説明

MEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイス

【課題】MEMSデバイスの周囲に設けられる中空領域の形状を安定化させる。
【解決手段】MEMSデバイス80は、MEMS素子領域200上に第1の中空領域10
0が設けられる。第1の中空領域100の外周部には第1の中空領域100よりも高さの
低い第2の中空領域101が設けられる。第2の中空領域101の外周部には第2の中空
領域101よりも高さの低い第3の中空領域102が設けられる。第1の中空領域100
、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102上には、絶縁膜7が設けられる。絶
縁膜7及び第3の中空領域102の側面には絶縁膜8が第1の中空領域100、第2の中
空領域101、及び第3の中空領域102を覆うように設けられる。積層される絶縁膜7
及び8には開口部9が設けられ、開口部9を封止するように、有機膜10及び絶縁膜11
から構成される封止材が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、通常の半導体素子、IC、LSIな
どとは異なり、機械的可動部を有するデバイスである。このため、MEMSデバイスを実
装する場合、機械的可動部分を保持するために実装部或いはパッケージ内部に中空領域を
設ける必要がある。中空領域を形成する方法として、第1の犠牲層上に面積が小さい第2
の犠牲層を設け、第1及び第2の犠牲層を除去することにより中空領域を形成する方法が
ある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されるMEMSデバイスでは、第2の犠牲層のパターン形成時に下層
の第1の犠牲層がエッチングされて所望の中空構造が形成されないという問題点がある。
また、中空領域上の絶縁膜を形成する工程で、プロセスダメージによる第1の犠牲層の表
面荒れが発生し、その後の工程でMEMS素子や第2の犠牲層が基板から剥離するという
問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7008812号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安定した中空構造を有するMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイス
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のMEMSデバイスの製造方法は、基板上に第1の配線層を形成する工
程と、前記第1の配線層及び前記基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、前記第1の絶
縁膜上に、前記第1の配線層を覆うように第1の犠牲層を形成し、前記第1の犠牲層及び
前記第1の絶縁膜を前記第1の配線層表面が露呈するようにエッチングして第1の開口部
を形成する工程と、前記開口部に埋設される部分がアンカー部となり、前記開口部及び前
記第1の犠牲層上に第2の配線層を設け、MEMS素子を形成する工程と、前記第1の絶
縁膜、前記第2の配線層、及び前記第1の犠牲層上に第2の犠牲層を形成する工程と、前
記第2の犠牲層上に前記第2の配線層及び前記第1の犠牲層の配置領域よりも広い第2の
絶縁膜を形成する工程と、前記第2の絶縁膜をマスクにして、前記第2の犠牲層をエッチ
ングする工程と、前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工
程と、前記第2の犠牲層上の前記第2及び第3の絶縁膜をエッチングして第2の開口部を
形成する工程と、前記第2の開口部を介して、前記第1及び第2の犠牲層を除去する工程
と、前記第2の開口部を封止し、前記MEMS素子が形成される領域に設けられた中空領
域を保持するように、前記第3の絶縁膜上に封止材を形成する工程とを具備することを特
徴とする。
【0007】
更に、本発明の他態様のMEMSデバイスは、基板上に設けられる第1の配線層と、ア
ンカー部で前記第1の配線層に接続され、前記第1の配線層上部に前記第1の配線層と離
間配置される第2の配線層とが設けられるMEMS素子領域と、前記MEMS素子領域上
に設けられる第1の中空領域と、前記MEMS素子領域の外周部上に設けられ、前記第1
の中空領域よりも高さが低い第2の中空領域と、前記第2の中空領域の外周部上に設けら
れ、前記第2の中空領域よりも高さが低い第3の中空領域と、前記第1乃至3の中空領域
の上部及び側面を覆うように設けられる絶縁膜と、前記第1乃至3の中空領域上の前記絶
縁膜に設けられる開口部と、前記開口部を封止し、前記第1乃至3の中空領域を保持する
ように前記絶縁膜上に設けられる封止材とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定した中空構造を有するMEMSデバイスの製造方法、MEMSデ
バイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスを示す模式平面図。
【図2】図1のA−A線に沿うMEMSデバイスの断面図。
【図3】図1のB−B線に沿うMEMSデバイスの断面図。
【図4】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図5】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図6】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図7】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図8】本発明の実施例1に係る比較例のMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図9】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図10】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図11】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図12】本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図13】本発明の実施例2に係るMEMSデバイスを示す断面図。
【図14】本発明の実施例2に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図15】本発明の実施例2に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【図16】本発明の実施例3に係るMEMSデバイスの製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、本発明の実施例1に係るMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイスについ
て、図面を参照して説明する。図1はMEMSデバイスを示す模式平面図、図2は図1の
A−A線に沿うMEMSデバイスの断面図、図3は図1のB−B線に沿うMEMSデバイ
スの断面図である。本実施例では、高さの異なる3つの中空領域がMEMS素子領域上及
びその周辺に設けられる。
【0012】
図1に示すように、MEMSデバイス80は、中央部にMEMS素子領域200が設け
られる。MEMS素子領域200は図示しない封止材で気密封止される。MEMS素子領
域200上には第1の中空領域100が設けられる。第1の中空領域100の外周部には
第2の中空領域101が設けられる。第2の中空領域101の外周部には第3の中空領域
102が設けられる。なお、中空領域はキャビティ(空洞)とも呼称される。MEMSデ
バイス80は、MEMS素子領域200に可動部が設けられるRF−MEMSである。R
F−MEMSは、例えば移動体機器等の高周波部品に適用され、具体的にはスイッチ、フ
ィルタ、或いはバラクタなどのデバイスに適用される。
【0013】
図2に示すように、MEMSデバイス80は、例えばシリコン基板からなる基板1上に
層間絶縁膜2が設けられる。層間絶縁膜2上には、端子3aと配線層4が設けられる。配
線層4の一部はMEMS素子の可動部となる第1の電極5aとして使用され、他の部分は
MEMS素子内を接続する配線やMEMS素子の外部との接続配線として使用される。な
お、シリコン基板からなる基板1上部には図示しないIC或いはLSIが既に設けられて
いる。端子3aは、IC或いはLSIのチップ端子である。
【0014】
層間絶縁膜2、配線層4、及び第1の電極5a上には保護膜としての絶縁膜6が設けら
れる。絶縁膜6は、端子3aの上端部にも設けられる。配線層4上の絶縁膜6には開口部
が設けられる。開口部上には、配線層が設けられる。具体的には、開口部上に配線層4と
接するアンカー部51を有する第2の電極5bが、第1の電極5aと離間して上部に設け
られる。第1の電極5aと第2の電極5bはMEMS素子の可動部となる。
【0015】
MEMS素子領域200上には、基板と絶縁膜の間隔L1を有する第1の中空領域10
0が設けられる。第1の中空領域100の外周部には、基板と絶縁膜の間隔L2を有する
第2の中空領域101が絶縁膜6上に設けられる。第2の中空領域101の外周部には、
基板と絶縁膜の間隔L3を有する第3の中空領域103が絶縁膜6上に設けられる。第1
の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102には、例えば空気
が充填される。なお、空気の代わりに不活性ガス(例えば、窒素ガス)などを充填しても
よい。
【0016】
ここで、基板と絶縁膜の間隔L1、基板と絶縁膜の間隔L2、基板と絶縁膜の間隔L3
の関係は、
L1>L2>L3・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
に設定される。
【0017】
第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102上には、絶
縁膜7が設けられる。絶縁膜7上と第3の中空領域102の側面には、絶縁膜8が設けら
れる。つまり、絶縁膜7及び8により第1の中空領域100、第2の中空領域101、及
び第3の中空領域102が形成され、絶縁膜7及び8がMEMS素子領域200を覆うよ
うに設けられる。積層形成される絶縁膜7及び8の第1の中空領域100、第2の中空領
域101、及び第3の中空領域102には、開口部9がそれぞれ設けられる。絶縁膜8上
には、開口部9を封止するように、有機膜10が設けられる。有機膜10及び絶縁膜8上
には、絶縁膜11が設けられる。
【0018】
ここで、有機膜10と絶縁膜11は、MEMS素子を封止する封止材として機能する。
端子3a、配線層4、第1の電極5a、及び第2の電極5bには、アルミニウム(Al)
を用いているが、代わりに銅(Cu)などの金属を用いてもよい。絶縁膜6、絶縁膜7、
絶縁膜8、絶縁膜11には、シリコン窒化膜(SiN膜)を用いているが、代わりにシリ
コン酸化膜(SiO)、SiON膜、或いはSiOCH膜などを用いてもよい。有機膜
11には、ポリイミド樹脂を用いているが、代わりにBCB(Benzo−Cycro−Buten)樹
脂、フッ素樹脂(parylen−Nなど)、或いはポリアミド樹脂などの有機膜を用いてもよい

【0019】
図3に示すように、MEMS素子領域に設けられる配線層4は、封止材としての有機膜
10及び絶縁膜11が設けられる領域よりも外側に延在し、上部に設けられる端子3bと
接続される。この端子3bは、例えばMEMSデバイス80のモジュール形成時、上部に
バンプが形成されバンプ接合される。
【0020】
次に、MEMSデバイスの製造方法について、図4乃至12を参照して説明する。図4
乃至7、図9乃至12はMEMSデバイスの製造工程を示す断面図、図8は比較例のME
MSデバイスの製造工程を示す断面図である。
【0021】
図4に示すように、層間絶縁膜2上に配線層4及び第1の電極5aを、数百nm〜数um厚
の範囲で形成する。層間絶縁膜2、配線層4及び第1の電極5a上に、例えばCVD(Ch
emical Vapor Deposition)法を用いて、配線層4及び第1の電極5aの保護膜となる絶
縁膜6を数百nm〜数um厚の範囲で形成する。絶縁膜6形成後、端子3a上の絶縁膜6を端
部を除いてエッチングする。
【0022】
次に、図5に示すように、絶縁膜6上に第1の犠牲層31を数百nm〜数um厚の範囲で、
例えば塗布法により形成する。周知のリソグラフィー法を用いて図示しないレジスト膜を
形成する。このレジスト膜をマスクにして、例えばRIE法により第1の犠牲層31を所
望な形状にパターン形成する。このレジスト膜を除去後、再度レジスト膜をマスクにして
、配線層4上の絶縁膜6を、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチン
グして開口部を形成し、配線層4表面が露呈される。このレジスト膜を除去する。
【0023】
ここで、第1の犠牲層31には、ポリイミド樹脂を用いているが、代わりにBCB(Be
nzo−Cycro−Buten)樹脂、フッ素樹脂(parylen−Nなど)、或いはポリアミド樹脂など
の有機膜を用いてもよい。
【0024】
続いて、図6に示すように、この開口部及び第1の犠牲層31上に配線層を数百nm〜数
um厚の範囲でパターン形成する。この結果、配線層4に接続されるアンカー部51を有す
る第2の電極5bが形成される。第1の電極5a及び第2の電極5bがMEMS素子の可
動部となる。
【0025】
そして、図7に示すように、絶縁膜6、第1の犠牲層31、及び第2の電極5b上に第
2の犠牲層32及び絶縁膜7を連続的に形成する。第2の犠牲層32は、例えば塗布法に
より数百nm〜数um厚の範囲で形成する。絶縁膜7は、例えばCVD法により数百nm〜数um
厚の範囲で形成する。第2の犠牲層32及び絶縁膜7形成後、周知のリソグラフィー法を
用いて図示しないレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクにして絶縁膜7を、例え
ばRIE法を用いてエッチングする。このレジスト膜を除去する。
【0026】
ここで、第2の犠牲層32には、ポリイミド樹脂を用いているが、代わりにBCB(Be
nzo−Cycro−Buten)樹脂、フッ素樹脂(parylen−Nなど)、或いはポリアミド樹脂など
の有機膜を用いてもよい。
【0027】
なお、本実施例では、第2の犠牲層32を第1の犠牲層31の周囲(上部及び側面)を
完全に覆うように設けている。図8に示すように、例えば、比較例のように第2の犠牲層
32aを第1の犠牲層31a上部にのみ形成した場合、第1の犠牲層31aが露呈される
領域にプラズマダメージや第1の犠牲層31aの膜厚低下等が発生する。犠牲層31aの
膜厚低下が発生すると所望の中空構造が形成できないという問題点が発生する。また、中
空領域上の絶縁膜を形成する工程で、プロセスダメージによる第1の犠牲層31aの表面
荒れが発生し、その後の工程でMEMS素子や第2の犠牲層32aが基板1から剥離する
という問題が発生する。
【0028】
また、本実施例では、図1乃至3に示すような第1乃至3の中空領域を形成するために
、第2の犠牲層32の高さを変化させているが必ずしもこれに限定されるものではない。
例えば、第2の犠牲層32を一定な高さに形成し、第1乃至3の中空領域の高さを同じに
してもよい。或いは、MEMS素子領域200の周辺部の第2の犠牲層32を一定な高さ
に形成し、第2及び第3の中空領域の高さを同じにしてもよい。
【0029】
次に、図9に示すように、絶縁膜7をマスクにして第2の犠牲層32を、例えばRIE
法を用いてエッチングする。ここでは、RIE法を用いて第2の犠牲層32をエッチング
しているが、代わりにウエットエッチング法を用いてもよい。
【0030】
続いて、図10に示すように、端子3a、絶縁膜6及び絶縁膜7上に、例えばCVD法
を用いて絶縁膜8を形成する。絶縁膜8形成後、周知のリソグラフィー法を用いて図示し
ないレジスト膜を形成する。このレジスト膜をマスクにして、例えばRIE法により、絶
縁膜8と絶縁膜7を連続的にエッチングし、第1の中空領域100、第2の中空領域10
1、及び第3の中空領域102上に開口部9をそれぞれ形成する。このレジスト膜を除去
する。
【0031】
ここでは、第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102
上に開口部9をそれぞれ形成しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。開口
部9の位置及び個数を適宜変更してもよい。
【0032】
そして、図11に示すように、例えばアッシング法を用いて第2の犠牲層32と第1の
犠牲層31を除去する。アッシング法により、灰化した第2の犠牲層32と第1の犠牲層
31は、開口部9を介して外部へ排出される。この結果、第1の中空領域100、第2の
中空領域101、及び第3の中空領域102が形成される。
【0033】
ここで、アッシング法には、酸素(O)ガスを用いているが、代わりにオゾン(O
)ガスを用いてもよい。オゾン(O)ガスを用いた場合、酸素(O)ガスよりもプラ
ズマダメージが低減される。プラズマダメージは、荷電粒子による絶縁膜の損傷を発生さ
せる。
【0034】
次に、図12に示すように、端子3a及び絶縁膜8上に、開口部9を封止するように有
機膜10を塗布法により形成する。有機膜10の形成では、第1の中空領域100、第2
の中空領域101、及び第3の中空領域102中に有機膜10が侵入しないように、有機
膜10の粘度や塗布法による回転数等を適宜適切な条件に設定することが重要である。
【0035】
有機膜10を塗布形成後、MEMSデバイス領域外の有機膜10をエッチングする。有
機膜10及び絶縁膜8上に絶縁膜11を、例えばCVD法を用いて形成し、MEMSデバ
イス領域外の絶縁膜11をエッチングし、MEMSデバイス80が完成する。なお、絶縁
膜11は、例えばMEMSデバイス80の防湿対策として用いられる。
【0036】
上述したように、本実施例のMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイスでは、M
EMS素子領域200上に第1の中空領域100が設けられる。第1の中空領域100の
外周部には第1の中空領域100よりも高さの低い第2の中空領域101が設けられる。
第2の中空領域101の外周部には第2の中空領域101よりも高さの低い第3の中空領
域102が設けられる。第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空
領域102上には、絶縁膜7が設けられる。絶縁膜7及び第3の中空領域102の側面に
は絶縁膜8が第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102
を覆うように設けられる。積層される絶縁膜7及び8には開口部9が設けられ、開口部9
を封止するように、有機膜10及び絶縁膜11から構成される封止材が設けられる。中空
領域の形成工程では、配線層4上の絶縁膜6を覆うように形成される第1の犠牲層31と
、第2の電極5bとを完全に覆うように第1の犠牲層31よりも面積の大きな第2の犠牲
層32が設けられる。第1の犠牲層31と第2の犠牲層32はアッシング法で除去され、
中空領域が形成されるまで第1の犠牲層31表面は第2の犠牲層32で保護されている。
【0037】
このため、MEMS素子領域200上に安定した形状の中空領域を形成することができ
る。また、プロセス工程中でのプラズマダメージによる第1の犠牲層31の表面荒れ、M
EMS素子や第2の犠牲層32の基板1から剥離を防止することができる。したがって、
MEMSデバイス80の高信頼性化及び高歩留化を達成することができる。
【0038】
なお、本実施例では、有機膜10と絶縁膜11を封止材として用いているが、耐湿性要
求が比較的低いMEMSデバイスや、MEMSデバイスをモジュール実装する時に防湿対
策が可能な場合では、封止材として有機膜のみを使用してもよい。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2に係るMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイスについ
て、図面を参照して説明する。図13はMEMSデバイスを示す断面図である。本実施例
では、中空領域を覆う絶縁膜の構造を簡略化している。
【0040】
以下、実施例1と同一構成部分には、同一符号を付してその部分の説明を省略し、異な
る部分のみ説明する。
【0041】
図13に示すように、MEMSデバイス81は、MEMS素子領域200に可動部が設
けられるRF−MEMSである。RF−MEMSは、例えば移動体機器等の高周波部品に
適用され、具体的にはスイッチ、フィルタ、或いはバラクタなどのデバイスに適用される
。MEMSデバイス81では、MEMS素子領域200上に、基板と絶縁膜の間隔L1を
有する第1の中空領域100が設けられる。第1の中空領域100の外周部には、基板と
絶縁膜の間隔L2を有する第2の中空領域101が絶縁膜6上に設けられる。第2の中空
領域101の外周部には、基板と絶縁膜の間隔L3を有する第3の中空領域103が絶縁
膜6上に設けられる。
【0042】
第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空領域102上と、第3
の中空領域102側面とには、第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3
の中空領域102を覆うように、絶縁膜21が設けられる。第1の中空領域100、第2
の中空領域101、及び第3の中空領域102上の絶縁膜21には開口部22がそれぞれ
設けられる。絶縁膜21上には、開口部22を封止するように、有機膜10が設けられる
。有機膜10及び絶縁膜22上には、絶縁膜11が設けられる。
【0043】
ここで、絶縁膜21には、シリコン窒化膜(SiN膜)を用いているが、代わりにシリ
コン酸化膜(SiO)、SiON膜、或いはSiOCH膜などを用いてもよい。
【0044】
次に、MEMSデバイスの製造方法について、図14及び図15を参照して説明する。
図14及び図15はMEMSデバイスの製造工程を示す断面図である。本実施例では、第
2の犠牲層32までの工程は実施例1と同様である。
【0045】
図14に示すように、第2の犠牲層32上に周知のリソグラフィー法を用いてレジスト
膜41を形成する。レジスト膜41をマスクにして、例えばRIE法を用いて第2の犠牲
層32をエッチングする。ここでは、RIE法を用いて第2の犠牲層32をエッチングし
ているが、代わりにウエットエッチング法を用いてもよい。レジスト膜41を除去する。
【0046】
続いて、図15に示すように、端子3a、絶縁膜6及び第2の犠牲層32上に、例えば
CVD法を用いて絶縁膜21を形成する。絶縁膜21形成後、周知のリソグラフィー法を
用いて図示しないレジスト膜を形成する。このレジスト膜をマスクにして、例えばRIE
法により、絶縁膜21をエッチングし、第1の中空領域100、第2の中空領域101、
及び第3の中空領域102上に開口部22をそれぞれ形成する。このレジスト膜を除去す
る。これ以降の工程は実施例1と同様なので説明を省略する。
【0047】
上述したように、本実施例のMEMSデバイスの製造方法、MEMSデバイスでは、M
EMS素子領域200上に第1の中空領域100が設けられる。第1の中空領域100の
外周部には第1の中空領域100よりも高さの低い第2の中空領域101が設けられる。
第2の中空領域101の外周部には第2の中空領域101よりも高さの低い第3の中空領
域102が設けられる。第1の中空領域100、第2の中空領域101、及び第3の中空
領域102の周囲には、絶縁膜21が設けられる。絶縁膜21には開口部22が設けられ
、開口部22を封止するように、有機膜10及び絶縁膜11から構成される封止材が設け
られる。中空領域の形成工程では、配線層4上の絶縁膜6を覆うように形成される第1の
犠牲層31と、第2の電極5bとを完全に覆うように第1の犠牲層31よりも面積の大き
な第2の犠牲層32が設けられる。第1の犠牲層31と第2の犠牲層32がアッシング法
で除去され、中空領域が形成されるまで第1の犠牲層31表面は第2の犠牲層32で保護
されている。
【0048】
このため、実施例1の効果の他にプロセスの短縮化が図れる。したがって、MEMSデ
バイス80の製造コストを低減化することができる。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明の実施例3に係るMEMSデバイスの製造方法について、図面を参照して
説明する。図16はMEMSデバイスの製造工程を示す断面図である。本実施例では、M
EMSデバイスの製造工程を短縮化している。
【0050】
以下、実施例1と同一構成部分には、同一符号を付してその部分の説明を省略し、異な
る部分のみ説明する。
【0051】
図16に示すように、絶縁膜6上に第1の犠牲層33を、例えば塗布法により形成する
。第1の犠牲層33は、例えば感光性ポリイミド樹脂である。周知のリソグラフィー法を
用いて第1の犠牲層33に光を照射し、第1の犠牲層33の照射部分を変性させエッチン
グ除去する。第1の犠牲層33形成後、レジスト膜をマスクにして、例えばRIE法によ
り配線層4上の絶縁膜6を、例えばRIE(Reactive Ion Etching)法を用いてエッチン
グして開口部を形成し、配線層4表面が露呈される。このレジスト膜を除去する。なお、
レジスト膜を用いずに、第1の犠牲層33をマスクにして開口部を形成してもよい。
【0052】
次に、この開口部及び第1の犠牲層33上に配線層をパターン形成する。この結果、配
線層4に接続されるアンカー部51を有する第2の電極5bが形成される。第1の電極5
a及び第2の電極5bがMEMS素子の可動部となる。
【0053】
続いて、絶縁膜6、第1の犠牲層33、及び第2の電極5b上に第2の犠牲層34を、
例えば塗布法により形成する。第2の犠牲層34は、例えば感光性ポリイミド樹脂である
。周知のリソグラフィー法を用いて第2の犠牲層34に光を照射し、第2の犠牲層34の
照射部分を変性させエッチング除去する。これ以降の工程は、実施例1と同様なので説明
を省略する。
【0054】
上述したように、本実施例のMEMSデバイスの製造方法では、配線層4上の絶縁膜6
を覆うように形成される感光性の第1の犠牲層33と、第2の電極5bとを完全に覆うよ
うに第1の犠牲層33よりも面積の大きな感光性の第2の犠牲層34が設けられる。第1
の犠牲層33と第2の犠牲層34がアッシング法で除去され、中空領域が形成されるまで
第1の犠牲層33表面は第2の犠牲層34で保護されている。
【0055】
このため、実施例1の効果の他にプロセスの短縮化が図れる。したがって、MEMSデ
バイス80の製造コストを低減化することができる。
【0056】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種
々、変更してもよい。
【0057】
実施例では、RF−MEMSに適用しているが、光MEMS、センサMEMS、バイオ
MEMSなどにも適用することができる。例えば、光MEMSには光通信用スイッチなど
がある。センサMEMSには加速度センサ、赤外線センサ、五感センサなどがある。バイ
オMEMSには医療用バイオセンサなどが含まれる。
【0058】
本発明は、以下の付記に記載されているような構成が考えられる。
(付記1) 基板上に設けられる第1の配線層と、アンカー部で前記第1の配線層に接続
され、前記第1の配線層上部に前記第1の配線層と離間配置される第2の配線層とが設け
られるMEMS素子領域と、前記MEMS素子領域上に設けられる第1の中空領域と、前
記MEMS素子領域の外周部上に設けられ、前記第1の中空領域よりも高さが低い第2の
中空領域と、前記第2の中空領域の外周部上に設けられ、前記第2の中空領域よりも高さ
が低い第3の中空領域と、前記第1乃至3の中空領域上に設けられる第1の絶縁膜と、前
記第1の絶縁膜上及び前記第3の中空領域の側面に設けられ、前記第1乃至3の中空領域
の周囲を覆うように設けられる第2の絶縁膜と、前記第1乃至3の中空領域上の積層され
る前記第1及び第2の絶縁膜に設けられる開口部と、前記開口部を封止し、前記第1乃至
3の中空領域を保持するように前記第2の絶縁膜上に設けられる封止材とを具備するME
MSデバイス。
【0059】
(付記2) 前記封止材は、ポリイミド膜と前記ポリイミド膜上の絶縁膜とから構成され
る付記1に記載のMEMSデバイス。
【符号の説明】
【0060】
1 基板
2 層間絶縁膜
3a、3b 端子
4 配線層
5a 第1の電極
5b 第2の電極
6、7、8、11、21 絶縁膜
9、22 開口部
10 有機膜
31、31a、33 第1の犠牲層
32、32a、34 第2の犠牲層
41 レジスト膜
51 アンカー部
80、81 MEMSデバイス
100 第1の中空領域
101 第2の中空領域
102 第3の中空領域
L1〜L3 基板と絶縁膜の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の配線層を形成する工程と、
前記第1の配線層及び前記基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に、前記第1の配線層を覆うように第1の犠牲層を形成し、前記第1
の犠牲層及び前記第1の絶縁膜を前記第1の配線層表面が露呈するようにエッチングして
第1の開口部を形成する工程と、
前記開口部に埋設される部分がアンカー部となり、前記開口部及び前記第1の犠牲層上に
第2の配線層を設け、MEMS素子を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜、前記第2の配線層、及び前記第1の犠牲層上に第2の犠牲層を形成す
る工程と、
前記第2の犠牲層上に前記第2の配線層及び前記第1の犠牲層の配置領域よりも広い第2
の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の絶縁膜をマスクにして、前記第2の犠牲層をエッチングする工程と、
前記第2の絶縁膜及び前記第1の絶縁膜上に第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の犠牲層上の前記第2及び第3の絶縁膜をエッチングして第2の開口部を形成す
る工程と、
前記第2の開口部を介して、前記第1及び第2の犠牲層を除去する工程と、
前記第2の開口部を封止し、前記MEMS素子が形成される領域に設けられた中空領域を
保持するように、前記第3の絶縁膜上に封止材を形成する工程と、
を具備することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項2】
基板上に第1の配線層を形成する工程と、
前記第1の配線層及び前記基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜上に、前記第1の配線層を覆うように第1の犠牲層を形成し、前記第1
の犠牲層及び前記第1の絶縁膜を前記第1の配線層表面が露呈するようにエッチングして
第1の開口部を形成する工程と、
前記開口部に埋設される部分がアンカー部となり、前記開口部及び前記第1の犠牲層上に
第2の配線層を設け、MEMS素子を形成する工程と、
前記第2の配線層及び前記第1の犠牲層の上部及び側面を覆うように、前記第2の配線層
及び前記第1の犠牲層の配置領域よりも広い第2の犠牲層を形成する工程と、
前記第2の犠牲層及び前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記第2の犠牲層上の前記第2の絶縁膜をエッチングして第2の開口部を形成する工程と

前記第2の開口部を介して、前記第1及び第2の犠牲層を除去する工程と、
前記第2の開口部を封止し、前記MEMS素子が形成される領域に設けられた中空領域を
保持するように、前記第2の絶縁膜上に封止材を形成する工程と、
を具備することを特徴とするMEMSデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第2の犠牲膜は、レジスト膜をマスクにして、RIE法或いはウェットエッチング
法を用いてパターン形成されることを特徴とする請求項2に記載のMEMSデバイスの製
造方法。
【請求項4】
前記封止材は、有機膜と前記有機膜上の絶縁膜から構成されることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項5】
基板上に設けられる第1の配線層と、アンカー部で前記第1の配線層に接続され、前記
第1の配線層上部に前記第1の配線層と離間配置される第2の配線層とが設けられるME
MS素子領域と、
前記MEMS素子領域上に設けられる第1の中空領域と、
前記MEMS素子領域の外周部上に設けられ、前記第1の中空領域よりも高さが低い第2
の中空領域と、
前記第2の中空領域の外周部上に設けられ、前記第2の中空領域よりも高さが低い第3の
中空領域と、
前記第1乃至3の中空領域の上部及び側面を覆うように設けられる絶縁膜と、
前記第1乃至3の中空領域上の前記絶縁膜に設けられる開口部と、
前記開口部を封止し、前記第1乃至3の中空領域を保持するように前記絶縁膜上に設けら
れる封止材と、
を具備することを特徴とするMEMSデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−83881(P2011−83881A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240641(P2009−240641)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】