説明

はんだ接合装置

【課題】ワークの酸化膜や異物コンタミ等を均一に清浄化し、ばらつきのない良好なはんだ接合を実現するとともに、はんだ接合のスループットを向上させる。
【解決手段】リフロー装置内に設置されたワークを洗浄処理するカルボン酸含有ガスを生成する気化器が、金属カバーと、最内側の気化壁と、金属カバーと気化壁との間に充填された断熱材と、気化壁の外側面に設置された加熱ヒータとで形成されており、且つ気化壁の内側に空間部を有し、両端面が塞がれた筒状形状であり、キャリアガスを導入するガス導入管とカルボン酸含有液を供給する薬液供給管とが接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合装置に関するものであり、特に、半導体装置の製造工程における半導体チップや電子部品と配線基板との接合等に用いられるはんだ接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、はんだ接合では、はんだ表面や被接合部品表面を清浄化、すなわち酸化膜の除去および有機物等のコンタミの除去を行うためフラックスが用いられる。フラックスを用いたはんだ接合では、例えば、次のような工程を経る。
まず、加熱により、はんだや被接合物表面に塗布されたフラックスは、これらの表面を活性化しながら、被接合物表面を被覆している酸化膜を除去するとともに、加熱による被接合物表面の酸化を防止し、その活性状態を維持する。
それと同時に、はんだは、加熱により溶融し被接合物の表面に濡れ広がり、フラックスの一部は、はんだ溶融により分解する。その後、はんだは、冷却されて凝固し被接合物表面に接合され、同時に、被接合物上に残ったフラックスとその分解生成物も固化する。
【0003】
はんだ接合後に残った固化したフラックス残渣は、ハロゲン成分を含有しており、半導体装置の配線の、腐食やマイグレーションの原因となるので、徹底的な洗浄が要求され、半導体装置の製造コストが増大するとの問題があった。
また、フラックス残渣の洗浄において、フラックス残渣の除去を容易にできる、例えば、フロンやトリクレンを含む有機溶剤等を用いると、環境への悪影響が大きいとの問題があった。また、環境への悪影響が小さい活性力の弱い有機溶剤を用いると、洗浄効果が弱いため簡単に除去できず、有機溶剤を大量に使用する必要があるとともに、洗浄時間が長くなるとの問題があった。
【0004】
どちらにしても、有機溶剤の使用は多かれ少なかれ環境に悪影響を与えるとの問題があった。また、フラックスを用いたはんだ接合では、はんだ溶融時にフラックスの一部が分解し有害ガスとなるので、作業の安全性を確保する必要があるとの問題もあった。
そのため、フラックスを用いないはんだ接合方法の開発が望まれていた。
【0005】
上記のような問題を解決したフラックスを用いない半導体装置のはんだ接合方法として、カルボン酸を用いた半導体装置の接合方法がある。この方法は、カルボン酸により被接合物表面を被覆している酸化膜を除去し、はんだで接合するものである。
そして、この半導体装置の接合方法に用いられるはんだ接合装置は、はんだ接合される被接合物がセットされる加熱溶融チャンバ(加熱溶融チャンバと記す)と、この加熱溶融チャンバ内にカルボン酸を供給する供給装置(カルボン酸供給装置と記す)とを備えている。
【0006】
そして、上記カルボン酸供給装置には、カルボン酸含有液を入れた恒温槽と、この恒温槽から発生させたカルボン酸蒸気を加熱溶融チャンバに導入する導入管とを有するもの(カルボン酸供給装置Aと記す)がある。また、カルボン酸含有液を入れた液槽と、この液槽から、カルボン酸を含有する液やミストを加熱溶融チャンバ内に導入する導入管とを有するもの(カルボン酸供給装置Bと記す)がある。また、カルボン酸供給装置Bにおいて、カルボン酸を含有する液やミストを加熱溶融チャンバ内に導入する導入管の途中に、不活性ガス供給源からの不活性ガスと液槽からのカルボン酸を含有する液やミストとを混合する混合部を設けたもの(カルボン酸供給装置Cと記す)がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、上記カルボン酸供給装置には、カルボン酸含有液を蒸気化またはミスト化する超音波振動板と不活性ガスを導入するガス導入管とを有する容器と、この容器から発生した、カルボン酸蒸気またはカルボン酸を含有するミストを、加熱溶融チャンバに導入するガス放出管とを有するもの(カルボン酸供給装置Dと記す)がある。また、カルボン酸供給装置Dにおいて、超音波振動板を用いず、導入される不活性ガスによりカルボン酸含有液をバブリングできるようにガス導入管を配置したもの(カルボン酸供給装置Eと記す)がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3397313号公報(第6頁、第7頁、第5図、第6図、第7図)
【特許文献2】特許第3404021号公報(第3頁、第4頁、第1図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1における、カルボン酸供給装置Aを用いたはんだ接合装置では、恒温槽から発生させたカルボン酸蒸気を加熱溶融チャンバ内に導入するので、加熱溶融チャンバ内のカルボン酸蒸気の濃度が均一にならないとの問題があった。
また、カルボン酸蒸気を加熱溶融チャンバ内に輸送するドライビングフォースがなく、単なる圧力差もしくは拡散で導入されるので、カルボン酸蒸気を導入するのに時間を要するとの問題があった。
【0010】
特許文献1における、カルボン酸供給装置Bを用いたはんだ接合装置では、カルボン酸を含有する液やミストが加熱溶融チャンバ内に直接導入され、加熱溶融チャンバ内で加熱されて気化するので、気化したカルボン酸蒸気と加熱溶融チャンバ内の雰囲気との完全混合が困難である。すなわち、カルボン酸を含有する液やミストが投入される領域でのカルボン酸蒸気の濃度が濃くなり、加熱溶融チャンバ内の被接合物の全体が均一な濃度のカルボン酸蒸気に接触しないとの問題があった。
【0011】
また、カルボン酸含有液を、加熱溶融チャンバ内に直接導入して気化させる場合では、カルボン酸含有液が気化しきれないで、半導体装置等の被接合物に液状で付着して残留する可能性がある。そうすると、後工程において、この残留したカルボン酸含有液により、半導体装置等の被接合物が酸化する等の不具合を生じるとの問題があった。またカルボン酸含有液が残留した状態で、加熱溶融チャンバを外気に開放すると、周囲の大気にカルボン酸による異臭が発生する等の問題があった。
【0012】
特許文献1における、カルボン酸供給装置Cを用いたはんだ接合装置では、カルボン酸を含有する液やミストが、不活性ガスと混合されて加熱溶融チャンバ内に直接導入され、加熱溶融チャンバ内で加熱されて気化するので、その程度は小さくなるが、やはり、カルボン酸供給装置Bを用いたはんだ接合装置と同様な問題があった。
【0013】
特許文献2における、カルボン酸供給装置Dを用いたはんだ接合装置では、超音波振動板の振動により、カルボン酸含有液を蒸気化し、不活性ガスとともに、加熱溶融チャンバ内に導入するが、不活性ガス内に混入させるカルボン酸を含有する蒸気量は、カルボン酸含有液の温度、不活性ガスの温度、蒸気化雰囲気の圧力等により変動し、加熱溶融チャンバ内に導入されるカルボン酸蒸気の濃度が、不安定になるとの問題があった。
また、特許文献2における、カルボン酸供給装置Eを用いたはんだ接合装置でも、バブリングにより、カルボン酸含有液を蒸気化し、不活性ガスとともに、加熱溶融チャンバ内に導入するので、カルボン酸供給装置Dを用いたはんだ接合装置と同様な問題があった。
【0014】
また、特許文献2における、カルボン酸供給装置Dまたはカルボン酸供給装置Eを用いたはんだ接合装置において、カルボン酸含有液をミスト化し、不活性ガスとともに、加熱溶融チャンバ内に導入する場合は、カルボン酸含有液が、加熱溶融チャンバ内に直接導入され、加熱溶融チャンバ内で加熱されて気化するので、カルボン酸供給装置Bを用いたはんだ接合装置と同様な問題があった。
【0015】
従来の、カルボン酸供給装置A、カルボン酸供給装置B、カルボン酸供給装置C、カルボン酸供給装置Dまたはカルボン酸供給装置Eを用いた、はんだ接合装置では、カルボン酸を含有する蒸気の供給量を大きくすることが困難であり、接合工程のスループットが小さいとの問題があった。
また、はんだ接合装置を連続運転するには、複数のカルボン酸供給装置を設け、カルボン酸供給経路を切替えて継続してカルボン酸を加熱溶融チャンバ内に供給する必要がある。しかし、従来のはんだ接合装置では、カルボン酸供給経路を切替えると、加熱溶融チャンバ内のカルボン酸蒸気の濃度が変化するとの問題があった。
【0016】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加熱溶融チャンバ内に導入するカルボン酸蒸気濃度の安定化と、加熱溶融チャンバ内のカルボン酸蒸気濃度の均一化と、半導体装置等の被接合物へのカルボン酸含有液の残留防止とにより、安定した信頼性の高いはんだ接合を可能にし、加熱溶融チャンバ内へのカルボン酸蒸気の導入時間の短縮と、加熱溶融チャンバ内へのカルボン酸蒸気の供給量の増大とにより、はんだ接合工程のスループット向上を可能にする、半導体装置の製造に用いられるはんだ接合装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係わるはんだ接合装置は、ワークをはんだ接合するリフロー装置と、リフロー装置内に設置されたワークを清浄化処理するカルボン酸含有ガスを生成する気化器と、開閉バルブを有し、且つリフロー装置と気化器とに接続され、気化器で生成されたカルボン酸含有ガスをリフロー装置内に導入するカルボン酸含有ガス導入管とを備えたはんだ接合装置であって、リフロー装置は、ワークを収納するチャンバと、チャンバの両側部に設けられたゲートバルブと、チャンバの床部側に設けられたホットプレートと、チャンバに接続された排気開閉バルブを有するガス排気ポートとで形成されており、気化器は、最外側の金属カバーと、最内側の気化壁と、金属カバーと気化壁との間に充填された断熱材と、気化壁の外側面に設置された加熱ヒータとで形成されており、且つ気化壁の内側に空間部を有し、両端面が塞がれた筒状形状であり、気化器には、気化壁内側の空間部に、キャリアガスを導入するガス導入管とカルボン酸含有液を供給する薬液供給管とが接続されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係わるはんだ接合装置は、ワークをはんだ接合するリフロー装置と、リフロー装置内に設置されたワークを清浄化処理するカルボン酸含有ガスを生成する気化器と、開閉バルブを有し、且つリフロー装置と気化器とに接続され、気化器で生成されたカルボン酸含有ガスをリフロー装置内に導入するカルボン酸含有ガス導入管とを備えたはんだ接合装置であって、リフロー装置は、ワークを収納するチャンバと、チャンバの両側部に設けられたゲートバルブと、チャンバの床部側に設けられたホットプレートと、チャンバに接続された排気開閉バルブを有するガス排気ポートとで形成されており、気化器は、最外側の金属カバーと、最内側の気化壁と、金属カバーと気化壁との間に充填された断熱材と、気化壁の外側面に設置された加熱ヒータとで形成されており、且つ気化壁の内側に空間部を有し、両端面が塞がれた筒状形状であり、気化器には、気化壁内側の空間部に、キャリアガスを導入するガス導入管とカルボン酸含有液を供給する薬液供給管とが接続されているものであり、はんだ接合の信頼性向上とはんだ接合工程のスループット向上とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図(a)と、このはんだ接合装置を形成する気化器のA−A断面の模式図(b)とである。
【図2】本発明の実施の形態2に係わるはんだ接合装置における気化器の上面断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図(a)と、このはんだ接合装置を形成する気化器のA−A断面の模式図(b)とである。
図1に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置100は、被接合物であるワークを加熱してはんだ接合する加熱溶融チャンバに相当するリフロー装置13と、カルボン酸供給装置である気化器1と、気化器1で生成したカルボン酸含有ガスをリフロー装置13に導入するカルボン酸含有ガス導入管10とを備えている。すなわち、リフロー装置13と気化器1とは、カルボン酸含有ガス導入管10で接続されている。そして、カルボン酸含有ガス導入管10には開閉バルブ11が設けられている。
【0021】
リフロー装置13は、ワークを収納するチャンバ18と、ワークの搬入排出用のゲートバルブ19と、ワークを載置でき、且つ加熱によりはんだを溶融させるホットプレート14とを備えている。また、リフロー装置13には、リフロー処理後のガスを排気する、排気開閉バルブ21を有するガス排気ポート20が設けられている。
気化器1は、両端面が塞がれた円筒状であり、内部に円筒状の空間部を有している。そして、外側が金属カバー17であり、最内側が気化壁2であり、金属カバー17と気化壁2との間には断熱材3が充填されている。また、気化壁2の側壁外面には、加熱ヒータ9が接して設けられており、気化壁2の内面側が円筒状の空間部となっている。そして、加熱ヒータ9には、空間部に導入される、後述する不活性ガスでなるキャリアガスの流量によらず気化壁2の温度を一定に保つことができる能力を有するものが用いられる。
【0022】
また、気化器1には、不活性ガスでなるキャリアガスを導入するガス導入管8が接続されている。そして、ガス導入管8には、気化器1に導入するキャリアガスの流量を、計測するとともに設定する手段を有するガス流量計4が設けられている。
また、気化器1には、カルボン酸含有液を供給する薬液供給管7が接続されている。そして、薬液供給管7には、カルボン酸含有液を送るための薬液ポンプ6と、気化器1に供給するカルボン酸含有液の流量を、計測するとともに設定する手段を有する薬液流量計5とが設けられている。また、薬液供給管7の一端側は、気化器1の空間部に突出した突出部7aとなっている。
また、気化器1には、その空間部で形成されたカルボン酸蒸気とキャリアガスとの混合を促進する混合促進板23が、カルボン酸含有ガス導入管10の接続部に近接して設けられている。
【0023】
次に、本実施の形態のはんだ接合装置100の、はんだ接合する時の動作を説明する。
図1では、はんだ接合する動作を説明するため、ホットプレート14に載置された、基板15と板はんだ22を介して基板15に搭載された半導体チップ16とで構成されたワークを示している。
まず、気化器1の気化壁2は、加熱ヒータ9により、カルボン酸の沸点温度以上の所定の温度、例えば、ギ酸では110℃〜120℃、に加熱される。
次に、薬液ポンプ6により、薬液タンク(図示せず)のカルボン酸含有液が、薬液流量計5を経て、薬液供給管7から気化器1の空間部へ供給される。供給されたカルボン酸含有液は、気化壁2の内壁面に接して瞬時に気化する。
【0024】
また、キャリアガスが、ガス流量計4を経て、ガス導入管8から気化器1の空間部へ導入される。キャリアガスには、例えば、窒素が用いられる。
次に、導入されたキャリアガスと気化したカルボン酸蒸気とは、気化器1の空間部で即時に混合され、カルボン酸蒸気とキャリアガスとの混合物であるカルボン酸含有ガスが生成される。この気化器1で生成されたカルボン酸含有ガスは、カルボン酸含有ガス導入管10を介して、リフロー装置13のチャンバ18に導入される。
本実施の形態のはんだ接合装置100では、カルボン酸含有ガスの流量指令に応じて、キャリアガスの流量をガス流量計4で適宜コントロールすることができ、カルボン酸含有液の供給量を薬液流量計5で適宜コントロールすることができる。
【0025】
リフロー装置13のチャンバ18内で、ホットプレート14により加熱された、ワークを形成する基板15や半導体チップ16等の各部品は、その表面の酸化膜や異物コンタミ等を、導入されたカルボン酸含有ガスにより、清浄化される。そして、表面の酸化膜や異物コンタミ等が清浄化された部品は、溶融した板はんだ22により、はんだ接合される。
【0026】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、気化器1でカルボン酸含有液を瞬時に気化し、気化したカルボン酸蒸気とキャリアガスとを即時に混合し、均一混合されたカルボン酸含有ガスを得ることができる。そのため、チャンバ18内のカルボン酸蒸気の濃度を均一に保つことができ、ワークである各部品表面の酸化膜や異物コンタミ等の清浄化が均一になされるので、ばらつきのない信頼性が高いはんだ接合を実現でき、不良品の発生を抑制できる。
【0027】
また、カルボン酸含有物質が液状でチャンバ18内に導入されないので、ワークにカルボン酸含有液が残留することがない。そのため、半導体装置等の被接合物が、後工程で酸化する等の不具合を防止できるとともに、加熱溶融チャンバを外気に開放してもカルボン酸による異臭が発生しない。
また、カルボン酸含有ガスが加熱された状態で、チャンバ18に供給されるので、ワークである各部品表面の酸化膜や異物コンタミ等の清浄化が、即時に開始され、はんだ接合工程のスループットを向上できる。
【0028】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、カルボン酸含有液とキャリアガスとの供給系統が別々であるので、各流量計で、カルボン酸含有液の流量とキャリアガスの流量とを、各々把握するとともに設定でき、所望の濃度のカルボン酸含有ガスを高精度に得られ、カルボン酸含有ガスの濃度制御性が格段に優れている。
また、気化壁2が加熱ヒータ4で加熱されるので、気化壁2の温度制御が容易であり、供給されるカルボン酸含有液の量や導入されるキャリアガスの量が変化しても、気化壁2の温度を一定に保持することができ、生成するカルボン酸含有ガスの温度を一定に保つことができる。
【0029】
すなわち、カルボン酸含有ガスの温度を一定に保つことができるので、温度により変化するカルボン酸含有ガスの活性度を一定にでき、安定した清浄化処理ができる。
それと、気化壁2の温度制御が容易であり、所望の温度に設定できるので、所望の温度のカルボン酸含有ガス、すなわち、処理されるワークに対応した、最適の活性度のカルボン酸含有ガスを得ることができる。
【0030】
また、カルボン酸含有液の供給量やキャリアガスの導入量を増加させ、所望の濃度のカルボン酸含有ガスを多量に生成することができる。
すなわち、本実施の形態のはんだ接合装置100は、所望の濃度と活性度のカルボン酸含有ガスを、安定して精度良く得ることができるので、ワークを確実に清浄化でき、ばらつきのない良好なはんだ接合を実現できる。また、カルボン酸含有ガスを多量に生成できるので、同時に処理するワークを増加することができ、この面からも、はんだ接合工程のスループットを向上できる。
【0031】
本実施の形態のはんだ接合装置100では、カルボン酸含有液を、薬液タンク(図示せず)から薬液ポンプ6により吸い上げて気化器1に供給している。そこで、複数の薬液タンクを設け、カルボン酸含有液の薬液タンクからの供給経路を切替えることにより、気化器1にカルボン酸含有液を継続的に供給できる。すなわち、気化器1でカルボン酸蒸気を継続的に発生させ、加熱溶融チャンバ内にカルボン酸含有ガスを継続的に導入することにより、はんだ接合装置の長時間の連続運転を可能にする。
【0032】
本実施の形態のはんだ接合装置100は、清浄化処理に影響するカルボン酸含有ガスの温度や濃度等の性状は、上述したように、気化器1で制御されるので、例え、薬液タンクを切替える、すなわち、カルボン酸含有液の薬液タンクからの供給経路を切替えても、同じ性状のカルボン酸含有ガスを得ることができ、安定した連続運転が可能である。
本実施の形態のはんだ接合装置100の気化器1は、混合促進板23を備えているが、気化器1へのカルボン酸含有液の供給量が、あまり多くない場合は、混合促進板23がなくても、カルボン酸蒸気とキャリアガスとの均一混合が容易であり、同様な効果が得られる。また、本実施の形態のはんだ接合装置100は、気化器1の気化壁2の内面側が円筒状の空間部となっているが、筒状の空間部であれば良く、これに限定されない。
【0033】
実施の形態2.
図2は、本発明の実施の形態2に係わるはんだ接合装置における気化器の上面断面模式図である。
すなわち、図2は、図1における気化器のA−A断面に相当する図である。
図2に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置は、気化器1の気化壁2の内面側が円筒状の空間部となっており、ガス導入管8から連通する、気化器1へのキャリアガス導入口(ガス導入口と記す)8aが、気化壁2の円形の内側壁面の接線方向に向かって開口している以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様である。
【0034】
本実施の形態のはんだ接合装置は、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有するとともに、ガス導入口8aが、気化壁2の円形の内側壁面の接線方向に向かって開口しているので、導入されたキャリアガスは、気化壁2の円形の内側壁面に沿って旋回して流れる。そのため、カルボン酸含有液が気化壁2の内壁面に接して気化したカルボン酸蒸気とキャリアガスとの混合が促進され、均一なカルボン酸含有ガスの生成が、さらに容易になる。
また、旋回流となったキャリアガスは、気化器1に供給されたカルボン酸含有液を気化壁3の内側壁に沿うように付着させるので、カルボン酸含有液の気化が、さらに容易になる。
【0035】
実施の形態3.
図3は、本発明の実施の形態3に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
図3に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置300は、ガス排気ポート20に真空ポンプ24を設けた以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様であり、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有する。そして、排気開閉バルブ21は、チャンバ18と真空ポンプ24との間のガス排気ポート20に設けられている。
【0036】
従来、半導体装置のはんだ接合において、接合部のはんだ層内にボイドができると、接合部で熱伝導性が低下し、半導体装置で発生した熱を放熱する妨げとなった。
そこで、半導体装置のはんだ接合では、減圧リフローと呼ばれる、接合部のはんだ層内のボイドを低減させる接合手段が用いられている。
【0037】
減圧リフローとは、ワークにおいて、はんだが溶融している間に、ワークがセットされたチャンバ内の圧力を大気圧の1/10程度に減圧する工程と、また常圧に戻す工程、すなわち、減圧工程と加圧工程とを繰り返すものである。
このように、減圧工程と加圧工程とを繰り返すと、減圧下ではんだ層内のボイドの体積が膨張し、はんだ層の端部から外部に排出され、そして、常圧下ではんだを凝固させると、ボイドは収縮した状態で固定されるので、ボイドサイズが非常に小さくなったり、あるいはボイドが消滅したりする。
【0038】
本実施の形態のはんだ接合装置300では、減圧工程を、カルボン酸含有ガス導入管10の開閉バルブ11を閉じて、ガス排気ポート20に設けられた減圧手段である真空ポンプ24で排気することにより行い、加圧工程を、ガス排気ポート20の排気開閉バルブ21を閉じて、ガス導入管8から気化器1を介してキャリアガスを導入することにより行い、減圧リフローを実現できる。
加圧工程において導入されるキャリアガスの量は、かなり多くなるが、本実施の形態では、気化器1を介してキャリアガスが導入されるので、キャリアガスを十分に加熱でき、キャリアガスの温度低下を防止できる。
【0039】
つまり、キャリアガスの温度低下を防止できるので、減圧リフローを実施しても、キャリアガスにおけるカルボン酸蒸気の飽和蒸気圧の低下を防止でき、はんだ接合装置の清浄化能力が低下しない。
すなわち、本実施の形態のはんだ接合装置300は、そのワークを形成する部品の酸化皮膜やコンタミを清浄化する能力を低下させずに、減圧リフローを実現できる。
本実施の形態の、ガス排気ポート20に真空ポンプ24を設けることは、実施の形態2のはんだ接合装置にも適用でき、同様な効果が得られる。
【0040】
実施の形態4.
図4は、本発明の実施の形態4に係わるはんだ接合装置の側面断面模式図である。
図4に示すように、本実施の形態のはんだ接合装置400は、ガス導入管8の気化室1との接続部の直前に予熱ヒータ12を設けた以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様であり、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有する。
また、本実施の形態のはんだ接合装置400では、気化器1へ極端に多い量のキャリアガスを導入しても、キャリアガスが気化器1へ導入される直前に、予熱ヒータ12によって加熱されるので、気化壁2の温度低下がほとんど起こらない。
【0041】
すなわち、気化器1へ極端に多い量のキャリアガスを導入しても、気化壁2の温度低下がほとんど起こらないので、このキャリアガスの導入量に対応した、多量のカルボン酸含有液を供給しても、その気化が阻害されず、大流量のカルボン酸含有ガスを安定した濃度で、リフロー装置13に導入でき、はんだ接合工程のスループットを大幅に向上できる。
本実施の形態の、ガス導入管8の気化室1との接続部の直前に予熱ヒータ12を設けることは、実施の形態2または実施の形態3のはんだ接合装置にも適用でき、同様な効果が得られる。
【0042】
実施の形態5.
本実施の形態のはんだ接合装置は、気化壁2、混合促進板23、薬液供給管7の突出部7aおよびキャリアガス導入口8a等の、高温のカルボン酸が接触する部位に、チタン材またはグラファイトカーボン材を用いた以外、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様であり、実施の形態1のはんだ接合装置100と同様な効果を有する。
【0043】
本実施の形態のはんだ接合装置は、高温のカルボン酸が接触する部位に、チタン材またはグラファイトカーボン材が用いられ、腐食が起こり易いこれら部位の耐食性が大幅に向上しているので、気化器1の定期メンテナンスの頻度を極端に少なくでき、稼働率の向上とランニングコストの低減を図ることができる。
本実施の形態の、高温のカルボン酸が接触する部位に、チタン材またはグラファイトカーボン材を用いることは、実施の形態2、実施の形態3または実施の形態4のはんだ接合装置にも適用でき、同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係わるはんだ接合装置は、被接合物の酸化皮膜やコンタミを清浄化するカルボン酸含有ガスを、気化器で生成するものであり、安定したはんだ接合と、はんだ接合工程のスループット向上とが要求される半導体装置の製造に用いられる。
【符号の説明】
【0045】
1 気化器、2 気化壁、3 断熱材、4 ガス流量計、5 薬液流量計、
6 薬液ポンプ、7 薬液供給管、7a 突出部、8 ガス導入管、8a ガス導入口、
9 加熱ヒータ、10 カルボン酸含有ガス導入管、11 開閉バルブ、
12 予熱ヒータ、13 リフロー装置、14 ホットプレート、15 基板、
16 半導体チップ、17 金属カバー、18 チャンバ、19 ゲートバルブ、
20 ガス排気ポート、21 排気開閉バルブ、22 板はんだ、23 混合促進板、
24 真空ポンプ、100,300,400 はんだ接合装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークをはんだ接合するリフロー装置と、上記リフロー装置内に設置されたワークを清浄化処理するカルボン酸含有ガスを生成する気化器と、開閉バルブを有し、且つ上記リフロー装置と上記気化器とに接続され、上記気化器で生成されたカルボン酸含有ガスを上記リフロー装置内に導入するカルボン酸含有ガス導入管とを備えたはんだ接合装置であって、
上記リフロー装置は、上記ワークを収納するチャンバと、上記チャンバの両側部に設けられたゲートバルブと、上記チャンバの床部側に設けられたホットプレートと、上記チャンバに接続された排気開閉バルブを有するガス排気ポートとで形成されており、
上記気化器は、最外側の金属カバーと、最内側の気化壁と、上記金属カバーと上記気化壁との間に充填された断熱材と、上記気化壁の外側面に設置された加熱ヒータとで形成されており、且つ上記気化壁の内側に空間部を有し、両端面が塞がれた筒状形状であり、
上記気化器には、上記気化壁内側の空間部に、キャリアガスを導入するガス導入管とカルボン酸含有液を供給する薬液供給管とが接続されているはんだ接合装置。
【請求項2】
上記気化器の気化壁内側の空間部に、カルボン酸含有ガス導入管の接続部に近接して混合促進板を設けたことを特徴とする請求項1に記載のはんだ接合装置。
【請求項3】
上記ガス導入管に、気化器に導入するキャリアガスの流量を設定する手段を設け、上記薬液供給管に、上記気化器に導入するカルボン酸含有液の流量を設定する手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のはんだ接合装置。
【請求項4】
上記気化器の気化壁内側の空間部が円筒状であり、且つガス導入管から連通するガス導入口が、上記気化壁の円形の内側壁面の接線方向に向かって開口していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項5】
上記ガス排気ポートの、排気開閉バルブより排気側に減圧手段を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項6】
上記ガス導入管の、気化室との接続部の直前に予熱ヒータを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。
【請求項7】
高温のカルボン酸が接触する部位にチタン材またはグラファイトカーボン材を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のはんだ接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−124457(P2011−124457A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282346(P2009−282346)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】