説明

インジェクタ付きタンク弁と燃料電池システム

【課題】タンクに直接取り付けられるタンク弁の小型・軽量化を図る。
【解決手段】主止弁10は、一部を水素タンク2の内部に挿入されて固定されるボディ11と、ボディ11内に形成され水素タンク2の内部に通じる第1通路15と、ボディ11内に形成され水素タンク2の外部に通じる第2通路17と、第1通路15と第2通路17とを連通遮断するメインバルブ18と、メインバルブ18を閉弁方向に付勢するスプリング27と、水素タンク2の内部に通じてメインバルブ18に閉弁方向の流体圧力を付与する背圧室25と、第2通路17と背圧室25とを連通する第3通路29と、第3通路29上に配置され背圧室25の圧力を調圧可能なインジェクタ30と、を備え、第1通路15内の圧力と、スプリング27の弾性力と、インジェクタ30により調圧された背圧室25の圧力と、第2通路17内の圧力とを用いてメインバルブ18を開閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タンクに直接設置されるインジェクタ付きタンク弁と、このタンク弁を有する燃料タンクを備えた燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧の燃料タンクから燃料電池に燃料を供給して発電を行う燃料電池システムでは、一般に、燃料タンクの下流に遮断弁とレギュレータを設け、燃料タンクから流出した高圧の燃料ガスをレギュレータで減圧して燃料電池に供給している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、燃料タンクに貯蔵された高圧の燃料ガスの圧力を作動圧として作動するインジェクタを用いて、燃料電池に供給する燃料ガスの流量を燃料電池の要求ガス流量に制御する燃料電池システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−216519号公報
【特許文献2】特開2010−54035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、直接インジェクタにより燃料ガスの流量を制御しようとすると、作動圧力が高いため、耐圧の関係からインジェクタの開口面積を大きくすることが困難となり、開口面積を小さくせざるを得ない。ところが、開口面積の小さいインジェクタでは流通可能な燃料ガス流量が少なくなるため、大流量を流すためには多数のインジェクタを並列的に配置しなければならず、インジェクタの設置スペースが大きくなって不利であり、コストアップにもなる。
【0006】
特に、燃料タンクの口元に直接、インジェクタ付きの口金を取り付ける場合には、複数のインジェクタを備えた口金が大きくなる。その結果、前記口金を取り付けるための開口部である燃料タンクの口元も大きくなって、燃料タンクの耐圧強度を確保するために燃料タンク自体の重量増を招くという課題もある。
【0007】
そこで、この発明は、インジェクタを用いていながら、小型化が可能なタンク弁と、小型化が可能な燃料電池システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るインジェクタ付きタンク弁では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、一部をタンク(例えば、後述する実施例における水素タンク2)の内部に挿入され該タンクに固定されるボディ(例えば、後述する実施例におけるボディ11)と、前記ボディ内に形成され前記タンクの内部に通じる第1通路(例えば、後述する実施例における第1通路15)と、前記ボディ内に形成され前記タンクの外部に通じる第2通路(例えば、後述する実施例における第2通路17)と、前記第1通路と前記第2通路との間に配置されてこれら通路を連通遮断するメインバルブ(例えば、後述する実施例におけるメインバルブ18)と、前記メインバルブを閉弁方向に付勢するスプリング(例えば、後述する実施例におけるスプリング27)と、前記タンクの内部に通じて前記メインバルブに閉弁方向の流体圧力を付与する背圧室(例えば、後述する実施例における背圧室25)と、前記第2通路と前記背圧室とを連通する第3通路(例えば、後述する実施例における第3通路29,29a,29b)と、前記第3通路上に配置され前記背圧室内の圧力を調圧可能なインジェクタ(例えば、後述する実施例におけるインジェクタ30)と、を備え、前記第1通路内の圧力と、前記スプリングの弾性力と、前記インジェクタにより調圧された前記背圧室内の圧力と、前記第2通路内の圧力を用いて前記メインバルブを開閉することを特徴とするインジェクタ付きタンク弁(例えば、後述する実施例における主止弁10)である。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記インジェクタは、アクチュエータ部(例えば、後述する実施例におけるアクチュエータ部37)と流体吐出部(例えば、後述する実施例における流体吐出部36)とを備え、前記ボディにおいて前記タンクの内部を臨む端部に配置され、前記流体吐出部は前記ボディの内方に向けて配置され、前記アクチュエータ部は前記タンクの内方に向けて配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記インジェクタは、アクチュエータ部(例えば、後述する実施例におけるアクチュエータ部37)と流体吐出部(流体吐出部36)とを備え、前記ボディにおいて前記タンクの外部を臨む端部に配置され、前記流体吐出部は前記ボディの内方に向けて配置され、前記アクチュエータ部は前記タンクの外方に向けて配置されることを特徴とする。
【0011】
また、この発明に係る燃料電池システムでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項4に係る発明は、燃料電池(例えば、後述する実施例における燃料電池スタック1)と、この燃料電池に供給する燃料ガスを貯蔵する燃料タンク(例えば、後述する実施例における水素タンク2)と、前記燃料タンクのタンク内圧力を検出するタンク圧センサ(例えば、後述する実施例におけるタンク圧センサ8)と、制御部(例えば、後述する実施例における制御装置100)とを備える燃料電池システムであって、前記燃料タンクに前記請求項1に記載のインジェクタ付きタンク弁(例えば、後述する実施例における主止弁10)が設置され、前記制御部は、前記燃料電池の要求発電量と前記タンク圧センサにより検出されたタンク内圧力とから、予め設定された要求発電量とタンク内圧力と前記インジェクタのデューティ比との関係値を用いて、前記インジェクタのデューティ比を決定し、該デューティ比で前記インジェクタをデューティ比制御することを特徴とする燃料電池システムである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の発明において、前記燃料電池に供給される燃料ガスの流量を計測する流量センサ(例えば、後述する実施例における流量センサ4)をさらに備え、前記制御部は、前記燃料電池の要求発電量から求められた要求ガス流量と、前記流量センサにより計測された実ガス流量との差に基づいて前記インジェクタのデューティ比を補正してフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、インジェクタの作動によりメインバルブを開弁し、メインバルブで要求流量の流通を確保することができる。ここで、インジェクタの作動目的はインジェクタ自身で要求流量を確保するのではなく、背圧室内の圧力を調圧してメインバルブを開弁させることにあるので、高圧の流体圧力で作動するインジェクタが1つで済み、タンク弁を小型・軽量化することができる。また、タンク弁の小型・軽量化により、タンク弁の取付部となるタンクの開口部の内径を小さくすることができるので、タンクの耐圧強度上も有利であり、タンク自体の軽量化を図ることができる。また、インジェクタは背圧室内の圧力を調圧することにより、結果的に第2通路内の圧力を調整する機能があるので、第2通路よりも下流における減圧システムの簡素化が可能となる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、インジェクタのアクチュエータ部にもタンクの内圧を印加させることができるので、アクチュエータ部の耐圧構造付与に伴う大型化を防ぐことができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、インジェクタへのアクセスが容易となり、タンクからインジェクタ付きタンク弁を取り外さなくてもインジェクタのメンテナンスが可能となる。また、インジェクタの故障時にその交換を容易に行うことができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、インジェクタ付きタンク弁の小型・軽量化、およびインジェクタの調圧機能に伴う下流の減圧システムの簡素化により、燃料電池システムをコンパクトにすることができる。また、インジェクタのデューティ比制御により、要求発電量に応じた燃料ガスの供給を実現することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、要求ガス流量に対する応答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るインジェクタ付きタンク弁を装着した水素タンクを備える燃料電池システムの概略構成図である。
【図2】この発明の実施例1におけるインジェクタ付きタンク弁の断面図である。
【図3】インジェクタの流体吐出部の要部拡大断面図である。
【図4】メインバルブの拡大図である。
【図5】タンク圧とインジェクタの出口圧とガス流量の関係を示す図である。
【図6】インジェクタの流量特性図である。
【図7】インジェクタのデューティ比マップの一例である。
【図8】インジェクタのデューティ比のフィードバック制御を示すフローチャートである。
【図9】インジェクタのデューティ比をフィードバック制御した場合の効果を説明する図である。
【図10】この発明の実施例2におけるインジェクタ付きタンク弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明に係るインジェクタ付きタンク弁と、そのタンク弁を装着した水素タンクを備える燃料電池システムの実施例を図1から図10の図面を参照して説明する。
<実施例1>
初めに、この発明のインジェクタ付きタンク弁(以下、タンク弁と略す)と燃料電池システムの実施例1を図1から図9の図面を参照して説明する。
図1は、燃料電池システムの概略構成図であり、この実施例1における燃料電池システムは、燃料電池車両に搭載されて駆動源としてのモータ等に電力を供給する態様である。
図1において符号1は、燃料としての水素と酸化剤としての酸素が供給されて発電をする燃料電池スタック(燃料電池)を示している。燃料電池スタック1は、例えば固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。
【0020】
燃料電池スタック1には、高圧の水素を貯蔵する水素タンク2から水素供給流路3を介して所定圧力および所定流量の水素が供給されるとともに、図示しない空気供給装置を介して酸素を含む空気が所定圧力および所定流量で供給される。
水素タンク2は、長手方向の両端が略半球状の筒状をなし、その長手方向の一端が開口し、この開口部2aは主止弁(インジェクタ付きタンク弁)10が取り付けられることで塞がれている。主止弁10は水素タンク2の内部と水素供給流路3とを連通・遮断する弁であり、主止弁10については後で詳述する。
【0021】
水素供給流路3には、その上流側から、減圧弁5、リリーフ弁6、中圧デバイス7が設けられている。水素タンク2から放出される高圧(例えば、35MPaあるいは70MPa等)の水素は、主止弁10および減圧弁5によって所定の圧力(例えば、1MPa以下)に減圧されて中圧デバイス7に供給される。ここで、中圧デバイス7とは、減圧弁5と燃料電池スタック1との間に配置されるデバイスの総称であり、エゼクタ、加湿器などが含まれる。エゼクタは、燃料電池スタック1から排出される水素オフガスを循環利用するために水素オフガスを再び水素供給流路3に戻すデバイスであり、加湿器は燃料電池スタック1に供給される水素を加湿するデバイスである。中圧デバイス7としていずれのデバイスが組み込まれるかは燃料電池システムの全体構成により決定される。
【0022】
主止弁10には、水素タンク2内の圧力を検出するタンク圧センサ8が設けられ、水素供給流路3には、減圧弁5とリリーフ弁6との間に圧力センサ9が設けられ、低圧デバイス7と燃料電池スタック1との間には、燃料電池スタック1に供給される水素ガス流量を計測する流量センサ4が設けられている。
これらセンサ4,8,9は検出値に応じた電気信号を制御装置(制御部)100に出力する。制御装置100は後述するように主止弁10のインジェクタ30のデューティ比制御を行い、燃料電池スタック1に供給する水素ガスの流量または圧力を制御する。
【0023】
次に、図2および図3を参照して、主止弁10について詳述する。なお、以下の説明において、上下方向は図2における図中上下方向とし、左右方向は図2における図中左右方向とする。
主止弁10は、水素タンク2の開口部2aに固定されるボディ11を備え、ボディ11は、水素タンク2の内部に挿入される部分(以下、内装部と称す)12と、水素タンク2の外部に露出する部分(以下、外装部と称す)13とを有している。内装部12は円柱状をなし、水素タンク2の円形の開口部2aに挿入され固定されている。外装部13は内装部12の外径よりも大きい。
【0024】
ボディ11の内部には、水素タンク2の内部に通じる第1通路15と、水素タンク2の外部に通じる第2通路17とが形成されている。詳述すると、第1通路15は、内装部12において水素タンク2の内部中央に向けて配置される端面14に開口している。第2通路17は外装部13の右側端面13aに開口し、ここに水素供給流路3が接続される。第1通路15と第2通路17との間にこれら通路15,17を連通・遮断するメインバルブ18が設けられている。
【0025】
メインバルブ18は、ボディ11内に形成された円筒状のバルブ室19と、バルブ室19内を上下方向に移動可能に収容された弁体20と、を備えて構成されている。
弁体20は略円柱状をなし、上面22が球殻の一部をなす凸曲面に形成されている。弁体20の外周部には、バルブ室19の内周面との間にリング状の隙間28を形成するオリフィスリング23が取り付けられている。オリフィスリング23は、バルブ室19の内周面との間にリング状の隙間28を保持しながら、弁体20と一体となってバルブ室19内を上下方向に移動する。バルブ室19はオリフィスリング23によって上下に区画されており、オリフィスリング23よりも上側は高圧室24、下側は背圧室25となっている。高圧室24と背圧室25とはリング状の隙間28によって連通している。
高圧室24に面するバルブ室19の天井壁部には第2通路17の一端が開口し、この開口の周縁は弁体20の上面が着座離反する弁座26となっている。
【0026】
また、弁体20の上下移動に関わらず常に高圧室24の内周面となるバルブ室19の内周面の上端に、第1通路15の一端が開口している。つまり、第1通路15は水素タンク2の内部とメインバルブ18の高圧室24とを連通しており、弁体20が弁座26から離反したときに第1通路15と第2通路17がメインバルブ18を介して連通する。なお、図2では図示を省略するが、前述したタンク圧センサ8は第1通路15内の水素ガス圧力を検出可能に取り付けられている。水素タンク2内の圧力と第1通路15内のガス圧力とは等圧であるので、タンク圧センサ8は水素タンク2内の圧力を検出すると言える。
弁体20は背圧室25内に配置されたスプリング27によって弁座26に接近する方向(換言すると閉弁方向)に付勢されている。
【0027】
また、ボディ11内には、背圧室25と第2通路17とを接続する第3通路29が形成されている。第3通路29は小流量の水素ガスが流れれば十分であるので、第3通路29の内径は第1通路15および第2通路17の内径よりも小径となっている。さらに、ボディ11には、外装部13の左側端面13bに開口するインジェクタ取付孔50がボディ11の内側に向かって凹設され、第3通路29に連なっている。
このインジェクタ取付孔50に、第3通路29上に配置されて背圧室25の圧力を調圧可能な電磁駆動式のインジェクタ30が固定されている。インジェクタ30は、ボディ31と、ニードル弁32と、プランジャ33と、ソレノイドを構成するコイル34と、スプリング35を主要構成としている。
【0028】
ボディ31は段付き円筒状をなし、先端側は小径の流体吐出部36,基部側が大径のアクチュエータ部37となっていて、流体吐出部36がインジェクタ取付孔50における小径孔50aに隙間なく挿入され、アクチュエータ部37がインジェクタ取付孔50の大径孔50bに隙間なく挿入されている。つまり、インジェクタ30は、主止弁10のボディ11において水素タンク2の外部を臨む外装部13の端部に配置されており、流体吐出部36をボディ11の内方(ボディ11の内部構造方向)に向け、アクチュエータ部37を水素タンク2の外方(水素タンク2から外側に離れる方向)に向けて配置されている。
【0029】
インジェクタ30のボディ31には、円筒状の弁室39と、弁室39と同心上にその外側に配置されたリング状のコイル収納部40が形成されている。弁室39とコイル収納部40はいずれも、水素タンク2の外部に向けて配置されるボディ31の端面38に開口しているが、弁室39は蓋体45で封止されている。弁室39は流体吐出部36の右端近くまで直線的に延びており、コイル収納部40はアクチュエータ部37の右端近くまで直線的に延びている。弁室39とコイル収納部40は隔壁44によって離隔されている。
【0030】
流体吐出部36には、その外周部に入口孔41が、右端部に噴孔42が形成されており、いずれも弁室39に連通している。入口孔41は、インジェクタ30よりも上流側の第3通路(以下、上流側第3通路という)29aを介して背圧室25に接続されており、噴孔42は、インジェクタ30よりも下流側の第3通路(以下、下流側第3通路という)29bを介して第2通路17に接続されている。図3に示すように、弁室39は、流体吐出部36の右端近くに、先端に接近するにしたがって断面縮小するテーパ部43を備えており、このテーパ部43の先端が噴孔42に連なっている。
【0031】
弁室39には、直列に連結され一体とされたニードル弁32とプランジャ33が左右方向に移動可能に収容されている。図3に示すように、ニードル弁32の先部には、先端に接近するにしたがって断面縮小するテーパ部46と、テーパー部46の先端からさらに前方に突出する棒状のピントル47とを備えている。ニードル弁32のテーパ部46は弁室39のテーパ部43に当接離反可能となっており、テーパ部46がテーパ部43に当接したときに上流側第3通路29aと下流側第3通路29bは遮断され、テーパ部46がテーパ部43から離反したときに上流側第3通路29aと下流側第3通路29bが連通する。ピントル47は噴孔42に隙間を有して挿通されており、ニードル弁32のテーパ部46が弁室39のテーパ部43に当接したときにピントル47の先端が噴孔42から前方に若干突出する。
ニードル弁32とプランジャ33は、弁室39に収容されたスプリング35によって弁室39のテーパ部43に接近する方向(換言すると閉弁方向)に付勢されている。なお、スプリング35は弁室39の蓋体45によって支持されている。
【0032】
アクチュエータ部37のコイル収納部40にはソレノイドを構成するコイル34が配置されており、コイル34に電流を流すとプランジャ33が電磁的吸引力により左方に引き付けられ、ニードル弁32がテーパ部43から離反し、上流側第3通路29aと下流側第3通路29bが連通する。このとき、水素タンク2の内部と第2通路17とが、第1通路15、メインバルブ18の高圧室24、リング状の隙間28、背圧室25、第3通路29、インジェクタ30の弁室39を介して連通する。
【0033】
このように構成された主止弁10の開弁動作を説明する。
閉弁時の主止弁10は、インジェクタ30のコイル34に電流が流れていないので、スプリング35によって付勢されたインジェクタ30のニードル弁32が弁室39のテーパ部43に当接し、上流側第3通路29aと下流側第3通路29bとの間が遮断される。また、メインバルブ18もスプリング27によって付勢されたニードル弁20が弁座26に着座して閉じている。このとき、水素タンク2内の圧力が、第1通路15、メインバルブ18の高圧室24、リング状の隙間28を介して背圧室25に導通し、さらに上流側第3通路29aを介してインジェクタ30の弁室39に導通し、これらの領域は水素タンク2内の圧力と同圧となり、高圧となっている。一方、メインバルブ18とインジェクタ30が閉弁しているので、下流側第3通路29bと第2通路17には水素タンク2内の圧力が印加せず、低圧となっている。
【0034】
この閉弁状態の主止弁10を開弁するときには、インジェクタ30のコイル34に電流を流す。すると、コイル34への通電により発生する電磁的吸引力により、プランジャ33とともにニードル弁32が左方に引き付けられる結果、ニードル弁32が弁室39のテーパ部43から離反し、上流側第3通路29aと下流側第3通路29bが連通し、メインバルブ18の背圧室25の水素ガスが第3通路29を通って第2通路17に排出され、第2通路17内の圧力が上昇する。一方、背圧室25内の圧力は第2通路17への水素ガス流出により低下するが、背圧室25は、オリフィスリング23と弁室19の内周面との間のリング状の隙間28を介して高圧室24に連通しているので、水素タンク2に貯留されている水素ガスが第1通路15、高圧室24、隙間28を通って背圧室25に流れ込み、背圧室25内の圧力を上昇させる。しかしながら、隙間28の開口面積は小さいので、背圧室25の圧力低下分の全てを補充することはできない。その結果、背圧室25内の圧力P2は、圧力室24内の圧力(すなわち、水素タンク2内の圧力)P1よりも小さく、且つ、第2通路17内の圧力P3よりも大きい値となる(P1>P2>P3)。
【0035】
そして、この圧力差に基づきメインバルブ18の弁体20には、弁体20を下方へ押す力が作用し、この力がスプリング27による閉弁方向への付勢力に勝ると、弁体20が弁座26から離反し、メインバルブ18が開弁する。
メインバルブ18が開弁すると、水素タンク2内の水素ガスは第1通路15から高圧室24を介して第2通路17へと流れていく。なお、メインバルブ18が開弁したときにメインバルブ18を流れる水素ガスの流量は、インジェクタ30を通って背圧室25から第2通路17へ流れていく水素ガスの流量よりも極めて大きい。
【0036】
メインバルブ18の作動原理について詳述すると、図4に示すように、メインバルブ18の弁体20の背圧室25側の受圧面積をS1、弁体20の第2通路17内における受圧面積をS2とすると、次の式(1)の不等式が成立したときに、メインバルブ18が開弁する。なお、Fはスプリング27の弾性力である。
(S1−S2)・P1+S2・P3>S1・P2+F ・・・ 式(1)
【0037】
そして、弁体20が弁座26から離反した後、次の式(2)が成立したところで、弁体20の開弁方向への移動が停止し、弁体20のストローク量が決まる。
(S1−S2)・P1+S2・P3=S1・P2+F ・・・ 式(2)
したがって、水素タンク2内の圧力P1と、背圧室25内の圧力P2と、第2通路17内の圧力P3によってメインバルブ18の弁開時のストローク量が決まり、その結果、メインバルブ18の弁開時の開口面積が決まって、メインバルブ18を流通する水素ガスの流量が決まることとなる。
【0038】
ところで、この主止弁10では、インジェクタ30のコイル34への通電をデューティ比制御することによって、背圧室25の圧力を調整することができる。したがって、インジェクタ30のコイル34への通電をデューティ比制御することによって、燃料電池スタック1への水素ガスの供給量を制御することが可能となる。
例えば、燃料電池スタック1への水素ガスの供給量が少なくてよい場合、換言すると水素ガスの消費量が小さい場合には、インジェクタ30のデューティ比を低く制御することで、背圧室25の圧力P2を水素タンク2内の圧力P1に近い値とし、メインバルブ18の開弁ストロークを小さくして(ゼロも含む)、メインバルブ18の開口面積を小さくする。
一方、燃料電池スタック1への水素ガスの供給量が多い場合、換言すると水素ガスの消費量が大きい場合には、インジェクタ30のデューティ比を高く制御することで、背圧室25の圧力P2を水素タンク2内の圧力P1よりも十分に低い値とし、メインバルブ18の開弁ストロークを大きくして、必要な開口面積を確保する。
【0039】
なお、燃料電池スタック1に要求される水素ガス流量(以下、要求流量という)は、燃料電池スタック1に対する要求発電量から決定することができるが、これに燃料電池スタック1から系外に排出される水素ガスのパージ量を加算すると、水素ガスの要求流量をより正確に決定することができる。
【0040】
次に、水素ガスの要求流量と、水素タンク2内の圧力(以下、タンク圧と略す)P1と、インジェクタ30のデューティ比との関係を予めマップに記憶しておき、このマップを用いてインジェクタ30のデューティ比を決定する方法を説明する。
まず、実験により、タンク圧P1毎に、第2通路17内の圧力(以下、出口圧と略す)P3と、主止弁10を流通するガス流量の関係を求める。図5は、タンク圧P1と出口圧P3とガス流量の関係の一例を示したものである。同じガス流量で比較すると、タンク圧P1が高いほど出口圧P3を高圧にすることができる。
【0041】
ところで、主止弁10の下流には減圧弁5や中圧デバイス7などが設けられているため、出口圧P3はこれら下流デバイスの圧力条件の制約を受ける。つまり、出口圧P3は下流デバイスの下限圧力から上限圧力の間になければならない。そこで、この圧力範囲から外れないように、タンク圧P1毎にインジェクタ30のデューティ比の範囲を決定する。
例えば、タンク圧P1が高いときであって、ガス流量を小さくしていくと出口圧P3が前記上限圧力を越えてしまうときがある場合には、そのタンク圧P1では出口圧P3が上限圧力を超えない範囲でガス流量を制御することとし、出口圧P3が上限圧力と等圧となったときのガス流量を該タンク圧P1での最少流量として、そのときのインジェクタ30のデューティ比をデューティ比の下限値とする。
同様に、タンク圧P1が低いときであって、ガス流量を大きくしていくと出口圧P3が前記下限圧力を下回ってしまうときがある場合には、そのタンク圧P1では出口圧P3が下限圧力を下回らない範囲でガス流量を制御することとし、出口圧P3が下限圧力と等圧となったときのガス流量を該タンク圧P1での最大流量として、そのときのインジェクタ30のデューティ比をデューティ比の上限値とする。
【0042】
次に、このようにしてタンク圧P1毎に決定したインジェクタ30のデューティ比範囲内で、図6に示すように、タンク圧P1毎に、ガス流量を変化させたときの各ガス流量に対応するインジェクタ30のデューティ比を測定する。図6は、タンク圧P1毎に求めたガス流量とデューティ比との関係の一例を示している。
次に、この測定結果に基づいて、図7に示されるように、タンク圧P1と、ガス流量と、インジェクタ30のデューティ比とを対応させたデューティ比マップを作成する。
【0043】
このようなデューティ比マップを制御装置100に記憶させておくと、タンク圧センサ8により検出したタンク圧P1と、燃料電池スタック1の要求発電量から算出される水素ガスの要求流量に基づいて、インジェクタ30のデューティ比を決定することができる。なお、要求流量が、図7に示されるデューティ比マップに記載されているガス流量値とガス流量値の間である場合には、補間法等を用いてデューティ比を決定する。また、この実施例1における燃料電池システムは燃料電池車両に搭載された態様であることから、要求発電量はアクセルペダル(図示略)の踏み込み量等に基づいて制御装置100によって算出される。
【0044】
ところで、このようにタンク圧P1と水素ガスの要求流量に基づき図7のデューティ比マップを用いてインジェクタ30のデューティ比を決定し、インジェクタ30のデューティ比制御を行うと、図9(a)に示すように水素ガスの要求流量が急激に変化した場合に、主止弁10の応答遅れにより、図9(b)に示すように主止弁10を実際に流通する水素ガスの実流量と要求流量との間に大きな誤差が生じることがある。特に、車両に搭載された燃料電池システムでは、要求発電量の急激な変化は車両の加減速要求などにより多いに起こり得る事象である。なお、図9(a)は要求流量と実流量の変化を示す図であり、図9(b)は要求流量と実流量との差の時間的変化を示す図であり、図9(b)において破線は差が0を示し、一点鎖線は許容上下限を示す。
そこで、要求流量と実流量との間の差分に基づいてインジェクタ30のデューティ比の補正を行いフィードバック制御を行うと、要求流量に対する応答性を向上させることができる。
【0045】
次に、インジェクタ30のデューティ比のフィードバック制御を図8に示すフローチャートにしたがって説明する。このデューティ比のフィードバック制御は、制御装置100により一定時間毎に繰り返し行われる。
【0046】
まず、ステップS101において、タンク圧センサ8により検出された水素タンク2のタンク圧P1と、燃料電池スタック1に要求される水素ガスの要求流量に基づき、図7に示すデューティ比マップを用いてインジェクタ30のデューティ比指令値を決定する。なお、水素ガスの要求流量は燃料電池スタック1に対する要求発電量に基づいて算出する。
【0047】
次に、ステップS102に進み、流量センサ4により計測された実流量と要求流量との差の絶対値が所定値(許容範囲)を越えているか否かを判定する。
ステップS102における判定結果が「NO」(差が許容範囲内)である場合には、デューティ比は適正であるので補正を行わず、リターンする。
【0048】
一方、ステップS102における判定結果が「YES」(差が許容範囲外)である場合には、ステップS103に進み、デューティ比の補正量を算出し、ステップS101において設定したデューティ比指令値に対してこの補正量分だけ補正して、補正後のデューティ比指令値(デューティ比補正指令値)を決定し、リターンする。
なお、デューティ比の補正量は、次の式(3)に示すように、実流量と要求流量との差に、主止弁10から燃料電池スタック1までの配管容積やインジェクタ30の応答性能等によって決まる定数Aを乗じて算出することができる。
デューティ比補正量=A・(実流量−要求流量) ・・・式(3)
【0049】
図9(c)は、インジェクタ30のデューティ比の時間的変化を補正前後で比較した図であり、図9(d)は要求流量と実流量との差の時間的変化を示す図であり、図9(d)において破線は差が0を示し、一点鎖線は許容上下限を示す。このようにデューティ比を補正すると、水素ガスの要求流量が急激に変化した場合にも、要求流量と実流量との差を許容範囲内に収めることができる。
【0050】
なお、図5からも明らかなように、主止弁10を流通するガス流量と出口圧(第2通路17内の圧力)P3との間には、ガス流量が大きくなるほど出口圧P3が小さくなり、ガス流量が小さくなるほど出口圧P3が大きくなるという相関関係がある。そこで、要求流量を目標出口圧と置き換え、実流量を実出口圧と置き換えて、目標出口圧と実出口圧の差分に基づいてインジェクタ30のデューティ比の補正を行いフィードバック制御を行うことも可能である。その場合には、ステップS102における処理を、目標出口圧と実出口圧の差の絶対値が所定値(許容範囲)を越えているか否かに置き換えればよい。
【0051】
この主止弁10においては、インジェクタ30の作動によりメインバルブ18を開弁し、メインバルブ18で要求流量の流通を確保することができる。ここで、インジェクタ30の作動目的はインジェクタ30自身で要求流量を確保するのではなく、メインバルブ18の背圧室25の圧力を調圧してメインバルブ18を開弁させることにあるので、高圧の流体圧力で作動するインジェクタ30が1つで済む。したがって、タンク弁である主止弁10を小型・軽量化することができる。
【0052】
また、主止弁10の小型・軽量化により、主止弁10の取付部となる水素タンク2の開口部2aの内径を小さくすることができる。特に、実施例1の主止弁10では、インジェクタ30をボディ11の外装部13に設けているので、水素タンク2の開口部2aに挿入される部分である内装部12をより小径にすることができ、その結果、水素タンク2の開口部2aの内径をより小径にすることができる。開口部2aの小径化は水素タンク2の耐圧強度上も有利であり、水素タンク2の軽量化を図ることができる。
【0053】
さらに、インジェクタ30は背圧室25の圧力を調圧することにより、結果的に第2通路17内の圧力を調整する機能があるので、第2通路17よりも下流の減圧システムの簡素化が可能となる。具体的には、減圧弁5の一次側圧力の低圧化、あるいは減圧弁5を削減することが可能となる。
【0054】
また、インジェクタ30は、主止弁10のボディ11における外装部13の端部に配置されていて、流体吐出部36をボディ11の内方に向け、アクチュエータ部37を水素タンク2の外方に向けて配置しているので、インジェクタ30へのアクセスが容易となり、水素タンク2から主止弁10を取り外さなくてもインジェクタ30のメンテナンスが可能となる。また、インジェクタ30の故障時にその交換を容易に行うことができる。
【0055】
また、この燃料電池システムにおいては、主止弁の小型・軽量化、およびインジェクタ30の調圧機能に伴う下流の減圧システムの簡素化により、燃料電池システムをコンパクトにすることができ、コストダウンを図ることができる。さらに、インジェクタ30のデューティ比制御により、要求発電量に応じた燃料ガスの供給を実現することができる。特に、要求流量と実流量との間の差分に基づいてインジェクタ30のデューティ比の補正を行いフィードバック制御を行った場合には、要求流量に対する応答性を向上させることができる。
【0056】
<実施例2>
次に、この発明のインジェクタ付きタンク弁の実施例2を図10の図面を参照して説明する。
実施例2の主止弁(インジェクタ付きタンク弁)10が実施例1の主止弁10と相違する点は、インジェクタ30の取り付け位置にある。実施例1の主止弁10では、インジェクタ30を主止弁10のボディ11の外装部13に設置しているが、実施例2の主止弁10では、インジェクタ30を主止弁10のボディ11における内装部12に設置している。
以下、実施例2の主止弁10について、実施例1の主止弁10と同一態様部分には同一符号を付して説明を省略し、相違点について詳述する。
【0057】
実施例2の主止弁においては、インジェクタ取付孔60が、内装部12の端面14に開口し、ボディ11の内側に向かって凹設されており、このインジェクタ取付孔60に、流体吐出部36がインジェクタ取付孔60に隙間なく挿入され固定されている。実施例2では、アクチュエータ部37は内装部12の端面14から水素タンク2の内部に突出している。つまり、インジェクタ30は、主止弁10のボディ11において水素タンク2の内部を臨む内装部12の端部に配置されており、流体吐出部36をボディ11の内方に向け、アクチュエータ部37を水素タンク2の内方(水素タンク2の内部空間方向)に向けて配置されている。インジェクタ30が、第3通路29上に配置され、背圧室25の圧力を調圧可能であることは、実施例1と同じである。なお、アクチュエータ部37は、内装部12の径方向内側に収まるように設定されている。
【0058】
また、アクチュエータ部37におけるコイル収納部40は水素タンク2の内部に臨んで開口し、コイル収納部40内に水素タンク2内の圧力が印加されるようになっている。したがって、アクチュエータ部37の内外、換言すればアクチュエータ部37の全体が水素タンク2内の圧力を受圧する。一方、インジェクタ30の弁室39内には、主止弁10の開閉状態に関わらず、水素タンク2内の圧力と等しいか、あるいはこれに近い圧力が加わっている。その結果、アクチュエータ部37の内外の差圧を小さくすることができ、アクチュエータ部37の耐圧構造付与に伴う大型化を防ぐことができる。また、アクチュエータ部37においてコイル収納部40と弁室39とを離隔している隔壁44の肉厚を薄くしてコイル34とプランジャ33との離間寸法を小さくすることができ、プランジャ33に対する電磁的吸引力(推力)を大きくすることができる。したがって、アクチュエータ部37を小型化することができる。
【0059】
そして、この小型化されたアクチュエータ部37をボディ11における内装部12の端面14に取り付け、内装部12の径方向内側に収まるように設置しているので、主止弁10において水素タンク2内に挿入する部分(すなわち、内装部12とアクチュエータ部37)の径方向寸法を小さくすることができる。その結果、主止弁10の取付部となる水素タンク2の開口部2aの内径を小さくすることができる。これにより、開口部2aでの水素ガスの受圧面積を小さくすることができ、水素タンク2に螺合させるねじ長さが大きくならずに済むこととあわせ、主止弁10の小型・軽量化を図ることができる。また、水素タンク2の開口部2aの小径化は耐圧強度上も有利であり、タンク自体の軽量化を図ることができる。
【0060】
また、インジェクタ30は、主止弁10のボディ11における内装部12の端部に配置されており、流体吐出部36だけをボディ11の内部に収容し、アクチュエータ部37を内装部12の端面14から水素タンク2の内部に露出させているので、インジェクタ30のボディ11への取り付けが容易である。
この実施例2の主止弁10を備えた水素タンク2を、図1に示される燃料電池システムに適用することができることは勿論である。
【0061】
〔他の実施例〕
なお、この発明は前述した実施例に限られるものではない。
例えば、燃料電池システムは車両用に限るものではなく、定置用であってもよい。
また、インジェクタ30の構造は前述した実施例のものに限るものではない。
前述した実施例では、インジェクタ30のデューティ比制御においてタイムインターバルを一定としているが、タイムインターバルを可変としてもよい。このタイムインターバルを短くすると、制御性を向上させることができるが、一方で作動回数が増大するため、耐久性に留意が必要となる。そこで、燃料電池の発電状態(発電モード)に応じて、例えば燃料電池の出力が大きく変動する場合はタイムインターバルを短くし、出力が安定している場合はタイムインターバルを長くすると、制御性と耐久性を両立した燃料電池システムを構成することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 燃料電池スタック(燃料電池)
2 水素タンク(タンク)
4 流量センサ
8 タンク圧センサ
10 主止弁(インジェクタ付きタンク弁)
11 ボディ
15 第1通路
17 第2通路
18 メインバルブ
25 背圧室
27 スプリング
29,29a,29b 第3通路
30 インジェクタ
36 流体吐出部
37 アクチュエータ部
100 制御装置(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部をタンクの内部に挿入され該タンクに固定されるボディと、
前記ボディ内に形成され前記タンクの内部に通じる第1通路と、
前記ボディ内に形成され前記タンクの外部に通じる第2通路と、
前記第1通路と前記第2通路との間に配置されてこれら通路を連通遮断するメインバルブと、
前記メインバルブを閉弁方向に付勢するスプリングと、
前記タンクの内部に通じて前記メインバルブに閉弁方向の流体圧力を付与する背圧室と、
前記第2通路と前記背圧室とを連通する第3通路と、
前記第3通路上に配置され前記背圧室内の圧力を調圧可能なインジェクタと、
を備え、前記第1通路内の圧力と、前記スプリングの弾性力と、前記インジェクタにより調圧された前記背圧室内の圧力と、前記第2通路内の圧力を用いて前記メインバルブを開閉することを特徴とするインジェクタ付きタンク弁。
【請求項2】
前記インジェクタは、アクチュエータ部と流体吐出部とを備え、前記ボディにおいて前記タンクの内部を臨む端部に配置され、前記流体吐出部は前記ボディの内方に向けて配置され、前記アクチュエータ部は前記タンクの内方に向けて配置されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ付きタンク弁。
【請求項3】
前記インジェクタは、アクチュエータ部と流体吐出部とを備え、前記ボディにおいて前記タンクの外部を臨む端部に配置され、前記流体吐出部は前記ボディの内方に向けて配置され、前記アクチュエータ部は前記タンクの外方に向けて配置されることを特徴とする請求項1に記載のインジェクタ付きタンク弁。
【請求項4】
燃料電池と、この燃料電池に供給する燃料ガスを貯蔵する燃料タンクと、前記燃料タンクのタンク内圧力を検出するタンク圧センサと、制御部とを備える燃料電池システムであって、
前記燃料タンクに前記請求項1に記載のインジェクタ付きタンク弁が設置され、
前記制御部は、前記燃料電池の要求発電量と前記タンク圧センサにより検出されたタンク内圧力とから、予め設定された要求発電量とタンク内圧力と前記インジェクタのデューティ比との関係値を用いて、前記インジェクタのデューティ比を決定し、該デューティ比で前記インジェクタをデューティ比制御することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池に供給される燃料ガスの流量を計測する流量センサをさらに備え、
前記制御部は、前記燃料電池の要求発電量から求められた要求ガス流量と、前記流量センサにより計測された実ガス流量との差に基づいて前記インジェクタのデューティ比を補正してフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−189108(P2012−189108A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51673(P2011−51673)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】