説明

アルカリ可溶性重合体及びそれを用いたポジ型感光性樹脂組成物

【課題】高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れ、アルカリ水溶液で現像することにより得られるパターニングされた樹脂膜の形成に有用なアルカリ可溶性樹脂及びそれを含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定のビニルケトンフェノール及びその誘導体をラジカル重合性モノマーとして含むアルカリ可溶性重合体、及びこのアルカリ可溶性重合体と感光剤とを含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト分野等として利用可能なアルカリ可溶性重合体及びそれを用いたポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パターニングされた透明膜は、スペーサー、絶縁膜、保護膜等表示素子の多くの部分で使用されており、これまでに多くのポジ型感光性樹脂組成物がこの用途に提案されてきた(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、4−ヒドロキシスチレンをモノマーとする重合体を含有するポジ型感光性樹脂組成物が知られている(例えば特許文献4参照。)。
【0003】
一般に、薄膜トランジスタ型液晶表示素子や固体撮像素子等の電子部品には、層状に配置される配線の間を絶縁するために絶縁膜が設けられている。絶縁膜を形成する材料としては、必要とするパターン形状の絶縁膜を得るための工程数が少ないポジ型感光性樹脂組成物が幅広く使用されている。ポジ型感光性樹脂組成物は、絶縁膜を形成する過程において広いプロセスマージンを有することが必要である。さらに、ポジ型感光性樹脂組成物を用いた絶縁膜や表示素子は、製造後工程において、溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬等によって接触すること及び熱処理されることが不可欠である。
【特許文献1】特開昭51−34711号公報
【特許文献2】特開昭56−122031号公報
【特許文献3】特開平5−165214号公報
【特許文献4】特公昭52−41050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れ、アルカリ水溶液で現像することにより得られるパターニングされた樹脂膜、すなわちパターニングされた透明膜(パターン状透明膜)を形成できるポジ型感光性樹脂組成物等が求められている。
【0005】
同様にして、高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等に優れたパターニング状透明膜や絶縁膜、表示素子等も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、下記一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体及び感光剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物を見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0007】
[1] 本発明は、一般式(1)で表されるモノマー(A)を重合して得られるアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。
【0010】
[2] また本発明は、一般式(1)で表されるモノマー(A)と、前記モノマー(A)以外のラジカル重合性モノマー(B)とを共重合して得られるアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。
【0013】
[3] また本発明は、前記R1〜R5、R7及びR8はそれぞれ水素であり、前記R6は−OHであることを特徴とする[2]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0014】
[4] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)、N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする[2]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0015】
[5] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)及び(b2)のいずれか一方又は両方を含むことを特徴とする[4]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0016】
[6] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)、及び(b1)〜(b4)以外のラジカル重合性モノマー(b5)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0017】
[7] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)及び(b3)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0018】
[8] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)及び(b4)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0019】
[9] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b3)及び(b4)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0020】
[10] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0021】
[11] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)及び(b4)からなることを特徴とする[5]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0022】
[12] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマー(b1)は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びメチルグリシジルメタクリレートからなる群から選ばれる一又は二以上であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b2)は、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレートからなる群から選ばれる一又は二以上であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b3)は、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドの一方又は両方であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b4)は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレートであり、
前記ラジカル重合性モノマー(b5)は、ベンジルメタクリレート及びスチレンの一方又は両方であることを特徴とする[6]〜[11]のいずれか一項に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0023】
[13] また本発明は、前記ラジカル重合性モノマーb5は、ベンジルメタクリレート及びスチレンの一方又は両方であることを特徴とする[6]に記載のアルカリ可溶性重合体を提供する。
【0024】
[14] また本発明は、[2]〜[13]のいずれか一項に記載の前記アルカリ可溶性重合体及び感光剤(C)を含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0025】
[15] また本発明は、前記感光剤(C)が酸発生剤化合物である[14]に記載のポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0026】
[16] また本発明は、前記感光剤(C)が1,2−キノンジアジド化合物である[14]に記載のポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【0027】
本明細書中、アクリル酸とメタクリル酸の両者を示すために「(メタ)アクリル酸」のように表記することがある。また同様にアクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
本明細書中、「アルキル」とは、直鎖又は分岐鎖のアルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
本明細書中、「アルケニル」としては、1〜3個の2重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニルが挙げられ、具体的には、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチルエテニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−メチル−2−プロペニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、1,3−オクタジエニル、2−ノネニル、1,3−ノナジエニル、2−デセニル等が挙げられる。
「アルキニル」としては、1〜3個の3重結合を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニルが挙げられ、具体的には、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、4−ペンチニル、1−オクチニル、6−メチル−1−ヘプチニル、2−デシニル等が挙げられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、重合体組成物に対して一般的に求められている特性、例えば高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等、を有する。
【0029】
また、本発明では、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを使用することなしに、ポジ型感光性樹脂組成物を提供できる。
【0030】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性に優れているから、当該ポジ型感光性樹脂組成物を用いた透明膜、絶縁膜、表示素子等の樹脂膜は、その製造後工程において溶剤、酸、アルカリ溶液等の液への浸漬や接触、及び熱処理等の後処理がなされても、樹脂膜に表面荒れが発生しにくい。その結果、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いた透明膜等の樹脂膜における光の透過率が高まり、それを用いた表示素子の表示品位が高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
<1 アルカリ可溶性重合体>
本発明のアルカリ可溶性重合体は、溶液のスピンコート及び120℃30分間の加熱で形成される厚さ0.01〜100μmの膜を、例えば25℃程度の2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で5分間浸した後に純水ですすいだときに、前記膜が残こらない程度のアルカリへの可溶性を有する重合体である。
【0032】
<1−1 第一のアルカリ可溶性重合体>
本発明の第一のアルカリ可溶性重合体は、一般式(1)で表されるモノマー(A)を重合して得られる重合体である。前記モノマー(A)は一種でもよいし二種以上でもよい。
【0033】
【化3】

【0034】
一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。
【0035】
本発明の第一のアルカリ可溶性重合体は、前記モノマー(A)をラジカル重合させることによって得られる。このラジカル重合は、公知の重合開始剤を用いて行うことができる。本発明の第一のアルカリ可溶性重合体は、レジスト分野における形成されたパターンを有する樹脂膜への利用が期待される。
【0036】
<1−2 第二のアルカリ可溶性重合体>
本発明の第二のアルカリ可溶性重合体は、一般式(1)で表されるモノマー(A)と、前記モノマー(A)以外のラジカル重合性モノマー(B)とを共重合して得られる重合体である。すなわち、このアルカリ可溶性重合体は、モノマーの混合物を重合させて得られる共重合体である。前記第二のアルカリ可溶性重合体において、前記モノマー(A)の含有量は、モノマー(A)とラジカル重合性モノマー(B)との共重合体が前述したアルカリ可溶性を示せば特に限定されないが、0.5〜85重量%であることが好ましく、1〜80重量%であることがより好ましく、5〜80質量%であることがさらに好ましい。また、前記ラジカル重合性モノマー(B)の含有量は15〜99.5重量%であることが好ましく、20〜99重量%であることがより好ましく、20〜95質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
【化4】

【0038】
一般式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられて
もよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。
【0039】
なお本発明のアルカリ可溶性重合体は、例えばアルカリ可溶性重合体を熱分解したときに、熱分解により生じたガスをGC−MSで測定することによってモノマー成分を推定することができる。
【0040】
<1−2−1 一般式(1)で表されるモノマー(A)>
前記モノマー(A)は、フェノール誘導体に重合性基としてビニルケトン誘導体由来の基を有するラジカル重合性モノマーである。前記モノマー(A)は一種でもよいし、二種以上でもよい。このラジカル重合性モノマーを使用したアルカリ可溶性重合体を用いると、現像時のアルカリ水溶液に対する溶解性が高く、すなわち現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られ、かつ耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性を示し、さらには下地との密着性が高くなる。
【0041】
前記第二のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、前記モノマー(A)を、好ましくは、全モノマーの総重量に対して0.5〜85重量%用いることが好ましく、1〜80重量%用いることがさらに好ましい。このような範囲でモノマー(A)を用いると、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。
【0042】
前記モノマー(A)には、例えば前記R1〜R5、R7及びR8はそれぞれ水素であり、前記R6は−OHである化合物が好ましくは挙げられる。以下において、前記モノマー(A)は「モノマーA」ともいう。
【0043】
<1−2−2 モノマー(A)以外のラジカル重合モノマー(B)>
前記ラジカル重合性モノマー(B)は、前記モノマー(A)以外のラジカル重合性モノマーであればよいが、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを含まないことが好ましい。前記ラジカル重合性モノマー(B)には、例えば、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)、N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)、及びこれら以外のラジカル重合性モノマー(b5)が挙げられる。これらのうち、好ましいのは(b1)〜(b4)である。
【0044】
前記ラジカル重合モノマー(B)は、前記(b1)〜(b4)のラジカル重合モノマーからなる群から選ばれる1種でもよいし2種以上でもよい。前記ラジカル重合モノマー(B)は、ラジカル重合モノマー(b1)及び(b2)の一方又は両方を含むことが好ましく、ラジカル重合モノマー(b1)〜(b4)を全て含むことがより好ましい。さらには、本発明の効果を損なわない範囲で、ラジカル重合性モノマー(B)は、ラジカル重合性モノマー(b1)〜(b4)以外のラジカル重合性モノマー(b5)をさらに含んでいてもよい。例えば前記ラジカル重合モノマー(B)は、ラジカル重合モノマー(b1)からなっていてもよいし、ラジカル重合モノマー(b1)、(b2)及び(b5)からなっていてもよいし、ラジカル重合モノマー(b1)、(b2)及び(b3)からなっていてもよいし、ラジカル重合モノマー(b1)、(b2)及び(b4)からなっていてもよいし、ラジカル重合モノマー(b1)、(b3)及び(b4)からなっていてもよいし、ラジカル重合性モノマー(b1)及び(b4)からなっていてもよい。
【0045】
以下、前記ラジカル重合性モノマー(B)について説明するが、以下において、前記ラジカル重合性モノマー(B)は「モノマーB」ともいい、オキシラニルを有するラジカル
重合性モノマー(b1)、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)、N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)及びその他のラジカル重合性モノマー(b5)は、それぞれ、「モノマーb1」、「モノマーb2」、「モノマーb3」、「モノマーb4」及び「モノマーb5」ともいう。
【0046】
<1−2−2−1 オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)>
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。モノマーb1の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0047】
上記具体例の中でも、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート又はメチルグリシジルメタクリレート又は3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレートは、入手が容易であり、得られたパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を高める観点から好ましい。
【0048】
モノマーb1は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0049】
本発明のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、アルカリ可溶性重合体の特性を調整する観点からモノマーb1を用いることが好ましい。モノマーb1は、全てのモノマーの合計重量に対して5〜90重量%の範囲で用いられることが好ましく、10〜80重量%であればさらに好ましい。このような範囲でモノマーb1を用いると、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる透明膜の各種特性、例えば耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等をより一層向上させることができる。
【0050】
<1−2−2−2 オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)>
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。モノマーb2の具体例としては、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタニル−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン等を挙げることができる。
【0051】
これらのラジカル重合性モノマーから選ばれる少なくとも1つをモノマーBとして使用したアルカリ可溶性重合体を用いると、アルカリ水溶液による溶解性が高く、すなわち現像性が高くまた容易にパターン状透明膜が得られる。また、耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性を高める観点から好ましい。
【0052】
上記具体例の中でも、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートは入手が容易であり、得られたパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を高める観点から好ましい。
【0053】
モノマーb2は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0054】
本発明のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、アルカリ可溶性重合体の特性を調整する観点からモノマーb2を用いることが好ましい。モノマーb2は、全てのモノマーの合計重量に対して1〜80重量%の範囲で用いられることが好ましく、5〜30重量%であればさらに好ましい。このような範囲でモノマーb2を用いると、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる透明膜の各種特性、例えば耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等をより一層向上させることができる。
【0055】
<1−2−2−3 N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)>
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。モノマーb3の具体例としては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−アセチルフェニル)マレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(4−ジメチルアミノ−3,5−ジニトロフェニル)マレイミド、N−(1−アニリノナフチル−4)マレイミド、N−[4−(2−ベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミド、N−(9−アクリジニル)マレイミド等を挙げることができる。
【0056】
これらのラジカル重合性モノマーから選ばれる少なくとも1つを使用したアルカリ可溶性重合体を用いると、アルカリ水溶液による溶解性が高く、すなわち、現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られる。また、耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性を高める観点から好ましい。
【0057】
上記具体例の中でも、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドは入手が容易であり、得られたパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等を高める観点から好ましい。
【0058】
モノマーb3は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0059】
本発明のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、アルカリ可溶性重合体の特性を調整する観点からモノマーb3を用いることが好ましい。モノマーb3は、全てのモノマーの合計重量に対して1〜80重量%の範囲で用いられることが好ましく、5〜30重量%であればさらに好ましい。このような範囲でモノマーb3を用いると、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる透明膜の各種特性、例えば耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等をより一層向上させることができ、特に耐熱性を向上させる観点及び誘電率を低下させる観点からより一層効果的である。
【0060】
<1−2−2−4 トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)>
本発明で用いられるモノマーBとして具体的に含めることができる、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)は、そのような官能性基を有する限り特に限定されない。モノマーb4の具体例としては、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0061】
これらのラジカル重合性モノマーから選ばれる少なくとも1つを使用したアルカリ可溶
性重合体を用いると、アルカリ水溶液による溶解性が高く、すなわち、現像性が高く、容易にパターン状透明膜が得られる。また、入手が容易であり、かつ耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性を高める観点から好ましい。
【0062】
モノマーb4は1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0063】
本発明のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、アルカリ可溶性重合体の特性を調整する観点からモノマーb4を用いることが好ましい。モノマーb4は、全てのモノマーの合計重量に対して1〜80重量%の範囲で用いられることが好ましく、5〜30重量%であればさらに好ましい。このような範囲でモノマーb4を用いると、本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる透明膜の各種特性、例えば耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等をより一層向上させることができ、特に耐熱性を向上させる観点及び誘電率を低下させる観点からより一層効果的である。
【0064】
<1−2−2−5 その他のラジカル重合性モノマー(b5)>
モノマーAと他のラジカル重合性モノマー(B)(例えば、モノマーb1、モノマーb2、モノマーb3、モノマーb4等)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体の重合において、前述のように現像性等の工程マージン等を考慮して、得られるパターン状透明膜の耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性等に大きな影響を与えない範囲で、モノマーb1、モノマーb2、モノマーb3、モノマーb4以外の、その他のラジカル重合性モノマーb5を使用することができる。モノマーb5は一種でも二種以上でもよい。
【0065】
モノマーb5の具体例は、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルメチルスチレン、(メタ)アクリルアミド、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、N−アクリロイルモルホリン、インデン等が挙げられる。
【0066】
上記具体例の中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及びポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも1つを共重合したアルカリ可溶性重合体を用いたポジ型感光性樹脂組成物は現像性が良好であり、極めて耐溶剤性、耐水性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性が高く好ましい。
【0067】
本発明のアルカリ可溶性重合体の重合に際しては、アルカリ可溶性重合体の諸特性をさらに向上させる観点からモノマーb5を用いることが好ましい。モノマーb5は、全てのモノマーの合計重量に対して1〜80重量%の範囲で用いられることが好ましく、5〜50重量%であればさらに好ましい。
【0068】
<1−2−3 アルカリ可溶性重合体の重合方法>
アルカリ可溶性重合体の重合方法は、特に制限されないが、アルカリ可溶性重合体はモノマーAとモノマーBとの混合物を重合させて得ることができ、溶剤を用いた溶液中でのラジカル重合が好ましい。重合温度は使用する重合開始剤からラジカルが十分発生する温度であれば特に限定されないが、通常50℃〜150℃の範囲である。重合時間も特に限
定されないが、通常3〜24時間の範囲である。また、当該重合は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0069】
上記の重合反応に使用する溶剤は、モノマーA、モノマーB及び生成するアルカリ可溶性重合体を溶解する溶剤が好ましい。当該溶剤の具体例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸、水等が挙げられる。前記溶剤は、これらの一種であってもよいし、これらの二種以上の混合物であってもよい。
【0070】
アルカリ可溶性重合体を合成する際に用いる重合開始剤は、熱によりラジカルを発生する化合物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤や、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤を使用することができる。分子量を調節するために、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を適量添加してもよい。
【0071】
アルカリ可溶性重合体は、ポリエチレンオキシドを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が1,000〜100,000の範囲であると、露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒れにくくなり好ましい。さらに、重量平均分子量が1,500〜50,000の範囲であると、未露光部分がアルカリ現像液で溶解されるまでの現像時間が適正であり、かつ、現像時に膜の表面が荒にくく、現像残渣も極めて少なくなるので、一層好ましい。同様の理由により、重量平均分子量が2,000〜20,000の範囲であると、特に一層好ましい。
【0072】
アルカリ可溶性重合体の重量平均分子量は、例えば、標準のポリエチレンオキシドには、分子量が1,000〜510,000のポリエチレンオキシド(例えば東ソー(株)製のTSK standard)を用い、カラムにはShodex KD−806M(昭和電工(株)製)を用い、移動相としてDMFを用いる条件で測定することができる。
【0073】
<2 本発明のポジ型感光性樹脂組成物>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、一般式(I)で表されるモノマー(A)と他のラジカル重合性モノマー(B)を共重合して得られるアルカリ可溶性重合体(前記第二のアルカリ可溶性重合体)及び感光剤(C)を含有する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性重合体には、前記第二のアルカリ可溶性重合体を用いることができるが、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他のアルカリ可溶性重合体が含まれていてもよい。
【0074】
<2−1 感光剤(C)>
前記感光剤(C)には、190〜500nmの波長の放射線の照射によって酸を発生する化合物を用いることができる。前記感光剤(C)には、例えば放射線の照射によって酸を発生する酸発生剤化合物や、放射線の照射によって酸に変化する1,2−キノンジアジド化合物が挙げられ、本発明ではこれらのいずれも感光剤(C)として使用することができる。
【0075】
<2−1−1 酸発生剤化合物>
前記酸発生剤化合物としては、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、セレニウム塩、アルソニウム塩等の各種オニウム化合物、フェニルトリ
ハロメチルスルホン化合物、ハロメチルトリアジン化合物、ハロメチルオキサジアゾール化合物等の有機ハロゲン化合物、ニトロベンジルアルコールのスルホン酸エステル化合物、オキシムのスルホン酸エステル化合物、N−ヒドロキシアミド又はイミドのスルホン酸エステル化合物、β−ケトスルホン系化合物、ベンゾインのスルホン酸エステル化合物等のスルホン酸発生剤等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
酸発生剤化合物の具体例は、ジ(p−ターシャリーブチルベンゼン)ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォネート、ベンゼンジアゾニウムパラトルエンスルホネート、4−p−トリル−メルカプト−2,5−ジエトキシ−ベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルアミン−4−ジアゾニウムサルフェート、トリ(ターシャリーブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルセレニウムテトラフルオロボレート、オルトニトロベンジルパラトルエンスルホネート、ベンゾイントシレート、ベンゾインメタンスルホネート、ベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、ベンゾイン−2−トリフルオロメタンベンゼンスルホネート、アニソイントシレート、アニソインメタンスルホネート、アニソイントリフルオロメタンスルホネート、アニソイン−2−トリフルオロメタンベンゼンスルホネート、1−ベンゾイル−1−メチルスルホニルオキシ−シクロヘキサン、2−[(p−トリルスルホニル)オキシ]−1−フェニル−1−オクタノン、2−[(β−ナフチルスルホニル)オキシ]−1−フェニル−1−プロパノン、2−[(p−アセトアミドフェニルスルホニル)オキシ]−1−フェニル−1−プロパノン、安息香酸アミドトシレート、安息香酸アミドメタンスルホネート、N−トシロキシフタルイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]フタルイミド、N−トシロキシ−1,8−ナフタルイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]−1,8−ナフタルイミド、N−トシロキシ2,3−ジフェニルマレイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]−2,3−ジフェニルマレイミド、4−(ジ−n−プロピルアミノ)−ベンゾニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−6−トリクロロメチル−2−ピロン、4−(3,4,5−トリメトキシ−スチリル)−6−トリクロロメチル−2−ピロン、4−(4−メトキシ−スチリル)−6−(3,3,3−トリクロロ−プロペニル)−2−ピロン、2−トリクロロメチル−ベンズイミダゾール、2−トリブロモメチル−キノン、2,4−ジメチル−1−トリブロモアセチル−ベンゼン、4−ジブロモアセチル−安息香酸、1,4−ビス−ジブロモメチル−ベンゼン、トリス−ジブロモメチル−s−トリアジン、2−(6−メトキシ−ナフチル−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ナフチル−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ナフチル−2−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフチル−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(ベンゾピラニル−3−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−アントラシ−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(フェナンチ−9−イル)−4,6−ビストリクロロメチル−s−トリアジン、2−フェニル−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−(p−メトキシフェニル)−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−スチリル−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、2−(n−ブチル)−5−トリクロロメチルオキサジアゾール、α−トリフルオロアセトフェノンオキシム−4−ヒドロキシベンゼンスルホネート、9−(4−ヒドロキシベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フルオレン、9−(4−メタクリルアミドメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−フルオレン等である。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
特に、酸発生剤化合物として、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、オルトニトロベンジルパラトルエンスルホネート、ベンゾイントリフルオロメタンスルホネート、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]フタルイミド、N−[(2−トリフルオロメタンベンゼンスルホニル)オキシ]−2,3−ジフェニルマレイミドから選ばれる1つを用いると、ポジ型感光性樹脂組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0078】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性重合体100重量部に対し、酸発生剤化合物が5〜50重量部であることが好ましい。
【0079】
<2−1−2 1,2−キノンジアジド化合物>
前記1,2−キノンジアジド化合物には、例えばレジスト分野において感光剤として使用される化合物を用いることができる。前記1,2−キノンジアジド化合物としては、フェノール化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4又は5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4又は5−スルホン酸とのエステル、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ベンゾキノンジアジド−4又は5−スルホン酸とのスルホンアミド、フェノール化合物の水酸基をアミノ基に置き換えた化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−4又は5−スルホン酸とのスルホンアミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。前記フェノール化合物の具体例を以下に示す。
【0080】
2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、
ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリ(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインデン−5,6,7,5’,6’,7’−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−7,2’,4’−トリヒドロキシフラバン。
【0081】
特に、1,2−キノンジアジド化合物として、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸とのエステル、4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とのエステルから選ばれる1つを用いると、ポジ型感光性樹脂組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0082】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性重合体100重量部に対し、1,2−キノンジアジド化合物が5〜50重量部であることが好ましい。
【0083】
<2−2 溶剤>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、当該組成物に含まれるアルカリ可溶性重合体と1
,2−キノンジアジド化合物との他に、さらに溶剤を含むことが好ましい。この際に用いられる溶剤は、アルカリ可溶性重合体と1,2−キノンジアジド化合物とを溶解する溶剤が好ましい。
【0084】
また、本発明で用いられる溶剤は、沸点が100℃〜300℃である化合物の少なくとも1つ、又はこの化合物を20重量%以上含有する混合溶剤であることが好ましい。沸点が100℃〜300℃である前記溶剤の具体例には、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。前記混合溶剤における前記沸点が100〜300℃である溶剤以外の溶剤には、前述した溶剤以外の公知の溶剤の一又は二以上を用いることができる。
【0085】
これらの溶剤の中でも、ポジ型感光性樹脂組成物に含まれる溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、塗布均一性が高くなるのでより好ましい。さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、乳酸エチル及び酢酸ブチルから選ばれる少なくとも1つを用いると、ポジ型感光性樹脂組成物の塗布均一性を高め、また人体への安全性の観点からより一層好ましい。
【0086】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、アルカリ可溶性重合体、感光剤及び溶剤の総量に対し、固形分であるアルカリ可溶性重合体及び感光剤が総量で5〜50重量%となるように溶剤が配合されることが好ましい。
【0087】
<2−3 その他の成分>
<2−3−1 添加剤>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、解像度、塗布均一性、現像性、接着性を向上させるために、各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、アクリル系、スチレン系、ポリエチレンイミン系又はウレタン系の高分子分散剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系又はフッ素系の界面活性剤、シリコン樹脂系塗布性向上剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、アルコキシベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤、エポキシ化合物、メラミン化合物又はビスアジド化合物等の熱架橋剤、有機カルボン酸等のアルカリ溶解性促進剤等が挙げられる。
【0088】
添加剤の具体例には、ポリフローNo.45、ポリフローKL−245ポリフロー、No.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商標、共栄社
化学工業株式会社製)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK344、BYK346(以上いずれも商標、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KP−341、KP−358、KP−368、KF−96−50CS、KF−50−100CS(以上いずれも商標、信越化学工業株式会社製)、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40(以上いずれも商標、セイミケミカル株式会社製)、フタージェント222F、フタージェント251、FTX−218(以上いずれも商標、株式会社ネオス製)、EFTOP EF−351、EFTOP EF−352、EFTOP EF−601、EFTOP EF−801、EFTOP EF−802(以上いずれも商標、三菱マテリアル株式会社製)、メガファックF−171、メガファックF−177、メガファックF−475、メガファックR−08、メガファックR−30(以上いずれも商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。これらから選ばれる少なくとも1つを前記添加剤に用いることが好ましい。
【0089】
これらの添加剤の中でも、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオルアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩等のフッ素系の界面活性剤、BYK306、BYK344、BYK346、KP−341、KP−358、KP−368等のシリコン樹脂系塗布性向上剤の中から選ばれる少なくとも1種が添加されると
、ポジ型感光性組成物の塗布均一性が高くなるので好ましい。
【0090】
<2−3−2 その他のポリマー>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、耐熱性、耐薬品性等を向上させるために上記アルカリ可溶性重合体以外のポリマーを添加することができる。ここで添加されるポリマーは、カルボキシルを有しないオキシラニル含有ポリマーやカルボキシルを有しないオキセタニル含有ポリマーが好ましい。
【0091】
カルボキシルを有しないオキシラニル含有ポリマーやカルボキシルを有しないオキセタニル含有ポリマーの具体例として、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンのホモポリマー及び3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンと他のラジカル重合可能な単官能モノマーとの共重合体等が挙げられる。これらのポリマーを本発明のポジ型感光性樹脂組成物に添加すると、耐熱性、耐薬品性、現像性等がさらに向上して好ましい。
【0092】
特に、グリシジルメタクリレートのホモポリマー、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンのホモポリマー、グリシジルメタクリレートとN−フェニルマレイミドの共重合体、グリシジルメタクリレートと3−エチル−3−メタクリロキシメチルオキセタンの共重合体を本発明のポジ型感光性樹脂組成物に添加すると、耐熱性、耐薬品性、現像性が大きく向上するので一層好ましい。
【0093】
また、耐熱性、耐薬品性を低下させない程度に、カルボキシルを有するオキシラニル含有ポリマーやカルボキシルを有するオキセタニル含有ポリマーを少量、ブレンドして使用することもできる。このようなポリマーの例としては、特開平4−198937号公報に記載のグリシジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体やメタクリル酸単独重合体、又はグリシジルメタクリレートとモノメタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート共重合体が挙げられるが、オキシラニルやオキセタニルとカルボキシルとを有する限り特に限定されない。
【0094】
これらのポリマーの原料となるカルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、けい皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル] 、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]等を挙げることができる。
【0095】
また、これらのポリマーの原料となるオキシラニルを有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、これらのポリマーの原料となるオキセタニルを有するラジカル重合性モノマーの具体例としては、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのカルボキシル及びオキシラニル又はオキセタニルを有するラジカル重合モノマーは1種のモノマーでも、又は2種以上のモノマーを混合しても使用することができる。
【0096】
<2−3−3 多価カルボン酸>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物には、無水トリメリット酸、無水フタル酸、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物等の多価カルボン酸を添加してもよい。これらの多価カルボン酸の中でも無水トリメリット酸が好ましい。
【0097】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物に前記多価カルボン酸が添加されて加熱されると、多価カルボン酸のカルボキシルは、ポジ型感光性樹脂組成物にオキシラニル又はオキセタニルが含まれる場合にこれらと反応して、耐熱性、耐薬品性をさらに向上させることができる。また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物に前記多価カルボン酸が添加されると、保存時に1,2−キノンジアジド化合物の分解が抑制され、ポジ型感光性樹脂組成物の着色を防ぐことができる。
【0098】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、多価カルボン酸を添加する場合には、アルカリ可溶性重合体100重量部に対し、多価カルボン酸が1〜30重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがさらに好ましい。
【0099】
<2−4 ポジ型感光性樹脂組成物の保存>
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、温度−30℃〜25℃の範囲で遮光して保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が−20℃〜10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0100】
<3 本発明のポジ型感光性樹脂組成物より形成された樹脂膜>
本発明の感光性樹脂組成物は、透明の樹脂膜を形成するのに適しており、パターニングの際の解像度が比較的高いことから10μm以下の小さな穴の開いた絶縁膜を形成するのに最適である。ここで、絶縁膜とは、例えば、層状に配置される配線間を絶縁するために設ける膜(層間絶縁膜)等をいう。
【0101】
前記透明膜及び絶縁膜等の樹脂膜は、レジスト分野において樹脂膜を形成する通常の方法で形成することができ、例えば以下のようにして形成される。
【0102】
まず、本発明のポジ型感光性樹脂組成物をスピンコート、ロールコート、スリットコート等の公知の方法により、ガラス等の基板上に塗布する。基板としては、例えば、白板ガラス、青板ガラス、シリカコート青板ガラス等の透明ガラス基板、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、アクリル樹脂、塩化ビニール樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリイミド等の合成樹脂製シート、フィルム又は基板、アルミニウム板、銅板、ニッケル板、ステンレス板等の金属基板、その他セラミック板、光電変換素子を有する半導体基板等を挙げることができる。これらの基板には所望により、シランカップリング剤等の薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を行うことができる。
【0103】
次に、基板上のポジ型感光性樹脂組成物の膜をホットプレート又はオーブンで乾燥する。通常、60〜120℃で1〜5分間乾燥する。乾燥した基板上の前記膜に、所望のパターン形状のマスクを介して紫外線等の放射線を照射する。照射条件は、ポジ型感光性樹脂組成物中の感光剤の種類にもよるが、例えば感光剤が1,2−キノンジアジド化合物であれば、i線で5〜1,000mJ/cm2が適当である。紫外線の当たった部分の1,2−キノンジアジド化合物はインデンカルボン酸となり速やかに現像液に溶解する状態になる。
【0104】
放射線が照射後の膜は、アルカリ溶液等の現像液を用いて現像される。この現像により、前記膜における放射線が照射された部分は速やかに現像液に溶解する。現像方法は特に限定されず、ディップ現像、パドル現像、シャワー現像のいずれも用いることができる。
【0105】
前記現像液はアルカリ溶液が好ましい。アルカリ溶液に含まれるアルカリの具体例には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。また、現像液としては、これらのアルカリの水溶液が好適に用いられる。すなわち、現像液として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の有機アルカリ類等、及び、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類の水溶液を挙げることができる。
【0106】
現像液には現像残渣の低減やパターン形状の適性化を目的として、メタノール、エタノールや界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系から選択される界面活性剤を使用することができる。これらの中でも、特に、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加すると、解像度を高める観点から好ましい。
【0107】
前記現像された前記膜は、純水で十分すすがれ、その後、再度放射線が基板上の膜の全面に照射される。例えば放射線が紫外線の場合は、100〜1,000mJ/cm2の強度で前記膜に照射される。放射線が再照射された基板上の前記膜は、最後に180〜250℃で10〜120分間焼成される。こうして、所望のパターニングされた透明膜を得ることができる。
【0108】
このようにして得られたパターン状透明膜は、パターン状絶縁膜として用いることもできる。絶縁膜に形成された穴の形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形又は楕円形であることが好ましい。さらに、該絶縁膜上に透明電極を形成し、エッチングによりパターニングを行った後、配向処理を行う膜を形成させてもよい。該絶縁膜は、耐スパッタ性が高いため、透明電極を形成しても絶縁膜にしわが発生せず、高い透明性を保つことができる。
【0109】
<4 前記樹脂膜を含む表示素子>
前記透明膜及び絶縁膜等の前記樹脂膜は、液晶等を用いる表示素子に用いられる。例えば前記表示素子は、上記のようにして基板上にパターニングされた透明膜又は絶縁膜が設けられた素子基板と、対向基板であるカラーフィルター基板とを、位置を合わせて圧着し、その後熱処理して組み合わせ、対向する基板の間に液晶を注入し、注入口を封止することによって製作される。
【0110】
又は、前記素子基板上に液晶を散布した後、素子基板を重ね合わせ、液晶が漏れないように密封することによっても製作することができ、前記表示素子はこのように製作された表示素子であってもよい。
【0111】
このようにして、本発明のポジ型感光性樹脂組成物で形成された、優れた透明性を有する絶縁膜を液晶表示素子に用いることができる。
なお、本発明の液晶表示素子に用いられる液晶、すなわち液晶化合物及び液晶組成物については特に限定されず、いずれの液晶化合物及び液晶組成物をも使用することができる。
【0112】
本発明の好ましい態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、重合体組成物に対して一般的に求められている高耐溶剤性、高耐水性、高耐酸性、高耐アルカリ性、高耐熱性、高透明性、下地との密着性等の各種特性を有する。
【0113】
また、本発明の好ましい態様では、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーを使用することなしに、ポジ型感光性樹脂組成物を提供できる。
【0114】
また、本発明の好ましい態様に係るポジ型感光性樹脂組成物は、耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性、耐熱性、透明性に優れているから、当該ポジ型感光性樹脂組成物を用いた透明膜、絶縁膜、及び表示素子等は、その製造後工程において溶剤、酸、アルカリ溶液等に浸漬、接触、熱処理等がなされても、樹脂膜に表面荒れが発生しにくい。その結果、本発明の好ましい態様に係るポジ型感光性樹脂組成物を用いた透明膜等の光の透過率が高まり、それを用いた表示素子等の製品の表示品位を高めることができる。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0116】
[合成例1]アルカリ可溶性重合体(1)の合成
攪拌器付4つ口フラスコにモノマーAとして4−ヒドロキシフェニルビニルケトン、モノマーb1としてグリシジルアクリレート、モノマーb2として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、モノマーb5としてベンジルメタクリレートを下記の重量で仕込み、2−ブタノンの還流温度で4時間加熱して重合を行った。重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を用いた。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 25.0g
グリシジルアクリレート 30.0g
(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート 20.0g
ベンジルメタクリレート 25.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0117】
反応液を室温まで冷却し、大量のヘキサンに投入した。生成した沈殿を3−メトキシプロピオン酸メチル(以下、「MMP」という)に溶解し、1.33×104Paの減圧下100℃にて重合溶剤、ヘキサンを留去し、アルカリ可溶性重合体(1)のMMP溶液を得た。
【0118】
溶液の一部をサンプリングし、220℃で30分乾燥して減少した後のサンプルの重量を求め、その重量値を重合体の重量として収率を求め、さらにこの値をもとに重合体濃度が30重量%となるようにMMPを加えて溶液を調製してGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られたアルカリ可溶性重合体(1)の収率は78%であった。また、得られたアルカリ可溶性重合体(1)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は5,800であった。
【0119】
[合成例2]アルカリ可溶性重合体(2)の合成
モノマーb1としてグリシジルメタクリレート、モノマーb2として(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb5としてスチレンを使用し、かつ下記の重量で仕込んだ以外は、合成例1と同様に重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 20.0g
グリシジルメタクリレート 30.0g
(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート 15.0g
スチレン 35.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0120】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(2)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は75%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(2)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は5,200であった。
【0121】
[合成例3]アルカリ可溶性重合体(3)の合成
モノマーb1としてメチルグリシジルメタクリレート、モノマーb2として(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート、モノマーb3としてN−フェニルマレイミドを使用し、かつ下記の重量で仕込んだ以外は、合成例1と同様に重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 30.0g
メチルグリシジルメタクリレート 20.0g
(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート 20.0g
N−フェニルマレイミド 30.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0122】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(3)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は82%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(3)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は5,000であった。
【0123】
[合成例4]アルカリ可溶性重合体(4)の合成
モノマーb1としてグリシジルメタクリレート、モノマーb2として(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレート、モノマーb4としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレートを使用し、かつ下記の重量で仕込んだ以外は、合成例1と同様に重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 30.0g
グリシジルメタクリレート 30.0g
(2−エチル−2−オキセタニル)メチルメタクリレート 15.0g
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレート 25.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0124】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(4)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は68%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(4)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は5,100であった。
【0125】
[合成例5]アルカリ可溶性重合体(5)の合成
モノマーb1としてグリシジルメタクリレート、モノマーb3としてN−シクロヘキシルマレイミド、モノマーb4としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレートを使用した以外は、合成例1と同様にして、下記組成にて重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 40.0g
グリシジルメタクリレート 40.0g
N−シクロヘキシルマレイミド 10.0g
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレート 10.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0126】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(5)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は75%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(5)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は4,700であった。
【0127】
[合成例6]アルカリ可溶性重合体(6)の合成
合成例1と同様の装置で、下記組成にて、2−ブタノンを溶剤とし、70℃の温度で0.5時間加熱し重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 15.0g
グリシジルメタクリレート 85.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 4.0g
【0128】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(6)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は85%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(5)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は8,900であった。
【0129】
[合成例7]アルカリ可溶性重合体(7)の合成
モノマーb1としてグリシジルメタクリレート、モノマーb4としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレートを使用した以外は、合成例1と同様にして、下記組成にて重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
4−ヒドロキシフェニルビニルケトン 30.0g
グリシジルメタクリレート 45.0g
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレート 25.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0130】
合成例1と同様の処理を行い、アルカリ可溶性重合体(5)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は72%であった。得られたアルカリ可溶性重合体(5)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は4,600であった。
【0131】
[比較合成例1]比較共重合体(1)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
アクリル酸 15.0g
グリシジルアクリレート 30.0g
(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート 20.0g
ベンジルメタクリレート 35.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0132】
合成例1と同様の処理を行い、比較共重合体(1)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は72%であった。得られた比較共重合体(1)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は6,200であった。
【0133】
[比較合成例2]比較共重合体(2)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
メタクリル酸 18.0g
グリシジルアクリレート 30.0g
(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート 20.0g
N−フェニルマレイミド 32.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 2.0g
【0134】
合成例1と同様の処理を行い、比較共重合体(2)の30重量%MMP溶液を得た。ポ
リマーの収率は83%であった。得られた比較共重合体(2)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は7,900であった。
【0135】
[比較合成例3]比較共重合体(3)の合成
合成例1と同様にして、下記の成分を下記の重量で仕込み、重合を行った。
2−ブタノン 200.0g
メタクリル酸 10.0g
グリシジルメタクリレート 90.0g
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル) 4.0g
【0136】
合成例6と同様の処理を行い、比較重合体(3)の30重量%MMP溶液を得た。ポリマーの収率は85%であった。得られた比較重合体(3)のGPC分析(ポリエチレンオキシド標準)により求めた重量平均分子量は9,600であった。
【0137】
[実施例1]
[ポジ型感光性樹脂組成物の製造]
合成例1で得られたアルカリ可溶性重合体(1)、1,2−キノンジアジド化合物である4,4’−[1−[4−[1−[4−ヒドロキシフェニル]−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノールと1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロライドとの縮合物(平均エステル化率58%、以下「PAD」ともいう)、添加剤としてフッ素系界面活性剤である大日本インキ化学工業株式会社製メガファックR−08(以下「R−08」と略す)、溶剤としてMMPを下記の重量で混合溶解し、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。
MMP 1.40g
アルカリ可溶性重合体(1)の30重量%溶液 10.00g
PAD 0.60g
R−08 0.006g
【0138】
[ポジ感光性樹脂組成物の評価方法]
1)パターン状透明膜の形成
ガラス基板上に実施例1で合成されたポジ型感光性樹脂組成物を800rpmで10秒間スピンコートし、100℃のホットプレート上で2分間乾燥した。この基板を空気中、ホールパターン形成用のマスクを介して、株式会社トプコン製プロキシミティー露光機TME−150PRCを使用し、波長カットフィルターを通して350nm以下の光をカットしてg、h、i線を取り出し、露光ギャップ100μmで露光した。露光量はウシオ電機株式会社製積算光量計UIT−102、受光器UVD−365PDで測定して150mJ/cm2とした。露光後のガラス基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間ディップ現像し、露光部の樹脂組成物を除去した。現像後の基板を純水で60秒間洗ってから100℃のホットプレートで2分間乾燥した。この基板を前記露光機にてマスクを介さずに露光量300mJ/cm2で全面露光した後、オーブン中230℃で30分ポストベイクし、膜厚3μmのパターン状透明膜を形成した。膜厚はKLA−Tencor Japan株式会社製触針式膜厚計αステップ200を使用し、3箇所の測定の平均値を膜厚とした。
【0139】
2)現像後残膜率
現像の前後で膜厚を測定し、次式から計算した。
(現像後膜厚/現像前膜厚)×100(%)
【0140】
3)解像度
上記1)で得られたポストベイク後のパターン状透明膜の基板を光学顕微鏡で400倍
にて観察し、ホールパターンの底にガラスが露出しているマスクサイズを確認した。
【0141】
4)透明性
有限会社東京電色製TC−1800を使用し、透明膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして波長400nmでの光透過率を測定した。
【0142】
5)耐溶剤性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を100℃のN−メチル−2−ピロリドン中に5分間浸漬し、膜厚の変化を測定した。浸漬の前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚)×100(%)
なお、膜厚の変化率が−2〜2%である場合は良好と判定でき、膨潤により2%を超えたり、溶解により−2%より低かった場合は不良と判定できる。
【0143】
6)耐酸性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を50℃の塩酸/硝酸/水=4/2/4(重量比)に3分間浸漬し、膜厚の変化を測定した。浸漬の前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚)×100(%)
膜厚の変化率が−2〜2%である場合は良好と判定でき、膨潤により2%を超えたり、溶解により−2%より低かった場合は不良と判定できる。
【0144】
7)耐アルカリ性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を60℃の5%水酸化カリウム水溶液に10分間浸漬し、膜厚の変化を測定した。浸漬の前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(浸漬後膜厚/浸漬前膜厚)×100(%)
膜厚の変化率が−2〜2%である場合は良好と判定でき、膨潤により2%を超えたり、溶解により−2%より低かった場合は不良と判定できる。
【0145】
8)耐熱性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を230℃のオーブンで1時間追加ベイクし、加熱の前後において上記4)と同様に光透過率を測定し、ポストベイク後(追加ベイク前)の光透過率をT1とし、追加ベイク後の光透過率をT2とした。ポストベイク後から追加ベイク後の光透過率の低下が少ないほど良好と判定できる。また加熱の前後で膜厚を測定し、膜厚の変化率を次式から計算した。
(追加ベイク後膜厚/ポストベイク後膜厚)×100(%)
【0146】
9)密着性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板を碁盤目剥離試験(クロスカット試験)により評価した。評価は1mm角の碁盤目100個中のテープ剥離後の残存碁盤目数を表した。
【0147】
10)耐スパッタ性
上記1)で得られたパターン状透明膜の基板にITO(インジウムチンオキシド)の透明電極を200℃にてスパッタリングにより150nmの膜厚で形成し、室温に戻した後で膜面のしわの有無を目視により観察した。膜面にしわが生じなかった場合は耐スパッタ性が良好(G:Good)と、膜面にしわが生じた場合は耐スパッタ性が不良(NG:No Good)と判定した。
【0148】
実施例1で合成されたポジ型感光性樹脂組成物について、上記の評価方法によって得られた結果を表1に示す。
【0149】
【表1】

【0150】
[実施例2]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例2で得られたアルカリ可溶性重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0151】
[実施例3]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例3で得られたアルカリ可溶性重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0152】
[実施例4]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例4で得られたアルカリ可溶性重合体(4)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0153】
[実施例5]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例5で得られたアルカリ可溶性重合体(5)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組
成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0154】
[実施例6]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例6で得られたアルカリ可溶性重合体(6)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0155】
[実施例7]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、合成例7で得られたアルカリ可溶性重合体(7)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し、評価した。結果を表1に示す。
【0156】
[比較例1]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例1で得られた比較共重合体(1)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し評価した。結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
[比較例2]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例2で得られた比較共重合体(2)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物を調製し評価した。結果を表2に示す。
【0159】
[比較例3]
実施例1において用いられたアルカリ可溶性重合体(1)の代わりに、比較合成例3で得られた比較共重合体(3)を用いた以外は、実施例1と同様にポジ型感光性樹脂組成物
を調製し評価した。結果を表2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、例えば、液晶表示素子の製造工程に用いられることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるモノマー(A)を重合して得られるアルカリ可溶性重合体。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるモノマー(A)と、前記モノマー(A)以外のラジカル重合性モノマー(B)とを共重合して得られるアルカリ可溶性重合体。
【化2】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ水素、又は任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい炭素数1〜3のアルキルであり、R4、R5、R6、R7及びR8は、それぞれ水素、ハロゲン、−CN、−CF3、−OCF3、−OH、任意の−CH2−が−COO−、−OCO−、−CO−で置き換えられてもよく、また任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルキル、又は任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1〜5のアルコキシである。但し、R4〜R8のうち少なくとも1つは−OHである。)
【請求項3】
前記R1〜R5、R7及びR8はそれぞれ水素であり、前記R6は−OHであることを特徴とする請求項2に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項4】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、オキシラニルを有するラジカル重合性モノマー(b1)、オキセタニルを有するラジカル重合性モノマー(b2)、N−置換マレイミドを有するラジカル重合性モノマー(b3)、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基を有するラジカル重合性モノマー(b4)からなる群から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項5】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)及び(b2)のいずれか一方又は両方を含むことを特徴とする請求項4に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項6】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)、及び、前記(b1)〜(b4)以外のラジカル重合性モノマー(b5)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項7】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)及び(b3)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項8】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b2)及び(b4)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項9】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)、(b3)及び(b4)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項10】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項11】
前記ラジカル重合性モノマー(B)が、前記ラジカル重合性モノマー(b1)及び(b4)からなることを特徴とする請求項5に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項12】
前記ラジカル重合性モノマー(b1)は、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びメチルグリシジルメタクリレートからなる群から選ばれる一又は二以上であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b2)は、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレート及び(2−エチル−2−オキセタニル)メチルアクリレートからなる群から選ばれる一又は二以上であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b3)は、N−フェニルマレイミド及びN−シクロヘキシルマレイミドの一方又は両方であり、
前記ラジカル重合性モノマー(b4)は、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルメタクリレートであることを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項13】
前記ラジカル重合性モノマー(b5)は、ベンジルメタクリレート及びスチレンの一方又は両方であることを特徴とする請求項6に記載のアルカリ可溶性重合体。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか一項に記載の前記アルカリ可溶性重合体及び感光剤(C)を含有するポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記感光剤(C)が酸発生剤化合物である請求項14に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項16】
前記感光剤(C)が1,2−キノンジアジド化合物である請求項14に記載のポジ型感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2008−115263(P2008−115263A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299052(P2006−299052)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】