説明

DHEA産生促進剤、美容方法およびDHEA産生促進剤の使用方法

【課題】 DHEAの産生を促進して、老化を防止することができ、抗動脈硬化、抗肥満、筋ジストロフィー治療、抗グルココルチコイドなどの作用により、種々の疾患の治療への道を開くものであると共に、安全性にも優れたDHEA産生促進剤を提供する。
【解決手段】 ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上からなるものとする。また、このDHEA産生促進剤は、DHEA産生促進剤を鼻の粘膜から吸収させることと、前記DHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料を肌に適用することの両方を行うという方法で使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDHEA産生促進剤に関し、さらに詳しくは、このDHEA産生促進剤を鼻から吸収することで、DHEAの産生を高めるDHEA産生促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
DHEA、すなわちデヒドロエピアンドロステロンは副腎皮質から生成される天然ステロイドである。その能力としては、表皮の角質化を促進する能力や、皮脂の内因性の生成及び分泌の増加能力並びに皮膚の障壁効果の強化能力による乾燥肌の処理における能力が知られている。
特許文献1ではコラーゲンと結合組織の喪失を抑制して皮膚退化を治療するためにDHEAが使用されている。また、しわ、皮膚のつやの喪失や皮膚のたるみ等の老化に対してもDHEAを用いることが試みられている。
生体内のDHEAは、神経性食欲不振や慢性ストレスによりこの量が低下することが知られており、抗動脈硬化、抗肥満、筋ジストロフィー治療、抗グルココルチコイド、抗老化などに重要な役割を担っていると考えられている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5843932号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者らは種々の植物由来の成分についてDHEA産生促進能を調べた結果、これまでにかかる効果を有することが知られていなかった特定の植物由来の成分について、DHEA産生促進能を有していることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上からなることを特徴とするDHEA産生促進剤である。
【0006】
本発明は、ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなることを特徴とするDHEA産生促進剤である。
【0007】
本発明は、ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上を鼻から吸入することによりDHEAの産生を促進させることを特徴とする美容方法である。
【0008】
本発明は、前記DHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料を肌に適用した後、あるいは肌に適用しつつ、前記DHEA産生促進剤を鼻の粘膜から吸収させることを特徴とするDHEA産生促進剤の使用方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のDHEA産生促進剤は、これまでDHEA産生促進作用があることが知られていなかった植物抽出物を用いるものであり、DHEAの産生を促進して、老化を防止することができる。また、抗動脈硬化、抗肥満、筋ジストロフィー治療、抗グルココルチコイドなどの作用により、種々の疾患の治療への道を開くものであると共に、安全性にも優れたものである。
【0010】
また本発明の美容方法によれば、DHEA産生促進剤を含む香料やDHEA産生促進剤を含む化粧料を用いることで、匂いを嗅ぐという簡単な方法で、DHEAの産生を促進して、老化を防止することができるので、操作性に優れ、かつ安全性にも優れた方法である。
【0011】
また本発明のDHEA産生促進剤の使用方法によれば、容易な方法で、DHEAの産生をさらに一層促進させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の最良の実施の形態について説明する。
本発明のDHEA産生促進剤に用いられるローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールは、いずれも公知の植物由来の成分である。
【0013】
ローズオイルは、キャベッジ・ローズ(学名Rosa centifolia L)やダマスク・ローズ(学名Rosa damascene MILL.)などのばらの花から水蒸気蒸留することにより得られる精油である。
【0014】
バレリアンオイルは、オミナエシ科の多年草であるセイヨウカノコソウ(学名Valeriana officinalis L.)の根茎を水蒸気蒸留して得られる精油である。また、このバレリアンオイルをさらに特開平10−204473号公報に記載された方法により改質したもの(改質バレリアンオイル)も本発明に用いることが出来る。同公報に記載された方法により、バレリアンオイル独特の不快な臭気を除去することが出来る。
【0015】
ジメトキシメチルベンゼンは、ハイブリットテイ種を代表とする現代ばらの香気成分である。1,3-ジメトキシ-5-メチルベンゼン。
【0016】
リナロールは、果実、野菜、スパイス類、コーヒー、茶などの香気成分中に見出されるスズランを想起させる芳香の無色液体であり、化学式はC1018Oである。
【0017】
DHEA産生促進剤は、ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上からなるものであるが、好ましくは、バレリアンオイルおよびジメトキシメチルベンゼンを含むものであり、より好ましくはローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールのすべてを含むものである。
ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールのすべてを含む香料組成物とした場合、それぞれの成分の適正配合量は、他の配合成分や用途等によって適宜選択されるものであり、特に限定されないが、通常、香料組成物の全重量に対して0.001〜99.997質量%、好ましくは、0.01〜99.97質量%である。4種すべてを上記配合量範囲で含ませることにより、DHEA産生促進効果はより高くなる。
【0018】
本発明のDHEA産生促進剤は、DHEA産生促進剤のみで鼻から吸引する鎮静香料としての使用が可能である。また、その他の基剤と共に配合して、スキンケア化粧料、ルームフレグランス、フレグランス、インセンス、入浴剤等とすることもでき、このうちスキンケア化粧料が好ましい。スキンケア化粧料とした場合には、肌への適用と、鼻からのDHEA産生促進剤の吸入とを兼ねることができる。
対象物中におけるDHEA産生促進剤の配合量は対象物によって適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、対象物の全重量に対して、0.0001〜50質量%であり、より好ましくは、0.001〜20質量%であり、さらに好適には、0.001〜10質量%である。0.0001質量%未満であると効果が著しく低下し、50質量%を超えてもそれ以上の効果の向上は望めない。
【0019】
本発明のDHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0020】
その他、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤、カフェイン、タンニン、ベラパミル、トラネキサム酸およびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸、ルシノール、エラグ酸、カモミラ等の他の美白剤、グルコース、フルクトース、マンノース、ショ糖、トレハロース等の糖類なども適宜配合することができる。
【0021】
本発明のDHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料とは、例えば軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤、メーク落とし、洗顔料等、従来スキンケア化粧料に用いるものであればいずれでもよく、剤型は特に問わない。
【0022】
上記スキンケア化粧料には、上記必須成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色材、水性成分、水、各種皮膚栄養剤、各種薬剤、キレート剤、PH調製剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0023】
本発明のDHEA産生促進剤を使用するに際しては、上記香料として鼻の粘膜から直接吸収させて用いるのがよく、より好ましくは、DHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料を使用することと、前記DHEA産生促進剤を鼻の粘膜から吸収させることの両方を行う方法をとることである。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。ここで、配合量は質量%である。
実施例に先立ち、本発明のDHEA産生促進剤のDHEA産生促進効果に関する試験方法とその結果について説明する。
【0025】
実施例1
下記表1の処方で香料を調製した。
【0026】
【表1】

【0027】
実施例2(角質除去化粧水)
次の表2に示す処方で以下の方法により角質除去化粧水を調製した。
(製法)
2、6、10、11を混合、溶解し、その他の原料を混合したパーツへ添加、溶解させる。その後、ろ過を行い、製品を得る。
【0028】
【表2】

【0029】
実施例3(白濁化粧水)
次の表3に示す処方で以下の方法により白濁化粧水を調製した。
(製法)
4、5、8、11を60℃に加温し、溶解させる。その後、1、2、3、6、7、9、10の混合物へ添加し、混合、ろ過し、製品を得る。
【0030】
【表3】

【0031】
実施例4(乳液)
次の表4に示す処方で以下の方法により乳液を調製した。
(製法)
1、2、3、12、14を混合、溶解し、70℃へ加温する。一方で、4、5、6、7、8、9、10、11、15、16、17、18を70℃にて混合、溶解し、先のパーツへ添加する。ホモミキサーにて乳化した後、13にて中和する。その後、ろ過、急冷し製品を得る。
【0032】
【表4】

【0033】
(試験方法およびその結果)
1.DHEA産生促進剤(香料)の調製
実施例1の香料および実施例4の乳液を用いて、DHEA産生促進効果を次の方法で評価した。
【0034】
2.DHEA産生促進効果試験
20歳から39歳の健常な女性90名を3群に分け、4週間にわたって、第1群には、被験者が使用している化粧をそのまま継続してもらった。第2群は、被験者が使用している化粧をそのまま継続して使用した上で、噴霧器を用いて日中3回以上香料を吸入し、かつ、就寝中にはルームフレグランスとして同香料を吸入した.第3群は、朝晩指定したスキンケア(上記乳液を用いてのスキンケア)を行う過程で、手首に乳液を垂らすことにより同香料を吸入した.試験期間中は、指定した香料以外の香料、エステ等の利用を禁止した。
【0035】
試験期間の前後の同一時刻、同一場所において、口漱ぎ、30分の安静の後、サリベッティ(Sarstedt社)を用いて唾液を採取した.唾液中のDHEASをラジオイムノアッセイキット(Diagnostic Products Corporation社)を用いて定量した。その結果を図1に示す。
【0036】
図1から香料使用群である第2群、スキンケア・香料使用群である第3群のいずれにおいても、香料未使用群である第1群に比し、DHEASが増加していることがわかる。また、図1からスキンケア・香料使用群である第3群は、香料使用群である第2群に比べてDHEASの増加量が高いことが分かる。
【0037】
実施例5(香料)
次の表5に示す処方で鎮静香料を調製した。
【0038】
【表5】

【0039】
実施例6(香料)
次の表6に示す処方で香料を調製した。
【0040】
【表6】

【0041】
実施例7(香料)
次の表7に示す処方で香料を調製した。
【0042】
【表7】

【0043】
実施例8(フレグランス)
次の表8に示す処方でフレグランスを調製した。
【0044】
【表8】

【0045】
実施例9(ルームフレグランス)
次の表9に示す処方でルームフレグランスを調製した。
【0046】
【表9】

【0047】
実施例10(インセンス)
次の表10に示す処方でインセンスを調製した。
【0048】
【表10】

【0049】
実施例11(入浴剤)
次の表11に示す処方で入浴剤を調製した。
【0050】
【表11】

【0051】
実施例12(フレグランス)
次の表12に示す処方でフレグランスを調製した。
【0052】
【表12】

【0053】
実施例13(DHEA産生促進剤の使用方法)
次の方法で、DHEA産生促進剤を使用した美容法を行った。
(1)表13の処方のメーク落とし、あるいは表14の処方の洗顔料で、肌の汚れを落として清潔な素の状態に戻す。
(2)実施例5の香料を手首につけ、鼻から吸引する。
(3)実施例2の角質除去化粧水を用いて角質除去後、実施例3の白濁化粧水を用いて肌のモイスチャーバランスを保ち、肌の働きを高める。
(4)実施例4の乳液を用いてスキンケアをする。
(5)アイマスクにより、心身の疲れが集中する目をゆっくりと時間をかけて覆う。
【0054】
【表13】

【0055】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】唾液中のDHEASをラジオイムノアッセイキット(Diagnostic Products Corporation社)を用いて定量した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上からなることを特徴とするDHEA産生促進剤。
【請求項2】
ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなることを特徴とするDHEA産生促進剤。
【請求項3】
鼻の粘膜から吸収させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のDHEA産生促進剤。
【請求項4】
前記DHEA産生促進剤は、
DHEA産生促進剤を鼻の粘膜から吸収させることと、前記DHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料を肌に適用することの両方を行うという方法で使用するものであることを特徴とする請求項3に記載のDHEA産生促進剤。
【請求項5】
ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上を鼻から吸入することによりDHEAの産生を促進させることを特徴とする美容方法。
【請求項6】
ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上を鼻の粘膜から吸収させることと、ローズオイル、バレリアンオイル、ジメトキシメチルベンゼンおよびリナロールからなる群より選択される一種または二種以上を含むスキンケア化粧料を肌に適用することの両方を行うことを特徴とする請求項5に記載の美容方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のDHEA産生促進剤を含むスキンケア化粧料を肌に適用した後、あるいは肌に適用しつつ、前記DHEA産生促進剤を鼻の粘膜から吸収させることを特徴とするDHEA産生促進剤の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−8862(P2007−8862A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191510(P2005−191510)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】