説明

H型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法

【課題】 例えば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性などに優れたH型鋼圧延用鍛造スリーブロールを,低コストで容易に製造すること。
【解決手段】 まず,ハイス系成分からなる溶湯を用いて,遠心鋳造法により円筒状中空素材を鋳造する。次いで,上記円筒状中空素材に対し,スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に表層鍛造する。さらに,上記表層鍛造後の円筒状中空素材に対し,上記スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に型鍛造する。これにより,鍛造効果を当該スリーブロールの使用面に重点的に付与して,硬質の炭化物および樹枝状晶を十分に破壊して微細均一化することができる。このため,上記機械的性質に優れた圧延用スリーブロールを安価かつ容易に提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,H型鋼等の被圧延材の圧延に用いられるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
H型鋼圧延用スリーブロールとしては,遠心鋳造法により製造したもの,または,鋼塊から鍛造により成型したものがある。これらのH型鋼圧延用スリーブロールは共に,耐摩耗性が十分でなかったり,焼き付いたりすることが原因で,使用期間に制限があるという問題があった。かかる問題の対処として,ロール使用面にハイス(高速度鋼,high−speed steel;HSS)系材質を適用することによって,耐摩耗性に関しては改善がなされてきたが,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性の改善までには至っていなかった。
【0003】
そこで,かかる改善策としてハイス系鍛造スリーブロールが適用されており,特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載の技術内容は,ハイス系成分からなる溶湯を用いて遠心鋳造方法により成形した単層スリーブ素材または複合スリーブ素材に対し,外内両面方から半径方向に,さらに軸方向からも鍛造を実施し,スリーブロールを形成するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2000‐288708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,例えば,H型鋼圧延用スリーブロール,特に,小サイズのH型鋼圧延用スリーブロールは,図1に示す如く,圧延部32の幅以上の袴部34を有している。このような袴部34を有するH型鋼用圧延スリーブロール30を,上記特許文献1に開示されている技術内容で製造するには,図4に示すように,半径方向y及び軸方向zの鍛造により形成された円筒状中空素材150から,上記スリーブロール30の袴部32を形成するために,両肩にある余肉部152(ドットハッチングを付した部分)を機械加工により除去することが必要である。ところが,当該除去された余肉部152は,上記鍛造により塑性変形の多い鍛錬効果が大なる部分である。従って,かかる鍛錬効果が高い余肉部152を機械加工により除去してしまうと,当該除去により形成される使用部154(上記圧延部32に相当する)の機械的性質(例えば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性など)が,低いものとなってしまうという問題があった。
【0006】
また,H型鋼用圧延スリーブロール30の別の製造方法としては,遠心鋳造された円筒形中空素材を型鍛造により,一度に鍛造,成形する方法がある。しかし,この方法では,大容量のプレス設備が必要であり,且つその成形・加工費も増大するという問題があった。
【0007】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,機械的性質,例えば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性などに優れたH型鋼圧延用鍛造スリーブロールを,低コストで容易に製造することが可能な,新規かつ改良されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,H型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法が提供される。この製造方法は,ハイス系成分からなる溶湯を用いて,遠心鋳造法により円筒状中空素材を鋳造する鋳造工程と;上記円筒状中空素材に対し,上記スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に表層鍛造する表層鍛造工程と;上記表層鍛造後の円筒状中空素材に対し,上記スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に型鍛造する型鍛造工程と;を含むことを特徴とする。
【0009】
このように,ハイス系成分から鋳造された円筒中空素材を部分的に鍛造成形することにより,硬質の炭化物および樹枝状晶を十分に破壊して微細均一化することができる。このため,例えば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性などの機械的性質が向上されたハイス系鍛造スリーブロールを提供できる。さらに,表層部分鍛造及び型鍛造工程を導入することで,鍛造効果を当該スリーブロールの使用面に重点的に付与することができる。加えて,遠心鋳造された円筒形中空素材を型鍛造により一度に鍛造する方法と比べて,プレス設備が小容量で済み,成形・加工費を低減できる。
【0010】
また,上記鋳造工程は,上記ハイス系成分からなる溶湯で鋳造された円筒状中空素材の内周面に,黒鉛鋳鋼またはダクタイル鋳鉄からなる溶湯を遠心鋳造して溶着させ,複合円筒状中空素材を形成する工程を含むようにしてもよい。これにより,上記機械特性に優れた複合スリーブロールを容易かつ安価に製造できる。
【0011】
また,上記鋳造工程後に,上記鋳造された円筒状中空素材を当該円筒状中空素材の軸に対して垂直方向に切断し,当該軸方向に所定の長さとする切断工程をさらに含み,上記表層鍛造工程では,上記切断された円筒状中空素材を表層鍛造するようにしてもよい。これにより,鋳造された円筒状中空素材から,所望のスリーブロールの形状に応じた円筒状中空素材を容易に成形して,鍛造工程に供することができる。
【0012】
また,上記表層鍛造工程では,上記円筒状中空素材の上記径方向外周部分を,周方向に沿って一部重複しながら順次,部分的に表層鍛造するようにしてもよい。これにより,円筒状中空素材のうちスリーブロールの使用面に相当する外周部分のみを,好適に軽鍛造することができる。
【0013】
また,上記ハイス系成分からなる溶湯は,質量%で,C:1.0〜3.5%,Si:0.2〜2.4%,Mn:0.2〜2.0%,Cr:3.0〜10.0%,V:4.5〜10.0%,及び,Mo,Wの1種以上:0.2〜10.0%を含有し,残部がFeからなるようにしてもよい。
【0014】
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,上述したH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法によって製造されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロールが提供される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性等の物理的性質に優れた高性能のH型鋼圧延用鍛造スリーブロールを,低コストで容易に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施形態)
まず,本発明の第1の実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの化学成分について説明する。本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール(以下,単に「スリーブロール」または「ロール」という場合もある。)は,例えば,外層材と内層材とからなる二層構造の複合圧延スリーブロールとすることができる。このH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの外層材は,例えば,特許文献2(特開平10‐81918号公報)に開示されているようなハイス系成分からなる。このハイス系成分は,V,Cr,Mo,W等を多量に含有した高速度鋼(白鋳鉄等)の素材となる成分である。以下に,その代表的な各成分について,その成分含有量および成分限定理由について説明する。なお,以下の各成分の含有比率は,質量%である。
【0018】
C:1.0〜3.5%
炭素Cは,ロールの性能に直接影響するロール硬さを得るための,重要な元素である。C含有量が1.0%より少ないと,耐摩耗性及び耐肌荒れ性を向上させるために有効な硬い炭化物の晶出が少なく,さらに,基地に固溶するC量が不足し,焼き入れによっても十分な基地硬さが得られないだけでなく,合金添加物としての効果を発揮できない。
【0019】
一方,C含有量が3.5%を越えると,硬いが脆い炭化物が粗大化し,且つその晶出量も過大となり,ロールの強度が損なわれる。このため,ロールの使用中に割損や表層剥離等が生じ,使用に耐えられない。従って,3.5%をC含有量の上限とした。
【0020】
Si:0.2〜2.4%
ケイ素Siは,脱酸作用を目的として添加される。Si含有量が0.2%未満であると,脱酸効果が不十分であり,一方,2%を超えると,靭性を低下させる。また,鋳造時の流動性を確保するため,Si含有量の範囲を0.2〜2.4%とする。
【0021】
Mn:0.2〜2.0%
マンガンMnは,脱酸,脱硫作用を目的として添加される。Mn含有量が0.2%未満であると,脱酸,脱硫効果が不十分であり,一方,2.0%を超えると,靭性を低下させる。このため,Mn含有量の範囲を0.2〜2.4%とする。
【0022】
Cr:3.0〜10.0%
クロムCrは,Cと結合して,主にM型等の硬い炭化物を結晶粒界に晶出生成し,耐摩耗性を向上させる。M炭化物は,遠心鋳造時にも比較的偏析し難いが,網目状に大きく凝集して晶出する。Cr添加量が少ないと,炭化物が少なくその効果が十分確保できず,一方,Cr添加量が多すぎると,炭化物の晶出量が過大となり,前述のとおり強度が損なわれる。
【0023】
この晶出する炭化物は,鍛造時に破壊され,微細化されることにより,悪影響を軽減することができる。しかし,組織中の炭化物量としては変化せず,過度な晶出は,やはり悪影響を及ぼすため,Cr含有量の適正な範囲を3.0%以上10.0%以下とした。
【0024】
V:4.5〜10.0%
バナジウムVは,優先的にCと結合して,極めて硬く粒状のMC型炭化物,即ち,VC炭化物を形成し,耐摩耗性を向上させるために極めて有用な元素である。しかし,V含有量が4.5%未満であると,炭化物量が不十分となり耐摩耗性が確保できず,一方,10.0%を超えると,VC炭化物は,比重が小さいため遠心鋳造時に内面側に重量偏析しやすくなってしまう。このため,偏析の抑制と強度を損なわない範囲として,V含有量を4.5〜10.0%とした。
【0025】
Mo,W:1種以上を0.2〜10.0%
モリブデンMo,タングステンWは,上記Crと同様に,マトリックス中に固溶されて基地を強化すると共に,Cと結合して炭化物を形成する。基地強化のためには,最低0.2%以上の含有が必要であるが,10.0%を超えると,粗大炭化物が形成され靭性が低下する。また,遠心鋳造法で10.0%を超えた場合,層状偏析が発生する。そこで,Mo及び/又はW含有量を0.2〜10.0%とした。
【0026】
本実施形態にかかるスリーブロールの外層材の基本成分は,上記のとおりであるが,適用対象となるロールのサイズ,要求されるロールの使用特性等により,上記化学成分に加えて,以下のようなNi,Co,Nbを適宜添加してもよい。
【0027】
Ni:0.1〜3.0%
ニッケルNiは,基地の焼入れ性を向上させ,硬度を高くする効果がある。焼入れ性を向上させるためには,0.1%以上のNi含有量が必要である。しかし,Ni含有量が3.0%を超えると,残留オーステナイトが増え硬度低下するため,上限を3.0%とした。
【0028】
Co:0.5〜10.0%
コバルトCoは,高温での硬さと強度を向上させる効果がある。高温での耐摩耗性および熱亀裂性が要求されるような圧延条件で使用されるロールを製造する場合に効果がある。Coを0.5%以上添加すると効果があるが,経済性の観点からその含有量の上限を10.0%以下とした。
【0029】
Nb:0.1〜3.0%
ニオブNbは,Vと同様,Cと結合し硬いMC炭化物を生成し,耐摩耗性を向上させる。Nbは,上記Vと共に添加するため,その含有量が0.1%以上ないとその効果はなく,一方,3.0%を超えて添加すると,MC炭化物が増加して,基地硬度を低下させてしまう。
【0030】
さらに,上記外層材の各成分以外の残部は,Feと不可避的不純物とからなる。一方,スリーブロールの内層材は,例えば,黒鉛鋳鋼またはダクタイル鋳鉄などを素材としている。
【0031】
次に,本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法について説明する。本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の特徴は,上述したハイス系成分からなる溶湯を用いて鋳造された円筒中空素材に対し,ロール使用面となる部分にのみ,部分的に表層鍛造及び型鍛造を施す点にある。
【0032】
まず,図1に基づいて,このような鍛造を施す理由について説明する。図1は,本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30を用いたH型鋼10の圧延状態を示す断面図である。
【0033】
図1に示すように,ロール軸20にH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30が挿通・固定された状態で,圧延機(図示せず。)に対して一体に組み込まれる。このとき,スリーブロール30内に挿通されたロール軸20が例えば水平となるように配置される。かかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30およびロール軸20は,例えば上下方向(圧下方向y)に対向するように一対配設されている。図1では,下水平ロールとなるスリーブロール30を実線で示し,上水平ロールとなるスリーブロール30を一点鎖線で示してあり,双方のスリーブロール30は,例えば,同一形状,同一サイズである。
【0034】
また,H型鋼圧延用鍛造スリーブロール30は,ロール外周側に位置する圧延部32と,ロール内周側に位置する袴部34とからなる。圧延部32のロール軸方向zの幅は,袴部34のロール軸方向zの幅よりも狭くなっている。このため,スリーブロール30の両側面には,圧延部32と袴部34との間に段差が生じている。
【0035】
このような一対のH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30によって,上下方向を圧下方向yとしてH型鋼10が圧延される。この圧延状態において,圧延されるH型鋼10と,下水平ロールであるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30とは,下記(1),(2)の部分にて接触しており,当該接触によりH型鋼10が圧延,搬送されている。
【0036】
(1)H型鋼10のフランジ14の両内側面14aと,当該スリーブロール30の圧延部32の両側面32aとの接触部であるA面
(2)H型鋼10のウェブ12の下面12aと当該スリーブロール30の圧延部32の外周面32bとの接触部であるB面
【0037】
また,上水平ロールであるスリーブロール30も,上記下水平ロールと同様にしてH型鋼10に接触している。
【0038】
このようなH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30を用いてH型鋼10を圧延する際,H型鋼10の圧延に必要な搬送力は,以下の(a)(b)の摩擦力によるところが大きい。
【0039】
(a)H型鋼10と,スリーブロール30の外周面32bとの接触部であるB面における摩擦力
(b)H型鋼10の圧延において,通常,該H型鋼10の左右両側に配設される一対の竪ロール(図示せず。)と,H型鋼10のフランジ外側面14bとの接触部における摩擦力
このような搬送力を発揮する接触部では,圧延されるH型鋼10とスリーブロール30とのスリップは生じにくい。
【0040】
一方,上記図1に示すH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30のA面は,ロール軸20の軸芯からの距離が,上記B面より小さい。このため,上記A,B両面における角速度は同じでも,H型鋼10の圧延・搬送方向の速度に差が生じる。従って,スリーブロール30のA面(即ち,圧延部32の両側面32a),特に,H型鋼10の足先部14bに近い箇所において,上記B面よりも大なる摩耗,ヒートクラック,焼き付き,肌荒れが生ずる問題がある。そこで,この問題を解決するべく,本発明は,H型鋼圧延用鍛造スリーブロール30における解決すべき主要な箇所,即ち,使用面として,上記図1に示すA面(以下,「使用面A」という。)の鍛造効果を計ろうとするものである。
【0041】
次に,図2に基づいて,本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の工程フローについて詳細に説明する。
【0042】
本実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法は,(1)上記ハイス系成分からなる溶湯を用いて,遠心鋳造法により円筒中空素材を鋳造する鋳造工程と,(2)当該鋳造された円筒中空素材を軸方向の所定の長さで切断する切断工程と,(3)当該切断された円筒状中空素材のうちスリーブロール30の使用面Aに相当する径方向外周部分のみを,部分的に表層鍛造する表層鍛造工程と,(4)当該表層鍛造された円筒状中空素材の上記使用面Aに相当する径方向外周部分のみを型鍛造する型鍛造工程と,(5)仕上工程と,を含む。以下に,かかる各工程について詳述する。
【0043】
(鋳造工程)
最初に,鋳造工程について説明する。鋳造工程では,まず,上述したハイス系成分からなる溶湯を用いて,遠心鋳造法により,図2Aに示すような円筒状中空素材50を鋳造する。このような遠心鋳造により,スリーブ形状の円筒状中空素材50を比較的安価かつ容易に製造することができる。
【0044】
次いで,本実施形態では,複合スリーブロールを製造するために,上記のように鋳造された円筒状中空素材50の内周面に,黒鉛鋳鋼またはダクタイル鋳鉄等の溶湯を遠心鋳造して溶着させ,複合円筒状中空素材50を形成する。これにより,円筒状中空素材50は,上記ハイス系成分からなる外層材と,上記黒鉛鋳鋼またはダクタイル鋳鉄等からなる内層材との二層構造となる。なお,上記ハイス系成分からなる単層スリーブロールを製造する場合には,上記黒鉛鋳鋼等を溶着させるための2段階目の遠心鋳造工程を省略することができる。
【0045】
さらに,このように鋳造された円筒状中空素材50は,焼純熱処理される。
【0046】
(切断工程)
次いで,切断工程では,上記鋳造工程で鋳造された円筒状中空素材50を,図2Bに示すように,軸方向zに所定の長さLとなるように,軸直角方向(ロール径方向xy)に切断する。つまり,上記のように鋳造された円筒状中空素材50の軸方向zの長さ(高さ)は,最終製品であるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30の軸方向zの長さよりも長い。そこで,本切断工程では,円筒状中空素材50を切断して,H型鋼圧延用鍛造スリーブロール30の長さに対応した所定の長さLの円筒状中空素材50−1,2,…を成形する。ここで,「所定の長さL」とは,最終製品であるH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30の軸方向の長さより,機械加工による仕上げ代として例えば20〜30mm程度余分な長さである。
【0047】
このように円筒状中空素材50を切断して,複数の円筒状中空素材50−1,2,…を成形することにより,一回の鋳造工程で製造された円筒状中空素材50から,複数の円筒状中空素材50−1,2,…を成形できるので,製造効率が高まり製造コストを低減できる。
【0048】
しかし,かかる例に限定されず,当該切断工程では,上記鋳造された円筒状中空素材50を長さ調整のために切断して,上記所定の長さLの円筒状中空素材50−1を1つだけ成形するようにしてもよい。また,上記鋳造工程で予め,上記所定の長さLの円筒状中空素材50を鋳造するようにしてもよく,この場合には,上記切断工程を省略することができる。なお,以下では説明の便宜上,上記切断によって製造された所定の長さLの円筒状中空素材50−1,2,…を,円筒状中空素材50と表記して説明する。
【0049】
(表層鍛造工程)
表層鍛造工程(軽鍛造工程)では,例えば大型自由鍛造機(図示せず。)によって,図2Cに示すように,上記円筒状中空素材50のうち上記スリーブロール30の使用面Aとなる径方向外周部分52のみを,円筒状中空素材50の軸方向z(スリーブ幅方向)に圧下する部分表層鍛造を行う。なお,「表層鍛造」とは,被鍛造材の鍛造方向の表層部のみを,アンビル等を使用して部分的に圧下し,塑性変形せしめる鍛造方法である。
【0050】
具体的には,まず,上記大型自由鍛造機の台座62上に,上記切断後の円筒状中空素材50を,軸方向が上下方向となるように載置・固定する。この台座62の上面には,平面形状が円形の凹部64が形成されており,この凹部64の径は,円筒状中空素材50の外径より小さく,上記図1のスリーブロール30の袴部34の外径と略同一である。
【0051】
次いで,例えば表層鍛造用アンビル66を用いて,当該載置された円筒状中空素材50のうち,上記スリーブロール30の使用面Aとなる径方向外周部分52のみを,当該円筒状中空素材50の軸方向に圧下するようにして部分的に表層鍛造する。このとき,所定の表層塑性変形量になるように押し込み量が選定される。さらに,当該表層鍛造では,上記スリーブロール30の使用面Aとなる円筒状中空素材50の外周部分52を,周方向全体に一部重複して順次,表層鍛造する。より詳細には,円筒状中空素材50の外周部分52に対して,表層鍛造用アンビル66を図2C(a)に示すP,Q,…の如く,周方向に沿って一部重複するように順次,部分的に作用させて,表層鍛造していく。
【0052】
さらに,図2C(b)に示すように,円筒状中空素材50の上下を反転させた後,上記と同様にして,スリーブロール30の使用面Aとなる円筒状中空素材50の外周部分52のみを,周方向に沿って部分的に表層鍛造する。
【0053】
以上のような表層鍛造によって,上記鋳造工程における遠心鋳造により晶出した炭化物および樹枝状晶を破壊し,微細化するとともに,円筒状中空素材50の外周部分52に対して,軸方向zに例えば20〜50mm深さまで塑性加工を施すことができる。これにより,円筒状中空素材50の強度,耐ヒートクラック性,および耐焼き付き性等を向上させることができる。
【0054】
(型鍛造工程)
その後,型鍛造工程では,例えばプレス機(図示せず。)によって,金型を用いて,上記表層鍛造された円筒状中空素材50を型鍛造して,スリーブロール30が成型される。具体的には,図2Dに示すように,最終製品たるスリーブロール30のスリーブ形状に応じた形状の金型70を用いて,上記円筒状中空素材50の外周部分52のみを,当該円筒状中空素材50の軸方向zに圧下して一気に部分据え込み鍛造する。これによって,当該円筒状中空素材50が型鍛造され,図1に示した形状のスリーブロール30が成型される。
【0055】
この型鍛造工程で用いられる金型70の中央には,平面形状が円形の凹部74が形成されており,この凹部74の径は,上記図1のスリーブロール30の袴部34の外径に相当する。このような金型70を用いることにより,図2Dに示すように,円筒状中空素材50の外周部分52のみを型鍛造して,袴部34を有するスリーブロール30を成型することができる。以上のような型鍛造工程により,製品形状に近いニアネットシェープ成型で,円筒状中空素材50の鍛錬効果を得ることができる。
【0056】
ここで,炭化物および偏析を十分に破壊し,ポーラスな組織体に鍛接効果を付与することで材料強度を向上させるためには,上記円筒状中空素材50の型鍛造における鍛錬比(断面積比)を1.5以上にする必要がある。一方,鍛錬比が3を超えるとその鍛錬効果による強度向上率が減少し,また,鍛錬比を上げることは大きくコストに影響するので,鍛錬比の上限を3とすることが好ましい。
【0057】
(仕上げ工程)
最後に,上記のように型鍛造された円筒状中空素材50に対して,鍛造黒皮及び仕上げ加工を施して,最終的に図1に示したようなH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30が製造される。具体的に説明すると,上記型鍛造された円筒状中空素材50は,型鍛造による加熱により,素材の表面に酸化膜である黒皮が形成されており,さらに,上記鍛造の余裕代としての余肉を含んでいる。従って,本仕上げ工程では,上記型鍛造された円筒状中空素材50の例えば全面(内周面,外周面,両端面)を機械加工により切削し,所定のロール寸法に仕上げる。
【実施例】
【0058】
以下に,本発明の実施例について説明する。本発明の実施例および比較例の作用・効果を確認するため,以下の表1,2ように,本発明の3種の実施例,および6種の比較例にかかる試験材を作成し,さらに,当該各試験材の機械的性質を測定する各種の試験を実施した。表1は,各試験材の化学組成,鍛造の有無,鍛錬比を示し,表2は,当該各試験材に関する引張試験,磨耗試験,ヒートクラック試験,焼き付き試験の試験結果を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
なお,上記表1及び表2において,試験No.1,4,7は本発明の実施例にかかる試験材を表し,試験No.2,5,8は比較例1にかかる試験材を表し,試験No.3,6,9は比較例2にかかる試験材を表す。
【0062】
<<試験材の製造方法>>
まず,上記各試験材1〜9の製造方法について説明する。
【0063】
<本発明の実施例>表1及び表2の試験No.1,4,7
外径550mm,内径480mm,長さ600mmの円筒金型を遠心鋳造試験機で高速回転させながら,上記表1に記載している各々の化学成分の素材を周波誘導炉にて溶解した溶湯を,当該金型内に注入し,外径450mm,肉厚100mm,長さ300mmのスリーブ素材(上記実施形態の円筒中空素材50に相当する。)を製造した。その後,当該スリーブ素材を軸直角方向に切断し,長さ250mmのスリーブ素材を製造した。さらに,当該切断されたスリーブ素材に対して炉内焼鈍を施した後,300tプレスを用いて,表層鍛造(上記表層鍛造工程),および据え込み鍛錬比を変えた金型鍛造(上記型鍛造工程)を実施した。その後,鍛造後のスリーブ素材に対して,1000℃の焼き入れ,560℃の焼き戻しを行う熱処理を施し,硬度をHs75前後まで硬化させて,試験材を最終製造した。このように,本発明の実施例は,上記表層鍛造と型鍛造の双方を実施するものである。
【0064】
<比較例1>表1及び表2の試験No.2,5,8
上記表1に記載している各々の化学成分の溶湯を用いて,上記本発明の実施例と同様の製法で,同サイズのスリーブ素材を製造した。その後,図1,3に示すスリーブロール30の袴部34を形成するために,図4に示すように機械加工により当該スリーブ素材150の余肉部152を除去した。さらに,余肉部152が除去されたスリーブ素材に対して,上記本発明の実施例と同様の熱処理を施して,比較例1にかかる試験材を製造した。この比較例1は,全く鍛造を実施しないものである。
【0065】
<比較例2>表1及び表2の試験No.3,6,9
上記表1に記載している各々の化学成分の溶湯を用いて,上記本発明の実施例と同様の製法で,同サイズのスリーブ素材を製造した。その後,当該スリーブ素材に全面据え込み鍛造(全面1回プレス)を実施した。さらに,当該鍛造後のスリーブ素材に対し,上記本発明の実施例と同様の熱処理を施して,比較例2にかかる試験材を製造した。このように,比較例2は,表層鍛造を実施せずに,型鍛造のみを実施するものである。
【0066】
<<試験片採取位置>>
次に,上記のように製造された各種のスリーブロール30の試験材における試験片採取位置について説明する。試験片採取位置は,図3に示すように,スリーブロール30の圧延部32の両側面であるロール使用面A(円周方向)に相当する箇所である。この箇所から,後述する引張試験,摩耗試験,焼き付き性試験における種々の試験片を採取して,当該各試験を実施した。
【0067】
<<試験方法>>
以下に,上記試験材に対する各種の試験方法について説明する。
【0068】
<引張試験>
JIS4号試験片を採取して引張試験を実施し,当該試験片の引張強度を測定した。
【0069】
<摩耗試験>
熱間転動摩耗試験機を使用して,試験片の磨耗量を測定した。この磨耗試験における試験条件は,次の表3の通りである。
【0070】
【表3】

【0071】
<ヒートクラック試験>
φ80×10mm長の円柱形状で,表層鍛造面を含むロール使用面A(即ち,スリーブロール30の圧延部32の側面32a)を200℃に加熱保持し,その後,「誘導加熱により表面を400℃に加熱,水冷により200℃まで冷却」する処理を10回繰り返して,ヒートクラックの有無を観察した。さらに,当該10回の繰り返しにおいて,ヒートクラックが生じない場合には,同様の繰り返しパターンで,加熱温度を50℃ずつ上昇していき(加熱保持温度の200℃,及び水冷による冷却温度200℃は,一定),ヒートクラックが発生した温度と回数を測定した。
【0072】
<焼き付き性試験>
試験片30×20×10t(mm)のプレートに軟鋼を機械的に押し付けて,目視により,その焼き付き具合を観察した。観察結果は次の通りである。
「焼き付き無し」:摩擦熱によるテンパーカラーが見られるが,摩擦面は滑らかである。
「良好」 :テンパーカラーが見られ,摩擦面に細かい引っ掻き傷がはいる。
「良」 :テンパーカラー部の一部に,相手材である軟鋼の付着が見られる。
「不良」 :テンパーカラー部の全面にわたり,軟鋼の付着が見られる。
【0073】
<<試験結果の評価>>
以下に,上記本発明の実施例と比較例1,2の試験材に関する試験結果について,説明する。
【0074】
<比較例1> 表1及び表2の試験No.2,5,8
比較例1の試験材は,いずれも遠心鋳造後に,鍛造を全く実施していないものである。従って,比較例1の試験材は,その結晶粒が粗大であるので,引張強度は低く(平均引張強度;809MPa),摩耗量も多い(平均磨耗量;46mg)。また,ヒートクラック試験においては,低温度(400〜450℃)でクラックが生じ,さらに,焼き付き性試験においては,耐焼き付き性に劣る試験結果(不良若しくは良)となっている。
【0075】
<比較例2> 表1及び表2の試験No.3,6,9
比較例2の試験材は,いずれも遠心鋳造後に,鍛造として全面据え込み鍛造(全面1回プレス)のみを実施したものである。この比較例2の試験材は,上記鍛造を全く実施していない比較例1と比べて,特に,引張強度,耐摩耗性の点で良好な結果(平均引張強度;約1128MPa,平均磨耗量;約42.7mg)となっている。
【0076】
しかしながら,ヒートクラック試験では,低温度(450〜500℃)でクラックが生じており,耐ヒートクラック性に劣る試験結果を示している。また,焼き付き性試験においても,耐焼き付き性に劣る試験結果(不良)の場合もあった。これらの原因は,比較例2の試験材は,全面据え込み鍛造(全面1回プレス)のみを実施したものであって,本発明の実施例のように表層鍛造を実施していないので,前工程である遠心鋳造により晶出した炭化物および樹枝状晶を,鍛造により十分に破壊しきれていない点にあると判断される。
【0077】
<本発明の実施例> 表1及び表2の試験No.1,4,7
本発明の実施例の試験材は,いずれも,上記比較例1,2と比較して,引張強度,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性に優れた結果となっている。
【0078】
より具体的に検討すると,まず,引張強度に関しては,本実施例の試験材の平均引張強度は,宅1168MPaであり,比較例1と比べて約1.44倍,比較例2と比べて約1.04倍の高い強度となっている。このように,本実施例の試験材は,比較例1,2の試験材と比べて,引張強度に優れていることが分かる。
【0079】
また,耐磨耗性に関しては,本実施例の試験材の平均磨耗量は約41.7mgであり,比較例1と比べて約90.7%,比較例2と比べて約97.7%の低い磨耗量となっている。このように,本実施例の試験材は,比較例1,2の試験材と比べて,耐磨耗性に優れていることが分かる。
【0080】
さらに,耐ヒートクラック性に関しては,本実施例の試験材は,600〜650℃という高い温度までクラックが生じなかった。従って,400〜500℃でクラックが生じた比較例1,2と比べて,耐ヒートクラック性が大幅に向上されているといえる。
【0081】
加えて,耐焼き付き性に関しては,本実施例の試験材では,いずれにも焼き付きが全く観察されなかった。このように,本実施例の試験材は,不良な焼き付きが観察された比較例1,2の試験材と比べて,耐焼き付き性が向上されているといえる。
【0082】
(実用化されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロール)
次に,本発明の実施例として,実用に供されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30の特性について説明する。
【0083】
高周波誘導炉にて溶解された上記表1の試験No.4からなる化学成分の溶湯を,遠心鋳造試験機で高速回転されている円筒金型内に注入して,遠心鋳造法によりスリーブ素材(円筒状中空材50)を製造した。さらに,当該スリーブ素材に対して炉内焼鈍を施した後,300tプレスを使用して30mmの表層鍛造を施し,さらに,据え込み鍛錬比2で金型鍛造を施した。その後,当該鍛造により成型されたスリーブロール30に対して,1000℃の焼き入れ,560℃の焼き戻しを2回実施し,その後,仕上げ加工を行った。これにより,スリーブロール30は,硬度がHs75前後となるまで硬化した。この場合のスリーブロール30のサイズは,図3に示すように,外径D=1200mm,高さH(袴部34の幅)=400,高さh(圧延部32の幅)=200mmであった。その後,超音波深傷を行い,欠陥のない健全なロールであることを確認した。
【0084】
このようにして製造されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30を,H型鋼用圧延機に組み込んで,実際にH型鋼10の圧延に供した。現在のところ,上記組み込み後4ヶ月間の圧延作業に継続して使用されているが,当該スリーブロール30のロール面A,Bを切削することなく,圧延作業に良好に使用されている。
【0085】
なお,このように実用化されているH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30は,外部に対して公開されておらず秘密状態に管理されており,本発明の新規性及び進歩性を否定する公知技術となるものではない。
【0086】
以上,本発明の実施形態及び実施例にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法と,これによって製造されたH型鋼圧延用鍛造スリーブロール30について詳細に説明した。
【0087】
上述したように,上記ハイス系成分からなる円筒中空素材を部分鍛造成形して,H型鋼圧延用鍛造スリーブロールを製造することにより,硬質のMC炭化物の微細均一化により,機械的性質,例えば,耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性などが向上されたハイス系鍛造スリーブロールを提供できる。さらに,円筒中空素材の外周部分のみを表層部分鍛造及び型鍛造工程することにより,鍛造効果をスリーブロールの使用面に重点的に付与することができる。また,
また,図1に示すスリーブロール30の袴部34を形成するために,図4に示す従来方法のように鍛造効果の高い余肉部152を機械的に除去するのではなく,図2に示すように圧延部32を部分鍛造により成型して,鍛造効果の高い箇所を残存させてロール使用面Aとした。このため,ロール品質を大幅に向上させることができる。
【0088】
さらに,遠心鋳造された円筒形中空素材を型鍛造により一度に鍛造,成形する従来方法とは異なり,大容量のプレス設備が不要であるので,成形・加工費を低減できる。従って,型製作を加えても,所定数量のロール製造がなされれば,これまで以上のコストダウン効果も期待できる。
【0089】
以上のように,本実施形態にかかる製造方法によれば,優れた耐摩耗性,耐ヒートクラック性,耐焼き付き性,耐肌荒れ性,強靱性等を兼備した高性能ロールを,安価かつ容易に供給することができる。また,ロール性能の向上により,H型鋼10等の圧延製品の品質改善に大幅に寄与する効果もある。
【0090】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0091】
例えば,上記実施形態では,外層と内層とからなる複合スリーブロールを製造する例について説明したが,本発明は,かかる例に限定されず,上記ハイス形成分からなる単層スリーブロールを製造する場合にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は,H型鋼等の被圧延材の圧延に用いられる圧延用スリーブロールの製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールを用いたH型鋼の圧延状態を示す断面図である。
【図2A】同実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の鋳造工程を示す工程図である。
【図2B】同実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の切断工程を示す工程図である。
【図2C】同実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の表層鍛造工程を示す工程図である。
【図2D】同実施形態にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法の型鍛造工程を示す工程図である。
【図3】本発明の実施例にかかるH型鋼圧延用鍛造スリーブロールを示す平面図(a)および断面図(b)である。
【図4】従来の圧延用スリーブロールの製造方法において圧延用スリーブロールの余肉部を除去する態様を示す断面図である。
【符号の説明】
【0094】
10 H型鋼
12 ウェブ
14 フランジ
14a フランジ内側面
14b フランジ外側面
20 ロール軸
30 H型鋼圧延用鍛造スリーブロール
32 圧延部
32a 圧延部側面
32b 圧延部外周面
34 袴部
50 円筒状中空素材の
52 円筒状中空素材の外周部分
62 台座
64 台座の凹部
66 表層鍛造用アンビル
70 金型
74 金型の凹部
A H型鋼圧延用鍛造スリーブロールの使用面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
H型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法であって:
ハイス系成分からなる溶湯を用いて,遠心鋳造法により円筒状中空素材を鋳造する鋳造工程と;
前記円筒状中空素材に対し,前記スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に表層鍛造する表層鍛造工程と;
前記表層鍛造後の円筒状中空素材に対し,前記スリーブロールの使用面となる径方向外周部分のみを,当該円筒状中空素材の軸方向に型鍛造する型鍛造工程と;
を含むことを特徴とする,H型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法。
【請求項2】
前記鋳造工程は,
前記ハイス系成分からなる溶湯で鋳造された円筒状中空素材の内周面に,黒鉛鋳鋼またはダクタイル鋳鉄からなる溶湯を遠心鋳造して溶着させ,複合円筒状中空素材を形成する工程を含むことを特徴とする,請求項1に記載のH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法。
【請求項3】
前記鋳造工程後に,前記鋳造された円筒状中空素材を当該円筒状中空素材の軸に対して垂直方向に切断し,当該軸方向に所定の長さとする切断工程をさらに含み,
前記表層鍛造工程では,前記切断された円筒状中空素材を表層鍛造することを特徴とする,請求項1または2に記載のH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法。
【請求項4】
前記表層鍛造工程では,
前記円筒状中空素材の前記径方向外周部分を,周方向に沿って一部重複しながら順次,部分的に表層鍛造することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載のH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法。
【請求項5】
前記ハイス系成分からなる溶湯は,質量%で,
C:1.0〜3.5%,
Si:0.2〜2.4%,
Mn:0.2〜2.0%,
Cr:3.0〜10.0%,
V:4.5〜10.0%,及び,
Mo,Wの1種以上:0.2〜10.0%
を含有し,
残部がFeからなることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載のH型鋼圧延用鍛造スリーブロールの製造方法。




【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−297427(P2006−297427A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120207(P2005−120207)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(502227767)日鉄住金ロールズ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】