TDC回路
【課題】解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができるTDC回路を提供する。
【解決手段】TDC回路1は、共通の構成を有する32個の単位セル110〜1131がリング状に接続されたリング部10等を備える。単位セル11は、第1インバータ回路111,第2インバータ回路112,スイッチSW0,スイッチSW1およびスイッチSW2を含む。第1インバータ回路111のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路112のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路111のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路112のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【解決手段】TDC回路1は、共通の構成を有する32個の単位セル110〜1131がリング状に接続されたリング部10等を備える。単位セル11は、第1インバータ回路111,第2インバータ回路112,スイッチSW0,スイッチSW1およびスイッチSW2を含む。第1インバータ回路111のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路112のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路111のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路112のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDC(Time-to-Digital Converter)回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の製造プロセスの技術の進展に伴って、回路の動作電圧は低下する一方で、回路の動作速度は急激に向上している。このことから、電圧についての解像度を利用する処理より、時間についての解像度を利用する処理が有効となってきている。従来ではアナログ回路により為されていた処理をデジタル回路で実現することで、より高性能・小面積・低消費電力の回路を構成することができる場合がある。例えば、PLL(Phase Lock Loop)回路については、デジタル回路で構成された完全デジタルPLL(ADPLL: All-Digital PLL)回路が数多く提案されている。
【0003】
TDC回路は、ADPLL回路の主要な一構成要素として用いられる他、時間を計測する機器の一構成要素として用いられる。TDC回路は、入力信号が指示する2つの時刻の間の時間をデジタル値として出力するものである。TDC回路の性能はADPLL回路の出力ジッタ等の性能に影響を及ぼすので、TDC回路の高精度化が要求されている。このことから、様々な構成のTDC回路が提案されている。
【0004】
例えば、バーニア(Vernier)型TDC回路は、一定の遅延時間τ1の複数個の遅延回路が縦列接続された第1遅延ラインと、一定の遅延時間τ2の複数個の遅延回路が縦列接続された第2遅延ラインと、複数個のDフリップフロップを備える。ただし、τ1≠τ2である。バーニア型TDC回路では、第1遅延ラインの第n段の遅延回路の出力端は第n段のDフリップフロップのD入力端子に接続され、また、第2遅延ラインの第n段の遅延回路の出力端は第n段のDフリップフロップのクロック入力端子に接続される。
【0005】
バーニア型TDC回路は、第1遅延ラインの初段の遅延回路に第1信号を入力し、第2遅延ラインの初段の遅延回路に第2信号を入力して、複数個のDフリップフロップそれぞれの出力値に基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として得ることができる。このバーニア型TDC回路の時間測定の解像度は、遅延時間τ1と遅延時間τ2との差Δτに応じたものとなる。
【0006】
また、非特許文献1には、パルス消失(Pulse-Shrinking)型TDC回路が提案されている。パルス消失型TDC回路は、入力パルス信号の立上り時刻と立下り時刻との間の時間(すなわち、パルス幅)をデジタル値として出力するものである。パルス消失型TDC回路は、NAND回路と複数のインバータ回路とがリング状に接続された構成を有している。NAND回路は、そのリングへパルス信号を導入する為に設けられている。
【0007】
パルス消失型TDC回路では、インバータ回路とNAND回路との間で立上り遅延時間および立下り遅延時間が異なっていることから、NAND回路を介してパルス信号がリングへ導入されると、その信号がリングを伝搬していく間にパルス幅が変化していき、やがてパルスが消失する。パルス消失型TDC回路は、リング状に接続された複数のインバータ回路のうちの何れかのインバータ回路から出力されるデータのレベル遷移事象を計数することで、入力パルス信号のパルス幅をデジタル値として得ることができる。このパルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は、インバータ回路とNAND回路との間での立上り遅延時間および立下り遅延時間の差に応じたものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Poki Chen, Shen-Iuan Liu, and Jingshown Wu, "A CMOSPulse-Shrinking Delay Element For Time Interval Measurement," IEEETRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS-II: ANALOG AND DIGITAL SIGNAL PROCESSING,VOL.47, NO.9, pp.954-958, 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バーニア型TDC回路は、理論上では、遅延時間τ1と遅延時間τ2との差Δτを小さくすれば、バーニア型TDC回路における時間測定の解像度を小さくすることができる。しかし、実際の製造プロセスでは遅延回路の遅延時間τ1,τ2にばらつきが存在することから、時間測定の解像度を小さくする為に遅延時間差Δτを小さく設計すると、遅延時間τ1と遅延時間τ2との大小関係が設計と実際とで逆転することがある。したがって、バーニア型TDC回路で実際に実現することができる時間測定の解像度としては数ps程度が限界である。
【0010】
一方、パルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は、インバータ回路とNAND回路との間での立上り遅延時間および立下り遅延時間の差に応じたものとなるが、立上り遅延時間はPMOSトランジスタの性能に依存するのに対して、立下り遅延時間はNMOSトランジスタの性能に依存するので、特にPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間で独立な特性ばらつきが生じたときには、時間測定の分解能への影響が大きい。時間測定の解像度を小さくする為に遅延時間差を小さく設計すると、遅延時間の大小関係が設計と実際とで逆転することがある。したがって、パルス消失型TDC回路で実際に実現することができる時間測定の解像度を小さくするにも限界がある。非特許文献1に記載されたパルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は68psである。
【0011】
また、パルス消失型TDC回路におけるリングは、複数のインバータ回路のみから構成された均一なものではなく、NAND回路も挿入されていることにより不均一なものとなっている。したがって、複数のインバータ回路それぞれから出力されるデータのレベル遷移事象を計数することで解像度を小さくしようとしても、入力パルス信号のパルス幅に対して出力デジタル値は非線形となる。
【0012】
さらに、パルス消失型TDC回路では、入力パルス信号は、NAND回路を介してインバータ回路リングに導入されることから、その導入の際にNAND回路を通過する為に所定幅(数百ps程度)以上のパルス幅を有することが必要である。したがって、測定可能な時間に同程度のオフセットが必要となる。
【0013】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができるTDC回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のTDC回路は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、リング部および計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備える。
【0015】
複数個の単位セルそれぞれは、(1) 前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端と、後段の単位セルへデータを出力する出力端と、入力端から出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路,第2インバータ回路およびスイッチSW0と、出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW1と、出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW2とを含み、(2) 自段の単位セルの入力端が前段の単位セルの出力端と接続され、自段の単位セルの出力端が後段の単位セルの入力端と接続されて、リング状に接続され、(3) 第1インバータ回路および第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0016】
このとき、制御部は、(1) 第1段階において、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW0のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0を選択的にオフ状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW1のうち第1単位セルのスイッチSW1を選択的にオン状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW2のうち第2単位セルのスイッチSW2を選択的にオン状態とし、(2) 第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作を開始させ、第1信号が指示する第1時刻以前に第1単位セルのスイッチSW1をオフ状態に転じさせ、第1時刻に第1単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせ、第2信号が指示する第2時刻以前に第2単位セルのスイッチSW2をオフ状態に転じさせ、第2時刻に第2単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせる。
【0017】
或いは、複数個の単位セルそれぞれは、(1) 前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端および第2入力端と、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端および第2出力端と、第2入力端から第1出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路およびスイッチSW10と、第1入力端から第2出力端へ向かって順に設けられた第2インバータ回路およびスイッチSW20と、第1出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW11と、第1出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW12と、第2出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW21と、第2出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW22とを含み、(2) 第1インバータ回路および第2インバータ回路を含んで差動バッファを構成しており、(3) 自段の単位セルの第1入力端が前段の単位セルの第1出力端と接続され、自段の単位セルの第2入力端が前段の単位セルの第2出力端と接続され、自段の単位セルの第1出力端が後段の単位セルの第1入力端と接続され、自段の単位セルの第2出力端が後段の単位セルの第2入力端と接続されて、リング状に接続され、(4) 第1インバータ回路および第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0018】
このとき、制御部は、(1) 第1段階において、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20を選択的にオフ状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW11,SW22のうち第1単位セルのスイッチSW11,SW22を選択的にオン状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW12,SW21のうち第2単位セルのスイッチSW12,SW21を選択的にオン状態とし、(2) 第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作を開始させ、第1信号が指示する第1時刻以前に第1単位セルのスイッチSW11,SW22をオフ状態に転じさせ、第1時刻に第1単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせ、第2信号が指示する第2時刻以前に第2単位セルのスイッチSW12,SW21をオフ状態に転じさせ、第2時刻に第2単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせる。
【0019】
本発明のTDC回路では、計数部は、複数個の単位セルのうちの何れか1個の単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに複数個の単位セルのうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたデジタル値を出力するのが好適である。
【0020】
本発明のTDC回路では、複数個の単位セルそれぞれにおいて、第1インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含み、第2インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含み、半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。このとき、複数個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、複数個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。
【0021】
また、本発明のTDC回路では、複数個の単位セルそれぞれが、第1インバータ回路に対して並列的に設けられた第1トライステートインバータ回路と、第2インバータ回路に対して並列的に設けられた第2トライステートインバータ回路とを更に含むのが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のTDC回路は、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のTDC回路1の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態のTDC回路1に含まれる単位セル11の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態のTDC回路1における第1段階終了時点での32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0,SW1,SW2の各状態の一例を示す図表である。
【図4】第1実施形態のTDC回路1における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態のTDC回路1における計数部20の動作例を説明する図である。
【図6】第2実施形態のTDC回路2のリング部40の構成を示す図である。
【図7】第2実施形態のTDC回路2に含まれる単位セル41の構成を示す図である。
【図8】第2実施形態のTDC回路2における第1段階終了時での32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20,SW11,SW12,SW21,SW22の各状態の一例を示す図表である。
【図9】第2実施形態のTDC回路2における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの構成を示す図である。
【図11】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aのレイアウト例を説明する図である。
【図12】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの他のレイアウト例を説明する図である。
【図13】単位セル41の第2変形例である単位セル41Bの構成を示す図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す図である。
【図15】シミュレーションの結果を示す図である。
【図16】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、第1実施形態のTDC回路1の構成を示す図である。第1実施形態のTDC回路1は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するものであって、リング部10および計数部20、ならびに、これらリング部10および計数部20それぞれの動作を制御する制御部30を備える。
【0026】
リング部10は、共通の構成を有する32個の単位セル110〜1131がリング状に接続されたものである。リング部10において、単位セル110の出力端は単位セル1131の入力端に接続されている。単位セル11nの出力端は単位セル11n−1の入力端に接続されている。ただし、nは1以上31以下の各整数である。なお、本実施形態ではリング部10に含まれる単位セルの個数を32とするが、本発明は単位セルの個数が2以上であればよい。
【0027】
計数部20は、32個の単位セル110〜1131のうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する。計数部20は、カウンタ21およびエッジ検出部221〜2231を含む。
【0028】
カウンタ20は、Dフリップフロップ230〜237およびインバータ240〜247を含み、リップルカウンタを構成している。カウンタ21は、単位セル110の出力端から出力されるデータのレベル遷移事象(例えば、ローレベルからハイレベルに転じる事象である立上りエッジ)を計数して、その計数結果であるデジタル値D[7:0]を出力する。
【0029】
エッジ検出部221〜2231は共通の構成を有する。各エッジ検出部22nは、Dフリップフロップ25,インバータ26およびセレクタ27を含む。Dフリップフロップ25は、カウンタ20に含まれるDフリップフロップ230と共通の構成を有する。各エッジ検出部22nにおいて、Dフリップフロップ25は、対応する単位セル11nの出力されるデータをクロック入力端子に入力し、Q出力端子から出力されたデータがインバータ26により論理反転されたものをD入力端子に入力する。また、各エッジ検出部22nにおいて、セレクタ27は、カウンタ21から出力されるデジタル値の最下位ビットのデータD[0]が値0であるときに、Dフリップフロップ25のQ出力端子から出力されるデータを出力値T[n]として出力し、一方、データD[0]が値1であるときには、インバータ26から出力されるデータを出力値T[n]として出力する。
【0030】
図2は、第1実施形態のTDC回路1に含まれる単位セル11の構成を示す図である。なお、32個の単位セル110〜1131は共通の構成を有しているので、そのうちの任意のものを単位セル11と呼ぶ。
【0031】
単位セル11は、前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端11inと、後段の単位セルへデータを出力する出力端11outとを有する。また、単位セル11は、第1インバータ回路111,第2インバータ回路112,スイッチSW0,スイッチSW1およびスイッチSW2を含み、また、ダミーのスイッチSW0d,スイッチSW1dおよびスイッチSW2dを更に含むのが好適である。
【0032】
第1インバータ回路111,第2インバータ回路112およびスイッチSW0は、入力端11inから出力端11outへ向かって順に設けられている。スイッチSW1は、出力端11outと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW2は、出力端11outと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。スイッチSW1dは、第1インバータ回路111の出力端と第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW2dは、第1インバータ回路111の出力端と第2基準電位端Vssとの間に設けられている。ただし、Vdd>Vss である。
【0033】
スイッチSW0は、互いに並列的に接続されたPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成され、これらPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが同時にオン状態とされ或いは同時にオフ状態とされる。スイッチSW1およびSW1dそれぞれは、PMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。また、スイッチSW2およびSW2dそれぞれは、NMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。ダミーのスイッチSW1dおよびスイッチSW2dは、第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれの負荷を互いに等しくするために設けられたものであって、常時オフ状態とされる。また、ダミーのスイッチSW0dは常時オン状態とされる。
【0034】
各単位セル11において、自段の単位セルの入力端11inが前段の単位セルの出力端11outと接続され、自段の単位セルの出力端11outが後段の単位セルの入力端11inと接続される。これにより、32個の単位セル110〜1131はリング状に接続される。
【0035】
第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれは、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路である。第1インバータ回路111のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路112のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路111のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路112のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0036】
このように構成される単位セル11では、スイッチSW0がオン状態であってスイッチSW1,SW2がオフ状態であるとき、入力端11inにパルスが入力されると、パルス幅が一定量だけ変化したパルスが出力端11outから出力される。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さいことから、入力端11in入力時のパルスに対する出力端11out出力時のパルスのパルス幅変化に対して、第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれは共に増加または共に減少の寄与をする。共通の構成を有する単位セル110〜1131がリング状に接続されているから、パルスが各単位セルを通過する度にパルス幅は一定量Δだけ変化し、また、パルスがリングを1巡回する度にパルス幅は一定量32Δだけ変化する。
【0037】
次に、リング部10および計数部20それぞれの動作について説明する。以下に説明する動作は制御部30による制御の下に行われる。
【0038】
第1段階において、32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0のうち、何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0が選択的にオフ状態とされ、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW0がオン状態とされる。32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW1のうち、第1単位セルのスイッチSW1が選択的にオン状態とされ、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW1がオフ状態とされる。また、32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW2のうち、第2単位セルのスイッチSW2が選択的にオン状態とされ、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW2がオフ状態とされる。
【0039】
もし、32個の単位セル110〜1131のうち第1単位セルおよび第2単位セルとして選ばれるものが固定であるならば、制御部30により制御されることなく、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW0が常にオン状態とされていてもよいし、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW1が常にオフ状態とされていてもよいし、また、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW2が常にオフ状態とされていてもよい。
【0040】
図3は、第1実施形態のTDC回路1における第1段階終了時での32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0,SW1,SW2の各状態の一例を示す図表である。ここでは、第1単位セルを単位セル1115とし、第2単位セルを単位セル1131とした。以降では、これを前提として説明を続ける。
【0041】
同図には、32個の単位セル110〜1131それぞれの出力端11outから出力されるデータのレベルも示されている。16個の単位セル110〜1115それぞれの出力端11outから出力されるデータは1レベルとなり、16個の単位セル1116〜1131それぞれの出力端11outから出力されるデータは0レベルとなる。
【0042】
また、第1段階において、計数部20のカウンタ21に含まれるDフリップフロップ230〜237それぞれがリセットされ、エッジ検出部221〜2231それぞれに含まれるDフリップフロップ25それぞれがリセットされる。
【0043】
第1段階に続く第2段階において、計数部20による計数動作が開始される。また、図4に示されるように、第1信号が指示する第1時刻t1以前に第1単位セル1115のスイッチSW1がオフ状態に転じ、第1時刻t1に第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じる。また、第2信号が指示する第2時刻t2以前に第2単位セル1131のスイッチSW2がオフ状態に転じ、第2時刻t2に第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じる。例えば、第1信号が指示する第1時刻t1は第1信号の立上りエッジの時刻であり、第2信号が指示する第2時刻t2は第1信号の立上りエッジの時刻である。図4は、第1実施形態のTDC回路1における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。この図では、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間をTdiffと表記している。
【0044】
第1単位セル1115のスイッチSW1と第2単位セル1131のスイッチSW2とは同時にオフ状態に転じてもよい。第1時刻t1に、第1単位セル1115のスイッチSW1がオフ状態に転じると同時に、第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じてもよい。また、第2時刻t2に、第2単位セル1131のスイッチSW2がオフ状態に転じると同時に、第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じてもよい。
【0045】
なお、第1単位セル1115において、スイッチSW1がオフ状態に転じた後であってスイッチSW0がオン状態に転じる前の期間では、出力端11outはハイインピーダンス状態であるが、暫くの間は1レベルの出力が維持されているので、その間にスイッチSW0がオン状態に転じる。第2単位セル1131においても同様である。
【0046】
第1段階終了時には、出力データがレベル1である単位セルの個数、および、出力データがレベル0である単位セルの個数は、共に16個である。第1時刻t1に第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じると、この第1単位セル1115およびこれ以降の単位セルの出力データが順次に0レベルに転じていく。また、第2時刻t2に第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じると、この第2単位セル1131およびこれ以降の単位セルの出力データが順次に1レベルに転じていく。
【0047】
もし、第1信号が指示する第1時刻t1と第2信号が指示する第2時刻t2とが互いに同じであれば、その時刻直後では、出力レベル1である単位セルの個数、および、出力レベル0である単位セルの個数は、共に16個である。第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻の直後では、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffに応じたものである。なお、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、リングを巡回するパルスの初期幅に対応する。
【0048】
第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻より以降では、このようなパルスが、リング状に接続された32個の単位セル110〜1131を巡回する。このパルスが巡回して行くに従って、パルス幅は単調に増加または減少していき、やがて、パルスが消滅する。このパルス消滅まで、単位セル110の出力端11outから出力されるデータの立上りエッジがカウンタ21により計数されて、計数結果であるデジタル値D[7:0]が得られる。パルス1巡回当りのパルス幅の変化量32Δが一定であるので、デジタル値D[7:0]は、当初のパルス幅に応じたものであり、ひいては、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたものである。
【0049】
ここで、リング部10を構成する単位セルの個数をNとし、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffを0として、上記のような動作を行ったときに、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数をM0とし、パルス消滅までに要する時間をTinitとすると、これらのパラメータの間に下記(1)式の関係が成り立つ。
Tinit=N・Δ・M0 …(1)
【0050】
また、第1時刻t1と第2時刻t2との間の任意の時間Tdiffに対し、上記のような動作を行ったときに、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数をMとすると、これらのパラメータの間に下記(2)式の関係が成り立つ。
Tinit−Tdiff=N・Δ・M …(2)
【0051】
上記(1)式および(2)式から下記(3)式が得られる。
Tdiff=N・Δ(M0−M) …(3)
【0052】
αp=αn=α とすると、立上り遅延時間tdrと立下り遅延時間tdfとの間には下記(4)式の関係があり、これを用いると上記(3)式は下記(5)式で表される。
Δ=tdr−tdf=(α−1)tdf …(4)
Tdiff=N・(α−1)tdf(M0−M) …(5)
【0053】
この(5)式から判るように、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数M(すなわち、カウンタ21による計数結果であるデジタル値D[7:0])から、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffが得られる。
【0054】
時間計測の解像度を向上させるために、計数部20は、単位セル110から出力されるデータのレベル遷移事象をカウンタ21により計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに32個の単位セル110〜1131のうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間Tdiffに応じたデジタル値を出力するのが好適である。図1に示された構成では、各単位セル11nから出力されるデータのレベル遷移状況がエッジ検出部22nにより検出される。nは1以上31以下の各整数である。
【0055】
図5は、第1実施形態のTDC回路1における計数部20の動作例を説明する図である。なお、ここでは、図示および説明の便宜のために、リングを構成する単位セルの個数Nを6とし、各基本セルにおける立上り遅延時間と立下り遅延時間との差を無視して、各基本セル11の出力、各エッジ検出部22のDフリップフロップ25の出力、および、各エッジ検出部22のセレクタ27の出力、を纏めた。単位セル112を第1単位セルとし、単位セル115を第2単位セルとして、第1段階終了時点では、単位セル110〜112の出力レベルを1とし、単位セル115〜113の出力レベルを0とした。1単位セル分のパルス移動をパルス移動量1としている。
【0056】
この図に示されるように、パルスが1巡回する度に、カウンタ21の出力は値1だけ大きくなる。パルスが丁度m巡回した時点では、全てのエッジ検出部225〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。パルスが丁度m巡回した後に更に1単位セル分だけ移動した時点では、1個のエッジ検出部225のセレクタ27の出力値は1であり、他のエッジ検出部224〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。パルスが丁度m巡回した後に更に2単位セル分だけ移動した時点では、2個のエッジ検出部225〜224のセレクタ27の出力値は1であり、他のエッジ検出部223〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。以降も同様にして、各エッジ検出部22nのセレクタ27の出力値は変化していき、パルスが丁度m巡回した後に更に5単位セル分だけ移動した時点では、全てのエッジ検出部225〜221のセレクタ27の出力値は1である。
【0057】
以上のように、各エッジ検出部22nの出力値T[n]は thermometer code となっている。計数部20は、カウンタ21による計数結果であるデジタル値D[7:0]を出力するとともに、各エッジ検出部22nの出力値T[n]をも出力する。パルス消失時点で、デジタル値D[7:0] に基づいてパルスがM巡回したことが判り、さらに、値T[5]〜T[1]に基づいてM巡回後のパルス移動量が判る。このように、計数部20がカウンタ21に加えてエッジ検出部22を含むことにより、時間計測の解像度を向上させることができる。
【0058】
第1実施形態のTDC回路1におけるリング部10は、共通の構成を有する複数の単位セル11がリング状に接続されたものであって、各単位セル11に含まれる2個のインバータ回路111,112を構成するPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタそれぞれのゲート幅比αp,αnに応じた解像度で時間測定をすることができる(上記(5)式)。これら4個のトランジスタは、半導体基板上に形成される際に互いに近い領域に形成され、ゲート幅比が比較的高精度に設計どおりに実現され得る。また、半導体基板上の位置によってプロセス条件が幾らか異なるとしても、4個のトランジスタの間の配置関係によっては、ゲート幅比αpの誤差に因る解像度の変動とゲート幅比αnの誤差に因る解像度の変動とを互いに相殺させることができる。したがって、このTDC回路1は、所望の解像度を高精度に実現することができ、時間測定の解像度を小さくすることができる。
【0059】
また、第1実施形態のTDC回路1におけるリング部10は、共通の構成を有する複数の単位セル11がリング状に接続されたものであって、このリングの途中に他の回路が挿入されることはない。また、各単位セル11の出力端は、後段の単位セルの入力端およびDフリップフロップのクロック端子に接続され、共通の負荷を有している。このことから、パルスが1単位セルを通過する度に受けるパルス幅変動は一定である。したがって、このTDC回路1は、計数部20がカウンタ21に加えてエッジ検出部エッジ検出部221〜2231を備えることにより、パルス消失時点で、デジタル値D[7:0] に基づいてパルスがM巡回したことが判り、さらに、値T[5]〜T[1]に基づいてM巡回後のパルス移動量が判り、時間Tdiffに対して線形な計数結果を得ることができるので、所望の解像度を更に高精度に実現することができ、時間計測の解像度を更に小さくすることができる。
【0060】
さらに、第1実施形態のTDC回路1は、非特許文献1に記載されたTDC回路の如くリング部へパルスを入力するのではなく、第1段階においてリング部10の単位セル110〜1131の各スイッチを初期設定した後に、第2段階において単位セル110〜1131のうちの第1単位セルのスイッチSW0を第1時刻t1にオン状態とするとともに第2単位セルのスイッチSW0を第2時刻t2にオン状態とすることで、時間Tdiffに応じた初期パルス幅を有するパルスがリングを巡回し始める。したがって、このTDC回路1は、非特許文献1に記載されたTDC回路の如く測定可能な時間にオフセットを必要とすることなく、時間Tdiffが短くても、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができる。
【0061】
次に、第2実施形態のTDC回路2について説明する。第2実施形態のTDC回路2は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するものであって、第1実施形態におけるリング部10に替えてリング部40を備え、また、計数部および制御部を備える。第2実施形態における計数部は、第1実施形態における計数部と同様の構成を有する。
【0062】
図6は、第2実施形態のTDC回路2のリング部40の構成を示す図である。なお、同図では計数部および制御部の図示が省略されている。リング部40は、共通の構成を有する32個の単位セル410〜4131がリング状に接続されたものである。リング部40において、単位セル410の出力端は単位セル4131の入力端に接続されている。単位セル41nの出力端は単位セル41n−1の入力端に接続されている。ただし、nは1以上31以下の各整数である。
【0063】
図7は、第2実施形態のTDC回路2に含まれる単位セル41の構成を示す図である。なお、32個の単位セル410〜4131は共通の構成を有しているので、そのうちの任意のものを単位セル41と呼ぶ。第1実施形態では各単位セル11はシングルエンド信号を入出力したのに対して、第2実施形態では各単位セル41は差動信号を入出力する。
【0064】
単位セル41は、前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端41inpおよび第2入力端41innと、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端41outpおよび第2出力端41outnとを有する。また、単位セル41は、第1インバータ回路411,第2インバータ回路412,インバータ回路413,インバータ回路414,スイッチSW10,スイッチSW11,スイッチSW12,スイッチSW20,スイッチSW21およびスイッチSW22を含む。
【0065】
第1インバータ回路411およびスイッチSW10は、第2入力端41innから第1出力端41outpへ向かって順に設けられている。第2インバータ回路412およびスイッチSW20は、第1入力端41inpから第2出力端41outnへ向かって順に設けられている。スイッチSW11は、第1出力端41outpと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW12は、第1出力端41outpと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。スイッチSW21は、第2出力端41outnと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW22は、第2出力端41outnと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。ただし、Vdd>Vss である。
【0066】
スイッチSW10およびスイッチSW20それぞれは、互いに並列的に接続されたPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成され、これらPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが同時にオン状態とされ或いは同時にオフ状態とされる。スイッチSW11およびスイッチSW21それぞれは、PMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。また、スイッチSW12およびスイッチSW22それぞれは、NMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。
【0067】
インバータ回路413の入力端は第2インバータ回路412に出力端に接続され、インバータ回路413の出力端は第1インバータ回路411に出力端に接続されている。インバータ回路414の入力端は第1インバータ回路411に出力端に接続され、インバータ回路414の出力端は第2インバータ回路412に出力端に接続されている。インバータ回路411〜413は差動バッファを構成している。
【0068】
各単位セル41において、自段の単位セルの第1入力端41inpが前段の単位セルの第1出力端41outpと接続され、自段の単位セルの第2入力端41innが前段の単位セルの第2出力端41outnと接続され、自段の単位セルの第1出力端41outpが後段の単位セルの第1入力端41inpと接続され、自段の単位セルの第2出力端41outnが後段の単位セルの第2入力端41innと接続される。これにより、32個の単位セル410〜4131はリング状に接続される。
【0069】
第1インバータ回路411および第2インバータ回路412それぞれは、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路である。第1インバータ回路411のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路412のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路412のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路411のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0070】
このように構成される単位セル41では、スイッチSW10,SW20がオン状態であってスイッチSW11,SW12,SW21,SW22がオフ状態であるとき、入力端41inp,41innに差動信号のパルスが入力されると、パルス幅が一定量だけ変化した差動信号のパルスが出力端41outp,41outntから出力される。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さいことから、入力時のパルスに対する出力時のパルスのパルス幅変化に対して、第1インバータ回路411および第2インバータ回路412それぞれは共に増加または共に減少の寄与をする。共通の構成を有する単位セル410〜4131がリング状に接続されているから、パルスが各単位セルを通過する度にパルス幅は一定量Δだけ変化し、また、パルスがリングを1巡回する度にパルス幅は一定量32Δだけ変化する。
【0071】
次に、リング部40および計数部それぞれの動作について説明する。以下に説明する動作は制御部による制御の下に行われる。
【0072】
第1段階において、32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20のうち、何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20が選択的にオフ状態とされ、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW10,SW20がオン状態とされる。32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW11,SW22のうち、第1単位セルのスイッチSW11,SW22が選択的にオン状態とされ、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW11,SW22がオフ状態とされる。また、32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW12,SW21のうち、第2単位セルのスイッチSW12,SW21が選択的にオン状態とされ、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW12,SW21がオフ状態とされる。
【0073】
もし、32個の単位セル410〜4131のうち第1単位セルおよび第2単位セルとして選ばれるものが固定であるならば、制御部により制御されることなく、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW10,SW20が常にオン状態とされていてもよいし、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW11,SW22が常にオフ状態とされていてもよいし、また、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW12,SW21が常にオフ状態とされていてもよい。
【0074】
図8は、第2実施形態のTDC回路2における第1段階終了時での32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20,SW11,SW12,SW21,SW22の各状態の一例を示す図表である。ここでは、第1単位セルを単位セル4115とし、第2単位セルを単位セル4131とした。以降では、これを前提として説明を続ける。
【0075】
同図には、32個の単位セル410〜4131それぞれの出力端から出力される差動信号のレベルも示されている。16個の単位セル410〜4115それぞれの出力端から出力される差動信号は1レベルとなり、16個の単位セル4116〜4131それぞれの出力端から出力される差動信号は0レベルとなる。
【0076】
第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作が開始される。また、図9に示されるように、第1信号が指示する第1時刻t1以前に第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22がオフ状態に転じ、第1時刻t1に第1単位セル4115のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。また、第2信号が指示する第2時刻t2以前に第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21がオフ状態に転じ、第2時刻t2に第2単位セル4131のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。例えば、第1信号が指示する第1時刻t1は第1信号の立上りエッジの時刻であり、第2信号が指示する第2時刻t2は第1信号の立上りエッジの時刻である。図9は、第2実施形態のTDC回路2における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。この図では、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間をTdiffと表記している。
【0077】
第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22と第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21とは同時にオフ状態に転じてもよい。第1時刻t1に、第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22がオフ状態に転じると同時に、第1単位セル4115のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じてもよい。また、第2時刻t2に、第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21がオフ状態に転じると同時に、第2単位セル4131のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じてもよい。
【0078】
なお、第1単位セル3115において、スイッチSW11,SW22がオフ状態に転じた後であってスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる前の期間では、出力端41outp,41outnはハイインピーダンス状態であるが、暫くの間は1レベルの出力が維持されているので、その間にスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。第2単位セル4131においても同様である。
【0079】
以降の動作は第1実施形態の場合と同様である。第2実施形態では、第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻の直後では、出力差動信号がレベル1である単位セルの個数と出力差動信号がレベル0である単位セルの個数との差は、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffに応じたものである。なお、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、リングを巡回するパルスの初期幅に対応する。
【0080】
第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻より以降では、このようなパルスが、リング状に接続された32個の単位セル410〜4131を巡回する。このパルスが巡回して行くに従って、パルス幅は単調に増加または減少していき、やがて、パルスが消滅する。このパルス消滅まで、単位セル410の出力端から出力されるデータの立上りエッジがカウンタ21により計数されて、計数結果であるデジタル値D[7:0]が得られる。パルス1巡回当りのパルス幅の変化量32Δが一定であるので、デジタル値D[7:0]は、当初のパルス幅に応じたものであり、ひいては、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたものである。
【0081】
第2実施形態のTDC回路2では、差動信号のパルスがリング部40を巡回する点で、シングルエンド信号のパルスがリング部10を巡回する第1実施形態のTDC回路1と相違するが、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。加えて、第2実施形態では、差動信号のパルスがリング部40を巡回することから、より安定した動作をすることができる。
【0082】
次に、基本セル41の変形例について説明する。以下では、第2実施形態のTDC回路2の基本セル41の変形例について説明するが、第1実施形態のTDC回路1の基本セル11も同様である。
【0083】
図10は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの構成を示す図である。図7に示された単位セル41の構成と比較すると、この図10に示される単位セル41Aは、第1インバータ回路411に替えて第1インバータ回路411Aを備える点で相違し、また、第2インバータ回路412に替えて第2インバータ回路412Aを備える点で相違する。
【0084】
第1インバータ回路411Aは、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含む。インバータI11はPMOSトランジスタP11とNMOSトランジスタN11とからなる。インバータI12はPMOSトランジスタP12とNMOSトランジスタN12とからなる。インバータI11とインバータI12は回路上では共通の構成を有する。
【0085】
第2インバータ回路412Aは、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含む。インバータI21はPMOSトランジスタP21とNMOSトランジスタN21とからなる。インバータI22はPMOSトランジスタP22とNMOSトランジスタN22とからなる。インバータI21とインバータI22は回路上では共通の構成を有する。
【0086】
PMOSトランジスタP11,P12のゲート幅は、PMOSトランジスタP21,P22のゲート幅のαp倍である。NMOSトランジスタN21,N22のゲート幅は、NMOSトランジスタN11,N12のゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0087】
半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている。また、図11に示されるように、32個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、32個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。
【0088】
図11は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aのレイアウト例を説明する図である。この図には、各トランジスタを構成する拡散領域およびゲート電極が示されている。同図(a)は奇数番目の単位セルのレイアウトを示し、同図(b)は偶数番目の単位セルのレイアウトを示す。なお、奇数番目の単位セルのレイアウトと偶数番目の単位セルのレイアウトとは逆であってもよい。
【0089】
同図(a)に示されるように、奇数番目の単位セルのレイアウトでは、P型拡散領域51およびN型拡散領域53に亘ってゲート電極G11,G21が設けられており、また、P型拡散領域52およびN型拡散領域54に亘ってゲート電極G22,G12が設けられている。ゲート電極G11,G21,G22およびG12は、ポリシリコンからなり、互いに平行であって、この順に配置されている。P型拡散領域51およびゲート電極G11によりPMOSトランジスタP11が構成される。P型拡散領域51およびゲート電極G21によりPMOSトランジスタP21が構成される。P型拡散領域52およびゲート電極G22によりPMOSトランジスタP22が構成される。P型拡散領域52およびゲート電極G12によりPMOSトランジスタP12が構成される。N型拡散領域53およびゲート電極G11によりNMOSトランジスタN11が構成される。N型拡散領域53およびゲート電極G21によりNMOSトランジスタN21が構成される。N型拡散領域54およびゲート電極G22によりNMOSトランジスタN22が構成される。N型拡散領域54およびゲート電極G12によりNMOSトランジスタN12が構成される。すなわち、インバータI11,I21,I22,I12が、この順に配置されている。
【0090】
同図(b)に示されるように、偶数番目の単位セルのレイアウトでは、P型拡散領域61およびN型拡散領域63に亘ってゲート電極G21,G11が設けられており、また、P型拡散領域62およびN型拡散領域64に亘ってゲート電極G12,G22が設けられている。ゲート電極G21,G11,G12およびG22は、ポリシリコンからなり、互いに平行であって、この順に配置されている。P型拡散領域61およびゲート電極G21によりPMOSトランジスタP21が構成される。P型拡散領域61およびゲート電極G11によりPMOSトランジスタP11が構成される。P型拡散領域62およびゲート電極G12によりPMOSトランジスタP12が構成される。P型拡散領域62およびゲート電極G22によりPMOSトランジスタP22が構成される。N型拡散領域63およびゲート電極G21によりNMOSトランジスタN21が構成される。N型拡散領域63およびゲート電極G11によりNMOSトランジスタN11が構成される。N型拡散領域64およびゲート電極G12によりNMOSトランジスタN12が構成される。N型拡散領域64およびゲート電極G22によりNMOSトランジスタN22が構成される。すなわち、インバータI21,I11,I12,I22は、この順に配置されている。
【0091】
同図(a),(b)の何れにおいても、P型拡散領域およびN型拡散領域はミラー配置されている。このように、奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されていることにより、半導体基板上の位置によってプロセス条件が幾らか異なるとしても、ゲート幅比αpの誤差に因る解像度の変動とゲート幅比αnの誤差に因る解像度の変動とを、更に効果的に互いに相殺させることができる。
【0092】
図12は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの他のレイアウト例を説明する図である。この図は偶数番目の単位セルのレイアウトを示すが、奇数番目の単位セルについても同様である。この図には、各トランジスタを構成する拡散領域およびゲート電極が示されている他、第1入力端41innとゲート電極G11,G12とを接続する金属配線71も示され、また、第2入力端41inpとゲート電極G21,G22とを接続する金属配線72も示されている。
【0093】
図11(b)に示されたレイアウトと比較すると、この図12に示されるレイアウトでは、ダミーのゲート電極Gdが設けられている点で相違する。ダミーのゲート電極Gdは、他のゲート電極G11,G12,G21,G22とともに等間隔となるように、また、これらのゲート電極G11,G12,G21,G22と平行となるように、拡散領域の間に設けられる。このようなダミーのゲート電極Gdが設けられていることにより、レイアウトの対称性や周期性が向上するので、プロセス条件の変動の影響が低減され得る。また、金属配線71および金属配線72は、寄生容量値が互いに等しくなるように、長さが互いに等しいのが好適である。
【0094】
図13は、単位セル41の第2変形例である単位セル41Bの構成を示す図である。図7に示された単位セル41の構成と比較すると、この図13に示される単位セル41Bは、第1インバータ回路411に対して並列的に設けられたトライステートインバータ回路415a〜415cを更に含む点で相違し、また、第2インバータ回路412に対して並列的に設けられたトライステートインバータ回路416a〜416cを更に含む点で相違する。3個のトライステートインバータ回路415a〜415cおよび3個のトライステートインバータ回路416a〜416cのうち、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数を変更することにより、実効的なゲート幅比αp,αnを変更することができ、解像度を変更することができる。なお、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数の選択は、2ビットの制御信号を与えることで可能である。なお、トライステートインバータ回路の個数は、3個でなくてもよく、1個以上であればよい。また、制御信号のビット数は任意である。
【0095】
次に、第2実施形態のTDC回路2の動作をシミュレーションした結果を説明する。ここでは、図6に示された第2実施形態のTDC回路2の構成において図10に示された単位セルの構成を採用してシミュレーションを行った。リング部40においてリングを構成する単位セル41の個数を32とし、第1単位セルおよび第2単位セルを単位セル4115,4131とした。PMOSトランジスタP11,P12のゲート幅を8.04μmとし、PMOSトランジスタP21,P22のゲート幅を8.00μmとし、NMOSトランジスタN11,N12のゲート幅を8.00μmとし、NMOSトランジスタN21,N22のゲート幅を8.04μmとして、αp=αn=1.005 とした。
【0096】
インバータ回路413,414それぞれは、ゲート幅4.00μmのPMOSトランジスタとゲート幅2.00μmのNMOSトランジスタとからなるものとした。スイッチSW10,SW20それぞれは、互いに並列的に接続されたゲート幅8.00μmのPMOSトランジスタおよびゲート幅4.00μmのNMOSトランジスタにより構成されるものとした。スイッチSW11,SW21それぞれは、ゲート幅2.00μmのPMOSトランジスタにより構成されるものとした。スイッチSW12,SW22それぞれは、ゲート幅1.00μmのNMOSトランジスタにより構成されるものとした。また、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffを−1nsから+1nsまでの範囲の各値とした。
【0097】
図14および図15は、このときのシミュレーションの結果を示す図である。第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻を基準とすると、時間Tdiffを−1nsとしたとき凡そ64ns経過時にパルスが消失し、時間Tdiffを0nsとしたとき凡そ264ns経過時にパルスが消失し、時間Tdiffを+1nsとしたとき凡そ464ns経過時にパルスが消失した。
【0098】
図14は、凡そ54nsから79nsまでの期間における特定の単位セルからの出力信号の波形を示す。同図(a)は時間Tdiffを−1nsとした場合を示し、同図(b)は時間Tdiffを0nsとした場合を示し、同図(c)は時間Tdiffを+1nsとした場合を示す。
【0099】
図15は、計数部20のカウンタ21から出力されるデジタル値と時間Tdiffとの関係を示すグラフである。カウンタ21から出力されるデジタル値のビット数を12とした。時間Tdiffに対して出力デジタル値は極めて良好な線形関係を示した。解像度は546fsであった。また、変換に要する時間は最大500nsであり、変換レートは2MHzであった。
【0100】
また、図6に示された第2実施形態のTDC回路2の構成において図13に示された単位セルの構成を採用してシミュレーションを行った。ここでは、第1インバータ回路411に対して並列的に設けられた3個のトライステートインバータ回路415a〜415c、および、第2インバータ回路412に対して並列的に設けられた3個のトライステートインバータ回路416a〜416cのうち、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数を各値とした。その他の条件は上記と同じである。
【0101】
図16は、このときのシミュレーションの結果を示す図である。何れの場合にも、時間Tdiffに対して出力デジタル値は極めて良好な線形関係を示した。出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数が0個のときLSBは490fsであり、1個のときLSBは750fsであり、2個のときLSBは980fsであり、3個のときLSBは1.6psであった。このように、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数によって解像度が変化した。
【0102】
このようなTDC回路は、ADPLL回路の高性能化に寄与する他、時間を計測する機器、例えば、電磁波や音波を用いて被測定物までの距離計測をするレーダーや超音波診断装置や魚群探知機等の計測機器や、光波を用いて被測定物までの距離計測をする時間差距離計測手法(Time-of-Flight法)を用いた計測機器の高性能化に寄与することができる。さらに、上述のようなTDC回路は、高エネルギー系の計測にて計測器に高エネルギー粒子が入射されたことを確認するSEU(Single Event Upset)計測において粒子を検出するまでの時間の計測に用いたり、LSI内部で(PLL等で)発生するジッタの計測に用いたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,2…TDC回路、10…リング部、110〜1131…単位セル、20…計数部、21…カウンタ、221〜2231…エッジ検出部、230〜237…Dフリップフロップ、240〜247…インバータ、25…Dフリップフロップ、26…インバータ、27…セレクタ、30…制御部、40…リング部、410〜4131…単位セル、111…第1インバータ回路、112…第2インバータ回路、411…第1インバータ回路、412…第2インバータ回路、415a〜415c…トライステートインバータ回路、416a〜416c…トライステートインバータ回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDC(Time-to-Digital Converter)回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体集積回路の製造プロセスの技術の進展に伴って、回路の動作電圧は低下する一方で、回路の動作速度は急激に向上している。このことから、電圧についての解像度を利用する処理より、時間についての解像度を利用する処理が有効となってきている。従来ではアナログ回路により為されていた処理をデジタル回路で実現することで、より高性能・小面積・低消費電力の回路を構成することができる場合がある。例えば、PLL(Phase Lock Loop)回路については、デジタル回路で構成された完全デジタルPLL(ADPLL: All-Digital PLL)回路が数多く提案されている。
【0003】
TDC回路は、ADPLL回路の主要な一構成要素として用いられる他、時間を計測する機器の一構成要素として用いられる。TDC回路は、入力信号が指示する2つの時刻の間の時間をデジタル値として出力するものである。TDC回路の性能はADPLL回路の出力ジッタ等の性能に影響を及ぼすので、TDC回路の高精度化が要求されている。このことから、様々な構成のTDC回路が提案されている。
【0004】
例えば、バーニア(Vernier)型TDC回路は、一定の遅延時間τ1の複数個の遅延回路が縦列接続された第1遅延ラインと、一定の遅延時間τ2の複数個の遅延回路が縦列接続された第2遅延ラインと、複数個のDフリップフロップを備える。ただし、τ1≠τ2である。バーニア型TDC回路では、第1遅延ラインの第n段の遅延回路の出力端は第n段のDフリップフロップのD入力端子に接続され、また、第2遅延ラインの第n段の遅延回路の出力端は第n段のDフリップフロップのクロック入力端子に接続される。
【0005】
バーニア型TDC回路は、第1遅延ラインの初段の遅延回路に第1信号を入力し、第2遅延ラインの初段の遅延回路に第2信号を入力して、複数個のDフリップフロップそれぞれの出力値に基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として得ることができる。このバーニア型TDC回路の時間測定の解像度は、遅延時間τ1と遅延時間τ2との差Δτに応じたものとなる。
【0006】
また、非特許文献1には、パルス消失(Pulse-Shrinking)型TDC回路が提案されている。パルス消失型TDC回路は、入力パルス信号の立上り時刻と立下り時刻との間の時間(すなわち、パルス幅)をデジタル値として出力するものである。パルス消失型TDC回路は、NAND回路と複数のインバータ回路とがリング状に接続された構成を有している。NAND回路は、そのリングへパルス信号を導入する為に設けられている。
【0007】
パルス消失型TDC回路では、インバータ回路とNAND回路との間で立上り遅延時間および立下り遅延時間が異なっていることから、NAND回路を介してパルス信号がリングへ導入されると、その信号がリングを伝搬していく間にパルス幅が変化していき、やがてパルスが消失する。パルス消失型TDC回路は、リング状に接続された複数のインバータ回路のうちの何れかのインバータ回路から出力されるデータのレベル遷移事象を計数することで、入力パルス信号のパルス幅をデジタル値として得ることができる。このパルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は、インバータ回路とNAND回路との間での立上り遅延時間および立下り遅延時間の差に応じたものとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Poki Chen, Shen-Iuan Liu, and Jingshown Wu, "A CMOSPulse-Shrinking Delay Element For Time Interval Measurement," IEEETRANSACTIONS ON CIRCUITS AND SYSTEMS-II: ANALOG AND DIGITAL SIGNAL PROCESSING,VOL.47, NO.9, pp.954-958, 2000.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
バーニア型TDC回路は、理論上では、遅延時間τ1と遅延時間τ2との差Δτを小さくすれば、バーニア型TDC回路における時間測定の解像度を小さくすることができる。しかし、実際の製造プロセスでは遅延回路の遅延時間τ1,τ2にばらつきが存在することから、時間測定の解像度を小さくする為に遅延時間差Δτを小さく設計すると、遅延時間τ1と遅延時間τ2との大小関係が設計と実際とで逆転することがある。したがって、バーニア型TDC回路で実際に実現することができる時間測定の解像度としては数ps程度が限界である。
【0010】
一方、パルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は、インバータ回路とNAND回路との間での立上り遅延時間および立下り遅延時間の差に応じたものとなるが、立上り遅延時間はPMOSトランジスタの性能に依存するのに対して、立下り遅延時間はNMOSトランジスタの性能に依存するので、特にPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとの間で独立な特性ばらつきが生じたときには、時間測定の分解能への影響が大きい。時間測定の解像度を小さくする為に遅延時間差を小さく設計すると、遅延時間の大小関係が設計と実際とで逆転することがある。したがって、パルス消失型TDC回路で実際に実現することができる時間測定の解像度を小さくするにも限界がある。非特許文献1に記載されたパルス消失型TDC回路の時間測定の解像度は68psである。
【0011】
また、パルス消失型TDC回路におけるリングは、複数のインバータ回路のみから構成された均一なものではなく、NAND回路も挿入されていることにより不均一なものとなっている。したがって、複数のインバータ回路それぞれから出力されるデータのレベル遷移事象を計数することで解像度を小さくしようとしても、入力パルス信号のパルス幅に対して出力デジタル値は非線形となる。
【0012】
さらに、パルス消失型TDC回路では、入力パルス信号は、NAND回路を介してインバータ回路リングに導入されることから、その導入の際にNAND回路を通過する為に所定幅(数百ps程度)以上のパルス幅を有することが必要である。したがって、測定可能な時間に同程度のオフセットが必要となる。
【0013】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができるTDC回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のTDC回路は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、リング部および計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備える。
【0015】
複数個の単位セルそれぞれは、(1) 前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端と、後段の単位セルへデータを出力する出力端と、入力端から出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路,第2インバータ回路およびスイッチSW0と、出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW1と、出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW2とを含み、(2) 自段の単位セルの入力端が前段の単位セルの出力端と接続され、自段の単位セルの出力端が後段の単位セルの入力端と接続されて、リング状に接続され、(3) 第1インバータ回路および第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0016】
このとき、制御部は、(1) 第1段階において、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW0のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0を選択的にオフ状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW1のうち第1単位セルのスイッチSW1を選択的にオン状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW2のうち第2単位セルのスイッチSW2を選択的にオン状態とし、(2) 第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作を開始させ、第1信号が指示する第1時刻以前に第1単位セルのスイッチSW1をオフ状態に転じさせ、第1時刻に第1単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせ、第2信号が指示する第2時刻以前に第2単位セルのスイッチSW2をオフ状態に転じさせ、第2時刻に第2単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせる。
【0017】
或いは、複数個の単位セルそれぞれは、(1) 前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端および第2入力端と、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端および第2出力端と、第2入力端から第1出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路およびスイッチSW10と、第1入力端から第2出力端へ向かって順に設けられた第2インバータ回路およびスイッチSW20と、第1出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW11と、第1出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW12と、第2出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW21と、第2出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW22とを含み、(2) 第1インバータ回路および第2インバータ回路を含んで差動バッファを構成しており、(3) 自段の単位セルの第1入力端が前段の単位セルの第1出力端と接続され、自段の単位セルの第2入力端が前段の単位セルの第2出力端と接続され、自段の単位セルの第1出力端が後段の単位セルの第1入力端と接続され、自段の単位セルの第2出力端が後段の単位セルの第2入力端と接続されて、リング状に接続され、(4) 第1インバータ回路および第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0018】
このとき、制御部は、(1) 第1段階において、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20を選択的にオフ状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW11,SW22のうち第1単位セルのスイッチSW11,SW22を選択的にオン状態とし、複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW12,SW21のうち第2単位セルのスイッチSW12,SW21を選択的にオン状態とし、(2) 第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作を開始させ、第1信号が指示する第1時刻以前に第1単位セルのスイッチSW11,SW22をオフ状態に転じさせ、第1時刻に第1単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせ、第2信号が指示する第2時刻以前に第2単位セルのスイッチSW12,SW21をオフ状態に転じさせ、第2時刻に第2単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせる。
【0019】
本発明のTDC回路では、計数部は、複数個の単位セルのうちの何れか1個の単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに複数個の単位セルのうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたデジタル値を出力するのが好適である。
【0020】
本発明のTDC回路では、複数個の単位セルそれぞれにおいて、第1インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含み、第2インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含み、半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。このとき、複数個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、複数個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。
【0021】
また、本発明のTDC回路では、複数個の単位セルそれぞれが、第1インバータ回路に対して並列的に設けられた第1トライステートインバータ回路と、第2インバータ回路に対して並列的に設けられた第2トライステートインバータ回路とを更に含むのが好適である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のTDC回路は、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態のTDC回路1の構成を示す図である。
【図2】第1実施形態のTDC回路1に含まれる単位セル11の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態のTDC回路1における第1段階終了時点での32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0,SW1,SW2の各状態の一例を示す図表である。
【図4】第1実施形態のTDC回路1における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】第1実施形態のTDC回路1における計数部20の動作例を説明する図である。
【図6】第2実施形態のTDC回路2のリング部40の構成を示す図である。
【図7】第2実施形態のTDC回路2に含まれる単位セル41の構成を示す図である。
【図8】第2実施形態のTDC回路2における第1段階終了時での32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20,SW11,SW12,SW21,SW22の各状態の一例を示す図表である。
【図9】第2実施形態のTDC回路2における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【図10】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの構成を示す図である。
【図11】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aのレイアウト例を説明する図である。
【図12】単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの他のレイアウト例を説明する図である。
【図13】単位セル41の第2変形例である単位セル41Bの構成を示す図である。
【図14】シミュレーションの結果を示す図である。
【図15】シミュレーションの結果を示す図である。
【図16】シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、第1実施形態のTDC回路1の構成を示す図である。第1実施形態のTDC回路1は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するものであって、リング部10および計数部20、ならびに、これらリング部10および計数部20それぞれの動作を制御する制御部30を備える。
【0026】
リング部10は、共通の構成を有する32個の単位セル110〜1131がリング状に接続されたものである。リング部10において、単位セル110の出力端は単位セル1131の入力端に接続されている。単位セル11nの出力端は単位セル11n−1の入力端に接続されている。ただし、nは1以上31以下の各整数である。なお、本実施形態ではリング部10に含まれる単位セルの個数を32とするが、本発明は単位セルの個数が2以上であればよい。
【0027】
計数部20は、32個の単位セル110〜1131のうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する。計数部20は、カウンタ21およびエッジ検出部221〜2231を含む。
【0028】
カウンタ20は、Dフリップフロップ230〜237およびインバータ240〜247を含み、リップルカウンタを構成している。カウンタ21は、単位セル110の出力端から出力されるデータのレベル遷移事象(例えば、ローレベルからハイレベルに転じる事象である立上りエッジ)を計数して、その計数結果であるデジタル値D[7:0]を出力する。
【0029】
エッジ検出部221〜2231は共通の構成を有する。各エッジ検出部22nは、Dフリップフロップ25,インバータ26およびセレクタ27を含む。Dフリップフロップ25は、カウンタ20に含まれるDフリップフロップ230と共通の構成を有する。各エッジ検出部22nにおいて、Dフリップフロップ25は、対応する単位セル11nの出力されるデータをクロック入力端子に入力し、Q出力端子から出力されたデータがインバータ26により論理反転されたものをD入力端子に入力する。また、各エッジ検出部22nにおいて、セレクタ27は、カウンタ21から出力されるデジタル値の最下位ビットのデータD[0]が値0であるときに、Dフリップフロップ25のQ出力端子から出力されるデータを出力値T[n]として出力し、一方、データD[0]が値1であるときには、インバータ26から出力されるデータを出力値T[n]として出力する。
【0030】
図2は、第1実施形態のTDC回路1に含まれる単位セル11の構成を示す図である。なお、32個の単位セル110〜1131は共通の構成を有しているので、そのうちの任意のものを単位セル11と呼ぶ。
【0031】
単位セル11は、前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端11inと、後段の単位セルへデータを出力する出力端11outとを有する。また、単位セル11は、第1インバータ回路111,第2インバータ回路112,スイッチSW0,スイッチSW1およびスイッチSW2を含み、また、ダミーのスイッチSW0d,スイッチSW1dおよびスイッチSW2dを更に含むのが好適である。
【0032】
第1インバータ回路111,第2インバータ回路112およびスイッチSW0は、入力端11inから出力端11outへ向かって順に設けられている。スイッチSW1は、出力端11outと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW2は、出力端11outと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。スイッチSW1dは、第1インバータ回路111の出力端と第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW2dは、第1インバータ回路111の出力端と第2基準電位端Vssとの間に設けられている。ただし、Vdd>Vss である。
【0033】
スイッチSW0は、互いに並列的に接続されたPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成され、これらPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが同時にオン状態とされ或いは同時にオフ状態とされる。スイッチSW1およびSW1dそれぞれは、PMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。また、スイッチSW2およびSW2dそれぞれは、NMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。ダミーのスイッチSW1dおよびスイッチSW2dは、第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれの負荷を互いに等しくするために設けられたものであって、常時オフ状態とされる。また、ダミーのスイッチSW0dは常時オン状態とされる。
【0034】
各単位セル11において、自段の単位セルの入力端11inが前段の単位セルの出力端11outと接続され、自段の単位セルの出力端11outが後段の単位セルの入力端11inと接続される。これにより、32個の単位セル110〜1131はリング状に接続される。
【0035】
第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれは、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路である。第1インバータ回路111のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路112のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路111のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路112のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0036】
このように構成される単位セル11では、スイッチSW0がオン状態であってスイッチSW1,SW2がオフ状態であるとき、入力端11inにパルスが入力されると、パルス幅が一定量だけ変化したパルスが出力端11outから出力される。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さいことから、入力端11in入力時のパルスに対する出力端11out出力時のパルスのパルス幅変化に対して、第1インバータ回路111および第2インバータ回路112それぞれは共に増加または共に減少の寄与をする。共通の構成を有する単位セル110〜1131がリング状に接続されているから、パルスが各単位セルを通過する度にパルス幅は一定量Δだけ変化し、また、パルスがリングを1巡回する度にパルス幅は一定量32Δだけ変化する。
【0037】
次に、リング部10および計数部20それぞれの動作について説明する。以下に説明する動作は制御部30による制御の下に行われる。
【0038】
第1段階において、32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0のうち、何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0が選択的にオフ状態とされ、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW0がオン状態とされる。32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW1のうち、第1単位セルのスイッチSW1が選択的にオン状態とされ、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW1がオフ状態とされる。また、32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW2のうち、第2単位セルのスイッチSW2が選択的にオン状態とされ、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW2がオフ状態とされる。
【0039】
もし、32個の単位セル110〜1131のうち第1単位セルおよび第2単位セルとして選ばれるものが固定であるならば、制御部30により制御されることなく、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW0が常にオン状態とされていてもよいし、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW1が常にオフ状態とされていてもよいし、また、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW2が常にオフ状態とされていてもよい。
【0040】
図3は、第1実施形態のTDC回路1における第1段階終了時での32個の単位セル110〜1131それぞれのスイッチSW0,SW1,SW2の各状態の一例を示す図表である。ここでは、第1単位セルを単位セル1115とし、第2単位セルを単位セル1131とした。以降では、これを前提として説明を続ける。
【0041】
同図には、32個の単位セル110〜1131それぞれの出力端11outから出力されるデータのレベルも示されている。16個の単位セル110〜1115それぞれの出力端11outから出力されるデータは1レベルとなり、16個の単位セル1116〜1131それぞれの出力端11outから出力されるデータは0レベルとなる。
【0042】
また、第1段階において、計数部20のカウンタ21に含まれるDフリップフロップ230〜237それぞれがリセットされ、エッジ検出部221〜2231それぞれに含まれるDフリップフロップ25それぞれがリセットされる。
【0043】
第1段階に続く第2段階において、計数部20による計数動作が開始される。また、図4に示されるように、第1信号が指示する第1時刻t1以前に第1単位セル1115のスイッチSW1がオフ状態に転じ、第1時刻t1に第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じる。また、第2信号が指示する第2時刻t2以前に第2単位セル1131のスイッチSW2がオフ状態に転じ、第2時刻t2に第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じる。例えば、第1信号が指示する第1時刻t1は第1信号の立上りエッジの時刻であり、第2信号が指示する第2時刻t2は第1信号の立上りエッジの時刻である。図4は、第1実施形態のTDC回路1における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。この図では、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間をTdiffと表記している。
【0044】
第1単位セル1115のスイッチSW1と第2単位セル1131のスイッチSW2とは同時にオフ状態に転じてもよい。第1時刻t1に、第1単位セル1115のスイッチSW1がオフ状態に転じると同時に、第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じてもよい。また、第2時刻t2に、第2単位セル1131のスイッチSW2がオフ状態に転じると同時に、第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じてもよい。
【0045】
なお、第1単位セル1115において、スイッチSW1がオフ状態に転じた後であってスイッチSW0がオン状態に転じる前の期間では、出力端11outはハイインピーダンス状態であるが、暫くの間は1レベルの出力が維持されているので、その間にスイッチSW0がオン状態に転じる。第2単位セル1131においても同様である。
【0046】
第1段階終了時には、出力データがレベル1である単位セルの個数、および、出力データがレベル0である単位セルの個数は、共に16個である。第1時刻t1に第1単位セル1115のスイッチSW0がオン状態に転じると、この第1単位セル1115およびこれ以降の単位セルの出力データが順次に0レベルに転じていく。また、第2時刻t2に第2単位セル1131のスイッチSW0がオン状態に転じると、この第2単位セル1131およびこれ以降の単位セルの出力データが順次に1レベルに転じていく。
【0047】
もし、第1信号が指示する第1時刻t1と第2信号が指示する第2時刻t2とが互いに同じであれば、その時刻直後では、出力レベル1である単位セルの個数、および、出力レベル0である単位セルの個数は、共に16個である。第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻の直後では、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffに応じたものである。なお、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、リングを巡回するパルスの初期幅に対応する。
【0048】
第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻より以降では、このようなパルスが、リング状に接続された32個の単位セル110〜1131を巡回する。このパルスが巡回して行くに従って、パルス幅は単調に増加または減少していき、やがて、パルスが消滅する。このパルス消滅まで、単位セル110の出力端11outから出力されるデータの立上りエッジがカウンタ21により計数されて、計数結果であるデジタル値D[7:0]が得られる。パルス1巡回当りのパルス幅の変化量32Δが一定であるので、デジタル値D[7:0]は、当初のパルス幅に応じたものであり、ひいては、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたものである。
【0049】
ここで、リング部10を構成する単位セルの個数をNとし、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffを0として、上記のような動作を行ったときに、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数をM0とし、パルス消滅までに要する時間をTinitとすると、これらのパラメータの間に下記(1)式の関係が成り立つ。
Tinit=N・Δ・M0 …(1)
【0050】
また、第1時刻t1と第2時刻t2との間の任意の時間Tdiffに対し、上記のような動作を行ったときに、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数をMとすると、これらのパラメータの間に下記(2)式の関係が成り立つ。
Tinit−Tdiff=N・Δ・M …(2)
【0051】
上記(1)式および(2)式から下記(3)式が得られる。
Tdiff=N・Δ(M0−M) …(3)
【0052】
αp=αn=α とすると、立上り遅延時間tdrと立下り遅延時間tdfとの間には下記(4)式の関係があり、これを用いると上記(3)式は下記(5)式で表される。
Δ=tdr−tdf=(α−1)tdf …(4)
Tdiff=N・(α−1)tdf(M0−M) …(5)
【0053】
この(5)式から判るように、パルス消滅までにパルスがリングを巡回する回数M(すなわち、カウンタ21による計数結果であるデジタル値D[7:0])から、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffが得られる。
【0054】
時間計測の解像度を向上させるために、計数部20は、単位セル110から出力されるデータのレベル遷移事象をカウンタ21により計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに32個の単位セル110〜1131のうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間Tdiffに応じたデジタル値を出力するのが好適である。図1に示された構成では、各単位セル11nから出力されるデータのレベル遷移状況がエッジ検出部22nにより検出される。nは1以上31以下の各整数である。
【0055】
図5は、第1実施形態のTDC回路1における計数部20の動作例を説明する図である。なお、ここでは、図示および説明の便宜のために、リングを構成する単位セルの個数Nを6とし、各基本セルにおける立上り遅延時間と立下り遅延時間との差を無視して、各基本セル11の出力、各エッジ検出部22のDフリップフロップ25の出力、および、各エッジ検出部22のセレクタ27の出力、を纏めた。単位セル112を第1単位セルとし、単位セル115を第2単位セルとして、第1段階終了時点では、単位セル110〜112の出力レベルを1とし、単位セル115〜113の出力レベルを0とした。1単位セル分のパルス移動をパルス移動量1としている。
【0056】
この図に示されるように、パルスが1巡回する度に、カウンタ21の出力は値1だけ大きくなる。パルスが丁度m巡回した時点では、全てのエッジ検出部225〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。パルスが丁度m巡回した後に更に1単位セル分だけ移動した時点では、1個のエッジ検出部225のセレクタ27の出力値は1であり、他のエッジ検出部224〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。パルスが丁度m巡回した後に更に2単位セル分だけ移動した時点では、2個のエッジ検出部225〜224のセレクタ27の出力値は1であり、他のエッジ検出部223〜221それぞれのセレクタ27の出力値は0である。以降も同様にして、各エッジ検出部22nのセレクタ27の出力値は変化していき、パルスが丁度m巡回した後に更に5単位セル分だけ移動した時点では、全てのエッジ検出部225〜221のセレクタ27の出力値は1である。
【0057】
以上のように、各エッジ検出部22nの出力値T[n]は thermometer code となっている。計数部20は、カウンタ21による計数結果であるデジタル値D[7:0]を出力するとともに、各エッジ検出部22nの出力値T[n]をも出力する。パルス消失時点で、デジタル値D[7:0] に基づいてパルスがM巡回したことが判り、さらに、値T[5]〜T[1]に基づいてM巡回後のパルス移動量が判る。このように、計数部20がカウンタ21に加えてエッジ検出部22を含むことにより、時間計測の解像度を向上させることができる。
【0058】
第1実施形態のTDC回路1におけるリング部10は、共通の構成を有する複数の単位セル11がリング状に接続されたものであって、各単位セル11に含まれる2個のインバータ回路111,112を構成するPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタそれぞれのゲート幅比αp,αnに応じた解像度で時間測定をすることができる(上記(5)式)。これら4個のトランジスタは、半導体基板上に形成される際に互いに近い領域に形成され、ゲート幅比が比較的高精度に設計どおりに実現され得る。また、半導体基板上の位置によってプロセス条件が幾らか異なるとしても、4個のトランジスタの間の配置関係によっては、ゲート幅比αpの誤差に因る解像度の変動とゲート幅比αnの誤差に因る解像度の変動とを互いに相殺させることができる。したがって、このTDC回路1は、所望の解像度を高精度に実現することができ、時間測定の解像度を小さくすることができる。
【0059】
また、第1実施形態のTDC回路1におけるリング部10は、共通の構成を有する複数の単位セル11がリング状に接続されたものであって、このリングの途中に他の回路が挿入されることはない。また、各単位セル11の出力端は、後段の単位セルの入力端およびDフリップフロップのクロック端子に接続され、共通の負荷を有している。このことから、パルスが1単位セルを通過する度に受けるパルス幅変動は一定である。したがって、このTDC回路1は、計数部20がカウンタ21に加えてエッジ検出部エッジ検出部221〜2231を備えることにより、パルス消失時点で、デジタル値D[7:0] に基づいてパルスがM巡回したことが判り、さらに、値T[5]〜T[1]に基づいてM巡回後のパルス移動量が判り、時間Tdiffに対して線形な計数結果を得ることができるので、所望の解像度を更に高精度に実現することができ、時間計測の解像度を更に小さくすることができる。
【0060】
さらに、第1実施形態のTDC回路1は、非特許文献1に記載されたTDC回路の如くリング部へパルスを入力するのではなく、第1段階においてリング部10の単位セル110〜1131の各スイッチを初期設定した後に、第2段階において単位セル110〜1131のうちの第1単位セルのスイッチSW0を第1時刻t1にオン状態とするとともに第2単位セルのスイッチSW0を第2時刻t2にオン状態とすることで、時間Tdiffに応じた初期パルス幅を有するパルスがリングを巡回し始める。したがって、このTDC回路1は、非特許文献1に記載されたTDC回路の如く測定可能な時間にオフセットを必要とすることなく、時間Tdiffが短くても、解像度が小さく測定精度が高い時間測定を行うことができる。
【0061】
次に、第2実施形態のTDC回路2について説明する。第2実施形態のTDC回路2は、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するものであって、第1実施形態におけるリング部10に替えてリング部40を備え、また、計数部および制御部を備える。第2実施形態における計数部は、第1実施形態における計数部と同様の構成を有する。
【0062】
図6は、第2実施形態のTDC回路2のリング部40の構成を示す図である。なお、同図では計数部および制御部の図示が省略されている。リング部40は、共通の構成を有する32個の単位セル410〜4131がリング状に接続されたものである。リング部40において、単位セル410の出力端は単位セル4131の入力端に接続されている。単位セル41nの出力端は単位セル41n−1の入力端に接続されている。ただし、nは1以上31以下の各整数である。
【0063】
図7は、第2実施形態のTDC回路2に含まれる単位セル41の構成を示す図である。なお、32個の単位セル410〜4131は共通の構成を有しているので、そのうちの任意のものを単位セル41と呼ぶ。第1実施形態では各単位セル11はシングルエンド信号を入出力したのに対して、第2実施形態では各単位セル41は差動信号を入出力する。
【0064】
単位セル41は、前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端41inpおよび第2入力端41innと、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端41outpおよび第2出力端41outnとを有する。また、単位セル41は、第1インバータ回路411,第2インバータ回路412,インバータ回路413,インバータ回路414,スイッチSW10,スイッチSW11,スイッチSW12,スイッチSW20,スイッチSW21およびスイッチSW22を含む。
【0065】
第1インバータ回路411およびスイッチSW10は、第2入力端41innから第1出力端41outpへ向かって順に設けられている。第2インバータ回路412およびスイッチSW20は、第1入力端41inpから第2出力端41outnへ向かって順に設けられている。スイッチSW11は、第1出力端41outpと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW12は、第1出力端41outpと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。スイッチSW21は、第2出力端41outnと第1基準電位端Vddとの間に設けられている。スイッチSW22は、第2出力端41outnと第2基準電位端Vssとの間に設けられている。ただし、Vdd>Vss である。
【0066】
スイッチSW10およびスイッチSW20それぞれは、互いに並列的に接続されたPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成され、これらPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタが同時にオン状態とされ或いは同時にオフ状態とされる。スイッチSW11およびスイッチSW21それぞれは、PMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。また、スイッチSW12およびスイッチSW22それぞれは、NMOSトランジスタにより構成され、互いに共通の構成を有する。
【0067】
インバータ回路413の入力端は第2インバータ回路412に出力端に接続され、インバータ回路413の出力端は第1インバータ回路411に出力端に接続されている。インバータ回路414の入力端は第1インバータ回路411に出力端に接続され、インバータ回路414の出力端は第2インバータ回路412に出力端に接続されている。インバータ回路411〜413は差動バッファを構成している。
【0068】
各単位セル41において、自段の単位セルの第1入力端41inpが前段の単位セルの第1出力端41outpと接続され、自段の単位セルの第2入力端41innが前段の単位セルの第2出力端41outnと接続され、自段の単位セルの第1出力端41outpが後段の単位セルの第1入力端41inpと接続され、自段の単位セルの第2出力端41outnが後段の単位セルの第2入力端41innと接続される。これにより、32個の単位セル410〜4131はリング状に接続される。
【0069】
第1インバータ回路411および第2インバータ回路412それぞれは、PMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路である。第1インバータ回路411のPMOSトランジスタのゲート幅は、第2インバータ回路412のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍である。第2インバータ回路412のNMOSトランジスタのゲート幅は、第1インバータ回路411のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0070】
このように構成される単位セル41では、スイッチSW10,SW20がオン状態であってスイッチSW11,SW12,SW21,SW22がオフ状態であるとき、入力端41inp,41innに差動信号のパルスが入力されると、パルス幅が一定量だけ変化した差動信号のパルスが出力端41outp,41outntから出力される。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さいことから、入力時のパルスに対する出力時のパルスのパルス幅変化に対して、第1インバータ回路411および第2インバータ回路412それぞれは共に増加または共に減少の寄与をする。共通の構成を有する単位セル410〜4131がリング状に接続されているから、パルスが各単位セルを通過する度にパルス幅は一定量Δだけ変化し、また、パルスがリングを1巡回する度にパルス幅は一定量32Δだけ変化する。
【0071】
次に、リング部40および計数部それぞれの動作について説明する。以下に説明する動作は制御部による制御の下に行われる。
【0072】
第1段階において、32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20のうち、何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20が選択的にオフ状態とされ、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW10,SW20がオン状態とされる。32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW11,SW22のうち、第1単位セルのスイッチSW11,SW22が選択的にオン状態とされ、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW11,SW22がオフ状態とされる。また、32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW12,SW21のうち、第2単位セルのスイッチSW12,SW21が選択的にオン状態とされ、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW12,SW21がオフ状態とされる。
【0073】
もし、32個の単位セル410〜4131のうち第1単位セルおよび第2単位セルとして選ばれるものが固定であるならば、制御部により制御されることなく、第1単位セルおよび第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW10,SW20が常にオン状態とされていてもよいし、第1単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW11,SW22が常にオフ状態とされていてもよいし、また、第2単位セルを除く他の単位セルのスイッチSW12,SW21が常にオフ状態とされていてもよい。
【0074】
図8は、第2実施形態のTDC回路2における第1段階終了時での32個の単位セル410〜4131それぞれのスイッチSW10,SW20,SW11,SW12,SW21,SW22の各状態の一例を示す図表である。ここでは、第1単位セルを単位セル4115とし、第2単位セルを単位セル4131とした。以降では、これを前提として説明を続ける。
【0075】
同図には、32個の単位セル410〜4131それぞれの出力端から出力される差動信号のレベルも示されている。16個の単位セル410〜4115それぞれの出力端から出力される差動信号は1レベルとなり、16個の単位セル4116〜4131それぞれの出力端から出力される差動信号は0レベルとなる。
【0076】
第1段階に続く第2段階において、計数部による計数動作が開始される。また、図9に示されるように、第1信号が指示する第1時刻t1以前に第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22がオフ状態に転じ、第1時刻t1に第1単位セル4115のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。また、第2信号が指示する第2時刻t2以前に第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21がオフ状態に転じ、第2時刻t2に第2単位セル4131のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。例えば、第1信号が指示する第1時刻t1は第1信号の立上りエッジの時刻であり、第2信号が指示する第2時刻t2は第1信号の立上りエッジの時刻である。図9は、第2実施形態のTDC回路2における第2段階の動作の一例を示すタイミングチャートである。この図では、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間をTdiffと表記している。
【0077】
第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22と第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21とは同時にオフ状態に転じてもよい。第1時刻t1に、第1単位セル4115のスイッチSW11,SW22がオフ状態に転じると同時に、第1単位セル4115のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じてもよい。また、第2時刻t2に、第2単位セル4131のスイッチSW12,SW21がオフ状態に転じると同時に、第2単位セル4131のスイッチSW10,SW20がオン状態に転じてもよい。
【0078】
なお、第1単位セル3115において、スイッチSW11,SW22がオフ状態に転じた後であってスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる前の期間では、出力端41outp,41outnはハイインピーダンス状態であるが、暫くの間は1レベルの出力が維持されているので、その間にスイッチSW10,SW20がオン状態に転じる。第2単位セル4131においても同様である。
【0079】
以降の動作は第1実施形態の場合と同様である。第2実施形態では、第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻の直後では、出力差動信号がレベル1である単位セルの個数と出力差動信号がレベル0である単位セルの個数との差は、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffに応じたものである。なお、出力レベル1である単位セルの個数と出力レベル0である単位セルの個数との差は、リングを巡回するパルスの初期幅に対応する。
【0080】
第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻より以降では、このようなパルスが、リング状に接続された32個の単位セル410〜4131を巡回する。このパルスが巡回して行くに従って、パルス幅は単調に増加または減少していき、やがて、パルスが消滅する。このパルス消滅まで、単位セル410の出力端から出力されるデータの立上りエッジがカウンタ21により計数されて、計数結果であるデジタル値D[7:0]が得られる。パルス1巡回当りのパルス幅の変化量32Δが一定であるので、デジタル値D[7:0]は、当初のパルス幅に応じたものであり、ひいては、第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたものである。
【0081】
第2実施形態のTDC回路2では、差動信号のパルスがリング部40を巡回する点で、シングルエンド信号のパルスがリング部10を巡回する第1実施形態のTDC回路1と相違するが、第1実施形態の場合と同様の効果を奏することができる。加えて、第2実施形態では、差動信号のパルスがリング部40を巡回することから、より安定した動作をすることができる。
【0082】
次に、基本セル41の変形例について説明する。以下では、第2実施形態のTDC回路2の基本セル41の変形例について説明するが、第1実施形態のTDC回路1の基本セル11も同様である。
【0083】
図10は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの構成を示す図である。図7に示された単位セル41の構成と比較すると、この図10に示される単位セル41Aは、第1インバータ回路411に替えて第1インバータ回路411Aを備える点で相違し、また、第2インバータ回路412に替えて第2インバータ回路412Aを備える点で相違する。
【0084】
第1インバータ回路411Aは、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含む。インバータI11はPMOSトランジスタP11とNMOSトランジスタN11とからなる。インバータI12はPMOSトランジスタP12とNMOSトランジスタN12とからなる。インバータI11とインバータI12は回路上では共通の構成を有する。
【0085】
第2インバータ回路412Aは、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含む。インバータI21はPMOSトランジスタP21とNMOSトランジスタN21とからなる。インバータI22はPMOSトランジスタP22とNMOSトランジスタN22とからなる。インバータI21とインバータI22は回路上では共通の構成を有する。
【0086】
PMOSトランジスタP11,P12のゲート幅は、PMOSトランジスタP21,P22のゲート幅のαp倍である。NMOSトランジスタN21,N22のゲート幅は、NMOSトランジスタN11,N12のゲート幅のαn倍である。αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さい。
【0087】
半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている。また、図11に示されるように、32個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、32個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されているのが好適である。
【0088】
図11は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aのレイアウト例を説明する図である。この図には、各トランジスタを構成する拡散領域およびゲート電極が示されている。同図(a)は奇数番目の単位セルのレイアウトを示し、同図(b)は偶数番目の単位セルのレイアウトを示す。なお、奇数番目の単位セルのレイアウトと偶数番目の単位セルのレイアウトとは逆であってもよい。
【0089】
同図(a)に示されるように、奇数番目の単位セルのレイアウトでは、P型拡散領域51およびN型拡散領域53に亘ってゲート電極G11,G21が設けられており、また、P型拡散領域52およびN型拡散領域54に亘ってゲート電極G22,G12が設けられている。ゲート電極G11,G21,G22およびG12は、ポリシリコンからなり、互いに平行であって、この順に配置されている。P型拡散領域51およびゲート電極G11によりPMOSトランジスタP11が構成される。P型拡散領域51およびゲート電極G21によりPMOSトランジスタP21が構成される。P型拡散領域52およびゲート電極G22によりPMOSトランジスタP22が構成される。P型拡散領域52およびゲート電極G12によりPMOSトランジスタP12が構成される。N型拡散領域53およびゲート電極G11によりNMOSトランジスタN11が構成される。N型拡散領域53およびゲート電極G21によりNMOSトランジスタN21が構成される。N型拡散領域54およびゲート電極G22によりNMOSトランジスタN22が構成される。N型拡散領域54およびゲート電極G12によりNMOSトランジスタN12が構成される。すなわち、インバータI11,I21,I22,I12が、この順に配置されている。
【0090】
同図(b)に示されるように、偶数番目の単位セルのレイアウトでは、P型拡散領域61およびN型拡散領域63に亘ってゲート電極G21,G11が設けられており、また、P型拡散領域62およびN型拡散領域64に亘ってゲート電極G12,G22が設けられている。ゲート電極G21,G11,G12およびG22は、ポリシリコンからなり、互いに平行であって、この順に配置されている。P型拡散領域61およびゲート電極G21によりPMOSトランジスタP21が構成される。P型拡散領域61およびゲート電極G11によりPMOSトランジスタP11が構成される。P型拡散領域62およびゲート電極G12によりPMOSトランジスタP12が構成される。P型拡散領域62およびゲート電極G22によりPMOSトランジスタP22が構成される。N型拡散領域63およびゲート電極G21によりNMOSトランジスタN21が構成される。N型拡散領域63およびゲート電極G11によりNMOSトランジスタN11が構成される。N型拡散領域64およびゲート電極G12によりNMOSトランジスタN12が構成される。N型拡散領域64およびゲート電極G22によりNMOSトランジスタN22が構成される。すなわち、インバータI21,I11,I12,I22は、この順に配置されている。
【0091】
同図(a),(b)の何れにおいても、P型拡散領域およびN型拡散領域はミラー配置されている。このように、奇数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、偶数番目の単位セルでは半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されていることにより、半導体基板上の位置によってプロセス条件が幾らか異なるとしても、ゲート幅比αpの誤差に因る解像度の変動とゲート幅比αnの誤差に因る解像度の変動とを、更に効果的に互いに相殺させることができる。
【0092】
図12は、単位セル41の第1変形例である単位セル41Aの他のレイアウト例を説明する図である。この図は偶数番目の単位セルのレイアウトを示すが、奇数番目の単位セルについても同様である。この図には、各トランジスタを構成する拡散領域およびゲート電極が示されている他、第1入力端41innとゲート電極G11,G12とを接続する金属配線71も示され、また、第2入力端41inpとゲート電極G21,G22とを接続する金属配線72も示されている。
【0093】
図11(b)に示されたレイアウトと比較すると、この図12に示されるレイアウトでは、ダミーのゲート電極Gdが設けられている点で相違する。ダミーのゲート電極Gdは、他のゲート電極G11,G12,G21,G22とともに等間隔となるように、また、これらのゲート電極G11,G12,G21,G22と平行となるように、拡散領域の間に設けられる。このようなダミーのゲート電極Gdが設けられていることにより、レイアウトの対称性や周期性が向上するので、プロセス条件の変動の影響が低減され得る。また、金属配線71および金属配線72は、寄生容量値が互いに等しくなるように、長さが互いに等しいのが好適である。
【0094】
図13は、単位セル41の第2変形例である単位セル41Bの構成を示す図である。図7に示された単位セル41の構成と比較すると、この図13に示される単位セル41Bは、第1インバータ回路411に対して並列的に設けられたトライステートインバータ回路415a〜415cを更に含む点で相違し、また、第2インバータ回路412に対して並列的に設けられたトライステートインバータ回路416a〜416cを更に含む点で相違する。3個のトライステートインバータ回路415a〜415cおよび3個のトライステートインバータ回路416a〜416cのうち、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数を変更することにより、実効的なゲート幅比αp,αnを変更することができ、解像度を変更することができる。なお、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数の選択は、2ビットの制御信号を与えることで可能である。なお、トライステートインバータ回路の個数は、3個でなくてもよく、1個以上であればよい。また、制御信号のビット数は任意である。
【0095】
次に、第2実施形態のTDC回路2の動作をシミュレーションした結果を説明する。ここでは、図6に示された第2実施形態のTDC回路2の構成において図10に示された単位セルの構成を採用してシミュレーションを行った。リング部40においてリングを構成する単位セル41の個数を32とし、第1単位セルおよび第2単位セルを単位セル4115,4131とした。PMOSトランジスタP11,P12のゲート幅を8.04μmとし、PMOSトランジスタP21,P22のゲート幅を8.00μmとし、NMOSトランジスタN11,N12のゲート幅を8.00μmとし、NMOSトランジスタN21,N22のゲート幅を8.04μmとして、αp=αn=1.005 とした。
【0096】
インバータ回路413,414それぞれは、ゲート幅4.00μmのPMOSトランジスタとゲート幅2.00μmのNMOSトランジスタとからなるものとした。スイッチSW10,SW20それぞれは、互いに並列的に接続されたゲート幅8.00μmのPMOSトランジスタおよびゲート幅4.00μmのNMOSトランジスタにより構成されるものとした。スイッチSW11,SW21それぞれは、ゲート幅2.00μmのPMOSトランジスタにより構成されるものとした。スイッチSW12,SW22それぞれは、ゲート幅1.00μmのNMOSトランジスタにより構成されるものとした。また、第1時刻t1と第2時刻t2との間の時間Tdiffを−1nsから+1nsまでの範囲の各値とした。
【0097】
図14および図15は、このときのシミュレーションの結果を示す図である。第1時刻t1および第2時刻t2のうち何れか遅い時刻を基準とすると、時間Tdiffを−1nsとしたとき凡そ64ns経過時にパルスが消失し、時間Tdiffを0nsとしたとき凡そ264ns経過時にパルスが消失し、時間Tdiffを+1nsとしたとき凡そ464ns経過時にパルスが消失した。
【0098】
図14は、凡そ54nsから79nsまでの期間における特定の単位セルからの出力信号の波形を示す。同図(a)は時間Tdiffを−1nsとした場合を示し、同図(b)は時間Tdiffを0nsとした場合を示し、同図(c)は時間Tdiffを+1nsとした場合を示す。
【0099】
図15は、計数部20のカウンタ21から出力されるデジタル値と時間Tdiffとの関係を示すグラフである。カウンタ21から出力されるデジタル値のビット数を12とした。時間Tdiffに対して出力デジタル値は極めて良好な線形関係を示した。解像度は546fsであった。また、変換に要する時間は最大500nsであり、変換レートは2MHzであった。
【0100】
また、図6に示された第2実施形態のTDC回路2の構成において図13に示された単位セルの構成を採用してシミュレーションを行った。ここでは、第1インバータ回路411に対して並列的に設けられた3個のトライステートインバータ回路415a〜415c、および、第2インバータ回路412に対して並列的に設けられた3個のトライステートインバータ回路416a〜416cのうち、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数を各値とした。その他の条件は上記と同じである。
【0101】
図16は、このときのシミュレーションの結果を示す図である。何れの場合にも、時間Tdiffに対して出力デジタル値は極めて良好な線形関係を示した。出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数が0個のときLSBは490fsであり、1個のときLSBは750fsであり、2個のときLSBは980fsであり、3個のときLSBは1.6psであった。このように、出力をオン状態とするトライステートインバータ回路の個数によって解像度が変化した。
【0102】
このようなTDC回路は、ADPLL回路の高性能化に寄与する他、時間を計測する機器、例えば、電磁波や音波を用いて被測定物までの距離計測をするレーダーや超音波診断装置や魚群探知機等の計測機器や、光波を用いて被測定物までの距離計測をする時間差距離計測手法(Time-of-Flight法)を用いた計測機器の高性能化に寄与することができる。さらに、上述のようなTDC回路は、高エネルギー系の計測にて計測器に高エネルギー粒子が入射されたことを確認するSEU(Single Event Upset)計測において粒子を検出するまでの時間の計測に用いたり、LSI内部で(PLL等で)発生するジッタの計測に用いたりすることも可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,2…TDC回路、10…リング部、110〜1131…単位セル、20…計数部、21…カウンタ、221〜2231…エッジ検出部、230〜237…Dフリップフロップ、240〜247…インバータ、25…Dフリップフロップ、26…インバータ、27…セレクタ、30…制御部、40…リング部、410〜4131…単位セル、111…第1インバータ回路、112…第2インバータ回路、411…第1インバータ回路、412…第2インバータ回路、415a〜415c…トライステートインバータ回路、416a〜416c…トライステートインバータ回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、
共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、前記複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、前記リング部および前記計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備え、
前記複数個の単位セルそれぞれが、
前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端と、後段の単位セルへデータを出力する出力端と、前記入力端から前記出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路,第2インバータ回路およびスイッチSW0と、前記出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW1と、前記出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW2とを含み、
自段の単位セルの前記入力端が前段の単位セルの前記出力端と接続され、自段の単位セルの前記出力端が後段の単位セルの前記入力端と接続されて、リング状に接続され、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、前記第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が前記第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、前記第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が前記第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さく、
前記制御部が、
第1段階において、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW0のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0を選択的にオフ状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW1のうち前記第1単位セルのスイッチSW1を選択的にオン状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW2のうち前記第2単位セルのスイッチSW2を選択的にオン状態とし、
前記第1段階に続く第2段階において、前記計数部による計数動作を開始させ、前記第1信号が指示する第1時刻以前に前記第1単位セルのスイッチSW1をオフ状態に転じさせ、前記第1時刻に前記第1単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせ、前記第2信号が指示する第2時刻以前に前記第2単位セルのスイッチSW2をオフ状態に転じさせ、前記第2時刻に前記第2単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせる、
ことを特徴とするTDC回路。
【請求項2】
第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、
共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、前記複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、前記リング部および前記計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備え、
前記複数個の単位セルそれぞれが、
前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端および第2入力端と、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端および第2出力端と、前記第2入力端から前記第1出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路およびスイッチSW10と、前記第1入力端から前記第2出力端へ向かって順に設けられた第2インバータ回路およびスイッチSW20と、前記第1出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW11と、前記第1出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW12と、前記第2出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW21と、前記第2出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW22とを含み、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路を含んで差動バッファを構成しており、
自段の単位セルの前記第1入力端が前段の単位セルの前記第1出力端と接続され、自段の単位セルの前記第2入力端が前段の単位セルの前記第2出力端と接続され、自段の単位セルの前記第1出力端が後段の単位セルの前記第1入力端と接続され、自段の単位セルの前記第2出力端が後段の単位セルの前記第2入力端と接続されて、リング状に接続され、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、前記第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が前記第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、前記第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が前記第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さく、
前記制御部が、
第1段階において、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20を選択的にオフ状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW11,SW22のうち前記第1単位セルのスイッチSW11,SW22を選択的にオン状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW12,SW21のうち前記第2単位セルのスイッチSW12,SW21を選択的にオン状態とし、
前記第1段階に続く第2段階において、前記計数部による計数動作を開始させ、前記第1信号が指示する第1時刻以前に前記第1単位セルのスイッチSW11,SW22をオフ状態に転じさせ、前記第1時刻に前記第1単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせ、前記第2信号が指示する第2時刻以前に前記第2単位セルのスイッチSW12,SW21をオフ状態に転じさせ、前記第2時刻に前記第2単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせる、
ことを特徴とするTDC回路。
【請求項3】
前記計数部が、前記複数個の単位セルのうちの何れか1個の単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに前記複数個の単位セルのうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、前記第1信号および前記第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたデジタル値を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【請求項4】
前記複数個の単位セルそれぞれにおいて、
前記第1インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含み、
前記第2インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含み、
半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【請求項5】
前記複数個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは前記半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、
前記複数個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは前記半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のTDC回路。
【請求項6】
前記複数個の単位セルそれぞれが、前記第1インバータ回路に対して並列的に設けられた第1トライステートインバータ回路と、前記第2インバータ回路に対して並列的に設けられた第2トライステートインバータ回路とを更に含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【請求項1】
第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、
共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、前記複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、前記リング部および前記計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備え、
前記複数個の単位セルそれぞれが、
前段の単位セルから出力されるデータを入力する入力端と、後段の単位セルへデータを出力する出力端と、前記入力端から前記出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路,第2インバータ回路およびスイッチSW0と、前記出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW1と、前記出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW2とを含み、
自段の単位セルの前記入力端が前段の単位セルの前記出力端と接続され、自段の単位セルの前記出力端が後段の単位セルの前記入力端と接続されて、リング状に接続され、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、前記第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が前記第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、前記第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が前記第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さく、
前記制御部が、
第1段階において、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW0のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW0を選択的にオフ状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW1のうち前記第1単位セルのスイッチSW1を選択的にオン状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW2のうち前記第2単位セルのスイッチSW2を選択的にオン状態とし、
前記第1段階に続く第2段階において、前記計数部による計数動作を開始させ、前記第1信号が指示する第1時刻以前に前記第1単位セルのスイッチSW1をオフ状態に転じさせ、前記第1時刻に前記第1単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせ、前記第2信号が指示する第2時刻以前に前記第2単位セルのスイッチSW2をオフ状態に転じさせ、前記第2時刻に前記第2単位セルのスイッチSW0をオン状態に転じさせる、
ことを特徴とするTDC回路。
【請求項2】
第1信号および第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間をデジタル値として出力するTDC回路であって、
共通の構成を有する複数個の単位セルがリング状に接続されてなるリング部と、前記複数個の単位セルのうちの何れかの単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して当該計数結果に応じたデジタル値を出力する計数部と、前記リング部および前記計数部それぞれの動作を制御する制御部とを備え、
前記複数個の単位セルそれぞれが、
前段の単位セルから出力されるデータを入力する第1入力端および第2入力端と、後段の単位セルへデータを出力する第1出力端および第2出力端と、前記第2入力端から前記第1出力端へ向かって順に設けられた第1インバータ回路およびスイッチSW10と、前記第1入力端から前記第2出力端へ向かって順に設けられた第2インバータ回路およびスイッチSW20と、前記第1出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW11と、前記第1出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW12と、前記第2出力端と第1基準電位端との間に設けられたスイッチSW21と、前記第2出力端と第2基準電位端との間に設けられたスイッチSW22とを含み、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路を含んで差動バッファを構成しており、
自段の単位セルの前記第1入力端が前段の単位セルの前記第1出力端と接続され、自段の単位セルの前記第2入力端が前段の単位セルの前記第2出力端と接続され、自段の単位セルの前記第1出力端が後段の単位セルの前記第1入力端と接続され、自段の単位セルの前記第2出力端が後段の単位セルの前記第2入力端と接続されて、リング状に接続され、
前記第1インバータ回路および前記第2インバータ回路それぞれがPMOSトランジスタおよびNMOSトランジスタにより構成されたCMOS回路であり、前記第1インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅が前記第2インバータ回路のPMOSトランジスタのゲート幅のαp倍であり、前記第2インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅が前記第1インバータ回路のNMOSトランジスタのゲート幅のαn倍であって、αpおよびαnの双方が1より大きいか又は双方が1より小さく、
前記制御部が、
第1段階において、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20のうち何れか2つの第1単位セルおよび第2単位セルそれぞれのスイッチSW10,SW20を選択的にオフ状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW11,SW22のうち前記第1単位セルのスイッチSW11,SW22を選択的にオン状態とし、前記複数個の単位セルそれぞれのスイッチSW12,SW21のうち前記第2単位セルのスイッチSW12,SW21を選択的にオン状態とし、
前記第1段階に続く第2段階において、前記計数部による計数動作を開始させ、前記第1信号が指示する第1時刻以前に前記第1単位セルのスイッチSW11,SW22をオフ状態に転じさせ、前記第1時刻に前記第1単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせ、前記第2信号が指示する第2時刻以前に前記第2単位セルのスイッチSW12,SW21をオフ状態に転じさせ、前記第2時刻に前記第2単位セルのスイッチSW10,SW20をオン状態に転じさせる、
ことを特徴とするTDC回路。
【請求項3】
前記計数部が、前記複数個の単位セルのうちの何れか1個の単位セルから出力されるデータのレベル遷移事象を計数して得られた計数結果と、その計数結果が得られるまでに前記複数個の単位セルのうちの他の何れかの1以上の単位セルから出力されるデータのレベル遷移状況とに基づいて、前記第1信号および前記第2信号それぞれが指示する時刻の間の時間に応じたデジタル値を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【請求項4】
前記複数個の単位セルそれぞれにおいて、
前記第1インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI11とインバータI12とを含み、
前記第2インバータ回路が、互いに並列的に設けられたインバータI21とインバータI22とを含み、
半導体基板上において、インバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、または、インバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【請求項5】
前記複数個の単位セルのうち奇数番目の単位セルでは前記半導体基板上においてインバータI11,I21,I22,I12の順に配置され、
前記複数個の単位セルのうち偶数番目の単位セルでは前記半導体基板上においてインバータI21,I11,I12,I22の順に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のTDC回路。
【請求項6】
前記複数個の単位セルそれぞれが、前記第1インバータ回路に対して並列的に設けられた第1トライステートインバータ回路と、前記第2インバータ回路に対して並列的に設けられた第2トライステートインバータ回路とを更に含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のTDC回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−60328(P2012−60328A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200271(P2010−200271)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(399011195)ザインエレクトロニクス株式会社 (61)
【Fターム(参考)】
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