説明

RF技術を用いた物体の追跡における低減された減衰のための方法およびシステム

無線周波数(RF)ベースの物体の識別、追跡、および位置特定のための方法およびシステム。本方法およびシステムは、より低い周波数範囲のVHFで狭帯域幅信号を使用し、伝搬損失およびRF位置特定信号の精度の低下を最小限に抑える。信号は、マスタユニットからタグまで送信される。信号移動時間が記録され、マスタとタグとの間の距離が計算される。本方法およびシステムは、VHF帯域を使用することによって、より長距離のRF信号の透過および正確さの向上を達成することができる。デジタル信号処理およびソフトウェア規定無線技術が使用される。無線によって送受信される実際の波形は、ソフトウェアによって定められる。マスタユニットおよびタグの役割は、逆にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線周波数(RF)ベースの物体の識別、追跡、および位置特定のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の相対的または地理的位置を決定するためのRFベースの識別および位置探査システムは、全般的に、単一の物体または物体群の追跡、および個人の追跡に使用される。従来の位置探査システムは、屋外の環境における位置決定に使用されていた。一般的に、RFベースのグローバルポジショニングシステム(GPS)、および支援型GPSが使用される。しかし、従来の位置探査システムは、UHF帯域で動作し、閉環境内および屋外での物体の位置特定時には、特定の誤差を伴う。
【0003】
屋内および屋外の位置誤差は、主にRF伝搬の物理的特性によるものであり、特にRF信号の損失/減衰、散乱、および反射によるものである。したがって、屋内および屋外の環境において正確な、物体の識別および位置探査のためお方法およびシステムが必要である。
【0004】
従来の識別および位置追跡システムでは、正確なRF追跡および位置特定に対して狭帯域幅信号を使用していなかった。これまでの開発では、物体のRF識別、追跡、および位置特定に狭帯域幅信号を使用することから離れて考えていた。狭帯域幅信号は、正確な物体の識別および位置特定には極めて正確な距離測定が必要であるため、非実用的であるとみなされていた。この距離測定は、三角測量/三辺測量または仮想的な三角測量計算に使用される。
【0005】
従来のシステムは、単一のオフィスのポイントツーポイント通信に限定される。更なる例として、病院建物には、金属エンクロージャ内の医療機器、金属キャビネット、テーブルなどを含む、様々な金属物が含まれている。この種の空間内で900MHzのRF信号を伝送した場合、PFの波長はわずか30cmであり、また、これらの物体は30cmよりもはるかに大きいので、RFエネルギの大部分が反射されることになる。また、900MHzでは、RFエネルギは、信号が内部壁または建物の床を通るときに著しく減衰し、その動作範囲が縮小される。これらの室内効果は、壁による潜在的な反射および信号損失によって生じるRF信号の損失が原因となり、あらゆる非常に複雑な屋内環境内に位置する物体において、900MHz(またはそれ以上)の周波数の信号を効果のないものとする。
【0006】
無線RFベースのシステムは、信号の減衰に伴う「自由空間」損失を受ける。「自由空間」損失に加えて、実際のRFベースのシステム内の他の伝搬損失には、は、反射、散乱、回折、シャドウイング、屈折、および吸収が挙げられる。UHF高周波数の使用を制限するものは、壁の通過時に大きく減衰されること(例、http://www.stanford.edu/class/ee359/lecture2.pdfを参照)、および導電性および非導電性物体によって散乱または吸収されることである。
【0007】
UHF高周波数の減衰は、ビル内および都市環境内に通常見られる物体と比べて波長が小さいことによって生じる。したがって、より高い周波数(UHF)のRF追跡および位置特定システムは、2つのレジームでの動作に限定される。第1のレジームは、主にGPSによって使用され、信号をブロードキャストする3つ以上の衛星まで、直接さえぎるも
のがないラインオブサイトを確立することができる空間において有効である。これによって、良好な三角測量および物体の位置特定ができる。しかし、都市部の回廊、樹木でおおわれた土地、峡谷などの閉環境、および不都合な気象状況では良好に機能しない。このレジームは、建物内部では機能しない。
【0008】
第2のレジームは、アクティブRFID(無線周波数識別)であるが、これは、しばしば建物内での位置特定に使用される。しかし、信号の減衰および散乱により、動作範囲が約30m(100フィート)に制限される。それぞれの部屋にアクティブRFIDリーダが必要になる場合がある。マスタユニット/リーダとスレーブユニット/タグとの間の動作距離が長くなると、直接経路RF信号エネルギの反射、散乱、および減衰が多くなる。これは、直接ラインオブサイト(DLOS)と、他の全ての間接経路信号との間の電力比を減少させる。
【0009】
一方では、伝送信号の電力を増加させても、「自由空間」損失および他の伝搬損失の問題を解決しない。高い伝送信号電力が増加するとRFリンクバジェットが増加し、結果的に動作範囲が拡大するが、RF信号エネルギの伝搬には影響を及ぼさない。伝送信号電力が高くなるほど、直接経路RF信号エネルギの反射、散乱、および減衰が大きくなる。全ての間接経路信号の電力も比例して増加する。したがって、伝送信号電力が増加しても、精度を下げなければ動作範囲は拡大されない。
【0010】
既存のRFTL(RF Track−Locate:RF追跡−位置特定)システムのほぼ全てが、「アクティブRFID」技術または「GPS」技術を使用する。いずれの場合も、300〜3000MHzと定義される無線周波数のUHF帯域で動作する。
【0011】
これらの比較的高い無線周波数帯域で、時間的に狭い(すなわち、非常に短いパルスの)測距信号を、マスタユニットからスレーブタグまで、またはスレーブタグ間に送信することができる。これらの信号は、受信したときには比較的明確であり、これらの信号によって、明確なTOA(到着時間)およびDTOA(差動到着時間)の測定が可能となり、よって、比較的正確な時間および距離の測定が行われる。
【0012】
したがって、測距精度は、通常、非常に短時間のRFパルスに依存するものと考えられる。これは、RFパルスが非常に多くの周波数成分から構成される、フーリエ解析によって十分理解される。パルスが急速に、または期間が短くなるにつれて、その含まれる周波数成分が多くなり、したがって、「ブロードバンド」または「幅広い帯域幅」を有する、と記述される。このブロードバンド信号は、通常、UHFか、またはより多くの未使用の帯域幅が利用可能な、より高い周波数帯域でしか許容されない。
【0013】
しかし、より高いRF周波数の使用は、他の問題をもたらす。より具体的には、このような信号は、従来の建物の壁を含む多くの材料によって大きく減衰されるか、または吸収されることがよく知られている。この理由から、GPSベースのRFTLシステムは、屋外での使用に限定される。同様に、アクティブRFIDベースのRFTLシステムは、室内の壁における吸収または減衰によって、建物内で使用したときには、範囲が制限される(最大100フィートまたは200フィート)。これは、建物内での人または物体の位置特定に使用されるRFTLシステムは、おそらくは各部屋ごとに、複数の固定リーダ(またはマスタユニット)が必要であり、それによって、内在的な費用が増加する。
【0014】
さらに、より高い周波数のRF測距信号が吸収されないときでも、信号の経路内の金属および非金属物によって散乱される傾向がある。これは、散乱されていないか、または直接信号とはわずかに異なる時間で、スレーブタグに到達する(またはマスタユニットに戻る)多量の異なる測距信号をもたらす。これは、受信した測距信号内にノイズとして現れ、早期のテレビ信号に見られる「ゴースト」に類似する。
【0015】
正確な距離測定は、RF測距信号の(衛星からGPS受信器まで、またはアクティブRFIDリーダからタグまで、そしてリーダへ戻るまでの)移動時間を正確に測定することによって決定される。正確な距離測定は、最も狭い可能な測距信号によって達成することができる。従来のシステムに狭帯域幅信号が使用されていなかった理由は、RF信号帯域が狭くなるほど、信号が時間的に広がることにある。また、部分的に、例えば連邦通信委員会(FCC)の要件などの、政府機関のスペクトルの規制によって、VHF帯域の位置特定信号は開発されていない。FCCは、VHFおよび低周波数帯域の信号を非常に狭い帯域幅(30KHz未満)に制限している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
その結果、VHFあるいはそれより低い周波数の狭帯域幅信号を使用する、物体の識別および位置探査のための方法およびシステムのための技術が必要である。また、環境内にデバイスが2台(マスタとターゲット)しか存在しない場合か、または例えばモール内、ビルの谷間などで、GPS信号のような信号が受信できない場合に有効な、物体の識別および位置探査のための方法およびシステムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、無線周波数(RF)ベースの物体の識別、追跡、および位置特定のための方法およびシステムに関する。提案された方法およびシステムは、VHFあるいはそれより低い周波数のような狭帯域幅信号を使用し、伝搬損失およびRF位置特定信号の精度の低下を最小限に抑える。デジタル信号処理を使用することができる。本発明は、ソフトウェア実装のデジタル信号処理およびソフトウェア規定無線技術を使用することができる。
【0018】
本発明のシステムは、デバイスおよびシステム全体に対して非常に少ない増分コストで、標準的なFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)および標準的な信号処理ハードウェアおよびソフトウェアを使用して構成することができる。したがって、安価かつ高精度の物体識別および追跡デバイスを提供することができる。本システムは、物体追跡および位置特定ユニットのネットワークを制御するためのソフトウェアを有する管理ステーションを含むことができる。本ソフトウェアは、コンピュータシステム上に組み込むことができる。
【0019】
狭帯域幅信号(例、VHFあるいはそれより低い周波数)のための伝送器および受信器を使用して、人または物体の位置を識別する。デジタル信号処理(digital signal processing:DSP)およびソフトウェア規定無線(software defined radio:SDR)技術を使用して、狭帯域幅信号を生成、受信、処理することができる。狭帯域幅信号を使用して、半二重または単信動作モードで人または物体を識別、位置特定、および追跡する。
【0020】
本発明の更なる特徴および効果は、以下の記述で説明され、部分的には説明から明らかとなり、あるいは本発明を実行することによって学び取ることが可能である。本発明の利益は、明細書および特許請求の範囲、ならびに添付図面において特に示される構成によって理解され、また達成されるであろう。
【0021】
上述の概要および下述の詳細な説明は、いずれも例示的かつ説明的なものであり、請求されているような本発明の更なる説明を提供することを意図したものであると理解されたい。
【0022】
本発明をさらに理解できるように、また本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図は、本発明の原理の説明として用いられる記述とともに、本発明の実施形態を例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好適な実施形態を以下に詳細に説明し、それらの実施例を添付図面に示す。
【0024】
本発明は、無線周波数(RF)ベースの物体の識別、追跡、および位置特定のための方法およびシステムに関する。本発明の方法およびシステムは、より低い周波数のVHFのような狭帯域幅信号を使用し、伝搬損失およびRF信号の精度の低下を最小限に抑える。狭帯域幅を有する低RF周波数で測距信号を使用することで、追跡および位置特定システムの追跡精度が高くなり、また動作範囲が広くなる。
【0025】
同じ電力であれば、狭帯域幅測距信号は、既存の測距技術よりも長い範囲を提供する。また、マルチパス干渉および減衰の影響を受けにくい。
【0026】
狭帯域測距は、以下の3つ技術によって使用することができる。好適な実施態様では、これらの技術の全てを使用する。
【0027】
(1)信号対雑音比を向上させる技術−例、コヒーレント/非コヒーレント+加算。
【0028】
(2)ループバック(較正)。
【0029】
(3)マルチパス拒否のためのIFフィルタリング、プログラム可能な変調器、復調器、および適応等化のうちのいずれかを含む、ベース帯域処理(DSPおよびSDRを使用した無線信号のデジタル化)。
【0030】
狭帯域信号は、逐次スペクトル技術(コヒーレント)、スペクトル拡散、および拡散信号とともに使用することができる。
【0031】
無線周波数追跡および位置特定(RFTL)システムは、大きな固定インフラストラクチャを必要とせずに、「マスタユニット」に対する複数の「スレーブ」タグ(人または物体に取り付けられる)の位置特定および追跡を行うことができる。さらに、本システムは、かなり高い精度(約10フィート以内)、(例えば、最大1500フィート)の範囲で2つのデバイス間の距離測定を提供することができ、屋内および屋外での使用を含む、複雑な環境内でこれを行うことができる。これによって、システム全体(複数のタグを有する)は、大きな地理的領域に対する位置情報を提供することができる。
【0032】
正確な位置特定は、マスタユニットと複数のスレーブタグとの間、およびスレーブタグの間で、正確な距離測定を行うことができるならば、三辺測量または三角測量のためのアルゴリズムを使用することによって達成することができる。
【0033】
RF波の伝搬速度は空気中では一定であるので、これらの距離の正確な測定は、1つのタグから第2のタグまでのRF「測距」信号の伝搬時間を正確に測定することによって、(または、より一般的に行われているように、測距信号が、マスタユニットからタグまで伝搬し、その後にタグから元のマスタユニットに戻るまでの時間を計測することによって)達成できることはよく知られている。
【0034】
「到着時間」(TOA)または「差動到着時間」(DTOA)としてよく知られている技術によってこれら伝搬時間を計算することで、マスタユニットに対する所与のスレーブタグの位置特定および追跡を行うことができる。
【0035】
本願明細書に記述された手法は、複雑な環境内に使用することができる。この環境には、建物の外側および内側の空間を含み、建物内であっても、低所要電力でのそれぞれのデバイス間の範囲が最高約1500フィートであるが、減衰および散乱が大幅に低減される、VHF帯域(30MHz〜300MHzと定義される)のようなより低いRF周波数で機能することが必要である。
【0036】
VHFでの動作によってもたらされる主な問題は、UHF帯域と比較して帯域が非常に狭く、この狭さはFCCの規定(チャネルごとに、6.25KHz、11.25KHz、12.5KHz、25KHzを含む、異なる狭帯域幅を割り当てる)によってさらに制限的になることである。
【0037】
これは、いかなるVHFの測距信号も超狭帯域としなければならず、したがって、相対的に時間的に延長される。これは、特にパルスが伝搬するときにノイズ、散乱、および減衰による幾らかの歪を受ける場合に、測距パルスの到着時間(例、ピーク)の明確な識別をより困難にする。この歪は、測距パルスの信号対雑音比(「SNR」)における低減として定量化される。
【0038】
本手法は、比較的長距離の正確なRFTLシステムが複雑な(屋内および屋外)環境で機能できるように、VHF帯域未満の超狭帯域幅測距信号を用いる。
【0039】
しかし、当該の狭帯域幅測距信号の使用には、通常複数の状況が必要である。その第1は、SNRを向上させることによって測距信号の到着時間の曖昧さを低減するように、コヒーレント/比コヒーレント加算のような技術を用いることである。特に、それぞれのTOAまたはDTOA測定は、複数(例、100)の逐次的な測距パルスの測定、およびこれらのパルスの電子的な加算または平均算出に依存する。ホワイトノイズおよびランダムな歪を受けやすいこの複数のパルス(例、N個のパルス)の平均算出の効果は、受信信号のSNRを
【0040】
【数1】

だけ向上させる。
【0041】
スレーブタグで受信した(またはマスタユニットに戻って受信された)拡張測距信号によって、狭帯域VHF測距信号の到着時間は、UHFまたはマイクロ波帯域と同程度の正確さで測定することができる。そしてまた、VHFベースのRFTLシステムによる非常に正確な位置特定を可能にする。この平均算出は、アナログ測距信号を使用して、または、より好都合にデジタル化した形態の測距信号を使用して行うことができる。信号対雑音比を高めるように信号のコヒーレント/非コヒーレント加算は、これまでRF追跡および位置特定の分野には適用されなかった。
【0042】
実用的なRFTLシステムでは、伝搬時間は、(例えばタグで)測距信号を受信し、その到着時間を、この測距信号がマスタユニットから送信されたときの時間と比較することによって測定される。したがって、実際に測定されるのは合計の「飛行」時間、TFLであり、次式で与えられる。
RoundTrip=2×TFL+TDS
ここで、TDSは、測距信号がスレーブタグを経て移動してマスタユニットに再送信される際の遅延である。したがって、伝搬時間TFLを知るためには、TDSを正確に知っておかなければならない。
【0043】
マスタユニットまたはスレーブタグのようなあらゆるトランシーバでは、所望の測距信号と任意の無関係なRF信号を区別するように、RFおよび/またはIF帯域フィルタを受信器内に用いなければならない。この1つまたは複数のフィルタは、次いで、受信器の電子機器の帯域幅を決定する。なお、電子回路内の遅延は、回路の通過帯域幅に反比例する。
【0044】
従来のRFTLシステムでは、UHFまたはマイクロ波帯域で動作し、信号帯域幅は広く、フィルタ通過帯域は相応して幅が広くなる。したがって、回路内にもたらされる遅延TDSは小さくなり、TDS内のあらゆる変動小さくなり、TFLの測定にもたらされるエラーも少なくなる。
【0045】
なお、本願明細書に記述されたシステムは、超狭帯域幅測距信号を使用し、受信器は、受信信号内のノイズを低減するように、また、VHF以下の帯域(25KHz以下)において接近して位置する可能性のある他の信号を識別するように、狭帯域幅フィルタを有さなければならない。したがって、TDSは大きくなるが、これは、TDSの値が安定しており、その変動が十分小さく、TFLに大きな変動をもたらさなければ、許容可能である。しかし、計算によって、また経験に基づいて、発明者らは、周囲温度、作動電圧、および信号強度などの因子における変動によってもたらされるTDSの変動は、TFLの測定に大きなエラーをもたらすに十分なものであり、したがって、位置特定において許容できないエラーをもたらすことを見出した。
【0046】
幸いにも、電子回路におけるデジタル化された信号の伝搬は、構成要素または周囲条件のいかなる変動の影響も受けない。したがって、受信した測距信号を受信器内でデジタル化し、測距信号をデジタル領域で処理することによって、固定TDSを保持することができ、また、正確な測定を行うことができる。
【0047】
アナログ−デジタル変換は、アンテナを通過したアナログ測距信号がIF(すなわち、中間周波数)に増幅、変換された後に、RF受信器のIFセクション内で実行することができる。デジタル信号処理を使用して更なる処理が行われる。デジタルの形態で測距信号を処理することの副次的利益は、それによって、種々の信号処理技術を使用できることである。例えば、エラー補正は感度を向上させることができ、アルゴリズムを使用して、測距信号が伝搬するときのマルチパスまたは散乱の影響を最小限に抑えることができる。
【0048】
最後に、回路のアナログ部分における受信器の伝搬遅延のリアルタイムの較正を提供するように、「ループバック」技術が用いられる。
【0049】
本発明は、狭帯域幅測距信号のデジタル信号処理に対して複数の周波数範囲(帯域)で動作する、標準的なシステム構成要素を使用することができる。デジタル信号処理およびソフトウェア規定無線のためのソフトウェアを使用することができる。最小限のハードウェアと組み合わせた信号処理ソフトウェアによって、ソフトウェアによって定められた波形を送受信する無線を構築することができる。
【0050】
RF波が長くなると、伝搬損失は大幅に低くなる。このような無線波は、直接ラインオブサイト(DLOS)の減衰が少なく、また散乱および反射の影響をほとんど受けない。したがって、測距信号に低周波数を用いることによって、本発明は、精度を損なわずに、位置探査の動作範囲を著しく増加させる。
【0051】
本発明によれば、例えば病院環境での物体の追跡および位置特定には低周波数(900MHz以下)が有効である。約2mの波長を有する150MHzのRF信号は、病院内の大部分の物体よりも大きい。さらに、約2mの波長を有する150MHzのRF信号は、病院建物の内壁または床による減衰が低い(http://fire.nist.gov.bfrlpubs/build97/PDF/b97123.pdfを参照のこと)。
【0052】
一般的に、追跡および位置特定システムは、既知の追跡−位置特定−ナビゲート方法を用いる。これらの方法は、到着時間(TOA)、差動到着時間(DTOA)、ならびにTOAおよびDTOAの組み合わせを含む。距離測定技術としての到着時間(TOA)は、米国特許第5,525,967号に概ね記載されている。あらゆるTOAベースのシステムでは、距離測定の精度または分解能は、推定時間遅延内のエラーによって決定される。本発明は、狭帯域幅(例えば、搬送周波数の1%以下で、2.5KHzまたはさらに低い)と、測距信号と、応答信号技術とを好都合に使用して、推定遅延時間を計算する。これは、従来のTOAまたはDTOA距離測定よりも改善されている。
【0053】
本発明は、長波長(一般的にVHF帯域)を有する低周波数帯域の狭帯域幅を使用した識別、位置特定、および追跡システムのためのソリューションを提供する。提案された方法およびシステムは、VHF帯域を使用することによって、より長い信号透過距離を達成し、かつ精度を高めることができる。デジタル信号処理(DSP)およびSDR(ソフトウェア規定無線)を使用することができる。したがって、無線によって送受信される実際の波形は、ソフトウェアによって定められる。
【0054】
狭帯域幅測距信号の処理には、これに限定されないが、AM、FM、PM(Phase
Modulation:フェーズ変調)、OFDM(Orthogonal Frequency Division Modulation:直交周波数分割変調)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)などを含む、全てのタイプの信号変調を使用することができる。
【0055】
種々の変調技術、例えばDSS(Direct Spread Spectrum:直接スペクトル拡散)およびFH(Frequency Hopping:周波数ホッピング)などのスペクトル拡散技術を狭帯域幅測距信号に適用することができる。狭帯域幅測距信号に適用される復調技術には、これに限定されないが、コヒーレントおよび非コヒーレント復調、ゼロ交差復調、および直交復調が挙げられる。
【0056】
加えて、狭帯域幅測距信号に関して使用されるノイズ低減方法には、これに限定されないが、コヒーレント/非コヒーレント加算、非加算、整合フィルタリング、インターパルス変調(別称、ゼロ/π変調)、およびディザリングなどが挙げられる。干渉低減アルゴリズムには、例えば、CMA(Constant Modulo Algorithm:コンスタントモジュロアルゴリズム)、DFE(Decision Feedback Equalization:判定フィードバック等化)、ビタビ(Vitterbi)アルゴリズム、およびカルマン(Kalman))アルゴリズムが挙げられる。距離測定へのマルチパスの影響をさらに低減するために使用することができる追加情報を提供する、異なる周波数で複数のチャネルに動作する能力が含まれる。
【0057】
狭帯域幅測距信号の使用には、RFトランシーバ/トランスポンダ回路を介した信号伝搬遅延が、温度、信号強度、時間などの外部パラメータに左右されないことが必要である。また、RFトランシーバ/トランスポンダおよびFPGA回路を介して伝搬を測定できることも必要である。
【0058】
本発明では、これは、上述の回路を介して種々の「ループバック」測定を実行することによって達成することができる。「ループバック」モードでは、伝送した測距信号は、受信器へフィードバックされる(すなわち、同時に受信される)。その結果、信号の飛行時間は、RFトランシーバ/トランスポンダおよびFPGA回路を介して伝搬遅延を測定する基準となる。必要な環境のパラメータ(例、入力測距信号強度など)の十分な再形成は、常に可能とは限らない。この場合、工場またはフィールド較正テーブル(デバイスのメモリ内に格納される)を使用して、「ループバック」測定された伝搬遅延の値を内挿することができる。
【0059】
本発明は、単信または半二重システムとして使用することができ、リーダ(しばしば「マスタ」と称される)およびタグ(「スレーブ」または「ターゲット」とも称される)は、マスタまたはスレーブだけが、常に伝送できるプロトコルによって制御される。送信および受信を交互にすることによって、単一の周波数を距離測定に使用することができる。このような仕組みは、全二重システムと比較すると、システムのコストおよび複雑さが低減される。マスタおよびタグの数が増加すると、システムの複雑さおよびその通信プロトコルも増加するので、代表的な二重システムは、2つの周波数を使用する。距離測定において2つの周波数を使用することで、動作範囲にいくつかの制限が生じることも見出される。
【0060】
上述の距離測定の到着時間(TOA)方法を使用することができる。距離測定のTOA方法を実装するときには、10ns以内の精度で信号伝搬遅延を追跡することが必要である。信号伝搬遅延の変動は、周囲温度、信号強度、供給電圧などに敏感なデバイスの回路によって生じる可能性がある。ソフトウェア規定無線(SDR)およびデジタル信号処理(DSP)が使用される。したがって、伝送されたRF信号の実際に波形は、ソフトウェアによって定められる。
【0061】
SDR/DSPハードウェアは、RFフロントエンドアナログ回路の伝搬遅延測定回路とともに、デジタルフィルタリングおよびデジタル変調器/復調器を使用する。SDR/DSPハードウェアは、RFフロントエンド回路の一部のための自己検査機能を含む。また、電圧および信号強度を測定することによって、他の回路の伝搬遅延推定も提供する。本発明のSDR/DSPの実装によって、SDR/DSPシステムのダイナミックレンジ内の温度および信号強度に左右されなくなる。
【0062】
測距信号のより高い帯域幅は、時間遅延エラーがより少なくなるので、TOA距離測定の分解能(精度)を向上させることができる。また、測距信号のより高い信号対雑音比(SNR)することで、時間遅延エラーが少なくなる。したがって、本発明は、測距信号の帯域幅を低く保持しながら、TOA距離測定の分解能(精度)を向上させる。
【0063】
SNR全体を向上させるには、複数の連続的に生成された測距信号にわたって、帰還測距信号サンプル(パルス)の値を同期的に平均することが必要である。このような連続した測距信号(およびサンプル)の数が増加すると、SNRが向上し、その結果、距離測定の精度が高くなる。
【0064】
別の手法では、例えば整合フィルタ技術を使用して、帰還測距信号ごとに時間遅延推定を決定する。次いで、複数の連続した測距信号にわたって得られた時間遅延推定値が平均される。整合フィルタの遅延推定は、整合フィルタの出力を最大化する信号時間に由来する。
【0065】
上述の方法は、デジタル信号処理(DSP)技術によって実行され、伝送されたRF信号の実際の波形の生成に使用され、また、受信信号を処理する。さらに、アナログ技術を使用したこれらの方法を実行は非効率的である。
【0066】
本発明の追跡システムは、デバイス間(マスタとタグ、マスタとマスタ、またはタグとマスタ)の生じ得るクロックタイミングの差異を補償する。これらの差異は、システムによって行われる周期的な較正プロセスを介して決定され、ユーザによって、またはスイッチ制御に従って自動的に開始される。
【0067】
較正の場合、システムは、開始デバイス(マスタユニット/リーダ)によって他のデバイス(スレーブユニット/タグ)へ送信されたそれぞれの測距信号に応えて、所定の時間(クロックカウント)Tだけ隔てた2つの連続した同一の測距信号を送信する。距離測定中にTOAの決定に使用される標準的な方法によってこれらの2つの信号を処理した後に、開始デバイス(マスタ)は、それ自体のクロックカウントでT値を決定する。次いで、クロックカウントレートが、デバイス間のクロックタイミングの差異を決定する。
【0068】
場合によっては、複数のマスタユニット/リーダは、これらのマスタユニット/リーダに対する座標を決定するために、スレーブユニット/タグまでの距離を見出す必要がある。しかし、距離を決定するために、それぞれのリーダが独立にタグをポーリングする場合には時間がかかりすぎる。複数のリーダとタグとの間の距離決定に必要な時間を削減する必要がある。そのために、以下の方法が使用される。複数のマスタのうちの1つは、送信元マスタとなり、「単一送信元マスタ」モードで動作する。残りのマスタは、衛星モードで動作する。
【0069】
(a)それぞれの衛星マスタのRFトランシーバを、「受信」モードに切り替える。
【0070】
(b)それぞれの衛星マスタは、2つの測距信号シーケンスを受信する。これらのシーケンスは、送信元マスタユニットによって生成されたもの、およびタグによって再伝送されたものである。
【0071】
(c)それぞれの測距信号シーケンスを、(送信元マスタと同じプロシージャを使用して)距離測定中にTOAの決定に使用される標準的な方法によって別々に処理する。
【0072】
(d)測距信号の処理が完了した後に、衛星マスタは、それぞれの測距信号に対する飛行時間(遅延時間)を計算する。2つの信号の遅延時間の差異を使用して、送信元マスタおよび衛星マスタに対するタグ位置を決定することができる。
【0073】
(e)送信元マスタは、標準的なリーダ−タグまたはリーダ−リーダの距離測定演算を行う。
【0074】
(f)全てのデバイス間のクロックタイミングの差異は、上述の方法を実行するために予め計算される。
【0075】
さらに、複数のタグおよびリーダの位置特定に必要な時間の削減は、DTOA位置特定方法を使用して達成することができる。そのために、複数のマスタのうちの1つは、送信元マスタとなり、「単一送信元マスタ」モードで動作する。残りのマスタは、送信元マスタの制御に従って動作する。
【0076】
(a)それぞれのタグのRFトランシーバを、「受信」モードに切り替える。
【0077】
(b)それぞれのタグは、衛星マスタのDTOA対または送信元マスタおよび衛星マスタからなるDTOA対(それぞれの対において、衛星マスタがタグとして作用している)によって生成される、2つの測距信号シーケンスを受信する。
【0078】
(c)タグ内部では、それぞれの測距信号シーケンスを、(送信元マスタと同じプロシージャを使用して)距離測定中にTOAの決定に使用される標準的な方法によって別々に処理する。
【0079】
(d)測距信号の処理が完了した後に、タグは、それぞれの測距信号に対する飛行時間(遅延時間)を計算する。それぞれのDTOA対からの2つの信号の遅延時間の差異を送信元マスタに送信し、この差異を使用して、送信元マスタおよび衛星マスタに対するタグ位置を決定することができる。
【0080】
(e)それぞれのDTOAついでは、マスタは、標準的なリーダ−タグの距離測定演算を行う。
【0081】
(f)全てのデバイス間のクロックタイミングの差異は、上述の方法を実行するために予め計算される。
【0082】
無線RFベースの追跡および位置特定システムは、動作範囲Rを有する検索マスタユニットを有することができる。RFリンクバジェットはシステム動作範囲Rを定め、直接ラインオブサイト(DLOS)信号と他の全ての間接経路信号との間の電力比はシステム性能を定める。RF無線ネットワークシステムの場合、電力比が不十分であると、データスループットが低くなり、RF追跡および位置特定システムでは、このような状況からかなりの位置エラーがもたらされる。(http://www.wpi.edu/Pubs/ETA/Available/etd−0430104121009/unrestricted/alsindi.pdfを参照のこと)。本発明の追跡および位置特定システムは、例えば多数の部屋を有する大きな建物内部を含む、あらゆる開環境または閉環境で機能することができる。システムは、VHF未満などの低周波数で動作する。したがって、RF波長は、あらゆる代表的な反射物体よりも長い。また、壁を通るときの散乱および減衰が少なくなる。直接ラインオブサイト(DLOS)信号と他の全ての間接経路信号との間の電力比が大幅に向上する。したがって、送信電力のあらゆる許容可能な上昇を使用して、距離測定の精度を低下させることなく、動作範囲をさらに広げることができる。
【0083】
特に、RF波長が長くなる(または動作周波数が低くなる)と、実際のRF伝搬効果が明確でなくなり、損失を含むが、その理由は次のことにある。
【0084】
(1)低周波数で、RF信号が壁または他のバリアを通るときの吸収および減衰は、高周波数のときよりも少なくなる。
【0085】
(2)障害物がRF波長よりもある程度小さく、障害物とRF波との相互干渉がほとんどまたは全く無いときには、反射、シャドウイング、および他のRF伝搬効果が著しく低下する。したがって、RF信号は、大幅に減衰、散乱、および反射することなくこれらの物体を容易にバイパスする。(Dan Dobkinの「Indoor Propagation and Wavelength」、WJ Communications、V1.4、7/10/02を参照のこと)。
【0086】
低周波数の1つの利点は、RF信号が壁または他のバリアを通るときの吸収および減衰が少ないことである。受信したRF信号強度の大規模な変動は、動作周波数に大きく依存する。(S.E.AlexanderおよびG.Pugliesの「Cordless Communication within Buildings:results of measurements at 900MHz and 60GHz」、British Telecom Technology Journal、1(1)、99−105、1983年7月を参照のこと)。
【0087】
本発明の追跡および位置特定システムは、拡大した動作範囲を使用し、これは、長波長、すなわち低動作周波数で可能である。動作範囲の経験的な推定は、次の2つの研究から得られる。
【0088】
1)http://www.invivoresearch.com/arti_use_autonet_wireless.html、および
2)http://www.rauma.tut.fi/projects/Kilavi/publication_files/Ali−Rantala.pdf。
【0089】
上述の第1項では、異なる無線患者用モニタの動作範囲を病院内で比較したことを述べており、このモニタは、(1)VHF帯域(164MHz〜216MHz)、(2)UHF帯域(902MHz〜928MHz)、および(3)2.4GHzの高周波数で動作されている。高周波数2.4GHzのモニタは、VHFモニタの透過機能に適合できず、許容できなかった。同様に、900MHzのモニタは、VHFシステムと同じ動作範囲を達成するが、このような900MHzのモニタは、最大で100倍大きな電力の信号を生成しなければならないので、過度の伝送信号電力が必要である。
【0090】
したがって、これらの実験結果を使用し、それらを簡略化した経路損失モデル(http://www.sahand.kntu.ac.ir/〜kmpour/part2.doc?bcsi_scan_72FFC7016F6A94A4=0&bcsi_scan_filename=part2.docを参照のこと)に入力し、また、屋内経路損失散乱モデル(http://www.sss−mag.com/indoor.html#tutorialを参照のこと)に入力することによって、位置特定および所見プロセスが効果的であることを立証することができる。例えば、900MHzでの最大動作範囲は100mであり、n=4という経路損失の累乗係数を演繹する。
【0091】
同じモデルを使用することで、VHF周波数(約200MHz)において、経路損失の累乗係数nは、約1.3分の1になり、900MHzのシステムと同じ電力レベルでは、VHFモニタの動作範囲は400mとなることが見出される。
【0092】
本発明の技術は、アパート内部のRF伝送を考察した第2の研究(上述の屋内経路損失散乱モデル)によるデータを使用し、2.45GHzおよび433MHzのシステムを比較することによって、さらに効果的であることが立証される。この研究では、伝送器は、アパート内の任意の位置での場の強さを少なくとも50dB/mとするような方法で配置された。他の全ての条件(伝送器の電力、伝送器の床からの高さなど)は同一であった。この研究は、アパート全体をカバーするために、2.45GHzの伝送器は5つ用いたが、適切に配置された433MHzの伝送器は単一でこの要件を満たすか、またはほぼ満たすことができたことを見出した。
【0093】
無線RFベースの追跡および位置特定システムは、同じカバレージエリアを仮定し、簡略化した経路損失モデルおよび経路損失分散分析を使用して、効果的であることが立証される。433MHzの周波数を使用するときには、本発明のシステムは、2.45GHzのシステムよりも少なくとも2.2倍広い動作範囲を有する。さらに、本システムを10mの動作範囲に用いて、2.45GHzでの経路損失の累乗係数をn=4とすると、433MHzでの動作範囲は22mである。求められたように、433MHzでは、経路損失の累乗係数nは、約1.3分の1になり、以前の研究と一致する。
【0094】
したがって、本発明の無線RFベースの追跡および位置特定方法およびシステムは、VHF周波数で動作したときに、経路損失の累乗係数nを減じることによって、動作範囲を広げることができ、また、直接ラインオブサイト(DLOS)信号と他の全ての間接経路信号との電力比を向上させることができる。
【0095】
動作範囲のゲインは、信号電力を増加させることによってではなく、システムの動作周波数を低減することによって、両方の場合のデータに基づいて達成することができる。したがって、RF伝搬効果は、より小さな経路損失の累乗係数nで測定できるように、動作範囲は拡大され、直接ラインオブサイト(DLOS)信号と他の全ての間接経路信号との間の電力比は向上する。
【0096】
本発明の方法は、VHFまたはHF帯域のような長波長または低周波数を用いて、屋内のRF追跡および位置特定システムを構成するか、または屋外のRF追跡および位置特定システムを構成することができる。現在、これらの周波数帯域で動作するこのようないかなるシステムも、市場では生産されていない。1つの考えられる理由は、連邦通信委員会(FCC)が、利用可能な周波数のスペクトルを割り当てて、VHF、HF以下の低周波数帯域で許容可能な信号帯域幅を厳しく制限していることである。
【0097】
これは、概して広信号帯域幅の展開に基づく手法にも起因し、一般的に、広信号帯域幅は、高精度の距離測定に必要であることを前提とする。広帯域測距信号は、高分解能の距離測定を達成するためのRFチャネルの実装および測距信号ベースバンド処理を簡素化する。しかし、それは、低周波数での狭帯域幅の要件が、あらゆる無線ネットワークのインフラストラクチャのデータスループットを制限したときには役に立たず、全ての無線電気通信ネットワークに900MHzより高いUHF帯域での動作を強いており、許容可能な信号帯域幅は、VHFより大きくなる。
【0098】
本発明の到着時間(TOA)システムによれば、有限の継続時間の測距信号を使用したときに距離測定分解能が提供され、エネルギEおよび周波数ωの有限の継続時間の正弦波信号に対する13dB(Cramer−Rao bound:クレーマーラオ境界)よりも大きい、信号対雑音比(SNR)に対する境界の平均二乗遅延推定(Mean Squared Delay Estimation:MSDE)エラーεは次式で与えられる。
E[ε]=1(ω×SNR)、ここでSNR=E/σ (1)
ここで、σは、ノイズエネルギである。式(1)から、高周波数の測距信号(帯域幅)で機能することによって、TOA距離測定分解能を改善することができる(すなわち、時間遅延推定エラーを低減することができる)。
【0099】
信号帯域幅は、測距信号内に含まれる最も高い周波数によって制限されるので、SNRを上げることで時間遅延エラーも低減され、その結果、TOA距離測定分解能が向上し、一方で、測距信号の帯域幅を低く保持して、測距信号内の最高周波数を検出する。
【0100】
加えて、SNRは、複数の連続した測距信号にわたって帰還測距信号サンプルの値を平均することによって向上させることができる。これらの連続した測距信号(およびサンプル)の数が増加すると、σの値が減少し、それによってSNRが向上する。
【0101】
コヒーレント加算は、複数の/繰り返された測距信号に使用されることが好ましく、これらの信号はFPGA内でコヒーレントに加算される。N個のコヒーレント信号の合計の振幅はN×Aであり、ここで、Aは個々の(単一の)測距信号の振幅である。同時に、ホワイト(ランダム)ノイズ、および個々の測距信号の全てに存在する他のランダムな歪も加算される。なお、ホワイト(ランダム)ノイズおよび他のランダムな歪は、測距信号とはコヒーレントでなく、N個の同一の非コヒーレント(ランダム)ノイズ信号の合計の振幅は、
【0102】
【数2】

である。ここで、σは個々の測距信号に対するノイズ分散である。N個の同一の測距信号のコヒーレント合計を平均することによって、N個の非コヒーレントのホワイトノイズ信号も平均される。この平均信号の振幅は、個々の測距信号Aの振幅に等しいが、ノイズ分散は
【0103】
【数3】

となる。したがって、このようなN個の信号のコヒーレントに加算平均の信号対雑音比は、単一(個々)の測距信号の信号対雑音比と比較すると
【0104】
【数4】

だけ改善され、σに等しい。
【0105】
別の手法は、それぞれの帰還信号に使用して、例えば、整合フィルタ技術を使用することによって、および複数の連続した測距信号にわたって得られた時間遅延推定の結果を平均することなどによって、時間遅延推定を決定する。整合フィルタ技術では、あらゆる遅延推定は、フィルタの出力を最大化して適合させるように、信号の時間原点を用いる。
【0106】
図1は、マスタユニット(リーダ)を表すブロック図である。マスタユニットは、RF測距信号を生成するか、または受信したRF測距信号を処理するためのRFトランシーバ40を含む。受信信号は、スレーブユニット(タグ)からの応答信号または測距信号となり得る。
【0107】
別様には、受信信号は、別のマスタユニットからの応答信号または測距信号となり得る。RFトランシーバ40は、受信器ダウン変換器42と、伝送器アップ変換器44とを含む。RFトランシーバ40のダウン変換器42は、測距または応答信号を受信する。受信信号は、ダウン変換器42によって処理(変換)され、ダウン変換された信号は、増幅器46に供給される。
【0108】
増幅器46は、ダウン変換された信号を増幅して、ダウン変換された受信信号をさらにフィルタリングするために帯域通過フィルタ48に送信する。信号は、帯域通過フィルタ48を通った後に差動増幅器50を通る。差動増幅器50は、受信信号をアナログ−デジタル変換器(ADC)52に渡す。ADC 52は、受信信号をデジタルフォーマット(例、16ビット信号表示)に変換する。したがって、信号は、デジタル信号処理(DSP)を使用して、および/またはソフトウェアによって無線(SDR)手法/技術によって処理することができる。
【0109】
ADC変換器52は、デジタルフォーマットでダウン変換されたRF信号を出力する。信号は、FPGA 60に送信される。FPGA 60は、信号をFIR(Finite
Impulse Response:有限インパルス応答)フィルタ64および適応マルチパスキャンセラ(Adaptive Multi−path Canceller:AMC)90に通すことによって処理する。適応マルチパスキャンセラ(AMC)90は、干渉を低減することによってイコライザとして機能する。コンスタントモジュロアルゴリズム(CMA)、判定フィードバック等化(DFE)、ビタビアルゴリズム、およびカルマンアルゴリズムなどのアルゴリズムは、適応マルチパスキャンセラ90内の干渉を低減するために使用することができる。
【0110】
信号は、次いでデジタル復調器70に送信される。デジタル復調器70は、フィルタ処理およびダウン変換された信号を同じくデジタルフォーマットでベースバンド測距信号に変換する。デジタル復調器70はまた、これらのベースバンド信号をフィルタ処理する。
【0111】
測距信号を受信すると、この測距信号は、フィルタ処理されてベースバンド測距信号プロセッサ/検出器に送信されるが、このプロセッサ/検出器は、コヒーレント加算/積分ブロック72と、メモリバッファまたはFIFOバッファのようなメモリ74と、読み出し専用メモリ(ROM)75と、時間遅延/距離計算器76と、制御ロジック78とを含む。
【0112】
全ての他の信号、例えば、ベースバンド音声/データ通信信号は、復調器70、ベースバンド処理ロジック76、および制御ロジック78を通った後に、マンマシンインターフェースまたは外部のホストに転送するために、またはI/O制御器85に接続されたCPU 80による内部処理のために、デジタルフォーマットでI/O制御器85に送信される。機能ブロック72、74、75、76、および78を含む、FIRフィルタ64、デジタル復調器70、CPU 80、およびベースバンド測距信号プロセッサは、全てFPGA 60に実装される。
【0113】
同様に、アップ変換器44は、ベースバンド測距信号またはベースバンド音声/データ通信信号をアップ変換して伝送する。ベースバンド測距信号の値は、FPGA 60の不揮発性メモリ内に格納することができ、例えば、ベースバンド測距信号は、測距信号プロセッサのROM 75内に格納される。ベースバンド測距信号は、FPGA 60のロジック内に実装されたベースバンド測距信号プロセッサ(ロジック)によって、デジタルフォーマットで生成することができる。
【0114】
ベースバンド測距信号は、デジタル−アナログ変換器(DAC、例、12ビット)および帯域フィルタ56を介して、アップ変換器44に渡される。帯域フィルタ56の出力は、RFトランシーバ40のアップ変換器44に送信される。RFトランシーバ40のアップ変換器44は、RF変調器を含む。同様に、ベースバンド音声/データ通信信号は、上述の経路に従う。
【0115】
図1を参照すると、FPGA 60において、積分ブロック72(Σで示す)は、コヒーレント/非干渉性加算を行うことによって、ベースバンド測距信号の全ての値を集める。FPGA 60では、RAMメモリは、メモリバッファまたはFIFOバッファとして機能して、例えば、測距信号サンプル値および距離計算からの値を格納する。FPGA 60では、時間遅延/距離計算器76は、距離計算のための値を生成する。
【0116】
FPGA 60では、I/O制御器85は、FPGA 60のCPU 80およびポート内のデータ、状態、およびリクエストを制御する。FPGA 60では、有効なマンマシンインターフェース91を提供するように、汎用ポートおよびRS232インターフェースを利用して、他のコンピュータ、スピーカ、およびマイクロホンにインターフェースすることが可能である。
【0117】
要素33は、RFトランシーバ40内の重要な構成要素の温度を測定する熱センサである。その目的は、RFトランシーバ40回路内の信号伝搬の変化を補正することである。要素34は、FPGA 60の構成を恒久的に格納するフラッシュメモリである。FPGAは、電源をOFFにした後はその構成を保持することができない。これは、要素34において行われる。電源投入後、要素34のコンテンツがFPGA 60にアップロードされる。要素35は、システムクロック(例、20MHz)である。
【0118】
図2は、ターゲット(タグ)として作用するスレーブユニット(タグ)のブロック図である。別様には、図2は、ターゲット(タグ)Tとして作用しているマスタユニットの回路のブロック図である。RFトランシーバ(アップ/ダウン変換器)100の動作は、図1のRFトランシーバ(アップ/ダウン変換器)40と同じである。
【0119】
要素173は、RFトランシーバ100内の重要な構成要素の温度を測定する熱センサである。その目的は、RFトランシーバ100回路内の信号伝搬の変化を補正することである。要素174は、FPGA 120の構成を恒久的に格納するフラッシュメモリである。FPGAは、電源をOFFにした後はその構成を保持することができない。これは、要素174において行われる。電源投入後、要素174のコンテンツがFPGA 120にアップロードされる。要素175は、システムクロック(例、20MHz)である。
【0120】
RFトランシーバ100は、信号を受信して、それらをダウンコンバータ102に供給する。受信信号は、ブロック102によってダウン変換されて、増幅器106に渡される。増幅器106は、受信したダウン変換された信号を増幅し、次いで帯域通過フィルタ108に渡す。次いで、フィルタ処理信号は、差動増幅器110を通り、アナログ−デジタル変換器(ADC)112に送信され、ここで受信信号をデジタルフォーマットに変換する。デジタル信号は、その後DSPまたはSDR手法/技術を用いて処理することができる。
【0121】
ADC変換器112の出力は、FPGA 120に送信される。ダウン変換されたデジタルRF信号は、FIRフィルタ124を通り、適応マルチパスキャンセラ150を通る。適応マルチパスキャンセラ(AMC)150は、干渉を低減することによってイコライザとして機能する。コンスタントモジュロアルゴリズム(CMA)、判定フィードバック等化(DFE)、ビタビアルゴリズム、およびカルマンアルゴリズムなどのアルゴリズムは、適応マルチパスキャンセラ(AMC)150内の干渉を低減するために使用することができる。
【0122】
信号は、次いでデジタル復調器130に送信される。デジタル復調器130は、フィルタ処理およびダウン変換されたデジタル信号をベースバンド信号に変換する(これは、同じくデジタルフォーマットの、測距信号または音声/データ通信ベースバンド信号とすることが可能である)。
【0123】
デジタル復調器130はまた、これらのベースバンド信号をフィルタ処理する。測距信号の場合には、このフィルタ処理したデジタル信号は、ベースバンド測距信号プロセッサ/検出器に送信されるが、このプロセッサ/検出器は、RAMまたはFIFOバッファのようなメモリ134と、読み出し専用メモリ(ROM)135と、時間遅延/距離計算ロジック136と、制御ロジック138とを含む。
【0124】
全ての他の信号、例えば、ベースバンド音声/データ通信信号は、復調器130、ベースバンド処理ロジック136、および制御ロジック138を通った後に、マンマシンインターフェース/外部のホストに転送するために、またはI/O制御器145に接続されたCPU 140による内部処理のために、デジタルフォーマットでI/O制御器145に送信される。RAM 134、ROM 135、時間遅延/距離計算およびベースバンド処理ロジック136、および制御ロジック138を含む、FIRフィルタ124、デジタル復調器130、CPU 140、およびベースバンド測距信号処理器は、全てFPGA 120に実装される。
【0125】
処理中に、デジタルフォーマットで受信したベースバンド測距信号は、メモリ134内に格納される。FPGA 120での処理の後に、デジタルフォーマットでメモリ134に格納されたベースバンド測距信号は、デジタル−アナログ変換器(DAC)114および帯域フィルタ116を介してアップ変換器104に送信される。DAC 114は、デジタルフォーマットのベースバンド測距信号をアナログベースバンド測距信号に変換する。
【0126】
上述のように、FPGA 120は、リクエストで動作し、モニタリング通信が確立されたときに、モニタを検索するマスタに測距信号を伝送するように構成することができる。アップ変換器104は、受信した測距信号に基づいて、ベースバンド応答信号を伝送するように動作する。応答信号は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)120の制御ロジックによって修正することができる。ベースバンド測距信号は、FPGA
120の不揮発性メモリ、例えばROM 135内に格納することができる。
【0127】
RFトランシーバ40およびRFトランシーバ100は、同じハードウェア構成要素を使用して構成することができる。同様に、増幅器46および106、フィルタ48および108、差動増幅器50および110、ADC 52および112、DAC 54および114の回路構成要素は、同じ構成要素を使用して実装することができる。FPGA 60およびFPGA 120は、いくつかの点で類似するが、マスタユニット21またはスレーブユニット31のいずれかに対して行われる機能において異なる。例えば、FPGA
60は、FPGA 120のベースバンド測距信号処理および信号生成機能の全てを含む。マスタとスレーブユニットは、FPGA(60または120)内にプログラムされたアルゴリズムおよび/またはソフトウェアにおいて、およびFPGAのコアマイクロプロセッサソフトウェア(それぞれCPU 80およびCPU 140)において異なり得る。
【0128】
ベースバンド測距信号は、200のμsの−πから+πまでの期間のコサイン波形であり、基本的に測距信号の帯域幅を10KHz未満に制限する。なお、他の波形も使用することが可能であり、本発明において有用であることが見出されており、そのような信号に限定すべきではない。ベースバンド測距信号プロセッサ/検出器は、複数の連続した測距信号にわたって帰還測距信号サンプルの値をコヒーレントに平均する。次いで、FPGA
60のROM 75内に格納された基準の生成した測距信号の「重心」の時間値(原点)に対する、平均した帰還測距信号の波形の「重心」の時間値(原点)を見出すことによって、遅延時間を計算する。
【0129】
別様には、全ての生成された測距信号を平均し、生成された測距信号の波形の平均の「重心」の時間値を基準として使用することが可能である。FPGA 120の全ての機能は、FPGA 60に含まれる。したがって、あらゆるマスタユニットは、タグとしても動作することができる。
【0130】
コヒーレントノイズを低減する手法の1つは、ゼロ/π変調である。ホワイト(非コヒーレント)ノイズは、コヒーレント加算を用いることによって低減することができる。しかし、コヒーレント(非ランダムノイズ)は、その振幅が対象となる信号と同じように加えられるので、この手法では低減されない。コヒーレントノイズを低減する手法の1つは、ゼロ/π変調を用いることである。コヒーレントノイズは、クロックノイズのカップリングなどの結果としてデバイス内部に存在する場合がある。
【0131】
一連の同じ測距信号(パルス)を伝送するのではなく、他の同じ偶数の測距信号に対して、奇数の測距信号がπ(180度)位相シフトを有する一連の信号を伝送する。受信すると、コヒーレント加算プロセス中に建設的に偶数の信号を加えるように、πの位相シフトは、奇数のパルスに対応するエコーから取り除かれる。
【0132】
一方で、コヒーレントノイズは、受信して奇数のパルスの位相シフトの補償を受けたときに、偶数のパルスを伴ったコヒーレントノイズのサンプルを破壊的に加えるように、交互の0/180度位相シフトを受けない。その結果、所望の測距信号を保ちながら、コヒーレントノイズが低減または消去される。アナログ領域内での実行は、コヒーレントノイズを低減する消去効果を制限する、振幅および位相の不完全さをもたらすが、略完全な実行は、デジタル領域(例、FPGA 60および120内)のπ位相シフトの低減および除去によって実現することができる。これは、位相だけが異なる2つの伝送ベースバンド測距信号をデジタル的に生成し、次いで受信器ADCベースバンドプロセッサ(FPGA 60および120内)に従ってこの位相シフトを取り除くことによって行われる。
【0133】
加えて、異なる周波数で種々のチャネル上で動作する能力を用いることができ、複数の異なる波長の信号が生成される。ある場合では、FCCは、2つ以上の連続したチャネルの連結、および/または複数の非連結チャネル上の動作を許可している。他の場合では、未使用のTVチャネル上で動作することが可能である。複数の連結チャネルまたは未使用のTVチャネル上で動作する能力によって、測距信号の帯域幅を向上させることが可能である。このより広い帯域幅は、距離測定分解能およびマルチパス除去における更なる改善をもたらし、広帯域エミッションの群遅延による更なる情報を得ることが可能である。
【0134】
異なる周波数で複数のチャネル上で動作する能力は、距離測定へのマルチパスの影響をさらに低減するために使用することができる、追加情報を提供する。例えば、1つのマルチパス現象は、いわゆる「周波数選択フェーディング」である。個の減少はマルチパス信号間の相殺的干渉による、受信信号の電力スペクトル内に深いヌルをもたらし得る。
【0135】
適応イコライザは、このフェーディングを軽減し、フェーディングに関連する不要な距離測定エラーを低減することができる。しかし、入力測距信号SNRは、大幅に低下し、いかなる適応等化の形態/アルゴリズムによっても完全に復元することはできない。したがって、(利用可能な適応イコライザを使用して)このような状況を検出したときの最良の防衛手段は、大幅なフェーディングを受けるチャネルを避けるようにチャネル(動作周波数)を変更することである。
【0136】
また、複数の周波数上で動作することによって、複数の異なるチャネル(周波数)から得た/蓄積した統計(データ)を使用することによって、より正確なマルチパスのチャネル推定/特徴付け/識別を行うことができる。そしてまた、動作範囲を損なわずに距離測定のマルチパスイミュニティをさらに向上させる。
【0137】
軍用、防衛、および治安アプリケーションの場合、ステルス性およびジャミングからのロバスト性がしばしば高く望まれる。非軍用または工業および民生のISM(Industrial Scientific Medical:産業科学医療用)バンド(Part 15)アプリケーションでは、特定のエミッションが拡散して、より高い電力の無ライセンス動作が有効となり、他のサービスと共存できることが必要である。提案されたシステムは、容易にデジタル的に拡散してより広い帯域幅を占有することが可能な、狭帯域アナログ技術に基づいている。キャリア情報は元々極めて狭帯域であるので、適度な拡散は、かなりの処理利得で既存のアナログチャネル内に伝送を容易に隠蔽することが可能である。拡散は、伝送を隠蔽するだけでなく、ジャミングの影響を受けにくくし、マルチパスイミュニティを高め、また、より高度な信号処理技術が有効となり、より広い帯域幅にわたる伝搬特性に関する追加情報が有効となる。測距信号は既知のシーケンスによって符号化されるので、更なる処理を行って、マルチパス、フェーディング、ジャミング、またはチャネル間干渉の影響を低減することができる。非常に拡散した測距信号は、容易にHzあたりのエネルギが非常に低くなり得るので、ステルス動作に対して完全に見えなくすること、およびアナログチャネルのノイズ内に埋め込むか、またはUWB(超広帯域)測距アプリケーションを使用可能にすることができる。
デジタル信号の位相を保つために、DSSS(Direct Sequence Spread Spectrum:直接シーケンススペクトル拡散)技術を用いることができる。符号化測距信号は、アナログハードウェアの遅延エラーを数学的に補正することもでき、デジタル符号化および復号化処理全体を、マイクロコントローラ符号、またはFPGA状態機械、あるいはASIC内に常住させることができる。関連する拡散符号は、デジタルチャネルに限定されないが、弱信号、マルチパス効果、フェーディング、またはジャミングに及ぶ実際の条件下で、BER(Bit Error Rate:ビットエラー率)およびEVM(Error Vector Magnitude:エラーベクトルマグニチュード)を高める、一般的な通信技術(レイク、ビタビ、リード/ソロモン、OFDM、エラー補正など)も有効にする。信号シーケンスは、暗号化して、ターゲットシステムの位置特定が惑わされないようにすることもできる。測距信号は、そのデータによって部分的に符号化して、システム通信またはユニット間のユーザ通信を支援することもできる。
【0138】
本発明は、狭帯域チャネルを占有し、FHSS(Frequency Hopped Spread Spectrum:周波数ホッピングスペクトル拡散)としても知られるホッピングシーケンスを介してホップすることもできる。このようなアプリケーションでは、測距信号は、独立した狭帯域チャネルとして処理され、システムも同期されるアルゴリズムを介して周波数を変更することができる。このようなシステムは、瞬間的にいかなる周波数もチャンネルに占有させず、多くのシステムまたはサービスは同じ帯域内に共存することが可能である。それぞれのチャネルは、占有されたFHSS帯域幅にわたってチャネルエラーを推定および補正する、較正ルーチン、テーブル、またはアルゴリズムによって補正される。このような変調スキームは、Zigbee、Bluetooth、または他のデジタルFHSSシステムのような、共通のISM規格と互換である。
【0139】
本発明は、マルチパス現象がそれほどの要因とならない、VHFアプリケーションに限定されない。航空または宇宙のアプリケーションの場合、陸上ベースのアプリケーションの場合よりも反射物体が少ないので、この環境は、より短い波長においてマルチパス減少の影響を受けにくい。その結果、本システムは、VHFを超える周波数にも非常に適している。
【0140】
広帯域幅測距信号が可能である場合、パルス圧縮技術が既知であり、RFTLではなく、レーダーに広く使用されている。また、時間的に拡張された信号の分解能を増加させることもできる。他の利益には、マルチパス性能の改善が含まれる。しかし、この技術は、なおも(MHzの)比較的に広帯域幅の測距信号を必要とする。現在の最先端技術の電子機器の制限により、狭帯域幅の測距信号(数KHz)から有意な分解能ゲインを得ることは不可能である。
【0141】
ある場合では、利用可能帯域幅を拡張するように、および/または未使用のTVチャネルで動作するように、複数の連続したRFチャネルを連結することが可能である。例えば、San Joseでは210〜216MHzのTVチャネルは使用されていない。パルス圧縮技術を使用した6MHzの帯域幅では、数分の1メートルの距離測定の分解能を得ることが可能であり、また、他の手段(例、適応等化)を用いずに、マルチパスイミュニティを大幅に向上させることが可能である。このような高い測距信号の帯域幅の欠点は、動作範囲の損失であるが、これも、コヒーレント加算によって幾分軽減することができる。
【0142】
パルス圧縮は、パルス符号化(バーカー符号)、チャープ生成、および圧縮などを使用して実行することができる。多数の実装方式が存在する。上述のデバイスアーキテクチャに緊密に適合するものは、チャープ信号の相関処理である(図5を参照のこと)。
【0143】
−受信信号を周波数ドメインに変換する(FFT)。
【0144】
−基準チャープ関数の周波数ドメインのバージョンによって乗算する。
【0145】
−時間ドメインへ積を変換する(IFFT)。
【0146】
パルス圧縮技術の実行には、マスタ/タグデバイスアーキテクチャにおいていかなる変更も必要とせず、デバイスハードウェア内のわずかな変更だけでよい。好適な実施形態では、RFフロントエンド内のIFフィルタは、測距信号のより幅広いスペクトルに適応するように変更される。全ての他の変更は、FPGA 60/120において処理される。例えば、デジタル変調器は、新たな測距信号を生成するように再プログラムすることができる。FFT、IFFT、および周波数ドメインの基準チャープ関数は、プログラミングによってFPGA 60/120に追加することができる。
【0147】
図3は、本発明に使用される測距信号シーケンスの図である。RFベースの追跡および位置特定システムTFLは、マスタとタグ、およびタグとマスタとの間を、例えば往復する、測距信号の「飛行時間」である。TDMおよびTDSは、マスタおよびスレーブ(ターゲット)のRFトランシーバ/トランスポンダ(RからT)/(TからR)の切り替え時間である。
【0148】
概念的には、TDMはTDSに等しい。24の直流成分サンプルを収集するための本発明では、マスタおよびタグの遅延(TDMおよびTDS)は、24のサンプリング間隔で異なっていなければならない。送信元マスタは、RFトランシーバ40を切り替えて測距信号を伝送する(図1を参照のこと)。第1のステップでは、RからTへの切り替え時間の後に、FPGA 60(図1を参照のこと)は、ベースバンド測距信号を生成し、この信号をアップ変換器42を通すことによってRFトランシーバ40内のRF搬送波に変調し、(図3において)変調したRF測距信号は、タグTに送信される。
【0149】
測距シーケンスの第1の単一のインスタンスが送信された時点で、FPGA 60の制御ロジック78(図1を参照のこと)は、TDM時間のカウントを開始する(図3を参照のこと)。測距シーケンスが伝送された後に、RFトランシーバ40(図1を参照のこと)は、伝送状態から受信状態に切り替えられる。なお、ダウン変換器44の出力は、TDM時間のカウントが終了するまで無視(無効に)される。したがって、ADC 52のクロックおよびDAC 54のクロックを停止し、サイクルを継続して電力を使用するRFトランシーバ40およびFPGA 60の受信器部分内の回路などの、他のいくつかの回路を無効にすることによって、節電が達成される。
【0150】
更なるパラメータを使用することもできる。そのようなパラメータは、図1の回路58および図1のデジタル復調器70からの制御/状態信号を通じてRFトランシーバ40から得られた、RSSI(Reseived Signal Strength:受信信号強度)のレベルを含むことができる。制御信号は、クロックを無効に、または再開して、回路を無効に、または再び有効にする。
【0151】
第2のステップでは、受信状態にあるタグT(例、スレーブまたはマスタ)は、図2のトランシーバ100で受信し、RF測距信号を(変換器102内で)ダウン変換する。ADC 112内で信号を変換した後に、デジタル化されたベースバンドのダウン変換された測距信号(データサンプル)は、FPGA 120(図2を参照のこと)に送信される。FPGA 120内部では、ダウン変換されたベースバンド測距信号は、デジタルフォーマットでFIRフィルタ124を通り、デジタル復調器130を通る。復調されたベースバンド測距信号は、FIFOバッファRAM 134内に格納され、一方で、FPGA
120の制御ロジック138は、図4に示される、有効なベースバンド測距信号のデータウィンドウの終点/開始点(境界)を決定する。
【0152】
第3のステップでは、タグTのユニットは、受信したベースバンド測距信号サンプルを分析することによって、ベースバンド信号の走査を処理する。次のパラメータが識別される。
【0153】
ベースバンド測距信号のピーク、
信号の振幅の減少(または増加)、および
信号レベルが一定である地点。
【0154】
したがって、有効なベースバンド測距信号のデータウィンドウの終点(ウィンドウ境界)が定められる。また、このウィンドウの開始点境界も決定される(図4を参照のこと)。ノイズの影響を低減するために、この方法では、m個(例、m=10)のデータの平均を決定し、このmの平均を使用して、ベースバンド測距信号のピーク、振幅の減少(または増加)、および一定の信号レベルを決定する。信号のデータウィンドウを決定するための更なるパラメータは、振幅が減少する継続時間を含むことができる。
【0155】
第4のステップでは、ウィンドウの境界が定められた後に、タグのRFトランシーバ100は、「伝送」モードに切り替えられる。RからTへの遅延の後に、メモリ135内のFIFOバッファからのベースバンド測距信号サンプルは、I/O制御器145を介してDAC変換器114に転送され、その結果として、アップ変換器104を介してトランシーバ100によって送信元マスタへ再伝送される。ベースバンド測距信号のウィンドウ境界(終点/開始点)が決定された後に、ベースバンド測距信号サンプルの転送遅延のカウントが開始される。
【0156】
図3に示されるように、転送は、ベースバンド測距信号のウィンドウ境界(開始点)から遅れて、TDS時間を開始し、RからTへの遅延を含む。受信した測距信号を再伝送すると、タグのRFトランシーバ100は、受信モードに切り替えられる。節電のために、ADC 112およびDAC 114のクロックを呈することができ、RFトランシーバ100の受信器部分内の回路およびFPGA 120は無効にされる。RSSIレベルのようなパラメータは、回路118およびデジタル復調器130からの制御/状態信号を通じて得られる。制御/状態信号は、クロックを有効にして再開し、回路を無効/再び有効にするために使用される。
【0157】
第5のステップでは、送信元マスタのRFトランシーバ40は「受信」モードにあり、TDM時間は終了している。送信元マスタのRFトランシーバ40は、変調されたRF信号の形態で再送信した(フィードバック)測距信号を受信する。RFトランシーバ40の受信器は、ダウン変換されたアナログのベースバンド測距信号を生成する。ADC 52による変換およびサンプリングの後に、デジタル化したベースバンド測距信号(データサンプル)は、FPGA 60に送信される。FPGA 60内部では、ダウン変換されたベースバンド測距信号は、FIRフィルタ64を通り、次いでデジタル復調器70に渡される。
【0158】
次いで、デジタルフォーマットで復調されたベースバンド測距信号は、RAM 74内のFIFOバッファに格納され、ここでは、コヒーレント積分/平均算出ブロック72を使用して現在のサンプルの値(図2を参照のこと)が、以前の測距信号インスタンスからのサンプルの値に加えられる。最初のバッファのコンテンツはゼロであり、蓄積バッファ長は256個のサンプルに等しい。種々のサイズのバッファは、ベースバンド信号のサンプリングレートおよび他の要件に従って使用することもできる。
【0159】
DM時間が終了した後に、FPGA 60は、TDMのカウントの終了から遅れて、次のベースバンド測距信号インスタンス(TDM+定数)時間を生成し始める。ステップ1〜5は、蓄積された測距信号インスタンスの数が所定の数Nに達するまで繰り返される。Nは、プログラム可能であり、オペレータが設定するか、または特定の信号に対する適応アルゴリズムによって決定することができる。ベースバンド測距信号サンプルの蓄積の返されたインスタンスは、次のインスタンスが受信される前に完了される。
【0160】
システムの別の実行は、200個のサンプルのベースバンド測距信号の継続時間を有して使用することができる。図1のFPGA 60内のバッファRAM 74、または類似した図2のFPGA 120 内のバッファRAM 134の蓄積は、ベースバンド測距信号のサンプルレートを1マイクロ秒に仮定して使用することができる。RAM蓄積バッファの最初の23のロケーションは、直流成分値を決定するために予約される。RAM蓄積バッファは、次のようにメモリを割り当てる。
【0161】
最初の0〜22番のバッファロケーション−直流成分値の測定に使用されるサンプルを保持する。
【0162】
位置番号23−測距信号の往復の飛行時間がゼロの場合の第1のベースバンド測距信号サンプルを保持する。往復の飛行時間はTFLの2倍に等しい(図3を参照のこと)。
【0163】
位置番号24〜52−測距信号の非ゼロ飛行時間TFLの場合の第1のベースバンド測距信号サンプルを含む。したがって、最大(往復)の飛行時間は、最大28個のサンプル(28μs)であり、4km(約2.5マイル)を超える一方向のマスタ−タグの距離に対応する。
【0164】
サンプル252を含む残りのバッファロケーションは、残りのベースバンド測距信号サンプルを保持し、バッファロケーション番号253〜255は、予約ロケーションとして使用される。
【0165】
別のバッファ構造を使用し、例えば、バッファの中央にベースバンド測距信号サンプルを保持する構造を含むこともできる。24の直流成分サンプルを収集する場合、マスタおよびタグの遅延(TDMおよびTDS)は、24のサンプリング間隔で異なっていなければならず、その合計は24μsに等しい。
【0166】
ループ(ステップ1〜5)の回数がNに達すると、ベースバンド信号の処理は、ADC
52(またはADC 112)のプラットホームに関連する直流(定数)成分とノイズとの間の減算値を決定する。直流成分(0〜19のロケーション)の減算の後に、マスタのFPGA 60の距離計算/ベースバンド処理ロジック76で計算された測距信号の飛行時間が決定される。次いで、N個の連続した測距信号(平均帰還ベースバンド測距信号波形)にわたって蓄積サンプルの値が決定される。
【0167】
次いで、平均帰還測距信号波形の「重心」時間値(原点)Tを見いだすことによって、飛行時間(遅延時間)が計算される。続いて、本発明のプロセスは、往復飛行時間値を計算する。
FL=T−T−ΔTDS (2)
ここで、Tは、マスタユニットによって生成される基準ベースバンド測距信号波形の「重心」時間値(原点)である。
【0168】
別様には、式(2)内のTの値は、FPGA 60のROM 75(図1)内に格納された事前に計算した値とすることが可能である。式(2)のΔTDSの値は、較正中に決定される。この値は、TFL値の決定に影響を及ぼす傾向がある、マスタとタグとの間の起こり得るクロックタイミングの差異を考慮する。
ΔTDS=TDS−TDM
DMおよびTDS時間は、以下を含む固定時間遅延値である。マスタおよびスレーブの(RからT)/(TからR)トランシーバ40/100の切り替え時間、ベースバンド測距シーケンスの継続時間、および測距信号の伝搬遅延、およびトランシーバ40/100およびFPGA 60/120の信号処理回路によるこれらの遅延の変動。概念的には、TDMはTDSに等しい。なお、24の直流成分サンプルを収集する場合、マスタおよびタグの遅延(TDMおよびTDS)は、24のサンプリング間隔で異なっていなければならず、その合計は本発明では24μsに等しい。
【0169】
マスタ−タグおよびマスタ−マスタのデバイス間のクロック周期において起こり得る差異は、係数kによって表すこともでき、この係数によって、一方のデバイスのクロック周期を別のデバイスのクロック周期に変換することができる。この係数値の決定は、較正動作に含まれる。
FL=T−T−k×TDS−TDM (3)
別様には、TFL値は、次式のように決定することができる。
FL=T−k×TDS (4)
ここで、TはマスタのFPGA 60によってカウントされ、Tのカウントは、測距シーケンスの第1の単一のインスタンスがマスタのFPGA 60によって送信された時間から始まる。Tは送信元マスタユニットによってカウントされ、TDSはスレーブまたは他のマスタによってカウントされる。
【0170】
較正プロセスは、デバイス/システムによって定期的(自動的)に、またはオペレータのリクエストに応じて行われる。第1のステップでは、マスタユニットは、距離測定のためにTDM時間のカウントを開始する。較正プロセスを通して、例えば、基準としてのマスタまたはタグのクロックを使用したTDMとTDSとの差異として、ΔTDSを決定することが必要である。
【0171】
マスタユニット21が較正している場合は、RFトランシーバ40が伝送するように設定し、FPGA 60は、RFトランシーバ40の伝送器のアップ変換器変調器44を通る標準ベースバンド測距信号を生成する。信号が伝送された後に、RFトランシーバ40は、受信モードに切り替えられて応答を待つ。
【0172】
伝送された測距信号を受信すると、タグは、TDSの間隔(または、マスタユニットが較正されている場合はTDM+定数)を有する2つの測距信号(FPGA 120によって生成される)に応答する。マスタユニットのダウン変換器42は、時間間隔TDS(またはTDM+定数)によって分離された2つのダウン変換された測距信号を生成する。これらのダウン変換されたベースバンド信号は、ADC 52によって変換およびサンプリングした後にFPGA 60に送信される。
【0173】
これらの2の信号を予想して、FPGA 60は、2つの時間ウィンドウを「開く」。その1つは、TDMの後に開始する通常のウィンドウであり、もう1つは(TDM+定数+TDS)または2×TDS時間の後に開始し、ここで、TDSは、マスタユニットのクロックの値によってカウント(測定)される。第1の受信した復調(例、ベースバンド)測距信号は、RAM 74の蓄積バッファ内に格納され、第2の受信した復調(例、ベースバンド)測距信号は、同じくFPGA 60のRAM 74内に常駐する補助バッファ内に格納される。
【0174】
第2の測距信号が補助バッファに転送された後に、FPGA 60内で較正プロセスが開始される。較正プロセスは、飛行時間の計算と同様に、それぞれのバッファ内に格納される。それぞれのバッファ内のデータに対する「重心」時間値(原点)が決定される。これらの値の間の差異、TDSカウントは、マスタクロックを使用して決定される。同じTDS時間に対するタグとマスタクロックのカウントとを比較することによって、ΔTDS値が見いだされる。TDM+定数の値は、例えば、TDS値に等しくなるように選択できることに留意されたい。
【0175】
較正プロシージャをP回繰り返すことによって、また、Pにわたって蓄積されたΔTDS値を平均することによって、より高い精度を達成することができる。マスタ−タグおよびマスタ−マスタのデバイス間のクロック周期における差異は、係数kによって表すこともで器、この係数によって、一方のデバイスのクロック周期を別のデバイスのクロック周期に変換することができる。この係数値を決定するために、(TDSおよびTDM)値を使用する必要はない。例えば、クロックの定数を使用することができる。この係数は、いくつかのマスタが「衛星モード」で動作しているときにも使用することができる。
【0176】
測距信号の伝搬遅延時間およびデバイスの回路通じた遅延時間の変動は、正確に(±10ns以内)追跡することが好ましい。伝搬遅延時間およびその変動は、TFL値に直接影響を及ぼす。遅延時間の変動は、周囲温度、信号強度、供給電圧などの関数である。
【0177】
したがって、一実施形態では、本発明は、デジタルフィルタ64/124およびデジタル復調器70/130を用いたSDR(ソフトウェア規定無線)およびDSP技術を用いる。SDRおよびDSPは、RFフロントエンド回路の伝搬遅延測定とともに使用され、RFフロントエンド回路の一部または全てに対するFPGA 60/FPGA 120の制御下でのループバック/自己試験と、構成要素の温度、信号強度などを測定することによる他のいくつかの回路の伝搬遅延の推定を含む。
【0178】
SDR/DSPの実装は、(SDRシステムのダイナミックレンジの範囲内での)温度および信号強度への依存を取り除く。しかし、現在の半導体技術の制限では、RFトランシーバ全体の(アップ/ダウン変換器)機能を、SDR/DSP準拠のデジタルフォーマットで実装することはできない。伝搬遅延の測定および伝搬遅延の推定は、FPGA 60/FPGA 120の制御下で定期的に、また、温度、信号強度、または他の条件が変化したときに行うことができる。例えば、マスタからのリクエストに応じて、全ての伝搬遅延の測定および伝搬遅延の推定を、FPGA 60/FPGA 120の制御下で行うことができる。
【0179】
複数のマスタとタグとの間の距離決定に必要な時間は、複数のマスタの内の1つが送信元マスタ(originating masuter:OM)を有することによって削減することができる。以下のように、OMは「単一の送信元マスタ」モードで動作し、残りのマスタは、衛星モードで動作する。
【0180】
全ての衛星マスタのRFトランシーバ40は、「受信」モードに切り替えられる。それぞれの衛星マスタは、2つの測距信号を受信する。その1つは単一の送信元マスタによって生成され、もう1つはタグによって再伝送される。OMから第1の測距信号を受信した後に、衛星マスタは、タグが通常動作で行うのと同じように、ベースバンド信号をOM蓄積バッファ(FPGA 60、RAM 74)内に格納し、終点/開始点(ウィンドウ境界)を決定する。
【0181】
このウィンドウの開始点は、OMから生じる全ての測距信号に対するウィンドウの生成に使用される(これらのウィンドウ間の時間間隔は、(TDMS+定数)に等しい)。第1の信号を含む全ての信号は、送信元マスタが、通常の動作でタグからベースバンド測距信号を蓄積するのと同じように、衛星のOMのバッファRAM 74内に蓄積され、TDMSは、衛星マスタのTDMに等しい。
【0182】
タグからの第2の測距信号は、TDSの時間だけ遅延される。衛星マスタは、第2のウィンドウを生成するが、このウィンドウは、第1のウィンドウからTDS時間だけシフトされ、第2のベースバンド測距信号を、第1の受信したベースバンド測距信号が格納および蓄積されるのと同じように、タグのRAM蓄積バッファ(FPGA 60、RAM 74)内に格納および蓄積する。
【0183】
ベースバンド測距信号が完成したときに、衛星マスタユニットは、単一の送信元マスタの動作と同じプロシージャを使用して、それぞれの測距信号に対して飛行時間(遅延時間)を計算する(FPGA 60、ブロック76)。2つのベースバンド測距信号の飛行時間の値間の差異を使用して、OMおよび衛星マスタに対するタグ位置を決定することができる。
【0184】
全てのマスタ(単一の送信元および衛星)は、同じ(TDM+定数)および(TDMS+定数)値を使用することに留意されたい。なお、同じ(TDM+定数)または(TDMS+定数)値は、それぞれのユニット間で異なるクロック周期を有する、異なるマスタユニットによってカウントされる。クロック周期内のこの差異は、係数行列kmijによって表すことができ、この係数行列によって、i番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期を、j番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期に変換することができる。
【0185】
同様に、マスタユニットによるTDS値の決定のためのスレーブユニットのクロック周期は、kmsij行列を通じて達成することができ、この行列によって、j番目のs(スレーブ)デバイスのクロック周期を、i番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期に変換できる。個々の係数値の決定は、上述の較正プロシージャにおいて行われる。
【0186】
DTOA位置特定の場合には、全てのタグは、実際にはマスタである。送信元および衛星マスタは、DTOA対を形成して、あたかもそれら自体の間の距離測定を行っているかのように作用する。DTOA対は、送信元マスタの制御下で、2つの衛星マスタから、または送信元マスタと衛星マスタとから構成される。それぞれの対のマスタのうちの1つはマスタとして動作し、もう1つはタグとして動作する。送信元マスタは常にマスタモードである。
【0187】
全てのマスタ−タグのRFトランシーバ40は「受信」モードに切り替えられる。それぞれのタグは、それぞれのDTOA対から2つの測距信号を受信する(その1つはマスタとして作用する衛星/OMマスタユニットから受信し、もう1つはタグとして作用する衛星マスタユニットから受信する)。マスタからの第1の測距信号の受信の後に、マスタ−タグは、タグが通常動作で行うのと同じように、ベースバンド信号をその蓄積バッファ(FPGA 60、RAM 74)内に格納し、終点/開始点(ウィンドウ境界)を決定する。
【0188】
このウィンドウの開始点は、上述のDTOA対内のマスタから生じる全ての測距信号に対するウィンドウの生成に使用される(これらのウィンドウ間の時間間隔は、(TDMS+定数)に等しい)。第1の信号を含む全ての信号は、送信元マスタが、通常の動作でタグからベースバンド測距信号を蓄積するのと同じように、タグのマスタバッファRAM 74内に蓄積され、TDMSは、上述の対のTDMに等しい。
【0189】
上述のDTOA対内でタグとして作用する衛星マスタからの第2の測距信号は、TDS時間だけ遅延される。マスタ−タグは、第2のウィンドウを生成するが、このウィンドウは、第1のウィンドウからTDS時間だけシフトされ、第2のベースバンド測距信号を、第1の受信したベースバンド測距信号が格納および蓄積されるのと同じように、タグのRAM蓄積バッファ(FPGA 60、RAM 74)内に格納および蓄積する。
【0190】
ベースバンド測距信号が完成したときに、マスタ−タグユニットは、単一の送信元マスタの動作と同じプロシージャを使用して、それぞれの測距信号に対して飛行時間(遅延時間)を計算する(FPGA 60、ブロック76)。2つのベースバンド測距信号の飛行時間の値間の差異は、送信元マスタに送信される。
【0191】
このプロセスは、それぞれのDTOA対の組み合わせに対して繰り返され、インスタンスごとに、2つのベースバンド測距信号の飛行時間値間の差異は、送信元マスタに送信される。この情報を使用して、OMおよび衛星マスタに対するそれぞれのマスタ−タグ位置を決定する。
【0192】
DTOA対内の全てのマスタは、同じ(TDM+定数)を使用し、DTOA対内でタグとして作用する衛星マスタは、同じ(TDS)値を使用することに留意されたい。なお、同じ(TDM+定数)または(TDS)値は、それぞれのユニット間で異なるクロック周期を有する、異なるマスタユニットによってカウントされる。クロック周期内のこの差異は、係数行列kmijによって表すことができ、この係数行列によって、i番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期を、j番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期に変換することができる。
【0193】
同様に、マスタユニットによるTDS値の決定のための、スレーブとして作用する衛星マスタのクロック周期は、kmsij行列を通じて達成することができ、この行列によって、j番目のs(スレーブ)デバイスのクロック周期を、i番目のm(マスタ)デバイスのクロック周期に変換できる。個々の係数値の決定は、上述の較正プロシージャにおいて行われる。
【0194】
本特許出願書に記述された距離測定プラットホームは、多数の異なる方法を使用することができる。距離測定プラットホームは、プロキシミティ情報の提供に、または三角測量技術、位置情報とともに使用することができる。
【0195】
本発明は、「スマートタグ」、すなわち、コンピュータ、または位置の視覚的表示または他のユニットを提供するPDA(personal digital assistance:携帯情報端末)に取り付けられたマスタユニットを用いるか、または、PDA同程度のサイズで、マスタユニットを構成し、それ自体の表示ディスプレイを含む、スタンドアロンのハンドヘルドデバイス内に組み込むことができる。別の実施形態では、「スレーブユニット」(タグ)のいくつかを適所に固定することができ、システムは、UHF RFID技術を使用した固定リーダに依存して、従来のRFTLシステムと同程度に機能することができる。本システムの利点は、それぞれのリーダユニットに、非常に広い範囲を提供することである。したがって、オフィスビルまたはキャンパスビルのような所与の広さの空間をカバーするには、従来のリーダを使用したときよりもリーダを少なくする必要がある。リーダのコストは同程度であるので、これは、本技術に基づいたシステムは、必要とするリーダがより少なく、従来のUHF技術を使用したものよりもはるかに安価であることを意味する。これは、カバーされるべき領域の全てまたは一部が壁を有する屋内空間であり、UHF技術ではそれぞれの部屋に別個のリーダが必要となり得る場合に特に当てはまる。
【0196】
位置特定システムは、以下の例示的なビジネス、商業市場において使用することができる。
【0197】
消防、EMTおよびSWATチームを含む初期対応チーム、矯正施設の管理、空港および航空機のセキュリティ、港湾および海洋のセキュリティ、物理的なインフラストラクチャの保護、病院、工場、建設現場、ショッピングモール、学校、オフィスビル、および自動車。
【0198】
本システムを上述の市場で実行することができる、少なくとも2つの異なる方法が存在する。その第1は、固定インフラストラクチャを持たない少人数のグループである。例えば、一群の消防士が火災中の建物に入る場合、位置特定システムは、建物内の消防士の位置を確認することができる。距離システム自体は、三角測量技術が無くても用いることができる。例えば、囚人が(矯正施設の外で)作業を行っているときには、看守によって監視される。囚人は、監視員が視覚的インターフェース上で一意的に識別することができる。監視される囚人の距離を測定することによって、監視員は、全ての囚人たちの相対的な距離を常に確認することができる。加えて、相対的な距離が増加しているか減少しているかに基づいて、人またはアイテムがユーザに近づいているのか、または遠ざかっているのかを判断することによって、あらゆる人またはアイテムを追跡することができる。これは、複数のコンテクストに使用することができる。例えば、自動車アプリケーションの場合、本システムを備えた車によって、ユーザは、正確な距離を予め定めて、車の持ち主が車に近づいたときにドアを自動的に開くようにするか、または車の持ち主が、本システムを使用して駐車場内の自分の車の位置を見つけることができる。
【0199】
第2の実装は、建物と屋外の環境とを混合したものからなる、固定タイプのキャンパス型の設定に対するものである。このシステムは、個々に、屋外の位置特定または屋内の位置特定に使用することができる。第1の実装との主な差異は、第2の実装では、建物および屋外を通じた固定デバイスの位置特定が存在することである。一般的に、このタイプの施設では、システム全体の一部として、さらに多くのタグが配置される。本システムを使用して、倉庫設備内の目録を作成するように病院内の医師および患者を追跡することができる。
【0200】
人は、鍵、財布、ハンドバッグ、携帯電話、ラップトップコンピュータ、リモコンなど、絶えず物を失くしたり置き忘れたりするものである。本願明細書に記述された技術によって、ユーザは複数の頻繁に失くす物を同時に追跡することができ、それによって、置き忘れたアイテムを探す時間と、なくしたときにそれらを買い替える費用との両方が削減される。加えて、本願明細書に記述された技術を使用すると、ユーザは、そのグループ内の全ての人の正確な位置を確認することができ、また、必要に応じて、互いに迅速に位置特定および追跡を行うことができる。これは、社会見学に行ったとき、または親と一緒に旅行に行ったときの子供たちに対する特定の用途を有する。
【0201】
先般の政府の指示では、e911と呼ばれるが、全ての携帯電話会社に対して、携帯電話から911をダイヤルした人の位置を特定できるように求めている。しかし、e911に使用されている技術は、67%の発信に対しては100m範囲内に、また、95%の発信に対しては300mの範囲内にしか発信者の位置を絞り込めない。本願明細書に記述された技術は、既存のe911の技術と組み合わせて、より正確かつ包括的なソリューションを提供することが可能である。本システムをGPSまたはe911の位置特定に使用される他の類似した技術と組み合わせることによって、得られる統合物は、より信頼性の高い、完全かつ正確なソリューションを提供し、全体的な、および正確な相対的位置情報の決定が可能となる。例えば、探索救助機関は、現在のe911技術を使用して、911の発信者のおおよその位置の通知を受けることが可能である。約1マイル以内に達すると、911の発信者の正確な位置を識別することができ、救援を大幅に迅速化することができる。このような統合はまた、上述の機能のうちのいずれかを可能にする。
【0202】
本システムは、GPS受信器とシームレスに統合することができ、また、ネットワーク内での位置情報を提供することができる。スカイビューを備えたあらゆるユニットは、あらゆるシステムユニットをGPS基準点として作用させることができる、標準的なGPS
NEMAデータを受け入れるようにインターフェースすることができる。ネットワーク内の他のユニットは、GPS基準点に対する相対的な位置を正確に認識し、それら自体の仮想的なGPS位置を計算する。本システムは、鮮明な視界ではないが、マスタ/スレーブユニットの無線到達距離内にある領域において、GPSのような正確さを提供するという利点を有する。
【0203】
本システムは、支援型GPSシステム、基地局、Picoセル、またはEOTD携帯電話システムとインターフェースすることによって、支援された携帯電話の位置情報も提供することができる。位置特定技術およびアルゴリズムは、必ずしも携帯電話ネットワークに依存するというわけではない。互いに無線範囲内にある全ての携帯電話自体は、潜在的にRTFLネットワークの一部となることが可能であり、携帯電話の近くに仮想的なGPSの位置を提供する。GPSスカイの無線範囲内に全ての携帯電話を有することができない場合は、位置が分かっているマスタユニットをGPS基準として代用することができる。本システムは、VHF伝送に理想的に適合しているので、携帯電話のチャネル以外の別の緊急チャネルを提供して、911への別の発信に対する通信および位置情報を提供するか、または別の緊急通信を提供することも可能である。
【0204】
本願明細書に記述された技術を備えた携帯電話は、無線範囲内のあらゆる携帯電話に、短距離の相対的な位置を提供することが可能である。これは、店内、会館、モール、または人が迷子になる可能性のある場所で、同僚、友人、または家族の位置を特定するのに非常に有用となり得る。携帯電話の無線には種々のアルゴリズムを実行することが可能であり、GPS、基地局、または外部基準を必要とせずに、グループ内のメンバーに相対的な位置を独立に提供することが可能である。
【0205】
送受信兼用の無線機は、一般的に、システムがそれぞれのメンバーの相対的な位置を測定できる、独立した無線ネットワークを形成する。測距信号は、共通の狭帯域FM通信チャネルを占有することに留意されたい。通信プロトコルを適用して、時間または周波数分割、副搬送波、またはパイロットトーンを通じた、通信および測距情報を容易にすることができる。このようなシステムによって、無線機のグループは、互いの相対的な位置、あるいはリピータまたは基地局に対する位置を確認することができる。
【0206】
別の実施例では、(無線ルーターのような)技術をローカルエリアネットワークシステムに統合している。本システムは、既存の無線ルーターに統合することができ、ルーターに対して、UHFベースの追跡の実行よりも、大きな位置特定機能を提供する。
【0207】
上述のシステム自体は狭帯域測距システムであるが、ビデオまたは高速データのような広帯域伝送に適合させることもできる。このようなシステムは、測距に対して、時間または周波数において多重化してビデオまたはデータネットワークとするか、または特別なチャネル、副搬送波、またはパイロットトーンを有することが可能である。
【0208】
本システムは、アナログチャネルに対してDSPアルゴリズムを使用するので、その測距技術は、あらゆる無線機のファームウェアの一部とするか、またはアナログ、デジタル、またはソフトウェア規定無線に対するスタンドアロンのDSP測距技術とすることが可能である。
【0209】
別のアプリケーションは、正確な技術仕様(電力、エミッション、帯域幅など)を決定する。本発明は、FCCに示される6.25KHz、11.25KHz、12.5KHz、25KHz、および50KHzを含む、最も規制の厳しい帯域幅を含む多数の異なる帯域幅での動作を可能にし、また、適切なセクションの対応する技術的な要件に適合する。その結果、複数のFCCセクションおよびそのようなセクション内の免除を適用することができる。例えば、連邦規則(47 CFR Part 90)のプライベート陸上移動無線サービス(Private Land Mobile Radio Service)では、サブパートに準拠することで、FCCに準拠した本システムの動作を可能にすることができる。2つのサブパートでは、公安アプリケーションおよび工業/ビジネスアプリケーションを取り扱っている。公安用の帯域内では、本システムは、11.25KHzなどの帯域幅で動作できるので、(公安プール周波数テーブル:Public Safety Pool Frequency Tableに示された)帯域での動作が可能である。工業/ビジネス無線プール(Industrial/Business Radio
Pool)内では、本システムは、11.25KHzなどの帯域幅で動作できるので、(工業/ビジネスプール周波数テーブルに示された)帯域で動作するように、ライセンスを取得することが必要とされる要件を満たすことができる。
【0210】
サブパートF−無線標定サービス(Radiolocation Service)も用いることができる。このサブパートによって、スペクトル拡散および非スペクトル拡散アプリケーションが可能となる。一例として、ビジネスアプリケーションの場合、スペクトル拡散は、第90.103節に示された無線標定サービスとして用いることができる。公安アプリケーションも同様に、第90.20(f)に示された公安プール(サブパート5を参照のこと)の使用を可能にする。また、総合技術規格(General Technical Standard)では、6.25KHz、12.5KHz、25KHzおよび50KHzほどの狭さの帯域幅の使用を求めている。
【0211】
加えて、第90.217節は、出力を120ミリワットに制限するが、チャネル幅を25KHzに制限するという技術規格を免除している。本システムは、この節に完全準拠して動作することができる。加えて、第90.259節は、216〜220MHzおよび1427〜1432MHzの周波数を使用するために、工業/ビジネスプールに対して特定の資格を設けている。これにより、最高50KHzの連続的なチャネルを使用することができる。
【0212】
連邦規則(47 CFR Part 90)のプライベート陸上移動無線サービスでは、複数のサブパートに準拠することで、FCCに準拠した本システムの動作を可能にすることができる。一例として、サブパートA−汎用モバイル無線サービス(General
Mobile Radio Services)、サブパートB−ファミリ無線サービス(Family Radio Service)、サブパートG−低電力無線サービス(Low Power Radio Service)、サブパート−多目的無線サービス(Multi−Use Radio Service)を使用することができる。連邦規則(47 CFR Part 15)の無線周波数デバイス(Radio Frequency Devices)では、サブパートC−国際送信アンテナ(International Radiators)を使用することができる。これによって、全ての消費者に使用されるデバイスが可能となる。
【0213】
したがって、システムおよび方法の異なる実施形態を記述したが、当業者には、記述された方法および装置の特定の利益が達成されたことが明らかとなろう。特に、当業者には、物体の追跡および位置特定ためのシステムは、わずかなコストの増加で、FPGAまたはASICと、標準的な信号処理ソフトウェア/ハードウェアとの組み合わせを使用して組み立てることができることが明らかとなろう。このようなシステムは、例えば、屋内または屋外環境、過酷かつ不利な環境などにおける人の位置特定に有用である。
【0214】
また、種々の改良、改作、およびその別の実施形態は、本発明の範囲および趣旨の範囲内で行われるものと理解されたい。本発明は、以下の請求項によってさらに定義される。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】図1は、RFモバイル追跡および位置特定システムのマスタユニットのブロック図である。
【図2】図2は、RFモバイル追跡および位置特定システムのスレーブユニット(タグ)のブロック図である。
【図3】図3は、RFモバイル追跡および位置特定システムに使用される信号を示す図である。
【図4】図4は、図1および図2のマスタまたはスレーブユニットのFPGAのFIFO(first in−first out:先入れ先出し)バッファにおける信号の図である。
【図5】図5は、チャープ信号の相関処理を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFトランシーバを有し、タグにインターフェースして前記タグまでの距離を測定するように適合されたマスタユニットと、
RFトランシーバを有し、前記マスタユニットにインターフェースするように適合された前記タグと
を備えるRFベースの物体の追跡および位置特定のためのシステムであって、
前記マスタユニットの前記RFトランシーバおよび前記タグの前記RFトランシーバは、VHF帯域ほど高くない狭帯域幅信号を送受信するように構成される、システム。
【請求項2】
前記マスタユニットおよび前記タグは、半二重モードで動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マスタユニットおよび前記タグは、単信モードで動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記信号は、
RXベースバンド測距信号と、
RXベースバンド音声信号と
RXベースバンドデータ信号と
のうちのいずれかを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記信号は、デジタル信号処理(DSP)およびソフトウェア規定無線(SDR)技術を使用して処理される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記信号処理は、
コヒーレント加算と、
非コヒーレント加算と、
整合フィルタリングと、
インターパルス変調と、
ゼロ/π変調と、
ディザリングと、
マルチパス低減技術と、
適応等化−CMA(コンスタントモジュロアルゴリズム)と、
DFE(判定フィードバック等化)と、
ビタビアルゴリズムと、
マルチ周波数特性を使用したRFチャネルマルチパス(遅延)識別と、
カルマン推定と、
インパルス圧縮と、
スペクトル拡散と
の方法のうちのいずれかによるノイズ低減を含み、
TXおよびRX回路の伝搬遅延の測定および/または推定は、ループバック/自己試験技術を使用する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記マスタユニットと前記タグとの間の距離は、
到着時間(TOA)と、
差動到着時間(DTOA)と、
TOAおよびDTOAの組み合わせと
を含む追跡−位置特定−ナビゲート方法のうちのいずれかによって測定され、前記信号の伝搬遅延が追跡される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記マスタユニットおよびタグの役割は、逆にされる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記狭帯域幅信号は、異なる周波数において複数のパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記狭帯域幅信号は、同じ周波数において複数のパルスを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
複数のマスタユニットであって、それぞれがRFトランシーバを有し、タグにインターフェースして、前記複数のマスタユニットのそれぞれのマスタユニットから前記タグまでの距離を測定するように適合された、複数のマスタユニットと、
RFトランシーバを有し、前記複数のマスタユニットにインターフェースするように適合された前記タグと
を備えるRFベースの物体の追跡および位置特定のためのシステムであって、
前記マスタユニットの前記RFトランシーバおよび前記タグの前記RFトランシーバは、VHF帯域ほど高くない狭帯域幅信号を送受信するように構成される、システム。
【請求項12】
前記マスタユニットおよび前記タグは、VHF帯域の範囲以下の信号を送受信する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記マスタユニットのうちの1つは、単一の送信元リーダモードで動作し、他のマスタユニットは、衛星モードで動作し、および/またはいくつかのマスタユニットは、タグモードで動作する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記信号は、
RXベースバンド測距信号と、
RXベースバンド音声信号と、
RXベースバンドデータ信号と
のうちのいずれかを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記信号は、デジタル信号処理(DSP)およびソフトウェア規定無線(SDR)技術を使用して処理される、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
それぞれの衛星マスタユニットおよび/またはタグユニットは、第1および第2の測距信号シーケンスを受信し、前記第1の測距信号シーケンスは、前記送信元マスタユニットによって生成され、前記第2の測距信号シーケンスは、前記タグによって再伝送され、
それぞれの測距信号シーケンスは、別々に処理されて距離測定中に時間遅延を決定し、前記衛星マスタユニットのそれぞれは、前記測距信号のそれぞれに対する飛行時間を計算する、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1および第2の測距信号の前記飛行時間の間の差異が用いられることにより、前記マスタユニットに対する前記タグの位置を決定し、
マスタ−タグおよびマスタ−マスタの距離測定は、
到着時間(TOA)と、
差動到着時間(DTOA)と、
TOAおよびDTOAの組み合わせと
を含む、追跡−位置特定−ナビゲート方法のうちのいずれかを使用して行われる、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
狭帯域幅信号を、マスタユニットによって伝送し、タグによって受信するステップを含む、RFベースの物体の追跡および位置特定のための方法であって、
前記マスタユニットは前記タグにインターフェースするように適合されたRFトランシーバを有し、前記タグは前記マスタユニットにインターフェースするように適合されたRFトランシーバを有し、
前記マスタユニットの前記RFトランシーバおよび前記タグの前記RFトランシーバは、VHF帯域ほど高くない狭帯域幅信号を送受信して、前記マスタユニットと前記タグとの間の距離を測定する、方法。
【請求項19】
前記マスタユニットおよび前記タグは、VHF帯域の範囲以下の狭帯域幅信号を送受信する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記マスタユニットと前記タグとの間の距離は、
到着時間(TOA)と、
差動到着時間(DTOA)と、
前記TOAおよび前記DTOAの組み合わせと
を含む、追跡−位置特定−ナビゲート方法のうちのいずれかを使用して測定される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−520193(P2009−520193A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545984(P2008−545984)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/062133
【国際公開番号】WO2007/136419
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
2.Bluetooth
【出願人】(508173336)インビジトラック, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】