説明

III族窒化物半導体発光素子、発光装置およびディスプレイ装置

【課題】赤色光、青色光および緑色光を発光する発光装置の小型化を可能にできるIII族窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】III族窒化物半導体発光素子10は、第1〜第3の面11c〜11e、及び裏面11bを有する窒化ガリウム支持基体11と、第1及び第2の面11c、11d上にそれぞれ設けられた第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部12、13と、第3の面11e上に設けられた第3のIII族窒化物半導体積層部14とを備える。第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部12,13は、緑色光を発生する組成比のインジウムを含む活性層12b、13bを有する。第3のIII族窒化物半導体積層部14は、青色光を発生する組成比のインジウムを含む活性層14bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物半導体発光素子、発光装置およびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、赤色、緑色及び青色の光を発光する可視光LED装置及びその製造方法が記載されている。この装置は、青色LED用の基板上に順に形成された第1導電型半導体層及び第2導電型半導体層と、緑色LED用の基板上に順に形成された第2導電型半導体層及び第1導電型半導体層と、赤色LED用の基板上に順に形成された第2導電型半導体層及び第1導電型半導体層とを備えている。青色LEDの第2導電型半導体層の表面と、緑色LED用の基板とは、アニールを経て直接接合されている。また、緑色LEDの第1導電型半導体層の表面と赤色LEDの第1導電型半導体層の表面とは、アニールを経て直接接合されている。
【0003】
特許文献2には、窒化ガリウム系化合物半導体を利用した青色発光素子が記載されている。この素子は、n型AlGa1−aN(0≦a<1)層と、p型InGa1−XN(0<X<0.5)層と、p型AlGa1−bN(bは0≦b<1)層とが順に積層されて成る。
【0004】
特許文献3には、フルカラーLEDディスプレイが記載されている。このフルカラーLEDディスプレイは、表面に導電体層が形成されたプリント基板と、該プリント基板上に並んで載置された青色LEDチップ、緑色LEDチップ、及び赤色LEDチップとを備えている。そして、これらのLEDチップの全体をモールドすることにより一画素が構成されている。なお、青色LEDチップは、サファイア基板上に窒化ガリウム系化合物半導体が積層されて成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−213657号公報
【特許文献2】特開平6−209120号公報
【特許文献3】特開平7−288341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、赤色光、青色光および緑色光といった光の三原色をそれぞれ発光する複数の半導体素子を備える発光装置が開発されている。そして、このような発光装置をディスプレイの各画素に配置し、各画素の各半導体装置を任意の発光強度で発光させることによって、フルカラーのディスプレイ装置を好適に構成することができる(例えば特許文献3を参照)。
【0007】
そして、このようなディスプレイ装置には、より高精細な画像を表示する為に、各画素のサイズをより小さくすることが求められる。しかしながら、例えば特許文献3に記載された装置では、青色LEDチップ、緑色LEDチップ、及び赤色LEDチップといった3つのLEDチップが基板上に並んで実装されているので、装置を小型化することが難しい。具体的には、3つのLEDチップのうち並び方向の一端に位置するLEDチップの端面と、他端に位置するLEDチップの端面との間隔は少なくとも2mm〜3mm程度であり、したがってディスプレイ装置の各画素のピッチは4mm〜6mm、或いはこれより長くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、赤色光、青色光および緑色光を発光する発光装置の小型化を可能にできるIII族窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。また、本発明は、赤色光、青色光および緑色光を発光するとともに小型化が可能な発光装置、および該発光装置を複数備えるディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明によるIII族窒化物半導体発光素子は、第1〜第3の面を含む主面、及び裏面を有する六方晶系の窒化ガリウム支持基体と、窒化ガリウム支持基体の第1及び第2の面上にそれぞれ設けられた第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部と、窒化ガリウム支持基体の第3の面上に設けられた第3のIII族窒化物半導体積層部と、第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部上にそれぞれ設けられた第1〜第3の電極と、窒化ガリウム支持基体の裏面上に設けられた裏面電極とを有し、第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部それぞれが、第1〜第3の面それぞれの上に順に配置された第1導電型半導体層、活性層及び第2導電型半導体層を含んでおり、第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部の各活性層が、緑色光を発生する組成比のインジウムを含むIII族窒化物半導体層を含んでおり、第3のIII族窒化物半導体積層部の活性層が、青色光を発生する組成比のインジウムを含むIII族窒化物半導体層を含んでおり、第3の面が、窒化ガリウム支持基体の<000−1>軸の方向に向いており、第1及び第2の面が、第3の面に対して窒化ガリウム支持基体の裏面の方向に傾斜しており、第1の面の第1法線ベクトルと<000−1>軸の方向を示すベクトルCV−との成す第1の角度、及び第2の面の第2法線ベクトルとベクトルCV−との成す第2の角度が、+56度以上+80度未満の範囲にあり、窒化ガリウム支持基体が、所定の軸の方向に延在する一対の端面を有しており、第1及び第2の面それぞれが、一対の端面それぞれに沿って延在しており、第3の面が、第1の面と第2の面との間に設けられており、所定の軸が、第3の面の第3法線ベクトルと交差すると共に第3の面に沿って延びていることを特徴とする。
【0010】
このIII族窒化物半導体発光素子では、緑色光を発生する第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部が、窒化ガリウム支持基体の第1及び第2の面上にそれぞれ設けられている。また、青色光を発生する第3のIII族窒化物半導体積層部が、窒化ガリウム支持基体の第3の面上に設けられている。このように、一つの窒化ガリウム支持基体の面上に、緑色光を発生する半導体積層部と、青色光を発生する半導体積層部とが設けられているので、従来のように青色発光素子と緑色発光素子とを個別に設ける場合と比較して、実装に必要な寸法を小さくすることができる。したがって、発光装置が出力する赤色光、青色光および緑色光のうち青色光及び緑色光をこのIII族窒化物半導体発光素子に発光させることにより、発光装置を小型化することができる。
【0011】
また、上述したIII族窒化物半導体発光素子では、第1の面の第1法線ベクトルと<000−1>軸との成す第1の角度が上記の角度範囲にあり、また第2の面の第2法線ベクトルと<000−1>軸との成す第2の角度が上記の角度範囲にある。したがって、これら第1及び第2の面上には、緑色光を発生する為に好適な高In組成の活性層を成長させることができる。また、上述したIII族窒化物半導体発光素子では、第3の面が窒化ガリウム支持基体の<000−1>軸の方向に向いているので、この第3の面上には、青色光を発生する為に好適なIn組成の活性層を成長させることができる。
【0012】
また、III族窒化物半導体発光素子は、第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部の活性層のIII族窒化物半導体層がInGaN層を含むことを特徴としてもよい。上述したIII族窒化物半導体発光素子によれば、第1〜第3の面上に、結晶品質の良好なInGaNを成長させることができる。
【0013】
また、III族窒化物半導体発光素子は、第1法線ベクトル及び第2法線ベクトルが、第3法線ベクトルに対して窒化ガリウム支持基体のa軸及びm軸のいずれかの方向に傾斜していることを特徴としてもよい。第1及び第2の面は、例えばエッチングによって好適に形成される。その場合、第1及び第2の面の法線ベクトルが上記方向に傾斜していることによって、第1及び第2の面の傾斜角の制御を容易にできる。
【0014】
また、III族窒化物半導体発光素子は、第1及び第2の面が、{11−2−2}面又は{1−10−1}面を含むことを特徴としてもよい。第1及び第2の面は、例えば水酸化カリウムを含むエッチャントを使用したエッチングによって好適に形成される。そして、これらの面方位は、このようなエッチングの際に現れる典型的な面方位である。
【0015】
また、III族窒化物半導体発光素子は、第1及び第2の面が、{11−2−2}面又は{1−10−1}面から−5度以上+5度以下の範囲内にあることを特徴としてもよい。この範囲によれば、活性層の成長において、上記の個々の面方位と同様の結晶品質及びIn組成を提供できる。
【0016】
また、III族窒化物半導体発光素子は、第1及び第2の面が、窒化ガリウム支持基体のa軸又はm軸の方向に延在することを特徴としてもよい。これにより、エッチングにより第1及び第2の面を形成する際の傾斜角の制御を容易にできる。
【0017】
また、本発明による発光装置は、上述したいずれかのIII族窒化物半導体発光素子である第1の半導体発光素子と、赤色光を発光する第2の半導体発光素子とを備えることを特徴とする。この発光装置によれば、上述したいずれかのIII族窒化物半導体発光素子を備えることによって、発光素子の実装に必要な寸法を小さくすることができ、小型化が可能となる。
【0018】
また、本発明によるディスプレイ装置は、上記発光装置を複数備え、これら複数の発光装置が二次元状に配列されていることを特徴とする。このディスプレイ装置によれば、上記発光装置によって各画素を構成することができ、より高精細の画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、赤色光、青色光および緑色光を発光する発光装置の小型化を可能にできるIII族窒化物半導体発光素子を提供することができる。また、本発明によれば、赤色光、青色光および緑色光を発光するとともに小型化が可能な発光装置、および該発光装置を複数備えるディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子の一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿ったIII族窒化物半導体発光素子の断面図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、この作製方法における各工程を示す図である。
【図4】図4は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図5】図5は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図6】図6は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図7】図7は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図8】図8は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図9】図9は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図10】図10は、図9に示された工程において形成される窪みの形態を詳細に説明するための図である。
【図11】図11は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図12】図12は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図13】図13は、この作製方法における一工程を示す図である。(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【図14】図14は、第2実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。
【図15】図15は、図14に示されたIII−III線に沿った断面を示す図である。
【図16】図16は、半導体発光素子の構成の一例を示す正面図である。
【図17】図17は、第3実施形態に係るディスプレイ装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明によるIII族窒化物半導体発光素子、発光装置およびディスプレイ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係るIII族窒化物半導体発光素子の一実施形態の外観を示す斜視図である。また、図2は、図1のII−II線に沿ったIII族窒化物半導体発光素子の断面図である。なお、図1及び図2には、直交座標系Sが示されている。直交座標系SのZ軸は、窒化ガリウム支持基体11の<000−1>軸の方向に向いている。
【0023】
図1及び図2に示されるように、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子10は、六方晶系の窒化ガリウム支持基体11と、第1のIII族窒化物半導体積層部12と、第2のIII族窒化物半導体積層部13と、第3のIII族窒化物半導体積層部14と、第1の電極15と、第2の電極16と、第3の電極17と、裏面電極18とを備える。窒化ガリウム支持基体11は導電性を有する。窒化ガリウム支持基体11は、主面11a及び裏面11bを有する。主面11aは、第1〜第3の面11c、11d、11eを含む。主面11aにおいて第3の面11eは第1の面11cと第2の面11dとの間に設けられる。
【0024】
第1〜第3の面11c、11d、11eにおける法線の方向は、それぞれ、法線ベクトルNV1、NV2、NV3により示される。第1及び第2の面11c、11dは、第3の面11eに対して、窒化ガリウム支持基体11の裏面11bの方向に傾斜している。窒化ガリウム支持基体11は、X軸方向と交差すると共にY−Z面に沿って延在する一対の端面11h、11iと、X軸方向に延在する一対の端面11f、11gとを有する。第1及び第2の面11c、11dそれぞれは、一対の端面11f、11gそれぞれのエッジに沿って延在する。端面11f、11gは第3の面11eの延在方向に延びており、この延在方向は第3の面11eの法線ベクトルNV3と交差する。端面11f、11gは端面11h、11iに接続している。
【0025】
第3の面11eは、窒化ガリウム支持基体11の<000−1>軸の方向に向いており、図1においては<000−1>軸の方向はベクトル(CV−)で示される。本実施例では、裏面11bは、窒化ガリウム支持基体11の<0001>軸の方向に向いており、図1においては<0001>軸の方向はベクトル(CV+)で示される。
【0026】
第1の面11cの第1法線ベクトルNV1とベクトルCV−との成す第1の角度θは、+56度以上+80度未満の範囲にある。第2の面11dの第2法線ベクトルNV1とベクトルCV−との成す第2の角度θは、+56度以上+80度未満の範囲にある。この角度範囲では、第1の面11c、11dは例えば{11−2−2}面及び{1−10−1}面のいずれかを含むことが好適である。また、第1及び第2の面11c、11dは例えば{11−2−2}面及び{1−10−1}面のいずれかの面から−5度以上+5度以下の範囲内にあることが好適である。
【0027】
第1のIII族窒化物半導体積層部12は窒化ガリウム支持基体11の第1の面11c上に設けられており、第2のIII族窒化物半導体積層部13は窒化ガリウム支持基体11の第2の面11d上に設けられている。また、第3のIII族窒化物半導体積層部14は、窒化ガリウム支持基体11の第3の面11e上に設けられている。第1の電極15は第1のIII族窒化物半導体積層部12上に設けられており、第2の電極16は第2のIII族窒化物半導体積層部13上に設けられており、第3の電極17は第3のIII族窒化物半導体積層部14上に設けられている。裏面電極18は、窒化ガリウム支持基体11の裏面11b上に設けられている。
【0028】
第1のIII族窒化物半導体積層部12は、第1の面11c上に順に積層された第1導電型半導体層12a、活性層12b及び第2導電型半導体層12cを含む。第2のIII族窒化物半導体積層部13は、第2の面11d上に順に積層された第1導電型半導体層13a、活性層13b及び第2導電型半導体層13cを含む。第1導電型半導体層12a及び13aは窒化ガリウム系半導体からなり、例えばn型GaN、n型AlaGaN、n型InGaN、n型InAlGaN、n型InAlN等からなることができる。第2導電型半導体層12c及び13cは、窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型GaN、p型AlaGaN、p型InGaN、p型InAlGaN、p型InAlN等からなることができる。
【0029】
活性層12b及び13bは、例えば単一の半導体層から成ることができ、或いは、量子井戸構造(SQW、MQW)を有することができる。活性層12b及び13bは窒化ガリウム系半導体からなり、またインジウムを含むIII族窒化物からなる半導体層を含む。この半導体層は、InGaN層を含むことができ、そのIn組成比は緑色光を発光することができる値である。この半導体層のIn組成比は、約0.20以上であることができ、約0.35以下であることができる。そして、この半導体層の発光波長範囲は、500nm以上であることができ、530nm以下であることができる。なお、量子井戸構造の場合、障壁層は例えばGaN又はInGaN等からなることができる。
【0030】
第1の面11cの第1法線ベクトルNV1と<000−1>軸を示すベクトルCV−との成す第1の角度θが上記の角度範囲にあり、第2の面11dの第2法線ベクトルNV2とベクトルCV−との成す第2の角度θが上記の角度範囲にある。これらの第1及び第2の面11c、11d上に成長される活性層12b及び13bは、インジウムを含むIII族窒化物半導体層を含む。したがって、緑色光といった長波長の発光に好適な高In組成を活性層12b及び13bに与えることができる。
【0031】
加えて、第1の面11cの第1法線ベクトルNV1、及び第2の面11dの第2法線ベクトルNV2が第3の面11eの第3法線ベクトルNV3と交差しており、且つ、第1及び第2の面11c、11dが、第3の面11eに沿って延びる軸(X軸)の方向に、窒化ガリウム支持基体11の一対の端面11f、11gに沿って延在する。したがって、第3の面11eが窒化ガリウム支持基体11の<000−1>軸の方向に向いている(すなわちC−面である)ことによって、第1及び第2の面11c、11dを半極性面とすることができ、且つ、光の出射面を左右対称とすることができる。
【0032】
このように、第1及び第2の面11c、11dを半極性面とすることによってピエゾ効果を低減することができ、強い長波長の発光が可能となる。また、III族窒化物半導体発光素子10はLEDであり、光出射面が左右対称であることにより、光取り出し効率が向上する。
【0033】
また、第1及び第2の面11c、11dは、窒化ガリウム支持基体11のa軸及びm軸のいずれかの方向に延在することができる。後述するように、第1及び第2の面11c、11dは、例えば水酸化カリウムを含むエッチャントを使用したエッチングによって好適に形成されるので、第1及び第2の面11c、11dがこれらの方向に延在することによって、傾斜角の制御を容易にできる。
【0034】
また、第1の面11cの第1法線ベクトルNV1、及び第2の面11dの第2法線ベクトルNV2は、第3法線ベクトルNV3に対して窒化ガリウム支持基体11のa軸の方向若しくはm軸の方向に傾斜することが好適である。これにより、第1及び第2の面11c、11dをエッチングにより形成する際の傾斜角の制御を容易にできる。
【0035】
第1及び第2の面11c、11dが窒化ガリウム支持基体11のa軸の方向に延在する場合、第1及び第2の面11c、11dはm軸方向に傾いた半極性面となる。したがって、より強い偏向光を上面に出射することが可能となる。このとき、第1の角度θ及び第2の角度θは56度以上80度以下の範囲にある。或いは、第1及び第2の面11c、11dが窒化ガリウム支持基体11のm軸の方向に延在する場合、第1及び第2の面11c、11dはa軸方向に傾いた半極性面となる。したがって、より強い発光が期待できるとともに、一対の端面11h、11iをm面として劈開面とすることができる。このとき、第1の角度θ及び第2の角度θは56度以上80度以下の範囲にある。
【0036】
上述したように、第1及び第2の面11c、11dは、{11−2−2}面又は{1−10−1}面を含むことが好ましい。これらの面方位は、第1及び第2の面11c、11dがエッチングによって形成される際に現れる典型的な面方位である。また、第1及び第2の面11c、11dは、{11−2−2}面又は{1−10−1}面から−5度以上+5度以下の範囲内にあってもよい。この範囲によれば、活性層12b、13bの成長において、上記の個々の面方位と同様の結晶品質及びIn組成を提供できる。
【0037】
第3のIII族窒化物半導体積層部14は、第3の面11e上に順に積層された第1導電型半導体層14a、活性層14b及び第2導電型半導体層14cを含む。第1導電型半導体層14aは窒化ガリウム系半導体からなり、例えばn型GaN、n型AlaGaN、n型InGaN、n型InAlGaN、n型InAlN等からなることができる。第2導電型半導体層14cは窒化ガリウム系半導体からなり、例えばp型GaN、p型AlaGaN、p型InGaN、p型InAlGaN、p型InAlN等からなることができる。
【0038】
活性層14bは、例えば単一の半導体層から成ることができ、或いは、量子井戸構造(SQW、MQW)を有することができる。活性層14bは窒化ガリウム系半導体からなり、またインジウムを含むIII族窒化物からなる半導体層を含む。この半導体層は、InGaN層を含むことができ、そのIn組成比は青色光を発光することができる値である。この半導体層のIn組成は、例えば約0.10以上であることができ、約0.15以下であることができる。この半導体層の発光波長範囲は、440nm以上であることができ、480nm以下であることができる。なお、量子井戸構造の場合、障壁層は例えばGaN又はInGaN等からなることができる。
【0039】
本実施形態では、窒化ガリウム支持基体11の第3の面11eが窒化ガリウム支持基体11の<000−1>軸の方向に向いている。そして、この第3の面11e上に成長される活性層14bは、インジウムを含むIII族窒化物半導体層(例えば井戸層)を含む。したがって、青色光の発光に好適なIn組成を活性層14bに与えることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子10では、緑色光を発生する第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部12,13が、窒化ガリウム支持基体11の第1及び第2の面11c、11d上にそれぞれ設けられている。また、青色光を発生する第3のIII族窒化物半導体積層部14が、窒化ガリウム支持基体11の第3の面11e上に設けられている。このように、一つの窒化ガリウム支持基体11の主面11a上に、緑色光を発生する半導体積層部12,13と、青色光を発生する半導体積層部14とが設けられているので、特許文献3に記載された構成のように青色発光素子と緑色発光素子とを個別に設ける場合と比較して、素子の実装に必要な寸法を小さくすることができる。したがって、発光装置が出力する赤色光、青色光および緑色光のうち青色光及び緑色光をこのIII族窒化物半導体発光素子10に発光させることにより、発光装置を小型化することができる。
【0041】
続いて、本実施形態によるIII族窒化物半導体発光素子10の作製方法の一例について説明する。図3〜図13は、この作製方法における各工程を示す図である。なお、図4〜図9及び図11〜図13において、(a)は作製途中のウエハの平面図であり、(b)は(a)のb−b線に沿った断面を示している。
【0042】
まず、図3(a)に示されるように、窒化ガリウム基板41を準備する。窒化ガリウム基板41は、後に図1及び図2に示された窒化ガリウム支持基体11となる基板である。窒化ガリウム基板41は、主面41a及び裏面41bを有する。主面41aは、窒化ガリウム基板41の<000−1>軸の方向(ベクトルCV−)に向いており、裏面41bは、窒化ガリウム基板41の<0001>軸の方向(ベクトルCV+)に向いている。主面41aは、N面と呼ばれる面であるが、N面からわずかに傾斜した面であることができ、例えば主面41aはN面から−5度〜+5度程度の範囲でオフしていてもよい。このような窒化ガリウム基板41は、c軸方向に成長したインゴットから大口径のウエハとして作製される。
【0043】
次に、図3(b)に示されるように、マスクのための絶縁膜43及び44を、主面41a及び裏面41b上にそれぞれ堆積する。絶縁膜43及び44はシリコン系無機絶縁膜であることができ、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物等からなることができる。絶縁膜43、44は、それぞれ主面41a、裏面41bの全面を覆う。絶縁膜43及び44の厚さは例えば250nmである。
【0044】
続いて、図4に示されるように、絶縁膜43を加工することによって絶縁膜マスク45を形成する。図4には、結晶方位を規定する結晶座標系CRが示されており、結晶座標系CRは互いに直交するc軸、a軸及びm軸を有する。絶縁膜マスク45は、例えばフォトリソグラフィと、フッ酸系エッチャントを用いたエッチングとにより絶縁膜43から形成されることができる。絶縁膜マスク45は、例えばa軸及びm軸のいずれか一方の方向(本実施例では例えばa軸)に延在する複数のストライプ45aを含む。また、絶縁膜マスク45は、例えばa軸及びm軸のいずれか一方の方向(本実施例では例えばa軸)に延在する複数のストライプ状の開口45bを含む。ストライプ45aは、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向(本実施例では例えばm軸)に配列される。また、開口45bは、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向(本実施例では例えばm軸)に配列される。さらに、ストライプ45a及び開口45bは、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向に交互に配列される。
【0045】
なお、開口45bの幅W1は例えば150μm以上250μm以下の範囲にあることができ、一実施例では200μmである。また、ストライプ45aの幅W2は300μm以上500μm以下の範囲にあることができ、一実施例では400μmである。
【0046】
続いて、図5に示されるように、複数の開口45bから露出した窒化ガリウム基板41の主面41a上に、第3のIII族窒化物半導体積層部14(第1導電型半導体層14a、活性層14b、及び第2導電型半導体層14c)を成長させる。このとき、第3のIII族窒化物半導体積層部14は、複数の開口45bの内部にのみ選択的に成長する。一例としては、第1導電型半導体層14aとしてSiドープGaNを1000℃の温度下で成長させ、その上に、活性層14bとしてアンドープIn0.14Ga0.86Nを800℃の温度下で成長させ、その上に、第2導電型半導体層14cとしてMgドープGaNを1000℃の温度下で成長させる。第1導電型半導体層14aの厚さは例えば1000nmであり、活性層14bの厚さは例えば3nmであり、第2導電型半導体層14cの厚さは例えば500nmである。この工程ののち、例えばフッ酸を用いて絶縁膜マスク45を除去する(図6)。
【0047】
続いて、図7に示されるように、マスクのための絶縁膜46を主面41a上に堆積する。絶縁膜46はシリコン系無機絶縁膜であることができ、例えばシリコン酸化物、シリコン窒化物等からなることができる。絶縁膜46は、主面41a上において、第3のIII族窒化物半導体積層部14を含む全面を覆う。絶縁膜46の厚さは例えば250nmである。
【0048】
続いて、図8に示されるように、絶縁膜46を加工することによって絶縁膜マスク47を形成する。絶縁膜マスク47は、例えばフォトリソグラフィと、フッ酸系エッチャントを用いたエッチングとにより絶縁膜46から形成されることができる。絶縁膜マスク47は、例えばa軸及びm軸のいずれか一方の方向(本実施例では例えばa軸)に延在する複数のストライプ状の開口47bを含む。開口47bは、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向(本実施例では例えばm軸)に配列される。また、第3のIII族窒化物半導体積層部14と開口47bとは、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向に交互に配列される。なお、開口47bの幅W3は例えば100μm以上250μm以下の範囲にあることができ、一実施例では200μmである。
【0049】
続いて、図9に示されるように、絶縁膜マスク47を用いて窒化ガリウム基板41をエッチングすることにより、複数の窪み48を窒化ガリウム基板41に形成する。エッチングは、例えばウエットエッチングによることができる。ウエットエッチングは、例えばアルカリ系エッチャントを用いて行われ、アルカリ系エッチャントは水酸化カリウム(KOH)を含むことができる。一例では、90℃のKOH溶液(2規定)が用いられる。このエッチングに要する時間は例えば5時間である。この方法によれば、窒化ガリウム基板に窪み48を形成することが容易になる。この窪み48は、所望の傾斜角を有する第1及び第2の面41c、41dを含む。
【0050】
第1及び第2の面41c、41dは、第3の面41eに対し、窒化ガリウム基板41の裏面41bの方向に傾斜している。第1の面41cの第1法線ベクトルNV1と<000−1>軸との成す第1の角度θは+56度以上+80度未満の範囲にあり、第2の面41dの第2法線ベクトルNV2と<000−1>軸との成す第2の角度θは+56度以上+80度未満の範囲にあることができる。
【0051】
第1及び第2の面41c、41dは、{11−2−2}面及び{1−10−1}面のいずれかを含むことが好適である。これらは、例えば水酸化カリウムを含むエッチャントを用いるときに現れる典型的な面方位である。また、第1及び第2の面41c、41dは、{11−2−2}面及び{1−10−1}面のいずれかの面から−5度以上+5度以下の範囲内にあることが好適である。
【0052】
窪み48の平面形状は、マスク47の開口47bにより規定される。窪み48は、例えばa軸及びm軸のいずれか一方の方向(本実施例では例えばa軸)に延在する。また、窪み48は、例えばa軸及びm軸のいずれか他方の方向(本実施例では例えばm軸)に配列される。窪み48は、第1及び第2の面41c、41dを含んでおり、例えば一方向に延在するV溝であることができる。窒化ガリウム基板41がV溝を有するとき、このV溝は、第1及び第2の面41c、41dからなる一対の傾斜面からなる。第1の面41cと第2の面41dとの間に位置する第3の面41eは、窒化ガリウム基板41の<000−1>軸の方向に向いている。窒化ガリウム基板41の裏面41bの反対側の面には、第1の面41c、第3の面41e及び第2の面41dからなるユニットが、一方向に配列されている。
【0053】
ここで、図10は、上記工程において形成される窪み48の形態を詳細に説明するための図である。図10には、窒化ガリウム基板41の窪み48付近が拡大して示されている。また、窪み48を構成する第1及び第2の面41c、41dが示されている。
【0054】
まず、第1及び第2の面41c、41dが窒化ガリウム基板41の{11−2−2}面を含む(或いは{11−2−2}面から−5度以上+5度以下の範囲内にある)場合について説明する。この場合、第1の面41cの面方位と、第2の面41dの面方位と、窪み48の延在方向A1との組み合わせは、例えば次の表1に示されるケース1〜3のようになる。
【表1】


このように、この場合には窪み48の延在方向A1がm軸方向と一致する。なお、この場合、窪み48の開口幅W4は、100μm以上であることができ、250μm以下であることができる。また、窪み48の深さD1は、76μm以上であることができ、190μm以下であることができる。また、第1及び第2の面41c、41dと第3の面41e(C−面)との成す角度θは、56.7度である。
【0055】
また、第1及び第2の面41c、41dが窒化ガリウム基板41の{1−10−1}面を含む(或いは{1−10−1}面から−5度以上+5度以下の範囲内にある)場合について説明する。この場合、第1の面41cの面方位と、第2の面41dの面方位と、窪み48の延在方向A1との組み合わせは、例えば次の表2に示されるケース4〜6のようになる。
【表2】


このように、この場合には窪み48の延在方向A1がa軸方向と一致する。なお、この場合、窪み48の開口幅W4は、100μm以上であることができ、250μm以下であることができる。また、窪み48の深さD1は、88μm以上であることができ、220μm以下であることができる。また、第1及び第2の面41c、41dと第3の面41e(C−面)との成す角度θは、60.4度である。
【0056】
続いて、図11に示されるように、マスク47を用いて、各窪み48上に半導体領域49を成長する。半導体領域49は、第1及び第2の面41c、41d上に、第1及び第2の面41c、41dの一方から他方に亘って選択的に成長される。半導体領域49は、第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57を含む。なお、第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57は、それぞれ第1導電型半導体層12a及び13a、活性層12b及び13b、並びに第2導電型半導体層12c及び13cとなる層である。半導体領域49の第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57は、第1の面41cの第1法線ベクトルNV1の方向に順に成長されており、半導体領域49の第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57は、第2の面41dの第2法線ベクトルNV2の方向に順に成長されている。活性層55は、例えば窒化ガリウム系半導体からなる。この窒化ガリウム系半導体は、III族構成元素としてインジウムを含む。
【0057】
一例としては、第1導電型半導体層53としてSiドープGaNを1000℃の温度下で成長させ、その上に、活性層55としてアンドープIn0.30Ga0.70Nを800℃の温度下で成長させ、その上に、第2導電型半導体層57としてMgドープGaNを1000℃の温度下で成長させる。第1導電型半導体層53の厚さは例えば1000nmであり、活性層55の厚さは例えば3nmであり、第2導電型半導体層57の厚さは例えば500nmである。
【0058】
続いて、図12に示されるように、例えばフッ酸を用いてマスク47及び絶縁膜44を除去し、エピタキシャル基板Eを作製する。マスク47の除去により、第3のIII族窒化物半導体積層部14が露出する。また、半導体領域49は、第1及び第2の面41c、41d上にそれぞれ形成された第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部49c、49dを含む。第1のIII族窒化物半導体積層部49cの第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57は、第1法線ベクトルNV1の方向に順に配置されている。第2のIII族窒化物半導体積層部49dの第1導電型半導体層53、活性層55及び第2導電型半導体層57は、第2の面41dの第2法線ベクトルNV2の方向に順に配置されている。
【0059】
なお、必要な場合には、第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部49c、49dの表面並びに第3のIII族窒化物半導体積層部14の表面を覆うように、保護膜のための絶縁膜を成長することができる。絶縁膜はシリコン系無機絶縁膜からなることができ、例えばシリコン酸化膜及び/又はシリコン窒化膜からなることができる。この絶縁膜には、第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部49c、49d及び14の上にそれぞれ位置する開口が形成される。
【0060】
続いて、図13に示されるように、第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部49c、49dおよび14上にそれぞれ第1〜第3の電極15〜17を形成すると共に、窒化ガリウム基板41の裏面41bの所定領域上に裏面電極18を形成して、基板生産物SPを作製する。第1〜第3の電極15〜17は、例えばNi/Pt/Auを蒸着することによって形成される。裏面電極18は、例えばTi/Al/Pt/Auを蒸着することによって形成される。必要な場合には、窒化ガリウム基板41の裏面41bを研磨して所望の厚さを有する窒化ガリウム基板41を作製した後に、裏面電極18を形成することができる。
【0061】
続いて、基板生産物SPを分離して、複数の半導体チップを形成する。すなわち、図13に示される一次ブレイクのための第1の切断線BR1の位置で基板生産物SPを切断して、半導体バーを形成する。第1の切断線BR1は、窪み48の延在方向に交差する方向に延びている。窪み48の延在方向が例えばa軸(m軸)の方向であるとき、第1の切断線BR1の方向はm軸(a軸)の方向であることができる。この切断は、例えばダイサーを用いたダイシングや反応性イオンエッチング(RIE)によって好適に行われる。次に、図13に示される二次ブレイクのための第2の切断線BR2の位置で半導体バーを劈開して、半導体チップを形成する。窪み48の延在方向が例えばa軸(m軸)の方法であるとき、第2の切断線BR2の方向はa軸(m軸)の方向であることができる。また、この劈開によって半導体領域49が分離されることにより、図1に示された第1のIII族窒化物半導体積層部12(第1導電型半導体層12a、活性層12b及び第2導電型半導体層12c)、並びに第2のIII族窒化物半導体積層部13(第1導電型半導体層13a、活性層13b及び第2導電型半導体層13c)が形成される。こうして、図1及び図2に示されたIII族窒化物半導体発光素子10が完成する。
【0062】
(第2の実施の形態)
図14は、第2実施形態に係る発光装置の構成を示す平面図である。また、図15は、図14に示されたIII−III線に沿った断面を示す図である。図14及び図15に示されるように、本実施形態の発光装置60は、第1実施形態に係るIII族窒化物半導体発光素子10と、半導体発光素子70と、プリント基板80とを備えている。第1実施形態において述べたように、III族窒化物半導体発光素子10は緑色光を発光する第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部12,13と、青色光を発光する第3のIII族窒化物半導体積層部14とを有する。また、半導体発光素子70は、赤色光を発光する素子である。
【0063】
ここで、図16は、半導体発光素子70の構成の一例を示す正面図である。図16に示されるように、半導体発光素子70は、主面71a及び裏面71bを有する半導体基板71と、半導体基板71の主面71a上に設けられた第1導電型半導体層72と、第1導電型半導体層72上に設けられた活性層73と、活性層73上に設けられた第2導電型半導体層74とを備える。半導体発光素子70は、例えばガリウム砒素系のIII−V族化合物半導体から成ることができる。一例では、半導体基板71はp型のガリウム砒素から成る。第1導電型半導体層72は、例えばp型GaAlAsから成る。活性層73は、例えばアンドープGaAlAsから成る。第2導電型半導体層74は、例えばn型GaAlAsから成る。第2導電型半導体層74上には表面電極75が設けられており、半導体基板71の裏面71b上には裏面電極76が設けられている。活性層73の発光波長範囲は、610nm以上であることができ、750nm以下であることができる。
【0064】
再び図14及び図15を参照すると、III族窒化物半導体発光素子10及び半導体発光素子70は、プリント基板80の実装面80a上に並んで実装されている。図14に示されるように、III族窒化物半導体発光素子10の第1〜第3の電極15〜17、及び半導体発光素子70の表面電極75それぞれは、プリント基板80の実装面80a上に設けられた複数の導電体層81a〜81dそれぞれに対し、ボンディングワイヤ82a〜82dそれぞれを介して電気的に接続されている。また、図15に示されるように、III族窒化物半導体発光素子10の裏面電極18は、プリント基板80の実装面80a上に設けられた導電体層81eに対し、導電性接着剤83を介して電気的に接合されている。また、半導体発光素子70の裏面電極76は、プリント基板80の実装面80a上に設けられた導電体層81fに対し、導電性接着剤84を介して電気的に接合されている。なお、導電体層81a〜81fは、例えばAu膜によって構成される。
【0065】
プリント基板80の実装面80a上において、III族窒化物半導体発光素子10及び半導体発光素子70は、カバー部材90によって包囲されている。III族窒化物半導体発光素子10から出力される緑色光及び青色光、並びに半導体発光素子70から出力される赤色光は、このカバー部材90の内側において混色される。カバー部材90の内面には、III族窒化物半導体発光素子10及び半導体発光素子70からの発光を前方(実装面80aの法線方向)へ向けて反射するための反射面91が形成されている。この反射面91によって、発光装置60の発光輝度が高まるとともに、赤色光、緑色光及び青色光が効果的に混色される。なお、反射面91には、AlやNiといった高反射率材料が蒸着されるか、或いは、可視光に対する反射率が高い白色物質が塗布される。図15に示されるように、カバー部材90の内側には透明なモールド樹脂92が設けられ、このモールド樹脂92によってIII族窒化物半導体発光素子10及び半導体発光素子70が気密に封止される。
【0066】
以上に説明した本実施形態の発光装置60は、単一の素子から緑色光及び青色光を出力することができるIII族窒化物半導体発光素子10を備えている。これにより、例えば赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを個別に設ける従来の発光装置と比較して、発光素子の実装に必要な寸法を小さくすることができ、発光装置の小型化が可能となる。
【0067】
(第3の実施の形態)
図17は、第3実施形態に係るディスプレイ装置の構成を示す斜視図である。このディスプレイ装置100は、第2実施形態に係る複数の発光装置60と、板状の支持基体101とを備えている。複数の発光装置60は、板状の支持基体101の主面101a上において、複数の列および複数の行にわたって二次元状に配列されている。このディスプレイ装置100によれば、第2実施形態に係る小型の発光装置60によって各画素を構成することができ、より高精細の画像を提供することができる。
【0068】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本実施の形態における一側面によれば、青色光および緑色光を発光する発光装置の小型化を可能にできるIII族窒化物半導体発光素子が提供される。また、本実施の形態における別の側面によれば、赤色光、青色光および緑色光を発光するとともに小型化が可能な発光装置が提供される。さらに、本実施の形態における更なる別の側面によれば、高精細な画像を表示できるディスプレイ装置が提供される。
【符号の説明】
【0070】
10…III族窒化物半導体発光素子、11…窒化ガリウム支持基体、11c…第1の面、11d…第2の面、11e…第3の面、12…第1のIII族窒化物半導体積層部、13…第2のIII族窒化物半導体積層部、14…第3のIII族窒化物半導体積層部、15…第1の電極、16…第2の電極、17…第3の電極、18…裏面電極、60…発光装置、70…半導体発光素子、71…半導体基板、75…表面電極、76…裏面電極、80…プリント基板、81a〜81f…導電体層、82a〜82d…ボンディングワイヤ、83,84…導電性接着剤、90…カバー部材、91…反射面、92…モールド樹脂、100…ディスプレイ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第3の面を含む主面、及び裏面を有する六方晶系の窒化ガリウム支持基体と、
前記窒化ガリウム支持基体の前記第1及び第2の面上にそれぞれ設けられた第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部と、
前記窒化ガリウム支持基体の前記第3の面上に設けられた第3のIII族窒化物半導体積層部と、
前記第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部上にそれぞれ設けられた第1〜第3の電極と、
前記窒化ガリウム支持基体の裏面上に設けられた裏面電極と
を有し、
前記第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部それぞれが、前記第1〜第3の面それぞれの上に順に配置された第1導電型半導体層、活性層及び第2導電型半導体層を含んでおり、
前記第1及び第2のIII族窒化物半導体積層部の各活性層が、緑色光を発生する組成比のインジウムを含むIII族窒化物半導体層を含んでおり、
前記第3のIII族窒化物半導体積層部の前記活性層が、青色光を発生する組成比のインジウムを含むIII族窒化物半導体層を含んでおり、
前記第3の面が、前記窒化ガリウム支持基体の<000−1>軸の方向に向いており、
前記第1及び第2の面が、前記第3の面に対して前記窒化ガリウム支持基体の前記裏面の方向に傾斜しており、
前記第1の面の第1法線ベクトルと前記<000−1>軸の方向を示すベクトルCV−との成す第1の角度、及び前記第2の面の第2法線ベクトルと前記ベクトルCV−との成す第2の角度が、+56度以上+80度未満の範囲にあり、
前記窒化ガリウム支持基体が、所定の軸の方向に延在する一対の端面を有しており、
前記第1及び第2の面それぞれが、前記一対の端面それぞれに沿って延在しており、
前記第3の面が、前記第1の面と前記第2の面との間に設けられており、
前記所定の軸が、前記第3の面の第3法線ベクトルと交差すると共に前記第3の面に沿って延びていることを特徴とする、III族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記第1〜第3のIII族窒化物半導体積層部の前記活性層の前記III族窒化物半導体層がInGaN層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1法線ベクトル及び前記第2法線ベクトルが、前記第3法線ベクトルに対して前記窒化ガリウム支持基体のa軸及びm軸のいずれかの方向に傾斜していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1及び第2の面が、{11−2−2}面又は{1−10−1}面から−5度以上+5度以下の範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1及び第2の面が、{11−2−2}面又は{1−10−1}面を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項6】
前記第1及び第2の面が、前記窒化ガリウム支持基体のa軸又はm軸の方向に延在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載されたIII族窒化物半導体発光素子である第1の半導体発光素子と、
赤色光を発光する第2の半導体発光素子と
を備えることを特徴とする、発光装置。
【請求項8】
請求項7に記載された発光装置を複数備え、
前記複数の発光装置が二次元状に配列されていることを特徴とする、ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−8790(P2013−8790A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139535(P2011−139535)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】