説明

SAWデバイス及びSAWモジュール

【課題】SAW素子をパッケージの内部実装面に接合するときに、接着剤が、IDTに対向する圧電基板の裏面に流出することを防止したSAWデバイスと、そのSAWデバイスを用いて小型化したSAWモジュールを提供する。
【解決手段】SAW共振子1は、パッケージ2の内部実装面に、圧電基板3の表面上に反射器4a、4bとIDT5とパッド電極6とからなる電極パターンを形成したSAW共振素子7を、接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAW共振子1は、パッケージ2の開口部を蓋部材9により気密封止した構造である。SAW共振素子7は、圧電基板3の裏面のIDT5が形成されている全領域に対向する面に、エッチング、或いは機械加工により所定の深さで凹部11を形成し、圧電基板3の基端部の厚肉部12aを片持ち状態にてパッケージ2の実装面に接着剤8を用いて接着接合した構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(Surface Acoustic Wave:以下、SAWと称す)デバイスとそれを用いたSAWモジュールに関し、特にSAWデバイスの周波数特性のバラツキを低減すると共に、小型化を図ったSAWモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、SAW共振子やSAWフィルタなどからなるSAWデバイスや、これらのSAWデバイスを用いて構成した、例えば、SAW発振器などのSAWモジュールは、移動体通信用端末や車載用機器等の部品として幅広く利用され、小型であること、Q値が高いこと、周波数温度特性が優れていることなどが強く要求されている。例えば、SAW共振子は、圧電基板上に形成したすだれ状電極(Interdigital Transducer:以下、IDTと称す)の両側に反射器を設け、外側に向かって伝搬する表面波を反射させてIDT部分に表面波エネルギーを閉じ込め、Qの高い共振特性を得るようにしたものである。
【0003】
図9に、SAW共振子に内蔵したSAW共振素子の構成を示す。SAW共振素子101は、圧電基板102と、当該圧電基板102の一主面に配置された一対の反射器103(103a、103b)と前記一対の反射器103の間に設けられたIDT104(104a、104b)とを形成する導電性パターンとから構成される。
圧電基板102は、圧電性を有する単結晶、例えば、水晶、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)などで構成する。
また、圧電基板102に配置される反射器103は、梯子型に形成される導電性パターンであり、圧電基板102上には弾性表面波の伝搬方向に、梯子状の電極部が直交するようにして配置する。
また、圧電基板102に配置されるIDT104は、信号の入力側となる電極と信号の出力側となる電極の2つを噛合わせるよう形成した導電性のパターンである。
【0004】
次に、上述したようなSAW共振素子101は、IDT104や反射器103を形成した電極パターン面(表面)を上面にして、裏面がパッケージの内部実装面(内部底面)に接着剤を用いて接合される。そして、パッケージの開口面を蓋部材にて気密封止してSAW共振子としている。このとき、接着剤が、IDT104に対向する圧電基板の裏面に流出すると、接着剤が収縮した際に、SAW共振素子101の表面に発生した応力がIDT104の電極パターンに変位を生じさせてしまい、共振周波数が変動するという問題がある。そこで、SAW共振素子101をパッケージの内部実装面に接着剤を用いて接合する場合、接着剤がIDT104に対向する圧電基板の裏面に流出しないように、SAW共振素子101の長辺方向の基端部のIDT104に対向しない裏面にのみに接着剤を塗布し、片持ち状態でSAW共振素子101をパッケージの内部実装面に接合する。また、SAW共振素子101の長辺方向の基端部と先端部のIDT104に対向しない裏面に接着剤を塗布し、両持ち状態でSAW共振素子101をパッケージの内部実装面に接合してもよい。
【0005】
図10は、従来のSAW共振子の長辺方向の断面図を示す。(a)に示したSAW共振子105は、パッケージ106にSAW共振素子101を接合した際に、SAW共振素子101の裏面の全面に接着剤107が流出している場合を示し、このような接合方法は、前述したように共振周波数が変動するという問題が生ずる。(b)に示したSAW共振子108は、SAW共振素子101を片持ち状態で接着剤107によりパッケージ106の内部実装面に接合した例を示す。また、(c)に示したSAW共振子109は、SAW共振素子101を両持ち状態で接着剤107、110によりパッケージ106の内部実装面に接合した例を示す。(b)、(c)に示した接合方法によれば、接着剤107、110が、IDT104に対向する圧電基板の裏面に流出し難くなる。
【特許文献1】特開2007−189430公報
【特許文献2】特開2000−286639公報
【特許文献3】特開2001−185954公報
【特許文献4】特開2006−5676公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のSAW共振子は、パッケージの内部実装面にSAW共振素子を接着剤を用いて、片持ち、或いは、両持ち状態で接合しても、パッケージの内部実装面に塗布する接着剤の量のバラツキや、SAW共振素子の接合位置のバラツキなどによって、接着剤が、IDTに対向する圧電基板の裏面に流出する可能性がある。そこで、接着剤が収縮した際に、IDTの電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を確実に防止するためには、さらなる対策が必要である。
この接着材が流出する可能性を低減するための従来の手段として、例えば、特許文献1により開示されたものがある。それによれば、SAW共振素子をパッケージの内部実装面に接合するために塗布する接着剤の位置よりもSAW共振素子の中心部側に、接着剤の流出を防止する手段として、パッケージの内部実装面に突起を設けている。この突起は、接合したSAW共振素子に接触しない程度の高さとし、接着剤がIDTに対向する圧電基板の裏面へ流れ込むのを防止する。
【0007】
また、特許文献1の他の手段としては、SAW共振素子をパッケージの内部実装面に接合するために塗布する接着剤の位置よりもSAW共振素子の中心部側に、接着剤の流出防止手段として、パッケージの内部実装面に溝部を設けている。従って、溝部を設けることにより、接着剤がIDTに対向する圧電基板の裏面へ流れ込むのを防止する。なお、従来の他の参考文献としては、特許文献2乃至4に示したものがあり、他の手法について説明している。
本発明は、上述したような問題を解決するためになされたものであって、SAW素子をパッケージの内部実装面に接合するときに、接着剤がIDTに対向する圧電基板の裏面に流出するのを防止したSAWデバイスと、そのSAWデバイスを用いたSAWモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係るSAWデバイスは、圧電基板の表面上に少なくともIDTが形成されたSAW素子と、SAW素子を収容するパッケージと、SAW素子の裏面とパッケージの内部実装面とを接合する接着剤と、を備え、圧電基板は、薄肉部と、薄肉部と一体に形成され薄肉部の肉厚よりも厚い厚肉部とを有し、IDTは薄肉部に形成され、厚肉部は圧電基板の裏面側に突出した突部を備え、厚肉部の突部とパッケージとを接着剤により接合したことを特徴とする。
このような本発明のSAWデバイスによれば、SAW素子の圧電基板の圧肉部の突部とパッケージとを接合したので、圧電基板の厚肉部に塗布された接着剤が、圧電基板の裏面のIDTと対向する領域に流出することはない。従って、SAWデバイスは、SAW素子を接合する接着剤が収縮した際に、SAW素子の表面に発生した応力がIDTの電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することができる。
【0009】
また、本発明に係るSAWデバイスは、SAW素子は、IDTを挟む位置に形成された一対の反射器を備え、一対の反射器の少なくとも一方は、厚肉部に形成されていることを特徴とする。
このような本発明のSAWデバイスによれば、一方の反射器が形成されている圧電基板の厚肉部とパッケージの内部実装面とを接着剤により接合するようにしたので、圧電基板の厚肉部に塗布された接着剤が、圧電基板の裏面のIDTと対向する領域に流出することはない。従って、SAWデバイスは、SAW素子を接合する接着剤が収縮した際に、SAW素子の表面に発生した応力がIDTの電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することができる。また、前記一対の反射器の少なくとも一方は、厚肉部に形成されているという構成により、SAW素子の接着剤による接合のための領域と反射器とを平面視して重なる状態で配置でき、SAW素子を小型にすることが可能となる。よって、SAWデバイス全体の平面サイズの小型化が可能となる。
【0010】
また、本発明に係るSAWデバイスは、他方の反射器は、薄肉部に形成されていることを特徴とする。
このような本発明のSAWデバイスによれば、一方の反射器が形成されている圧電基板の厚肉部とパッケージの内部実装面とを接着剤により接合するようにしたので、圧電基板の厚肉部に塗布された接着剤が、圧電基板の裏面のIDTと対向する領域に流出することはない。従って、SAWデバイスは、SAW素子を接合する接着剤が収縮した際に、SAW素子の表面に発生した応力がIDTの電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することができる。
【0011】
また、本発明に係るSAWデバイスは、SAW素子は、IDTを挟む位置に形成された一対の反射器を備え、反射器は厚肉部に形成されていることを特徴とする。
このような本発明のSAWデバイスによれば、SAW素子を両持ち状態でパッケージの内部実装面に接着接合できるので、前述した効果のほかに、耐衝撃特性に優れたSAWデバイスを実現することが出来る。
また、本発明に係るSAWデバイスは、圧電基板の表面上にIDTと、IDTを挟む位置に形成された一対の反射器とが形成されたSAW素子と、SAW素子を収容するパッケージと、SAW素子の裏面とパッケージとを接合する接着剤と、を備え、SAW素子は、圧電基板の裏面上における接着剤が塗布された領域と、平面視してIDTに重なる裏面上の領域との間に溝部を形成したことを特徴とする。
このような本発明のSAWデバイスによれば、SAW素子の圧電基板の裏面上における接着剤が塗布された領域と、平面視してIDTに重なる裏面上の領域との間に溝部を形成したので、圧電基板の一方の反射器に対向した裏面に塗布された接着剤が、圧電基板の裏面のIDTと対向する領域に流出することはない。従って、SAWデバイスは、SAW素子を接合する接着剤が収縮した際に、SAW素子の表面に発生した応力がIDTの電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することができる。
【0012】
また、本発明に係るSAWモジュールは、本発明のSAWデバイスと、SAWデバイスのパッケージの内部実装面と、圧電基板の薄肉部との間に実装される電子部品と、備えたことを特徴とする。
このような本発明のSAWモジュールによれば、電子部品をSAW素子の薄肉部に対向するパッケージの内部実装面に配置したので、小型で、平面サイズの小さいSAWモジュールが実現できる。また、SAW素子の周波数調整のため、SAW素子の表面上に形成された電極パターンの厚みを増減する際に、表面実装部品がSAW素子の裏面に配置されているので、例えば、プラズマなどを使用しても表面実装部品に悪影響を与えることがない。
また、本発明に係るSAWモジュールは、パッケージは、圧電基板の薄肉部と対向する内部実装面に凹所が形成され、凹所に前記電子部品が実装されていることを特徴とする。
このような本発明のSAWモジュールによれば、凹所内に電子部品を配置したので、高背な表面実装部品を搭載することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るSAW共振子の第1の実施形態を示す長辺方向の断面図である。SAW共振子1は、セラミックなどからなるパッケージ2の内部実装面に、圧電基板3の表面上に反射器4a、4bとIDT5とパッド電極6とからなる電極パターンを形成したSAW共振素子(SAW素子)7を、接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAW共振子1は、パッケージ2の開口部を蓋部材9により気密封止した構造である。また、パッケージ2の内部実装面には、パッド電極10が形成されており、SAW共振素子7に形成したパッド電極6との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、図示していないが、パッド電極10は、パッケージ2の裏面に設けた実装端子と接続されている。
第1の実施形態のSAW共振子1においては、IDT5に対向する圧電基板3の裏面領域を、エッチング、或いは機械加工により所定の深さの凹部11を形成し、圧電基板3の基端部の厚肉部12aを片持ち状態にてパッケージ2の内部実装面に接着剤8を用いて接合した構造である。つまり、圧電基板3は、IDT5と対向する裏面領域が薄肉部となっており、圧電基板3の厚肉部12aに塗布された接着剤8が、圧電基板3の裏面のIDT5と対向する領域に流出することはない。従って、SAW共振子1は、SAW共振素子7を接合する接着剤8が収縮した際に、SAW共振素子7の表面に発生した応力がIDT5の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することが出来る。
【0014】
次に、第1の実施形態の変形例を説明する。
図2は、本発明に係るSAW共振子の第1の実施形態の変形例を示す長辺方向の断面図である。図2は、第1の実施形態に係るSAW共振子の変形例であり、第1の実施形態と同様の構成部分に同一符号を付し、その説明を省略または簡略する。SAW共振子13は、第1の実施形態で説明したSAW共振素子7を、パッケージ2の内部実装面に両持ち状態で接着接合した点が異なる。SAW共振素子7は、圧電基板3の基端部の厚肉部12aに塗布された接着剤8と先端部の厚肉部12bに塗布された接着剤14とによりパッケージ2の内部実装面に接合されたので、耐衝撃性能に優れたSAW共振子を実現することができる。また、圧電基板3の基端部の厚肉部12aを接着する接着剤8は、エポキシ系などの硬質なものを使用し、圧電基板3の先端部の厚肉部12bを接着する接着剤14は、シリコン系などの軟質なものを使用することが望ましい。これは、SAW共振素子7を、圧電基板3の基端部の厚肉部12aと先端部の厚肉部12bの両者に接着剤を塗布してパッケージ2の内部実装面に接着接合すると、接着剤が凝固、収縮した際にSAW共振素子7に応力が加わりやすいので、一方の接着剤を軟質なものとして応力の分散を図り、SAW共振素子7への応力の影響を低減するためである。
【0015】
図3は、本発明に係るSAW共振子の第2の実施形態を示す長辺方向の断面図である。SAW共振子15は、セラミックなどからなるパッケージ2の内部実装面に、圧電基板16の表面上に反射器17a、17bとIDT18とパッド電極19とからなる電極パターンを形成したSAW共振素子20を、接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAW共振子15は、パッケージ2の開口部を蓋部材9により気密封止した構造である。また、パッケージ2の内部実装面には、パッド電極10が形成されており、SAW共振素子20に形成したパッド電極19との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、図示していないが、パッド電極10は、パッケージ2の裏面に設けた実装端子と接続されている。
【0016】
SAW共振子15においては、圧電基板16の裏面の反射器17aとパッド電極19と対向する基端部の領域を厚肉部21とし、それ以外の圧電基板16の裏面領域を薄肉部22となるように、エッチング、或いは機械加工により圧電基板16を加工した。そして、圧電基板16の厚肉部21を接着剤8によりパッケージ2の内部実装面に接合したことが特徴である。
従って、SAW共振子15においても、圧電基板16の厚肉部21に塗布された接着剤8が、圧電基板16の裏面のIDT18と対向する領域に流出することはない。従って、SAW共振子15は、SAW共振素子20を接合する接着剤8が収縮した際に、SAW共振素子20の表面に発生した応力がIDT18の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することが出来る。
【0017】
図4は、本発明に係るSAW共振子の第3の実施形態を示す長辺方向の断面図である。SAW共振子23は、セラミックなどからなるパッケージ2の内部実装面に、圧電基板24の表面上に反射器25a、25bとIDT26とパッド電極27とからなる電極パターンを形成したSAW共振素子28を、接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAW共振子23は、パッケージ2の開口部を蓋部材9により気密封止した構造である。また、パッケージ2の内部実装面には、パッド電極10が形成されており、SAW共振素子28に形成したパッド電極27との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、図示していないが、パッド電極10は、パッケージ2の裏面に設けた実装端子と接続されている。
SAW共振子23においては、SAW共振子23の圧電基板24の裏面上における接着8剤が塗布された領域と、平面視してIDT26に重なる裏面上の領域との間に溝部29を、エッチング、或いは機械加工により形成した。そして、圧電基板24の基端部30を接着剤8によりパッケージ2の内部実装面に接合した点に特徴がある。
従って、SAW共振子23においても、圧電基板24に溝部29を形成したことにより、圧電基板24の基端部30に塗布された接着剤8が、圧電基板24の裏面のIDT26と対向する領域に流出することはない。従って、SAW共振子23は、SAW共振素子28を接合する接着剤8が収縮した際に、SAW共振素子28の表面に発生した応力がIDT26の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することが出来る。
【0018】
次に、SAWデバイスの例として、反射器を備えていない構造の、例えば、SAWフィルタなどのSAWデバイスに、本発明を適応した例について説明する。
図5は、本発明に係るSAWフィルタの実施形態を示す長辺方向の断面図である。
SAWフィルタ31は、セラミックなどからなるパッケージ2の内部実装面に、圧電基板32の表面上にIDT33とパッド電極34とからなる電極パターンを形成したSAWフィルタ素子35を、接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAWフィルタ31は、パッケージ2の開口部を蓋部材9により気密封止した構造である。また、パッケージ2の内部実装面には、パッド電極10が形成されており、SAWフィルタ素子35に形成したパッド電極34との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、図示していないが、パッド電極10は、パッケージ2の裏面に設けた実装端子と接続されている。
【0019】
SAWフィルタ31においては、圧電基板32に反射器が形成されていないので、圧電基板32の裏面のIDT33が形成されていない基端部の裏面領域を厚肉部36とし、圧電基板32のIDT33と対向する先端部の裏面領域を薄肉部37となるように、エッチング、或いは機械加工により圧電基板32を加工した。そして、圧電基板32の厚肉部36を接着剤8によりパッケージ2の内部実装面に接合した点に特徴がある。
従って、SAWフィルタ31においても、圧電基板32の厚肉部36に塗布された接着剤8が、圧電基板32の裏面のIDT33と対向する領域に流出することはない。
従って、SAWフィルタ31は、SAWフィルタ素子35を接合する接着剤8が収縮した際に、SAWフィルタ素子35の表面に発生した応力がIDT33の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止することが出来る。
【0020】
次に、本発明に係るSAWデバイスを用いたSAWモジュールについて説明する。
以下に示す実施形態は、前述した本実施形態のSAW共振子を使用して構成したSAW発振器について説明している。
図6は、本発明に係るSAW発振器の第1の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
SAW発振器38は、セラミックなどからなるパッケージ39の内部実装面の所定の位置に、発振回路を構成するIC40を導電性接着剤41を用いて接合すると共に、前述した本実施形態のSAW共振素子7を、IC40がSAW共振素子7の凹部11に対向するよう接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、SAW発振器38は、パッケージ39の開口部を蓋部材42により気密封止した構造である。また、パッケージ39の内部実装面には、パッド電極43が形成されており、SAW共振素子7に形成したパッド電極6との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、パッド電極43は、IC40と接続し、更に、図示していないが、パッケージ39の裏面に設けた実装端子と接続されている。
【0021】
SAW発振器38は、SAW共振素子7の裏面に凹部11が形成されているので、この凹部11に対向するパッケージ39の内部実装面に発振回路などを構成するIC40を配置したことを特徴としている。
従って、SAW発振器38によれば、SAW共振素子7の表面に発生した応力がIDT5の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止すると共に、IC40をSAW共振素子7の凹部11に対向するパッケージ39の内部実装面に配置したので、小型で、平面サイズの小さいSAW発振器が実現できる。また、SAW共振素子7の周波数調整のため、SAW共振素子7の表面上に形成された電極パターンの厚みを増減する際に、IC40がSAW共振素子7の裏面に対向する位置に配置されているので、例えば、プラズマなどを使用してもIC40に悪影響を与えることがない。
なお、図示を省略するが、SAW共振素子7の接合方法については、図2において示したような両持ち状態で接合することも可能であり、上述した特徴に加えて、耐衝撃特性の優れたSAW発振器を構成することができる。
【0022】
図7は、本発明に係るSAW発振器の第2の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
SAW発振器44は、セラミックなどからなるパッケージ39の内部実装面に接合したSAW共振素子が、前述した本実施形態のSAW共振素子20であることが、第1の実施形態のSAW発振器38と異なる。そして、SAW共振素子20の薄肉部22に対向するパッケージ39の内部実装面には、発振回路を構成するIC40が、導電性接着剤41を用いて接合されている。また、パッケージ39の開口部は、蓋部材42により気密封止した構造である。更に、第1の実施形態のSAW発振器38と同様に、パッケージ39の内部実装面には、パッド電極43が形成されており、SAW共振素子20に形成したパッド電極19との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、パッド電極43は、IC40と接続し、更に、図示していないが、パッケージ39の裏面に設けた実装端子と接続されている。
従って、SAW発振器44によれば、SAW共振素子20の表面に発生した応力がIDT18の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止すると共に、IC40をSAW共振素子20の薄肉部22に対向するパッケージ39の内部実装面に配置したので、小型で、平面サイズの小さいSAW発振器が実現できる。また、SAW共振素子20の周波数調整のため、SAW共振素子20の表面上に形成された電極パターンの厚みを増減する際に、IC40がSAW共振素子20の裏面に対向する位置に配置されているので、例えば、プラズマなどを使用してもIC40に悪影響を与えることがない。
【0023】
図8は、本発明に係るSAW発振器の第3の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
SAW発振器45は、セラミックなどからなるパッケージ46の内部実装面の所定の位置に、所定の形状の凹所47を形成したことが第1の実施形態のSAW発振器38と異なる。そして、凹所47に、例えば、前述したIC40より高背の表面実装部品48などを配置し、導電性接着剤41を用いて接合すると共に、前述した本実施形態のSAW共振素子7を、表面実装部品48がSAW共振素子7に形成した凹部11と対向するよう接着剤8を用いて片持ち状態で接合している。そして、パッケージ46の開口部は、蓋部材49により気密封止した構造である。また、パッケージ46の内部実装面には、パッド電極50が形成されており、SAW共振素子7に形成したパッド電極6との間をワイヤボンディングにより接続している。そして、パッド電極50は、表面実装部品48と接続し、更に、図示していないが、パッケージ46の裏面に設けた実装端子と接続されている。
従って、SAW発振器45によれば、SAW共振素子7の表面に発生した応力がIDT5の電極パターンに変位を生じさせて共振周波数が変動するという問題を防止すると共に、パッケージ46の内部実装面の所定の位置に凹所47を形成したので、IC40より高背な表面実装部品48を凹所47内に配置可能となり、小型で、平面サイズの小さいSAW発振器が実現できる。また、SAW共振素子7の周波数調整のため、SAW共振素子7の表面上に形成された電極パターンの厚みを増減する際に、表面実装部品48がSAW共振素子7の裏面に対向する位置に配置されているので、例えば、プラズマなどを使用しても表面実装部品48に悪影響を与えることがない。
【0024】
なお、図示を省略するが、SAW共振素子7の接合方法については、図2において示したような両持ち状態で接合することも可能であり、上述した特徴に加えて、耐衝撃特性の優れたSAW発振器を構成することができる。また、SAW共振素子として図3に示したSAW共振素子20を使用することも可能である。
以上、各実施形態について、SAWデバイスはSAW共振子やSAWフィルタを、SAWモジュールはSAW発振器を例に説明したが、本発明は、他の機能のSAWデバイスやSAWモジュールについても適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るSAW共振子の第1の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図2】本発明に係るSAW共振子の第1の実施形態の変形例を示す長辺方向の断面図である。
【図3】本発明に係るSAW共振子の第2の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図4】本発明に係るSAW共振子の第3の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図5】本発明に係るSAWフィルタの実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図6】本発明に係るSAW発振器の第1の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図7】本発明に係るSAW発振器の第2の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図8】本発明に係るSAW発振器の第3の実施形態を示す長辺方向の断面図である。
【図9】SAW共振子に内蔵したSAW共振素子の構成を示す。
【図10】従来のSAW共振子の長辺方向の断面図を示す。
【符号の説明】
【0026】
1、13、15、23、31、 SAW共振子、2、39、46 パッケージ、3、16、24、32 圧電基板、4a、4b、17a、17b、25a、25b 反射器、5、18、26、33 IDT、6、10、19、27、34、43、50 パッド電極、7、20、28 SAW共振素子、8、14 接着剤、9、42、49 蓋部材、11 凹部、12a、12b、21、36 厚肉部、22、37 薄肉部、29 溝部、30 基端部、35 SAWフィルタ素子、38、44、45 SAW発振器、40 IC、41 導電性接着剤、47 凹所、48 表面実装部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の表面上に少なくともIDTが形成されたSAW素子と、
前記SAW素子を収容するパッケージと、
前記SAW素子の裏面と前記パッケージの内部実装面とを接合する接着剤と、
を備え、
前記圧電基板は、薄肉部と、前記薄肉部と一体に形成され前記薄肉部の肉厚よりも厚い厚肉部とを有し、
前記IDTは前記薄肉部に形成され、
前記厚肉部は前記圧電基板の前記裏面側に突出した突部を備え、
前記厚肉部の前記突部と前記パッケージとを前記接着剤により接合したことを特徴とするSAWデバイス。
【請求項2】
前記SAW素子は、前記IDTを挟む位置に形成された一対の反射器を備え、
前記一対の反射器の少なくとも一方は、前記厚肉部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項3】
前記他方の反射器は、前記薄肉部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のSAWデバイス。
【請求項4】
前記SAW素子は、前記IDTを挟む位置に形成された一対の反射器を備え、
前記反射器は前記厚肉部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のSAWデバイス。
【請求項5】
圧電基板の表面上にIDTと、前記IDTを挟む位置に形成された一対の反射器とが形成されたSAW素子と、
前記SAW素子を収容するパッケージと、
前記SAW素子の裏面と前記パッケージとを接合する接着剤と、
を備え、
前記SAW素子は、前記圧電基板の前記裏面上における前記接着剤が塗布された領域と、平面視して前記IDTに重なる前記裏面上の領域との間に溝部を形成したことを特徴とするSAWデバイス。
【請求項6】
請求項1乃至4に記載のSAWデバイスと、前記SAWデバイスの前記パッケージの前記内部実装面と、前記圧電基板の前記薄肉部との間に実装される電子部品と、備えたことを特徴とするSAWモジュール。
【請求項7】
前記パッケージは、前記圧電基板の前記薄肉部と対向する前記内部実装面に凹所が形成され、
前記凹所に前記電子部品が実装されていることを特徴とする請求項6に記載のSAWモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−159560(P2009−159560A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338561(P2007−338561)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】