説明

PM浄化装置及び方法

【課題】 良好なPM浄化性能を達成するPM浄化装置及び方法を提供する。
【解決手段】 (a)外周側領域13aとそれよりも内側の内側領域13bとを有するハニカム担体13であって、PM酸化触媒を担持しており、且つ外周側領域13aの担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、内側領域13bの担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多い、ハニカム担体13、(b)ハニカム担体13の中心部を通って排ガス流れ上流側に延びている、中心電極12、及び(c)ハニカム担体13の外周上に配置され、且つハニカム担体13によって中心電極12と電気的に絶縁されている、外周電極14、を有するPM浄化装置10とする。またこのようなハニカム担体13を用いるPM浄化方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関等からの排ガス中の粒子状物質(以下では「PM」(Particulate Matter)という)の浄化装置及び方法に関する。特に本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるPMを浄化するためのPM浄化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは、自動車、特に大型車に多く搭載されている。近年、この排ガスに関して、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素等とともに、PMの排出を低減することが強く望まれている。そのため、エンジンの改良又は燃焼条件の最適化等により根本的にPMを低減する技術開発とともに、排ガス中のPMを効率的に除去するための技術の確立が望まれている。
【0003】
排ガス中のPMの除去のためには一般に、セラミックハニカム製フィルター、合金製フィルター及びセラミック繊維製フィルターが用いられている。しかしながら、これらのフィルターでPMを捕集した場合、排気熱のみの作用によっては、PMの充分な酸化除去は期待できない。従ってこれらの手法では、使用時間が経過するにつれて、捕集されたPMによりフィルターが目詰まりを起こし、通気抵抗が増加し、エンジンに負担をかける結果となる。
【0004】
そこで、フィルターで捕集したPMの酸化除去に関して、特許文献1では、PM酸化触媒を担持しているフィルターを用い、このフィルターの上流側に電気加熱装置を配置し、PM酸化触媒によるPMの酸化が効率的に行えないときに、電気加熱装置によって排ガスの加熱を行うことを開示している。またこの特許文献1では、フィルターの上流側に放電装置を配置し、必要に応じて放電を行って、二酸化窒素(NO)等の酸化性ガスを発生させることも開示している。
【0005】
尚、PMの捕集に関して、PMを帯電させ、静電気的な作用を用いてPMの捕集を促進することが知られている。例えば特許文献2では、放電電極及びハニカム状の対向電極を有するPM浄化装置を開示している。このPM浄化装置の使用においては、これらの電極間で放電を行うことによってPMを帯電させ、ハニカム状の対向電極上にPMを堆積させるとしている。またこの特許文献2では、ハニカム状の対向電極上にPM酸化触媒を担持し、この触媒によってPMの酸化を促進することも開示している。
【0006】
また静電気的な作用によるPMの捕集を促進するために、特許文献3では、排ガス中のPMを随意に予め帯電させ、且つ排ガス流れに対して非平行な電界をハニカム担体内に作ることによって、ハニカム担体内でのPMの静電気的な捕集を促進するPM浄化装置が開示されている。またこの特許文献3では、ハニカム担体上にセリア(CeO)系のPM酸化触媒を担持し、この触媒によってPMの酸化を促進すること、及びハニカム担体の外周側領域における通気抵抗をハニカム担体の内側領域における通気抵抗よりも大きくすることも開示している。
【0007】
【特許文献1】特開2001−280121号公報
【特許文献2】特開2004−19534号公報
【特許文献3】特開2004−239257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3で示されるPM浄化装置では、PMの捕集のために静電気的な作用を用い、またPMの酸化除去のためにPM酸化触媒を用いることによって、良好なPM浄化性能を達成している。従って本発明では、このようなPM浄化装置を更に改良するPM浄化装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のPM浄化装置は、(a)外周側領域とそれよりも内側の内側領域とを有するハニカム担体であって、PM酸化触媒を担持しており、且つ外周側領域の担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、内側領域の担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多い、ハニカム担体、(b)ハニカム担体の中心部を通って排ガス流れ上流側に延びている、中心電極、及び(c)ハニカム担体の外周上に配置され、且つハニカム担体によって中心電極と電気的に絶縁されている、外周電極を有する。ここでPM酸化触媒は、セリア又はセリア含有複合金属酸化物をコート材として含むことができる。
【0010】
本発明のPM浄化装置によれば、中心電極と外周電極との間に電圧を印加して電界を作ることによって、排ガス中のPMを帯電させ、帯電したPMを排ガス流路の外周側に移動させ、そして排ガス流路に配置されたハニカム担体の外周側領域で、比較的多くのPMを捕集することができる。この本発明のPM浄化装置では、ハニカム担体の外周側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、ハニカム担体の内側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多いので、捕集されるPMの量が比較的多いハニカム担体の外周側領域でのPM酸化能が、捕集されるPMの量が比較的少ないハニカム担体の内側領域でのPM酸化能よりも大きい。
【0011】
すなわち、本発明のPM浄化装置によれば、ハニカム担体に担持されたPM酸化触媒を効率的に使用できる。
【0012】
また本発明のPM浄化装置の1つの態様では、ハニカム担体が更にNO浄化触媒を担持しており、且つ内側領域における担体単位体積当たりのNO浄化触媒の担持量が、外周側領域における担体単位体積当たりのNO浄化触媒の担持量よりも多い。ここでNO浄化触媒は、アルミナ、ジルコニア及びチタニア、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される金属酸化物をコート材として含むことができる。
【0013】
排気管の中心側では、排気管の外周側でよりも排ガスの流速が大きいので、処理すべきNOの量も多くなる。従ってこの態様によれば、ハニカム担体に担持されたNO浄化触媒を効率的に使用することができる。
【0014】
また、本発明のPM浄化装置では、ハニカム担体の外周側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、ハニカム担体の内側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多いので、この態様によれば、PMが多く捕集される外周側領域では、PM酸化触媒の存在比を大きくしてPM酸化性能を高め、且つ処理すべきNOが多く流入する内側領域では、NO浄化触媒の存在比を大きくしてNO浄化性能を高めることができる。これは、PM酸化除去及びNO浄化をともに良好に達成することを可能にする。
【0015】
本発明のPM浄化装置の1つの態様では、ハニカム担体の外周側領域が導電性材料製であり、且つハニカム担体の内側領域が絶縁性材料製である。
【0016】
この態様によれば、PMが多く堆積するハニカム担体の外周側領域が導電性材料製、特に金属製であることによって、帯電したPMを捕集したときにPMの電荷を迅速に除去することができる。これは、堆積したPM同士が静電気的に反発して脱落することを抑制する。また、ハニカム担体の内側領域が絶縁性材料製であることによって、外周電極と中心電極との間の電気的な絶縁を維持することができる。
【0017】
本発明のPM浄化装置の1つの態様では、ハニカム担体の外周側領域における通気抵抗が、ハニカム担体の内側領域における通気抵抗よりも大きい。
【0018】
この態様では、ハニカム担体に供給される排ガスは、比較的通気抵抗が小さいハニカム担体の内側領域に向かい、従ってハニカム担体の排ガス流れ上流側に延びている中心電極に近づく。中心電極の近くでは電界密度が大きいので、PMの帯電及び外周方向への移動が促進され、ハニカム担体の外周側領域でのPMの捕集を促進することが可能になる。
【0019】
排ガス中のPMを浄化する本発明の方法では、外周側領域とそれよりも内側の内側領域とを有し、PM酸化触媒を担持しており、且つ外周側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、内側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多いハニカム担体を用いる。この方法は、(a)排ガス中のPMを帯電させ、(b)排ガス流路内に半径方向の電界を作り、(c)帯電させたPMを、半径方向の電界によって排ガス流路の外周側に移動させ、そして(d)排ガス流路に配置されたハニカム担体の外周側領域で、排ガス流路の外周側に移動させたPMを捕集することを含む。
【0020】
本発明のPM浄化方法では、主としてハニカム担体の外周側領域でPMを捕集する。この方法で用いるハニカム担体は、外周側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、内側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多いので、捕集されるPMの量が比較的多い外周側領域でのPM酸化能が、捕集されるPMの量が比較的少ない内側領域でのPM酸化能力よりも大きい。
【0021】
すなわち、この本発明の方法によれば、このハニカム担体に担持されたPM酸化触媒を効率的に使用することができる。
【0022】
尚、この本発明のPM浄化方法のためには、本発明のPM浄化装置に関して示される構成要素、すなわちハニカム担体、触媒、電極、高電圧電源等を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下では本発明を図に示した実施形態に基づいて具体的に説明するが、これらの図は本発明のPM浄化装置を例示するものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本発明のPM浄化装置の1つの実施形態について図1を用いて説明する。ここで図1(a)及び(b)はそれぞれ、このPM浄化装置の斜視図及び断面図である。
【0025】
図1で示されているように、本発明のPM浄化装置10は、ハニカム担体13、中心電極12、及び外周電極14を有する。ここでは、ハニカム担体13は、外周側領域13aとそれよりも内側の内側領域13bとを有する。またこのハニカム担体13は、PM酸化触媒を担持しており、且つ外周側領域13aにおける担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、内側領域13bにおける担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多い。
【0026】
中心電極12は、ハニカム担体13の中心部を通って排ガス流れ上流側に延びている。また、外周電極14は、ハニカム担体13の外周上に筒状に配置され、且つハニカム担体13によって中心電極12と電気的に絶縁されている。PMを含む排ガスは、矢印18で示すように図の左方向から右方向に流れ、外周電極14に取り囲まれたハニカム担体13内の各流路(セル)を通過する。
【0027】
この図1で示すPM浄化装置10では、中心電極12及び外周電極14はそれぞれ、電源16に接続及び接地され、対になるようにされている。また中心電極12は、ハニカム担体13の排ガス流れ上流側で針状電極15を有し、それによって針状電極15と外周電極14との間での放電及びPMの帯電を促進するようにされている。
【0028】
図1で示すPM浄化装置10の使用においては、電源16を作用させることによって、中心電極12の排ガス流れ上流側に延びた部分(特に針状電極15)と外周電極14との間で放電を発生させ、排ガス中のPMを帯電させる。このようにして帯電させたPMは、中心電極12の排ガス流れ上流側に延びた部分と外周電極14との間の電界によって、排ガス流路の外周側に移動させ、そして排ガス流路に配置されたハニカム担体13の外周側領域13aで捕集する。
【0029】
特にこの図1に示すPM浄化装置10では、中心電極12と外周電極14との間のハニカム担体13内にも排ガス流れに対して非平行な電界が形成される。このようにして形成された電界は、帯電しているPMをハニカム担体13のセル壁に押し付け、それによってハニカム担体13によるPMの捕集を更に促進する。
【0030】
図1に示した本発明のPM浄化装置を構成する各部については、下記において更に具体的に説明する。
【0031】
<ハニカム担体>
本発明において使用するハニカム担体はストレートフロー型であってもウォールフロー型であってもよいが、通気抵抗の観点からはストレートフロー型が好ましい。PMの捕集のためには、ウォールフロー型のハニカム担体、すなわちいわゆるフィルターを使用することが一般的であるが、静電気的な作用によってPMを捕集する場合には、ストレートフロー型のハニカム担体を使用しても良好な捕集効率を達成できる。
【0032】
ハニカム担体の「外周側領域」及び「内側領域」はそれぞれ、任意に設定することができる。また、「外周側(内側)領域における担体単位体積当たりのPM酸化(NO浄化)触媒担持量」は、ハニカム担体の「外周側(内側)領域」を全体として考慮したときの、担体単位体積当たりのPM酸化(NO浄化)触媒担持量である。
【0033】
ハニカム担体は、中心電極と外周電極との間の絶縁を可能にする材料で作ることができ、例えばセラミック製ハニカム担体、例えばコージェライト製ハニカム担体でよい。またハニカム担体の一部、特に外周側領域は、導電性材料製、例えば金属製であってよい。ハニカム担体の外周側領域が金属製である場合、ハニカム担体の内側領域は絶縁性材料製であることが好ましい。この場合、円筒状の形状の導電性材料製ハニカム担体の内側に、円柱状の形状の絶縁性材料製ハニカム担体を挿入し、これらを固定することによって本発明で使用するハニカム担体を形成することができる。
【0034】
ハニカム担体の通気抵抗は、ハニカム担体がストレートフロータイプであるかウォールフロータイプであるかに依存し、ストレートフロータイプのハニカム担体では一般に、ウォールフロータイプのハニカム担体よりも通気抵抗が小さくなる。また、ハニカム担体の通気抵抗は、ハニカム担体のセル密度、すなわちハニカム担体の個々のセルの大きさにも依存し、一般にセル密度が大きいほど、すなわち個々のセルの大きさが小さいほど、通気抵抗が大きくなる。
【0035】
従ってハニカム担体の外周側領域における通気抵抗を、ハニカム担体の内側領域における通気抵抗よりも大きくすることは、外周側領域をウォールフロータイプのハニカム担体にし、且つ内側領域をストレートフロータイプのハニカム担体にすること;外周側領域のハニカム担体のセル密度を、内側領域のハニカム担体のセル密度よりも大きくすること;又はそれらの組み合わせ等によって達成できる。
【0036】
<触媒>
PM酸化触媒
本発明で用いるPM酸化触媒は、排ガス中の酸素によって直接にPMを酸化する触媒である。このPM酸化触媒は好ましくは、活性な酸素を放出することによってPMの酸化除去を促進する材料、例えばセリア又はセリア含有複合金属酸化物を、特にコート材として含む。尚、「コート材」は、ハニカム担体の排ガス流路内において触媒層を形成する材料をいうものとする。
【0037】
PM酸化触媒がセリア又はその複合酸化物をコート材として含む場合、ジルコニウム、ランタン、イットリウム、バリウム及びプラセオジムからなる群より選択される材料をコート材に固溶させることによって、セリアを含有するコート材が活性な酸素を放出する能力を促進することができる。また本発明において使用されるPM酸化触媒では、コート材上に、Pt、Fe、Ag、Mn、Cu、Ni、Co、K、Li、Ba、Cs、Ca及びSrからなる群より選択される材料を担持させて、PMの酸化除去を促進することができる。
【0038】
PM酸化触媒としては特に、コート材がセリアを含み、且つ銅、マンガン、ニッケル、白金及び/又は鉄を担持している触媒を挙げることができる。また、PM酸化触媒としては、酸化モリブデン、酸化バナジウムのような溶融塩触媒を用いることもできる。
【0039】
NO浄化触媒
本発明で用いることができるNO浄化触媒は、NOx吸蔵還元触媒又はNOx選択還元触媒と呼ばれるものでよい。
【0040】
NOx吸蔵還元触媒は、空燃比がリーン状態のときにNOxを吸蔵し、一定間隔でリッチスパイクを行ったときに(排ガスを燃料リッチにしたときに)、吸蔵したNOxをN2に還元する触媒である。これは例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニアのような金属酸化物のコート材上に、白金、パラジウム、ロジウムのような貴金属と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群より選択される少なくとも1種の金属とを担持してなる触媒である。尚、このNOx吸蔵還元触媒においてセリアをコート材として用いることもできるが、この場合にはNOを還元するHCを酸素によって直接に酸化して消費しないようにするために、予め高温、例えば500℃以上の温度で焼成して、その酸素吸蔵能を低下させておくことが好ましい。このNOx吸蔵還元触媒に担持させるアルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、バリウム、カリウム及びリチウムの組み合わせを使用することが、触媒の耐久性及びNOの浄化率の温度ウィンドウの点などから好ましい。
【0041】
NO選択還元触媒は、リーン雰囲気においてNOを還元成分と選択的に反応させて浄化する触媒であり、例えば銅、コバルト、ニッケル、鉄、ガリウム、ランタン、セリウム、亜鉛、チタン、カルシウム、バリウム及び銀からなる群より選択される少なくとも1種、及び/又は白金、イリジウム、パラジウム及びロジウムからなる群より選択される少なくとも1種の貴金属を、ゼオライト又はアルミナを含有するコート材に担持させて得ることができる。
【0042】
上記のPM酸化触媒及びNO浄化触媒は、ウォッシュコート等の公知の方法を用いてハニカム担体に担持させることができる。またハニカム担体に担持させる触媒の量は、担持することができる範囲内で任意に選択できる。ウォッシュコートによりハニカム担体の排ガス流路表面に触媒を担持した場合は、その後、ハニカム担体を乾燥及び焼成することが好ましい。焼成する時の条件は、当業者により公知の条件が使用できるが、例えば450〜550℃とすることができる。
【0043】
<電極>
中心電極、外周電極及び中心電極の一部である随意の針状電極は、これらの電極間に電圧を印加することができる材料で製造できる。その材料としては、導電性の材料や半導体等の材料を使用することができるが、一般に金属材料が好ましい。この金属材料として、具体的には銅、タングステン、ステンレス、鉄、白金、アルミニウム等が使用でき、特にステンレスがコスト及び耐久性の点から好ましい。
【0044】
本発明で使用できる中心電極は、金属性ワイヤ又は棒状体が一般的であるが、中空電極を使用することもできる。外周電極は、これらの材料を金属メッシュ又は金属箔としてハニカム担体に巻き付けて作ること、又は導電性ペーストをハニカム担体に適用して作ることができる。また外周電極として、ハニカム担体を保持している容器そのものを用いることもできる。また更に、外周電極は、中心電極と同様に、ハニカム担体の排ガス流れ上流側に延びていてもよい。この場合、ハニカム担体の排ガス流れ上流側において、PMの帯電及び外周方向への移動を促進することができる。
【0045】
中心電極の排ガス流れ上流側の部分に存在していてもよい針状電極は、その針状部分の先端を外周電極に向けて配置することが好ましい。このような針状電極は、外周電極との間での放電を促進する。針状電極の針状部分の数が少ないと、外周電極との間で均一な放電を起こさせることが難しくなるため、針状電極の針状部分の数はある程度以上であることが好ましい。しかしながら、排ガス中のPMの帯電及び外周方向への移動を良好に達成できるように、最適化した数を実験で定めることができる。
【0046】
<電源>
電源は、パルス状又は定常の直流又は交流電圧を発生させるものでよい。一般的に帯電したPMを静電気的に移動させるためには、定常の直流電圧を用いることが好ましい。しかしながら、ガスの活性化を促進するためには、パルス電圧を用いてコロナ放電を発生させることが好ましい場合がある。従って、排ガス中のPMの含有量、PMの帯電の程度、意図する浄化の程度等に依存して、パルス電圧、交流電圧、又はそれらの組み合わせを用いることもできる。また、直流電圧とパルス電圧又は交流電圧とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0047】
以下に本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
図1で示すような構成のPM浄化装置を用いて、実施例及び比較例を行った。但し、ここでは針状電極は用いなかった。
【0049】
〔実施例1〕
ハニカム担体
実施例1において用いたハニカム担体は、図1で示すハニカム担体13のような円柱状の形状を有するストレートフロー型のハニカム担体である。この実施例1のハニカム担体は、図2に示すような断面形状を有し、内側領域用の円柱状ハニカム担体21と外周側領域用の円筒状ハニカム担体22とを組み合わせて形成されている。ここで内側領域用の円柱状ハニカム担体21は、直径82.5mm×長さ155mmであり、中心電極を通すための直径20mmの貫通孔23を中心軸上に有していた。また、外周側領域用の円筒状ハニカム担体22は、外径103mm×長さ155mmであり、内側領域用の円柱状ハニカム担体21を収容するように円筒状の形状にされていた。これらの内側領域及び外周側領域用のハニカム担体はいずれも、コージェライト製であり、且つ900cpsi(セル/平方インチ)のセル密度を有していた。
【0050】
触媒
PM酸化触媒としては、セリア(CeO)粉末に対してカリウム(K)を担持させた触媒を用いた。ここで、カリウムの担持量はセリア100gに対して0.2molであった。またNO浄化触媒としては、アルミナ(Al)粉末に対してバリウム(Ba)及び白金(Pt)を担持させた触媒を用いた。ここで、バリウムの担持量はアルミナ100gに対して0.1molであり、白金の担持量はアルミナ100gに対して0.75gであった。
【0051】
PM酸化触媒とNO浄化触媒とを3:1の割合(質量比)で混合した触媒を、外周側領域用のハニカム担体に対して200g/担体−Lの量でコートした。また、PM酸化触媒とNO浄化触媒とを1:3の割合(質量比)で混合した触媒を、内側領域用のハニカム担体に対して200g/担体−Lの量でコートした。従って、担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量は、外周側領域用のハニカム担体において150g/担体−L、内側領域用のハニカム担体において50g/担体−Lであった。また、NO浄化触媒担持量は、外周側領域用のハニカム担体において50g/担体−L、内側領域用のハニカム担体において150g/担体−Lであった。
【0052】
電極
中心電極及び外周電極はステンレスによって形成した。
【0053】
〔実施例2〕
実施例2のPM浄化装置は、外周側領域用のハニカム担体が金属製であることを除いて、実施例1のPM浄化装置と同様にして製造した。従って実施例1のPM浄化装置と同様に、内側領域用のハニカム担体はコージェライト製であり、いずれのハニカム担体もセル密度が900cpsiであった。
【0054】
〔実施例3〕
実施例3のPM浄化装置は、外周側領域用のハニカム担体が、セル密度900cpsiの金属製ハニカム担体であり、且つ内側領域用のハニカム担体が、セル密度400cpsiのコージェライト製ハニカム担体であること除いて、実施例1のPM浄化装置と同様にして製造した。
【0055】
〔比較例〕
比較例のPM浄化装置は、PM酸化触媒とNO浄化触媒と1:1(質量比)で混合した触媒を、ハニカム担体に対して200g/担体−Lとなる量でコートしたことを除いて、実施例1のPM浄化装置と同様にして製造した。従って、内側領域用ハニカム担体及び外周側領域用ハニカム担体のいずれにおいても、担体単位体積当たりのPM酸化触媒及びNO浄化触媒の担持量は共に100g/担体−Lであった。
【0056】
〔試験方法〕
排気量2.2Lのディーゼルエンジンを回転数2400rpm及びトルク80Nmで定常運転させ、このエンジンからの排ガスを実施例1〜3及び比較例のPM浄化装置に供給した。また、中心電極と外周電極の間に、30kVの直流電圧を印加した。
【0057】
PM捕集性能
PM浄化装置のPM捕集性能は、PM浄化装置の入りガス及び出ガスを、フルダイリューショントンネル(全量希釈トンネル)に流通させ、石英捕集フィルターでPMを捕集し、ここで捕集されたPMの量を分析することによって求めた。結果は図3に示す。
【0058】
PM酸化性能
PM浄化装置のPM酸化性能は、上記のようにして求めたPMの捕集量、及び試験前後のハニカム担体の重量変化から、1時間あたりに酸化するPMの重量について求めた。結果は図4に示す。
【0059】
NO浄化性能
PM浄化装置への電圧の印加、すなわち放電を開始してから30分間のNO浄化率を求めた。結果は図5に示す。
【0060】
〔評価結果〕
PM捕集率
図3に示すPM捕集率の結果から理解されるように、比較例のPM浄化装置では、放電の開始から1000秒弱でPMの捕集が行えなくなっている。これは、ハニカム担体、特にPMが比較的多量に捕集されるハニカム担体の外周側領域においてPMの酸化除去が十分に行われず、時間の経過とともに中心電極と外周電極とがPMを介して短絡したことによると考えられる。これに対して、実施例1〜3のPM浄化装置では、比較的長期間にわたってPMの捕集が達成されている。これは、PMが比較的多量に捕集されるハニカム担体の外周側領域においてPM酸化触媒の担持量及び濃度が高く、それによってPMが効率的に酸化除去されていることによると考えられる。
【0061】
また、図3で示されるように、実施例1〜3のなかでは、外周側領域用のハニカム担体として金属製ハニカム担体を用いている実施例2及び3において特に優れたPM捕集率の結果が達成されている。これは、PMが比較的多量に捕集される外周側領域が導電性であることによって、捕集されたPMの電荷が迅速に除去され、それによって帯電したPM相互の静電気的な斥力によるPMの剥離又は脱落が抑制されていることによると考えられる。
【0062】
また更に、図3で示されるように、実施例3のPM浄化装置のPM捕集率は、実施例2のPM浄化装置のPM捕集率よりも優れている。これは、内側領域の通気抵抗が外周側領域の通気抵抗よりも小さいハニカム担体を用いる実施例3のPM浄化装置では、ハニカム担体の排ガス流れ上流側においてPMの帯電が促進されていること等によると考えられる。
【0063】
PM酸化速度
図4で示されるPM酸化速度の評価結果から理解されるように、実施例1〜3のPM浄化装置では、比較例のPM浄化装置よりも優れたPM酸化速度を示している。これは、実施例1〜3のPM浄化装置では、PMが比較的多量に捕集されるハニカム担体の外周側領域においてPM酸化触媒の担持量又は密度が大きく、それによってPMの酸化除去が効率的に達成されていることによると考えられる。
【0064】
NO浄化率
図5で示されるNO浄化率の評価結果から理解されるように、実施例1〜3のPM浄化装置では、比較例のPM浄化装置よりも優れたNO浄化率を示している。これは、実施例1〜3のPM浄化装置では、排ガスが比較的多量に流通する内側領域においてNO浄化触媒の担持量又は密度が大きく、それによってNOの浄化が効率的に達成されていることによると考えられる。
【0065】
また、図5で示されるように、実施例3のPM浄化装置では、実施例1及び2のPM浄化装置よりも優れたNO浄化率を達成している。これは、実施例3のPM浄化装置では、ハニカム担体の内側領域の通気抵抗が外周側領域の通気抵抗よりも小さいことによって、NO浄化触媒の担持量又は密度が大きい内側領域に、比較的多量の排ガス、すなわちNOが流通していることによると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のPM浄化装置の1つの形態を表す斜視図及び断面図である。
【図2】実施例及び比較例で使用したハニカム担体を表す断面図である。
【図3】PM捕集率についての、実施例及び比較例のPM浄化装置の評価結果を示すグラフである。
【図4】PM酸化速度についての、実施例及び比較例のPM浄化装置の評価結果を示すグラフである。
【図5】NOx浄化率についての、実施例及び比較例のPM浄化装置の評価結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0067】
10 本発明のPM浄化装置
12 中心電極
13 ハニカム担体
13a、22 ハニカム担体の外周側領域
13b、21 ハニカム担体の内側領域
14 外周電極
15 針状電極
18 排ガス流れ方向を示す矢印
23 中心電極を通すための孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)外周側領域とそれよりも内側の内側領域とを有するハニカム担体であって、PM酸化触媒を担持しており、且つ前記外周側領域の担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、前記内側領域の担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多い、ハニカム担体、
(b)前記ハニカム担体の中心部を通って排ガス流れ上流側に延びている、中心電極、及び
(c)前記ハニカム担体の外周上に配置され、且つ前記ハニカム担体によって前記中心電極と電気的に絶縁されている、外周電極、
を有する、PM浄化装置。
【請求項2】
前記PM酸化触媒が、セリア又はセリア含有複合金属酸化物をコート材として含む、請求項1に記載のPM浄化装置。
【請求項3】
前記ハニカム担体が更にNO浄化触媒を担持しており、且つ前記内側領域における担体単位体積当たりのNO浄化触媒の担持量が、前記外周側領域における担体単位体積当たりのNO浄化触媒の担持量よりも多い、請求項1又は2に記載のPM浄化装置。
【請求項4】
前記ハニカム担体の外周側領域が導電性材料製であり、且つ前記ハニカム担体の内側領域が絶縁性材料製である、請求項1〜3のいずれかに記載のPM浄化装置。
【請求項5】
前記ハニカム担体の外周側領域における通気抵抗が、前記ハニカム担体の内側領域における通気抵抗よりも大きい、請求項1〜4のいずれかに記載のPM浄化装置。
【請求項6】
外周側領域とそれよりも内側の内側領域とを有し、PM酸化触媒を担持しており、且つ前記外周側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量が、前記内側領域における担体単位体積当たりのPM酸化触媒担持量よりも多いハニカム担体を用いる、排ガス中のPMの浄化方法であって、
(a)排ガス中のPMを帯電させ、
(b)排ガス流路内に半径方向の電界を作り、
(c)前記帯電させたPMを、前記半径方向の電界によって排ガス流路の外周側に移動させ、そして
(d)排ガス流路に配置された前記ハニカム担体の外周側領域で、排ガス流路の外周側に移動させた前記PMを捕集すること、
を含む、排ガス中のPMの浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320818(P2006−320818A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145294(P2005−145294)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】