説明

PWMパルス生成装置

【課題】低クロック周波数のディジタル回路により高S/Nが確保できるPWMパルス生成装置を提供すること。
【解決手段】アナログの振幅変換信号Mをアナログ・ディジタル変換器11によりディジタル信号に変換し、パルス変換部13でパルス幅変調されたパルス信号を得るようにしたPWMパルス生成装置において、ディジタル信号により遅延時間が制御されるアナログ遅延器20を設け、ディジタルのパルスに更にディジタルの分解能の0/16〜15/16の遅延時間が付加されるようにして、パルスの分解能を16倍に細かくでき、1/16の周波数のクロックで同等の分解能が確保できるようにし、このとき変換テーブル14を設け、アナログ遅延器20を構成している回路素子の特性バラツキが補正されるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源に使用されるパルス生成装置に係り、特に電源電圧変調方式の高周波電力増幅装置におけるスイッチング電源に好適なPWMパルス生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ無線通信用の送信機の場合、その終段高周波電力増幅部には、従来から電源電圧変調方式の高周波電力変調増幅装置が用いられている。
この電源電圧変調方式とは、増幅段の能動素子に供給される電源電圧を、例えば音声信号などの振幅変調信号により変化させて振幅変調が得られるようにしたもので、このとき増幅用の能動素子としてトランジスタが用いられていたことから、以前はコレクタ変調方式と呼ばれていた変調方式のことである。
【0003】
ところで、この電源電圧変調方式の高周波電力変調増幅装置には、振幅変調信号によって直流出力電圧が可変制御できるようにした電源装置が必要であるが、この電源装置には従来からPWM(パルス幅変調)スイッチング電源回路が多く使用されている。
そこで、このPWMスイッチング電源回路を用いた電源電圧変調方式の高周波電力変調増幅装置の一例について、図6により説明する。
この例は、交流電源により動作する無線送信装置における電源電圧変調方式の高周波電力変調増幅装置の一例で、このため、図示のように、例えば一般の配電系統などの100Vの交流電源ACから電力が供給されるようになっている。
【0004】
そして、この交流電源ACから供給された交流は、トランスTにより所望の電圧に変換され、ダイオードDで整流して脈流となり、図示してない平滑回路により平滑化された結果、例えば50Vなどの所望の電圧Eの直流電源DCとして動作し、これにより電圧Eの直流が電界効果トランジスタFETのソース電極に供給される。
一方、音声信号などの振幅変調信号MはPWMパルス生成部PSに供給され、これにより、所望のスイッチング周期、例えば5μs周期(スイッチング周波数200kHz)のPWMパルス信号XがFETドライバDRを介して電界効果トランジスタFETのゲート電極に印加される。
【0005】
この結果、電界効果トランジスタFETはPWMパルス信号Xによりスイッチング制御され、電圧Eの直流が周期的に断続さるようになり、この結果、電圧EのON期間とOFF期間の比(デューティ比)で決まる平均値電圧をパルス電圧Yとしてドレイン電極から出力させるようになり、この結果、これらによりPWMスイッチング可変電圧回路としての機能が得られることになる。
この後、パルス電圧Yは所望の周波数特性、例えば遮断周波数が上記の200KHzよりも低く、音声信号周波数帯域の上限よりも高い周波数特性のローパスフィルタLFにより処理され、振幅変調信号Mに応じて電圧振幅が変化されている振幅変調電源電圧Zとして電力増幅部PAの電源端子に入力されるようになる。
【0006】
このとき、電力増幅部PAは、この無線送信装置の終段高周波電力増幅部を構成し、その入力には所望の周波数の搬送波Cが供給されている。
そこで、電力増幅部PAは電源電圧変調方式により動作し、入力された搬送波Cを振幅変調し電力増幅して所望の電力の振幅変調波CPがアンテナに供給されるようにし、この結果、当該無線送信装置から振幅変調電波が送信されることになる。
【0007】
ところで、このように、終段増幅器の電源電圧を可変させて振幅変調を得るようにした送信機の場合、その電源の電圧を、ほとんど0Vに近い電圧から、かなり高い電圧、例えば上記した50Vまで連続的に、しかも歪み無く可変させる必要があり、このためにはPWMパルス生成部PSに高い精度が要求されることになる。
このときPWMパルス生成部PSとしては、従来からアナログ回路によるものが使用されているが、近年は、ハードウエアとしてFPGA(Field Progeammable Gate Arrey)などのICを用いたディジタル回路による構成が可能になっている。
そこで、次に、このディジタル回路によるPWMパルス生成部PSについて、図7により説明する。
【0008】
図7に示すように、このディジタル回路によるPWMパルス生成部PSは、A/D(アナログ/ディジタル変調器)1と分周器2、それにパルス変換器3で構成されている。
そして、まず、A/D1は、サンプリング期間(変換期間)毎にアナログの振幅変調信号Mを10ビット(bit)のディジタル信号に変換する働きをする。
このときのサンプリング期間は200kHzのクロックにより与えられ、従って200kHzの逆数である5μs毎に10ビットのディジタル信号が得られることになる。
分周器2は、周波数が204.8MHzのクロックCLKを入力し、それを1024分周(1/1024)し、200kHzのクロックがA/D1に供給されるようにする。
【0009】
そして、パルス変換器3は、204.8MHzのクロックCLKに同期して5μs期間の間に5ns間隔で1024回、パルスを発生する動作を行ない、このときA/D1から入力される10ビットのディジタル振幅変調信号MDの数値(ディジタル値)に対応して実際にパルスを発生させるか否かを決める。
つまり、ディジタル値が1のときは5μs期間の間、1024回に1回だけ、パルスを発生させ、ディジタル値が2のときは2回、……、ディジタル値が1023のときは1024回に1023回、という具合にパルスを発生させる。従って、ディジタル値が0ときは1024回中一度もパルスは発生させず、ディジタル値が1024なら1024回、全てパルスを発生することになる。
【0010】
この結果、200kHzのクロックによるA/D1のサンプリング期間毎に、つまり5μs毎にパルス変換器3から出力されるパルスの状態をみると、そこに含まれる204.8MHzのクロックCLKに同期したパルスの個数は常に振幅変調信号Mの振幅に対応したものとなり、従って、200kHzのクロックによる5μsの周期で、パルス変換器3からPWMパルス信号Xを得ることができ、ディジタル回路によりPWMパルス生成部PSが構成できることになる。
なお、このようなパルスデューティ比の制御によるPWMスイッチング電源回路に関する従来技術としては、例えば特許文献1の開示を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−161217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記従来技術は、ディジタル回路として周波数の高いクロックで動作する回路を必要とする点に配慮がされておらず、装置コストと発熱量及び消費電力の増加に問題がある。
PWMパルス信号の生成をディジタル回路で行うと、パルス幅の変化が連続的から離散的になるが、このときの変化単位の最小値が振幅変換変化レベルの最小値で、分解能と呼ばれる。
そして、このディジタル回路における分解能がサンプリングノイズで、これが振幅変調の場合のノイズレベルが決まるが、このとき、一般的には−60dB以上が望ましい。
【0013】
上記従来技術の場合、PWMパルス信号Xは200kHzのクロックによる周期で、この場合、PWMパルス信号Xの周期は5μsであり、ここで振幅変調送信のS/Nを上記したように、60dB以上確保するためには、−60dB=1.0×10-3 なので、
5μs×1.0×10-3 =5ns
となり、5ns以下の分解能が必要になるので、上記したように、パルス変調器3として周波数204.8MHzのクロックCLKで動作するディジタル回路が用いられ、結果として、装置コストと発熱量及び消費電力の増加に問題が生じてしまうのである。
【0014】
本発明の目的は、低クロック周波数のディジタル回路により高S/Nが確保できるPWMパルス生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、ディジタル回路からなるパルス変換手段にディジタル振幅変調信号を入力し、当該パルス変換手段からパルス幅変調されたパルス信号を得るようにしたPWMパルス生成装置において、前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットにより遅延時間が制御され、前記パルス幅変調されたパルス信号が入力されるアナログ遅延手段と、前記パルス変換手段から出力されるパルス信号と前記アナログ遅延手段から出力されるパルス信号の双方が入力される論理和回路手段とを設け、当該論理和回路手段から前記パルス幅変調されたパルス信号を得るようにして達成される。
【0016】
このとき、更に前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットが入力される変換テーブルを設け、前記アナログ遅延手段に入力される前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットのデータが前記変換テーブルによりテーブル処理されてから前記アナログ遅延手段に入力されるようにしても上記目的が達成され、ここで更に前記変換テーブルの入力にテスト信号を供給するテスト信号生成手段と、前記パルス幅変調されたパルス信号が入力されるアナログ−ディジタル変換手段と、前記テスト信号の各レベル値を横軸とし、前記テスト信号の各レベル値に対応して前記アナログ−ディジタル変換手段から得られるレベル値を縦軸としたテーブルを記憶する記録手段と、前記テーブルのデータを並び替え、補正用変換テーブルとして前記変換テーブルに設定する記録データの並び替え手段とを備え、前記アナログ遅延手段の回路素子特性のバラツキによる精度低下が抑えられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クロック周波数が低いディジタル回路を用いてS/Nが高いPWMパルス生成装置が得られるので、発熱量と消費電力が少なくて済み、アナログ遅延手段による遅延時間のバラツキが抑えられるので、精度の高いPWMパルス生成装置を低コストで提供することができる。
また、このように分解能の高いパルスが低い周波数のクロックにより発生できる結果、本発明によれば、高S/Nの振幅変調送信装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るPWMパルス生成装置の第1の実施の形態を示すブロック構成図である。
【図2】本発明に係るPWMパルス生成装置の第2の実施の形態を示すブロック構成図である。
【図3】本発明に係る第2の実施の形態の動作を説明するためのブロック構成図である。
【図4】本発明に係るPWMパルス生成装置の第2の実施の形態におけるテーブルの一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係るPWMパルス生成装置の第2の実施の形態におけるテーブルの他の一例を示す説明図である。
【図6】電源電圧変調方式の高周波電力変調増幅装置の一例を示すブロック構成図である。
【図7】従来技術によるPWMパルス生成装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、パルスを生成するディジタル回路に、更に分解能を高めるため、アナログの遅延手段を併用したもので、このため本発明の一実施の形態では、図1に示すように、PWMパルス生成部PSをディジタル回路10とアナログ遅延器20で構成する。
このときアナログ遅延器20は4ビット16段階で遅延時間の制御を行い、このためディジタル回路10によるパルス生成と同時にアナログ遅延器20に4ビットの情報を伝達し、ディジタルのパルスに更にディジタルの分解能の0/16〜15/16の遅延時間が付加されるようにする。
【0020】
この結果、パルスの分解能を16倍に細かくでき、1/16の周波数のクロックで同等の分解能が確保できることになる。
このとき、アナログ遅延器20の入力に変換テーブルを設け、アナログ遅延器20の時定数を決める抵抗やコンデンサなどの回路素子について、それらの特性に存在するバラツキが補正できるようにする。
【0021】
図1の実施形態において、まず、ディジタル回路10は、基本的には、図7で説明した従来技術におけるディジタル回路と同じで、A/D11と分周器12、それにパルス変換器13を備えている。
しかし、このとき、分周器12が12.8MHzの周波数のクロックCLKを入力し、それを64分周(1/64)し、200kHzのクロックがA/D11に供給されるようになっている点と、パルス変換器13が12.8MHzの周波数のクロックCLKで動作し、A/D11から出力される10ビットのディジタル信号の内の6ビットだけを入力し、残りの4ビットのディジタル信号はディジタル回路10から外部に出力され、アナログ遅延器20に供給されるようになっている点が、従来技術とは異なっている。
【0022】
一方、アナログ遅延器20は、抵抗21と4個のコンデンサ22、23、24、25、4個のFET26、27、28、29、それに論理和回路30を備えている。
そして、まず、抵抗21とコンデンサ22、23、24、25はRC形の遅延手段を構成している。
次に、FET26、27、28、29は、ディジタル回路10のA/D11から供給される4ビットのディジタル信号に応じてON・OFF制御され、上記したRC形の遅延手段による遅延時間を16通りに切換え、当該遅延手段を可変遅延手段として機能させるためのスイッチング素子として動作し、ディジタル回路10のパルス変換器13から供給される6ビット分のディジタル信号によるパルス信号に順次、所望の遅延を与える働きをする。
【0023】
また、論理和回路30は、ディジタル回路10のパルス変換器13から供給される6ビット分のディジタル信号によるパルス信号と、上記した可変遅延手段により遅延されたパルス信号の双方を入力し、パルス信号Xとして出力する働きをする。
そこで、以下、この図1に示す本発明の実施形態に係るPWMパルス生成部PSの動作について説明する。
【0024】
ディジタル回路10のパルス変換器13は、12.8MHzのクロックCLKに同期して5μs期間の間に64回、0.078125μs(5μs/64)間隔でパルスを発生する動作を行ない、このときA/D11から入力される6ビットのディジタル振幅変調信号MDの数値(ディジタル値)に対応して実際にパルスを発生させるか否かを決める。
つまり、この場合、6ビット分のディジタル値が1のときは5μs期間の間、64回に1回だけパルスを発生させ、ディジタル値が2のときは2回、……、ディジタル値が63のときは64回に63回、そして、ディジタル値が64のときは64回、全てパルスを発生することになる。
【0025】
この結果、200kHzのクロックによるA/D1のサンプリング期間毎に、つまり5μs毎に、パルス変換器13から出力されるパルスの状態をみると、そこに含まれる12.8MHzのクロックCLKに同期したパルスの個数は常に振幅変調信号Mの振幅に対応したものとなる。
こうしてパルス変換器13から、5μsの周期で6ビット分のディジタル値に対応したパルス信号が得られ、アナログ遅延器20の可変遅延手段に入力される。
【0026】
可変遅延手段のFET26〜29は、4ビットのディジタル値により、16通りの異なったパターンで5μs毎にON・OFFされている。
従って、コンデンサ22〜25も同じく16種類の異なった組み合わせで5μs毎に共通電位点(アース)に接続され、この結果、抵抗21に対して16種類の異なった静電容量が接続されるようになり、可変遅延手段は4ビットのディジタル値に応じて16種類の異なった遅延時間を付加することになる。
【0027】
ここで、抵抗21の抵抗値と4個のコンデンサ22〜25の各々の静電容量値を、例えば図示の通り、適切な値に選択することにより、遅延時間が0μsから0.0732μs((5μs/64)×(15/16))までの間で等間隔になっている16通りの遅延時間にすることができる。
以下、説明のため、5μsの周期でパルス変換器13から供給されているパルス信号についてはパルス信号XAとし、抵抗21とコンデンサ22〜25で形成されている可変遅延手段によって遅延が与えられた後のパルス信号のことはパルス信号XBする。
【0028】
そうすると、パルス信号XBは、1個のパルス信号XAに対して0μs〜0.0732μsの遅延された信号となる。
そして、このパルス信号XBは論理和回路30に入力され、パルス信号XAと同じ線路に出力される。
この結果、論理和回路30からは、1個のパルス信号XAの後に16通り(0μs〜0.0732μs)のパルス遅延信号XBが続いた状態にされ、パルス信号Xとなる。
【0029】
ここで、パルス信号XBについてみると、上記したように、その直前にあるパルス信号XAと、それを0μs〜0.0732μsの分解能で遅らせた信号になっている。
そこでパルス信号Xについてみると、5μsの周期で出力される64個のパルスの夫々毎に、更に16通りの遅延が付加された信号になっていて、これは5μsの間に1024(64×16)個のパルスが存在している状態と同じであり、この結果、約5ns(4.88ns)の分解能になっていることが判る。
【0030】
このとき、パルス変換器13のクロックCLKは周波数が12.8MHzであるから、従来技術の場合よりもクロック周波数が低いディジタル回路を用いてPWMパルス生成部PSが構成されていることになる。
具体的に説明すると、図7の従来技術では、所望の分解能を得るために、パルス変換器3として、204.8MHzの周波数のクロックCLKを用いたディジタル回路が必要であったが、この実施形態では、パルス変換部13が、12.8MHzの周波数のクロックCLKにより動作するディジタル回路により構成できることが判る。
【0031】
従って、この実施形態によれば、クロック周波数が高いディジタル回路を用いなくても分解能が高いパルス信号が生成可能なPWMパルス生成部が構成でき、この結果、発熱量と消費電力が少ないPWMパルス生成部を低コストで提供でき、更に省エネ化に寄与することができる。
【0032】
ところで、この場合、アナログ遅延器20の可変遅延手段による遅延時間が、0μsから0.0732μs((5μs/64)×(15/16))までの16通りの遅延時間間で等間隔になっていることが分解能を精度良く維持するための要件となり、このためには、可変遅延手段を構成している回路素子、すなわち抵抗21とコンデンサ22〜25の各々について、それらが仕様どおりの抵抗値と静電容量値を持っている必要がある。
【0033】
しかしながら、抵抗器やコンデンサなどの回路素子は、一般に仕様についての精度が低く、特に汎用品の場合、仕様値に対する許容誤差が数%から数10%にも達するのが実情である。
これは、このような回路素子の場合、製造工程で精度を維持するのが極めて難しいからであり、従って、高精度の素子は特注品とするか、選別品とするしかなく、何れにしても極めて高価な素子にならざるを得ない。
【0034】
ここで、図2は、本発明の第2の実施形態を示したもので、図において、14は変換テーブルで、その他の構成は、図1の実施形態(第1の実施形態)と同じであり、従って、この第2の実施形態は、図1の第1の実施形態に変換テーブル14を追加したものに相当する。
この変換テーブル14には、予め補正用変換テーブルが設定してあり、これによりA/D11から入力した4ビットのデータについて所望のデータ並べ替え補正を施し、補正された4ビットのデータをアナログ遅延器20の4個のFET26〜29に供給し、遅延時間を16通りに切換えることにより、抵抗21とコンデンサ22〜25の各々の特性にバラツキがあっても、所望の遅延特性が得られるようにしたものであり、この結果、抵抗21及びコンデンサ22〜25として汎用品を用いても、所望の精度が容易に得られるようになる。
【0035】
ところで、このためには、上記したように、補正用変換テーブルを予め変換テーブル14に設定しておく必要があるが、この補正用変換テーブルは、アナログ遅延器20に設けた抵抗21とコンデンサ22〜25の各々により得られる遅延時間特性に応じて設定しなければならない。
そこで、次に、この補正用変換テーブルの設定手順について、図3により説明する。
この場合、まず、図示のように、所望のテスト信号、すなわちディジタル値で0から15までの各レベルを表わす16通りの4ビットのテスト信号Tを順次生成してパルス変換器13と変換テーブル14に供給する。
このとき、変換テーブル14には、例えば入力と出力が等しくなるようにしたテーブルを補正用変換テーブルの初期値として設定しておく。
【0036】
そして、このとき論理和回路30から出力されるパルス信号Xを、不要分除去用のLPF31を介してA/D32に供給し、得られたディジタル値を記録処理33によりテーブルとしえ記録する。
このとき記録されるテーブルは、テスト信号Tの各レベル値を入力として横軸に示し、テスト信号Tの各レベル値に対応してA/D32から得られるレベル値を出力として縦軸に示したものであり、従って、アナログ遅延器20の抵抗21とコンデンサ22〜25が仕様通りの抵抗値と静電容量値を持っていた場合には、テーブルの入力と出力の関係は傾斜が一定の直線特性となる。
【0037】
例えば、この場合は、補正用変換テーブルが上記した初期値に設定されているので、テーブルの横軸と縦軸の関係は、図4に“理想”として示した通り、入力と出力のレベルが1対1になっている特性となる。
しかしながら、抵抗21とコンデンサ22〜25が仕様通りの抵抗値と静電容量値を持っていなかった場合には、例えば図4に“改善前”として示した特性になってしまい、この場合、“理想”からかけ離れた特性になってしまうので、所望の精度は望めない。
【0038】
そこで、この場合は、記録データの並び替え処理34を実行し、“改善前”の特性が“理想”として示した特性に近づくよう、図4に“改善後”として示した特性になるように入力と出力のデータを入替えたテーブルとし、これを補正用変換テーブルとして変換テーブル14に設定する。
この結果、“理想”特性に対して、かなりの精度で近似した遅延時間が得られることになり、従って、抵抗21及びコンデンサ22〜25として汎用品を用いても、所望の精度が容易に得られるようにすることができる。
【0039】
このときの記録データの並び替え処理34の具体例について、図5により説明する。
この図5は、横軸に4ビットのディジタル信号で表わされるデータのアドレス値をとり、縦軸には、このアドレス値に対応して、図示の抵抗値の抵抗21と同じく図示の静電容量値のコンデンサ22〜25により与えられる遅延時間をとってテーブルとしたものであり、従って“理想”特性は、図示のように直線となる。
しかし、ここでいま、部品に特性のバラツキがあり、例えばコンデンサ22の静電容量値が、図示の100pFから130pFと30%増加し、この結果、図示の“理想”特性から“補正前”特性、つまり記録データの並び替え処理34を実行する前の特性に変わってしまったとする。
【0040】
そこで、この場合、記録データの並び替え処理34により、補正後のアドレス値として示されているように、データの並び替えを行ない、“補正後”特性が得られるようにすれば、抵抗21及びコンデンサ22〜25として汎用品を用いても、所望の精度が容易に得られることになる。
このときのPWMパルス生成部PSの変換テーブル14に対する補正用変換テーブルの設定は、通常、このPWMパルス生成部PSが適用されている高周波電力変調増幅装置の使用を開始するまでに実行しておけば良いが、しかし、必要に応じて随時、実行しても良いことはいうまでもない。
【0041】
ここで、上記実施形態は説明のための一例として記載したものであり、従って、本発明は、上記実施形態におけるクロック周波数や回路素子の数値に限定されることなく実施可能なことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0042】
11:A/D(アナログ・ディジタル変換器)
12:分周器(1/64)
13:パルス変換器
14:変換テーブル
21:抵抗(遅延手段を構成する抵抗)
22〜25:コンデンサ(遅延手段を構成するコンデンサ)
26〜29:FET(遅延手段を可変遅延手段とするためのスイッチング素子)
30:論理和回路
31:LPF(ローパスフィルタ)
32:A/D(アナログ・ディジタル変換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル回路からなるパルス変換手段にディジタル振幅変調信号を入力し、当該パルス変換手段からパルス幅変調されたパルス信号を得るようにしたPWMパルス生成装置において、
前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットにより遅延時間が制御され、前記パルス幅変調されたパルス信号が入力されるアナログ遅延手段と、
前記パルス変換手段から出力されるパルス信号と前記アナログ遅延手段から出力されるパルス信号の双方が入力される論理和回路手段とを設け、
当該論理和回路手段から前記パルス幅変調されたパルス信号を得るように構成したことを特徴とするPWMパルス生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のPWMパルス生成装置において、
前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットが入力される変換テーブルを設け、
前記アナログ遅延手段に入力される前記ディジタル振幅変調信号の中の一部のビットのデータが前記変換テーブルによりテーブル処理されてから前記アナログ遅延手段に入力されるように構成したことを特徴とするPWMパルス生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載のPWMパルス生成装置において、
前記変換テーブルの入力にテスト信号を供給するテスト信号生成手段と、
前記パルス幅変調されたパルス信号が入力されるアナログ−ディジタル変換手段と、
前記テスト信号の各レベル値を横軸とし、前記テスト信号の各レベル値に対応して前記アナログ−ディジタル変換手段から得られるレベル値を縦軸としたテーブルを記憶する記録手段と、
前記テーブルのデータを並び替え、補正用変換テーブルとして前記変換テーブルに設定する記録データの並び替え手段とを備え、
前記アナログ遅延手段の回路素子特性のバラツキによる精度低下が抑えられるように構成されていることを特徴とするPWMパルス生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−81578(P2010−81578A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161963(P2009−161963)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】