説明

アモルファスカーボンのドーピングによるフルオロカーボン(CFx)の接合の改善

絶縁層上にアモルファスカーボン層を形成する方法は、プラズマ反応プロセスを用いることによってアモルファスカーボン層を形成する工程を有する。前記アモルファスカーボン層は、プラズマ励起ガス、一連のCxHyガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスを含む雰囲気中で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及び当該半導体デバイスの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、フルオロカーボン(CFx)で作られた層間絶縁層とアモルファスカーボン(aC)層との間の接合を改善するためのアモルファスカーボン(aC)層形成プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多層相互接続構造が、半導体デバイスの高速動作及び小型化を実現させるために用いられてきた。しかしこれらの構造は、全体の配線抵抗及び配線層の寄生容量の増大による配線遅延の問題を生じさせてきた。
【0003】
相互接続体として低抵抗の配線材料−たとえば銅(Cu)−を用いることで配線抵抗は減少する。また絶縁層に低誘電率すなわちlow-k材料を用いることによって寄生容量も減少する。他方、銅(Cu)が絶縁層へ拡散するのを防止するため、相互接続体と絶縁層との間にバリア層が供される。半導体デバイスの高速動作を実現するためには、絶縁材料−たとえばアモルファスカーボン(aC)を用いることによって寄生容量を低下させることが強く求められている。
【0004】
フルオロカーボン(CFx)が、絶縁層の材料として用いられるとき、そのフルオロカーボン(CFx)層に含まれるフッ素は、そのフルオロカーボン(CFx)層とアモルファスカーボン(aC)で作られたバリア層との間の界面でフッ化反応を生じさせる。フッ化反応は、半導体デバイスの製造中に実行される後続の熱処理プロセスに起因する。それによりガス脱離反応物−たとえばフッ化水素(HF)−が、水素(H2)とフッ素(F2)との反応によって生じる。その結果、アモルファスカーボン(aC)のバリア層は、接合特性の顕著な劣化に起因して、フルオロカーボン(CFx)の絶縁層又は銅の相互接続体から離れてしまう恐れがある。
【0005】
フッ化水素(HF)の脱離反応を抑制するため、アモルファスカーボン層を形成するプロセスが特許文献1において提案されている。このプロセスでは、アモルファスカーボン(aC)層には、ドーパント−たとえばシリコン(Si)−がドーピングされている。アモルファスカーボン(aC)層にシリコンをドーピングする(aC:Si)ことで、フッ化水素(HF)の生成は抑制されるが、その結果、このプロセスは、3フッ化シリコン(SiF3)を発生させる。3フッ化シリコン(SiF3)が発生することで、フルオロカーボン(CFx)の絶縁層とシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層との間の接合は劣化してしまう。従って、アモルファスカーボン(aC:Si)層は、上述したように、フルオロカーボン(CFx)の絶縁層又は銅の相互接続体から離れてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許出願公開第2008-141009号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題の観点から提案された。本発明は、アモルファスカーボン(aC:Si)層とフルオロカーボン(CFx)の絶縁層との間でのフッ化反応を抑制しながら、両者の接合を改善するアモルファスカーボン(aC:Si)層形成方法を供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様によると、アモルファスカーボン層を形成する方法が供される。当該方法は、プラズマ反応プロセスを用いることによってアモルファスカーボン層を形成する工程を有する。前記アモルファスカーボン層は、プラズマ励起ガス、一連のCxHyガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスを含む雰囲気中で形成される。
【0009】
本発明の第2態様によると、バリア層としてアモルファスカーボン層を有する半導体デバイスの製造方法が供される。当該方法は、基板全体にわたってフルオロカーボン(CFx)層を形成する工程、及び、プラズマ反応プロセスを用いることによって、前記フルオロカーボン(CFx)層上にアモルファスカーボン層を形成する工程を有する。前記アモルファスカーボン層は、プラズマ励起ガス、一連のCxHyガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスを含む雰囲気中で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プラズマ膜形成装置に係る実施例の概略図を表している。
【図2】プラズマ膜形成装置のガス供給ユニットの上面図を表している。
【図3】プラズマ膜形成装置のアンテナ部分の部分断面図を表している。
【図4】プロセスガス導入の順序及びタイミングの概略図である。
【図5】標的構造及び様々な実験用試料についてのHFガス脱離のTDS解析を表している。
【図6】図4に図示されたのと同一の標的構造を有する様々な実験用試料についてのSiF3ガス脱離のTDS解析を表している。
【図7】様々な実験試料の標的構造及び表面像を、ブリスターテスト及びテープテスト結果と共に表している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は概して、半導体デバイス及びその製造方法に関する。より具体的には、本開示は、アモルファスカーボン(aC)層とフルオロカーボン(CFx)で作られた絶縁層との間での接合を改善する、アモルファスカーボン(aC)層の新たな作製方法に関する。
【0012】
本発明の実施例は、三フッ化シリコン(SiF3)とフッ化水素(HF)の生成を抑制し、さらにアモルファスカーボン(aC)層とフルオロカーボン(CFx)絶縁層との間での接合を改善するアモルファスカーボン(aC)層の作製方法に関する。これは、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)が生成される雰囲気に酸素含有ガスを加えることによって実現される。このようにして、シリコンと酸素がドーピングされた新たなアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)が、フルオロカーボン(CFx)絶縁層上に堆積される。
【0013】
シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン層を形成する膜形成雰囲気に酸素含有ガスを加えることによって、シリコンと酸素がドーピングされた新たなアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)内のシリコン(Si)のダングリングボンドは、酸素によって終端する。その結果、三フッ化シリコン(SiF3)の生成が抑制される。それによりアモルファスカーボン(aC)層とフルオロカーボン(CFx)層との間での接合が改善される。
【0014】
本発明の一の態様によると、本発明の方法によって形成されたシリコンと酸素がドーピングされたアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)は、接合を改善するための多層相互接続構造間のバリア層として機能することができる。この実施例では、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層は、2つの隣接する−たとえばn番目と(n+1)番目の−相互接続配線構造のフルオロカーボン(CFx)絶縁層間に挟まれている。これにより、半導体デバイス中でのフルオロカーボン(CFx)絶縁層の実用が可能となる。
【0015】
他の実施例によると、本発明の方法によって形成されたアモルファスカーボン(aC)層は多層構造を含んで良い。本発明の方法によって形成されたアモルファスカーボン(aC)層は多層構造を含んで良い。多層構造は、フルオロカーボン(CFx)絶縁層上に形成された従来のアモルファスカーボン(aC)層で作られた第1層、該第1層上に形成されたシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層で作られた第2層、及び、該第2層上に形成されたシリコンと酸素がドーピングされたアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)で作られた第3層を有して良い。
【0016】
プラズマ気相成長(PE-CVD)装置は、本発明の方法によるシリコンと酸素がドーピングされたアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)の形成方法に用いられる。プラズマCVD装置は、半径スロットアンテナ(RLSA)を用いてプラズマを発生させる膜形成装置である。簡明を期すため、以降では、プラズマCVD装置を、「プラズマ膜形成装置」と呼ぶことにする。
【0017】
最初に図1を参照すると、プラズマ膜形成装置10の実施例の概略図が表されている。図1に表されているように、プラズマ膜形成装置10は、プロセス容器20(真空チャンバ)、アンテナユニット50(RLSA)、及び載置台21を有する。プロセス容器20の内部は大雑把には、プラズマガス供給ユニット30の下方に位置するプラズマ発生領域R1と、載置台21の側であるプラズマ拡散領域R2に区分されている。プラズマ発生領域R1内で発生するプラズマは、数電子ボルト(eV)の電子温度を有する。プラズマが、膜形成プロセスが実行されるプラズマ拡散領域R2へ拡散するとき、載置台21付近でのそのプラズマの電子温度は、約2eV未満の値に減少する。載置台21は、プロセス容器20の底部の中央に設けられ、かつ、基板Wを載置する載置ユニットとして機能する。載置台21の内部では、絶縁部材21a、冷却ジャケット21b、及び、基板温度を制御する温度制御ユニット(図示されていない)が供される。
【0018】
プロセス容器20の上部は開口端である。プラズマガス供給ユニット30が、載置台21に対向して設けられ、かつ、たとえばOリングのような封止部材(図示されていない)を介して、プロセス容器20の上部に取り付けられている。誘電窓としても機能しうるプラズマガス供給ユニット30は、たとえばアルミニウム酸化物又は石英のような材料で作られる。擬似円盤形状を有するプラズマガス供給ユニット30の平坦面は、載置台21に対向する。複数のガス供給穴31が、プラズマガス供給ユニット30の平坦面上の載置台21に対向するように供される。複数のガス供給穴31は、ガス流チャネル32を介して、プラズマガス供給ポート33とつながっている。プラズマガス供給源34は、たとえばアルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、又は他の不活性ガスのようなプラズマガスを、プラズマガス供給ポート33へ供する。よってプラズマガスは、複数のガス供給穴31を介して、プラズマ発生領域R1へ均一に供給される。
【0019】
プラズマ膜形成装置10は、プロセスガス供給ユニット40をさらに有する。プロセスガス供給ユニット40は、プラズマ発生領域R1とプラズマ拡散領域R2との間であって、プロセス容器20の実質的に中央に設けられている。プロセスガス供給ユニット40はたとえば、マグネシウム(Mg)を含むアルミニウム合金又はステンレス鋼のような導電性材料で作られる。プラズマガス供給ユニット30と同様に、複数のガス供給穴41が、プラズマガス供給ユニット40の平坦面上に供される。プロセスガス供給ユニット40の平坦面は、載置台21に対向して設けられ、かつ擬似的な円盤形状を有する。
【0020】
プロセスガスユニット40の上面が図2に表されている。図2に表されているように、グリッド状のガス流チャネル42−シャワープレート42とも呼ばれる−が、プロセスガス供給ユニット40内部に形成される。グリッド状のガス流チャネル42は、垂直方向に形成された複数のガス供給穴41の上端とつながっている。複数のガス供給穴41の下端は、載置台21と対向する開口部である。先の例と同様に、複数のガス供給穴41は、グリッド状のパターンを有するガス流チャネル42を介してプロセスガス供給ポート43とつながっている。
【0021】
さらに複数の開口部44が、プロセスガス供給ユニット40上で、垂直方向にプロセスガス供給ユニット40を通過するように形成される。複数の開口部44は、載置台21側のプラズマ拡散領域R2へプラズマガス−たとえばアルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、又は他の不活性ガス−を通す。図2に図示されているように、複数の開口部44は、隣接するガス流チャネル42間に形成される。
【0022】
プロセスガスは、たとえば3つの分離したプロセスガス供給源45-47からプロセスガス供給ポートへ供給される。プロセスガス供給源45-47は、CxHy系ガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスにそれぞれ対応する。CxHy系ガスの例には、C5H8、C4H8、C4H6、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H8、及びC3H6が含まれて良い。シリコン含有ガスは、シラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリメチルシラン(TMS)ガス、モノメチルシラン(MMS)ガス、及びジメチルシラン(DMS)ガスを有して良い。好適実施例では、酸素ガス(O2)は、プロセスガス供給源47として供される。代替実施例では、酸素含有ガスは、プロセスガス供給源47として用いられて良い。酸素含有ガスの例には、一酸化炭素(CO)又は二酸化炭素(CO2)が含まれて良い。
【0023】
CxHy系プロセスガス、シリコン含有プロセスガス、及び酸素含有プロセスガスは、グリッド状のガス流チャネル42を貫流し、複数のガス供給穴41を介して、プラズマ拡散領域R2へ均一に供給される。プラズマ膜形成装置10は、プラズマガス、CxHy系プロセスガス、シリコン含有プロセスガス、及び酸素含有プロセスガスの供給をそれぞれ制御する4つのバルブ(V1-V4)と4つの流速制御装置(MFC1-MFC4)をさらに有する。
【0024】
外部マイクロ波発生装置55は、同軸導波管54を介して、所定周波数−たとえば2.45GHz−のマイクロ波を、アンテナユニット50へ供する。同軸導波管54は、内側導管54Bと外側導管54Aを有して良い。マイクロ波発生装置55からのマイクロ波は、プラズマ発生領域R1内において、プラズマガス供給ユニット30の下方に電場を発生させる。この電場は、プロセス容器20内部で、プラズマガス−たとえばアルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、又は他の不活性ガス−を励起させる。
【0025】
図3は、アンテナユニット50(RLSA)の部分断面図を表している。図3に表されているように、アンテナユニット50は、平坦なアンテナ本体51、半径ラインスロット板52、及びマイクロ波の波長を短くする誘電板53を有して良い。平坦なアンテナ本体51は、底面が開口端部である環状形状を有する。半径ラインスロット板52は、平坦なアンテナ本体51の開口端部である底面の近くに形成される。平坦なアンテナ本体51と半径ラインスロット板52は、平坦な中空環状形状の導波管を構成する導電性材料で作られる。
【0026】
複数のスロット56が、円偏波を生成するように、半径ラインスロット板52上に供される。複数のスロット56が、周辺へ向かう方向に沿って同心円パターン又は螺旋パターンとなすように、実質的にT字形状に配置されている。前記T字形状は、該T字形状を構成するスロット56間にわずかなギャップを有する。スロット56aと56bとが互いに垂直であるので、2つの直交する偏波成分を含む円偏波が、平面波として、半径ラインスロット板52から放射される。
【0027】
誘電板53は、半径ラインスロット板52と平坦なアンテナ本体51との間に設けられた低損失誘電材料−たとえばアルミニウム酸化物(Al2O3)又はシリコン窒化物(Si3N4)−で作られる。図1に図示されているように、半径ラインスロット板52は、封止部材(図1には図示されていない)を用いることによって、被覆板23と近接するようにプロセス容器20上に載置される。被覆板23は、プラズマガス供給ユニット30の上面に設けられ、かつ、マイクロ波を透過する誘電材料−たとえばアルミニウム酸化物(Al2O3)−から形成される。
【0028】
外部高周波電源22が、電源23を介して載置台21と電気的に接続する。高周波電源22は、基板Wへ引き込まれるイオンエネルギーを制御するため、所定の周波数−たとえば13.56MHz−のRFバイアス出力を発生させる。
【0029】
本発明のシリコンと酸素がドーピングされたアモルファスカーボン層(aC:Si:O2)は、所定の設定条件下で、プラズマ膜形成装置10を用いることによって形成される。所定の設定条件は、周波数が2.45GHzで約1000W〜3000Wのマイクロ波出力を有して良い。さらにプロセス容器20の内部は、10mTorr〜100mTorrの範囲の圧力に調節及び維持されて良い。また基板温度は、150℃〜400℃の範囲内で調節可能であって良い。材料ガスの流速については、CxHy系ガスとシリコン含有ガスの流速は、10sccm〜200sccmの範囲に設定されて良い。プラズマ励起ガス−たとえばアルゴン(Ar)ガス−の流速は100sccm〜2000sccmの範囲であって良い。酸素含有ガス−たとえばO2、CO、又はCO2−の流速は、10sccm〜100sccmの範囲内に設定される。
【0030】
本発明の膜形成プロセス中、プラズマガス−たとえばアルゴン(Ar)ガス−は、プラズマガス供給ユニット30を用いることによってプロセス容器20へ導入される。他方、CxHy系ガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガス、並びにキャリアガスとしてのArを有するプロセスガスは、プロセスガス供給ユニット40を用いることによってプロセス容器20へ導入される。
【0031】
図4を参照すると、本発明に従ってプラズマ及びプロセスガスの導入の順序及びタイミングが概略的に表されている。図4に図示されているように、最初にプラズマガス−たとえばアルゴン(Ar)ガス−が、任意のプロセスガスの導入前に、プロセス容器20へ導入される。次の工程では、外部マイクロ波発生装置55(図1を参照のこと)からのマイクロ波出力が、プラズマガスの励起を引き起こして、プラズマを発生させるようにオン状態となる。この実施例では、プラズマガスの導入は、マイクロ波出力をオン状態にする前に行われる。他の実施例では、プラズマガスの導入は、マイクロ波出力がオン状態になるのと同時に行われても良い。
【0032】
プラズマ発生工程(プラズマがオン状態なる)後、プロセスガスは、プロセス容器20内へ導入される。より具体的には、以下のタイミングが、以下のプロセスガスを導入するのに用いられて良い。最初はアルゴン(Ar)に加えて、CxHy系ガスが導入される。2番目に、CxHy系ガスとアルゴン(Ar)に加えて、シリコン含有ガスが導入される。3番目に、CxHy系ガスと、シリコン含有ガスと、アルゴン(Ar)に加えて、酸素含有ガスが導入される。シリコン含有ガスの導入は、酸素含有ガスの導入前に行われることに留意して欲しい。
【0033】
好適実施例では、以下のプラズマ及びプロセスガスが、本発明の方法によってアモルファスカーボン(aC)層を形成する上述の工程の各々において用いられる。上記以下のプラズマ及びプロセスガスとは、1)C4H6+Ar、2)C4H6+Ar+3MS、及び3)C4H6+Ar+3MS+O2である。この方法によると、シリコン含有ガスは、従来のアモルファスカーボン(aC)が、1nm未満の厚さで形成されるときに導入される。続いて、厚さ1nm未満のシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層が、従来のアモルファスカーボン(aC)層である第1層上に形成されるときに、酸素含有ガスが導入される。酸素含有ガスの導入は、所望の厚さを有するシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン層(aC:Si:O2)が形成されるまで続けられる。シリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン層(aC:Si:O2)は、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン層(aC:Si)である第2層上に形成される。
【0034】
最後の工程では、プラズマは、外部マイクロ波発生装置55からのマイクロ波出力をオフ状態にすることによってオフ状態(プラズマオフ)になる。この実施例では、プラズマは、酸素含有ガスの導入を抑制した後にオフ状態(プラズマオフ)になる。他の実施例では、マイクロ波出力をオフ状態にするのは、酸素含有ガスの導入の抑制と同時に行われて良い。
【0035】
プラズマ及びプロセスガスを導入する前述のプロセスは、2つの主要な理由で用いられる。その2つの主要な理由とは、1)下地のフルオロカーボン(CFx)層への損傷の防止、及び、2)後続の熱処理プロセス中でのHFとSiF3の発生の抑制である。以降では、これら2つの主要な理由について詳細に説明する。酸素含有ガスは、他のプロセスガスよりも後に導入される必要がある。さもなければ酸素プラズマが、フルオロカーボン(CFx)層を損傷させてしまう恐れがある。
【0036】
しかもアモルファスカーボン(aC)層を形成するのに上述のガス導入プロセスを用いることで、後続の熱処理プロセス中でのHFとSiF3の発生が抑制される。本発明の方法によると、最終構造は以下の2つの層を有する。その以下の2つの層とは、フルオロカーボン(CFx)絶縁層及び本発明の方法によって形成された新たなアモルファスカーボン層(aC -aC:Si-aC:Si:O2)である。本発明の新たなアモルファスカーボン層(aC -aC:Si-aC:Si:O2)は、以下の層を有する多層構造を有する。前記以下の層とは、1)従来のアモルファスカーボン(aC)層、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層、及び3)シリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層である。この最終構造は、層CFx/aC:-aC:Si-aC:Si:O2を有する。ここでアモルファスカーボン(aC)の組成は徐々に、フルオロカーボン(CFx)層から上部のシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層まで、グラデーションのようなパターンで変化することで、後続の熱処理プロセス中でのHFとSiF3の発生を抑制する。
【0037】
より具体的には、従来のアモルファスカーボン(aC)層とシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層との間の界面が、フッ化水素(HF)の発生を抑制すると同時に、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層とシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層との間の界面は、三フッ化シリコン(SiF3)の発生を抑制する。従って両界面とシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層が組み合わせられることで、HFとSiF3の発生が抑制される。
【0038】
[実験用試料]
シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン層を形成するプロセスに酸素含有ガスを加える効果を評価し、かつ新たなシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層の接合特性をも評価するため、複数の実験用試料が作製された。続いてその実験用試料には、上述の特性を評価するために様々な検査が行われた。以降では明記しなければ、以下の設定条件が、以下のアモルファスカーボン層の形成に用いられた。1)aC層については、流速が1050sccmのアルゴン及び流速が44sccmのC4H6、2)aC:Si層については、流速が15sccmのトリメチルシラン(TMS)、流速が1050sccmのアルゴン、及び流速が44sccmのC4H6、3)aC:Si:O2層については、流速が15sccmのトリメチルシラン(TMS)、100sccmの酸素(O2)ガス、流速が1050sccmのアルゴン、及び流速が44sccmのC4H6である。各異なるアモルファスカーボン(aC)層(aC、aC:Si、及びaC:Si:O2)を有するすべての実験用試料は、2000Wのマイクロ波出力、50mTorrのプロセス容器内部の圧力、及び360℃の基板温度で形成される。以降では、これらの評価結果について詳細に説明する。
【0039】
以降では、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層の膜形成雰囲気に酸素(O2)ガスを加える効果を調査した。この目的のため、各異なるアモルファスカーボン層(aC、aC:Si、及びaC:Si:O2)を有する3つの実験用試料が形成された。続いて各実験用試料でのフッ化反応を評価するため、実験用試料には、熱脱離分光(TDS)測定が行われた。
【0040】
次に図5を参照すると、実験用試料の標的構造及び温度の関数としての前記試料のHFガスのTDS測定が図示されている。この評価に用いられた構造は、基板、フルオロカーボン(CFx)絶縁層、及びアモルファスカーボン(aC)層を有する。各実験用試料では、アモルファスカーボン層は、基板上に形成されるフルオロカーボン(CFx)絶縁層上に形成される。3つの実験用試料の全ては、実験用試料について述べた最初の段落で記載した設定条件と同一の設定条件で、プラズマ膜形成装置10を用いて形成された。第1、第2、及び第3の実験用試料内に形成されるアモルファスカーボン層はそれぞれ、従来のアモルファスカーボン(aC)層、シリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層、及びシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層である。
【0041】
3つの実験用試料の全てには、フッ化水素(HF)脱離ガスの分子量又は原子量を検出するためにTDS分析が行われた。また各実験用試料のTDS分析は図5に図示されている。縦軸は、質量が20(M/z=20)であるフッ化水素(HF)ガスの強度の測定値である。横軸は、TDS測定が実行されたときの基板温度である。この実験では、質量20のフッ化水素(HF)脱離ガスが、室温(〜25℃)から400℃までの範囲の様々な基板温度で検出された。図5に図示されているように、シリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層を有する実験用試料#3は、最小量のフッ化水素(HF)脱離ガスを示している。これらの結果によると、フッ化水素(HF)の発生に関するフッ化反応は、シリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層に酸素(O2)をドーピングすることによってさらに抑制することができる。
【0042】
次の実験では、分子量が85(M/z=85)の三フッ化シリコン(SiF3)の脱離ガスが調査された。この目的のため、3つの実験用試料(aC、aC:Si、及びaC:Si:O2)の全ての熱脱離分光が測定され、その結果が図6に図示されている。図5に図示された先の実験結果と同様に、縦軸は、質量が85(M/z=20)であるSiF3ガスの強度の測定値である。横軸は、TDS測定が実行されたときの基板温度である。この実験では、質量が85のSiF3脱離ガスの量が検出された。
【0043】
図6に図示されているように、従来のアモルファスカーボン(aC)層を有する実験用試料#1が、最小量の三フッ化シリコン(SiF3)の脱離ガスを示している。前述したように、アモルファスカーボン層のシリコンドーピングは、図5に図示されているようにHFガスの発生を抑制する。しかしSiF3の反応は、300℃の基板温度で始まる。この実験結果は、膜形成雰囲気に酸素(O2)ガスを加えることで、最大約370℃の基板温度でSiF3の反応を抑制することができる。従って、本発明の方法に従って形成された新たなシリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層は、従来のシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層と比較して、はるかに高い基板温度(〜400℃)でより良好な接合を供する。
【0044】
図7を参照すると、標的構造及び様々な実験用試料の上面図がブリスター検査とテープ検査結果と共に図示されている。この評価で用いられた構造は、シリコン基板、第1アモルファスカーボン層、フルオロカーボン層、第2アモルファスカーボン層、及び密閉キャップ層を有する。第1アモルファスカーボン層がシリコン基板上に形成される一方で、第2アモルファスカーボン層はフルオロカーボン(CFx)層上に形成される。両アモルファスカーボン層は、実験用試料について述べた最初の段落で記載した設定条件と同一の設定条件で、プラズマ膜形成装置10を用いて形成された。アモルファスカーボン(aC)層に対して強い接合を有する密閉キャップ層が、下地の層で発生した脱離ガスと反応するように、アモルファスカーボン(aC)層上に設けられた。先の例と同様に、各異なるアモルファスカーボン層(aC、aC:Si、及びaC:Si:O2)を有する3つの実験用試料が、この評価用に形成された。
【0045】
続いて事前評価のアニーリングが、約350℃で24時間行われた。事前評価アニーリングは、10ppmを超えない酸素(O2)濃度を有する純粋窒素(N2)雰囲気中で実行された。事前評価アニーリングの実行後、実験用試料には、テープ検査及びブリスター検査が行われた。接合用スコッチテープを実験用試料の表面に接合した後の各実験用試料の上面図は図7に図示されている。図6に図示されているように、従来のアモルファスカーボン(aC)層及びシリコンがドーピングされたアモルファスカーボン(aC:Si)層を有する実験用試料#1と#2は、表面上に気泡すなわちブリスターを示す。その結果、アモルファスカーボン(aC 、aC:Si)層は、フルオロカーボン(CFx)層から剥がれてしまう。対照的に、シリコンがドーピングされた酸素アモルファスカーボン(aC:Si:O2)層を有する実験用試料は、表面上に気泡すなわちブリスターを示さない。従って事前評価アニーリング工程の実行後でさえ、層の剥離は起こらない。
【0046】
表1は、各実験用試料の漏れ電流(1.5MV/cmでのJgの値)及び相対誘電率の値をまとめている。表1に表されているように、アモルファスカーボン層に酸素がドーピングされる(aC:Si:O2)ことで、アモルファスカーボン(aC)層の誘電率がわずかに増大するにもかかわらず、aC:Si:O2は、アモルファスカーボン(aC)層の漏れ電流値を約2倍改善する。
【0047】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層上にアモルファスカーボン層を形成する方法であって、
プラズマ励起ガス、CxHy系ガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスを含む雰囲気中で、プラズマ反応プロセスを用いることによって、アモルファスカーボン層を形成する工程を有する、方法。
【請求項2】
前記酸素含有ガスの流速が、10sccm乃至100sccmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プラズマ励起ガスの流速が、100sccm乃至2000sccmの範囲で、かつ、
前記シリコン含有ガスとCxHy系ガスの流速が、10sccm乃至200sccmの範囲である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アモルファスカーボン層が、1000W乃至3000Wの範囲のマイクロ波出力によって、10mTorr乃至100mTorrの範囲の圧力下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコン含有ガスが、前記酸素含有ガスの導入前に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CxHy系ガスが、前記プラズマ励起ガスの導入前で、かつ、前記シリコン含有ガスと酸素含有ガスの導入後に導入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
基板温度が、前記形成工程中、150℃乃至400℃に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アモルファスカーボン層が、半径ラインスロットアンテナ(RLSA)マイクロ波プラズマ処理装置を用いることによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アモルファスカーボン層が多層構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記多層構造が:
前記絶縁層上に形成される炭化水素化合物を有する第1層;
前記第1層上に形成されるシリコンがドーピングされた炭化水素化合物を有する第2層;及び、
前記第2層上に形成されるシリコンと酸素がドーピングされた炭化水素化合物を有する第3層;
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バリア層としてアモルファスカーボン層を有する半導体デバイスの作製方法であって:
基板上にフルオロカーボン(CFx)層を形成する工程;
プラズマ励起ガス、CxHy系ガス、シリコン含有ガス、及び酸素含有ガスを含む雰囲気中で、プラズマ反応プロセスを用いることによって、前記フルオロカーボン(CFx)層上にアモルファスカーボン層を形成する工程;
を有する方法。
【請求項12】
前記酸素含有ガスの流速が、10sccm乃至100sccmの範囲である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラズマ励起ガスの流速が、100sccm乃至2000sccmの範囲で、かつ、
前記シリコン含有ガスとCxHy系ガスの流速が、10sccm乃至200sccmの範囲である、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記アモルファスカーボン層が、1000W乃至3000Wの範囲のマイクロ波出力によって、10mTorr乃至100mTorrの範囲の圧力下で形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記シリコン含有ガスが、前記酸素含有ガスの導入前に導入される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記CxHy系ガスが、前記プラズマ励起ガスの導入前で、かつ、前記シリコン含有ガスと酸素含有ガスの導入後に導入される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
基板温度が、前記形成工程中、150℃乃至400℃に維持される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記アモルファスカーボン層が、半径ラインスロットアンテナ(RLSA)マイクロ波プラズマ処理装置を用いることによって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記アモルファスカーボン層が多層構造を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記多層構造が:
前記絶縁層上に形成される炭化水素化合物を有する第1層;
前記第1層上に形成されるシリコンがドーピングされた炭化水素化合物を有する第2層;及び、
前記第2層上に形成されるシリコンと酸素がドーピングされた炭化水素化合物を有する第3層;
を有する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−531742(P2012−531742A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517496(P2012−517496)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/001833
【国際公開番号】WO2010/151337
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】