説明

DPP−IV阻害剤

本発明は、式(I)の化合物に関し、式中、Z、R1〜8、n、A1、X1、およびX2は説明および特許請求の範囲で引用した意味を有する。化合物はDPP-IV阻害剤として有益である。本発明はまた、そのような化合物の調製ならびに薬剤としてのその製造および使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それらの薬学的に許容される塩およびプロドラッグを含む、新規クラスのジペプチジルペプチダーゼ阻害剤に関し、これらは特に、しばしば非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)と呼ばれる2型糖尿病、ならびにしばしばこの疾患と関連する状態、例えば肥満および脂質障害の治療において治療化合物として有益である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、複数の病因に由来し、空腹時または経口的ブドウ糖負荷試験中のブドウ糖投与後の高い血漿グルコース値または高血糖により特徴づけられる疾病過程を示す。持続的な、または制御されていない高血糖は、罹病率および致死率の増加および早発性に関連する。しばしば、異常なグルコース恒常性は、直接および間接的に、脂質、リポ蛋白質およびアポリポ蛋白質代謝の変化ならびに他の代謝および血行動態疾患と関連する。そのため、2型糖尿病患者では、冠状動脈性心臓病、脳卒中、末梢血管障害、高血圧、腎症、神経症、および網膜症を含む大血管および微小血管合併症の危険が増大する。そのため、グルコース恒常性、脂質代謝および高血圧の治療的制御が、糖尿病の臨床管理および治療では非常に重要である。
【0003】
糖尿病には2つの一般に認識される型がある。1型、またはインスリン依存性糖尿病(IDDM)では、患者はグルコース利用を調節するホルモンであるインスリンをほとんどまたは全く産生しない。2型、または非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)では、患者はしばしば、糖尿病ではない被験者と比べ、同じかまたは高い血漿インスリンレベルを有する。これらの患者は、主なインスリン感受性組織、すなわち、筋肉、肝臓および脂肪組織におけるグルコースおよび脂質代謝に対する効果を刺激するインスリンに対する耐性を発現する。さらに、血漿インスリンレベルは、上昇している間でも、顕著なインスリン耐性を克服するには不十分である。
【0004】
インスリン耐性は、主にインスリン受容体の数が減少するためではなく、後インスリン受容体結合欠陥によるものであり、これはまだ理解されていない。このインスリン応答性に対する耐性により、筋肉でのグルコース取り込み、酸化および貯蔵のインスリン活性化が不十分になり、ならびに脂肪組織での脂肪分解ならびに肝臓でのグルコース産生および分泌のインスリン阻止が不十分なものとなる。
【0005】
2型糖尿病に対し有効な治療は、何年も実質的には変わっていないが、限界があると認識されている。運動および食事のカロリー摂取量の減少により、糖尿病状態は著しく改善されるが、この治療の遵守は非常に悪い。デスクワーク中心の生活が定着し、食品、特に飽和脂肪量の高い食品の消費が過剰であるためである。膵臓β細胞を刺激しより多くのインスリンを分泌させるスルホニル尿素(例えば、トルブタミドおよびグリピジド)またはメグリチナイドの投与により、および/またはスルホニル尿素またはメグリチナイドが無効な場合インスリン注入により、インスリンの血漿レベルを増加させると、まさしくそのインスリン耐性組織を刺激するのに十分高いインスリン濃度が得られる。しかしながら、インスリンまたはインスリン分泌促進薬(スルホニル尿素またはメグリチナイド)の投与により危険なほど低いレベルの血漿グルコースとなることがあり、さらに血漿インスリンレベルが高くなると、インスリン耐性レベルが高くなることがある。ビグアニドはインスリン感受性を増加させ、高血糖をある程度調整する。しかしながら、2つのビグアニド、フェンホルミンおよびメトホルミンは乳酸アシドーシスおよび吐き気/下痢を誘発することがある。メトホルミンはフェンホルミンよりも副作用が少なく、しばしば2型糖尿病の治療のために処方される。
【0006】
グリタゾン(すなわち、5-ベンジルチアゾリジン-2,4-ジオン)は、2型糖尿病の多くの症状を寛解させる可能性を有する化合物のクラスとして最近説明されている。これらの薬剤は実質的に、2型糖尿病のいくつかの動物モデルにおける筋肉、肝臓および脂肪組織でのインスリン感受性を増加させ、低血糖を起こさずに、グルコースの上昇した血漿レベルを一部、または完全に調整する。現在市販されているグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、主にPPAR-γサブタイプの作用薬である。PPAR-γアゴニズムは一般に、グリタゾンを用いると観察されるインスリン感受性の改善の一因であると考えられる。2型糖尿病の治療に対し試験した新規PPAR作用薬は、α、γまたはδサブタイプの作用薬、またはこれらの組み合わせであり、多くの場合、グリタゾンとは化学的に異なる(すなわち、チアゾリジンジオンではない)。トログリタゾンなどのグリタゾンの幾つかを用いると、重篤な副作用(例えば、肝臓毒性)が、起きている。
【0007】
疾患を治療する別の方法はまだ、開発中である。最近導入され、またはまだ開発中である新規生物化学アプローチには、α-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース)および蛋白質チロシンホスファターゼ-IB(PTP-1B)阻害剤による治療が含まれる。
【0008】
ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-IV)酵素の阻害剤である化合物もまた、糖尿病、特に2型糖尿病の治療に有益である可能性のある薬物として開発中である。例えば、WO-A-97/40832(特許文献1)、WO-A-98/19998(特許文献2)、WO-A-03/180(特許文献3)、WO-A-03/181(特許文献4)およびWO-A-2004/007468(特許文献5)を参照されたい。DPP-IV阻害剤の2型糖尿病の治療における実用性は、DPP-IVがペプチド-1(GLP-1)および胃抑制ペプチド(GIP)のようにグルカゴンをインビボで容易に不活性化するという事実に基づく。GLP-1およびGIPはインクレチンであり、食物が消費されると産生される。インクレチンはインスリンの産生を刺激する。DPP-IVの阻害により、インレチンの不活性化が減少し、このため、膵臓によるインスリンの産生を刺激する際のインクレチンの効果が増大する。そのため、DPP-IV阻害により、血清インスリンのレベルが増加する。好都合なことに、インクレチンは、食物が消費された場合にのみ身体により産生されるので、DPP-IV阻害は、過剰に低い血糖(低血糖)に至る可能性のある不適切な時に、例えば、食間に、インスリンレベルを増大させるとは考えられない。そのため、DPP-IVの阻害は、インスリン分泌促進薬の使用と関連する危険な副作用である低血糖の危険性を増大させずにインスリンを増加させると期待される。
【0009】
DPP-IV阻害剤はまた、他の治療的有用性を有してもよく、本願のいずれかのかの箇所において記述する。DPP-IV阻害剤については、今日まで、特に糖尿病以外の有用性については広く研究されていない。糖尿病治療、潜在的には他の疾患および状態の治療ために改善されたDPP-IV阻害剤を見いだすことができる新規化合物が必要である。
【0010】
【特許文献1】WO-A-97/40832
【特許文献2】WO-A-98/19998
【特許文献3】WO-A-03/180
【特許文献4】WO-A-03/181
【特許文献5】WO-A-2004/007468
【発明の開示】
【0011】
このように、本発明の目的は、2型糖尿病および他のDPP-IVによって調節される疾患の治療に効果的である可能性のある新規クラスのDPP-IV阻害剤を提供することである。
【0012】
したがって、本発明は式(I)の新規化合物または薬学的に許容されるその塩を提供し:

式中、
点線は任意で存在する二重結合を示し、
式中、
Zは下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;インデニル;C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環、ここで、Zは1つまたは複数のR9により置換されてもよく、ここで、R9は、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OH;NH2;オキソ(=O)、ここで環は少なくとも部分的に飽和される;R10;およびR11;
R10は下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;およびS-C1〜6アルキル、ここで、R10は酸素により割り込まれてもよく、ここで、R10はFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R11は下記からなる群より選択され:フェニル;複素環;およびC3〜7シクロアルキル、ここで、R11は1つまたは複数のR12により置換されてもよく、ここで、R12は下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OH;NH2;オキソ(=O)、ここで環は少なくとも部分的に飽和される;C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;およびS-C1〜6アルキル;
R1、R4は下記からなる群より独立して選択され:H;F;OH;およびR4a;
R2、R5は下記からなる群より独立して選択され:H;F;およびR4b;
R4aはC1〜6アルキルおよびO-C1〜6アルキルからなる群より独立して選択され、ここで、R4aはFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R4bはC1〜6アルキルであり、ここで、R4bはFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R3はHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択され;
任意で、R1/R2、R2/R3、R3/R4、およびR4/R5からなる群より独立して選択されるR1、R2、R3、R4、R5の1つまたは複数の対は、C3〜7シクロアルキル環を形成し、これは1つまたは複数のR13により置換されてもよく、ここで、R13はF、ClおよびOHからなる群より独立して選択され;
nは0、1または2であり;
X1は下記からなる群より選択され:H;F;Cl;OH;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
X2は下記からなる群より選択され:H;F;Cl;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
R6およびR7は共に環Aを形成し、ただし、R8が下記からなる群より選択されることを条件とし:H;F;Cl;Y-H;Y-T;Y1-H;Y1-T;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
または
R8およびR7は共に環Aを形成し、ただし、R6が下記からなる群より選択されることを条件とし:H;F;Cl;OH;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
AはZ1およびZ2からなる群より選択され;
Z1は下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル、ここでZ1は1つまたは複数のR14により置換されてもよく、ここで、R14は、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;C1〜6アルキル;COOR15;OR15;C(O)N(R15)2;S(O)2N(R15)2;S(O)N(R15)2;N(R15)S(O)2R15;およびN(R15)S(O)R15;
Z2は下記からなる群より選択され:C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環、ここでZ2は1つまたは複数のR16により置換されてもよく、ここで、R16は、下記からなる群より独立して選択され:CN;C1〜6アルキル;OR17;オキソ(=O)、ここで環は少なくとも部分的に飽和される;N(R17)2;COOR17;C(O)N(R17)2;S(O)2N(R17)2;S(O)N(R17)2;N(R17)S(O)2NR17;およびN(R17)S(O)NR17
R15、R17は下記からなる群より独立して選択され:H;C3〜7シクロアルキル;C1〜6アルキル;および-C1〜6アルキル-C3〜7シクロアルキル、ここで、C3〜7シクロアルキルおよびC1〜6アルキルはそれぞれ、1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
A1は下記からなる群より選択され:F;Cl;およびY-T、ただし、A1がY-Tの場合、R8はY-TまたはY1-T以外であることを条件とし;
任意で、A1は下記からなる群より選択され:H;CN;およびY-H、ただし、nは1以外である、または
R8は環Aを形成する以外で選択される;または
R8およびR7はピリミジン以外の環Aを形成することを条件とし;
Yは下記からなる群より選択され:-C1〜6アルキル-O-T0-;-C1〜6アルキル-N(R18)-T0-;-C1〜6アルキル-S-T0-;-C1〜6アルキル-S(O)-T0-;および-C1〜6アルキル-S(O)2-T0-、ここで、各C1〜6アルキルは1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
Y1は下記からなる群より選択され:-O-T0-;-N(R18a)-T0-;-S-T0-;-S(O)-T0-;および-S(O)2-T0-;
R18、R18aは下記からなる群より独立して選択され:H;T0-HおよびT0-T;
T0は下記からなる群より選択され:共有結合;-C1〜6アルキル-;-C1〜6アルキル-O-;-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)-;-C(O)-C1〜6アルキル-;-C(O)-C1〜6アルキル-O-;-C(O)-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)O-;-C(O)O-C1〜6アルキル-;-C(O)O-C1〜6アルキル-O-;-C(O)O-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)N(R19)-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-O-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-N(R20)-;-S(O)2-;-S(O)2-C1〜6アルキル-;-S(O)2-C1〜6アルキル-O-;および-S(O)2-C1〜6アルキル-N(R19)-;ここで、C1〜6アルキルはそれぞれ1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
R19、R20はHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択され;
TはT1およびT2からなる群より選択され;
T1は下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル;ここで、T1は1つまたは複数のR21により置換されてもよく;ここで、R21は下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;R22;COOH;OH;C(O)NH2;S(O)2NH2;S(O)NH2;COOT3;OT3;ST3;C(O)N(R23)T3;S(O)2N(R23)T3;S(O)N(R23)T3;およびT3
T2は下記からなる群より選択され:C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環;ここで、T2は1つまたは複数のR24により置換されてもよく;ここで、R24は下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;R25;OH;オキソ(=O)、ここで環は少なくとも部分的に飽和されている;NH2;COOH;C(O)NH2;S(O)2NH2;S(O)NH2;COOT3;OT3;C(O)N(R26)T3;S(O)2N(R26)T3;S(O)N(R26)T3;N(R26)T3;およびT3
R22は下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;N(R27)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R27)S(O)-C1〜6アルキル、ここでC1〜6アルキルはそれぞれ、1つまたは複数のR28により置換されてもよく、ここで、R28は下記からなる群より独立して選択され:F;COOR29;C(O)N(R29R30);S(O)2N(R29R30);OR29;N(R29R30);T3;O-T3;およびN(R29)-T3;
R25は下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;N(R31)-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R31)-C1〜6アルキル;N(R31)-C(O)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R31)-C1〜6アルキル;S(O)N(R31)-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;-N(R31)S(O)2-C1〜6アルキル;および-N(R31)S(O)-C1〜6アルキル、ここでC1〜6アルキルはそれぞれ、1つまたは複数のR32により置換されてもよく、ここで、R32は下記からなる群より独立して選択され:F;COOR33;C(O)N(R33R34);S(O)2N(R33R34);S(O)N(R33R34);OR33;N(R33R34);T3;O-T3;およびN(R33)-T3
R23、R26、R27、R29、R30、R31、R33、R34はHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択され;
T3はT4およびT5からなる群より選択され;
T4は下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル;ここで、T4は1つまたは複数のR35により置換されてもよく、ここで、R35は、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;COOR36;OR36;C(O)N(R36R37);S(O)2N(R36R37);C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;N(R36)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R36)S(O)-C1〜6アルキル、ここでC1〜6アルキルはそれぞれ、FおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
T5は下記からなる群より選択され:複素環;複素二環;C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;およびデカリニル;ここで、T5は1つまたは複数のR38により置換されてもよく、ここで、R38は、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OR39;オキソ(=O)、ここで環は少なくとも部分的に飽和される;N(R39R40);COOR39;C(O)N(R39R40);S(O)2N(R39R40);S(O)N(R39R40);C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;N(R39)-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R39)-C1〜6アルキル;N(R39)-C(O)N(R39)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R39)-C1〜6アルキル;S(O)N(R39)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;N(R39)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R39)S(O)-C1〜6アルキル;ここでC1〜6アルキルはそれぞれ、FおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R36、R37、R39、R40はHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択される。
【0013】
本発明の意味の範囲内で、用語は下記のように使用される。
【0014】
変数または置換基が異なる変形の群から選択することができ、そのような変数または置換基が1回より多く現れる場合、個々の変形は同じかまたは異なるものとすることができる。
【0015】
「アルキル」は、二重結合または三重結合を含んでもよい直鎖または分枝炭素鎖を意味する。アルキルは二重結合または三重結合を含まないことが一般に好ましい。「C1〜4アルキル」は1〜4の炭素原子を有するアルキル鎖、例えば、分子末端のメチル、エチル、-CH=CH2、-C≡CH、n-プロピル、イソプロピル、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、n-ブチル、イソブチル、-CH=CH-CH2-CH3、-CH=CH-CH=CH2、sec-ブチルtert-ブチル、またはアミド、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)-、-C(CH2)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-CH(CH3)2-を意味する。
【0016】
「C1〜6アルキル」は1〜6の炭素原子を有するアルキル鎖、例えば、C1〜4アルキル、メチル、エチル、-CH=CH2、-C≡CH、n-プロピル、イソプロピル、-CH=CH-CH3、-CH2-CH=CH2、n-ブチル、イソブチル、-CH=CH-CH2-CH3、-CH=CH-CH=CH2、sec-ブチルtert-ブチル、n-ペンタン、n-ヘキサン、またはアミド、例えば、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-CH(CH3)-、-C(CH2)-、-CH2-CH2-CH2-、-CH(C2H5)-、-CH(CH3)2-を意味する。C1〜6アルキル炭素の各水素は置換基により置換してもよい。
【0017】
「C3〜7シクロアルキル」または「C3〜7シクロアルキル環」は3〜7の炭素原子を有する環状アルキル鎖、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチルを意味する。シクロアルキル炭素の各水素は置換基により置換してもよい。
【0018】
「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。ハロゲンはフルオロまたはクロロであることが一般に好ましい。
【0019】
「複素環」は、最大数までの二重結合を含んでもよいシクロペンタン、シクロヘキサンまたはシクロヘプタン環(完全に、部分的に飽和されたかもしくは飽和されていない芳香族または非芳香族環)を意味し、ここで、4までの炭素原子の少なくとも1つは、硫黄(-S(O)-、-S(O)2-を含む)、酸素および窒素(=N(O)-を含む)からなる群より選択されるヘテロ原子により置換され、ここで、環は炭素または窒素原子を介して分子の残りに結合される。複素環の例は、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾール、オキサゾリン、イソキサゾール、イソキサゾリン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、チアジアゾール、チアジアゾリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、オキサゾリジン、イソキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアジアゾリジン、スルホラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、テトラゾール、トリアゾール、トリアゾリジン、テトラゾリジン、アゼピン、またはホモピペラジンである。
【0020】
「複素二環」は、フェニルまたは追加の複素環と縮合され、二環構造を形成する複素環を意味する。「縮合され」二環を形成するとは、2つの環が、2つの環原子を共有することにより互いに結合されることを意味する。複素二環の例は、インドール、インドリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾキサゾール、ベンズイソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾール、ベンズイミダゾール、ベンズイミダゾリン、キノリン、キナゾリン、ジヒドロキナゾリン、ジヒドロキノリン、イソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、ジヒドロイソキノリン、ベンズアゼピン、プリン、またはプテリジンである。
【0021】
本発明による化合物または薬学的に許容されるその塩の好ましい立体化学を式(Ia)に示す。

式中、Z、R1〜8、n、A1、X1およびX2は上記で示した意味を有する。
【0022】
式(I)または(Ia)の好ましい化合物は、その中に含まれる残基の1つまたは複数が、下記で示した意味を有する化合物であり、好ましい置換基の定義の全ての組み合わせが本発明の対象である。式(I)または(Ia)の全ての好ましい化合物に関して、本発明はまた、全ての互変異性体および立体異性体、ならびにあらゆる比率のそれらの混合物、ならびに薬学的に許容されるそれらの塩を含む。
【0023】
本発明の好ましい態様では、式(I)または(Ia)の置換基Z、R1〜8、n、A1、X1およびX2は互いに独立して下記意味を有する。このように、置換基Z、R1〜8、n、A1、X1およびX2の1つまたは複数は、下記で示した好ましい、またはより好ましい意味を有することができる。
【0024】
好ましくは、Zはフェニルおよび複素環からなる群より選択され;ここで、Zは、3までのR9により置換されてもよく、それらのR9は同じかまたは異なっている。より好ましくは、Zは2までのR9により置換されてもよく、それらのR9は同じかまたは異なっている。
【0025】
好ましくは、R9はF;Cl;CN;およびC1〜6アルキルからなる群より選択される。R9がFであることが特に好ましい。
【0026】
好ましくは、R1、R2、R4、R5は下記からなる群より独立して選択される:H;F;および1つまたは複数のFにより置換されてもよいC1〜6アルキル。
【0027】
好ましくはR3はHである。
【0028】
好ましくはnは0または1である。
【0029】
好ましくは、X1、X2はHおよびFからなる群より独立して選択される。
【0030】
好ましくは、R6およびR7は一緒になり、環Aを形成し、R8はHおよびFからなる群より選択される。
【0031】
好ましくは、Aは下記からなる群より選択され:3までのR14により置換されてもよいフェニル、それらのR14は同じかまたは異なり;および3までのR16により置換されてもよいC3〜7シクロアルキル、それらのR16は同じかまたは異なっている。
【0032】
さらに好ましい態様では、Aは1つまたは複数のR16により置換されてもよい複素環である。
【0033】
好ましくは、R14、R16は、ハロゲン、CNおよびCH3からなる群より独立して選択される。
【0034】
好ましくは、A1はHおよびY-Hからなる群より選択され、ならびにR8は環Aを形成する以外で選択され;ならびにYは下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル-N(R18);C1〜6アルキル-N(R18)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル-O;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2-C1〜6アルキル;およびC1〜6アルキル-O、ここで、R18はHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択される。Yはより好ましくは、下記からなる群より選択され:-CH2-N(R18);-CH2-N(R18)-CH2-;-CH2-N(R18)-C(O)-CH2-;-CH2-N(R18)-S(O)2-CH2-;-CH2-N(R18)-C(O)-CH2-O-;および-CH2-O-、ここでR18はHおよびCH3からなる群より選択される。
【0035】
同様に、好ましい態様では、A1はY-Tであり、ここでYは下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル-N(R18);C1〜6アルキル-N(R18)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O);C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-O;およびC1〜6アルキル-O-C1〜6アルキル;ここで、R18はHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択される。Yはより好ましくは、下記からなる群より選択される:CH2-NH-C(O);CH2-O;CH2-O-CH2-;およびCH2-NHS(O)2
【0036】
好ましくはTはT1であり、T1は3までのR21により置換されてもよいフェニルであり、それらのR21は同じかまたは異なっている。
【0037】
好ましくは、R21はFである。
【0038】
同様に、好ましい態様では、TはT2であり、T2は下記からなる群より選択され:C3〜7シクロアルキル;および複素環、ここで、T2は3までのR24により置換されてもよく、それらのR24は同じかまたは異なっている。
【0039】
T2はより好ましくは、シクロプロピル、1,2,4-トリアゾール、および1,2-オキサゾールからなる群より選択される。
【0040】
好ましくは、R24はOH、NH2およびCH3からなる群より選択される。
【0041】
上記官能基のいくつかもしくは全てが、好ましいまたはより好ましい意味を有する式(I)または(Ia)の化合物もまた、本発明の対象である。
【0042】
本発明による化合物の好ましい態様は下記である。





【0043】
さらに、本発明は、上記本発明の化合物のプロドラッグ化合物を提供する。
【0044】
「プロドラッグ化合物」は、生体中で生理学的条件下、酵素、胃酸などとの反応により、例えば、それぞれ、酵素的に実施される酸化、還元、加水分解などにより本発明による化合物に変換される誘導体を意味する。プロドラッグの例は、本発明の化合物中のアミノ基がアシル化、アルキル化またはホスホリル化され、例えば、エイコサノイルアミノ、アラニルアミノ、ピバロイルオキシメチルアミノが形成された化合物、またはヒドロキシル基がアシル化、アルキル化、ホスホリル化され、またはホウ酸塩に変換された、例えばアセチルオキシ、パルミトイルオキシ、ピバロイルオキシ、サクシニルオキシ、フマリルオキシ、アラニルオキシとされた化合物、またはカルボキシル基がエステル化もしくはアミド化された化合物である。これらの化合物は、本発明の化合物から周知の方法により生成することができる。
【0045】
式(I)または(Ia)の化合物の代謝産物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
一般式(I)もしくは(Ia)の化合物またはそれらのプロドラッグの例えば、ケト-エノール互変異性のような互変異性が生じる可能性がある場合、例えばケトおよびエノール型のような個々の形態は、別個に、および共に任意の比率の混合物として主張される。同じことが、立体異性体、例えば鏡像異性体、シス/トランス異性体、配座異性体などにも当てはまる。
【0047】
所望であれば、異性体は当技術分野で周知の方法により、例えば液体クロマトグラフィーにより分離することができる。同じことが、例えば、キラル固定相を使用することにより鏡像異性体にもあてはまる。さらに、鏡像異性体は、ジアステレオマーに変換させることにより、すなわち、鏡像異性的に純粋な補助化合物とカップリングさせ、その後得られたジアステレオマーを分離し、補助残基を開裂させることにより分離してもよい。また、式(I)または(Ia)の化合物の任意の鏡像異性体は、光学的に純粋な開始材料を用いた立体選択的合成から獲得してもよい。
【0048】
式(I)または(Ia)による化合物が、1つもしくは複数の酸性または塩基性基を含む場合、発明はまた、対応する薬学的または毒物学的に許容される塩、特にそれらの薬学的に有用な塩を含む。このように、酸性基を含む式(I)または(Ia)による化合物は、これらの官能基上で本発明により、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはアンモニウム塩として存在し、使用することができる。そのような塩のより正確な例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはアンモニアもしくは有機アミン、例えば、エチルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンまたはアミノ酸との塩が挙げられる。1つまたは複数の塩基性基、すなわち、プロトン化することができる官能基を含む式(I)または(Ia)による化合物は、本発明により、それらの無機または有機酸付加塩の形態で存在し、使用することができる。適した酸の例としては、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、酢酸、酒石酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、スルファミン酸、フェニルプロピオン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、イソニコチン酸、クエン酸、アジピン酸、および当業者に公知の他の酸が挙げられる。式(I)または(Ia)の化合物が分子中に同時に酸性基および塩基性基を含む場合、本発明はまた、記述した塩形態の他に、分子内塩(inner salt)またはベタイン(両性イオン)を含む。式(I)または(Ia)による個々の塩は、当業者などに公知の慣習的な方法により、例えば、これらを有機または無機酸もしくは塩基と溶媒または分散剤中で接触させることにより、または他の塩とのアニオン交換もしくはカチオン交換により得ることができる。本発明はまた、生理学的適合性が低いために、薬剤中で使用するには直接的には適していないが、例えば、化学反応または薬学的に許容される塩の調製のための中間体として使用することができる、式(I)または(Ia)の化合物の塩を全て含む。
【0049】
本発明は、DPP-IV阻害剤として一般式(I)または(Ia)の化合物またはそれらのプロドラッグを提供する。DPP-IVは広範囲にわたる生物学的機能に関与する細胞表面タンパク質である。広い組織分布(腸、腎臓、肝臓、膵臓、胎盤、胸腺、脾臓、上皮細胞、血管内皮、リンパ球および骨髄細胞、血清)、ならびに特徴的な組織および細胞型発現レベルを有する。DPP-IVはT細胞活性化マーカーCD26と同一であり、多くの免疫調節性、内分泌性および神経ペプチドをインビトロで開裂させることができる。これにより、様々な疾患過程でのこのペプチダーゼに対する潜在的な役割が示唆されている。
【0050】
DPP-IV関連疾患については、WO-A-03/181において「利用性」の段落でより詳細に記述されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0051】
したがって、本発明は薬剤として使用するための、式(I)または(Ia)の化合物またはそれらのプロドラッグまたはそれらの薬学的に許容される塩を提供する。
【0052】
さらに、本発明は下記の治療または予防のための薬剤を製造するための、式(I)または(Ia)の化合物またはそれらのプロドラッグもしくはそれらの薬学的に許容される塩の使用を提供する:非インスリン依存性(II型)糖尿病;高血糖;肥満;インスリン耐性;脂質障害;異脂質血症;高脂血症;高トリグリセリド血症;高コレステロール血症;低HDL;高LDL;アテローム性動脈硬化症;成長ホルモン欠乏症;免疫応答関連疾患;HIV感染;好中球減少症;神経障害;腫瘍転移;良性前立腺過形成;歯肉炎;高血圧;骨粗鬆症;精子の運動性に関連する疾患;低グルコース耐性;インスリン耐性;インスリンショック療法(ist)続発症;血管再狭窄;過敏性腸症候群;炎症性大腸炎;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む;他の炎症性状態;膵炎;腹部肥満;神経変性疾患;網膜症;腎症;神経症;X症候群;卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群);n型糖尿病;または成長ホルモン欠乏症。非インスリン依存性(II型)糖尿病および肥満が好ましい。
【0053】
本発明は、式(I)または(Ia)の化合物またはそれらのプロドラッグもしくはそれらの薬学的に許容される塩を活性成分として、薬学的に許容される担体と共に含む薬学的組成物を提供する。
【0054】
「薬学的組成物」は1つまたは複数の活性成分、および担体を形成する1つまたは複数の不活性成分、ならびに、直接または間接的に、任意の2つもしくはそれ以上の成分の組み合わせ、複合体化もしくは凝集により、または1つもしくは複数の成分の溶解により、または1つもしくは複数の成分の反応もしくは相互作用の別の型により、得られる任意の生成物を意味する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を混合することにより生成される任意の組成物を含む。
【0055】
本発明の薬学的組成物はさらに、1つまたは複数の他の化合物を、式(I)または(Ia)の1つまたは複数の追加の化合物、またはプロドラッグ化合物または他のDPP-IV阻害剤のような活性成分として含んでもよい。他の活性成分はWO-A-03/181において「併用療法」の段落で開示されており、これは参照により本明細書に組み入れられる。したがって、他の活性成分は下記としてもよい:インスリン増感剤;PPAR作用薬;ビグアナイド;タンパク質チロシンホスファターゼ-IB(PTP-IB)阻害剤;インスリンおよびインスリン模倣薬;スルホニル尿素および他のインスリン分泌促進薬;α-グルコシダーゼ阻害剤;グルカゴン受容体拮抗薬;GLP-1、GLP-1模倣薬、およびGLP-1受容体作用薬;GIP、GIP模倣薬およびGIP受容体作用薬;PACAP、PACAP模倣薬およびPACAP受容体3作用薬;コレステロール低下薬;HMG-CoAレダクターゼ阻害剤;捕捉剤;ニコチニルアルコール;ニコチン酸またはその塩;PPARa作用薬;PPARoly二重作用薬;コレステロール吸収阻害剤;アシルCoA;コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤;抗酸化剤;PPARo作用薬;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害剤;もしくは抗炎症薬またはこれらの活性化合物の薬学的に許容される塩。
【0056】
「薬学的に許容される塩」という用語は、無機塩基または酸および有機塩基または酸を含む、薬学的に許容される非毒性塩基または酸から調製される塩を示す。
【0057】
組成物は、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与(皮下、筋内、および静脈内を含む)、眼内投与(眼)、肺投与(鼻内または口腔内吸入)、または鼻内投与のために適した組成物を含むが、任意の一定の場合の最も適した経路は、治療する状態の性質および重篤度、ならびに活性成分の性質に依存する。組成物は単位剤形で提供されると好都合であり、薬学分野で周知の任意の方法により調製してもよい。
【0058】
実際の使用では、式(I)または(Ia)の化合物は、最終混合物中の活性成分として薬学的担体と共に、従来の薬学的配合技術に従い混合することができる。担体は、投与、例えば経口投与または非経口投与(静脈内を含む)に対し所望の調製形態により、様々な形態をとってもよい。経口投与形態のための組成物の調製では、一般的な薬学的媒質、例えば、下記のいずれを使用してもよい:経口用液体調製物、例えば懸濁液、エリキシルおよび溶液の場合、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤など;または、経口用固体調製物、例えば、粉末、ハードおよびソフトカプセルおよび錠剤の場合、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などの担体。固体経口用調製物が液体調製物よりも好ましい。
【0059】
投与の容易さのために、錠剤およびカプセルが最も好都合な経口投与単位形態を示し、この場合、固体の薬学的担体が当然使用される。所望であれば、錠剤は標準水性または非水性技術によりコートしてもよい。そのような組成物および調製物は、少なくとも0.1%の活性化合物を含むべきである。当然、これらの組成物中の活性化合物の割合は、変動してもよく、単位の約2重量%〜約60重量%の間が好都合である。そのような治療的に有益な組成物中の活性成分の量は、有効用量が得られるようなものである。活性化合物はまた、例えば液滴または噴霧として鼻内投与することができる。
【0060】
錠剤、ピル、カプセルなどはまた、下記を含んでもよい:トラガカントゴム、アカシアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギニン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;およびショ糖、乳糖またはサッカリンなどの甘味剤。投与単位形態がカプセルである場合、上記の型の材料の他に、脂肪油などの液体担体を含んでもよい。
【0061】
様々な他の材料をコーティングとして存在させてもよく、または投与単位の物理形態を修飾するように存在させてもよい。例えば、錠剤はシェラック、糖またはその両方でコートしてもよい。シロップまたはエリキシルは、活性成分の他に、甘味剤としてショ糖、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、染料、およびサクランボまたはオレンジフレーバーなどの香味剤を含んでもよい。
【0062】
式(I)または(Ia)の化合物はまた、非経口投与してもよい。これらの活性化合物の溶液または懸濁液は、ヒドロキシ-プロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合させた水中で調製することができる。分散物はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物中、油中で調製することができる。貯蔵および使用の普通の条件下では、これらの調製物は微生物の増殖を阻止するための保存剤を含む。
【0063】
注入用途に適した薬学的形態としては、滅菌水溶液または分散物および滅菌注入用溶液または分散物の即時調製のための滅菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は滅菌状態でなければならず、容易な注射が可能である(syringability)程度まで流体でなければならない。製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、これらの適当な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒質とすることができる。任意の投与経路を使用して、哺乳類、特にヒトに、有効量の本発明の化合物を提供してもよい。例えば、経口投与、直腸投与、局所投与、非経口投与、眼内投与、肺投与、鼻内投与などを使用してもよい。剤形としては、錠剤、トローチ、分散物、懸濁液、溶液、カプセル、クリーム、軟膏、エアロゾルなどが挙げられる。好ましくは、式(I)または(Ia)の化合物は経口投与される。
【0064】
使用した活性成分の有効用量は、使用した特別な化合物、投与様式、治療する状態および治療する状態の重篤度によって変動してもよい。そのような用量は当業者であれば容易に確認されうる。
【0065】
糖尿病および/または高血糖または高トリグリセリド血症または式Iの化合物が必要とされる他の疾患を治療または予防する場合、本発明の化合物を約0.1mg〜約100mg/kgの動物の体重の一日量で、好ましくは単回投与により、または1日につき2〜6回の分割投与により、または持続放出形態により、投与すると、一般に満足のいく結果が得られる。最も大きな哺乳類では、一日の総量は約1.0mg〜約1000mg、好ましくは約1mg〜約50mgである。70kgの大人のヒトの場合、一日の総量は一般に約7mg〜約350mgである。この投与計画を調整して、最適治療反応を提供してもよい。
【0066】
本発明の式(I)を有する化合物の好ましい態様は、式(II)などのβアミノ酸中間体から、標準ペプチドカップリング条件を用いて調製することができる。これらの中間体の調製は下記スキームにおいて説明する。
【0067】
本願において見られることがあるいくつかの略語は以下の通りである。
【0068】
略語
記号表示
bs ブロードな一重項
Boc(またはBOC) tert-ブトキシカルボニル
CDI N,N-カルボニルジイミダゾール
DCM ジクロロメタン
DEAD ジエチルアゾジカルボキシレート
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
DPPA ジフェニルホスホリルアジド
EDC 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
Et3N トリエチルアミン
Fmoc 9-フルオレニルメトキシカルボニル
HATU O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOBt 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
LG 脱離基
min 分
Pd-C 活性炭担持パラジウム
PG 保護基
rt 保持時間
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
【0069】
利用可能な開始材料は、式(II):

を有するアミンまたはアルコールとしてもよい。これらは、Array、Sigma-Aldrich、Fluka、ABCRなどの市販供給元から購入してもよく、または当業者により合成してもよい。アミノ基およびカルボキシル、スルホニルまたはイソシアネート官能基を含む化合物間の一般的な反応を、適した官能化開始材料を用いたそれらの合成のために使用してもよい。適した脱離基(例えば、ハロゲン化物、メシラート、トシラート)を含む化合物と求核試薬(例えば、アミン)の間の求核置換反応を使用してもよい。様々な官能基(例えばエステル、アルコール、アミド、ニトリル、アジド)の変換により、いくつかの中間体または最終化合物を合成することが可能となる場合がある。
【0070】
スキームA〜Fにより、下記のいくつかの化合物の合成のための一般手順の概略を示す。スキームで特に記載がなければ、変数は上記と同じ意味を有する。


【0071】
下記式(III)を有する鏡像異性的に純粋なβアミノ酸:

式中、R1〜R5はHである:
は市販され、文献で公知であってもよく、または例えば、Cole、Tetrahedron、32、9517(1994)、Juaristi et al.、Aldrichimica Acta、27、3、1994、またはJuaristi、Enantioselective Synthesis of β-Amino Acids、Ed. Wiley-VCH、New York、1997においてすでに公開され、概説されている方法の1つを使用して都合良く合成してもよい。下記置換パターンによるβアミノ酸への手順は、同様に、WO 03/004498およびWO 04/064778において見られる可能性がある。
【0072】
スキームGにより、下記中間体(III)のいくつかを合成する一般手順の概略を示す。

【0073】
特に記載がなければ、全ての非水反応は、アルゴン雰囲気下、市販の乾燥溶媒を使用して実施した。化合物はフラッシュカラムクロマトグラフィーによりMerckシリカゲル60(230-400メッシュ)を使用し、または逆相分取HPLCによりReprosil-Pur ODS3、5μm、20×125mmカラムを使用し、Shimadzu LC8A-PumpおよびSPD-10Avp UV/Visダイオードアレイ検出器を用いて精製した。1H-NMRスペクトルをVarian VXR-S(1H-NMRでは300MHz)で記録した。化学シフトをテトラメチルシランに対しppmで報告する。分析LC/MSをReprosil-Pur ODS3、5μM、1×60mmカラムを使用し、5%〜95%のアセトニトリルを含む水(0.1% TFA)の直線グラジエント、流速250μL/minを用いて実施した;保持時間は分で表す。方法は下記の通りである:(I)ESI+方法のSPD-M10Avp UV/Vis ダイオードアレイ検出器およびQP2010 MS-検出器を備えたLC10Advp-Pump(Shimadzu)で実施、214および254nm、10分の直線グラジエントでのUV検出;(II)同上、しかし5分の直線グラジエント;(III)ESI+方法のSPD-M10Avp二重波長UV検出器およびQP2010 MS-検出器を備えたLC10Advp-Pump(Shimadzu)で実施、214および254nm、10分の直線グラジエントでのUV検出;(IV)同上、しかし5分の直線グラジエント。
【0074】
本発明の化合物を製造するための一般手順
一般に、下記構造(I):

式中、変数は上記意味を有する:
を有する化合物は、標準ペプチドカップリング条件を用いて調製してもよい。例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)を1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)および塩基(トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミン)またはO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)と組み合わせて、塩基の存在下、塩化メチレンまたはN,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒中で使用することができる。
【0075】
スキームHはスキームB〜Gに従い形成したアミンを使用して、本発明の態様である化合物を合成するための手順の概要を示したものである。

【0076】
保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis 3rd ed.、Ed. Wiley-VCH、New York;1999で記述されているように、例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニルの場合はジクロロメタンに溶解したジエチルアミンを用いて、またはtert-ブトキシカルボニルの場合は酸性条件(例えばジクロロメタンに溶解したトリフルオロ酢酸またはジオキサンに溶解した塩酸)を用いて、除去してもよい。
【0077】
中間体または最終生成物の精製のためには、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィーが遊離アミンには適している場合があるが、分取HPLCを使用すると対応するトリフルオロ酢酸塩が単離される。
【0078】
しかしながら、化合物は他の手段により調製してもよく、下記で記述した、示唆される開始材料および手順は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。
【0079】
実施例
本発明をより完全に理解するために下記実施例を提供する。これらの実施例は例示にすぎず、いかなる意味においても本発明を限定するものと考えるべきではない。
【0080】
調製
中間体1
スキームGに従う中間体を製造するための手順

4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-3-オキソ-酪酸エチルエステル
トリエチルアミン5.18mL(37.2mMol)および塩化マグネシウム2.76g(29.0mMol)を、マロン酸エチルカリウム4.16g(24.4mMol)を含む無水アセトニトリル30mLの撹拌懸濁液に添加し、撹拌を室温で2時間続ける。その後、2,5-ジフルオロフェニル酢酸2.00g(11.6mMol)および1,1’-カルボニルジイミダゾール2.10g(12.8mMol)の間の反応により15分前に調製した、無水アセトニトリル30mLに溶解した(2,5-ジフルオロフェニルアセチル)イミダゾリドの溶液を添加する。反応物を一晩中室温で撹拌し、その後、2時間、還流させながら加熱する。混合物を冷却した後、温度を25℃未満で維持しながら10%塩酸溶液40mLを慎重に添加し、得られた透明混合物をさらに15分撹拌する。有機層を分離し、蒸発させ、その後残渣を酢酸エチル40mLと一緒にする。水層を酢酸エチル(2×40mL)で抽出し、有機相を合わせ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×80mL)および塩類溶液(80mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過し、蒸発させると、標題化合物が得られる。

【0081】
工程2

3-ベンジルアミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル
エタノール30mLに溶解した4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-3-オキソ-酪酸エチルエステル1.90g(7.84mMol)の溶液に、0℃で、ベンジルアミン2.57mL(23.5mMol)を添加する。20時間、室温で撹拌した後、0℃で、酢酸を添加することにより溶液をpH6に調整する。ナトリウムシアノボロヒドリド1.07g(17.0mMol)を添加し、さらに48時間室温で撹拌した後、塩酸水溶液(6N、20mL)を徐々に添加し、その後、NaOH水溶液(40%、pH=11まで)、および水20mLを添加する。混合物を部分的に蒸発させ、ジクロロメタン(2×100mL)で抽出し、有機層を合わせ、水および塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過し、蒸発させる。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離剤:ヘキサン-酢酸エチル3:2)により精製すると、標題化合物が無色油として得られる。

【0082】
工程3

3-アミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル
エタノール30mLに溶解した3-ベンジルアミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル578mg(1.73mMol)に、パラジウム/C(活性炭に担持された10wt.%)0.5gおよびギ酸アンモニウム1.0g(15.9mMol)を添加し、共に2時間50℃で撹拌する。触媒を濾過して除去し、エタノール溶液を蒸発させる。残渣をジクロロメタン50mLおよび水20mLに入れ、層を分離する。有機層を塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させると、標題化合物が得られる。

【0083】
工程4

3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル
1,4-ジオキサン80mLに溶解した3-アミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル898mg(3.69mMol)に、トリエチルアミン515μL(3.69mMol)およびジ-tert-ブチル-ジカルボネート805.7mg(3.69mMol)を添加し、反応混合物を一晩中撹拌する。溶媒を蒸発させた後、残渣をジクロロメタン80mLに入れ、水(2×30mL)、塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、溶液を蒸発乾固させる。油状残渣をジエチルエーテルおよびヘキサンを用いて結晶化させ、濾過すると、標題化合物が得られる。

【0084】
工程5

3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸
3-tert-ブトキシカルボニルアミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-酪酸エチルエステル55mg(0.16mMol)をTHF 5mLに溶解し、2N LiOH水溶液(0.64mMol)400μlを添加する。混合物を周囲温度で3日間撹拌し、その後、1N HClで酸性化し、酢酸エチル(3×)で抽出する。有機層を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を蒸発させると、標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 2.25, m/z 301(M+H-Me)+
【0085】
中間体2
スキームAに従う中間体を製造するための手順

(3S)3-ヒドロキシメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
(2S)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸2-tert-ブチルエステル437mg(1.58mMol)を乾燥テトラヒドロフラン20mLに溶解し、その後、N,N'-カルボニルジイミダゾール384mg(2.37mMol)を添加し、混合物を周囲温度で30分間撹拌する。フラスコを氷浴中に移し、水1mLに溶解した水素化ホウ素ナトリウム90mg(2.37mMol)を添加する。10分、0℃で撹拌した後、アセトンを添加し、溶媒を減圧下で除去する。固体残渣を水/酢酸エチルに入れ、層を分離する。有機層を5%クエン酸溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩類溶液で連続して洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製すると、標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 2.62, m/z 164(M+H-Boc)+

【0086】
工程2

(3S)-3-アジドメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
Page et al.、J. Med. Chem. (2001) 44、2387による手順に従い、工程1から得られたアルコールを標題化合物に変換した。
LCMS(II)rt 3.35, m/z 230(M+H-Boc+CH3CN)+
【0087】
工程3

(3S)-3-アミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
工程2から得られたアジド6.02mg(2.09mMol)をメタノール20mLに溶解し、パラジウム/C(活性炭に担持された10wt%)を添加し、反応物を1.5時間水素雰囲気下で撹拌する。混合物をセライト上で濾過し、溶媒を減圧下で除去する。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/3%アンモニアを有するメタノール)により精製すると、標題化合物が得られた。
LCMS(II)rt 2.21, m/z 263(M+H)+

【0088】
実施例1
スキームBおよびHに従う本発明の化合物を製造するための手順

工程1

(3S)-3-[(シクロプロパンカルボニル-アミノ)-メチル]-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
N,N-ジメチルホルムアミド2mLに溶解したシクロプロパンカルボン酸12mg(0.14mMol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)31mg(0.16mMol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)22mg(0.16mMol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)66μL(0.35mMol)の混合物を周囲温度で10分間撹拌し、その後、N,N-ジメチルホルムアミド1mLに溶解した(3S)-3-アミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル(中間体2)38mg(0.14mMol)を添加し、一晩中、撹拌を続ける。溶液を酢酸エチル50mLで希釈し、5%クエン酸溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、および塩類溶液で連続して洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製すると、標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 2.71, m/z 263(M+Na+CH3CN)+
【0089】
工程2(中間体3)

(3S)-シクロプロパンカルボン酸(1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-イルメチル)-アミド、トリフルオロ酢酸塩
工程1から得られた生成物25mg(0.08mMol)をジクロロメタン1mLに溶解し、トリフルオロ酢酸0.5mLを添加する。溶液を30分間周囲温度で撹拌し、その後、溶媒を減圧下で除去する。粗材料を直接次の工程で使用する。
LCMS(II)rt 1.66, m/z 231(M+H)+
【0090】
工程3

[(3R)-3-((3S)-3-シクロプロパンカルボニル-アミノ)-メチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-1-(2-フルオロ-ベンジル)-3-オキソ-プロピル]-カルバミン酸tert-ブチルエステル
N,N-ジメチルホルムアミド2mLに溶解したBoc-(R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-酪酸24mg(0.08mMol)の溶液に、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)19mg(0.10mMol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)15mg(0.10mMol)およびジイソプロピルエチルアミン(DIEA)38μL(0.20mMol)を添加し、5分後、N,N-ジメチルホルムアミド1mLに溶解した工程2から得られた粗材料(0.08mMol)を添加する。混合物を一晩中周囲温度で撹拌し、酢酸エチルで希釈する。有機相を5%クエン酸溶液、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、および塩類溶液で連続して洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製すると、標題化合物が得られた。
LCMS(II)rt 2.99, m/z 532(M+Na)+
【0091】
工程4

シクロプロパンカルボン酸{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
工程3から得られた生成物26mg(0.05mMol)をジクロロメタン2mLに溶解し、トリフルオロ酢酸1mLを添加する。溶液を30分間周囲温度で撹拌し、溶媒を減圧下で除去する。分取HPLCにより精製すると標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 2.21, m/z 410(M+H)+

【0092】
実施例3の工程1〜4に対し概説したような同様の手順を用いて、下記化合物を調製した。
【0093】
別の中間体(工程2)を表1に示す
【0094】
【表1】

【0095】
実施例2

1-ヒドロキシ-シクロプロパンカルボン酸{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.05, m/z 426(M+H)+

【0096】
実施例3

N-{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-2-ヒドロキシ-アセトアミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(I)rt 3.22, m/z 400(M+H)+

【0097】
実施例4

N-{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-ベンズアミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(I)rt 4.67, m/z 446(M+H)+

【0098】
実施例5

5-メチル-イソキサゾール-3-カルボン酸-{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.28, m/z 451(M+H)+

【0099】
実施例6

5-アミノ-1H-[1,2,4]トリアゾール-3-カルボン酸-{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(I)rt 2.84, m/z 452(M+H)+
【0100】
実施例7
スキームDおよびGに従う本発明の化合物を製造するための手順

(3S)-3-ジメチルアミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
ジクロロエタン3mLに溶解した(3S)-3-アミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル20mg(0.08mMol)の溶液に、ホルムアルデヒド水溶液17mL(0.23mMol)およびナトリウムトリアセトキシボロヒドリド49mg(0.23mMol)を添加する。混合物を2日間周囲温度で撹拌し、その後、飽和重炭酸ナトリウム溶液を添加する。酢酸エチルで抽出し、溶媒を蒸発させると、標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 2.17, m/z 291(M+H)+
【0101】
実施例1の工程2〜4に対する手順に従い、中間体(9)および標題化合物を調製した。

ジメチル-[(S)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-イル)メチル]-アミン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 0.82, m/z 191(M+H)+

(3R)-3-アミノ-1-(3S)-3-(3-ジメチルアミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-4-(2-フルオロフェニル)-ブタン-1-オン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(I)rt 3.42, m/z 370(M+H)+

【0102】
実施例8
スキームCおよびGに従う本発明の化合物を製造するための手順

工程1

(3S)-3-(メタンスルホニルアミン-メチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
ジクロロメタンに溶解した(3S)-3-アミノメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル30mg(0.11mMol)の溶液に、0℃で、メタンスルホニルクロリド10μL(0.13mMol)およびトリエチルアミン18μL(0.14mMol)を添加する。混合物を3時間撹拌し、その後、ジクロロメタンで希釈し、5%クエン酸溶液、飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩類溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。減圧下で溶媒を除去すると、標題化合物が得られ、これを次の工程でさらに精製せずに使用する。
LCMS(II)rt 2.82, m/z 404(M+Na+CH3CN)+
【0103】
実施例1の工程2〜4に対する手順に従い、中間体(10)および標題化合物を調製した。

メチルスルホン酸[(S)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-イル)メチル]-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 1.11, m/z 241(M+H)+

N-{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-メタンスルホンアミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.10, m/z 420(M+H)+

【0104】
実施例8の工程1〜4で概説したような同様の手順を用いて、下記化合物を調製した。
中間体11

シクロプロパンスルホン酸[(S)-1-(1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-イル)メチル]-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 1.89, m/z 267(M+H)+
【0105】
実施例9

シクロプロパンスルホン酸{2-[(3R)-3-アミノ-4-(2-フルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.30, m/z 446(M+H)+

【0106】
実施例10

シクロプロパンスルホン酸{2-[(3R)-3-アミノ-4-(3-クロロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(IV)rt 2.54, m/z 462(M+H)+

【0107】
実施例11

シクロプロパンスルホン酸{2-[(3-アミノ-4-(2,5-ジフルオロ-フェニル)-ブチリル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-(3S)-3-イルメチル}-アミド、トリフルオロ酢酸塩
化合物はジアステレオマーの混合物として得られる。
LCMS(I)rt 3.34, m/z 464(M+H)+
【0108】
実施例12
スキームEおよびHに従う本発明の化合物を製造するための手順

工程1

(3S)-(3-フルオロ-フェノキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル
乾燥テトラヒドロフラン2mLに溶解した(3S)-3-ヒドロキシメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチルエステル50mg(0.19mMol)の溶液に、0℃で、トリフェニルホスフィン57mg(0.21mMol)およびアゾジカルボン酸ジエチル35μL(0.23mMol)を添加する。混合物を10分間撹拌し、その後、テトラヒドロフラン0.5mLに溶解したフルオロフェノール19mg(0.17mMol)に添加する。撹拌を周囲温度で一晩中続ける。溶媒を蒸発させた後、残りの残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル2:1)により精製すると、標題化合物が得られる。
LCMS(II)rt 3.80, m/z 343(M+H-CH3)+
【0109】
実施例1の工程2〜4に対する手順に従い、中間体(12)および標題化合物を調製した。

(S)-3-(3-フルオロ-フェノキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.19, m/z 258(M+H)+

(3R)-3-アミノ-1-[(3S)-3-(3-フルオロフェノキシ)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル]-4-(2-フルオロフェニル)-ブタン-1-オン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.72, m/z 437(M+H)+

【0110】
実施例13
スキームFおよびHに従う本発明の化合物を製造するための手順

工程1

2-ベンジルオキシメチル-2,3-ジヒドロ-インドール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
乾燥テトラヒドロフラン2mLに溶解した2-ヒドロキシメチル-2,3-ジヒドロ-インドール-1-カルボン酸tert-ブチルエステル30mg(0.12mMol)の溶液に、0℃で水素化ナトリウム6mg(0.13mMol)および臭化ベンジル17μL(0.14mMol)を添加する。混合物を周囲温度で一晩中撹拌し、その後5%クエン酸溶液および酢酸エチルを添加する。層を分離し、その後、有機層を飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩類溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、残りの残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1)により精製すると、標題化合物が得られる。
LCMS(IV)rt 3.82, m/z 281(M+H-CH3CN-boc)+
【0111】
実施例1の工程2に対する手順に従い、中間体(13)をジアステレオマーの混合物として調製した。

2-ベンジルオキシメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インドール、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(IV)rt 2.21, m/z 240(M+H)+
【0112】
実施例1の工程3〜4に対する手順に従い、標題化合物をジアステレオマーの混合物として調製した。

(3R)-3-アミノ-1-ベンジルオキシメチル-2,3-ジヒドロ-インド-1-イル-4-(2-フルオロフェニル)-ブタン-1-オン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.95, m/z 419(M+H)+
【0113】
実施例13と同様の手順を用いて、下記化合物を調製した。
中間体14

3-ベンジルオキシメチル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.24, m/z 254(M+H)+
【0114】
実施例14

(3R)-3-アミノ-1-ベンジルオキシメチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-イル)-4-(2-フルオロフェニル)-ブタン-1-オン、トリフルオロ酢酸塩
LCMS(II)rt 2.59, m/z 433(M+H)+
【0115】
下記化合物は、実施例1〜14で記述したような同様の手順を用いて調製することができる。



【0116】
分析
DPP-IVペプチダーゼ活性の阻害を、連続蛍光分析によりモニターした。この分析は、遊離AMCを放出するDPP-IVによる基質Gly-Pro-AMC(Bachem)の開裂に基づく。この分析は96穴マイクロタイタプレートで実施する。総体積100μLで、10mM Hepes、150mM NaCl、0.005% Tween20(pH7.4)を含む緩衝液を用い、化合物を50 pM DPP-IVと共にプレインキュベートする。16μM 基質を添加することにより反応を開始させ、放出されたAMCの蛍光を10分間25℃で、蛍光読み取り機(BMG-Fluostar;BMG-Technologies)により、370nmの励起波長および450nmの発光波長を用いて検出する。DMSOの最終濃度は1%である。化合物の阻害能力を決定した。DPP-IV活性分析を、ヒトおよびブタDPP-IVを用いて実施した(下記を参照されたい);両方の酵素は同等の活性を示した。
【0117】
膜貫通型アンカー(Gly31-Pro766)が欠如した可溶性ヒトDPP-IVを組換えYEAST-株においてPre-Pro-α-接合融合物として発現させた。分泌された産物(rhuDPP-IV-Gly31-Pro766)を発酵ブロスから精製した(>90%純度)。
【0118】
表に、上記分析において決定したDPP-IVペプチダーゼ活性の阻害に対するIC50値を列挙する。IC50値を3つのクラスに分類した:a100nM;b101nMおよび1000nM;c1001nMおよび2000nM。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩:

式中、
点線が任意で存在する二重結合を示し、
式中、
Zが下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;インデニル;C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環、ここで、Zが1つまたは複数のR9により置換されてもよく、ここで、R9が、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OH;NH2;オキソ(=O)、ここで環が少なくとも部分的に飽和される;R10;およびR11;
R10が下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;およびS-C1〜6アルキル、ここで、R10が酸素により割り込まれてもよく、ここで、R10がFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R11が下記からなる群より選択され:フェニル;複素環;およびC3〜7シクロアルキル、ここで、R11が1つまたは複数のR12により置換されてもよく、ここで、R12が下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OH;NH2;オキソ(=O)、ここで環が少なくとも部分的に飽和される;C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;およびS-C1〜6アルキル;
R1、R4が下記からなる群より独立して選択され:H;F;OH;およびR4a;
R2、R5が下記からなる群より独立して選択され:H;F;およびR4b;
R4aがC1〜6アルキルおよびO-C1〜6アルキルからなる群より独立して選択され、ここで、R4aがFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R4bがC1〜6アルキルであり、ここで、R4bがFおよびClからなる群より独立して選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R3がHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択され;
任意で、R1/R2、R2/R3、R3/R4、およびR4/R5からなる群より独立して選択されるR1、R2、R3、R4、R5の1つまたは複数の対が、C3〜7シクロアルキル環を形成し、これは1つまたは複数のR13により置換されてもよく、ここで、R13がF、ClおよびOHからなる群より独立して選択され;
nが0、1、または2であり;
X1が下記からなる群より選択され:H;F;Cl;OH; ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
X2が下記からなる群より選択され:H;F;Cl; ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
R6およびR7が共に環Aを形成し、ただし、R8が下記からなる群より選択されることを条件とし:H;F;Cl;Y-H;Y-T;Y1-H;Y1-T;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
または
R8およびR7が共に環Aを形成し、ただし、R6が下記からなる群より選択されることを条件とし:H;F;Cl;OH;ならびにFおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよいC1〜6アルキル;
AがZ1およびZ2からなる群より選択され;
Z1が下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル、ここでZ1が1つまたは複数のR14により置換されてもよく、ここで、R14が、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;C1〜6アルキル;COOR15;OR15;C(O)N(R15)2;S(O)2N(R15)2;S(O)N(R15)2;N(R15)S(O)2R15;およびN(R15)S(O)R15;
Z2が下記からなる群より選択され:C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環、ここでZ2が1つまたは複数のR16により置換されてもよく、ここで、R16が、下記からなる群より独立して選択され:CN;C1〜6アルキル;OR17;オキソ(=O)、ここで環が少なくとも部分的に飽和される;N(R17)2;COOR17;C(O)N(R17)2;S(O)2N(R17)2;S(O)N(R17)2;N(R17)S(O)2NR17;およびN(R17)S(O)NR17
R15、R17が下記からなる群より独立して選択され:H;C3〜7シクロアルキル;C1〜6アルキル;および-C1〜6アルキル-C3〜7シクロアルキル;ここで、C3〜7シクロアルキルおよびC1〜6アルキルがそれぞれ、1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
A1が下記からなる群より選択され:F;Cl;およびY-T;ただし、A1がY-Tの場合、R8がY-TまたはY1-T以外であることを条件とし;
任意で、A1が下記からなる群より選択され:CN;およびY-H、ただし、nが1以外である、または
R8が環Aを形成する以外で選択される;または
R8およびR7がピリミジン以外の環Aを形成することを条件とし;
Yが下記からなる群より選択され:-C1〜6アルキル-O-T0-;-C1〜6アルキル-N(R18)-T0-;-C1〜6アルキル-S-T0-;-C1〜6アルキル-S(O)-T0-;および-C1〜6アルキル-S(O)2-T0-、ここで、各C1〜6アルキルが1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
Y1が下記からなる群より選択され:-O-T0-;-N(R18a)-T0-;-S-T0-;-S(O)-T0-;および-S(O)2-T0-;
R18、R18aが下記からなる群より独立して選択され:H;T0-HおよびT0-T;
T0が下記からなる群より選択され:共有結合;-C1〜6アルキル-;-C1〜6アルキル-O-;-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)-;-C(O)-C1〜6アルキル-;-C(O)-C1〜6アルキル-O-;-C(O)-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)O-;-C(O)O-C1〜6アルキル-;-C(O)O-C1〜6アルキル-O-;-C(O)O-C1〜6アルキル-N(R19)-;-C(O)N(R19)-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-O-;-C(O)N(R19)-C1〜6アルキル-N(R20)-;-S(O)2-;-S(O)2-C1〜6アルキル-;-S(O)2-C1〜6アルキル-O-;および-S(O)2-C1〜6アルキル-N(R19)-;ここで、C1〜6アルキルがそれぞれ1つまたは複数のFにより置換されてもよく;
R19、R20がHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択され;
TがT1およびT2からなる群より選択され;
T1が下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル;ここで、T1が1つまたは複数のR21により置換されてもよく;ここで、R21が下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;R22;COOH;OH;C(O)NH2;S(O)2NH2;S(O)NH2;COOT3;OT3;ST3;C(O)N(R23)T3;S(O)2N(R23)T3;S(O)N(R23)T3;およびT3
T2が下記からなる群より選択され:C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;デカリニル;複素環;および複素二環;ここで、T2が1つまたは複数のR24により置換されてもよく;ここで、R24が下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;R25;OH;オキソ(=O)、ここで環が少なくとも部分的に飽和されている;NH2;COOH;C(O)NH2;S(O)2NH2;S(O)NH2;COOT3;OT3;C(O)N(R26)T3;S(O)2N(R26)T3;S(O)N(R26)T3;N(R26)T3;およびT3
R22が下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)N(R27)-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;N(R27)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R27)S(O)-C1〜6アルキル;ここでC1〜6アルキルがそれぞれ、1つまたは複数のR28により置換されてもよく、ここで、R28が下記からなる群より独立して選択され:F;COOR29;C(O)N(R29R30);S(O)2N(R29R30);OR29;N(R29R30);T3;O-T3;およびN(R29)-T3;
R25が下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;N(R31)-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R31)-C1〜6アルキル;N(R31)-C(O)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R31)-C1〜6アルキル;S(O)N(R31)-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;-N(R31)S(O)2-C1〜6アルキル;および-N(R31)S(O)-C1〜6アルキル;ここでC1〜6アルキルがそれぞれ、1つまたは複数のR32により置換されてもよく、ここで、R32が下記からなる群より独立して選択され:F;COOR33;C(O)N(R33R34);S(O)2N(R33R34);S(O)N(R33R34);OR33;N(R33R34);T3;O-T3;およびN(R33)-T3
R23、R26、R27、R29、R30、R31、R33、R34がHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択され;
T3がT4およびT5からなる群より選択され;
T4が下記からなる群より選択され:フェニル;ナフチル;およびインデニル;ここで、T4が1つまたは複数のR35により置換されてもよく、ここで、R35が、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;COOR36;OR36;C(O)N(R36R37);S(O)2N(R36R37);C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)N(R36)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;N(R36)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R36)S(O)-C1〜6アルキル;ここでC1〜6アルキルがそれぞれ、FおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
T5が下記からなる群より選択され:複素環;複素二環;C3〜7シクロアルキル;インダニル;テトラリニル;およびデカリニル;ここで、T5が1つまたは複数のR38により置換されてもよく、ここで、R38が、下記からなる群より独立して選択され:ハロゲン;CN;OR39;オキソ(=O)、ここで環が少なくとも部分的に飽和されている;N(R39R40);COOR39;C(O)N(R39R40);S(O)2N(R39R40);S(O)N(R39R40);C1〜6アルキル;O-C1〜6アルキル;S-C1〜6アルキル;N(R39)-C1〜6アルキル;COO-C1〜6アルキル;OC(O)-C1〜6アルキル;C(O)N(R39)-C1〜6アルキル;N(R39)-C(O)-C1〜6アルキル;S(O)2N(R39)-C1〜6アルキル;S(O)N(R39)-C1〜6アルキル;S(O)2-C1〜6アルキル;S(O)-C1〜6アルキル;N(R39)S(O)2-C1〜6アルキル;およびN(R39)S(O)-C1〜6アルキル;ここでC1〜6アルキルがそれぞれ、FおよびClからなる群より選択される1つまたは複数のハロゲンにより置換されてもよく;
R36、R37、R39、R40がHおよびC1〜6アルキルからなる群より独立して選択される。
【請求項2】
式(Ia)の請求項1記載の化合物または薬学的に許容されるその塩:

式中、Z、R1〜8、n、A1、X1、およびX2が請求項1で示した意味を有する。
【請求項3】
Zがフェニルおよび複素環からなる群より選択され、およびZが2までのR9により置換されてもよく、R9が同じかまたは異なる、請求項1または2記載の化合物。
【請求項4】
R9が下記からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物:F;Cl;CN;およびC1〜6アルキル。
【請求項5】
R1、R2、R4、R5が、下記からなる群より独立して選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物:H;F;および1つまたは複数のFにより置換されてもよいC1〜6アルキル。
【請求項6】
R3がHである、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
nが0または1である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
X1、X2がHおよびFからなる群より独立して選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
R6およびR7が一緒になり環Aを形成し、ならびにR8がHおよびFからなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項10】
Aが下記からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物:3までのR14により置換されてもよいフェニル、R14が同じかまたは異なる;および3までのR16により置換されてもよいC3〜7シクロアルキル、R16が同じかまたは異なる。
【請求項11】
R14、R16が下記からなる群より独立して選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物:ハロゲン;CN;およびCH3
【請求項12】
A1がHおよびY-Hからなる群より選択され、ならびにR8が環Aを形成する以外で選択される、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
Yが下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル-N(R18);C1〜6アルキル-N(R18)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル-O;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2-C1〜6アルキル;およびC1〜6アルキル-O、ここで、R18がHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択される、請求項12記載の化合物。
【請求項14】
Yが下記からなる群より選択され:-CH2-N(R18);-CH2-N(R18)-CH2-;-CH2-N(R18)-C(O)-CH2-;-CH2-N(R18)-S(O)2-CH2-;-CH2-N(R18)-C(O)-CH2-O-;および-CH2-O-、ここで、R18がHおよびCH3からなる群より選択される、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
A1がY-Tである、請求項1〜11のいずれか一項記載の化合物。
【請求項16】
Yが下記からなる群より選択され:C1〜6アルキル-N(R18);C1〜6アルキル-N(R18)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-C(O);C1〜6アルキル-N(R18)-C(O)-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2;C1〜6アルキル-N(R18)-S(O)2-C1〜6アルキル;C1〜6アルキル-O;およびC1〜6アルキル-O-C1〜6アルキル、ここで、R18がHおよびC1〜6アルキルからなる群より選択される、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Yが下記からなる群より選択される、請求項16記載の化合物:CH2-NH-C(O);CH2-O;CH2-O-CH2-;およびCH2-NHS(O)2
【請求項18】
TがT1であり、ならびにT1が3までのR21により置換されてもよいフェニルであり、R21が同じかまたは異なる、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項19】
R21がFである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
TがT2であり、ならびにT2がC3〜7シクロアルキルおよび複素環からなる群より選択され、ここでT2が3までのR24により置換されてよく、R24が同じかまたは異なる、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項21】
T2が下記からなる群より選択される、請求項20記載の化合物:シクロプロピル;1,2,4-トリアゾール;および1,2-オキサゾール。
【請求項22】
R24が下記からなる群より選択される、請求項20記載の化合物:OH;NH2;およびCH3
【請求項23】
下記からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:





【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項記載の化合物のプロドラッグ化合物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を、薬学的に許容される担体と共に含む、薬学的組成物。
【請求項26】
下記からなる群より選択される1つまたは複数の追加の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩を含む、請求項25記載の薬学的組成物:請求項1〜24のいずれか一項記載の別の化合物;別のDPP-IV阻害剤;インスリン増感剤;PPAR作用薬;ビグアニド;タンパク質チロシンホスファターゼ-IB(PTP-1B)阻害剤;インスリンおよびインスリン模倣薬;スルホニル尿素および他のインスリン分泌促進薬;α-グルコシダーゼ阻害剤;グルカゴン受容体拮抗薬;GLP-1、GLP-1模倣薬、およびGLP-1受容体作用薬;GIP、GIP模倣薬、およびGIP受容体作用薬;PACAP、PACAP模倣薬、およびPACAP受容体3作用薬;コレステロール低下剤;HMG-CoAリダクターゼ阻害剤;捕捉剤;ニコチニルアルコール;ニコチン酸またはその塩;PPARa作用薬;PPARoly二重作用薬;コレステロール吸収阻害剤;アシルCoA;コレステロールアシルトランスフェラーゼ阻害剤;抗酸化剤;PPARo作用薬;抗肥満化合物;回腸胆汁酸輸送体阻害剤;および抗炎症剤。
【請求項27】
薬剤として使用するための請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩。
【請求項28】
下記の治療または予防のための薬剤を製造するための、請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物または薬学的に許容されるそれらの塩の使用法:非インスリン依存性(II型)糖尿病;高血糖;肥満;インスリン耐性;脂質障害;異脂質血症;高脂血症;高トリグリセリド血症;高コレステロール血症;低HDL;高LDL;アテローム性動脈硬化症;成長ホルモン欠乏症;免疫応答関連疾患;HIV感染;好中球減少症;神経障害;腫瘍転移;良性前立腺過形成;歯肉炎;高血圧;骨粗鬆症;精子の運動性に関連する疾患;低グルコース耐性;インスリン耐性;インスリンショック療法続発症;血管再狭窄;過敏性腸症候群;炎症性大腸炎;クローン病および潰瘍性大腸炎を含む;他の炎症性状態;膵炎;腹部肥満;神経変性疾患;網膜症;腎症;神経症;X症候群;卵巣アンドロゲン過剰症(多嚢胞性卵巣症候群);n型糖尿病;または成長ホルモン欠乏症。
【請求項29】
DPP-IV阻害剤としての請求項1〜24のいずれか一項記載の化合物の使用法。

【公表番号】特表2007−538043(P2007−538043A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517100(P2007−517100)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005510
【国際公開番号】WO2005/113510
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506388716)サンセラ ファーマシューティカルズ (シュバイツ) アーゲー (4)
【Fターム(参考)】