説明

アンカー層に接した酸化金属蒸着層及び金属蒸着層を有する転写シート、及びその製造方法

【課題】金属蒸着層に蒸着欠陥が発生せず、しかも複雑又は深みがある立体形状に適用した場合でも金属蒸着層にクラックが発生しない転写シートを提供すること。
【解決手段】基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、酸化金属蒸着層及び金属蒸着層を有する転写層が形成されている転写シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基体シートの片面に積層された樹脂層や着色層を物品の表面に転写するのに用いる転写シートに関し、特に着色層として金属蒸着層を有する転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
転写シートを用いてプラスチック部品や外装品のような物品の表面を保護又は装飾する方法は従来から知られている。転写シートは、支持体である基体シートの片面上に転写層が設けられた構成であり、この転写層が基体シートから物品の表面に転写される。物品の表面に転写された転写層は樹脂や図柄が層状に積層された積層体であり、物品表面に保護被覆や装飾被覆を形成する。
【0003】
装飾の一種として物品の表面に金属光沢の外観を付与するために、従来から金属薄膜を有する転写シートが用いられている。例えば、金属光沢模様を有する成形品を提供するのに使用される転写シートとして、基体シート上に少なくとも剥離層、蒸着層、接着層を有するものが知られている。一般に、蒸着層は、金属光沢に優れたアルミニウムを真空蒸着して形成されている。
【0004】
しかし、アルミニウムは柔軟性又は延び性に劣り、アルミニウムの蒸着層は立体的形状に対する追随性が不十分である。従って、被装飾物品の立体形状が複雑であったり、深みがある場合、曲面部において蒸着層にクラックが発生しやすい。
【0005】
特許文献1には、スズからなる絶縁性金属蒸着層を有する転写シートが記載されている。スズはアルミニウムよりも柔軟性に優れ、立体形状に対する追随性は優れている。しかし、スズは樹脂に対する親和性が不十分であり)、蒸着時に被着層の表面に均一に堆積されにくい。そのため、スズの蒸着層には不連続な部分や不完全な部分、即ち蒸着欠陥が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−326300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、金属蒸着層に蒸着欠陥が発生せず、しかも複雑又は深みがある立体形状に適用した場合でも金属蒸着層にクラックが発生しない転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、酸化金属蒸着層及び金属蒸着層を有する転写層が形成されている転写シートを提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0009】
ある一形態においては、上記金属がスズ又はインジウムである。
【0010】
ある一形態においては、上記金属蒸着層の厚さが30〜200nmである。
【0011】
ある一形態においては、上記前アンカー層が、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂から成る群から選択される。
【0012】
また、本発明は、基体シートの片面に、転写層を構成する層として前アンカー層を形成する工程;
前アンカー層の表面に酸化金属を蒸着させて酸化金属蒸着層を形成する工程;及び
酸化金属蒸着層の表面に金属を蒸着させて金属蒸着層を形成する工程;
を包含する転写シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の転写シートは金属蒸着層に蒸着欠陥が発生せず、しかも複雑又は深みがある立体形状に適用した場合でも金属蒸着層にクラックが発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である転写シートの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
転写シート
図1は本発明の一実施形態である転写シートの構造を示す断面図である。基体シート1の片面に接して転写層2が設けられている。転写層2は基体シートの側から順に積層されたハードコート層3、前アンカー層4、酸化金属蒸着層5、金属蒸着層6、後アンカー層7及び接着層8を有している。
【0016】
転写層を構成する層のうち各樹脂層の形成は、特に断らない限り、従来と同様の方法によって行うことができる。従来の層形成方法の例には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0017】
基体シート
基体シート1は、図柄層やハードコート層をシート上に支持する用途に従来から使用されるシート材料又はフィルム材料から構成される。フィルム材料は合成樹脂からなるシート材料をいう。合成樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが使用できる。その他、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体など、通常の転写シートの基体シートとして離型性を有するものを基体シートとして使用することができる。
【0018】
転写層
転写層2は基体シートの片面に設けられて基体シートから被装飾物の表面に転写される層をいう。転写層は、少なくとも基体シートの側から順に積層された前アンカー層4、酸化金属蒸着層5、金属蒸着層6を有する。また、転写層は、要すれば基体シート1と前アンカー層4との間に、ハードコート層3や図柄層(非表示)、また金属蒸着層6の露出表面に隣接して、後アンカー層7、追加のアンカー層(非表示)や接着層8を有してよい。
【0019】
前アンカー層4は酸化金属蒸着層5を転写層に密着させる樹脂層である。前アンカー層はシート面の全体に形成され、転写層が物品に転写された後は、ハードコート層などとともに、金属蒸着層5を傷等から保護して耐腐食性を向上させる役割も果たす。
【0020】
前アンカー層に使用する樹脂には、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などがある。金属色の耐久性が要求される用途では、塩素などのハロゲンを含有しない樹脂が好ましい。ハロゲン含有樹脂は高湿度環境下で金属蒸着層を腐食させる可能性があるからである。
【0021】
前アンカー層として好ましい樹脂は、アクリルウレタン、ポリエステルウレタン、エポキシウレタンなどのウレタン系樹脂、特に、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂などの硬化型ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂及びニトロセルロース系樹脂などである。特に2液硬化ウレタン樹脂が酸化金属との親和性に優れ、好ましい。
【0022】
前アンカー層は、このような樹脂を含む塗料を塗布乾燥するか、塗布後加熱硬化させて形成することができる。
【0023】
酸化金属蒸着層5は金属蒸着層6を前アンカー層に密着させる層である。酸化金属蒸着層は前アンカー層の表面に酸化金属を蒸着させて形成する。酸化金属の蒸着は、金属を蒸発させ、金属蒸気を酸素と反応させて酸化金属蒸気とし、これを前アンカー層の表面に付着させて行うことができる。酸化金属蒸着層は、その上に形成される金属蒸着層と同様のパターンに形成されてよい。つまり、酸化金属蒸着層は転写層のシート面の全面に形成しても、一部分に形成してもよい。
【0024】
酸化する金属の具体例には、アルミニウム、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、スズ、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛など、これらの合金または化合物がある。特に、スズ又はインジウムを用いることが好ましい。
【0025】
酸化金属蒸着層の厚さは0.5〜30nm、好ましくは1.0〜20nm、より好ましくは2〜10nmである。酸化金属蒸着層の厚さが0.5nm未満であると、酸化金属蒸着層と金属蒸着層との密着性が悪くなるといった問題が生じ、反対に、酸化金属蒸着層の厚さが30nmを越えると必要以上に酸化金属蒸着層を形成することとなり、転写シートの生産性が低下するためである。
【0026】
金属蒸着層6は転写層に金属光沢の外観を付与する層である。金属蒸着層は転写層のシート面の全面に形成しても、一部分に形成してもよい。金属蒸着層6をシート面の一部分に形成する場合は、公知のパターニング方法を用いることができる
【0027】
金属蒸着層は酸化金属蒸着層の表面に金属を蒸着させて形成する。金属の蒸着は、金属を蒸発させ、金属蒸気を酸化金属蒸着層の表面に付着させて行うことができる。金属の種類は、表現したい金属光沢色に応じて上記酸化する金属の具体例から適宜選択すればよい。
【0028】
金属蒸着層に使用する金属はスズ又はインジウムが好ましい。これら金属の蒸着層は柔軟性に優れ、立体形状に対する追随性が良好だからである。また、金属は酸化金属蒸着層を形成するのに用いたものと同種類が好ましい。金属蒸着層の酸化金属蒸着層に対する接着性が良好になるからである。
【0029】
金属蒸着層の厚さは30〜200nm、好ましくは40〜190nm、より好ましくは50〜180nmである。金属蒸着層の厚さが30nm未満であると金属色の光沢が不十分となり、200nmを越えると金属蒸着層に蒸着欠陥が発生し易くなる。
【0030】
また、転写シートを作成した時点で、積層体(基体シート、前アンカー層、酸化金属蒸着層、金属蒸着層6を含む)の光透過率は0.1〜20%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%である。積層体の光透過率が20%超えると金属色の光沢が不十分となり、0.1%未満であると金属蒸着層に蒸着欠陥が発生し易くなる
【0031】
後アンカー層7は金属蒸着層6を接着層や被装飾物に密着させる樹脂層である。後アンカー層はシート面の全体に形成され、接着剤層や被装飾物に含まれる腐食成分から金属蒸着層6を保護して耐腐食性を向上させる役割も果たす。
【0032】
後アンカー層を形成する材料及び方法は前アンカー層と同様である。
【0033】
ハードコート層3は、必要に応じて、基体シートと前アンカー層との間に形成される樹脂層である。ハードコート層は、転写後、基体シートを被装飾物から剥離したときに、装飾物の表面に配置され、転写層を保護するために一定以上の硬度を有している。ハードコート層の材質としては、シアノアクリレート系やウレタンアクリレートなどの電離放射線硬化性樹脂や、アクリル系やウレタン系などの熱硬化性樹脂が挙げられるが、特に限定されない。
【0034】
接着層8は、必要に応じて、転写層の被装飾物に最も近い面に設けられる。接着層は、転写時に、転写層と被装飾物とを接着するものである。接着層としては、被装飾物に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被装飾物の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。
【0035】
また、被装飾物の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被装飾物の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。
【0036】
基体シートと転写層との間には更に剥離層を形成してもよい。剥離層は転写時に基体シートと一緒になって転写層から分離するものであってよく、基体シートから分離して転写層の最外表面を形成するものであってもよい。離型層の材質としては、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース誘導体、尿素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、パラフィン系樹脂およびこれらの複合物などを用いることができる。
【0037】
また、転写層には図柄層を追加してよく、その場合は、ハードコート層より被装飾物側、例えばハードコート層と前アンカー層の間に図柄層を形成すれば、追加した図柄が十分に保護される。
【0038】
図柄層の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いるとよい。また、金属発色させる場合には、アルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料を用いることもできる。
【0039】
図柄層の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法などを用いるとよい。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。
【0040】
転写シートの製造方法
本発明の転写シートは、前アンカー層の表面に酸化金属蒸着層を形成すること以外は従来の転写シートと同様にして製造される。
【0041】
例えば、基体シートを準備し、その片面に、転写層を構成する層を順次形成する。転写層を構成する層としては、上述のように、ハードコート層、図柄層、前アンカー層、酸化金属蒸着層、金属蒸着層、後アンカー層、追加のアンカー層、接着層などがある。転写層が接する側の基体シートの面には、要すれば離型層を形成しておく。
【0042】
シート面の一部分に図柄として金属蒸着層を形成する場合、例えば、基体シート1の片面に転写層としてハードコート層、前アンカー層まで形成し、その上に酸化金属蒸着層及び金属蒸着層のパターンを形成する。又は、基体シート1の片面にハードコート層、前アンカー層及び酸化金属蒸着層まで形成し、その上に金属蒸着層のパターンを形成してもよい。
【0043】
その後、形成された金属蒸着層パターンの上に全面的に、後アンカー層6を形成し、接着層7のような転写層を構成するその他の層を形成して、本発明の転写シートが得られる。
【0044】
本発明の転写シートを使用して熱ロール転写やインモールド成形などにより、物品を装飾することができる。例えば、熱ロール転写においては、転写シートの接着層側(基体シートの反対側)の面を被装飾物の表面に重ね、ロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用いて、転写シートの基体シート側から熱及び圧力をかける。こうすることにより、転写シートが被装飾物の表面に接着する。次いで、冷却後に基体シートを剥離すると、転写層が被装飾物の表面に転写されて、物品の表面が装飾される。
【0045】
また、インモールド成形においては、まず、成形用金型内に、基体シートが金型の内面に接するような向きに転写シートを送り込む。次いで、金型を閉じ、溶融樹脂が転写シートの接着層側(基体シートの反対側)の面に接するように、すなわち、転写シートが溶融樹脂と金型の内面に挟まれるように、溶融樹脂を金型内に充満させる。その結果、溶融樹脂は成形され、同時に転写シートは樹脂成形品の表面に接着される。樹脂成形品を冷却し、金型を開いて樹脂成形品を取り出す。最後に基体シートを剥離すると、転写層が樹脂成形品の表面に転写されて、樹脂成形品の表面が装飾される。
【0046】
被装飾物の材質は、従来から転写シートによって装飾されてきたもの、又は接着層の成分を工夫して転写層をその表面に接着させることができるものであれば特に限定されない。各種合成樹脂、金属、ガラス、木、紙でなる部材、これらの塗装物及び装飾物は、被装飾物として用いられる。特に好ましい被装飾物は、複雑な立体形状又は深みがある立体形状を有する物品である。本発明の転写層は立体形状に対する追随性に優れ、曲面部においても蒸着層にクラックが発生しないからである。
【0047】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」又は「%」で表される量は特に断りなき限り重量基準である。
【実施例】
【0048】
実施例1
基体シートとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを準備した。この基体シートの上に、メラミン樹脂系離型剤を塗布乾燥して離型層を形成した。その後、メラミン系樹脂を含む塗料を塗布乾燥してハードコート層を形成した。ハードコート層の上に、ウレタン樹脂を含む塗料を塗布し、熱硬化させて、前アンカー層を形成した。
【0049】
真空蒸着装置中でスズを蒸発させる際に酸素を供給することにより、前アンカー層の表面に酸化スズを厚さ4nmに蒸着させた。次いで、酸素の供給を止め、その上に、スズを厚さ60nmに蒸着させた。積層体の光透過率は5%であった。
【0050】
密着性評価
上記積層体の一部を用いて、JIS K 5600に記載されている方法(クロスカット法)に従って、次に説明するように、前アンカー層と酸化金属蒸着層との密着性を評価した。
【0051】
積層体のスズ蒸着層及び酸化スズ蒸着層に、1mm間隔で6本ずつ直角の格子パターン状に前アンカー層に達する切込みを入れ、25個の升目を形成した。幅24mm長さ約75mmのニチバン社製「セロハンテープ」(商品名)を金属蒸着層のカットした部分に貼りしっかり接着させた後、60度に近い角度で引き剥がした。残された蒸着層のカット面を観察して、次の基準で評価した。結果を表5に示す。
【0052】
[表1]

【0053】
完全性評価
上記積層体のスズ蒸着層の表面1cm×1cmに発生したピンホールの数を目視にて測定し、評価した。結果を表5に示す。
【0054】
[表3]

【0055】
次いで、スズの蒸着層の上に、塩化ビニル系樹脂を含む塗料を塗布乾燥して後アンカー層を形成した。更にアクリル系樹脂を含む塗料を塗布乾燥して接着層を形成して、転写フィルムを得た。上記工程において樹脂層の形成は全てグラビアコート法にて行った。
【0056】
光沢感評価
白色光の下、30cmの距離から、得られた転写シートの光沢感を目視にて、下記基準により評価した。結果を表5に示す。
【0057】
[表2]

【0058】
形状追随性評価
得られた転写シートを金型に入れて、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂のインモールド射出成形を行い、基体シートを剥離して、自動車内装用スイッチベースを作成した。自動車内装用スイッチベースの曲面部において蒸着層にクラックが発生したかどうかを目視にて評価した。結果を表5に示す。
【0059】
[表4]

【0060】
比較例1
酸化スズの蒸着層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして転写フィルムを得、性能を試験した。結果を表5に示す。
【0061】
比較例2
スズの代わりにアルミニウムを用い、酸化アルミ二ウムの蒸着層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして転写フィルムを得、性能を試験した。結果を表5に示す。
【0062】
実施例2
基体シートとして厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフイルムを準備した。この基体シートの上に、メラミン樹脂系離型剤を塗布乾燥して離型層を形成した。その後、メラミン系樹脂を含む塗料を塗布乾燥してハードコート層を形成した。ハードコート層の上に、ウレタン樹脂を含む塗料を塗布し、熱硬化させて、前アンカー層を形成した。
【0063】
真空蒸着装置中でインジウムを蒸発させる際に酸素を供給することにより、前アンカー層の表面に酸化インジウムを厚さ4nmに蒸着させた。次いで、酸素の供給を止め、その上に、インジウムを厚さ60nmに蒸着させた。積層体の光透過率は5%であった。
【0064】
インジウムの蒸着層の上に、塩化ビニル系樹脂を含む塗料を塗布乾燥して後アンカー層を形成した。更にアクリル系樹脂を含む塗料を塗布乾燥して接着層を形成して、転写フィルムを得た。上記工程において樹脂層の形成は全てグラビアコート法にて行った。
【0065】
得られた転写フィルムの性能を実施例1と同様にして試験した。結果を表5に示す。
【0066】
比較例3
酸化インジウムの蒸着層を形成しないこと以外は実施例2と同様にして転写フィルムを得、性能を試験した。結果を表5に示す。
【0067】
[表5]

【符号の説明】
【0068】
1…基体シート、
2…転写層、
3…ハードコート層、
4…前アンカー層、
5…酸化金属蒸着層、
6…金属蒸着層、
7…後アンカー層、
8…接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体シートの片面に、少なくとも、前アンカー層、酸化金属蒸着層及び金属蒸着層を有する転写層が形成されている転写シート。
【請求項2】
前記金属がスズ又はインジウムである請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
前記金属蒸着層の厚さが30〜200nmである請求項1又は2記載の転写シート。
【請求項4】
前記前アンカー層が、二液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂から成る群から選択される樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか記載の転写シート。
【請求項5】
基体シートの片面に、転写層を構成する層として前アンカー層を形成する工程;
前アンカー層の表面に酸化金属を蒸着させて酸化金属蒸着層を形成する工程;及び
酸化金属蒸着層の表面に金属を蒸着させて金属蒸着層を形成する工程;
を包含する転写シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−62917(P2011−62917A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215603(P2009−215603)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】