説明

はんだ付け方法および該はんだ付け方法を用いて製造した電子回路基板ならびに電子機器

【課題】 フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の剥離現象を防止できるはんだ付け方法と電子回路基板、電子機器の提供。
【解決手段】 基板5の一側面にリフローはんだ付けを行い、基板5の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うはんだ付け方法において、リフローはんだ付けとフローはんだ付けのはんだ付け合金の組成または融点を異ならせたり、例えばリフローはんだ付け部2の裏側部分に断熱部材16を設けて、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度が低融点合金温度未満の固相線温度に達しないようにしたり、リフローはんだ付け部2の温度が高融点合金温度を超えた液相線温度になるようにする。これによりリフローはんだ付け部の剥離現象を起こさないようにできる。7はリフローはんだ面面実装部品、8はフローはんだ面面実装部品、9はリードはんだ付け部品、24は接着剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛フリーはんだ合金を用い、基板の一方の面においてリフローはんだ付けを行い、基板の他方の面においてフローはんだ付けを行うはんだ付け技術に係り、特に、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の剥離現象を防止することが可能なはんだ付け方法、および該はんだ付け方法を用いて製造した電子回路基板、電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子部品の実装に使用するはんだ合金には、鉛を多量に含有するSn−Pb系はんだが使用されている。しかしながら、鉛入りはんだでは、廃棄した回路基板から鉛が溶出し、この溶出鉛による生態系への悪影響や環境汚染が社会問題となっており、鉛フリーはんだ合金の使用が強く要望されている。
【0003】鉛フリーはんだ合金を使用するための様々な研究の結果、Sn−Pb系はんだに代わるPbフリーはんだ合金として、Sn−Ag−Bi3元系をベースとしたものが有力候補としてクローズアップされている。
【0004】その理由は、Pbフリーはんだとしては既に2元系まで拡張して組成が様々検討されていて、■Sn−3.5mass%Ag(融点221℃)、Sn−5mass%Sb(融点199℃)などが使用実績があるが、鉛を含んだSn−37mass%Pb(融点183℃)と比較して融点が高すぎるため、従来一般に使用されているガラスエポキシ基板のはんだ付けには使用が困難であること、■Sn−9mass%Zn(融点199℃)は、融点は下がるがはんだ表面が著しく酸化されやすくCu、Niなどの電極に対する濡れ性がSn−Ag、Sn−Sb系はんだに比較して著しく低下するため使用が困難であること、■Sn−58mass%Bi(融点138℃)は材料自体が硬く脆いため信頼性に問題があり使用が困難であること、■Sn−52mass%In(融点117℃)はSn−37mass%Pb(融点183℃)と比較して融点が低すぎるため、接続部高温強度が低下すること、などの問題があったが、Sn−Ag−Bi3元系まで拡張すれば、前記のような2元系の場合よりも融点を183℃(Sn−37mass%Pbの融点)に近づけることができるためである。
【0005】ところが、この3元系において融点を183℃に近いものを探索すると、完全な共晶組成を得ることはできず、183℃より低い固相線温度と183℃より高い液相線温度を持った(固液共存温度を持った)組成となってしまう。
【0006】そのため、リフローはんだ付けにより部品を接続した後、フローはんだ付けを行う際、接続された部品は、一般的にはガラスエポキシ基板と熱容量が異なるため、リフローまたはフローはんだ付け後、基板の自然空冷による冷却時に、部品と基板で温度の下がり方が異なり、接続部はんだ内に大きな温度勾配ができる。はんだの凝固の際、広い固液共存温度幅を持ったはんだの場合、温度の高い方へ低融点の相(Biが多く含まれた硬くて脆い相)を偏析させ、凝固を完了した後のリフローはんだ付け部品の接続強度低下を起こしやすい。
【0007】Biを含有したPbフリーはんだ合金に関するものとしては、例えば有機基板の両面に、Snを主成分とし、Biを0〜65mass%、Agを0.5〜4.0mass%、Cuおよび/またはInを合計0〜3.0mass%含有する鉛フリーはんだによってリフローはんだ付けを行った特開平11−221694号公報、基板と部品本体の間に熱伝導材料を設け、はんだ接続部内に大きな温度勾配ができないようにした特開2001−36233号公報などがある。
【0008】上記課題を解決するために、融点が高く、濡れ性が劣る材料となるが、はんだ付け時の接続信頼性が優れているSn−Ag−Cu3元系の鉛フリーはんだ合金が着目された。図23は、鉛フリーはんだの種類とその特徴(融点,機械特性,濡れ性,酸化性,加工性,コストおよび特徴)を一覧として表した図であり、図24は、代表的なはんだ合金の種類と融点(固相線温度、液相線温度)を一覧として表した図である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、信頼性が高いと思われていたSn−Ag−Cu3元系はんだでも、第一面をリフローはんだ付けした後に、第二面をフローはんだによるフローはんだ付けを行う場合、第一面側にはんだ付けされた部品において、図21に示すように部品リードなどに含まれるPbの偏析(3)が発生し、図22に示すようにはんだ付け部において剥離が起きることが判明した。
【0010】はんだ付け部の剥離は、フローはんだ付け時の熱伝達によって、リフローはんだ付け部分の温度がはんだ接続部の合金の融点付近(固相線温度と液相線温度の間)になることにより発生するものと考えられる。
【0011】これを防止するためには、(1)合金を溶融する固相線温度まで温度を上げない、すなわちリフローはんだ付け部を再溶融させないようにする、(2)合金が溶融しても、低融点成分の偏析を起こさない共晶組成を使用する、(3)合金が溶融しても、低融点成分の偏析とならない、高融点合金温度を超えた液相線温度を与え、その後冷却し再凝固させる、(4)合金が溶融した場合の凝固過程で、はんだ付け部内部に温度勾配を起こさない冷却を行うなどが有効である。
【0012】本発明の目的は、鉛フリーはんだを用いた、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の剥離現象を防止するはんだ付け方法、およびこれを用いた電子回路基板、電子機器を提供することにある。
【0013】さらに詳しくは、請求項1記載の発明は、リフローはんだ付け面とフローはんだ付け面で、組成またははんだ融点の異なる合金を選定し、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の温度が融点付近とならない材料の組み合わせ、共晶組成の材料との組み合わせ、噴流はんだのはんだ付け温度を低くできる材料との組み合わせにより、はんだ付け部の剥離が発生しない、はんだ付け材料の組み合わせを提供することを目的としている。
【0014】請求項2および3記載の発明は、リフローはんだ付け部に使用するはんだを共晶組成となる材料を選定し、部品リードに鉛が含まれた場合でも、リフローはんだ付け部のはんだ偏析を防止し、鉛フリー化を進めつつ、はんだ付け部の剥離が発生しない材料の組み合わせを提供することを目的としている。
【0015】請求項4および5記載の発明は、フローはんだ付け時の熱伝達が発生しても、リフローはんだ付け部の温度が融点に達しないことで、鉛フリー化を進めつつ、はんだ付け部の剥離が発生しない材料の組み合わせを提供することを目的としている。
【0016】請求項6〜16記載の発明は、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の温度を、低融点合金温度未満の固相線温度に達しないようにするために、断熱、放熱、冷却、基板レイアウトの工夫により、リフローはんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法を提供することを目的としている。
【0017】請求項17および18記載の発明は、フローはんだ付け時にリフローはんだ付け部分の温度を高融点合金温度を超える液相線温度以上にすること、または、加熱することで、合金の再拡散による部分的な偏析を防止、または、接続部はんだ内に発生する温度勾配を減らすことより、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法を提供することを目的としている。
【0018】請求項19記載の発明は、前記請求項1、6、17における、フローはんだ付け時にリフローはんだ付け部分の温度を、リード端子材料、はんだ付け材料、基板端子材料の組み合わせにおいて、合金組成組み合わせの一番低い融点に達しない温度に設定する、もしくは、合金組成の組み合わせの一番高い融点を超える温度に設定することで、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法を提供することを目的としている。
【0019】請求項20および21記載の発明は、はんだ付け部の剥離がない電子部品回路基板および電子機器を提供することを目的としている。
【0020】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は次の如き構成を採用した。すなわち、a)請求項1記載の発明は、基板の一側面にリフローはんだ付けを行い、基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うはんだ付け方法であって、リフローはんだ付けとフローはんだ付けのはんだ付け合金の組成または融点を異ならせたものであり、請求項2記載の発明は、リフローはんだ付けの材料を、Sn−Pb共晶をベースとし、その融点を175℃〜185℃となる組成の配合とするとともに、前記フローはんだ付けの材料をPb(鉛)を含まない組成としたものであり、請求項3記載の発明は、フローはんだ付けの材料を、Sn−Ag−Cuとしたものである。
【0021】b)請求項4記載の発明は、請求項1において、リフローはんだ付けの材料をPb(鉛)を含まない組成とし、フローはんだ付けの材料をSn−Pb共晶をベースとし、その融点を175℃〜185℃となる組成の配合としたものであり、請求項5記載の発明は、さらにリフローはんだ付けの材料をSn−Ag−Cuとしたものである。
【0022】c)請求項6記載の発明は、鉛フリー材料を用いた、基板の一側面にリフローはんだ付けを行い、基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うはんだ付け方法であって、フローはんだ付けを行う場合、リフローはんだ付け部の温度が合金溶融温度に達しないようにしたものである。
【0023】d)請求項7記載の発明は、リフローはんだ付け部の温度が合金溶融温度に達しないようにするために、フローはんだ面側に断熱効果のある材料を設けたものであり、請求項8記載の発明は、フローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域以外に、断熱効果のある材料を設けたものであり、請求項9記載の発明は、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、フローはんだ面側に断熱効果のある材料を設けたものであり、請求項10記載の発明は、フローはんだ面側のはんだ付け対象領域以外に、はんだが接触しないカバーを設けたものである。
【0024】e)請求項11記載の発明は、リフローはんだ付け部の温度が合金溶融温度に達しないようにするために、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、放熱部材を設けたものであり、請求項12記載の発明は、フローはんだ付けを複数回に分割して行うことにより連続した熱伝達が継続しないようにしたものである。
【0025】f)請求項13記載の発明は、リフローはんだ付け部の温度が合金溶融温度に達しないようにするために、フローはんだ付け直後にリフローはんだ付け面側より冷却するようにしたものであり、請求項14記載の発明は、フローはんだ付け直後にフローはんだ付け面側より冷却するようにしたものであり、
【0026】g)請求項15記載の発明は、リフローはんだ付け部の温度が合金溶融温度に達しないようにするために、フローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域以外に、噴流はんだを接触させない構造を設けたものであり、請求項16記載の発明は、基板を、フローはんだ付け対象領域とリフローはんだ付け対象領域とに分割してレイアウトしたものである。
【0027】h)請求項17記載の発明は、鉛フリー材料を用いた、基板の一側面にリフローはんだ付けを行い、基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うはんだ付け方法であって、フローはんだ付け時にリフローはんだ付け部の温度が合金融点を超えるようにしたものであり、請求項18記載の発明は、そのために、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、加熱手段を設けたものである。
【0028】i)請求項19記載の発明は、請求項1、6、または17のいずれかにおいて、はんだ付け部における合金が、部品側端子材料、はんだ付け材料、および基板側端子材料を含む合金組成を有するものである。
【0029】j)請求項20,21記載の発明は、上記はんだ付け方法を用いて製造した電子部品回路基板,電子機器である。
【0030】
【発明の実施の形態】(実施例の構成)現在幅広く使用されているプリント回路基板の混載実装は、部品の構成によって、■片面のみのリフローはんだ付け、■両面をリフローはんだ付け、■片面のみのフローはんだ付け、■一側面をリフローはんだ付け、他側面をフローはんだ付け、という4種類の実装方式に大別できる。
【0031】本発明のはんだ付け方法に係るプリント回路基板の実装方式は、上記4種類の実装方式のうち、■の一側面をリフローはんだ付けを行い、他側面をフロー(噴流)式はんだ付けを行う実装方式である。
【0032】図1はプリント回路基板実装時のリフローはんだ付け方法のフローチャートであり、図2(a)は電子部品実装後の状態を、図2(b)はリフローはんだ付け後の状態を示す図である。図3はプリント回路基板実装時のフロー(噴流)式はんだ付け方法のフローチャートであり、図4(a1)は基板予熱後、図4(a2)ははんだ付け噴流(フロー)前の、図4(b)はフローはんだ付け後の状態を示す図である。
【0033】本発明におけるプリント回路基板実装工程の流れを概略的に説明する。リフローはんだ付けでは、まず、クリームはんだ6を基板5に印刷し(図1のステップS101参照)、面実装部品7を搭載し(図1のステップS102、図2(a)参照)、赤外線ヒータによる加熱、または、熱風を吹き付けて一括はんだ付けを行う(図1のステップS103、図2(b)参照)。
【0034】このようにして基板の表面にリフローはんだ付けを行った後、基板5を裏返して、面実装部品の固定用に接着剤24を塗布した後、フローはんだ面面実装部品8を搭載し、接着剤24を硬化させ、基板を再度反転させ、リードはんだ付け部品9を挿入し、基板裏面からフラックスを塗布(図3のステップS201)、基板を予熱し(図3のステップS202、図4(a1)参照)、基板裏面に溶融したはんだの噴流10,11を接触させ、はんだ付けを行う(図3のステップS203のはんだ付け噴流および仕上げ噴流、図4(b)参照)。以上の手順によって、基板の表面にリフローはんだ付けを行い、裏面にフローはんだ付けを行う。
【0035】フローはんだ付けの温度は、その使用する合金に合わせて、通常約240〜260℃程度に設定されるが、リフローはんだ付け方式(図1,2参照)とフローはんだ付け方式(図3,4参照)の構成で混載実装されるプリント回路基板12において、その溶融し噴流しているはんだ(図4(a2)の10,11)を基板5に直接接触させるはんだ付けであるため、噴流はんだ(10,11)と基板5の接触面からの熱伝達によりリフローはんだ付け面側のリフローはんだ付け部分の温度が上昇する。
【0036】鉛フリーはんだ付け材料を用いた場合は、はんだ付け材料、部品側端子材料、基板側端子材料の組み合わせによって、リフローはんだ付け部分に生じる合金が低融点成分の偏析相を発現し(図21参照)、はんだ付け部の剥離を発生させてしまうという現象が生じる(図22参照)。この現象は、はんだが一瞬にして凝固する従来のSn−37mass%Pbなどの共晶組成のはんだを使用した場合には起こらなかった現象である。
【0037】しかし、環境問題などによりはんだを鉛フリー化しなければならない場合、この低融点成分の偏析を起こりにくくし、接続部の信頼性が著しく低下するのを防ぐためには、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2を下記(1)〜(4)の如き構成とするはんだ付け方法が有効であることが確認された。このようにした場合、図20に示すように、リフローはんだ付け部が剥離しなくなることがわかった。
【0038】(1)合金を溶融する固相線温度まで温度を上げない、すなわちリフローはんだ付け部を再溶融させないようにする。
(2)合金が溶融しても、低融点成分の偏析を起こさない共晶組成を使用する。
(3)合金が溶融しても、低融点成分の偏析とならない、高融点合金温度を超えた液相線温度を与え、その後、冷却し再凝固させる。
(4)合金が溶融した場合の凝固過程で、はんだ付け部分の温度勾配を起こさない冷却を行う。
【0039】次に、請求項1〜5記載の発明に係る実施例を、図面を用いて説明する。図5は、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度が合金融点に達しないプロファイルの一例を示す図であり、図6は、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度が合金融点を超えるプロファイルの一例を示す図である。
【0040】(請求項1〜5に係る実施例)電子部品の実装に使用するはんだ合金には、鉛を多量に含有するSn−Pb系はんだが使用されている。しかしながら、かかる鉛入りはんだでは、廃棄した回路基板から鉛が溶出し、この溶出鉛による生態系への悪影響や環境汚染が問題視されつつあり、鉛フリーはんだ合金の使用が要請されている。はんだ付け材料としては、鉛を含まない材料について、その種類と特徴(図23参照)が仔細に評価され、公知の技術となっているが、部品および基板の材料に使用されるメッキなどの表面処理材料からの鉛の削減は、対応時期のずれ、選定される材料が各社で統一されておらず、鉛を含む材料との混載が当面発生する状況である。部品端子部メッキに鉛が含まれる場合は、前述のように、フローはんだ付け時に、図22に示すように、リフローはんだ付け部2の剥離が発生する。
【0041】プリント回路基板をはんだ付けにより実装する場合に、はんだ材料から鉛を完全に除去することは、現状では多大なコストアップを伴わないと達成は不可能であり、鉛を現状より削減する方向で対応策を検討した結果、リフローはんだ付け部には鉛を含む共晶組成の材料を用い、実装プロセス上の鉛を削減することにより、剥離の発生しない信頼性の高いはんだ接合方法を実現することが一つの解決案と考えられる。部品端子部のメッキに鉛を含まないものとの組み合わせにおいても問題が発生しないことは、確認済みである。
【0042】フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度は、噴流はんだ温度を250℃とした場合180℃〜190℃である。これは、融点が183℃(Sn−37Pb共晶の融点)の標準的な設定であるが、噴流はんだ温度としては、230℃程度まで落とすことで、はんだの濡れ広がり性が多少落ちるが問題とならないレベルではんだ付けが可能である。この場合のリフローはんだ付け部2の温度は、噴流はんだ温度を250℃とした場合の180℃〜190℃に比較して相対的に20℃低下し、160℃〜170℃となる。
【0043】Sn−Ag−Cu3元系の鉛フリーはんだ合金の融点は217℃(共晶の融点)であり、フローはんだ付け温度としては、同様に考えると、280℃迄上げたいところだが、部品の耐熱、酸化かすの発生量増加、装置の耐久性を考えると、260℃程度までに抑えるのが妥当と考えられる。この場合リフローはんだ付け部2の温度は、噴流はんだの温度を250℃とした場合の180℃〜190℃に比較して相対的に10℃の上昇となり190℃〜200℃となる。
【0044】フローはんだ材料をSn−37Pbとすると、リフローはんだ付け部2の温度は160℃〜170℃となり、リフローはんだ付け部2の合金がリードメッキの鉛が含まれたとしても、Sn−Ag−Pbの合金融点(179℃)まで達することがないので、リフローはんだ付け部2が剥離するのを防止することが可能となる。
【0045】フローはんだ材料をSn−Ag−Cuとすると、リフローはんだ付け部2の温度は190℃〜200℃となり、リフローはんだ付け部2の合金をSn−Pbの合金融点(183℃)を超えることで確実に再拡散させ、リフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0046】鉛フリー化は、リフローはんだ付け方式とフローはんだ付け方式の双方において実施するのがベターであるが、現在は過渡期であり部品のリードなどに鉛を含む電極材を使用しているために、再溶融による鉛の偏析問題で剥離現象が発生する。その解決の手段として従来工法、従来材料であるSn−Pb共晶をベースとし、その融点を175℃〜185℃となる組成の配合(例えば、Sn−37mass%Pbで融点が183℃のものとSn−Pb−0.4Agで179℃〜183℃と固相線、液相線を持つはんだ)のはんだ材料を使用することにより、実績のある従来工法を活用し、かつ基板の一側面を鉛フリー化することができる。
【0047】上記の例では、リフローはんだ付け、フローはんだ付けの材料を鉛を含むはんだ材料を用いて説明したが、鉛を含まないはんだ材料を用いても、材料特性を見極め使い分けを実施し、リフローはんだ付け合金とフローはんだ付け合金の組成または融点を異ならせること、フローはんだの温度をコントロールすること、共晶の融点材料を用いることなどによりリフローはんだ付け部2の剥離を防止することが可能である。
【0048】次に、請求項6〜16記載の発明に係る実施例を、図面を用いて詳細に説明する。図7は断熱効果のある部材をフローはんだ面側に設けた一例を示す図であり、図8は断熱効果のある部材をはんだ付け対象領域以外に設けた一例を示す図であり、図9は断熱効果のある部材をリフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に設けた一例を示す図である。
【0049】また、図10はフローはんだ付け面側の対象領域にはんだが接触しないカバーを設けた一例を示す図であり、図11は放熱効果のある部材をリフローはんだ付け面側の対象領域に設けた一例を示す図である。
【0050】さらに、図12は噴流はんだを分割したフローはんだ付けのフローチャートであり、図13は噴流はんだを分割したフローはんだ付け時の、リフローはんだ付け部のリード温度が合金融点に達しないプロファイルの一例を示す図であり、図14はフローはんだ付け直後にリフローはんだ付け面側から冷却装置を設けた一例を示す図であり、図15はフローはんだ付け直後にフローはんだ付け面側から冷却装置を設けた一例を示す図である。
【0051】また、図16はフローはんだ付け面側の対象領域に、はんだが接触しない装置構造とした一例を示す図であり、図17はフローはんだ付け面側の対象領域とリフローはんだ付け対象領域を分割したプリント回路基板の一例を示す図である。
【0052】(請求項6に係る実施例)請求項6記載の発明は、鉛フリーはんだ材料を用いて、一側面をリフローはんだ付けし、他側面をフローはんだ付けを行なうプリント回路基板12の実装において、剥離のないリフローはんだ付け部を得るために、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度が低融点合金温度未満の固相線温度に達しないようにしたものである。。これを達成する方法としては、前述したように合金の組み合わせにより達成することも可能であるが、請求項7以降の説明において、はんだ付け方法としての別の実現方法を具体的に説明する。
【0053】(請求項7に係る実施例)請求項7記載の発明は、図7に示すように、基板5に噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、基板5のフローはんだ面側に噴流はんだの熱が直接伝わることを防ぐために耐熱樹脂などの断熱部材16を設けたものである。この構成により、リフローはんだ付け部2への基板接触面からの熱伝達を低下させることができるので、リフローはんだ付け面側のリフローはんだ付け部分2の温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりはんだ付け部の剥離の防止が可能となる。この断熱部材16は、フローはんだ付け時の基板接触面から伝わるリフローはんだ付け部の温度上昇を抑えられるものであれば如何なるものでもよい。
【0054】(請求項8に係る実施例)請求項8記載の発明では、図8に示すように、上記請求項7の構成において、基板5に噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、プリント回路基板12では接着剤24が硬化されたフローはんだ面面実装部品8ならびにリードはんだ付け部品9などのはんだ付け対象領域があるために、耐熱樹脂などの断熱部材16は、この領域を避けるようにしたものである。
【0055】リフローはんだ付け方式(図1および2参照)においてクリームはんだ6を塗布する要領、または、該当部分が切り取られたシート状の粘着質を持つ物、接着剤を塗布するディスペンスの要領などで断熱部材16を設けることが可能であり、これにより、フローはんだ面のほぼ全面に均一に断熱部材16が設けられることとなるため、リフローはんだ付け部2の温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりはんだ付け部の剥離の防止が可能となる。
【0056】(請求項9に係る実施例)請求項9記載の発明は、図9に示すように、上記請求項7の構成において、基板5に噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、リフローはんだ付け部の温度上昇により剥離が発生するので、リフローはんだ付け面側の対象となる部品に対して、融点に達しない温度を得られる領域となるフローはんだ面側の対象領域17を定め、この対象領域17の部分に耐熱樹脂などの断熱部材16を設けるようにしたものである。この構成により、適切な箇所のみの供給で、リフローはんだ付け部2への温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0057】(請求項10に係る実施例)請求項10記載の発明は、図10に示すように、噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、プリント回路基板5のリードはんだ付け部品9のはんだ付け対象部分に対応した切り欠き穴19をもった断熱カバー18を用いて、はんだ付け対象のプリント回路基板5のはんだ付け位置を、そのカバーの切り欠き穴19と位置合わせしセットするようにしたものである。この構成により、切り欠き穴19によりフローはんだ付けが行われ、リフローはんだ面面実装部品7のリフローはんだ付け部2は断熱カバー18により断熱されているため温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0058】(請求項11に係る実施例)請求項11記載の発明は、図10に示すように、基板5に噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、熱伝達により温度上昇するリフローはんだ付け部2に金属などの放熱部材(放熱カバー)20を接触させるようにしたものである。この構成により、リフローはんだ付け部2の温度上昇を放熱部材20の放熱効果により抑制することができ、その結果、リフローはんだ付け部2への温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0059】(請求項12に係る実施例)請求項12記載の発明は、図12のフローチャートに示すように、フローはんだ付け部の噴流を“はんだ付け噴流”と“仕上げ噴流”の2回に分けることによりリフローはんだ付け部2への熱伝達が継続しないようにしたものである。図3に示すフローはんだ付けのフローチャートでは、ステップS203に示すように、はんだ付け噴流と仕上げ噴流を連続的に行うためにリフローはんだ付け部2への熱伝達による温度上昇が大きくなる。
【0060】それに対して、図12のフローチャートでは、はんだの噴流を、1回目のはんだ付け噴流(ステップS303)、2回目の仕上げ噴流(ステップS306)の2回に分割し、噴流をリフローはんだ付け部2に連続して当てないようにしたもので、この構成により、図13に示す如き温度プロファイルとすることができ、リフローはんだ付け部2への温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0061】(請求項13に係る実施例)噴流はんだを接触させてはんだ付けを行う際、図5、図6に示すように、リフローはんだ付け部2の温度プロファイル15は、フローはんだ付け面基板温度プロファイル14と比較して、熱伝達の分だけ遅れてピークを迎えることとなる。この現象から考えると、リフローはんだ付け部2の温度のピークはフローはんだ付け直後より遅れることがわかる。
【0062】請求項13記載の発明は、フローはんだ付け直後の位置で、図14に示すように、リフローはんだ付け面から融点温度を超えない冷却効果のあるエアーなどを吹き付けるリフローはんだ付け部の冷却装置(リフローはんだ付け面側冷却装置)21を設けたものである。この構成により、フローはんだ付けを阻害することなく、リフローはんだ付け部2の温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0063】(請求項14に係る実施例)請求項14記載の発明は、図15に示すように、図14とは逆にフローはんだ面から冷却を行うフローはんだ付け部の冷却装置(フローはんだ付け面側冷却装置)22を設けたものである。本例の場合、温度上昇の大きいフローはんだ面側からの基板冷却となるので、フローはんだ付け後の基板冷却温度とリフローはんだ付け部2の冷却温度勾配を近づけることが可能となり、冷却効率の良い、発生応力の少ない、フローはんだ付けを阻害することもなく、リフローはんだ付け部2の温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0064】(請求項15に係る実施例)請求項15記載の発明は、図16に一例を示すように、はんだ付け噴流10、仕上げ噴流11を断熱カバー23などで覆い、フローはんだ付け該当箇所だけに噴流はんだが接触するような構造としたものである。この構成により、リフローはんだ付け部2への熱伝達が減少することとなる。
【0065】(請求項16に係る実施例)また、基板5のレイアウト位置を、図17に示すように、リフローはんだ面面実装部品7がはんだ付けされるリフローはんだ付け対象領域(A)と、リードはんだ付け部品9およびそのフローはんだ面側にフローはんだ面面実装部品8がはんだ付けされるフローはんだ付け対象領域(B)とにレイアウト的に分けるようにしたものである。この構成により、本発明の効果はさらに拡大され、フローはんだ付けを阻害することなく、リフローはんだ付け部の温度上昇が抑えられて合金融点に到達しないようになり、これによりリフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能となる。
【0066】次に請求項17および18の実施例を、図面を用いて説明する。図18はリフローはんだ付け面側加熱装置を示す図であり、図19はリフローはんだ付け面側加熱装置プロファイルを示す図である。
【0067】(請求項17に係る実施例)請求項17記載の発明は、鉛フリーはんだ材料を用いて、一側面をリフローはんだ付けし、他側面をフローはんだ付けを行なうプリント回路基板12の実装において、剥離のないリフローはんだ付け部2を得るために、フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部2の温度が高融点合金温度を超えた液相線温度になるようにしたものである。これを達成する方法としては、前述したように組成や融点の異なる合金の組み合わせを用いることも可能であるが、請求項18では、はんだ付け方法としての別の達成方法を具体的に説明する。
【0068】請求項18記載の発明は、図18に一例を示すように、フローはんだ付け装置の上部に、赤外線ヒータによる加熱、または、熱風を吹き付ける加熱などのリフローはんだ付け面側加熱装置26を設け、リフローはんだ付け部2の温度を、フローはんだ面からの基板熱伝達による温度加熱とリフローはんだ付け面加熱の上下加熱としたものである。
【0069】この構成により、リフローはんだ付け部2に、低融点成分の偏析とならない、高融点合金温度を超えた液相線温度を与えることが可能となり、合金が溶融した場合の凝固過程で、はんだ付け部分の温度勾配の差が発生しない、図19に示すような、フローはんだ付け面基板の温度プロファイル14とリフローはんだ付け部2の温度プロファイル15で示される冷却過程が得られ、フローはんだ付けを阻害することなく、リフローはんだ付け部2の剥離を防止することが可能となる。
【0070】(請求項19に係る実施例)請求項19記載の発明は、これまでの説明で述べたように、はんだ付け材料で使用される合金組成と合わせて、リード端子材料(部品側端子材料)や基板側端子材料の組み合わせにおいてできる合金組成を対象として捉えないと良好なはんだ付け状態は得られない。フローはんだ付け時にリフローはんだ付け部分2の温度をその組み合わせ合金の持つ融点(低い固相線温度と高い液相線温度の中間である固液共存温度)を考慮し設定することで、リフローはんだ付け部2の剥離の防止が可能である。
【0071】リード端子部メッキは従来のSn−Pbが現在でも主流であるが、PbフリーメッキはSn−2mass%Biメッキに移行されつつある。はんだ付け材料では、信頼性の高いSn−Ag系にCuを混ぜたSn−Ag−Cu系のPbフリーはんだが多く使われている。基板側端子材料は、表面はCu基板またはSn−Cuメッキが主流である。
【0072】以上の組み合わせにおいて、最も低い固相線温度は、部品端子のBiとはんだ付け材料および基板側端子材料のSnの組み合わせで約138℃の融点があるが、現状では、部品側端子材料はSn−10mass%Pbである。この場合では、固相線温度は、はんだ付け材料のSn−Agと部品側端子材料メッキのPbを合わせた179℃の融点が発生する。また、最も高い液相線温度は、SnとAgとCuの組み合わせで約217℃の融点がある。以上のような組み合わせを用いてフローはんだ付け条件を設定することで、リフローはんだ付け部2の温度を融点付近(179℃〜217℃の範囲)にさせないはんだ付けを行うことができ、これにより、リフローはんだ付け部2の剥離を防止することができる。
【0073】(請求項20、21に係る実施例)請求項20および21記載の発明は、上述した請求項1から請求項19のはんだ付け方法を用いて作成した電子回路基板や各種電子機器である。本発明によれば、鉛溶出による生態系への悪影響や環境汚染を防止することが可能な電子回路基板や各種電子機器を実現することができる。
【0074】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、リフローはんだ付けの合金組成と、フローはんだ付けの合金組成を異にすることで、融点の異なるはんだ合金材料を目的に合わせて、自由に組み合わせることができるので、剥離のないはんだ付け方法が可能となる。
【0075】請求項2記載の発明によれば、リフローはんだ付け合金組成を共晶組成となる材料を使用するので、フローはんだ付け後にリフローはんだ付け部の偏析が防止できるので、一部鉛フリー化による、剥離のないはんだ付け方法が可能となる。
【0076】請求項3記載の発明によれば、請求項2と組み合わせることで、部品リードに鉛が使われていても、フローはんだ付け部においては、高信頼性の鉛フリー材料を使用することができるので、一部鉛フリー化による、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0077】請求項4記載の発明によれば、フローはんだ付け合金組成を共晶組成となる低融点の材料を使用するので、フローはんだ付け時に熱伝達によるリフローはんだ付け部の温度が融点に達しないので、一部鉛フリー化による、剥離のないはんだ付け方法が可能となる。
【0078】請求項5記載の発明によれば、請求項4と組み合わせることで、リフローはんだ付け部においては、高信頼性の鉛フリー材料を使用することができるので、一部鉛フリー化による、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0079】請求項6記載の発明によれば、リフローはんだ付けの部の温度が合金の融点に達しないので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0080】請求項7記載の発明によれば、フローはんだ面側に断熱効果のある材料を設けたので、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0081】請求項8記載の発明によれば、、フローはんだ面側のはんだ付け領域以外に断熱効果のある材料を設けたので、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0082】請求項9記載の発明によれば、リフローはんだ付け面側の対象領域のみに、フローはんだ面に断熱効果のある材料を設けたので、作業効率が高く、基板のレイアウト制約が少なく、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することがなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0083】請求項10記載の発明によれば、フローはんだ面側のはんだ付け領域以外に噴流がはんだが接触しないカバーを設けるので、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0084】請求項11記載の発明によれば、リフローはんだ面側に放熱部材を設けたので、基板のレイアウト制約が少なく、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することがなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0085】請求項12記載の発明によれば、噴流はんだをはんだ付け噴流部と仕上げ噴流部に分割し温度上昇を抑えることで、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0086】請求項13記載の発明によれば、フローはんだ付け直後に、リフローはんだ面側から冷却するので、基板のレイアウト制約が少なく、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することがなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0087】請求項14記載の発明によれば、フローはんだ付け直後に、フローはんだ面側から冷却するので、基板のレイアウト制約が少なく、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することがなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0088】請求項15記載の発明によれば、フローはんだ面側のはんだ付け領域以外に噴流がはんだが接触しない構造とするので、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0089】請求項16記載の発明によれば、フローはんだ付け対象領域とリフローはんだ付け対象領域が分割してレイアウトされるので、フローはんだ面側のはんだ付けを阻害することなく、合金の制約を受けずに、リフローはんだ付け部分のはんだ合金温度を融点以下にできるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0090】請求項17記載の発明によれば、リフローはんだ付け部に高融点合金温度を超えた液相線温度を与えることにより、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0091】請求項18記載の発明によれば、リフローはんだ付け面からの加熱されるので、フローはんだ付け時にリフローはんだ付け部の偏析が防止でき、リフローはんだ付け部にかかる温度勾配を低減できるので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0092】請求項19記載の発明によれば、はんだ合金を構成する対象を、リード端子材料、はんだ付け材料、基板端子材料の組み合わせで一番低い融点に達しない温度、もしくは、一番高い融点を超える温度に設定するので、鉛フリー材料を用いた、はんだ付け部の剥離が発生しないはんだ付け方法が可能となる。
【0093】請求項20および21記載の発明によれば、鉛フリーはんだを使用し、はんだ付け部の剥離が発生しない電子回路基板および電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント回路基板実装時のリフローはんだ付け方法のフローチャートである。
【図2】電子部品実装後の状態、およびリフローはんだ付け後の状態を示す図である。
【図3】プリント回路基板実装時のフローはんだ付け方法のフローチャートである。
【図4】基板予熱後,はんだ付け噴流前,およびフローはんだ付け後の状態を示す図である。
【図5】フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の温度が合金融点に達しないプロファイルの一例を示す図である。
【図6】フローはんだ付け時に、リフローはんだ付け部の温度が合金融点を超えるプロファイルの一例を示す図である。
【図7】断熱効果のある部材をフローはんだ面側に設けた一例を示す図である。
【図8】断熱効果のある部材をはんだ付け対象領域以外に設けた一例を示す図である。
【図9】断熱効果のある部材をリフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に設けた一例を示す図である。
【図10】フローはんだ付け面側の対象領域にはんだが接触しないカバーを設けた一例を示す図である。
【図11】放熱効果のある部材をリフローはんだ付け面側の対象領域に設けた一例を示す図である。
【図12】噴流はんだを分割したフローはんだ付けのフローチャートである。
【図13】噴流はんだを分割したフローはんだ付け時の、リフローはんだ付け部のリード温度が合金融点に達しないプロファイルの一例を示す図である。
【図14】フローはんだ付け直後にリフローはんだ付け面側から冷却する装置を設けた一例を示す図である。
【図15】フローはんだ付け直後にフローはんだ付け面側から冷却する装置を設けた一例を示す図である。
【図16】フローはんだ付け面側の対象領域にフローはんだ付けカバーを設け、はんだが接触しない構造とした一例を示す図である。
【図17】フローはんだ付け面側の対象領域とリフローはんだ付け対象領域を分割したプリント回路基板の一例を示す図である。
【図18】リフローはんだ付け面側加熱装置を示す図である。
【図19】リフローはんだ付け面側加熱装置プロファイルを示す図である。
【図20】はんだ付け部において剥離が生じない状態を示す図である。
【図21】部品リードなどに含まれるPbの偏析を示す図である。
【図22】はんだ付け部において剥離が起きた状態を示す図である。
【図23】鉛フリーはんだの種類とその特徴(融点,機械特性,濡れ性,酸化性,加工性,コストおよび特徴)を一覧として表した図である。
【図24】代表的なはんだ合金の種類と融点(固相線温度、液相線温度)を一覧として表した図である。
【符号の説明】
1:部品リード端子、
2:リフローはんだ付け部、
3:Pbの偏析部、
4:基板端子、
5:基板、
6:クリームはんだ、
7:リフローはんだ面面実装部品、
8:フローはんだ面面実装部品、
9:リードはんだ付け部品、
10:はんだ付け噴流、
11:仕上げ噴流、
12:プリント基板回路、
13:リフローはんだ付け合金融点温度、
14:フローはんだ付け面基板温度プロファイル、
15:リフローはんだ付け面基板温度プロファイル、
16:断熱部材、
17:リフローはんだ付け面の対象領域、
18:断熱カバー、
19:切り欠き部(切り欠き穴)、
20:放熱カバー、
21:リフローはんだ付け面側冷却装置、
22:フローはんだ付け面側冷却装置、
23:フローはんだ部カバー、
24:接着剤、
25:リフローはんだ付け合金、
26:リフローはんだ付け面側加熱装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板の一側面にリフローはんだ付けを行うステップと、前記基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うステップを有するはんだ付け方法であって、前記両ステップにより形成されるはんだ付け部の合金の組成または融点を異ならせたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】 請求項1記載のはんだ付け方法において、前記リフローはんだ付けの材料を、Sn−Pb共晶をベースとし、その融点を175℃〜185℃となる組成の配合とするとともに、前記フローはんだ付け材料をPb(鉛)を含まない組成としたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項3】 請求項2記載のはんだ付け方法において、前記フローはんだ付け材料を、Sn−Ag−Cuとしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項4】 請求項1記載のはんだ付け方法において、前記リフローはんだ付け材料をPb(鉛)を含まない組成とし、前記フローはんだ付け材料をSn−Pb共晶をベースとし、その融点を175℃〜185℃となる組成の配合としたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項5】 請求項4記載のはんだ付け方法において、前記リフローはんだ付け材料をSn−Ag−Cuとしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項6】 鉛フリー材料を用いた、基板の一側面にリフローはんだ付けを行うステップと、基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うステップを有するはんだ付け方法であって、前記フローはんだ付けを行うステップにおいて、リフローはんだ付け部の温度を、低融点合金温度未満の固相線温度に達しないようにしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項7】 請求項6記載のはんだ付け方法において、フローはんだ面側に断熱効果を有する材料を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項8】 請求項7記載のはんだ付け方法において、フローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域以外に、断熱効果のある材料を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項9】 請求項7記載のはんだ付け方法において、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、フローはんだ面側に断熱効果のある材料を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項10】 請求項7記載のはんだ付け方法において、フローはんだ面側のはんだ付け対象領域以外に、はんだが接触しないカバーを設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項11】 請求項6記載のはんだ付け方法において、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、放熱部材を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項12】 請求項6記載のはんだ付け方法において、フローはんだ付けを複数回に分割して行うことにより連続した熱伝達が継続しないようにしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項13】 請求項6記載のはんだ付け方法において、フローはんだ付け直後にリフローはんだ付け面側より冷却するようにしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項14】 請求項6記載のはんだ付け方法において、フローはんだ付け直後にフローはんだ付け面側より冷却するようにしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項15】 請求項6記載のはんだ付け方法において、フローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域以外に、噴流はんだを接触させない構造を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項16】 請求項15記載のはんだ付け方法において、基板を、フローはんだ付け対象領域とリフローはんだ付け対象領域とに分割してレイアウトしたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項17】 鉛フリー材料を用いた、基板の一側面にリフローはんだ付けを行うステップと、基板の他側面に噴流はんだを接触させてフローはんだ付けを行うステップを有するはんだ付け方法であって、前記フローはんだ付けを行うステップにおいて、リフローはんだ付け部の温度を、高融点合金温度を超えた液相線温度以上にすることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項18】 請求項17記載のはんだ付け方法において、リフローはんだ付け面側のはんだ付け対象領域に対して、加熱手段を設けたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項19】 請求項1、6、または17のいずれか1項に記載のはんだ付け方法において、前記はんだ付け部における合金は、部品側端子材料、はんだ付け材料、および基板側端子材料からなる合金であることを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項20】 請求項1〜19のいずれか1項に記載のはんだ付け方法を用いて製造したことを特徴とする電子部品回路基板。
【請求項21】 請求項1〜19のいずれか1項に記載のはんだ付け方法を用いて製造したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図16】
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【図4】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2002−329956(P2002−329956A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−132295(P2001−132295)
【出願日】平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】