説明

GPSレシーバ

【課題】高度誤差やマルチパスによる位置測位の精度低下を軽減させる。
【解決手段】位置測位結果の履歴を保持する保持手段と、受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を取得し、該取得した高度情報に基づいて所定の高度範囲を設定する高度範囲設定手段と、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲内であるか否かを判定する判定手段と、該所定の高度範囲内であると判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段とを備えたGPSレシーバを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPS(Global Positioning System)衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うGPSレシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
GPSは、地球を周回するGPS衛星から発信されるGPS信号を用いて位置情報等を取得するための測位システムである。例えば乗用車等の移動体や携帯電話等のモバイル端末にはGPSを利用して位置測位等を行うGPSレシーバが備えられ、日常生活において広く利用されている。
【0003】
GPSレシーバの測位方法には二次元測位と三次元測位がある。三次元測位では例えば捕捉・追尾したGPS衛星からのGPS信号を利用して「緯度」、「経度」、「高度」、および「GPSレシーバの内蔵時計の誤差」の四つの未知数を解くことにより、三次元の位置情報が得られる。二次元測位では例えば「高度」を固定値として他の三つの未知数を解くことにより、二次元の位置情報が得られる。
【0004】
例えば下記特許文献1に、二次元測位を行う車両位置検出装置が開示されている。下記特許文献1の車両位置検出装置は、前回検出した緯度と経度に対応する高度をテーブルから読み出して、該読み出した高度を用いて二次元測位を実行する。
【特許文献1】特許2783924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1では以下の不都合が起こり得る。例えば山道等の起伏の激しい場所では、テーブルから読み出される高度と実際の高度との間に誤差が生じ得る。二次元測位で利用する高度に誤差が含まれる場合、その誤った高度を用いて測位が行われるため、二次元測位位置(緯度経度)も誤差を含む値となる。更に、このようにして誤差が含まれた緯度経度を用いてテーブルから高度を読み出すと、その高度も誤差を含むものとなる。この結果、再度得た高度が先と同様に二次元測位位置の精度を低下させてしまう。緯度経度の誤差が高度の精度を低下させ、高度の誤差が緯度経度の精度を低下させるといった悪循環は、起伏の少ない場所に移動するまで継続する。場合によってはその間誤差が蓄積して、二次元測位位置が実際の位置から大きく外れることもあり得る。
【0006】
また、上記特許文献1においてGPS信号がマルチパスの影響を受けた場合も同様である。この場合も高度に誤差が生じ、その誤った高度を用いて測位が行われるため、先と同様の不都合が起こり得る。加えてマルチパルの場合はその影響による誤差が突発的に発生し、しかも大きいといった問題もある。
【0007】
このように従来の測位では、高度誤差が緯度経度の精度低下を招く不都合があり、その改善が望まれている。また、突発的に大きな誤差が発生するのを防止するため、マルチパスの影響を良好に除去することも望まれている。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、高度誤差やマルチパスによる位置測位の精度低下を軽減させることが可能なGPSレシーバを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るGPSレシーバは、GPS衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うものである。GPSレシーバは、位置測位結果の履歴を保持する保持手段と、受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を取得し、該取得した高度情報に基づいて所定の高度範囲を設定する高度範囲設定手段と、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲内であるか否かを判定する判定手段と、該所定の高度範囲内であると判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段とを備えたことを特徴としたものである。
【0010】
このように構成されたGPSレシーバによれば、三次元測位結果に含まれる高度が該所定の高度範囲内に収まるものであるときに限り、当該三次元測位結果が正式な位置測位結果として出力される。従って、高度誤差やマルチパスによる精度低下が抑えられた(すなわち高度の精度が高く、それに伴って緯度経度の精度も高い良好な)位置測位結果が出力先に出力されることになる。
【0011】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係るGPSレシーバは、GPS衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うものである。GPSレシーバは、位置測位結果の履歴を保持する保持手段と、緯度経度情報と、該緯度経度情報に対応する高度情報とを関連付けて記憶した記憶手段と、受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、保持手段に保持された直近の履歴の緯度経度情報をキーとして記憶手段の中から対応する高度情報を抽出する高度情報抽出手段と、該抽出された高度情報に基づいて所定の高度範囲を設定する高度範囲設定手段と、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲内であるか否かを判定する判定手段と、該所定の高度範囲内であると判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段とを備えたことを特徴としたものである。
【0012】
このように構成されたGPSレシーバによれば、三次元測位結果に含まれる高度が該所定の高度範囲内に収まるものであるときに限り、当該三次元測位結果が正式な位置測位結果として出力される。従って、高度誤差やマルチパスによる精度低下が抑えられた(すなわち高度の精度が高く、それに伴って緯度経度の精度も高い良好な)位置測位結果が出力先に出力されることになる。
【0013】
また、例えば判定手段により該所定の高度範囲外であると判定されるとき、位置測位手段は保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を援用して二次元位置情報を測位し、出力手段は該測位された二次元位置情報を出力する構成であっても良い。
【0014】
また、例えば判定手段により該所定の高度範囲外であると判定されるとき、位置測位手段は該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲の上限を上回る場合には当該高度範囲の上限値を高度として援用し二次元位置情報を測位し、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲の下限を下回る場合には当該高度範囲の下限値を高度として援用し二次元位置情報を測位し、出力手段は該測位された二次元位置情報を出力する構成であっても良い。
【0015】
また、例えば測位に利用するGPS衛星のPDOP(Position Dilution Of. Precision)が所定の閾値を上回るとき、位置測位手段は保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を援用して二次元位置情報を測位し、出力手段は該測位された二次元位置情報を出力する構成であっても良い。
【0016】
また、上記の課題を解決する本発明の別の態様に係るGPSレシーバは、GPS衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うものである。GPSレシーバは、受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、該三次元位置情報に含まれる高度情報が所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、該所定の条件を満たすと判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段とを備えたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高度誤差やマルチパスによる精度低下が抑えられた位置測位結果を出力することが可能なGPSレシーバが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態のGPSレシーバの構成および作用について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態のGPSレシーバ100の構成を示すブロック図である。GPSレシーバ100は、例えば車両に搭載された所謂カーナビや、簡易ナビゲーション装置であるPND(Personal Navigation Device)、携帯電話等のモバイル端末等の種々の機器に採用可能である。
【0020】
GPSレシーバ100は大別して、ダウンコンバータ部1、受信信号処理部2、および測位演算制御部3で構成される。ダウンコンバータ部1は、GPS信号を受信してダウンコンバートし、受信信号処理部2に渡す。受信信号処理部2は、ダウンコンバータ部1から信号を受け取ると、測位演算制御部3と連携して動作してGPS信号の捕捉、追尾、および測位の各処理を実行する。測位演算制御部3は、受信信号処理部2と連携して動作した結果得られたGPS測位結果を機器の制御チップに出力する。なお、ここでいう「機器の制御チップ」とはGPSレシーバ100を実装した機器に備えられるチップであり、GPSレシーバ100から受け取ったGPS測位結果を用いて所定の処理を実行する。例えば機器がカーナビである場合、この制御チップはカーナビ内部の各構成要素を統括的に制御するものであり、GPS測位結果と自律航法結果に基づく最終的な測位結果の決定やマップマッチング等を実行してユーザにナビゲーション情報を提供する機能を実現する。
【0021】
先ず、ダウンコンバータ部1について説明する。ダウンコンバータ部1は、GPSアンテナ10、RF(radio frequency)入力部11、BPF(Band Pass Filter)12および14、LNA(Low Noise Amplifier)13、ダウンコンバータ15、AGC(Auto Gain Control)16、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)17、周波数シンセサイザー18、およびA/D変換部19を有する。
【0022】
GPSアンテナ10がGPS衛星から発信されるGPS信号を受信すると、その受信信号は、RF入力部11を介してBPF12に入力する。そして、この受信信号は、BPF12を通過して所定帯域に制限されて、低雑音増幅器であるLNA13、BPF14を経てGPS帯域外のノイズが減衰され、ダウンコンバータ15に入力する。
【0023】
TCXO17は、ダウンコンバータ15に入力された受信信号の周波数よりも低い周波数を発振する局部発振器である。周波数シンセサイザー18は、TCXO17からの出力に基づいて局部発振器信号を生成し、ダウンコンバータ15に出力する。ダウンコンバータ15は、周波数シンセサイザー18からの局部発振器信号を用いて、AGC16のコントロール下で、上記受信信号を安定動作や選択特性が改善される中間周波数、すなわちIF(Intermediate Frequency)信号に変換する。
【0024】
A/D変換部19は、IF信号をサンプリングして直交復調してI(In-phase)信号とQ(Quadra-phase)信号に変換する。なお、I信号は直交復調の際の同相成分である。また、Q信号はI信号と直交関係にある成分である。以下、説明の便宜上、I信号とQ信号とをまとめて「IQ信号」と略記する。A/D変換部19は、上記変換処理で得られたIQ信号を受信信号処理部2に出力する。
【0025】
受信信号処理部2は、複数のチャンネル21およびNCO(Number Controlled Oscillator)22を有する。A/D変換部19からのIQ信号は、複数のチャンネル21に入力する。チャンネル21の各々は1基のGPS衛星を補足・追尾するための構成を有する。各GPS信号に対応するIQ信号はそれぞれ別個のチャンネル21に入力し処理される。各チャンネル21で並列に処理が実行されることにより、GPSレシーバ100は複数のGPS衛星を同時に補足・追尾することが可能となっている。
【0026】
NCO22は、数値制御された周波数を発振する発振器である。NCO22には、周波数シンセサイザー18から基準クロックが入力する。NCO22は、当該の基準クロックに基づいて、キャリアに関するNCO制御、PRN(Pseudo Random Noise)コードのリファレンスコード生成、コードに関するNCO制御を実行する。各チャンネル21は、NCO22の出力に基づいて、入力したIQ信号に対して、ドップラー除去、少なくとも1つのコリレータによるコード相関検出、および積算処理を実行する。次いで、これらの処理が施された信号を測位演算制御部3に出力する。
【0027】
測位演算制御部3は、CPU31、RTC(Real-Time Clock)32、ROM33、RAM34、およびインターフェース35を有する。CPU31は、周波数シンセサイザー18から出力されるクロックに基づいて動作し、測位演算制御部3全体の制御を統括して実行する。RTC32は、水晶発振器(不図示)によって動作する時計IC(Integrated Circuit)であり、例えば計時手段として機能する。ROM33には、例えば測位演算を行うためのプログラムやデータが格納されている。CPU31は、ROM33のプログラムをRAM34に展開して測位演算処理を行う。CPU31は、例えば各チャンネル21から信号を受け取ると、当該信号に関する測定値を算出する。
【0028】
ここで、各チャンネル21に入力される信号に基づいて所望の測定値を得る処理について説明する。GPS信号を捕捉するために必要なサーチ周波数のレンジは、主として、ドップラー効果による受信周波数の偏位と、TCXO17のばらつき(個体差や経年変化)および変動(温度特性や電源変動)等の偏差によって決定される。先ず、CPU31が、衛星の軌道情報である航法メッセージ、前回測位位置および、現在時刻に基づいて当該信号のドップラー周波数とコード位相のサーチレンジを推定してそれらの設定値を生成し、NCO22に出力する。そして、各チャンネル21において実行されるサーチ処理の制御を行う。
【0029】
また、CPU31は、各チャンネル21でサーチされるPRNコードをチャンネル21毎に指定する。これにより、各チャンネル21では、設定されたドップラー周波数に基づいたドップラー除去が行われ、設定された位相サーチレンジ内において指定されたPRNコードのリファレンスコードと入力信号との相関ピークが検出される。次いで、積算処理が実行され、入力信号のレベルが所定の閾値を越えた場合に当該入力信号がGPS信号として捕捉される。なお、このときの積算時間を長く設定すればするほど捕捉感度が上昇する。この積算時間もCPU31によって設定される。
【0030】
各チャンネル21では、更に、CPU31に含まれるトラッキングループフィルタ、およびNCO22を介して捕捉されたGPS信号のキャリア、コードへのトラッキングエラーを補正し、GPS信号の追尾を続行する。なお、GPS信号の捕捉に失敗した場合には、通常、CPU31が、より広いサーチ周波数のレンジ、コード位相のレンジ、および、より高い感度を再設定してNCO22に出力する。そして、NCO22の制御下でチャンネル21において上述の処理が再試行される。
【0031】
CPU31は、測位に必要な複数のGPS信号に含まれる航法メッセージを取得し、コード位相(疑似距離)、キャリア周波数(疑似距離レート)、キャリア位相(デルタスードレンジ)、SN比、GPSレシーバ100におけるGPSタイムラグを算出する。そして、これらのGPS信号からの測定値およびデータに基づいて、位置、速度、方位、時刻を算出(すなわち測位演算)する。算出されたGPS測位結果は、インターフェース35を介して機器の制御チップに出力される。
【0032】
次に、図2のフローチャートを参照して、GPSレシーバ100が実行する位置測位処理について説明する。なお、以下の位置測位処理の説明では、GPSレシーバ100を搭載する移動体がある程度移動して位置測位結果を複数回取得した状態であることを前提とする。
【0033】
図2の位置測位処理は、GPSレシーバが起動中、所定のタイミング毎に実行される。図2に示されるように、先ず、測位使用可能衛星が4つ以上あるか否かが判定される(ステップ1、以下の明細書および図面においてステップを「S」と略記)。なお、「測位使用可能衛星」とは、GPS信号を捕捉・追尾してエフェメリス情報を受信できること、仰角マスクの条件に該当しない(例えば仰角が10度よりも大きい)こと等の条件を満たすGPS衛星を意味する。測位使用可能衛星が4つ以上の場合には(S1:YES)処理はS2に進み、3つ以下の場合には(S1:NO)処理はS11に進む。なお、S11以降の処理については後に詳説し、ここでは先ずS2以降の処理について説明することとする。
【0034】
S2の処理では、測位使用可能衛星に対するPDOP(Position Dilution Of. Precision)が算出される。次いで、S3の処理では、S2の処理で算出されたPDOPが所定の閾値以下であるか否かが判定される。PDOPが閾値以下の場合(S3:YES)、測位使用可能衛星の幾何学的配置が三次元測位に好適で誤差要因が少ないと判断され、処理はS4に進む。また、PDOPが閾値を上回る場合(S3:NO)、測位使用可能衛星の幾何学的配置が大きな誤差要因と判断され、処理はS12に進む。
【0035】
S4の処理では、測位使用可能衛星からのGPS信号を用いて三次元の測位演算が実行され、得られた三次元測位位置が仮の三次元測位位置として例えばRAM34等に一時的に保持される。なお、測位使用可能衛星が5つ以上ある場合には、S2の処理において少なくとも4つの測位使用可能衛星を含む様々な組み合わせのPDOPを算出し、S3の処理を実行後、S4の処理においてPDOPが最小となる組み合わせの測位使用可能衛星を用いて三次元測位を実行するようにしても良い。この場合、S4の処理で得られる三次元測位位置がより精度の高い値となる。
【0036】
次のS5および6の処理では、仮の三次元測位位置で求められた高度(以下、「仮高度β」という)が所定の高度範囲内に収まる値であるか否かが判定される。例えばRAM34には測位結果の履歴が保持されている。このときS5の処理において、例えばRAM34で参照される履歴の高度(例えば前回の測位結果に含まれる高度であり、以下、「参照高度α」という)を中心とした±100mの範囲が所定の高度範囲として設定され、S6の判定処理で利用される。すなわちS6の処理では|α−β|≦100を満たすか否かが判定される。
【0037】
また、所定の高度範囲の設定方法には他にも様々な形態が考えられる。例えばROM33には、緯度経度と、緯度経度に対応する高度とを関連付けたレコードが複数登録された高度データベースが格納されている。なお、高度のステップは比較的大まかであり、例えば100mステップである。100mステップの場合、実際には50m以上150m未満の高度が100mの高度、150m以上250m未満の高度が200mの高度として扱われる。この場合、S5の処理において、前回の測位結果に含まれる緯度経度をキーとして高度データベースが検索され、当該のキーに対応する参照高度αが検索結果として得られる(換言すると、現在位置の大まかな高度が得られる)。そして、この得られた参照高度αを中心とした±100mの範囲が所定の高度範囲として設定され、S6の判定処理で利用される。なお、100mステップは比較的大きなステップであり、高度データベースの容量を抑えるメリットがある。これは、GPSレシーバのようなリソースの限定された機器においては極めてメリットである。
【0038】
S6の処理において仮高度βが所定の高度範囲内に収まる値である場合には(S6:YES)、仮高度βの精度が高く、それに伴って緯度経度の精度も高いと判断される。更には、仮高度βは所定の高度範囲内に収まっていることから、突発的に発生する過大な誤差すなわちマルチパスの影響も受けていないと判断される。従って、S4の処理で仮とされた三次元測位位置は、精度が高くマルチパスの影響も受けていないものであるため、S7の処理において正式な測位結果として制御チップに出力され、図2の位置測位処理がリターンする。また、制御チップに出力した測位結果を履歴としてRAM34に保存する。
【0039】
また、S6の処理において仮高度βが所定の高度範囲に収まらない値である場合には(S6:NO)、仮高度βはマルチパスの影響も受けたものである可能性が高いと判断される。更に、マルチパスの影響による仮高度βの精度低下に伴って、緯度経度の精度も低いと判断される。従って、S4の処理で仮とされた三次元測位位置は、マルチパスの影響等により精度が低いものであり測位結果として採用できないことから、処理はS12に進む。
【0040】
次に、S11の処理について説明する。S11の処理では、測位使用可能衛星が3つあるか否かが判定される。測位使用可能衛星が3つの場合には(S11:YES)処理はS12に進み、2つ以下の場合には(S11:NO)処理はS21に進む。測位使用可能衛星が2つ以下の場合には測位演算が実行されることなく(S21)、図2の位置測位処理がリターンする。
【0041】
S12の処理では、HDOP(horizontal dilution of precision)が算出される。次いで、S13の処理では、S2の処理で算出されたHDOPが所定の閾値以下であるか否かが判定される。HDOPが閾値以下の場合(S13:YES)、測位使用可能衛星の幾何学的配置が二次元測位に好適で誤差要因が少ないと判断され、処理はS14に進む。また、HDOPが閾値を上回る場合(S13:NO)、測位使用可能衛星の幾何学的配置が大きな誤差要因と判断され、処理はS21に進み、測位演算が実行されることなく、図2の位置測位処理がリターンする。
【0042】
S14の処理では、例えばRAM34を参照して前回の測位位置の高度が取得される。次いで、測位使用可能衛星からのGPS信号を用いると共に該取得した高度を援用して二次元の測位演算を実行し、得られた二次元測位位置を制御チップに出力する。また、制御チップに出力した測位結果を履歴としてRAM34に保存する。
【0043】
図2のS6の処理によれば、本実施形態において二次元測位時に利用する高度は、マルチパスの影響を受けていないものである。また、図2のS3や13の処理によれば、PDOPやHDOPの低い組み合わせのGPS衛星を利用して得られたものである。従って、二次元測位時に利用する高度は精度保証されたものである。このような精度の高い高度を用いて二次元測位を行うと、高度誤差に起因する緯度経度の精度低下を好適に除去できるため、結果的に、二次元測位で得られる緯度経度は高精度となる。
【0044】
また、S14の処理において、例えば仮高度βが所定の高度範囲の上限値を上回る場合には当該の上限値(すなわち参照高度α+100m)、仮高度βが所定の高度範囲の下限値未満である場合には当該の下限値(すなわち参照高度α−100m)を二次元測位で援用する高度としても良い。この場合、高度誤差をある範囲内に抑えることができるため、その結果、二次元測位で得られる緯度経度も誤差が抑えられたものとなる。
【0045】
すなわち本実施形態のGPSレシーバ100によれば、高度データベースや履歴の高度に基づいて所定の高度範囲を設定することにより、当該範囲外の大きな誤差を持つ高度を測位演算に用いないようにしている。従って、例えばマルチパスの発生等による大きな誤差が良好に除去される。また、高度が所定の高度範囲内であれば三次元測位結果をそのまま採用し、所定の高度範囲外であれば誤差を抑えた高度を用いて二次元測位を実行するため、誤差が蓄積し難いといった効果や、二次元測位時の緯度経度の誤差が低減するといった効果が期待される。
【0046】
以上が本発明の実施形態である。本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば高度データベースにおける高度のステップは比較的大まかであるため、図2のS5の処理は、図2の位置測位処理時に毎回実行する必要はなくオミット可である。例えば位置測位処理を複数回実行する毎に一回実行するといった程度でも良い。
【0047】
また、GPSレシーバ100を実装する機器が例えばカーナビである場合、高度データベースは、地図データを保存したHDDやDVD等に付加されたものであっても良い。また、当該の機器が例えばモバイル機器である場合には、高度データベースはメモリカードに保存されたものであっても良い。また、高度データベースは、Web上のデータベース管理サーバに置かれたものであっても良い。この場合、GPSレシーバ100は通信機能を有し、データベース管理サーバとデータ通信することにより高度データを取得することになる。このように高度データベースを外部記憶装置に置くことにより、情報量の豊富な高度データベースを構築することが可能となる。一例として、高度のステップをより細かくすることが可能となる。
【0048】
また、高度データベースにおいて高度のステップを地域毎に変えても良い。例えば山岳部等の起伏の激しい地域では高度のステップをより大きくしても良く、平坦な地域では高度のステップをより小さくしても良い。
【0049】
また、高度データベースにおいて同一高度となる連続的な緯度経度を領域(例えばベクターデータ等)で表現しても良い。この場合、高度データベース内のレコード数を削減できるためリソース節約の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態のGPSレシーバの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態で実行される位置測位処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 ダウンコンバータ部
2 受信信号処理部
3 測位演算制御部
100 GPSレシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GPS(Global Positioning System)衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うGPSレシーバにおいて、
位置測位結果の履歴を保持する保持手段と、
受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、
前記保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を取得し、該取得した高度情報に基づいて所定の高度範囲を設定する高度範囲設定手段と、
該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
該所定の高度範囲内であると判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段と、を備えたこと、を特徴とするGPSレシーバ。
【請求項2】
GPS衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うGPSレシーバにおいて、
位置測位結果の履歴を保持する保持手段と、
緯度経度情報と、該緯度経度情報に対応する高度情報とを関連付けて記憶した記憶手段と、
受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、
前記保持手段に保持された直近の履歴の緯度経度情報をキーとして前記記憶手段の中から対応する高度情報を抽出する高度情報抽出手段と、
該抽出された高度情報に基づいて所定の高度範囲を設定する高度範囲設定手段と、
該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
該所定の高度範囲内であると判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段と、を備えたこと、を特徴とするGPSレシーバ。
【請求項3】
前記判定手段により該所定の高度範囲外であると判定されるとき、
前記位置測位手段は、前記保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を援用して二次元位置情報を測位し、
前記出力手段は、該測位された二次元位置情報を出力すること、を特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のGPSレシーバ。
【請求項4】
前記判定手段により該所定の高度範囲外であると判定されるとき、
前記位置測位手段は、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲の上限を上回る場合には当該高度範囲の上限値を高度として援用し二次元位置情報を測位し、該三次元位置情報に含まれる高度情報が該所定の高度範囲の下限を下回る場合には当該高度範囲の下限値を高度として援用し二次元位置情報を測位し、
前記出力手段は、該測位された二次元位置情報を出力すること、を特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のGPSレシーバ。
【請求項5】
測位に利用するGPS衛星のPDOP(Position Dilution Of. Precision)が所定の閾値を上回るとき、
前記位置測位手段は、前記保持手段に保持された直近の履歴の高度情報を援用して二次元位置情報を測位し、
前記出力手段は、該測位された二次元位置情報を出力すること、を特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載のGPSレシーバ。
【請求項6】
GPS衛星からGPS信号を受信して位置測位を行うGPSレシーバにおいて、
受信したGPS信号を用いて三次元位置情報を測位する位置測位手段と、
該三次元位置情報に含まれる高度情報が所定の条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
該所定の条件を満たすと判定されるときに限り、該三次元位置情報を位置測位結果として出力する出力手段と、を備えたこと、を特徴とするGPSレシーバ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−298715(P2008−298715A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147861(P2007−147861)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】