説明

アンダーカバー構造

【課題】 走行風導入口と熱交換器下端部との間に形成される凹み部でエアが渦を巻くことを抑制してスムーズにガイドし、これにより、走行風圧力を落とさないで熱交換器に走行風を送り込むことができるアンダーカバー構造の提供。
【解決手段】 バンパフェイシャー3とラジエータコアサポートロア51との間に装着されるアンダーカバー3であって、走行風導入口31の下縁部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部Aが形成され、該膨らみ部Aが前壁61と後壁63と該前壁61と後壁63間をつなぐ上面部62から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中に外気を効率良く取り入れて熱交換器の冷却効果を高めるアンダーカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バンパフェイシャーにおける走行風導入口の下縁部に斜め上向き後方に延びるエアガイド部が設けられ、このエアガイド部により、走行風導入口から導入する走行風をラジエータ方向へ案内するように構成され、このエアガイド部の先端縁部から斜め下向き後方へ延びるバンパフェイシャーの下端縁部とクロスメンバとの間に略平板状のアンダーカバーを装着したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−203158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来の技術にあっては、上述のように、エアガイド部の先端縁部から斜め下向き後方へ延びるバンパの下端縁部とクロスメンバとの間に略平板状のアンダーカバーを装着した構造では、エアガイドの後端縁部とラジエータ(熱交換器)との間に下方へ凹んだ凹み部が形成されるため、この凹み部でエアが渦を巻いて走行圧力を低下させ、その結果、ラジエータ(熱交換器)の冷却効果を低下させるという問題があった。
【0004】
本発明は、上述のような従来の問題点に着目して成されたもので、走行風導入口と熱交換器下端部との間に形成される凹み部でエアが渦を巻くことを抑制してスムーズにガイドし、これにより、走行風圧力を落とさないで熱交換器に走行風を送り込むことができるアンダーカバー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明のアンダーカバー構造は、バンパフェイシャーと熱交換器コアサポートロアとの間に装着されるアンダーカバーであって、該アンダーカバーは、走行風導入口の下縁部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部が形成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るアンダーカバー構造では、上述のように、走行風導入口の下縁部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部が形成されている構成としたことで、走行風導入口と熱交換器下端部との間に形成される凹み部がアンダーカバーの膨らみ部で塞がれた状態になるため、走行風導入口と熱交換器下端部との間でエアが渦を巻くことを抑制してスムーズにガイドされる。
従って、走行風圧力を落とさないで熱交換器に走行風を送り込むことができ、これにより、熱交換器の冷却効果を高めることができるようになるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
図1はこの実施例1のアンダーカバー構造を示す車両前側からの斜視図、図2は図1のS2―S2線における拡大断面図、図3は図1のS3−S3線における拡大断面図、図4は図1のS4−S4線における拡大断面図、図5は実施例1のアンダーカバーに左右両サイドエアガイドを組み付けた状態を示す車両前側からの斜視図、図6は実施例1のアンダーカバーの車体への取り付け状態を示す縦断側面図である。
【0009】
この実施例1のアンダーカバー構造は、バンパレインフォース1と、衝撃干渉部材2と、バンパフェイシャー3と、ラジエータ(熱交換器)4と、ラジエータコアサポート5と、アンダーカバー6と、左右両サイドエアガイド7と、を備えている。
【0010】
図6に示すように、上記バンパレインフォース1の車両前方には、衝撃干渉部材2を介してバンパフェイシャー3が設けられている。
このバンパフェイシャー3は、車両フロント部分を覆う状態で設けられ、このバンパフェイシャー3におけるバンパレインフォース1の下方にはラジエータ4に走行風を導入する走行風導入口31が車幅方向に長く形成されている。
【0011】
上記ラジエータ4は、走行風導入口31の車両後方に備えたラジエータコアサポート5に取り付けられていて、走行風導入口31から導入される走行風で冷却されるようになっている。
【0012】
また、バンパフェイシャー3における走行風導入口31の開口縁部には車両後方へ延びるエアガイド部32が延設され、走行風導入口31の下側開口縁部であるエアガイド部32の先端縁部からバンパフェイシャー3のロア部33が斜め下向き後方へ向けて延設されている。
【0013】
上記アンダーカバー6は、バンパフェイシャー3とラジエータコアサポート5におけるラジエータコアサポートロア(熱交換器コアサポートロア)51との間に該開口部を塞ぐ状態で装着されるものである。
【0014】
このアンダーカバー6は、走行風導入口31の下縁開口部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部Aが形成されている。
なお、この実施例では、膨らみ部Aが前壁61と後壁63と該前壁61と後壁63間をつなぐ上面部62から構成されている。
【0015】
また、前壁61と上面部62と後壁63の左右両端縁部でアンダーカバー6の左右両側に形成される開口部をそれぞれ塞ぐ横壁66、66が設けられている。
【0016】
また、前壁61の車幅方向両端部には、各横壁66、66に沿って車両前側に向けて開口する前側開口部が形成され、該前側開口部には、先端と下面が開口する断面略門型の前側ダクト67、67が各横壁66、66に沿って車両前側に向けて長く延設されている
【0017】
そして、前側ダクト67、67における断面門型の先端開口部67a、67aの開口縁部付近に該先端開口部67a、67a内の上側の一部を塞ぐリブ68、68が形成されている。
【0018】
また、アンダーカバー6の左右両端部には、上面部62と各前側ダクト67、67の上面をさらに上方に立ち上がらせて膨らませ、サイドエアガイド7、7の下端を載置して取り付けるサイドエアガイド下端側取付部69、69が形成されている。
【0019】
そして、このサイドエアガイド下端側取付部69、69には、左右両サイドエアガイド7、7の底部に下向きに突設されたピン(図示せず)を差し込み係合するための係合孔69a、69aがそれぞれ2箇所に形成されている。
【0020】
前壁61には、図1〜4、6に示すように、その下端縁部から車両前側に向けてバンパフェイシャー3におけるロア部33の車両後端縁部に対する前側取付フランジ部64が延設されている。
【0021】
そして、この前側取付フランジ部64には、バンパフェイシャー3におけるロア部33の車両後端縁部に対し前側取付フランジ部64をクリップ8で取り付けるための挿通孔64aが6箇所に形成されている。
【0022】
また、挿通孔64aに近い位置の前壁61には、バンパフェイシャー3におけるロア部33の車両後端縁部上面に対し前側取付フランジ部64をクリップ8で取り付けるための取付作業用孔61aが3箇所に形成されている。
【0023】
後壁63には、その下端縁部から車両後側に向けてラジエータコアサポートロア51に対する後側取付フランジ部65が延設されている。
この後側取付フランジ部65には、ラジエータコアサポートロア51の下面に対しクリップ9で取り付けるための挿通孔65aが複数形成されている。
【0024】
なお、挿通孔64aと対向するバンパフェイシャー3におけるロア部33、及び、挿通孔65aと対向するラジエータコアサポートロア51には、それぞれクリップ8、9を挿通する挿通孔(図示せず)が形成されている。
【0025】
次に、実施例1の作用・効果について説明する。
【0026】
この実施例1のアンダーカバー構造では、上述のように構成されるため、アンダーカバー6の取り付けは、図6に示すように、該アンダーカバー6の前側取付フランジ部64をクリップ8によりバンパフェイシャー3におけるロア部33の下端縁部上面に対し固定する。
【0027】
また、アンダーカバー6の後側取付フランジ部65をクリップ9でラジエータコアサポートロア51の下面に対し固定する。
【0028】
なお、バンパフェイシャー3におけるロア部33の下端縁部上面に対する前側取付フランジ部64の取り付けに際しては、前壁61の3箇所に形成された取付作業用孔61aの車両後方(アンダーカバー6における膨らみ部Aの内側)から指を差し出して前側取付フランジ部64をバンパフェイシャー3におけるロア部33の上面に押し付け支持した状態で、バンパフェイシャー3におけるロア部33の下面側からクリップ8を差し込んで前側取付フランジ部64をロア部33に固定する。
【0029】
次に、アンダーカバー6の左右両端部に形成されたサイドエアガイド下端側取付部69、69に対し、該サイドエアガイド下端側取付部69、69に形成された係合孔69a、69aに左右両サイドエアガイド7、7の底部に下向きに突設されたピン(図示せず)を差し込み係合させることにより、左右両サイドエアガイド7、7の組み付けが行われる。
【0030】
以上詳細に説明してきたように、この実施例1のアンダーカバー構造では、走行風導入口31の下縁開口部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部Aが形成されている構成としたことで、従来走行風導入口31とラジエータ4の下端部との間に形成されていた凹み部がアンダーカバー3の膨らみ部Aで塞がれた状態になるため、走行風導入口31とラジエータ4の下端部との間でエアが渦を巻くことを抑制してスムーズにラジエータ4に向けてガイドすることができるようになる。
従って、走行風圧力を落とさないでラジエータ4に走行風を送り込むことができ、これにより、ラジエータ4の冷却効果を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0031】
また、膨らみ部Aが前壁61と後壁63と該前壁61と後壁63間をつなぐ上面部62からなる構成としたことで、従来走行風導入口31とラジエータ4の下端部との間に形成されていた凹み部をアンダーカバー3の上面部62で効率良く塞ぐことができるようになる。
【0032】
また、前壁61と上面部62と後壁63の左右両端縁部でアンダーカバー6の左右両側に形成される開口部をそれぞれ塞ぐ横壁66、66が設けられ、前壁61の車幅方向両端部には各横壁66、66に沿って車両前側に向けて開口する前側開口部が形成されている構成としたことで、冠水路進入時に膨らみ部Aの内側裏面に水が入って後壁63に当たって車幅方向に流れた水を横壁66、66で受けて車両前側の前側開口部から車外へ抜くことができる。これにより、アンダーカバー6が受ける水圧を低減させることができる。
従って、アンダーカバー6の取り付けをボルト締結からクリップ止めに変更でき、アンダーカバー6の取り付け作業が容易に行えるようになる。
【0033】
また、前側開口部には、先端と下面が開口する断面略門型の前側ダクト67、67が各横壁66、66に沿って車両前側に向けて長く延設されている構成としたことで、この前側ダクト67、67の上部に組み付けられるサイドエアガイド7、7における車両前側部分の下部を前側ダクト67、67で塞ぐことができる。
従って、走行風導入口31から導入した走行風がサイドエアガイド7、7の下方を通って車両側方へ逃げてしまうのを防止して効率的にラジエータ4に送り込むことができ、これにより、ラジエータ4の冷却効果を高めることができるようになるという効果が得られる。
【0034】
また、断面門型の先端開口部67a、67aの開口縁部付近に該先端開口部67a、67aの上側の一部を塞ぐリブ68、68が形成されている構成とすることで、先端開口部67a、67aの強度を高めることができると共に、水を下向きに効率よく排出させることができる。
【0035】
また、挿通孔64aに近い位置の前壁61には、バンパフェイシャー3におけるロア部33の車両後端縁部上面に対し前側取付フランジ部64をクリップ8で取り付けるための取付作業用孔61aが3箇所に形成されている構成としたことで、バンパフェイシャー3のロア部33に対する前側フランジ部64の固定作業をアンダーカバー6の下側から容易に行うことできるようになる。
【0036】
また、アンダーカバー6の左右両端部に形成された断面門型の先端開口部67a、67aの部分には、上面部62と前側ダクト67、67の上面をさらに上方に立ち上がらせて膨らませ、サイドエアガイド7、7の下端を載置して取り付けるサイドエアガイド下端側取付部69、69が形成されている構成としたことで、サイドエアガイド7、7の装着時に他の部分で擦らないようにサイドエアガイド下端側取付部69、69まで持ってくることができる。
また、断面門型の前側ダクト67、67の剛性を高めると共に、水路断面が大きくなり、これにより排水効果を高めることができるようになる。
【0037】
また、サイドエアガイド下端側取付部69、69には左右両サイドエアガイド7、7の底部に下向きに突設されたピン(図示せず)を差し込み係合するための係合孔69a、69aがそれぞれ2箇所に形成されている構成としたことで、左右両サイドエアガイド7、7の組み付け作業が簡単に行えるようになる。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づき説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0039】
例えば、実施例では、後壁63には、その下端縁部から車両後側に向けてラジエータコアサポートロア51に対する後側取付フランジ部65が延設され、アンダーカバー6の後側取付フランジ部65をクリップ9でラジエータコアサポートロア51の下面に対し固定するようにしたが、後側取付フランジ部65を省略し、後壁63をラジエータコアサポートロア51の車両前壁に固定するようにしてもよい。
【0040】
また、実施例では、アンダーカバー6の前側取付フランジ部64をクリップ8によりバンパフェイシャー3におけるロア部33の下端縁部上面に対し固定するようにしたが、ロア部33の下端縁部下面に対し固定するようにしてもよい。この場合は、取付作業用孔を省略することができる。
【0041】
また、実施例では、アンダーカバー6の固定手段としてクリップ8、9を用いたが、固定手段としてはタップねじを用いるなど、任意である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施例1のアンダーカバー構造を示す車両前側からの斜視図である。
【図2】図1のS2―S2線における拡大断面図である。
【図3】図1のS3−S3線における拡大断面図である。
【図4】図1のS4−S4線における拡大断面図である。
【図5】実施例1のアンダーカバーに左右両サイドエアガイドを組み付けた状態を示す車両前側からの斜視図である。
【図6】実施例1のアンダーカバーの車体への取り付け状態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 パンパレインフォース
2 衝撃干渉部材
3 バンパフェイシャー
31 走行風導入口
32 エアガイド部
33 ロア部
4 ラジエータ(熱交換器)
5 ラジエータコアサポート
51 ラジエータコアサポートロア(熱交換器コアサポートロア)
6 アンダーカバー
61 前壁
61a 取付作業用孔
62 上面部
63 後壁
64 前側取付フランジ部
64a 挿通孔
65 後側取付フランジ部
65a 挿通孔
66 横壁
67 前側ダクト
67a 先端開口部
68 リブ
69 サイドエアガイド下端側取付部
69a 係合孔
7 サイドエアガイド
8 クリップ
9 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパフェイシャーと熱交換器コアサポートロアとの間に装着されるアンダーカバーであって、
該アンダーカバーは、走行風導入口の下縁部にほぼ沿う高さまで車両の前後方向中央部が上方へ膨らむ膨らみ部が形成されていることを特徴とするアンダーカバー構造。
【請求項2】
前記膨らみ部が前壁と後壁と該前壁と後壁間をつなぐ上面部からなることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカバー構造。
【請求項3】
前記前壁と上面部と後壁の左右両端縁部でアンダーカバーの左右両側に形成される開口部をそれぞれ塞ぐ横壁が設けられ、
前記前壁の車幅方向両端部には、前記各横壁に沿って車両前側に向けて開口する前側開口部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のアンダーカバー構造。
【請求項4】
前記前壁における前記前側開口部には、先端と下面が開口する断面略門型の前側ダクトが前記各横壁に沿って車両前側に向けて延設されていることを特徴とする請求項3に記載のアンダーカバー構造。
【請求項5】
前記前側ダクトにおける先端開口部の開口縁部付近に該先端開口部内の上側の一部を塞ぐリブが形成されていることを特徴とする請求項4に記載のアンダーカバー構造。
【請求項6】
前記バンパフェイシャーに対する取付フランジ部が前記前壁の下端縁部から車両前側に向けて延設され、
前記前壁には、前記バンパフェイシャーに対し前記取付フランジ部をクリップで取り付けるための取付作業用孔が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載のアンダーカバー構造。
【請求項7】
前記アンダーカバーの左右両端部には、前記上面部と各前側ダクトの上面をさらに上方に立ち上がらせて膨らませ、サイドエアガイドの下端を載置して取り付けるサイドエアガイド下端側取付部が形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載のアンダーカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−89565(P2010−89565A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259440(P2008−259440)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】