説明

PRG4及びその治療調節作用の応用及び使用

本発明は、タンパク質PRG4及びその治療調節作用の使用に関する。特に、本発明は、PRG4及びその治療調節作用を利用する組成物並びに方法、例えば外科潤滑剤としての使用、術後癒着の予防又は抑制のための処置における使用、口腔潰瘍の治療における使用、運動競技用潤滑パッチとしての使用、皮膚充填剤としての使用、口腔乾燥症の治療における使用、薬物送達方法又は組成物における使用、及び授乳潤滑における使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年5月22日付けで出願された米国仮出願第61/180,525号の利益を主張し、この出願は、その全体を参照することにより本明細書において援用される。
【0002】
本発明は、タンパク質PRG4(そのプロテオグリカンを含む)及び/又はその治療調節作用の使用に関する。特に、本発明は、例えば外科潤滑剤、運動競技潤滑、口腔内の損なわれた境界潤滑に付随する疾患の治療、皮膚充填剤、薬物送達方法及び授乳潤滑のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテオグリカン4(prg4)遺伝子は、巨核球刺激因子(MSF)、ルブリシン、及び表在層タンパク質(SZP)と呼ばれる高グリコシル化タンパク質をコードする。ルブリシンは、まず滑液から単離され、生体外で軟骨−ガラス界面での滑液に似た潤滑能が実証された。ルブリシンは、その後に滑膜線維芽細胞の産生物として同定された。また、エクソン6によってコードされる、940個のアミノ酸の大きなムチン様ドメイン内のO−結合β(1−3)Gal−GalNAcオリゴ糖も記載されている。SZPは、最初に、表在層由来の外植軟骨の表面に局在し、馴化培地から単離された。これらの分子(及びそのO−結合プロテオグリカン)は、本明細書では、まとめてPRG4という。PRG4は、体内で滑膜、腱、及び半月板の表面に存在することが明らかにされているが、PRG4を、本明細書に記載の目的に潤滑剤として使用することについては、これまで何ら記載されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、種々の実施形態において、潤滑を扱うための組成物、及びその使用の方法を提供する。種々の実施形態において、このような潤滑としては、非限定的な例として、外科潤滑剤としての使用、術後癒着の予防又は抑制のための処置における使用、口腔潰瘍の治療における使用、運動競技用潤滑パッチとしての使用、皮膚潤滑剤としての使用、口腔乾燥症の治療における使用、薬物送達方法又は組成物における使用、及び授乳潤滑における使用が挙げられる。また、前述の疾病(又は本明細書に記載のその他の疾病)のいずれかの治療において使用するためのPRG4タンパク質(例えば、精製又は単離されたPRG4タンパク質)が、本明細書において提供される。
【0005】
一つの実施形態において、このような組成物及び方法は、口腔内の境界潤滑剤分子の治療的補充及び強化のために提供される。本発明の特定の実施形態において、PRG4 mRNAが、マウス顎下組織で発現され、PRG4タンパク質が口腔内に分泌されることを示すという観察が記載される。図1は、種々のマウス顎下腺でのPRG4 mRNAの発現を例証する。増幅された試料は、PRG4産生物の存在についてアガロースゲル電気泳動を使用することによって選別された。垂直レーン11−16は、6匹の異なるマウスの顎下腺組織から増幅され、検証されたPRG4 mRNAを含む。
【0006】
本発明の特定の場合において、PRG4タンパク質が、摂食、談話、飲み込み、会話及び/又はその他の口腔機能中に生じる著しい剪断力から口腔(咽喉を含む)を保護するという観察が記載される。また、本発明の特定の場合において、軟骨で認められる境界潤滑の分子メカニズム(分泌成分が動的荷重の存在下で剪断応力に介在できることを含む)は、口腔を潤滑するために利用した場合には有用であろうという観察が記載される。
【0007】
特定の実施形態において、本発明は、患者の口腔に、治療量の治療有効濃度のPRG4タンパク質(例えば、グリコシル化されているPRG4タンパク質、例えばO−結合プロテオグリカンを含む)を含有する製剤を局所施用するのに適した口腔ケア組成物を提供する。幾つかの実施形態において、口腔ケア医薬組成物は、浸透圧平衡塩水溶液、多相乳化物、ゲル、液体、クリーム、軟膏、スプレー、粘稠溶液に懸濁された、あるいは徐放デバイス内に又は錠剤中に封入されたPRG4タンパク質を含有してなる。
【0008】
特定の実施形態において、本発明の口腔ケア組成物は、さらに種々の油状抽出物、甘味料、唾液腺刺激剤、防腐剤及び着香料を含有してなる。特定の実施形態において、口腔ケア組成物は、さらに治療有効量のヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。特定の実施形態において、口腔ケア組成物は、さらに局所麻酔薬、例えばリドカイン、リグノカイン又はプリロカインを含有してなるであろう。
【0009】
本発明は、口腔乾燥症、又はそれに付随する症状(ショーグレン症候群、アレルギー、口腔表面疾患、慢性炎症、高浸透圧症、老化、処方薬若しくはOTC薬、放射線療法、化学療法、神経損傷又はこれらの任意の組み合わせに付随する口腔乾燥症の症状を含む)を治療する方法であって、それを必要とする個人の口腔(又は口腔内潰瘍)に、有効量の本明細書に記載の任意の口腔ケア組成物を局所投与することを含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、口腔潰瘍を治療する方法であって、それを必要とする個人の口腔潰瘍に、有効量の本発明の口腔ケア組成物を局所投与することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明の特定の実施形態は、内科的及び外科的処置中、例えば、非限定的な例として:外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして、水和インプラントとして、並びに白内障摘出、レーザー角膜切除術、眼内レンズ(IOL)挿入及び除去、角膜手術、緑内障手術、外傷手術、後眼部手術、眼球形成手術及び筋肉手術において使用するための、カテーテル、内視鏡、手術器具、グローブの身体開口部への挿入中の使用に適した潤滑剤組成物であって、PRG4を外科的に許容される塩溶液中に含有してなる潤滑剤組成物を提供する。
【0011】
特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の潤滑剤組成物は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。特定の実施形態において、本発明の潤滑剤組成物は、さらに追加の賦形剤及び粘滑剤、例えば、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びポビドンを含有してなる。特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の潤滑剤組成物は、さらに、リドカイン、リグノカイン及びプリロカインからなる群から選択される1つ又はそれ以上の局所麻酔薬を含有してなる。特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の潤滑剤組成物は、さらに、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アルコール、塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムからなる群から選択される1つ又はそれ以上の消毒薬を含有してなる。
【0012】
本発明の特定の実施形態は、外科的又は内科的処置で使用するための潤滑を提供する方法であって、本明細書に記載の任意の潤滑組成物を、前記処置に関与する任意の医療機器又はその他の表面に局所施用することを含む方法を提供する。種々の実施形態において、外科的又は内科的処置は、非限定的な例として、外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして、水和インプラントとして、並びに白内障摘出、レーザー角膜切除術、眼内レンズ(IOL)挿入及び除去、角膜手術、緑内障手術、外傷手術、後眼部手術、眼球形成手術及び筋肉手術において使用するための、カテーテル、内視鏡、手術器具、グローブの身体開口部への挿入を含む。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態は、歩行運動中の摩擦を防止又は減少させる方法であって、本明細書に記載の任意の適当な潤滑組成物(例えば、PRG4を含有する水性ゲル、ゾル、溶液、又は粘着パッチ)を対象領域に施用することを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態において、前記組成物(例えば、粘着パッチ)は、さらにヒアルロン酸を含有してなる。本発明の特定の実施形態において、前記組成物(例えば、粘着パッチ)は、さらに、滞留時間を増大させるポリマー、賦形剤又は粘滑剤を含有してなる。
【0014】
本発明の特定の実施形態は、注入可能な皮膚充填剤として使用するのに適した皮膚科学的組成物であって、皮膚科学的有効濃度のPRG4を皮膚科学的に許容される媒体又はビヒクル(例えば、粘稠溶液)と組み合わせて(例えば、これらに懸濁させて)含有してなる皮膚科学的組成物を提供する。特定の実施形態において、本発明の皮膚科学的組成物は、さらに皮膚科学的有効量のヒアルロン酸を含有してなる。一つの実施形態において、皮膚科学的使用は、瘢痕組織の外観を整復する(reduce)ことにある。
【0015】
特定の実施形態において、本発明の任意の皮膚科学的組成物は、さらに皮膚科学的有効量のコラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及び/又はポリエチレンオキシドを含有してなる。特定の実施形態において、本発明の任意の皮膚科学的組成物は、さらに、抗血栓薬、抗炎症薬、ホルモン、走化性因子、鎮痛薬、増殖因子、サイトカイン、骨形成因子及び麻酔薬からなる群から選択される薬物を含有してなる。特定の実施形態において、本発明の任意の皮膚科学的組成物は、さらにレチノイン酸及び/又は重水素減少水を含有してなる。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態は、ヒトの皮膚(例えば、顔又は体の選択された領域)の組織ボリューム、皮膚の緊張感、肌理及び張りを回復させるための方法であって、本発明の皮膚科学的組成物を皮膚、又は皮下組織に注入する段階を含む方法を提供する。種々の実施形態において、処置及び注入は、顔又はヒトの体の選択された領域、例えば以下に限定されないが、眼窩周辺領域、唇、頬領域、鼻唇溝、口唇−下顎溝、首又は手の1つ又はそれ以上の領域で生じ得る。
【0017】
本発明の特定の実施形態は、薬物送達を提供する(例えば、促進する)方法であって、生物活性剤を個人に送達させることを含み、前記生物活性剤が生物活性剤と、PRG4を含有してなる担体との混合物を含有してなる組成物中に送達されるものである方法を提供する。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、生物活性剤は、薬物、ペプチド、タンパク質、抗体又はその断片、核酸、あるいは造影剤を含む。別の実施形態において、送達担体は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。本発明の特定の実施形態において、送達担体は、さらにL−α−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される界面活性リン脂質を含有してなる。前記混合物の物理的送達は、局所投与、注射、又は経口投与によって、あるいはその他の適当な投与技術によって達成できる。
【0019】
本発明の幾つかの実施形態は、授乳中の摩擦を防止又は減少させる方法であって、それを必要とする表面(例えば、乳首、乳輪及び/又は乳房)に、PRG4を含有してなる本明細書に記載の任意の潤滑組成物(例えば、水性ゲル、ゾル、溶液又は粘着パッチ)を施用することを含む方法を提供する。本発明の特定の実施形態において、本明細書に記載の任意の組成物(例えば、粘着パッチ)は、さらにヒアルロン酸、ラノリン、グリセリンなどを含有してなる。本発明の特定の実施形態において、任意の組成物(例えば、粘着パッチ)は、さらに滞留時間を増大させるポリマー、賦形剤又は粘滑剤を含有してなる。
【0020】
文献の援用
本明細書に述べた全ての刊行物及び特許出願は、引用した目的で参照することによって本明細書において援用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の新規な特徴を、添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の特徴及び利点についてのより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び添付図面を参照することによって得られるであろう:
【0022】
【図1】顎下腺組織で増幅の後にアガロース電気泳動によって実証されるマウスPRG4 mRNAの発現を例証する。mRNAは、配列決定によって検証された。
【図2】PRG4のアミノ酸配列、及びPRG4 mRNAのPCR増幅用の核酸プライマー配列を例証する。発明の詳細な説明
【0023】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、説明したが、このような実施形態が単なる例として提供されることは、当業者には明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の改変、変化及び置換を思い付くであろう。本明細書に記載の本発明の実施形態の種々の代替が本発明の実施において使用し得ることが、理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、及びそれによってこれらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにこれらの均等物が保護されることが意図される。
【0024】
PRG4の機能的重要性は、ヒトにおいて屈指症−関節症−内反股−心外膜炎(CACP)疾患症候群を引き起こす突然変異によって明らかにされた。CACPは、内反股変形、心外膜炎、及び胸水を伴う屈指症、非炎症性関節症、及び肥厚性滑膜炎によって明らかである。また、PRG4ヌルマウスにおいて、軟骨変性及びその後の関節障害が観察された。従って、PRG4の発現は、健常滑膜関節の必須要素である。
【0025】
PRG4は、一般に上皮内層に豊富であり、多数の機能、例えば潤滑及び侵入微生物からの保護を提供するムチンファミリーの一員である。ムチンの機能特性は、一般に特殊なグリコシル化パターン及びその分子内ジスルフィド結合によって多量体を形成する能力によって決定され、これら両方は、慢性疾患(例えば、嚢胞性線維症、喘息)において変化する。滑液から単離されたPRG4の生化学的特性決定は、潤滑特性に介在すると思われるO−グリコシル化において分子不均一性を示した。ウシの滑液由来のPRG4の予備データは、単量体の他に、N末端及びC末端の両方のシステインに富む保存ドメインから予測されるジスルフィド結合二量体の存在を、C末端の不対システインと一緒に明らかにした。
【0026】
潤滑の物理化学的モードは、流体境膜(fluid film)又は境界として分類されている。操作潤滑モードは、関節組織に対する法線力及び接線力、これらの表面の間の接線運動の相対速度、並びに荷重と運動の両方の時間履歴に依存する。摩擦係数μは、定量的尺度を提供し、接線摩擦力と法線力の比として定義される。流体介在潤滑モードの一つの型は、流体静力学である。荷重の開始時及び典型的には長期間の荷重時に、間質液は、組織の二相性により加圧されてしまう;流体もまた、滲出メカニズムによって関節面の間の凹凸に送り込まれる可能性がある。従って、加圧間質液及び捕捉潤滑剤プールは、法線荷重の負担にほんの少しの耐剪断力で著しく寄与し、極めて低いμを促進し得る。また、荷重及び/又は運動の開始時に、スクイーズ膜、水力学、及び弾性流体力学型の流体境膜潤滑が、加圧、運動、及び変形作用と共に生じて、相対運動の2つの面の間の間隔から及び/又は間隔によって粘稠潤滑剤を駆動する。
【0027】
ある場合には、境界潤滑に対する流体圧力/流体境膜が生じる関連度合いは、多数の因子に依存する。潤滑剤膜が、弾性変形できる適合(conforming)滑り面の間に流れることができる場合には、弾性流体潤滑が生じる。圧力、表面粗さ、及び相対滑り速度が、いつ十分な流体潤滑が破壊し始め、潤滑が新たなレジーム(regime)に入るかを決定する。速度がさらに低下するにつれて、関節面に付着する潤滑剤膜が寄与し始め、潤滑の混合レジームが生じる。速度がさらに低下し、数個の分子から構成される超薄潤滑剤層のみが残る場合には、境界潤滑が生じる。従って、特定の場合には、潤滑の境界モードは、定常滑りが流体境膜の形成に影響を及ぼす因子、例えば相対滑り速度及び軸方向荷重と不変である間の摩擦係数(加えられた法線力に対する相対運動における2つの接触面の間で測定される摩擦力の比)によって示される。関節軟骨などの体の特定の組織について、境界潤滑が生じ、流体加圧及びその他のメカニズムによって補完されると結論されている。しかし、本発明に記載の目的及び使用のための境界潤滑のための薬剤の使用は、例えば潤滑の基本モードは水力学及び弾性流体力学であると推定されていることから、これまで追求されていなかった。また、本明細書において提案される施用のために作り出された製品は、伝統的に、長鎖ポリマー、例えばポリカルボフィル、ポリエチレングリコール、及びグリセリンを用いる粘稠流体相潤滑又は水和に処置が集中している。流体境膜アプローチの例としては、Biotene、Orex、口腔乾燥症用のSalivart、口腔潰瘍用のBlistex、外科用途のSurgilube及びHealon、並びに皮膚充填剤用のRestylane及びJuveDermが挙げられる。本明細書において特許請求される発明について、最適潤滑は、高められた境界モードを包含することができ、又は高められた境界モードと流体境膜潤滑との組み合わせを含むことができる。
【0028】
境界潤滑において、荷重は、表面と表面の接触によって支持され、付随する摩擦特性が、潤滑剤表面分子によって決定される。特定の場合には、このモードは、相対する組織表面が領域全体の〜10%にわたって接触することから重要であり得、これは、摩擦の大部分が生じる場合であり得る。また、ある場合には、荷重時間の増大及び静水圧の消失と共に、潤滑剤被覆面は、加圧流体に対して荷重が徐々に高くなる部分を有し、その結果、このモードは次第に支配的になることができる。特定の場合には、境界潤滑は、スティックスリップを和らげ、従って定常運動及び運動開始の両方に対して低下した抵抗として現れる。ある場合には、後者の状況は、長期圧縮荷重(例えば、生体内で座る又は立ち上がる)後の荷重負担面に関連する。関節面の典型的な磨耗パターン(例えば、軟骨において)もまた、ある場合には、境界潤滑が組織構造の保護及び維持に重要であることを例証する。ある場合には、口腔の荷重は、剪断力に左右され(例えば、剪断力によって支配され)、咀嚼は、表面細胞及び歯のエナメル質に著しい応力を生じる。また、口腔内の潤滑剤の産生を下方制御するか又は上皮細胞を萎縮させるように作用する疾患状態において、日常的な剪断応力もまた、強い分解及び炎症の恐れをもたらし得る。癌治療、例えばタモキシフェン、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、又は高血圧薬による重度の萎縮症又は医原的に引き起こされる乾燥もまた、正常レベルの剪断応力痛を生じさせ得る。
【0029】
ある場合には、関節面の間の流体内のPRG4の蓄積、及びその組織マトリックスに自然に結合する傾向は、PRG4の境界潤滑能に寄与する。
【0030】
本明細書に記載の特定の実施形態において、本発明者らは、プロテオグリカン4(PRG4)が、口腔の壁に沿って境界潤滑剤としての役割を果たすことを開示する。幾つかの実施形態において、この糖タンパク質(PRG4)は、口腔表面を摩擦力、細胞接着及び/又はタンパク質沈着から保護する。種々の天然及び組換えルブリシンタンパク質及びイソ型の任意の1つ又はそれ以上が、本明細書に記載の種々の実施形態において利用される。例えば、米国特許第5,326,558号;同第6,433,142号;同第7,030223号、及び同第7,361,738号明細書は、一群のヒト巨核球刺激因子(MSF)を開示しており、これらの明細書のそれぞれは、このような開示のために本明細書において援用される。米国特許第6,960,562号及び同第6,743,774号明細書もまた、MSFの実質的に純粋な断片を含む潤滑ポリペプチド、トリボネクチンを開示しており、これらの明細書のそれぞれは、このような開示のために本明細書において援用される。
口腔ケア
【0031】
本明細書の特定の実施形態において、治療を必要とする個人の口腔潤滑欠乏症、口腔乾燥症、又はそれに付随する症状(ショーグレン症候群、アレルギー、口腔表面疾患、慢性炎症、高浸透圧症、老化、処方薬又はOTC薬、放射線療法、化学療法、神経損傷又はこれらの任意の組み合わせに付随する口腔乾燥症の症状を含む)を管理する方法であって、前記個人の口腔にPRG4タンパク質(例えば、有効量で)を投与することからなる方法が提供される。幾つかの実施形態において、PRG4タンパク質は、口腔ケア組成物(例えば、製薬学的に許容される口腔ケア組成物)で投与される。特定の実施形態において、投与されるPRG4タンパク質は、外因性PRG4タンパク質(すなわち、投与される個人に生まれつき備わっていないPRG4)である。幾つかの実施形態において、口腔に許容される配合物(例えば、本明細書に記載の口腔ケア製品)は、粘滑剤、収斂剤、皮膚軟化剤、甘味料、刺激剤、又はこれらの組み合わせを含有してなる。別の実施形態において、本明細書に記載の組成物は、さらに治療有効量のヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。
【0032】
口腔乾燥症は、唾液腺が十分な量の唾液を生成しない病気である。特定の場合には、口腔乾燥症は、幾つかの症例において極めて深刻であり得る不快感を生じる。唾液がないと、口は、ひりひりし得、咽喉や舌が急激な変化を受け得る。歯が急速に衰える可能性があり、舌が滑らかになり、ひび割れするようになり、感染を受け易くなり得る。多くの場合、味覚喪失があり、唾液が重要な消化酵素を含むので、多くの場合、消化に関連する問題がある。口は、外部環境に最も曝される身体領域の一つである。標準的に、粘液は、鼻、口及び咽喉の連続する保護層を形成する。口腔乾燥症を患う患者は、口内の流体が減少するばかりではなく、流体を細胞と接触した状態に保ち、刺激や感染に対して障壁を作るのに十分な量のムコタンパク質及びムコ多糖も有していない可能性がある。本明細書の特定の実施形態において、口腔乾燥症又はそれに付随する症状(具体的には、前述の症状を含む)を治療する方法であって、それを必要とする個人にPRG4タンパク質(例えば、PRG4タンパク質を有効量及び/又は有効濃度で含有してなる口腔ケア組成物)を経口投与することを含む方法が提供される。
【0033】
数百万の人々が全国的にこの病気を患っていると推定される。しかし、最近までこの問題の有病率又は重症度についてほとんど認められていなかったので、口腔乾燥症を患っている人の実際の数は知られていない。口腔乾燥症の症例は、極わずかな乾燥が経験される軽症から、患者が咀嚼、飲み込み、消化、会話などに関して深刻な問題を有する重症まで様々であり得る。Balslevらの米国特許第4,438,100号明細書に認められるように、口腔乾燥症について多数の原因、例えば生理学的原因(例えば、年齢、閉経、術後の状態、脱水)、及び精神的原因(神経質)がある。また、口腔乾燥の理由は、薬理学的なもの(例えば、多数の医薬、例えば利尿薬、抗関節炎薬及び抗うつ薬の一般的な副作用)であり得るし又は放射線療法の結果としてであり得る。口腔乾燥症の大部分の重症例は、頭部及び頸部手術後の放射線療法によって、及び自己免疫疾患、例えば狼瘡、ショーグレン症候群、及び関節リウマチによって引き起こされる。例えば、P.C.Fox et al.,J.Am.Dental Assoc.,110:519−525(1985)を参照されたい。
【0034】
口腔乾燥症の現行の治療は、著しい欠点を有する。例えば、軽度の口腔乾燥症の症状は、流体、ハードキャンディー及び咽喉炎用錠剤の消費によって幾分軽減できる。しかし、虫歯及び歯周病に対する口腔乾燥症患者の感受性のために、従来のキャンディー及び錠剤(lozenge)に関連する糖摂取量の増加は、極めて問題である。さらに、流体又はキャンディーは、典型的には口腔乾燥症のより重度の症例については有効でないし、軽度の症例については長期にわたる軽減を提供しない。
【0035】
また、アルコール、鉱油、グリセリン、及びポリエチレングリコール類の組み合わせを含有する多数の人工唾液が市販されている。また、多数のカルボキシメチルセルロース基剤の製剤、例えば商標Orex.RTM.(Young Dental)、Xero−Lube.RTM.(Scherer)、Moi−Stir.RTM.(Kingswood Laboratories)、及びSalivart.RTM.(Westport Pharmaceuticals)の下で販売されている製剤も市販されている。しかし、多くの患者は、このような製剤が、刺激があるか又は味がまずいこと、及びこれらの潤滑効果が比較的短期間であることを認めている。
【0036】
口腔乾燥症及びそれに付随する症状は、任意の適当な方法で調べることができる。ある場合には、口腔潤滑の欠乏及びそれに付随する症状は、定性的に定義される(例えば、低潤滑の感触、不快感、口腔乾燥、口腔のかゆみ又は灼熱感、咀嚼痛、及び会話困難性)又は定量的に定義される(例えば、機械的方法、生化学的方法、電気的方法、光学的方法又は定量アッセイのその他の方法によって測定される)。
【0037】
好ましい実施形態において、前記組成物は、PRG4の水溶液(又は懸濁液)として投与される。特定の実施形態において、前記組成物は、さらにイエルバ・サンタ(yerba santa)流エキス、柑橘油、レモン油、ライム油、ネロリ油、オレンジ油、ミント油、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、カルダモン油、シナモン油、丁子油、コリアンダー油、ユーカリ油、ウイキョウ油、レモングラス油、ニクズク油、エリオジクチオン流エキス、又は甘草エキスを、0.25重量%〜10重量%の範囲で、さらに好ましくは0.5重量%〜5.0重量%の範囲で、最も好ましくは約1.25重量%で含有してなる。特定の実施形態において、前記組成物はさらに、1つ又はそれ以上の甘味料を含有してなり、合計で約1.0重量%〜30重量%、さらに好ましくは10重量%〜20重量%、最も好ましくは約15重量%の甘味料を含有してなる。
【0038】
適当な甘味料は、容易に選択し得、本組成物に配合される甘味料の量は、味覚によって決定されるであろう。一般に、甘味料は、甘味を生じるか又は甘味を強める1つ又は複数の任意の化合物であり得る。甘味料は、天然起源又は合成起源のものであってもよく、栄養価を有していてもよいし又は栄養価を有していなくてもよい。本明細書において使用するのに適した甘味料の例としては、糖類、例えばフルクトース、グルコース、グリセロース、トレオース、エリスロース、メチルペントース、ガラクトース、キシロース、リボース、デキストロース、マルトース及びd−マンノース;糖アルコール、例えばソルビトール、キシリトール及びマンニトール;水溶性人工甘味料、例えば可溶性サッカリン塩、例えばサッカリンナトリウム又はカルシウム、シクラミン酸塩、アセスルファム−Kなど;並びにジペプチド系甘味料、例えばL−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステルが挙げられる。適当な甘味料のその他の例は、Encyclopedia of Chemical Technology,vol.19,2d Ed.,New York:John Wiley & Sons,1969,pp.593−607に記載されている。好ましい甘味料は、非う蝕原性であり、本明細書において使用される特に好ましい甘味料は、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、サッカリンナトリウム、及びこれらの組み合わせである。
【0039】
前記組成物が、唾液腺分泌を刺激する「刺激剤」化合物も含有することは任意である。この目的に特に好ましい化合物は、クエン酸であり、約0.25重量%〜約5.0重量%の範囲の量、好ましくは約0.5重量%で存在させる。本発明の組成物へのクエン酸の配合もまた、心地よい柑橘類風味を提供する働きをする。
【0040】
前記組成物が1つ又はそれ以上の防腐剤、典型的には流エキスの酸化及び/又は不活性化を遅らせるのに有効な量で存在する抗酸化剤を含有することは任意である。甘味料と同様に、1つ又は複数の防腐剤の選択は、当業者によって容易になされるであろう。適当な防腐剤の例として、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム又はナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、及び安息香酸ナトリウム又はカリウムが挙げられる。本明細書において使用するのに特に好ましい防腐剤は、安息香酸ナトリウムである。
【0041】
必要に応じて本発明の組成物に配合し得るその他の成分としては、着色料(これは、天然着色剤又は合成着色剤のいずれであってもよい)、着香料、風味保存剤、希釈剤、乳化剤、賦形剤、pH緩衝剤などが挙げられる。
【0042】
適当な着色剤としては、一般的に食品、医薬品及び化粧品用途に適した色素、すなわち、F.D.& C.色素として知られている色素が挙げられる。許容される色素は、水溶性であるべきである。例示的な例として、5,5−インジゴジスルホン酸の二ナトリウム塩(「F.D.& C.Blue No.2.」)及び4−[4−N−エチル−p−スルホ−ベンジルアミノ)ジフェニルメチレン]−[1−(N−エチル−N−p−スルホニウム−ベンジル)−2,5−シクロヘキサジエンイミンの一ナトリウム塩(「F.D.& C.Green No.1」)が挙げられる。さらにF.D.& C.着色剤及び対応する化学構造について、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,3rd Ed.,Volume 6を参照し得る。
【0043】
香料(flavoring)は、組成物へのクエン酸及び/又はアスコルビン酸の配合が、任意の追加の着香料の不存在下で心地よい柑橘類風味を提供するであろうという理由から、任意である。追加香料としては、その他の天然又は人工香料、例えば、ミント油、例えばペパーミント油、ウィンターグリーン油(サリチル酸メチル)、スペアミント油、ユーカリ油など、柑橘油、例えばレモン油、オレンジ油、ライム油、グレープフルーツ油、果実エッセンス、例えばリンゴエッセンス、モモエッセンス、キイチゴエッセンスなどを挙げ得る。油系着香料が選択される場合には、1つ又はそれ以上の防腐剤が、前記の組成物に含有されるであろう。種々の合成香料も組成物に配合し得る。着香料(1つ又は複数)は、選択される個々の薬剤に応じた量で存在するであろうが、存在する場合には、典型的には組成物の約0.5重量%〜約5.0重量%の範囲にあるであろう。
【0044】
特定の実施形態において、前記口腔ケア組成物は、さらに、唾液中に認められる酵素、例えばラクトペルオキシダーゼ、チオシアネート及びグルコースオキシダーゼを含有してなる。
【0045】
今述べた組成物は、好ましくは水溶液、ゲル又はペーストとして投与され、マウススプレー、口内洗浄液、練り歯磨き、リンス又はゲルを介して投与される。
【0046】
前記組成物は、前記水溶液と同じ重量の好ましい成分及び好ましい相対組成を用いてガム又は錠剤(lozenge)としても調製し得る。
【0047】
種々の実施形態において、ガム組成物は、任意の適当な従来の方法を使用して調製される。例えば、幾つかの実施形態において、PRG4は、前記の割合で存在する、チュアブルガム基剤、1つ又はそれ以上の甘味料、及び上記の任意の追加成分と混合される。種々の実施形態において、本明細書に記載のガム組成物は、本明細書に記載の香味添加剤、乳化剤、及び着色剤を含有してなる。
【0048】
「ガム基剤」は、多数の種類の組成物の1つであり得、典型的には種々の成分、例えば天然ガム、合成樹脂、ワックス、可塑剤などを加熱し、ブレンドすることによって調製される。チューインガム基剤中に認められる成分の非限定的な例としては、植物起源の咀嚼物質、例えばチクル、クラウンガム、ニスペロ(nispero)、ロシジンハ(rosidinha)、ジェルトン(jelutong)、ペンダレ(pendare)、ペリロ(perillo)、ニガーグッタ(niger gutta)、ツヌ(tunu)など、合成起源の咀嚼物質、例えばブタジエン−スチレンポリマー、イソブチレンイソプレンコポリマー、パラフィン、石油ワックス、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニルなど、可塑剤又は軟化剤、例えばラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、グリセリルトリアセテート、グリセリンなどが挙げられる。
【0049】
ワックス、例えば天然及び合成ワックス、石油ワックス、パラフィンワックス及び微晶質ワックスも、所望の肌理及び稠度を得るために、ガム基剤に配合し得る。
【0050】
本明細書に記載の錠剤(lozenge)は、キャンディー又はグリセリン化ゼラチン基剤中にPRG4を含有する、場合により成形されていてもよい固体である。幾つかの実施形態において、錠剤の形態は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載の適当な方法を使用して調製される。特定の場合には、PRG4は、甘味料及び前記のようなその他の任意の化合物と混合され、得られるシロップは濃縮され、混合物は、加熱しながら所望の形態に成形及び/又は圧縮される。
【0051】
投与されるPRG4の量は、変化し得、治療される被験者、口腔乾燥症の重症度、及び処方医療専門家の判断に依存し得る。しかし、有効投薬計画は、典型的には、1日当たり1回又は2〜6回経口投与される1〜2tsp(又は1〜20mL、2〜15mL、3〜10mLなど)の水性組成物(又はガム若しくは錠剤形態の相当物)である。水性組成物については、該組成物は、口腔粘膜と、PRG4による口の内部のコーティングを可能にするのに十分な時間接触して保持されることが好ましい。組成物は、口内で1〜30秒間、2〜20秒間、5〜15秒間又は8〜10秒間保持されることが好ましい。また、組成物は、口を水溶液で簡単に洗浄する口内洗浄液であってもよく、口内洗浄液として投与されてもよいし、又は必要に応じて、組成物は飲みこまれてもよい。
【0052】
種々の実施形態において、本明細書に記載の任意の口腔ケア組成物は、一般的な「口唇潰瘍」又はより重篤な潰瘍が、口腔粘膜炎として記載される癌療法の副作用とみなされようとみなされなかろうと、口内に潰瘍を患う患者を治療するのに役立てるのに適しているか又は有用である。前記の方法及び組成物は、病斑に局所投与される医薬に関連する。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、口腔潰瘍に付随する疼痛及び不快感の長期軽減を提供する。
【0053】
一つの実施形態において、口腔潰瘍を治療するための組成物は、PRG4を口腔に許容される溶液で、それを必要とする口腔潰瘍に局所投与することを含む。別の実施形態において、PRG4組成物は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。さらに別の実施形態において、PRG4組成物は、さらに、リドカイン、リグノカイン及びプリロカインからなる群から選択される1つ又はそれ以上の局所麻酔薬を含有してなる。
【0054】
本発明は、さらに、口腔潰瘍を治療する方法であって、それを必要とする口腔潰瘍に、有効量のPRG4を口腔に許容される溶液で(又は本明細書において意図される任意のその他の組成物で)局所投与することを含み、前記組成物がゲル、液体、クリーム、軟膏、スプレー又は粘稠溶液の形態である方法を提供する。
外科用
【0055】
本発明の特定の実施形態は、外科的又は内科的処置に関与する器具及び/又はその他の表面の潤滑に適した組成物を提供する。具体的な実施形態において、PRG4及び/又はヒアルロン酸ナトリウムと、場合により追加の賦形剤及び粘滑剤とを含有してなる粘弾性溶液(又は懸濁液)が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態において、このような組成物は、外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして極めて特に適している生体適合性水溶液(又は懸濁液)である。本発明の特定の実施形態は、さらに、前記組成物(例えば、溶液)の使用であって、外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして、水和インプラントとして、並びに白内障摘出、レーザー角膜切除術、眼内レンズ(IOL)挿入及び除去、角膜手術、緑内障手術、外傷手術、後眼部手術、眼球形成手術及び筋肉手術において使用するための、カテーテル、内視鏡、手術器具、グローブの身体開口部への挿入において使用するための外科/内科潤滑剤としての使用に関する。
【0056】
一般に、いかなる外科的侵襲も、組織損傷を引き起こす。特に、組織が特に壊れ易い及び/又は取り替えられない領域に関与する損傷を、最小限にするか、減少させるか又は防止するために、粘弾性溶液を、外科補助剤として使用してもよい。このような溶液は、組織を手術器具から保護し、前記組織の処置を助ける。また、これらの溶液は、空間又は容量を、組織がこのような空間又は容量を融合し、損なわないように維持するために使用される。この種の溶液は、極めて特に眼科手術において使用される。
【0057】
白内障手術に関しては、従って、以下の市販の製品が、これまでに提案されている:Viscoat.RTM.(Alcon Surgical,Inc.製、これは、ヒアルロン酸ナトリウムとコンドロイチン硫酸を含有する);この製品は、現在市場リーダーである;Healon.RTM.及びHealon GV.RTM.(現在、A.M.O.から市販されている);Amvisc.RTM.及びAmvisc Plus.RTM.(現在、Bausch & Lombから市販されている);Vitrax.RTM.(現在、A.M.O.から市販されている);並びにViscorneal.RTM.及びBiocorneal.RTM.(本出願人によって市販されている)(これらは、ヒアルロン酸ナトリウム(NaHA)を含有する);Orcolon.RTM.(Optical Radiation Corporation製)(これは、ポリアクリルアミドを含有しており、現在は入手できない);並びにOccucoat.RTM.(Storz製)(これは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含有する)。
【0058】
一つの好ましい実施形態において、外科潤滑剤/粘弾性流体は、外科的に許容される塩溶液中のPRG4を含む。別の実施形態において、外科潤滑剤/粘弾性流体は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。さらに別の実施形態において、外科潤滑剤/粘弾性流体は、さらに、追加の賦形剤及び粘滑剤、例えば、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール及びポビドンを含有してなる。さらに別の実施形態において、外科潤滑剤/粘弾性流体は、さらにリグノカイン及びプリロカインからなる群から選択される1つ又はそれ以上の局所麻酔薬を含有してなる。
【0059】
さらに別の実施形態において、外科潤滑剤/粘弾性流体は、さらに、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アルコール、塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムからなる群から選択される1つ又はそれ以上の消毒薬を含有してなる。
【0060】
本発明は、さらに、外科的又は内科的処置において使用するための潤滑を提供する方法であって、有効量のPRG4を(例えば、外科的に許容される溶液で又は本明細書において意図される任意のその他の組成物で)、それを必要とする組織又は医療機器に施用することを含む方法を提供する。具体的な実施形態において、このような方法は、外科的又は内科的処置に付随する組織損傷を減少させる又は防止する方法である。このような外科的又は内科的処置としては、外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして、水和インプラントとしての身体開口部へのカテーテル、内視鏡、手術器具、グローブの挿入、白内障摘出、レーザー角膜切除術、眼内レンズ(IOL)の挿入及び除去、角膜手術、緑内障手術、外傷手術、後眼部手術、眼球形成手術及び筋肉手術が挙げられる。
運動競技用潤滑
【0061】
また、本発明は、特定の実施形態において、歩行運動中の摩擦を減少させるための新規組成物及び方法を提供し、このような方法は、任意の組成物(例えば、PRG4タンパク質を含有してなる任意の組成物)を、それを必要とする表面(例えば、擦れた表面又は摩擦及び/又は擦れの影響を受け易い表面)に投与することを含む。運動競技における努力は、多くの場合、皮膚と衣類、皮膚と皮膚、及び毛髪と皮膚の間に著しい剪断応力と摩擦を含む。これは、多くの場合、擦れ、「肉擦れ(chub rub)」、皮膚裂傷、乳首からの出血などを招く。この種の剪断作用によって誘発される損傷は、長距離競技、例えばマラソン又は鉄人レース中によく起こる。現行アプローチは、ポリマー及び皮膚の保湿剤、例えばBODYGLIDEの施用を含む。しかし、現行アプローチは、長続きする軽減を提供することができず、境界潤滑を減少させるメカニズムを提供しない。
【0062】
特定の実施形態において、本発明は、歩行運動によって引き起こされる摩擦を減少させるのに使用される運動競技用組成物であって、PRG4を含有してなる組成物を提供する。具体的な実施形態において、PRG4は、遅延放出ポリマーと一緒に処方されるか又は遅延放出ポリマー中に処方される。特定の実施形態において、遅延放出ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリプロピレン、あるいはその他の一般的な賦形剤又は粘滑剤の1つ又はそれ以上を含有してなる。
【0063】
特定の実施形態において、運動競技用組成物は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。
【0064】
特定の実施形態において、運動競技用組成物は、さらにアラントイン(0.5%)を含有してなる。
【0065】
特定の実施形態において、運動競技用組成物は、さらにアロエ(Aloe Barbadensis)葉エキス、C18−36酸トリグリセリド、カプリン酸/カプリル酸ステアリン酸トリグリセリド、トリベヒニン、及び/又は酢酸トコフェロールを含有してなる。
【0066】
一つの任意の実施形態において、粘着パッチは、PRG4で被覆され、摩擦の領域と摩擦の原因との間に貼付される。適当な粘着パッチの例としては、バンドエイド又はアスレチックテープが挙げられる。別の実施形態において、ヒアルロン酸及びPRG4は、粘着パッチに含有される。
【0067】
本発明は、さらに運動中の摩擦を減少させる方法であって、有効量のPRG4を溶液、ゲル、ゾルで(あるいは、任意のその他の組成物又は本明細書において意図されるデバイスで)それを必要とする領域に施用することを含む方法を提供する。
皮膚充填剤
【0068】
一つの態様において、本発明は、顔、及び身体の選択された領域、例えば首及び手の老化に関連した組織損傷を回復させるために真皮又は皮下組織(hypodermis)〔皮下組織(subcutaneous tissue)〕に注入するための注入可能組成物を提供する。場合によっては、皮膚充填剤処方物へのPRG4の使用は、吸収前に皮膚充填剤が保持される時間を増大する。
【0069】
顔の老化は、幾つかの因子、例えば:皮膚内の固有の変化、重力の影響、皮膚に作用する顔面筋(動的ライン)、軟組織の喪失又は変化、及び骨量減少、並びに組織の弾性の喪失の結果として生じる。皮膚は、表皮が薄くなり始め、真皮との接合部を平坦化させる場合に老化する。コラーゲンは、人の年齢と共に減少し、コラーゲンの束(これは、皮膚の緊張感を与える)がゆるくなり、強度を失う。皮膚が弾性を失うと、伸びに耐えることができなくなる。重力、筋肉牽引及び組織変化と相まって、皮膚は、しわが寄り始める。水分喪失及び細胞同士の間の結合の破壊もまた、皮膚の障壁機能を低下させる(これは、皮膚の細孔サイズを増大させることができる)。
【0070】
人が老化すると共に、顔は、容量、軟組織、及び脂肪を失う。顎やヒダの外観は、通常は、顔の組織の垂れ下がりや、下の筋肉が皮膚に結合する領域のヒダによって生じる。軟組織の減少の一部として、顔は、よりいっそうくぼむ。
【0071】
さらに具体的には、種々の顔の領域、例えば額、目、鼻、顔面中央及び顔面下部において、老化に関連する変化が、十分に実証されている。額の領域において、額と眉は、時間と共に垂れ下がり、時間は、眉毛を下げ、上まぶたの皮膚にヒダを生じさせる。額の線が、眉及びまぶたをこれらの変化に逆らうまで保とうとする場合に現れる。目が、多くの場合、老化の兆候を表す第一の顔の特徴であることは周知である。目の周りの皮膚の変化は、皮膚は目の周りではより薄いので、顔の残りの部分よりも早く生じる。皮膚は、ここでは、より少ない腺を含み、絶えずまばたき、斜視(squinting)、こすり、及び引き延ばし(pulling)にさらされる。顔面中央は、頬が垂れ下がり始め、鼻唇溝を生じる場合に老化する。鼻唇溝は、鼻の両側から口の両端に走る線である。これらのヒダは、顔用充填剤すなわちフェイシャルフィラー(facial filler)で処置されている。鼻の領域において、人が老化すると共に、鼻が伸びる。伸びの一般的な原因は、軟組織が薄くなること及び弾性の喪失であり、弾性の喪失は、「先端の垂れ下がり」及び骨の脱マスキングを引き起こし、新たな盛り上がり(hump)を作り出す。顔面下部では、顔が老化すると共に、顔の組織が降下する。これは、いわゆる「笑いじわ」をもたらす。この領域のヒダ及び線は、フェイシャルフィラーで処置されている。また、顔の下方では、口の両端が垂れ下がる可能性があり、顎のたるみ(jowl)の降下は、多くの場合、「マリオネット」ラインと呼ばれるしわを作り出し得る。また、顎のたるみは、顔面筋が顎骨に結合している顎に沿った固定点周りで頬が垂れ下がると生じる。顔面筋は、広頸筋と呼ばれるシートとして首に降り続ける。この筋肉は、多くの場合、首の中心に隙間を作り、2つの帯を作る。
【0072】
種々の注入物質(injectable)が、顔の組織喪失を元の状態に戻すのに使用されている。1890年代以降、注入可能なコラーゲンが、顔のしわ、線及び瘢痕を埋めるのに軟組織充填剤として使用されている。コラーゲンは、体の種々の部分、例えば皮膚、腱及び靭帯を支持する天然タンパク質である。脂肪注入が、ボリュームを加え、しわ、線を埋め、唇を高めるのに長年使用されている。脂肪注入は、患者の体の一つの部分(腹部、太腿部又は臀部)から脂肪を採取し、それを顔の皮膚の下に再注入することを伴う。ボツリヌス毒素が、頸部痙攣、脳神経障害及び目の痙攣に使用されている。眉間領域の化粧用途についてのボトックス(Botox)の最近のFDA承認に関して、薬物は、しわを滑らかにするのに使用される。ボツリヌス毒素は、顔面筋に注入されると、神経インパルスをブロックし、一時的に筋肉を麻痺させ、しわを滑らかにする。
【0073】
ヒアルロン酸は、しわ及び線を最小限にするためにボリュームを加える最も一般的に使用される化粧用皮膚充填剤の一つである。ヒアルロン酸は、全ての生物に生まれつき存在し、体組織の細胞外空間の共通の要素である線状多糖である。全ての種及び組織中のヒアルロン酸の同じ構造は、この多糖を健康と医療において生体材料として使用するのに理想的な物質にする。ヒアルロン酸は、人体の多数の場所に存在する。ヒアルロン酸は、皮膚にボリュームを与え、目を形作り、関節に弾性を与える。最も高い濃度は、結合組織で認められ、大部分のヒアルロン酸(約56%)は、皮膚で認められる。
【0074】
種々の形態のヒアルロン酸が、多数の製造業者によって商業的に提供されている。最も一般的に使用されるヒアルロン酸は、連鎖球菌細菌から細菌培養によって製造される透明ゲルの形状の非動物性の安定化ヒアルロン酸(NASHA)である。動物由来のヒアルロン酸と異なり、非動物由来のヒアルロン酸は、動物性タンパク質を含有していない。これは、動物媒介疾患伝染又は動物性タンパク質に対するアレルギー反応の発生のおそれを制限する。最もよく知られている非動物性の安定化ヒアルロン酸は、Q−med(Seminariegatan、Uppsala所在)によって製造され、商品名Restylane.RTM.として市販されている。1996年のその商業化以来、2,500,000を超える治療が、世界中で行なわれていると推定される。その他の非動物性の安定化ヒアルロン酸製品としては、Q−med製のPerlane.RTM.(これは、Restylane.RTM.よりも大きい粒子を有する)及びGenzyme Corporation製のCaptique.TM.が挙げられる。別の一般的に使用される充填剤は、Genzyme Corporationによって製造されるヒアルロナンであり、商品名Hylaform Plusとして市販されている。Hylaform Plusは、ヒアルロナンの架橋分子から構成される滅菌、非発熱性、粘弾性のきれいな無色透明ゲルインプラントである。ヒアルロン酸及びその誘導体は、最も一般的に使用されている皮膚充填剤であるが、可変性に制約がある。再注入は、4〜12ヶ月毎を必要とし、場合によってはそれよりも短い。これが、HA皮膚充填剤の主な欠点である。
【0075】
一つの実施形態において、注入用組成物は、PRG4を粘稠溶液で含有してなる。一つの別の実施形態において、注入用組成物は、PRG4を、皮膚科学的有効量のヒアルロン酸と組み合わせて含有してなる。さらに別の実施形態において、注入用組成物は、PRG4を、皮膚科学的有効量のコラーゲン、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及び/又はポリエチレンオキシドと組み合わせて含有してなる。一つの別の実施形態において、注入用組成物は、PRG4を、抗血栓薬、抗炎症薬、ホルモン、走化性因子、鎮痛薬、増殖因子、サイトカイン、骨形成因子及び麻酔薬からなる群から選択される薬物と組み合わせて含有してなる。一つの別の実施形態において、注入用組成物は、PRG4を、レチノイン酸及び/又は重水素減少水と組み合わせて含有してなる。
【0076】
人の顔又は体の選択された領域の組織ボリューム、皮膚の張り、肌理及び緊張を回復させるための治療方法は、PRG4の組成物(又は本明細書において想定されるその他の皮膚用組成物)を、顔又はヒトの体の選択された領域の1つ又はそれ以上の領域の真皮、又は皮下組織に注入する段階からなる。別の実施形態において、治療の領域としては、眼窩周辺領域、唇、頬の領域、鼻唇溝、口唇−下顎溝、首又は手が挙げられる。
薬物送達
【0077】
特定の実施形態において、本発明は、薬物送達方法であって、生物活性剤をPRG4タンパク質と組み合わせて(例えば、混合して)送達させることを含む薬物送達方法を提供する。幾つかの実施形態において、生物活性剤が、被験者に送達され、生物活性剤を、PRG4を含有してなる担体と混合して含有してなる組成物で送達される。
【0078】
医薬の薬物送達用の担体物質は、広範な物質、例えば有機又は無機ポリマー、金属及びセラミックスを基剤とする。理論に束縛されることなく、薬物送達方法としてのPRG4の使用は、滞留時間の増大及び標的化合物の優れた局在化をもたらすと考えられる。
【0079】
一つの実施形態において、生物活性剤は、薬物、ペプチド、タンパク質、抗体又はその断片、核酸、あるいは造影剤を含有してなる。別の実施形態において、送達用担体は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。さらに別の実施形態において、送達用担体は、さらに、L−α−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される界面活性リン脂質を含有してなる。
【0080】
前記混合物の物理的送達は、局所投与、注射、又は経口投与によって達成できる。
授乳用潤滑
【0081】
幾つかの実施形態において、本発明は、授乳中の母親のための潤滑方法であって、それを必要とする表面にPRG4タンパク質を投与することを含む潤滑方法を提供する。授乳中に、不完全ラッチング(latching)は、乳幼児の口のパレット(palette)と母親の乳首の間に有意な剪断応力を生じ得る。時間と共に、乳首は、炎症を起こしてしまい、痛くなる。既存のアプローチ、例えばラノリン軟膏又はゲルパッチは、限られた時間使用できるだけであり、特定の人達の乳首を汚し、刺激し得る。その理由は、そのメカニズムが、流体境膜潤滑であるからである。PRG4境界潤滑(これは、一つの単層で作用する)は、他のクリームが作り出す残留物がなく、優れた滞留時間を提供する。特定の実施形態において、流体境膜及び境界潤滑の両方の組み合わせが、有用であり得る。
【0082】
一つの好ましい実施形態において、授乳用潤滑剤は、水溶液、ゲル、ゾル、粘着パッチ中のPRG4を含む。別の実施形態において、前記潤滑剤は、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる。さらに別の実施形態において、前記潤滑剤は、追加の賦形剤及び粘滑剤を含有してなる。
【0083】
この出願全体を通じて、種々の刊行物が参照される。全てのこれらの刊行物及びこれらの刊行物内で引用されている参考文献の開示は、本発明が関係する従来技術をさらに十分に説明することを目的として、全体として参照することにより本明細書で援用される。
【0084】
前記が本発明の好ましい実施形態に関するということ、及び多数の変形を本発明の範囲から逸脱することなくなし得ることが理解されるべきである。本発明を、以下の実施例によりさらに例証するが、実施例は、本発明の範囲について限定を強いると何ら解釈されるべきでない。それどころか、本明細書の記載を読んだ後に、本発明の精神及び/又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく当業者に示唆し得る種々のその他の実施形態、その変形例、及び等価物をなし得ることが、明確に理解されるべきである。
【0085】
本明細書で使用するように、用語「PRG4」、「PRG4タンパク質」又は「プロテオグリカン4」タンパク質は、用語「ルブリシン」タンパク質と同じ意味で使用される。PRG4は本明細書において、UCL/HGNC/HUGOヒト遺伝子命名データベース、及び表在層タンパク質(SZP)について許容されている巨核球刺激因子(MSF)という用語を包含するためにも使用される。本明細書で使用するPRG4又はルブリシンタンパク質(本明細書においてルブリシンプロテオグリカンと同じ意味で使用される)とは、単離又は精製された天然又は組換えルブリシンタンパク質、そのホモローグ、機能性断片又はモチーフ、イソ型及び/又は変異体を指す。特定の実施形態において、任意の単離又は精製されたPRG4タンパク質は、ヒト天然又は組換えルブリシンタンパク質のアミノ酸配列を含有してなる。他の実施形態において、単離又は精製されたPRG4タンパク質は、完全長PRG4タンパク質又はイソ型の一次構造をコードするprg4遺伝子エクソンによってコードされるアミノ酸配列を含有してなる。プロテオグリカン4(prg4)遺伝子は、12個のエクソンを含有する。本明細書で使用するPRG4タンパク質は、PRG4遺伝子エクソン1−12、さらに好ましくはエクソン6−12、最も好ましくはエクソン9−12によってコードされるアミノ酸配列を含有してなる。
【0086】
本明細書で使用するように、PRG4タンパク質は、現在公知の又は後で記載される任意のPRG4タンパク質を包含する。特定の実施形態において、好ましいPRG4タンパク質アミノ酸配列は、配列番号:1で提供される。PRG4タンパク質は、任意の公知のPRG4タンパク質又はイソ型の一次アミノ酸構造を、少なくとも60%の相同性、好ましくは75%の相同性、さらに好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上の相同性で共有する。特定の実施形態において、好ましいPRG4タンパク質は、50kDa〜400kDaの間の平均モル質量を有し、PRG4タンパク質、あるいはその機能性断片、例えば潤滑断片、又はホモローグの1つ又はそれ以上の生物活性部分を含有してなる。
【0087】
本明細書で使用するように、PRG4タンパク質は、タンパク質の生物活性部分を含有してなる。本明細書で使用するように、PRG4タンパク質の「生物活性部分」とは、完全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含有し、完全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示すタンパク質のアミノ酸配列と十分に相同性のアミノ酸配列、又は前記アミノ酸配列から誘導されるアミノ酸配列を含有してなる、タンパク質の機能性断片を包含する。典型的には、生物活性部分は、タンパク質の少なくとも1つの活性を有する機能性ドメイン又はモチーフを含有してなる。タンパク質の生物活性部分は、例えば、10個、25個、50個、100個、200個、又はそれ以上のアミノ酸の長さであるポリペプチドであることができる。一つの実施形態において、PRG4タンパク質の生物活性部分は、治療剤として単独で又はその他の治療剤と組み合わせて、望まれない又は低下した膣境界潤滑を治療するために使用できる。
【0088】
さらに別の実施形態において、PRG4の機能性断片、多量体(例えば、二量体、三量体、四量体など)、ホモローグ又はオルソローグが、口腔ケア組成物に使用される。PRG4の機能性断片及びホモローグとしては、中心ムチン様KEPAPTT−反復ドメイン内により少ない反復を有するもの、タンパク質のグリコシル化及び非グリコシル化体、スプライス変異体、組換え体などが挙げられる。PRG4の潤滑断片は、定性的に、機械的に、光学的に、電気的に、又は生化学的アッセイによって測定されるヒトPRG4の潤滑効果の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は95%を示す。
【0089】
数種の天然及び組換えPRG4タンパク質又はルブリシンタンパク質の核酸及びアミノ酸配列、並びにPRG4タンパク質及び種々のイソ型の特性決定は、例えばTurnerらの米国特許第5,326,558号;同第6,433,142号;同第7,030,223号;同第7,361,738号明細書、並びにJayらの米国特許第6,743,774号及び同第6,960,562号明細書に開示されている。また、Flanneryらの米国特許出願公開第20070191268号明細書は、本発明に有用な組換えPRG4又はルブリシン分子を開示している。
【0090】
PRG4タンパク質の単離、精製、及び組換え発現方法は、当技術分野で周知である。特定の実施形態において、前記方法は、標準的な分子生物学的技術、例えばPCR又はRT−PCRを使用して、PRG4タンパク質又はイソ型をコードするmRNA及びcDNAのクローニング及び単離から始める。次いで、PRG4タンパク質又はイソ型をコードする単離されたcDNAは、発現ベクター中にクローニングされ、さらに組換えPRG4タンパク質を産生させるために宿主細胞中で形質転換され、発現される。
【0091】
本明細書で使用するように、「組換え」とは、生体外(in vitro)で合成されるか又は操作されるポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、細胞又はその他の生物系で遺伝子産物を産生させるために組換えポリヌクレオチドを使用する方法、あるいは組換えポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(「組換えタンパク質」)を指す。また、「組換え」とは、発現、例えばPRG4遺伝子の活性ドメインと、本発明のプライマーを使用して増幅された核酸配列とを含有してなる融合タンパク質の誘導性又は構成性発現のための発現カセット又はベクター中への、異なる供給源由来の種々のコーディング領域あるいはドメイン又はプロモーター配列を有する核酸の結合を包含する。
【0092】
特定の実施形態において、核酸をコードするPRG4タンパク質は、1つ又はそれ以上の突然変異、欠失、又は挿入を含んでいてもよい。このような実施形態において、核酸をコードするPRG4タンパク質は、核酸をコードする野生型PRG4タンパク質に対して少なくとも60%の相同性、好ましくは75%の相同性、さらに好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の相同性である。
【0093】
本明細書で使用するように、用語「cDNA」は、逆転写酵素などの酵素を用いてcDNAに変換することができる細胞又は生物mRNAに存在するmRNA分子と相補的であるDNAを包含する。特定の実施形態において、PRG4タンパク質をコードするcDNAは、当技術分野で周知のRT−PCR法を使用して、ヒト角膜又は結膜上皮細胞で発現されたPRG4 mRNAから単離される。
【0094】
本明細書で使用するように、用語「ポリヌクレオチド」、「核酸/ヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドの多量体(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)、又はそのアナローグを包含する。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有していてもよく、公知又は未知の任意の機能を遂行し得る。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子又は遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、DNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、天然ポリヌクレオチド、合成ポリヌクレオチド、組換えポリヌクレオチド又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0095】
ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチド及びヌクレオチドアナローグを含み得る。存在する場合には、ヌクレオチド構造に対する修飾は、そのポリマーの組み立ての前後に付与し得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断し得る。ポリヌクレオチドは、標識成分との複合によるなどの重合の後にさらに修飾し得る。この用語はまた、二本鎖分子及び一本鎖分子の両方を包含する。特に明記しない限り又は要求されない限りは、ポリヌクレオチドである本発明の任意の実施形態は、二本鎖体と、二本鎖体から調製されることが知られているか又は予測される2つの相補的一本鎖体のそれぞれとの両方を包含する。
【0096】
本明細書で使用するように、用語「ポリヌクレオチド配列」とは、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。ポリヌクレオチドは、4つのヌクレオチド塩基:アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);及びウラシル(U)(ポリヌクレオチドが、DNAの代わりにRNAである場合には、チミンの代わりにウラシル)の特定の配列を含む。このアルファベット表示は、コンピューターのデータベースに入力することができ、例えば、機能的ゲノム及び相同性検索などのバイオインフォマティックス用途に使用できる。
【0097】
本明細書で使用するように、「単離された(又は単離)ポリヌクレオチド/cDNA」という用語は、ポリヌクレオチドの天然源に存在する他のポリヌクレオチド分子から分離されるポリヌクレオチド分子を包含する。例えば、ゲノムDNAに関して、「単離された」という用語は、ゲノムDNAが自然に会合する染色体から分離されるポリヌクレオチド分子を包含する。好ましくは、「単離された」ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが誘導される生物のゲノムDNA中のポリヌクレオチドに生来隣接している配列(すなわち、対象のポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端に配置された配列)を含んでいない。例えば、種々の実施形態において、本発明において使用されるPRG4タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド分子は、ポリヌクレオチドが誘導される細胞のゲノムDNA中のポリヌクレオチド分子に生来隣接している約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb未満のヌクレオチド配列を含むことができる。また「単離された」ポリヌクレオチド分子、例えばcDNA分子は、組換え法によって産生される場合には、他の細胞物質又は培地を実質的に含んでいないものであり得る、又は化学合成される場合には、化学前駆物質又はその他の化学物質を実質的に含んでいないものであり得る。
【0098】
本明細書で使用するように、「遺伝子」とは、転写され、翻訳された後に特定のポリペプチド又はタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含んでいるポリヌクレオチドを包含する。本明細書に記載のポリヌクレオチド配列のいずれも、ポリヌクレオチド配列が会合する遺伝子のより大きい断片又は完全長コーディング配列を特定するのに使用し得る。より大きい断片配列を単離する方法は、当業者には公知である。本明細書で使用するように、「天然又は天然産」ポリヌクレオチド分子は、例えば、自然界に生じる(例えば、天然タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA又はDNA分子を包含する。
【0099】
本明細書で使用するように、用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、同義的に使用され、2個又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナローグ、又はペプチドミメティックの化合物を包含する。サブユニットは、ペプチド結合によって連結し得る。別の実施形態において、サブユニットは、その他の結合、例えばエステル結合、エーテル結合などによって連結し得る。本明細書で使用するように、用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然又は合成アミノ酸、例えばグリシン及びD光学異性体又はL光学異性体の両方、並びにアミノ酸アナローグ及びペプチドミメティックを包含する。3個又はそれ以上のアミノ酸のペプチドは、一般にオリゴペプチドと呼ばれる。3個又はそれ以上のアミノ酸よりも大きいペプチド鎖は、ポリペプチド又はタンパク質と呼ばれる。
【0100】
特定の実施形態において、本明細書で使用するPRG4タンパク質とは、ヒト又はその他の宿主細胞で自然に発現されるか又は組換え発現されるPRG4タンパク質又はその種々のホモローグ又はイソ型を指す。本明細書で使用するように、「発現する」又は「発現」は、ポリヌクレオチドがRNAに転写される及び/又はポリペプチドに翻訳されるプロセスを包含する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAから誘導される場合には、発現は、適切な真核生物宿主が選択される場合にはRNAのスプライシングを含み得る。発現に必要な調節要素としては、リボソーム結合のためにRNAポリメラーゼ及び転写開始配列に結合するプロモーター配列が挙げられる。例えば、細菌発現ベクターとしては、プロモーター、例えばlacプロモーター及び転写開始用にシャイン・ダルガルノ配列及び開始コドンAUGが挙げられる。同様に、真核生物発現ベクターとしては、RNAポリメラーゼII用の異種又は同種プロモーター、下流ポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、及びリボソームの脱離のための終止コドンが挙げられる。このようなベクターは、商業的に得ることができ、又は当技術分野で周知の方法、例えば一般的にベクターを組み立てるための以下に記載の方法に記載の配列によって組み立てることができる。本明細書で使用する用語「ベクター」は、宿主細胞に及び/又は宿主細胞の間に挿入されるポリヌクレオチドを運搬する自己複製核酸分子を包含する。この用語は、主として核酸分子を細胞に挿入するために機能するベクター、主として核酸を複製するために機能する複製ベクター、及びDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能する発現ベクターを包含することを意図する。また、前記機能の2つ以上を提供するベクターも意図される。
【0101】
本明細書で使用するように、「宿主細胞」とは、ベクターの受容体又は外因性ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを組み込むための受容体であることができるか、又は該受容体である任意の個々の細胞又は細胞培養を包含することを意図する。また、単一細胞の子孫を包含することも意図する。前記子孫は、自然、偶然的、又は意図的突然変異により元の親細胞と必ずしも完全に同じでなくてもよい(形態において又はゲノム又は完全DNA補体において)。細胞は、原核生物細胞又は真核生物細胞であってもよく、以下に限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞、及び哺乳動物細胞、例えば以下に限定されないがネズミ、ラット、サル又はヒトの細胞が挙げられる。本明細書で使用するように、「宿主細胞」はまた、遺伝子組換え細胞も包含する。用語「遺伝子組換え細胞」は、遺伝子型又は表現型の細胞又はその子孫を順次修飾する外来又は外因性遺伝子又はポリヌクレオチド配列を含有する及び/又は発現する細胞を包含する。「遺伝子組換え」はまた、細胞内に導入されている遺伝子又はポリヌクレオチド配列を含有又は発現する細胞も包含する。例えば、この実施形態において、遺伝子組換え細胞は、遺伝子が該細胞に内因性である遺伝子を導入している。用語「遺伝子組換え」は、細胞の内因性ヌクレオチドに対する任意の付加、欠失、又は分裂を包含する。本明細書で使用する「宿主細胞」は、ヒトPRG4タンパク質を発現する細胞であることができる。
【0102】
本明細書で使用するように、「ホモローグ」は、本明細書において、類似するか又は実質的に同じ核酸又はアミノ酸配列それぞれを有する2つの核酸又はペプチドとして定義される。用語「ホモローグ」は、さらに、遺伝コードの縮重によりヌクレオチド配列の1つと異なる核酸分子を包含し、従って同じアミノ酸配列をコードする。好ましい実施形態の1つにおいて、ホモローグは、PRG4タンパク質をコードする核酸(例えば、配列番号:1、例えば図2参照)の対立遺伝子変異体、オルソローグ、パラローグ、アゴニスト、及びアンタゴニストを包含する。
【0103】
本明細書で使用するように、用語「オルソローグ」は、異なる種に由来するが、種形成によって一般的な祖先遺伝子から進化した2つの核酸を指す。標準的に、オルソローグは、同じ又は類似する機能を有するペプチドをコードする。特に、本発明のオルソローグは、一般に、任意の公知PRG4タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号:1)、イソ型、又はそのアナローグの全体又は部分と少なくとも80〜85%、さらに好ましくは85〜90%又は90〜95%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、又はさらには99%の同一性、あるいは100%の配列同一性を示すであろうし、これらのペプチドに類似する機能を示すであろう。また、本明細書で使用するように、用語「パラローグ」とは、ゲノム内で複製による関連がある2つの核酸を指す。パラローグは、通常、異なる機能を有するが、これらの機能は関連があり得る。
【0104】
2つのアミノ酸配列の%配列同一性を調べるために、これらの配列を、最適比較のために整列させる(例えば、ギャップを、他のポリペプチド又は核酸との最適アラインメントのために1つのポリペプチドの配列に導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸の位置のアミノ酸残基を、比較する。1つの配列内の位置を、他の配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基が占めている場合には、これらの分子は、その位置で同一である。同じ型の比較を、2つの核酸配列の間で行なうことができる。2つの配列の間の%配列同一性は、配列によって共有される同じ位置の数の関数である(すなわち、%配列同一性=同じ位置の数/位置の総数×100である)。好ましくは、本発明に含まれる単離されたアミノ酸ホモローグは、任意の公知PRG4タンパク質の全アミノ酸配列(例えば、配列番号:1)と少なくとも約50〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは少なくとも約70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、又は90〜95%、最も好ましくは少なくとも約96%、97%、98%、99%、又はそれ以上同一である。
【0105】
特定の実施形態において、PRG4タンパク質をコードする単離された核酸ホモローグは、このようなPRG4タンパク質のアミノ酸配列(例えば、配列番号:1)をコードするヌクレオチド配列と少なくとも約40〜60%、好ましくは少なくとも約60〜70%、さらに好ましくは少なくとも約70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、又は90〜95%、いっそうさらに好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上同一であるヌクレオチド配列を含有してなる。
【0106】
2つの核酸又はペプチド配列の間の%配列同一性の測定は、当技術分野において周知である。例えば、2つの核酸又はペプチド配列の間の%配列同一性を測定するVector NTI 6.0(PC)ソフトウエアパッケージ(InforMax、Bethesda、MD)を使用できる。この方法において、2つの核酸の%同一性を測定するのに、15のギャップ開始ペナルティ及び6.66のギャップ伸長ペナルティが使用される。2つのポリペプチドの%同一性を測定するのに、10のギャップ開始ペナルティ及び0.1のギャップ伸長ペナルティが使用される。全てのその他のパラメーターは、デフォルト設定に設定される。多重アラインメント(Clustal W algorithm)の目的に、blosum62マトリックスを用いて、ギャップ開始ペナルティは10であり、ギャップ伸長ペナルティは0.05である。配列同一性の測定のために、DNA配列をRNA配列と比較する場合には、チミジンヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドに相当することが理解されるべきである。
【0107】
また、本明細書で使用するPRG4タンパク質としては、ポリヌクレオチドによってコードされるPRG4タンパク質であって、緊縮条件下でPRG4タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズするPRG4タンパク質が挙げられる。本明細書で使用するように、「ハイブリダイゼーション」は、1つ又はそれ以上のポリヌクレオチドが反応してヌクレオチド残基の塩基同士の間で水素結合によって安定化される複合体を形成する反応を含む。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対合、フーグステイン結合、又は任意のその他の配列特異的方法によって生じ得る。複合体は、二重らせん構造を形成する2つの鎖、多重鎖複合体を形成する3つ又はそれ以上の鎖、単一自己ハイブリダイズ鎖又はこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリダイゼーション反応は、より広範なプロセスの工程、例えばPCR反応の開始、又はリボザイムによるポリヌクレオチドの酵素的切断を構成し得る。
【0108】
ハイブリダイゼーション反応は、種々の緊縮条件下で行うことができる。本発明は、低緊縮条件下で、さらに好ましくは緊縮条件下で、最も好ましくは高緊縮条件下で、本明細書に記載のPRG4タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを含む。本明細書で使用するように、用語「緊縮条件」とは、10xデンハート溶液、6xSSC、0.5%SDS、及び100mg/mlの変性サケ精子DNAでの60℃で一夜のハイブリダイゼーションを指す。ブロットは、連続的に62℃で3xSSC/0.1%SDS、次いで1xSSC/0.1%SDS、最後に0.1xSSC/0.1%SDSでそれぞれ30分間洗浄される。また、本明細書で使用するように、特定の実施形態において、語句「緊縮条件」とは、6xSSC溶液中で65℃でのハイブリダイゼーションを指す。その他の実施形態において、「高緊縮条件」は、10xデンハート溶液、6xSSC、0.5%SDS、及び100mg/mlの変性サケ精子DNAでの65℃で一夜のハイブリダイゼーションを指す。ブロットは、65℃で、連続的に3xSSC/0.1%SDS、次いで1xSSC/0.1%SDS、最後に0.1xSSC/0.1%SDS中でそれぞれ30分間洗浄される。核酸ハイブリダイゼーション方法は、当技術分野において周知である。従って、本明細書において使用される核酸によってコードされるPRG4タンパク質は、ヒトPRG4タンパク質(例えば、配列番号:1)あるいはその特異的イソ型又はホモローグをコードするポリヌクレオチド配列と、少なくとも60%の相同性、好ましくは75%の相同性、さらに好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%の相同性を有する核酸を含む。
【0109】
また、本明細書で使用するPRG4タンパク質はまた、キメラタンパク質又は融合タンパク質であることができる。本明細書で使用するように、「キメラタンパク質」又は「融合タンパク質」は、第二のポリペプチドに操作可能に連結された第一のポリペプチドを含む。キメラタンパク質は、場合により第一又は第二のポリペプチドに操作可能に連結された第三、第四又は第五又はその他のポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、2つ又はそれ以上の異なるポリペプチドを含み得る。キメラタンパク質は、同じポリペプチドの多数のコピーを含み得る。キメラタンパク質はまた、1つ又はそれ以上のポリペプチドに1つ又はそれ以上の突然変異を含有していてもよい。キメラタンパク質の調製方法は、当技術分野において周知である。本発明の特定の実施形態において、キメラタンパク質は、その他のPRG4タンパク質イソ型を有するPRG4タンパク質のキメラである。
【0110】
本明細書で使用するように、「単離された」又は「精製された」タンパク質、ポリヌクレオチド又は分子とは、これらが天然に産する環境から取り出されること、あるいはタンパク質ポリヌクレオチド又は分子が誘導される細胞又は組織源に由来する細胞物質、例えばその他の混入タンパク質を実質的に含有していないこと、あるいは化学合成された場合には化学的前駆物質又はその他の化学物質を実質的に含有していないことを意味する。表現「細胞物質を実質的に含有していない」とは、それが単離されるか又は組換え産生されるかあるいは合成される細胞の細胞成分から分離される調剤を包含する。特定の実施形態において、表現「細胞物質を実質的に含有していない」とは、約30%未満(乾燥重量で)のその他のタンパク質(「混入タンパク質」ともいう)、さらに好ましくは約20%未満、よりさらに好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満のその他のタンパク質を有するPRG4タンパク質の調剤を包含する。タンパク質又はポリヌクレオチドが組換えにより産生される場合には、好ましくは培地を実質的に含有していない、すなわち、培地は、対象のタンパク質の製剤の容量の約20%未満、さらに好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当することが好ましい。
【0111】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の記載及び特許請求の範囲から明らかであろう。本発明のこれら及び多数の変形例及び実施形態は、当業者には前記の記載及び実施例の検討により当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0112】
【実施例1】
【0113】
生体内(in vivo)での不十分な口腔境界潤滑の治療
【0114】
口腔乾燥症
【0115】
口腔潤滑剤として使用するのに適した口腔洗浄組成物は、以下の組成を有する:
【表1】

【0116】
前記処方の口腔洗浄液は、上記の諸成分を一緒に混合し、口腔の潤滑に使用するのに適した最終製品を調製することによって調製される。
【0117】
投与:前記処方の口腔洗浄液20mlを、口腔乾燥症を患う患者に、4時間毎に又は必要に応じて投与する。患者は、口腔洗浄液で2〜5分間うがいし、洗浄液を完全に吐き出すべきである。
【0118】
口腔へのPRG4の送達に適したチューインガムは、以下の組成を有する:
【表2】

【0119】
前記処方のチューインガムは、上記の諸成分を一緒に混合し、口腔乾燥症の症状を軽減するのに有効な最終製品を調製することによって調製される。要するに、処方物は、最初にガム基剤を82℃〜95℃の温度で溶融し、ケトル(kettle)の中のガム基剤を、ソルビトール/マンニトール、デンプン及びその他の成分と混合し、混合を数分間継続し、その後に混合物に香料と人工甘味料を約4分間混合することによって調製される。適当な温度に冷却した後に、PRG4を混合物に加える。次いで、この混合物を取り出し、スラブに形成する。
【0120】
臨床試験:無作為二重盲検試験を行い、PRG4チューインガムの有効性を、PRG4を含有していないチューインガムと比較して調べる。口腔乾燥症を患う個人を、試験パネルに要請する。パネリストは、PRG4チューインガム又はPRG4を含有していないガムのいずれかを噛む。質問表をパネリストに分配し、次いでパネリストは、経験した唾液分泌の増加の量に関する観察を含む経験を記録する。
【実施例2】
【0121】
癌患者の口腔粘膜炎の治療
【0122】
口腔へのPRG4の送達に適した濃厚生体粘着経口ゲルは、以下の組成を有する:
【表3】

【0123】
前記処方の濃厚生体粘着経口ゲルは、上記の諸成分を一緒に混合し、口腔粘膜炎の症状を軽減するのに有効な最終製品を調製することによって調製される。前記の諸成分を一緒に混合し、固形の形態に乾燥する。次いで、このゾルを微細粉末に粉砕する。
【0124】
調製及び投与:前記粉末15gを、グラス中の5mlの水と混合する。得られる溶液が濃すぎる場合には、追加の水を加えて所定の濃さを達成してもよい。次いで、得られる溶液で、口腔粘膜炎を患う個人の口の周りを少なくとも2分間洗浄するか又は必要に応じて洗浄して、舌、口蓋、咽喉、頬の内側及び全ての経口組織を十分に被覆する。洗浄後に、この溶液は、吐き出される。投与は、1日に3回であるか又は必要に応じて行われる。
【実施例3】
【0125】
白内障手術でのPRG4の使用
【0126】
目にPRG4を送達するのに適した粘弾性組成物は、以下の組成を有する:
【表4】

【0127】
前記処方の粘弾性組成物は、上記の諸成分を一緒に混合して、前眼部手術、例えば白内障摘出及び眼内レンズ挿入において手術助剤として使用するのに適した最終製品を調製することによって調製される。前記組成物は、27ゲージのカニューレで注射器アセンブリーに包装される。
【0128】
施用:白内障手術及び眼内レンズ挿入のために、PRG4粘弾性溶液は、前眼房に注意深く導入される。PRG4粘弾性溶液は、水晶体の送達の前又は後に、前眼房に注入してもよい。場合により、レンズ送達の前のPRG4粘弾性溶液の点眼(instillation)は、白内障摘出手術中に手術器具により生じる可能性のある損傷から角膜内皮を保護する。PRG4粘弾性溶液はまた、挿入手術の前に眼内レンズ及び手術器具の先端を被覆するのにも使用できる。追加溶液を、前眼部手術中に前眼房を十分に維持するために、又は外科処置中に失われた溶液を補充するために注入してもよい。処置の終わりに、平衡塩溶液を用いて十分に洗浄し、吸引することによって眼から取り除いてもよい。あるいは、PRG4粘弾性溶液は、眼内に放置してもよい。
【実施例4】
【0129】
マラソン中の摩擦の減少
【0130】
PRG4を含有する抗摩擦(anti−chafing)皮膚保護剤クリームは、以下の組成を有する:
【表5】

【0131】
前記処方の抗摩擦皮膚保護剤クリームは、最初にペンチレングリコール、グリセリン、及び水を一緒に混合して調製される。HPMCを徐々に加え、発泡を避けてホモジナイズして水相を形成する。この水相にPRG4を加える。油相を、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、シア脂、ヤシ油及びキサンタンガムを、約42℃の温度に加熱しながら混合することによって調製する。攪拌しながら、水相を、油相に真空下で急速に加え、得られる混合物を乳化させる。
【0132】
施用:運動競技活動に入る前に、抗摩擦皮膚保護剤を、高剪断応力を有する皮膚の領域、例えば、以下に限定されないが、鼠径部、ウエストバンド領域、太腿部、乳首、脇の下、ブラジャー領域、臀部、足、並びに皮膚と衣類、皮膚と皮膚、及び/又は皮膚と毛髪の間の摩擦のその他の領域に塗布する。再塗布は1時間毎であるか又は必要に応じて行われる。
【実施例5】
【0133】
眼窩周囲のしわの処置
【0134】
PRG4を含有する水溶液は、以下の組成を有する:
【表6】

【0135】
前記処方の水溶液は、上記の諸成分を一緒に混合して注入に適した最終製品を調製することによって調製される。
【0136】
臨床試験:12週の無作為二重盲検対照臨床試験は、隔週のPRG4/ヒアルロン酸注射剤溶液の有効性を、20mg/mlのヒアルロン酸単独注射及びプラセボと比較して評価する。
【0137】
中度から重度までの眼窩周囲のしわを有する患者150人を登録する。しわの重症度が、5段階評価のしわ重症度等級尺度〔Wrinke Severity Rating Scale(WSRS)〕(すなわち、無し、軽度、中度、重度、極度)で、その場での盲検評価者によって評価される。
【0138】
一次評価項目:一次試験評価項目は、最適矯正が達成された後の12週目のしわ重症度であった。患者の成果は、最適矯正が達成された後の12週目にWSRSで少なくとも1点の改善を維持すると定義される。
【0139】
二次評価項目:WSRSを、最適矯正後の2週目、6週目及び24週目に評価する。
【0140】
安全性評価は、14日間の日誌による患者症状の収集、72時間目、並びに2週目、6週目、12週目及び24週目の有害事象の調査員評価、並びに体液性免疫又は細胞性免疫の発現を含む。
【実施例6】
【0141】
経皮薬物送達
【0142】
PRG4を含有する3%ジクロフェナクゲルは、以下の組成を有する:
【表7】

【0143】
前記処方のPRG4担体中のジクロフェナクゲルは、上記の諸成分を一緒に混合して局所投与に適した最終製品を調製することによって調製される。
【0144】
臨床試験:12週の無作為二重盲検対照臨床試験は、光線性角化症(AK)に対するPRG4担体ゲル中のジクロフェナクの有効性を、ゲルビヒクル単独と比較して評価する。
【0145】
頭皮、額、顔、額及び手の5cm×5cmの領域として定義される主要身体領域に5個以上のAK患部を有する患者200人。患者は、承認されていない医薬(マソプロコール、5−フルオロウラシル、レチノイド、シクロスポリンなど)からの60日のウオッシュアウトを受ける。
【0146】
患者は、ジクロフェナクゲルを病変全体の罹患皮膚に塗布することを指示される。治療試験の終わりに、光線性角化症病変の完全クリアランスを評価する。追跡評価を、治療後30日間行なう。
【実施例7】
【0147】
授乳中の潤滑
【0148】
PRG4を含有する潤滑クリームは、以下の組成を有する:
【表8】

【0149】
前記処方のPRG4を含有する潤滑クリームは、上記の諸成分を一緒に混合して局所投与に適した最終製品を調製することによって調製される。
【0150】
施用:PRG4を含有する潤滑クリームは、授乳後の感受性、疼痛又は乾燥の領域に塗布される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔境界潤滑を改善するための口腔ケア組成物であって、浸透圧平衡塩水溶液、多相エマルジョン、ゲル、液体、クリーム、軟膏、スプレー、ペースト、粘稠溶液、徐放デバイス、あるいはロゼンジ又はガムに配合された有効量及び有効濃度の単離又は精製されたPRG4を含有してなり、前記有効量及び有効濃度の単離又は精製されたPRG4が口腔境界潤滑を改善するのに十分なものである、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記組成物が、PRG4を10〜10,000μg/mLの濃度で含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記PRG4が、50kDa〜400kDaの平均モル質量を有する、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記PRG4が、潤滑断片、多量体又はそのホモローグを含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記PRG4が、組換えPRG4タンパク質、又はその機能性断片である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記PRG4が、精製天然PRG4タンパク質である、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記組成物が、ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を10〜100,000μg/mLの濃度で含有してなる、請求項7に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記組成物が、ヒアルロン酸ナトリウム又はヒアルロン酸を500〜5,000μg/mLの濃度で含有してなる、請求項7に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
さらに約0.25重量%〜10重量%のエリオジクチオン流エキスを含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項11】
さらに約1.0重量%〜30重量%の甘味料又は着香料を含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項12】
さらに、クエン酸、アスコルビン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される刺激剤化合物を、唾液腺分泌を刺激するのに有効な量で含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項13】
さらに、リドカイン、リグノカイン及びプリロカインからなる群から選択される1つ又はそれ以上の局所麻酔薬を含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項14】
さらに、ラクトペルオキシダーゼ、チオシアネート及びグルコースオキシダーゼを含む唾液中に見出される1つ又はそれ以上の酵素を含有してなる、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
口腔境界潤滑を改善するためのチューインガム組成物であって、
(a)約0.25重量%〜10重量%のエリオジクチオン流エキス、柑橘油、レモン油、ライム油、ネロリ油、オレンジ油、ミント油、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、カルダモン油、シナモン油、丁子油、コリアンダー油、ユーカリ油、ウイキョウ油、レモングラス油、ニクズク油、エリオジクチオン流エキス、甘草エキス;
(b)約1.0重量%〜30重量%の甘味料又は着香料;
(c)唾液腺分泌を刺激するのに有効量の、クエン酸、アスコルビン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される刺激剤化合物;
(d)ガム基剤;
(e)治療有効量のPRG4;及び
(f)治療有効量のヒアルロン酸ナトリウム
を含有してなる、チューインガム組成物。
【請求項16】
口腔境界潤滑を改善するための錠剤組成物であって、
(a)約0.25重量%〜10重量%のエリオジクチオン流エキス;
(b)約1.0重量%〜30重量%の甘味料;
(c)唾液腺分泌を刺激するのに有効量の、クエン酸、アスコルビン酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される刺激剤化合物;
(d)ゼラチン基剤;
(e)治療有効量のPRG4;
(f)治療有効量のヒアルロン酸ナトリウム
の成形固体を含む、錠剤組成物。
【請求項17】
低下した口腔境界潤滑を治療するか又は口腔境界潤滑を改善する方法であって、それを必要とする被験者の口腔表面に、治療有効量の単離又は精製されたPRG4を局所投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記単離又は精製されたPRG4が、請求項1〜16のいずれか1項に記載の口腔ケア組成物中に存在する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
低下した口腔境界潤滑に付随する症状を有する疾患(例えば、口腔乾燥症、ショーグレン症候群、アレルギー、口腔表面障害、慢性炎症、高浸透圧症、老化、処方薬若しくはOTC薬、放射線療法、化学療法、神経損傷又はこれらの任意の組み合わせを含む)を治療する方法であって、それを必要とする被験者の口腔表面に、治療有効量のPRG4を局所投与することを含む、方法。
【請求項20】
口腔潰瘍を治療する方法であって、それを必要とする個人の口腔表面に、治療有効量のPRG4を局所投与することを含む、方法。
【請求項21】
有効量のPRG4を外科的に許容される担体中に含有してなる、外科潤滑剤として使用するのに適した組成物。
【請求項22】
さらに、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドンからなる群から選択される1つ又はそれ以上の外科的に許容される潤滑剤を含有してなる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
さらに、リドカイン、リグノカイン及びプリロカインからなる群から選択される1つ又はそれ以上の局所麻酔薬を含有してなる、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
さらに、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、アルコール、塩化ナトリウム及び重炭酸ナトリウムからなる群から選択される1つ又はそれ以上の消毒薬を含有してなる、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
外科的又は内科的処置中に潤滑を提供する方法であって、それ必要とする組織又は医療機器にPRG4を施用することを含む、方法。
【請求項26】
前記外科的又は内科的処置が、外科補助剤及び/又は一時的インプラントとして、水和インプラントとして、並びに白内障摘出、レーザー角膜切除術、眼内レンズ(IOL)挿入及び除去、角膜手術、緑内障手術、外傷手術、後眼部手術、眼球形成手術及び筋肉手術において使用するための身体開口部へのカテーテル、内視鏡、手術器具、グローブの挿入を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
溶液、ゲル、ゾルに処方されたPRG4を、遅延放出ポリマーと共に含有してなる、運動によって生じる摩擦を減少させるのに使用するための組成物。
【請求項28】
前記遅延放出ポリマーが、次のカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリプロピレン、あるいはその他の一般的な賦形剤又は粘滑剤の1つ又はそれ以上を含有してなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
さらにアラントイン(0.5%)を含有してなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
さらに、アロエ(Aloe Barbadensis)葉エキス、C18−36酸トリグリセリド、カプリン酸/カプリル酸ステアリン酸トリグリセリド、トリベヒニン、及び/又は酢酸トコフェロールを含有してなる、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
運動によって生じる摩擦を減少させるのに使用するための粘着パッチであって、粘着面と非粘着面を含み、及びさらにPRG4を非粘着面に含有してなる、粘着パッチ。
【請求項33】
さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる、請求項32に記載の粘着パッチ。
【請求項34】
有効量のPRG4を局所塗布することを含む、運動中の摩擦を防止する方法。
【請求項35】
さらに請求項27〜31のいずれか1項に記載の組成物を塗布することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記PRG4を含有する粘着パッチが、対象領域に貼付される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
PRG4を皮膚科学的に許容される粘稠溶液に含有してなる、皮膚充填剤として使用するための製薬学的に許容される組成物。
【請求項38】
さらに皮膚科学的有効量のヒアルロン酸を含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
さらに皮膚科学的有効量のコラーゲンを含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
さらに皮膚科学的有効量のカルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール及び/又はポリエチレンオキシドを含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項41】
さらに抗血栓薬、抗炎症薬、ホルモン、走化性因子、鎮痛薬、増殖因子、サイトカイン、骨形成因子及び麻酔薬からなる群から選択される皮膚科学的有効量の薬物を含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
さらに皮膚科学的有効量のレチノイン酸を含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項43】
さらに皮膚科学的有効量の重水素減少水を含有してなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項44】
顔又はヒトの体の選択された領域の組織ボリューム、皮膚の緊張感、肌理及び張りを回復させるための治療方法であって、請求項37〜43のいずれかに記載の組成物を、顔又はヒトの体の選択された領域の1つ又はそれ以上の領域の皮膚、又は皮下組織に注入する工程を含む、治療方法。
【請求項45】
前記1つ又はそれ以上の領域が、眼窩周辺領域、唇、頬領域、鼻唇溝、口唇−下顎溝、首、又は手である、請求項44に記載の治療方法。
【請求項46】
それを必要とする個人への生物活性剤の送達を促進する方法であって、PRG4タンパク質と混合した前記生物活性剤を個人に投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記生物活性剤が、薬物、ペプチド、タンパク質、抗体又はその断片、核酸、あるいは造影剤を含有してなる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記送達担体が、さらにヒアルロン酸ナトリウムを含有してなる、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記送達担体が、さらにL−α−ジパルミトイルホスファチジルコリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される界面活性リン脂質を含有してなる、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記混合物が、局所投与、注射、又は経口によって投与される、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
授乳によって生じる摩擦を減少させる方法であって、それを必要とする乳首、乳房、又は乳輪に、溶液、ゲル、ゾル、又は粘着パッチに処方された有効量のPRG4を投与することを含む、方法。
【請求項52】
前記の溶液、ゲル、ゾル、又は粘着パッチが、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリプロピレン、その他の一般的な賦形剤又は粘滑剤、あるいはヒアルロン酸ナトリウムの1つ又はそれ以上を含有する、請求項51に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−527485(P2012−527485A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512085(P2012−512085)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/035956
【国際公開番号】WO2010/135736
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511282830)ルブリス,エルエルシー. (1)
【出願人】(511169852)シェペンズ アイ リサーチ インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】