説明

めっき方法

【課題】ムラがなくベース金属層との密着性の高いめっき層を容易に形成することができるめっき方法を提供する。
【解決手段】めっき液を用いて無電解めっきすることにより基板上に設けられたベース金属層の表面に金属成分を析出させてめっき金属層を形成する際、基板上にゲル状のめっき液を塗布し、このゲル状のめっき液によってベース金属層が覆われた状態でベース金属層のみを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に設けられたベース金属層上に金属成分を析出させためっき層を形成するめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、回路基板等に配線パターン等を形成する際には、無電解めっき方法が一般的に用いられている。例えば、基材上に設けられた配線パターンの表面に、ニッケルめっき層を形成し、このニッケルめっき層上に無電解めっき方法によって金めっき層を形成することで、配線パターンのパッドを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このように無電解めっき方法によって金めっき層を形成することで、金めっき層を比較的厚膜に形成することができる。
【0003】
ただし、比較的厚膜に形成することができるといっても、無電解めっきでの金属成分の析出速度は遅く、例えば、80℃以上の高温浴に3〜4時間、基板をめっき液に浸漬させ、且つ高精度の温度管理を行うことで1μmの厚さのメッキ層を形成することができるに過ぎない。
【0004】
また、従来の無電解めっき方法では、めっき液全体を加熱しているため、大きなエネルギーが必要であり、また長時間のめっき槽内の温度管理や基板の表面のイオン濃度を一定に管理することは非常に難しいため、めっきムラが生じてしまうという問題が生じていた。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、基板上にスパッタリング等で導電性薄膜パターン(ベース金属層)を形成し、この薄膜パターンを高周波電磁誘導加熱することで、薄膜パターンに無電解めっきを行う方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
このような無電解めっき方法では、薄膜パターンの表面部分のめっき液の温度が高温に加熱されるため、金属成分の析出速度が向上する。また、めっき液が部分的に加熱され、めっき液全体の温度変化が抑えられるため、めっき液の劣化等がある程度抑えられる。
【0007】
【特許文献1】特開2003−129252号公報
【特許文献2】特開平8−3758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような無電解めっき方法では、何れにしても従来と同様に大量のめっき液中に基板を浸漬させているため、例えば、基板表面のイオン濃度を一定に管理することは難しく、めっきムラが生じてしまう虞や、基板上に異常析出等が生じる虞はある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ムラがなくベース金属層との密着性の高いめっき層を容易に形成することができるめっき方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、めっき液を用いて無電解めっきすることにより基板上に設けられたベース金属層の表面に金属成分を析出させてめっき金属層を形成する際、前記基板上にゲル状のめっき液を塗布し、このゲル状のめっき液によってベース金属層が覆われた状態で前記ベース金属層のみを加熱することを特徴とするめっき方法にある。
【0011】
かかる本発明では、めっき金属層を形成する際に使用するめっき液の量が少量で済み、またそれに伴いめっき液を加熱するためのエネルギー量も抑えられる。すなわち、本発明によれば、比較的短時間で効率的にめっき金属層を形成することができる。また、比較的少量のめっき液を用いて短時間でめっき処理を行うことができるため、めっき液の温度やめっき液のイオン濃度を略一定に制御でき、めっきムラの発生を防止することができる。
【0012】
ここで、前記ベース金属層は電磁誘導加熱により加熱することが好ましい。あるいは、前記基板の前記ベース金属層側の面に、当該ベース金属層に対応する位置に開口部を有するマスク部材を介してランプ照射することにより前記ベース金属層を加熱するようにしてもよい。これにより、極めて容易に且つ確実にベース金属層を選択的に加熱することができる。
【0013】
また、前記基板上に塗布されたゲル状のめっき液の温度を金属成分が析出し始める温度よりも低い温度に保持した状態で、前記ベース金属層を加熱するが好ましい。さらに、前記ベース金属層の温度を金属成分が析出し始める温度よりも高い所定温度に加熱し、且つ所定温度の±5℃の範囲となるように当該ベース金属層の温度を制御することが望ましい。これにより、めっき液中で金属成分の異常析出を防止して、ベース金属層の表面のみに確実にめっき金属層を形成することができる。
【0014】
また、このような本発明は、前記めっき金属層が金(Au)からなる場合に、特に効果的である。すなわち、本発明によれば、ベース金属層上に金(Au)からなるめっき金属層をムラなく良好に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、実施形態に基づいて本発明の詳細を説明する。
(実施形態1)
図1は、本実施形態のめっき方法により基板上に形成した配線パターン20の断面図である。例えば、シリコン基板等からなる基板10上に設けられた配線パターン20は、図1に示すように、密着層21を介して設けられるベース金属層22と、このベース金属層22の表面に形成されためっき金属層23とで構成されている。めっき金属層23は、本実施形態では、金(Au)からなり、ベース金属層22が形成された基板10の表面に無電解めっきを施すことによって形成されている。ベース金属層22は、このように無電解めっきによって形成されるめっき金属層23の下地となる層である。そして、本実施形態ではめっき金属層23が金(Au)からなるため、ベース金属層22も金(Au)で形成されている。このベース金属層22の形成方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法によって形成すればよい。なお、密着層21は、例えば、ニッケルクロム(NiCr)等からなる極めて膜厚の薄い層であり、ベース金属層22の基板10との密着性を確保するために設けられている。勿論、密着層21の材料は、ベース金属層22の基板10との密着性を確保することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、あるいはこれらの合金等を用いてもよい。
【0016】
以下、このような配線パターン20の形成方法、特に、めっき方法について説明する。なお、図2及び図3は、配線の形成工程を示す断面図である。
【0017】
まず、図2(a)に示すように、基板10の全面に、例えば、スパッタリング法によって密着層21となる厚さ20nm程度のNiCr層31を形成する。次に、図2(b)に示すように、NiCr層31上に、例えばスパッタリング法によってベース金属層22となる厚さ200nm程度のAu層32を形成する。次いで、図2(c)に示すように、このように基板10上に形成されたNiCr層31及びAu層32をフォトリソグラフィ法により所定形状にパターニングする。これにより、めっき金属層23の下地層であるベース金属層22が形成される。
【0018】
次に、図3(a)に示すように、ベース金属層22が形成された基板10の表面にゲル化した無電解めっき液(以下、ゲル状めっき液)40を全面に亘って塗布する。ゲル状めっき液40の塗布量は特に限定されないが、ベース金属層22がゲル状めっき液40によって完全に覆われる程度に塗布されていればよい。なお、ゲル状めっき液40は、塗布したときの形状を保持可能な程度の粘度を有することが好ましい。また、液状の無電解めっき液をゲル化する方法は、特に限定されないが、例えば、無電解めっき液に寒天等を添加することによってゲル化すればよい。
【0019】
次いで、ベース金属層22のみを選択的に加熱することによってゲル状めっき液40の金属成分、本実施形態では、金(Au)を析出させてベース金属層22の表面にめっき金属層23を形成する。例えば、本実施形態では、図3(b)に示すように、誘導加熱コイル51を有する電磁誘導加熱(IH)ヒータ50によってベース金属層22を選択的に加熱し、ベース金属層22の周囲のゲル状めっき液40aのみを所定温度まで上昇させている。これにより、ベース金属層22の周囲、例えば、ベース金属層22から1mm程度の範囲のみのゲル状めっき液40aが液化されて金属成分が析出し、ベース金属層22の表面にめっき金属層23が形成される。すなわち、液化されたゲル状めっき液40中の金イオンが還元剤により還元されることで、ベース金属層22上に金として析出してめっき金属層23が形成される。
【0020】
このように本実施形態では、ベース金属層22が形成された基板10上にゲル状めっき液40を塗布して、ベース金属層22を選択的に加熱することによってめっき金属層23を形成するようにした。すなわち、めっき金属層23を形成する際に、ベース金属層22の周囲のみのゲル化めっき液40を液化(溶解)させるようにした。これにより、少量のめっき液40で効率的にめっき金属層23を形成することができる。また、めっき液の使用量の減少や、ゲル状めっき液40の一部を選択的に加熱していることに伴って、めっき時間が従来の半分程度が短縮されるため、製造効率及び製造コストを大幅に向上することができる。さらに、ゲル状めっき液40が加熱されて液化される量は比較的少量であるため、めっき液の温度や、イオン濃度等を高精度に管理することができ、めっき金属層23がムラなく良好に形成される。
【0021】
また、このようにベース金属層22を加熱してめっき金属層23を形成する際、ゲル状めっき液40は、金属成分が析出する温度よりも低い温度、本実施形態では40℃未満に保持されていることが好ましい。そして、この状態でベース金属層22を加熱し、ベース金属層22の周囲のゲル状めっき液40aの温度を金属成分が析出する温度以上に上昇させてめっき処理を行う。またその際、めっき液の温度を±5℃の範囲で調整することが好ましい。例えば、本実施形態では、めっき液の温度が50±5℃の範囲となるようにベース金属層22の加熱温度を調整するようにした。
【0022】
これにより、ゲル状めっき液40中での金属成分の異常析出を防止することができる。また、例えば、基板10上の配線パターン20以外の領域に、上述したAu層32の残渣が存在する場合でも、この残渣に金属成分が析出することがなく、異物の発生を防止することができる。すなわち、めっき金属層23を、ベース金属層22の表面のみに確実に形成することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、めっき金属層23を形成する際に、電磁誘導加熱ヒータ50によってベース金属層22を選択的に加熱するようにしたが、電磁誘導加熱ヒータ50の構造は特に限定されるものではない。また、ベース金属層22の加熱方法は、電磁誘導加熱ヒータ50によるものに限定されるものではない。例えば、図4に示すように、ベース金属層22が設けられた基板10が載置されるテーブル61と、ベース金属層22に対向する領域に開口部62を有するマスク部材63と、加熱ランプ64とを有するランプ加熱装置60によってベース金属層22を選択的に加熱するようにしてもよい。すなわち、マスク部材63を介してベース金属層22に選択的に加熱ランプ64からの光を照射するようにしてもよい。また、勿論、熱伝導によりベース金属層22に熱を伝えるようにしてもよい。
【0024】
また、例えば、本実施形態では、所定形状にパターニングしたベース金属層22上にめっき金属層23を形成するようにしたが、例えば、基板一面に設けられたベース金属層上にめっき金属層を形成するようにしてもよい。また、本実施形態では、金からなるベース金属層22上にめっき金属層23を形成したが、密着層21上に直接、めっき金属層23を形成することもできる。一方、めっき金属層23の材料として金(Au)を用いた例を説明したが、勿論、その他の金属、例えば、銅(Cu)、錫(Sn)、白金(Pt)等を用いることもできる。また、密着層21を設けたが、基板10とその上に形成される層の材料の密着性の相性が良いのであれば、密着層21を設けずに、基板10上に直接ベース金属層22やめっき金属層23を形成しても良い。さらに、基板10としてシリコン基板を用いたが、基板10の材料は特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のめっき方法により形成した配線パターンの概略断面図である。
【図2】本発明に係る配線パターンの形成工程を示す断面図である。
【図3】本発明に係る配線パターンの形成工程を示す断面図である。
【図4】本発明に係る配線パターンの形成工程の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
10 基板、 20 配線パターン、 21 密着層、 22 ベース金属層、 23 めっき金属層、 40 ゲル状めっき液、 50 電磁誘導加熱ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を用いて無電解めっきすることにより基板上に設けられたベース金属層の表面に金属成分を析出させてめっき金属層を形成する際、前記基板上にゲル状のめっき液を塗布し、このゲル状のめっき液によってベース金属層が覆われた状態で前記ベース金属層のみを加熱することを特徴とするめっき方法。
【請求項2】
前記ベース金属層を電磁誘導加熱により加熱することを特徴とする請求項1に記載のめっき方法。
【請求項3】
前記基板の前記ベース金属層側の面に、当該ベース金属層に対応する位置に開口部を有するマスク部材を介してランプ照射することにより前記ベース金属層を加熱することを特徴とする請求項1に記載のめっき方法。
【請求項4】
前記基板上に塗布されたゲル状のめっき液の温度を金属成分が析出し始める温度よりも低い温度に保持した状態で、前記ベース金属層を加熱することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のめっき方法。
【請求項5】
前記ベース金属層の温度を金属成分が析出し始める温度よりも高い所定温度に加熱し、且つ所定温度の±5℃の範囲となるように当該ベース金属層の温度を制御することを特徴とする請求項4に記載のめっき方法。
【請求項6】
前記めっき金属層が金からなることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のめっき方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−121076(P2008−121076A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307103(P2006−307103)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】