説明

ICカード誤挿入防止機構、および、それを備えるICカード用コネクタ

【課題】複数のICカードの誤ったカード収容部への挿入を回避するとともに、逆差し等の誤った挿入操作も確実に回避する、ICカード誤挿入防止機構、およびそれを備えるICカード用コネクタを提供する。
【解決手段】カード収容部14に配される誤挿入防止機構の一部を構成する誤挿入規制部材22は、両端に軸部22SL,22SRをそれぞれ有するとともに、軸部22SLと軸部22SRを連結する連結部22tを中央に有し、当接面22tにおける左端の一部に所定の高さを有する突起部22Pが形成されており、MMCマイクロカードが正規の挿入孔操作の場合、にはMMCマイクロカードの先端部が干渉せず、MMCマイクロカードの裏差しまたは逆差しの場合に先端の角が干渉して誤挿入を規制する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカード誤挿入防止機構、および、それを複合のカード収容部内に備えるICカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、一般に、MMC(multi media card)カード(商標)、SD(secure digital)カード等のICカードをその各機器にICカードコネクタを介して装着することにより、各種の機能拡張が行なわれている。
【0003】
また、ICカードコネクタにおいては、互いに形状の異なる複数のICカードを一つの電子機器内に装着し利用するために例えば、特許文献1および特許文献2にも示されるように、各ICカードの共通のカードスロットを有し、各ICカードが1枚づつ選択的に着脱される複合のカード収容部を設けたものが実用に供されている。
【0004】
このような複合のカード収容部を有するICカードコネクタにおいては、各カード収容部は、その一部を互いに重複するようにICカードの着脱方向に沿って階層的に形成されている。各カード収容部には、各ICカードのコンタクトパッドに対応したコンタクト端子群がそれぞれ個別に設けられている。
【0005】
斯かる構成においては、所定のICカードの正規のカード収容部とは異なる他のカード収容部への使用者による誤った挿入操作の回避、あるいは、挿入操作のとき、そのICカードによって利用されないコンタクト端子群の損傷を回避しつつ、ICカードの円滑な着脱を可能とすることが必要とされる。
【0006】
この必要な対策として、例えば、特許文献1および2にも示されるように、所定のICカードの誤ったカード収容部への挿入操作を規制する誤挿入規制部材を含む誤挿入防止機構を、共通のカードスロット近傍の内部に備えるものが提案されている。
【0007】
誤挿入防止機構は、例えば、複数のICカードのうちの第1のICカードに比べて比較的横幅の狭い第2のICカードの第1のICカード用のカード収容部への誤った挿入操作を規制する誤挿入規制部材と、第2のICカードの誤った挿入を規制する第1の状態(ロック状態)と、比較的横幅の広い第1のICカードの挿入を可能とする第2の状態(アンロック状態)とを誤挿入規制部材にとらせるロック/アンロック機構と、誤挿入規制部材をカード挿入方向とは反対方向に付勢する付勢部材とを含んで構成されている。
【0008】
その誤挿入規制部材は、各ICカードの着脱方向に対し略直交しカード収容部のカードスロット側の端部を横切り跨るように延在している。誤挿入規制部材の下方には、上述の第1の状態のとき、第2のICカードが通過し得る狭い開口が形成されている。誤挿入規制部材の両端部は、それぞれ、移動可能にカード収容部の周辺に支持されるとともに、上述のロック/アンロック機構におけるロック用部材の係合部に選択的に係合可能とされる構成を有している。ロック用部材の係合部は、弾性変位可能とされる。
【0009】
斯かる構成において、誤挿入規制部材は、その両端部がそれぞれロック用部材の係合部に係合される場合、上述の第1の状態にロック状態とされる。即ち、ロック状態とされる誤挿入規制部材により、第2のICカードの第1のICカード用のカード収容部への挿入操作が規制されることとなる。これにより、第2のICカードは、誤挿入規制部材の下方の狭い開口を通じて所定のカード収容部に装着されることとなる。
【0010】
一方、第1のICカードが装着される場合、そのICカードの先端がカードスロットを通過した直後に、挿入されるICカードの両側部により、それぞれロック用部材が押圧されることにより、誤挿入規制部材の両端部がそれぞれロック用部材の係合部に対し非係合状態とされる。
【0011】
これにより、誤挿入規制部材はロック状態からアンロック状態とされ、さらにICカードが上述の付勢部材の付勢力に抗して押し込まれることによって、例えば、その誤挿入規制部材がICカードの通路から離隔し待機するように移動されるとともに、第1のICカードが誤挿入規制部材の上方を通過して第1のICカード用のカード収容部に装着されることとなる。
【0012】
ICカードコネクタにおいて、使用者により各ICカードが、コンタクトパッドが設けられていない端部側を進行方向に向けてその端部からカード収容部に誤って挿入される場合、所謂、ICカードの逆差しが行なわれる場合がある。
【0013】
このような場合における対策としては、例えば、特許文献3にも示されるように、その内部に突出する突起片がカード収容部の一部を形成するカバー部材に設けられるものが提案されている。その突起片が設けられる位置は、例えば、ICカードが正規の挿入方向で挿入される場合、その突起片がICカードの端部に干渉しない位置とされ、一方、ICカードの逆差しの場合、コンタクト端子の接点の配置位置よりもカードスロット側に近い位置であってその突起片がICカードの端部に干渉するような位置に設定されている。これにより、誤って逆差しされたICカードの端部が突起片に当接することによってICカードの逆差しによるコンタクト端子の損傷が回避されることとなる。
【0014】
【特許文献1】特開2004−311416号公報
【特許文献2】特開2004−193111号公報
【特許文献3】特開2003−31286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、仮に、第1のICカードの逆差し等の誤った挿入操作の回避対策として上述のような突起片がカバー部材に設けられた場合であっても、第2のICカードの逆差しによるコンタクト端子の損傷ついては回避できない虞がある。斯かる場合の対策としては、第2のICカード用のイジェクト機構が備えられる場合にあっては、逆差しの場合、イジェクト機構におけるイジェクト部材のカード受け部に第2のICカードの端部の角部が係合しないように、カード受け部の形状を形成することにより、逆差しを規制することも考えられるが、第2のICカードの両端部の角部の形状がそれぞれ互いに類似した形状であるとき、その判別が困難となる虞があるので得策とは言えない。
【0016】
以上の問題点を考慮し、本発明は、ICカード誤挿入防止機構、およびそれを複合のカード収容部内に備えるICカード用コネクタであって、複数のICカードの誤ったカード収容部への挿入を回避するとともに、逆差し等の誤った挿入操作も確実に回避できるICカード誤挿入防止機構、および、それを備えるICカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述の目的を達成するために、本発明に係るICカード誤挿入防止機構は、互いに形状の異なる複数のICカードの着脱方向に対し横切る方向に延在し回動可能にICカード収容部に支持され、複数のICカードのうちの第1のICカードがICカード収容部に装着されるとき、第1のICカードの進行方向の端部が一方向に向くように第1のICカードの進行方向の端部を誘導する第1の位置の状態をとり、複数のICカードのうちの第2のICカードがICカード収容部に装着されるとき、第1の位置の状態から回動され、第2のICカードの進行方向の端部が他方向に向かうように誘導する第2の位置の状態をとる誤挿入規制部材と、誤挿入規制部材を複数のICカードの排出方向に付勢する付勢部材と、誤挿入規制部材の両端に形成される係合部に係合される開口部を有する弾性変位可能な可動片をそれぞれ有し、第1のICカードがICカード収容部に装着されるとき、誤挿入規制部材の第1の位置を選択的に維持する一対のロック部材と、を備え、誤挿入規制部材は、第2のICカードがICカード収容部に対し裏差し、または、逆差しされる場合、第2のICカードの裏差し、または、逆差しの挿入を規制する突起部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るICカード用コネクタは、互いに形状の異なる第1および第2のICカードのうちの一方のICカードが選択的に通過可能な共通のカードスロットを有するとともに、第1および第2のICカードの電極部を電気的に接続する複数種類のコンタクト端子群を有し、第1または第2のICカードを収容するICカード収容部と、上述のICカード誤挿入防止機構と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るICカード誤挿入防止機構、および、それを備えるICカード用コネクタによれば、誤挿入規制部材は、第2のICカードがICカード収容部に対し裏差し、または、逆差しされる場合、第2のICカードの裏差し、または、逆差しの挿入を規制する突起部を有するので複数のICカードの誤ったカード収容部への挿入を回避するとともに、逆差し等の誤った挿入操作も確実に回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図2は、本発明に係るICカード誤挿入防止機構を備えるICカード用コネクタの一例の外観を示す。
【0021】
図2に示されるICカード用コネクタは、所定の電子機器、例えば、携帯電話機、PDA、カメラ等の内部に配されるものとされる。
【0022】
図2に示されるICカード用コネクタは、例えば、そのカード収容部に着脱可能に収容されるICカードとしてのメモリカード、例えば、第1のICカードとしてのマイクロSDカード(商標)SMC、または、第2のICカードとしてのMMCマイクロカード(商標)SMC(図6参照)のうちのいずれかの電極部と所定の電子機器の内部に配される信号入出力用等の基板の接続端子部とを電気的に接続するものとされる。
【0023】
マイクロSDカードSMCの形状寸法は、縦、横、厚さがそれぞれ15mm、11mm、1.0mm程度とされ、また、MMCマイクロカードMMCの形状寸法は、縦、横、厚さがそれぞれ14mm、12mm、1.1mm程度とされる。
【0024】
なお、ICカードは、上述のマイクロSDカード等に限られることなく、互いに横幅の異なる二種類のMMC(multi media card)カード(商標)、フラッシュメモリまたは超小型のハードディスクを内蔵したメモリカード、SIM(subscriber identity module)カード等のいずれかの中から選択されるものであってもよい。
【0025】
ICカード用コネクタは、図3および図4に示されるように、収容されるマイクロSDカードSMCまたはMMCマイクロカードMMCに対する電気的接続を行う複数のコンタクト端子等が配列されるベース部材12と、ベース部材12と協働して各カードの複合の収容部を形成するカバー部材10とを含んで構成されている。
【0026】
門形状断面形状を有するカバー部材10は、薄板の金属材料で形成されている。カバー部材10の一方の側面部には、図8に示されるように、後述するベース部材12の爪部がそれぞれ、係合される係合孔10e,10f,10gおよび10hがその爪部に対応して形成されている。カバー部材10の他方の側面部には、後述するベース部材12の爪部がそれぞれ、係合される複数の係合孔(不図示)が形成されている。
【0027】
従って、カバー部材10は、その各係合孔10e〜10h等と、ベース部材12の各爪部とがそれぞれ係合されることにより、ベース部材12に対し固定されることとなる。
【0028】
また、図2に示されるように、カバー部材10の両側面部を連結する上面部における一方の側面部側には、後述するイジェクト機構24におけるカムレバー24Lを移動可能に支持する押さえバネ10fcが設けられている。弾性を有する押さえバネ10fの基端部は、カバー部材10に一体に形成されている。押さえバネ10fは、例えば、カバー部材10の一部がプレス加工によりその内側に向けて打ち抜かれて形成されている。従って、カバー部材10における押さえバネ10fに対応する部分の周囲には、開口10bが形成されている。
【0029】
ベース部材12におけるカード収容部14は、図3に示されるように、上方、および後述するコンタクト端子固定部側とは反対側の端部が、開口している。カード収容部14は、その上方側部分に、マイクロSDカードSMC(図12参照)が収容され、その下方側部分にその一部重複してMMCマイクロカードMMC(図6参照)が収容されるような複合的なカード収容部とされる。
【0030】
従って、上述のカバー部材10によりベース部材12が覆われることにより、カード収容部14の一方の端部にマイクロSDカードSMCおよびMMCマイクロカードMMCのうちの一方が選択的に通過される共通のカードスロットが形成されることとなる。
【0031】
その共通のカードスロットとしての開口端部は、図4に示されるように、挿入されるマイクロSDカードSMCおよびMMCマイクロカードMMCの形状に対応したT形溝のような形状を有する横断面を有している。
【0032】
そのT形溝のような開口端部は、略長方形横断面を有し、MMCマイクロカードMMCが通過する第1の案内部12Saと、第1の案内部12Saの上部に連なって形成され、マイクロSDカードSMCが通過する第2の案内部12Sbとにより形成されている。
【0033】
第2の案内部12Sbの横幅は、挿入されるマイクロSDカードSMCの両側部に対し所定の隙間を形成するようにその下方に形成される第1の案内部12Saの横幅よりも小に設定されている。また、第1の案内部12Saの横幅は、挿入されるMMCマイクロカードMMCの両側部に対し所定の隙間を形成するように設定されている。
【0034】
これにより、マイクロSDカードSMCおよびMMCマイクロカードMMCの進行方向側の端部は、それぞれ、第2の案内部12Sbおよび第1の案内部12Saに案内されて通過することとなる。
【0035】
従って、MMCマイクロカードMMCの先端部が、誤って第2の案内部12Sbに誘い込まれる虞がない。
【0036】
ベース部材12は、例えば、成形樹脂材料で一体に成形されている。ベース部材12は、図6に示されるように、マイクロSDカードSMCおよびMMCマイクロカードMMCが着脱可能に収容されるカード収容部14の両側部をそれぞれ形成する側壁12RW、12LWと、MMCマイクロカードMMC用のコンタクト端子18ai(i=1〜10)、マイクロSDカードSMC用のコンタクト端子16ai(i=1〜8)が固定されるコンタクト端子固定壁部12FWとを含んで構成されている。
【0037】
側壁12LWの外面には、図3に示されるように、上述のカバー部材10の係合孔10e〜10hに対応して爪部12e,12f、12g、および12hが形成されている。側壁12RWの外面にも、同様な爪部が上述のカバー部材10の係合孔に対応して複数箇所に爪部12a,12b,12c,および12dが形成されている。
【0038】
例えば、複数のコンタクト端子16aiは、図6に示されるように、所定の相互間隔で側壁12RW,12LWに対して略平行に、カード収容部14におけるコンタクト端子固定壁部12FWに近い部分に配列されている。また、複数のコンタクト端子18aiは、所定の相互間隔で側壁12RW,12LWに対して略平行に、カード収容部14におけるカードスロットに近い位置に配列されている。
【0039】
コンタクト端子16aiは、弾性を有しマイクロSDカードSMCのコンタクトパッドに当接し電気的に接続される接点部と、配線基板(不図示)の電極部に半田付け固定され電気的に接続される半田付端子部と、その接点部と半田付端子部とを相互に連結し、ベース部材12に固定される固定部とを含んで構成されている。薄板金属材料、例えば、バネ用燐青銅で作られるコンタクト端子16aiの固定部は、図示が省略されるが、コンタクト端子固定壁部12FWに形成される溝に、コンタクト端子固定壁部12FWに形成される透孔を通じてマイクロSDカードSMCの挿入方向とは反対方向の側から圧入されることにより、ベース部材12に固定されている。
【0040】
コンタクト端子18aiは、弾性を有しMMCマイクロカードMMCのコンタクトパッドに当接し電気的に接続される接点部と、上述の配線基板の電極部に半田付け固定され電気的に接続される半田付端子部と、その接点部と半田付端子部とを相互に連結し、ベース部材12に固定される固定部とを含んで構成されている。コンタクト端子18aiの固定部は、図示が省略されるカード収容部14の底部に形成される溝に、MMCマイクロカードMMCの挿入方向側から圧入されることにより、ベース部材12に固定されている。
【0041】
コンタクト端子18aiの上方には、挿入されたマイクロSDカードSMCをコンタクト端子16aiに向けて案内する仕切板30が設けられている。仕切板30の両端は、それぞれ折り曲げられ、側壁12RWおよび12LWの内側に支持されている。このように仕切板30がカード収容部14の側壁12RWおよび12LWを跨ぐように配置されるのでベース部材12の曲げ剛性も高められる。仕切板30の表面には、複数個のダボ30aが所定の間隔をもって形成されている。ダボ30aは、マイクロSDカードSMCのコンタクトパッドが仕切板30の表面に接触しないようにするものとされる。
【0042】
また、コンタクト端子16aiおよび18aiの半田付端子部は、図3に示されるように、それぞれ、コンタクト端子固定壁部12FWの孔を通じて外部に向けて突出している。
【0043】
側壁12RWの内側部分には、図3に示されるように、マイクロSDカードSMCをカード収容部14に保持するとともに、カード収容部14からマイクロSDカードSMCを選択的に排出するイジェクト機構24が設けられている。
【0044】
イジェクト機構24は、ベース部材12に対し移動可能に支持され、マイクロSDカードSMCを選択的に保持するイジェクト部材24Jと、ベース部材12のコンタクト端子固定壁部12FWおよびイジェクト部材24J相互間に介装され、イジェクト部材24JをマイクロSDカードSMCの排出方向に付勢するコイルスプリング24Sと、マイクロSDカードSMCの着脱操作に応じてイジェクト部材24Jを選択的にベース部材12に対し保持または解放する制御を行うイジェクト部材制御部と、を含んで構成されている。
【0045】
イジェクト部材24Jは、図12に示されるように、マイクロSDカードSMCにおける端面が当接した状態でマイクロSDカードSMCを保持するアーム部を有しベース部材12に対して摺動可能に支持されている。その略長方形のアーム部は、マイクロSDカードSMCの着脱方向に対し略直交する方向に沿ってカード収容部14内に突出するように延びている。アーム部の上面部には、その下面部に形成される切欠部に対向して凸部24Pが形成されている。突起部24Pは、その切欠部によりアーム部の強度が低下しないように補強するものとされる。
【0046】
イジェクト部材制御部は、特開2004−311416号公報にも示されるようなイジェクト部材24Jにおける側壁12RW側に形成された略ハート形状のカム要素(ハートカム)と、ハートカムの周囲に形成された複数の段差部からなるレバー案内溝と、一方の端部が側壁12RWの孔に連結され、他方の端部がレバー案内溝に沿って摺動せしめられる門形状のカムレバー24Lと、上述のカバー部材10の押えバネ10f(図2参照)とを含んで構成されている。
【0047】
押えバネ10fは、カムレバー24Lの屈曲された先端をレバー案内溝の案内面に対し摺接するように付勢するものとされる。これにより、カムレバー24Lの一端部が、イジェクト部材24Jの動作に追従してレバー案内溝を構成する各案内溝を順次、経由して案内され、ハートカムに形成されるカム面に一旦、保持されることによって、マイクロSDカードSMCを伴うイジェクト部材24Jがカード収容部14内に保持されることとなる。そして、マイクロSDカードSMCのさらなる上述の挿入方向に沿った押し込み操作により、そのカムレバー24Lの一端部が、カム面から離隔されるとき、マイクロSDカードSMCを伴うイジェクト部材24Jがコイルスプリング24Sの付勢力によりカード排出方向に移動せしめられる。
【0048】
また、イジェクト部材24Jには、図6に示されるように、挿入されたMMCマイクロカードMMCを選択的に保持するイジェクト部材24JSが一体に形成されている。イジェクト部材24JSは、イジェクト部材24Jの位置よりも所定距離だけカードスロット側に近い位置にイジェクト部材24Jに対し略平行に配置されている。また、イジェクト部材24JSは、イジェクト部材24Jの位置より若干低い位置に配されている。これにより、MMCマイクロカードMMCも上述のイジェクト機構24により同様な動作で着脱可能とされ、カード装着方向またはカード排出方向に移動せしめられる。
【0049】
側壁12LWにおけるイジェクト機構24に相対向した部分には、マイクロSDカードSMCの装着の有無を検出する検出スイッチ38が設けられている。
【0050】
さらに、カード収容部14における側壁12RW、12LWの内側には、カード誤挿入防止機構が設けられている。カード誤挿入防止機構は、図12に示されるように、挿入されるマイクロSDカードSMCの進行方向の端部が当接することにより、MMCマイクロカードMMCのコンタクト端子18ai側への誤った侵入を規制するとともに、マイクロSDカードSMCをコンタクト端子16aiが配置される所定のカード収容部に案内する誤挿入規制部材22と、誤挿入規制部材22をロック状態、またはアンロック状態とする一対のロック部材28R、28Lと(図15(A)〜15(C)参照)、誤挿入規制部材22を一方向に付勢する一対のねじりコイルバネ32と、を含んで構成されている。
【0051】
クランクのように形成される誤挿入規制部材22は、図1および図5に拡大されて示されるように、両端に軸部22SL、22SRをそれぞれ有するとともに、軸部22SLと軸部22SRとを連結する連結部22Tを中央部に有している。
【0052】
円柱状の軸部22SL、22SRは、それぞれ、ベース部材12のカード収容部14内に形成される軸受部に回動可能に支持されている。また、軸部22SL、22SRの半径方向の移動は、図13に示されるように、それぞれ、後述するねじりコイルバネ32がベース部材12に固定されるより規制されている。軸部22SL、22SRの外周部には、それぞれ、ねじりコイルバネ32が巻装されている。各ねじりコイルバネ32の一端は、誤挿入規制部材22の端部に係止され、また、各ねじりコイルバネ32の他端は、ベース部材12の側壁に係止されている。
【0053】
これにより、誤挿入規制部材22は、図1に示される矢印の示す方向とは反対方向、即ち、軸部22SL、22SRを中心として図1において時計回り方向に付勢されることとなる。
【0054】
連結部22Tは、マイクロSDカードSMCの進行方向の先端を案内誘導する窪み22aを有している。窪み22aを形成する周縁における長手方向の一方の端部に、挿入されるマイクロSDカードSMCまたはMMCマイクロカードMMCの端部が当接する当接面22tを有している。図1および図5において、当接面22tにおける左端の一部には、所定の高さを有する突起部22Pが形成されている。
【0055】
突起部22Pは、後述するように、MMCマイクロカードMMCの誤った裏差し操作、または、逆差し操作を規制するものとされる。突起部22Pの高さは、図1において時計回り方向に約90°回転したとき、図8に示されるように、裏差し操作、または、逆差し操作のとき、突起部22Pの先端が通過するMMCマイクロカードMMCの端部に干渉する程度の高さに設定されている。また、突起部22Pの位置は、図6に示されるように、MMCマイクロカードMMCの正規の挿入操作の場合、MMCマイクロカードMMCの先端部が干渉せず、側方を通過し得る位置とされ、一方、MMCマイクロカードMMCの裏差し操作、または、逆差し操作のとき、MMCマイクロカードMMCの先端部の角が干渉する位置に設定されている。
【0056】
軸部22SL、22SRがそれぞれ連結される連結部22Tの両端には、後述するロック部材28R、28Lの可動片28Rmおよび28Lmの開口部28Hの周縁部にそれぞれ、係止される切欠部22Nが形成されている。切欠部22Nは、上述の連結部22Tにおける当接面22tに対向する端面側に開口している。
【0057】
従って、可動片28Rmおよび28Lmの開口部28Hの周縁部に係合される鉤状の係合部22ERおよび22ELが、それぞれ、連結部22Tの両端に形成されることとなる。
【0058】
一対のロック部材28R、28Lは、互いに同一の構造を有するのでロック部材28Rについて説明し、ロック部材28Lの説明を省略する。ロック部材28R、28Lは、それぞれ、図15(A)に示されるように、ベース部材12の底面部の外面に形成される溝12G内に配されている。各溝12Gは、コンタクト端子18aiに対応して形成されるスリット12Si(i=1〜10)の配列の両脇であって側壁12RW、12LWの真下となる位置に形成されている。
【0059】
ロック部材28Rは、図15(C)に拡大されて示されるように、溝12Gの内側に直線状に形成される溝12gに圧入される固定片28Rfと、固定片28Rfの一端に一体に形成される可動片28Rmとを含んで構成されている。
【0060】
可動片28Rmにおける固定片28Rfの一端に連なる部分には、弾性変位可能な湾曲部が、マイクロSDカードSMCの側部が通過する部分に切欠部12gaを介して張り出すように形成されている。切欠部12gaは、溝12Gの内部とカード収容部14の内部とを連通させるように形成されている。ロック部材28Rの湾曲部と相対向するロック部材28Lの湾曲部との相互間距離は、マイクロSDカードSMCの横幅寸法よりも若干大なる寸法であって、MMCマイクロカードMMCの横幅寸法よりも小なる寸法とされる。
【0061】
可動片28Rmの一端には、上述の誤挿入規制部材22の係合部22ERが挿入される矩形状の開口部28Hが形成されている。開口部28Hの周縁と係合部22ERの外周部との間には、可動片28Rmの一端が移動し得るような所定の隙間が形成されている。
【0062】
これにより、MMCマイクロカードMMCの側部がロック部材28Rの湾曲部と相対向するロック部材28Lの湾曲部との間を通過する場合、各湾曲部がMMCマイクロカードMMCの両側部によりそれぞれ押圧されるので可動片28Rmの開口部28Hは、誤挿入規制部材22の係合部22ERに対し離隔することとなる。従って、ロック部材28R、28Lは、誤挿入規制部材22を回動可能となるようにアンロック状態にする。
【0063】
一方、ロック部材28Rの湾曲部と相対向するロック部材28Lの湾曲部とを押圧する状態から非押圧状態とされる場合、例えば、MMCマイクロカードMMCがカード収容部14から排出された場合、可動片28Rmは、その湾曲部の復元力により、上述の初期の位置に戻り、開口部28Hは、ねじりコイルバネ32の付勢力により付勢され回動された誤挿入規制部材22の係合部22ERに対し再び挿入されることとなる。従って、ロック部材28R、28Lは、誤挿入規制部材22を再び、初期状態のようにロック状態とすることとなる。
【0064】
斯かる構成において、SDマイクロカードSMCがカード収容部14の正規の位置に装着される場合、図12および図13に示されるように、挿入されたSDマイクロカードSMCの先端が、カードスロットの案内部12Sbおよびロック部材28Rの湾曲部と相対向するロック部材28Lの湾曲部との相互間を通過し、図14に示されるように、誤挿入規制部材22の連結部22Tの窪み22aを通過して正規の仕切板30の上方のカード収容部の部位に導入されることとなる。その際、上述のイジェクト部材24Jにより所定位置に保持されることとなる。
【0065】
一方、SDマイクロカードSMCがカード収容部14から取り出される場合、SDマイクロカードSMCがイジェクト部材24Jに当接した状態でさらに若干押し込まれることにより、イジェクト機構のコイルスプリング24Sの付勢力により、イジェクト部材24JとともにSDマイクロカードSMCが排出方向に移動せしめられる。
【0066】
また、仮に、SDマイクロカードSMCが誤ってコンタクトパッドが形成されていない端部が進行方向に向けられて挿入された、所謂、逆差しの場合、あるいは、図12に二点鎖線で示されるように、裏差しの場合、SDマイクロカードSMCの端部が上述のカバー部材10の突起片10Sに当接することにより、その誤った挿入操作が規制されることとなる。
【0067】
さらに、例えば、図15(A)、図15(B)に示されるように、先ず、その進行方向の端部が誤挿入規制部材22の当接面22tに当接し、その進行方向の端部の左側側部がロック部材28Lの湾曲部を押圧したとき、上述したように、可動片28Lmが誤挿入規制部材22の係合部22ELから離隔され、誤挿入規制部材22は、アンロック状態とされる。
【0068】
次に、アンロック状態とされた誤挿入規制部材22の当接面22tが、SDマイクロカードSMCにおける進行方向の端部でねじりコイルバネ32の付勢力に抗してさらに押圧されるとき、ねじりコイルバネ32の付勢力と可動片28Lmの復元力とが釣り合い、図16(B)に示されるように、開口部28Hに対して離脱した誤挿入規制部材22の係合部22ELの端面が可動片28Lmに当接した状態で保持されることとなる。その際、誤挿入規制部材22の係合部22ERは、その切欠部22Nの一部が開口部28Hの周縁に嵌まるように図9に実線で示される状態から二点鎖線で示される状態に軸部22SRの中心軸線を中心として回転せしめられる。従って、図15(C)に示されるように、係合部22ERはアンロック状態とはならないので誤挿入規制部材22は、SDマイクロカードSMCにおける下方のカード収容部への誤った挿入操作を阻止することとなる。
【0069】
続いて、図16(A)に示されるように、SDマイクロカードSMCにおける進行方向の端部が誤挿入規制部材22の当接面22tに当接した状態で、その進行方向の端部の右側側部がロック部材28Rの湾曲部を押圧したとき、上述したように、誤挿入規制部材22の係合部22ERは、その切欠部22Nの一部が開口部28Hの周縁に嵌まるように回転せしめられているので誤挿入規制部材22の係合部22ERが、図16(C)に示されるように、ロック部材28Rの開口部28Hに対してロック状態が維持され、アンロック状態とはならない。従って、誤挿入規制部材22は、SDマイクロカードSMCの挿入操作を阻止することとなる。
【0070】
そして、SDマイクロカードSMCにおける進行方向の端部が誤挿入規制部材22の当接面22tに対しカード排出方向に離隔したとき、誤挿入規制部材22の係合部22ELは、コイルバネ32の付勢力により初期位置に戻されることにより、その係合部22ELは、ロック部材28Lの開口部28Hに対してロック状態に戻ることとなる。
【0071】
マイクロMMCカードMMCがカード収容部14に装着される場合、図6に示されるように、カードスロットを通過するマイクロMMCカードMMCの先端部により、ロック部材28Rの湾曲部と相対向するロック部材28Lの湾曲部とが互いに離隔する方向に押圧されることとなる。これにより、可動片28Rmおよび可動片28Lmの開口部28Hが、それぞれ、誤挿入規制部材22の係合部22ERおよび22ELに対し離隔せしめられる。従って、誤挿入規制部材22は、アンロック状態とされる。
【0072】
次に、マイクロMMCカードMMCの先端部がさらに進行方向に沿って挿入されることにより、マイクロMMCカードMMCの先端部が誤挿入規制部材22の当接面22tに当接した状態で誤挿入規制部材22がねじりコイルバネ32の付勢力に抗して回動されることにより、図6に実線で示されるように、誤挿入規制部材22および仕切板30の真下を通過してイジェクト部材24JSにより所定位置に保持されることとなる。
【0073】
一方、マイクロMMCカードMMCがカード収容部14から取り出される場合、マイクロMMCカードMMCがさらに若干押し込まれることにより、イジェクト機構のコイルスプリング24Sの付勢力により、イジェクト部材24JSとともにマイクロMMCカードMMCが排出方向に移動せしめられる。その際、誤挿入規制部材22がねじりコイルバネ32の付勢力により、カードスロット側に向けて回動されるとともに、ロック部材28Rの可動片28Rmの開口部28Hと相対向するロック部材28Lの可動片Lmの開口部28Hが、その復元力により、係合部22ERおよび22ELに対向する位置に戻り、挿入される。これにより、誤挿入規制部材22が再び、初期のロック状態に戻される。
【0074】
また、図6に二点鎖線で示されるように、マイクロMMCカードMMCが誤って裏差しされた場合、マイクロMMCカードMMCの先端が回動された誤挿入規制部材22の突起部22Pに当接することにより、誤った裏差し挿入操作が規制されることとなる。
【0075】
さらに、図10および図11に示されるように、マイクロMMCカードMMCが誤って逆差しされた場合、マイクロMMCカードMMCの端部が回動された誤挿入規制部材22の突起部22Pに当接することにより、誤った逆差し挿入操作が規制されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るICカード誤挿入防止機構を備えるICカード用コネクタの一例に用いられる誤挿入規制部材を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るICカード誤挿入防止機構を備えるICカード用コネクタの一例の外観を示す平面図である。
【図3】図2に示される例においてカバー部材を取り外した状態を示す平面図である。
【図4】図2に示される例における正面図である。
【図5】本発明に係るICカード誤挿入防止機構を備えるICカード用コネクタの一例に用いられる誤挿入規制部材を示す斜視図である。
【図6】図2に示される例における動作説明に供される平面図である。
【図7】図2に示される例における動作説明に供される正面図である。
【図8】図2に示される例における動作説明に供される斜視図である。
【図9】図2に示される例における動作説明に供される図である。
【図10】図2に示される例における動作説明に供される平面図である。
【図11】図10に示される状態を示す斜視図である。
【図12】図2に示される例における動作説明に供される平面図である。
【図13】図12に示される状態を示す斜視図である。
【図14】図12に示される状態を示す正面図である。
【図15】(A)は、図2に示される例における動作説明に供される平面図であり、(B)、および(C)は、それぞれ、図15(A)における部分拡大図である。
【図16】(A)は、図2に示される例における動作説明に供される平面図であり、(B)、および(C)は、それぞれ、図16(A)における部分拡大図である。
【符号の説明】
【0077】
10 カバー部材
10S 突起片
14 カード収容部
16ai、18ai コンタクト端子
22 誤挿入規制部材
22P 突起部
22a 窪み
22t 当接面
28R、28L ロック部材
32 ねじりコイルバネ
SMC マイクロSDカード
MMC MMCマイクロカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに形状の異なる複数のICカードの着脱方向に対し横切る方向に延在し回動可能にICカード収容部に支持され、該複数のICカードのうちの第1のICカードが該ICカード収容部に装着されるとき、該第1のICカードの進行方向の端部が一方向に向くように該第1のICカードの進行方向の端部を誘導する第1の位置の状態をとり、該複数のICカードのうちの第2のICカードが該ICカード収容部に装着されるとき、該第1の位置の状態から回動され、該第2のICカードの進行方向の端部が他方向に向かうように誘導する第2の位置の状態をとる誤挿入規制部材と、
前記誤挿入規制部材を前記複数のICカードの排出方向に付勢する付勢部材と、
前記誤挿入規制部材の両端に形成される係合部に係合される開口部を有する弾性変位可能な可動片をそれぞれ有し、前記第1のICカードが該ICカード収容部に装着されるとき、該誤挿入規制部材の第1の位置を選択的に維持する一対のロック部材と、を備え、
前記誤挿入規制部材は、前記第2のICカードが前記ICカード収容部に対し裏差し、または、逆差しされる場合、該第2のICカードの裏差し、または、逆差しの挿入を規制する突起部を有することを特徴とするICカード誤挿入防止機構。
【請求項2】
前記ICカード収容部を覆うカバー部材は、前記第1のICカードの裏差し、または、逆差しの挿入を規制する突起部を有することを特徴とする請求項1記載のICカード誤挿入防止機構。
【請求項3】
互いに形状の異なる第1および第2のICカードのうちの一方のICカードが選択的に通過可能な共通のカードスロットを有するとともに、該第1および第2のICカードの電極部を電気的に接続する複数種類のコンタクト端子群を有し、該第1または第2のICカードを収容するICカード収容部と、
請求項1記載のICカード誤挿入防止機構と、
を具備して構成されるICカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−323944(P2007−323944A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152709(P2006−152709)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】