説明

III族窒化物半導体発光素子

【課題】GaN結晶基板上にモフォロジーが良好で均一な物性を有するIII族窒化物半導体層が成長された高特性のIII族窒化物半導体発光素子を提供する。
【解決手段】本III族窒化物半導体発光素子は、GaN結晶基板100と、GaN結晶基板100の主面100m上に配置された少なくとも1層のIII族窒化物半導体層200と、を含み、GaN結晶基板100は、マトリックス結晶領域100sとc軸反転結晶領域100tとを含み、主面100mと{0001}面100cとの間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下、かつ、第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックス結晶領域とc軸反転結晶領域とを含むGaN結晶基板を含む高特性のIII族窒化物半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN結晶基板は、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)などの半導体発光素子用基板として広く用いられている。半導体発光素子の特性向上を図るため、転位密度の低いGaN結晶基板の開発が進められている。
【0003】
転位密度の低いGaN結晶基板の製造方法として、たとえば特開2003−165799号公報(特許文献1)および特開2003−183100号公報(特許文献2)は、マスク層を設けた下地基板上にGaN結晶を成長させることにより、GaN結晶の成長の際に所定の位置にファセットを形成することにより、所定の場所に結晶の転位を集中させ、符号の異なる転位間の結合により転位を低減させるファセット成長方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−165799号公報
【特許文献2】特開2003−183100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2003−165799号公報(特許文献1)および特開2003−183100号公報(特許文献2)などで提案されるファセット成長方法によれば、転位密度の小さなGaN結晶基板を得ることができるが、かかるGaN結晶基板上にIII族窒化物半導体層を成長させると、III族窒化物半導体層の結晶成長面に六角形台錐状の凸部が形成される場合、三日月形状の凹部が形成される場合などがあり、モフォロジーが良好で均一な物性を有するIII族窒化物半導体層を成長させることが困難で、この結果、高特性のIII族窒化物半導体発光素子を作製することが困難であるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決して、GaN結晶基板上にモフォロジーが良好で均一な物性を有するIII族窒化物半導体層が成長された高特性のIII族窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、GaN結晶基板と、GaN結晶基板の主面上に配置された少なくとも1層のIII族窒化物半導体層と、を含み、GaN結晶基板は、マトリックス結晶領域とc軸反転結晶領域とを含み、c軸反転結晶領域の結晶はマトリックス結晶領域の結晶に対して<1−210>方向が同じであり<0001>方向が反転しており、上記主面と{0001}面との間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下、かつ、第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下であるIII族窒化物半導体発光素子である。
【0008】
本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子において、III族窒化物半導体層は、第1導電型層と活性層と第2導電型層とを含むレーザダイオード構造を有することができる。また、III族窒化物半導体層は、第1導電型層と活性層と第2導電型層とを含む発光ダイオード構造を有することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、GaN結晶基板上にモフォロジーが良好で均一な物性を有するIII族窒化物半導体層が成長された高特性のIII族窒化物半導体発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の一部の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のII−IIにおける概略断面図である。
【図3】図1のIII−IIIにおける概略断面図である。
【図4】典型的なIII族窒化物半導体発光素子の一部の一例を示す概略平面図である。
【図5】図4のV−Vにおける概略断面図である。
【図6】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の別の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子におけるGaN結晶基板の一例を示す概略平面図である。
【図9】図8のIX−IXにおける概略断面図である。
【図10】図8のX−Xにおける概略断面図である。
【図11】III族窒化物半導体発光素子の製造方法を示す工程図である。
【図12】本実施形態にかかるIII族窒化物半導体発光素子の製造方法におけるGaN結晶基板を準備する工程において、下地基板にマスクを形成するサブ工程を示す概略平面図である。
【図13】本実施形態にかかるIII族窒化物半導体発光素子の製造方法におけるGaN結晶基板を準備する工程において、マスクが形成された下地基板上にGaN結晶を成長させて加工することによりGaN結晶基板を形成するサブ工程を示す概略断面図である。
【図14】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の実施例AにおけるそれぞれのGaN結晶基板の主面について、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|との関係を示すグラフである。
【図15】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の実施例BにおけるそれぞれのGaN結晶基板の主面について、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|との関係を示すグラフである。
【図16】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の実施例CにおけるそれぞれのGaN結晶基板の主面について、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|との関係を示すグラフである。
【図17】本発明にかかるIII族窒化物半導体発光素子の実施例DにおけるそれぞれのGaN結晶基板の主面について、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[III族窒化物半導体発光素子]
図1〜3、6および7を参照して、本発明の一実施形態であるIII族窒化物半導体発光素子10は、GaN結晶基板100と、GaN結晶基板100の主面100m上に配置された少なくとも1層のIII族窒化物半導体層200と、を含む。ここで、GaN結晶基板100は、マトリックス結晶領域100sとc軸反転結晶領域100tとを含み、c軸反転結晶領域100tの結晶はマトリックス結晶領域100sの結晶に対して<1−210>方向が同じであり<0001>方向が反転しており、主面100mと{0001}面との間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下、かつ、第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下である。ここで、III族窒化物半導体発光素子10内にc軸反転結晶領域100tを含んでいても含んでいなくても良い。
【0012】
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子10は、GaN結晶基板100が、マトリックス結晶領域100sとc軸反転結晶領域100tを含み、主面100mと{0001}面との間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下、かつ、第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下であることから、GaN結晶基板100上にモフォロジーが良好で均一な物性を有するIII族窒化物半導体層200が成長し、高特性のIII族窒化物半導体発光素子10となる。
【0013】
(GaN結晶基板)
図8〜10を参照して、III族窒化物発光素子に含まれるGaN結晶基板100は、マトリックス結晶領域100sとc軸反転結晶領域100tとを含む。マトリックス結晶領域100sとは、GaN結晶基板100を構成する主たる結晶領域であり、c軸反転結晶領域100tに比べて転位密度が低い結晶領域である。c軸反転結晶領域100tとは、その領域の結晶がマトリックス結晶領域100sの結晶に対して<1−210>方向が同じであり<0001>方向が反転している結晶領域である。ここで、GaN結晶基板100中のマトリックス結晶領域100sおよびc軸反転結晶領域100tは、蛍光顕微鏡により観察でき、それらの結晶領域の結晶の結晶方位は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いた収束電子回折法により測定できる。
【0014】
ここで、<1−210>方向が同じとは、c軸反転結晶領域100tの結晶の<1−210>方向とマトリックス結晶領域100sの結晶の<1−210>方向とが実質的に同じ向きの方向ベクトルを有し、両結晶領域間の<1−210>方向のずれ角が30°未満であることをいう。
【0015】
また、<0001>方向が反転しているとは、c軸反転結晶領域100tの結晶の<0001>方向とマトリックス結晶領域100sの結晶の<0001>方向とが実質的に反対の向きの方向ベクトルを有し、両結晶領域間の<0001>方向のずれ角が30°未満であることをいう。
【0016】
GaN結晶基板100は、ファセット成長方法により成長させ加工することにより作製されたものであり、結晶基板全体の転位がc軸反転結晶領域100tに集められて反対符号の転位が結合されることにより、マトリックス結晶領域100sの転位密度が低減されている。GaN結晶基板100の転位密度は、特に制限はないが、主面100m上に成長させるIII族窒化物半導体層200の転位密度を低減する観点から、低いほど好ましく、たとえば、マトリックス結晶領域100sでは2×107cm-2以下が好ましく1×106cm-2以下がより好ましい。ここで、GaN結晶基板100の転位密度は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いたCL(カソードルミネッセンス)法により測定できる。
【0017】
GaN結晶基板100において、マトリックス結晶領域100sおよびc軸反転結晶領域100tの配置は、特に制限はないが、そのGaN結晶基板の転位密度を低減しそのGaN結晶基板の主面上に転位密度の低いIII族窒化物結晶を成長させる観点から、GaN結晶基板100の主面100mから見てマトリックス結晶領域100sに対してc軸反転結晶領域100tが四角格子点または三角格子点上にドット状に配置していることが好ましい。c軸反転結晶領域100tの各ドットは、製品歩留まりの観点から、直径が15μm以上100μm以下が好ましく、ピッチが100μm以上2000μm以下が好ましい。また、マトリックス結晶領域100sおよびc軸反転結晶領域100tは、GaN結晶基板100の一方の主面100mから他方の主面100nまで貫通して形成されていることが好ましい。
【0018】
図1〜5を参照して、GaN結晶基板100の少なくとも主面100m上にマトリックス結晶領域100sおよびc軸反転結晶領域100tが現れるGaN結晶基板100の主面100m上に、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層200を成長させると、GaN結晶基板100のマトリックス結晶領域100s上にはそれと同じ結晶方位を有するIII族窒化物半導体層200のマトリックス結晶領域200sが形成され、GaN結晶基板100のc軸反転結晶領域100t上にはそれと同じ結晶方位を有するIII族窒化物半導体層200のc軸反転結晶領域200tが形成される。これは、III族窒化物半導体層200は、GaN結晶基板100の主面100mのそれぞれの領域の結晶物性を引き継いで成長するためである。
【0019】
ここで、図4および5を参照して、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|(すなわち、<10−10>方向のオフ角成分の絶対値および<1−210>方向のオフ角成分の絶対値)が0.03°よりも小さい、すなわち、{0001}面に実質的に平行な主面100mを有するGaN結晶基板100の主面100m上にIII族窒化物半導体層200を成長させると、成長したIII族窒化物半導体層200の主面200mにおけるマトリックス結晶領域200sの少なくとも一部に頂角が大きな鈍角の六角錐状の凸部200hが形成され、III族窒化物半導体層200は、その主面200mのモフォロジーが不良となり、物性が不均一となる。ここで、III族窒化物半導体層200の主面200mにおける凸部200hは、微分干渉顕微鏡により観察できる。
【0020】
また、図1〜3を参照して、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|(すなわち、<10−10>方向および<1−210>方向のいずれかの方向のオフ角成分の絶対値)が0.03°以上になると、III族窒化物半導体層200の主面200m上には、上記の六角錐状の凸部200hは形成されないが、III族窒化物半導体層200の主面200mにおけるc軸反転結晶領域200tに対して主面200mから{0001}面が最も大きくオフしている方向に隣接するマトリックス結晶領域200sの一部に凹部200r(図1に示すように、この凹部200rは、たとえば三日月状の形状をしている場合が多い。)が形成され、上記の第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が大きくなる程、GaN結晶基板100の主面100mに現われるc軸反転結晶領域100tの面積Stに対するIII族窒化物半導体層200の主面200mに現れる凹部200rの面積Srの比率(以下、凹部面積比率という)が大きくなり、III族窒化物半導体層200は、その主面200mのモフォロジーが不良となり、物性が不均一となる。ここで、III族窒化物半導体層200の主面200mにおける凹部200rおよびその面積Srは、それぞれ微分干渉顕微鏡を用いて観察および測定できる。また、GaN結晶基板100の主面100mにおけるc軸反転結晶領域100tおよびその面積Stは、蛍光顕微鏡を用いて観察および測定できる。
【0021】
また、第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|(すなわち、第1方向が<10−10>方向の場合は<1−210>方向のオフ角成分の絶対値、第1方向が<1−210>方向の場合は<10−10>方向のオフ角成分の絶対値)が0.75×|θ1|より大きい場合は、III族窒化物半導体層200の主面が波状になり、III族窒化物半導体層200の組成が不均一になることにより、得られるIII族窒化物半導体層200の物性が不均一となる。
【0022】
したがって、GaN結晶基板100の主面100m上にモフォロジーが良好で物性が均一なIII族窒化物半導体層200を成長させて高特性のIII族窒化物半導体発光素子を得る観点から、GaN結晶基板100は、主面100mと{0001}面との間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下かつ第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下の範囲(以下、範囲Z1という)が必要であり、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.05°以上0.86°以下かつ第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.5×|θ1|以下の範囲(以下、範囲Z2という)が好ましく、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.11°以上0.76°以下かつ第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.375×|θ1|以下の範囲(以下、範囲Z3という)がより好ましく、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.2°以上0.6°以下かつ第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.25×|θ1|以下の範囲(以下、範囲Z4という)がさらに好ましく、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.3°以上0.5°以下かつ第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.125×|θ1|以下の範囲(以下、範囲Z5)が特に好ましい。
【0023】
ここで、GaN結晶基板100の主面100mと{0001}面との間のオフ角θについて、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|は、(0002)面を回折面としてω角をスキャンさせるX線回折により測定できる。
【0024】
また、GaN結晶基板100は、主面100m(表主面)上におけるIII族窒化物半導体成長の際の原料ガスの流れをスムーズにすることにより均一なIII族窒化物半導体層を成長させる観点から、その上に結晶成長させる主面100m(表主面)の反りが−20μm以上10μm以下が好ましい。
【0025】
また、GaN結晶基板100は、結晶成長させる主面と反対側の主面100n(裏主面)と基板ホルダとの接触性を均一化して均一な温度制御により均一なIII族窒化物半導体層を成長させる観点から、主面100n(裏主面)の反りが−20μm以上20μm以下が好ましい。
【0026】
ここで、主面100m(表主面)および主面100n(裏主面)の反りは、所定の大きさ(たとえば、直径2インチ(5.08cm))のGaN結晶基板100の主面100m(表主面)および主面100n(裏主面)における最高点と最低点との高低差を、レーザフォーカス方式のレーザ変位計(キーエンス社製LT−9010(レーザ出力部)およびLT−9500(レーザ制御部))、XYポジションコントローラ(コムス社製CP−500)および高速アナログ電圧データ収集装置(コムス社製CA−800)を用いて測定できる。このレーザ変位計には、レーザ波長670nmの赤色半導体レーザを用いることができる。
【0027】
また、反りのプラス(+)、マイナス(−)の符号は、測定される面が上となるようにGaN結晶基板100を配置したとき、上に突出している場合をプラス(+)、下に凹んでいる場合をマイナス(−)とする。
【0028】
(III族窒化物半導体層)
図1〜3、6および7を参照して、III族窒化物半導体発光素子10に含まれる少なくとも1層のIII族窒化物半導体層200は、特に制限はなく、目的とするIII族窒化物半導体発光素子の種類に応じた構造を有することができる。
【0029】
たとえば、図6を参照して、III族窒化物半導体発光素子10がLD(レーザダイオード)の場合、III族窒化物半導体層200は第1導電型層200vと活性層200aと第2導電型層200wとを含むLD構造を有することができる。また、図7を参照して、III族窒化物半導体発光素子10がLED(発光ダイオード)の場合、III族窒化物半導体層200は、第1導電型層200vと活性層200aと第2導電型層200wとを含むLED構造を有することができる。
【0030】
なお、III族窒化物半導体発光素子10において、III族窒化物半導体層200のそれぞれの層およびGaN結晶基板100は、それぞれ対応するマトリックス結晶領域およびc軸反転結晶領域を有したり、有しなかったりするが、図6および7においてはマトリックス結晶領域とc軸反転結晶領域との区別までは記載していない。
【0031】
図6を参照して、LDであるIII族窒化物半導体発光素子10は、GaN結晶基板100の主面100m(表主面)上に、III族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vであるn型GaN層201、n型Alx1Ga1-x1Nクラッド層202およびn型GaN光導波層203、MQW(多重量子井戸構造)の活性層200a、第2導電型層200wであるp型Alx2Ga1-x2Nキャップ層205、p型GaN光導波層206、p型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207およびp型GaNコンタクト層208がこの順に配置されている。ここで、元素記号の右下の添え字x1、x2およびx3は、それぞれ0より大きく1より小さい実数を示す。
【0032】
p型GaNコンタクト層208の一部およびp型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207の一部をエッチングにより除去して、p型GaNコンタクト層208の一部およびp型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207の一部で構成されるリッジ部209が形成されている。上記エッチングにより露出されたp型GaNコンタクト層208およびp型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207の表面上に絶縁層300であるSiO2層が配置されている。リッジ部209のp型GaNコンタクト層208上に第2電極400wが配置され、GaN結晶基板100の主面100n(裏主面)上に第1電極400vが配置されている。
【0033】
図7を参照して、LEDであるIII族窒化物半導体発光素子10は、GaN結晶基板100の主面100m(表主面)上に、III族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vであるn型GaN層211、MQW(多重量子井戸構造)の活性層200a、第2導電型層200wであるp型Alx4Ga1-x4Nブロック層217およびp型GaNコンタクト層218がこの順に配置されている。ここで、元素記号の右下の添え字x4は、0より大きく1より小さい実数を示す。p型GaNコンタクト層218上に第2電極400wが配置され、GaN結晶基板100の主面100n(裏主面)上に第1電極400vが配置されている。
【0034】
[III族窒化物半導体発光素子の製造方法]
本実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、図11を参照して、GaN結晶基板100を準備する工程S1と、GaN結晶基板100の主面100m上に1層以上のIII族窒化物半導体層200を成長させる工程S2とを含む。
【0035】
(GaN結晶基板の準備工程)
図11〜13を参照して、GaN結晶基板100を準備する工程S1は、下地基板80上にマスク90を形成するサブ工程(図12)と、マスク90が形成された下地基板80上にGaN結晶を成長させて加工することによりGaN結晶基板を形成するサブ工程(図13)とを含む。
【0036】
図12を参照して、下地基板80上にマスク90を形成するサブ工程において、下地基板80は、その主面上にGaN結晶を成長させることができるものであれば特に制限はないが、成長させるGaN結晶の結晶性を高くする観点から、サファイア基板、SiC基板、GaAs基板、またはこれらの基板上にGaN結晶層を形成したテンプレート基板が好適に用いられる。マスク90は、その主面上にGaN結晶のc軸反転結晶領域を形成するためにGaN結晶の成長を抑制するものであれば特に制限はなく、SiO2層、Si34層などが好適に用いられる。また、マスク90の形成方法は、特に制限はなく、スパッタ法、CVD(化学気相堆積)法などが好適に用いられる。
【0037】
また、下地基板80上におけるマスク90の配置は、特に制限はないが、成長させるGaN結晶の転位密度を効果的に低減する観点から、下地基板80の主面上の四角格子点または三角格子点上にドット状に配置していることが好ましい。マスク90の各ドットは、製品歩留まりの観点から、直径が15μm以上100μm以下が好ましく、ピッチが100μm以上2000μm以下が好ましい。
【0038】
図13を参照して、マスク90が形成された下地基板80上にGaN結晶100Tを成長させて加工することによりGaN結晶基板100を形成するサブ工程において、GaN結晶100Tを成長させる方法には、特に制限はなく、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、MBE(分子線成長)法、昇華法などの気相法、フラックス法などの液相法などが用いられる。結晶成長速度が高い観点から、HVPE法が好ましい。
【0039】
上記の方法により、マスク90が形成された下地基板80上にGaN結晶100Tを成長させると、マスク90が形成されていない下地基板80上にはマトリックス結晶領域100sが形成され、マスク90上にはc軸反転結晶領域100tが形成され、GaN結晶100Tの結晶成長面100gには、{0001}面100gc以外の面方位を有するファセット100gfが形成される。かかるファセット100gfを維持しながらGaN結晶100Tを成長させるファセット成長方法を用いて、GaN結晶100T全体の転位がc軸反転結晶領域100tに集められて反対符号の転位を結合されることにより、マトリックス結晶領域100sの転位密度が低減される。
【0040】
上記のようにして成長されたGaN結晶100Tを、その{0001}面に対して所定のオフ角θ(第1方向のオフ角成分θ1および第2方向のオフ角成分θ2)を有する面でスライスして加工することにより、{0001}面に対して所定のオフ角θ(第1方向のオフ角成分θ1および第2方向のオフ角成分θ2)を有する主面100m,100nを有するGaN結晶基板が形成される。なお、上記のオフ角θを形成する方法以外に、研削あるいは研磨でオフ角θを形成する方法、あるいは、オフ角θを有する下地基板80上にGaN結晶を成長させて、下地基板の主面と平行にスライスして加工する方法がある。
【0041】
(III族窒化物半導体層の成長工程)
図6、7および11を参照して、GaN結晶基板100の主面100m上に1層以上のIII族窒化物半導体層200を成長させる工程S2において、III族窒化物半導体層200を成長させる方法には、特に制限はなく、MOCVD法、MBE法、HVPE法、昇華法などの気相法、フラックス法などの液相法などが用いられる。III族窒化物半導体層200の化学組成および厚さの調整の精度が高い観点から、MOCVD法が好ましい。
【0042】
(LDであるIII族窒化物半導体発光素子の製造)
上記のIII族窒化物半導体層200の成長工程において、III族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vと、活性層200aと、第2導電型層200wとを含むLD(レーザダイオード)構造を形成することにより、LDであるIII族窒化物半導体発光素子10が製造される。
【0043】
LDであるIII族窒化物半導体発光素子10の製造方法は、特に制限はないが、図6を参照して、たとえば、以下のようにして行なうことができる。
【0044】
1.GaN結晶基板の準備
{0001}面に対して所定のオフ角θを有する主面100m,100nを有するGaN結晶基板100を準備する。
【0045】
2.III族窒化物半導体層の成長
次に、上記のGaN結晶基板100の主面100m(表主面)上に、MOCVD法により、III族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vであるSiがドープされたn型GaN層201、Siがドープされたn型Alx1Ga1-x1Nクラッド層202およびSiがドープされたn型GaN光導波層203、アンドープのIny1Ga1-y1N層およびアンドープのIny2Ga1-y2N層で構成されるMQW(多重量子井戸)構造の活性層200a、第2導電型層200wであるMgがドープされたp型Alx2Ga1-x2Nキャップ層205、Mgがドープされたp型GaN光導波層206、Mgがドープされたp型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207およびMgがドープされたp型GaNコンタクト層208を、を順次エピタキシャル成長させる。ここで、元素記号の右下の添え字x1、x2、x3、y1およびy2は、それぞれ0より大きく1より小さい実数を示す。
【0046】
3.素子化
次に、p型GaNコンタクト層208の主面全面に、CVD法により、SiO2膜を形成した後、このSiO2膜上にリソグラフィーによりリッジ部209の形状に対応した所定形状のレジストパターン(図示せず)を形成し、このレジストパターンをマスクとして、たとえばフッ酸系のエッチング液を用いたウエットエッチングにより、SiO2膜をエッチングし、リッジ部209に対応する形状とする。なお、かかるSiO2膜の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いてもよく、SiO2膜のエッチングには、フッ素を含むエッチングガスを用いたRIE(反応性イオンエッチング)法でもよい。
【0047】
次に、このSiO2膜をマスクとして、RIE法により、p型GaNコンタクト層208の表面からp型Alx3Ga1-x3Nクラッド層207の厚さ方向の所定の深さまでエッチングを行なうことにより、<10−10>方向に延在するリッジ部209を形成する。このリッジ部209の幅は2μmである。このRIEのエッチングガスとしては塩素系ガスを用いた。
【0048】
次に、エッチングマスクとして用いたSiO2膜をエッチング除去した後、主面全面に例えばCVD法、真空蒸着法、スパッタ法などにより、たとえばSiO2層のような絶縁層300を形成する。この絶縁層300は電気絶縁および表面保護のためのものである。
【0049】
次に、リソグラフィーにより第2電極形成領域を除いた領域の絶縁層300の表面を覆うレジストパターン(図示せず)を形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして絶縁層300をエッチングすることにより、開口部を形成する。
【0050】
次に、レジストパターンを残したままの状態で、主面全面に、たとえば、真空蒸着法により、たとえばPd膜、Pt膜およびAu膜を順次形成した後、レジストパターンをその上に形成されたPd膜、Pt膜およびAu膜とともに除去する(リフトオフ)。これによって、絶縁層300の開口部を通じてp型GaNコンタクト層208にコンタクトした第2電極400wが形成される。
【0051】
次に、チップに分割しやすくするため、第2電極400wが形成された側の主面を研磨用ホルダにはり付けて、GaN結晶基板100を研磨により薄くする。
【0052】
次に、GaN結晶基板100の主面100n(裏主面)に、たとえば真空蒸着法により、たとえばTi膜、Pt膜およびAu膜を順次形成し、Ti/Pt/Au構造の第1電極400vを形成する。
【0053】
次に、上述のようにしてレーザ構造のIII族窒化物半導体層200が形成されたGaN結晶基板100のスクライビングを劈開により行なってレーザバーに加工して両共振器端面を形成する。次に、これらの共振器端面に端面コーティングを施した後、再びこのレーザバーのスクライビングを劈開などにより行なってチップ化する。このようにして、LDであるIII族窒化物半導体発光素子10が製造される。
【0054】
(LEDであるIII族窒化物半導体発光素子の製造)
上記のIII族窒化物半導体層200の成長工程において、III族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vと、活性層200aと、第2導電型層200wとを含むLED(発光ダイオード)構造を形成することにより、LEDであるIII族窒化物半導体発光素子10が製造される。
【0055】
LEDであるIII族窒化物半導体発光素子10の製造方法は、特に制限はないが、図7を参照して、たとえば、以下のようにして行なうことができる。
【0056】
1.GaN結晶基板の準備
{0001}面に対して所定のオフ角θを有する主面100m,100nを有するGaN結晶基板100を準備する。
【0057】
2.III族窒化物半導体層の成長
次に、上記のGaN結晶基板100の主面100m(表主面)上に、MOCVD法により、少なくとも1層のIII族窒化物半導体層200として、第1導電型層200vであるSiがドープされたn型GaN層211、アンドープのIny3Ga1-y3N層およびアンドープのGaN層で構成されるMQW(多重量子井戸)構造の活性層200a、第2導電型層200wであるMgがドープされたp型Alx4Ga1-x4Nブロック層217およびMgがドープされたp型GaNコンタクト層218を、を順次エピタキシャル成長させる。ここで、元素記号の右下の添え字x4およびy3は、それぞれ0より大きく1より小さい実数を示す。
【0058】
3.素子化
次に、GaN結晶基板100の主面100n(裏主面)の少なくとも一部に第1電極400vを形成し、p型GaNコンタクト層218の主面の少なくとも一部に第2電極400wを形成し、さらにチップ化する。このようにして、LEDであるIII族窒化物半導体発光素子10が製造される。
【実施例】
【0059】
[実施例A]
1.GaN結晶基板の準備
マトリックス結晶領域とc軸反転結晶領域とを含み、表主面上においてc軸反転結晶領域が直径60μmのドット形状でピッチが1000μmの正方形格子点上に配置されたGaN結晶基板であって、{0001}面に対して表主面が所定のオフ角θを有し表主面および裏主面が所定の反りを有する17種類の直径が2インチ(5.08cm)で厚さが400μmのGa結晶基板を準備した(例AR−1〜AR−3および例A−1〜A−14)。実施例Aにおいては、オフ角θの第1方向を<10−10>方向、オフ角θの第2方向を<1−210>方向とした。
【0060】
ここで、GaN結晶基板100の主面100mと{0001}面との間のオフ角θについて、第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|は、(0002)面を回折面としてω角をスキャンさせるX線回折により測定した。また、表主面および裏主面のそれぞれの反りは、GaN結晶基板の表主面および裏主面のそれぞれにおける最高点と最低点との高低差を、レーザフォーカス方式のレーザ変位計(キーエンス社製LT−9010(レーザ出力部)およびLT−9500(レーザ制御部))、XYポジションコントローラ(コムス社製CP−500)および高速アナログ電圧データ収集装置(コムス社製CA−800)を用いて測定した。このレーザ変位計には、レーザ波長670nmの赤色半導体レーザを用いた。また、反りの符号は、測定される面が上となるようにGaN結晶基板を配置したとき、上に突出している場合をプラス(+)、下に凹んでいる場合をマイナス(−)とした。
【0061】
17種類のGaN結晶基板のそれぞれについて、<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|、<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|、表主面の反りおよび裏主面の反りは、以下のとおりであった。例AR−1のGaN結晶基板については、1.00°、0.90°、−11.4μmおよび−12.5μmであった。例AR−2のGaN結晶基板については、0.60°、0.60°、−10.5μmおよび−12.4μmであった。例AR−3のGaN結晶基板については、0.10°、0.09°、−14.4μmおよび−10.5μmであった。例A−1のGaN結晶基板については、1.10°、0.80°、−18.2μmおよび−15.8μmであった。例A−2のGaN結晶基板については、0.03°、0.02°、−15.2μmおよび−16.7μmであった。例A−3のGaN結晶基板については、0.86°、0.42°、5.6μmおよび−8.5μmであった。例A−4のGaN結晶基板については、0.05°、0.02°、5.6μmおよび−5.8μmであった。例A−5のGaN結晶基板については、0.76°、0.27°、−12.4μmおよび7.8μmであった。例A−6のGaN結晶基板については、0.11°、0.04°、−11.6μmおよび16.8μmであった。例A−7のGaN結晶基板については、0.59°、0.14°、−18.4μmおよび14.7μmであった。例A−8のGaN結晶基板については、0.20°、0.04°、8.9μmおよび11.9μmであった。例A−9のGaN結晶基板については、0.48°、0.11°、−9.6μmおよび17.8μmであった。例A−10のGaN結晶基板については、0.31°、0.07°、4.5μmおよび−18.6μmであった。例A−11のGaN結晶基板については、0.60°、0.04°、−6.2μmおよび3.4μmであった。例A−12のGaN結晶基板については、0.21°、0.01°、9.5μmおよび8.9μmであった。例A−13のGaN結晶基板については、0.49°、0.03°、−7.8μmおよび−11.2μmであった。例A−14のGaN結晶基板については、0.30°、0.02°、−8.2μmおよび10.3μmであった。結果を表1にまとめた。
【0062】
2.III族窒化物半導体層の成長
次に、上記の17種類のGaN結晶基板のそれぞれの表主面上に、MOCVD法により、III族窒化物半導体層として、Siがドープされた厚さが0.05μmのn型GaN層、Siがドープされた厚さが1.0μmのn型Al0.08Ga0.92Nクラッド層、Siがドープされた厚さが0.1μmのn型GaN光導波層、アンドープの厚さが3nmのIn0.15Ga0.85N層および厚さが6nmのIn0.03Ga0.97N層で構成される5周期のMQW(多重量子井戸)構造の活性層200a、Mgがドープされた厚さが10nmのp型Al0.2Ga0.8Nキャップ層、Mgがドープされた厚さが0.1μmのp型GaN光導波層、Mgがドープされた厚みが0.3μmのp型Al0.08Ga0.92Nクラッド層およびMgがドープされた厚さが0.05μmのp型GaNコンタクト層を順次エピタキシャル成長させた。
【0063】
こうして得られた半導体積層ウエハの表面を微分干渉顕微鏡で観察したところ、c軸反転結晶領域の近傍の<10−1>方向ならびに<12−10>方向に向かってエピタキシャル成長させたIII族窒化物半導体層エピタキシャル層が窪んでいることが観察できた。
【0064】
次に、得られた半導体積層ウエハの発光波長の分布をPL(フォトルミネッセンス)法により評価した。具体的には、直径2インチ(5.08cm)の半導体積層ウエハのIII族窒化物半導体層側の主面上の全面に渡って1mmのピッチで、III族窒化物半導体層のいずれの層の禁制帯幅より大きなエネルギーを有するレーザ光(ピーク波長が325nmのHe−Cdレーザ光)を照射し、励起された発光の波長分布(最大波長と最小波長との差)を測定した。
【0065】
3.素子化
次に、p型GaNコンタクト層の主面全面にCVD法により、厚さが0.1μmのSiO2膜を形成した後、このSiO2膜上にリソグラフィーによりリッジ部の形状に対応した所定形状のレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして、フッ酸系のエッチング液を用いたウエットエッチングによりSiO2膜をエッチングし、リッジ部に対応する形状とした。
【0066】
次に、このSiO2膜をマスクとして、RIE法により。p型GaNコンタクト層の表面からp型Al0.08Ga0.92Nクラッド層の厚さ方向の所定の深さまでエッチングを行なうことにより、<10−10>方向に延在するリッジ部を形成する。このリッジ部の幅は2μmである。このRIEのエッチングガスとしては塩素系ガスを用いた。
【0067】
次に、エッチングマスクとして用いたSiO2膜をエッチング除去した後、主面全面に、CVD法により、厚さが0.3μmのSiO2層のような絶縁層を形成した。この絶縁層は電気絶縁および表面保護のためのものであった。
【0068】
次に、リソグラフィーにより第2電極形成領域を除いた領域の絶縁層の表面を覆うレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして絶縁層をエッチングすることにより、開口部を形成する。
【0069】
次に、レジストパターンを残したままの状態で、主面全面に、真空蒸着法により、Pd膜、Pt膜およびAu膜を順次形成した後、レジストパターンをその上に形成されたPd膜、Pt膜およびAu膜とともに除去した(リフトオフ)。これによって、絶縁層の開口部を通じてp型GaNコンタクト層にコンタクトした第2電極が形成される。ここで、この第2電極を構成するPd膜、Pt膜およびAu膜の厚さは、それぞれ10nm、100nmおよび300nmとした。
【0070】
次に。チップに分割しやすくするため、第2電極が形成された側の主面を研磨用ホルダにはり付けた後、平均粒径30μmのSiC砥粒を含むスラリーを使用してGaN基板の厚さが400μmから100μmになるまで研磨を行なった。
【0071】
次に、GaN結晶基板の裏主面に、真空蒸着法により、Ti膜、Pt膜およびAu膜を順次形成し、Ti/Pt/Au構造の第1電極を形成した。ここで、この第1電極を構成するTi膜、Pt膜およびAu膜の厚さは、それぞれ10nm、50nmおよび100nmとした。
【0072】
次に、上述のようにしてレーザ構造が形成されたGaN基板のスクライビングを劈開により行なってレーザバーに加工して両共振器端面を形成した。次に、これらの共振器端面に端面コーティングを施した後、再びこのレーザバーのスクライビングを劈開などにより行なってチップ化した。このようにして、各種類の半導体積層ウエハから100個のLDチップ、すなわち17種類の半導体積層ウエハから全部で1700個のLDチップ
が得られた。
【0073】
それぞれの種類の100個のLDチップについて、それぞれの光発振の有無を調べ、光発振があったLDチップを合格として、チップ合格率を算出した。
【0074】
17種類のLDのそれぞれについて、凹部面積比率、主面内発光波長分布およびチップ合格率は、以下のとおりであった。例AR−1のLDについては、1.72、22nmおよび43%であった。例AR−2のLDについては、1.46、22nmおよび44%であった。例AR−3のLDについては、1.40、18nmおよび49%であった。例A−1のLDについては、0.70、12nmおよび78%であった。例A−2のLDについては、0.64、12nmおよび78%であった。例A−3のLDについては、0.51、9nmおよび82%であった。例A−4のLDについては、0.52、9nmおよび81%であった。例A−5のLDについては、0.34、8nmおよび85%であった。例A−6のLDについては、0.38、8nmおよび83%であった。例A−7のLDについては、0.19、7nmおよび92%であった。例A−8のLDについては、0.20、7nmおよび90%であった。例A−9のLDについては、0.18、7nmおよび91%であった。例A−10のLDについては、0.11、7nmおよび92%であった。例A−11のLDについては、0.21、4nmおよび94%であった。例A−12のLDについては、0.18、4nmおよび93%であった。例A−13のLDについては、0.06、4nmおよび95%であった。例A−14のLDについては、0.06、4nmおよび94%であった。結果を表1にまとめた。また、例AR−1〜AR−3および例A−1〜A−14のそれぞれのLDにおけるGaN結晶基板の主面について、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|との関係を図14のグラフに示した。
【0075】
【表1】

【0076】
表1および図14から明らかなように、LDであるIII族窒化物半導体発光素子において、GaN結晶基板の主面と{0001}面との間のオフ角θについて、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z1(0.03°≦|θ1|≦1.1°かつ|θ2|≦0.75×|θ1|)内にあるとき、凹部面積比率が低くなり、主面内発光波長分布が少なく、チップ合格率が高くなった。また、かかる凹部面積比率の低下、主面内発光波長分布の減少およびチップ合格率の増大の効果は、上記の第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z2(0.05°≦|θ1|≦0.86°かつ|θ2|≦0.5×|θ1|)内、範囲Z3(0.11°≦|θ1|≦0.76°かつ|θ2|≦0.375×|θ1|)内、範囲Z4(0.2°≦|θ1|≦0.6°かつ|θ2|≦0.25×|θ1|)内、範囲Z5(0.3°≦|θ1|≦0.5°かつ|θ2|≦0.125×|θ1|)内にある程、大きくなった。
【0077】
[実施例B]
1.GaN結晶基板の準備
オフ角θの第1方向を<1−210>方向、オフ角θの第2方向を<10−10>方向としたこと以外は、実施例Aと同様にして、17種類のGaN結晶基板を準備した。
【0078】
17種類のGaN結晶基板のそれぞれについて、<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|、<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|、表主面の反りおよび裏主面の反りは、以下のとおりであった。例BR−1のGaN結晶基板については、0.95°、0.99°、11.9μmおよび11.9μmであった。例BR−2のGaN結晶基板については、0.59°、0.66°、−9.6μmおよび4.5μmであった。例BR−3のGaN結晶基板については、0.10°、0.09°、7.8μmおよび4.5μmであった。例B−1のGaN結晶基板については、0.78°、1.08°、8.9μmおよび7.8μmであった。例B−2のGaN結晶基板については、0.02°、0.03°、−11.6μmおよび17.8μmであった。例B−3のGaN結晶基板については、0.41°、0.84°、4.5μmおよび14.7μmであった。例B−4のGaN結晶基板については、0.02°、0.05°、8.9μmおよび11.9μmであった。例B−5のGaN結晶基板については、0.26°、0.74°、9.5μmおよび8.9μmであった。例B−6のGaN結晶基板については、0.04°、0.11°、4.5μmおよび−18.6μmであった。例B−7のGaN結晶基板については、0.14°、0.59°、−8.2μmおよび3.4μmであった。例B−8のGaN結晶基板については、0.04°、0.20°、0.0μmおよび8.9μmであった。例B−9のGaN結晶基板については、0.11°、0.47°、−7.8μmおよび−15.2μmであった。例B−10のGaN結晶基板については、0.07°、0.30°、−16.7μmおよび10.3μmであった。例B−11のGaN結晶基板については、0.04°、0.58°、−8.5μmおよび−15.2μmであった。例B−12のGaN結晶基板については、0.01°、0.21°、−5.8μmおよび5.6μmであった。例B−13のGaN結晶基板については、0.03°、0.48°、7.8μmおよび−16.7μmであった。例B−14のGaN結晶基板については、0.02°、0.31°、−8.5μmおよび−12.4μmであった。結果を表2にまとめた。
【0079】
2.III族窒化物半導体層の成長
次に、上記の17種類のGaN結晶基板のそれぞれの表主面上に、実施例Aと同様にして、III族窒化物半導体層を成長させた。こうして得られた半導体積層ウエハの表面を微分干渉顕微鏡で観察したところ、c軸反転結晶領域の近傍の<10−1>方向ならびに<12−10>方向に向かってエピタキシャル成長させたIII族窒化物半導体層エピタキシャル層が窪んでいることが観察できた。また、得られた半導体積層ウエハの発光波長の分布を実施例Aと同様にして評価した。
【0080】
3.素子化
次に、実施例Aと同様にして、上記の各種類の半導体積層ウエハから100個のLDチップ、すなわち17種類の半導体積層ウエハから全部で1700個のLDチップが得られた。
【0081】
それぞれの種類のLDチップについて、実施例Aと同様にして、チップ合格率を算出した。
【0082】
17種類のLDのそれぞれについて、凹部面積比率、主面内発光波長分布およびチップ合格率は、以下のとおりであった。例BR−1のLDについては、2.04、19nmおよび38%であった。例BR−2のLDについては、1.72、21nmおよび34%であった。例BR−3のLDについては、1.78、17nmおよび48%であった。例B−1のLDについては、0.89、12nmおよび74%であった。例B−2のLDについては、0.86、12nmおよび73%であった。例B−3のLDについては、0.51、9nmおよび81%であった。例B−4のLDについては、0.52、9nmおよび80%であった。例B−5のLDについては、0.44、8nmおよび83%であった。例B−6のLDについては、0.45、8nmおよび83%であった。例B−7のLDについては、0.26、7nmおよび90%であった。例B−8のLDについては、0.25、7nmおよび91%であった。例B−9のLDについては、0.27、7nmおよび90%であった。例B−10のLDについては、0.24、7nmおよび89%であった。例B−11のLDについては、0.24、6nmおよび92%であった。例B−12のLDについては、0.27、6nmおよび91%であった。例B−13のLDについては、0.07、3nmおよび97%であった。例B−14のLDについては、0.08、3nmおよび94%であった。結果を表2にまとめた。また、例BR−1〜BR−3および例B−1〜B−14のそれぞれのLDにおけるGaN結晶基板の主面について、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|との関係を図15のグラフに示した。
【0083】
【表2】

【0084】
表2および図15から明らかなように、LDであるIII族窒化物半導体発光素子において、GaN結晶基板の主面と{0001}面との間のオフ角θについて、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が、範囲Z1(0.03°≦|θ1|≦1.1°かつ|θ2|≦0.75×|θ1|)内にあるとき、凹部面積比率が低くなり、主面内発光波長分布が少なく、チップ合格率が高くなった。また、かかる凹部面積比率の低下、主面内発光波長分布の減少およびチップ合格率の増大の効果は、上記の第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z2(0.05°≦|θ1|≦0.86°かつ|θ2|≦0.5×|θ1|)内、範囲Z3(0.11°≦|θ1|≦0.76°かつ|θ2|≦0.375×|θ1|)内、範囲Z4(0.2°≦|θ1|≦0.6°かつ|θ2|≦0.25×|θ1|)内、範囲Z5(0.3°≦|θ1|≦0.5°かつ|θ2|≦0.125×|θ1|)内にある程、大きくなった。
【0085】
[実施例C]
1.GaN結晶基板の準備
実施例Aと同様にして、11種類のGaN結晶基板を準備した。
【0086】
11種類のGaN結晶基板のそれぞれについて、<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|、<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|、表主面の反りおよび裏主面の反りは、以下のとおりであった。例CR−1のGaN結晶基板については、1.09°、0.93°、8.9μmおよび12.0μmであった。例CR−2のGaN結晶基板については、0.65°、0.65°、−7.8μmおよび−5.7μmであった。例CR−3のGaN結晶基板については、0.10°、0.11°、8.9μmおよび−11.2μmであった。例C−1のGaN結晶基板については、1.06°、0.77°、−14.3μmおよび12.8μmであった。例C−2のGaN結晶基板については、0.03°、0.02°、4.5μmおよび−11.5μmであった。例C−3のGaN結晶基板については、0.58°、0.13°、−8.5μmおよび−15.2μmであった。例C−4のGaN結晶基板については、0.20°、0.04°、0.0μmおよび5.6μmであった。例C−5のGaN結晶基板については、0.46°、0.11°、7.8μmおよび−11.6μmであった。例C−6のGaN結晶基板については、0.30°、0.07°、5.8μmおよび11.4μmであった。例C−7のGaN結晶基板については、0.57°、0.04°、5.9μmおよび−8.0μmであった。例C−8のGaN結晶基板については、0.20°、0.01°、11.9μmおよび4.5μmであった。結果を表3にまとめた。
【0087】
2.III族窒化物半導体層の成長
次に、上記の11種類のGaN結晶基板のそれぞれの表主面上に、MOVPE法により、少なくとも1層のIII族窒化物結晶層として、Siがドープされた厚さが5μmのn型GaN層、アンドープの厚さが3nmのIn0.2Ga0.8N層およびアンドープの厚さが15nmのGaN層で構成される3周期のMQW(多重量子井戸)構造の活性層、Mgがドープされた厚さが60nmのAl0.2Ga0.8Nブロック層、Mgがドープされた厚さ150nmのp型GaNコンタクト層を順次成長させて半導体積層ウエハを得た。こうして得られた半導体積層ウエハの表面を微分干渉顕微鏡で観察したところ、c軸反転結晶領域の近傍の<10−1>方向ならびに<12−10>方向に向かってエピタキシャル成長させたIII族窒化物半導体層エピタキシャル層が窪んでいることが観察できた。また、得られた半導体積層ウエハの発光波長の分布を実施例Aと同様にして評価した。
【0088】
3.素子化
次に、上記の半導体積層ウエハをチップに分割したときにGaN結晶基板の裏主面の中央部になる位置に直径80μm×厚さ100nmの第1電極を形成し、p型GaNコンタクト層24の主面の中央部になる位置に直径150μm×厚さ100nmの第2電極を形成して、半導体発光素子ウエハを得た。次に、各種類の半導体発光素子ウエハを100個の400μm×400μmのチップに分割した。すなわち、11種類の半導体発光素子ウエハから全部で1100個のLEDチップが得られた。 それぞれの種類の100個のLEDチップについて、それぞれの発光強度を測定し、所定の規格値を超えたLEDチップを合格として、チップ合格率を算出した。
【0089】
11種類のLEDのそれぞれについて、凹部面積比率、主面内発光波長分布およびチップ合格率は、以下のとおりであった。例CR−1のLEDについては、1.97、18nmおよび42%であった。例CR−2のLEDについては、1.85、19nmおよび41%であった。例CR−3のLEDについては、1.85、19nmおよび39%であった。例C−1のLEDについては、0.76、10nmおよび82%であった。例C−2のLEDについては、0.85、12nmおよび84%であった。例C−3のLEDについては、0.21、5nmおよび94%であった。例C−4のLEDについては、0.23、5nmおよび96%であった。例C−5のLEDについては、0.20、4nmおよび93%であった。例C−6のLEDについては、0.21、6nmおよび95%であった。例C−7のLEDについては、0.24、4nmおよび95%であった。例C−8のLEDについては、0.20、4nmおよび93%であった。結果を表3にまとめた。また、例CR−1〜CR−3および例C−1〜C−8のそれぞれのLEDにおけるGaN結晶基板の主面について、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|との関係を図16のグラフに示した。
【0090】
【表3】

【0091】
表3および図16から明らかなように、LDであるIII族窒化物半導体発光素子において、GaN結晶基板の主面と{0001}面との間のオフ角θについて、第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z1(0.03°≦|θ1|≦1.1°かつ|θ2|≦0.75×|θ1|)内にあるとき、凹部面積比率が低くなり、主面内発光波長分布が少なく、チップ合格率が高くなった。また、かかる凹部面積比率の低下、主面内発光波長分布の減少およびチップ合格率の増大の効果は、上記の第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z2(0.05°≦|θ1|≦0.86°かつ|θ2|≦0.5×|θ1|)内、範囲Z3(0.11°≦|θ1|≦0.76°かつ|θ2|≦0.375×|θ1|)内、範囲Z4(0.2°≦|θ1|≦0.6°かつ|θ2|≦0.25×|θ1|)内、範囲Z5(0.3°≦|θ1|≦0.5°かつ|θ2|≦0.125×|θ1|)内にある程、大きくなった。
【0092】
[実施例D]
1.GaN結晶基板の準備
実施例Bと同様にして、11種類のGaN結晶基板を準備した。
【0093】
11種類のGaN結晶基板のそれぞれについて、<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|、<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|、表主面の反りおよび裏主面の反りは、以下のとおりであった。例DR−1のGaN結晶基板については、0.99°、1.00°、12.8μmおよび12.0μmであった。例DR−2のGaN結晶基板については、0.66°、0.70°、4.5μmおよび−5.7μmであった。例DR−3のGaN結晶基板については、0.10°、0.10°、−5.7μmおよび−11.2μmであった。例D−1のGaN結晶基板については、0.76°、1.10°、−14.3μmおよび12.8μmであった。例D−2のGaN結晶基板については、0.02°、0.03°、8.9μmおよび−11.5μmであった。例D−3のGaN結晶基板については、0.14°、0.59°、5.9μmおよび5.6μmであった。例D−4のGaN結晶基板については、0.04°、0.20°、11.9μmおよび−11.6μmであった。例D−5のGaN結晶基板については、0.11°、0.48°、5.8μmおよび0.0μmであった。例D−6のGaN結晶基板については、0.07°、0.31°、5.8μmおよび11.4μmであった。例D−7のGaN結晶基板については、0.04°、0.60°、5.9μmおよび−8.0μmであった。例D−8のGaN結晶基板については、0.01°、0.21°、12.0μmおよび3.2μmであった。結果を表3にまとめた。
【0094】
2.III族窒化物半導体層の成長
上記の11種類のGaN結晶基板のそれぞれの表主面上に、実施例Cと同様にして、III族窒化物半導体層を成長させた。こうして得られた半導体積層ウエハの表面を微分干渉顕微鏡で観察したところ、c軸反転結晶領域の近傍の<10−1>方向ならびに<12−10>方向に向かってエピタキシャル成長させたIII族窒化物半導体層エピタキシャル層が窪んでいることが観察できた。また、得られた半導体積層ウエハの発光波長の分布を実施例Aと同様にして評価した。
【0095】
3.素子化
次に、実施例Cと同様にして、上記の各種類の半導体積層ウエハから対応する各種類の半導体発光素子ウエハを形成し、各種類の半導体発光素子ウエハから100個のLEDチップ、すなわち11種類の半導体発光素子ウエハから全部で1100個のLEDチップが得られた。
【0096】
それぞれの種類のLEDチップについて、実施例Cと同様にして、チップ合格率を算出した。
【0097】
11種類のLEDのそれぞれについて、凹部面積比率、主面内発光波長分布およびチップ合格率は、以下のとおりであった。例DR−1のLEDについては、2.04、19nmおよび38%であった。例DR−2のLEDについては、1.72、21nmおよび34%であった。例DR−3のLEDについては、1.78、17nmおよび48%であった。例D−1のLEDについては、0.89、12nmおよび74%であった。例D−2のLEDについては、0.86、12nmおよび73%であった。例D−3のLEDについては、0.26、7nmおよび90%であった。例D−4のLEDについては、0.25、7nmおよび91%であった。例D−5のLEDについては、0.27、7nmおよび90%であった。例D−6のLEDについては、0.24、7nmおよび89%であった。例D−7のLEDについては、0.24、6nmおよび92%であった。例D−8のLEDについては、0.27、6nmおよび91%であった。結果を表4にまとめた。また、例DR−1〜DR−3および例D−1〜D−8のそれぞれのLEDにおけるGaN結晶基板の主面について、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|との関係を図17のグラフに示した。
【0098】
【表4】

【0099】
表4および図17から明らかなように、LDであるIII族窒化物半導体発光素子において、GaN結晶基板の主面と{0001}面との間のオフ角θについて、第2方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|および第1方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が、範囲Z1(0.03°≦|θ1|≦1.1°かつ|θ2|≦0.75×|θ1|)内にあるとき、凹部面積比率が低くなり、主面内発光波長分布が少なく、チップ合格率が高くなった。また、かかる凹部面積比率の低下、主面内発光波長分布の減少およびチップ合格率の増大の効果は、上記の第1方向である<10−10>方向のオフ角成分の絶対値|θ1|および第2方向である<1−210>方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が、範囲Z2(0.05°≦|θ1|≦0.86°かつ|θ2|≦0.5×|θ1|)内、範囲Z3(0.11°≦|θ1|≦0.76°かつ|θ2|≦0.375×|θ1|)内、範囲Z4(0.2°≦|θ1|≦0.6°かつ|θ2|≦0.25×|θ1|)内、範囲Z5(0.3°≦|θ1|≦0.5°かつ|θ2|≦0.125×|θ1|)内にある程、大きくなった。
【0100】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
10 III族窒化物半導体発光素子、80 下地基板、90 マスク、100 GaN結晶基板、100c,100gc {0001}面、100g 結晶成長面、100gf ファセット、100m,100n,200m 主面、100s,200s マトリックス結晶領域、100t,200t c軸反転結晶領域、100T GaN結晶、200 III族窒化物半導体層、200a 活性層、200h 凸部、200r 凹部、200v 第1導電型層、200w 第2導電型層、201,211 n型GaN層、202 n型Alx1Ga1-x1Nクラッド層、203 n型GaN光導波層、205 p型Alx2Ga1-x2Nキャップ層、206 p型GaN光導波層、207 p型Alx3Ga1-x3Nクラッド層、208,218 p型GaNコンタクト層、209 リッジ部、217 p型Alx4Ga1-x4Nブロック層、300 絶縁層、400v 第1電極、400w 第2電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN結晶基板と、前記GaN結晶基板の主面上に配置された少なくとも1層のIII族窒化物半導体層と、を含み、
前記GaN結晶基板は、マトリックス結晶領域とc軸反転結晶領域とを含み、前記c軸反転結晶領域の結晶は前記マトリックス結晶領域の結晶に対して<1−210>方向が同じであり<0001>方向が反転しており、前記主面と{0001}面との間のオフ角θについて、<10−10>方向および<1−210>方向のうちいずれか一方の方向を第1方向とし他方の方向を第2方向とするとき、前記第1方向のオフ角成分の絶対値|θ1|が0.03°以上1.1°以下、かつ、前記第2方向のオフ角成分の絶対値|θ2|が0.75×|θ1|以下であるIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項2】
前記III族窒化物半導体層は、第1導電型層と活性層と第2導電型層とを含むレーザダイオード構造を有する請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。
【請求項3】
前記III族窒化物半導体層は、第1導電型層と活性層と第2導電型層とを含む発光ダイオード構造を有する請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−253123(P2012−253123A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123242(P2011−123242)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】