアミノ酸配列(配列番号: 14) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号: 13)を示す。
【図10】図10は、指定されたCDRを持つヒトモノクローナル抗体AB12の軽(カッパ)鎖VJ領域のアミノ酸配列(配列番号:16) 及び対応するヌクレオチド配列 (配列番号:15)を示す。
【図11】図11は、IL-2の結合の Zenapax(R) (ダクリズマブ、組換えヒト化IgG1抗CD25抗体、ロシュ社)による阻害に比較したときの、ヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11、及び AB12の上清による、IL-2のその受容体CD25への結合阻害を示すグラフである。
【図12】図12は、Zenapax(R)のCD25への結合阻害をヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB11、及び AB12により示すグラフである。
【図13】図13は、(PBMCを用いた)抗CD3抗体誘導性T細胞増殖のヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB12による阻害を、コントロール抗体(hIgG1/κ) 及びZenapax(R)による阻害に比較して示すグラフである。
【図14】図14は、ヒトモノクローナル抗体 AB1、AB7、AB12によるMLRの阻害を、コントロール抗体(hIgG1/κ)及びZenapax(r)による阻害に比較して示すグラフである。
【図15】図15は、FITC標識済みAB12によりCD25の内部移行を視覚化したFITCフィルタを用いた写真を示す。図15Aは、FITC標識済みAB12と一緒にプレインキュベートされたT細胞芽の、37℃での18時間のインキュベーション後の結果を示し、図15Bは、FITC標識済みAB12の存在下で37℃で18時間、培養されたT細胞がの結果を示す。比較のために、図15Cは、FITC標識済みアイソタイプ・コントロール抗体(抗KHL)の存在下で37℃で18時間、培養さえれたT細胞芽の結果を示す。
【図16】図16は、フローサイトメトリで測定したときの、FITC標識済みAB12によるCD25の内部移行を示し、この場合、平均蛍光強度(MF1)の比が1を越えたところは内部移行が起きたことを示す。図16Aは、それぞれ4℃及び37℃でFITC標識済みAB12と一緒にプレインキュベートされたT細胞芽の結果を示す。図16Bは、それぞれ4℃及び37℃でFITC標識済みAB12の存在下で培養されたT細胞芽の結果を示す。
【配列表】















【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD25に結合して、IL-2のCD25への結合を阻害する、単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項2】
IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、分泌型IgA、IgD、and IgE抗体から成る群より選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体がIgG1抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体がIgG4抗体である、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、ヒト組換えCD25をリガンドとし、前記抗体を分析物として用いたBIAcore 3000装置での表面プラズモン共鳴法(SPR)で判定したときに、約10-8 M以下、好ましくは約10-9 M 以下、そしてより好ましくは10-10 M以下、又は10-11 以下又はそれより低い解離平衡定数(KD)でヒトCD25から解離する、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、以下の特徴のうちの一つ以上:
a) ヒト CD25に対する特異性;
b) IL-2のCD25への結合を阻害する;
c) CD25発現T細胞を消失させる;
d) T細胞を寛容化する;
e) CD25発現T細胞の増殖を阻害する;
f)末梢血単核細胞(PBMC)の抗CD3抗体誘導性T細胞増殖を阻害する;
g) 混合リンパ球反応(MLR)を遮断する;
h) T細胞上に発現したCD25の内部移行
を有する、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
可変領域にそれぞれ配列番号:5及び配列番号:7に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされた、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
可変領域にそれぞれ配列番号:13及び配列番号:15に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされた、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
可変領域にそれぞれ配列番号:1及び配列番号:3に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされた、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項10】
可変領域にそれぞれ配列番号:9及び配列番号11に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖核酸にコードされた、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項11】
それぞれ配列番号:6及び配列番号:8に記載された通りのアミノ酸配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項12】
それぞれ配列番号:6及び配列番号:8に記載された通りのアミノ酸配列に対し、少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%、又は少なくとも99%相同な、ヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
それぞれ配列番号:14及び配列番号:16に記載された通りのアミノ酸配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項14】
それぞれ配列番号:6及び配列番号:8に記載された通りのアミノ酸配列に対し、少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%、又は少なくとも99%相同な、ヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
それぞれ配列番号:2及び配列番号:4に記載された通りのアミノ酸配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項16】
それぞれ配列番号:2及び配列番号:4に記載された通りのアミノ酸配列に対し、少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%、又は少なくとも99%相同な、ヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
それぞれ配列番号:10及び配列番号:12に記載された通りのアミノ酸配列又はその保存的配列改変を含むヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項18】
それぞれ配列番号:10及び配列番号:12に記載された通りのアミノ酸配列に対し、少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%、又は少なくとも99%相同な、ヒト重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域を有する、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
(i) 配列番号:2、4、6、8、10、12、14、及び16;並びに
(ii) (i)に記載した通りのアミノ酸配列のいずれかに対し、少なくとも90%相同、好ましくは少なくとも95%相同、そしてより好ましくは少なくとも98%、又は少なくとも99%相同な配列、
から成る群より選択される少なくとも1つのヒト可変領域を含む、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項20】
請求項7乃至19のいずれかに記載の抗体に規定されたヒトCD25上のエピトープに結合する、単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項21】
請求項7乃至19のいずれかに記載の抗体の結合特徴を有する、単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項22】
(i)配列番号: 23、24、25、26、27、もしくは 28;又は
(ii)(i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、
から成る群より選択される少なくとも1つのCDR配列を含む、ヒトCD25に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項23】
配列番号:25のVH CDR3、その保存的配列改変、又は、配列番号:25のVH CDR3に比較して1乃至3個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有する配列、を含む、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
アミノ酸配列
X1-Asp-Trp-X2-Asp-X3
を有するVH
CDR3を含み、
但し式中、X1
がArg、His 又は Lysであり; X2 が Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Tyr、Trp 又は Pheであり;そしてX3 が Pro、Tyr、Phe 又はTrpである、
請求項23に記載の抗体。
【請求項25】
X1
が Arg 又は Lysであり;X2 がGly 又はPheであり;そしてX3 が Pro 又は Tyrである、請求項24に記載の抗体。
【請求項26】
(i) 配列番号: 23、24、25、26、27、及び28のVH CDR1、CDR2、及びCDR3 並びにVL CDR1、CDR2 及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、から選択される少なくとも4つのCDRを含む、請求項22に記載の抗体。
【請求項27】
(i) 配列番号: 23、24、25、26、27、及び28のVH CDR1、CDR2、及びCDR3 並びにVL CDR1、CDR2 及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、を含む、請求項22に記載の抗体。
【請求項28】
(i) 配列番号: 29、30、31、32、33、もしくは34;又は
(ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、
から成る群より選択される少なくとも1つのCDR配列を含む、ヒトCD25に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項29】
配列番号:31のVH CDR3、その保存的配列改変、又は、配列番号:31のVH CDR3に比較して1乃至3個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有する配列、を含む、請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
(i) 配列番号:29、30、31、32、33、及び34のVH CDR1、CDR2、及び CDR3 並びに VL CDR1、CDR2、及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、から選択される少なくとも4つのCDR配列を含む、請求項28に記載の抗体。
【請求項31】
(i) 配列番号:29、30、31、32、33、及び34のVH CDR1、CDR2、及び CDR3 並びに VL CDR1、CDR2、及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、を含む、請求項28に記載の抗体。
【請求項32】
(i) 配列番号:35、36、37、38、39、もしくは 40;又は
(ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、
から成る群より選択される少なくとも1つのCDR配列を含む、ヒトCD25に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項33】
配列番号:37のVH CDR3、その保存的配列改変、又は、配列番号:37のVH CDR3に比較して1乃至3個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有する配列、を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項34】
(i) 配列番号:35、36、37、38、39、及び 40のVH CDR1、CDR2、及び CDR3 並びに VL CDR1、CDR2、及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、から選択される少なくとも4つのCDR配列を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項35】
(i) 配列番号:35、36、37、38、39、及び 40のVH CDR1、CDR2、及び CDR3 並びに VL CDR1、CDR2、及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、を含む、請求項32に記載の抗体。
【請求項36】
(i) 配列番号: 17、18、19、20、21、もしくは 22;又は
(ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、
から成る群より選択される少なくとも1つのCDRを含む、ヒトCD25に結合する単離されたヒトモノクローナル抗体。
【請求項37】
配列番号:19のVH CDR3、その保存的配列改変、又は、配列番号:19のVH CDR3に比較して1乃至3個のアミノ酸置換、欠失又は追加を有する配列、を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項38】
(i) 配列番号: 17、18、19、20、21、及び 22; 又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、から選択される少なくとも4つのCDR配列を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項39】
(i) 配列番号: 17、18、19、20、21、及び 22のVH CDR1、CDR2、及び CDR3 並びに VL CDR1、CDR2、及び CDR3 ;又は (ii) (i)に規定された配列のいずれかの保存的配列改変、を含む、請求項36に記載の抗体。
【請求項40】
アミノ酸配列
X1-Tyr-X2-Ile-X3
を有するVH CDR1を含み、
但し式中、 X1、X2 及び X3 が天然のアミノ酸であり;そして
X1
がSerとは異なり;又はX2 がAlaとは異なり;又はX3 がSerとは異なる、上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項41】
X1
がArg、Lys 又は Hisであり;X2 が Ala、Gly、Val、Leu、Ile、又はProであり;そしてX3 が Asn 又は Glnである、請求項40に記載の抗体。
【請求項42】
X1
が Argであり;X2 がAla、Ile、又はProであり;そしてX3 が Asnである、請求項41に記載の抗体。
【請求項43】
アミノ酸配列
Arg-Ile-Ile-Pro-Ile-Leu-Gly-X1-X2-X3-Tyr-Ala-Gln-X4-Phe-Gln-X5
を有するVH
CDR2ドメインを含み、
但し式中、X1、X2、X3、X4、及びX5 が天然アミノ酸であり;そして
X1
がIleとは異なり;又はX2 がAlaとは異なり;又はX3 がAsnとは異なり;又はX4 がLysとは異なり;又はX5 がGlyとは異なる、
上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項44】
X1
が Ile、Val、Gly、Ala 又は Leuであり;X2 が Ala、Ile、Val、Gly、Leu、Glu 又はAspであり;X3 がAsp、Glu、Asn 又はGlnであり;X4 が Lys、Arg 又は Hisであり;そしてX5 がGly、Ile、Val、Ala、Leu、Asp 又は Gluである、請求項43に記載の抗体。
【請求項45】
X1
が Ile 又は Valであり;X2 が Ala 又は Gluであり;X3 が Asp 又はAsnであり;X4 が Lys 又は Argであり;そしてX5 がGly 又は Aspである、請求項44に記載の抗体。
【請求項46】
アミノ酸配列
Arg-Ala-Ser-Gln-Ser-X1-Ser-Ser-X2-Leu-Ala
を有するVL
CDR1ドメインを含み、
但し式中、X1
及びX2
が天然アミノ酸であり;そして
X1
がValとは異なり;又はX2 がTyrとは異なる、
上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項47】
X1
がVal、Ala、Leu、Ile 又はGlyであり;そしてX2 が Phe、Trp 又はTyrである、請求項46に記載の抗体。
【請求項48】
X1
がVal 又は Glyであり;そしてX2 がPhe 又はTyrである、請求項47に記載の抗体。
【請求項49】
アミノ酸配列
Gln-Gln-Tyr-X1-Ser-Ser-Pro-X2-X3
を有するVL
CDR3ドメインを含み、
但し式中、X1
が Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser 又はThrであり; X2 が Leu、Gly、Ala、Val 又はIleであり;そしてX3 がThr 又は Serである、
上記請求項1乃至6のいずれかに記載の抗体。
【請求項50】
X1がGly 又はSerであり、X2 がLeu 又はIleであり;そしてX3 がThrである、請求項49に記載の抗体。
【請求項51】
ヒト VH1-69/JH4b
又はVH1-69/JH5b
生殖細胞系配列を由来とする重鎖可変領域アミノ酸配列と、ヒト A27/JK4 又は A27/JK5 生殖細胞系配列を由来とする軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含み、但し前記ヒト抗体がヒトCD25に結合する、単離されたヒト抗体。
【請求項52】
ヒト VH1-69/D7-27/JH4b
又はVH1-69/
D7-27/JH5b 生殖細胞系配列を由来とする重鎖可変領域アミノ酸配列と、ヒト A27/JK4 又は A27/JK5 生殖細胞系配列を由来とする軽鎖可変領域アミノ酸配列とを含み、但し前記ヒト抗体がヒトCD25に結合する、単離されたヒト抗体。
【請求項53】
インタクトIgG1抗体、インタクトIgG2抗体、インタクトIgG3抗体、インタクトIgG4抗体、インタクトIgM抗体、インタクトIgA1抗体、インタクトIgA2抗体、インタクト分泌型IgA抗体、インタクトIgD抗体、及びインタクトIgE抗体から成る群より選択されるインタクト抗体であって、前記抗体が真核細胞内では糖付加されている、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項54】
インタクトIgG1,κ抗体、インタクトIgG1,λ抗体、インタクトIgG4,κ抗体、及びインタクトIgG4,λ抗体から成る群より選択されるインタクト抗体であって、前記抗体が真核細胞内で糖付加されている、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項55】
一抗体フラグメント又は一本鎖抗体である、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項56】
(i) 免疫グロブリン・ヒンジ領域ポリペプチドに融合された、請求項19に規定された重鎖可変領域又は軽鎖可変領域、(ii) 前記ヒンジ領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び (iii) 前記CH2定常領域に融合された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項57】
V-(D)-J遺伝子セグメント再編成の結果、不死化細胞に融合されたヒ機能的ヒト重鎖導入遺伝子及び機能的ヒト軽鎖導入遺伝子の形成が起きた、非ヒトトランスジェニック動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマにより産生される、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項58】
V-(D)-J遺伝子セグメント再編成の結果、不死化細胞に融合されたヒ機能的ヒト重鎖導入遺伝子及び機能的ヒト軽鎖導入遺伝子の形成が起きた、非ヒトトランスジェニック動物から得られたB細胞を含むハイブリドーマであって、上記請求項のいずれかに記載のモノクローナル抗体を検出可能な量、産生する、ハイブリドーマ。
【請求項59】
請求項1乃至54のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項60】
ヒト重鎖及びヒト軽鎖をコードする核酸を含むトランスフェクトーマにより産生される、上記請求項のいずれかに記載の抗体。
【請求項61】
ヒト重鎖及びヒト軽鎖をコードする核酸を含むトランスフェクトーマであって、上記請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体を検出可能な量、産生する、トランスフェクトーマ。
【請求項62】
ヒト重鎖及びヒト軽鎖をコードする核酸を含む真核もしくは原核ホスト細胞であって、前記ホスト細胞が、上記請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体を検出可能な量、産生する、ホスト細胞。
【請求項63】
ヒト重鎖及びヒト軽鎖をコードする核酸を含む非ヒトトランスジェニック動物又は植物であって、上記請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体を検出可能な量、産生する、動物又は植物。
【請求項64】
ヒトCD25に結合するヒトモノクローナル抗体を作製する方法であって:
ヒト重鎖導入遺伝子及びヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する非ヒトトランスジェニック動物を、ヒト CD25又はヒトCD25発現細胞で、抗体が前記動物のB細胞により産生されるように、免疫するステップと;
前記動物のB細胞を単離するステップと;
前記B細胞を骨髄腫細胞に融合させて、ヒトCD25に特異的なヒトモノクローナル抗体を分泌する不死のハイブリドーマ細胞を形成するステップと、
CD25に特異的なヒトモノクローナル抗体を、ハイブリドーマの培養上清から、又は、このようなハイブリドーマを由来とするトランスフェクトーマから、単離するステップと、
を含む、方法。
【請求項65】
上記請求項1乃至55のいずれかに記載のヒト抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物。
【請求項66】
治療薬をさらに含む、請求項65に記載の組成物。
【請求項67】
放射性同位体を付着させるためのキレート・リンカをさらに含む、請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体。
【請求項68】
細胞毒性作用薬、放射性同位体、又は薬物に連結させた、請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体を含む免疫複合体。
【請求項69】
上記請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体と、CD3、CD4、IL-15R、膜結合型もしくは受容体結合型TNF-α、又は膜結合型もしくは受容体結合型IL-15に対する結合特異性部分とを含む二重特異的又は多重特異的分子。
【請求項70】
CD25発現細胞の成長及び/又は増殖を阻害する方法であって、前記細胞の成長及び/又は増殖が阻害されるように、上記請求項のいずれかに記載の抗体、組成物、免疫複合体、二重特異的もしくは多重特異的分子を投与するステップを含む、方法。
【請求項71】
CD25発現細胞を消失させる方法であって、前記CD25発現細胞の致死が起きるように、上記請求項のいずれかに記載の抗体、組成物、免疫複合体、二重特異的もしくは多重特異的分子を投与するステップを含む、方法。
【請求項72】
CD25発現細胞が活性化T細胞である、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
CD25発現細胞が関与する異常を治療又は予防する方法であって、上記請求項のいずれかに記載の抗体、組成物、免疫複合体、二重特異的もしくは多重特異的分子、又は、請求項90乃至94のいずれかに記載の発現ベクタ、又は、請求項95に記載の医薬組成物を、前記疾患を治療又は予防するために有効量、投与するステップを含む、方法。
【請求項74】
前記異常が、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、免疫性、自己免疫性もしくは炎症性疾患、炎症性もしくは過増殖性皮膚異常、及びリンパ系新生物から成る群より選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記移植片拒絶が、例えば心臓、肺、同時心臓−肺、気管、腎臓、肝臓、膵臓、食道、腸、皮膚、四肢、臍帯、幹細胞、島細胞移植等の臓器又は組織移植を受ける患者における同種移植もしくは異種移植片拒絶である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
上記請求項のいずれかに記載の抗体による予防的治療により移植片拒絶を予防する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記移植片対宿主疾患が、輸血移植片対宿主疾患及び骨髄移植片対宿主疾患から成る群より選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記免疫性、自己免疫性もしくは炎症性疾患が、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、1型糖尿病、インシュリン要求性2型糖尿病、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚−多発性筋炎、シェーグレン症候群、大細胞動脈炎を含む動脈炎、再生不良性貧血、喘息、強皮症、及びブドウ膜炎から成る群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記炎症性もしくは過増殖性皮膚異常が、プラーク乾癬を含む乾癬、掌蹠膿疱症
(PPP)、びらん性扁平苔癬、水疱性天疱瘡、水疱性表皮剥離、接触性皮膚炎及びアトピー性皮膚炎から成る群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
前記リンパ系新生物が、T細胞白血病、ホジキン病、ヘアリーセル白血病、又は、菌状息肉腫を含む皮膚T細胞リンパ腫、及びセザリー症候群から成る群より選択される、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
前記疾患が、浸潤性CD25+調節性T細胞の阻害が有益である悪性腫瘍であり、そして胃癌、食道癌、悪性黒色種、結腸直腸癌、膵臓癌、乳癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頚癌、卵巣癌、及び腎細胞カルシノーマから成る群より選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記疾患が、成人T細胞白血病/リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病
(CLL)/小リンパ球性リンパ腫
(SLL)、末梢T細胞リンパ腫、及び二次性アミロイドーシスから成る群より選択される造血系の異常である、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
別の治療薬及び/又は治療法を対象に別に施与するステップをさらに含む、請求項70乃至82のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
前記治療薬が、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノレート・モフェチル、プレドニゾンなどのコルチコステロイド、メトトレキセート、金塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナー、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリンから成る群より選択される免疫抑制剤である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記治療薬が、ステロイド系薬物、NSAID(非ステロイド系抗炎症剤)、及びメトトレキセートなどのDMARD、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、レフルノミド、IL-1 受容体遮断剤、例えばアナキンラ、及びTNF-α遮断剤、例えばエタネルセプト、インフリキシマブ
及びアダリムマブ、抗IL-6R抗体、CTLA4Ig、及び抗IL-15抗体から成る群より選択される抗炎症剤である、請求項83に記載の方法。
【請求項86】
前記治療薬が、コールタール、ビタミンA、アントラリン、カルシポトリエン、タラゾテン、コルチコステロイド、トトレキセート、アシクレチンなどのレチノイド、シクロスポリン、エタネルセプト、アレファセプト、エファルジマブ、6-チオグアニン、ミコフェノレート・モフェチル、タクロリムス(FK-506)、ヒドロキシウレア、及びUVB (広帯域及び狭帯域紫外線B)、UVA (紫外線A) 及びPUVA (プソラーレンメトキサレン、プラス、紫外線A)を含む光線療法、から成る群より選択される、炎症性もしくは過増殖性皮膚異常を治療するための作用薬又は治療法である、請求項83に記載の方法。
【請求項87】
前記治療薬が、ドキソルビシン、シスプラチン、ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、及びシクロホスファミドから成る群より選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項88】
試料中において、CD25抗原又はCD25発現細胞の存在を検出する方法であって、
前記試料を、請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体に、前記抗体とCD25との間の複合体形成が可能な条件下で接触させるステップと、
複合体形成を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項89】
試料中において、CD25抗原又はCD25発現細胞の存在を検出するための診断用キットであって、請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体を含み、前記抗体が、選択的には検出可能な標識に連結されている、診断用キット。
【請求項90】
ヒトCD25に結合するヒト抗体の軽鎖、重鎖、又は、軽鎖及び重鎖の両方、の可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクタ。
【請求項91】
ヒトCD25に結合するヒト抗体の軽鎖、重鎖、又は、軽鎖及び重鎖の両方、の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項90に記載の発現ベクタ。
【請求項92】
配列番号:1、5、9、又は13に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変から成る群より選択されるヌクレオチドを含む重鎖可変領域と、配列番号:3、7、11、又は15に記載された通りのヌクレオチド配列又はその保存的配列改変から成る群より選択されるヌクレオチド配列を含む軽鎖可変領域と、をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクタ。
【請求項93】
配列番号:2、6、10、又は14に記載された通りのアミノ酸配列から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号:4、8、12、又は16に記載された通りのアミノ酸配列及びその保存的配列改変から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクタ。
【請求項94】
請求項1乃至55のいずれかに記載のヒトモノクローナル抗体をコードする発現ベクタ。
【請求項95】
請求項90乃至94のいずれかに記載の発現ベクタと、薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項96】
請求項1乃至55のいずれかに記載の抗体に結合する抗イディオタイプ抗体。
【請求項97】
AB1、AB7、AB11 又はAB12に結合する抗イディオタイプ抗体。
【請求項98】
試料中において、CD25に対するヒトモノクローナル抗体のレベルを検出するための、請求項96又は97に記載の抗イディオタイプ抗体の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2006−523433(P2006−523433A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553579(P2004−553579)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036126
【国際公開番号】WO2004/045512
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(503458261)ゲンマブ エー/エス (3)
【氏名又は名称原語表記】GENMAB A/S
【Fターム(参考)】