説明

アルカリ塩により活性化されたThermomyceslanuginosusリパーゼを用いたアルコール処理による、トリグリセリドからのモノグリセリドの製造方法および使用

本発明は、トリグリセリドを、1〜8個の炭素原子を有するアルコールの存在下、アルカリ塩の添加によって活性化されたエステラーゼにより酵素的に反応させる、モノグリセリドの製造方法に関する。本発明はまた、前記方法によって製造され、分離された、モノグリセリドの使用に関する。反応成分との混合物としての本発明のモノグリセリドは、滑剤、燃料用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分として使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にグリセリド、特に酵素触媒によるモノグリセリドの製造方法および製造されたモノグリセリドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素は、化学合成および生化学合成における触媒としてますます使用されてきている。例えば、多くの場合、ヒドロラーゼ、特にリパーゼ(EC 3.1.1.3)は、その反応条件が大抵比較的穏やかなので、産業プロセスにおいて脂肪分解のために以前から使用されている。これらの酵素は、様々な微生物によって生産される。酵素を分離するため、微生物の発酵に続いて高価な精製処理を行う。酵素の触媒としての有効性はしばしば、その製造および分離の高コストを相殺するので、研究者達は常に酵素の収率または酵素の生産性を高める努力をしている。
【0003】
モノグリセリドを製造するための標準的な化学的方法は、トリグリセリドの塩基触媒によるグリセロール分解を含み、一般に、グリセリド全体に基づいて40〜60%のモノグリセリドの収率が得られる。90%を超えるモノグリセリド含有量への更なる濃縮は、分子蒸留または結晶化のような物理的分離技術によって達成される。
【0004】
モノグリセリドの製造に適した様々な酵素による方法は、文献に記載されている:1)脂肪酸およびグリセロールから出発する酵素的合成;2)化学的方法に対応するトリグリセリドおよびグリセロールから出発する酵素的グリセロール分解;3)トリグリセリドの1,3-位置選択的加水分解またはアルコーリシス。これらの方法の概要は、例えば(a)Recent Res. Devel. Oil Chem., 3 (1999), 93-106;(b)Hydrolases in Organic Synthesis, Wiley-VCH (1999), eds. Bornscheuer & Kazlaukasに見られる。
【0005】
モノグリセリドは、反応平衡から水を除去する場合しか有効に酵素的合成されず、水の除去は、分子篩の添加または減圧下での反応によって行われる。また、良好な合成のためには可溶化剤を必要とする((a)Recent Res. Devel. Oil Chem., 3 (1999))。従って、モノグリセリドの酵素的合成は、化学的方法のコスト的に有利な代替法とはならない。酵素的グリセロール分解は、モノグリセリドを製造するための化学的グリセロール分解と類似した平衡調整を招く。故に、濃縮モノグリセリド(60重量%超の含有量)の合成もまた、蒸留または結晶化による濃縮を必要とする。従って同方法もまた、化学的方法のコスト的に有利な代替法とはならない。
【0006】
WO 90/13656およびWO 90/04033(Enzytech. Inc.)並びにUS 5,939,828およびUS 5,316,927(Opta Food Ingredients Inc.)は、混合物としての各種アルコールおよび少量の水を用いた酵素的アルコーリシスによるモノグリセリドの製造方法を記載している。リパーゼをパウダー状または固定化状で使用する。これらの実施例では、リパーゼをトリグリセリドに基づいて約20重量%の量で、アルコール成分を20倍過剰量で使用する。
【0007】
WO 91/16441、WO 91/16442およびUS 5,116,745は、リパーゼを用いて、1,2-ジグリセリドおよび2-モノグリセリドの混合位置選択的アルコーリシスおよび加水分解を、溶媒、アルコールおよび水性緩衝剤の存在下で行う方法を記載している。
【0008】
EP 407 959は、可溶化剤としての二級または三級アルコールの存在下、熱安定性固定化リパーゼを用いたモノエステルの製造方法を記載している。
【0009】
WO 02/06505(日本水産株式会社)は、固定化リパーゼ、過剰なアルコールおよび高濃度の酵素を用いた位置選択的アルコーリシス、並びに続くモノグリセリドの再エステル化を記載している。
【0010】
特開平03-108489号および特開平03-187385号(名糖産業株式会社)は、アルカリ塩の存在下でのアルカリ性リパーゼによるトリグリセリドの位置選択的加水分解を記載している。使用されるリパーゼは、アルカリ性条件下でしか活性にならない。
【0011】
特開平03-103499号(名糖産業株式会社)は、アルカリ性リパーゼの存在下でのイソブタノールによるPUFAトリグリセリドの位置選択的アルコーリシスを記載している。
【0012】
部分グリセリドの酵素的製造方法は既に広範に記載されてきたが、先に記載した文献の全てにおいて溶媒が必要であり、費用をかけて反応水を除去しなければならないか、或いはリパーゼが非常に特殊であるか固定化されている。従来の化学的合成と比較して幾分遅い反応速度の故に、モノグリセリドの比較的高い収率を実現するためには、長い反応時間、従ってリパーゼまたは反応させるアルコールの高い能力利用水準または高濃度を要する。安価なリパーゼを使用した場合でさえも、工業的方法のコスト問題だけは解決できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、酵素的アルコーリシスにおいて例えばトリグリセリドのようなポリオールエステルからのモノグリセリドの収率を上昇させ、酵素含有量を最小に維持するための、安価な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルコールの存在下、アルカリ塩の添加によって活性化されたエステラーゼによりトリグリセリドを酵素的に反応させる、モノグリセリドの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
意外なことに、アルカリ塩の添加がエステラーゼを活性化し得るので、既知の方法と比較して、モノグリセリドの上昇した収率がモノグリセリドのアルコーリシスにおいて実現され得ることが見出された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の方法では、トリグリセリドが、アルコールの存在下、1つの2-モノグリセリドと2つの脂肪酸エステルとに分解される。反応は、少量のエステラーゼ、好ましくはリパーゼの使用によって極めて経済的に行われ得る。反応は、酵素を強力に活性化する添加アルカリ無機塩の存在下、酵素濃縮物によって直接行われる。このように、固定化によって酵素を安定化しない場合でさえ、高い転化率が少量の酵素によって達成される。溶媒を添加する必要はない。
【0017】
アルコーリシスは、10〜40℃、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15〜25℃の温度で行う。反応はトリグリセリドの量に基づいて0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%の含水量で行い、該含水量は液状酵素製剤の含水量を含む。反応は高含水量で行うこともできるが、その場合、生じる遊離脂肪酸の含有量が上昇する。遊離脂肪酸は、蒸留によるエステルとグリセリド混合物の分離において再エステル化に参加でき、従ってモノグリセリドの収率を低下させるので、遊離脂肪酸は望ましくない。
【0018】
反応時間は好ましくは、使用する酵素濃度に依存して12〜48時間である。好ましい態様では、全反応体を混合し、反応を酵素製剤の添加によって開始する。
【0019】
1〜8個の炭素原子を有するアルコール成分、好ましくはメタノールおよび/またはエタノール、好適にはエタノールを、全て反応開始時にまたは反応の最中に添加する。使用するアルコールの量は、1molの油あたり最低2molのアルコールと、混合物において最大50重量%のアルコールおよび50重量%の油との間で変化できる。
【0020】
本発明の方法の別の工程では、エステラーゼを加熱によって不活性化でき、その後、沈澱したエステラーゼを場合によって濾去してもよい。この場合、沈澱したエステラーゼだけでなく使用した酵素製剤の添加剤または製剤成分も除去できる。同時に、アルコール成分を、例えば80℃/100mbarの減圧下で、蒸留によって除去でき、アルキルエステルとモノグリセリドの混合物が得られる。アルキルエステルとモノグリセリドは、例えば薄層エバポレータまたはカラムで行われる、次の工程において蒸留によって分離することができる。反応条件は、例えば175℃、0.3mbarの減圧である。モノグリセリドは、残油として残留する。
【0021】
本発明の酵素的方法で使用されるエステラーゼは、好ましくは、Thermomyces lanuginosus、Candida antarctica A、Candida antarctica B、Rhizomucor miehei、Candida cylindracea、Rhizopus javanicus、Porcine pancreas、Aspergillus niger、Candida rugosa、Mucor javanicus、Pseudomonas fluorescens、Rhizopus oryzae、Pseudompnas sp.、Chromobacterium viscosum、Fusarium oxysporumおよびPenicilium camembertiからなる群から選ばれる生物から生じるエステラーゼである。Humicola lanuginosaの別名を有するThermomyces lanuginosus由来のエステラーゼが特に好ましい。
【0022】
エステラーゼは、エステルの形成および加水分解を触媒する酵素である。ヒドロラーゼのように、エステラーゼは、水の元素の組み込みを伴って各々の基質を分解する。エステラーゼは例えば、本発明の方法に好ましいエステラーゼを表す脂肪分解リパーゼを包含する。1,3-位置特異的リパーゼの使用が本発明の方法のために特に好ましく、これらのリパーゼは、トリグリセリドの1位および3位で脂肪酸を選択的に分離するという事実によって特徴付けられる。基本的に、遊離状態または固定化状態の1,3-位置選択的リパーゼまたはエステラーゼが、本発明の方法のために使用され得る。Thermomyces lanuginosusのリパーゼ(製造業者:Novozymes、商品名:Lipozyme TL 100 lまたはLipoplase 100 EX)が、本発明の方法のために特に好ましいことが分かった。
【0023】
実験データは、少量のアルカリ無機塩の添加によってエステラーゼの酵素活性が著しく増加することを示している。特に、非固定化リパーゼがアルカリ塩によって活性化される。
【0024】
これらの市販液状酵素製剤は、好ましくは、使用されるトリグリセリドの量に基づいて0.05〜2%の濃度で使用される。これらの市販液状酵素製剤は、平均100,000U/mlの酵素活性を有する。1ユニット(U)は、1分間あたり1μmolの基質を反応させる酵素量として定義されている。本発明の方法では、予め水に溶解された、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウムの水酸化物、炭酸塩およびリン酸塩からなる群から選ばれるアルカリ無機塩が、エステラーゼを活性化するために好ましく使用される。本発明において、エステラーゼを活性化するためのアルカリ無機塩の量は、トリグリセリドの量に基づいて0.00001〜1重量%、好ましくは0.0001〜0.2重量%である。使用される塩基性添加剤の量は、使用される緩衝化液状酵素製剤の量および塩基強度に依存する。NaOHおよび0.5%未満の液状酵素製剤を使用する場合、塩基性添加剤の濃度はより低い範囲であり、NaCOおよび2%の液状酵素製剤を使用する場合、塩基性添加剤の量はより高い濃度範囲である。
【0025】
意外なことに、例えば、リン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化アンモニウムのような塩を、市販液状酵素製剤に、トリグリセリド含有量に基づいて0.0001〜0.2重量%の量で添加した場合、Thermomyces lanuginosusリパーゼの活性が最大になった。意外なことに、ポリプロピレン上に吸着されたThermomycesリパーゼを用いた場合より、モノグリセリド合成速度が速くなった。リパーゼの活性化は強力なので、このことを反応媒体中のpHシフトのみによって説明することはできない。Thermomyces lanuginosusリパーゼを同条件の下、固定化状態で使用する場合、塩を添加しても同等の強力な活性化は得られない。一般に、高い活性レベルは、担体に固定化されたリパーゼにより低含水媒体中でしか実現できないことが知られているので、この強力な活性化は極めて意外である。この強力な活性化は、複雑な固定化工程の必要性を排除し、単純なプラント概念をもたらす。また、反応生成混合物のpH値の測定によって、pHが、酵素活性化がpHシフトだけでは起こり得ない中性から弱酸性の範囲であることが分かる。
【0026】
本発明の方法では、一価および/または多価不飽和脂肪酸の含有率が高く、ヒマワリ油、菜種油、アザミ油、大豆油、亜麻仁油、落花生油、獣脂、オリーブ油、ひまし油、パーム油および使用済み油、例えば使用済みフライ脂からなる群から選ばれる、脂肪および油由来のトリグリセリドを好ましく使用する。
【0027】
落花生油は、脂肪酸に基づいて平均で、54重量%のオレイン酸、24重量%のリノール酸、1重量%のリノレン酸、1重量%のアラキン酸、10重量%のパルミチン酸および4重量%のステアリン酸を含む。融点は2〜3℃である。
【0028】
亜麻仁油は一般に、5重量%のパルミチン酸、4重量%のステアリン酸、22重量%のオレイン酸、17重量%のリノール酸および52重量%のリノレン酸を含む。亜麻仁油は、155〜205のヨウ素価、188〜196の鹸化価および約−20℃の融点を有する。
【0029】
オリーブ油は主にオレイン酸を含む。パーム油は、脂肪酸成分として、約2重量%のミリスチン酸、42重量%のパルミチン酸、5重量%のステアリン酸、41重量%のオレイン酸、10重量%のリノール酸を含む。
【0030】
菜種油は一般に、脂肪酸成分として、約48重量%のエルカ酸、15重量%のオレイン酸、14重量%のリノール酸、8重量%のリノレン酸、5重量%のエイコセン酸、3重量%のパルミチン酸、2重量%のヘキサデセン酸および1重量%のドコサジエン酸を含む。新鮮な植物由来の菜種油は、より高濃度の不飽和酸を含む。この場合、一般的な脂肪酸濃度は、0.5重量%のエルカ酸、63重量%のオレイン酸、20重量%のリノール酸、9重量%のリノレン酸、1重量%のエイコセン酸、4重量%のパルミチン酸、2重量%のヘキサデセン酸および1重量%のドコサジエン酸である。
【0031】
ひまし油の80〜85重量%は、リシノール酸のグリセリドからなる。ひまし油はまた、約7重量%のオレイン酸グリセリド、3重量%のリノール酸グリセリド、並びに約2重量%のパルミチン酸グリセリドおよびステアリン酸グリセリドを含む。
【0032】
大豆油は、全脂肪酸に基づいて55〜65重量%の多価不飽和脂肪酸、特にリノール酸およびリノレン酸を含む。この状況はヒマワリ油についても同様で、ヒマワリ油の全脂肪酸に基づく典型的な脂肪酸分布は以下の通りである:約1重量%のミリスチン酸、3〜10重量%のパルミチン酸、14〜65重量%のオレイン酸および20〜75重量%のリノール酸。
【0033】
トリグリセリド中の脂肪酸含有率に関する上記数値の全ては、原料の質に依存することが知られており、従って変化し得る。
【0034】
混合物中の脂肪酸組成は、使用される植物油の特定天然脂肪酸組成並びにメチルおよび/またはエチルエステルおよびモノグリセリドを既知の方法で調製するための原料の特定品質から構成される。
【0035】
1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルコールが、好ましくは、本発明の方法のためのアルコール成分として使用される。これらのアルコールは、好適には一級または二級アルコールである。エタノールまたは1-プロパノールが好ましいアルコール成分である。アルコール含有量は、好ましくは、使用されるトリグリセリドに基づいて10〜75重量%であり、15〜40重量%が好適には用いられる。モノグリセリド含有量は、使用されるアルコールの量に依存する。
【0036】
本発明の方法の好ましい態様では、好ましくは蒸留によって、アルコールを除去できる。この追加工程によって、モノグリセリドが、滑剤、プラスチック用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分として混合物状で使用し得る、アルキルエステルとの混合物として得られる。従って、本発明はまた、反応混合物中に存在するアルキルエステルとの混合物としてのモノグリセリドの、滑剤、燃料用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分としての使用に関する。
【0037】
本発明の方法の別の好ましい態様では、好ましくは蒸留によって、アルキルエステルをモノグリセリドから除去できる。この追加工程によって、滑剤、燃料用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分として使用し得るモノグリセリドが得られる。従って、本発明は更に、本発明の方法によって製造され、アルコールおよびアルキルエステルを除去したモノグリセリドの、食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分としての使用に関する。
【0038】
本発明はまた、アルコールおよびアルキルエステルとの混合物として本発明の方法によって製造されたモノグリセリドの、滑剤または燃料用添加剤としての使用に関する。
【0039】
様々な燃料用添加剤の使用は文献から既知である。モノグリセリドおよび他の部分エステル化またはエーテル化ポリオール(例えばグリコールモノエステル)は良好な潤滑効果を有するので、ディーゼル添加剤として添加される。このような添加剤を記載した特許出願は、例えば、EP 0 721 492(Infineum USA L.P.)、WO 01/19941(Fina Research S.A.)およびWO 00/63322(Pure Fuels USA Inc.)を包含する。特に、モノグリセリドを多く含むグリセリド混合物は、良好な潤滑特性を有する。従って、本発明の方法によって製造されたモノグリセリドはまた、ディーゼル燃料における燃料添加剤として使用することができ、良好な潤滑特性を示すことが見出された。
【0040】
天然油の位置特異的脂肪酸組成物を、本発明の方法で利用することができる。そのモノグリセリド留分は主に、油の2位に見られる脂肪酸組成物を含む。ほとんどの天然油に対して、高級不飽和脂肪酸は好ましくは2位で結合されている。このように、リノール酸を高含有するモノグリセリドは、例えばヒマワリ油またはアザミ油から製造され得る。これらのモノグリセリドは低い凝固点を有し、これはディーゼル添加剤としてのモノグリセリドの使用に特に重要である。オレイン酸を高含有するモノグリセリドは、例えばパーム油から得ることができる。このモノグリセリドは、特に、食品または化粧品における使用に適している。
【0041】
食品へのモノグリセリドの使用も文献から既知である。EUのガイドラインでは、モノグリセリドおよびジグリセリドの含有量は少なくとも70%でなければならず、酸価は6を超えるべきではなく、生成物は最大で7%の遊離グリセロールおよび2%の水しか含んではならない。90%超のモノエステルおよびジエステル含有量並びに70%超のモノエステル含有量を有するモノグリセリドが、蒸留による脂肪酸エステルの除去を伴った酵素的方法によって得られる。含水量、遊離グリセロール含有量および酸価は、最大値を大きく下回る。従って、本発明の方法によって製造されたモノグリセリドは、食品への使用基準を満たす。
【0042】
化粧品または医薬品へのモノグリセリドの使用もまた、文献から既知である。90%超のモノエステルおよびジエステル含有量並びに70%超のモノエステル含有量を有する本発明に従って製造されたモノグリセリドは、クリーム、ローション、軟膏、界面活性剤、並びに化粧品および医薬品用の油中水(w/o)型エマルションおよび水中油型(o/w)エマルションにおける、w/o乳化剤、共乳化剤、脂質層増強成分または粘稠要素として使用され得る。
【実施例1】
【0043】
遊離状および固定化状の各種酵素による位置選択的アルコーリシス
20gの菜種油および2.5gのエタノールを含んでなる16個の混合物を、マグネットスターラーを備えたガラスビーカーに導入した。0.25gの水を混合物1〜9、15および16に撹拌しながら添加し、0.5gの水を混合物10〜14に添加した。次いで、下記表1に列挙したような遊離状および固定化状のリパーゼを添加した。混合物を24時間撹拌しながら培養し、5時間後、更に2.5gのエタノールを添加した。混合物1〜14のアルコーリシスを、マルチスターラープレート上で室温で行った。混合物15および16を振盪機上で45℃で培養した。24時間後、試料を採取し、グリセリドおよびエチルエステルの含有量をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果をパーセント面積として評価した。形成された少量の脂肪酸は、エチルエステルの面積に含まれる。
【0044】
混合物1〜3、15および16の固定化酵素は、製造業者から直接固定化状で入手した。混合物4〜8の固定化酵素は、Accurel MP 1000(Membrana)への吸着によって調製した。そのために、Accurel MP 1000を10mlのエタノール中で1時間培養した。エタノールをデカントにより除去した後、10gの水および0.5gの各リパーゼ製剤を添加した。混合物を室温で一晩培養した。次いで、固定化酵素を濾過によって分離し、紙シート上で室温で24時間乾燥した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【実施例2】
【0047】
非固定化リパーゼによるヒマワリ油の位置選択的アルコーリシス
40gのヒマワリ油および10gのエタノールを含んでなる6つの混合物を、マグネットスターラーを備えたガラスビーカーに導入した。0.4gの水を撹拌しながら添加した。40mgの固体NaPO×12HOを、混合物2、4および6に添加した。0.4gのリポラーゼ(Thermomyces lanuginosusリパーゼ、液状製剤)を混合物1および2に添加し、0.4gのNovozym 525(Candida antarctica Bリパーゼ、液状製剤)を混合物3および4に添加し、0.4gのNovozym 388(Rhizomucor mieheiリパーゼ、液状製剤)を混合物5および6に添加した。アルコーリシスをマルチスターラープレート上で室温で行った。16時間後および44時間後に試料を採取し、グリセリドの含有量をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果をパーセント面積として評価した。
【0048】
【表3】

【0049】
結果:
塩基性塩の存在下でリポラーゼは著しい活性を示した(混合物2)。一方、塩を添加しなかった場合、極めて弱いアルコーリシス反応しか検出できなかった。弱い活性がNovozym 388を用いた場合に検出されたが、塩の添加には依存しなかった。
【実施例3】
【0050】
固定化リポラーゼおよびリポラーゼ液状製剤の活性の比較
0.2gのリポラーゼ液状製剤または対応する量の担体固定化リポラーゼを含んでなる混合物を比較した。
【0051】
Accurel MP 1000(Membrana)へのリポラーゼの固定化:
5gのMP 1000を250mlの三角フラスコに導入し、15mlのエタノールを添加した。混合物を1時間振盪し、その後、エタノールをデカントにより除去した。50gの水をMP 1000に添加した。1時間撹拌後、水をデカントにより除去した。100mlのリン酸緩衝液(20mM、pH6.0)を添加し、5gのリポラーゼ液状製剤の添加によって固定化を開始した。混合物を8℃で一晩撹拌し、その後、固定化酵素を濾取した。固定化酵素をペーパータオルの間で室温で一晩乾燥した。固定化酵素の重量を測定し、0.2gのリポラーゼ液状製剤に相当する固定化酵素の量をアルコーリシスに使用した。
【0052】
もう1つの、Accurel MP 1000(Membrana)へのリポラーゼの固定化:
固定化を上記のように行った。固定化酵素を濾取後、200mMのNaPO溶液を5ml添加した。完全混合物を室温で減圧乾燥した。この追加工程の目的は、既にアルカリ性の固定化酵素を調製することであった。固定化酵素の重量を測定し、0.2gのリポラーゼ液状製剤に相当する固定化酵素の量をアルコーリシスに使用した。
【0053】
Dowex Marathon WBA(Dow Chemicals)へのリポラーゼの固定化:
200mgのDowex WBAを小さいガラスビーカーに導入した。0.2gのリポラーゼ液状製剤をピペットで添加し、ピペットの先端で十分に混合した。混合物を、時々混合しながら室温で2時間培養した。完全混合物(Dowex+上清)を転位に使用した。非結合リポラーゼを洗浄によって固定化酵素から得た平行試験により、存在するリポラーゼの約90%が担体に固定化されたことが分かった。
【0054】
Duolite A 568(Rohm & Haas)へのリポラーゼの固定化:
Duolite A 568を小さいガラスビーカーに導入した。0.2gのリポラーゼ液状製剤をピペットで添加し、ピペットの先端で十分に混合した。混合物を、時々混合しながら室温で2時間培養した。完全混合物(Duolite+上清)を転位に使用した。非結合リポラーゼを洗浄によって固定化酵素から得た平行試験により、存在するリポラーゼの約80%が担体に固定化されたことが分かった。
【0055】
試験方法:
40gのヒマワリ油および10gのエタノールを含んでなる10個の混合物を、マグネットスターラーを備えたガラスビーカーに導入した。0.4gの水を撹拌しながら添加した。50mgの固体NaCOを、混合物2、4、6、8および10に添加した。0.2gのリポラーゼ(Thermomyces lanuginosusリパーゼ、液状製剤)を混合物1および2に添加し、Dowex固定化酵素を混合物3および4に添加し、Duolite固定化酵素を混合物5および6に添加し、MP 1000固定化酵素を混合物7および8に添加し、NaPOで後処理したMP 1000固定化酵素を混合物9および10に添加した。アルコーリシスをマルチスターラープレート上で室温で行った。混合物3〜10を2回処理した。16時間後、試料を採取し、グリセリドの含有量をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果をパーセント面積として評価した。
【0056】
【表4】

【0057】
結果:
リポラーゼ含有固定化酵素の全てがアルコーリシス活性を示した。NaPOで後処理した固定化酵素を除いて、全固定化酵素がNaCOによって更なる活性を示した。しかしながら、NaCOによる液状リポラーゼの活性化は、固定化酵素の活性化より著しく強かった。同重量の酵素では、塩活性化リポラーゼ(混合物2)によるアルコーリシスが固定化酵素を用いた場合より遥かに速かった。
【実施例4】
【0058】
各種アルコールとの反応
40gのヒマワリ油および様々な量の各種アルコールを含んでなる種々の混合物を、室温でリポラーゼを用いてアルコーリシス反応に付した。混合物は下記の表5に示した組成を有していた。
【0059】
【表5】

【0060】
グリセリドおよびエステルの含有量をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果をパーセント面積として評価した。過剰な遊離アルコールは含まれていなかった。試料を下記の表6に記載した時間に採取した。
【0061】
【表6】

【0062】
結果:
使用したアルコール全てによるアルコーリシス反応を観察した。酵素は、一級および二級アルコール並びに直鎖および分枝アルコールを許容する。最も良好な反応は、2%の水を含む反応媒体においてエタノールおよびプロパノールを用いた場合に観察された。他のアルコールでは、最適な転化率を達成するために、反応条件を部分的に幾分変更しなければならなかった。ブタノール(混合物10〜12)およびヘキサノール(混合物13〜15)を用いた詳細な研究により、これらのアルコールを用いた場合でさえ、60%超のモノグリセリド含有量を有するグリセリドの製造が可能であることが分かった。ブタノールによる反応は、比較的少量の水を含む媒体において良好に生じるのに対し、ヘキサノールによる反応は、比較的多量の水の存在下でしか成功裏に生じない。これより一般に、アルコールがより疎水性である場合、最適な反応速度を実現するためには水の濃度を上昇させなければならないということが結論づけられる。
【実施例5】
【0063】
グリセロール構造、酸構造およびモノグリセリド含有量に対するエタノール濃度の影響
40gのヒマワリ油および様々な量のエタノールを含んでなる各種混合物を、室温で0.2gのリポラーゼを用いてアルコーリシス反応に付した。25mgのNaCOを添加した。混合物は下記の表7に示した組成を有していた。
【0064】
【表7】

【0065】
グリセリドの含有量をガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果をパーセント面積として記載した。グリセロール含有量もガスクロマトグラフィーによって分析した。その結果を未換算パーセント面積として記載した。ここでの基本要因は相対値の比較であるが、物質収支によれば、実際のグリセロール含有量はより少ない。GC試料を、グリセロール測定のために16時間の反応時間後、グリセリド測定のために40時間の反応時間後採取した。酸価は16時間後に測定した。
【0066】
【表8】

【0067】
使用したGC測定において、グリセロールはエチルエステルおよびグリセリドより比較的強い吸着を示すので、エチルエステル、遊離エタノールおよびグリセリドの混合物として直接換算を行った。0〜1.0重量%の濃度範囲を超えたグリセロールの吸着は、下記式に対応する:
y=2.3x(y=吸着量、x=測定量)
以下のパターンが上記分析から明らかになる。
【0068】
【表9】

【0069】
結果:
使用したアルコールの濃度が高い程、高いモノグリセリド含有量が得られた。全グリセリドに基づいて90%超のモノグリセリド含有量が達成された。
アルコール含有量の増加によって、油の全体加水分解から形成される遊離脂肪酸またはグリセロールのような副生物の形成が低減された。
アルコール含有量を増加した場合、反応速度は低下した。反応速度は含水量の増加によって改善されたので、多量のエタノールを含む場合でさえ良好なモノグリセリド形成が実現した(混合物6)。
【実施例6】
【0070】
様々な油との反応
様々な油を用いた平行試験で加水分解を調べた。40gの油を、10gのエタノールが入ったガラスビーカーに量り入れた。0.4gの水を撹拌しながら添加し、40mgの固体NaPO×12HOを添加した。0.4gのリポラーゼの添加によって反応を開始した。16時間の反応時間後、ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。その結果をパーセント面積として記載した。
【0071】
【表10】

【0072】
結果:
使用した油の全てを用いた場合に良好なアルコーリシスが観察された。全ての油を用いた場合に、全グリセリドに基づいて70%超のモノグリセリド含有量が達成された。
【実施例7】
【0073】
様々なアルカリ性塩による反応
40gのヒマワリ油および10gのエタノールを含んでなる5つの混合物を量り入れた。0.4gの水を、5つの混合物全てに撹拌しながら添加した。40mgのNaPO×12HOを混合物1に添加し、11mgのNaCOを混合物2に添加し、4mgのCa(OH)を混合物3に添加し、31mgのクエン酸三ナトリウム×2HOを混合物4に添加し、混合物5には塩を添加しなかった。0.4gのリポラーゼの添加によって反応を開始した。16時間の反応時間後、ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。その結果をパーセント面積として記載する。
【0074】
【表11】

【0075】
結果:
リン酸塩、炭酸塩および水酸化物の添加によって、アルコーリシス反応が良好に行われた。
【実施例8】
【0076】
使用する塩(NaCO)濃度の最適化
40gのヒマワリ油および10gのエタノールを含んでなる12個の混合物を量り入れた。0.2gの水を混合物1〜6に、0.4gの水を混合物7〜12に、撹拌しながら添加した。次いで、下記の表12に記載したような様々な量の塩を添加した。0.2gのリポラーゼの添加によって反応を開始した。16時間の反応時間後、ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。その結果をパーセント面積として記載する。
【0077】
【表12】

【0078】
結果:
混合物中の含水量の増加によって、NaCOの最適量が僅かにシフトした。0.2gの水を添加した場合、塩の最適量の範囲は25mg〜100mgである。一方、0.4gの水を添加した場合、該最適範囲は50mg〜200mgである。
塩基性添加剤の最適量が、使用する緩衝化酵素溶液の量および塩基強度に依存することに注目すべきである。NaCOを用いた一連の試験は、例として扱うことができる。
【実施例9】
【0079】
エステル交換率への温度の影響
40gのヒマワリ油および10gのエタノールを含んでなる6つの混合物を量り入れた。0.4gの水および50mgのNaCOを撹拌しながら混合物に添加した。0.2gのリポラーゼの添加によって反応を開始した。下記の表13に示したような異なった温度で反応を行った。24時間の反応時間後、ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。その結果をパーセント面積として記載する。
【0080】
【表13】

【0081】
結果:
リパーゼは、30℃以上の低い温度でさえ明らかに不活性化される。最適な反応温度は、20〜25℃の範囲である。
【実施例10】
【0082】
ヒマワリ油のアルコーリシスおよび蒸留によるモノグリセリドの濃縮
1.6kgのヒマワリ油および0.4kgのエタノールを、加熱可能なダブルジャケット付き反応器に量り入れた。16gの水および0.44gのNaCOを撹拌しながら添加した。8gのリポラーゼの添加によって反応を開始し、室温で撹拌しながら反応を行った。8時間後、更に0.8kgのエタノールを混合物に添加した。40時間後、反応を終了し、試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。反応混合物を80℃まで撹拌しながら加熱した。減圧を適用し、過剰なエタノールを反応混合物から蒸発させた。次いで、反応混合物を常圧まで放圧し、16gのTonsilおよび6gの水を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、その後、反応混合物から残留水を除去するために80℃で減圧下、1時間撹拌した。反応混合物を常圧まで放圧した後、暖かいうちに混合物を濾過した。ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。次いで、混合物を短行程蒸留によって分離した。反応パラメーターは、25℃の冷却フィンガー温度および80℃の受器温度に対して180℃、0.5mbarであった。蒸留の物質収支は、29.8重量%の残油および70.2重量%の蒸留液を示した。モノグリセリド含有残油を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0083】
【表14】

【0084】
【表15】

【実施例11】
【0085】
新鮮なヒマワリ油のアルコーリシスおよび蒸留によるモノグリセリドの濃縮
1.5kgの新鮮なヒマワリ油および0.75kgのエタノールを、加熱可能なダブルジャケット付き反応器に量り入れた。15gの水および1.5gのNaCOを撹拌しながら添加した。7.5gのリポラーゼの添加によって反応を開始し、室温で撹拌しながら反応を行った。46時間後、反応を終了し、試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。反応混合物を80℃まで撹拌しながら加熱した。減圧を適用し、過剰なエタノールを反応混合物から蒸発させた。次いで、反応混合物を常圧まで放圧し、16gのTonsilおよび6gの水を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、その後、反応混合物から残留水を除去するために80℃で減圧下、1時間撹拌した。反応混合物を常圧まで放圧した後、暖かいうちに混合物を濾過した。ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。続いて、混合物を短行程蒸留によって分離した。反応パラメーターは、25℃の冷却フィンガー温度および80℃の受器温度に対して180℃、0.5mbarであった。モノグリセリド含有残油を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0086】
【表16】

【0087】
【表17】

【実施例12】
【0088】
新鮮なアザミ油のアルコーリシスおよび蒸留によるモノグリセリドの濃縮
1.5kgのアザミ油および0.75kgのエタノールを、加熱可能なダブルジャケット付き反応器に量り入れた。15gの水および1.5gのNaCOを撹拌しながら添加した。15gのリポラーゼの添加によって反応を開始し、室温で撹拌しながら反応を行った。20時間後、反応を終了し、試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。反応混合物を80℃まで撹拌しながら加熱した。減圧を適用し、過剰なエタノールを反応混合物から蒸発させた。次いで、反応混合物を常圧まで放圧し、16gのTonsilおよび6gの水を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、その後、反応混合物から残留水を除去するために80℃で減圧下、1時間撹拌した。反応混合物を常圧まで放圧した後、暖かいうちに混合物を濾過した。ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。続いて、混合物を短行程蒸留によって分離した。反応パラメーターは、25℃の冷却フィンガー温度および80℃の受器温度に対して180℃、0.5mbarであった。モノグリセリド含有残油を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。
【0089】
【表18】

【0090】
【表19】

【実施例13】
【0091】
ひまし油のアルコーリシス
1.5kgのひまし油および0.75kgのエタノールを、加熱可能なダブルジャケット付き反応器に量り入れた。15gの水および1.5gのNaCOを撹拌しながら添加した。15gのリポラーゼの添加によって反応を開始し、室温で撹拌しながら反応を行った。46時間後、反応を終了し、試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。反応混合物を80℃まで撹拌しながら加熱した。減圧を適用し、過剰なエタノールを反応混合物から蒸発させた。次いで、反応混合物を常圧まで放圧し、10gのTonsilおよび6gの水を添加した。混合物を80℃で30分間撹拌し、その後、反応混合物から残留水を除去するために80℃で減圧下、1時間撹拌した。反応混合物を常圧まで放圧した後、暖かいうちに混合物を濾過した。ガスクロマトグラフィーによる分析のために試料を採取した。
【0092】
【表20】

【0093】
【表21】

【実施例14】
【0094】
モノグリセリドの乳化効果の試験
酵素的に製造および蒸留されたモノグリセリドの乳化特性を、80%の水および20%の油の系で試験した。Myritol 312(中鎖トリグリセリド)およびパラフィン油を油として使用した。90%超のモノグリセリド含有量を有する分子蒸留されたモノグリセリド(Monomuls 90 O)を、比較のために使用した。Myritol 312/水系の乳化特性を、1%、2.5%および5%の活性物質濃度で測定した。パラフィン油/水系の乳化特性を、1%および5%の活性物質濃度で測定した。生じたエマルションの特性を伝導度測定によって測定した。実施例9、10および11のモノグリセリド混合物を用いて試験を行った。
【0095】
【表22】

【0096】
【表23】

【0097】
結果:
酵素的に製造されたモノグリセリドの全てが、良好な乳化特性を有する。ヒマワリ油から製造されたモノグリセリドは、分子蒸留されたMonomuls 90 Oに匹敵する乳化特性を有する。新鮮なヒマワリ油およびアザミ油から製造されたモノグリセリドは幾分弱い乳化特性を有し、これはおそらく、なお存在する比較的高濃度のエチルエステルに起因する。
【実施例15】
【0098】
ディーゼル燃料における潤滑特性の試験
CEC法F-06-T-94によるHFFR試験(高速往復リグ試験)に付して潤滑特性を調べた。下記の表に示したように、様々なディーゼル燃料、並びにヒマワリ油および菜種油ベースのモノグリセリド混合物を使用した。
【0099】
【表24】

【0100】
【表25】

【0101】
【表26】

【0102】
結果:
全試料が、使用したディーゼル燃料の潤滑特性を著しく改善し、HFFR値を規定上限(例えばスイスでは現今450μm)以下に低下させた。
【実施例16】
【0103】
ヒマワリ油由来モノグリセリドの脂肪酸組成物の分析
ジクロロメタン中でのTMSHによる完全メチル化後、実施例10のモノグリセリド留分および蒸留液留分を、ガスクロマトグラフィーによってその脂肪酸組成について分析し、出発物質のヒマワリ油と比較した。
【0104】
【表27】

【0105】
結果:
出発物質と比較すると、モノグリセリド留分は、リノール酸の濃縮、および飽和脂肪酸の著しい減少を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリグリセリドを、1〜8個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルコールの存在下、アルカリ塩の添加によって活性化されたエステラーゼにより酵素的に反応させることを特徴とする、モノグリセリドの製造方法。
【請求項2】
エステラーゼを別の工程で不活性化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
10℃〜40℃の温度で、トリグリセリドの量に基づいて0.1〜10重量%の含水量で、アルコーリシスを行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エステラーゼが、Thermomyces lanuginosus、Candida antarctica A、Candida antarctica B、Rhizomucor miehei、Candida cylindracea、Rhizopus javanicus、Porcine pancreas、Aspergillus niger、Candida rugosa、Mucor javanicus、Pseudomonas fluorescens、Rhizopus oryzae、Pseudompnas sp.、Chromobacterium viscosum、Fusarium oxysporumおよびPenicilium camembertiからなる群から選ばれる生物から生じることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
エステラーゼがリパーゼであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
リパーゼが1,3-特異的リパーゼであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
リパーゼがThermomyces lanuginosus由来のリパーゼであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
エステラーゼを、使用するトリグリセリドの量に基づいて市販液体製剤の0.05〜2%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
エステラーゼを活性化するためのアルカリ無機塩が、予め水に溶解された、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウムの、水酸化物、炭酸塩およびリン酸塩からなる群から選ばれる塩であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
エステラーゼを活性化するためのアルカリ無機塩をトリグリセリドの量に基づいて0.00001〜1重量%の量で使用することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
一価および/または多価不飽和脂肪酸の含有率が高く、ヒマワリ油、菜種油、アザミ油、大豆油、亜麻仁油、落花生油、獣脂、オリーブ油、ひまし油、パーム油および使用済み油からなる群から選ばれる、脂肪および油由来のトリグリセリドを使用することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
エタノールまたは1-プロパノールが好ましいアルコール成分であり、アルコール含有量がトリグリセリドに基づいて10〜75重量%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
好ましくは蒸留によって、アルコール成分を除去することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
好ましくは蒸留によって、アルキルエステルをモノグリセリドから分離することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
アルコールおよびアルキルエステルとの混合物として請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって製造されたモノグリセリドの、滑剤または燃料用添加剤としての使用。
【請求項16】
アルキルエステルとの混合物として請求項13に記載の方法によって製造されたモノグリセリドの、滑剤、燃料用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分としての使用。
【請求項17】
請求項14に記載の方法によって製造されたモノグリセリドの、滑剤、燃料用添加剤、或いは食品、化粧品および/または医薬品用乳化成分としての使用。

【公表番号】特表2008−526265(P2008−526265A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551578(P2007−551578)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000120
【国際公開番号】WO2006/077022
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】