説明

めっき方法及び電子デバイス

【課題】 本発明の目的は、簡単なプロセスで信頼性の向上が図れる、めっき方法を提供することにある。
【解決手段】 めっき方法は、(a)基板10の所定領域に粗化領域24を形成すること、(b)少なくとも粗化領域24の上方に界面活性剤層28を形成すること、(c)粗化領域24の上方であって、界面活性剤層28の上方に触媒層34を形成すること、(d)触媒層34の上方に金属層36を析出させること、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき方法及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
配線パターンを形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法が知られている。サブトラクティブ法では、基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストをマスクとして金属層をエッチングする。アディティブ法では、基板上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストの開口部にめっき処理によって金属層を析出させる。これらの方法によれば、フォトレジストを最終的に除去する点、さらにサブトラクティブ法では金属層の一部を除去する点において、資源及び材料の消費が問題となる場合がある。また、フォトレジストの形成及び除去工程が必要となるので、製造工程数が多いことが問題となる場合がある。また、フォトレジストを除去するときに使用する溶剤により、例えば触媒までもが除去される可能性がある。
【特許文献1】特開平8−64934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、簡単なプロセスで信頼性の向上が図れる、めっき方法及び電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(1)本発明に係るめっき方法は、
(a)基板の所定領域に粗化領域を形成すること、
(b)少なくとも前記粗化領域の上方に界面活性剤層を形成すること、
(c)前記粗化領域の上方であって、前記界面活性剤層の上方に触媒層を形成すること、
(d)前記触媒層の上方に金属層を析出させること、
を含む。本発明によれば、基板の粗化領域の上方に金属層を形成するので、基板と金属層の密着性の向上を図り、信頼性の向上を図ることができる。また、基板における金属層以外の領域の表面を荒らさないので、基板の強度を損なうことがなく、さらにはその領域の使用用途を広げることができる。また、例えばフォトレジストの使用を省略することができるので、簡単なプロセスで金属層を形成することができる。なお、本発明において、特定のAの上方にBが設けられているとは、A上に直接Bが設けられている場合と、A上に他の部材を介してBが設けられている場合と、を含むものとする。このことは、以下の発明においても同様である。
(2)このめっき方法において、
前記(a)工程は、前記基板の前記所定領域以外に他の界面活性剤層を形成し、該基板をウエットエッチングすることにより前記粗化領域を形成することを含んでもよい。
(3)このめっき方法において、
前記基板は、第1の極性を示し、
前記界面活性剤層及び前記他の界面活性剤層は、第2の極性を示してもよい。
(4)このめっき方法において、
前記(b)工程前に、前記他の界面活性剤層を除去することをさらに含み、
前記(b)工程で、前記界面活性剤層を前記粗化領域の上方のみに残存するようにパターニングして形成してもよい。
(5)このめっき方法において、
前記(b)工程で、光照射により前記界面活性剤層を前記粗化領域の上方のみに残存するようにパターニングするとともに、該光照射により前記他の界面活性剤層を除去してもよい。
(6)このめっき方法において、
前記基板及び前記他の界面活性剤層は、第1の極性を示し、
前記界面活性剤層は、第2の極性を示してもよい。
(7)このめっき方法において、
前記他の界面活性剤層が有する前記第1の極性の絶対値は、前記基板よりも大きくてもよい。
(8)このめっき方法において、
前記(b)工程で、前記界面活性剤層を、前記粗化領域の上方、及び前記他の界面活性剤層の上方に形成してもよい。
(9)本発明に係る電子デバイスは、
配線パターンを含む、電子デバイスであって、
前記配線パターンは、上記めっき方法を用いて形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0006】
(第1の実施の形態)
図1〜図8は、本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっき方法により基板上に金属層(配線パターン)を形成する。
【0007】
(1)図1に示すように、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。あるいは、基板10は、光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。
【0008】
最初に基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄又はウエット洗浄のいずれを適用してもよい。具体的には、例えば、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位(第1の極性)であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0009】
(2)次に、図1及び図2に示すように、基板10上に第1の界面活性剤層14をパターニングして形成する。例えば、第1の界面活性剤層14は、光照射によるパターニングにより形成することができる。
【0010】
具体的には、例えば界面活性剤成分を含む界面活性剤溶液に基板10を浸漬させ、図1に示すように、基板10の全面に第1の界面活性剤層12を形成する。第1の界面活性剤層12としては、基板10の液中表面電位が負電位(第1の極性)の場合、正電位(第2の極性)を示すものを使用することができる。具体的には、第1の界面活性剤層12としては、例えば、カチオン系界面活性剤(カチオン界面活性剤及びそれと同等の性質を有するもの)を用いることができる。界面活性剤溶液としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)の溶液や、アルキルアンモニウム系の溶液(例えば、セチルトリメチルアンンモニウムクロリド等)などを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜3分程度とすることができる。
【0011】
次に、界面活性剤溶液から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に3時間程度放置して乾燥させる。
【0012】
そして、図2に示すように、第1の界面活性剤層12をパターニングして、基板10の所定のパターン領域上に第1の界面活性剤層14を形成する。言い換えれば、パターニングにより、基板10の該パターン領域以外の領域上の第1の界面活性剤層12を光分解させて除去する。
【0013】
光16としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光16の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。これにより、第1の界面活性剤層12を光分解させることができる。また、この波長帯域の光16を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0014】
光16の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、5分〜30分間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光16の波長は、第1の界面活性剤層12を光分解することができるものであれば、特に限定されない。
【0015】
光16は、マスク20(例えばフォトマスク)を介して基板10に照射される。詳しくは、光源18と基板10の間にマスク20を配置し、光16をマスク20の遮光部22(例えばクロムなどの金属パターン部)以外の領域に透過させる。本実施の形態では、第1の界面活性剤層14のパターン領域以外に金属層を形成するため、遮光部22は、金属層のパターン形状と反転形状であって、かつ面対称な形状をなしている。マスク20は、基板10に接して配置されていてもよい。また、窒素雰囲気中で光照射処理を行えば、光16が減衰しにくいので好ましい。
【0016】
こうして、所定のパターン形状を有する第1の界面活性剤層14を形成することができる。
【0017】
(3)次に、図3に示すように、ウエットエッチングすることにより、基板10に粗化領域24を形成する。粗化領域24は、第1の界面活性剤層14から露出する領域に形成される。粗化領域24は、第1の界面活性剤層14のパターン形状と反転形状をなしている。なお、基板10の他の領域(粗化領域24以外の領域)は、第1の界面活性剤層14により被覆されているので表面が荒れることはなく、例えば平らな面にすることができる。
【0018】
ウエットエッチング工程では、基板10の材質に応じて、酸又はアルカリのいずれのエッチング液を使用してもよい。例えば、基板10が石英ガラスなどの無機系基板であれば、酸性溶液を使用することができる。また、例えば、基板10がポリイミドなどの有機系基板であれば、アルカリ溶液を使用することができる。ウエットエッチングの方式は、基板10をエッチング液に浸漬させる浸漬方式であってもよいし、エッチング液をシャワー又はスプレーにより塗布する方式であってもよい。なお、基板10をウエットエッチングすることにより、粗化領域24上の第1の界面活性剤層14の残渣を除去することができる。
【0019】
(4)次に、図4〜図6に示すように、基板10の少なくとも粗化領域24上に第2の界面活性剤層28を形成する。本実施の形態では、第2の界面活性剤層28を粗化領域24上のみに残存するようにパターニングして形成する。
【0020】
図4に示すように、第2の界面活性剤層28を形成する前に、第1の界面活性剤層14を除去してもよい。第1の界面活性剤層14は、例えば、基板10の全面に光照射を行うことにより分解除去することができる。光照射の詳細は上述した通りである。その後、必要に応じて基板10の洗浄工程を行い、第1の界面活性剤層14の残渣を除去することができる。
【0021】
その後、例えば基板10を界面活性剤成分を含む界面活性剤溶液に浸漬させ、図5に示すように、基板10の全面に第2の界面活性剤層26を形成する。第2の界面活性剤層26としては、上述した第1の界面活性剤層14と同一の極性を示す性質を有するものを使用することができ、例えばカチオン系界面活性剤を用いることができる。その材料の詳細はすでに説明した内容を適用することができる。
【0022】
そして、必要に応じて洗浄及び乾燥工程を行った後、第2の界面活性剤層26をパターニングして、基板10の粗化領域24上に第2の界面活性剤層28を形成する。言い換えれば、パターニングにより、基板10の粗化領域24以外の領域上の第2の界面活性剤層26を光分解させて除去する。本工程では、上述した光照射によるパターニング工程を適用することができる。その詳細は上述した通りであるが、本工程では、マスク30の遮光部32は、金属層(粗化領域24)のパターン形状と面対称な形状をなしている。
【0023】
(5)次に、図7に示すように、第2の界面活性剤層28上に触媒層34を形成する。第2の界面活性剤層28は、基板10の粗化領域24上のみに形成されているので、触媒層34を粗化領域24上のみに形成することができる。
【0024】
具体的には、触媒成分を含む触媒溶液に基板10を浸漬させる。第2の界面活性剤層28としてカチオン系のものを使用する場合、触媒として液中電位が負電位(第1の極性)を示すものを選択することができる。これにより、触媒を第2の界面活性剤層28上のみに選択的に吸着させ、第2の界面活性剤層28上のみに触媒層34を形成することができる。触媒層34は、無電解めっき液中において金属層36の析出を誘発するものであり、例えばパラジウムなどからなることができる。第2の界面活性剤層28上に吸着する触媒量を多くすると、触媒層34上に析出する金属層36の析出量が多くなる(析出スピードが速くなる)ので、触媒量を調整することにより金属層36の厚みをコントロールすることができる。触媒液としては、錫−パラジウムコロイド触媒液が挙げられるが、それに限定されるものではなく、金属層36の材料に応じて自由に選択することができる。なお、基板10を錫−パラジウムコロイド触媒液に浸漬させた場合には、触媒活性化のために基板10をホウフッ化酸水溶液に浸漬させることができる。こうして、錫コロイド粒子を除去して、パラジウムのみを第2の界面活性剤層28上に吸着させることができる。
【0025】
(6)次に、図8に示すように、触媒層34上に金属層36を析出させる。上述したように触媒層34は粗化領域24上のみに形成されているため、金属層36を粗化領域24上のみに形成することができる。
【0026】
具体的には、基板10を無電解めっき液に浸漬させることによって、触媒層34上に金属層36を析出させることができる。金属層36としてニッケル層を析出させる場合を説明すると、無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、基板10をこのような無電解めっき液(温度80℃)に1分程度浸漬することによって、0.05μm〜0.08μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。あるいは、無電解めっき液として、塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることもできる。例えば、基板10をこのような無電解めっき液(温度60℃)に1分程度浸漬することによって、0.05μm〜0.08μmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。なお、金属層36の材料は限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。
【0027】
こうして、基板10上に金属層36を形成することができる。金属層36は、基板10の荒れた面となっている粗化領域24上に形成されているため、基板10に対する金属層36の密着力を高めることができる。すなわち、粗化領域24の微細な凹凸と金属層36が物理的にかみ合うので、平坦な面に金属層36を形成するよりも、アンカー効果の向上を図ることができる。なお、図8では、第2の界面活性剤層28及び触媒層34は省略してある。
【0028】
本実施の形態に係るめっき方法によれば、基板10の粗化領域24の上方に金属層36を形成するので、基板10と金属層36(詳しくは第2の界面活性剤層28)の密着性の向上を図り、信頼性の向上を図ることができる。また、基板10における金属層36以外の領域の表面を荒らさないので、基板10の強度を損なうことがなく、さらにはその領域の使用用途を広げることができる。詳しくは、金属層36以外の領域において、高い信頼性をもって他の配線などを形成したり、基板10が光透過性基板である場合には高い透過率をもって光透過させたりすることができる。したがって、設計自由度の向上を図ることもできる。また、例えばフォトレジストの使用を省略することができるので、簡単なプロセスで金属層を形成することができる。
【0029】
上述した例では、第2の界面活性剤層28の形成前に第1の界面活性剤層14を除去するが、本実施の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、第2の界面活性剤層28をパターニングして形成するときの光照射により、第1の界面活性剤層14を同時に分解除去することができる。これによれば、第2の界面活性剤層28のパターニング、及び第1の界面活性剤層14の除去を同工程で行うことができるので、プロセスのさらなる簡略化を図ることができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
図9〜図14は、本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図である。本実施の形態では、第1及び第2の界面活性剤層として、異なる極性を示す性質のものを使用する。
【0031】
(1)上述した基板10を用意する。例えば、基板10として液中表面電位が負電位(第1の極性)を示すものを使用することができる。また、基板10を洗浄することにより、基板10に均一な負電位面を形成することができる。ここでの基板10の表面電位を−V(mV)(例えば−50mV)とする。
【0032】
(2)次に、図9及び図10に示すように、基板10上に第1の界面活性剤層42をパターニングして形成する。例えば、第1の界面活性剤層42は、光照射によるパターニングにより形成することができる。
【0033】
具体的には、例えば界面活性剤成分を含む界面活性剤溶液に基板10を浸漬させ、図9に示すように、基板10の全面に第1の界面活性剤層40を形成する。第1の界面活性剤層40としては、基板10と同一の極性を示すものを使用することができる。ここでの第1の界面活性剤層40の表面電位を−V(mV)(例えば−150mV)とすると、
|V|>|V
の関係を有することができる。すなわち、第1の界面活性剤層40は、基板10よりも第1の極性の絶対値が大きい(例えば2倍又は3倍以上大きい)性質を有する。第1の界面活性剤層40としては、例えば、アニオン系界面活性剤(アニオン界面活性剤及びそれと同等の性質を有するもの)を用いることができる。その場合、第1の界面活性剤層40は、基板10よりもより強い負電位面を示す性質を有するということができる。界面活性剤溶液としては、例えば、アルキルサルフェート成分を含む水溶性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)の溶液や、セッケン成分を含むN−ラウロイルサルコシンなどを用いることができる。
【0034】
次に、界面活性剤溶液から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に3時間程度放置して乾燥させる。
【0035】
そして、図10に示すように、第1の界面活性剤層40をパターニングして、基板10の所定のパターン領域上に第1の界面活性剤層42を形成する。言い換えれば、パターニングにより、基板10の該パターン領域以外の領域上の第1の界面活性剤層40を光分解させて除去する。本工程では、第1の実施の形態で説明した光照射によるパターニング工程を適用することができ、その詳細は上述した通りである。
【0036】
(3)次に、図11に示すように、ウエットエッチングすることにより、基板10に粗化領域24を形成する。本工程の詳細は、第1の実施の形態で説明した通りであり、ウエットエッチングすることにより粗化領域24を形成するとともに、粗化領域24上の第1の界面活性剤層42の残渣を除去することができる。
【0037】
(4)次に、図12に示すように、第2の界面活性剤層44を、基板10の粗化領域24上、及び第1の界面活性剤層42上に形成する。すなわち、基板10の全面に第2の界面活性剤層44を形成する。
【0038】
第2の界面活性剤層44としては、基板10(第1の界面活性剤層42)と異なる極性を示す性質のものを使用することができる。すなわち、第2の界面活性剤層44として、液中表面電位が正電位(第2の極性)を示す、カチオン系界面活性剤を用いることができる。ここでの第2の界面活性剤層44の表面電位を+V(mV)(例えば+100mV)とする。そうすると、基板10の粗化領域24上では、
−V+V(mV)(例えば−50+100=50mV)
となり、
基板10の粗化領域24以外の領域上では、
−V+V(mV)(例えば−150+100=−50mV)
となる。すなわち、第2の界面活性剤層44の下地の電位差により、表面が同じ第2の界面活性剤層44であっても、少なくとも電位面から推察するに、後述の触媒の吸着量に差が生じることがわかる。特に、上述したように、|V|>|V|の関係を有する場合、すなわち、第1の界面活性剤層42が基板10よりもより強い負電位面を示す場合には、電位差によるコントラストがより明確となる。
【0039】
なお、第2の界面活性剤層44の表面電位の数値は限定されるものではなく、触媒の性質により適宜決めることができるが、例えば、
|V|<|V|<|V
の関係を有していてもよい。
【0040】
(5)次に、図13に示すように、基板10の粗化領域24上であって、第2の界面活性剤層44上に触媒層46を形成する。第2の界面活性剤層44としてカチオン系のものを使用する場合、触媒として液中電位が負電位(第1の極性)を示すものを選択することができる。上述したように、第2の界面活性剤層44上は、第1の界面活性剤層42又は基板10の粗化領域24という下地の相違により、触媒の吸着量に差が生じるように処理されている。すなわち、下地が第1の界面活性剤層42の領域は、第1の界面活性剤層42の特性により第2の界面活性剤層44の特性が喪失された状態(すなわちカチオン系界面活性剤層として機能しない状態)となっている。したがって、触媒成分を含む触媒溶液に基板10を浸漬させることにより、触媒を粗化領域24上に選択的に吸着させることができる。なお、触媒層46は、無電解めっき液中において金属層48の析出を誘発するものであり、例えばパラジウムなどからなることができる。
【0041】
(6)その後、図14に示すように、触媒層46上に金属層48を析出させる。上述したように触媒層46は粗化領域24上に選択的に形成されているため、金属層48を粗化領域24上に選択的に形成することができる。なお、図14では、第1及び第2の界面活性剤層42,44並びに触媒層46は省略してある。
【0042】
必要があれば、金属層48を形成した後、金属層48以外の領域の第1及び第2の界面活性剤層42,44を除去してもよい。第1及び第2の界面活性剤層42,44は、上述した光照射工程及び洗浄工程により除去することができる。
【0043】
本実施の形態においても、第1の実施の形態で説明したように、簡単なプロセスで信頼性の向上を図ることができる。なお、本実施の形態のその他の詳細は、第1の実施の形態で説明した内容を適用することができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
図15は、本実施の形態に係るめっき方法により製造された電子デバイスの一例を示す図である。上述しためっき方法により、基板10上の粗化領域24上に配線パターン(金属層)を形成することができる。配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。その場合、基板10は配線基板である。すなわち、上述しためっき方法により配線基板を製造することができる。図15に示す例では、基板10には、集積回路チップ90が電気的に接続され、基板10の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electroluminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0045】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係るめっき方法を示す図。
【図15】本発明の第3の実施の形態に電子デバイスを示す図。
【符号の説明】
【0047】
10…基板 12,14…第1の界面活性剤層(他の界面活性剤層) 24…粗化領域
26,28…第2の界面活性剤層(界面活性剤層) 34…触媒層 36…金属層
40,42…第1の界面活性剤層(他の界面活性剤層) 44…第2の界面活性剤層
46…触媒層 48…金属層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板の所定領域に粗化領域を形成すること、
(b)少なくとも前記粗化領域の上方に界面活性剤層を形成すること、
(c)前記粗化領域の上方であって、前記界面活性剤層の上方に触媒層を形成すること、
(d)前記触媒層の上方に金属層を析出させること、
を含む、めっき方法。
【請求項2】
請求項1記載のめっき方法において、
前記(a)工程は、前記基板の前記所定領域以外に他の界面活性剤層を形成し、該基板をウエットエッチングすることにより前記粗化領域を形成することを含む、めっき方法。
【請求項3】
請求項2記載のめっき方法において、
前記基板は、第1の極性を示し、
前記界面活性剤層及び前記他の界面活性剤層は、第2の極性を示す、めっき方法。
【請求項4】
請求項3記載のめっき方法において、
前記(b)工程前に、前記他の界面活性剤層を除去することをさらに含み、
前記(b)工程で、前記界面活性剤層を前記粗化領域の上方のみに残存するようにパターニングして形成する、めっき方法。
【請求項5】
請求項3記載のめっき方法において、
前記(b)工程で、光照射により前記界面活性剤層を前記粗化領域の上方のみに残存するようにパターニングするとともに、該光照射により前記他の界面活性剤層を除去する、めっき方法。
【請求項6】
請求項2記載のめっき方法において、
前記基板及び前記他の界面活性剤層は、第1の極性を示し、
前記界面活性剤層は、第2の極性を示す、めっき方法。
【請求項7】
請求項6記載のめっき方法において、
前記他の界面活性剤層が有する前記第1の極性の絶対値は、前記基板よりも大きい、めっき方法。
【請求項8】
請求項7記載のめっき方法において、
前記(b)工程で、前記界面活性剤層を、前記粗化領域の上方、及び前記他の界面活性剤層の上方に形成する、めっき方法。
【請求項9】
配線パターンを含む、電子デバイスであって、
前記配線パターンは、請求項1から請求項8のいずれかに記載のめっき方法を用いて形成される、電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−291313(P2006−291313A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115411(P2005−115411)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】